JP2003310204A - 料理用酒類 - Google Patents
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Abstract
めた料理用酒類及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 クエン酸及びコハク酸含量が、それぞれ
1000mg/リットル以上及び800mg/リットル
以上であることを特徴とする料理用酒類。発酵法により
当該料理用酒類を製造する法王において、多酸性麹菌及
び多酸性酵母を用いることを特徴とする料理用酒類の製
造方法。酒類の好適な例には清酒がある。 【効果】 被調理物由来の塩基性臭気成分に対するマス
キング効果の増強に加え、エキス分の溶出抑制効果、及
びレトルト臭の抑制効果といった調理効果が付加され
た、非常に好適なものである。
Description
た料理用酒類及びその製造方法に関する。
イン、老酒等が知られており、それぞれ目的に応じて使
い分けられている。しかしながら、これらは本来飲用に
製造されたものであり、料理用酒類としては必ずしも満
足すべきものではない。例えば、飲用に適した清酒では
調理効果のある有機酸含量が不十分である。
生酸性麹菌であるアスペルギルスカワチ(Asperg
illus kawachii)を用いて清酒を製造す
る方法が開示されている(特開昭48−8994号公
報)。しかしながら、これらの方法では、酒類中のクエ
ン酸含量は増加するが、他の有機酸は従来と変わらず、
単にクエン酸含量が高いだけの酒質となり、更に酒類に
重要な香気がこれらの麹菌等では生産されないというこ
とになる。また、有機酸を多量に生成する多酸性酵母に
ついても数多くの耐性株や変異株が得られているが、従
来の多酸性酵母では、料理に適した十分な有機酸含量を
有する酒質を得るまでには至っていない。
況にかんがみてなされたものであり、本発明の目的は、
酒類の風味を保持し、更にその調理効果を高めた料理用
酒類及びその製造方法を提供することにある。
1の発明は、クエン酸及びコハク酸含量が、それぞれ1
000mg/リットル以上及び800mg/リットル以
上である料理用酒類に関する。また、本発明の第2の発
明は、多酸性麹菌及び多酸性酵母を用いる発酵法による
該料理用酒類の製造方法に関する。
類の開発を目的に、トリメチルアミン、アンモニア等の
塩基性の臭気成分に対するマスキング効果が高く、且つ
呈味性に優れた有機酸について検討した結果、コハク酸
及びクエン酸が最も効果が高いことを見出した。また、
これらの有機酸含量を高めた料理用酒類には、具材のエ
キス分の溶出抑制効果やレトルト臭抑制効果があること
を見出した。更に、これらの有機酸を高生産する麹菌及
び酵母の組合せを検討し、料理本来の特徴を生かし、調
理効果の増強された料理用酒類を完成させるに至った。
る。本発明でいう料理用酒類とは、料理又は調理に適し
た酒類であって、クエン酸及びコハク酸含量が、それぞ
れ1000mg/リットル以上及び800mg/リット
ル以上である。両有機酸含量がこのように高い酒類は従
来にないものである。クエン酸は爽快な酸味を有し、且
つ被調理物由来のトリメチルアミン(以下、TMAとい
う)、アンモニア等の塩基性臭気成分(以下、塩基性臭
気成分という)のマスキング効果(後述)に優れた有機
酸である。また、コハク酸はうま味増強効果及び塩基性
臭気成分のマスキング効果(後述)に優れた有機酸であ
る。このため、これらの両有機酸が著量含有することに
より、従来の料理用酒類より塩基性臭気成分のマスキン
グ効果は高くなる。更に、本発明の料理用酒類は、調理
に用いる具材のエキス分の溶出を抑制する効果、及びレ
トルト殺菌等の100℃超の高温加熱時に生じる前述の
塩基性臭気成分や硫化水素等による揮発性含硫化合物等
による不快臭、いわゆるレトルト臭を抑制する効果を持
つ。一般的な調理において、少なくとも料理用酒類のク
エン酸が1000mg/リットル未満又はコハク酸が8
00mg/リットル未満であれば、これらの調理効果を
満足させることができない。また、両有機酸がこのよう
な濃度である場合も同様である。したがって、クエン酸
及びコハク酸含量が、それぞれ1000mg/リットル
以上及び800mg/リットル以上に高められた料理用
酒類は、一般的な調理において前述の調理効果を顕著に
高めることができる。
びコハク酸含量が、それぞれ1000〜12000mg
/リットル及び800〜9600mg/リットルが好ま
しい。これらの濃度範囲を越えると、料理本来の風味や
特徴を損ねてしまう場合がある。これを回避するために
使用量を減じると、アルコールによる調理効果が不十分
となる。
含量を満たすものであれば特に限定はないが、代表的な
ものとして、清酒、合成清酒、焼酎、リキュール、これ
らに食塩、酢酸等で不可飲処置を施した発酵調味料、及
びみりんにクエン酸及びコハク酸を、それぞれ所定含量
にした酒類調味料等を挙げることができる。不可飲処置
の方法は、常法に従って行えばよい。
前記有機酸含量を満たすものであれば特に限定はなく、
クエン酸及びコハク酸を酒類に添加することにより得る
ことができるが、好適な例としては、発酵法による酒類
の仕込工程及び/又は発酵工程に、クエン酸及び/又は
その塩を添加し、多酸性酵母によるアルコール発酵を行
う方法を挙げることができる。多酸性酵母により生成さ
れるコハク酸は、発酵工程中にその一部を添加したクエ
ン酸から変換される。このため、料理用酒類に含有する
有機酸の中で単位重量当り最も塩基性臭気成分のマスキ
ング効果が高いと考えられているコハク酸をより高生成
させることができる。これは発酵初期の方が効率がよい
ので、仕込工程に添加することが好ましい。仕込工程に
おけるクエン酸の添加は、仕込工程終了直後のpHが
2.4以上となるように行えばよい。特に好適な方法と
して、多酸性麹菌を用いる方法を挙げることができる。
本発明でいう多酸性麹菌としては、クエン酸及び/又は
コハク酸を高生成する麹菌を示す。該多酸性麹菌は酒
類、食品の製造に用いることができるものであれば特に
限定はないが、アスペルギルス(Aspergillu
s、以下、A.と略記する)属に属する麹菌、リゾプス
(Rhizopus)属に属する麹菌等を挙げることが
できる。アスペルギルス属に属する麹菌としては、アス
ペルギルス カワチ(A.kawachii)等の白麹
菌、アスペルギルス ニガー(A.niger)、アス
ペルギルス アワモリ(A.awamori)等の黒麹
菌を例示することができるが、これらの中でアスペルギ
ルス カワチに属する麹菌が好適に用いられる。多酸性
麹菌には変異処理株、野生株、馴養株、交雑株、細胞融
合株、形質転換株も含まれ、これらの取得は、常法に従
って行えばよい。該多酸性麹菌を用いて製麹し、これを
仕込工程及び/又は発酵工程で用いる。製麹方法は常法
に従って行えばよい。
有し、且つ有機酸を高生成するものであれば特に限定は
ないが、有機酸の少なくともコハク酸を高生成する酵母
が好適であり、サッカロミセス セレビシエ(Sacc
haromyces cerevisiae)に属する
酵母が特に好適である。この例として、サッカロミセス
セレビシエ 2OG−R39株(FERM P−17
470)を挙げることができる。多酸性酵母には、変異
処理株、野生株、馴養株、交雑株、細胞融合株、形質転
換株も含まれ、これらの取得は、常法に従って行えばよ
い。
類製造における各工程を適宜組合せて行えばよい。酒類
製造における工程として、原料処理、仕込、発酵、熟
成、上槽、精製等を挙げることができる。原料処理工程
は穀類、芋類、種実類、豆類、果実類等のでん粉及び/
又は糖類を含有する掛原料を用い、糊化、液化、糖化、
搾汁、固液分離等の処理を行う。なお、仕込工程で常法
に従って用いる麹の製麹工程は原料処理工程に含む。仕
込工程で処理済の掛原料、水、麹、酵母、糖類、各種醸
造副原料等を混合し、発酵及び/又は熟成工程を行う。
上槽工程はろ過法、遠心分離法等により固液分離を行
い、必要に応じており下げ、活性炭処理、加熱殺菌等の
精製工程を行う。例えば、清酒では、添、仲、及び留仕
込の三段仕込で麹、蒸きょうした精白米、汲水、酵母、
及び醸造用乳酸を混合して10〜15℃で発酵させ、上
槽及び精製工程により製造する方法を挙げることができ
る。
マスキング効果、うま味増強効果、エキス分溶出抑制効
果、及びレトルト殺菌等の100℃超の高温加熱時に生
じる塩基性臭気成分や含硫化合物等の不快臭、いわゆる
レトルト臭の抑制効果といった調理効果に優れた料理用
酒類を提供することができる。
説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもの
ではない。
高い多酸性酵母を用い、料理用酒類として清酒の製造を
行った。表1に示す仕込配合で水麹、初添、仲添、及び
留添の仕込を行い、発酵を行った。麹米及び掛米は、ど
ちらも精白歩合80w/w%、滋賀県産日本晴を用い、
乳酸は醸造用乳酸を用いた。多酸性麹菌として、アスペ
ルギルス カワチからなる種麹である河内白麹菌(河内
源一郎商店製)を用い、常法により固体麹を得た。多酸
性酵母として、サッカロミセスセレビシエ 2OG−R
39株(FERM P−17470)を用い、細胞数2
×109個/10mlの懸濁液10mlを水麹の仕込時
に添加した。発酵は15℃一定で行い、留後20日目に
上槽し、清酒を得た。対照として、黄麹菌〔アスペルギ
ルス オリーゼ〕からなる種麹として黒判もやし
〔(株)糀谷三左衛門製〕を、酵母としてサッカロミセ
ス セレビシエ 2OG−R39株(FERMP−17
470)、及びサッカロミセス セレビシエ K−70
1株〔(財)日本醸造協会、協会701号〕を用い、同
様にして清酒を得た。得られた各清酒について、日本酒
度、アルコール濃度(Alc.)、pH、酸度、及び全
窒素、並びに有機酸として、クエン酸、コハク酸、リン
ゴ酸、乳酸、及び酢酸の各含量を測定した。有機酸及び
全窒素の測定方法は、それぞれ高速液体クロマトグラフ
ィー及びTOTAL NITROGEN ANALYZ
ER MODEL TN−5〔三菱化学(株)製〕によ
り行い、他は第4回改正、国税庁所定分析法注解に基づ
き行った。その結果を表2に示す。
コハク酸含量が、それぞれ1000mg/リットル以上
及び800mg以上含有するものであったが、対照例1
及び2では、両有機酸含量を満足させるものではなかっ
た。多酸性酵母を用いて製造した清酒である本発明1と
対照例1とのコハク酸含量を比べてみると、クエン酸生
成能を有する多酸性麹菌より得られる麹を用いて製造し
た本発明1の方がコハク酸含量が高かった。また、本発
明1では全窒素が172mg/100mlであり、非常
に高いものであった。日本酒度及びアルコール濃度は、
本発明1と対照例1及び2との間に差はなく、原料利用
率が高いものであった。したがって、多酸性麹菌及び多
酸性酵母を用いることにより、クエン酸及びコハク酸含
量が、それぞれ1000mg/リットル以上及び800
mg/リットル以上含有する料理用酒類を得ることがで
き、製造の際の原料利用率も高いことが明らかになっ
た。
%になるように割水を行い、清酒を得た(本発明2及び
対照例3)、得られた清酒のクエン酸及びコハク酸含量
は表3に示す。また、対照例2をアルコール濃度13.
5v/v%になるように割水する際に、表3に示す含量
になるようにクエン酸及びコハク酸を添加して清酒を得
た(本発明3及び対照例4〜6)。これらの清酒を用い
てTMAに対するマスキング効果の検討を行った。得ら
れた清酒0.8ml、1v/v%TMA水溶液0.5m
l、及び蒸留水3.7mlを25ml容バイアル壜に添
加、混合後密封した。これらを40℃で30分間保持
後、ヘッドスペース中のガス1mlを採取して全量ガス
クロマトグラフィーによる分析を行った。ガスクロマト
グラフィー分析において、カラム及び検出器は、それぞ
れ Unicarbon B−2000〔ジーエルサイ
エンス(株)製〕及び水素炎イオン化検出器を使用し
た。対照として、有機酸の水溶液の代わりに水を添加
し、同様に行った。得られたTMAのピーク面積により
下記数1に従ってTMA消臭率を算出した。この結果を
表4に示す。
ピークの面積)÷(対照のTMAのピークの面積)}]
×100
それぞれ1000mg/リットル以上及び800mg/
リットル以上である本発明2及び3は、対照例3〜6に
比べてTMA消臭率が高いものであった。また、そのT
MA消臭率は57%以上となり、揮発するTMAの2分
の1量を上回る量を抑制するものであった。TMAの消
臭は、TMAが有機酸と反応することにより不揮発性に
なるものと考えられる。実際の調理においても、魚肉に
好ましくない成分として含有するアミン類、アンモニア
等の塩基性臭気成分が有機酸により中和され、消臭され
るものと考えられる。したがって、コハク酸及びクエン
酸含量が、それぞれ1000mg/リットル以上及び8
00mg/リットル以上である料理用酒類を用いること
により、高い塩基性臭気成分に対するマスキング効果の
高い好適なものであることが明らかになった。
さり500gをあさりが開くまで中火で加熱を行い、酒
蒸しを調理した(調理例1)。対照として、対照例2の
清酒を用いて同様に行った(参考例1)。調理例1及び
参考例1について、パネラー6名による官能検査を行っ
た。その結果、5名が調理例1の方が香味がよく、あさ
り独特の臭いがマスキングされた非常に好適なあさりの
酒蒸しであるとの評価であった。また、調理例1の煮汁
は調理後ほとんど白濁していなかったが、参考例1の煮
汁は調理後白濁しており、調理例1はあさりからのエキ
ス分の溶出が少なかった。したがって、本発明の料理用
酒類はマスキング効果が高く、エキス分の溶出抑制効果
を有するものであることが明らかになった。
2)。該清酒75ml及び鶏ミンチ肉1500gを各々
十分に混ぜ込み鶏肉団子を10個作成した後、沸騰湯浴
中で3分間加熱を行って鶏肉団子を得た。対照として、
対照例2の清酒を用いて同様に行った(参考例2)。調
理例2及び参考例2について、パネラー4名による官能
検査を行った。その結果、3名が調理例2の方が香味が
よく、鶏肉特有の臭みがマスキングされた非常に好適な
鶏肉団子であるとの評価であった。したがって、本発明
の料理用酒類は高いマスキング効果を有するものである
ことが明らかになった。
3)。該清酒100ml及び鰯のすり身1000gを各
々十分に混ぜ込み鰯のつみれを7個作成した後、沸騰湯
浴中で3分間加熱を行った。対照として、対照例2の清
酒を用いて同様に行った(参考例3)。調理例3及び参
考例3について、パネラー5名による官能検査を行っ
た。その結果、4名が調理例3の方が香味がよく、鰯特
有の臭みがマスキングされた非常に好適な鰯のつみれで
あるとの評価であった。したがって、本発明の料理用酒
類は高いマスキング効果を有するものであることが明ら
かになった。
(調理例4)。該清酒26mlと水50mlとの混合液
を鶏のむね肉200gにふりかけ、電子レンジで3分間
加熱後、鶏のむね肉を裏返して、さらに電子レンジで2
分間加熱を行った。対照として、対照例3の清酒を用い
て同様に行った(参考例4)。調理例4及び参考例4に
ついて、パネラー8名による官能検査を行った。その結
果、8名が調理例4の方が香味がよく、鶏独特の臭いが
マスキングされた非常に好適な酒蒸しであるとの評価で
あった。したがって、本発明の料理用酒類はマスキング
効果が高く、非常に好適なものであることが明らかにな
った。
(調理例5)。鶏のむね肉100g及び水50mlと該
清酒5mlとの混合液をレトルトパウチに入れ、密封し
てレトルト殺菌を行った。レトルト殺菌は120℃で3
0分間行った。対照として、対照例3の清酒を用いて同
様に行った(参考例5)。調理例5及び参考例5につい
て、パネラー6名による官能検査を行った。その結果、
6名が調理例5の方が香味がよく、レトルト殺菌後の不
快臭がない好適な鶏肉であるとの評価であった。また、
調理例5は鶏肉由来の塩基性臭気成分がマスキングされ
た、非常に好適な鶏肉であった。したがって、本発明の
料理用酒類はレトルト殺菌による不快臭を抑制し、マス
キング効果が高く、非常に好適なものであることが明ら
かになった。
含量が、それぞれ1000mg/リットル以上及び80
0mg/リットル以上である従来にない料理用酒類を得
ることができる。該料理用酒類は被調理物由来の塩基性
臭気成分に対するマスキング効果の増強に加え、エキス
分の溶出抑制効果、及びレトルト殺菌等の100℃超の
高温加熱時に生じる塩基性臭気成分及び含硫化合物等の
不快臭、いわゆるレトルト臭の抑制効果といった調理効
果が付加された、非常に好適なものである。
Claims (3)
- 【請求項1】 クエン酸及びコハク酸含量が、それぞれ
1000mg/リットル以上及び800mg/リットル
以上であることを特徴とする料理用酒類。 - 【請求項2】 料理用酒類が清酒である、請求項1に記
載の料理用酒類。 - 【請求項3】 発酵法により請求項1又は2に記載の料
理用酒類を製造する方法において、多酸性麹菌及び多酸
性酵母を用いることを特徴とする、請求項1又は2に記
載の料理用酒類の製造方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2002117049A JP4224251B2 (ja) | 2002-04-19 | 2002-04-19 | 料理用清酒 |
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-
2002
- 2002-04-19 JP JP2002117049A patent/JP4224251B2/ja not_active Expired - Lifetime
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