JP2003307011A - 建築物の内装材及びその製造方法 - Google Patents

建築物の内装材及びその製造方法

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英信 伊藤
Masami Nimata
正美 二俣
Hiroyuki Toyama
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ライムケーキを有効利用するとともに、調湿
機能を有する建築物の内装材を提供する。 【解決手段】 本発明に係る建築物の内装材は、ライム
ケーキを含有し、調湿機能を有する。本発明に係る建築
物の内装材は、より好ましくは、ライムケーキを含有
し、0.87重量%〜1.3重量%の調湿機能を有す
る。さらに、本発明に係る建築物の内装材は、ライムケ
ーキを造粒し、ライムケーキを固化体にし、ライムケー
キを石膏ボードに添加し、又は、ライムケーキを発泡コ
ンクリートに添加したものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建築物の内装材に
関する。さらに、本発明は、建築物の内装材の製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】てん菜糖の製造工程において発生するラ
イムケーキは、北海道内の8工場から年間28万トン排
出されており、その再資源化が求められている。ライム
ケーキは、主成分として炭酸カルシウムを含有し、さら
に、P25、K2O、有機物(窒素化合物)をも含有し
ている。このライムケーキの有効利用が、従来より種々
考えられている。
【0003】ライムケーキの利用として、第1に、中和
のため、弱酸性の畑に散布することが行われている。そ
して、畑に散布する場合におけるライムケーキの取扱性
を改善するために、ライムケーキを粒状化することが考
えられている。このような、ライムケーキを粒状化する
ためのものとして、日本国特許出願公告公報(特公)平
2−49773号公報(以下、「文献1」ともいう)に
は、てん菜製糖工場から廃出されるライムケーキを脱水
し、ステフエン廃水濃縮液を含む造粒剤とライムケーキ
とを、25〜70kg/cm2の高圧力下でのねつ和工
程を経た後押出造粒成形し、該造粒成形の後乾燥するこ
とを特徴とするライムケーキの造粒法が掲載されてい
る。また、日本国特許公報特許第3116024号公報
(以下、「文献2」ともいう)には、製糖工場から廃出
されるライムケーキを押出し成形する押出し造粒成形工
程と、造粒体を乾燥せしめる乾燥工程を順次経ることを
特徴とするライムケーキの造粒法が掲載されている。
【0004】ライムケーキの利用として、第2に、生石
灰を得ることも考えられている。生石灰は、農業用とし
ては造粒品よりもアルカリ分が高い肥料として用いら
れ、工業用としては土質安定剤として用いられる。この
ようにライムケーキから生石灰を得るものとして、文献
2には、製糖工場から廃出されるライムケーキを押出し
成形する押出し造粒成形工程と、造粒体を乾燥せしめる
乾燥工程と、乾燥造粒体を焼成する焼成工程を順次経る
ことを特徴とするライムケーキの焼成法が掲載されてい
る。
【0005】ライムケーキの利用として、第3に、高炉
で銑鉄に溶製する粉鉱石を予め焼結鉱やペレット鉱に製
造する場合に使用される石灰石の代わりとして用いるこ
とも考えられている。ライムケーキを、高炉で銑鉄に溶
製する粉鉱石を予め焼結鉱やペレット鉱に製造する場合
に使用される石灰石の代わりとして用いるものとして、
日本国特許出願公開公報(特開)平5−263155号
公報(以下、「文献3」ともいう)には、ブレンド鉱な
どを用いて高炉原料としての焼結鉱を製造する方法にお
いて、製糖工場から廃棄されるライムケーキに、該ライ
ムケーキの重量の100倍までの水を加え、スラリー状
としたライムケーキスラリーとする工程と、ブレンド鉱
などの焼結鉱原料に、10重量%以下のライムケーキス
ラリーを加えて、塊状体に混練する工程と、その塊状体
を、1,400℃程度までの温度で焼成する工程と、そ
の焼成された塊状体を、その後に冷却する工程と、を具
備することを特徴とするライムケーキを使用した高炉原
料としての焼結鉱の製造法等が掲載されている。
【0006】ライムケーキの利用として、第4に、金属
精錬における塊状または粉状の石灰系フラックスの製造
に用いることも考えられている。ライムケーキを金属精
錬における塊状または粉状の石灰系フラックスの製造に
用いるものとして、特開平6−157084号公報(以
下、「文献4」ともいう)には、転炉や電気炉などの金
属精錬炉における溶湯内に供給し、溶融金属中の硫黄分
や燐酸分などと反応させて金属スラグ生成の促進を図る
ために使用される石灰系フラックスの製造法において、
ふっ化カルシウムを1mm径以下の大きさに粉砕する工
程と、炭酸カルシウムを1mm径以下の大きさに粉砕す
る工程と、粉砕された炭酸カルシウムに、粉砕されたふ
っ化カルシウムを5重量%ないし60重量%混合して、
5mmないし20mmに造粒する工程と、その造粒物を
900℃ないし1,000℃で假焼する工程と、を含む
ことを特徴とする金属精錬における塊状石灰系フラック
スの製造方法が掲載されており、さらに、炭酸カルシウ
ムとして、製糖工業における炭酸石灰清浄法によって処
理された後のライムケーキが使用されることを特徴とす
る金属精錬における塊状石灰系フラックスの製造方法が
掲載されている。
【0007】また、特開平6−157085号公報(以
下、「文献5」ともいう)には、転炉や電気炉などの金
属精錬炉における溶湯内に供給し、溶融金属中の硫黄分
や燐酸分などと反応させて金属スラグ生成の促進を図る
ために使用される石灰系フラックスの製造法において、
炭酸カルシウムを1mm径以下の大きさに粉砕する工程
と、微細な水酸化カルシウムに、粉砕された炭酸カルシ
ウムを5重量%ないし40重量%混合して、5mmない
し20mm程度に造粒する工程と、その造粒物を700
℃ないし1,000℃で假焼する工程と、を含み、圧縮
強度の高い造粒生石灰を生成することを特徴とする金属
精錬用の塊状石灰系フラックスの製造方法が掲載されて
おり、さらに、炭酸カルシウムとして、製糖工業におけ
る炭酸石灰清浄法によって処理された後のライムケーキ
が使用されることを特徴とする金属精錬用の塊状石灰系
フラックスの製造方法が掲載されている。
【0008】ライムケーキの利用として、第5に、コン
クリート代替材として用いることも考えられている。ラ
イムケーキをコンクリート代替材として用いるものとし
て、特開2000−335948号公報(以下、「文献
6」ともいう)には、ライムケーキ45〜10体積%、
火山レキ55〜90体積%の混合物1m3に対してセメ
ントを300Kg/m3加え、所要の水分率に調製し、
撹拌、 転圧し、外気養生したコンクリート代替材が掲
載されている。
【0009】このように、従来、第1〜第5のライムケ
ーキの利用が考えられているが、これらは全てライムケ
ーキのバルク(炭酸カルシウム)の特性のみに着目して
おり、ライムケーキの形状、表面性質に着目した利用は
全く無かった。
【0010】ところで、近年、調湿機能を有する建材が
開発されてきている。このような調湿機能を有する建材
が、寺村の論文「炭酸硬化技術を利用して製造した調湿
建材」セラミックス 36(2001)No.12 9
49頁〜951頁(以下、「文献7」ともいう)、福水
の論文「エネルギーを使わずに湿度を調節する−調湿建
材−」セラミックス 37(2002)No.1 6頁
〜9頁(以下、「文献8」ともいう)、大橋等の論文
「Ti含有メソポーラスシリカの水蒸気吸着特性」Jo
urnal of the Ceramic Soci
ety of Japan 107
〔9〕844−84
9(1999)(以下、「文献9」ともいう)に掲載さ
れている。
【0011】しかしながら、文献7に掲載された建材
は、ケイ酸カルシウムを炭酸化することにより硬化させ
たものであり、ライムケーキを有効利用するものではな
い。また、文献8に掲載された建材は、鹿沼土、陶磁器
用として一般に使用される粘土、及び、廃ガラスを主要
原料として、約900℃で焼成したものであり、ライム
ケーキを有効利用するものではない。また、文献9に掲
載された建材は、メソポーラスシリカに、異種金属とし
てTi(チタン)を導入したものであり、ライムケーキ
を有効利用するものではない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】そこで、上記の点に鑑
み、本発明は、ライムケーキの形状、表面性質に着目
し、ライムケーキを有効利用するとともに、調湿機能を
有する建築物の内装材を提供することを目的とする。ま
た、本発明は、そのような建築物の内装材の製造方法を
提供することを更なる目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するた
め、本発明の第1の観点に係る建築物の内装材は、ライ
ムケーキを含有し、調湿機能を有することを特徴とす
る。
【0014】ここで、0.87重量%〜1.3重量%の
調湿機能を有することとしても良いし、ライムケーキを
造粒したものであっても良いし、ライムケーキを固化体
にしたものであっても良い。また、ライムケーキを石膏
ボードに添加したものであっても良いし、ライムケーキ
を発泡コンクリートに添加したものであっても良い。
【0015】また、上記の課題を解決するため、本発明
の第1の観点に係る建築物の内装材の製造方法は、ライ
ムケーキに貝殻粉末を混合することにより、第1の混合
物を得る工程(a)と、第1の混合物と助剤とを混合す
ることにより、第2の混合物を得る工程(b)と、第2
の混合物に水を加えることにより、第3の混合物を得る
工程(c)と、第3の混合物を加圧成形することによ
り、第1の成形体を得る工程(d)と、第1の成形体に
熱処理を施す工程(e)とを具備する。
【0016】ここで、工程(e)が、第1の成形体に、
常圧のCO2−H2O気流中において、100℃、20時
間の熱処理を施すこととしても良い。
【0017】また、本発明の第2の観点に係る建築物の
内装材の製造方法は、ライムケーキに貝殻粉末を混合す
ることにより、第1の混合物を得る工程(a)と、第1
の混合物と助剤とを混合することにより、第2の混合物
を得る工程(b)と、第2の混合物に水を加えることに
より、第3の混合物を得る工程(c)と、第3の混合物
を加圧成形することにより、第1の成形体を得る工程
(d)と、第1の成形体に炭酸ガス処理を施すことによ
り、第2の成形体を得る工程(e)と、第2の成形体に
乾燥処理を施す工程(f)とを具備する。
【0018】ここで、工程(e)が、第1の成形体に、
常温、20kg/cm2の圧力下で炭酸ガス処理を施す
こととしても良い。また、工程(f)が、第2の成形体
に、150℃で6時間の乾燥処理を施すこととしても良
い。
【0019】また、本発明の第1及び第2の観点に係る
建築物の内装材の製造方法において、工程(a)が、ラ
イムケーキに、ライムケーキと等重量の貝殻粉末を混合
することとしても良いし、工程(b)が、第1の混合物
と第1の混合物の20重量%の助剤とを混合することと
しても良い。さらに、助剤が、水酸化カルシウム(Ca
(OH)2)、SiCaO3、Al2(SO43、NH4
2PO4、CH3COOH、(NH42SO4、又は、Ca
3(PO42であることとしても良い。また、工程
(d)が、第3の混合物を、130kg/cm2の圧力
下で5分間加圧成形することとしても良い。
【0020】また、本発明の第2の観点に係る建築物の
内装材は、本発明の第1及び第2の観点に係る建築物の
内装材の製造方法によって製造されたものであることを
特徴とする。
【0021】ここで、0.87重量%〜1.3重量%の
調湿機能を有することとしても良い。
【0022】本発明によれば、ライムケーキを有効利用
するとともに、調湿機能を有する建築物の内装材を提供
することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について
説明する。図1は、レーザ回折法により測定した、ライ
ムケーキの粒子径分布を示す図である。また、図2
(a)及び(b)は、走査型電子顕微鏡を用いて撮影し
たライムケーキの写真である。
【0024】図1に示すように、レーザ回折法により測
定したライムケーキの粒子径の平均は、10μm程度で
ある。しかしながら、図2(a)及び(b)に示すよう
に、電子顕微鏡による観察から、ライムケーキの一次粒
子径は10μmより小さく、ライムケーキはサブミクロ
ンオーダーの超微粒子の集合体であることが判明した。
このことは、ライムケーキの一次粒子間の空隙が細孔を
形成しており、ライムケーキ固化体が多孔体であること
を示唆している。
【0025】次に、本発明の第1の実施例について説明
する。本実施例は、ライムケーキを回転円盤型造粒装置
によって造粒し、粒状にしたものである。図3は、本実
施例の細孔分布を示す図である。図3に示すように、本
実施例の細孔半径は、20×10-10m(20オングス
トローム)〜25×10-10m(25オングストロー
ム)程度である。従って、本実施例の細孔直径は、40
×10-10m(40オングストローム)〜50×10-10
m(50オングストローム)程度である。
【0026】水蒸気を吸脱着する細孔半径と相対湿度の
関係は、Kelvinの式 r=−(2Vγcosθ)/RTln(P/P0) …(1) で表される。ここで、Vは液体のモル体積、γは表面張
力、θは液体の毛細管壁との接触角、rは細孔半径、R
は気体定数、Tは絶対温度である。一般に、快適な住環
境を維持するための相対湿度範囲は、50〜70%程度
とされている。このような相対湿度範囲で水蒸気を吸脱
着する細孔直径は、(1)式を用いて算出すると、約3
0×10-10m(30オングストローム)程度となる。
このことは、本実施例が調湿機能を有することを示して
いる。
【0027】図4は、室温における、本実施例の水蒸気
吸着等温線を示す図である。図4に示すように、本実施
例の水蒸気吸着量は、相対湿度40%付近から大きく立
ち上がる。図12は、一般的珪藻土(秋田珪藻土、石川
珪藻土、岡山珪藻土、及び、大分珪藻土)、及び稚内層
珪藻頁岩の水蒸気吸着等温線を示す図である。図4と図
12を比較すると、本実施例の水蒸気吸着量は、一般的
珪藻土及び稚内層珪藻頁岩の水蒸気吸着量に遜色ないこ
とがわかる。
【0028】図5は、相対湿度を11%又は85%に2
4時間毎に変化させた場合における、本実施例の水蒸気
吸脱着特性を示す図である。図5に示すように、本実施
例が吸脱着する水蒸気量は、試料重量の1.3重量%で
あった。この結果から、本実施例で長手方向の長さ18
0cm、短手方向の長さ90cm、厚さ8mmの建材ボ
ード(以下、「第1の建材ボード」という)を作製した
場合に、第1の建材ボードが吸脱着する水蒸気量は、本
実施例の密度が1.66g/cm2であることから、 180(cm)×90(cm)×0.8(cm) ×1.66(g/cm2)×0.01(重量比)=215(g) …(2) となる。従って、第1の建材ボードは、およそ牛乳瓶1
本分の調湿能力を有することとなる。
【0029】次に、本発明の第2の実施例について説明
する。本実施例は、ライムケーキに以下の工程を施すこ
とにより、固化体にしたものである。なお、ライムケー
キに以下の工程を施す理由は、主に強度を高くするため
である。まず、ライムケーキに、ライムケーキと等重量
の貝殻粉末(200mesh以下)を混合する。以下、
これにより得られた混合物を「第1の混合物」という。
【0030】次に、第1の混合物1.68gと、第1の
混合物の20重量%の助剤(ここでは、水酸化カルシウ
ム)を、めのう乳鉢でよく混合する。以下、これにより
得られた混合物を「第2の混合物」という。次に、第2
の混合物に少量の蒸留水を加え、直径10mm、高さ1
0mmの円柱状の錠剤を成形するための錠剤成形器を用
いて、130kg/cm2の圧力下で5分間加圧成形す
る。以下、これにより得られた成形体を「第1の成形
体」という。
【0031】そして、第1の成形体に、管状炉を用い
て、常圧のCO2−H2O気流中(50ml(Gas)/
min、0.077ml(Liq.)/min)におい
て、100℃、20時間の熱処理を施す。以上の工程に
よって作製された本実施例の圧縮破壊強度は、178
4.8103N/cm2(182kgf/cm2)であっ
た。
【0032】図6は、本実施例の細孔分布を示す図であ
る。図6に示すように、本実施例の細孔半径は、20×
10-10m(20オングストローム)〜25×10-10
(25オングストローム)程度である。従って、本実施
例の細孔直径は、40×10 -10m(40オングストロ
ーム)〜50×10-10m(50オングストローム)程
度である。このことは、本実施例が調湿機能を有するこ
とを示している。
【0033】本実施例においては、助剤として水酸化カ
ルシウム(Ca(OH)2)を用いることとしている
が、SiCaO3、Al2(SO43、NH42PO4
CH3COOH、(NH42SO4、又は、Ca3(P
42を用いることとしても良い。助剤として水酸化カ
ルシウム(Ca(OH)2)を用いた場合に、最も強度
が高くなった。これは、Ca(OH)2がCO2と反応し
て炭酸化され生成されたCaCO3が、主成分の貝殻や
ライムケーキの一部と結合して、硬化したものと考えら
れる。
【0034】また、助剤として水酸化カルシウム(Ca
(OH)2)を多く添加するほど強度が増大することも
わかった。また、貝殻の粒径が200mesh未満の貝
殻粉末を添加する方が、少量の助剤で高い強度となっ
た。
【0035】また、貝殻とライムケーキの混合比を、
1:0、2:1、1:1、1:2、0:1に変化させた
場合の強度を調べた結果、1:1の場合に高い強度を示
した。
【0036】また、焼成温度は、100℃まで下げても
強度には影響はないが、400℃以上では強度の低下が
見られた。これは、ライムケーキに含まれる少量の有機
物が炭化したためと考えられ、400℃以上では黒色を
呈した。
【0037】次に、本発明の第3の実施例について説明
する。本実施例は、ライムケーキに以下の工程を施すこ
とにより、固化体にしたものである。なお、ライムケー
キに以下の工程を施す理由は、主に強度を高くするため
である。まず、ライムケーキに、ライムケーキと等重量
の貝殻粉末(200mesh以下)を混合する。以下、
これにより得られた混合物を「第3の混合物」という。
【0038】次に、第3の混合物1.68gと、第3の
混合物の20重量%の助剤(ここでは、水酸化カルシウ
ム)を、めのう乳鉢でよく混合する。以下、これにより
得られた混合物を「第4の混合物」という。次に、第4
の混合物に少量の蒸留水を加え、直径10mm、高さ1
0mmの円柱状の錠剤を成形するための錠剤成形器を用
いて、130kg/cm2の圧力下で5分間加圧成形す
る。以下、これにより得られた成形体を「第2の成形
体」という。
【0039】そして、第2の成形体に、オートクレーブ
中で、常温、20kg/cm2の圧力下で炭酸ガス処理
を施す。以下、これにより得られた成形体を「第3の成
形体」という。その後、第3の成形体を、150℃で6
時間乾燥する。
【0040】以上の工程によって作製された本実施例の
圧縮破壊強度は、1176.798N/cm2(110
kgf/cm2)であった。
【0041】図7は、本実施例の細孔分布を示す図であ
る。図7に示すように、本実施例の細孔半径は、20×
10-10m(20オングストローム)〜25×10-10
(25オングストローム)程度である。従って、本実施
例の細孔直径は、40×10 -10m(40オングストロ
ーム)〜50×10-10m(50オングストローム)程
度である。このことは、本実施例が調湿機能を有するこ
とを示している。
【0042】図8は、室温における、本実施例の水蒸気
吸着等温線を示す図である。図8と図12を比較する
と、本実施例の水蒸気吸着量は、一般的珪藻土及び稚内
層珪藻頁岩の水蒸気吸着量に遜色ないことがわかる。
【0043】図9は、相対湿度を11%又は85%に2
4時間毎に変化させた場合における、本実施例の水蒸気
吸脱着特性を示す図である。図9に示すように、本実施
例が吸脱着する水蒸気量は、試料重量の0.87重量%
であった。この結果から、本実施例で長手方向の長さ1
80cm、短手方向の長さ90cm、厚さ8mmの建材
ボード(以下、「第2の建材ボード」という)を作製し
た場合に、第2の建材ボードが吸脱着する水蒸気量は、
本実施例の密度が1.66g/cm2であることから、 となる。従って、第2の建材ボードは、およそ牛乳瓶1
本分の調湿能力を有することとなる。
【0044】次に、本実施例で、1m角、厚さ8mmの
建材ボード(以下、「第3の建材ボード」という)を作
製したと仮定する。図10は、第3の建材ボード及び一
般的な調湿建材の水蒸気吸放出量を示す図である。
【0045】第3の建材ボードの単位重量あたりの水蒸
気吸着量(例えば、相対湿度50%の場合には、約1
%)は、鹿沼土又はゼオライト系調湿材と比較して1/
10程度である。しかしながら、第3の建材ボードの単
位体積あたりの水蒸気吸着量は、珪藻土系調湿材又はゼ
オライト系調湿材と同等、又は場合によっては高い調湿
能力を有する調湿材料になり得る。
【0046】本実施例においては、助剤として水酸化カ
ルシウム(Ca(OH)2)を用いることとしている
が、SiCaO3、Al2(SO43、NH42PO4
CH3COOH、(NH42SO4、又は、Ca3(P
42を用いることとしても良い。
【0047】また、助剤として水酸化カルシウム(Ca
(OH)2)を多く添加するほど強度が増大することも
わかった。また、貝殻の粒径が200mesh未満の貝
殻粉末を添加する方が、少量の助剤で高い強度となっ
た。
【0048】また、貝殻とライムケーキの混合比を、
1:0、2:1、1:1、1:2、0:1に変化させた
場合の強度を調べた結果、1:1の場合に高い強度を示
した。
【0049】また、焼成温度は、100℃まで下げても
強度には影響はないが、400℃以上では強度の低下が
見られた。これは、ライムケーキに含まれる少量の有機
物が炭化したためと考えられ、400℃以上では黒色を
呈した。
【0050】次に、第1〜第3の実施例を比較する。図
11は、第1〜第3の実施例の細孔分布を示す図であ
る。なお、図11は、図3、図6、及び、図7を重ね合
わせたものと同等のものである。図11に示すように、
全細孔容積は、第3の実施例が最も大きく、次いで第2
の実施例が大きく、第1の実施例が最も小さい。しかし
ながら、調湿機能に影響を及ぼすメソ孔(30×10
-10m(30オングストローム)〜100×10-10
(100オングストローム))の細孔容積は、第1の実
施例が最も大きく(2.4×10-2cm3/g)、次い
で第2の実施例が大きく(1.2×10-2cm3
g)、第3の実施例が最も小さい(0.8×10- 2cm
3/g)。このことから、ライムケーキに助剤(ここで
は、水酸化カルシウム)を加えたり、高圧の炭酸ガス雰
囲気中でライムケーキ表面の溶解を促進させると、メソ
孔が減少することがわかる。また、比表面積は、第1の
実施例が最も大きく(32m2/g)、助剤を加えて硬
化させた第2及び第3の実施例は半分以下に減少(13
2/gと、12m2/g)することもわかった。
【0051】なお、第1の実施例においてはライムケー
キを造粒し、第2及び第3の実施例においてはライムケ
ーキを硬化させているが、ライムケーキを添加材料とし
て用いることとしても良い。例えば、ライムケーキの造
粒固化体を、石膏ボード、発泡コンクリートに添加する
こととしても良い。
【0052】また、ライムケーキに少量(数%程度)含
まれる有機物は、悪臭の原因ともなっている。しかしな
がら、水蒸気雰囲気下150℃〜300℃で加熱処理し
たライムケーキは、悪臭を有さず、また、通常環境下で
1年以上放置してもカビが発生することなく非常に安定
している。さらに、ライムケーキに1%程度の塩基性硫
酸銅を添加すれば、より衛生的にすることができる。な
お、塩基性硫酸銅は、廃棄物から大量に回収されている
ものである。
【0053】
【発明の効果】以上述べた様に、本発明によれば、ライ
ムケーキを有効利用するとともに、調湿機能を有する建
築物の内装材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ライムケーキの粒子径分布を示す図である。
【図2】走査型電子顕微鏡によって撮影したライムケー
キの写真である。
【図3】本発明の第1の実施例の細孔分布を示す図であ
る。
【図4】本発明の第1の実施例の水蒸気吸着等温線を示
す図である。
【図5】相対湿度を11%又は85%に24時間毎に変
化させた場合における、本発明の第1の実施例の水蒸気
吸脱着特性を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施例の細孔分布を示す図であ
る。
【図7】本発明の第3の実施例の細孔分布を示す図であ
る。
【図8】本発明の第3の実施例の水蒸気吸着等温線を示
す図である。
【図9】相対湿度を11%又は85%に24時間毎に変
化させた場合における、本発明の第3の実施例の水蒸気
吸脱着特性を示す図である。
【図10】本発明の第3の実施例を用いた建材ボードの
中湿域における吸放湿量を示す図である。
【図11】本発明の第1〜第3の実施例の細孔分布を示
す図である。
【図12】25℃における、一般的珪藻土及び稚内層珪
藻頁岩の水蒸気吸着等温線を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 外山 寛之 北海道札幌市南区南沢5条3丁目9番19号 Fターム(参考) 2E110 AA14 AA16 AB04 AB23 BA12 EA09 GA43W GB62W GB65W 4D052 AA00 CA02 HA00 HA07 HA09 HA18 HB02

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ライムケーキを含有し、調湿機能を有す
    ることを特徴とする、建築物の内装材。
  2. 【請求項2】 0.87重量%〜1.3重量%の調湿機
    能を有することを特徴とする請求項1記載の建築物の内
    装材。
  3. 【請求項3】 ライムケーキを造粒したものであること
    を特徴とする請求項1又は2記載の建築物の内装材。
  4. 【請求項4】 ライムケーキを固化体にしたものである
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の建築物の内装
    材。
  5. 【請求項5】 ライムケーキを石膏ボードに添加したも
    のであることを特徴とする請求項1又は2記載の建築物
    の内装材。
  6. 【請求項6】 ライムケーキを発泡コンクリートに添加
    したものであることを特徴とする請求項1又は2記載の
    建築物の内装材。
  7. 【請求項7】 ライムケーキに貝殻粉末を混合すること
    により、第1の混合物を得る工程(a)と、 前記第1の混合物と助剤とを混合することにより、第2
    の混合物を得る工程(b)と、 前記第2の混合物に水を加えることにより、第3の混合
    物を得る工程(c)と、 前記第3の混合物を加圧成形することにより、第1の成
    形体を得る工程(d)と、 前記第1の成形体に熱処理を施す工程(e)と、を具備
    する建築物の内装材の製造方法。
  8. 【請求項8】 工程(e)が、前記第1の成形体に、常
    圧のCO2−H2O気流中において、100℃、20時間
    の熱処理を施すことを特徴とする請求項7記載の建築物
    の内装材の製造方法。
  9. 【請求項9】 ライムケーキに貝殻粉末を混合すること
    により、第1の混合物を得る工程(a)と、 前記第1の混合物と助剤とを混合することにより、第2
    の混合物を得る工程(b)と、 前記第2の混合物に水を加えることにより、第3の混合
    物を得る工程(c)と、 前記第3の混合物を加圧成形することにより、第1の成
    形体を得る工程(d)と、 前記第1の成形体に炭酸ガス処理を施すことにより、第
    2の成形体を得る工程(e)と、 前記第2の成形体に乾燥処理を施す工程(f)と、を具
    備する建築物の内装材の製造方法。
  10. 【請求項10】 工程(e)が、前記第1の成形体に、
    常温、20kg/cm2の圧力下で炭酸ガス処理を施す
    ことを特徴とする請求項9記載の建築物の内装材の製造
    方法。
  11. 【請求項11】 工程(f)が、前記第2の成形体に、
    150℃で6時間の乾燥処理を施すことを特徴とする請
    求項9又は10記載の建築物の内装材の製造方法。
  12. 【請求項12】 工程(a)が、ライムケーキに、ライ
    ムケーキと等重量の貝殻粉末を混合することを特徴とす
    る請求項7〜11のいずれか1項に記載の建築物の内装
    材の製造方法。
  13. 【請求項13】 工程(b)が、前記第1の混合物と前
    記第1の混合物の20重量%の助剤とを混合することを
    特徴とする請求項7〜12のいずれか1項に記載の建築
    物の内装材の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記助剤が、水酸化カルシウム(Ca
    (OH)2)、SiCaO3、Al2(SO43、NH4
    2PO4、CH3COOH、(NH42SO4、又は、Ca
    3(PO42であることを特徴とする請求項7〜13の
    いずれか1項に記載の建築物の内装材の製造方法。
  15. 【請求項15】 工程(d)が、前記第3の混合物を、
    130kg/cm2の圧力下で5分間加圧成形すること
    を特徴とする請求項7〜14のいずれか1項に記載の建
    築物の内装材の製造方法。
  16. 【請求項16】 請求項7〜15のいずれか1項に記載
    の建築物の内装材の製造方法によって製造され、調湿機
    能を有することを特徴とする建築物の内装材。
  17. 【請求項17】 0.87重量%〜1.3重量%の調湿
    機能を有することを特徴とする請求項16記載の建築物
    の内装材。
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