JP2003304778A - トランスジェニック非ヒト哺乳動物 - Google Patents

トランスジェニック非ヒト哺乳動物

Info

Publication number
JP2003304778A
JP2003304778A JP2002111852A JP2002111852A JP2003304778A JP 2003304778 A JP2003304778 A JP 2003304778A JP 2002111852 A JP2002111852 A JP 2002111852A JP 2002111852 A JP2002111852 A JP 2002111852A JP 2003304778 A JP2003304778 A JP 2003304778A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
human mammal
transgenic non
adenylate cyclase
gene
pituitary adenylate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002111852A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2003304778A5 (ja
Inventor
Akemichi Baba
明道 馬場
Hitoshi Hashimoto
均 橋本
Norito Shintani
紀人 新谷
Shuhei Tomimoto
修平 富本
Toshio Matsuda
敏夫 松田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Taisho Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Taisho Pharmaceutical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Taisho Pharmaceutical Co Ltd filed Critical Taisho Pharmaceutical Co Ltd
Priority to JP2002111852A priority Critical patent/JP2003304778A/ja
Publication of JP2003304778A publication Critical patent/JP2003304778A/ja
Publication of JP2003304778A5 publication Critical patent/JP2003304778A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 in vivoにおけるPACAPの膵島への作用
を解明するのに有用なモデル動物を提供すること。 【解決手段】 下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポ
リペプチド遺伝子の導入により該ポリペプチドを発現
し、かつ遺伝子操作により糖尿病を発症することを特徴
とするトランスジェニック非ヒト哺乳動物またはその一
部。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トランスジェニッ
ク非ヒト哺乳動物に関する。より詳細には、本発明は、
下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド遺伝
子の導入により該ポリペプチドを発現することを特徴と
する糖尿病発症モデルのトランスジェニック非ヒト哺乳
動物に関する。本発明はまた、下垂体アデニレートシク
ラーゼ活性化ポリペプチド又はそれをコードする遺伝子
の利用にも関する。
【0002】
【従来の技術】下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポ
リペプチド(Pituitary adenylate cyclace-activating
polypeptide;PACAP)は、セクレチン/グルカゴ
ン/vasoactive intestinal polypeptide(VIP)フ
ァミリーに属する神経ペプチドで、その生理作用は下垂
体・副腎髄質ホルモンの合成・分泌調節や神経細胞・性
細胞の分化・成長促進作用など多彩な役割を担うことが
知られている(橋本 均、馬場 明道:ニューロペプチ
ドPACAP受容体の構造と機能 別冊・医学のあゆ
み、2001、7回膜貫通型受容体研究の新展開 79
−84 橋本 均、馬場 明道)。
【0003】膵臓においてはPACAP免疫陽性神経が
膵島に投射すること、PACAP受容体サブタイプのう
ちPACAPに親和性の高いPAC1受容体と、PAC
APとVIPの両者に同程度の親和性を示すVPAC2
受容体の発現が膵臓β細胞にみられること、並びに、単
離膵島からのグルコース誘導性インスリン分泌を10
-14Mという極めて低濃度で促進することが知られてい
る。また、PACAPは様々な細胞で、細胞保護作用、
あるいは分化や増殖の促進作用を持つことから、膵臓β
細胞においてもこのような作用が見られることが予測さ
れる。
【0004】しかしながら、上記のように、PACAP
は生体内で様々な作用を持つため、PACAP投与によ
る糖代謝について調べた実験ではその結果の解釈は複雑
となっている(Filipsson K, Pacini G, Scheurink AJ,
Ahren B.: PACAP stimulates insulin secretion but
inhibits insulin sensitivity in mice. Am J Physiol
1998 May 274(5 Pt 1):E834-42)。
【0005】また、PACAPシグナル系には未だに選
択的な低分子アゴニストが存在しないことなどから、in
vivoにおけるPACAPの膵島への作用は明らかにな
っていない点が多い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、in vivoに
おけるPACAPの膵島への作用を解明するのに有用な
モデル動物を提供することを解決すべき課題とした。本
発明はさらに、in vivoにおけるPACAPの膵島への
作用を解明することにより、PACAPを医薬品として
活用することを解決すべき課題とした。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に先立って、本発
明者らは、PACAPが膵臓においてどのような作用を
示すかをin vivoで調べることを目的として、ヒトイン
スリンプロモーター制御下で膵臓特異的にPACAPを
過剰発現させるトランスジェニックマウス(Tg/+)
を作製し、このマウスが同腹の野生型(+/+)マウス
より高いインスリン分泌能を示すことを見出していた。
【0008】この知見を基にして、本発明者らはさら
に、PACAPが糖尿病モデル動物の膵臓においてどの
ような作用を示すかをin vivoで調べることを目的とし
て、優性遺伝形式で肥満及び糖尿病を発症するagouti y
ellow マウス(Ay/+)とTg/+マウスとの掛け合
わせによって得られる、4種類の遺伝型のマウス(+/
+、Tg/+、Ay/+、Tg/+:Ay/+)を解析
することにより、糖尿病病態において、PACAPが糖
代謝にどのような作用を及ぼすかについて検討を行っ
た。さらに、本発明者らは、組織学的解析から、PAC
APが糖尿病病態において膵島の形態にどのような影響
を与えるかについても検討を加えた。
【0009】上記検討の結果、本発明者らは、Tg/
+:Ay/+マウスではAy/+マウスに比べ、膵臓重
量が大きくなっており、膵島重量が小さくなっているこ
とを今回初めて見出した。本発明はこれらの知見に基づ
いて完成したものである。
【0010】即ち、本発明によれば、下垂体アデニレー
トシクラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子の導入により該
ポリペプチドを発現し、かつ遺伝子操作により糖尿病を
発症することを特徴とするトランスジェニック非ヒト哺
乳動物またはその一部が提供される。
【0011】本発明の好ましい態様によれば、下垂体ア
デニレートシクラーゼ活性化ポリペプチドを膵臓で過剰
発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物またはその
一部;下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチ
ド遺伝子の導入により該ポリペプチドを発現するトラン
スジェニック非ヒト哺乳動物と、遺伝子操作により糖尿
病を発症することを特徴とするトランスジェニック非ヒ
ト哺乳動物とを交配することによって作製されるトラン
スジェニック非ヒト哺乳動物またはその一部; (1)遺伝子操作により糖尿病を発症することを特徴と
するトランスジェニック非ヒト哺乳動物よりも低い血漿
インスリン値を示し、(2)遺伝子操作により糖尿病を
発症することを特徴とするトランスジェニック非ヒト哺
乳動物よりも大きい膵臓臓器重量を示し;及び/又は
(3)遺伝子操作により糖尿病を発症することを特徴と
するトランスジェニック非ヒト哺乳動物よりも、膵臓ラ
ンゲルハンス島(膵島)の過形成が抑制されていること
を特徴とするトランスジェニック非ヒト哺乳動物または
その一部;並びに非ヒト哺乳動物がマウスであるトラン
スジェニック非ヒト哺乳動物またはその一部:が提供さ
れる。
【0012】本発明の別の側面によれば、上記何れかの
非ヒト哺乳動物またはその一部を用いることを特徴とす
る、糖尿病の治療剤及び/又は予防剤のスクリーニング
方法、当該スクリーニング方法により得られる物質、並
びに、当該スクリーニング方法により得られる物質を有
効成分として含有する、糖尿病の治療剤及び/又は予防
剤が提供される。本発明のさらに別の側面によれば、下
垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド又はそ
れをコードする遺伝子を有効成分として含む、膵臓組織
の再生促進あるいは膵島の形成制御のための薬剤が提供
される。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て詳細に説明する。(1)本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物の特
本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、下垂体
アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子の導
入により該ポリペプチドを発現し、かつ遺伝子操作によ
り糖尿病を発症することを特徴とし、好ましくは、遺伝
子導入により、下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポ
リペプチドを膵臓で過剰発現する。
【0014】特に好ましい態様によれば、本発明のトラ
ンスジェニック非ヒト哺乳動物は、遺伝子操作により糖
尿病を発症することを特徴とするトランスジェニック非
ヒト哺乳動物よりも、膵島の過形成が抑制されているこ
とを含めた膵臓の構造異常を特徴とする。本明細書で言
う「膵島の過形成が抑制されていることを含めた膵臓の
構造異常」とは、より具体的には、以下の(1)〜
(3)の何れか1以上、好ましくは以下の(1)〜
(3)の全ての特徴を示す状態を意味する。 (1)遺伝子操作により糖尿病を発症することを特徴と
するトランスジェニック非ヒト哺乳動物よりも低い血漿
インスリン値を示す; (2)遺伝子操作により糖尿病を発症することを特徴と
するトランスジェニック非ヒト哺乳動物よりも、膵臓の
臓器重量が大きい;及び/又は (3)遺伝子操作により糖尿病を発症することを特徴と
するトランスジェニック非ヒト哺乳動物よりも、膵臓ラ
ンゲルハンス島(膵島)の過形成が抑制されている(即
ち、本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物から摘
出した膵臓より、薄切切片を作製し検鏡した場合に観察
される単位膵臓面積における膵島の数が減少してい
る):
【0015】本明細書で言う「下垂体アデニレートシク
ラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子」とは、下垂体アデニ
レートシクラーゼ活性化ポリペプチドをコードする遺伝
子であり、哺乳動物の下垂体アデニレートシクラーゼ活
性化ポリペプチド遺伝子、並びに、これらの遺伝子と同
じ機能を有する変異体遺伝子の全てを包含する。
【0016】下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリ
ペプチド(PACAP)は下垂体のアデニレート・サイ
クレース活性を促進させるペプチドとして、ヒツジ視床
下部より初めて単離された(Biochem.Biophys.Res.C
ommun.164, 567-574 (1989); Arimura,A.et.al.,Re
gul.Peptides 37, 287-303(1992))。当初単離された
PACAPはアミノ酸残基38個(配列番号1)からな
るものであったが、アミノ末端側27残基(配列番号
2)からなるPACAPが存在することも明らかになっ
た。
【0017】 (配列番号1) His Ser Asp Gly Ile Phe Thr Asp Ser Tyr Ser Arg Tyr Arg Lys Gln 1 5 10 15 Met Ala Val Lys Lys Tyr Leu Ala Ala Val Leu Gly Lys Arg Tyr Lys 20 25 30 Gln Arg Val Lys Asn Lys-NH2 35
【0018】 (配列番号2) His Ser Asp Gly Ile Phe Thr Asp Ser Tyr Ser Arg Tyr Arg Lys Gln 1 5 10 15 Met Ala Val Lys Lys Tyr Leu Ala Ala Val Leu-NH2 20 25
【0019】両者のアデニレート・シクラーゼ活性化能
はほぼ同等で、前者(配列番号1)をPACAP38、
後者(配列番号2)をPACAP27と呼んでいる。さ
らにヒトにおいてもヒツジと全く同一の構造を有するP
ACAPが発現されていることが明らかにされ、種を越
えて保存された重要なペプチドであることが示唆されて
いる。
【0020】本発明では、下垂体アデニレートシクラー
ゼ活性化ポリペプチド遺伝子の変異体遺伝子を使用する
こともできる。変異体遺伝子とは、下垂体アデニレート
シクラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子のDNA配列に変
異(例えば、突然変異など)が生じたものを意味し、具
体的には、該遺伝子中の塩基配列の一部が欠損した遺伝
子、該遺伝子の塩基配列の一部が他の塩基配列で置換さ
れた遺伝子、該遺伝子の一部に他の塩基配列が挿入され
た遺伝子などを用いることができる。欠損、置換または
付加される塩基の数は、特に限定されないが、一般的に
は1から50個程度、好ましくは1から15個程度、よ
り好ましくは1から6個程度である。このような塩基配
列の欠損、置換または付加によって、下垂体アデニレー
トシクラーゼ活性化ポリペプチドのアミノ酸配列におい
て、好ましくは1ないし5個程度、より好ましくは1ま
たは2個程度のアミノ酸の欠損、置換または付加が生ず
ることになる。なお、これらの変異体遺伝子としては、
天然型の下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプ
チドと同等の機能を有するポリペプチドをコードしてい
るものを使用することが好ましい。
【0021】本明細書で言う「下垂体アデニレートシク
ラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子」とは、天然型の下垂
体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子の
みならず、上記したような変異体遺伝子の全てを包含す
る最も広い意味を有する。
【0022】本発明で用いる下垂体アデニレートシクラ
ーゼ活性化ポリペプチド遺伝子としては、マウス下垂体
アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子と相
同性を有する、ラット、ウサギ等の哺乳動物由来の遺伝
子であれば任意のものを使用することができる。下垂体
アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子は公
知である(Yamamoto K, Hashimoto H, Hagihara N, Nis
hino A, Fujita T, Matsuda T, Baba A. Cloning and c
haracterization of the mouse pituitary adenylate c
yclase-activating polypeptide (PACAP) gene. Gene.
1998, 211(1):63-9)。また、配列表の配列番号1及び2
に記載したアミノ酸配列の情報に基づいて好適なプロー
ブ又はプライマーを設計し、好適なcDNAライブラリ
ーをスクリーニングすることにより、常法により単離す
ることもできる。
【0023】(2)本発明のトランスジェニック非ヒト
哺乳動物の作製 本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物の作製方法
は特に限定されないが、例えば、下垂体アデニレートシ
クラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子の導入により該ポリ
ペプチドを発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物
と、遺伝子操作により糖尿病を発症することを特徴とす
るトランスジェニック非ヒト哺乳動物とを交配すること
により作製することができる。
【0024】(A)下垂体アデニレートシクラーゼ活性
化ポリペプチド遺伝子を導入したトランスジェニック非
ヒト哺乳動物 先ず、下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチ
ド遺伝子の導入により該ポリペプチドを発現するトラン
スジェニック非ヒト哺乳動物の作製方法について説明す
る。
【0025】トランスジェニック非ヒト哺乳動物の作製
のために用いる導入遺伝子としては、上記した下垂体ア
デニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子を適当
な哺乳動物用プロモーターの下流に連結した組換え遺伝
子を使用することが好ましい。当該下垂体アデニレート
シクラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子の下流には、所望
により、ポリAシグナルを連結することができる。
【0026】導入遺伝子の構築に用いる哺乳動物用プロ
モーター及びポリAシグナルの種類は特に制限されない
が、例えば、ウイルス(例、サイトメガロウィルス、モ
ロニー白血病ウィルス、JCウィルス、乳癌ウィルスな
ど)由来遺伝子プロモーター、各種哺乳動物(例、ヒ
ト、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラ
ット、マウスなど)および鳥類(例、ニワトリなど)由
来のプロモーターなどが用いられる。
【0027】各哺乳動物および鳥類由来のプロモーター
としては、例えば、インスリン、アルブミン、エンドセ
リン、オステオカルシン、筋クレアチンキナーゼ、コラ
ーゲンI型およびII型、サイクリックAMP依存タンパ
クキナーゼβサブユニット(The Journal of Biologica
l Chemistry, Vol.271, No.3, p.1638-1644, 1996)、
心房ナトリウム利尿性因子、ドーパミンβ−水酸化酵
素、ニューロフィラメント軽鎖(The Journal of Biolo
gical Chemistry, Vol.270, No.43, p.25739-25745, 19
95および同 Vol.272, No.40, pp25112-25120,1997)、
メタロチオネイン、メタロプロテナーゼ1組織インヒビ
ター、平滑筋αアクチン、ポリペプチド鎖延長因子1α
(EF−1α)、βアクチン、αおよびβミオシン重
鎖、ミオシン軽鎖1および2、ミエリン基礎タンパク、
血清アミロイドPコンポーネント、レニンなどのプロモ
ーターが用いられる。これらの中でも、本発明において
は、膵臓で高発現することが可能なインスリン(例え
ば、ヒトインスリン)プロモーターを使用することが特
に好適である。
【0028】さらに、本発明で用いる組換え遺伝子に
は、下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド
遺伝子の発現に必要なターミネーターを連結してもよ
い。該ターミネーターは、トランスジェニック動物にお
いて、目的とするメッセンジャーRNAの転写を終結す
る配列(いわゆるポリA)として使用され、ウィルス由
来、各種哺乳動物または鳥類由来の各遺伝子の配列が用
いることができる。具体的には、シミアンウィルスのS
V40ターミネターなどが用いられる。その他、下垂体
アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子をさ
らに高発現させる目的で、既知の遺伝子のスプライシン
グシグナル、エンハンサー領域を連結することができ
る。さらには、真核生物遺伝子のイントロンの一部をプ
ロモーター領域の5'上流に、プロモーター領域と翻訳
領域間あるいは翻訳領域の3'下流に連結することも可
能である。
【0029】上記導入遺伝子に組み込まれた下垂体アデ
ニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子が、受精
卵等の細胞内で発現すると、細胞内に下垂体アデニレー
トシクラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子が産生されるよ
うになる。
【0030】下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリ
ペプチド遺伝子の導入により該ポリペプチドを発現する
トランスジェニック非ヒト哺乳動物は、例えば、非ヒト
哺乳動物の受精卵に下垂体アデニレートシクラーゼ活性
化ポリペプチド遺伝子を導入し、当該受精卵を偽妊娠雌
性非ヒト哺乳動物に移植し、当該非ヒト哺乳動物から下
垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子
が導入された非ヒト哺乳動物を分娩させることにより作
製することができる。
【0031】非ヒト哺乳動物としては、例えば、マウ
ス、ハムスター、モルモット、ラット、ウサギ等のげっ
歯類の他、ニワトリ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ウ
シ、ブタ、サル等を使用することができるが、作製、育
成及び使用の簡便さなどの観点から見て、マウス、ハム
スター、モルモット、ラット、ウサギ等のげっ歯類が好
ましく、そのなかでもマウスが最も好ましい。
【0032】本発明で用いるトランスジェニック非ヒト
哺乳動物は、胚芽細胞と、生殖細胞あるいは体細胞と
が、非ヒト哺乳動物またはこの動物の先祖に胚発生の段
階(好ましくは、単細胞または受精卵細胞の段階でかつ
一般に8細胞期以前)において外来性の下垂体アデニレ
ートシクラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子を含む組み換
え遺伝子を導入することによって作出される。下垂体ア
デニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子を含む
組み換え遺伝子の構築は上記した通りである。
【0033】受精卵細胞段階における下垂体アデニレー
トシクラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子の導入は、対象
哺乳動物の胚芽細胞および体細胞のすべてに存在するよ
うに維持されるように行う。遺伝子導入後の作出動物の
胚芽細胞において、下垂体アデニレートシクラーゼ活性
化ポリペプチド遺伝子が存在することは、作出動物の後
代がすべてその胚芽細胞および体細胞のすべてに下垂体
アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子が存
在することを意味する。遺伝子を受け継いだこの種の動
物の子孫はその胚芽細胞および体細胞のすべてに下垂体
アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子を有
する。
【0034】本発明のトランスジェニック動物は、交配
により遺伝子を安定に保持することを確認して、当該遺
伝子保有動物として通常の飼育環境で継代飼育すること
ができる。導入遺伝子を相同染色体の両方に持つホモザ
イゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配すること
によりすべての子孫が該遺伝子を過剰に有するように繁
殖継代することができる。下垂体アデニレートシクラー
ゼ活性化ポリペプチド遺伝子の発現部位を同定するため
には下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド
遺伝子の発現を個体、臓器、組織、細胞の各レベルで観
察することができる。また、下垂体アデニレートシクラ
ーゼ活性化ポリペプチドの抗体を用いた酵素免疫検定法
によりその発現の程度を測定することも可能である。
【0035】以下、トランスジェニック非ヒト哺乳動物
がトランスジェニックマウスの場合を例に挙げて具体的
に説明する。下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリ
ペプチドをコードするcDNAをプロモーターの下流に
含有する導入遺伝子を構築し、該導入遺伝子をマウス受
精卵の雄性前核にマイクロインジェクションし、得られ
た卵細胞を培養した後、偽妊娠雌性マウスの輸卵管に移
植し、その後被移植動物を飼育し、産まれた仔マウスか
ら前記cDNAを有する仔マウスを選択することにより
トランスジェニックマウスを作製することができる。上
記マウスの受精卵としては、例えば、129/sv、C
57BL/6、BALB/c、C3H、SJL/Wt等
に由来するマウスの交配により得られるものなら任意の
ものを使用できる。
【0036】また、注入する導入遺伝子の数は受精卵1
個当たり100〜3000分子が適当である。そしてま
た、cDNAを有する仔マウスの選択は、マウスの尻尾
等よりDNAを抽出し、導入した下垂体アデニレートシ
クラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子をプローブとするド
ットハイブリダイゼーション法や、特異的プライマーを
用いたPCR法等により行うことができる。
【0037】(B)遺伝子操作により糖尿病を発症する
ことを特徴とするトランスジェニック非ヒト哺乳動物 次に、本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物の作
製に用いる、遺伝子操作により糖尿病を発症することを
特徴とするトランスジェニック非ヒト哺乳動物について
説明する。
【0038】インスリン作用の相対的あるいは絶対的な
不足によって引き起こされる糖質代謝異常を中心とする
種々の代謝異常である糖尿病は、大きくインスリン依存
性糖尿病(I型:IDDM)とインスリン非依存性糖尿
病(II型:NIDDM)との2つに分類される。インス
リン依存性糖尿病は自己免疫的な機序により膵島β細胞
の破壊が進行し、インスリン分泌低下をきたすことによ
り発症し、一方、インスリン非依存性糖尿病は遺伝的な
インスリン分泌低下と骨格筋でのインスリン抵抗性の素
因に、肥満によるインスリン抵抗性が加わり発症に至
り、このインスリン非依存性糖尿病は全糖尿病の95%
以上を占めている。
【0039】現在、遺伝子レベルで原因がわかっている
糖尿病としては、インスリン異常症、インスリン受容体
異常症、グルコキナーゼ遺伝子異常症(MODY2)、
ミトコンドリアDNA異常による糖尿病などがあり、ま
た、連鎖解析によりMODY1、MODY3、NIDD
M1、NIDDM2の遺伝子の染色体上の位置がマッピ
ングされている。一方、糖尿病モデル動物としては、K
Kマウスに肥満遺伝子Ay遺伝子を導入することにより
作製された糖尿病モデルマウス(KKAyマウス;日本
クレアから入手可能)、NOD(non-obese diabetic)
マウス、ヒトインスリン遺伝子プロモーターの下流に結
合した熱衝撃蛋白質70遺伝子を有する糖尿病発生遺伝
子をマウスに導入した糖尿病発生トランスジェニックマ
ウス、II型真性糖尿病のトランスジェニック動物モデル
等が提案されている。
【0040】本発明では、上記したような遺伝子操作に
より糖尿病を発症することを特徴とするトランスジェニ
ック非ヒト哺乳動物であれば任意のものを使用すること
ができる。これらの中でも、特に好ましいものは、KK
マウスに肥満遺伝子Ay遺伝子を導入することにより作
製された糖尿病モデルマウス(KKAyマウス;日本ク
レアから入手可能)である。また、遺伝子操作により糖
尿病を発症することを特徴とするトランスジェニック非
ヒト哺乳動物を本明細書で上記した方法に準ずる方法に
より新たに作製し、それを使用してもよい。
【0041】本発明では、下垂体アデニレートシクラー
ゼ活性化ポリペプチド遺伝子の導入により該ポリペプチ
ドを発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物と、遺
伝子操作により糖尿病を発症することを特徴とするトラ
ンスジェニック非ヒト哺乳動物とを交配することによっ
て、下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド
遺伝子の導入により該ポリペプチドを発現し、かつ遺伝
子操作により糖尿病を発症することを特徴とするトラン
スジェニック非ヒト哺乳動物を作製することができる。
【0042】本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動
物は、下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチ
ドを過剰発現すると同時に、糖尿病を発症することを特
徴とするものであり、糖尿病の治療薬又は予防薬のスク
リーニング試験に利用可能なモデルであり、また糖尿病
の発生機構の解明などの研究分野においても有用であ
る。
【0043】また、上記した本発明のトランスジェニッ
ク非ヒト哺乳動物の一部としては、非ヒト哺乳動物の細
胞、細胞内小器官、組織および臓器のほか、頭部、指、
手、足、腹部、尾などが挙げられ、これらも全て本発明
の範囲内に属する。
【0044】(3)糖尿病の治療剤及び/又は予防剤の
スクリーニング 本発明による糖尿病の治療及び/又は予防薬のスクリー
ニング方法は、下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポ
リペプチドを過剰発現すると同時に、糖尿病を発症する
ことを特徴とするトランスジェニック非ヒト哺乳動物を
用いて行うことができる。即ち、本発明の糖尿病発症性
のトランスジェニック非ヒト哺乳動物(例えば、トラン
スジェニックマウスなど)に、被検物質を投与し、該ト
ランスジェニック非ヒト哺乳動物から得られた尿の尿糖
値や、眼球の付け根又は尻尾などから採血した血液の血
糖値を測定したり、当該動物の生存率を検討することに
より、該被検物質の糖尿病治療効果や予防効果を評価す
ることができる。あるいはまた、本発明のトランスジェ
ニック非ヒト哺乳動物に被験物質を投与し、投与後にお
ける下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド
の発現状態や生体内における動態を分析することによ
り、該被検物質の糖尿病治療効果や予防効果を評価する
こともできる。
【0045】すなわち、本発明のトランスジェニック非
ヒト哺乳動物を利用することにより、糖尿病あるいはそ
れらの合併症の治療効果及び予防効果を評価することが
可能であり、本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動
物は、糖尿病の病態評価モデル動物として利用すること
ができる。例えば、本発明のトランスジェニック非ヒト
哺乳動物を用いて、これらの病態回復および重篤程度を
判定し、この疾患の治療方法の検討を行うことも可能で
ある。
【0046】さらにまた、本発明のトランスジェニック
非ヒト哺乳動物を用いることによって、下垂体アデニレ
ートシクラーゼ活性化ポリペプチドの過剰発現が、上記
疾病などの改善効果を発揮することができるかどうかを
検討することが可能であり、これら疾患のメカニズムを
解明することができる。
【0047】本発明のスクリーニング方法に供される被
験物質としては、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプ
チド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、
植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ、こ
れら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化
合物であってもよい。またペプチドライブラリーや化合
物ライブラリーなど、多数の分子を含むライブラリーを
被験物質として使用することもできる。
【0048】本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動
物に被験物質を投与する方法としては、例えば、経口投
与、静脈注射などが用いられる。また、被験物質の投与
量は、投与方法、被験物質の性質などにあわせて適宜選
択することができる。本発明のスクリーニング方法にお
いて、本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物に被
験物質を投与した場合、該トランスジェニック非ヒト哺
乳動物における尿糖値や血糖値が減少したり、生存率が
向上した場合には、該被験物質を糖尿病に対して予防効
果又は治療効果を有する物質として選択することができ
る。
【0049】本発明のスクリーニング方法を用いて得ら
れる物質は、上記した被験物質から選ばれた物質であ
り、糖尿病に対して予防・治療効果を有するので、糖尿
病に対する安全で低毒性な治療・予防剤などの医薬とし
て使用することができる。さらに、上記スクリーニング
で得られた物質から誘導される化合物も同様に医薬とし
て用いることができる。該スクリーニング方法で得られ
た物質は塩を形成していてもよく、該物質の塩として
は、生理学的に許容される酸(例えば、無機酸、有機
酸)または塩基(例えば、アルカリ金属)などとの塩が
用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好
ましい。
【0050】塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩
酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機
酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マ
レイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、シ
ュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホ
ン酸)との塩などが用いられる。
【0051】該スクリーニング方法で得られた物質は、
例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、
エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的
に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る
液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で
非経口的に使用できる。
【0052】例えば、該物質を生理学的に許容される担
体、香味剤、賦形剤、ビヒクル、防腐剤、安定剤、結合
剤などと一緒に混和することによって製剤を製造するこ
とができる。錠剤、カプセル剤などに混和することがで
きる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスター
チ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性
セルロースのような賦形剤、コーンスターチ,ゼラチ
ン,アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグ
ネシウムのような潤滑剤、ショ糖,乳糖またはサッカリ
ンのような甘味剤、ペパーミント,アカモノ油またはチ
ェリーのような香味剤などが用いられる。注射のための
無菌組成物は注射用水のようなビヒクル中の活性物質、
胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを、溶
解または懸濁させるなど常法に従って処方することがで
きる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水,
ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−
ソルビトール、D−マンニトール,塩化ナトリウムな
ど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アル
コール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例え
ば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコー
ル)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート
80TM,HCO−50)などを併用することもできる。
油性液としては、例えば、ゴマ油,大豆油などが用いら
れ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル,ベンジルアル
コールなどを併用してもよい。
【0053】また、上記の糖尿病の治療剤及び/又は予
防剤には、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、
酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベン
ザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例え
ば、ヒト血清アルブミン,ポリエチレングリコールな
ど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール,フェノー
ルなど)、酸化防止剤などを配合してもよい。
【0054】このようにして得られる製剤は安全で低毒
性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物に対して投与す
ることができる。該物質の投与量は、対象疾患、投与対
象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、経口
投与する場合、一般的に成人においては、一日につき該
化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜
50mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合
物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異
なるが、例えば、注射剤の形で通常成人に投与する場
合、一日につき該化合物を約0.01〜100mg程
度、好ましくは約0.1〜50mg程度を静脈注射によ
り投与する。
【0055】(4)下垂体アデニレートシクラーゼ活性
化ポリペプチド又はそれをコードする遺伝子を用いた薬
下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド(P
ACAP)の生理作用は存在部位により異なり多様であ
る。これまでにPACAPの作用として、ラット下垂体
初代培養細胞におけるcAMPの産生促進、ラット下垂
体スーパーフュージョン法におけるGH、ACTH、P
RL、 LHの分泌促進、副腎髄質クロム親和性細胞腫
由来細胞PC12hにおけるcAMPの産生と神経突起
伸長促進、下垂体培養細胞におけるインターロイキン−
6の産生促進、ラットアストロサイトの一次培養におけ
るcAMP産生促進と神経細胞死阻止作用の促進など様
々なものが報告されている。
【0056】膵臓においてはPACAP免疫陽性神経が
膵島に投射すること、PACAP受容体サブタイプのう
ちPACAPに親和性の高いPAC1受容体と、PAC
APとVIPの両者に同程度の親和性を示すVPAC2
受容体の発現が膵臓β細胞にみられること、単離膵島か
らのグルコース誘導性インスリン分泌を10-14Mとい
う極めて低濃度で促進することが知られている。またP
ACAPは様々な細胞で、細胞保護作用あるいは、分
化、増殖の促進作用を持つことから、膵臓β細胞におい
てもこのような作用が見られることが予測される。しか
しながら、in vivoにおけるPACAPの膵島への作用
は明らかになっていない点が多かった。
【0057】上記した状況下において、本発明者らは、
下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド遺伝
子の導入により該ポリペプチドを発現し、かつ遺伝子操
作により糖尿病を発症することを特徴とするトランスジ
ェニック非ヒト哺乳動物を用いて、糖尿病病態において
下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチドが糖
代謝にどのような作用を及ぼすかについて検討を行った
所、下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド
を体内で過剰発現させることにより、膵臓の臓器重量が
大きくなり、膵島の過形成が抑制されていることを初め
て見出した。
【0058】即ち、下垂体アデニレートシクラーゼ活性
化ポリペプチドを糖尿病患者の体内で過剰発現させるこ
とにより、膵臓の増殖を促進できることが今回新たに判
明した。
【0059】従って、本発明によれば、下垂体アデニレ
ートシクラーゼ活性化ポリペプチドを有効成分として含
む、膵臓組織の再生促進あるいは膵島の形成制御のため
の薬剤が提供される。ここで言う下垂体アデニレートシ
クラーゼ活性化ポリペプチドとは、天然型の下垂体アデ
ニレートシクラーゼ活性化ポリペプチドのみならず、本
明細書中上記した変異体の全てを包含する最も広い意味
を有する。
【0060】本発明の薬剤で治療可能な哺乳類動物とし
ては、たとえばウシ、ブタ、ヒツジ、サル、イヌ、ネ
コ、げっ歯類動物(例えば、実験動物など)、ならびに
ヒトなどが挙げられる。下垂体アデニレートシクラーゼ
活性化ポリペプチドとしては、PACAP38、PAC
AP27、それらの変異体、類似体(アナローグ)、及
びこれらの作動薬(アゴニスト)などを使用することが
できる。PACAP38、PACAP27、それらの変
異体、類似体(アナローグ)、及びこれらの作動薬(ア
ゴニスト)は、当業者に公知の方法により製造すること
ができる。
【0061】下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリ
ペプチドを化学合成により製造する場合は、ペプチドの
合成の常法手段によって合成できる。例えば、アジド
法、酸クロライド法、酸無水物法、混合酸無水物法、D
OC法、活性エステル法、カルボイミダゾール法、酸化
還元法等が挙げられる。また、その合成は、固相合成法
及び液相合成法のいずれをも適用することができる。す
なわち、ペプチド又はその塩を構成し得るアミノ酸と残
余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保
護基を脱離することにより目的とするペプチド又はその
塩を合成することができる。縮合方法や保護基の脱離と
しては、公知のいずれの手法を用いてもよい[例えばBod
anszky, M and M.A. Ondetti, PeptideSynthesis, Inte
rscience Publishers, New York (1966)、Schroeder an
d Luebke, The Peptide, AcademicPress, New York (19
65)、泉屋信夫他, ペプチド合成の基礎と実験, 丸善(19
75)等を参照]。
【0062】反応後は、通常の精製法、例えば溶媒抽
出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグ
ラフィー、再結晶などを組み合わせることにより、目的
とするペプチド又はその塩を精製することができる。
【0063】下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリ
ペプチドの別の製造方法としては、当該ペプチドのアミ
ノ酸配列をコードする遺伝子を利用して、遺伝子工学的
手法により微生物細胞、植物細胞、動物細胞などの宿主
において組み換えタンパク質(ペプチド)として生産す
る方法が挙げられる。得られた粗合成ペプチドは、ゲル
濾過、逆相HPLC、イオン交換カラム精製など通常の
タンパク質又はペプチド精製に用いられる手段を用いて
精製することが可能である。
【0064】下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリ
ペプチドは、そのままで又は製剤で常用される各種の固
体担体、液体担体、乳化分散剤等に含有させた形で、糖
尿病患者や膵臓疾患(例えば、膵炎、膵臓癌の病巣摘出
後の膵臓再生促進など)の患者における膵島の形成を制
御するための薬剤及び膵組織の再生を促進するための薬
剤として使用することができる。下垂体アデニレートシ
クラーゼ活性化ポリペプチドを医薬組成物の形態で、糖
尿病患者や膵臓疾患(例えば、膵炎、膵臓癌の病巣摘出
後の膵臓再生促進など)の患者における膵島の形成を制
御するための薬剤及び膵組織の再生を促進するための薬
剤として使用する場合には、その製剤形態は、使用目的
や使用対象に応じて適宜選択することができ、例えば、
錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプ
セル剤、坐剤、注射剤(液剤、懸濁剤等)等の形態で用
いることができる。
【0065】また、錠剤形成に際して使用する担体とし
ては、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、
尿素、デンプン、炭化カルシウム、カオリン、結晶セル
ロース、ケイ酸等の賦形剤、水又はアルコール類を含ま
せたデンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース
ナトリウム(CMC-Na)、メチルセルロース(MC)、ヒド
ロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピ
ルメチルセルロース(HPMC)、リン酸カルシウム、ポリ
ビニルピロリドン等の結合剤、乾燥デンプン、寒天末、
ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウ
リル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デ
ンプン、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン、カカオバ
ター、水素添加油糖の崩壊制御剤、第4級アンモニウム
塩基、ラウリル硫酸ナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着
剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチ
レングリコール等の滑沢剤等を使用することができる。
さらに錠剤は必要に応じて通常の剤皮を施した錠剤、例
えば糖皮錠、ゼラチン被包錠、腸溶皮膜フィルムコーテ
ィング錠又は二重錠、多層錠とすることができる。
【0066】下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリ
ペプチドを注射剤として調製する場合には、液剤、乳剤
及び懸濁剤は殺菌され、かつ血液と等張であることが好
ましく、これらの形態に成形するに際しては、希釈剤と
して水、エチルアルコール、プロピレングリコール、エ
トキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソ
ステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン
脂肪酸エステル類等を使用することができる。必要に応
じて、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等
の安定剤、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナ
トリウム、モノステアリン酸アルミニウム等の懸濁化
剤、塩化ナトリウム、ブドウ糖、グリセリン等の等張化
剤、パラオキシ安息香酸エステル類、ベンジルアルコー
ル、クロロブタノール等の保存剤のほか、溶液補助剤、
緩衝剤、無痛化剤等を配合して使用することもできる。
【0067】上記各形態の医薬組成物の中には、さらに
必要に応じて慣用されている着色剤、香料、風味剤、甘
味剤等を配合することができ、また他の医薬品有効成分
を含有させてもよい。
【0068】下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリ
ペプチドは、ヒトを含む哺乳動物に投与することができ
る。投与経路は経口投与でも非経口投与でもよい。本発
明の薬剤の投与量は患者の年齢、性別、体重、症状、及
び投与経路などの条件に応じて適宜増減されるべきであ
るが、一般的には、有効成分量として成人一日あたり1
0ng/kgから1,000mg/kg程度の範囲であ
り、好ましくは1μg/kgから10mg/kg程度の範
囲である。上記投与量は一日一回投与しても一日に数回
に分けて投与してもよい。また投与期間及び投与間隔も
特に限定されず、毎日投与してもよいしあるいは数日間
隔で投与してもよい。
【0069】また、下垂体アデニレートシクラーゼ活性
化ポリペプチドは、医薬品としてのみならず、健康食
品、飼料など人又は動物の体内に摂取される医薬品以外
の製品に配合して使用することもできる。
【0070】さらに、本発明によれば、下垂体アデニレ
ートシクラーゼ活性化ポリペプチドをコードする遺伝子
を有効成分として含む、膵臓組織重量を増大させ、膵島
の過形成を制御するための薬剤が提供される。上記した
通り、下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチ
ドを体内に投与することにより、膵臓重量を増大させる
ことができる。従って、下垂体アデニレートシクラーゼ
活性化ポリペプチドをコードする遺伝子を糖尿病患者の
体内に投与することにより下垂体アデニレートシクラー
ゼ活性化ポリペプチドを過剰発現させ、これにより膵臓
組織重量を増大させ、膵島の過形成を制御することもで
きる。
【0071】具体的には、(1)膵臓疾患の患者に、下
垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチドをコー
ドする遺伝子を導入して発現させるか、あるいは(2)
膵臓由来の細胞に、下垂体アデニレートシクラーゼ活性
化ポリペプチドをコードする遺伝子を導入して発現させ
た後に、該細胞を該患者に移植することなどによって、
該患者の膵臓の細胞における下垂体アデニレートシクラ
ーゼ活性化ポリペプチドを増加させ、PACAP作用を
充分に発揮させることができる。すなわち、下垂体アデ
ニレートシクラーゼ活性化ポリペプチドをコードする遺
伝子は、膵臓の細胞をin vitroまたはin vi
voで形質転換することができ、これにより遺伝子治療
剤として用いることができる。
【0072】上記遺伝子治療剤は、常套手段に従って製
造することができる。例えば、必要に応じて糖衣を施し
た錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル
剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の
薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤
などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、下
垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチドをコー
ドする遺伝子を生理学的に許容される担体、香味剤、賦
形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などと一緒に
混和することによって製造することができる。
【0073】錠剤、カプセル剤などに混和することがで
きる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスター
チ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性
セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチ
ン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグ
ネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリ
ンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチ
ェリーのような香味剤などが用いられる。
【0074】注射のための無菌組成物は注射用水のよう
なビヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような
天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常
の製剤実施にしたがって処方することができる。注射用
の水性液としては生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助
薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マン
ニトール、塩化ナトリウムなど)などがあげられ、適当
な溶解補助剤、たとえばアルコール(たとえばエタノー
ル)、ポリアルコール(たとえばプロピレングリコー
ル、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤
(たとえばポリソルベート80、HCO−50)などと
併用してもよい。油性液としてはゴマ油、大豆油などが
あげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジ
ルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例
えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛
化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン
など)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエ
チレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルア
ルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合し
てもよい。
【0075】投与量は、症状などにより差異はあるが、
経口投与の場合、一般的に成人(60kgとして)におい
ては、一日につき約0.1mg〜100mg、好ましくは
1.0〜50mg、より好ましくは1.0〜20mgであ
る。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与
対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なる
が、たとえば注射剤の形では通常成人(60kgとし
て)においては、一日につき約0.01mg〜30mg程
度、好ましくは0.1〜20mg程度、より好ましくは
0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好
都合である。以下の実施例により本発明をさらに具体的
に説明するが、本発明は実施例によって限定されること
はない。
【0076】
【実施例】実施例1:PACAPトランスジェニックマ
ウスの作製 (1)導入遺伝子の作製(図1) ヒトインスリンプロモーター(1.9kb)の3’下流
側にウサギβグロビン遺伝子の3’側(1.7kb)を
プラスミドpAT153上で繋ぎあわせた。次にこの融
合遺伝子を制限酵素EcoRIで消化し、ウサギβグロ
ビン遺伝子の一部を全翻訳領域を含むマウスPACAP
cDNAと置換した。ベクターの部分を取り除いた融合
遺伝子を精製し、トランスジェニックマウスの作製に用
いた。図1にPACAPトランスジェニックマウスの作
製に用いた融合遺伝子の構造を示す。
【0077】(2)トランスジェニックマウスの作製
(図2) BDF1マウス(BDF1雄×BDF1雌)の受精卵の
前核に、上記(1)で作製した融合遺伝子をマイクロイ
ンジェクションした。生き残った受精卵を、あらかじめ
精管結さつマウスと交配させて偽妊娠状態にしておいた
レシピエントマウスの卵管に移植した。移植後19日目
に帝王切開し、産まれてきたマウスを里親マウスに育て
させた。生後4週齢で尾から染色体DNAを単離し、制
限酵素Pst1で完全消化した後、マウスPACAPc
DNAをプローブとしてGene Images TM(Amersham)を用
いてSouthern blot解析を行うことにより、遺伝子型の
判定を行った。図2に、トランスジェニックマウスの作
製法を示す。
【0078】(3)導入遺伝子の発現の臓器特異性(図
3) Total RNAをトランスジェニックあるいはノン
トランスジェニックマウスの各臓器(肺、脳、膵臓、心
臓、肝臓)からacid guanidinium-phenol-chloroform法
で抽出した。これらのRNAを1.5%アガロース/ホ
ルムアルデヒド変性ゲルを用いて電気泳動を行った後、
ニトロセルロースメンブランにトランスファーした。ラ
ンダムプライマー法で作製した32P標識マウスPACA
P cDNAプローブを用いてハイブリダイゼーション
を行った。ハイブリダイゼーションの結果を図3に示
す。図3の結果から、PACAPがトランスジェニック
マウスの膵臓で発現していることが実証された。
【0079】(4)免疫組織化学(図4) ネムブタール麻酔をさせたトランスジェニックあるいは
ノントランスジェニックマウスの心臓から、4%パラホ
ルムアルデヒド/0.1%グルタルアルデヒド/0.1
%Mリン酸緩衝液を灌流した。膵臓を摘出し、同固定液
で4℃で1日、さらに4℃の30%ショ糖/0.1Mリ
ン酸緩衝液に2日浸した。これらの固定した膵臓からcr
yostat(Leitz)を用いて厚さ15mmの凍結切片を作製
した。一次抗体、二次抗体として、それぞれ抗PACA
Pウサギポリクロナール抗体、FITC-conjugated抗ウサ
ギIgG抗体を用いた。サンプルを封入後、共焦点レー
ザー顕微鏡MRC−242(Bio−Rad)で検鏡し
た。結果を図4に示す。図4の結果から、PACAPが
トランスジェニックマウスの膵臓で発現していることが
実証された。
【0080】実施例2:PACAPトランスジェニック
マウスとKKAyマウスとの遺伝的交配による本発明の
トランスジェニックマウスの作製、並びにその解析 (1)動物 全てのマウスは室温22±1℃、照明12時間(8:0
0−20:00)の飼育条件下で個別飼育し、餌と水は
自由に摂取させた。
【0081】(2)KKAyマウスとの遺伝的交配(図
5) KKAyマウス(日本クレア)は1969年に、KKマ
ウスに肥満遺伝子Ay遺伝子を導入することにより作製
された糖尿病モデルマウスである。雌のKKAyマウス
は不妊であるため、実施例1で作製したPACAPトラ
ンスジェニックマウスの雌とKKAyマウスの雄を交配
させることにより交雑第1世代(F1)のマウスを得
た。四種類の遺伝子型の+/+、Tg/+、Ay/+、
Tg/+:Ay/+(C57BL/6とKKのハイブリ
ットバックグラウンド)の判定は、尾から抽出したDN
Aを、導入したPACAP融合遺伝子特異的に増幅させ
るプライマー配列を用いたPCRにより行った。実験に
はF1マウスのオスを用いた。各遺伝子型において予測
されたメンデル比が観測された。図5に、(KKAy×
PACAP Tg)F1マウスの作製の概要を示す。
【0082】(3)免疫組織化学(図6) pentobarbitalで麻酔した各F1マウスの膵臓を摘出
し、4% paraformaldehyde/0.1 M PBSにて
4℃で1日、さらに4℃の30%ショ糖/0.1M P
BSに1〜2日浸透した。固定した膵臓からcryostat
(Leica)を用いて厚さ15μmの凍結切片を作製し
た。PACAP染色については、一次抗体として抗PA
CAPウサギポリクローナル抗体(株式会社矢内原研究
所)を用い、二次抗体としてTexas red共役抗ウサギlgG
を用いた。insulin、glucagonの同時染色には、一次抗
体として抗insulinモルモットポリクロナール抗体(Dak
o)、抗glucagonウサギポリクローナル抗体(Dako)、二次
抗体としてそれぞれ、抗FITC-共役抗モルモットlgG 、R
hodamine共役抗ウサギlgGを用いた。サンプルを封入
後、蛍光顕微鏡(Nikon TE300)で検鏡した。画像解析
は形状解析ソフト、Mac SCOPE(MITANI CORPORATION)を
用いて行った。結果を図6に示す。
【0083】図6において、+/+及びAy/+成体マ
ウスの膵臓は、PACAP免疫反応性の膵島細胞を含ま
ないが(A及びC)、Tg/+及びTg/+:Ay/+
マウスはPACAPで染色する膵島細胞を含む(B及び
D)。個々の膵島の細胞内でのPACAPの発現は不均
一である。図6の下側のグラフは膵臓内のPACAP含
量をラジオイムノアッセイ法により測定したものであ
る。Tg/+:Ay/+マウスとTg/+マウスにおい
て、膵臓PACAP含量の増加が確認される。
【0084】(4)体重、血漿グルコース値、トリグリ
セリド値、インスリン値の測定(図7) 図7に示した各週齢のF1マウスについて、9:00〜
12:00に採血を行った。採血は尾静脈から行った。
得られた血漿のグルコース値、トリグリセリド値、イン
スリン値はそれぞれ、Glu Cll test(Wako)、Triglyceri
de(INT)(SigmaDiagnostics)、Sensitive Rat Insulin R
IA Kit(Linco)を用いて測定した。また、これらF1マ
ウスについて、体重も測定した。結果を図7に示す。図
7における値は平均±SEを示す。統計的有意差はShef
feのF検定によりANOVAで評価した。
【0085】(5)摂食量の測定(図8) 食餌を設置した後、2週間自由に摂食させ、残量との差
を摂食量とした。こぼれた餌は無視できるものとした。
15週齢の+/+(n=11)、Tg/+(n=1
0)、Ay/+(n=15)、及びTg/+:Ay/+
(n=17)マウスの摂食量の測定結果を図8に示す。
図8における値は平均±SEを示す。統計的有意差はSh
effeのF検定によりANOVAで評価した。
【0086】(6)耐糖能試験(図9) 同腹のF1マウスを14時間絶食させた後、2 mg/g bo
dy weight のグルコースを経口投与または、腹膣内投与
した。経時的にマウスの尾静脈から全血を採取し、血漿
グルコース値、血漿インスリン値を測定した。結果を図
9に示す。図9における値は平均±SEを示す。統計的
有意差はSheffeのF検定によりANOVAで評価した。
【0087】(7)インスリン負荷試験(図10) 週齢の対応した、同腹のマウスを2時間絶食(8:00
−10:00)させた後、2 Unit/Kg body weightのイ
ンスリンを腹膣内投与した。経時的に尾静脈より採血を
行い、血漿グルコース値を測定した。結果を図10に示
す。図10における値は平均±SEを示す。
【0088】(8)組織形態学的解析(図11) CRYOSTAT(Leica)を用いて作製した厚さ15
μmの膵臓切片をHematoxylin-eosin染色し切片試料を
作製した。作製した切片試料をCHILLED CCD CAMERA(HAM
AMATSU C5985)を用いて直接、または顕微鏡下で撮影し
た後、切片面積と、確認し得るすべての膵島面積をMac
SCOPEにて計測した。結果を図11に示す。解析は各遺
伝子型につきn=9〜11で行った。図11において、
(A)は剖検時のマウス体重を示し、(B)は剖検時の
膵臓湿重量を示し、(C)は膵島面積の平均を示し、
(D)は膵臓面積1mm2当たりの膵島の数を示し、
(E)は全膵臓に対する膵島の相対体積を示し、(F)
は総膵島重量を示す。総膵島重量は、切片の解析から膵
島面積/膵臓面積を計算し、これを3/2乗して体積比
とする。さらに、これに膵臓質重量をかけたものを総膵
島重量(Total islet volume)とした。統計的有意差は
FisherのPLSD検定によりANOVAで評価した。
【0089】(9)まとめ 実施例2では、膵臓特異的PACAP過剰発現トランス
ジェニックマウス(Tg/+)と、優性遺伝形式で肥満
・糖尿病を発症するKKAyマウス(Ay/+)との交
雑第一世代マウスを作製し、各表現型について解析を行
った。免疫組織学的な解析により、Tg/+マウスと、
Ayアレルを有するTg/+マウス(Tg/+:Ay/
+)の膵島において、PACAP免疫陽性細胞が観察さ
れた。
【0090】経口、腹腔内グルコース負荷試験のいずれ
においても、+/+、Tg/+マウスの耐糖能に大きな
違いは認められなかった。また、Ay/+マウスとTg
/+:Ay/+マウスの間にも大きな違いは認められな
かった。また、経口グルコース負荷試験において、AU
insulinで示される血漿インスリン値の上昇はTg/
+:Ay/+マウスと、Ay/+マウスで同様であっ
た。従って、Tg/+:Ay/+マウスはAy/+マウ
スと同様のインスリン分泌反応性を示すことがわかっ
た。
【0091】上記の結果から、Tg/+:Ay/+マウ
スは、Ay/+マウスに比べ、血漿インスリン値は低い
値を示すものの、インスリン感受性及びインスリン分泌
能は同等であることが示された。さらに、図11に示さ
れるように、ヘマトキシリン−エオシン染色によりこれ
らのF1マウスの膵島を形態学的に解析した結果、Tg
/+:Ay/+マウスにおける膵島の量はAy/+マウ
スよりも小さくなる傾向が示された。
【0092】
【発明の効果】本発明により提供される、下垂体アデニ
レートシクラーゼ活性化ポリペプチド遺伝子の導入によ
り該ポリペプチドを発現し、かつ遺伝子操作により糖尿
病を発症することを特徴とするトランスジェニック非ヒ
ト哺乳動物は、下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポ
リペプチドの発現により膵臓組織重量を増大し、膵島の
過形成が制御された糖尿病発症モデル動物として、糖尿
病の発症機構の解明、糖尿病の予防剤や治療剤のスクリ
ーニングのために有用である。また、本発明によれば、
下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド又は
それをコードする遺伝子を有効成分として含む、糖尿病
患者や膵臓疾患(例えば、膵炎、膵臓癌の病巣摘出後の
膵臓再生促進など)の患者における膵島の形成を制御す
るための薬剤及び膵組織の再生を促進するための薬剤を
新たに提供することが可能になった。
【0093】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Taisho Pharmaceutical Co., Ltd. <120> Transgenic non-human mammal <130> A21060A <160> 2
【0094】 <210> 1 <211> 38 <212> PRT <213> sheep <400> 1 His Ser Asp Gly Ile Phe Thr Asp Ser Tyr Ser Arg Tyr Arg Lys Gln 1 5 10 15 Met Ala Val Lys Lys Tyr Leu Ala Ala Val Leu Gly Lys Arg Tyr Lys 20 25 30 Gln Arg Val Lys Asn Lys 35
【0095】 <210> 2 <211> 27 <212> PRT <213> sheep <400> 2 His Ser Asp Gly Ile Phe Thr Asp Ser Tyr Ser Arg Tyr Arg Lys Gln 1 5 10 15 Met Ala Val Lys Lys Tyr Leu Ala Ala Val Leu 20 25
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、PACAPトランスジェニックマウス
の作製に用いた融合遺伝子の構造を示す。
【図2】図2は、トランスジェニックマウスの作製法を
示す。
【図3】図3は、PACAP発現の臓器特異性をノザン
ブロット解析により調べた結果を示す。
【図4】図4は、トランスジェニックマウスとノントラ
ンスジェニックマウスの膵臓における抗PACAP抗体
を用いた免疫染色の結果を示す。
【図5】図5は、(KKAy×PACAP Tg)F1
マウスの作製の概要を示す。
【図6】図6は、F1マウス膵臓細胞の免疫組織化学分
析の結果を示す。
【図7】図7は、F1マウスの体重、血漿グルコース
値、血漿トリグリセリド値、及び血漿インスリン値の測
定結果を示す。
【図8】図8は、15週齢の+/+(n=11)、Tg
/+(n=10)、Ay/+(n=15)、及びTg/
+:Ay/+(n=17)マウスの摂食量の測定結果を
示す。
【図9】図9は、F1マウスにおける耐糖能試験の結果
を示す。
【図10】図10は、F1マウスにおけるインスリン負
荷試験の結果を示す。
【図11】図11は、成体F1マウスにおける膵島の組
織形態学的解析の結果を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 3/10 G01N 33/15 Z C12N 15/09 33/50 Z G01N 33/15 C07K 14/47 33/50 C12N 15/00 A // C07K 14/47 A61K 37/24 (72)発明者 橋本 均 大阪府箕面市小野原東5−5 フォルク北 千里L棟303号室 (72)発明者 新谷 紀人 大阪府茨木市蔵垣内2−16−23 善幸コー ポラス1−207 (72)発明者 富本 修平 大阪府茨木市春日3−2−17 (72)発明者 松田 敏夫 大阪府摂津市千里丘東1−13−11−605 Fターム(参考) 2G045 AA29 BB24 CB01 CB17 DA31 FA16 JA01 4B024 AA11 BA80 CA04 CA05 CA07 CA09 DA02 EA04 GA11 GA18 HA03 HA11 4C084 AA02 AA13 AA17 BA44 DB01 NA14 ZA661 ZC032 ZC351 4H045 AA10 AA30 BA19 CA40 EA50 FA74

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポ
    リペプチド遺伝子の導入により該ポリペプチドを発現
    し、かつ遺伝子操作により糖尿病を発症することを特徴
    とするトランスジェニック非ヒト哺乳動物またはその一
    部。
  2. 【請求項2】 下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポ
    リペプチドを膵臓で過剰発現する、請求項1に記載のト
    ランスジェニック非ヒト哺乳動物またはその一部。
  3. 【請求項3】 下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポ
    リペプチド遺伝子の導入により該ポリペプチドを発現す
    るトランスジェニック非ヒト哺乳動物と、遺伝子操作に
    より糖尿病を発症することを特徴とするトランスジェニ
    ック非ヒト哺乳動物とを交配することによって作製され
    る、請求項1又は2に記載のトランスジェニック非ヒト
    哺乳動物またはその一部。
  4. 【請求項4】 (1)遺伝子操作により糖尿病を発症す
    ることを特徴とするトランスジェニック非ヒト哺乳動物
    よりも低い血漿インスリン値を示し;(2)遺伝子操作
    により糖尿病を発症することを特徴とするトランスジェ
    ニック非ヒト哺乳動物よりも、膵臓の臓器重量が大き
    く;及び/又は(3)遺伝子操作により糖尿病を発症す
    ることを特徴とするトランスジェニック非ヒト哺乳動物
    よりも、膵臓ランゲルハンス島(膵島)の過形成が抑制
    されている:ことを特徴とする、請求項1から3の何れ
    かに記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物またはそ
    の一部。
  5. 【請求項5】 非ヒト哺乳動物がマウスである、請求項
    1から4の何れかに記載のトランスジェニック非ヒト哺
    乳動物またはその一部。
  6. 【請求項6】 請求項1から5の何れかに記載の非ヒト
    哺乳動物またはその一部を用いることを特徴とする、糖
    尿病の治療剤及び/又は予防剤のスクリーニング方法。
  7. 【請求項7】 請求項6に記載のスクリーニング方法に
    より得られる物質。
  8. 【請求項8】 請求項6に記載のスクリーニング方法に
    より得られる物質を有効成分として含有する、糖尿病の
    治療剤及び/又は予防剤。
  9. 【請求項9】 下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポ
    リペプチド又はそれをコードする遺伝子を有効成分とし
    て含む、膵臓組織の再生促進あるいは膵島の形成制御の
    ための薬剤。
JP2002111852A 2002-04-15 2002-04-15 トランスジェニック非ヒト哺乳動物 Pending JP2003304778A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002111852A JP2003304778A (ja) 2002-04-15 2002-04-15 トランスジェニック非ヒト哺乳動物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002111852A JP2003304778A (ja) 2002-04-15 2002-04-15 トランスジェニック非ヒト哺乳動物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003304778A true JP2003304778A (ja) 2003-10-28
JP2003304778A5 JP2003304778A5 (ja) 2005-09-15

Family

ID=29394532

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002111852A Pending JP2003304778A (ja) 2002-04-15 2002-04-15 トランスジェニック非ヒト哺乳動物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003304778A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008178363A (ja) * 2007-01-25 2008-08-07 Tohoku Univ レプチンシグナル伝達障害モデル動物
JP2013059332A (ja) * 2012-10-26 2013-04-04 Tohoku Univ マウスの生育過程において社会的隔離に対する肥満又は糖尿病発症の感受性を解析する方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008178363A (ja) * 2007-01-25 2008-08-07 Tohoku Univ レプチンシグナル伝達障害モデル動物
JP2013059332A (ja) * 2012-10-26 2013-04-04 Tohoku Univ マウスの生育過程において社会的隔離に対する肥満又は糖尿病発症の感受性を解析する方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7951381B2 (en) Method of stimulating epithelial cell proliferation by administration of gastrointestinal proliferative factor
US8067545B2 (en) Isolated antibodies against biologically active leptin-related peptides
DE69737816T2 (de) Darmprotein mit dreiblättriger struktur
CA2807478A1 (en) Use of muscle specific expression of activin type ii receptor gene to increase muscle mass in a non-human animal
JP2008094854A (ja) 糖尿病の治療
US8236751B2 (en) Methods of increasing muscle mass using follistatin-like related gene (FLRG)
Peris-Sampedro et al. Genetic deletion of the ghrelin receptor (GHSR) impairs growth and blunts endocrine response to fasting in Ghsr-IRES-Cre mice
Höppener et al. Human islet amyloid polypeptide transgenic mice: in vivo and ex vivo models for the role of hIAPP in type 2 diabetes mellitus
US5789654A (en) Transgenic animals deficient in endogenous β3 -adrenergic receptor and uses thereof
JP4147220B2 (ja) 動脈硬化症予防治療薬
JP4027803B2 (ja) 薬物代謝酵素遺伝子を有するトランスジェニック動物およびその利用
JP2002511747A (ja) 耐糖能障害疾患に対する治療および診断ツール
US20110265194A1 (en) Them5-modified models of non-alcoholic fatty liver disease
JPWO2005097171A1 (ja) 抗肥満薬
JP2003304778A (ja) トランスジェニック非ヒト哺乳動物
DE60113380T2 (de) Methoden zur identifizierung von zusammensetzungen, die für die behandlung von fettleibigkeit nützlich sind, unter verwendung von foxc2
JP2003104908A (ja) 軟骨無形成症治療剤
JP2003113116A (ja) 軟骨無形成症治療剤
JP2003339272A (ja) アディポネクチン遺伝子欠損非ヒト動物
CA2284833A1 (fr) Animal transgenique non humain dans lequel l&#39;expression du gene codant pour l&#39;insuline est supprimee
JPH10298100A (ja) インスリン抵抗性に起因する疾患の予防及び/又は治療剤
JP2008154489A (ja) MafK/MafA遺伝子改変非ヒト動物及び該非ヒト動物の作成方法
JP2004121241A (ja) ヒトslt遺伝子導入動物
WO2006093143A1 (ja) Nash又は肝腫瘍モデル及びその作製方法,nash又は肝腫瘍治療剤のスクリーニング方法,nash又は肝腫瘍発症機序解析方法,並びにnashの予防又は治療剤
JP2004121243A (ja) PrRPノックアウト動物およびその用途

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050406

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050406

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20071204

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20080408