JP4147220B2 - 動脈硬化症予防治療薬 - Google Patents
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Description
本発明は、動脈硬化症予防治療薬に関する。
背景技術
動脈硬化は、動脈が弾力を失ってもろくなった状態をいい、当該動脈硬化は脳出血、脳梗塞、心筋梗塞、腎硬化症などの成人病の原因として重要である。動脈硬化の原因として高脂血症、血液中の細菌、ウイルス、過酸化脂質、活性酸素等が知られているが、未だ完全には解明されていない。いずれにしても動脈硬化の始まりは、動脈の内膜・内皮細胞の障害による肥厚であり、当該動脈内膜の肥厚を抑制する薬物の探索が希求されている。
従って、本発明の目的は、動脈硬化の予防治療に有効な医薬を提供することにある。
発明の開示
そこで本発明者は、インスリン抵抗性改善作用を有することが知られているアディポネクチンの薬理作用について研究してきたところ、アディポネクチン遺伝子を欠損したマウスでは動脈の内膜が顕著に肥厚しており、また粥状動脈硬化症発症モデルであるapoE欠損マウスにアディポネクチン、特にアディポネクチンのC末端球状領域を過剰発現させると動脈硬化の発症が抑制されることから、アディポネクチン、そのC末端側球状領域又はその遺伝子が動脈硬化予防又は治療薬として有用であることを見出した。また、アディポネクチンの過剰発現は、血中の遊離脂肪酸、中性脂肪、総コレステロールなどに顕著な影響を与えず、スカベンジャー受容体Aの発現を低下させていることから、アディポネクチンの動脈硬化防止作用は、スカベンジャー受容体Aの発現を低下させて、マクロファージへの脂質の蓄積を抑制することによるものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明はアディポネクチンのC末端側球状領域、アディポネクチン又はそれらの遺伝子を有効成分とする動脈硬化症予防治療薬を提供するものである。
また、本発明は、アディポネクチンのC末端球状領域、アディポネクチン又はそれらの遺伝子を有効成分とするスカベンジャー受容体A発現低下剤を提供するものである。
さらに本発明は、アディポネクチンのC末端側球状領域、アディポネクチン又はそれらの遺伝子の、動脈硬化症予防治療薬製造のための使用を提供するものである。
さらに、本発明が、アディポネクチンのC末端側球状領域、アディポネクチン又はそれらの遺伝子の、スカベンジャー受容体A発現低下剤製造のための使用を提供するものである。
さらに本発明は、アディポネクチンのC末端側球状領域、アディポネクチン又はそれらの遺伝子の有効量を投与することを特徴とする動脈硬化症の処置方法を提供するものである。
さらに本発明は、アディポネクチンのC末端側球状領域、アディポネクチン又はそれらの遺伝子の有効量を投与することを特徴とする患者のスカベンジャー受容体A発現低下方法を提供するものである。
発明を実施するための最良の形態
本発明に用いられるアディポネクチンは、既にクローニングされており[Maeda,K et al,Biochem.Biophys.Res.Commun.221,286−296(1996)、Nakano,Y.et al,J.Biochem.(Tokyo)120,802−812(1996)]、既知の手段により入手できる。配列番号1及び2にヒトアディポネクチンの塩基酸配列及びアンミ酸配列を示す。アディポネクチンは、N末端側のコラーゲン様配列(cAd)とC末端側の球状領域(gAd;配列番号1中、アミノ酸番号114〜239又は111〜242)から構成されているが、C末端側の球状領域(gAd)は、完全長アディポネクチンよりも強力な動脈硬化予防治療作用を有し、特に好ましい。また配列番号3及び4にマウスアディポネクチンの塩基酸配列及びアミノ酸配列を示す。マウスアディポネクチンのN末端側のコラーゲン様配列(cAd)は45〜109(アミノ酸番号)であり、C末端側の球状領域(gAd)は110〜247(アミノ酸番号)である。また、本発明においては、配列番号1〜4に示すアミノ酸配列及びgAd領域を示すアミノ酸配列を有する蛋白質だけでなく、これらのアミノ酸配列の一又は複数のアミノ酸が置換、欠失又は付加したアミノ酸配列を有する蛋白質であってもアディポネクチンとしての作用を有するものであれば用いることができる。当該変異蛋白質としては、配列番号1〜4のアミノ酸配列又はgAd領域を示すアミノ酸配列と80%以上、特に90%以上の相同性を有するものが挙げられる。
本発明で用いられる遺伝子としては、配列番号1及び3に示されるアディポネクチンをコードする遺伝子及びgAdをコードする遺伝子が挙げられる。また、これらの遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズし得る塩基配列を有する遺伝子も用いることができる。
アディポネクチン又はその一部のポリペプチド(gAdを含む)は、それが存在する細胞から分離することもできるが、アディポネクチンをコードする遺伝子がすでにクローニングされているので、DNA組み換え技術、すなわち、当該遺伝子を用いて調製した発現ベクターを利用し、形質転換した細胞を用いて調製してもよい。
後記実施例に示すように、アディポネクチンを欠損させたマウスでは、血中の中性脂肪が高いが、コレステロールは野生型と差がない。また、アディポネクチンを欠損させたマウスは動脈硬化のモデルにおいて野生型に比べて2倍の内膜肥厚を示した。これに対し、粥状動脈硬化を自然に発症するモデルであるapoE欠損マウスにgAdを過剰発現させると、動脈硬化単面積が有意に低下し、動脈硬化発症が抑制される。ところが、apoE欠損マウスにgAdを過剰発現させても、体重、血糖値、血中の遊離脂肪酸、中性脂肪、総コレステロールなどの一般の動脈硬化リスクファクターに顕著な影響を与えない。これに対し、apoE欠損マウスにgAdを過剰発現させると動脈壁のスカベンジャー受容体Aの発現が低下していた。ここで、スカベンジャー受容体Aは、マクロファージが変性LDLを貪食する際、細胞表面で変性LDLを結合する受容体であり、動脈硬化発症の重要な受容体として知られている。
従って、アディポネクチン、gAd又はこれらの遺伝子は、スカベンジャー受容体A発現低下剤として、また動脈硬化症予防治療薬として有用である。また、gAd又はその遺伝子はアディポネクチンよりも強力なスカベンジャー受容体発現低下作用及び動脈硬化予防治療作用を有し、特に有用である。
本発明の医薬をヒトを含む哺乳類に投与するには、前記有効成分に薬学的に許容される担体を加えて、種々の投与形態の医薬組成物とすることができる。かかる投与形態としては注射用製剤が好ましい。また薬学的に許容される担体としては、蒸留水、溶解補助剤、安定化剤、乳化剤、緩衝剤等が挙げられる。また、これら医薬の投与量は、疾患、性別、体重等により変化するが、アディポネクチン又はgAd量として0.1μg〜10mg/日程度であろう。
実施例
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
A.方法
(1)ノックアウトマウスの作成
アディポネクチンcDNAをプローブを用いて129/Svマウスゲノミックライブラリーをスクリーニングし、アディポネクチン遺伝子を含むクローンを複数クローニングした。翻訳開始点直下から翻訳終止点までをneomycin耐性遺伝子で置換したターゲティングベクターを構築し、このターゲティングベクターをES細胞にトランスフェクションした。サザンブロッティングによりスクリーニングを行い、5クローンの相同組換え体を確認した。顕微注入法にてキメラマウスを作成し、BI/6との交配によりF1、さらにF2を作成した。
すなわち、アディポネクチン遺伝子の欠損マウスは、図1に示すような相同組換えによって作成した。マウスアディポネクチン遺伝子を欠損のため、アディポネクチンをコードしているエクソン2と3をneo耐性遺伝子に置き換えたターゲティングベクターを作成した。独立した5つの相同句組換えを起こしたクローンがサザンブロットによって確認された(図2)。129/SvをバックグランドにもつES細胞よりキメラマウスを作成し、ヘテロ欠損マウス作成のためBI/6と交配した。その遺伝子型をサザンブロットにて確認した(図3)。
(2)インスリン負荷試験
負荷試験中のみ絶食をかけ、腹腔内にマウス体重1gあたり0.7mUのヒトインスリンを投与した。採血は尾静脈から行い血糖値はグルテストエース(登録商標、三和化学研究所製)にて測定した。
(3)グルコース負荷試験
試験開始前に少なくとも16時間以上絶食をかけた後、マウス体重1gあたり1.5mgのグルコースを経口投与した。採血は眼底静脈より行い血糖値はグルテストエース(登録商標、三和化学研究所製)にて測定、インスリンはラットインスリンRIAキット(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)を用いて測定した。
(4)血中脂質レベルの測定
血中の遊離脂肪酸、中性脂肪、総コレステロールは16時間の絶食の後、それぞれNEFAC−test,TGL−type,Tchol E−type(ワコー社製)を用いて測定した。
(5)血中レプチン、アディポネクチンの測定
血中のレプチン、アディポネクチンの測定は16時間の絶食の後、それぞれQuintikine M kit(R&D社製)、アディポネクチンRIAキット(LINCO社製)を用いて測定した。
(6)カフによる血管内膜肥厚モデルの作製
大腿動脈に2.0mmのポリエチレンチューブ(PE−50)を留置し、2週間後に血管をホルマリンにて圧固定後、対側のカフを巻いていない対照血管とともに摘出した。摘出した血管に対して10mmの厚さで連続輪状切片を作製しそのうち10切片をHE染色し、血管内径、内膜の厚さ、中膜の厚さ、内膜中膜比を測定した。
(7)gAd過発現マウスの作製
Diabetes 48,1822−1829(1999)に従い、ヒトSAPプロモータとマウスgAd cDNAを有する融合遺伝子を作製した。精製Hind III−XhoIフラグメントをC57BL6マウス(日本クレア製)の受精卵の前核にマイクロインジェクションした。トランスジェニックマウスがgAdを過発現していることは、gAdのBgl II/Hinc IIサイトに対してgAd cDNAプローブを使ったテールDNAのサザンブロッティングにより確認した。
(8)gAdを過剰発現するapoE欠損マウスの作製
gAdを過剰発現するapoE欠損マウスを交配し、gAd過剰発現apoEヘテロ欠損マウスを得、さらにapoE欠損マウスと交配することにより、gAdを過剰発現するapoE欠損マウスを作製した。
(9)血糖値、脂質レベルの測定
血糖値、血中の遊離脂肪酸、中性脂肪、総コレステロールは、飽食時にそれぞれグルテストエース(登録商標、三和化学研究所製)、NEFA C−test、TGL−type、Tchol E−type(ワコー社製)を用いて測定した。
(10)動脈硬化巣の大きさの評価
4ケ月齢のgAd過剰発現apoE欠損マウスとコントロールのapoE欠損マウスから大動脈弓及び下行大動脈を摘出してホルマリン固定後、Sudan IVにて染色し、動脈硬化巣の大きさを評価した。
(11)コレステロールエステル蓄積量、スカベンジャー受容体A発現量、マクロファージの集積の評価
大動脈弁輪部の凍結連続輪状切片を作製し、そのうちの10切片をOil Red O染色及び抗スカベンジャー受容体A抗体、マクロファージ特異的マーカーである抗Mac3抗体で免疫染色し、それぞれコレステロールエステル蓄積量、スカベンジャー受容体A発現量、マクロファージの集積の評価を行った。
B.結果
(1)マウスアディポネクチン遺伝子欠損マウス
白色脂肪組織のノーザンブロットではヘテロ欠損型マウスではアディポネクチンの発現が約60%減少し、ホモ欠損マウスではその発現が完全に消失していることが確認された(図4)。実際血中のアディポネクチン濃度を測定するとヘテロ欠損型マウスではその血中レベルが約60%低下しホモ欠損マウスでは検出限界以下であった(図5)。なお血中レプチン濃度には差が認められなかった(図6)。
(2)マウスアディポネクチン遺伝子欠損マウスのインスリン抵抗性
6週の野生型(wild−type)、ヘテロ欠損型(adipo +/−)、ホモ欠損型(adipo −/−)マウスの3群において体重差は認められなかった(図7)。6週の野生型とヘテロ型欠損マウスに対してインスリン感受性を調べる目的でインスリン負荷試験を行ったところ、外来性のインスリンに対する血糖値の降下の程度はヘテロ欠損型で有意に低く、ヘテロ欠損型マウスがインスリン抵抗性を有していることが明らかとなった(図8)。
次にグルコース負荷試験を行ったが、血糖値、インスリン値において野生型とヘテロ欠損型マウスにおいて差は認められなかった(図9)。しかし10週間の高脂肪食を負荷したヘテロ欠損マウスでは野生型に比し体重は同じであったにもかかわらず糖負荷前後の血糖値が有意に上昇していた(図10)。
次にはホモ欠損マウスの解析を行った。
6週の野生型とホモ欠損型マウスに対してインスリン負荷試験を行ったところ、外来性のインスリンに対する血糖値の降下の程度は野生型やヘテロ欠損型より有意に低く、インスリン抵抗性が野生型やヘテロ欠損型マウスに比し高いことが明らかとなった(図11)。
次にグルコース負荷試験を行ったところ空腹時、負荷後ともに血糖値が野生型に比し高く、このことからホモ欠損型マウスはインスリン抵抗性に加え軽度の耐糖能障害も有していることが明らかとなった(図12)。糖負荷前後のインスリン値は投与前と投与30分後では違いはなかったが15分値ではホモ欠損型マウスでは低い傾向にあった(図12)。
(3)アディポネクチンホモ欠損型マウスでの血中中性脂肪
アディポネクチンの脂質代謝に対する影響を調べるために野生型、ヘテロ欠損型、ホモ欠損型マウスの血中遊離脂肪酸(FFA)、中性脂肪(TG)、総コレステロール値(TC)を測定した(図13,14)。ヘテロ欠損型では3項目全てにおいて野生型との違いは認められなかった(図13)が、ホモ欠損型では血中の中性脂肪値が野生型に比し有意に高値であった(図14)。
(4)マウスアディポネクチンヘテロ欠損型マウスのカフ損傷モデルにおける内膜肥厚
アディポネクチンの動脈硬化に対する影響を見るためにカフ損傷に対する内膜肥厚の程度を野生型とヘテロ型欠損マウスにおいて比較した。両群においてカフ損傷後の血管の内径に差は認められなかった(図15)。しかしカフ損傷2週間後においてヘテロ欠損型では野生型に比し内膜肥厚の程度が約1.8倍高かった(図16)。しかし中膜の厚さに差は認められなかった(図17)。野生型とヘテロ欠損型マウスにおいて内膜中膜比をとってみるとヘテロ欠損型では野生型に比し約2倍であった(図18)。
(5)gAdを過剰発現するapoE欠損マウスにおける動脈硬化発症の抑制
動脈硬化を自然に発症するモデルであるapoE欠損マウスにgAdを過剰発現させ、その動脈硬化発症が抑制されるかどうかを検討した。その結果を図19及び図20に示す。図19中aはapoE欠損マウスの大動脈のSudan IV染色結果であり、図19中bはgAd過剰発現apoE欠損マウスの大動脈のSudan IV染色結果である。aとbの対比から明らかなようにgAd過剰発現apoE欠損マウスでは動脈硬化巣が明確に減少している。また、動脈硬化巣の面積を対比したのが図20である。図20からもgAdを過剰発現させると、Sudan IVで染色される動脈硬化巣面積が大動脈弓(b)、下行大動脈(c)、両者を足して(a)比較検討した何れの場合でも、有意に低下しており、動脈硬化発症の抑制が認められた。
(6)gAdの過剰発現が普通食下のapoE欠損マウスの動脈硬化リスクファクターに与える影響
普通食下におけるgAd過剰発現apoE欠損マウスの体重、血糖値、血中遊離脂肪酸、中性脂肪及び総コレステロール値の測定結果を表1に示す。
表1から明らかなように、普通食下のapoE欠損ママウスにgAdを過剰発現させても、体重、血糖値、血中の遊離脂肪酸、中性脂肪、総コレステロールなどの動脈硬化リスクファクターに顕著な影響を与えなかった。このことより、gAdは、血管壁やマクロファージに直接作用して、抗動脈硬化作用を発現している可能性が示唆された。
(7)gAdの動脈硬化発症抑制の作用機序
gAdの血管壁やマクロファージに対する直接作用のメカニズムを明らかにする目的で、大動脈弁輪部の凍結連続輪状切片を用いて、Oil Red O染色及び抗スカベンジャー受容体A抗体、マクロファージ特異的マーカーである抗Mac3抗体で免疫染色を施行した。その結果、図21に示すようにgAdの過剰発現はマクロファージの集積には大きな影響を与えなかったが、スカベンジャー受容体Aの発現を低下させて、マクロファージへの脂質の蓄積を抑制し、動脈硬化発症を低減させることが判明した。
産業上の利用可能性
本発明によれば、動脈壁のスカベンジャー受容体Aの発現を低下させて、マクロファージへの脂質の蓄積を抑制することにより、動脈硬化の発症及び進展を防止することにより、動脈硬化の実体像である血管内膜の肥厚を直接抑制できる動脈硬化症予防治療剤が提供できる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、アディポネクチン遺伝子欠損についてのジーンターゲティングの模式図を示す。上:マウスアディポネクチン遺伝子の制限酵素地図、中:アディポネクチン遺伝子ターゲティングベクター、下:予想されるターゲティングアリール。
図2は、SpeIとEoRVによって消化されたES細胞由来のDNAのサザンブロット結果を示す。17kbのバンドは野生型アリールを、10.5kbのバンドは変異アリールを示す。
図3は、SpeIとEoRVによって消化された野生型(wild−type)、ヘテロ欠損型(adipo +/−)、ホモ欠損型(adipo −/−)マウス由来のDNAのサザンブロット結果を示す。17kbのバンドは野生型アリールを、10.5kbのバンドは変異アリールを示す。
図4は、野生型(wild−type)、ヘテロ欠損型(adipo +/−)、ホモ欠損型(adipo −/−)マウスの白色脂肪組織のノーザンブロット結果を示す。
図5は、野生型(wild−type)、ヘテロ欠損型(adipo +/−)、ホモ欠損型(adipo −/−)マウスの血中アディポネクチン濃度を示す。**P<0.01。
図6は、野生型(wild−type)、ヘテロ欠損型(adipo +/−)、ホモ欠損型(adipo −/−)マウスの血中レプチン濃度を示す。
図7は、野生型(wild−type)、ヘテロ欠損型(adipo +/−)、ホモ欠損型(adipo −/−)マウスの6週における体重を示す。
図8は、野生型(wild−type)、ヘテロ欠損型(adipo +/−)マウスの6週におけるインスリン負荷試験結果を示す。*P<0.05。
図9は、野生型(wild−type)、ヘテロ欠損型(adipo +/−)マウスの6週におけるグルコース負荷試験結果を示す。*P<0.05。
図10は、野生型(wild−type)、ヘテロ欠損型(adipo +/−)マウスの高脂肪食負荷10週におけるグリコース負荷試験結果を示す。*P<0.05、**P<0.01。
図11は、野生型(wild−type)、ホモ欠損型(adipo −/−)マウスの6週におけるインスリン負荷試験結果を示す。*P<0.05、**P<0.01。
図12は、野生型(wild−type)、ヘテロ欠損型(adipo +/−)マウスの6週におけるグルコース負荷試験結果を示す。*P<0.05、**P<0.01。
図13は、野生型(wild−type)、ヘテロ欠損型(adipo +/−)マウスの血中遊離脂肪酸(FFA)、中性脂肪(TG)、総コレステロール値(TC)を示す。
図14は、野生型(wild−type)、ホモ欠損型(adipo −/−)マウスの血中遊離脂肪酸(FFA)、中性脂肪(TG)、総コレステロール値(TC)を示す。
図15は、野生型(wild−type)、ヘテロ欠損型(adipo +/−)マウスのカフ損傷2週間後における血管の内径を示す。
図16は、野生型(wild−type)、ヘテロ欠損型(adipo +/−)マウスのカフ損傷2週間後における内膜肥厚の程度を示す。
図17は、野生型(wild−type)、ヘテロ欠損型(adipo +/−)マウスのカフ損傷2週間後における中膜肥厚の程度を示す。
図18は、野生型(wild−type)、ヘテロ欠損型(adipo +/−)マウスのカフ損傷2週間後における内膜中膜比を示す。
図19は、apoE欠損マウス(apoE−/−:a)及びgAd過剰発現apoE欠損マウス(gAdTg apoE−/−:b)における動脈硬化巣を示す図である。
図20は、apoE欠損マウス(apoE−/−)及びgAd過剰発現apoE欠損マウス(gAdTg apoE−/−)における動脈硬化巣の面積〔大動脈弓(b)及び下行大動脈(c)及びそれらの合計(a)〕を示す図である。
図21は、apoE欠損マウス(apoE−/−)及びgAd過剰発現apoE欠損マウス(gAdTg apoE−/−)における動脈に対するOil Red O染色、抗Mac3抗体との反応、抗スカベンジャー受容体A抗体との反応を示す図である。
Claims (3)
- アディポネクチンのC末端側球状領域又はその遺伝子を有効成分とする動脈硬化症予防治療薬。
- さらに薬学的に許容される担体を含有するものである請求項1記載の動脈硬化症予防治療薬。
- アディポネクチンのC末端側球状領域又はその遺伝子を有効成分とするスカベンジャー受容体A発現低下剤。
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