JP4993606B2 - Ramp2を標的とする血管構造の安定化剤及び血管新生剤 - Google Patents
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Description
脳虚血性疾患では、虚血の解除と共に、脳浮腫のマネージメントが急性期の治療の大きな課題である。脳梗塞治療の主眼は、神経細胞の機能回復をはかると共に、まだ傷害の進行していない組織を守ることにある。脳梗塞急性期には、梗塞部分とその周囲に脳浮腫が起こるが、浮腫の程度が重くなると、損傷を受けていない組織まで頭蓋に押しつけられて傷害範囲を広げたり、脳幹部を圧迫して生命予後を危うくする。現在のところ、脳浮腫に対しては、高浸透圧物質の投与以外に有効な治療法がないのが現状であり、その重要性に関わらず、脳梗塞に併発する脳浮腫の治療又は改善薬の開発は、この数十年間大きな進歩が見られていない。
脳浮腫のマネージメントとしては、グリセロールやマンニトールなどの高浸透圧物質の投与が行われている。これらの高浸透圧物質投与は、メタアナリシスでは、脳梗塞発症後14日以内の死亡を有意に減少させたと報告されている。しかし、長期予後や機能予後に関する効果には疑問が残る。脳梗塞後の生命予後や機能予後改善のためには、脳浮腫発症のメカニズムに注目した、新たな治療法開発が待たれる。
アドレノメデュリン(AM)は、1993年、北村、寒川らが発見した52個のアミノ酸からなるペプチドである。AMは発見当初、血管拡張作用を有する血管作動物質として注目されたが、その後の研究から、血管拡張作用以外にも、細胞の遊走、分化制御、抗炎症作用、体液量調節作用、強心作用などの多彩な生理活性を有することが分かってきた。
本発明者は、これまでAM遺伝子を血管特異的に過剰発現するトランスジェニックマウス、AM遺伝子のノックアウトマウス、さらに、AMのファミリーであるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)のノックアウトマウスを樹立し、一連の研究成果を報告してきた(Circulation.2000;101:2309;Circulation.2001;104:1964;Circ Res.2001,89,983;Circ Res.2002;90:657;Arterioscler Thromb Vasc Biol.2002 22:1310−5;Circulation.2004;109:1789;Circ Res.2004;95:415)。そして、AMノックアウトマウスのヘテロ接合体では、腎臓に虚血再灌流傷害を加えたときの臓器障害が亢進しているのに対し、トランスジェニックマウスでは逆に抑制されていることから、AMが血管拡張物質だけにとどまらず、臓器保護作用を有する生理活性物質であることを報告している。さらに、AMノックアウトマウスのホモ接合体では、血管の発達が未熟であると共に、血管壁の構造自体に大きな異常を認め、胎生14日目に、びまん性出血や全身性浮腫が原因で、致死であることを報告した(Circulation.2001;104:1964)。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。そして、AMが血管の成熟、安定化に関与していること、及び、血管透過性を抑制することを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)アドレノメデュリンを有効成分として含む、血管構造の安定化剤。
(2)アドレノメデュリン分解酵素の活性を阻害する物質、アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質、カルシトニン受容体様受容体及びアドレノメデュリン受容体からなる群から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含む、血管構造の安定化剤。
(3)アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質がRAMP1、RAMP2又はRAMP3である(2)記載の安定化剤。
(4)アドレノメデュリンを有効成分として含む、血管透過性の抑制剤。
(5)アドレノメデュリン分解酵素の活性を阻害する物質、アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質、カルシトニン受容体様受容体及びアドレノメデュリン受容体からなる群から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含む、血管透過性の抑制剤。
(6)アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質がRAMP1、RAMP2又はRAMP3である(5)記載の抑制剤。
(7)アドレノメデュリンを有効成分として含む血管新生剤。
(8)アドレノメデュリン分解酵素の活性を阻害する物質、アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質、カルシトニン受容体様受容体及びアドレノメデュリン受容体からなる群から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含む、血管新生剤。
(9)アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質がRAMP1、RAMP2又はRAMP3である(8)記載の血管新生剤。
(10)血管新生は、アドレノメデュリンが血管構造を安定化する作用によるものである、(7)記載の血管新生剤。
(11)血管新生は、アドレノメデュリンが血管の透過性を抑制する作用によるものである、(7)記載の血管新生剤。
(12)虚血性疾患又は浮腫を治療又は予防するための(7)〜(11)のいずれか1項記載の血管新生剤。
(13)虚血性疾患が、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症、閉塞性動脈硬化症及びバージャー病からなる群から選ばれる少なくとも1つである(12)記載の血管新生剤。
(14)浮腫が脳浮腫である、(12)記載の血管新生剤。
(15)アドレノメデュリンと、血管新生促進因子、アドレノメデュリン分解酵素の活性を阻害する物質、アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質、カルシトニン受容体様受容体及びアドレノメデュリン受容体からなる群から選ばれる少なくとも1つとを含む、虚血性疾患又は浮腫に対する併用療法のための医薬組成物。
(16)血管新生促進因子が、血管内皮細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子−2、アンジオポエチン、低酸素誘導因子−1α及びトランスフォーミング増殖因子−βからなる群から選ばれる少なくとも1つである、(15)記載の医薬組成物。
(17)アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質がRAMP1、RAMP2又はRAMP3である(15)記載の医薬組成物。
(18)虚血性疾患が、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症、閉塞性動脈硬化症及びバージャー病からなる群から選ばれる少なくとも1つである(15)記載の医薬組成物。
(19)浮腫が脳浮腫である、(15)記載の医薬組成物。
(20)アドレノメデュリン、血管新生促進因子、アドレノメデュリン分解酵素の活性を阻害する物質、アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質、カルシトニン受容体様受容体及びアドレノメデュリン受容体からなる群から選ばれる少なくとも1つを哺乳動物に投与し、又は哺乳動物において発現させることを特徴とする、当該哺乳動物における血管構造の安定化方法。
(21)アドレノメデュリンをコードする遺伝子、血管新生促進因子をコードする遺伝子、アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質をコードする遺伝子、カルシトニン受容体様受容体をコードする遺伝子及びアドレノメデュリン受容体をコードする遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1つを哺乳動物に投与することを特徴とする、当該哺乳動物における血管構造の安定化方法。
(22)アドレノメデュリン、血管新生促進因子、アドレノメデュリン分解酵素の活性を阻害する物質、アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質、カルシトニン受容体様受容体及びアドレノメデュリン受容体からなる群から選ばれる少なくとも1つを哺乳動物に投与し、又は哺乳動物において発現させることを特徴とする、当該哺乳動物における血管透過性の抑制方法。
(23)アドレノメデュリンをコードする遺伝子、血管新生促進因子をコードする遺伝子、アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質をコードする遺伝子、カルシトニン受容体様受容体をコードする遺伝子及びアドレノメデュリン受容体をコードする遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1つを哺乳動物に投与することを特徴とする、当該哺乳動物における血管透過性の抑制方法。
(24)血管新生促進因子が、血管内皮細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子−2、アンジオポエチン、低酸素誘導因子−1α及びトランスフォーミング増殖因子−βからなる群から選ばれる少なくとも1つである、(22)又は(23)記載の方法。
(25)アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質がRAMP1、RAMP2又はRAMP3である(22)又は(23)記載の方法。
(26)アドレノメデュリンを哺乳動物に投与することを特徴とする、当該哺乳動物における血管新生方法。
(27)血管新生は、アドレノメデュリンが血管構造を安定化する作用によるものである、(26)記載の方法。
(28)血管新生は、アドレノメデュリンが血管の透過性を抑制する作用によるものである、(26)記載の方法。
(29)アドレノメデュリン、血管新生促進因子、アドレノメデュリン分解酵素の活性を阻害する物質、アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質、カルシトニン受容体様受容体及びアドレノメデュリン受容体からなる群から選ばれる少なくとも1つを哺乳動物に投与し、又は哺乳動物において発現させることを特徴とする、当該哺乳動物における血管新生方法。
(30)アドレノメデュリンをコードする遺伝子、血管新生促進因子をコードする遺伝子、アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質をコードする遺伝子、カルシトニン受容体様受容体をコードする遺伝子、及びアドレノメデュリン受容体をコードする遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1つを哺乳動物に投与することを特徴とする、当該哺乳動物における血管新生方法。
(31)血管新生促進因子が、血管内皮細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子−2、アンジオポエチン、低酸素誘導因子−1α及びトランスフォーミング増殖因子−βからなる群から選ばれる少なくとも1つである、(29)又は(30)記載の方法。
(32)アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質がRAMP1、RAMP2又はRAMP3である(29)又は(30)記載の方法。
(33)上記(7)〜(14)のいずれか1項に記載の血管新生剤又は上記(15)〜(19)のいずれか1項に記載の医薬組成物を哺乳動物に投与することを特徴とする、当該哺乳動物の虚血性疾患又は浮腫を治療又は予防する方法。
(34)アドレノメデュリンをコードする遺伝子、血管新生促進因子をコードする遺伝子、アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質をコードする遺伝子、カルシトニン受容体様受容体をコードする遺伝子、及びアドレノメデュリン受容体をコードする遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1つを哺乳動物に投与することを特徴とする、当該哺乳動物の虚血性疾患又は浮腫を治療又は予防する方法。
(35)血管新生促進因子が、血管内皮細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子−2、アンジオポエチン、低酸素誘導因子−1α及びトランスフォーミング増殖因子−βからなる群から選ばれる少なくとも1つである、(34)記載の方法。
(36)アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質がRAMP1、RAMP2又はRAMP3である(34)記載の方法。
(37)虚血性疾患が、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症、閉塞性動脈硬化症及びバージャー病からなる群から選ばれる少なくとも1つである(34)記載の方法。
(38)浮腫が脳浮腫である、(34)記載の方法。
(39)血管構造の安定化作用を有する物質、血管透過性の抑制作用を有する物質、血管新生活性を有する物質又は血管新生活性を促進する物質をスクリーニングする方法であって、被験物質を、アドレノメデュリンをコードする遺伝子、血管新生促進因子をコードする遺伝子、アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質をコードする遺伝子、カルシトニン受容体様受容体をコードする遺伝子、及びアドレノメデュリン受容体をコードする遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1つがノックダウンされた非ヒト動物に投与した後、当該非ヒト動物における被験物質の作用を解析することを含む前記方法。
(40)血管構造の安定化作用を有する物質、血管透過性の抑制作用を有する物質、血管新生活性を有する物質又は血管新生活性を促進する物質をin vitroでスクリーニングする方法であって、被験物質を、アドレノメデュリンをコードする遺伝子、血管新生促進因子をコードする遺伝子、アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質をコードする遺伝子、カルシトニン受容体様受容体をコードする遺伝子、及びアドレノメデュリン受容体をコードする遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1つがノックダウンされた細胞に接触させた後、当該細胞における被験物質の作用を解析することを含む前記方法。
(41)血管構造の安定化作用を有する物質、血管透過性の抑制作用を有する物質、血管新生活性を有する物質又は血管新生活性を促進する物質をスクリーニングする方法であって、被験物質を、アドレノメデュリン、血管新生促進因子、アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質、カルシトニン受容体様受容体、及びアドレノメデュリン受容体からなる群から選ばれる少なくとも1つのタンパク質を有する細胞に接触させ、当該細胞における被験物質の作用を解析することを含む前記方法。
(42)血管構造の安定化作用を有する物質、血管透過性の抑制作用を有する物質、血管新生活性を有する物質又は血管新生活性を促進する物質をスクリーニングする方法であって、被験物質を、アドレノメデュリンをコードする遺伝子、血管新生促進因子をコードする遺伝子、アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質をコードする遺伝子、カルシトニン受容体様受容体をコードする遺伝子、及びアドレノメデュリン受容体をコードする遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1つを発現させた細胞に接触させ、当該細胞における被験物質の作用を解析することを含む前記方法。
(43)血管新生促進因子が、血管内皮細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子−2、アンジオポエチン、低酸素誘導因子−1α及びトランスフォーミング増殖因子−βからなる群から選ばれる少なくとも1つである、(39)〜(42)のいずれか1項に記載の方法
(44)アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質がRAMP1、RAMP2又はRAMP3である(39)〜(42)のいずれか1項に記載の方法。
図2は、AMホモノックアウトマウスにおいて発生段階の血管の構造異常を示す図である。
図3は、AMホモノックアウトマウスの卵黄動脈基底膜の異常を示す図である。
図4は、レーザードップラー灌流イメージングであり、AM投与群マウスの下肢において血流が回復されたことを示す図である。
図5は、AM投与群マウスにおいて下肢の創傷が改善されたことを示す図である。
図6は、AM投与による血流回復及び新生血管形成の増強を示す図である。
図7は、AMヘテロノックアウトマウス及びAM22−52投与マウスでは、血流及び新生血管形成が減少したことを示す図である。
図8は、血管内皮と線維芽細胞の共培養系における管腔形成を抗PECAM−1抗体を用いて免疫染色した結果を示す図である。
図9は、血管内皮と線維芽細胞の共培養系における管腔形成に対して、AMとVEGFとの併用効果を示す図である。
図10は、AMが、VEGFによるAkt及びeNOSのリン酸化を増強することを示す図である。
図11は、AM投与によりVEGFの発現が増加することをウェスタンブロッティングにより示した図である。
図12は、AM投与によりVEGF発現が増加したことをリアルタイムPCRにより示した図である。
図13は、AMヘテロノックアウトマウスを用いたレスキュー試験の結果を示す図である。
図14は、Flk−1ノックアウトマウスを用いたレスキュー試験の結果を示す図である。
図15は、AM処理による発現遺伝子を、遺伝子アレイを用いて解析した結果を示す図である。
図16は、AMが血管透過性を抑制することを示す図である。
図17は、AMの投与により浮腫が軽減することを示す図である。
図18は、AMの投与により脳浮腫が改善されたことを示す図である。
図19は、RAMP2ホモノックアウトマウスの卵膜を示す図である。
図20は、RAMP2ホモノックアウトマウスの13.5日目の胚を示す図である。
図21は、RAMP2ホモノックアウトマウスの13.5日目の胚における心嚢水の貯留を示す図である。
図22は、RAMP2ホモノックアウトマウスの14.5日目の胚における出血を示す図である。
図23は、RAMP2ホモノックアウトマウスの卵黄動脈の電顕写真の図である。
図24は、RAMP2ホモノックアウトマウスの大動脈壁の電顕写真の図である。
図25は、RAMP2ホモノックアウトマウスの大動脈壁の蛍光免疫染色の図である。
図26は、胎生13.5日目のマウス胎児における遺伝子発現の変化を、野生型マウスとRAMP2ホモノックアウトマウス間で比較した図である。
図27は、胎生13.5日目のマウス臍帯動脈における遺伝子発現の変化を、野生型マウスとRAMP2ホモノックアウトマウス間で比較した図である。
図28は、野生型マウス胎児の発生段階における、CRLR、AM、RAMP2及びRAMP3の発現量の時間経過を示す図である。
図29は、胎生10.5日のAGM(大動脈・性腺・中腎領域)をOP9細胞上で培養し、PECAM−1で免疫染色を行った結果を示す図である。
図30は、マトリジェル上で培養したHUVECに対して、AMあるいは、AM拮抗薬であるAM22−52を投与したときの、claudin5の遺伝子発現レベルの変化を示す図である。
図31は、RAMP2ヘテロノックアウトマウスの成体の大動脈および心臓におけるRAMP2、RAMP3、CRLR及びAMの発現量を測定した結果を示す図、並びに、RAMP2ヘテロノックアウトマウス及び野生型マウスの成体の血圧測定の結果を示す図である。
図32は、RAMP2ヘテロノックアウトマウス成体を用いたマトリゲルプラグアッセイを行った結果を示す図である。
図33は、高浸透圧物質の局注による下肢浮腫モデルの図である。
図34は、RAMP2を安定過剰発現させた内皮細胞株の樹立を示す図である。
図35は、RAMP2を安定過剰発現させた内皮細胞株を用いて、RAMP2、RAMP3、AM、CRLRの発現量を、対照細胞と比較した結果を示す図である。
図36は、マトリゲルアッセイによりインビトロ血管新生能を測定した結果を示す図である。
図37は、BrdU取り込みアッセイによりRAMP2過剰発現細胞と対照細胞の細胞増殖の比較を行った結果を示す図、及び、WST−8アッセイにより、RAMP2過剰発現細胞と対照細胞の細胞生存の比較を行った結果を示す図である。
図38は、アポトーシス刺激時の、RAMP2過剰発現細胞と対照細胞の細胞死の比較を行った結果を示す図、及び、アポトーシス関連遺伝子の発現を示す図である。
なお、本明細書において引用した文献、および公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。
本発明は、アドレノメデュリン、アドレノメデュリン分解酵素の活性を阻害する物質、アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質、カルシトニン受容体様受容体及びアドレノメデュリン受容体からなる群から選ばれる少なくとも1つを有効成分として含む血管新生剤、およびこれらの物質を用いた哺乳動物における血管新生方法に関する。
以下、本発明の血管新生剤について詳細に説明する。
1.アドレノメデュリン又はその関連タンパク質
本発明の血管新生剤として使用されるアドレノメデュリン(AM)は、1993年、北村、寒川らにより、ヒト褐色細胞腫組織から分離同定された、52個のアミノ酸からなるペプチド(配列番号2)である。AMは血管をはじめ、全身の組織に広く分布し、発見当初は血管拡張作用を有する血管作動物質として注目されたが、その後の研究から、血管拡張作用以外にも細胞の遊走、分化制御、抗炎症作用、体液量調節作用、強心作用などの多彩な生理活性を有することが分かってきた。
本発明において使用されるアドレノメデュリンは、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質のほか、アミノ酸配列2において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつアドレノメデュリン(AM)活性を有するもの(変異型AM)も含まれる。具体的には、
(i)配列番号2に示すアミノ酸配列のうち1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1個〜10個、さらに好ましくは1個〜5個))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
(ii)配列番号2に示すアミノ酸配列のうち1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1個〜10個、さらに好ましくは1個〜5個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換したアミノ酸配列、
(iii)配列番号2に示すアミノ酸配列のうち1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1個〜10個、さらに好ましくは1個〜5個))の他のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列、又は
(iv)上記(i)〜(iii)を組み合わせたアミノ酸配列からなり、かつ上記AMと同様の作用を有する変異型のAMペプチドを使用することもできる。
また、本発明で用いられるAMは、AM活性を有する限り、上記アミノ酸配列とホモロジーを有するペプチドでもよい。上記AMペプチドのアミノ酸配列と約85%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などがあげられる。
このような配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列をコードするDNAは、「Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))、Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488−92、Kunkel(1988)Method.Enzymol.85:2763−6等に記載の部位特異的変異誘発法等の方法に従って調製することができる。
また、DNAに変異を導入するには、Kunkel法やGapped duplex法等の部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばQuikChangeTM Site−Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site−Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site−Directed Mutagenesis System(Mutan−K、Mutan−Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて行うことができる。
ここで、AM活性とは、血管の構造を安定化させること及び/又は血管透過性を抑制することにより血管新生を促進させる活性をいう。「血管の構造を安定化させる」とは、血管内皮細胞同士の接着の安定化、内皮細胞と基底膜の接着の安定化、基底膜構造の安定化、血管平滑筋の層構造の安定化などにより、長期間に渡って安定した血管の管腔構造が維持されることを意味する。また、「血管透過性を抑制する」とは、血管内の水分や血球成分が、血管の中から漏れ出すことなく、出血や浮腫などの発生を抑制することを意味し、血管構造が安定することにより透過性が抑制されるものも含まれる。
血管の構造が安定化されたことの確認は、電子顕微鏡による形態学的観察、AMの欠損ノックアウトマウスによる血管構造の観察(後述)、接着因子や基底膜構成因子の発現、インビトロ血管形成アッセイ等により行うことができる。また、血管透過性が抑制されたことの確認は、インビトロ血管透過性アッセイ(後述)、ノックアウトマウスによる血管透過性の観察、水チャンネルの遺伝子発現等により行うことができる。
上記AMペプチドは、ペプチド合成により直接得ることが可能であるが、通常の遺伝子工学的手法(「Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))を用いて発現させることにより得ることもできる。
AMをコードするDNAの塩基配列を配列番号1(ヒト)及び配列番号13(マウス)に示す。AMをコードするDNAとしては、配列番号1若しくは13又はそれらの成熟タンパク質コード領域(配列番号1については439−594番、配列番号13については2548−2697番)で示される塩基配列からなるDNAのほか、上記配列番号1若しくは13又はそれらのタンパク質コード領域で示される塩基配列からなるDNAに対して相補的な塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ上記AM活性を有するタンパク質をコードするDNAを含む。このような活性を有するAMタンパク質をコードするDNAは、当業者に公知の方法で適当な断片を用いてプローブを作製し、このプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法により、cDNAライブラリー又はゲノムライブラリーから得ることができる。上記ハイブリダイゼーションにおいてストリンジェントな条件としては、たとえば、ハイブリダイゼーションにおいて洗浄時の塩濃度が100〜900mM、好ましくは150〜300mMであり、温度が50〜70℃、好ましくは55〜65℃の条件が挙げられる。ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、「Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons(1987−1997)等を参照することができる。ハイブリダイズするDNAとしては、配列番号1若しくは13又はこれらの成熟タンパク質コード領域の塩基配列に対して少なくとも50%以上、好ましくは70%、さらに好ましくは80%、より一層好ましくは90%(例えば、95%以上、さらには99%)の同一性を有する塩基配列を含むDNAが挙げられる。
また、本発明においては、AMだけでなく、AM分解酵素の活性を阻害する物質、AM受容体活性改変タンパク質(RAMP)、カルシトニン受容体様受容体(CRLR)及びアドレノメデュリン受容体(AMR)なども本発明の血管構造安定化剤、血管透過性抑制剤、あるいは血管新生剤として使用することができる。これらのタンパク質を、本明細書ではAM関連タンパク質という。AM及びAM関連タンパク質のアミノ酸配列、及びこれらのタンパク質をコードする遺伝子を以下に示す。
上記遺伝子及びタンパク質のAccession Number及び配列番号は表1の通りである。
上記タンパク質をコードする遺伝子及びその変異型、並びにタンパク質及びその変異型は、アクセッション番号の情報を利用して、あるいは上記AM及びその変異体について記載したものと同様にして調製することができ、本発明において使用することができる。
2.血管新生
血管新生は、個体の成長過程において、発生初期から各臓器又は各組織において見られる生理現象の一つである。本発明においては、創傷治癒、あるいは壊死を起こした組織への血管再生など、本来血管が存在しなかった組織に新たな血管が形成すること、及び病的原因により欠失又は傷害を受けた組織(本来血管が存在していた組織)に血管を再生させることの両者を意味する。
ここで、血管新生のメカニズムは、
(a)新たな毛細血管の形成を促す因子である血管新生促進因子が分泌され、近傍の血管に働きかけて血管内皮細胞を活性化するステップ、
(b)活性化した血管内皮細胞内の酵素が基底膜を分解するステップ、
(c)血管内皮細胞の遊走及び増殖ステップ、並びに
(d)血管内皮細胞が血管腔を形成するステップ
が含まれる。本発明では、この血管新生のメカニズムのほかに、AM又はAM関連タンパク質が血管構造を安定化して血管新生を促進するメカニズムが示され、これにより、AMが血管新生を促進する作用を有することが明らかになった。以下、本発明では、便宜上AM又はAM関連タンパク質のうちAMを例示して説明する場合がある。
AMが血管構造を安定化させることを確認するには、上記の通り電子顕微鏡による形態学的観察、AMの欠損ノックアウト動物による血管構造の観察、接着因子や基底膜構成因子の発現、インビトロ血管形成アッセイ等により行うことができる。例えば、AMが欠失したノックアウトマウスを作製し、野生型の動物と比較して、ノックアウトした場合の異常を観察すればよい。ノックアウト動物(マウス)は公知の手法を用いて作製することができる。ここで、AMを欠失させるには、通常のノックアウトマウス作製技術(Circulation 104:1964−71,2001)等により行うことができる。例えば、AM遺伝子の一部をネオマイシン耐性遺伝子で置換したターゲティングベクターを作製し、ES細胞に導入することにより、元々のゲノム配列との間で相同組換えを人為的に起こさせ、AM遺伝子を破壊したES細胞を作製する。このES細胞を、マウス胚盤胞にマイクロインジェクションすることで、キメラマウスを作製し、更にこのキメラマウスから、ノックアウトマウスを作製する。
ホモAMノックアウトマウスには、卵黄動脈の発達不全、胎児における出血及び浮腫、心嚢水貯留が見られる(図1)。また、このホモAMノックアウトマウスの血管内腔を電子顕微鏡で観察すると、発生段階の血管の構造異常が認められる(図2)。さらに、ホモAMノックアウトマウスにおける卵黄動脈基底膜をHE染色、蛍光免疫染色、免疫電顕で観察すると、卵黄動脈基底膜に異常が認められる(図3)。これより、AMは、正常な血管の発生や構造維持に必須であることが示される。
本発明では、さらに、上記のメカニズムのほかに、AMが血管透過性を抑制することにより血管新生を促進するメカニズムがあることが示され、これによって、AMが血管新生を促進する作用を有することが明らかとなった。ここで、血管透過性が抑制されることにより、血管新生が促進されるメカニズムは以下の通りである。すなわち、血管内皮細胞は、細胞間に密着結合という密着構造が発達しており、通常は、低分子といえども自由に通過できるものではない。しかし、血管内皮細胞に障害がおこり、炎症を起こした場所では、その細胞間の間隙が開くことにより、通常では通過できないような血漿タンパク質が血管外へ漏れ出してしまう。従って、障害を起こしているような血管内皮細胞では、できるだけ血管透過性が抑制されることが望まれる。この血管透過性の抑制により血管新生が促進されるのである。
AMが血管透過性を抑制することは、インビトロ血管透過性アッセイにより確認することができる。インビトロ血管透過性アッセイとは、底面が半透過性膜製の容器を培養プレート上に設置し、容器内に細胞が膜状に単層を形成するように培養したものを用いて、容器内に添加した物質がどの程度プレートに移行したかを測定するアッセイである。具体的には、このような容器内の細胞層に、AMなどの血管透過性試験に供する物質を添加した後、FITC標識したデキストランを細胞層の上から添加して、プレート側に移行した蛍光を測定することにより透過性を測定する。これにより、AMの細胞透過性抑制活性を調べることができる。
血管新生促進因子には、上記した4つのステップからなる血管新生を促進させる機能を有する物質が含まれる。このような血管新生促進因子としては、例えば血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、線維芽細胞増殖因子−2(FGF−2)、アンジオポエチン、低酸素誘導因子−1α(HIF−1α)及びトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)などが挙げられ、これらの中の1種又は複数種をAMと併用することができる。例えば、AM及びVEGFを共に動物に投与した場合は、AM及びVEGFをそれぞれ単独で投与した場合に比べて血管新生が促進することが、血管新生のインビトロモデル、すなわち、血管内皮細胞の管腔側に発現するPECAM−1(Platelet Endothelial Cell Adhesion Molecule−1)を免疫染色して得られる結果より明らかとなった(図8、9)。
また、AMには、他の血管新生促進因子や接着因子の発現を誘導する作用がある。接着因子とは、細胞同士の結合を促進する活性を有する物質をいう。AMが他の血管新生促進因子等の発現を誘導する例としては、PI3K−Akt−eNOS経路を介して一酸化窒素(NO)が発現する場合が挙げられる。一酸化窒素(NO)は、炎症を抑え、血管形成を誘導する血管新生促進因子として広く知られている。このNOのPI3K−Akt−eNOS経路を介する発現のメカニズムは以下の通りである。すなわち、VEGFやHGF(肝細胞成長因子)等の血管新生促進因子が、ホスファチジルイノシトール 3−キナーゼ(PI3K)を介して、プロテインキナーゼAktの活性型への変換を誘導し、次に活性型Aktは内服細胞のNO合成酵素(eNOS)をリン酸化して活性型に変えることにより、NOの発現が促進されるというものである。ここで、AMは、VEGFによるAkt及びeNOSのリン酸化を促進することにより、NOの合成の促進に寄与する(図10)。AMにより発現が誘導される他の血管新生促進因子としては、例えばPDGF−A(platelet derived growth factor−A;血小板由来増殖因子−A)、PDGFRβ(PDGF receptorβ;PDGF受容体β)、Tie−2、TGF−β、β−glycan、eNOSなどが挙げられる。また、AMにより発現が誘導される他の接着因子、基底膜因子としては、VCAM−1(vascular cell adhesion molecule−1)、カドヘリンファミリー、インテグリン、オステオポンチン、claudin5、カテニンα1又は2、4型コラーゲン、ラミニンなどが挙げられる。
また、AM受容体、及びAMの受容体修飾因子である受容体活性改変タンパク質(RAMP、receptor activity modifying protein)も、血管構造の安定化に寄与する。RAMPは細胞膜を一回貫通するタンパク質であり、RAMP1〜3の存在が知られている。このRAMPは、カルシトニン受容体様受容体(calcitonin receptor like receptor、CRLR)と共発現すると、RAMP1はCRLRと共にカルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体を構成し、さらに、類似の分子であるRAMP2あるいはRAMP3が、同じCRLRと結合し、アドレノメデュリン受容体を構成し、その結果、細胞膜への輸送及びリガンドの特異性が決定されるというメカニズムが知られている。本発明者は、RAMP2ノックアウトマウスが、発生の途中で脈管構造の破綻を示し、著明な浮腫や、出血を生じる事を見いだしている。一方RAMP2を内皮細胞に過剰発現させると、血管構造が安定し、血管新生が促進されることを見いだしている。このことから、RAMPが血管の構造安定化、血管透過性抑制、血管新生に必須であることを明らかとしている。
従って、本発明においては、上述の血管新生のために血管構造を安定化する作用、あるいは血管の透過性を抑制する作用を利用することができる。
AM受容体及びRAMPが血管構造を安定化させることを確認するには、RAMP遺伝子のジーンターゲティングを行うことにより、RAMP遺伝子ノックアウト動物を作製し、電子顕微鏡での観察、免疫染色、及び遺伝子発現などの手段を用いて野生型の動物と比較して、ノックアウト動物における血管の異常の有無を観察すればよい。ジーンターゲティングは当業者に一般的な方法を用いることができる。このRAMPのノックアウト動物から得られた卵膜や胎児を観察すると、浮腫及び血管の不形成等の異常が見られる。具体的には、卵黄動脈の発達抑制、胚浮腫、心嚢水の貯留、出血などが認められる。出血や浮腫の原因としては、血管内皮細胞の基底膜からの剥離、大動脈における血管平滑筋層の菲簿化、大動脈血管壁の4型コラーゲン及びαアクチンの発現低下などが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、ホモノックアウトの胎児や臍帯動脈等を用いて、細胞接着因子であるcadherin 3、claudin 5及び、基底膜の主な構成成分である4型コラーゲンなどの遺伝子発現を比較すると、RAMPホモノックアウトの胎児では、これらの細胞接着因子や基底膜因子の発現が低下している。従って、これらの因子の発現調節にRAMPが関与していると考えられる。また、血管原基である、大動脈、性腺、中腎領域をホモノックアウトマウス胎児から採取し、OP9細胞上で培養すると、脈管の発達が減弱していることが確認される。一方、RAMPヘテロノックアウトマウス成体では、血管におけるRAMPの発現は半減しているが、マトリゲルプラグアッセイによる血管新生も減少している。これにより、RAMPは正常な血管の発生、血管構築の安定化に必須であることが示される。また、AM−RAMPのシグナル系が、細胞接着や血管基底膜構造を安定化させ、血管構造の安定化に寄与している。したがって、AM受容体及びAMの受容体修飾因子RAMPも血管形成(血管新生)に必須であることが示される。
ここで、RAMPの介在によりAMシグナルを調節する物質(AM様物質)も、細胞接着や血管基底膜構造を安定化させ、血管構造の安定化に寄与すると考えることができる。従って、このようなAM様物質も血管形成(血管新生)に関与しうる。このようなAM様物質は、例えばRAMPを発現した細胞において細胞内シグナル伝達を誘導することができる物質である。
3.RAMP2過剰発現細胞株の樹立
本発明では、RAMP2に着目し、ヒト臍帯静脈由来内皮細胞を細胞株化したEAhy926細胞を用いて、RAMP2遺伝子を過剰に発現する細胞株を樹立した。具体的には、ヒトRAMP2 cDNA約580bpを公知の発現ベクターに挿入し、連結したのち、発現ベクターを宿主に導入することにより細胞株を得た。なお、発現ベクター及び宿主は、目的とする遺伝子を発現できるものであれば特に限定されず、例えば、宿主としてEAhy926細胞のほか、HUVEC細胞等を使用することができる。
これにより、コントロール細胞と比較して、RAMP2遺伝子を約1000倍過剰発現する細胞を作製することができる。
RAMP2過剰発現細胞の性質は以下の通りである。
RAMP2過剰発現細胞株の細胞増殖能はコントロール細胞と比較すると低下するが、アポトーシス刺激に対する応答は、コントロール細胞と比較すると抵抗性を示し、マトリゲル上における管腔形成能は、RAMP2過剰発現細胞で著明に亢進する。
また、マトリゲル上で培養したRAMP2過剰発現細胞では、内皮細胞のタイトジャンクションを作る重要な因子であるclaudin 5の遺伝子発現が亢進する。これは、リアルタイムPCR法により確認することができる。
このように、RAMP2強制発現系は、細胞内cAMP上昇活性などをマーカーにすることにより、AM様活性を示し、血管新生を促進する物質のスクリーニングに利用可能である。
4.血管構造安定化剤、血管透過性抑制剤、血管新生剤及び医薬組成物
本発明の血管構造安定化剤、血管透過性抑制剤及び血管新生剤は、虚血性疾患又は浮腫を治療又は予防することを目的とするものであり、AMを有効成分として含むものである。また、前記AM関連タンパク質、すなわち他の公知の血管新生促進因子、AM分解酵素の活性を阻害する物質、RAMP、CRLR、AMR(AM受容体)(「血管新生促進因子等」ともいう。)も血管新生に関与している。従って、本発明の血管構造安定化剤、血管透過性抑制剤、血管新生剤は、血管新生促進因子、AM分解酵素の活性を阻害する物質、RAMP、CRLR若しくはAMR又はこれらの組み合わせ(AM関連タンパク質)を有効成分として含むものである。
よって、本発明において血管新生を促進するには、これらのAM若しくはAM関連タンパク質を単独で、又は適宜組み合わせて使用してもよい。すなわち、本発明は、AM、血管新生促進因子、アドレノメデュリン分解酵素の活性を阻害する物質、RAMP、CRLR及びAMRからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、虚血性疾患又は浮腫の治療又は予防剤を提供する。
また、本発明においては、AMと、血管新生促進因子、AM分解酵素の活性を阻害する物質、RAMP、CRLR及びAMRのうちいずれか1つ又は組み合わせ(AM関連タンパク質)とを併用投与するための医薬組成物を提供する。「併用投与」とは、AMと血管新生促進因子等とを混合して同時に投与する方法、一方を投与してから他方を投与する方法(投与する順序は問わない)のいずれをも意味するものである。同一の投与スケジュール内にAMとAM関連タンパク質とが投与される限り、本発明における「併用投与」に含まれる。
AM分解酵素を阻害する物質としては、具体的には、omaptrilat等のペプチダーゼインヒビターが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
虚血性疾患とは、循環系の障害により、臓器の血流が低下した結果生じる疾患を意味し、動脈硬化性疾患が代表的である。動脈硬化性疾患などの虚血性疾患としては、例えば脳梗塞、心筋梗塞、狭心症、閉塞性動脈硬化症、バージャー病(閉塞性血栓血管炎(thromboangiitis obliterans)ともいう)、その他の動脈硬化性疾患が挙げられる。なお、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症及びバージャー病は、動脈硬化性疾患でとあるとともに虚血性疾患でもあるが、本明細書においては、便宜上、虚血性疾患の一部として説明する。
浮腫とは、細胞間隙に水分が異常に貯留した状態を意味し、全身的にも局所的にも起こりうる。浮腫発生の全身的因子としては、腎における水とナトリウムの排泄障害があり、局所因子としては、毛細血管壁を介しての水分の交流、リンパ流、組織の水保持力などがある。浮腫は、これらの因子が複雑に絡みあって発生する。浮腫には、脳浮腫、心浮腫、腎浮腫、肝浮腫、栄養性(低タンパク質性)浮腫、血管性浮腫、血管神経性浮腫、炎症性浮腫、アレルギー性浮腫、網膜浮腫、下腿浮腫などが含まれるが、脳浮腫が好ましい。
本発明の血管構造安定化剤、血管透過性抑制剤、血管新生剤又は医薬組成物を使用する場合は、適用部位は特に限定されず、血管、関節、皮膚、目、鼻、腫瘍等を対象として適用される。また、本発明において、上記虚血性疾患又は浮腫の種類は1種類に限定されるものではなく、複数種の疾患又は浮腫が併発したものでも、適用の対象となる。
本発明の血管構造安定化剤、血管透過性抑制剤、血管新生剤又は医薬組成物は、血管新生を必要とする哺乳動物に投与することができる。投与の対象となる哺乳動物としては、例えばヒトのほか、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の家畜、イヌ、ネコ等の愛玩動物、マウス、ラット、モルモット、ウサギ等の実験動物が挙げられるが、これらの動物に限定されるものではない。
本発明の血管構造安定化剤、血管透過性抑制剤、血管新生剤又は医薬組成物の投与形態は、経口、非経口投与のいずれでも可能である。経口投与の場合は、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤もしくはシロップ剤等による投与が可能である。非経口投与の場合は、注射剤、座剤もしくは点眼剤等、経肺剤型(例えばネフライザーなどを用いたもの)、経鼻投与剤型、経皮投与剤型(例えば軟膏、クリーム剤)等が挙げられる。注射剤型の場合は、例えば点滴等の静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射等により全身又は局部的に投与することができる。これらの製剤は、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤などの医薬上許容される添加剤を用いて周知の方法で製造される。
賦形剤としては、例えば、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン等のデンプン、乳糖、結晶セルロース、リン酸水素カルシウム等を挙げることができる。
滑沢剤(コーティング剤)としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セラック、タルク、カルナウバロウ、パラフィン等を挙げることができる。
結合剤としては、例えばポリビニルピロリドン、マクロゴール及び前記賦形剤と同様の化合物を挙げることができる。
崩壊剤としては、例えば前記賦形剤と同様の化合物及びクロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン・セルロース類を挙げることができる。
安定剤としては、例えばメチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾール等のフェエノール類が挙げられ、さらに、チメロサール;デヒドロ酢酸;及びソルビン酸を挙げることができる。
矯味矯臭剤としては、例えば通常使用される、甘味料、酸味料、香料等を挙げることができる。
また、液剤を製造するための溶媒としては、エタノール、フェノール、クロロクレゾール、精製水、蒸留水等を使用することができる。
界面活性剤又は乳化剤としては、例えば、ポリソルベート80、ステアリン酸ポリオキシル40、ラウロマクロゴール等を挙げることができる。
上記添加物等は、本発明の血管新生剤の剤型に応じて上記の中から単独で又は適宜組み合わせて選ばれる。例えば、注射用製剤として使用する場合、精製されたAMを溶剤(例えば生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液等)に溶解し、これにTween80、Tween20、ゼラチン、ヒト血清アルブミン等を加えたものを使用することができる。あるいは、使用前に溶解する剤形とするために凍結乾燥したものであってもよい。凍結乾燥用賦形剤としては、例えば、マンニトール、ブドウ糖等の糖アルコールや糖類を使用することができる。
本発明の血管構造安定化剤、血管透過性抑制剤、血管新生剤又は医薬組成物の投与量は、年齢、性別、症状、投与経路、投与回数、剤型によって異なる。投与方法は、患者の年齢、症状により適宜選択する。有効投与量は、例えば、50ng/時間で持続投与することができ、一回につき体重1kgあたり1.0〜5.0μg/時間である。但し、上記血管構造安定化剤、血管透過性抑制剤及び血管新生剤はこれらの投与量に制限されるものではない。
本発明の血管構造安定化剤、血管透過性抑制剤及び血管新生剤は、上記の通り公知の血管新生促進因子を併用することもできる。本発明で用い得る血管新生促進因子は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、線維芽細胞増殖因子−2(FGF−2)、アンジオポエチン、低酸素誘導因子−1α(HIF−1α)及びTGF−βがあるが、これらに限定されるものではない。
本発明の併用療法用医薬組成物において、上記AMとAM関連タンパク質の投与量は、年齢、性別、症状、投与経路、投与回数、剤型によって異なる。投与方法は、患者の年齢、症状により適宜選択する。有効投与量は、例えば、50ng/時間で持続投与することができ、一回につき体重1kgあたり1.0〜5.0μg/時間であるが、これらに制限されるものではない。
本発明の血管構造安定化剤、血管透過性抑制剤、血管新生剤及び医薬組成物の効果は、以下のように試験を行い、検討することができる。例えば、下肢虚血モデルマウスを用いて血管新生能を評価することができる(実施例参照)。
また、AMノックアウトマウスを用いたレスキュー試験を行うことができる。AMの発現量の低下しているAMノックアウトマウスでは、下肢虚血モデルを作製したときに血管新生能が低下しているが、このAMノックアウトマウスに外因性にAMを補充投与すると、血管新生能が回復することを確認することができる。これを「レスキュー試験」という。
さらに、本発明においては、AMやAM関連タンパク質(血管新生促進因子、アドレノメデュリン分解酵素の活性を阻害する物質、アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質、カルシトニン受容体様受容体及びアドレノメデュリン受容体)を血管新生が必要な哺乳動物(ヒト又は非ヒト哺乳動物)に投与することによって血管を新生させ、あるいは上記AMやAM関連タンパク質を血管新生が必要な哺乳動物において発現(例えば遺伝子発現)させることにより、当該哺乳動物において血管を新生させることができる。「発現」とは、哺乳動物内においてAMやAM関連タンパク質を産生させることをいう。遺伝子治療を行う場合は、AM遺伝子、血管新生促進因子をコードする遺伝子、RAMPをコードする遺伝子、CRLRをコードする遺伝子、AMRをコードする遺伝子を単独で、又は適宜組み合わせて哺乳動物に投与することを特徴とする。
遺伝子治療の場合は、それぞれの遺伝子を注射により直接投与する方法のほか、核酸が組込まれたベクターを投与する方法が挙げられる。上記ベクターとしては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター等が挙げられ、これらのウイルスベクターを用いることにより効率よく投与することができる。
また、上記遺伝子をリポソームなどのリン脂質小胞体に導入し、その小胞体を投与することも可能である。例えば、上記遺伝子を保持させた小胞体をリポフェクション法により所定の細胞に導入する。そして、得られる細胞を例えば静脈内、動脈内等に全身投与する。細胞は、脳等に局所投与することもできる。
本発明の血管構造安定化剤、血管透過性抑制剤、血管新生剤又は医薬組成物の投与量は、年齢、性別、症状、投与経路、投与回数、剤型によって異なるが、遺伝子治療の場合、例えばアデノウイルスの場合の投与量は1日1回あたり106〜1011個程度である。
遺伝子治療に使用されるAM遺伝子やRAMP遺伝子等を目的の組織又は器官に導入するために、市販の遺伝子導入キット(例えばアデノエクスプレス:クローンテック社)を用いることもできる。
さらに、本発明の血管構造安定化剤、血管透過性抑制剤、血管新生剤や血管新生方法により虚血性疾患又は浮腫を治療又は予防できることは、例えば、以下のように高浸透圧物質の局注による下肢浮腫モデルの試験を行うことにより確認することができる(実施例参照)。
5.スクリーニング方法
本発明は、AM又はAM関連タンパク質の発現が、発現低下(ノックダウン)した細胞又は動物(例えば実験哺乳動物)を利用して、血管構造の安定化作用を有する物質、血管透過性の抑制作用を有する物質、血管新生活性を有する物質又は血管新生活性を促進する物質をスクリーニングする方法を提供する。例えば、被験物質を、AM遺伝子又はAM関連遺伝子の発現が低下(ノックダウン)している動物に投与した後、当該動物における被験物質の作用(例えば血管新生の改善の有無)を解析することにより、目的の物質を得ることができる。
また本発明は、AM又はAM関連タンパク質を有する細胞、あるいは、AM又はAM関連タンパク質を過剰発現させた細胞を用いて、これらの細胞に被験物質を接触させ、当該細胞における被験物質の作用を解析することにより、血管構造の安定化作用を有する物質、血管透過性の抑制作用を有する物質、血管新生活性を有する物質又は血管新生活性を促進する物質をスクリーニングする方法(例えばin vitroでスクリーニングする方法)も提供する。
「被験物質の作用」とは、候補物質が上記発現したタンパク質に結合することにより細胞内に特定の現象を引き起こす作用を意味し、AM又はAM関連タンパク質の活性を促進する作用及び抑制する作用の両方を含む。「解析する」とは、これらの相互作用により血管新生活性を有するか否か、あるいは血管新生活性を促進するか否かを測定することをいう。相互作用のメカニズムには、受容体との相互作用、細胞内シグナル伝達などが含まれる。一般的には、前記血管新生を必要とする疾患の治療及び予防を目的としたアゴニスト又はアンタゴニストがスクリーニングされる。
具体的なスクリーニング方法としては、被験物質を、AM又はAM関連タンパク質(例えばRAMP2)が過剰発現した細胞と接触させた後、当該細胞内シグナル伝達の有無を測定し、AMと同様のシグナル伝達を示す物質を選択すればよい。
細胞内シグナル伝達は、市販品として入手可能な検出アッセイキットを用いて測定することができる。例えば、細胞内cAMP、cGMP、カルシウムイオン、イノシトール三リン酸等のセカンドメッセンジャー;アデニル酸シクラーゼ、フォスフォリパーゼ等のセカンドメッセンジャー合成酵素;チロシン/スレオニンキナーゼ等のタンパク質キナーゼ;タンパク質脱リン酸酵素;低分子型GTP結合タンパク質(Gタンパク質、rasタンパク質等);カスパーゼ等の上昇活性を指標とすることができる。
本発明のスクリーニング方法の対象となる物質は、血管構造の安定化作用を有する物質、血管透過性の抑制作用を有する物質、血管新生活性を有する物質又は血管新生活性を促進する物質であり、特にRAMPが介在することによりAM受容体と結合するAM様物質である。
「血管構造の安定化作用を有する物質」とは、前記用語「血管の構造を安定化させる」において定義した作用を有する物質を意味し、血管内皮細胞同士の接着の安定化、内皮細胞と基底膜の接着の安定化、基底膜構造の安定化、血管平滑筋の層構造の安定化などにより、長期間に渡って安定した血管の管腔構造を維持させる作用を有する物質を意味する。
「血管透過性の抑制作用を有する物質」とは、前記用語「血管透過性を抑制する」において定義した作用を有する物質を意味し、血管構造が安定することにより、血管内の水分や血球成分が、血管の中から漏れ出すことなく、出血や浮腫などの発生を抑制する作用を有する物質を意味する。
「血管新生活性を有する物質」とは、それ自身が血管新生活性を有する物質を意味しVEGFなどの増殖因子と同様の機能を有する物質が挙げられる。
また、「血管新生活性を促進する物質」は、血管新生活性を有する物質の発現や活性を亢進する物質、及び血管新生活性を抑制する物質の発現や活性を、抑制することにより血管新生活性を引き起こす物質の両者を意味する。
スクリーニングに供される被験物質としては、例えばペプチド、ポリペプチド、合成化合物、微生物、微生物代謝物、動植物の組織又は細胞からの抽出物、あるいはそれらのライブラリーが挙げられる。ライブラリーとしては、合成化合物ライブラリー(コンビナトリアルライブラリーなど)、ペプチドライブラリー(コンビナトリアルライブラリーなど)などが挙げられる。スクリーニングに供される物質は、天然物でも合成物でもよく、また候補となる単一の化学物質を独立に試験しても、いくつかの候補となる化学物質の混合物(ライブラリーなどを含む)について試験をしてもよい。また、細胞抽出物については、分画を重ねて、所望の活性を有する物質を単離することも可能である。
目的物質が、血管構造の安定化作用を有するかどうかは、前記説明した任意の手法、例えば電子顕微鏡による形態学的観察、ノックアウトマウスによる血管構造の観察、接着因子や基底膜構成因子の発現、インビトロ血管形成アッセイ等により行うことができ、何ら限定されるものではない。上記レスキュー試験を行うことで判断又は確認することもできる。
また、血管透過性の抑制作用を有するかどうかは、インビトロ血管透過性アッセイ、ノックアウトマウスによる血管透過性の観察、水チャンネルの遺伝子発現等により行うことができ、何ら限定されるものではない。上記レスキュー試験を行うことで判断又は確認することもできる。
目的物質が血管新生作用を有するかどうか、あるいは血管新生を促進する作用を有するかどうかは、例えば上記レスキュー試験を行うことで判断又は確認することができる(但し、レスキュー試験に限定されるものではない)。そして、AM又はAM関連タンパク質ノックアウトマウスでは、卵黄動脈の発達不全、胎児における出血及び浮腫、心嚢水貯留などの改善が見られ、血管の発生や構造維持がされたか否かを指標とすることができる。血管の発生や構造維持は、HE染色、免疫蛍光染色、電子顕微鏡観察等により上記判断を行っても良い。
細胞を用いてin vitroスクリーニングを行う場合は、AM受容体や、RAMPを過剰発現させた細胞に対して、候補物質を投与する。in vitroのマトリジェル培養上での管腔構造の亢進を来す物質、あるいは、細胞内のcAMPの活性化又はPI3K−Akt−eNOS系の活性化を来す物質は、AM受容体やRAMPを介して血管新生を促進する物質であると判断することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
マウスAM遺伝子のエクソン1−3及び4の一部をネオマイシン耐性遺伝子で置換するようにターゲティングベクターを作製した。
すなわち、AM遺伝子のcDNAをプローブとして、129マウス由来ゲノムのλファージライブリーからAMゲノム配列を含むλファージクローンをスクリーニングした。このクローンから、AM遺伝子のエクソン1より5’側約7.8kbのフラグメントと、エクソン4の途中から3’側までの約1kbのフラグメントを制限酵素で切り出し、これら2つのフラグメントを、間にネオマイシン耐性遺伝子(PGK−neor)を挟みこむようにしてpBluescriptにサブクローニングしてターゲティングベクターを作製した。このターゲティングベクターとゲノムDNAの間で相同組換えを起こすことにより、AM遺伝子のエクソン1−3及びエクソン4の一部を含む2.4kbのゲノムDNAが破壊されるように設計した。
得られたベクターをエレクトロポレーションで、マウスES細胞に導入した。導入遺伝子がゲノム配列と相同置換されたES細胞をスクリーニングし、このES細胞を、マウス胚盤胞にマイクロインジェクションし、キメラマウスを作製した。キメラマウスと野生型マウスを交配し、導入遺伝子を引き継いだマウスを選別し、AMヘテロノックアウトマウスを得た。ヘテロマウス同士を交配することで、ホモマウスを得た。
その結果、胎生13.5日のAMホモノックアウトマウスでは、卵黄動脈の発達不全、胎児における出血及び浮腫、心嚢水貯留が見られ、AMが正常な血管の発生や構造維持に必須であることが示された(図1)。
図1において、パネルAは、卵膜、胎盤、パネルBは、胎仔、パネルCは胎仔心臓、心嚢を表す。パネルの上段は野生型、下段はAMホモノックアウトマウスのものである。
また、胎生12.5日のAMホモノックアウトマウスの血管内腔を電子顕微鏡で観察したところ、発生段階の血管の構造異常が認められた(図2)。図2において、パネルAの左側は走査電子顕微鏡写真、右側は透過電子顕微鏡写真であり、パネルBは、透過電子顕微鏡写真の模式図を表す。正常マウス(パネルA及びBの「+/+」)では、正常に血管が形成されているのに対し、ホモノックアウトマウス(パネルA及びBの「−/−」)では血管に多数の空隙が生じた。
さらに、ホモAMノックアウトマウスにおける卵黄動脈基底膜をHE染色、免疫蛍光染色、免疫電顕で観察した結果、卵黄動脈基底膜を作る4型コラーゲンの発現に異常が認められた(図3)。図3において、パネルAはHE染色像、パネルBは免疫染色像、パネルCは免疫電子顕微鏡写真を表す。
ホモAMノックアウトマウス(AM−/−)は、胎生致死のため、以下の実験では、ヘテロAMノックアウトマウスを用いた。
まず、以下の手法により、マウス下肢虚血モデルを作製した。
C3Hマウスをネンブタールによって麻酔した後、片側下肢の皮膚を切開し、大腿動脈を露出させた。上側は鼠径部、下側は膝窩部で大腿動脈を結紮し、この範囲の大腿動脈を切除し、下肢虚血モデルを作製した。大腿動脈切除後の側副血行の発達による血流の回復を観察した。
6月齢のC3HマウスをAM投与群、VEGF投与群、コントロール(対照)群の3つに分けた。AM処理群のマウスは、浸透ポンプを用いてAM(50ng/h)を継続的に注射した。VEGF群は、マウス一匹あたり20μlのVEGF(5ng/h)を筋肉内注射し、ポジティブコントロールとした。コントロール群のマウスには、PBSを継続的に注射した。
下肢虚血モデルにおける血流の観察を、レーザードップラー灌流イメージングにより行った。また、AMによる創傷治癒の効果を調べた。その結果、AM投与群のマウスにおいて、下肢の血流回復の改善が認められた(図4、「AM」)。図4において、虚血モデル作製初日(Day0)では虚血にした足の血流が殆ど認められなかったものが、7日目及び12日目にはAM投与群で、血流が回復してきていることが分かる。また、AM投与マウスにおいて創傷の縮小が観察され、虚血後に下肢が切断されるもの及び下肢が短縮するものが減少した(図5)。図5において、AM投与マウスでは、下肢が正常又は創傷がわずかであったマウスが80%を超え、下肢が切断したマウス又は創傷が重症のマウスは対照と比較して少なかった。
図中、「*」はp<0.05を表す。本明細書において、以下同様。
虚血を行わない側(右側:R)の下肢の血流に対して、虚血を行った側(左側:L)の下肢の血流を比(L/R)として血流の回復を定量化すると、AM投与により有意に血流が回復することが確認された(図6、パネルA)更に手術を行った側の下肢の筋肉内の新生血管の数が増加していた(図6、パネルB)。これに対し、AMヘテロノックアウトマウス(AM+/−)、及びAMのアミノ酸配列のうち22番から52番のアミノ酸配列からなる切断型変異体「AM22−52」(AMアンタゴニスト)を投与したマウスでは、血流回復及び新生血管形成が抑制されていた(図7)。図7中、「**」はp<0.01を表す。本明細書において以下同様。
ヒト皮膚由来線維芽細胞と、ヒト臍帯静脈由来内皮細胞(HUVEC)の共培養を11日間行った上、PECAM−1(Platelet Endothelial Cell Adhesion Molecule−1)抗体を用いて、免疫染色すると、管腔構造形成を描出することができる。この系を用いて、インビトロで、血管新生能を評価することができる。そこでAMやVEGFをこの培養系に投与し、血管新生能の評価を行った。
結果を図8及び図9に示す。図8において、パネルAは対照、パネルBはVEGFを投与したときの結果を、パネルCはAMを投与したときの結果、パネルDはAMとVEGFを併用投与したときの結果を表す。また、図9において、パネルAはAMを単独使用したときの血管の長さ(相対比)、パネルBはAMとVEGFとを併用したときの血管の長さ(相対比)、パネルCは細胞数(相対比)を示す。内皮細胞及び繊維芽細胞において、AM及びVEGFを共に投与して培養した場合は、AM又はVEGFを単独で投与した場合に比べて、PECAM−1染色により、管腔構造が多く描出された(図8、パネルD)。この結果は、AMとVEGFとの併用により、血管新生が亢進したことを示すものである。
また、AM及びVEGFを併用すると濃度依存性に管腔形成が増強された(図9、パネルB)。また別の実験として、血管内皮細胞の細胞増殖を培養系で確認したところ、VEGF又はAMをそれぞれ単独投与するよりも、併用の場合に細胞数の増加が亢進していることも確認された(図9、パネルC)。図9において「##」は、AM単独投与群と比較したときのp<0.01を表す。
ヒト臍帯静脈由来内皮細胞(HUVEC)の培養系に対し、AM(10−11〜10−7M)単独、あるいはAM及びVEGF(10ng/ml)の併用投与を行い、細胞からタンパク質を抽出し、ウェスタンブロッティングを行い、Akt及びeNOSのリン酸化を検討した。
その結果、AMは、VEGFによるAkt及びeNOSのリン酸化を増強した(図10)。図10において、パネルAはAktのリン酸化、パネルBはeNOSのリン酸化を表す。このことから、AMは、VEGFのシグナル系であるPI3K−Akt−eNOS経路を増強することが確認された。
実施例2と同様に作製したマウス虚血下肢モデルにおいて、マウスを頚髄脱臼にて屠殺後、大腿部筋肉をサンプリングし、ここからタンパクを抽出し、ウェスタンブロッティングを行った。
結果を図11に示す。図11において、パネルAは、AM投与群と対照群の虚血下肢サンプルのVEGFのウェスタンブロッティング、パネルBは、パネルAを定量化したもの、パネルCはAMノックアウトマウスと野生型マウスの虚血下肢サンプルのVEGFのウェスタンブロッティング、パネルDは、パネルCを定量化したものを表す。
VEGFの発現は、AMを投与したマウスで、虚血手術後の初期(1日目)から増加していた(図11、パネルA及びB)。これに対し、AMヘテロノックアウトマウス(AM+/−)においては、野生型に比してVEGFの発現が低下していた(図11、パネルC及びD)。
また、ヒト動脈内皮細胞(HAEC)におけるVEGF発現を、RT−PCRにより解析した。
結果を図12に示す。図12において、パネルAは、VEGF発現のAM濃度依存性、パネルBは、VEGF発現のAM刺激時間依存性を表す。AM投与により、濃度依存的及び時間依存的にVEGF発現が増加した(図12、パネルA及びB)。
本実施例では、実施例2と同様にマウス下肢虚血モデルを作製し、AMヘテロノックアウトマウス(AM+/−)に、外因性にAMあるいはVEGFの補充投与を行ったときの血流の回復を観察した。
AMの発現量の低下しているAM+/−では、血流回復が低下している(図13、パネルAの「●」)が、このAMノックアウトマウスに、AMの補充投与(図13、パネルAの「▲」)あるいは、VEGFの補充投与(図13、パネルAの「□」)を行うと、血管新生能が回復することを確認することができた。
さらに新生血管の形成も、AM+/−に、AMあるいはVEGFを補充投与することで、野生型マウスと同等に回復した(図13、パネルB)
一方、以上とは逆のレスキュー実験として、VEGFの受容体の一つであるFlk−1をノックアウトしたマウスを用いて、AMの補充投与実験を行った。Flk−1ノックアウトマウスでは、野生型と比較して血流回復が低下した。野生型マウスにAMの外因性投与を行うと、血流の回復が亢進するが、Flk−1ノックアウトマウスに対してAMの外因性投与を行っても血流の回復が認められなかった(図14)。
以上から、AMの血管新生作用は、VEGFのシグナルを介していることが、生体においても確認された。
本実施例では、マウス下肢虚血モデルのサンプルを用い、AMの投与により発現レベルが変化する遺伝子群を、遺伝子アレイにより観察した。
その結果、AMは、複数の血管新生促進因子や接着因子の発現を誘導した。図15は、遺伝子アレイの一例を示す。AMの投与により、コントロールと比較してeNOS、オステオポンチン(Osteopontin)、VEGF、VCAM−1などの発現が高くなっていた。
その他、AM投与群とコントロール群との比較、及び、野生型マウスとAMヘテロノックアウトマウスとの比較をしたときに、高発現する遺伝子を表2に示す。
半透過性膜製の容器を培養プレート上に設置し、HUVECが膜の上で単層を形成するように培養した(EBM−2培地、5%CO2、37℃、24時間)。この培養後のプレートに、血管透過性試験に供する物質を添加した後、FITC標識したデキストランを細胞層の上から添加して、プレート側に移行した蛍光を測定することにより透過性を測定した。その結果、VEGFは血管透過性を亢進したのに対して、AMを添加した場合は、血管透過性が抑制された。更にAMをVEGFに追加投与することで、VEGFによる血管透過性亢進が抑制された(図16)。
マウス足底の足パットに高浸透圧物質であるカラジーナンを局所投与すると、一過性に浮腫を作ることができる。形成された浮腫の程度を、時間毎に足の厚みを測定することで評価した。
その結果、コントロールでは浮腫が生じていたのに対し(図17、「●」)、AM持続投与マウスでは下肢の浮腫の形成が抑制されていた(図17、「▲」)。
本実施例の結果は、AMは血管透過性を抑制し、下肢の浮腫の治療に有用であることを示すものである。
マウスをネンブタールで麻酔後、頭蓋骨を開放し、硬膜に対してマイナス80度のシリンダーを押し当てることで傷害を与えた。24時間後にマウスを屠殺し、脳を摘出し、脳浮腫の発生による脳重量の増加を定量した。また同様の脳浮腫モデルにおいて、蛍光標識したデキストランを尾静注し、脳における血管外への蛍光色素の漏出を蛍光プレートリーダーで定量した。
結果を図18に示す。図18において、パネルAは血管透過性の測定結果を表し、パネルBは脳重量の測定結果を表す。AM投与群ではコントロールと比較して血管透過性が抑制されており(図18、パネルA)、脳の重量も減少した(図18、パネルB)。脳における血管透過性の亢進は脳浮腫につながることから、本実施例の結果は、AMは脳浮腫の治療に有用であることを示すものである。
本実施例では、アドレノメデュリン受容体活性改変タンパク質2(receptor activity modifying protein2;RAMP2)の遺伝子ノックアウトマウスを、実施例1と同様の方法で作製した。
RAMP2ホモノックアウトマウスは、AMホモノックアウトマウスと同じように、胎生中期で致死であった。その原因は、後述するように、AMホモノックアウトマウスと同様に血管の発達の異常に伴う浮腫や出血であった。AM受容体は、CRLR(calcitonin receptor like receptor)と、RAMP2又はRAMP3との組み合わせで形成されるが、この結果から、AMの血管新生におけるRAMPとしては、RAMP2が重要であることが示された。
RAMP2ホモノックアウトマウス(RAMP2−/−)は、卵膜が野生型と比較して膨れていた(図19、パネルA)。また卵膜上を走る卵黄動脈の発達が、RAMP2−/−(図19、パネルC)では、野生型(図19、パネルB)と比較して抑制されていた(図19、パネルC)。さらに、RAMP2−/−は、胎生13.5日目において野生型と比較して全身に浮腫を生じていた(図20)。またRAMP2−/−では、心嚢水の貯留を認めた(図21、パネルB、D)。なお、図21のパネルC及びDは、それぞれ野生型マウスと、RAMP2−/−の心臓及び心嚢の切片の顕微鏡写真である。
14.5日目の胚においては、RAMP2−/−では、著明な出血が認められた(図22)。図22において、パネルAは胎生14.5日の胎仔の写真であり、パネルB及びCは、それぞれ野生型マウス、RAMP2−/−の肝臓組織のHE染色像である。肝臓組織では、RAMP2−/−において血管の破綻による出血所見が認められた。
以上の変化は、アドレノメデュリンホモノックアウトと同様の所見であり、正常な血管の発生に、アドレノメデュリン−RAMP2のシグナルが必須であることが示された。
本実施例では、RAMP2のホモノックアウトマウス(RAMP2−/−)胎生13.5日の胎児の血管構築について、詳細に解析を行った。電顕による観察では、RAMP2−/−では、卵黄動脈の血管内皮細胞が基底膜から剥離している像が観察された(図23、矢印)。更に大動脈では、RAMP2−/−では、血管平滑筋層が野生型に比較して、菲薄化していた(図24、矢印)。
大動脈の蛍光免疫染色法による観察では、血管壁の4型コラーゲン及びαアクチンの発現が低下していた(図25)。こうした血管の異常が、RAMP2−/−の出血や浮腫の原因であり、アドレノメデュリン−RAMP2のシグナルが血管構築の安定化に必須であることが示された。
胎生13.5日マウス胎児サンプルを用いて、リアルタイムPCR法により、遺伝子発現変化を検討した。RAMP2ホモノックアウトマウス(RAMP2−/−)の胎児では、アドレノメデュリン−RAMP2のシグナルが消失していることにより、代償性にアドレノメデュリンの発現亢進を認めたが、アドレノメデュリン受容体であるCRLR及び、もう一つのアドレノメデュリン受容体活性改変タンパク(receptor activity modifying protein)であるRAMP3には、発現の変化を認めなかった(図26)。
以上の結果は、血管の発生において、RAMP2とRAMP3の間には相補性がなく、血管の正常な発生には、アドレノメデュリン−RAMP2のシグナルが必須であることを示すものである。
更に胎生13.5日マウス臍帯動脈における遺伝子発現をリアルタイムPCRにより検討した。その結果、RAMP2ホモノックアウトでは、細胞接着因子であるcadherin 3、claudin 5及び、基底膜の主な構成成分である4型コラーゲンの発現低下が確認された(図27)。
以上から、アドレノメデュリン−RAMP2のシグナル系が、細胞接着や、血管基底膜構造を安定化させ、血管構造の安定化に働いていることが示された。
(1)野生型マウス胎児を用いて、リアルタイムPCR法により、CRLR、AM、RAMP2及びRAMP3の発現量を測定した。
測定は、胎生11.5日目(E11.5)、12.5日目(E12.5)、13.5日目(E13.5)及び14.5日目(E14.5)に行った。
その結果、RAMP2は胎生中期で発現が亢進していることが示された(図28)。
(2)次に、胎生10.5日のAGM(大動脈・性腺・中腎領域)をOP9細胞上で培養し、PECAM−1で免疫染色を行ったところ、胎児AGM領域培養による血管新生は、RAMP2ホモノックアウトマウス(RAMP2−/−)で減弱することが示された(図29)。これにより、血管新生にはRAMP2が必要であることが示された。
(1)マトリゲル上で培養したHUVECに対し、アドレノメデュリンを外因性に投与し、24時間の刺激後、細胞を回収してRNAを抽出し、リアルタイムPCR法にて、claudin5の遺伝子発現を検討した。
結果を図30に示す。図30において、左パネルは刺激後12時間、24時間及び48時間におけるclaudin 5の遺伝子発現相対比である。AM投与により、内皮細胞のclaudin 5の発現が亢進した(図30左パネル)。
(2)AMのアミノ酸配列のうち22番から52番のアミノ酸配列からなる切断型変異体「AM22−52」を、同様に、マトリゲル上で培養したHUVECに投与し、遺伝子発現の検討を行った。その結果、「AM22−52」を投与すると、逆にclaudin 5の発現は低下した(図30右パネル)。
(1)RAMP2ヘテロノックアウトマウス(RAMP2+/−)及び野生型マウス成体の大動脈および心臓におけるRAMP2、RAMP3、CRLR及びAMの発現量をリアルタイムPCR法により比較した。
その結果、RAMP2+/−では、循環器系(大動脈及び心臓)においてRAMP2の発現が半減していることが示された(図31左パネル)。
さらに、尾血圧計(テイルカフ)を用いてマウスの収縮期血圧を測定したところ、野生型に比して、RAMP2+/−マウスでは、収縮期血圧が有意に高かった。すなわち、RAMP2+/−では、RAMP2の発現は抑制されており、血圧も高いことが示された(図31右パネル)。
(2)RAMP2+/−を用いたマトリゲルプラグアッセイ
bFGFを含むマトリゲルをマウス皮下に注入し、1週間後、注入部皮膚を切開し、マトリゲルの中に進入している新生血管を観察した。
その結果、RAMP2+/−では、野生型に比較して血管新生が減弱していることが示された(図32)。
(3)高浸透圧物質の局注による下肢浮腫モデル
マウス足底の足パットに高浸透圧物質であるカラギーナンを局所投与すると、一過性に浮腫を作ることができる。その後、RAMP2+/−及び野生型マウスに形成された浮腫の程度を、時間毎に足の厚みを測定することで評価した。その結果、RAMP2+/−マウスは、下肢浮腫が亢進していることが示された(図33)。
(1)RAMP2安定過剰発現細胞株の作製
本実施例では、ヒト臍帯静脈由来内皮細胞を細胞株化したEAhy926細胞を用いて、RAMP2遺伝子を導入し、RAMP2安定過剰発現細胞株を作製した。
手法としては、発現ベクターpcDNA3.1にヒトRAMP2cDNA約580bpを挿入し、この発現ベクター(図34)を、制限酵素(Sal I)処理により一本鎖DNAにしたのち、QIAGEN社製のトランスフェクション試薬であるEffecteneを用いて、EAhy926細胞に遺伝子導入した。ネオマイシンを培養液中に添加し、生存コロニーをピックアップすることで、遺伝子が導入された細胞コロニーをスクリーニングした。
その結果、コントロール細胞と比較して、RAMP2遺伝子を約1000倍過剰発現する細胞を得た(図34)。
この細胞の増殖能、アポトーシス刺激に対する応答、マトリゲル上における管腔形成能などを以下の通り検討した。
(2)RAMP2、RAMP3、AM及びCRLRの発現量
RAMP2遺伝子を導入した細胞と、コントロールベクターを導入した対照細胞を、通常プレート上、あるいはマトリゲルでコーティングしたプレート上で培養した。これらの培養細胞よりRNAを抽出し、リアルタイムPCR法にて、RAMP2、RAMP3、AM及びCRLRの遺伝子発現を比較検討した。その結果、RAMP2遺伝子導入細胞では、通常プレート上、マトリゲルプレート上、どちらで培養したものでも、RAMP2の過剰発現が確認された。RAMP3、AM及びCRLRは、対照細胞と、RAMP2導入細胞で発現に差は認められなかった(図35)。
(3)RAMP2過剰発現細胞の管腔形成能
EAhy926細胞をマトリゲルコーティングプレートで培養を続けると、マトリゲル内に、管腔構造が形成される。RAMP2過剰発現細胞と対照細胞で、マトリゲルにおける管腔形成を比較したところ、RAMP2過剰発現細胞では、管腔形成能が著明に亢進していた(図36)。
(4)細胞増殖及び生存試験
RAMP2過剰発現細胞と対照細胞の細胞増殖能を、BrdUの取り込みにより比較検討した。その結果、RAMP2過剰発現細胞では、細胞増殖は対照細胞と比較してむしろ低下していた(図37左パネル)。一方、細胞生存アッセイ(WST−8アッセイ)により、TNFα添加時の生存細胞数を測定したところ、RAMP2過剰発現細胞では、TNFα400ng/mlを添加したときの生存細胞数が、対照細胞に比較して有意に多かった(図37右パネル)。
(5)TNFα誘導性のアポトーシス
TNFα誘導性のアポトーシスの反応性を、アポトーシスを起こした細胞から培養上清中に漏出するLDH(ラクトースデヒドロゲナーゼ)を定量することで検討した。また、細胞をTNFαで24時間処理した後に、RNAを抽出し、RT−PCRによりアポトーシス関連遺伝子の発現検討を行った。
その結果、RAMP2過剰発現細胞では、アポトーシスによる細胞死が減少していた(図38左パネル)。また、アポトーシスの促進因子であるbax−αの発現が低下していた(図38右パネル)。
これにより、RAMP2過剰発現細胞は、対照細胞と比較して、アポトーシスに抵抗性を有することが示された。
AMは血管構造の安定化に働き、さらに抗動脈硬化作用を併せもつことから、本発明は、現在の血管新生療法の諸問題に対する、新たな打開策となることが期待される。
さらに、AMには他の血管新生促進因子には認められないユニークな性質として、血管透過性を抑制する作用が確認されており、脳梗塞、脳出血、脳浮腫などの治療に有効であることが考えられる。
[配列表]
Claims (3)
- 血管構造の安定化作用、血管透過性の抑制作用、血管新生活性、又は浮腫抑制作用を促進する物質をスクリーニングする方法であって、
被験物質を、内在性RAMP2遺伝子の発現が低下された非ヒト動物に投与した後、当該非ヒト動物における被験物質のRAMP2の活性に対する作用を解析することを含む方法。 - 血管構造の安定化作用、血管透過性の抑制作用、血管新生活性、又は浮腫抑制作用を促進する物質をスクリーニングする方法であって、
被験物質を、内在性RAMP2遺伝子の発現が低下された細胞に接触させた後、当該細胞における被験物質のRAMP2の活性に対する作用を解析することを含む方法。 - 血管構造の安定化作用、血管透過性の抑制作用、血管新生活性、又は浮腫抑制作用を促進する物質をスクリーニングする方法であって、
被験物質を、RAMP2遺伝子が形質導入された細胞に接触させ、当該細胞における被験物質のRAMP2の活性に対する作用を解析することを含む方法。
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