JP2009242388A - 心臓特異的キナーゼの心不全診断および治療への応用 - Google Patents

心臓特異的キナーゼの心不全診断および治療への応用 Download PDF

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Tadashi Seguchi
理 瀬口
Masanori Asakura
正紀 朝倉
Masafumi Kitakaze
政史 北風
Toshiaki Otsuka
敏明 大塚
Kenji Nakamaru
健治 中丸
Asuka Aida
明日香 合田
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Abstract

【課題】心不全関連遺伝子を見出し、該遺伝子や該遺伝子にコードされるタンパク質を利用して心不全の診断や制御の手段を提供すること。
【解決手段】心臓特異的ミオシン軽鎖キナーゼ遺伝子または該遺伝子にコードされるタンパク質を含む心不全の防止および/または治療剤、心不全の防止および/または治療における該遺伝子および/または該タンパク質の使用、心臓特異的ミオシン軽鎖キナーゼの発現および/または機能を増強する化合物を選択することを特徴とする心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法、該遺伝子および/または該タンパク質を使用することを特徴とする心不全の防止および/または治療方法、該遺伝子および/または該タンパク質を含む心筋サルコメア再アセンブリ増強剤、該遺伝子および/または該タンパク質を検出することを含む心筋障害の検出方法、並びに該遺伝子の発現が抑制されたゼブラフィッシュ心不全モデル。
【選択図】なし

Description

本発明は、心臓特異的ミオシン軽鎖キナーゼを利用することを特徴とする、心不全の診断および治療に関する。より詳しくは、本発明は、心臓特異的ミオシン軽鎖キナーゼをコードする遺伝子(以下、心臓特異的ミオシン軽鎖キナーゼ遺伝子と称する)および/または該遺伝子にコードされるタンパク質を含む心不全の防止および/または治療剤、心不全の防止および/または治療における前記遺伝子および/または前記タンパク質の使用、前記遺伝子および/または前記タンパク質を使用することを特徴とする心不全の防止および/または治療方法、並びに前記遺伝子の発現の増加を検出することを特徴とする心筋障害の検出方法に関する。また本発明は、前記遺伝子の発現および/または前記タンパク質の機能を増強する化合物を選択することを特徴とする、心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法に関する。さらに本発明は、前記遺伝子および/または前記タンパク質を含む、心筋におけるサルコメア再アセンブリ増強剤に関する。また本発明は、ゼブラフィッシュ心不全モデルに関する。
近年の薬理学的・外科的治療法の発達にもかかわらず、慢性心不全(CHFと略称することがある)は未だ世界的に主要な死亡原因である(非特許文献1)。最近では、心臓移植が末期心不全の最も効果的な治療法であると考えられている。しかしながら、この方法は多数の罹患患者の全てには適用できないことは明らかであり、また病状が軽度の患者には不適当である。したがって、CHFを標的とする新しい治療法に対する要望が高まっている。
障害ヒト心筋における心筋細胞はサルコメアの著しい崩壊を特徴とし、このことはよく実証されている。心筋細胞は、心筋の最も基本的な細胞単位であり、心筋の収縮単位であるサルコメアを構成するタンパク質(以下、サルコメアタンパク質と称する)、例えばミオシンやアクチンを発現している。これらサルコメアタンパク質の異常は、特発性心筋症の主要な原因であり、そしてCHFを引き起こす(非特許文献2−4)。
II型ミオシンはサルコメアの主要な構成要素である。このタンパク質のネック部分には、必須軽鎖および調節軽鎖と称される1対のミオシン軽鎖の結合部位が存在する。脊椎動物におけるミオシン調節軽鎖のいくつかのパラログ(非特許文献5)の中で、ミオシン調節軽鎖2、心室/心筋アイソフォーム(MLC2vと略称することがある)は、心筋に発現し、そこでサルコメア形成への寄与により心臓発生に特異的な役割を果たし、また、最大濃度よりやや低めのカルシウム濃度でのカルシウム感受性筋緊張の増大に特異的な役割を果たす(非特許文献6および7)。さらに、心筋中のMLC2vのリン酸化はサルコメアの組織化、すなわち培養新生仔ラット心筋細胞における心肥大に相当する事象を引き起こすことが報告されている(非特許文献8)。
最近、ミオシン軽鎖キナーゼ(MLCKと略称することがある)タンパク質ファミリーであって、筋細胞でミオシン調節軽鎖に作用する2つタンパク質、骨格筋MLCK(skMLCKと略称することがある)および平滑筋MLCK(smMLCKと略称することがある)が同定された(非特許文献9)。筋肉中のMLCKファミリーメンバーはサルコメアタンパク質リン酸化酵素であり、ミオシン調節軽鎖のアミノ末端に近いセリン残基をリン酸化する。
smMLCKは、その非筋アイソフォームを含めて、多様な組織に普遍的に分布し、平滑筋の収縮および種々の細胞活性に寄与する。平滑筋の筋収縮は、細胞内カルシウムイオン(Ca2+)濃度の上昇、それに伴う、ミオシン軽鎖のリン酸化による頭部の構造変化、アデノシン三リン酸分解酵素(ATPアーゼ)の活性上昇、アデノシン三リン酸(ATP)の加水分解によりもたらされる。
これに対し、skMLCKは心筋および骨格筋の両方に存在して機能すると考えられている(非特許文献10)。骨格筋の筋収縮は、細胞内Ca2+が上昇し、トロポニンCへのCa2+の結合によりトロポニン複合体に構造変化が生じ、それによりミオシン頭部のアクチンへの相互作用が可能となった結果引き起こされる。ミオシン軽鎖のリン酸化は、最適濃度より低い細胞内Ca2+濃度での筋収縮の増強をきたす。
skMLCKは心筋で発現しているため、MLC2vに作用するリン酸化酵素の主流であり、そして心臓壁における心内膜から心外膜へのMLC2vリン酸化勾配により心臓の捩れ(torsion)が生じると報告されている(非特許文献10)。しかしながら、skMLCK欠損マウスでは、skMLCK発現が効果的にノックダウンされたにもかかわらず、心臓重量、体重、または体重に対する心重量の割合の表現型に変化が認められなかった(非特許文献11)。さらに、ノックアウト動物と野生型動物と間でMLC2vのリン酸化に有意な差異は認められなかった。これら動物実験の結果から、心筋中のskMLCK以外のMLCKの存在が示唆される。
一方、心臓に特異的に発現し、虚血心の組織で発現増加が認められる遺伝子が報告されている(特許文献1)。そして、該遺伝子にコードされるタンパク質はその配列解析からMLCKであると推定されること、および該遺伝子の発現または発現増加が慢性虚血性心疾患および虚血性心筋症に関連する可能性が示唆されている。しかしながら、該遺伝子の発現と心疾患との具体的な関連については何の記載もない。
国際公開第99/49062号パンフレット。
ジェスサップ(Jessup, M.)ら、「ザ ニュー イングランド ジャーナル オブ メディシン(The New England Journal of Medicine)」、2003年、第348巻、p.2007-2018。 カミサゴ(Kamisago, M.)ら、「ザ ニュー イングランド ジャーナル オブ メディシン(The New England Journal of Medicine)」、2000年、第343巻、p.1688-1696。 オルソン(Olson, T.M.)ら、「サイエンス(Science)」、1998年、第280巻、p.750-752。 ワトキンス(Watkins, H.)ら、「ネイチャー ジェネティクス(Nature Genetics)」、1995年、第11巻、p.434-437。 コリンズ(Collins, J.H.)、「ジャーナル オブ マッスル リサーチ アンド セル モーティリティ(Journal of Muscle Research and Cell Motility)」、2006年、第27巻、p.69-74。 チェン(Chen, J.)ら、「ザ ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry)」、1998年、第273巻、p.1252-1256。 オルソン(Olsson, M.C.)ら、「アメリカン ジャーナル オブ フィジオロジー。ハート アンド サーキュラトリー フィジオロジー(American Journal of Physiology. Heart and Circulatory Physiology)」、2004年、第287巻、p.H2712-H2718。 アオキ(Aoki, H.)ら、「ネイチャー メディシン(Nature Medicine)」、2000年、第6巻、p.183-188。 カム(Kamm, K.E.)ら、「ザ ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry)」、2001年、第276巻、p.4527-4530。 デイビス(Davis, J.S.)ら、「セル(Cell)」、2001年、第107巻、p.631-641。 ジィ(Zhi, G.)ら、「プロシーディングス オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシズ オブ ザ ユナイテッド ステーツ オブ アメリカ(Proceedings of The National Academy of Sciences of The United States of America)」、2005年、第102巻、p.17519-17524。
本発明の課題は、心不全に関与する遺伝子を見出すことであり、見出された遺伝子や該遺伝子にコードされるタンパク質を利用して、心不全の診断や制御を目的とする手段を提供することである。
本発明者らは上記課題解決のために鋭意努力し、重症心不全患者において発現が亢進している遺伝子を見出し、そして該遺伝子が心臓特異的に発現していること、また、MLC2vをリン酸化するキナーゼをコードする遺伝子であることを明らかにした。以下、本遺伝子を心臓特異的MLCK遺伝子と称することがある。さらに本発明者らは、本遺伝子の発現と心不全の重篤度との間に関連があることを明らかにした。
また、心臓特異的MLCK遺伝子を過剰発現させた培養心筋細胞に該遺伝子にコードされるタンパク質の活性化処理を施すことにより、血清欠乏条件下において培養した細胞の崩壊したサルコメアの組織化が増強されること、および本遺伝子の発現をノックダウンすることにより培養心筋細胞のMLC2vリン酸化が低下し、そして無血清条件下の培養心筋細胞におけるサルコメア再アセンブリが減弱することを実験的に示した。
さらに、本遺伝子のゼブラフィッシュ オーソログを見出し、その塩基配列を決定した。また、本遺伝子の発現をノックダウンしたゼブラフィッシュで、心臓収縮の原動力となる心筋細胞内の配列が乱れること、また、心臓肥大や拍動異常等、心不全と同様の症状が認められることを明らかにした。
上記データから、心臓特異的MLCK遺伝子にコードされるタンパク質(以下、心臓特異的MLCKと称することがある)はMLC2vのリン酸化を介してサルコメア構造の形成に関与することにより心臓の形成や機能に寄与するものであり、その発現および/または機能の低下や消失が心臓疾患、例えば心不全の発症や増悪に関与すると考えることができる。
本発明は、これらの知見に基づいて達成された。
すなわち、本発明は、
1.下記いずれかのポリヌクレオチドからなる遺伝子および/または該遺伝子にコードされるタンパク質を含む、心不全の防止および/または治療剤:
(1)配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチド、
(2)前記(1)のポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(3)前記(1)または(2)のポリヌクレオチドと少なくとも70%の配列相同性を有し、かつミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(4)前記(1)から(3)のいずれか1のポリヌクレオチドにおいて、1乃至10個のヌクレオチドの変異を有し、かつミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
および
(5)前記(1)から(4)のいずれか1のポリヌクレオチドを構成する塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションし、かつミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
2.上記いずれかのポリヌクレオチドからなる遺伝子および/または該遺伝子にコードされるタンパク質の、心不全の防止および/または治療における使用、
3.上記いずれかのポリヌクレオチドからなる遺伝子および/または該遺伝子にコードされるタンパク質を使用することを特徴とする心不全の防止および/または治療方法、
4.上記いずれかのポリヌクレオチドからなる遺伝子および/または該遺伝子にコードされるタンパク質を含む、不全心筋におけるサルコメア再アセンブリ増強剤、
5.上記いずれかのポリヌクレオチドからなる遺伝子の発現量を被検試料において測定し、そして正常試料における該遺伝子の発現量と比較して10倍以上の発現量が測定された被検試料を心筋障害の試料であると判定することを含む、心筋障害の検出方法、
6.上記いずれかのポリヌクレオチドからなる遺伝子の発現および/または該遺伝子にコードされるタンパク質の機能を増強する化合物を選択することを特徴とする、心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法、
7.被検化合物と前記遺伝子との相互作用を可能にする条件下で、被検化合物と前記遺伝子とを接触させ、次いで、前記遺伝子の発現を測定し、そして前記遺伝子の発現を増強した被検化合物を選択することを含む、前記6.の心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法、
8.被検化合物と前記遺伝子との相互作用を可能にする条件下で、被検化合物と該遺伝子とを接触させることが、被検化合物と前記遺伝子を発現する細胞とを接触させることである、前記7.の心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法、
9.被検化合物と前記遺伝子にコードされるタンパク質との相互作用を可能にする条件下で、被検化合物と該タンパク質とを接触させ、次いで、該タンパク質の機能を測定し、そして該タンパク質の機能を増強した被検化合物を選択することを含む、前記6.の心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法、
10.被検化合物と前記遺伝子にコードされるタンパク質との相互作用を可能にする条件下で、被検化合物と該タンパク質とを接触させることが、被検化合物と前記遺伝子を発現する細胞とを接触させることである、前記9.の心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法、
11.前記遺伝子にコードされるタンパク質の機能が、ミオシン調節軽鎖2をリン酸化する機能である、前記9.または10.の心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法、
12.前記遺伝子にコードされるタンパク質の機能が、サルコメアの再アセンブリを増強する機能である、前記9.または10.の心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法、
13.配列表の配列番号3に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドからなり、かつ、ミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするゼブラフィッシュ遺伝子、
14.前記13.の遺伝子を含有する組換えベクター、
15.前記13.の遺伝子を含有する組換えベクターをトランスフェクションされてなる形質転換体、
16.前記13.の遺伝子にコードされるタンパク質、
17.前記13.の遺伝子の発現が抑制されたゼブラフィッシュ心不全モデル、
18.前記13.の遺伝子の発現を、配列表の配列番号27、配列番号29、配列番号30、配列番号31、および配列番号32のいずれか1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドをゼブラフィッシュ胚に注射することにより抑制することを特徴とする、ゼブラフィッシュ心不全モデルの作製方法、
19.前記17.のゼブラフィッシュ心不全モデルに被検化合物を投与し、ゼブラフィッシュ心不全モデルの心臓の形態および機能を測定することを含む心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法、
からなる。
本発明により、心臓特異的MLCK遺伝子または該遺伝子にコードされるタンパク質を含む心不全の防止および/または治療剤、心不全の防止および/または治療における該遺伝子および/または該タンパク質の使用、該遺伝子および/または該タンパク質を使用することを特徴とする心不全の防止および/または治療方法を提供できる。また本発明により、心筋におけるサルコメア再アセンブリ増強剤を提供できる。これら薬剤および/または方法により心不全の治療を実施できる。
また本発明により、心臓特異的MLCK遺伝子および/または該遺伝子にコードされるタンパク質を検出することを特徴とする、心筋障害の検出方法を提供できる。本検出方法は心筋障害および心不全の診断の実施に使用できる。
さらに本発明により、心臓特異的MLCK遺伝子の発現および/または該遺伝子にコードされるタンパク質の機能を増強する化合物を選択することを特徴とする、心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法を提供できる。本同定方法により取得された化合物は、心不全の防止および/または治療剤の有効成分として使用できる。
また本発明により、ゼブラフィッシュ心不全モデルを提供できる。ゼブラフィッシュ心不全モデルは、心不全の病態解明や心不全の防止および/または治療用化合物の同定に使用できる。
心臓特異的MLCK候補遺伝子である75678_atの相対的発現(Relative expression)レベルが相対的肺動脈圧(Relative Pulmonary Arterial Pressure)値と個々の患者(Patient)においてよく相関したことを示す図である。図中、PAPとは、肺動脈圧を意味する。 心臓特異的MLCK候補遺伝子75678_atが心臓特異的に発現していることを示す図である。75678_atの発現(Expression of 75678_at)は任意の単位(artitraty unit;AU)で示した。組織局在はジーンエクスプレスデータベースを用いて分析した。 MLCKファミリーメンバーの発現分析の結果を示す図である。smMLCKをコードするMYLK由来の2つの転写物は骨格筋、胸腺および末梢血白血球を除いて広汎に発現していた。これに対し、skMLCKをコードするMYLK2および心臓特異的MLCK(cardiac-MLCK)をコードするMYLK3はそれぞれ骨格筋および心臓のみで発現していた。 心筋細胞を、無血清条件下でLacZをコードするアデノウイルス(Ad-LacZ)で感染させて培養すると、サルコメア構造が破壊された顕著な円形細胞が観察される(上パネル)が、心臓特異的MLCKをコードするアデノウイルス(Ad-cMK)を感染させると構成されたサルコメア構造をもつ細胞が観察される(下パネル)ことを示す図である。原図の倍率は×1,000。 心臓特異的MLCKをコードするアデノウイルス(Ad-cMK)を感染させた心筋細胞では、LacZをコードするアデノウイルス(Ad-LacZ)を感染させたものより、構成されたサルコメア構造をもつ細胞の割合が有意に高かったことを示す図である。縦軸は相対的細胞数(Relative cell number (%))を示す。値は平均値±標準偏差で表した。*P<0.01。 マウス心筋から精製したMLC2vが心臓特異的MLCK(cardiac-MLCK)によりCa2+カルモジュリン(calmodulin)依存性にリン酸化されたことを示す図である。上パネルはP32標識されたMLC2v(32P-labeled MLC2v)の検出結果を示す。下パネルは全MLC2vを検出する抗体(tMLC)によるイムノブロット(IB)の結果を示す。 マウス心臓特異的MLCK(cardiac-MLCK)をコードするアデノウイルス(Ad-cMK)を感染多重度(MOI)90または150で感染させたことにより起こる培養心筋細胞でのマウス心臓特異的MLCKの過剰発現によりMLC2vのリン酸化が濃度依存的に上方制御されたことを示す図である。これに対し、LacZをコードするアデノウイルス(Ad-LacZ)で感染させても、MLC2vのリン酸化は無処理(no treatment)のものと比較して差は認められなかった。最上段のパネルは、内因性のラット心臓特異的MLCK(Rat cardiac-MLCK、上のレーン)および過剰発現させたマウス心臓特異的MLCK(Murine FLAG-tagged cardiac-MLCK、下のレーン)を、げっ歯類心臓特異的MLCKに特異的なポリクローナル抗体(RcMK)を用いたイムノブロット(IB)により検出した結果を示す。2段目から最下段のパネルは、それぞれ順に抗α-アクチニン(α-actinin)抗体、抗デスミン(Desmine)抗体、抗トロポニンT(Troponin T)抗体、リン酸化MLC2vを検出する抗体(p-s15MLC)、全MLC2vを検出する抗体(tMLC)によるイムノブロット(IB)の結果を示す。 心臓特異的MLCK(cardiac-MLCK)のsiRNAであるsi-cMK-1およびsi-cMK-3がいずれも、心臓特異的MLCKのタンパク質レベルを無処理(no treatment)のものと比較して抑制し、そしてMLC2vリン酸化の低下を引き起こしたことを示す図である。これに対し、コントロールsiRNA(siCTL)は心臓特異的MLCKのタンパク質レベルにもMLC2vリン酸化にも影響しなかった。各パネルは、それぞれ最上段から最下段の順にげっ歯類心臓特異的MLCKに特異的なポリクローナル抗体(RcMK)、抗ヒトsmMLCK抗体(HsmMK)、抗α-アクチニン(α-actinin)抗体、抗デスミン(Desmine)抗体、抗トロポニンT(Troponin T)抗体、リン酸化MLC2vを検出する抗体(p-s15MLC)、全MLC2vを検出する抗体(tMLC)によるイムノブロット(IB)の結果を示す。 smMLCKのsiRNAであるsi-smMKは、smMLCKのタンパク質レベルを無処理(no treatment)のものと比較して抑制したが、MLC2vリン酸化には影響しなかったことを示す図である。また、コントロールsiRNA(siCTL)はsmMLCKのタンパク質レベルにもMLC2vリン酸化にも影響しなかった。各パネルは、それぞれ最上段から最下段の順に抗ヒトsmMLCK抗体(HsmMK)、げっ歯類心臓特異的MLCKに特異的なポリクローナル抗体(RcMK)、抗α-アクチニン(α-actinin)抗体、抗デスミン(Desmine)抗体、抗トロポニンT(Troponin T)抗体、リン酸化MLC2vを検出する抗体(p-s15MLC)、全MLC2vを検出する抗体(tMLC)によるイムノブロット(IB)の結果を示す。 リン酸化MLC2v(p-MLC2v)および心臓特異的MLCK(cMLCK)の培養心筋細胞での局在を示す図である。原図の倍率、×1,000。パネルAおよびEは、ローダミン−ファロイジンによる重合アクチン(Actin)の染色により、通常形態の横紋が観察されたことを示す。パネルBは、P-S15MLC標識リン酸化MLC2v(p-MLC2v)の局在を示す。パネルCは、パネルAとBとを重ね合わせた画像(Merge)である。パネルDは、パネルCにおいて四角く囲んだ部分の高拡大図であり、これによりローダミン−ファロイジンにより主にIバンド(I-band)が染色されること、一方、リン酸化MLC2v(p-MLC2v)はAバンド(A-band)に局在することが判明した。パネルDにおける原図の倍率、×4,000。パネルFは、RcMK標識心臓特異的MLCK(cMLCK)の局在を示す。cMLCKは拡散した細胞質標識パターンを示した。パネルGは、パネルEとFとを重ね合わせた画像(Merge)である。 培養心筋細胞をエピネフリン処理することにより、サルコメア再アセンブリとMLC2vリン酸化の増加が観察されたことを示す図である。サルコメア構造は抗アクチン(Actin)抗体により検出した。MLC2vリン酸化レベルは抗リン酸化MLC2v抗体(p-MLC2v)により検出した。血清存在下(Serum +)でエピネフリン刺激しない(Epi −)で培養した心筋細胞は、組織化された形態の横紋(左上パネル)と中程度のMLC2vリン酸化を示した(左下パネル)。無血清条件下(Serum −)でエピネフリン刺激しない(Epi −)で培養した心筋細胞は、組織が破壊された切断アクチン染色を含み(中央上パネル)、MLC2vリン酸化レベルの低減(中央下パネル)を伴った。一方、無血清条件下(Serum −)でエピネフリン刺激して(Epi +)培養した心筋細胞は、急速なサルコメア再アセンブリ(右上パネル)とMLC2vリン酸化の増加(右下パネル)を引き起こした。各中段パネルはそれぞれ上段パネル中の四角く囲んだ領域の高拡大図(magnified image)を示す。原図の倍率、×1,000(上段および下段パネル);×3,000(中段パネル)。 MLC2vリン酸化は、無血清条件下(Serum −)で培養した心筋細胞では血清存在下(Serum +)で培養したものと比較して低下したが、エピネフリン(Epi)刺激により濃度依存的に上方制御されたことを示す図である。上段パネル、中段パネルおよび下段パネルはそれぞれ、げっ歯類心臓特異的MLCKに特異的なポリクローナル抗体(RcMK)、リン酸化MLC2vを検出する抗体(p-s15MLC)、および全MLC2vを検出する抗体(tMLC)によるイムノブロット(IB)の結果を示す。 MLC2vリン酸化は、無血清条件下(Serum −)で培養した心筋細胞では血清存在下(Serum +)で培養したものと比較して低下したが、エピネフリン刺激後(Time after Epi stimuli)5分で観察され、最大のリン酸化は約30分後に得られたことを示す図である。上段パネル、中段パネルおよび下段パネルはそれぞれ、げっ歯類心臓特異的MLCKに特異的なポリクローナル抗体(RcMK)、リン酸化MLC2vを検出する抗体(p-s15MLC)、および全MLC2vを検出する抗体(tMLC)によるイムノブロット(IB)の結果を示す。 培養心筋細胞をエピネフリン処理することにより誘導されるサルコメア再アセンブリおよびMLC2vリン酸化が、心臓特異的MLCK(cardiac-MLCK)のsiRNAであるsi-cMKトランスフェクションにより阻害されたことを示す図である。左側3列のパネルはコントロールsiRNA(siCTL)をトランスフェクションした心筋細胞を示す。右側3列のパネルはsi-cMKをトランスフェクションした心筋細胞を示す。上段パネルはサルコメア構造を、中段パネルは上段パネル中の四角で囲んだ領域の高拡大図(magnified image)を、下段パネルはMLC2vリン酸化レベルを示す。原図の倍率、×1,000(上段および下段パネル);×2,000(中段パネル)。MLC2vリン酸化レベルは抗リン酸化MLC2v抗体(p-MLC2v)により検出した。サルコメア構造は抗アクチン(Actin)抗体により検出した。血清存在下(Serum +)において、si-cMKをトランスフェクションした心筋細胞(左から4列目のパネル)はコントロールsiRNAをトランスフェクションした心筋細胞(最左列のパネル)と比較してMLC2vリン酸化レベルの低下を示したが、両方とも規則正しく組織化されたサルコメア構造を示した。無血清条件下(Serum −)で培養した心筋細胞中のアクチン染色により、サルコメアの切断パターンが明らかになった(左から2列目および5列目のパネル)。さらにはMLC2vリン酸化の程度がsi-cMKをトランスフェクションした心筋細胞においてコントロールsiRNAをトランスフェクションした心筋細胞と比較して低下していた。2μM エピネフリン刺激(epi +)により、MLC2vリン酸化およびサルコメア再アセンブリの上方制御が、コントロールsiRNAをトランスフェクションした心筋細胞で引き起こされた(左から3列目のパネル)が、si-cMKをトランスフェクションした心筋細胞では認められなかった(最右列のパネル)。 心臓特異的MLCK(cardiac-MLCK)のsiRNAであるsi-cMKをトランスフェクションした心筋細胞では、相対的MLC2vリン酸化レベル(Relative p-MLC2v/total MLC2v)が、血清存在下(Serum +)、無血清条件下(Serum −)、および無血清条件下でエピネフリン刺激(Epi +)する条件のいずれにおいても、コントロールsiRNA(siCTL)をトランスフェクションした心筋細胞のものと比較して抑制されたことを示す図である。 心臓特異的MLCK(cardiac-MLCK)のsiRNAであるsi-cMKをトランスフェクションした心筋細胞では、組織的サルコメアを有する相対的細胞数(Relative cell number)が、血清存在下(Serum +)、無血清条件下(Serum −)、および無血清条件下でエピネフリン刺激(Epi +)する条件のいずれにおいても、コントロールsiRNA(siCTL)をトランスフェクションした心筋細胞のものと比較して抑制されたことを示す図である。**P<0.001。NS:有意差なし。 ゼブラフィッシュ胚における心臓特異的MLCK(z-cardiac-MLCK)の発現を、ホールマウントインサイチュハイブリダイゼーション(WISH)法により検討した結果を示す図である。パネルA、B、E、およびFは、z-cardiac-MLCK特異的アンチセンスプローブ(z-cMK antisense)を用いてWISHを行った結果を示す。パネルC、D、G、およびHはz-cardiac-MLCK特異的センスプローブ(z-cMK sense)を用いてWISHを行った結果を示す。受精後24時間(24hpf)において、z-cardiac-MLCKは心臓前駆細胞(矢印)で発現していた。受精後48時間(48hpf)において、z-cardiac-MLCKは心臓(アステリスクは心房[a]および心室[v]を示す)において選択的に発現していた。 ゼブラフィッシュ心臓特異的MLCK(z-cardiac-MLCK)の発現抑制により、ゼブラフィッシュ胚において心臓心室拡張が惹起されたことを示す図である。z-cardiac-MLCK mRNAのAUG翻訳開始部位に対する特異的MO(z-cMKaugMO)を注射したゼブラフィッシュ胚は、モック注射したコントロールゼブラフィッシュ胚と比較して、受精後48時間(48hpf)および受精後72時間(72hpf)において腹部膨張の表現型を生じた(それぞれ上段左側の2パネルおよび上段右側の2パネル)。一方、z-cMKaugMOと5塩基のミスマッチを含むMO(z-MismatchMO)を注射したゼブラフィッシュ胚はコントロールゼブラフィッシュ胚と同様の表現型を示した(下段最左パネル)。z-cardiac-MLCK エキソン4(z-cMKspMO4)またはエキソン6(z-cMKspMO6)のスプライシング、あるいはz-MLC2vのリン酸化可能なセリン残基をコードするエキソン2(z-MLCspMO2)のスプライシングを阻害するよう設計された特異的MOの注射も、心室拡張の表現型を誘発した(それぞれ下段の左から2番目、3番目、および4番目のパネル)。モルファントより作製されたcDNAから増幅されたRT-PCR産物はコントロール胚から取得されたものより短かったが、これは標的エキソンの除去による(それぞれ下段の左から2番目、3番目、および4番目のパネル)。原図の倍率、×20。 z-心臓特異的MLCK mRNAのAUG翻訳開始部位に対する特異的MO(z-cMKaugMO)の注射により作製したモルファント(下段パネル)における心臓の運動サイクルの拡張末期相(左側パネル)および収縮末期相(右側パネル)を、コンロトール胚(上段パネル)のものと比較して示した図である。目盛線:50μm。原図の倍率、×100。 z-心臓特異的MLCK mRNAのAUG翻訳開始部位に対する特異的MO(z-cMKaugMO)の注射により作製したモルファントの心臓の代表的なMモード画像を、コンロトール胚(Control)のものと比較して示した図である。図中、DdおよびDsはそれぞれ、心臓の心室の拡張末期径および収縮末期径を意味する。 受精後48時間(48hpf)のゼブラフィッシュ心臓の組織構造を示す図である。パネルA−Dは、ヘマトキシリンおよびエオジンで染色した縦断面切片を示す。目盛線:50μm。パネルE−Jは、透過型電子顕微鏡写真を示す。目盛線:2μm。パネルAおよびBは、コントロール(Control)ゼブラフィッシュ心臓の組織構造で比較的厚い心室壁が識別できたことを示す(パネルB、矢頭)。パネルCおよびDは、z-心臓特異的MLCK mRNAのAUG翻訳開始部位に対する特異的MO(z-cMKaugMO)の注射により作製したモルファントで心膜浮腫および薄い心室壁(パネルD、矢頭)が観察されたことを示す。パネルEおよびFはそれぞれ、コントロールゼブラフィッシュ胚およびz-cMKaugMOモルファントの心房の組織構造を示し、サルコメア構造が両方共によく分化していることが観察された。パネルGおよびHは、コントロール胚の心室で強固なサルコメア構造が観察されたことを示す。一方、パネルIおよびJは、z-cMKaugMOモルファントの心室にはまばらで未熟なサルコメア構造が含まれていたことを示す。パネルB、D、H、およびJはそれぞれ、パネルA、C、G、およびIの画像中の四角く囲んだ部分の高拡大図である。Sはサルコメア構造を示す。 心臓特異的MLCK(cardiac-MLCK mRNA)のmRNA発現の比率(Ratio of mRNA expression)が、ラット心筋層において生後1週目から成体まで上方制御されていたことを示す図である。 心臓特異的MLCKタンパク質レベルは、生後1−2週の幼若ラット心筋層で上方制御されていたことを示す図である。上パネルは、抗心臓特異的MLCK抗体(RcMK)によるイムノブロット(IB)の結果を示す。下パネルは全MLC2vを検出する抗体(tMLC)によるイムノブロット(IB)の結果を示す。 心臓特異的MLCK(cardiac-MLCK mRNA)のmRNA発現の比率(Ratio of mRNA expression)が、心筋梗塞モデルラット(MI)の心筋層で、偽手術を施したラット(sham)と比較して、著明に上方制御されていたことを示す図である。n=5(偽手術群);8(MI)。閉記号は個々のマウス由来の値を示し、線付空記号は平均±標準誤差を示す。*P<0.05。 心臓特異的MLCKの相対的mRNA発現レベル(Ratio of mRNA expression (cardiac-MLCK mRNA))と心房性ナトリウム利尿ペプチド(Ratio of mRNA expression (ANP))の相対的mRNA発現レベルとが明らかに相関した(r=0.778;P<0.005)ことを示す図である。
以下、本発明について発明の実施の態様をさらに詳しく説明する。
本発明は、心臓特異的MLCKの心不全診断および治療への応用に関する。心臓特異的MLCKは、心臓特異的に発現するタンパク質リン酸化酵素であり、ミオシン調節軽鎖2、心室/心筋アイソフォームをカルシウム・カルモジュリン依存的にリン酸化し、そして該リン酸化を介してサルコメア構造の形成に関与することにより心臓の形成や機能に寄与する。その発現および/または機能の低下や消失は、心筋障害を引き起こし、ひいては心不全の発症や増悪を生じる。
心臓特異的MLCK遺伝子の発現は、心不全患者の肺動脈圧とよい相関を示した。また、心筋梗塞を人為的に発生させて心臓障害を発現させた哺乳動物モデルにおいて、心臓特異的MLCK遺伝子の発現の亢進が観察された。
また、単離された心筋細胞を無血清条件下で培養すると、安定していたサルコメア構造は崩壊したが、組換え心臓特異的MLCK遺伝子を過剰発現させた後にエピネフリンによる外的刺激により該遺伝子にコードされるタンパク質を活性化すると、MLC2vリン酸化を介したサルコメア再アセンブリが増強された。一方、心臓特異的MLCK遺伝子の発現をRNA干渉により抑制すると、心筋細胞中のMLC2vリン酸化は低下し、それによりサルコメア再アセンブリが減弱した。このように、心筋細胞における心臓特異的MLCKによるMLC2vのリン酸化はサルコメアアセンブリの開始に必須の過程である。
さらに、心臓特異的MLCK遺伝子の発現を、ゼブラフィッシュ胚において、該遺伝子に対するモルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチドの注入により阻害すると、ゼブラフィッシュ胚の心臓異常の代表的表現型として報告されている腹部膨張が惹起された。このようなモルファントの心臓は、薄い心室壁と未成熟サルコメアを伴う心室拡張という特徴を示し、また、心臓肥大や拍動異常等の心不全と同様の症状を示した。不十分なサルコメア形成を原因とする心室壁のもろさが心室拡張を引き起こしたと考えることができる。モルファントの心室機能は維持されており、このことは、心拍数の増加からすると何らかの積極的な筋収縮作用によるものであると考えられる。
したがって、心臓特異的MLCK遺伝子の発現および/または該遺伝子にコードされるタンパク質の機能をサルコメアの著しい崩壊が認められる不全心筋において増強することにより、MLC2vのリン酸化を増強してサルコメア再アセンブリを増強することができ、そして不全心筋を回復させることができ、さらには心不全の防止および/または治療が可能である。
すなわち、心臓特異的MLCK遺伝子、該遺伝子にコードされるタンパク質、並びに該遺伝子の発現および/または該タンパク質の機能を増強する化合物は、心不全の防止および/または治療、およびサルコメア再アセンブリ増強に有効である。また、本遺伝子および/または該遺伝子にコードされるタンパク質の増加を検出することにより、心筋障害の検出を実施できる。さらに、本遺伝子の発現および/または該遺伝子にコードされるタンパク質の機能の増強を指標にして、心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法を実施できる。
「心不全」とは、心臓の機能、例えば心臓の収縮力や拡張力が低下し、全身組織に必要な血液循環が不足した病態生理学的状態をいう。心不全は、心筋症、心筋梗塞、および心臓弁膜症等あらゆる心臓病の末期に現れる病態である。心機能低下は通常心筋機能不全による。心筋機能不全は通常収縮不全であるが、心筋の弛緩機能の障害や拡張末期の心筋コンプライアンスの低下等(虚血、高度の肥大、繊維症等)による拡張不全の因子が加わっていることが多い。ときには拡張不全が主の場合もあり(肥大型心筋症、アミロイドーシス等)、さらには拡張不全には心筋外因子に基づく場合(収縮性心膜炎、心膜タンポナーデ等)もある。
「心筋障害」とは、心筋に原因不明の異常が生じて、心臓の形や働きに異常が生じた状態をいう。心筋障害は、拡張型心筋症や拘束型心筋症等の心筋症、心筋炎、心筋虚血等において認められる症状である。
「不全心筋」とは、サルコメア形成の不全による、構造が不完全な心筋をいう。
「サルコメア」とは、横紋筋の筋原繊維を構築し、その収縮に寄与する繰り返し単位をいう。筋原繊維はA帯と呼ばれる部分とI帯と呼ばれる部分を交互に有し、I帯にはZ線が存在する。Z線からZ線までの単位をサルコメアと称する。すなわち、サルコメアはZ線によって隣接するサルコメアと連結している。サルコメアは、両方のZ線から強固に連結され中央に向かっている細いアクチンフィラメントと、サルコメアの中央部に位置し、アクチンフィラメントと左右均等に重なって位置するミオシンフィラメントとからなる。
「サルコメアアセンブリ」とは、サルコメアが連結することをいう。「サルコメア再アセンブリ」とは、何らかの刺激により崩壊したサルコメア連結が再連結されて筋原繊維を構築することをいう。「サルコメア再アセンブリの増強」とは、崩壊したサルコメア連結の再連結が、処理前と比較して処理後に増加することをいう。
「発現」とは、タンパク質をコードするDNAの遺伝子情報がmRNAに転写されること、または、mRNAに転写され、かつタンパク質のアミノ酸配列として翻訳されることを意味する。すなわち、「心臓特異的MLCK遺伝子の発現」とは、心臓特異的MLCKをコードするDNAの遺伝子情報がmRNAに転写されること、または、mRNAに転写され、かつ心臓特異的MLCKのアミノ酸配列として翻訳されることを意味する。
遺伝子発現の測定は、簡便には、mRNA量、発現されるタンパク質の量、あるいは該タンパク質の機能を指標にして実施できる。mRNA量は、該mRNAに特異的にハイブリダイゼーションするポリヌクレオチドを標的遺伝子の塩基配列から設計して合成し、該ポリヌクレオチドを用いて標的遺伝子mRNAにハイブリダイゼーションさせることにより測定できる。このような測定は、公知のmRNA定量法を用いて実施できる。発現されるタンパク質の量の測定は、例えば、該タンパク質に対する抗体を用いて実施できる。抗体を用いたタンパク質の検出は、慣用のタンパク質検出方法により実施できる。また、発現されるタンパク質の量の測定は、発現の指標となるマーカーを実験系に導入して該マーカーを検出することにより実施できる。マーカーとして、グルタチオン S-トランスフェラーゼ(GST)、β-ガラクトシダーゼ(β-Gal)、ホースラディシュパーオキシダーゼ(HRP)またはアルカリフォスファターゼ(ALP)等の酵素類、His-tag、Myc-tag、HA-tag、FLAG-tagまたはXpress-tag等のタグペプチド類、または蛍光物質等を使用できる。これらマーカーの遺伝子をあらかじめ標的遺伝子に付加しておくことにより、発現タンパク質が標的遺伝子にコードされるタンパク質とマーカーとの融合タンパク質として発現されるため、該マーカーを検出することにより標的遺伝子の発現を測定できる。マーカーの検出方法は当業者には周知である。
遺伝子の発現の測定は、上記方法の他、レポーター遺伝子を使用して実施できる。具体的には、標的遺伝子のプロモーター領域の下流に、該遺伝子の代わりにレポーター遺伝子を連結したベクターを作成し、該ベクターを導入した細胞、例えば真核細胞等と被験化合物とを接触させ、レポーター遺伝子の発現の有無および変化を測定することにより実施できる。レポーター遺伝子として、レポーターアッセイで一般的に用いられている遺伝子を使用でき、具体的にはルシフェラーゼ、β-Galまたはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ等の酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を例示できる。レポーター遺伝子の発現の検出は、その遺伝子産物の活性、例えば、上記例示したレポーター遺伝子の場合はその遺伝子産物の酵素活性を検出することにより実施できる。
「機能」とは、タンパク質が本来備えている働きを意味する。一般的にタンパク質は、他の物質、例えば他のタンパク質と接触して相互作用することによりその機能を発現する。「心臓特異的MLCK遺伝子にコードされるタンパク質の機能」として、ミオシン調節軽鎖2リン酸化機能、例えばMLC2vリン酸化機能、およびMLC2vのリン酸化を介したサルコメア再アセンブリ機能を例示できる。
MLC2vをリン酸化する機能の測定は、例えば、心臓特異的MLCK遺伝子にコードされるタンパク質とMLC2vとを、カルシウムイオン、カルモジュリン、およびATP等の存在下、インビトロで接触させてリン酸化反応を起こした後に、リン酸化MLC2vを測定することにより実施できる。あるいは、MLC2vをリン酸化する機能の検出は、該機能を有すると考えられるタンパク質をコードする遺伝子およびMLC2vをコードする遺伝子を発現させた細胞を用いてカルシウムイオン濃度を上昇させる処理を行った後に該細胞中のリン酸化MLC2v量を測定し、該タンパク質をコードする遺伝子を発現させずに同様の処理を行った細胞のリン酸化MLC2v量と比較することにより実施できる。リン酸化MLC2v量の測定は、慣用のリン酸化タンパク質検出方法を使用して実施できる。例えば、リン酸化MLC2vに特異的に結合する抗体を使用して測定できる。リン酸化MLC2vと特異的に結合する抗体は、リン酸化MLC2vまたはその部分タンパク質を基質として使用して慣用の抗体製造方法により取得できる。あるいは、リン酸化反応に放射性同位元素標識ATPを使用することにより、リン酸化MLC2vを放射性同位元素で標識でき、その放射線量を測定することにより、リン酸化MLC2v量の測定を実施できる。細胞は公知の細胞をいずれも使用でき、好ましくは心筋細胞、より具体的にはラット心筋細胞を例示できる。細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる処理として、高濃度のカリウムにより細胞を処理する方法、カルシウムイオン選択的なイオノフォア、例えばイオノマイシンやA23187で細胞を処理する方法を例示できる。これら例示した方法に限らず、細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる公知の手法をいずれも使用できる。
サルコメア再アセンブリ機能の測定は、例えば、心臓特異的MLCK遺伝子を発現する細胞を使用して実施できる。標的遺伝子を発現する細胞は、該遺伝子を内因性に発現し、かつ、筋原繊維を構築し得る細胞であってよく、または、標的遺伝子を発現していない細胞に該遺伝子を含む組換えベクターをトランスフェクションすることにより人為的に該遺伝子を発現させた細胞であって、かつ筋原繊維を構築し得る細胞であってよい。このような細胞として哺乳動物、例えばラット、好ましくは新生仔ラットの培養心筋細胞を例示できる。サルコメアの再アセンブリ機能の測定は、このような細胞を無血清条件下または血清欠乏条件下で培養することによりサルコメアを崩壊させ、被検化合物を添加して培養した後、細胞におけるサルコメア構造を観察することにより実施できる。
「心臓特異的MLCK遺伝子の発現および/または該遺伝子にコードされるタンパク質の機能を増強する」とは、該遺伝子の発現および/または該タンパク質の機能がほとんど認められない状態から、該発現および/または該機能が認められる状態に変化させること、並びに該発現および/または該機能が認められる状態から、その発現および/または機能がさらに増加した状態に変化させることのいずれをも意味する。
ここで、ある遺伝子の発現および/または該遺伝子にコードされるタンパク質の機能に対して増強効果を奏する化合物あるいは該化合物を含む組成物を「増強剤」と称する。
「化合物」とは、化学的または生物学的化合物を指すものとして使用される。そのような化学的または生物学的化合物は特に限定されず、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、タンパク質、抗体、および低分子量化合物等を含む。
(心臓特異的MLCK遺伝子)
本明細書においては、単離された完全長DNAおよび/またはRNA;合成完全長DNAおよび/またはRNA;単離されたDNAオリゴヌクレオチド類および/またはRNAオリゴヌクレオチド類;あるいは合成DNAオリゴヌクレオチド類および/またはRNAオリゴヌクレオチド類を意味する総称的用語として「ポリヌクレオチド」という用語を使用し、ここでそのようなDNAおよび/またはRNAは最小サイズが2ヌクレオチドである。
心臓特異的MLCK遺伝子は、例えば配列表の配列番号1に記載の塩基配列またはその相補的塩基配列で表されるポリヌクレオチドからなる遺伝子を例示できる。好ましくは、配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドからなる遺伝子であって、MLC2vをリン酸化する機能を有するタンパク質をコードする遺伝子である。
配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドからなる遺伝子は、GenBankにアクセッション番号NM_182493で登録されているヒト由来の遺伝子である。配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドからなる遺伝子の発現が虚血心で亢進しており、該遺伝子にコードされるタンパク質がその構造からミオシン軽鎖キナーゼであると推定できることが報告されている(特許文献1)が、一方、該タンパク質の具体的機能や虚血心におけるその役割については何も報告されていない。配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドからなる遺伝子にコードされるタンパク質が実際にMLC2vをリン酸化すること、そして該リン酸化を介してサルコメア構造の形成に関与すること、それにより心臓の形成や機能に寄与することは本発明において初めて明らかにされた。
心臓特異的MLCK遺伝子には、配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドからなる遺伝子が包含される。
心臓特異的MLCK遺伝子には、また、配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたは該ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドからなる遺伝子と配列相同性を有し、かつ配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドからなる遺伝子にコードされるタンパク質と実質的に同一の機能を有するタンパク質をコードする遺伝子である限りにおいていずれも包含される。配列相同性は、通常、塩基配列の全体で約50%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、さらにより好ましくは約95%以上であることが適当である。配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドからなる遺伝子にコードされるタンパク質の機能として、MLC2vをリン酸化する機能、およびサルコメア再アセンブリを増強する機能を例示できる。実質的に同一の機能とは、その機能に程度の差はあるが、同一の結果を生じる機能を意味する。例えば、MLC2vをリン酸化する機能と実質的に同一の機能とは、その機能に程度の差はあるが、MLC2vをリン酸化してリン酸化MLC2vを生じる機能をいう。
さらに、心臓特異的MLCK遺伝子には、配列表の配列番号1に記載の塩基配列において1個以上のヌクレオチドの欠失、置換、付加または挿入といった変異が存する塩基配列またはその相補的塩基配列で表されるポリヌクレオチドからなる遺伝子が包含される。変異ヌクレオチドの数は、例えば1〜100個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個、さらにより好ましくは1個〜5個、特に好ましくは1〜3個である。変異の程度およびそれらの位置等は、該変異を有する遺伝子にコードされるタンパク質の機能が、配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドからなる遺伝子にコードされるタンパク質と実質的に同一のである限り特に制限されない。また、変異は、遺伝子にコードされるタンパク質のアミノ酸配列には影響を及ぼさないサイレント変異であるか、変異部分にコードされるアミノ酸の変異が同属アミノ酸への変異であるような変異であることが好ましい。このような変異を有する遺伝子は、天然に存在するポリヌクレオチドであってよく、誘発変異を有する遺伝子であってよい。また、天然由来の遺伝子に基づいて変異を導入して得た遺伝子であってもよい。変異を導入する方法は自体公知であり、例えば、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等を例示できる。これら方法は単独でまたは適宜組合せて使用できる。例えば、成書に記載の方法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社)に準じて、あるいはそれらの方法を改変して、変異の導入を実施できる。また、ウルマーの技術(ウルマー(Ulmer, K.M.)、「サイエンス(Science)」、1983年、第219巻、p.666-671)を利用することができる。
また、心臓特異的MLCK遺伝子には、上記遺伝子のポリヌクレオチドを構成する塩基配列の相補的塩基配列で表されるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするポリヌクレオチドからなる遺伝子を例示できる。ハイブリダイゼーションの条件は、例えば成書に記載の方法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー)等に従うことができる。具体的には、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、6×SSC、0.5% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および50% ホルムアミドの溶液中で42℃にて加温した後、0.1×SSC、0.5% SDSの溶液中で68℃にて洗浄する条件をいう。
心臓特異的MLCK遺伝子は、その発現あるいはそれにコードされるタンパク質の機能が阻害されない限りにおいて、5´末端側や3´末端側に所望の遺伝子が付加された遺伝子であり得る。本遺伝子に付加することのできる遺伝子は、具体的には、GST、β-Gal、HRPまたはALP等の酵素類、His-tag、Myc-tag、HA-tag、FLAG-tagまたはXpress-tag等のタグペプチド類、あるいはフルオレセインイソチオシアネートまたはフィコエリスリン等の蛍光物質をコードする遺伝子を例示できる。これら遺伝子から選択した1種類または複数種類の遺伝子を組合せて本遺伝子に付加できる。これら遺伝子の付加は、慣用の遺伝子工学的手法により行うことができ、本遺伝子の検出を容易にするために有用である。
心臓特異的MLCK遺伝子は、動物由来の遺伝子、例えばヒト、サル、マウス、ラット、ウマ、ヒツジ、ウシ、イヌ、ネコ、クマ、ウサギ、またはゼブラフィッシュ等の哺乳動物や魚類由来の遺伝子のいずれであってもよい。好ましくは、ヒト由来の遺伝子が使用される。
心臓特異的MLCK遺伝子の取得は、該遺伝子の配列情報に基づいて、公知の遺伝子工学的手法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社)により容易に実施できる。
心臓特異的MLCK遺伝子の取得は、具体的には、該遺伝子の発現が確認されている適当な起源から、常法に従ってcDNAライブラリーを調製し、該cDNAライブラリーから所望のクローンを選択することにより実施できる。cDNAの起源として、心臓特異的MLCK遺伝子の発現が確認されている各種の細胞や組織、またはこれらに由来する培養細胞を例示できる。これら起源からの全RNAの分離、mRNAの分離や精製、cDNAの取得とそのクローニング等はいずれも常法に従って実施できる。また、市販のcDNAライブラリー、例えばヒト心臓cDNAライブラリーを使用することもできる。cDNAライブラリーから所望のクローンを選択する方法も特に制限されず、慣用の方法を利用できる。例えば、心臓特異的MLCK遺伝子に選択的にハイブリダイゼーションするプローブやプライマー等を使用して所望のクローンを選択できる。具体的には、心臓特異的MLCK遺伝子に選択的にハイブリダイゼーションするプローブを使用するプラークハイブリダイゼーション法、コロニーハイブリダイゼーション法等やこれらを組合せた方法等を例示できる。ここで使用されるプローブとして、心臓特異的MLCK遺伝子の配列情報に基づいて化学合成したポリヌクレオチド等が一般的に使用できる。cDNAライブラリーからの所望のクローンの選択は、例えば公知のタンパク質発現系を利用して各クローンについて所望の遺伝子の発現確認を行い、さらに該遺伝子にコードされるタンパク質の機能を指標にして実施できる。タンパク質発現系として、自体公知の発現系がいずれも利用できるが、無細胞タンパク質発現系の利用が簡便である(マディン(Madin, K.)ら、「プロシーディングス オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシズ オブ ザ ユナイテッド ステーツ オブ アメリカ(Proceedings of The National Academy of Sciences of The United States of America)」、2000年、第97巻、p.559-564)。
遺伝子の取得にはその他、PCRによるDNA/RNA増幅法が好適に利用できる(ウルマー(Ulmer, K.M.)、「サイエンス(Science)」、1983年、第219巻、p.666-671;エールリッヒ(Ehrlich, H.A.)編、「PCRテクノロジー,DNA増幅の原理と応用」、1989年、ストックトンプレス;サイキ(Saiki, R.K.)ら、「サイエンス(Science)」、1985年、第230巻、p.1350-1354)。cDNAライブラリーから全長のcDNAが得られ難いような場合には、RACE法(「実験医学」、1994年、第12巻、第6号、p.615-618)、特に5´-RACE法(フローマン(Frohman, M.A.)ら、「プロシーディングス オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシズ オブ ザ ユナイテッド ステーツ オブ アメリカ(Proceedings of The National Academy of Sciences of The United States of America)」、1988年、第85巻、第23号、p.8998-9002)等の採用が好適である。PCRに使用するプライマーは、ポリヌクレオチドの塩基配列情報に基づいて適宜設計でき、常法に従って合成により得ることができる。増幅させたDNA/RNAの単離精製は、常法、例えばゲル電気泳動法等により実施できる。
本発明において、心臓特異的MLCK遺伝子を含む組換えベクターや該組換えベクターをトランスフェクションされてなる形質転換体が使用される。このようなベクターや形質転換体は、慣用の遺伝子工学的手法により容易に取得できる。
本発明においてまた、心臓特異的MLCK遺伝子の塩基配列において指定された領域に存在する部分塩基配列で表されるポリヌクレオチド、該部分塩基配列の相補的塩基配列で表されるポリヌクレオチド、および該ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドが使用される。このようなポリヌクレオチドは、その最小単位として好ましくは該領域において連続する5個以上のヌクレオチド、より好ましくは10個以上のヌクレオチド、より好ましくは20個以上のヌクレオチドからなる。このようなポリヌクレオチドは、DNAであってもよく、RNAであってもよい。これらポリヌクレオチドは、本発明に係るポリヌクレオチドの塩基配列情報に従って、所望の配列を設計し、自体公知の化学合成法により製造できる。簡便には、DNA/RNA自動合成装置を用いて取得できる。
心臓特異的MLCK遺伝子の塩基配列において指定された領域に存在する部分塩基配列で表されるポリヌクレオチド、該部分塩基配列の相補的塩基配列で表されるポリヌクレオチド、および該ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、該遺伝子を検出するためのプローブや該遺伝子を増幅するためのプライマーとして使用できる。心臓特異的MLCK遺伝子の指定された領域に存在する部分塩基配列で表されるポリヌクレオチド、および該部分塩基配列の相補的塩基配列で表されるポリヌクレオチドは、好ましくは、該遺伝子に特異的なポリヌクレオチドであることが好ましい。「特異的なポリヌクレオチド」とは、標的遺伝子に対して強くハイブリダイゼーションするが、該遺伝子とは別種の遺伝子には弱くハイブリダイゼーションするか、またはハイブリダイゼーションしないポリヌクレオチドを意味する。「心臓特異的MLCK遺伝子に特異的なポリヌクレオチド」とは、心臓特異的MLCK遺伝子に対して強くハイブリダイゼーションするが、該遺伝子とは別種の遺伝子には弱くハイブリダイゼーションするか、またはハイブリダイゼーションしないポリヌクレオチドを意味する。標的遺伝子配列(センス配列)に対して相補的な配列を有する「アンチセンス」プローブは、センス配列とハイブリダイゼーションするため、標的遺伝子の発現検出用プローブとして使用できる。「センス」とは、タンパク質をコードすることを意味する。「センス」プローブは、タンパク質をコードする遺伝子配列またはその部分遺伝子配列を有し、タンパク質をコードする遺伝子配列の鋳型となる遺伝子配列(アンチセンス配列)とハイブリダイゼーションする。センスプローブは、標的遺伝子の発現検出の際のネガティブコントロールとして有用である。
(心臓特異的MLCK)
本明細書においては、単離された若しくは合成の完全長タンパク質;単離された若しくは合成の完全長ポリペプチド;または単離された若しくは合成の完全長オリゴペプチドを意味する総称的用語として「タンパク質」という用語を使用し、ここでタンパク質、ポリペプチド若しくはオリゴペプチドは最小サイズが2アミノ酸である。以降、アミノ酸を表記する場合、1文字または3文字にて表記することがある。
本発明に係る遺伝子にコードされる心臓特異的MLCKは、配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドからなる遺伝子にコードされるタンパク質、具体的には配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列で表されるタンパク質を例示できる。
心臓特異的MLCKには、配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドからなる遺伝子にコードされるタンパク質と配列相同性を有し、かつ配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドからなる遺伝子にコードされるタンパク質と実質的に同一の機能を有するタンパク質である限りにおいていずれも包含される。このようなタンパク質は、具体的には、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列で表されるタンパク質とその配列において相同性を有し、かつ該タンパク質と実質的に同一の機能を有するタンパク質を意味する。配列相同性は、通常、アミノ酸配列の全体で約50%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、さらにより好ましくは約95%以上であることが適当である。
また、心臓特異的MLCKには、配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドからなる遺伝子にコードされるアミノ酸配列、例えば配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において1個以上のアミノ酸の欠失、置換、付加または挿入といった変異を有するアミノ酸配列で表され、かつ配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドからなる遺伝子にコードされるタンパク質と実質的に同一の機能を有するタンパク質が包含される。変異アミノ酸の数は、例えば1〜100個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個、さらにより好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個である。アミノ酸の変異の程度およびそれらの位置等は、該変異を有するタンパク質が、配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドからなる遺伝子にコードされるタンパク質と実質的に同一の機能を有するタンパク質である限りにおいて特に制限されない。このような変異を有するタンパク質は、天然において例えば突然変異や翻訳後修飾等により生じたものであってよく、また天然由来の遺伝子に基づいて変異を導入して得たものであってもよい。変異を導入する方法は自体公知であり、例えば、公知の遺伝子工学的技術を利用して実施できる。変異の導入において、当該タンパク質の基本的な性質(物性、機能、生理活性または免疫学的活性等)を変化させないという観点からは、例えば、同族アミノ酸(極性アミノ酸、非極性アミノ酸、疎水性アミノ酸、親水性アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、陰性荷電アミノ酸および芳香族アミノ酸等)の間での相互の置換は容易に想定される。
心臓特異的MLCKは、そのアミノ酸配列の構成アミノ基またはカルボキシル基等を、例えばアミド化修飾する等、機能の著しい変更を伴わない限りにおいて改変できる。また、N末端側やC末端側に別のタンパク質等を、直接的に、またはリンカーペプチド等を介して間接的に、遺伝子工学的手法等により付加して標識化したものであってよい。好ましくは、タンパク質の基本的な性質が阻害されないような標識化が望ましい。さらに好ましくは、タンパク質の機能が阻害されないような標識化が好ましい。標識化に使用される物質(標識物質)は、GST、β-Gal、HRPまたはALP等の酵素類、His-tag、Myc-tag、HA-tag、FLAG-tagまたはXpress-tag等のタグペプチド類、フルオレセインイソチオシアネートまたはフィコエリスリン等の蛍光物質類、マルトース結合タンパク質、免疫グロブリンのFc断片、ビオチンあるいは放射性同位元素等を例示できるが、これらに限定されない。標識物質は、1種類または複数種類を組み合せてタンパク質に付加できる。これら標識物質自体またはその機能の測定により、タンパク質の検出や精製が容易に実施できる。
心臓特異的MLCKは、動物由来のタンパク質、例えばヒト、サル、マウス、ラット、ウマ、ヒツジ、ウシ、イヌ、ネコ、クマ、ウサギ、またはゼブラフィッシュ等の哺乳動物や魚類由来のタンパク質のいずれであってもよい。好ましくは、ヒト由来のタンパク質が使用される。
心臓特異的MLCKは、化学合成産物、無細胞系合成産物、遺伝子工学的手法により細胞内で発現させたもの、または該細胞や生体試料から調製したものであってよく、これらからさらに精製されたものであってもよい。好ましくは精製された心臓特異的MLCKを使用することが夾雑物質の影響を排除するために適当である。
心臓特異的MLCKは、一般的な化学合成法により製造できる。タンパク質の化学合成方法として、例えば、固相合成方法や液相合成方法等が知られているがいずれも利用できる。かかるタンパク質合成法は、より詳しくは、アミノ酸配列情報に基づいて、各アミノ酸を1個ずつ逐次結合させて鎖を延長させていくいわゆるステップワイズエロンゲーション法と、アミノ酸数個からなるフラグメントを予め合成し、次いで各フラグメントをカップリング反応させるフラグメントコンデンセーション法とを包含する。心臓特異的MLCKの合成は、そのいずれによっても実施できる。上記タンパク質合成法において利用される縮合法も常法に従って実施できる。縮合法として、アジド法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、酸化還元法、DPPA(ジフェニルホスホリルアジド)法、DCC+添加物(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、N-ヒドロキシサクシンアミド、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド等)法、およびウッドワード法等を例示できる。
心臓特異的MLCKの取得はまた、該タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列情報に基づいて一般的な遺伝子工学的手法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社;ウルマー(Ulmer, K.M.)、「サイエンス(Science)」、1983年、第219巻、p.666-671;エールリッヒ(Ehrlich, H.A.)編、「PCRテクノロジー,DNA増幅の原理と応用」、1989年、ストックトンプレス)により実施できる。例えば、心臓特異的MLCK遺伝子を含むベクターを適当な宿主にトランスフェクションして取得した形質転換体を培養し、次いで得られた培養物から該遺伝子にコードされるタンパク質を回収することにより実施できる。形質転換体の培養は、各々の宿主に最適な自体公知の培養条件および培養方法で実施できる。培養は、形質転換体により発現されるタンパク質自体あるいはその機能を指標にして実施できる。あるいは、宿主中または宿主外に産生されたタンパク質自体あるいはそのタンパク質量を指標にして培養してもよく、培地中の形質転換体量を指標にして継代培養またはバッチ培養を行ってもよい。タンパク質が形質転換体の細胞内あるいは細胞膜上に発現する場合には、形質転換体を破砕して該タンパク質を抽出する。また、タンパク質が形質転換体外に分泌される場合には、培養液自体、または遠心分離処理等により形質転換体を除去した培養液が使用される。タンパク質の精製および/または分離は、その物理的性質、化学的性質等を利用した各種分離操作方法により実施できる。分離操作方法として、硫酸アンモニウム沈殿、限外ろ過、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーおよび透析法等の公知の方法を例示できる。これら方法は単独でまたは適宜組合せて使用できる。好ましくは、タンパク質のアミノ酸配列情報に基づき、これらに対する特異的抗体を作製し、該抗体により特異的に吸着する方法、例えば該抗体を結合させたカラムを利用するアフィニティクロマトグラフィーが推奨される。
本発明において、心臓特異的MLCKを特異的に認識する抗体が使用される。このような抗体は、心臓特異的MLCKまたはその部分タンパク質を抗原として使用して、汎用の抗体製造法により容易に取得できる。
(心不全の防止および/または治療剤並びに防止および/または治療方法)
本発明は、心臓特異的MLCK遺伝子、該遺伝子にコードされるタンパク質、並びに該遺伝子の発現および/または該タンパク質の機能を増強する化合物のうちの少なくとも1を有効成分として含有する心不全の防止および/または治療剤に関する。また、本発明は、心臓特異的MLCK遺伝子、該遺伝子にコードされるタンパク質、並びに該遺伝子の発現および/または該タンパク質の機能を増強する化合物のうちの少なくとも1を有効成分として含有するサルコメア再アセンブリ増強剤に関する。
本発明によれば、心臓特異的MLCK遺伝子、該遺伝子にコードされるタンパク質、並びに該遺伝子の発現および/または該タンパク質の機能を増強する化合物のうちの少なくとも1を使用することを特徴とする心不全の防止および/または治療方法を実施できる。心臓特異的MLCK遺伝子、該遺伝子にコードされるタンパク質、並びに該遺伝子の発現および/または該タンパク質の機能を増強する化合物のうちの少なくとも1を使用することは、例えば、上記防止および/または治療剤を、心不全を発症することが予測される対象、例えば心筋障害を有する対象や、心不全を発症した対象に投与することにより達成できる。
本発明に係る薬剤は、心臓特異的MLCK遺伝子、該遺伝子にコードされるタンパク質、並びに該遺伝子の発現および/または該タンパク質の機能を増強する化合物のうちの少なくとも1を有効成分としてその有効量含む他、必要に応じて、心不全の防止および/または治療に用いられる化合物や、医薬用に許容される担体(医薬用担体)を含み得る。また、本発明に係る薬剤において、心臓特異的MLCK遺伝子として該遺伝子自体の代わりに、該遺伝子を含む組換えベクターまたは該組換えベクターでトランスフェクションされてなる形質転換体を含むことができる。
本発明に係る薬剤中に含まれる有効成分の量は、広範囲から適宜選択される。通常約0.00001〜70重量%、好ましくは0.0001〜5重量%程度の範囲とするのが適当である。
医薬用担体は、製剤の使用形態に応じて通常使用される、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤および賦形剤を例示できる。これらは得られる製剤の投与形態に応じて適宜選択して使用される。より具体的には、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトースを例示できる。これらは、本薬剤の剤形に応じて適宜1種類または2種類以上を組み合わせて使用される。その他、安定化剤、殺菌剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、界面活性剤、およびpH調整剤等を適宜使用することもできる。安定化剤は、例えばヒト血清アルブミンや通常のL-アミノ酸、糖類、セルロース誘導体を例示できる。L-アミノ酸は、特に限定はなく、例えばグリシン、システイン、グルタミン酸等のいずれでもよい。糖類も特に限定はなく、例えばグルコース、マンノース、ガラクトース、果糖等の単糖類、マンニトール、イノシトール、キシリトール等の糖アルコール、ショ糖、マルトース、乳糖等の二糖類、デキストラン、ヒドロキシプロピルスターチ、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等の多糖類等およびそれらの誘導体等のいずれでもよい。セルロース誘導体も特に限定はなく、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のいずれでもよい。界面活性剤も特に限定はなく、イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤のいずれも使用できる。界面活性剤には、例えばポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ソルビタンモノアシルエステル系、脂肪酸グリセリド系等が包含される。緩衝剤は、ホウ酸、リン酸、酢酸、クエン酸、ε-アミノカプロン酸、グルタミン酸および/またはそれらに対応する塩(例えばそれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩)を例示できる。等張化剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類、グリセリンを例示できる。キレート剤は、例えばエデト酸ナトリウム、クエン酸を例示できる。
本発明に係る薬剤の用量範囲は特に限定されず、含有される成分の有効性、投与形態、投与経路、疾患の種類、対象の性質(体重、年齢、病状および他の医薬の使用の有無等)、および担当医師の判断等応じて適宜選択される。一般的には適当な用量は、例えば対象の体重1kgあたり約0.01μg乃至100mg程度、好ましくは約0.1μg乃至1mg程度の範囲であることが好ましい。しかしながら、当該分野においてよく知られた最適化のための一般的な常套的実験を用いてこれらの用量の変更を行うことができる。上記投与量は1日1回乃至数回に分けて投与することができる。あるいは、心不全発生時に投与するといった投与形態をとることも可能である。
投与経路は、全身投与または局所投与のいずれも選択することができる。この場合、疾患、症状等に応じた適当な投与経路を選択する。本発明に係る薬剤は、経口経路および非経口経路のいずれによっても投与できる。非経口経路としては、通常の静脈内投与、動脈内投与の他、皮下、皮内、筋肉内等への投与を挙げることができる。さらに、経粘膜投与または経皮投与を実施することができる。
剤形は、特に限定されず、種々の剤形とすることができる。例えば、溶液製剤として使用できる他に、これを凍結乾燥化し保存し得る状態にした後、用時、水や生理的食塩水等を含む緩衝液等で溶解して適当な濃度に調製した後に使用することもできる。また本発明に係る薬剤は、持続性または徐放性剤形であってもよい。
具体的には、経口投与のためには、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤、乳剤、懸濁液、溶液剤、酒精剤、シロップ剤、エキス剤、エリキシル剤とすることができる。非経口剤としては、例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤等の注射剤;経皮投与または貼付剤、軟膏またはローション;口腔内投与のための舌下剤、口腔貼付剤;ならびに経鼻投与のためのエアゾール剤;坐剤とすることができるが、これらには限定されない。これらの製剤は、製剤工程において通常用いられる公知の方法により製造することができる。
経口用固形製剤を調製する場合は、上記有効成分に賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されるものでよく、例えば、賦形剤としては、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸等を、結合剤としては、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等を、崩壊剤としては乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等を、滑沢剤としては精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等を、矯味剤としては白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等を例示できる。
経口用液体製剤を調製する場合は、上記有効成分に矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤等を加えて常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。この場合矯味剤としては上記に挙げられたもので良く、緩衝剤としてはクエン酸ナトリウム等が、安定化剤としてはトラガント、アラビアゴム、ゼラチン等を挙げることができる。
注射剤を調製する場合は、上記有効成分にpH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下、筋肉内及び静脈内用注射剤を製造することができる。この場合のpH調節剤及び緩衝剤としてはクエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等を挙げることができる。安定化剤としてはピロ亜硫酸ナトリウム、 エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、チオグリコール酸、チオ乳酸等を挙げることができる。局所麻酔剤としては塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等を挙げることができる。等張化剤としては、塩化ナトリウム、ブドウ糖等が例示できる。
(心筋障害の検出方法)
本発明はまた、心筋障害の検出方法に関する。本発明に係る心筋障害の検出方法は、心臓特異的MLCK遺伝子の発現量を被検試料において測定し、そして正常試料における該遺伝子の発現量と比較して発現量が増加している被検試料を心筋障害由来の試料であると判定すること特徴とする。より詳しくは、正常試料における該遺伝子の発現量と比較して発現量が、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍以上、さらにより好ましくは10倍以上である被検試料を心筋障害由来の試料であると判定する。
心臓特異的MLCK遺伝子の発現は、拡張型心筋症、肥大型心筋症、心筋梗塞、あるいは大動脈弁閉鎖不全等により心不全を発症した患者の不全心筋において正常心筋における発現と比較して高かった。また、該遺伝子の発現は、これら患者の肺動脈圧とよく相関していることから、疾患の重篤度と相関していると考えられる。したがって、本発明に係る心筋障害の検出方法により、心筋障害の診断が実施でき、さらには心不全の診断を実施できる。
被検試料は、心臓特異的MLCK遺伝子や該遺伝子にコードされるタンパク質を含む限りにおいて特に制限されず、具体的には、細胞、血液、尿、唾液、髄液、組織生検または剖検材料等の生体由来の試料を例示できる。その中でも、血液が好適である。所望により、試料から核酸を抽出して核酸試料を調製して用いることができる。核酸は、分析前にPCRまたはその他の増幅法を用いることにより酵素的に増幅してもよい。核酸試料は、また、標的配列の検出を容易にする種々の方法、例えば変性、制限消化、電気泳動またはドットブロッティング等により調製してもよい。
心臓特異的MLCK遺伝子の発現量の測定は、該遺伝子のmRNAやcDNA等の核酸または該遺伝子にコードされるタンパク質の測定により実施できる。
核酸の定性的または定量的な測定方法には、自体公知の遺伝子検出法をいずれも使用できる。具体的には、PCRやその変法、サザンブロット法、ノーザンブロット法、NASBA(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification)法、TMA(transcription-mediated amplification)法を例示できる。また、in situ PCRやその変法、およびin situ ハイブリダイゼーション等を利用した細胞レベルでの遺伝子検出法を例示できる。
遺伝子検出法は、PCRが感度の点から好ましい。PCRは、標的遺伝子を特異的に増幅できるプライマーを用いる方法である限り、従来公知の方法のいずれも使用できる。例えば、RT-PCRを用いることができ、その他、当該分野で用いられる種々のPCRの変法を適応できる。PCRにより、遺伝子の検出の他に、標的遺伝子のDNAの定量を実施できる。
遺伝子検出法において、標的遺伝子の検出、該遺伝子の発現量の測定、および該遺伝子の増幅の実施に、該遺伝子の部分配列で表されるポリヌクレオチドであってプローブとしての性質を有するポリヌクレオチドまたはプライマーとしての性質を有するポリヌクレオチドが有用である。
プローブとしての性質を有するポリヌクレオチドとは、標的遺伝子のみに特異的にハイブリダイゼーションできる、標的遺伝子特有の配列で表されるものを意味する。プライマーとしての性質を有するポリヌクレオチドとは、標的遺伝子のみを特異的に増幅できる、標的遺伝子特有の配列で表されるものを意味する。プローブまたはプライマーは、塩基配列長が一般的に5〜50ヌクレオチド程度であるものが好ましく、10〜35ヌクレオチド程度であるものがより好ましく、15〜30ヌクレオチド程度であるものがさらに好ましい。プローブは、通常は標識化したプローブを用いるが、非標識のものであってもよい。プローブを標識化する方法は、種々の方法が知られており、具体的には、ニックトランスレーション、ランダムプライミングまたはキナーゼ処理を利用する方法を例示できる。適当な標識物質として、ジゴキシゲニン、放射性同位体、ビオチン、蛍光物質、化学発光物質、酵素、抗体を例示できる。
プローブとしての性質を有するポリヌクレオチドは、標的遺伝子の3´非翻訳(UTR)領域の相補的塩基配列または該相補的塩基配列の部分塩基配列で表されるポリヌクレオチドであることが好ましい。3´非翻訳(UTR)領域の相補的配列または該相補的塩基配列の部分塩基配列で表されるポリヌクレオチドは、該遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)領域、5´UTR領域の相補的配列または該相補的塩基配列の部分塩基配列で表されるポリヌクレオチドと比較して、該遺伝子に対してより特異的にハイブリダイゼーションするアンチセンスプローブとして利用することができ、該遺伝子の検出に有用である。また、検出目的の遺伝子の3´非翻訳(UTR)領域の塩基配列または該塩基配列の部分塩基配列で表されるポリヌクレオチドはセンスプローブとして利用することができ、該遺伝子の検出の際にネガティブコントロールとして有用である。
タンパク質の定量的あるいは定性的な測定には、自体公知のタンパク質検出法あるいは定量法をいずれも使用できる。具体的には、ウエスタンブロット法、イムノブロット法、ドットブロット法を例示できる。例えば、標的タンパク質に対する特異抗体を用いて免疫沈降を行い、ウェスタンブロット法またはイムノブロット法により標的タンパク質を検出できる。また、標的タンパク質に対する抗体により、免疫組織化学的技術を用いてパラフィンまたは凍結組織切片中の本タンパク質を検出できる。ウェスタンブロット法、イムノブロット法および免疫組織化学的技術は、いずれも周知技術である。
標的タンパク質の測定方法の好ましい具体例として、モノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体を用いるサンドイッチ法を含む、酵素免疫測定法(ELISA)、放射線免疫検定法(RIA)、免疫放射線検定法(IRMA)、免疫酵素法(IEMA)、および競争結合アッセイ等を挙げることができる。これら測定法はいずれも当業者にとって周知技術である。
(化合物の同定方法)
本発明はまた、心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法に関する。本発明に係る化合物の同定方法は、心臓特異的MLCK遺伝子の発現および/または該遺伝子にコードされるタンパク質の機能を増強する化合物を選択することを特徴とする。本同定方法は、心臓特異的MLCK遺伝子、該遺伝子にコードされるタンパク質、該遺伝子を含有する組換えベクター、該組換えベクターをトランスフェクションした形質転換体、並びに該タンパク質に特異的に結合し得る抗体のうちの少なくともいずれか1種類を用いて、自体公知の医薬品スクリーニングシステムを利用して実施できる。本同定方法は、インビトロまたはインビボで実施されるいずれの方法も包含する。
本発明に係る化合物の同定方法は、例えば、心臓特異的MLCK遺伝子の発現を測定することのできる実験系において、調べようとする化合物(被検化合物)と該遺伝子との相互作用を可能にする条件下で、被検化合物と該遺伝子とを共存させることにより接触させて該遺伝子の発現を測定し、次いで被検化合物の存在下における該遺伝子の発現と、被検化合物の非存在下における該遺伝子の発現とを比較し、該遺伝子の発現を増強した被検化合物を選択することにより実施される。
心臓特異的MLCK遺伝子の発現を測定することのできる実験系として、該遺伝子を発現する細胞を好ましく例示できる。標的遺伝子を発現する細胞は、該遺伝子を内因性に発現する細胞であってよく、または、標的遺伝子を発現していない細胞に該遺伝子を含む組換えベクターをトランスフェクションすることにより人為的に該遺伝子を発現させた細胞であってよい。心臓特異的MLCK遺伝子を内因性に発現する細胞として哺乳動物、例えばラット、好ましくは新生仔ラットの培養心筋細胞を例示できる。
遺伝子の発現の測定は、上記のように、mRNA量、発現されるタンパク質の量、あるいは該タンパク質の機能を指標にして実施できる。または、レポーター遺伝子を使用した遺伝子発現測定方法を用いることができる。被検化合物の処理により、被検化合物非処理のときと比較して、mRNA量、発現されるタンパク質の量、該タンパク質の機能、あるいはレポーター遺伝子の発現量が増加したとき、該被検化合物は心臓特異的MLCK遺伝子の発現を増強したと判定できる。
本発明に係る化合物の同定方法はまた、例えば、心臓特異的MLCK遺伝子にコードされるタンパク質の機能を測定することのできる実験系において、被検化合物と該タンパク質との相互作用を可能にする条件下で、被検化合物と該タンパク質とを共存させることにより接触させて該タンパク質の機能を測定し、次いで被検化合物の存在下における該タンパク質の機能と、被検化合物の非存在下における該タンパク質の機能とを比較し、該タンパク質の機能を増強した被検化合物を選択することにより実施される。
心臓特異的MLCK遺伝子にコードされるタンパク質の機能を測定することのできる実験系として、単離した該タンパク質を用いてその機能を測定する実験系および該遺伝子を発現する細胞のいずれも使用できる。標的遺伝子を発現する細胞は、該遺伝子を内因性に発現する細胞であってよく、または、標的遺伝子を発現していない細胞に該遺伝子を含む組換えベクターをトランスフェクションすることにより人為的に該遺伝子を発現させた細胞であってよい。心臓特異的MLCK遺伝子を内因性に発現する細胞として哺乳動物、例えばラット、好ましくは新生仔ラットの培養心筋細胞を例示できる。心臓特異的MLCKは、カルシウム・カルモジュリン依存性キナーゼであるため、その機能の発現を測定する実験系ではカルシウム濃度が適当な濃度であり、また、カルモジュリンが存在することが好ましい。カルモジュリンは、市販の組換えカルモジュリンを使用できる。カルシウム濃度は、インビトロの実験系においては適当なカルシウム塩を使用することにより調節できる。また、細胞を用いた実験系においては、適当なカルシウムイオン選択的イオノフォア、例えばイオノマイシンやA23187等で細胞を処理するか、高濃度のカリウムにより細胞を処理することにより、細胞内カルシウム濃度を上昇させることができる。
心臓特異的MLCKの機能として、MLC2vリン酸化機能を例示できる。心臓特異的MLCKによるMLC2vリン酸化機能の測定は、上記のように、心臓特異的MLCKと基質であるMLC2vとを使用してリン酸化反応を惹起し、該反応の結果生産されたリン酸化MLC2vを検出することにより実施できる。このようなリン酸化反応はインビトロで実施できるし、また、細胞内で実施することもできる。被検化合物の処理により、被検化合物非処理のときと比較して、リン酸化MLC2vの量が増加したとき、該被検化合物は、心臓特異的MLCKのMLC2vリン酸化機能を増強したと判定できる。
心臓特異的MLCKの機能として、MLC2vのリン酸化を介したサルコメア再アセンブリ機能を例示できる。サルコメア再アセンブリ機能の測定は、上記のように、心臓特異的MLCK遺伝子を発現する細胞を使用して実施できる。サルコメア再アセンブリ機能の測定において、被検化合物処理により、被検化合物非処理と比較して、サルコメア構造を有する細胞が増加したとき、該被検化合物は心臓特異的MLCKのサルコメア再アセンブリ機能を増強すると判定できる。
(ゼブラフィッシュ心不全モデル)
本発明はまた、ゼブラフィッシュ由来の心臓特異的MLCK遺伝子、並びに該遺伝子の発現を抑制させることにより作製したゼブラフィッシュ心不全モデルおよび該ゼブラフィッシュ心不全モデルの作製方法に関する。
「ゼブラフィッシュ心不全モデル」とは、心不全の惹起につながる病態、例えば心室拡張等の心室異常、心室壁における不完全なサルコメア形成、心肥大、腹部膨張、心拍数の増加、および循環障害のうち少なくとも1の病態を示すゼブラフィッシュを意味する。
ゼブラフィッシュ由来の心臓特異的MLCK遺伝子は、配列表の配列番号3に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドからなる遺伝子である。その他、本発明においては、ゼブラフィッシュ由来の平滑筋MLCK遺伝子(smMLCK遺伝子、配列番号5)および骨格筋MLCK遺伝子(skMLCK遺伝子、配列番号7)を同定した。配列表の配列番号3、5および7のそれぞれに記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドからなる遺伝子は、DDBJ/EMBL/GenBankにそれぞれアクセッション番号AB267907[gi:157678777]、AB267908[gi:157678779]、およびAB267909[gi:157678781]で登録した。
本発明には、上記ゼブラフィッシュ由来のMLCK遺伝子を含む組換えベクター、該組換えベクターをトランスフェクションした形質転換体が包含される。
ゼブラフィッシュ心不全モデルの作製は、ゼブラフィッシュ由来心臓特異的MLCK遺伝子の発現を自体公知の遺伝子発現抑制法を用いてノックダウンすることにより実施できる。または、染色体の該遺伝子をジーンターゲティング法等の遺伝子工学的手法を利用して任意に変換させてノックアウトすることにより作製できる(「ジーンターゲティング:ア プラクティカル アプローチ(プラクティカル アプローチ シリーズ 212)(Gene targeting: a practical approach (Practical Approach Series 212))、第2版、2000年、ジョイヤー、アレクサンドラ(Joyer, Alexandra L.)編、出版:オックスフォードユニバーシティープリント(Oxford University Print)等)。
ゼブラフィッシュ心不全モデルの作製は、例えば、ゼブラフィッシュ由来心臓特異的MLCK遺伝子に対するモルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド(MO)やsiRNAを用いて該遺伝子の発現を抑制することにより実施できる。ゼブラフィッシュ由来心臓特異的MLCK遺伝子に対するモルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチドとして、具体的には、ゼブラフィッシュ由来心臓特異的MLCK遺伝子mRNAのAUG翻訳開始部位に対する特異的MO(配列番号27)、該遺伝子のエキソン4のスプライスドナー部位およびアクセプター部位に対する特異的MO(それぞれ配列番号29および配列番号30)、該遺伝子のエキソン6のスプライスドナー部位およびアクセプター部位に対する特異的MO(それぞれ配列番号31および配列番号32)を例示できる。このような外来遺伝子を個体へ導入する方法には、ベクターを用いずにクローニングしたDNAをそのまま初期胚に注射してランダムに起きるゲノム中への取り込みを利用する方法や、ベクターとしてトランスポゾンやレトロウイルスを用いる方法等が知られている。ゼブラフィッシュ心不全モデルの作製は、具体的にはゼブラフィッシュ由来心臓特異的MLCK遺伝子に対するMOをゼブラフィッシュ胚に公知方法で注射することにより実施できる(実施例1参照)。ゼブラフィッシュ胚へのMOの注射は細胞ステージ1−4に実施することが好ましい。
ゼブラフィッシュ心不全モデルでは、腹部膨張表現型が誘発され、不完全なサルコメア形成を伴う心室拡張が引き起こされ、心肥大が認められた。心室壁は正常心臓と比較して薄かったが、心房はほとんど正常であった。また、心臓収縮能は正常心臓と比較して有意な差異が観察されなかったが、心拍数が増加したことから、これは心収縮増強作用(inotropy)の補償的上方制御によると考えることができる。ゼブラフィッシュ心不全モデルは受精後5−6日目には全身性浮腫を発現し、そして循環障害により死亡した。組織病理学的分析により、ゼブラフィッシュ心不全モデルの腹部膨張は心膜浮腫によるものであることが明らかになった。
ゼブラフィッシュ心不全モデルは、心不全の病態の解明や、心不全の防止および/または治療手段の開発に有用である。例えば、ゼブラフィッシュ心不全モデルを使用して、心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法を実施できる。該同定方法は、被検化合物をゼブラフィッシュ心不全モデルに投与し、該被検化合物によるゼブラフィッシュ心不全モデルの心不全症状の改善を検出することにより実施できる。被検化合物のゼブラフィッシュ心不全モデルへの投与は、被検化合物が水溶性である場合には飼育水中に溶解することにより実施でき、脂溶性である場合には適当な界面活性剤との複合体またはエマルジョンとして飼育水中にけん濁することにより実施できる。あるいは、経口投与または注射等による非経口投与によっても実施できる。ゼブラフィッシュ心不全モデルの心不全症状の改善の検出は、ゼブラフィッシュ心不全モデルの心臓の形態および機能を測定し、被検化合物を投与されたゼブラフィッシュ心不全モデルと非投与のゼブラフィッシュ心不全モデルとの間で比較することにより実施できる。ゼブラフィッシュ心不全モデルの心不全症状として、心室拡張等の心室異常、心室壁における不完全なサルコメア形成、心肥大、腹部膨張、心拍数の増加、および循環障害を例示できる。心室拡張は、肉眼または実体顕微鏡により容易に観察でき、また、心室の拡張末期径や収縮末期径等を実体顕微鏡に装着したカメラで画像化して画像解析ソフトにてその大きさを測定することにより検出できる。心室壁のサルコメア形成は、心臓切片の組織学的解析、例えば該切片のヘマトキシリンおよびエオジン染色により検出できる。心肥大や腹部膨張は、肉眼または実体顕微鏡により容易に観察でき、また、心臓やその周囲あるいは腹部や腹部周囲を実体顕微鏡に装着したカメラで画像化して画像解析ソフトにてその大きさを測定することにより検出できる。心拍数は、肉眼または実体顕微鏡により容易に観察でき、また、実体顕微鏡に装着したカメラで画像化して画像解析ソフトにて測定することができる。循環障害は、例えば、血管造影法により検出できる。血管造影法は、ゼブラフィッシュ心不全モデルの尾部あるいは尾部に近い静脈から、蛍光色素や蛍光色素を結合させたマイクロビーズあるいは色素をガラスキャピラリーで注入することにより実施できる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されない。
(材料および方法)
1. 動物
動物の処置は全て実験動物の管理と使用に関する指針(米国国立衛生試験所、第82-23号、1996年改定)に準拠して実施した。
2. 材料
抗FLAG-M2抗体および抗FLAG-M2アフィニティゲル(シグマ−アルドリッチ社)、モノクローナル マウス抗トロポニンT心臓特異的アイソフォーム抗体(ネオマーカーズ社)、モノクローナル マウス抗ヒトデスミン抗体(ダコ社)、およびポリクローナル ヤギ抗α−アクチニン(N-19)抗体(サンタ クルズ バイオテクノロジー社)は市販のものを使用した。
抗ヒトsmMLCK抗体は作製した。また、げっ歯類心臓特異的MLCKに特異的なポリクローナル抗体(RcMKと略称する)を作製した。さらに、リン酸化MLC2vを検出する抗体(p-s15MLC;げっ歯類のセリン15リン酸化MLC2vに対する抗体)および全MLC2vをそれぞれ検出する抗体(tMLC)を作製した。これら抗体の作製は常法に従って実施した。RcMKは、マウス組換えFLAGタグ標識心臓特異的MLCKを検出するのみならず、ラット心臓特異的MLCKを心筋細胞の全細胞抽出物から検出した。tMLCはリン酸化および非リン酸化MLC2vの両方を検出するが、p-s15MLCはリン酸化型MLC2vを特異的に検出した。
塩酸エピネフリンはシグマ−アルドリッチ社から購入して使用した。
3. マイクロアレイ分析
マイクロアレイ分析には、ヒト正常心筋のRNA試料を2試料と不全心筋の試料を12試料使用した。不全心筋試料は、重篤なCHF患者からインフォームドコンセントを書面で得た後にバチスタ手術またはドール手術により取得した。肺動脈圧(PAP)は手術の2−4週間前に測定し、そして駆出率(EF)を心エコー法(echocardiography)で手術前日に測定した。正常試料はバイオチェイン社より購入した。心臓特異的遺伝子発現はHG-U95 アフィメトリックス ジーンチップを用いて測定した。発現データはすべてグローバルスケーリングにより標準化し、そしてジーンスプリングソフトウエア(アジレント テクノロジー社)により分析した。発現データはすべて遺伝子ごとに標準化し、そしてノイズや信頼性のないデータを除いて分析した。PAP、EFおよび脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の値はそれらの中央値に標準化し、そして遺伝子発現と臨床パラメータとの相関を評価した。さらに、ほぼ心臓でのみ発現している遺伝子を選択するために、候補遺伝子の発現の値を、ヒト試料のジーンチップ発現プロフィールを含むジーンエクスプレス データベース(ジーンロジック社)からの分析用24主要組織中で検索した。
4. RNA抽出、RT-PCR、および定量
ラット組織(20−50mg)およびゼブラフィッシュの受精後72時間(72hpf)の胚を、1ml RNA-Bee試薬(テル−テスト社)中で均質化し、そして全RNAをOmniscript RTキット(キアゲン社)を用いて製造者の手引きに従って単離しcDNAに転換した。ラットの心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、βミオシン重鎖、心臓特異的MLCK、およびグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)のmRNAを増幅する特異的プライマーは、アプライドバイオシステムズ社より購入した。定量的RT-PCRはABI Prism 7700Sequence Detector System(アプライドバイオシステムズ社)を用いてデュプリケートで行った。各転写物のレベルは、スレショールドサイクル(Ct)法により、GAPDHを内因性コントロールとして用いて定量した。RT-PCR用に、標的とするエキソン領域を包含する特異的プライマーを設計し、ゼブラフィッシュ心臓特異的MLCK(z-心臓特異的MLCK)およびゼブラフィッシュMLC2v(z-MLC2v)の転写物を増幅した。使用したプライマーの配列を以下に示す。
z-心臓特異的MLCK エキソン4増幅用プライマー対
フォワード:5´TCCGGCTGATGCTAAATGTGTCATTGAGAC 3´(配列番号9)
リバース:5´CTGGTAAACACGATGGCATCCAGCTCCGTC 3´(配列番号10)
z-心臓特異的MLCK エキソン6増幅用プライマー対
フォワード:5´CGGGACAACAATTGGAGAAGATTGAGGAT 3´(配列番号11)
リバース:5´CTGGTAAACACGATGGCATCCAGCTCCGTC 3´(配列番号12)
z-MLC2v エキソン2増幅用プライマー対
フォワード:5´AAATCAGCATTTCCACTCGC 3´(配列番号13)
リバース:5´GCGTACGCATTGATACATG 3´(配列番号14)
5. ノーザンブロット分析
市販のヒト複合組織ノーザンブロット並びにヒト心臓および骨格筋のポリARNAをクローンテック社より購入した。各ポリARNAは逆転写し、Omniscript RTキット(キアゲン社)を用いて製造者による手引きに従い増幅した。ヒト心臓特異的MLCKおよびsmMLCKのハイブリダイゼーションプローブは、ヒト心臓のcDNAからPCRにより増幅し、ヒトskMLCKのハイブリダイゼーションプローブは、ヒト骨格筋のcDNAからPCRにより増幅した。メンブレンは32P標識プローブと、Rapid-Hybバッファー(アマシャムバイオサイエンス社)中で65℃にて1時間ハイブリダイゼーションさせた。最終洗浄は、0.1% SDSを含む0.1×SSCで65℃にて5分間の条件で行った。ハイブリダイゼーションさせたメンブレンはBAS system(フジ社)を用いたオートラジオグラフィで可視化した。
6. アデノウイルス構築物の作製およびトランスフェクション
アデノウイルス構築物は、ViraPowerTM Adenoviral Expression System(インビトロージェン社)を用いて、基本的には製造者による手引きに従って作製した。マウス心臓特異的MLCKおよびLacZをコードするアデノウイルスベクターは培養心筋にさまざまな感染多重度(MOI)で12時間にわたって感染させた。タンパク質の回収および免疫染色はアデノウイルス感染後48時間目に実施した。
7. 心臓特異的MLCKの基質の同定
組換え心臓特異的MLCKをHEK293T細胞中でFLAG融合タンパク質として発現させた。FLAG融合心臓特異的MLCKを発現するHEK293T細胞を、細胞溶解バッファー(20mM MOPS、pH7.0、0.15M NaCl、10% グリセロール、および1% CHAPS)で溶解し、そして組換え心臓特異的MLCKを抗FLAG-M2アフィニティゲル(シグマ−アルドリッチ社)を用いた免疫沈降により精製した。
雄性C57BL/6マウス(10−12週齢)から心臓を採取し、ポリトロンホモジナイザーを用いて10mlの組織溶解バッファー(30mM MOPS、pH6.8、5% グリセロール、0.1% 2-メルカプトエタノール、および1mM グリコールエーテルジアミン四酢酸 (EGTA))中で機械的に均質化した。溶解物を100,000gで40分間遠心処理し、9mlの上清を回収した。マウス心臓抽出物を次いでSP650カチオン交換カラムに付した。カラムは溶出バッファーA(30mM MOPS、5% グリセロール、0.1% 2-メルカプトエタノール)にてpH6.8で平衡化し、抽出物をNaCl(0−0.5M)の直線勾配にて流速1ml/minで溶出した。回収した各1mlのフラクションを活性組換え心臓特異的MLCK、市販の組換えカルモジュリン(アップステート社)、2mM CaCl2、および[γ-P32]ATPと共に30分間インキュベーションし、次いでドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)に付した。乾燥後、ゲルのオートラジオグラフィを撮り、BAS(フジ社)で可視化した。[γ-P32]ATPで標識された20kDa基質を含むフラクション(フラクション10および11)をプールし、0.3% トリフルオロ酢酸と5% アセトニトリルで平衡化したフェニルRPLCカラム(5ph-AR-300;ナカライテスク社)に付した。フラクションは100% アセトニトリルの直線勾配で流速1ml/minで溶出した。SDS-PAGEで分離後、ゲルを同時に銀染色し、オートラジオグラフィを撮影した。銀染色ゲルで20kDa基質を同定した後、そのバンドをゲルから切り出し、そしてタンパク質をマトリクス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析計(MALDI-TOFMS)およびペプチドマスフィンガープリンティングより同定した。
8. 培養新生仔ラット心筋細胞の調製とRNA干渉による遺伝子発現抑制(gene silencing)
新生仔心筋細胞の初代培養は、ウィスターラットから、既報に記載の方法に従って調製した(ワケノ(Wakeno, M.)ら、「サーキュレーション(Circulation)」、2006年、第114巻、p.1923-1932)。心筋細胞は10% 牛胎児血清(FBS、エキテックバイオ社)を含むDMEM中で培養した。心筋細胞の単離後6時間目に、細胞にsiRNA(100nmol/l)をオプチフェクト試薬(インビトロージェン社)を用いて製造者の手引きに従ってトランスフェクションした。si-cMKおよびsi-smMKはB-ブリッジ社より購入した。ネガティブコントロールとして、細胞にsiコントロール ノンターゲティングsiRNA#1(B-ブリッジ社)をトランスフェクションした。si-cMKおよびsi-smMKの塩基配列を次に示す。
si-cMK-1
センス:gggagaagcuaaagguuaaTT(配列番号15)
アンチセンス:uuaaccuuuagcuucucccTT(配列番号16)
si-cMK-3
センス:gagaagaguuguaggaugaTT(配列番号17)
アンチセンス:ucauccuacaacucuucucTT(配列番号18)
si-smMK
センス:gcgacuaggaucugggaaaTT(配列番号19)
アンチセンス:uuucccagauccuagucgcTT(配列番号20)
mRNAの単離はトランスフェクション後24時間目に実施し、タンパク質実験はトランスフェクション後72時間目に実施した。免疫染色用に、同様のsiRNAトランスフェクション工程を、ラボテックチャンバースライド(ヌンク社)上で1/15スケールで行った。
9. z-cardiac-MLCKのクローニング
ゼブラフィッシュのcDNAライブラリを構築し、そこからゼブラフィッシュのMYLK3オーソログ(zmylk3、z-心臓特異的MLCKをコードする)をクローニングした。成熟ゼブラフィッシュ cDNAライブラリは、Lambda Zap II(ストラタジーン社)中で成熟ゼブラフィッシュからのポリARNAを用いて作成した。cDNAライブラリを、心臓特異的MLCK配列の推定ゼブラフィッシュ オーソログのオープンリーディングフレーム(ORF)の5´側について設計したプローブを用いてスクリーニングした。陽性ファージクローンは、ファージプラークスクリーン法およびシングルクローンエクシジョン法を製造者の手引き(ストラダジーン社)に従って行い、決定した。
ゼブラフィッシュ MLCKファミリーの配列情報は、DDBJ(DNA Data Bank of Japan)に登録した。ゼブラフィッシュ MLCKファミリーのDDBJアクセッション番号は次のとおりである:心臓特異的MLCK、AB267907[gi:157678777];smMLCK、AB267908[gi:157678779];skMLCK、AB267909[gi:157678781]。
10. ホールマウントインサイチュハイブリダイゼーション(WISH)
z-心臓特異的MLCK検出用のジゴキシゲニン標識アンチセンスおよびセンスRNAプローブは、SP6およびT7RNAポリメラーゼ、および下記プライマー対を用いて転写した。
プライマー対1
フォワード:5´GATCAACGCTTCTCAGCACAGGAGGGTTCA 3´(配列番号21)
リバース:5´CTCTTCTAGTTGTCTTTGTCCAGG 3´(配列番号22)
プライマー対2
フォワード:5´CGGGACAACAATTGGAGAAGATTGAGGAT 3´(配列番号23)
リバース:5´CTGGTAAACACGATGGCATCCAGCTCCGTC 3´(配列番号24)
プライマー対3
フォワード:5´ACTTACATGCTTTTGAGTGGCCTTTCTCCA 3´(配列番号25)
リバース:5´TCAAGTCACAGTATGGATTAACATTCAGGA 3´(配列番号26)
ゼブラフィッシュの受精後24時間(24hpf)および48時間(48hpf)の胚を4% パラホルムアルデヒドで固定化し、プロテイナーゼKで消化し、そして各プローブと68℃でハイブリダイゼーションさせた。アルカリ結合抗ジゴキシゲニン抗体を用いてシグナルを検出した。染色後、胚を4% パラホルムアルデヒドで再固定化し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で保存した。
11. モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド(MO)処理
z-心臓特異的MLCKのMOの合成は、すべてジーンツールズ社に依頼して行った。これらMOの4−10ngを、ゼブラフィッシュ胚に細胞ステージ1−4において注入した。受精後96時間(96hpf)のステージより前にデータを採取した。使用したMOは、z-心臓特異的MLCK mRNAのAUG翻訳開始部位に対する特異的MOであり翻訳を阻害するMO(z-cMKaugMO)、z-cMKaugMOと5塩基のミスマッチを含むMOであって翻訳を阻害しないMO(z-MismatchMO)、z-心臓特異的MLCK エキソン4のスプライシングを特異的に阻害するMO(z-cMKspMO4)、z-心臓特異的MLCK エキソン6のスプライシングを特異的に阻害するMO(z-cMKspMO6)、およびz-MLC2vのエキソン2のスプライシングを特異的に阻害するMO(z-MLCspMO2)である。これらMOの配列を以下に示す。
z-cMKaugMO
5´TACAGCGAGGTCCCCATCATGCCCT 3´(配列番号27)
z-MismatchMO
5´TAGAGCCAGGTCGCCATGATGCGCT 3´(配列番号28)
z-心臓特異的MLCK エキソン4のスプライシングを特異的に阻害するMO(z-cMKspMO4)
アクセプター部位:5´AGCTCTATGAATAATCAGAAAGAAC 3´(配列番号29)
ドナー部位:5´ATGATCTGGTAACTCACCAATGATC 3´(配列番号30)
z-心臓特異的MLCK エキソン6のスプライシングを特異的に阻害するMO(z-cMKspMO6)
アクセプター部位:5´CAAATCGGCCTCTGCAACAACACAC 3´(配列番号31)
ドナー部位:5´GTATGCTTTGTACTCACCCTTTCTT 3´(配列番号32)
z-MLC2vのエキソン2のスプライシングを特異的に阻害するMO(z-MLCspMO2)
アクセプター部位:5´CCTTTTTGGGTGCCTGTAATGATAT 3´(配列番号33)
ドナー部位:5´GTGCTCGGTTTGTACCTCTTTGAAC 3´(配列番号34)
12. ゼブラフィッシュの心臓組織学的および心機能的解析
心臓特異的MLCKの生理的役割を評価するために、動物を用いたインビボ ノックダウン実験を実施した。マウスでは、心臓特異的MLCKの特異的基質である心室ミオシン軽鎖を標的として欠損させると、12.5日胚で、胚性致死となることが知られている(非特許文献6)。心臓特異的MLCKはMLC2vの上流の調節因子であることから、心臓特異的MLCKをコードする遺伝子の欠損もまた胚性致死となる可能性が考えられた。そのため、ゼブラフィッシュを用いてインビボ ノックダウン実験を実施した。ゼブラフィッシュでは標的遺伝子の機能の破壊により生じる表現型は、例えその遺伝子の機能の損失が致死的であっても分析が可能である。
モック注射したコントロールゼブラフィッシュ胚およびz-cMKaugMOを注射したゼブラフィッシュ胚の心臓について受精72時間後(72hpf)に、透過電子顕微鏡検査を含め常套の組織病理学的検討を行った。ゼブラフィッシュ心臓収縮の運動を可視化するため、その心臓心室壁中にグリーン蛍光タンパク質(GFP)を特異的に発現するSAG4A系統のゼブラフィッシュ(カワカミ(Kawakami, K.)ら、「デベロプメンタル セル(Developmental Cell)」、2004年、第7巻、p.133-144)を用いてMOによる遺伝子ノックダウン実験を行った。GFP発現コントロールであるモック注射ゼブラフィッシュおよびz-cMKaugMOを注射したゼブラフィッシュの受精72時間後(72hpf)の心臓の画像を、ライカMZ16FA蛍光実体顕微鏡上のライカデジタルカメラDFC350FXにより撮影した。取得した画像はライカFW4000ソフトウエアを用いてデジタル動画ファイルとして蓄積した。各記録された動画を、独自のオリジナルソフトウエアを用いてM-モード画像に変換し、そして心臓の心室の拡張末期径(Dd)、収縮末期径(Ds)、左室内径短縮率(FS)、および心拍数をM-モード画像から測定した。
13. ラットに関する実験方法
雄性ウィスターラット(日本動物社)を用いた。mRNAおよびタンパク質発現分析には0日、1週、2週、および10週のものを用い、心筋梗塞(MI)ラット作製には8週のものを用いた。MIは、既報の記載(ワケノ(Wakeno, M.)ら、「サーキュレーション(Circulation)」、2006年、第114巻、p.1923-1932)に従い、左冠動脈前下行枝の永久結紮により誘発した。偽手術群のラットに、冠動脈周囲の縫合糸の不結紮以外は同様の外科手術を実施した。全RNAの単離は、MI発症後4週間目に、切除した左心室の梗塞部心筋層から行った。
14. 統計処理
統計学的分析はマン・ホィットニーのU検定および単回帰分析により行った。データは平均値±標準誤差で表した。P値が0.05未満であるときに有意であると判断した。
(結果)
1. マイクロアレイ分析による障害ヒト心筋からの心臓特異的MLCKの同定
ヒト正常心筋のRNA試料と比較して不全心筋のRNA試料において高い発現を示した遺伝子を、マイクロアレイ分析により選択した。表1に、不全心筋試料を提供した患者のPAP、EF、および心室の拡張末期径(Dd)を示す。
表1中、ARは大動脈弁閉鎖不全、DCMは拡張型心筋症、HCMは肥大型心筋症、MIは心筋梗塞を意味する。
候補遺伝子の選択は、具体的には次に説明するように行った。まず、正常コントロール試料2例と比較して不全心筋での発現が著しく上方制御されていた626プローブセットを選択した。これらのうち、発現レベルがPAPの測定値と正の相関(r>0.7)を示す129プローブセット、およびBNP mRNAレベルと正の相関(r>0.7)を示す194プローブセットを選択した。次いで、選択した各プローブセットの組織局在を市販のバイオエクスプレスデータベース(Gene Logic社製)を用いて解析した。そして、心臓発現レベルが他の24組織の平均発現レベルより少なくとも10倍であった10プローブセットを選択して次の解析に進めた。これらプローブセットはANP、BNP、スモールマッスルプロテイン、およびα-アクチンを含む一連の遺伝子に対応する。これら遺伝子はすべて心臓障害、心筋再構築、および横紋筋機能に関連することが知られている。これらプローブセットについて骨格筋における発現に対する心筋における発現の割合を算出したところ、ANP(36663_atおよび73106_s_at)、BNP(39215_at)、インポーチン9(84730_at)、および75678_atは、その発現が心筋で骨格筋と比較して少なくとも10倍高いことが示された。75678_atには注釈がなく、その発現レベルは、ANPおよびBNPのものと同等であった。この未知の転写産物について心臓障害の病態生理学に関連すると仮説を立てた。
5´-RACEにより、選択したプローブセット75678_atの配列の4kb上流に存在するNM_182493(MYLK3、配列番号1)の配列と同一の配列を同定した。本候補遺伝子の相対的発現レベルは相対的PAP値と有意な相関を示した(図1-A)。さらに、本遺伝子の発現は心臓に限局していた(図1-B)。相同性検索を、転写産物の配列、特にC末端キナーゼドメインをコードする配列を用いて行い、MYLK3タンパク質がMLCKファミリーのメンバーであることを確認した。
これらから、MYLK3にコードされるタンパク質が心臓特異的MLCKであると考えた。MLCKファミリー遺伝子として2つの異なる遺伝子が既に報告されており、その一方はMYLKと称される遺伝子でありsmMLCKをコードし、そしてもう一方はMYLK2と称される遺伝子でありskMLCKをコードする(非特許文献8)。ドメイン構造解析により、心臓特異的MLCKタンパク質のC末端近傍に位置するATP結合部位および活性部位を含むセリン/トレオニン キナーゼドメインがよく保存されていることが明らかになった。
MLCKファミリーメンバーの発現パターンをノーザンブロット分析で確認したところ、すでに報告されているように(ラザー(Lazar, V.)ら、「ゲノミクス(Genomics)」、1999年、第57巻、p.256-267)、MYLKの2つの主要転写産物はほとんどいずれの組織でも発現が認められた。smMLCKの非筋アイソフォームをコードする大きな転写産物はオルタナティブスプライシングにより生産されたものである。これに対し、MYLK2およびMYLK3の両方で、限局された発現パターンが観察された。MYLK2発現は骨格筋のみで観察され、これに対し、MYLK3発現は心臓のみで観察された(図1-C)。MYLKもまた心臓での発現が認められたが、その不全心筋での発現はMYLK3の発現ほどは上方制御されていなかった(データ未記載)。
心臓特異的MLCKの生理的重要性を評価するために、心臓特異的MLCKをコードするアデノウイルスベクターを用いて検討を行った。無血清条件下では新生仔ラット培養心筋細胞でサルコメア構造の顕著な崩壊が認められた。一方、新生仔ラット培養心筋細胞に心臓特異的MLCKを過剰発現させると、血清欠乏条件下においてサルコメアの組織化が増強された(組織的サルコメアを有する細胞、28.7±11.1% 対 3.1±2.4%、P<0.001;図1-Dおよび図1-E)。この結果は、心臓特異的MLCKが心筋においてサルコメア形成に寄与することを示唆する。
上記結果から、心臓特異的MLCKはMYLK3にコードされるタンパク質であり、その発現が心不全患者の肺動脈圧、すなわち症状の重篤度と関連すること、および該心臓特異的MLCKがサルコメア形成に寄与することが明らかになった。
2. 心臓特異的MLCKの特異的基質の同定
同定した心臓特異的MLCKは保存されたキナーゼ触媒ドメインを有するプロテインキナーゼであることから、その基質の同定を行った。
心臓特異的MLCKの生理的基質を同定するため、マウス心臓ホモジネートをカチオン交換カラムにより分画した後、各フラクションの一部を組換え心臓特異的MLCKと共にインビトロキナーゼ反応に付した。フラクション10および11はいずれも、異なる20kDaのバンドを含み、該バンドは組換え心臓特異的MLCKの存在下でのみ、32Pにより標識された。この32P標識20kDaタンパク質を精製し、そしてMALDI-TOFMSおよびペプチドマスフィンガープリンティング法で分析した。この20kDaタンパク質は、マウスMLC2vと相同性のあるアミノ酸配列を有する断片を含んでいた。その他には、カチオンまたはアニオン交換カラムを用いた精製に続いて得られたフラクション中に32Pにより標識されたタンパク質は検出されなかった。
インビトロでさらに分析したところ、マウス心臓ホモジネートから精製された内在性MLC2vは、組換え心臓特異的MLCKによりCa2+カルモジュリン依存的にリン酸化された(図2-A)。
これら結果から、心臓特異的MLCKはカルモジュリン依存性キナーゼであり、MLC2vを基質としてリン酸化すると推定できる。
さらなる検証のため、培養心筋細胞に心臓特異的MLCKを過剰発現させたところ、培養心筋細胞におけるリン酸化MLC2vのレベルが増加した(図2-B)。しかしながら、サルコメアの組織化に関与する他のサルコメアタンパク質、例えばトロポニンT、デスミン、およびα-アクチニンの発現には何の影響も認められなかった。心肥大の代表的マーカーであるANPおよびβミオシン重鎖のmRNA発現も、同様に心臓特異的MLCK過剰発現により影響を受けなかった。
内在性心臓特異的MLCKによるMLC2vリン酸化をさらに検討するため、心臓特異的MLCKを標的とする特異的siRNA(si-cMK)を用いた。これらsiRNAは、トランスフェクション24時間後の定量的リアルタイムPCRを用いた測定において、心臓特異的MLCK mRNAレベルを70%以上効果的に抑制した。これらsiRNAはまた、トランスフェクション後60−72時間の心臓特異的MLCK mRNAレベルおよびリン酸化MLC2v量を効果的に抑制した(図2-C)。一方、他のサルコメアタンパク質の発現には大きな影響が認められなかった。これに対し、心臓にも分布しているsmMLCKを、ラットsmMLCKを標的とするsiRNA(si-smMK)を用いて発現抑制したが、MLC2vのリン酸化状態もサルコメアタンパク質の発現も共に変化がなかった(図2-D)。したがって、心筋におけるMLC2vのリン酸化は、smMLCKではなく心臓特異的MLCKにより担われていると考えることができる。
これら結果により、心臓特異的MLCKが、心筋細胞に選択的に発現し、MLC2vのリン酸化を主に担うことが示された。したがって、心臓特異的MLCKは心筋細胞において、サルコメアの組織化を含む形態変化を、MLC2vリン酸化を介して調節していると考えることができる。
3. cardiac-MLCKによる培養心筋細胞のサルコメアアセンブリの調節
サルコメア構造における心臓特異的MLCKの詳細な役割を解明するため、新生仔ラット培養心筋細胞中のサルコメアにおけるMLC2vリン酸化の作用を分析した。
新生仔ラット培養心筋細胞の重合アクチンをローダミンファロイジンで染色したところ、規則的な組織的縞模様が観察された(図3-AのパネルA)。p-s15MLC標識リン酸化MLC2vは同様の縞模様を示したが、該標識は、ほとんどが厚い繊維で形成されたサルコメア部分であるAバンド領域で主に認められた(図3-AのパネルBからD)。心臓特異的MLCKをRcMKで標識したときには、細胞質が広範に蛍光標識された(図3-AのパネルEからG)。
心筋細胞を無血清条件下で培養したとき、アクチンの組織的縞模様は崩壊し、そしてリン酸化MLC2v特異的シグナルは減少した(図3-Bの中央のパネル)。
内在性心臓特異的MLCKの活性化により心筋細胞で観察された形態変化を評価するために、無血清条件下で培養した心筋細胞をエピネフリンで処理した。エピネフリンを用いてGタンパク質結合受容体を刺激することにより、細胞内カルシウムイオン濃度が上昇し、それにより心臓特異的MLCKが活性化される筈である(アオキ(Aoki, H.)ら、「ネイチャー メディシン(Nature Medicine)」,2000年、第6巻、p.183-188)。2μM エピネフリンによる処理後に、MLC2vリン酸化の著しい上方制御が観察された(図3-C)。エピネフリンで誘導されたMLC2vリン酸化は、刺激の5分後に早くも観察され、30分以内にピークに達した(図3-D)。無血清条件下で培養した心筋細胞を2μM エピネフリンで処理したことにより、サルコメア構造の再アセンブリおよびMLC2vリン酸化が誘導された(図3-B)。
心臓特異的MLCKによるMLC2vリン酸化の関連を確認するために、si-cMKsを心筋細胞に導入して心臓特異的MLCKをノックダウンし、これら細胞におけるサルコメアのパターンを分析した。リン酸化されたMLC2vのレベルはsi-cMKsトランスフェクション後72時間で低減したが、しかしながら、血清存在下で培養した心筋細胞のサルコメア構造に著しい変化は認められなかった。コントロールsiRNA処理細胞およびsi-cMK処理細胞のサルコメアは、組織的繊維構造を含んでいた(組織的サルコメアを有する細胞、97.0±1.0% 対 90.0±1.0%;有意差なし;図4-Aおよび図4-C)。これに対し、心臓特異的MLCKをノックダウンすると、サルコメア再アセンブリに有意な効果が生じた。si-cMKは無血清培養条件下で培養した心筋細胞において、エピネフリン処理後のサルコメア再アセンブリを阻害した(組織的サルコメアを有する細胞、76.0±8.5% 対 43.6±7.0%;P<0.005;図4-Aおよび図4-C)。さらに、MLC2vのリン酸化をイムノブロット分析により確認した(図4-B)。相対的MLC2vリン酸化レベルは本実験において、基準である血清存在下を除いて、組織的サルコメアを有する心筋細胞の割合と同じパターンを示した(図4-C)。
上記結果は、心臓特異的MLCKによるMLC2vリン酸化がサルコメア再アセンブリの開始に重大な役割を果たすことを示唆する。
4. ゼブラフィッシュ心臓の発生および機能へのcardiac-MLCKの関与
ゼブラフィッシュ心臓特異的MLCKのアミノ酸配列は、C末端のセリン/トレオニン キナーゼドメインにおいて特に、他の脊椎動物のオーソログのもの、例えばヒト、イヌ、マウス、およびニワトリのオーソログ(それぞれアクセッション番号:NM_182493、アクセッション番号:XM_532569、アクセッション番号:NM175441、Ensenbl Gene ID: ENSGALG00000004334)と高い類似性がある。さらに、MYLK3と同様、zmylk3はVPS35遺伝子とNP001001436.1遺伝子(アセンブリ Zv5sc;ウェルカム トラスト サンガー インスティテュート)との間に位置することから、これはヒトとゼブラフィッシュ間のシンテニー領域であることが判明した。さらに、zmylk3特異的プローブを用いたWISH法を実施し、その結果、zmylk3が受精後24時間および48時間において心臓のみで発現していることが判明した(図5)。
ゼブラフィッシュ胚に、z-心臓特異的MLCK mRNAのAUG翻訳開始部位に対する特異的MO(z-cMKaugMO)を注射した。受精後33時間目には、該オリゴヌクレオチドを注射していないコントロールであるゼブラフィッシュ胚と比較して、z-cMKaugMO モルファントでは心臓領域がわずかに膨らんでいた。受精後48時間目には、腹部の膨張がz-cMKaugMO モルファントの45.6±6.8%で観察された(図6-A)。腹部膨張は受精後72時間目に、よりはっきりと認められた(図6-A)。それに反し、z-cMKaugMOと比較して5塩基のミスマッチを含むMO(z-MismatchMO)を注射したゼブラフィッシュ胚ではコントロールゼブラフィッシュ胚と差異が認められなかった(図6-A)。さらに、z-心臓特異的MLCKおよびZ-MLC2vの特異的エキソンを標的として欠失させる3種類の別のMOの効果を検討した。これらMOのうち2種類はそれぞれ、z-心臓特異的MLCKのエキソン4および6のスプライスドナー部位およびアクセプター部位に対するものである(z-cMKspMO4およびz-cMKspMO6)。エキソン4の欠失はフレームシフトを生じ、そしてその結果、未熟のまま終結した転写産物が生じた。エキソン6はz-心臓特異的MLCKの触媒中心を含み、その欠失によりプロテインキナーゼ活性が低減すると推測された。第三のMOは、z-MLC2vの、リン酸化され得るセリンが含まれるエキソン2を欠失させるように設計された(z-MLCspMO2)。これら3種類のMOは、標的エキソンを効果的に欠失させ、同様に腹部膨張表現型を誘発した(図6-A)。
4種類の異なったMO、すなわちz-cMKaugMO、z-cMKspMO4、z-cMKspMO6、およびz-MLCspMO2が同様の結果を生じたことから、心臓の表現型はz-心臓特異的MLCKのキナーゼ活性の欠損によることが示唆された。
z-cMKaugMO モルファントの心臓表現型を詳細に検討するため、心臓の心室でGFPを特異的に発現するゼブラフィッシュSAG4A系統を用いた。z-cMKaugMOをSAG4A胚に注射した後、受精後72時間目の心臓の動きを蛍光実体顕微鏡に装着した高感度デジタルカメラで画像化した(図6-B)。録画は、独自に開発したソフトウエアを用いてモーションモード(M-モード)画像に変換した(図6-C)。これらの画像から、心臓の心室の拡張末期径(Dd)、収縮末期径(Ds)、左室内径短縮率(FS)、および心拍(HR)を測定した。これらのデータを表2にまとめた。
検討の結果、z-cMKaugMO モルファントの心臓径がコントロールゼブラフィッシュ胚のものより有意に肥大していることが判明した(Dd、79.6±3.7μm 対 117.0±10.4μm;Ds、50.3±6.5μm 対 76.0±7.0μm;いずれの比較においてもp<0.0001)。しかしながら、FSによって評価した心臓収縮能には有意な差異が観察されなかった(36.9±7.1% 対 34.9±4.1%;有意差なし)のは、おそらく心収縮増強作用(inotropy)の補償的上方制御による。この仮説を支持するように、心拍数がz-cMKaugMO モルファントで有意に高いことが観察された(184±14.5bpm 対 216±24.7bpm;P=0.0017)。受精後5−6日目には、z-cMKaugMO モルファントは全身性浮腫を発現し、そして循環障害により死亡した。組織病理学的分析により、z-cMKaugMO モルファントの腹部膨張は心膜浮腫を引き起こしたことが明らかになった。心臓の心房はほとんど正常であったが、モルファントの心室壁はコントロールゼブラフィッシュ胚のものより薄かった(図7のパネルAからD)。透過型電子顕微鏡により、極少数のわずかに分化したサルコメア構造がz-cMKaugMO モルファントの心室中に存在することが判明した(図7のパネルGからJ)。その他の明らかな異常は心房で認められなかった(図7のパネルEおよびF)。
上記結果から、心臓特異的MLCKが発生過程の心臓においてサルコメア形成に必要であると考えることができる。
5. 筋原繊維形成期および心臓障害哺乳動物モデルにおけるcardiac-MLCKの上方制御
ラット心臓における心臓特異的MLCKのmRNAおよびタンパク質レベルは、生後1週目から成体まで一貫して上方制御されていた(図8-Aおよび8-B)。本データから、インビボ心筋におけるサルコメア組織化は、筋原繊維形成期に起きると考えられる。
心臓特異的MLCK mRNAの発現を、心臓障害哺乳動物モデルで解析した。心臓障害哺乳動物モデルとして、冠動脈前下行枝を永久結紮することにより心筋梗塞(MI)を発生させたウィスターラットを用いた。MIの発症後4週間目に心臓障害が発現した。MIラットおよび偽手術を施したラットの血流力学指標および心エコー図指標を表3にまとめた。
表3中、LVEDPは左心室拡張末期圧、LVSPは左心室収縮期圧、およびMax dP/dtは左心室の等容性収縮期圧最大変化率を意味する。
MIラットでは、左心室拡張末期圧(LVEDP)および左心室拡張末期径(LVDd)が偽手術を施したラットのものより有意に高かった(LVEDP、20.5±8.2mmHg 対 3.2±1.0mmHg、P<0.01;LVDd、9.8±0.3mm 対 6.8±0.5mm、P<0.01)が一方、等容性収縮時の圧力の左心室最大変化率(Max dP/dt)およびFSは偽手術を施したラットのものより有意に低かった(Max dP/dt、5,845±1,156mmHg/s 対 9,440±644mmHg/s、P<0.01;FS、12.0±3.1% 対 44.0±7.8%、P<0.01)。
MIラットではMYLK3発現は偽手術を施したラットのものより有意に上方制御された(相対的心臓特異的MLCK mRNA発現、1.46±0.42 対 1.00±0.15、P<0.05;図8-C)。さらに、相対的mRNA発現レベルは、ANPのmRNA発現レベルと有意に相関した(r=0.778、P<0.005;図8-D)。
幼児期心臓における心臓特異的MLCK発現の上方制御は、心臓特異的MLCKが筋原繊維形成に寄与することを示唆する。加えて、心臓障害哺乳動物モデルでの心臓特異的MLCK mRNAレベルの上方制御は、ヒト不全心筋層のマイクロアレイ分析で得られた結果を裏付けた。
本発明は、心臓特異的MLCK遺伝子、該遺伝子にコードされるタンパク質、並びに心臓特異的MLCKの発現および/または機能を増強する化合物を心不全の防止および/または治療に使用できることを見出し、これらを含む心不全の防止および/または治療剤、並びにこれらを使用する心不全の防止および/または治療方法の提供を可能にした。また本発明は、心臓特異的MLCK遺伝子および/または該遺伝子にコードされるタンパク質を検出することを特徴とする、心筋障害の検出方法を提供した。さらに本発明は、心臓特異的MLCK遺伝子および/または該遺伝子にコードされるタンパク質を検出することを特徴とする、心筋障害の検出方法を提供し、心筋障害の診断を可能にした。
また本発明は、ゼブラフィッシュ心不全モデルを提供することにより、心不全の病理生理学への心臓特異的MLCKの関与の解明に寄与する。
このように、本発明は、基礎科学分野から医薬開発分野まで広く寄与する有用な発明である。
配列番号1:ヒト心臓特異的ミオシン軽鎖キナーゼ(配列番号2)をコードする遺伝子。
配列番号3:ゼブラフィッシュ 心臓特異的ミオシン軽鎖キナーゼ(配列番号4)をコードする遺伝子(アクセッション番号:AB267907)。
配列番号5:ゼブラフィッシュ ミオシン軽鎖キナーゼ1(配列番号6)をコードする遺伝子(アクセッション番号:AB267908)。
配列番号7:ゼブラフィッシュ ミオシン軽鎖キナーゼ2(配列番号8)をコードする遺伝子(アクセッション番号:AB267909)。
配列番号9:プライマー用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号10:プライマー用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号11:プライマー用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号12:プライマー用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号13:プライマー用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号14:プライマー用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号15:siRNA用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号16:siRNA用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号17:siRNA用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号18:siRNA用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号19:siRNA用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号20:siRNA用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号21:プライマー用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号22:プライマー用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号23:プライマー用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号24:プライマー用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号25:プライマー用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号26:プライマー用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号27:モリフォルノアンチセンスオリゴヌクレオチド用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号28:モリフォルノアンチセンスオリゴヌクレオチド用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号29:モリフォルノアンチセンスオリゴヌクレオチド用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号30:モリフォルノアンチセンスオリゴヌクレオチド用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号31:モリフォルノアンチセンスオリゴヌクレオチド用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号32:モリフォルノアンチセンスオリゴヌクレオチド用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号33:モリフォルノアンチセンスオリゴヌクレオチド用に設計されたポリヌクレオチド。
配列番号34:モリフォルノアンチセンスオリゴヌクレオチド用に設計されたポリヌクレオチド。

Claims (19)

  1. 下記いずれかのポリヌクレオチドからなる遺伝子および/または該遺伝子にコードされるタンパク質を含む、心不全の防止および/または治療剤:
    (1)配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチド、
    (2)前記(1)のポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
    (3)前記(1)または(2)のポリヌクレオチドと少なくとも70%の配列相同性を有し、かつミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
    (4)前記(1)から(3)のいずれか1のポリヌクレオチドにおいて、1乃至10個のヌクレオチドの変異を有し、かつミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
    および
    (5)前記(1)から(4)のいずれか1のポリヌクレオチドを構成する塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションし、かつミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  2. 下記いずれかのポリヌクレオチドからなる遺伝子および/または該遺伝子にコードされるタンパク質の、心不全の防止および/または治療における使用:
    (1)配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチド、
    (2)前記(1)のポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
    (3)前記(1)または(2)のポリヌクレオチドと少なくとも70%の配列相同性を有し、かつミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
    (4)前記(1)から(3)のいずれか1のポリヌクレオチドにおいて、1乃至10個のヌクレオチドの変異を有し、かつミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
    および
    (5)前記(1)から(4)のいずれか1のポリヌクレオチドを構成する塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションし、かつミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  3. 下記いずれかのポリヌクレオチドからなる遺伝子および/または該遺伝子にコードされるタンパク質を使用することを特徴とする心不全の防止および/または治療方法:
    (1)配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチド、
    (2)前記(1)のポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
    (3)前記(1)または(2)のポリヌクレオチドと少なくとも70%の配列相同性を有し、かつミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
    (4)前記(1)から(3)のいずれか1のポリヌクレオチドにおいて、1乃至10個のヌクレオチドの変異を有し、かつミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
    および
    (5)前記(1)から(4)のいずれか1のポリヌクレオチドを構成する塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションし、かつミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  4. 下記いずれかのポリヌクレオチドからなる遺伝子および/または該遺伝子にコードされるタンパク質を含む、不全心筋におけるサルコメア再アセンブリ増強剤:
    (1)配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチド、
    (2)前記(1)のポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
    (3)前記(1)または(2)のポリヌクレオチドと少なくとも70%の配列相同性を有し、かつミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
    (4)前記(1)から(3)のいずれか1のポリヌクレオチドにおいて、1乃至10個のヌクレオチドの変異を有し、かつミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
    および
    (5)前記(1)から(4)のいずれか1のポリヌクレオチドを構成する塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションし、かつミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  5. 下記いずれかのポリヌクレオチドからなる遺伝子の発現量を被検試料において測定し、そして正常試料における該遺伝子の発現量と比較して10倍以上の発現量が測定された被検試料を心筋障害由来の試料であると判定することを含む、心筋障害の検出方法:
    (1)配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチド、
    (2)前記(1)のポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
    (3)前記(1)または(2)のポリヌクレオチドと少なくとも70%の配列相同性を有し、かつミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
    (4)前記(1)から(3)のいずれか1のポリヌクレオチドにおいて、1乃至10個のヌクレオチドの変異を有し、かつミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
    および
    (5)前記(1)から(4)のいずれか1のポリヌクレオチドを構成する塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションし、かつミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  6. 下記いずれかのポリヌクレオチドからなる遺伝子の発現および/または該遺伝子にコードされるタンパク質の機能を増強する化合物を選択することを特徴とする、心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法:
    (1)配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチド、
    (2)前記(1)のポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
    (3)前記(1)または(2)のポリヌクレオチドと少なくとも70%の配列相同性を有し、かつミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
    (4)前記(1)から(3)のいずれか1のポリヌクレオチドにおいて、1乃至10個のヌクレオチドの変異を有し、かつミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
    および
    (5)前記(1)から(4)のいずれか1のポリヌクレオチドを構成する塩基配列の相補配列で表されるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションし、かつミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  7. 被検化合物と前記遺伝子との相互作用を可能にする条件下で、被検化合物と前記遺伝子とを接触させ、次いで、前記遺伝子の発現を測定し、そして前記遺伝子の発現を増強した被検化合物を選択することを含む、請求項6に記載の心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法。
  8. 被検化合物と前記遺伝子との相互作用を可能にする条件下で、被検化合物と該遺伝子とを接触させることが、被検化合物と前記遺伝子を発現する細胞とを接触させることである、請求項7に記載の心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法。
  9. 被検化合物と前記遺伝子にコードされるタンパク質との相互作用を可能にする条件下で、被検化合物と該タンパク質とを接触させ、次いで、該タンパク質の機能を測定し、そして該タンパク質の機能を増強した被検化合物を選択することを含む、請求項6に記載の心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法。
  10. 被検化合物と前記遺伝子にコードされるタンパク質との相互作用を可能にする条件下で、被検化合物と該タンパク質とを接触させることが、被検化合物と前記遺伝子を発現する細胞とを接触させることである、請求項9に記載の心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法。
  11. 前記遺伝子にコードされるタンパク質の機能が、ミオシン調節軽鎖2をリン酸化する機能である、請求項9または10に記載の心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法。
  12. 前記遺伝子にコードされるタンパク質の機能が、サルコメアの再アセンブリを増強する機能である、請求項9または10に記載の心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法。
  13. 配列表の配列番号3に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドからなり、かつ、ミオシン調節軽鎖2をリン酸化し得るタンパク質をコードするゼブラフィッシュ遺伝子。
  14. 請求項13に記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
  15. 請求項13に記載の遺伝子を含有する組換えベクターをトランスフェクションされてなる形質転換体。
  16. 請求項13に記載の遺伝子にコードされるタンパク質。
  17. 請求項13に記載の遺伝子の発現が抑制されたゼブラフィッシュ心不全モデル。
  18. 請求項13に記載の遺伝子の発現を、配列表の配列番号27、配列番号29、配列番号30、配列番号31、および配列番号32のいずれか1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドをゼブラフィッシュ胚に注射することにより抑制することを特徴とする、ゼブラフィッシュ心不全モデルの作製方法。
  19. 請求項17に記載のゼブラフィッシュ心不全モデルに被検化合物を投与し、ゼブラフィッシュ心不全モデルの心臓の形態および機能を測定することを含む心不全の防止および/または治療用化合物の同定方法。
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