JP6587091B2 - 寿命短縮化モデル非ヒト哺乳動物 - Google Patents

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Description

本発明は、寿命短縮化モデル非ヒト哺乳動物に関する。
循環器疾患、がん、糖尿病等の非伝染性疾患(NCD)は、早死と罹病の最も一般的な原因であり、医療費、生産性及び発展性に重大な影響を与える。慢性腎臓病は腎臓の構造及び機能に障害をおよぼす種々の疾患全般を包括的に表す総称であり、慢性腎臓病の進行により透析療法あるいは腎移植が必要な末期腎不全に至るが、末期腎不全の有病率は一貫して上昇傾向にある(非特許文献1)。慢性腎臓病、末期腎不全は老化過程の加速に関連し、早死のリスクを有意に上昇させるために、多くのNCDにおける予後不良を決定づける重要な要因である(非特許文献2〜4)。慢性腎臓病における腎障害の予後は一般的に基礎腎疾患の種類よりもむしろ腎障害の程度に依存し、尿細管間質病変の重症度は将来的な腎機能低下速度を決定づける最も重要な要因とされている。従って、現況では不可逆的とされ重症の病変である尿細管間質線維化は、慢性腎臓病の増悪と末期腎不全への進行における主要な共通段階として広く認識されている(非特許文献5)。
線維化は、コラーゲン等の細胞外マトリクスの過剰な沈着により臓器の構造破壊と機能障害をもたらす病態として定義されているとともに、腎臓の老化における重要な病理学的特徴の一つでもある(非特許文献6、7)。困難とされる慢性腎臓病を改善させ得る治療法の実現という目的のため過去10年以上にわたり、実験的慢性腎臓病モデルにおける効果的な抗線維化治療の可能性の探索等盛んに研究が行われてきたが、現状では臨床的に利用可能な有効薬剤の開発等は未だ達成されていない(非特許文献8)。さらに、現在利用可能な慢性腎臓病の実験モデルでは、腎毒性のある薬剤による薬理学的介入や、腎の部分切除又は片側性の尿管結紮等による外科的介入が必要であり、これら介入操作の必要のない、より実際の病態に近い慢性腎臓病モデルは存在しない。したがって、臨床的に使用可能な抗線維化療法の開発やそのためのより洗練された慢性腎臓病モデルの作製は、医学上の必要性が非常に高いにもかかわらず未だ確立されていないという医学ニーズ(アンメット・メディカル・ニーズ)に応えるためにも重要である。
AT1受容体関連タンパク質(ATRAP、遺伝子名はAgtrap)は、アンジオテンシンII 1型受容体(AT1受容体)に直接結合して下流の情報伝達系を制御する分子であり(非特許文献9)、AT1受容体に結合すると報告されている分子のうち世界で最初に単離・同定された分子である。ATRAPは161残基のアミノ酸からなる18 kDaの低分子タンパク質であり、特異的にAT1受容体に結合し、AT2受容体、エンドセリンB受容体等の受容体には結合しないと考えられている。細胞外ドメインであるN末端側に3つの膜貫通ドメインをもち、C末端側には細胞質内ドメインを持つという珍しい構造上の特徴を有する(非特許文献10)。また欠失変異体を用いた検討により、ATRAPの110〜122番目のアミノ酸残基のC末端細胞質内ドメインがAT1受容体の339〜359番目のアミノ酸残基のC末端細胞質内ドメインに直接結合すると考えられている。
これまでに、培養細胞系での検討からは、ATRAPは病的刺激が存在しない生理的条件下ではAT1受容体には影響を与えず、したがってAT1受容体情報伝達系の生理的活性には特に効果を及ぼさないことが示されている。しかし、アンジオテンシンII刺激等の病的刺激が細胞に加わった場合には、ATRAPが細胞表面に存在するAT1受容体の細胞内への移動(インターナリゼーション)を促進し、AT1受容体情報伝達系のうち臓器障害に関係する一部の情報伝達系のみを抑制することにより病的刺激によるAT1受容体情報伝達系の過剰活性化のみを機能選択的に制御することが示唆されている。さらに、発生工学的手法により作製したAgtrap遺伝子改変マウスを用いた検討において、ATRAP高発現マウスでは病的刺激による心肥大・高血圧・動脈硬化が抑制されること、ATRAP欠損マウスでは病的刺激によるインスリン抵抗性・高血圧が悪化することが明らかとなっている(非特許文献11〜18)。
現在までの検討では、若齢のATRAP高発現マウスやATRAP欠損マウスにおいては、通常飼育条件下では臓器の発生・形態、血圧、糖代謝、水・電解質代謝や腎機能などを含めて、臓器発生・分化や生理的機能には特段の変化が認められていない。この点で、例えばアンジオテンシノーゲン欠損マウス、レニン欠損マウス、AT1受容体欠損マウスなど、生下時から若齢にかけても通常飼育条件下において異常低血圧、腎の発生・形態・機能の異常が認められるレニン−アンジオテンシン系欠損マウスにみられる表現型とは大きく異なっている。しかしながら、通常飼育下でのATRAPの生理的機能とその意義については依然として完全には解明されていない。
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本発明は、慢性腎臓病治療薬等の開発に有用な、慢性腎臓病のモデルとして従来よりも優れたモデル非ヒト動物を提供することを目的とする。
本願発明者らは、ATRAPを全身性に欠損させたATRAP欠損マウスと対照の野生型マウスを病的刺激のない通常食摂取のもとで長期飼育して検討した。その結果、ATRAP欠損マウスでは、外見、摂餌量、体重、血圧、飲水量、尿量、尿ナトリウム濃度、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)など、発育状況、老化にともなう外観の変化、生理的機能には明らかな異常が認められないにもかかわらず、対照の野生型マウスと比較して腎臓において不可逆的重症病変とされる尿細管間質線維化の亢進(すなわち慢性腎臓病、末期腎不全の病態)がみられ、さらに寿命の短縮化が認められた。従来知られている各種の老化モデルマウスは、全身に広範な老化形質を呈し、明らかに異常な外観を有するが、ATRAP欠損マウスではこれらの公知の老化モデルマウスとは異なり、外観の異常がなく、老化形質自体は対照の野生型マウスと同等である。これにより、ATRAPを欠損させたマウス等の非ヒト哺乳動物は、従来知られている老化モデルマウスとは全く異なる新たな寿命短縮化モデルマウスとして有用であることを見出し、本願発明を完成した。
すなわち、本発明は、Agtrap遺伝子の機能が阻害されている非ヒト哺乳動物の、寿命短縮化モデルとしての使用を提供する。さらに、本発明は、Agtrap遺伝子の機能が阻害されている非ヒト哺乳動物に慢性腎臓病治療薬候補物質を投与することを含む、慢性腎臓病治療薬のスクリーニング方法を提供する
本発明により、従来知られている老化モデル動物とは全く異なり、外観の異常がなく老化形質が野生型正常マウスと同等であるにもかかわらず寿命が有意に短縮化される新規な寿命短縮化モデル非ヒト哺乳動物が提供された。ATRAPを欠損させた非ヒト動物では腎線維化の増悪(すなわち慢性腎臓病、末期腎不全の病態)が見られ、その他外観の異常がないまま寿命が有意に短縮化する。末期腎不全を包含する慢性腎臓病の治療薬は未だ開発されておらず、本発明のモデルは不可逆的とされ重要度が高い重症腎疾患(末期腎不全を包含する慢性腎臓病)の治療薬の開発にも大いに貢献すると期待される。
実施例においてAgtrap遺伝子のノックアウトによるATRAP欠損マウスの作製に用いたAgtrapターゲティングベクターの構造を説明した図である。 ATRAP欠損が老化にともなう外観の変化に影響しないことを示すデータである。(a) 老化による体重変化はATRAP欠損マウス(ATRAP-KOマウス)と対照の野生型マウス(WTマウス)で同様であった。(b) 高齢ATRAP-KOマウスとWTマウスとの間で肉眼的外観に差異はなかった。マウスは体毛の灰白色化や体毛減少など同様の老化形質を示した。 ATRAP欠損が寿命を短縮化することを示すデータである。ATRAP欠損マウス(ATRAP-KOマウス; N=21)と対照野生型マウス(WTマウス; N=23)の累積生存率はカプラン−マイヤー法により分析した。寿命中央値は、ATRAP-KOマウスが100.4週、WTマウスが123.1週であり、ATRAP-KOマウスではWTマウスに対して有意な寿命短縮化が認められた(ログランク検定においてP=0.0002)。 ATRAP欠損は老化にともなう心血管系の変化には影響しないことを示すデータである。(a) 高齢のATRAP欠損マウス(ATRAP-KOマウス)と対照野生型マウス(WTマウス)の心組織切片のヘマトキシリン/エオシン染色像の代表例(上段; 倍率x40; バーは1 mm)及びマッソントリクローム染色像の代表例(下段; 倍率x200; バーは100μm)である。(b) 心臓重量/体重の比率は高齢ATRAP-KOマウス及びWTマウスで同様であった。値は平均値±SE。(c) 心臓組織の線維化は高齢のATRAP-KOマウス及びWTマウスで同程度であった。値は平均値±SE。(d) 脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の心臓でのmRNA発現は高齢のATRAP-KOマウス及びWTマウスで同程度であった。値は平均値±SE。(e) 高齢のATRAP-KOマウス及びWTマウスの大動脈切片染色像の代表例である。上段はヘマトキシリン/エオシン染色像(倍率x100; バーは100μm)、中段はマッソントリクローム染色像(倍率x200; バーは100μm)、下段はエラスチカ・ワンギーソン染色像(倍率x200; バーは100μm)。(f) 大動脈壁厚はATRAP-KOマウス及びWTマウスで同程度であった。値は平均値±SE。 ATRAP欠損は老化にともなう腎線維化を増悪させることを示すデータである。(a) 若齢及び高齢のATRAP欠損マウス(ATRAP-KOマウス)と対照野生型マウス(WTマウス)の腎組織切片のヘマトキシリン/エオシン染色像の代表例である(倍率x40; バーは1 mm)。(b) 腎重量/体重の比率は同齢のATRAP-KOマウス及びWTマウスで同程度であった。値は平均値±SE。**は若齢対高齢でP<0.01。(c) 若齢及び高齢のATRAP-KOマウス及びWTマウスの腎臓組織切片のヘマトキシリン/エオシン染色像、PAS染色像及びマッソントリクローム染色像の代表例である(倍率x200; バーは100μm)。(d) 糸球体硬化指数は、若齢群と比較して高齢のATRAP-KOマウス及びWTマウスで同様に有意に上昇していた。値は平均値±SE。**は若齢に対しP<0.01。(e) 腎臓の線維化領域は高齢WTマウスと比較して高齢ATRAP-KOマウスで有意に増加していた。値は平均値±SE。**は若齢に対しP<0.01、‡はWTマウスに対しP<0.01。 ATRAP欠損はコラーゲン-3α及び形質転換増殖因子-β(TGF-β)の老化による腎でのmRNA発現のアップレギュレーションを促進することを示したデータである。若齢及び高齢のATRAP-KOマウス及びWTマウスにおける線維化関連因子(a, コラーゲン-1α; b, コラーゲン-3α; c, コラーゲン-4α; d, TGF-β; e, 腫瘍壊死因子-α(TNF-α))の腎でのmRNA発現。値は平均値±SE。*は若齢に対しP<0.05、**は若齢に対しP<0.01、‡はWTマウスに対しP<0.01。 ATRAP欠損はサーチュイン1(SIRT1)タンパク質の老化による腎での発現のダウンレギュレーションを誘発することを示したデータである。(a) 若齢及び高齢のATRAP-KOマウス及びWTマウスの腎における前生存因子(SIRT1, SIRT3, Klotho)のタンパク質発現。値は平均値±SE。*は若齢に対しP<0.05、†はWTマウスに対しP<0.05。(b) ATRAP-KOマウス及びWTマウス由来の腎組織切片をSIRT1タンパク質抗体で免疫染色した結果である。SIRT1陽性の領域は組織切片中で茶色の点として明白に観察された(倍率x200; バーは100μm)。 ATRAP欠損は腎でのミトコンドリア異常を誘発し、老化による酸化ストレス産生を促進することを示したデータである。(a) 高齢のATRAP欠損マウス(ATRAP-KOマウス)と対照野生型マウス(WTマウス)の近位尿細管細胞の電子顕微鏡像の代表例である(倍率x5000; バーは500 nm)。高齢ATRAP-KOマウスの近位尿細管細胞では、正常な形態のミトコンドリアが明らかに減少し、膨張してクリステが崩壊した異常なミトコンドリアが増加していた。(b) 高齢のATRAP-KOマウス及びWTマウスの腎における4-ヒドロキシ-2-ノネナール(4-HNE)タンパク質の発現。値は平均値±SE。†はWTマウスに対しP<0.05。(c) 高齢のATRAP-KOマウス及びWTマウス由来の腎組織切片の4-HNE発現を調べた結果である。上段は抗4-HNE抗体で免疫染色した染色像の代表例、下段は染色を定量解析した結果である。4-HNE陽性の領域は各組織切片中で茶色の点として明白に観察された(倍率x100; バーは100μm)。値は平均値±SE。†はWTマウスに対しP<0.05。
本発明の非ヒト哺乳動物は、寿命短縮化モデル動物であり、Agtrap遺伝子の機能が抑制されていることを特徴とする。当該動物は、腎臓の線維化が亢進するなど、腎臓の老化と関連した組織学的変化の促進がみられることから、腎臓老化促進モデル、ないしは腎線維化亢進モデルとしても使用可能である。非ヒト哺乳動物の典型的な具体例としては、マウスやラット等の実験動物を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、特定の遺伝子の機能を阻害する遺伝子工学的操作が可能なさまざまな非ヒト哺乳動物で本発明のモデル動物を作製することができる。
本発明において、「遺伝子の機能を阻害する」とは、ゲノム上の当該遺伝子領域の少なくとも一部を改変すること等により、本来コードしているmRNA又はタンパク質の生成又は蓄積を低下又は欠失させることをいい、遺伝子の機能の低下から機能の完全な欠損まで包含される。特定の遺伝子の機能を阻害するための遺伝子改変方法はこの分野で広く知られており、当業者であれば適宜選択して実行できる。大別すると、遺伝子の機能を欠損させる遺伝子破壊法(ノックアウト法)と、遺伝子の機能を低下させる遺伝子ノックダウン法があり、ノックダウン法の具体例としてアンチセンス法、RNAi等を挙げることができる。
本発明におけるAgtrap遺伝子の機能の阻害は、Agtrap遺伝子の破壊(ノックアウト)による機能欠損が好ましい。例えば、ゲノムの両アリルにおいて、Agtrap遺伝子のコード領域やプロモーター領域を欠失させたり、あるいは正常なATRAPタンパク質を産生できないように置換や挿入等の変異を導入することで、Agtrap遺伝子をノックアウトすることができる。コード領域の欠失は、コード領域の全長を欠失させてもよいし、ATRAPタンパク質の機能ドメインをコードする領域を含む一部領域を欠失させてもよい。ノックアウト細胞株のスクリーニングの便宜のため、Agtrap遺伝子コード領域の全部又は一部を薬剤耐性や蛍光タンパク質等のマーカー遺伝子配列に置き換えてもよい。
遺伝子ノックアウトの具体的手法の一つとして、下記実施例に記載されているターゲティングベクターを用いた相同的遺伝子組換えによるノックアウト法を挙げることができる。
ターゲティングベクターを用いたノックアウト法では、欠失させたい領域の上流側(5'側)及び下流側(3'側)のゲノム配列を対象の非ヒト動物のゲノムDNAからPCRにより増幅して上流側相同領域及び下流側相同領域を調製し、これらの相同領域及びマーカー遺伝子を順次適当なプラスミドベクターに挿入して、上流側相同領域−マーカー遺伝子−下流側相同領域の順に並んだ遺伝子破壊用DNAコンストラクトを含むターゲティングベクターを構築する。このようなターゲティングベクターを細胞に導入すると、相同的遺伝子組換えにより遺伝子破壊用コンストラクトがゲノム上の所期の位置に導入され、Agtrap遺伝子の一部又は全部がマーカー遺伝子に置き換えられた変異アレルが生じる。
Agtrap遺伝子は様々な動物種においてクローニングされており、NCBI等のデータベースから多くの動物種のAgtrap遺伝子領域のゲノム配列情報を入手することができる。Agtrap遺伝子配列が未同定の動物種については、ヒトやマウス等の同定済みのAgtrap遺伝子の配列情報を用いて、当該動物の全ゲノム配列情報(ショットガンシークエンス等)を対象に検索を行ない、推定されるAgtrap遺伝子領域を同定することで、ターゲティングベクターに組み込む相同領域などのAgtrap遺伝子の機能阻害のために必要なゲノム配列情報を得ることができる。配列表の配列番号1及び2に示す配列は、GenBankにAccession No. NM_009642で登録されているマウスAgtrap遺伝子の塩基配列及びこれにコードされるATRAPタンパク質のアミノ酸配列である。
上流側相同領域及び下流側相同領域のサイズは相同組換えの効率に影響し、効率の低い生物種ではサイズの大きな相同領域が用いられる。哺乳動物の遺伝子破壊においては、一般に用いられる相同領域は数kb程度のサイズである。一方の相同領域を1〜3kb程度(短腕)、他方の相同領域を5kb程度以上(長腕)とするのが一般的であるが、両者を5kb程度のサイズとしてもよい。配列番号3及び4に示す塩基配列は、下記実施例において上流(5')側相同領域及び下流(3')側相同領域として用いたマウスのゲノム領域の配列である。マウスでAgtrap遺伝子をノックアウトする場合には、例えばこれらの領域を用いてターゲティングベクターを構築することができる。
哺乳動物細胞においては、相同的組換え法による遺伝子破壊用コンストラクトのゲノムへの導入頻度は、相同的組換え法によらないランダムな導入の頻度に比べて非常に低い。そのため、本発明におけるAgtrap遺伝子のノックアウトでは、薬剤耐性を与えるポジティブ選択マーカーと薬剤感受性を与えるネガティブ選択マーカーを併用することが好ましい。上記の遺伝子破壊用コンストラクトにおいて、2つの相同領域の間に連結するマーカー遺伝子をポジティブ選択マーカー遺伝子とし、2つの相同領域の外側(上流側相同領域の5'側又は下流側相同領域の3'側)にネガティブ選択マーカー遺伝子を連結しておけばよい。該コンストラクトが相同的組換え法によりゲノムに導入されていれば、コンストラクトのうち相同領域の外側の領域はゲノムに導入されないので、ネガティブ選択マーカー遺伝子により薬剤感受性が付与されることはない。一方、該コンストラクトが相同的組換え法によらずにゲノムに導入された場合、ネガティブ選択マーカー遺伝子もゲノムに導入されるため、そのような形質転換細胞には薬剤感受性が付与されることになる。よって、遺伝子破壊用コンストラクトを細胞に導入後、ポジティブ選択マーカーとネガティブ選択マーカーによるスクリーニングを行えば、相同的組換え法により適切な位置にコンストラクトが導入されAgtrap遺伝子が破壊された細胞を効率よく選抜することができる。
一般に使用されるマーカー遺伝子の具体例を挙げると、ポジティブ選択マーカーとしてはネオマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子等が挙げられ、ネガティブ選択マーカーとしてはチミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリア毒素Aフラグメント(DT-A)等が挙げられるが、これらに限定されない。それぞれ適当なプロモーターとの組み合わせで用いられるが、当業者であればマーカー遺伝子の種類に応じて適宜選択することができる。
マーカーによるスクリーニングの後、PCRやサザンブロッティングによる遺伝子破壊の確認を行ない、Agtrap遺伝子が破壊されたアレルを有する細胞を取得する。PCRに使用するプライマーやサザンブロッティングに使用するプローブは、当業者であれば、遺伝子破壊用DNAコンストラクトの構造に応じて適宜設計することができる。
胚性幹細胞や人工多能性幹細胞等の多能性幹細胞株が確立している動物種(例えばマウス、ラット等)で本発明のモデル動物を作製する場合には、そのような多能性幹細胞株にターゲティングベクターを導入してAgtrap遺伝子がノックアウト(通常ヘテロノックアウトである)された細胞株を作出し、当該ノックアウト細胞を卵割期(2細胞期〜胚盤胞期)の胚に注入して動物個体を発生させればよい。発生した個体は正常細胞とノックアウト細胞が混在したキメラ個体であるので、生殖系列にヘテロノックアウトが伝達している個体を選抜して交配させることで、Agtrap遺伝子が全身的にホモでノックアウトされた個体を得ることができる。あるいは、ヘテロノックアウトであることを確認した細胞株を用いて、上述した遺伝子破壊用コンストラクトの導入とスクリーニングを再度繰り返し、ホモノックアウト株を取得してもよい。ヘテロノックアウト細胞の調製に使用する遺伝子破壊用DNAコンストラクトと、ホモノックアウト細胞の調製に使用する遺伝子破壊用DNAコンストラクトとで、異なる薬剤耐性ポジティブ選択マーカーを用いれば、ホモノックアウト細胞を適切に選抜することができる。
多能性幹細胞株が確立していない動物種(例えばブタやウシ等)で本発明のモデル動物を作製する場合には、当該動物の線維芽細胞などの体細胞株にターゲティングベクターを導入してAgtrap遺伝子がヘテロでノックアウトされた細胞株を作出した後、このノックアウト細胞を除核卵子に移植して再構築胚を作製するステップが必要となる。再構築胚を仮腹親の子宮に移植して個体を発生させればよい。このような体細胞クローニング技術は、ブタやウシ等の大動物においても確立した技術となっており(Nature, 385, p.810-813, 1997; Science, 282(5396), p.2095-2098, 1998; Science, 298, p.1188-1190, 2000; Nature, 407, p.86-90, 2000; Nat Biotechnol., 18, P.1055-1059, 2000等参照)、これらの技術を用いて大動物の遺伝子改変個体が作出されている(Nature, 405, p.1066-1069, 2000; Nat Biotechnol., 20, p.251-255, 2002; Science, 295, p.1089-1092, 2002; Transplantation, 76(6), p.900-902, 2003;Transplantation, 81(5), p.760-766, 2006等参照)。
また、ターゲティングベクター以外の遺伝子ノックアウト法として、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)法(Porteus, M.H. et al. Gene targeting using zinc finger nucleases. Nat. Biotechnol. 23, 967-973 (2005).)、TALEN法(Christian, M. et al. Targeting DNA double-strand breaks with TAL effector nucleases. Genetics 186, 757-761 (2010).)、及びCRISPR/Cas9法(Sander, J.D. et al. CRISPR-Cas systems for editing, regulating and targeting genomes. Nat Biotechnol 32, 347-355 (2014).)などが知られている。これらの手法はいずれも、所望の塩基配列を特異的に認識するように設計したDNA認識部位(ZFN法ではジンクフィンガードメイン、TALEN法では植物病原菌Xanthomonas由来のTAL effectorのDNA結合ドメイン、CRISPR/Cas9法では切断したいDNA配列に対する相補的な配列を含むguide RNA)をヌクレアーゼに融合させた人工のヌクレアーゼを用いる手法である。これらの人工ヌクレアーゼの一対(プラス鎖とマイナス鎖それぞれに対して設計する)を細胞内に導入すると、目的の部位でDNA二本鎖が切断され、非相同末端結合(Non-Homologous End Joining; NHEJ)による修復過程での修復エラーによって塩基の置換や欠損、挿入が生じ、これにより目的遺伝子が破壊される。人工ヌクレアーゼとともに上記したような2つの相同領域を含む遺伝子破壊用DNAコンストラクトを細胞内に導入すれば、相同組換え修復(homology-directed repair; HDR)による修復過程で標的部位へ遺伝子破壊用コンストラクトが挿入されるので、マーカー遺伝子配列等の所望の配列を標的部位に挿入することができる。これらの手法によれば、Agtrap遺伝子を標的とするように設計した人工ヌクレアーゼを非ヒト動物由来の受精卵に導入してAgtrap遺伝子を破壊し、ホモで破壊された受精卵を作出することができるので、体細胞核移植操作を行なわなくてよい。多能性幹細胞株が確立しておらず、かつ、体細胞核移植効率が低い、ないしは体細胞核移植による胚の再構築技術が確立していない動物種において、Agtrap遺伝子をノックアウトしたい場合には、体細胞核移植工程が不要なこれらの手法を好ましく用いることができる。
本発明のモデル動物は、例えば、慢性腎臓病の治療薬のスクリーニングに用いることができる。治療薬候補物質を本発明のモデル動物に投与し、非投与のモデル動物と比べて腎臓の線維化が抑制されている場合や寿命が長くなった場合には、当該候補物質に慢性腎臓病の治療効果があると判定することができる。なお、本発明において、慢性腎臓病とは、この分野で知られる通り、腎臓の構造及び機能に障害をおよぼす種々の疾患全般を指す語であり、重症腎疾患や腎不全と同義である。本発明のモデル動物は不可逆的重症病変とされる尿細管間質線維化の亢進(すなわち慢性腎臓病、末期腎不全の病態)を呈するので、本発明のモデル動物を用いたスクリーニングによれば、初期〜末期の腎不全を包含する腎組織の線維化を伴う各種の慢性腎臓病の治療に有効な薬剤を得ることができる。また、本発明のモデル動物は、長寿化作用のある医薬品ないしは健康食品・健康補助食品等のスクリーニングにも用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
<方法>
マウスの飼育条件
全ての実験は同齢のATRAP欠損マウス(ATRAP-KOマウス)及びそれらと同腹のと対照コントロールの野生型マウス(WTマウス)を用いて行なった(3〜4月齢、11〜12月齢、及び22〜25月齢、各群N=6〜11)。マウスは12時間/12時間の昼夜サイクル条件下、25℃で飼育し、標準飼料(0.3% NaCl, 3.6 kcal/g; 脂肪分13.3%, オリエンタルMF, オリエンタル酵母工業社製)を自由摂取とした。本研究は国立予防衛生研究所の実験動物の使用に関するガイドラインに従って実施した。全ての動物実験は横浜市立大学の動物研究委員会に承認された。
Agtrap遺伝子のノックアウトによるATRAP欠損マウス(ATRAP-KOマウス)の作出
ATRAP-KOマウスは、C57BL/6を遺伝的背景として相同的組換え法による標的遺伝子破壊により作出したものを用いた(Maeda A, et al. J Am Heart Assoc 2, e000312 (2013); Ohsawa M, et al. Kidney Int 86, 570-581 (2014))。マウスAgtrap遺伝子(GenBank Accession No. NM_009642、配列番号1)は5つのエクソンを有する遺伝子であり、これにコードされるATRAPタンパク質は161アミノ酸からなる(配列番号2)。エクソン3〜5においてATRAPの後半大部分(全長161アミノ酸のうちの約141アミノ酸)がコードされていることから、エクソン3及び4の全体とエクソン5中のコード領域を含む一部領域の合計約2.6kbpのAgtrap遺伝子ゲノム領域をネオマイシン耐性遺伝子で置き換える構造のターゲティングベクターを構築した(図1)。ターゲティングベクターに含める5'側相同領域(配列番号3)と3'側相同領域(配列番号4)は、クローニング用に制限酵素サイトを付加した下記のプライマーを使用し、C57BL/6N系統マウス由来のES細胞株であるRENKA株のゲノムDNAを鋳型としたPCRにより増幅して調製した。ランダム挿入のネガティブ選抜のため、5'側相同領域の5'末にホスホグリセリン酸キナーゼ1−チミジンキナーゼ遺伝子を付加させた。構築したターゲティングベクターの塩基配列を配列番号5に示す。
EcoRI_5AF1 primer: gcgaattCACAAGTCTCAATGGTAGAACATTTGAGTAG(配列番号6)
NheI_5AR1 primer: cggctagCCCGTCCACACAGTTCCTTC(配列番号7)
XhoI_3AF2 primer: gcCtcGAGCCTGACTGTGGCCAAACGG(配列番号8)
NotI_3AR1 primer: cggCggccgcGATTTAGTTTGCTGGTTCTAGAAACGAG(配列番号9)
Agtrapターゲティングベクターをリニア化してエレクトロポレーションによりRENKA胚性幹細胞内に導入し、相同組換えが生じてG418耐性となった細胞株を選抜した。選抜後の細胞株について、サザンブロット解析により正しい位置で相同組換えが生じていることを確認し、ATRAPヘテロノックアウト細胞株を得た。サザン解析用の5'プローブ(配列番号10)及び3'プローブ(配列番号11)は、C57BL/6N系統マウス由来RENKA細胞株のゲノムDNAを鋳型としたPCR(使用したプライマーの配列は配列番号13〜16の通り)により増幅して調製した。neoプローブ(配列番号12)は、市販品のNeo cloning plasmidよりBamHIにて切り出して作製した。DNA断片のラベリングにはAlkPhos Direct Labelling and Detection System with CDP-Star(GEヘルスケアバイオサイエンス社)を使用した。野生型細胞株及び正しい位置で相同組換えが生じたヘテロノックアウト株では、それぞれ下記表の通りのサイズでバンドが検出される。
サザンブロット解析によりヘテロノックアウトが確認された複数の細胞株をそれぞれ8細胞期のC57BL/6N系統マウス胚に注入してキメラマウスを作製した。ヘテロノックアウトが生殖細胞系列に伝達された雌雄のキメラマウスを交配し、ホモノックアウトの産仔を得た。ATRAPがホモでノックアウトされていることはサザンブロット解析により確認した。ATRAPに対する抗体を用いた免疫ブロット解析により、全身的にATRAPタンパク質の発現が欠損していることを確認した。
血圧及び心拍数の非侵襲的測定
収縮期血圧及び心拍数は、tail-cuff法(BPモニターMK-2000; 室町機械製)により測定した。MK-2000 BPモニターは、既報(Tsurumi Y, et al. Kidney Int 69, 488-494 (2006))の通り、動物を非加温・無麻酔で血圧測定が可能であり、強度のストレス状態を回避することができた。1回の測定につき少なくとも8回の読み込みを行なった。
代謝ケージ解析
代謝ケージ解析は既報(Wakui H, et al. Hypertension 61, 1203-1210 (2013); Wakui H, et al. Hypertension 61, 1203-1210 (2013))の通りに実施した(Techniplast)。1日の摂餌量及び飲水量を測定した。マウスは水道水を自由飲水とし、標準飼料を給餌した。
組織学的及び免疫組織化学的解析
組織学的解析は既報(Ohsawa M, et al. Kidney Int 86, 570-581 (2014); Wakui H, et al. Cardiovasc Res 100, 511-519 (2013); Tsurumi Y, et al. Kidney Int 69, 488-494 (2006))の通りに実施した。マウスから心臓、大動脈及び腎臓を採取し、4%パラホルムアルデヒドで固定してパラフィン包埋した。4μm厚の切片をヘマトキシリン−エオシン、過ヨウ素酸−シッフ(PAS)、マッソントリクローム、エラスチカ・ワンギーソンで染色した。腎構造の解析のため、既報(Iacobini C, et al. Am J Physiol Renal Physiol 289, F611-621 (2005))の通り、糸球体硬化を半定量的に評価して糸球体硬化指数(glomerular sclerosis index; GSI)で表した。簡単に記載すると、1サンプルにつき30個の糸球体を観察し、硬化の度合いに応じて0(硬化なし)、1(硬化<25%)、2(硬化25〜50%)、3(硬化51〜75%)、4(硬化>75%)にグレード付けした。心臓及び腎臓の線維化領域と大動脈の中膜厚は蛍光顕微鏡(BZ-9000, キーエンス社)を用いてデジタル測定した。免疫組織化学的解析は既報(Ohsawa M, et al. Kidney Int 86, 570-581 (2014); Wakui H, et al. Am J Physiol Renal Physiol 299, F991-F1003 (2010); Tsurumi Y, et al. Kidney Int 69, 488-494 (2006))の通りに実施した。切片は、抗SIRT1抗体(1:50; 07-131, ミリポア社)、又は抗4-HNE抗体(1:100; MHN-100P, 日本老化制御研究所)と共にインキュベートした。4-HNE染色領域は蛍光顕微鏡(BZ-9000, キーエンス社)を用いてデジタル測定した。
定量的RT-PCR(qRT-PCR)解析
ISOGEN(ニッポンジーン社)を用いて腎組織より全RNAを抽出し、SuperScript III First-Strand System(インビトロジェン社)を用いてcDNAを合成した。逆転写産物をTaqMan PCR Master Mix及び設計されたTaqManプローブ(コラーゲン-1α, Mm00801666_g1; コラーゲン-3α, Mm01254476_m1; コラーゲン4α, Mm01210125_m1; TGF-β, Mm01178820_m1; TNF-α, Mm00443258_m1; アプライドバイオシステムズ社)と共にインキュベートし、ABI PRISM 7000 Sequence Detection Systemを用いて既報(Ohsawa M, et al. Kidney Int 86, 570-581 (2014); Wakui H, et al. Cardiovasc Res 100, 511-519 (2013); Wakui H, et al. Am J Physiol Renal Physiol 299, F991-F1003 (2010); Wakui H, et al. Hypertension 55, 1157-1164 (2010); Wakui H, et al. Hypertension 61, 1203-1210 (2013); Wakui H, et al. J Am Heart Assoc 4, (2015); Matsuda M, et al. J Biol Chem, 288: 19238-19249 (2013))の通りにqRT-PCRを行なった。mRNAレベルは18S rRNAコントロールのmRNAレベルに対して標準化した
免疫ブロット解析
免疫ブロット解析は、基本的には既報(Ohsawa M, et al. Kidney Int 86, 570-581 (2014); Wakui H, et al. Cardiovasc Res 100, 511-519 (2013); Wakui H, et al. Hypertension 55, 1157-1164 (2010); Tsurumi Y, et al. Kidney Int 69, 488-494 (2006); Wakui H, et al. Hypertension 61, 1203-1210 (2013); Wakui H, et al. J Am Heart Assoc 4, (2015); Matsuda M, et al. J Biol Chem, 288: 19238-19249 (2013))の通りに行なった。簡単に記載すると、SDS含有サンプルバッファーを用いて組織サンプルから全タンパク質抽出物を調製し、各サンプルのタンパク質濃度をDC protein assay kit(バイオラッド社)を用いてウシ血清アルブミンをスタンダードとして測定した。組織サンプルからのタンパク質抽出物の等量を5-20%ポリアクリルアミドゲル(ATTO)上で分画し、iBlot Dry Blotting System(インビトロジェン社)を用いてPVDFメンブランに転写した。転写後のメンブランを、5%スキムミルクを含むリン酸緩衝食塩水で室温1時間ブロッキングし、一次抗体(SIRT1, 07-131, ミリポア; SIRT3, sc-99143, サンタクルズバイオテクノロジー; Klotho, ab69208, アブカム; 4-HNE, MHN-100P, 日本老化制御研究所)と共に4℃一晩インキュベートした。メンブランを洗浄後、二次抗体と共に室温15分間インキュベートした。ECL(GEヘルスケア)により抗原抗体反応部位を可視化した。特異抗体(A5441、シグマ−アルドリッチ)で認識されたβアクチンのバンドをローディングコントロールとして用いた。FUJI LAS3000 Image Analyzer(富士フィルム)を用いて画像を定量解析した。
生化学的解析
マウスを摂食状態で死亡させた際に心穿刺により動脈血を採取した。全血を500g、4℃で10分間遠心して血漿を分離した。糖アルブミンの測定は酵素アッセイにより行ない(旭化成ファーマ)、LDLコレステロール及びHDLコレステロールの測定はダイレクトアッセイにより行なった(積水メディカル)。
電子顕微鏡解析
電子顕微鏡解析は既報(Takeda A, Atobe Y, Kadota T, Goris RC, Funakoshi K. Neuroscience 284, 134-152 (2015))の通りに行なった。簡単に記載すると、齢の進んだATRAP-KOマウス及びWTマウスをイソフルランで麻酔し、右側大動脈弓からヘパリン化(5 U/ml)生理食塩水及び2.5%グルタルアルデヒド0.1Mリン酸緩衝液溶液pH7.4を灌流させた。透過型電子顕微鏡(TEM)の検体は、1%四酸化オスミウムに2時間浸漬し、エタノールの上昇系列で脱水し、Epon樹脂中に包埋した。超薄切片を酢酸ウラニル及びクエン酸鉛で染色し、日立H-7500 TEM(加速電圧80 kV、倍率5,000倍)で観察、CCDカメラで撮影した(各群N=2)。
統計解析
データは平均値±SEで示す。対応のないスチューデントt検定、又は分散分析(ANOVA)により差異を解析した。P値<0.05を統計学的に有意とした。
<結果>
ATRAPの欠損は老化にともなう外観の変化に影響しない
ATRAP欠損マウス(ATRAP-KOマウス)は正常に成長し、3〜4月齢の時点で対照野生型マウス(WTマウス)と見分けがつかなかった。また、ATRAP欠損は3〜4月齢から22〜25月齢に至るまで体重変化に有意な効果を及ぼさなかった(図2a)。以下、特に断りが無い限り、「若齢」は3〜4月齢のマウス、「高齢」は22〜25月齢のマウスを指す。さらに、高齢のATRAP-KOマウスは、身体の大きさを含め肉眼的形態において高齢WTマウスと明らかな差異がなく、体毛の灰白色化や体毛減少などWTマウスと同様の老化形質を示した(図2b)。
ATRAP欠損は寿命を短縮化する
前向き観察研究によりATRAP欠損マウス(ATRAP-KOマウス)と対照野生型マウス(WTマウス)の寿命を調べた。マウスは標準飼料を自由摂取とし、死亡するまで通常の飼育環境で維持した。興味深いことに、ATRAP-KOマウス及びWTマウスの寿命中央値はそれぞれ100.4週及び123.1週であり、ATRAP-KOマウスではWTマウスと比べて寿命が有意に短縮化していた(ログランク検定、P=0.0002、図3)。
ATRAP欠損は高齢マウスの生理的機能指標に明らかな影響を及ぼさない
ATRAP欠損マウス(ATRAP-KOマウス)における寿命短縮化の原因を特定するため、まずは高齢ATRAP-KOマウスの生理的パラメータを調べた。結果を下記表2に示す。アンジオテンシノーゲン、レニン、AT1Rなどのレニン−アンジオテンシン系構成因子の遺伝的欠損によりベースライン血圧が有意に低下することが過去に報告されているが(Tanimoto K, et al., J Biol Chem 269, 31334-31337 (1994); Tsuchida S, et al., J Clin Invest 101, 755-760 (1998); Yanai K, et al., J Biol Chem 275, 5-8 (2000))、我々は以前に、ATRAPはこれらの場合とは異なり,若齢ATRAP-KOマウス及び対照野生型マウス(WTマウス)においてベースライン血圧及び心拍数プロファイルが同様で差が認められないことを示している(Maeda A, et al., J Am Heart Assoc 2, e000312 (2013); Ohsawa M, et al., Kidney Int 86, 570-581 (2014))。本研究では、高齢に至ってもATRAP-KOマウスとWTマウスとの間で収縮期血圧及び心拍数に有意差が認められなかった(表2)。
過去の報告によると、酵母、無脊椎動物及び哺乳動物においてカロリー摂取量の変化が寿命の調節に関連している(Bishop NA, Guarente L. Nat Rev Genet 8, 835-844 (2007); Piper MD, Bartke A. Cell Metab 8, 99-104 (2008); Colman RJ, et al. Science 325, 201-204 (2009); Fontana L, Partridge L, Longo VD. Science 328, 321-326 (2010))。ATRAP欠損がカロリー摂取量に影響しているかどうかを調べるため、高齢ATRAP欠損マウス(ATRAP-KOマウス)で代謝ケージ解析を行なった。その結果、1日の摂餌量及び飲水量は高齢のATRAP-KOマウス及び対照野生型マウス(WTマウス)において同等であった(表2)。このことは、両群において体重増加が同様であったことと合致しており、ATRAP-KOマウスにおける寿命短縮がカロリー摂取量の変動によるのではないことを示している。また、内臓脂肪組織及びインスリン感受性が哺乳動物の寿命を調節しているとの報告があるが(Barzilai N, Banerjee S, Hawkins M, Chen W, Rossetti L. The Journal of clinical investigation 101, 1353-1361 (1998); Muzumdar R, et al., Aging Cell 7, 438-440 (2008); de Kreutzenberg SV, et al. Diabetes 59, 1006-1015 (2010); Hasegawa Y, et al. Circulation 125, 1122-1133 (2012))、高齢のATRAP-KOマウス及びWTマウスにおいて、精巣上体脂肪組織及び肝臓の重量、並びに糖・脂質代謝のパラメータは同等であった(表2)。これらの結果は、ATRAP-KOマウスで認められる寿命短縮化が内臓脂肪型肥満や糖・脂質代謝異常とは関連が無いことを示している。
ATRAP欠損は老化にともなう心血管系の変化には影響しない
ATRAP欠損マウス(ATRAP-KOマウス)の寿命短縮化の原因を調べるため、次いで、心組織及び血管組織の損傷を調べた。心組織における加齢関連の変化に関しては、ATRAP-KOマウス及び対照野生型マウス(WTマウス)間で心筋肥大にも心組織の線維化にも有意な差が認められなかった(図4a-c)。脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は心臓負担と心機能の高感度マーカーであるが、心臓におけるBNPのmRNA発現量にも高齢のATRAP-KOマウスとWTマウスとの間で相違はなかった(図4d)。また、加齢に伴うアテローム性動脈硬化病変の進展については、高齢のATRAP-KOマウスとWTマウスとの間で大動脈の線維化及び大動脈壁肥厚に有意な差がなかった(図4e,f)。これらの結果は、老化にともなう心臓及び血管の障害がATRAP-KOマウス及びWTマウスにおいて同等であることを示している。
ATRAP欠損は老化にともなう腎線維化を増悪させる
アンジオテンシノーゲン、レニン、AT1受容体等、他のレニンーアンジオテンシン系構成因子の遺伝的不活化が、通常飼育条件下で無刺激(ベースライン)の状態下であっても生下時から腎臓の形態・機能的変化をもたらすことが報告されているが(Tanimoto K, et al. J Biol Chem 269, 31334-31337 (1994); Tsuchida S, et al. J Clin Invest 101, 755-760 (1998); Yanai K, et al. J Biol Chem 275, 5-8 (2000))、我々は以前に、ベースラインでの若齢ATRAP欠損マウス(ATRAP-KOマウス)では腎臓に形態・機能的変化が見られないことを示した(Ohsawa M, et al. Kidney Int 86, 570-581 (2014))。本研究においても、高齢のATRAP-KOマウスと対照野生型マウス(WTマウス)との間で腎臓の肉眼的形態及び重量には明白な差異が認められなかった(図5a,b)。しかしながら、ヘマトキシリン/エオシン染色像及びPAS染色像によると、老化に伴う糸球体硬化病変については高齢のATRAP-KOマウス及びWTマウスにおいて同程度に進展していたにもかかわらず(図5c,d)、腎間質の線維化の進展については高齢ATRAP-KOマウスにおいて高齢WTマウスよりも有意に増悪していた(図5c,e)。
ATRAP欠損は老化にともなう腎でのTGF-β及びコラーゲン遺伝子の発現を促進する
組織学的解析により高齢ATRAP欠損マウス(ATRAP-KOマウス)の腎臓で間質の線維化が増大していることが明らかとなったので、同齢のATRAP-KOマウス及び対照野生型マウス(WTマウス)の腎における線維化関連遺伝子(コラーゲン-1α, 3α, 4α, TGF-β, TNF-α)の発現を調べた。コラーゲン-1α、コラーゲン4α及びTNF-αの腎でのmRNA発現レベルは高齢のATRAP-KOマウス及びWTマウスで同程度であった(図6a,c,e)。しかしながら、TGF-βの腎でのmRNA発現レベルはATRAP-KOマウスにおいてのみ加齢により有意に上昇していた(図6d)。コラーゲン-3αの腎でのmRNA発現レベルはWTマウスと比べて高齢のATRAP-KOマウスで特異的かつ有意に上昇していた(図6b,d)。これらの結果は、腎での加齢に伴うコラーゲン-3α及びTGF-β遺伝子の発現増加が高齢ATRAP-KOマウスでの腎線維化の増悪に寄与していることを示している。
ATRAP欠損は老化にともなう腎でのサーチュイン1(SIRT1)タンパク質の発現を抑制する
腎臓をはじめとした臓器の線維化は加齢において共通にみられる病理組織学的変化である(Pannarale G, et al. J Nephrol 23 Suppl 15, S37-40 (2010))。サーチュイン(SIRT1〜SIRT7)は、酵母の寿命決定において確立した役割を果たす生存因子であるSilent information regulator 2 (Sir2)(Guarente L, Picard F. Cell 120, 473-482 (2005))の哺乳動物ホモログである。サーチュイン(SIRT1〜SIRT7)のうち、SIRT1がSir2と最も相同性が高く、そのオルソログと考えられており、臓器線維化(Simic P, Williams EO, Bell EL, Gong JJ, Bonkowski M, Guarente L. Cell Rep 3, 1175-1186 (2013))、腎疾患をはじめとする加齢関連疾患、あるいは寿命制御(Hasegawa K, et al. J Biol Chem 285, 13045-13056 (2010); He W, et al. J Clin Invest 120, 1056-1068 (2010); Kitada M, Kume S, Takeda-Watanabe A, Kanasaki K, Koya D. Clin Sci (Lond) 124, 153-164 (2013))に関与していることが知られている。そこで、同齢のATRAP欠損マウス(ATRAP-KOマウス)及び対照野生型マウス(WTマウス)において、SIRT1及びSIRT3の腎での発現を調べた。
興味深いことに、SIRT3の発現には差が無いにもかかわらず、SIRT1の腎での発現レベルは対照野生型マウス(WTマウス)と比べて高齢のATRAP欠損マウス(ATRAP-KOマウス)において特異的かつ有意に低下していた(図7a)。Klothoはいくつかの老化表現型の抑制に重要な役割を果たし、正常な寿命の維持に重要であることが報告されており(Kuro-o M, et al. Nature 390, 45-51 (1997); John GB, Cheng CY, Kuro-o M. Am J Kidney Dis 58, 127-134 (2011))、Klotho発現量の低下がATRAP-KOマウスにおける寿命短縮に関与している可能性も考えられた。しかしながら、Klothoタンパク質の発現レベルは、高齢のATRAP-KOマウス及びWTマウスの腎臓では若齢のATRAP-KOマウス及びWTマウスと比べて有意にしかし同様に低下しており、ATRAP-KOマウスとWTマウスとの間での差異はなかった(図7a)。
次に、ATRAP欠損がSIRT1タンパク質の腎臓内分布に及ぼす効果を免疫組織化学的手法により調べた。その結果、若齢のATRAP欠損マウス(ATRAP-KOマウス)及び対照野生型マウス(WTマウス)の腎皮質内層と髄質外層でSIRT1が比較的高発現していることが明らかとなったが、これらの領域におけるSIRT1の高齢マウスでの免疫反応性は、WTマウスと比べてATRAP-KOマウスにおいて低下していた(図7b)。これらの結果は、高齢ATRAP-KOマウスにおける腎線維化の増悪がSIRT1の腎での発現低下と関連していることを示している。
ATRAP欠損は老化にともなう腎でのミトコンドリア異常をもたらす
近年、SIRT1が細胞のミトコンドリアの機能調節に重要な役割を担っていることが示唆されている(Kitada M, Kume S, Takeda-Watanabe A, Kanasaki K, Koya D. Clin Sci (Lond) 124, 153-164 (2013); Zhan M, Brooks C, Liu F, Sun L, Dong Z. Kidney Int 83, 568-581 (2013); Che R, Yuan Y, Huang S, Zhang A. Am J Physiol Renal Physiol 306, F367-378 (2014))。腎でのSIRT1低下が高齢ATRAP-KOマウスの腎臓内のミトコンドリアに影響を及ぼしている可能性を検討するため、近位尿細管細胞の電子顕微鏡(EM)解析を実施した。興味深いことに、高齢のATRAP欠損マウス(ATRAP-KOマウス)の近位尿細管細胞では、正常な形態のミトコンドリアが明らかに減少し、膨張してクリステが崩壊した異常なミトコンドリアが増加していた。このことは、老化性変化が進んだミトコンドリアが高齢の対照野生型マウス(WTマウス)の同細胞よりも多く蓄積していることを示している(図8a)。
ミトコンドリアは細胞内の活性酸素種(ROS)の主要な供給源である。老化性変化が進んだ異常なミトコンドリアの蓄積が腎臓のROSステータスに及ぼす効果を調べるため、免疫ブロット解析及び免疫組織化学的解析により4-ヒドロキシ-2-ノネナール(4-HNE)の腎での発現を調べた。4-HNEは組織内のROS生成を反映する物質であり(Toyokuni S, et al. FEBS Lett 359, 189-191 (1995); Tanaka T, et al. Lab Invest 77, 145-155 (1997); Wakui H, et al. Cardiovasc Res 100, 511-519 (2013))、主にミトコンドリアで生成される(Mali VR, Palaniyandi SS. Free Radic Res 48, 251-263 (2014))。解析の結果によると、高齢の対照野生型マウス(WTマウス)と比較して、高齢のATRAP欠損マウス(ATRAP-KOマウス)では4-HNEタンパク質の腎での発現レベルが上昇しており、腎皮質内層と髄質外層において比較的高レベルで4-HNEが染色された(図8b,c)。これらの結果は、高齢ATRAP-KOマウスにおけるミトコンドリアの機能不全によって腎でのROS生産が増悪していることを示している。既報によると4-HNE生産の増加が尿細管間質の線維化を誘発するが(Tanaka Y, et al. Kidney Int 79, 871-882 (2011))、これらの結果は酸化ストレスの上昇を伴うミトコンドリア異常が高齢ATRAP-KOマウスにおける腎線維化病変の悪化に寄与していることを示している。

Claims (6)

  1. Agtrap遺伝子の機能が阻害されている非ヒト哺乳動物の、寿命短縮化モデル又は腎線維化亢進モデルとしての使用
  2. 前記非ヒト哺乳動物は、Agtrap遺伝子の機能が欠損した非ヒト哺乳動物である、請求項1記載の使用
  3. 前記非ヒト哺乳動物がマウスである、請求項1又は2記載の使用
  4. Agtrap遺伝子の機能が阻害されている非ヒト哺乳動物に慢性腎臓病治療薬候補物質を投与することを含む、慢性腎臓病治療薬のスクリーニング方法。
  5. 前記非ヒト哺乳動物は、Agtrap遺伝子の機能が欠損した非ヒト哺乳動物である、請求項4記載の方法。
  6. 前記非ヒト動物がマウスである、請求項4又は5記載の方法。
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