JP2004121243A - PrRPノックアウト動物およびその用途 - Google Patents

PrRPノックアウト動物およびその用途 Download PDF

Info

Publication number
JP2004121243A
JP2004121243A JP2003317697A JP2003317697A JP2004121243A JP 2004121243 A JP2004121243 A JP 2004121243A JP 2003317697 A JP2003317697 A JP 2003317697A JP 2003317697 A JP2003317697 A JP 2003317697A JP 2004121243 A JP2004121243 A JP 2004121243A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
prrp
gene
animal
mouse
acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2003317697A
Other languages
English (en)
Inventor
Kuniji Hinuma
日沼 州司
Masashi Fukuzumi
福住 昌司
Kozo Shimakawa
嶋川 幸三
Shigehisa Taketomi
武冨 滋久
Hirokazu Matsumoto
松本 寛和
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Takeda Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Takeda Chemical Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Takeda Chemical Industries Ltd filed Critical Takeda Chemical Industries Ltd
Priority to JP2003317697A priority Critical patent/JP2004121243A/ja
Publication of JP2004121243A publication Critical patent/JP2004121243A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)

Abstract

【課題】肥満症を発症しているPrRP遺伝子発現不全非ヒト動物の提供。
【解決手段】肥満症を発症しているPrRP遺伝子発現不全非ヒト動物を用いて肥満症の予防・治療・改善薬を効率良くスクリーニングすることができる。
【選択図】なし

Description

 本発明は、肥満症等を発症しているPrRPノックアウト動物およびそれを用いる肥満症の予防・治療・改善薬のスクリーニング方法に関する。
 下垂体機能調節作用、中枢神経機能調節作用、膵臓機能調節作用を有するヒト、ウシおよびラット由来のリガンドポリペプチド(PrRP)並びにそれをコードするcDNA、および該PrRPに対するヒトおよびマウス由来のレセプタータンパク質(PrRP受容体)並びにそれをコードするcDNAが知られている(特許文献1)。
 マウス由来のPrRP並びにそれをコードするゲノムDNA、およびPrRPノックアウト動物の製造法とそのためのターゲッティイングベクターが知られている(特許文献2)。
 ヒトおよびマウス由来PrRP受容体と高い相同性を有するラット由来オーファン受容体(UHR−1)が知られている(非特許文献1)。
 PrRPがプロラクチン分泌調節作用、胎盤機能調節作用を有することが知られている(特許文献3)。
 PrRPがオキシトシン分泌調節作用を有することが知られている(特許文献4)。
 PrRPに対するモノクローナル抗体(P2L−1Ca、P2L−2Ca、P2L−1Ta)が知られている(特許文献5)。
 PrRPが副腎皮質刺激ホルモン放出分泌調節作用を有し、肥満症に対して予防・治療効果があることが知られている(特許文献6)。
 PrRPが摂食調節に関与していることが記載されている(非特許文献2)。
 PrRPの投与により、摂食および体重増加が阻害されることが知られている(非特許文献3)。
 PrRPとレプチンとの相互作用により、摂食および体重増加が阻害されることが知られている(非特許文献4)。
WO97/24436号公報 WO98/49295号公報 WO98/58962号公報 WO00/38704号公報 WO99/60112号公報 WO00/38704号公報 Biochemical and Biophysical Research Communications, Vol.209, No.2, pp.606-613, 1995 Nature Neuroscience Vol.3, No.7, July 2000 Endcrinology February 2002, 143(2):360-367 Endcrinology February 2002, 143(2):368-374
 本発明は、肥満症の予防・治療・改善薬のスクリーニングに有用なPrRPノックアウト動物を提供することを課題とする。
 本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、PrRP遺伝子発現不全マウス(PrRPノックアウトマウス)の作出に成功し、該ノックアウトマウスにおいて体重の増加や体脂肪の増加が見られることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
 すなわち、本発明は、
(1)肥満症を発症しているPrRP遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物、
(2)野生型動物に比べて体重または体脂肪が増加しているPrRP遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物、
(3)非ヒト哺乳動物がマウスである上記(1)または(2)記載の動物、
(4)PrRP遺伝子が配列番号:2で表わされる塩基配列を含有する遺伝子である上記(3)記載の動物、
(5)上記(1)または(2)記載の動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞を用いることを特徴とする肥満症の予防・治療・改善薬のスクリーニング方法、
(6)上記(1)または(2)記載の動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞に試験化合物を投与し、体重または体脂肪の変化を測定することを特徴とする上記(5)記載のスクリーニング方法、および
(7)上記(1)または(2)記載の動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞を含有することを特徴とする肥満症の予防・治療・改善薬のスクリーニング用キットを提供する。
 さらに、本発明は、
(8)PrRP遺伝子が配列番号:1で表わされるアミノ酸配列からなるマウスPrRP、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列からなるラットPrRPまたは配列番号:5で表わされるアミノ酸配列からなるウシPrRPをコードする遺伝子である上記(1)または(2)記載の動物、
(9)PrRP遺伝子が配列番号:1で表わされるアミノ酸配列からなるマウスPrRPをコードする遺伝子である上記(1)または(2)記載の動物、および
(10)PrRP遺伝子が不活性化された哺乳動物ES細胞を提供する。
 本発明のPrRP遺伝子発現不全非ヒト動物は、肥満症の予防・治療・改善薬のスクリーニングに有用である。
 PrRP遺伝子が不活性化された哺乳動物ES細胞とは、哺乳動物ES細胞が有するPrRP遺伝子に人為的に変異を加えることにより、遺伝子の発現能を抑制するか、もしくは該遺伝子がコードしているPrRPの活性を実質的に喪失させることにより、遺伝子が実質的にPrRPの発現能を有さない不活性化された(以下、本発明のノックアウト遺伝子と称することがある)哺乳動物のES細胞をいう。
 PrRPはWO97/24436号、WO98/49295号などに記載されている公知蛋白質であり、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列からなるマウスPrRP、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列からなるラットPrRP、配列番号:5で表わされるアミノ酸配列からなるウシPrRPなどが用いられる。
 PrRP遺伝子としては、上記PrRPをコードするゲノムDNAなどが用いられるが、具体的には、(1)配列番号:1で表わされるアミノ酸配列からなるマウスPrRPをコードする、配列番号:2で表わされる塩基配列を含有するマウスPrRP遺伝子、(2)配列番号:3で表わされるアミノ酸配列からなるラットPrRPをコードする、配列番号:4で表わされる塩基配列を含有するラットPrRP遺伝子、(3)配列番号:5で表わされるアミノ酸配列からなるウシPrRPをコードする、配列番号:6で表わされる塩基配列を含有するウシPrRP遺伝子などが用いられ、なかでも配列番号:1で表わされるアミノ酸配列からなるマウスPrRPをコードする、配列番号:2で表わされる塩基配列からなるマウスPrRP遺伝子が好ましく用いられる。
 本明細書中、ES細胞の材料とする哺乳動物としては、例えば、ヒト、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどが用いられる。
 また、本明細書中、非ヒト動物としては、PrRP遺伝子を有するヒト以外の動物ならば、いかなる動物でもよいが、非ヒト哺乳動物が好ましい。非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどが用いられる。非ヒト哺乳動物のなかでも、病態動物モデル系の作製の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、また繁殖が容易なゲッ歯動物、とりわけマウス(例えば純系として、C57BL/6系統,DBA2系統,BALB/c系統など、交雑系として、B6C3F1系統,BDF1系統,B6D2F1系統,クローズド系ICR系統など(なかでも好ましくは、純系として、C57BL/6系統など、交雑系として、BDF1系統またはクローズド系ICR系統など))またはラット(例えば、Wistar系統,SD系統など)などが特に好ましい。
 PrRP遺伝子に人為的に変異を加える方法としては、例えば、遺伝子工学的手法により該遺伝子配列の一部又は全部の削除、もしくは他遺伝子の挿入または置換があげられる。これらの変異により、例えば、コドンの読み取り枠をずらすか、プロモーターあるいはエキソンの機能を破壊することにより本発明のノックアウト遺伝子を作製することができる。
 PrRP遺伝子が不活性化された哺乳動物(好ましくは、非ヒト哺乳動物)ES細胞(以下、PrRP遺伝子不活性化ES細胞またはノックアウトES細胞と略記する)の具体例としては、例えば、薬剤耐性遺伝子(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子またはゼオシン耐性遺伝子など、好ましくは、ネオマイシン耐性遺伝子など)、あるいはレポーター遺伝子(例えば、lacZ(大腸菌β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)、GUS(β−グルクロニダーゼ遺伝子)、ルシフェラーゼ遺伝子、エクオリン遺伝子、タウマリン遺伝子、GFP(Green Fluorescent Protein)遺伝子など、好ましくは、lacZなど)等を挿入することによりPrRP遺伝子のエキソンの機能を破壊するか、あるいはエキソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加シグナルなど)を挿入し、完全なmRNAを合成できなくすることによって、結果的に遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNAベクター(以下、ターゲティングベクターと略記する)を作製する。レポーター遺伝子を挿入してエキソンの機能を破壊する場合、該レポーター遺伝子は、PrRPプロモーターの制御下で発現するように挿入することが好ましい。
 上記「薬剤耐性遺伝子」とは、抗生物質などの薬剤耐性に関与する遺伝子を示し、導入される遺伝子が細胞において発現したか否かを選抜するマーカーとして利用される。
 また、上記「レポーター遺伝子」とは、遺伝子発現の指標になる遺伝子群のことを示し、通常、発光反応や呈色反応を触媒する酵素の構造遺伝子が利用されることが多く、1)遺伝的背景がないもの、2)遺伝子発現を定量的に行える高感度の方法があるもの、3)形質転換細胞への影響が少ないもの、4)発現部位の局在性が示されるものなどが好ましく用いられる(植物細胞工学、第2巻、第721頁、1990)。また、上記の「薬剤耐性遺伝子」なども同じ目的で使用されるが、「レポーター遺伝子」は、単に導入される遺伝子が細胞において発現したかどうかだけではなく、どの組織でいつ発現したかを調べることができ、しかも定量的に発現量を正確に調べることができるものである。
 さらに、ターゲティングベクターを、例えば、相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られたES細胞についてPrRP遺伝子上あるいはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいはターゲティングベクター上のDNA配列とターゲティングベクター作製に使用したPrRP遺伝子以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたPCR法により解析し、本発明のノックアウトES細胞を選別することにより得ることができる。
 上記のターゲティングベクターとしては、例えば、pGT−N28(NEB社)、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13など)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTB5,pC194など)、酵母由来のプラスミド(例、pSH19,pSH15など)、λファージなどのバクテリオファージ、モロニー白血病ウイルスなどのレトロウイルス、ワクシニアウイルスまたはアデノウイルスベクター、バキュロウイルス、ウシ乳頭腫ウイルス、ヘルペスウイルス群からのウイルス、またはエプスタイン・バー・ウイルスなどの動物ウイルスなどが用いられる。
 また、相同組換え法等によりPrRP遺伝子を不活性化させる元のES細胞としては、例えば、前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、また公知のEvansとKaufmanの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスのES細胞の場合、現在、一般的には129系統のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で例えば、C57BL/6系統マウスやDBA/2系統との交雑種BDF1系統マウス(C57BL/6系統とDBA/2系統とのF1)を用いて樹立したものなども良好に用いうる。BDF1系統マウスは、採卵数が多く、かつ、卵が操作上、取り扱いやすいという利点に加えて、C57BL/6系統マウスを遺伝的背景に持つので、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、C57BL/6系統マウスと戻し交配することでその遺伝的背景をC57BL/6系統に戻すことが可能である点で有利に用い得る。
 また、ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚(受精後2.5日目頃の8細胞期胚が好ましい)を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚を取得することができる。
 また第二次セレクションは、G−バンディング法などを用いた核型分析等により行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましいが、樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細胞(例えばマウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再びクローニングすることが望ましい。
 このようにして得られたES細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個体発生できる再生能を失いやすいので、注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上でLIF(1〜10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気または5%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)で約37℃で培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常0.001〜0.5%トリプシン/0.1〜5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代は、通常1〜3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合は、その培養細胞は放棄することが望まれる。
 ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり〔M. J. Evans及びM. H. Kaufman, ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年;G. R. Martin プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)第78巻、7634頁、1981年;T. C. Doetschman ら、ジャーナル・オブ・エンブリオロジー・アンド・エクスペリメンタル・モルフォロジー、第87巻、27頁、1985年〕、本発明のES細胞を分化させて得られるPrRP遺伝子発現不全細胞は、in vitroにおけるPrRPの細胞生物学的検討において有用である。
 また、ES細胞を保存する場合には、適当な凍結用培地(例えば、10%DMSO、10%牛胎児血清を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)などを用いて、約−80℃以下で凍結保存する。
 本発明のPrRP遺伝子発現不全非ヒト動物(以下、遺伝子発現不全非ヒト動物と称す場合がある)とは、例えば、前記のPrRP遺伝子が不活性化された哺乳動物ES細胞由来の細胞を用いて遺伝子工学的に作出されたものであり、例えば、生殖細胞および体細胞に胚形成初期に不活性化PrRP遺伝子配列を導入された非ヒト動物である。
 該非ヒト動物としては、前記と同様のものが用いられる。
 PrRP遺伝子をノックアウトさせるには、前記のターゲティングベクターを非ヒト動物ES細胞または非ヒト動物卵細胞に公知の方法(例えば、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、凝集法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法など)によって導入し(好ましい導入法としては、ES細胞に導入する場合にはエレクトロポレーション法、卵細胞に導入する場合にはマイクロインジェクション法などがあげられる)、ターゲティングベクターの不活性化されたPrRP遺伝子配列を相同組換えにより、非ヒト動物ES細胞または非ヒト動物卵細胞の染色体上のPrRP遺伝子と入れ換えることにより行うことができる。
 PrRP遺伝子がノックアウトされた細胞は、PrRP遺伝子上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲティングベクター上のDNA配列と、ターゲティングベクターに使用したマウス由来のPrRP遺伝子以外の近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法による解析で判定することができる。
 非ヒト動物ES細胞を用いた場合は、相同組換えにより、PrRP遺伝子が不活性化された細胞株をクローニングし、その細胞を胚形成の初期の適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト動物胚または胚盤胞に注入し(注入法)、またはPrRP遺伝子が不活性化されたES細胞塊を2個の8細胞期胚ではさみ込む(集合キメラ法)ことにより作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト動物の子宮に移植する。
 作出された動物は正常なPrRP遺伝子座をもつ細胞と人為的に変異したPrRP遺伝子座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。
 該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異したPrRP遺伝子座をもつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を加えたPrRP遺伝子座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別することにより得られる。このようにして得られた個体は、通常、PrRPヘテロ発現不全個体であり、PrRPヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔からPrRPホモ発現不全個体を得ることができる。
 卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞核内にマイクロインジェクション法で遺伝子溶液を注入することによりターゲティングベクターを染色体内に導入したトランスジェニック非ヒト動物を得ることができ、これらのトランスジェニック非ヒト動物を比較することにより、相同組換えによりPrRP遺伝子座に変異のあるものを選択することにより得られる。
 PrRP遺伝子発現不全非ヒト動物は、該動物のmRNA量を公知の方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と区別することが可能である。
 このようにしてPrRP遺伝子がノックアウトされている個体は、交配により得られた動物個体も該遺伝子がノックアウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。
 さらに、生殖系列の取得および保持についても常法に従って行うことができる。即ち、該不活化遺伝子配列の保有する雌雄の動物を交配することにより、該不活化遺伝子配列を相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得することができる。得られたホモザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物の雌雄を交配することにより、該不活化遺伝子配列を有するホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代することができる。このようにして得られた該不活化遺伝子配列を有する動物の子孫も本発明のPrRP遺伝子発現不全非ヒト動物に含まれる。
 本発明のPrRP遺伝子発現不全非ヒト動物(特に、PrRPホモ欠損非ヒト動物、好ましくはPrRPホモ欠損マウス)は、
(1)野生型動物に比べて、体重、体脂肪、脂肪組織重量(例、腎周囲白色脂肪組織、後腹膜白色脂肪組織、腸間膜白色脂肪組織、生殖器周囲白色脂肪組織、鼠蹊部皮下白色脂肪組織、肩甲骨間褐色脂肪組織)などが増加している、
(2)肥満症を発症している、
などの表現型を示す。
 野生型動物に比べて、体重、体脂肪、脂肪組織重量が増加しているとは、例えば、野生型動物に比べて、体重、体脂肪、脂肪組織重量が約5%以上、好ましくは約10%以上、さらに好ましくは約20%以上、より好ましくは約30%以上、特に好ましくは約50%以上増加していることをいう。
 このようにPrRP遺伝子が不活性化された哺乳動物ES細胞は、PrRP遺伝子発現不全非ヒト動物を作出する上で、非常に有用である。また、PrRP遺伝子発現不全非ヒト動物、該動物に対する薬剤誘発あるいはストレス負荷によって生じる病態モデル動物、PrRP遺伝子発現不全非ヒト動物と他の病態モデル動物との交配によって生じるより良い病態モデル動物、PrRP遺伝子発現不全非ヒト動物と他の病態モデル動物との交配によって生じる病態モデル動物に対する薬剤誘発あるいはストレス負荷によって生じる病態モデル動物およびPrRP遺伝子発現不全非ヒト動物と他の病態モデル動物を用いた骨髄移植動物、もしくはそれらの組織またはそれらに由来する細胞は、PrRPの欠損に起因する疾病、例えば、PrRPにより誘導され得る種々の生物活性の欠失に基づく、PrRPの生物活性の不活性化に起因する疾病(例えば、肥満症など)のより良いモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及び治療法の検討に有用である。ここで、他の病態モデル動物としては、例えば、血液細胞側のみの遺伝子発現の欠損あるいは上昇に限局させた骨髄移植を用いたモデルマウス(Linton, M. F., et al., Science 267: 1034-1037 (1995))、高脂血症もしくは動脈硬化症モデルとしてWHHLウサギ(低比重リポ蛋白レセプター(LDLR)に変異を有する;Watanabe Y.、アテロースクレローシス(Atherosclerosis)、第36巻、第261頁、1980年)、SHLM(apoE欠損変異を有する自然発症マウス;Matsushima Y.ら、マンマリアン・ゲノム(Mamm. Genome)、第10巻、第352頁、1999年)、LDLRノックアウトマウス(Ishibashi S.ら、ジャーナル・オヴ・クリニカル・インヴェスティゲーション(J. Clin. Invest.)、第92巻、第883頁、1993年)、apoEノックアウトマウス(Piedrahita J.A.ら、プロシーディングズ・オヴ・ナショナル・アカデミー・オヴ・サイエンシーズ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)、第89巻、第4471頁、1992年)、ヒトapoB導入マウス(Callow M.J.ら、プロシーディングズ・オヴ・ナショナル・アカデミー・オヴ・サイエンシーズ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)、第91巻、第2130頁、1994年)等が、虚血性心疾患モデルとしてCD55 CD59ダブルトランスジェニックマウス(Cowan P.J.ら、Xenotransplantation、第5巻、第184-90頁、1998年)等が、皮膚炎モデルとしてinterleukin 1トランスジェニックマウス(Groves R.W. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第92巻、11874頁、1995年)等が、免疫不全モデルとしてCD19ノックアウトマウス(Spielman J.ら、Immunity、第3巻、39頁、1995年)等が、低血糖モデルとしてSPC2ノックアウトマウス(Furuta M.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第94巻、6646頁、1997年)等が、脂肪肝モデルとしてob/obマウス(Herberg L.及びColeman D.L.、メタボリズム(Metabolism)、第26巻、第59頁、1977年)、KKマウス(Nakamura M.及びYamada K.、ダイアベトロジア(Diabetologia)、第3巻、第212頁、1967頁)、FLSマウス(Soga M.ら、ラボラトリー・オヴ・アニマル・サイエンス(Lab. Anim. Sci.)、第49巻、第269頁、1999年)、糖尿病モデルとしてNODマウス(Makino S.ら、エクスペリメンタル・アニマル(Exp. Anim.)、第29巻、第1頁、1980年)、BBラット(Crisa L.ら、ダイアビーティス・メタボリズム・レヴュー(Diabetes Metab. Rev.)、第8巻、第4頁、1992年)、ob/obマウス、db/dbマウス(Hummel L.ら、サイエンス(Science)、第153巻、第1127頁、1966年)、KKマウス、GKラット(Goto Y.ら、トウホク・ジャーナル・オヴ・エクスペリメンタル・メディシン(Tohoku J. Exp. Med.)、第119巻、第85頁、1976年)、Zucker fattyラット(Zucker L.M.ら、アニュアル・オヴ・ニューヨーク・アカデミー・オヴ・サイエンス(Ann. NY Acad. Sci.)、第131巻、第447頁、1965年)、OLETFラット(Kawano K.ら、ダイアビーティス(Diabetes)、第41巻、第1422頁、1992年)等が、肥満モデルとしてob/obマウス、db/dbマウス、KKマウス、Zucker fattyラット、OLETFラット等が、アルツハイマー病モデルとして変異アミロイド前駆体蛋白質遺伝子導入マウス等が、貧血性低酸素症モデルとしてbeta SAD (beta S-Antilles-D Punjab)トランスジェニックマウス(Trudel M.ら、EMBO J、第10巻、3157頁、1991年)等が、性腺障害モデルとしてSteroidogenic factor 1ノックアウトマウス(Zhao L.ら、Development、第128巻、147頁、2001年)等が、肝臓癌モデルとしてp53ノックアウトマウス(Kemp C.J. Molecular Carcinogenesis, 第12巻、132頁、1995年)等が、乳癌モデルとしてc-neuトランスジェニックマウス(Rao G.N.ら、Breast Cancer Res Treat, 第48巻、265頁、1998年)等が、子宮内膜炎モデルとしてperforin Fas-ligandダブルノックアウトマウス(Spielman J.ら、J Immunol. , 第161巻、7063頁、1998年)等が知られている。
 骨髄移植マウスは遺伝子機能の変化が限局されることで、より適した病態モデル動物となる可能性を秘めている。例えば、上記されたPrRP遺伝子発現不全非ヒト動物から得られた病態モデル動物をドナー動物として、その骨髄を採取し、あらかじめ放射線照射で骨髄を破壊した他のレシピエント動物に移植したマウス、あるいは、他の病態モデル動物をドナー動物として、その骨髄を採取し、あらかじめ放射線照射で骨髄を破壊したPrRP遺伝子発現不全非ヒト動物から得られた病態モデル動物をレシピエント動物として移植した骨髄移植マウスなども含まれる。
 このように、本発明のPrRP遺伝子発現不全非ヒト動物、該動物に対する薬剤誘発あるいはストレス負荷によって生じる病態モデル動物、PrRP遺伝子発現不全非ヒト動物と他の病態モデル動物との交配によって生じる病態モデル動物、PrRP遺伝子発現不全非ヒト動物と他の病態モデル動物との交配によって生じる病態モデル動物に対する薬剤誘発あるいはストレス負荷によって生じる病態モデル動物、PrRP遺伝子発現不全非ヒト動物から得られた病態モデル動物と他の病態モデル動物を用いて骨髄移植して得られた病態モデル動物、もしくはそれらの組織またはそれらに由来する細胞を、該疾病の予防・治療・改善薬のスクリーニングに用いることができる。また、上記組織やそれに由来する細胞の応用例としては、肝臓や腎臓などのホモジネートを用いて特定の活性を測定する、あるいは、腹腔マクロファージを用いて特定産物の活性や産生量を測定することでスクリーニングに用いることができる。
[本発明のスクリーニング方法A]
 本発明は、本発明のPrRP遺伝子発現不全非ヒト動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞を用いることを特徴とする肥満症の予防・治療・改善薬のスクリーニング方法を提供する。
 本発明のスクリーニング方法において用いられるPrRP遺伝子発現不全非ヒト動物、該動物の薬剤誘発あるいはストレス負荷によって生じる病態モデル動物、PrRP遺伝子発現不全非ヒト動物と他の病態モデル動物との交配によって生じる病態モデル動物、PrRP遺伝子発現不全非ヒト動物と他の病態モデル動物との交配によって生じる病態モデル動物に対する薬剤誘発あるいはストレス負荷によって生じる病態モデル動物、PrRP遺伝子発現不全非ヒト動物から得られた病態モデル動物と他の病態モデル動物を用いて骨髄移植して得られた病態モデル動物、もしくはそれらの組織またはそれらに由来する細胞としては、前記と同様のものが挙げられる。
 試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
 試験化合物は塩を形成していてもよく、試験化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸など)や塩基(例、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
 具体的には、本発明のPrRP遺伝子発現不全非ヒト動物、該動物の薬剤誘発あるいはストレス負荷によって生じる病態モデル動物、PrRP遺伝子発現不全非ヒト動物と他の病態モデル動物との交配によって生じる病態モデル動物、PrRP遺伝子発現不全非ヒト動物と他の病態モデル動物との交配によって生じる病態モデル動物に対する薬剤誘発あるいはストレス負荷によって生じる病態モデル動物およびPrRP遺伝子発現不全非ヒト動物から得られた病態モデル動物と他の病態モデル動物を用いて骨髄移植して得られた病態モデル動物(以下、PrRP遺伝子発現不全非ヒト動物等と称する場合がある)、もしくはそれらの組織またはそれらに由来する細胞を、試験化合物で処理し、無処理の対照動物、もしくはそれらの組織またはそれらに由来する細胞と比較し、該動物の体重の変化、体脂肪の変化、脂肪組織重量、血糖値の変化、各器官や臓器の重量変化などを指標として試験化合物の肥満症の予防・治療・改善効果を試験することができる。
 試験動物(PrRP遺伝子発現不全非ヒト動物等)を試験化合物で処理する方法としては、例えば、経口投与、静脈注射などが用いられ、試験動物の症状、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。また、試験化合物の投与量は、投与方法、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。
 例えば、肥満症の予防・治療・改善薬をスクリーニングする場合、本発明のPrRP遺伝子発現不全非ヒト動物等に高脂肪負荷処置を行い、高脂肪負荷処置前または処置後に試験化合物を投与し、該動物の血中の中性脂肪(トリグリセライド)値、血中コレステロール値および体重変化などを経時的に測定することによりスクリーニングすることができる。また、本発明のPrRP遺伝子発現不全非ヒト動物等にSTZあるいはアロキサンなどの薬剤投与を行い、糖負荷処置前または処置後に試験化合物を投与し、該動物の血糖値および体重変化などを経時的に測定することによりスクリーニングすることができる。
 例えば、該スクリーニング方法において、試験動物に試験化合物を投与した場合、該試験動物の体重、体脂肪、脂肪組織重量が野生型動物レベルにまで減少した場合、例えば約5%以上、好ましくは約10%以上、さらに好ましくは約20%以上、より好ましくは約30%以上、特に好ましくは約50%以上減少した場合、該試験化合物を肥満症に対して治療・予防効果を有する物質として選択することができる。
 本発明のスクリーニング方法を用いて得られる予防・治療・改善薬は、上記した試験化合物から選ばれた化合物またはその塩であり、肥満症の予防・治療・改善効果を有するので、肥満症に対する安全で低毒性な治療・予防薬などの医薬として有用である。また、該化合物またはその塩から誘導される化合物またはその塩も同様に用いることができる。
 該スクリーニング方法で得られた化合物の塩としては、例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などの薬学的に許容し得る塩などがあげられる。
 無機塩基との塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、並びにアルミニウム塩、アンモニウム塩などがあげられる。
 有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩あげられる。
 無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などとの塩があげられる。
 有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸などとの塩があげられる。
 塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルチニンなどとの塩があげられ、酸性アミノ酸との好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩があげられる。
 本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩を上述の治療・予防薬として使用する場合、常套手段に従って実施することができ、例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該化合物またはその塩を薬学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
 錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントゴム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。
 注射用の水溶液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノールなど)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80TM、HCO−50など)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
 このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して投与することができる。
 該化合物またはその塩の投与量は、症状などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に成人(体重60kgとして)の肥満症患者においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常成人(体重60kgとして)の肥満症患者においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
[本発明のスクリーニング方法B]
 本発明は、本発明のPrRP遺伝子発現不全非ヒト動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明の遺伝子に対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
 上記スクリーニング方法において、本発明のPrRP遺伝子発現不全非ヒト動物としては、前記した本発明のPrRP遺伝子発現不全非ヒト動物の中でも、PrRP遺伝子がレポーター遺伝子を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子がPrRP遺伝子に対するプロモーターの制御下で発現しうるものが用いられる。
 試験化合物としては、前記と同様のものがあげられる。
 レポーター遺伝子としては、前記と同様のものが用いられ、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)、可溶性アルカリフォスファターゼ遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子などが好適である。
 PrRP遺伝子をレポーター遺伝子で置換された本発明のPrRP遺伝子発現不全非ヒト動物では、レポーター遺伝子がPrRP遺伝子に対するプロモーターの支配下に存在するので、レポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレースすることにより、プロモーターの活性を検出することができる。
 例えば、PrRP遺伝子領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)で置換している場合、本来、PrRP遺伝子の発現する組織で、PrRPの代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。従って、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用いて染色することにより、簡便にPrRPの動物生体内における発現状態を観察することができる。具体的には、PrRP遺伝子欠損マウスまたはその組織切片をグルタルアルデヒドなどで固定し、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室温または37℃付近で、約30分ないし1時間反応させた後、組織標本を1mM EDTA/PBS溶液で洗浄することによって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色を観察すればよい。また、常法に従い、lacZをコードするmRNAを検出してもよい。
 例えば、該スクリーニング方法において、試験動物に試験化合物を投与した場合、レポータータンパク質の発現が約5%以上、好ましくは約10%以上、さらに好ましくは約20%以上、より好ましくは約30%以上、特に好ましくは約50%以上増加した場合、該試験化合物をPrRP遺伝子に対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩として選択でき、試験動物に試験化合物を投与した場合、レポータータンパク質の発現が約5%以上、好ましくは約10%以上、さらに好ましくは約20%以上、より好ましくは約30%以上、特に好ましくは約50%以上減少した場合、該試験化合物をPrRP遺伝子に対するプロモーター活性を阻害する化合物またはその塩として選択できる。
 上記スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれた物質であり、PrRP遺伝子に対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩である。
 該スクリーニング方法で得られた化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸など)や塩基(例、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
 PrRP遺伝子に対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩は、PrRPの発現を促進し、PrRPの機能を促進することができるので、例えば、肥満症の予防・治療・改善剤などの医薬として使用することができる。
 一方、PrRP遺伝子に対するプロモーター活性を阻害する化合物またはその塩は、PrRPの発現を阻害し、PrRPの機能を阻害することができるので、例えば、拒食症の予防・治療・改善剤などの医薬として使用することができる。
 さらに、上記スクリーニングで得られた化合物またはその塩から誘導される化合物またはその塩も同様に用いることができる。
 該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記したスクリーニング方法Aで得られた化合物またはその塩を含有する医薬と同様にして製造することができる。
 このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
 該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、肥満症の治療目的でPrRP遺伝子に対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩を経口投与する場合、一般的に成人患者(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物またはその塩を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物またはその塩の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、肥満症の治療目的でPrRP遺伝子に対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩を注射剤の形で通常成人患者(体重60kgとして)に投与する場合、一日につき該物質を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
 このように、本発明のPrRP遺伝子発現不全非ヒト動物は、PrRP遺伝子に対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩をスクリーニングする上で極めて有用であり、PrRP遺伝子発現不全に起因する各種疾患の原因究明または予防・治療・改善薬の開発に大きく貢献することができる。
 また、PrRP遺伝子のプロモーター領域を含有するDNAを使って、その下流に種々のタンパクをコードする遺伝子を連結し、これを動物の卵細胞に注入していわゆるトランスジェニック動物(遺伝子移入動物)を作成すれば、特異的にそのペプチドを合成させ、その生体での作用を検討することも可能となる。さらに上記プロモーター部分に適当なレポータ遺伝子を結合させ、これが発現するような細胞株を樹立すれば、PrRPそのものの体内での産生能力を特異的に促進もしくは抑制する作用を持つ低分子化合物の探索系として使用できる。
 本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
 DNA     :デオキシリボ核酸
 cDNA    :相補的デオキシリボ核酸
  A      :アデニン
  T      :チミン
  G      :グアニン
  C      :シトシン
I :イノシン
R :アデニン(A)またはグアニン(G)
Y :チミン(T)またはシトシン(C)
M :アデニン(A)またはシトシン(C)
K :グアニン(G)またはチミン(T)
S :グアニン(G)またはシトシン(C)
W :アデニン(A)またはチミン(T)
B :グアニン(G)、グアニン(G)またはチミン(T)
D :アデニン(A)、グアニン(G)またはチミン(T)
V :アデニン(A)、グアニン(G)またはシトシン(C)
N :アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)
          もしくはチミン(T)または不明もしくは他の塩基
 RNA     :リボ核酸
 mRNA    :メッセンジャーリボ核酸
 dATP    :デオキシアデノシン三リン酸
 dTTP    :デオキシチミジン三リン酸
 dGTP    :デオキシグアノシン三リン酸
 dCTP    :デオキシシチジン三リン酸
 ATP     :アデノシン三リン酸
 EDTA    :エチレンジアミン四酢酸
 SDS     :ドデシル硫酸ナトリウム
 BHA     :ベンズヒドリルアミン
 pMBHA   :p−メチルベンズヒドリルアミン
 Tos     :p−トルエンスルフォニル
 Bzl     :ベンジル
 Bom     :ベンジルオキシメチル
 Boc     :t−ブチルオキシカルボニル
 DCM     :ジクロロメタン
 HOBt    :1−ヒドロキシベンズトリアゾール
 DCC     :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
 TFA     :トリフルオロ酢酸
 DIEA    :ジイソプロピルエチルアミン
 Gly :グリシン
 AlaまたはA :アラニン
 ValまたはV :バリン
 LeuまたはL :ロイシン
 IleまたはI :イソロイシン
 SerまたはS :セリン
 ThrまたはT :スレオニン
 CysまたはC :システイン
 MetまたはM :メチオニン
 GluまたはE :グルタミン酸
 AspまたはD :アスパラギン酸
 LysまたはK :リジン
 ArgまたはR :アルギニン
 HisまたはH :ヒスチジン
 PheまたはF :フェニルアラニン
 TyrまたはY :チロシン
 TrpまたはW :トリプトファン
 ProまたはP :プロリン
 AsnまたはN :アスパラギン
 GlnまたはQ :グルタミン
 pGlu    :ピログルタミン酸
 Fam     :6−カルボキシ−フルオレセイン
 Tamra   :6−カルボキシ−テトラメチル−ローダミン
 本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
 マウス由来PrRPのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:2〕
 配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有するマウス由来PrRPをコードするゲノムDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:3〕
 ラット由来PrRPのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:4〕
 配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を有するラット由来PrRPをコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:5〕
 ウシ由来PrRPのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:6〕
 配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を有するウシ由来PrRPをコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:7〕
 実施例1で使用したプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:8〕
 実施例1で使用したプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:9〕
 実施例6で使用したプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:10〕
 実施例6で使用したプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:11〕
 実施例6で使用したプライマーの塩基配列を示す。
 後述の実施例1で得られた形質転換体Escherichia coli JM109/pmGB3は、平成9年3月5日から日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(旧:通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH))に寄託番号FERM BP−5852として、財団法人発酵研究所(IFO)に平成9年2月19日から寄託番号IFO 16059として寄託されている。
 後述の実施例2で得られた形質転換体Escherichia coli JM109/pmGFE1は、平成10年3月18日から日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(旧:通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH))に寄託番号FERM BP−6298として寄託されている。
 以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。なお、大腸菌を用いての遺伝子操作法は、モレキュラー・クローニング(Molecular cloning)に記載されている方法に従った。
 マウス・ゲノムDNAからのProlactin releasing peptide(PrRP)コード領域を含むDNAの取得及び配列決定
 以下の2種のプライマーを合成した。
rFBG: 5’-AGATTGGCATCATCCAGGAAGACGGAGCAT−3’(配列番号:7)
rRSA: 5’-GTCGACTCAGCAGCACTGTCTTCTCGAGCTG−3’(配列番号:8)
 この2種のプライマーを用いてマウス・ゲノムDNA(Mouse BALB/c genomic DNA)0.5ngを鋳型としてPCR法による増幅を行った。
 反応液の組成は、合成DNAプライマー各200nM、鋳型DNA0.5ng、0.25mMdNTPs ExTaq polymerase 0.5μlおよび酵素に付属のバッファーで、総反応溶液は50μlとした。増幅のためのサイクルはサーマルサイクラー(パーキンエルマー社)を用い、95℃・30秒、67℃・60秒を30cycle繰り返した。増幅産物の確認は1.2%アガロースゲル電気泳動およびエキジウムブロマイド染色によって行い、生じた約1kbのバンドを回収後、TAクローニングキット(invitrogen社)を用いてサブクローニングした。そのライゲーションミクスチャーをE.coli.JM109に形質転換し、挿入断片をもつクローンをアンピシリンおよびX−galを含むLB寒天培地中で選択し、白色を呈するクローンを分離し、形質転換体Escherichia coli JM109/pmGB3を得た。このクローンをアンピシリンを含むLB培地で一晩培養し、自動プラスミド抽出装置を用いてプラスミドDNAを調製した。調製したDNAの一部を用いてABI Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(ABI社)を用いて行い、蛍光式自動シーケンサーを用いて解読し、得られた塩基配列の情報はDNASIS(日立システムエンジニアリング社)を用いて行った。
 決定した塩基配列を解析した結果、Escherichia coli JM109/pmGB3の保持するプラスミドpmGB3に挿入されたDNA断片はマウス型PrRPをコードすることが分かった。
 マウス・ゲノムDNAからのPrRP全翻沢領域のDNAの取得及び配列決定
 実施例1で得られたプラスミドpmGB3の挿入されたDNA断片を調整し、この断片をプローブとしてマウスES細胞(RW−4(129/SvJ))のBACライブラリーよりhybridization screening(catalogue BAC 4921)を行った。得られたBACクローンより、目的とするリガンドペプチドコード領域を含むDNA断片をpUC18 VectorのEcoRI 部位にサブクローニングし、Escherichia coli JM109/pmGFE1を得て、その配列を決定した(配列番号:2)。
 ノックアウトマウス作製のためのターゲティングベクターの構築
 ターゲティングベクターの構築には、実施例2で得られたpmGFE1とpGT−N28(NEB社)を用いて行った。pGT−N28のBamHI部位とHindIII部位の間にpmGFE1のBamHI部位とHindIII部位のVspI部位を含む断片を導入し(マウスPrRP遺伝子の5’上流域)、次に、XhoI部位とNotI部位の間にpmGFE1のHpaI部位とSaII部位の断片を(マウスPrRP遺伝子の3’下流域)それぞれlinker ligationによりXhoI、NotIに改変した後導入することによりpmGFEN28を得た。
 ES細胞の相同組換え体の取得
 ES細胞の相同組換え体の取得に関しては Genome Systems 社より購入したES細胞(RW−4)とその添付マニュアルにしたがって行った。より具体的には実施例3で得られたpmGFEN28をVspI及びNotIで消化して生ずる約13KbpのDNA断片をアガロースゲル電気泳動で回収した後、RW−4細胞にバイオラッド社のジーンパルサーを用いてエレクトロポレーション(electroporation)を行い組換え体を得た。つまりサザン解析で5’側プローブにて12Kbpと5.5Kbp、3’側プローブにて7.5Kbp、5.5Kbpのバンドが検出できる。その結果クローン、56FF、81FFのクローンが求める相同組換え体と考えられた。
 ノックアウトマウスの作製
 相同組み換え細胞株No.56FFをC57BL/6N Crj系統(日本チャールス・リバー社製)マウス胚盤胞へのインジェクションを常法により行った。インジェクションされた胚盤胞は別途精管結紮マウスと交配することによって得られた偽妊娠マウス卵管に移植することによって妊娠させ、No.56FF株由来のキメラマウスが産仔として生まれた。雄キメラマウスはC57BL/6N Crj系統雌マウスと交配し、産仔での生殖系列移行およびヘテロマウスの取得を行った。次に、サザンハイブリダイゼーションを行って、遺伝子欠損の確認を行った。さらに確認されたヘテロマウスを交配させることによりホモ欠損マウスの取得を確認した。
 RT−PCRによるPrRPmRNAのKOマウスにおける組織分布の検討
 鋳型となるcDNAには、マウス視床下部、延髄由来のpolyA+RNA(クロンテック社)から以下の方法で合成したものを使用した。RNA1μgからランダムプライマー、逆転写酵素としてSuperScriptII逆転写酵素(GIBCO BRL社)を用い、添付のマニュアルに従って42℃で反応を行い、反応終了後にエタノール沈殿して100μlに溶解した。RT−PCRはSequence Detection System Prism 7700(PE Biosystems社)を用い、増幅と検出のためのプライマーとして5’−GCTAGGCTTAGTCCTCCCAGGA−3’(配列番号:9), 5’−ATCCCACGACCCGTGTAGCA−3’(配列番号:10) およびTaqMan probeとして5’−(Fam)−CATGGAGACCCGCACCCCTGACATCAA−(Tamra)−3’(配列番号:11)を使用した。RT−PCR反応液はTaqMan Universal PCR Master Mix(PE Biosystems社)12.5μlに、それぞれ100μMのプライマー溶液を0.05μl、5μMのTaqMan probeを0.5μl、および上記で調製したcDNA溶液を0.5μl加え、蒸留水で総反応液量を25μlとした。PCR反応は50℃・2分、95℃・10分の後、95℃・15秒、60℃・1分のサイクルを40回繰り返した。得られたマウス視床下部、延髄におけるPrRPのmRNA発現量はpolyA RNA1ngあたりのコピー数として算出した(図1)。
 視床下部および延髄におけるPrRPの発現量
 PrRPノックアウトマウスおよび野生型マウスを頚静脈より放血後、視床下部および延髄を摘出した。これら臓器を5mlの蒸留水中にて10分間煮沸後氷中で冷却し、酢酸およびペプスタチン(ペプチド研究所)を添加して最終濃度をそれぞれ1Mおよび10μg/mlとした。ホモジナイザーにて視床下部および延髄を破砕後、溶液中のタンパク濃度をProtein assay kit(Bio Rad社)にて測定した。視床下部および延髄破砕溶液は、12,000rpmで30分間遠心し、その上清を、4%酢酸含有86%エタノール4ml、メタノール4ml、蒸留水4ml、4%酢酸4mlを順次ながして活性化したSep−pack Plus C18カートリッジ(Waters社製)に添加した。添加後、10mlの蒸留水で洗浄後、4%酢酸含有86%エタノール4mlで溶出し、37℃の窒素ガス気流下で濃縮する。濃縮画分を0.25mlのバファーC〔1% BSA、0.4M NaCl、0.05% 2mM EDTA・Na〔Ethylenediamine−N,N,N’,N’−tetraacetic acid, dosodium salt, dihydrate,DOJINDO社〕を含む0.02Mリン酸緩衝液、pH7.0〕中で再構成し、サンドイッチ−EIA法により定量した。サンドイッチ−EIAは、PrRPを認識するモノクローナル抗体P2L−1Caを10μg/ml含む0.1M炭酸緩衝液(pH9.6)溶液を96ウェルマイクロプレートに100μlずつ分注し、4℃で24時間放置後、ウェルの余剰の結合部位をPBSで4倍希釈したブロックエース(大日本製薬)400μlを加え不活化したプレートに、バッファーCで希釈したPrRPおよび臓器抽出物100μlを加え、4℃で24時間反応させた。PBSで洗浄したのち、HRP標識化P2L−1Ta(バッファーCで20,000倍希釈)100μlを加え、4℃で24時間反応させた。PBSで洗浄したのち、固相上の酵素活性をTMBマイクロウェルパーオキシダーゼ基質システム(KIRKEGAARD&PERRY LAB,INC、フナコシ薬品取り扱い)100μlを加え室温で10分間反応させることにより測定した。反応を1Mリン酸100μlを加え停止させたのち、450nmの吸収をプレートリーダー(BIOCHROMATIC、大日本製薬社製)で測定した。
 野生型マウスおよびPrRPノックアウトマウス各8個体の視床下部および延髄のPrRP含量を図2および図3に示す。視床下部のPrRP含量(図2)は、雄のKO群;0.65±0.22fmol/mg protein、wild群;31.4±3.34fmol/mg protein、雌のwild群;KO群;0.61±0.17fmol/mg protein、34.94±3.45fmol/mg protein、延髄のPrRP含量(図3)は、雄のKO群;2.92±0.22fmol/mg protein、wild群;15.62±1.45fmol/mg protein、雌のKO群;2.50±0.38fmol/mg protein、wild群;19,01±2.39fmol/mg proteinであり、雌雄とも視床下部および延髄においてKO群でPrRP含量の著しい低下が認められた。
 PrRPノックアウトマウスの体重変化の比較検討における実験方法
 C57BL/6N CrjとJcl:ICR(日本クレア社製)の2系統にそれぞれコンジェニック(8世代の戻し交配のあと、PrRPヘテロ欠損どうしの交配で得られた第2世代)されたPrRPホモ欠損マウスおよび野生型マウスを用いた。動物は明期が7:00〜19:00、温度が23±2℃、湿度が55±10%に自動調節された動物室で、床敷材のペパークリーン(日本エスエルシ−社製)を入れたTPXケージ(130×150×210mm)に個別収容し、飼料と飲み水を自由摂取させた。なお、ケージは原則として週に一度交換した。
 C57BL/6N Crjにコンジェニック化されたPrRPホモ欠損マウスと野生型マウス(雄性,6週齢)を用いた。ホモ欠損マウスおよび野生型マウスの体重はほぼ均一になるように普通食(固形CE−2:3.42kcal/g,日本クレア製)給餌と高脂肪食(high fat:4.65kcal/g−無塩バター:19%,コーンオイル:2%,カゼイン:18%,コーンスターチ:50.9%,その他として無機質,ビタミン,セルロースなど10.1%)給餌に群分けして13週齢まで自由摂取させ、餌の違いによる体重の変化を比較検討した。普通食での結果を図4に、高脂肪食での結果を図5に示す。
 Jcl:ICRにコンジェニック化されたPrRPホモ欠損マウスおよび野生型マウスは雄性の4週齢を用いた。ホモ欠損マウスおよび野生型マウスの離乳集団より無作為に各10例を選出し、普通食(固形CE−2,日本クレア製)を自由摂取させ、18週齢までの体重の変化を比較検討した(図6)。
 通常食あるいは高脂肪食を与えたC57BL/6N Crj系PrRPホモ欠損マウスの体重増加に伴う体脂肪の変化
 C57BL/6N Crjの系統にコンジェニック化(N8−F4)されたPrRPホモ欠損マウスおよび同野生型マウスを用いた。動物は6週齢から通常食(3.42kcal/g、日本クレアCE−2)または高脂肪食(4.65kcal/g、コーンオイル2%と無塩バター19%を含有)を自由摂取させ、15週齢時にDEXA(dual−energy X−ray absorptiometry)(Hologic QDR−4500A)により体脂肪量を測定した。
 次に体脂肪量測定1週間後の16週齢時に解剖を行い、各種白色脂肪組織(腎周囲、後腹膜、腸間膜、生殖器周囲、鼠蹊部皮下)および肩甲骨間褐色脂肪組織の重量測定を行った。各群の例数は8例とした。
 通常食給餌下における15週齢時の平均体重(mean±SE)は、野生型マウスの24.6±0.6gに比較してホモ欠損マウスは27.2±0.9gであり、軽度ながら有意(p<0.05)な増加が認められた。その時のDEXA法による平均体脂肪率(mean±SE)は野生型マウスの14.0±2.5%に対してホモ欠損マウスは19.5±1.7%と有意ではないが高値傾向を示した。
 一方、高脂肪食給餌下における平均体重は野生型マウスの29.8±1.0gに対してホモ欠損マウスは37.6±1.0gであり、また体脂肪率も野生型マウスの34.6±3.5%に比べホモ欠損マウスでは47.0±1.1%と、共に有意(P<0.01)な増加を示した。
 体脂肪量測定1週間後の16週齢時に解剖し、採取した各種脂肪組織重量の平均値(mean±SE)を図7に示した。
 通常食給餌下の解剖時の平均体重は野生型マウスの24.7±0.6gに対し、ホモ欠損マウスは28.3±1.0gであり、有意(p<0.01)に高かった。採取した腎周囲、後腹膜、腸間膜、生殖器周囲、そして鼠蹊部皮下の各白色脂肪組織は野生型マウスに比べホモ欠損マウスでは絶対値および相対値ともに有意(p<0.05〜0.01)に大きかった。褐色脂肪組織重量には野生型マウスとホモ欠損マウス間に差はなかった。
 一方、高脂肪食給餌下においても通常食給餌同様、野生型マウスに比べホモ欠損マウスは体重をはじめ脂肪組織重量において、絶対値ではすべてに有意(p<0.05〜0.01)な高値が認められた。相対値は腸間膜、生殖器周囲、鼠蹊部皮下の脂肪組織に有意(p<0.05〜0.01)な高値が認められ、腎周囲、後腹膜の脂肪組織では高値傾向にあった。
 C57BL/6N Crj系PrRPホモ欠損マウスでは、Jcl:ICR系にコンジェニック化された場合と同様、通常食給餌下においても体重の増加が認められたが、その程度は高脂肪食給餌によりさらに増大し、体脂肪の増加を伴っている事実が確認された。
マウス視床下部(Hypothalamus)および延髄(Medulla)におけるマウスPrRPの発現分布図を示す。横軸のKOはマウスPrRPノックアウトマウスを、Wildは野生型マウスを、Maleはオスを、Femaleはメスを示す。縦軸はコピー数を示す。 野生型マウスおよびPrRPノックアウトマウス各8個体の視床下部のPrRP含量を示す。homoはPrRPノックアウトマウスを、wildは野生型マウスを示す。縦軸のir−PrRP(fmol/mg protein)はPrRP含量を示す。maleはオスを、femaleはメスを示す。 野生型マウスおよびPrRPノックアウトマウス各8個体の骨髄のPrRP含量を示す。homoはPrRPノックアウトマウスを、wildは野生型マウスを示す。縦軸のir−PrRP(fmol/mg protein)はPrRP含量を示す。maleはオスを、femaleはメスを示す。 C57BL/6N Crj系統マウスにコンジェニック化されたPrRPホモ欠損マウスの普通食による成長曲線を示す。横軸のAge(weeks)は週齢を、縦軸のBody weight(g)は体重を示す。●は野生型マウスを、○はPrRPホモ欠損マウスを示す。*はp<0.05 vs 野生型マウス(Student’s t−test)を示す。 C57BL/6N Crj系統マウスにコンジェニック化されたPrRPホモ欠損マウスの高脂肪食による成長曲線を示す。横軸のAge(weeks)は週齢を、縦軸のBody weight(g)は体重を示す。●は野生型マウスを、○はPrRPホモ欠損マウスを示す。Mean±SE(n=8)。**はp<0.01 vs 野生型マウス(Student’s t−test)を示す。 Jcl:ICR系統マウスにコンジェニック化されたPrRPホモ欠損マウスの普通食による成長曲線を示す。横軸のAge(weeks)は週齢を、縦軸のBody weight(g)は体重を示す。●は野生型マウスを、○はPrRPホモ欠損マウスを示す。*はp<0.05 vs 野生型マウス(Student’s t−test)を示す。**はp<0.01 vs 野生型マウス(Student’s t−test)を示す。 通常食または高脂肪食を給餌したPrRPホモ欠損マウス(Homo)および野生型マウス(Wild)の各種脂肪組織重量を示す。BWは体重(Body Weight)を示す。Mean±SE(n=8)。*はp<0.05 vs 野生型マウス(Student’s t−test)を示す。**はp<0.01 vs 野生型マウス(Student’s t−test)を示す。

Claims (7)

  1. 肥満症を発症しているPrRP遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物。
  2. 野生型動物に比べて体重または体脂肪が増加しているPrRP遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物。
  3. 非ヒト哺乳動物がマウスである請求項1または2記載の動物。
  4. PrRP遺伝子が配列番号:2で表わされる塩基配列を含有する遺伝子である請求項3記載の動物。
  5. 請求項1または2記載の動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞を用いることを特徴とする肥満症の予防・治療・改善薬のスクリーニング方法。
  6. 請求項1または2記載の動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞に試験化合物を投与し、体重または体脂肪の変化を測定することを特徴とする請求項5記載のスクリーニング方法。
  7. 請求項1または2記載の動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞を含有することを特徴とする肥満症の予防・治療・改善薬のスクリーニング用キット。
JP2003317697A 2002-09-11 2003-09-10 PrRPノックアウト動物およびその用途 Withdrawn JP2004121243A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003317697A JP2004121243A (ja) 2002-09-11 2003-09-10 PrRPノックアウト動物およびその用途

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002265751 2002-09-11
JP2003317697A JP2004121243A (ja) 2002-09-11 2003-09-10 PrRPノックアウト動物およびその用途

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004121243A true JP2004121243A (ja) 2004-04-22

Family

ID=32301573

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003317697A Withdrawn JP2004121243A (ja) 2002-09-11 2003-09-10 PrRPノックアウト動物およびその用途

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004121243A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Kuang et al. Merosin-deficient congenital muscular dystrophy. Partial genetic correction in two mouse models.
CN111837036B (zh) 具有人或嵌合基因的基因修饰的非人动物
Pook et al. Rescue of the Friedreich's ataxia knockout mouse by human YAC transgenesis
WO2000075655A1 (fr) Procede de criblage avec cd100
JP2021169461A (ja) 寿命に関する動物モデル並びに寿命を延ばす及び腫瘍化を阻害する関連方法
WO2006004066A1 (ja) S1-5を含有するタンパク質製剤
Fujii et al. Rats deficient C-type natriuretic peptide suffer from impaired skeletal growth without early death
EP1980148B1 (en) Genetically modified animal and use thereof
JP2004121243A (ja) PrRPノックアウト動物およびその用途
JP5939487B2 (ja) Epo欠損GFP貧血マウス
JP4451158B2 (ja) 転写制御シスエレメント及びそれに特異的に結合する転写調節因子並びにそれらの用途
JP2000510001A (ja) 分断されたnpy y1受容体遺伝子を有するトランスジェニック動物
JP2004166596A (ja) Zaq遺伝子改変動物
WO2023063400A1 (ja) プロテアソーム機能減弱トランスジェニック非ヒト動物
EP2221065B1 (en) Therapeutic or prophylactic agent, detection method and detection agent for metabolic syndrome, and method for screening of candidate compound for therapeutic agent for metabolic syndrome
JP2004121241A (ja) ヒトslt遺伝子導入動物
EP1535512A1 (en) DISEASE MODEL ANIMAL CARRYING FOREIGN PPARa GENE TRANSFERRED THEREINTO AND USE THEREOF
US7556964B2 (en) Transgenic cell and gene recombinant animal having a mutant SDHC gene derived from mammals
JP2004041211A (ja) 異種PPARα遺伝子導入疾患モデル動物およびその用途
WO2004023870A1 (ja) ヒトslt遺伝子導入動物
JP2004154135A (ja) ノックアウト非ヒト動物
WO2002102998A1 (fr) Animal avec hypoexpression genetique
US20090276863A1 (en) Protein formulations comprising s1-5
JP2006230356A (ja) Troyシグナルが阻害されたトランスジェニック非ヒト動物
JP2004131471A (ja) Rfrpおよびot7t022の新規用途

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Application deemed to be withdrawn because no request for examination was validly filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20061205