JP2003293146A - めっき製品の製造方法 - Google Patents

めっき製品の製造方法

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JP2003293146A JP2002100380A JP2002100380A JP2003293146A JP 2003293146 A JP2003293146 A JP 2003293146A JP 2002100380 A JP2002100380 A JP 2002100380A JP 2002100380 A JP2002100380 A JP 2002100380A JP 2003293146 A JP2003293146 A JP 2003293146A
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恭孝 長谷川
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康彦 荻巣
Hiroshi Watarai
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 金属めっき層とトップコート層との付着強度
を向上させ、境界面での剥離を防止することができるめ
っき製品の製造方法を提供する。 【解決手段】 めっき製品は、基材の表面にベースコー
ト層、銀めっき層14及びトップコート層15が形成さ
れている。銀鏡後処理工程において、銀めっき層14の
表面に亜硫酸イオンを含む還元性溶液を塗布すること
で、同銀めっき層14の表面に極めて極性の高いヒドロ
キシル基が付与される。トップコート層15には多数の
ヒドロキシル基が存在しており、銀めっき層は、その表
面に新たにヒドロキシル基が付与されることにより、分
子間力によるトップコート層15との結合点を増やすこ
とができる。このようにすることで、銀めっき層14
は、トップコート層15との付着力を発揮させている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、基材層の表面に、
金属めっき層を備えためっき製品の製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のめっき製品としては、基
材層、下地層をなすベースコート層、金属めっき層とし
ての銀めっき層及び被覆層をなすトップコート層を備え
たものが知られている。前記ベースコート層には、例え
ば、アルキッド−ポリオールとポリエステル−ポリオー
ルとを主剤とし、アダクト型のTDI(トルエンジイソ
シアネート)を硬化剤とするウレタン系塗料が使用され
ている。また、前記トップコート層には、例えばアクリ
ル−ポリオールを主剤とし、イソシアネートを硬化剤と
するアクリルウレタン系塗料等が使用されている。
【0003】この積層品を製造する際には、例えば、以
下のような方法を用いることが考えられる。その方法と
は、まず基材層の表面に、前記ウレタン系塗料を塗布
し、乾燥させて、ベースコート層を形成する。そして、
そのベースコート層の表面に、銀鏡反応により銀を析出
させるため、塩化スズ[II](SnCl2)水溶液を接
触させ、スズ[II]を触媒として担持する。その後、前
記ベースコート層の表面に、銀イオンを含有する水溶液
を塗布し、銀鏡反応により銀を析出させ、銀めっき層を
形成する。そして、前記銀めっき層の表面の洗浄を繰り
返し、乾燥させた後、その銀めっき層の表面に前記アク
リルウレタン系塗料を塗布し乾燥させて、トップコート
層を形成する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の製造
方法による積層品では、同積層品の耐久試験を行った結
果、銀めっき層とトップコート層との境界面で剥離が生
じるという問題があった。
【0005】本発明は、このような従来の技術に存在す
る問題点に着目してなされたものであり、その目的は、
金属めっき層とトップコート層との付着強度を向上さ
せ、境界面での剥離を防止することができるめっき製品
の製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明
は、基材の表面に、ベースコート層、金属めっき層及び
トップコート層を備えためっき製品の製造方法におい
て、前記基材の表面に前記ベースコート層及び前記金属
めっき層を形成した後、前記金属めっき層の表面を還元
性溶液により処理した後、前記金属めっき層の表面に前
記トップコート層を形成することをその要旨とする。
【0007】これにより、金属めっき層とトップコート
層との付着強度を向上させ、前記境界面での剥離を防止
することができる。この理由は、金属表面の酸化被膜が
還元され、反応性の高い官能基、例えばヒドロキシル基
が金属表面に生成しているものと推定される。
【0008】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載
の発明において、前記還元性溶液は、水溶液中において
亜硫酸イオンを放出する物質を含むことをその要旨とす
る。このようにすれば、亜硫酸イオンは極めて還元性が
強いため、酸化被膜に覆われた金属めっき層の表面を容
易に還元することができる。このため、金属めっき層の
表面には、亜硫酸イオンの還元反応により、極めて極性
の高い官能基であるヒドロキシル基が付与される。よっ
て、金属めっき層は、分子間力によるトップコート層と
の結合点の数を増やすことができる。従って、金属めっ
き層とトップコート層との付着強度をさらに向上させ、
前記境界面での剥離をよりいっそう防止することができ
る。
【0009】請求項3に記載の発明は、請求項2に記載
の発明において、前記還元性溶液は、亜硫酸、亜硫酸
塩、亜硫酸水素塩から選ばれる少なくとも1種の物質の
水溶液であることを特徴とすることをその要旨とする。
【0010】このようにすれば、水溶液中で亜硫酸イオ
ンが速やかに放出されることから、金属めっき層の表面
には、その亜硫酸イオンの還元反応により、極めて極性
の高い官能基であるヒドロキシル基が付与される。よっ
て、金属めっき層は、分子間力によるトップコート層と
の結合点の数を増やすことができる。従って、金属めっ
き層とトップコート層との付着強度を向上させ、前記境
界面での剥離を防止することができる。
【0011】請求項4に記載の発明は、請求項1に記載
の発明において、前記還元性溶液は、水溶液中において
2価の金属イオンを放出する物質を含むことをその要旨
とする。
【0012】このようにすれば、2価の金属イオンは極
めて還元性が強いため、酸化被膜に覆われた金属めっき
層の表面を容易に還元することができる。このため、金
属めっき層の表面には、2価の金属イオンの還元反応に
より、極めて極性の高い官能基であるヒドロキシル基が
付与される。よって、金属めっき層は、分子間力による
トップコート層との結合点の数を増やすことができる。
従って、金属めっき層とトップコート層との付着強度を
向上させ、前記境界面での剥離を防止することができ
る。
【0013】請求項5に記載の発明は、請求項1または
4に記載の発明において、前記還元性溶液は、Sn(I
I)の塩またはFe(II)の塩から選ばれる少なくとも
1種の物質の水溶液であることをその要旨とする。
【0014】このようにすれば、前記請求項1及び4に
記載の発明とほぼ同等の作用が発揮される。請求項6に
記載の発明は、請求項1に記載の発明において前記還元
性溶液は、有機酸の水溶液であることをその要旨とす
る。
【0015】このようにすれば、有機酸により酸化被膜
に覆われた金属めっき層の表面を還元することができ
る。このため、金属めっき層の表面には、有機酸の還元
反応により、極めて極性の高い官能基であるヒドロキシ
ル基が付与される。従って、金属めっき層は、分子間力
によるトップコート層との結合点の数を増やすことがで
きる。従って、金属めっき層とトップコート層との付着
強度を向上させ、前記境界面での剥離を防止することが
できる。
【0016】請求項7に記載の発明は、請求項6に記載
の発明において、前記有機酸は、シュウ酸、蟻酸、マロ
ン酸、酢酸、コハク酸、プロピオン酸、グルタル酸、酪
酸から選ばれたものであることをその要旨とする。
【0017】このようにすれば、有機酸は比較的酸強度
の低い酸であることから、金属めっき層の表面における
エッチング効果を小さく抑えることができる。このた
め、有機酸を所定値以下の濃度にすることで、金属めっ
き層は、その鏡面の光輝性を消失することなく、トップ
コート層との付着強度を向上させることができる。ま
た、酸強度の低い酸が用いられていることから、作業上
の安全性も確保することができる。
【0018】請求項8に記載の発明は、基材の表面に、
ベースコート層、金属めっき層及びトップコート層を備
えためっき製品の製造方法において、前記基材の表面に
前記ベースコート層及び前記金属めっき層を形成した
後、前記金属めっき層の表面を有機カルボン酸溶液によ
り処理した後、前記金属めっき層の表面に前記トップコ
ート層を形成させることをその要旨とする。
【0019】このようにすることで、金属めっき層の表
面では、有機カルボン酸がもつカルボキシル基(―CO
OH)が付与される。カルボキシル基は極めて極性の高
い官能基であることから、金属めっき層は、分子間力に
よるトップコート層との結合点の数を増やすことができ
る。従って、金属めっき層とトップコート層との付着強
度をより向上させ、前記境界面での剥離をよりいっそう
抑制することができる。
【0020】請求項9に記載の発明は、請求項8に記載
の発明において、前記有機カルボン酸溶液は、シュウ
酸、蟻酸、マロン酸、酢酸、コハク酸、プロピオン酸、
グルタル酸、酪酸から選ばれた少なくとも1種の物質の
水溶液であることをその要旨とする。
【0021】このようにすれば、前記請求項7に記載の
発明とほぼ同等の作用が発揮される。請求項10に記載
の発明は、請求項1〜9に記載の発明において、前記金
属めっき層を構成する金属が銀からなることをその要旨
とする。
【0022】このようにすれば、銀めっき層は、その表
面に極めて極性の高い官能基が付与されるため、トップ
コート層との付着力を向上させることができる。その結
果、銀めっき層とトップコート層との境界面において生
じる剥離を防止することができる。従って、銀めっき層
の長期にわたる光輝性が保持されるため、金属めっき品
としての高品質性を保つことができる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、この発明を具体化した実施
形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示すよう
に、めっき製品11には、合成樹脂製の基材層12の表
面(意匠面)上に、下地層としてのベースコート層1
3、金属めっき層としての銀めっき層14及び被覆層と
してのトップコート層15が形成されている。
【0024】基材層12は、例えばABS(アクリロニ
トリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、PC(ポリ
カーボネート)、PC/ABSアロイ、PP(ポリプロ
ピレン)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)または
オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等により
構成され、例えば公知の射出成形法により成形される。
【0025】ベースコート層13は、基材層12の表面
にベースコート剤を塗布または浸漬させた後に乾燥させ
ることによって積層形成される。前記ベースコート剤と
しては、アルキッド変性アクリルポリオール等を主剤と
し、例えばビューレット型のHMDI(ヘキサメチレン
ジイソシアネート)を硬化剤とする2液硬化型ポリウレ
タン樹脂、あるいはエポキシ樹脂が好適に使用される。
【0026】ここで、銀めっき層14の形成に先立っ
て、ベースコート層13上に助触媒としてスズ[II]を
担持させるために、塩化スズ[II]及び塩酸を含む第1
の前処理液が塗布される。ベースコート層13の水洗
後、助触媒が担持されたベースコート層13上に塩化パ
ラジウム[II]溶液を塗布することで、ベースコート層
13の表面に、銀めっき層14の銀の初期核形成を促す
触媒としてパラジウム[II]を担持させている。
【0027】銀めっき層14は、銀鏡反応を利用した化
学めっき法(無電解めっき法)を用いてベースコート層
13の表面に積層形成されている。詳しくは、アンモニ
ア性硝酸銀([Ag(NH32+OH-)溶液(トレン
ス試薬)と還元剤溶液とをベースコート層13の表面上
で混合されるように塗布して酸化還元反応を引き起こ
し、金属めっき層を構成する金属としての銀(Ag)を
析出させる。前記還元剤溶液としては、グリオキサール
等のアルデヒド基を有する有機化合物(R―CHO)、
亜硫酸ナトリウムまたはチオ硫酸ナトリウム等の水溶液
が好適に使用される。
【0028】トップコート層15は、銀めっき層14を
保護すべく、同銀めっき層14の表面にトップコート剤
を塗布または浸漬させた後に乾燥させることによって積
層形成される。前記トップコート剤としては、撥水性の
高いシリコンアクリル樹脂が好適に使用される。そし
て、このトップコート層15では、シリコンアクリル樹
脂の塗布乾燥後、さらに架橋を進行させ、そのガラス転
移温度(Tg)が60℃以上となるようにしている。
【0029】次に、このめっき製品11の製造方法につ
いて以下に記載する。図3に示すように、上記めっき製
品11を製造する際には、まず、ステップS20におい
て基材層12を所定形状に射出成形した後、S30のベ
ースコート塗装工程(BC塗装工程)を行う。
【0030】このS30のベースコート塗装工程は、成
形後の基材層12の表面に、ベースコート剤からなるベ
ースコート層13を形成させる工程である。このベース
コート塗装工程では、まず、S31の前処理工程におい
て、イソプロパノール等の洗浄剤を用いて前記成形後の
基材層12の表面(意匠面)を充分に洗浄する。続い
て、S32のベース塗装工程において、前記洗浄後の基
材層12の意匠面上にベースコート剤を均一に被覆させ
る。このS32におけるベースコート剤の被覆方法とし
ては、塗布または浸漬のいずれの方法を用いてもよい
が、被覆が容易であることからスプレー塗布するのが好
ましい。このベースコート剤としては、例えば、大橋化
学工業株式会社製の「771」(主剤の主鎖がアクリル
−ポリオール(70%)、分枝鎖がアルキッド−ポリオ
ール(30%)であり、硬化剤をビューレット型HMD
Iとし、NCO/OH比が1/1であるような2液硬化
型ウレタン塗料)またはオリジン電気株式会社製の「E
―1」(主剤をエポキシ樹脂、硬化剤をアミン化合物と
するエポキシ系塗料)が好適に使用される。
【0031】続いて、S33の乾燥工程において、前記
基材層12の意匠面上に被覆されたベースコート剤を乾
燥させる。ここで、ベースコート剤として前記「E―
1」を用いた場合には、80℃の温度で60分間乾燥さ
せる。または、ベースコート剤として前記「771」を
用いた場合には、80℃の温度で30分間乾燥させる。
こうして、S33の乾燥工程を行った後、次のS40の
めっき塗装工程の処理を行う。
【0032】このS40のめっき塗装前工程は、S50
のめっき塗装後工程において銀を析出させ易くするため
に、ベースコート層13の表面に前処理を行う工程であ
る。まず、S41の銀鏡前処理工程(1)において、乾
燥後のベースコート層13の表面に助触媒を含有する第
1の前処理薬液を塗布または浸漬させ、その助触媒をベ
ースコート層13の表面に担持させる。ここで、前記助
触媒としては、例えばスズ[II]が好適に用いられ、ま
た、第1の前処理薬液として塩酸を含有する塩化スズ
[II](SnCl2)溶液が好適に用いられる。
【0033】続いて、S42の水洗工程において、イオ
ン交換水または蒸留水(好ましくは導電率が3μS/m
以下)を用いてベースコート層13の表面を水洗し、ベ
ースコート層13の表面に担持されなかった過剰の塩化
スズ[II]を取り除く。
【0034】次に、S43の銀鏡前処理工程(2)にお
いて、乾燥させたベースコート層13の表面に触媒を含
有する第2の前処理薬液を塗布または浸漬させ、前記助
触媒と置換させることで、ベースコート層13の表面に
触媒を担持させている。ここで、ベースコート層13の
表面に担持させる触媒としては、例えばパラジウム[II]
が好適に用いられている。また、第2の前処理薬液とし
て塩化パラジウム[II](PdCl2)溶液または奥野
製薬製の「アクチベーター」が好適に用いられる。この
ようにして、前記ベースコート層13の表面に、銀めっ
き層14の銀の初期核形成を促す触媒を担持させてい
る。上記めっき塗装前工程において、めっき層を形成さ
せる基板上にパラジウム[II]を触媒として担持させるの
は、ニッケルめっき層形成の場合と同じである。
【0035】続いて、S44の水洗工程において、イオ
ン交換水または蒸留水(好ましくは導電率が3μS/m
以下)を用いてベースコート層13の表面を水洗し、ベ
ースコート層13の表面に担持されなかった過剰の塩化
パラジウム[II]を取り除く。
【0036】上記方法によりS40のめっき塗装前工程
が行われた後に、S50のめっき塗装後工程が行われ
る。このめっき塗装後工程では、銀鏡反応を用いた銀め
っき層14の形成及び銀めっき層14の後処理が行われ
る。
【0037】S51の銀鏡塗装工程では、前記触媒が担
持されたベースコート層13の表面に、アンモニア性硝
酸銀溶液と還元剤溶液とを同時に塗布することにより、
ベースコート層13上で両溶液を反応させて銀を析出さ
せている。そして、その析出された銀が、ベースコート
層13の表面に担持されているパラジウム[II]を中心に
ベースコート層13の表面に析出されて積層し、銀めっ
き層14が形成される。この銀鏡塗装工程では、例え
ば、ダイテック製の「LA」及び「LB]が好適に使用
される。なお、この銀鏡塗装工程においては、双頭スプ
レーガンまたは同芯スプレーガンを利用して、前記アン
モニア性硝酸銀溶液と還元剤溶液とを塗布すると便利で
ある。
【0038】続いて、S52の水洗工程において、イオ
ン交換水又は蒸留水を用いて銀めっき層14の表面を水
洗し、その銀めっき層14の表面上に残留する銀鏡反応
後の溶液等を取り除いた後、S53の銀鏡後処理工程を
行う。
【0039】S53の銀鏡後処理工程は、S61のトッ
プ塗装工程で形成されるトップコート層15との付着強
度を向上させるために、銀めっき層14の表面に後処理
溶液を塗布する工程である。つまり、この工程では、S
61で形成されるトップコート層15との結合点の数を
増やすために、後処理溶液を塗布することで、銀めっき
層14の表面に極性の高い官能基を付与している。その
結果、銀めっき層14とトップコート層15との境界面
において、極性基間の相互作用による分子間力が大きく
なり、銀めっき層14とトップコート層15との付着強
度を向上させている。本実施形態では、後処理溶液とし
て還元性溶液または有機カルボン酸溶液が使用される。
【0040】還元性溶液としては、亜硫酸、亜硫酸塩、
亜硫酸水素塩等の物質を含む溶液が好適に使用される。
これらの物質は、溶液中において亜硫酸イオンを速やか
に放出することができる。亜硫酸イオン(HSO3 -)は
還元性が強いことでよく知られている。図2に示すよう
に、亜硫酸イオンを含む還元性溶液を塗布することで、
銀めっき層14の表面を覆う酸化被膜は速やかに還元さ
れ、それと同時に硫酸イオン(SO4 2-)が放出され
る。その結果、銀めっき層14の表面には、極めて極性
の高い官能基であるヒドロキシル基が付与される。
【0041】銀めっき層14上に形成されるトップコー
ト層15は、後述するS60のトップコート塗装工程
(TC塗装工程)において、シリコンアクリル系塗料を
トップコート剤として形成される。この場合、トップコ
ート層15は多数のヒドロキシル基を有しており、銀め
っき層14は、その表面に新たにヒドロキシル基が付与
されることで、分子間力によるトップコート層15との
結合点の数を増やすことができる。このようにして、銀
めっき層14は、このS53の銀鏡後処理工程を経るこ
とにより、トップコート層15との付着強度を向上させ
ている。
【0042】還元性溶液は、亜硫酸イオンを含む溶液に
限定されるものではない。例えば、還元性溶液は2価の
金属イオンを含む溶液であってもよい。2価の金属イオ
ンは、亜硫酸イオンと同様に還元性が強いことで知られ
ている。このため、2価の金属イオンを含む還元性溶液
を銀めっき層14に塗布することで、銀めっき層14の
表面を覆う酸化被膜は速やかに還元される。その結果、
銀めっき層14の表面には、極めて極性の高い官能基で
あるヒドロキシル基が付与される。具体的には、還元性
の強い2価の金属塩として、Sn(II)の塩またはFe
(II)の塩等が挙げられる。また、還元性溶液は有機酸
であってもよく、表面が酸化被膜により覆われた銀めっ
き層14を有機酸により処理することで、上記内容とほ
ぼ同等の作用が発揮される。その他にも、還元性溶液と
しては、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチ
ルアミンボラン、ホスフィン酸ナトリウム、二酸化チオ
尿素、塩化ヒドラジニウム、L(+)−アスコルビン
酸、チオ硫酸ナトリウム、過酸化水素水等のいずれかを
含むものであってもよい。
【0043】また、S53の銀鏡後処理工程において、
有機カルボン酸を還元性溶液としてではなく、銀めっき
層14の表面にカルボキシル基を付与する目的として使
用することもできる。図4に示すように、銀めっき層1
4に有機カルボン酸溶液を塗布すると、銀めっき層14
の表面には、有機カルボン酸がもつカルボキシル基が付
与される。カルボキシル基は、ヒドロキシル基と同様に
極めて極性の高い官能基である。このため、銀めっき層
14は、S53の銀鏡後処理工程で多数のカルボキシル
基が付与されることにより、トップコート層15との結
合点の数を増やすことができる。そして、銀めっき層1
4は、分子間力による結合点の数を増やすことで、S6
1で形成されるトップコート層15との付着強度を向上
させている。この場合、有機カルボン酸として、シュウ
酸、蟻酸、マロン酸、酢酸、コハク酸、プロピオン酸、
グルタル酸、酪酸等が好適に使用される。このように、
比較的酸強度の低い酸を使用することで、銀めっき層1
4の表面のエッチング効果を小さく抑えることができ
る。
【0044】次に、S54の水洗工程において、銀めっ
き層14の表面をイオン交換水又は蒸留水を用いて水洗
した後、S55の水切りブロー工程において、銀めっき
層14の表面に付着している水滴をエアブローにて吹き
飛ばす。続いて、S56の乾燥工程において、70℃の
温度で30分間乾燥させた後、S60のトップコート塗
装工程(TC塗装工程)を行う。
【0045】このS60のトップコート塗装工程は、銀
めっき層14の表面にトップコート剤からなるトップコ
ート層15を形成させる工程である。このトップコート
塗装工程では、まず、S61のトップ塗装工程におい
て、トップコート剤を銀めっき層14の表面に均一に塗
布する。このトップコート剤としては、例えば、藤倉化
成株式会社製の「PTC―02UH(10B)」(シリ
コンアクリル系塗料)またはオリジン電気株式会社製の
「オリジツーク#100」(アクリルシリコン系塗料)
が好適に使用される。このことから、図3、図4に示す
ように、銀めっき層14とトップコート層15との境界
面には、ケイ素と酸素が交互に結びついたシロキサン結
合が生成されている。シロキサン結合は、熱的にも化学
的にも安定な無機結合であり、主にガラスの基本骨格と
して生成されている。
【0046】続いて、S62の乾燥工程において、前記
銀めっき層14上に塗布されたトップコート剤を乾燥さ
せ、トップコート層15を形成させる。ここで、トップ
コート剤として前記「PTC―02UH(10B)」を
用いた場合には、80℃の温度で60分間乾燥させる。
または、トップコート剤として前記「オリジツーク#1
00」を用いた場合には、80℃の温度で45分間乾燥
させる。
【0047】前述の構成を有するめっき製品11は、例
えば、メータークラスター、センタークラスター、レジ
スター、センターコンソール、エンブレム等の自動車の
内装部品、ホイールキャップ、バンパーモール、ホイル
ガーニッシュ、グリルラジエータ、バックパネル、エン
ブレム等の自動車の外装部品に好適に適用することがで
きる。さらには、エアコンハウジング、携帯電話、ノー
トパソコン等の自動車部品以外の用途に用いられる各種
めっき製品も好適に適用することができる。
【0048】上記実施形態によって発揮される効果につ
いて、以下に記載する。 (1)銀めっき層14の表面を還元性溶液により処理す
ることで、酸化被膜に覆われた銀めっき層14の表面を
容易に還元することができる。この場合、銀めっき層1
4の表面には還元反応により極性の高い官能基が付与さ
れるため、銀めっき層14は、分子間力によるトップコ
ート層15との結合点の数を増やすことができる。よっ
て、銀めっき層14とトップコート層15との付着強度
を向上させ、前記境界面での剥離を防止することができ
る。
【0049】(2)還元性溶液は、水溶液中において亜
硫酸イオンを放出する物質を含む。この場合、亜硫酸イ
オンは極めて還元性が強いことから、酸化被膜に覆われ
た銀めっき層14の表面を容易に還元することができ
る。このため、銀めっき層14の表面には、亜硫酸イオ
ンの還元反応により、極めて極性の高い官能基であるヒ
ドロキシル基が付与される。従って、銀めっき層14と
トップコート層15との付着強度をさらに向上させ、前
記境界面での剥離をよりいっそう防止することができ
る。
【0050】(3)還元性溶液は、水溶液中において2
価の金属イオンを放出する物質を含む。この場合、2価
の金属イオンは極めて還元性が強いことから、酸化被膜
に覆われた銀めっき層14の表面を容易に還元すること
ができる。このため、銀めっき層14の表面には、2価
の金属イオンの還元反応により、極めて極性の高い官能
基であるヒドロキシル基が付与される。従って、銀めっ
き層14とトップコート層15との付着強度をさらに向
上させ、前記境界面での剥離をよりいっそう防止するこ
とができる。また、還元性溶液が有機酸の水溶液である
場合においても、有機酸の還元作用により、酸化被膜に
覆われた銀めっき層14の表面を還元することができ
る。このため、銀めっき層14の表面には、有機酸の還
元反応によりヒドロキシル基が付与され、銀めっき層1
4とトップコート層15との付着強度をさらに向上させ
ることができる。
【0051】(4)銀めっき層14の表面を有機カルボ
ン酸で処理することにより、銀めっき層14の表面には
カルボキシル基が付与される。この場合、カルボキシル
基はヒドロキシル基と同じく極めて極性の高い官能基で
あることから、銀めっき層14は、分子間力によるトッ
プコート層15との結合点の数を増やすことができる。
従って、銀めっき層14とトップコート層15との付着
強度を向上させ、前記境界面での剥離を防止することが
できる。
【0052】(5)有機カルボン酸は比較的酸強度の低
い酸であることから、銀めっき層14の表面におけるエ
ッチング効果を小さく抑えることができる。このため、
有機酸を所定値以下の濃度にすることで、銀めっき層1
4は、その鏡面の光輝性を消失することなく、トップコ
ート層15との付着強度を向上させることができる。ま
た、有機カルボン酸は酸強度の低い酸であるため、溶液
の取り扱いが容易になることから作業上の安全性も確保
することができる。
【0053】(6)この実施形態のめっき製品11の製
造方法では、前記(1)〜(5)に記載の効果を有して
いる。このようにすることで、銀めっき層14は、その
鏡面の光輝性を消失させることなく、トップコート層1
5との付着強度を向上させることができる。その結果、
銀めっき層14の長期にわたる光輝性が保持される。従
って、このようなめっき製品11は、自動車の外装部品
等、過酷な環境下で使用される部材に適用することがで
きる。
【0054】(実施例)以下、前記実施形態を具体化し
た実施例及び比較例について説明する。 (実施例1)ABSにより四角板状に形成された基材層
12としての基材を射出成形した後、その基材の表面
(意匠面)にイソプロパノールを用いてスプレー洗浄す
ることによりS31の前処理工程を行った。続いて、ベ
ースコート剤として2液硬化型ポリウレタン樹脂(オリ
ジン電気製)を基材の表面にスプレー塗布してS32の
ベース塗装工程を行った。その後、80℃の乾燥炉内で
60分間乾燥工程(S33)を行うことによって、基材
の表面に約20μmの均一な厚さのベースコート層13
が形成された。
【0055】次に、ベースコート層13の表面に、3重
量%の塩化すず[II]及び1重量%の塩酸を含有する塩
化すず[II]溶液をスプレー塗布してS41の銀鏡前処
理工程(1)を行った後、イオン交換水(好ましくは導
電率が3μS/m以下)を用いてベースコート層13の
表面をスプレー洗浄し、S42の水洗工程を行った。続
いて、塩化パラジウム溶液(奥野製薬製「アクチベータ
ーの5重量%溶液」)をスプレー塗布してS43の銀鏡
前処理工程(2)を行った後に、イオン交換水(好まし
くは導電率が3μS/m以下)を用いてベースコート層
13の表面をスプレー洗浄し、S44の水洗工程を行っ
た。続いて、トレンス試薬とグリオキサールとを双頭ス
プレーガンを用いてベースコート層13の表面に同時に
スプレー塗布してS51の銀鏡塗装工程を行うことによ
って、ベースコート層13の表面に約1000Åの均一
な厚さの銀めっき層14が形成された。その後、イオン
交換水を用いて銀めっき層14の表面をスプレー洗浄
し、S52の水洗工程を行った。
【0056】次に、銀めっき層14の表面に後処理溶液
として1重量%の亜硫酸水素ナトリウムをスプレー塗布
し、S53の銀鏡後処理工程を行った後、イオン交換水
を用いて銀めっき層14の表面をスプレー洗浄してS5
4の水洗工程を行った。続いて、銀めっき層14の表面
に圧縮空気を吹き付けてS55の水切りブロー工程を行
った後、70℃の乾燥炉内で30分間乾燥工程(S5
6)を行った。
【0057】最後に、銀めっき層14の表面に、シリコ
ンアクリル系トップコート剤(藤倉化成株式会社製「P
TC―02UH(10B)」)をスプレー塗布してS6
1のトップ塗装工程を行った後、80℃の乾燥炉内で6
0分間乾燥工程(S62)を行うことによって、銀めっ
き層14の表面に約20μmの均一な厚さのトップコー
ト層15が形成された。得られためっき製品11は、基
材の表面にベースコート層13、銀めっき層14及びト
ップコート層15が形成されている。そして、得られた
めっき製品11をプルオフ試験(JIS・K5400・
8・7項)に供し、銀めっき層14とトップコート層1
5との付着強度を単位面積当たりの引張強度として表示
した。また、上記製造方法により形成されためっき製品
11の外観を目視にて判定した。
【0058】<プルオフ試験>プルオフ試験とは、塗面
上に引張用の治具をエポキシ系接着剤で接着し、塗面に
対し垂直方向に引張り、塗膜が被塗物から破断する荷重
を求めるという方法である。本実施形態では、めっき製
品11の表面に定格の治具をエポキシ系接着剤で接着
し、この表面に対し垂直方向に引っ張り、トップコート
層15が銀めっき層14から剥離するときの引張強度を
求める。
【0059】(実施例2)前記実施例1における銀めっ
き層14の表面に後処理溶液として10重量%の亜硫酸
水素ナトリウムをスプレー塗布し、S53の銀鏡後処理
工程を行ったものをプルオフ試験及び外観判定に供し
た。
【0060】(実施例3)前記実施例1における銀めっ
き層14の表面に後処理溶液として35重量%の亜硫酸
水素ナトリウムをスプレー塗布し、S53の銀鏡後処理
工程を行ったものをプルオフ試験及び外観判定に供し
た。
【0061】(実施例4)前記実施例1における銀めっ
き層14の表面に後処理溶液として1重量%の酢酸をス
プレー塗布し、S53の銀鏡後処理工程を行ったものを
プルオフ試験及び外観判定に供した。
【0062】(実施例5)前記実施例1における銀めっ
き層14の表面に後処理溶液として10重量%の酢酸を
スプレー塗布し、S53の銀鏡後処理工程を行ったもの
をプルオフ試験及び外観判定に供した。
【0063】(実施例6)前記実施例1における銀めっ
き層14の表面に後処理溶液として30重量%の酢酸を
スプレー塗布し、S53の銀鏡後処理工程を行ったもの
をプルオフ試験及び外観判定に供した。
【0064】(実施例7)前記実施例1における銀めっ
き層14の表面に後処理溶液として60重量%の酢酸を
スプレー塗布し、S53の銀鏡後処理工程を行ったもの
をプルオフ試験及び外観判定に供した。
【0065】(実施例8)前記実施例1における銀めっ
き層14の表面に後処理溶液として80重量%の酢酸を
スプレー塗布し、S53の銀鏡後処理工程を行ったもの
をプルオフ試験及び外観判定に供した。
【0066】(実施例9)前記実施例1における銀めっ
き層14の表面に後処理溶液として1重量%の亜硫酸水
素カルシウムをスプレー塗布し、S53の銀鏡後処理工
程を行ったものをプルオフ試験及び外観判定に供した。
【0067】(実施例10)前記実施例1における銀め
っき層14の表面に後処理溶液として1重量%のシュウ
酸をスプレー塗布し、S53の銀鏡後処理工程を行った
ものをプルオフ試験及び外観判定に供した。
【0068】(実施例11)前記実施例1における銀め
っき層14の表面に後処理溶液として1重量%の亜硫酸
水素ナトリウムをスプレー塗布し、S53の銀鏡後処理
工程を行った。その後、S61のトップ塗装工程におい
て、トップコート剤としてオリジン電気製「E−1」を
使用し、S62の乾燥工程において、80℃の温度で4
5分間乾燥させることでトップコート層15を形成した
ものをプルオフ試験及び外観判定に供した。
【0069】(比較例1)前記実施例1における銀めっ
き層14の表面に後処理溶液を塗布しないものをプルオ
フ試験及び外観判定に供した。
【0070】(比較例2)前記実施例1における銀めっ
き層14の表面に後処理溶液として0.1重量%の亜硫
酸水素ナトリウムをスプレー塗布し、S53の銀鏡後処
理工程を行ったものをプルオフ試験及び外観判定に供し
た。
【0071】(比較例3)前記実施例1における銀めっ
き層14の表面に後処理溶液として0.1重量%の酢酸
をスプレー塗布し、S53の銀鏡後処理工程を行ったも
のをプルオフ試験及び外観判定に供した。
【0072】(比較例4)前記実施例1における銀鏡塗
装工程を経て形成された銀めっき層14表面の後処理溶
液として1重量%の塩酸をスプレー塗布し、S53の銀
鏡後処理工程を行ったプルオフ試験及び外観判定に供し
た。
【0073】(比較例5)前記実施例1における銀鏡塗
装工程を経て形成された銀めっき層14表面の後処理溶
液として1重量%の硫酸をスプレー塗布し、S53の銀
鏡後処理工程を行ったプルオフ試験及び外観判定に供し
た。
【0074】プルオフ試験による引張強度及びめっき製
品11の外観判定の結果を表1に示す。(比較例6)前
記実施例1における銀めっき層14の表面に後処理溶液
を塗布しないで、S53の銀鏡後処理工程を行った。そ
の後、S61のトップ塗装工程において、トップコート
剤としてオリジン電気製「E−1」を使用し、S62の
乾燥工程において、80℃の温度で45分間乾燥させる
ことでトップコート層15を形成したものをプルオフ試
験及び外観判定に供した。
【0075】
【表1】 銀めっき層14の後処理溶液として使用した亜硫酸水素
ナトリウムの濃度とプルオフ試験による引張強度の関係
を図5、図6に示す。そして、表1及び図5、図6の結
果を、実施例1〜3と比較例1、2とに基づいて説明す
る。
【0076】亜硫酸水素ナトリウムの濃度が0.1重量
%以下である場合、プルオフ試験による引張強度は1M
Pa以下しか得ることができないのに対し、亜硫酸水素
ナトリウムの濃度を1重量%以上にすると1.3MPa
以上の引張強度を得ることができる。図5に示すよう
に、亜硫酸水素ナトリウムの濃度が1、10、35重量
%と高くなるに従い引張強度も大きくなる。しかし、亜
硫酸水素ナトリウムの濃度を35重量%よりも高くする
と水に溶解しなくなることから、銀めっき層14の後処
理溶液としては、亜硫酸水素ナトリウムの濃度を35重
量%以下に調整する必要がある。また、実施例1〜3と
比較例1、2とから、いずれの場合においても外観判定
では良好な結果が得られている。このような理由から、
銀めっき層14の後処理溶液として、亜硫酸水素ナトリ
ウムの濃度は1〜35重量%の範囲を適用範囲とするこ
とができる。
【0077】次に、銀めっき層14の後処理溶液として
酢酸を使用した場合の結果を、実施例4〜8と比較例
1、3とに基づいて説明する。酢酸の濃度が0.1重量
%以下である場合、プルオフ試験による引張強度は1M
Pa以下しか得ることができないのに対し、酢酸の濃度
を1重量%以上にすると1.3MPa以上の引張強度を
得ることができる。ところが、酢酸の濃度が30、6
0、80重量%の場合、銀めっき層14の表面の光沢度
が低下し、めっき製品11の外観判定で良好な結果を得
ることはできなかった。これは、酢酸の酸濃度が高くな
ると、銀めっき層14の表面でエッチング効果が生じ、
鏡面が消失したものと考えられる。酢酸の濃度が1、1
0重量%の場合、外観判定で良好な結果が得られること
から、銀めっき層14の後処理溶液として、酢酸の濃度
は1〜10重量%の範囲を適用範囲とすることができ
る。
【0078】次に、銀めっき層14の後処理溶液に比較
的酸強度の弱い酢酸を使用した場合と、酸強度の強い塩
酸または硫酸を使用した場合との比較を、実施例4と比
較例4、5とに基づいて説明する。銀めっき層14の後
処理溶液として濃度が1重量%の塩酸、硫酸を使用した
場合、プルオフ試験による引張強度は1MPa未満しか
得ることができない。また、外観判定では銀めっき層1
4の表面の光沢度が低下しており、良好な結果を得るこ
とができず、これは、塩酸、硫酸の酸濃度が高いことか
ら、銀めっき層14の表面でエッチング効果が生じ、鏡
面が消失したものと考えられる。一方、銀めっき層14
の後処理溶液として濃度が1重量%の酢酸を使用した場
合、プルオフ試験による引張強度は1.3MPa以上得
ることができ、また外観判定でも良好な結果を得ること
ができる。
【0079】その他の実施例として、銀めっき層14の
後処理溶液として濃度が1重量%の亜硫酸水素カルシウ
ムまたはシュウ酸を使用した場合の結果を、実施例9、
10に基づいて説明する。亜硫酸水素カルシウムは亜硫
酸イオンを容易に放出することから、銀めっき層14の
表面には、極めて極性の高いヒドロキシル基が付与さ
れ、その結果としてトップコート層15との付着強度を
向上させている。また、シュウ酸は比較的酸強度の弱い
有機酸であることから、濃度を所定値以下にすること
で、銀めっき層14の表面には、鏡面を消失させること
なくヒドロキシル基が付与され、その結果としてトップ
コート層15との付着強度を向上させている。よって、
銀めっき層14の後処理溶液として濃度が1重量%の亜
硫酸水素カルシウムまたはシュウ酸を使用した場合、プ
ルオフ試験による引張強度は1.2MPa以上得ること
ができ、また外観判定では良好な結果を得ることができ
る。
【0080】更に、トップコート剤としてオリジン電気
製「E−1」を使用した場合の結果を、実施例11と比
較例6とに基づいて説明する。銀めっき層14の表面に
後処理溶液として1重量%の亜硫酸水素ナトリウムを塗
布した場合、プルオフ試験による引張強度は1.5MP
a得ることができるのに対し、後処理溶液を塗布しない
場合、引張強度は0.8MPaしか得ることができな
い。尚、外観判定では、実施例11、比較例6の結果よ
り、いずれの場合においても良好な結果を得ることがで
きる。このことから、銀めっき層14の表面に、所定の
濃度の亜硫酸水素ナトリウムを塗布すれば、トップコー
ト剤としてオリジン電気製「E−1」を使用したとして
も、藤倉化成株式会社製「PTC―02UH(10
B)」の場合とほぼ同等の効果を得ることができる。
【0081】(変形例)なお、本実施形態は、次のよう
に変形して具体化することも可能である。 ・本発明を、ゴム、ガラス、陶磁器等を含む各種のセラ
ミックス、木材、紙等からなる各種の形状の基材層12
上の表面に、直接またはベースコート層13を介して銀
以外の金属めっき層及びトップコート層15を積層する
構成に具体化してもよい。また、基材層12を、熱可塑
性樹脂に替えて熱硬化性樹脂から形成してもよい。ま
た、基材層12を、前記実施形態に列記された以外の熱
可塑性樹脂から形成してもよい。
【0082】・前記実施形態において、めっき製品11
は、ベースコート層13が省略された構成であってもよ
い。なお、ベースコート層13が省略される場合には、
S30のベースコート塗装工程は省略され、銀めっき層
14は、S40のめっき塗装工程により基材層12の表
面上に直接形成される。
【0083】・前記実施形態において、めっき製品11
の金属めっき層は、銀以外の金属からなる構成であって
もよい。例えば、ニッケル、金、亜鉛、クロム、銅等の
金属が挙げられる。
【0084】・前記実施形態において、銀めっき層14
は、スプレーガンを用いる方法に限らず、例えば電気め
っき法や浸漬めっき法等により形成してもよい。 ・前記実施形態において、銀めっき層14の形成に際に
用いられる触媒は、触媒の担時に先立って、助触媒とし
て、例えばスズ[II]等を基材層12またはベースコート
層13の表面上に担持して、その助触媒と置換させるこ
とで、パラジウム[II]を担持させていた。しかし、この
触媒は、パラジウム[II]に限定されるものではない。同
触媒としては、例えばバナジウム[IV]、クロム[VI]、鉄
[III]、銅[II]、ヒ素[III]、モリブデン[VII]、ルテニ
ウム[II]、ルテニウム[III]、ロジウム[III]、アンチモ
ン[III]、テルル[IV]、テルル[VI]、ヨウ素[0]、レニ
ウム[III]、レニウム[IV]、レニウム[VI]、レニウム[VI
I]、オスミウム[IV]、イリジウム[III]、白金[II]、水
銀[II]、タリウム[III]、ビスマス[III]等のいずれかを
含むものであってもよい。
【0085】前記実施形態、並びに変形例の記載から把
握できる技術的思想について、それらの効果とともに以
下に記載する。 (1)前記金属めっき層は、銀鏡反応を利用した化学め
っき法により形成された銀めっき層であることを特徴と
する請求項10に記載のめっき製品の製造方法。
【0086】このようにすることで、請求項10に記載
の発明の効果に加えて、非常に簡便な方法で銀めっき層
を析出させることが可能となる。また、銀めっき層の析
出の際の作業を極めて迅速かつ容易に行うことが可能と
なり、製造コストの低減に役立つ。
【0087】(2)前記基材層を合成樹脂により構成し
たことを特徴とする請求項1〜請求項10のうちいずれ
か一項に記載の方法により製造されためっき製品。従っ
て、請求項1〜請求項10のうちいずれか一項に記載の
発明の効果に加えて、めっき製品の軽量化を図ることが
できるとともに、めっき製品の形状の自由度を高めるこ
とができる。
【0088】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1〜10に
記載の発明によれば、金属めっき層とトップコート層と
の付着強度を向上させ、境界面での剥離を防止すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態におけるめっき製品の一部を模式的
に示す断面図。
【図2】銀めっき層を還元性溶液で処理した場合におけ
るトップコート層との結合点を模式的に示す図。
【図3】本実施形態におけるめっき製品の製造方法に関
するフローチャート。
【図4】銀めっき層を有機カルボン酸溶液で処理した場
合におけるトップコート層との結合点を模式的に示す
図。
【図5】亜硫酸水素ナトリウムの濃度とプルオフ試験に
よる引張強度との関係を示す図。
【図6】酢酸の濃度と引張強度との関係を示す図。
【符号の説明】
11…めっき製品、12…基材層、13…ベースコート
層、14…銀めっき層、15…トップコート層。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C23C 18/28 C23C 18/28 28/00 28/00 A D (72)発明者 荻巣 康彦 愛知県西春日井郡春日町大字落合字長畑1 番地 豊田合成 株式会社内 (72)発明者 度会 弘志 愛知県西春日井郡春日町大字落合字長畑1 番地 豊田合成 株式会社内 Fターム(参考) 4D075 AE03 BB68Y BB76Y BB87Y CA13 DA06 DB13 DB14 DB18 DB21 DB35 DB36 DB37 DB43 DB48 DC13 DC18 EB22 EB35 EB36 EB37 EB38 EB43 EB45 4K022 AA13 AA47 BA01 CA18 CA21 DA01 EA04 4K044 AA16 AB06 BA08 BA21 BB04 BB15 BC02 BC09 CA04 CA15 CA53 CA64

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材の表面に、ベースコート層、金属め
    っき層及びトップコート層を備えためっき製品の製造方
    法において、 前記基材の表面に前記ベースコート層及び前記金属めっ
    き層を形成した後、前記金属めっき層の表面を還元性溶
    液により処理した後、前記金属めっき層の表面に前記ト
    ップコート層を形成することを特徴とするめっき製品の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 前記還元性溶液は、水溶液中において亜
    硫酸イオンを放出する物質を含むことを特徴とする請求
    項1に記載のめっき製品の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記還元性溶液は、亜硫酸、亜硫酸塩、
    亜硫酸水素塩から選ばれる少なくとも1種の物質の水溶
    液であることを特徴とする請求項2に記載のめっき製品
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記還元性溶液は、水溶液中において2
    価の金属イオンを放出する物質を含むことを特徴とする
    請求項1に記載のめっき製品の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記還元性溶液は、Sn(II)の塩また
    はFe(II)の塩から選ばれる少なくとも1種の物質の
    水溶液であることを特徴とする請求項4に記載のめっき
    製品の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記還元性溶液は、有機酸の水溶液であ
    ることを特徴とする請求項1に記載のめっき製品の製造
    方法。
  7. 【請求項7】 前記有機酸は、シュウ酸、蟻酸、マロン
    酸、酢酸、コハク酸、プロピオン酸、グルタル酸、酪酸
    から選ばれたものであることを特徴とする請求項6に記
    載のめっき製品の製造方法。
  8. 【請求項8】 基材の表面に、ベースコート層、金属め
    っき層及びトップコート層を備えためっき製品の製造方
    法において、 前記基材の表面に前記ベースコート層及び前記金属めっ
    き層を形成した後、前記金属めっき層の表面を有機カル
    ボン酸溶液により処理した後、前記金属めっき層の表面
    に前記トップコート層を形成させることを特徴とするめ
    っき製品の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記有機カルボン酸溶液は、シュウ酸、
    蟻酸、マロン酸、酢酸、コハク酸、プロピオン酸、グル
    タル酸、酪酸から選ばれた少なくとも1種の物質の水溶
    液であることを特徴とする請求項8に記載のめっき製品
    の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記金属めっき層を構成する金属が銀
    からなることを特徴とする請求項1〜9のうちいずれか
    1項に記載のめっき製品の製造方法。
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