JP2003286072A - フェライト電子部品およびその製造方法 - Google Patents

フェライト電子部品およびその製造方法

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JP2003286072A
JP2003286072A JP2002091417A JP2002091417A JP2003286072A JP 2003286072 A JP2003286072 A JP 2003286072A JP 2002091417 A JP2002091417 A JP 2002091417A JP 2002091417 A JP2002091417 A JP 2002091417A JP 2003286072 A JP2003286072 A JP 2003286072A
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acid
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stress
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Masabumi Ichikawa
正文 市川
Yoshiaki Ariga
善紀 有賀
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 磁気特性の劣化のないフェライト電子部品お
よびその製造方法を提供する。 【構成】 焼成後のフェライトセラミックス部品を硫酸
に一定時間、一定温度で浸漬して、その部品に硫酸溶液
を浸透させる。そして、フェライト材料の内部において
フェライト結晶に囲まれた部分に析出した余剰金属を溶
解して、フェライト材料における応力の解放を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フェライト電子部
品およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電子部品の小型化の要求に伴い、その主
流となっているのが、磁性体材料としてのフェライトを
用いたセラミックス電子部品である。また、積層型のチ
ップ部品は、従来より、内部導体に低抵抗の銀(Ag)
を使用し、磁性体材料として、低温焼結可能なNiZn
フェライトを採用している。
【0003】NiZnフェライトをAgと同時に焼成す
るには、原料にCuOを用いて低温焼結化することが必
須であるが、これは同時に、AgがNiZnフェライト
内へ拡散し、Ag,Cu等が余剰金属となって結晶粒界
に析出する現象を引き起こす原因となりうる。そして、
結晶の3重点に析出したCuは、フェライトに応力を与
え、フェライトの磁気特性を劣化させる。
【0004】内電材(内部電極)とフェライトを同時焼
成させてなる電子部品における応力については、内部電
極とフェライト界面の接触により生じる応力、すなわ
ち、内部導体とフェライトとの熱挙動の差によるマクロ
的応力と、フェライトからのCuの解離やAgのマイグ
レーションにより、フェライト粒界に析出した余剰金属
によって生じるミクロ的応力とがある。
【0005】フェライトは、応力に敏感な材料であり、
その応力がフェライトの磁気特性に様々な影響を及ぼす
ことが知られている。従って、内電材と同時焼成するフ
ェライト積層チップでは、いかに応力を解放するかが重
要になる。
【0006】そこで、マクロ的応力への対応として、内
電ペーストのグリーン密度を変えることにより、内電と
フェライト界面との接触面積を小さくし、また、内電ペ
ーストの熱収縮を大きくしている。一方、ミクロ的応力
においては、徐冷を行うことで、余剰金属の析出をグレ
インの3角点へ集中させて応力の緩和を図っている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述した磁気特性の劣
化について、従来、焼成プロセス、あるいは原料等の選
択で調整していたが、かかる方法にも、以下に述べる問
題点がある。すなわち、 (1)温度プロファイルの調整は、その確認に時間を要
する。 (2)プロファイルの最適化がなされているかの確認が
困難である。 (3)焼成プロセスを調整した後も、フェライトに対し
て、依然として応力が解放しきれない場合がある。
【0008】また、上述したマクロ的応力、およびミク
ロ的応力の解放手法では、マクロ的応力、ミクロ的応力
それぞれに対して個別の対策が必要であり、各々におい
て、(1)内電ペーストのグリーン密度の調整、管理が
難しいため、特性値が安定しない、(2)焼成に時間を
要し、炉の能力が低く、また、長い炉体の制御エリアが
必要になる。つまり、設備費が高くなる、という問題が
ある。
【0009】本発明は、上述した課題に鑑みなされたも
のであり、その目的とするところは、磁気特性の劣化の
ないフェライト電子部品およびその製造方法を提供する
ことである。
【0010】本発明の他の目的は、複雑な工程を経るこ
となく、高特性の積層型フェライト電子部品を製造する
方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成し、上
述した課題を解決する一手段として、例えば、以下の構
成を備える。すなわち、本発明に係るフェライト電子部
品の製造方法は、焼成後のフェライトセラミックスを酸
溶液に浸漬するステップと、上記浸漬により上記フェラ
イトセラミックスに上記酸溶液を浸透させるステップ
と、上記浸透によって上記フェライトセラミックス内の
特定の金属を上記酸溶液中へ溶出させるステップと、上
記溶出の後、上記フェライトセラミックスを洗浄するス
テップとを備え、上記洗浄したフェライトセラミックス
を乾燥させて製品化することを特徴とする。
【0012】例えば、上記酸溶液には、硫酸または硝酸
の溶液が含まれることを特徴とする。
【0013】また、例えば、上記酸溶液は、1重量パー
セント以上、5重量パーセント以下の濃度であることを
特徴とする。例えば、上記酸溶液への浸漬時間を30分
以上、60分以下とすることを特徴とする。
【0014】例えば、上記フェライトセラミックスを組
成するNi−Cu−ZnのうちCuを上記特定の金属と
して上記酸溶液中へ溶出させることを特徴とする。
【0015】上記の課題を解決する他の手段として、本
発明に係るフェライト電子部品は、上述した製造方法に
よって製造することを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、添付図面および表を参照し
て、本発明に係る実施の形態例を詳細に説明する。図1
は、本実施の形態例に係る積層フェライト電子部品の製
造工程、より詳しくは、製品内部で発生した応力を解放
するための処理手順を示すフローチャートである。同図
のステップS11において、完成(焼成)後の製品(低
温焼成用フェライト材料を用いた電子部品)を、所定の
溶液中に投入する。
【0017】ここで使用する溶液は、硫酸、硝酸、ある
いは、その他の酸(HCl等)、および、これらを含む
溶液(ただし、割合が1重量パーセント以上のもの)で
ある。なお、これらの酸と試料として用いた製品の詳細
については、後述する。
【0018】次のステップS12では、上記の製品が投
入された溶液に、1〜10分間、超音波をあてて、その
溶液を製品に浸透させる処理を行う。そして、続くステ
ップS13において、上記の溶液中に製品を入れたま
ま、5〜60分間、25〜100℃の温度下に放置す
る。
【0019】ステップS14で、溶液から製品を取り出
し、それを純水で洗浄する。より詳しくは、5〜60分
間、超音波による洗浄をする。そして、ステップS15
において、上記のステップS14で洗浄後の製品を、1
00〜200℃で5〜15分間、乾燥させる。
【0020】そこで、低温焼成用フェライト材料を用い
た電子部品を、酸または酸溶液に浸漬することによる、
フェライト材料内部で発生した応力の解放について、具
体的なデータをもとに説明する。
【0021】図2は、酸処理前と酸処理後におけるフェ
ライトビーズの特性をグラフ化して示すものである。同
図の横軸が周波数[MHz]、縦軸は、フェライトビー
ズのインピーダンス|Z|、抵抗値R、およびリアクタ
ンスXである。ここでは、応力を生じやすい条件で作成
した積層フェライトビーズと、それと同様のものを酸に
浸漬したときの特性を比較した。
【0022】同図において、曲線1は、酸処理前のイン
ピーダンス|Z|、曲線2は、酸処理前の抵抗値R、曲
線3は、酸処理前のリアクタンスXである。また、曲線
4は、酸処理後のインピーダンス|Z|、曲線5は、酸
処理後の抵抗値R、曲線6は、酸処理後のリアクタンス
Xである。
【0023】これらの特性から明らかなように、酸処理
後において、酸処理前に比べて各特性が著しく変化し、
インピーダンスと抵抗値の増大とともに、周波数特性も
改善されていることが分かる。
【0024】このような特性改善がなされるメカニズム
について説明する。低温焼成を目的とし、原料としてC
uOを含むNiZnフェライトにおいて、図3に示すよ
うに、焼成時において、フェライト結晶31に囲まれた
部分33に、Cu等の余剰金属が析出しやすくなる。
【0025】このように析出した余剰金属は、フェライ
ト結晶間に応力を発生する原因となる。この応力の発生
により、フェライトの磁気特性が劣化し、最終的には、
フェライト製品において、例えば、インダクタンス(L
値)が減少したり、インピーダンス(|Z|値)の減少
等が引き起こされる。
【0026】本実施の形態例では、上述したフェライト
製品への酸溶液(例えば、硫酸)の浸透により余剰金属
を溶解して、その余剰金属による応力を解放し、フェラ
イト本来の特性を発現させている。以下において、本実
施の形態例で使用した酸溶液等の詳細を説明する。な
お、ここで試料として用いたフェライトチップ(チップ
ビーズ)は、寸法が1.0mm×0.5mmのNi−C
u−Znフェライトであり、内部コイルの巻き数は10
ターンである。
【0027】(1) 処理液の定量分析 試料(フェライトチップ)を5重量%の硫酸に30分
間、60℃で処理した。この処理とは、図1のステップ
S11〜S13に対応する一連の処理である。そこで、
かかる処理後の溶液を原子吸光によって定量分析した。
フェライトの組成は、Fe23:NiO:CuO:Zn
=48:13:8:31[単位はmol%]であり、上
記の定量分析で検出された各組成物は、Fe23:Ni
O:CuO:Zn=215:−:1592:53[単位
はppm]である。なお、“−”は、検出されなかった
ことを意味している。
【0028】この分析結果から分かることは、溶液中に
Cuが極めて選択的に溶出していることである。これ
は、フェライトチップを酸溶液に浸漬することで、フェ
ライトチップ中に析出していた余剰金属であるCuが溶
け出していることを示している。
【0029】(2) 酸濃度による特性の変動 溶液である硫酸の濃度を変えたときにおける、フェライ
トのインピーダンス(Z値)とインダクタンス(L値)
の変化を表1に示す。また、これらのデータをグラフ化
したものを、図4および図5に示す。ここでの実施条件
(試料作成条件)は、フェライトを硫酸に浸漬し(30
分間、60℃)、その処理後において、純水超音波洗浄
を30分間行った。
【0030】
【表1】
【0031】これらの表1、および、図4,図5より、
硫酸濃度が5%以上の場合、特性上の優劣の差は確認で
きないが、硫酸の濃度が1%であっても、特性の向上が
確認できた。よって、ここでは、硫酸濃度を5%程度と
することで、作業面、および特性面ともに良好な結果が
得られることを確認した。
【0032】(3)浸漬時間による特性の変動 図6は、フェライト材料を用いた製品について、それを
硫酸に浸漬する時間(溶液の浸透時間)を変えたときの
インピーダンス(Z値)特性の変化を示すグラフであ
る。同図から、浸漬後30分で、ほぼ特性の向上が止ま
り、30分→60分の変遷では、わずかな上昇を示すと
いうことが分かる。
【0033】よって、本実施の形態例では、フェライト
材料の酸への浸漬時間を60分以下とするが、30分程
度が好ましいという結論が得られた。
【0034】以上説明したように、本実施の形態例によ
れば、焼成後のフェライトを硫酸に一定時間、一定温度
で浸漬して、フェライト材料の内部においてフェライト
結晶に囲まれた部分に析出した余剰金属を溶解する処理
を行うことで、その余剰金属に起因するフェライト材料
内部で発生した応力を解放でき、それによりフェライト
本来の特性を発揮させることができる。
【0035】また、酸の浸透力により、結晶内部の余剰
金属の溶出が行われるため、フェライト内に余剰金属の
残留がなく、応力の解放効果が高い。従って、かかる処
理後の製品特性のばらつきが小さくなるという利点があ
る。
【0036】さらには、特性改善のための応力の解放
が、硫酸への浸漬処理で行えるため、チップ部品等の製
造工程としての調整が容易になる。すなわち、簡単な作
業で、短時間に応力を解放できるため管理範囲が広く、
おおまかな工程条件でも容易に高特性の積層フェライト
電子部品を製造できる。
【0037】なお、本発明は、上述の実施の形態例に限
定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の
変形が可能である。例えば、応力の解放のため金属の溶
出を行う際、溶液全体に電界を印加して、溶出を加速さ
せるようにしてもよい。
【0038】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の構成によ
れば、フェライト内部で発生した応力を解放して、フェ
ライト本来の特性を発現させ、製品特性のばらつきを抑
制できる。
【0039】また、本発明の構成によれば、工程条件が
おおまかであっても、高特性の積層フェライト電子部品
を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態例に係る、製品内部で発生
した応力を解放するための手順を示すフローチャートで
ある。
【図2】実施の形態例に係る酸処理前と酸処理後におけ
るフェライトビーズの特性を示す図である。
【図3】フェライト結晶の構造例を示す図である。
【図4】酸濃度の変化によるインピーダンスの特性変動
を示す図である。
【図5】酸濃度の変化によるインダクタンスの特性変動
を示す図である。
【図6】硫酸への浸漬時間を変えたときのインピーダン
ス特性の変化を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G018 AA23 AA24 AA25 AC22 AC24 AC26 5E041 AB01 AB19 CA03 HB03 HB05

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フェライト電子部品の製造方法におい
    て、 焼成後のフェライトセラミックスを酸溶液に浸漬するス
    テップと、 前記浸漬により前記フェライトセラミックスに前記酸溶
    液を浸透させるステップと、 前記浸透によって前記フェライトセラミックス内の特定
    の金属を前記酸溶液中へ溶出させるステップと、 前記溶出の後、前記フェライトセラミックスを洗浄する
    ステップとを備え、 前記洗浄したフェライトセラミックスを乾燥させて製品
    化することを特徴とするフェライト電子部品の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 前記酸溶液には、硫酸または硝酸の溶液
    が含まれることを特徴とする請求項1記載のフェライト
    電子部品の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記酸溶液は、1重量パーセント以上、
    5重量パーセント以下の濃度であることを特徴とする請
    求項2記載のフェライト電子部品の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記酸溶液への浸漬時間を30分以上、
    60分以下とすることを特徴とする請求項3記載のフェ
    ライト電子部品の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記フェライトセラミックスを組成する
    Ni−Cu−ZnのうちCuを前記特定の金属として前
    記酸溶液中へ溶出させることを特徴とする請求項1記載
    のフェライト電子部品の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1乃至5のいずれかに記載の製造
    方法によって製造されたことを特徴とするフェライト電
    子部品。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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