JP2003272706A - 非水電解質二次電池の電圧制御方法 - Google Patents

非水電解質二次電池の電圧制御方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電池容量の100%以上の充電率まで過充電
した場合でも電池電圧を所定範囲に保持し、保護回路を
用いなくとも非水電解質二次電池の安全性の向上を図る
ことができる非水電解質二次電池の電圧制御方法を提供
すること。 【解決手段】 リチウムイオンを吸蔵・放出する材料お
よびバインダーポリマーを含んでなる正極ならびに負極
と、これらの正負両極を隔離する少なくとも1枚のセパ
レータと、リチウム塩を含有する非水電解質とを含んで
構成される非水電解質二次電池において、過充電時に供
給される電気エネルギーによって正極で酸化される物質
を非水電解質に加え、該物質を電極酸化させることによ
り、過充電時の電池電圧を4.1〜5.2Vに制御す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、過充電時の非水電
解質二次電池の電圧の上昇を防止することができる非水
電解質二次電池の電圧制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】近
年、ビデオカメラやノート型パソコンなどの携帯機器の
電源、および電気自動車、ハイブリッド自動車、電力貯
蔵などの電源として、高容量の二次電池に対する需要が
高まっている。現在多く使用されている二次電池とし
て、水系電解液を用いたニッケル−カドミウム電池、ニ
ッケル水素電池などが挙げられるが、これらの水系電池
は、水の電気分解の規制を受けるため、電池電圧が約
1.2Vと低い上、エネルギー密度の向上を図ることが
困難である。
【0003】このため、3V以上の高い電池電圧を有
し、重量当たりのエネルギー密度の大きいリチウム系二
次電池が近年注目されている。このリチウム系二次電池
は、一般的に、電解液として非プロトン性の有機溶媒
に、LiBF4,LiPF6などのイオン導電性塩を溶解
させたものを電解質溶液として使用しており、非水系電
解質電池に分類される。上記リチウム系二次電池は、リ
チウム金属やリチウム合金を負極に用いたリチウム金属
二次電池とリチウムイオンをドープできる炭素材料や遷
移金属を電極活物質に用いたリチウムイオン二次電池と
に分類される。
【0004】前者のリチウムイオン二次電池は、負極活
物質として活性の高いリチウムまたはリチウム合金等を
用いる場合が多く、安全性確保に特別な配慮が必要であ
る。一方、後者のリチウムイオン二次電池は、負極活物
質としてリチウムイオンを吸蔵・脱離し得るカーボン材
料を用い、正極活物質として、LiCoO2,LiNi
2,LiMn24、LiFeO2等のリチウム含有金属
酸化物を用い、有機溶媒に溶質であるリチウム塩を溶か
した電解液を用い、電池として組み立てた後、初回の充
電により正極活物質から出たリチウムイオンがカーボン
粒子内に入って充放電可能となる電池であり、金属リチ
ウムを原料として使用しないので、一般的に安全である
と考えられている。
【0005】しかしながら、実際には、定格容量以上に
過充電を行った場合、過充電状態が高まるにつれて、正
極からリチウムイオンの過剰な抽出が起こるとともに、
負極でリチウムイオンの過剰な挿入が生じてリチウム金
属が析出する。その結果、リチウムイオンを失った正極
側では、非常に不安定な高酸化物が生成するだけでな
く、過充電により電圧は上昇を続け、電解液中の有機物
等が分解反応を起こして可燃性のガスが多量に発生する
とともに、急激な発熱反応が生じて電池が異常に発熱
し、最終的には発火するという事態を招き、電池の安全
性が十分に確保できないとう問題が発生する。このよう
な状況は、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度が
増加するほど重要な問題となる。
【0006】上述した電池の暴走反応を防止するため
に、電池温度が60℃以上になると正負極を短絡させる
機能を付与した電池(特開平10−255757号公
報)、電解質に自己不燃性のフッ素系有機化合物を添加
する方法(特開平9−2559925号公報)等が開発
されているが、これらの対策では必ずしも充分であると
は言えず、一般的には後述する過充電防止用の保護回路
を用いているのが現状である。
【0007】ところで、ニッケル−カドミウム蓄電池等
においては、過充電時に正極側で発生する酸素を負極側
で水素と反応させて水に戻すというガス吸収機構が巧み
に利用されている。このため、過充電状態になることが
防止され、電池の内圧上昇、電圧上昇、電解液の濃度上
昇も生じない。一方、有機溶媒を用いるリチウム二次電
池においては、このようなガス吸収機構を利用すること
は原理的に不可能に近いと考えられており、有機溶媒を
用いるリチウムイオン二次電池では、過充電を防止する
保護回路を組み込む必要があると考えられている。
【0008】しかしながら、過充電を防止するための保
護回路は、複雑な制御技術を必要とするため、電池のト
ータルコストが上昇する要因となっている。また、実際
に使用されるリチウムイオン二次電池は、電池パック内
に保護回路を配置しているため、その占有体積や質量が
電池の実質的なエネルギー密度、特に体積エネルギー密
度(Wh/m3)を低下させる要因ともなっている。
【0009】一方、最近、正負極間にポリフッ化ビニリ
デン樹脂を介在させたリチウムイオン二次電池が、過充
電を行った場合にも電池電圧が上昇せず、暴走反応を起
こさないことが報告されている(特開平9−25599
25号公報)。この公報では、正負極間に配置されるセ
パレータ中にポリフッ化ビニリデン樹脂を充填する、正
負極間にポリフッ化ビニリデン樹脂皮膜を形成する等、
正負極間にポリフッ化ビニリデン樹脂を介在させること
で、過充電による電圧上昇等が防止できる旨報告されて
いる。
【0010】しかしながら、ポリフッ化ビニリデン樹脂
は、それ自体がイオン導電性に乏しいため、該樹脂を正
負極間に介在させることにより、電池の内部抵抗が上昇
し、レート特性などの電池性能が低下することが懸念さ
れる。また、ポリフッ化ビニリデン樹脂は、熱変形性の
大きい樹脂であることが知られ、特に、ポリフッ化ビニ
リデン成分と、三フッ化塩化エチレン、四フッ化エチレ
ン、六フッ化プロピレン、エチレン等とのフッ化ビニリ
デン共重合体では、さらに熱変形を受け易くなる傾向が
知られており、電池が60℃以上の高温になった場合、
ポリフッ化ビニリデン樹脂の変形、溶融などが生じ、電
池の性能に悪影響を与えることが予想される。さらに、
60℃以上の高温域で上記過充電防止機能が働くか否か
の保証はない。
【0011】本発明は、上記事情に鑑みなされたもの
で、電池容量の100%以上の充電率まで過充電した場
合でも電池電圧を所定範囲に保持し、保護回路を用いな
くとも非水電解質二次電池の安全性の向上を図ることが
できる非水電解質二次電池の電圧制御方法を提供するこ
とを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段および発明の実施の形態】
本発明者らは上記目的を達成するために以下の知見に基
づき鋭意検討を重ねた。すなわち、上述のように、リチ
ウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池では、定格
容量以上に過充電を行うと、過充電状態になるに伴い、
正極からは過剰なリチウムイオンが抽出され、負極では
リチウムイオンの過剰な挿入が生じて、リチウム金属が
析出する一方、リチウムイオンを失った正極側では、非
常に不安定な高酸化物が生成する。
【0013】そして、過充電により電圧は上昇を続け、
電池内に存在する電解液などの有機物が分解反応を起こ
して、可燃性のガスが多量に発生するとともに、急激な
発熱反応が生じて、電池が異常に発熱し、最終的には、
発火することとなる。具体的には、図1に示されるよう
に、170%程度まで充電されると、電池電圧、電池温
度が急激に上昇し、最終的には電池は破裂、発火する。
この場合、LiCoO2を正極活物質とするリチウムイ
オン電池を例にとると、充電により、正極ではLiCo
2からLi+が引き抜かれて以下の反応が進行する。L
iCoO2 → 0.5Li++Li0.5CoO2+0.5
-
【0014】この際、LiCoO2からLiが引き抜か
れ、すべてのLiCoO2がLi0.5CoO2に変化した
時の電気容量が、理論容量137mAh/gであり、こ
の時点を100%充電率(満充電)として電池は設計さ
れている。さらに充電を続け、LiCoO2からLiを
引き抜く反応を進行させれば、Li<0.5CoO2とな
り、次第にLi0CoO2に近づいていくが、Li<0.3
oO2は極めて酸化性が高く、熱的に不安定であるた
め、自己発熱して電池暴走のきっかけとなる。また、生
成したLi<0.3CoO2は、可逆性が極めて低く、Li
CoO2には再生されない。
【0015】そこで、本発明者らは、Li0.5CoO2
ら、さらにLiを引き抜く反応に供与される電気エネル
ギーを別の反応に利用することにより、Li<0.3CoO
2の生成を抑制し、非水電解質二次電池の暴走反応を抑
止する手法について鋭意検討を重ねた結果、所定の物質
を電解質に添加することで、過充電時の電気エネルギー
が該物質の電極酸化に消費され、さらに、酸化によって
生成した物質が負極にて還元される循環反応機構が効率
的に機能し、Li<0.3CoO2の生成を抑制し得ること
を見いだし、本発明を完成した。
【0016】すなわち、本発明は、 1. リチウムを吸蔵・放出する材料およびバインダー
ポリマーを含んでなる正極ならびに負極と、これらの正
負両極を隔離する少なくとも1枚のセパレータと、リチ
ウム塩を含有する非水電解質とを含んで構成される非水
電解質二次電池を定格容量の100%充電率以上に過充
電した場合の電圧制御方法であって、前記過充電時に供
給される電気エネルギーによって前記正極で酸化される
物質を前記非水電解質に加え、該物質を電極酸化させて
前記過充電時の電池電圧を4.1〜5.2Vに制御する
ことを特徴とする非水電解質二次電池の電圧制御方法、 2. 前記電極酸化により酸素および/または二酸化炭
素が発生し、該酸素および/または二酸化炭素が、前記
負極上で微量に生じたリチウム金属をLi2Oおよび/
またはLi2CO3に酸化させることを特徴とする1の非
水電解質二次電池の電圧制御方法、 3. 充電時に供給される電気エネルギーにより、前記
Li2CO3および/またはLi2Oが、前記負極で金属
リチウムおよび/またはリチウムイオンに電極還元され
ることを特徴とする2の非水電解質二次電池の電圧制御
方法、 4. 25℃で前記正極の理論容量に対する充電電流
率、かつ、1.00C以下の電流で充電を行う際、下記
式の充電率L%まで前記正極および負極の劣化が生じな
いことを特徴とする1,2または3の非水電解質二次電
池の電圧制御方法、 充電率L(%)=(理論容量)×5×(充電電流率C)
-0.5×100 5. 前記電極酸化が、参照極AlOxに対して1.4
0〜1.60Vの範囲で起こることを特徴とする1〜4
のいずれかの非水電解質二次電池の電圧制御方法、 6. 前記非水電解質が、エチレンカーボネート、プロ
ピレンカーボネート、ビニレンカーボネートおよびジエ
チルカーボネートから選ばれる1種または2種以上の有
機溶媒を含み、該有機溶媒中、298.15K,10
1.325Paの常温常圧条件下で、前記電極酸化が、
標準水素電位(SHE)に対して1.05〜1.61V
の範囲で起こることを特徴とする1〜5のいずれかの非
水電解質二次電池の電圧制御方法、 7. 前記正極で酸化される物質が、一般式R−CO−
R、一般式R−CO−OR、一般式R−CO−NR′
R、一般式RO−CO−OR、一般式RO−CO−X−
CO−OR、および一般式RR′N−CO−NR′R
(上記各式中Rは、互いに同一または異種の置換もしく
は非置換の一価炭化水素基を、R′は水素原子または互
いに同一または異種の置換もしくは非置換の一価炭化水
素基を、Xは二価の有機基を示す。)で示される化合物
から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とす
る1〜6のいずれかの非水電解質二次電池の電圧制御方
法、 8. 前記セパレータが、空孔率40%以上であること
を特徴とする1〜7のいずれかの非水電解質二次電池の
電圧制御方法、 9. 前記セパレータが、セルロース、ポリプロピレ
ン、ポリエチレンおよびポリエステルのいずれか1種以
上を含んでなるとともに、空孔率が60%以上であるこ
とを特徴とする8の非水電解質二次電池の電圧制御方
法、 10. 前記非水電解質が、1種以上のメタクリル酸エ
ステルおよび/または1種以上のアクリル酸エステル
と、重合開始剤とを含むことを特徴とする1〜9のいず
れかの非水電解質二次電池の電圧制御方法、 11. 前記非水電解質が、1種以上のメタクリル酸お
よび/または1種以上のアクリル酸エステルをラジカル
重合により反応させ、ゲル化させて得られるゲル電解質
であることを特徴とする10の非水電解質二次電池の電
圧制御方法を提供する。
【0017】以下、本発明についてさらに詳しく説明す
る。本発明では、上述のように、リチウムイオンを吸蔵
・放出する材料およびバインダーポリマーを含んでなる
正極ならびに負極と、これらの正負両極を隔離する少な
くとも1枚のセパレータと、リチウム塩を含有する非水
電解質とを含んで構成される非水電解質二次電池を定格
容量の100%充電率以上に過充電した場合に、過充電
時に供給される電気エネルギーによって正極で酸化され
る物質を非水電解質に加え、この物質を電極酸化させる
ことにより、過充電時の電池電圧を4.1〜5.2Vに
制御するものである。
【0018】本発明において、定格容量とは、非水電解
質二次電池を所定の充電電圧まで、0.2Cで定電流定
電圧充電を行い、その後、所定の放電終止電圧まで、
0.2Cで定電流放電した場合の放電容量をいい、例え
ば、正極にLiCoO2、負極に易黒鉛化炭素材料を原
料とするグラファイトを用いたリチウムイオン電池の場
合、充電電圧は4.2V、放電終止電圧は2.7Vであ
る。上記電極酸化反応は、定格容量の100%充電率以
上で生じればよいが、電池の定格容量を確保し、かつ、
活物質の可逆性が侵されないように電極酸化反応を生じ
させるという点を考慮すると、特に、150%充電率以
上で電極酸化反応が生じることが好ましい。
【0019】より具体的には、上記電極酸化が参照極A
lOxに対して1.40〜1.60Vの範囲で起こるこ
とが好ましく、1.40V未満では、上記電極酸化反応
が、LiCoO2→Li0.5CoO2の充電反応と同時、
またはそれ以前で生じ、定格容量が得られないという虞
があり、1.60Vを超えると、上記電極酸化反応が起
こる前に、Li0.5CoO2→Li<0.3CoO2の反応が
生じ、正極活物質の可逆性が失われ、不安定な高酸化物
が生成し、電池が暴走する可能性がある。
【0020】また、標準水素電位(SHE)を基準とし
た場合は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネ
ート、ビニレンカーボネートおよびジエチルカーボネー
トから選ばれる1種または2種以上の有機溶媒中、29
8.15K,101.325Paの常温常圧条件下で、
標準水素電位(SHE)に対して1.05〜1.61V
の範囲で電極酸化が起こることが好ましい。この場合に
も、1.05V未満では、上記電極酸化反応が、LiC
oO2→Li0.5CoO2の充電反応と同時、またはそれ
以前で生じ、定格容量が得られない虞があり、1.61
Vを超えると、上記電極酸化反応が起こる前に、Li
0.5CoO2→Li<0.3CoO2の反応が生じ、正極活物
質の可逆性が失われ、不安定な高酸化物が生成し、電池
が暴走する可能性がある。これらの点を考慮すると、
1.40〜1.60Vの範囲で電極酸化が起こることが
好ましい。
【0021】なお、過充電時の電池電圧は、上述のよう
に4.1〜5.2Vであるが、5.2Vを超えると、電
池が、破裂する、発熱する可能性があるため、このよう
な危険性を回避する点から、電池電圧は、4.2〜4.
8V程度に制御するのが好ましい。また、電池の表面温
度としては、上記問題が生じない程度であれば限定はな
いが、表面温度が120℃以上になると、電池が熱暴走
する可能性が高くなるため、過充電時の電池の表面温度
は120℃未満とすることが好ましく、より好ましくは
90℃未満、さらに好ましくは70℃未満である。
【0022】本発明においては、上記電極酸化により酸
素および/または二酸化炭素が発生し、該酸素および/
または二酸化炭素が、前記負極上で微量に生じたリチウ
ム金属をLi2Oおよび/またはLi2CO3に酸化させ
ることが好ましい。さらに、充電時に供給される電気エ
ネルギーにより、上記Li2CO3および/またはLi2
Oが、負極で金属リチウムおよび/またはリチウムイオ
ンに電極還元されることが好ましい。このように電極酸
化により生じた酸素、二酸化炭素により、電荷移動を伴
わない反応でリチウムを酸化した後、これを電極還元
し、この電極還元により生じた物質をさらに電極酸化す
るという循環反応系を確立することにより、過充電時に
供給される電気エネルギーが、この循環反応に消費さ
れ、電池電圧の上昇等を効率的に防止することができ
る。
【0023】一方、過充電時に電池電圧の上昇を防止す
ることができたとしても、この間に電極が不可逆反応を
受ける等により劣化すれば、電池として機能しなくなる
可能性が高くなる。このため、25℃で正極の理論容量
に対する充電電流率、かつ、1.00C以下の電流で充
電を行う際、下記式の充電率L%まで正極および負極の
劣化が生じないことが好ましい。 充電率L(%)=(理論容量)×5×(充電電流率C)
-0.5×100 なお、上記理論容量は、LiCoO2を正極活物質とし
て用いた場合、 LiCoO2 → 0.5Li++Li0.5CoO2+0.
5e- に相当する電気容量を示す。
【0024】本発明において、過充電時に供給される電
気エネルギーで電極酸化される物質としては、電極酸化
により電池電圧を4.1〜5.2Vに制御可能であれ
ば、特に限定されるものではないが、前記正極で酸化さ
れる物質が、一般式R−CO−R、一般式R−CO−O
R、一般式R−CO−NR′R、一般式RO−CO−O
R、一般式RO−CO−X−CO−OR、および一般式
RR′N−CO−NR′R(上記各式中Rは、互いに同
一または異種の置換もしくは非置換の一価炭化水素基
を、R′は水素原子または互いに同一または異種の置換
もしくは非置換の一価炭化水素基を、Xは二価の有機基
を示す。)で示される化合物から選ばれる1種または2
種以上であることが好ましい。
【0025】ここで、上記一価炭化水素基は、鎖状、分
岐または環状構造のいずれでもよく、また、飽和炭化水
素基、不飽和炭化水素基のいずれでもよい。上記鎖状ま
たは分岐炭化水素基としては、炭素数1〜10の飽和ま
たは不飽和の炭化水素基が好ましく、例えば、メチル、
エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i
−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、
neo−ペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル基、ビ
ニル、アリル、イソプロペニル、1−プロペニル、3−
ブテニル、2−ブテニル、1−ブテニル、1−メチル−
2−プロペニル、1−メチル−2−プロペニル、1−メ
チル−1−プロペニル等が挙げられ、上述した条件で電
極酸化を受け易いという点から、特に、メチル基、エチ
ル基、n−プロピル、i−プロピル基が好ましく、中で
もエチル基、i−プロピル基が好適である。上記環状炭
化水素基としては、Cn2nで示されるシクロアルカン
基、芳香族炭化水素基を用いることができ、例えば、シ
クロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、トリル、キ
シリル、クメニル、メシチル、スチリル基等が挙げられ
る。
【0026】また、オキシアルキレン構造を有する鎖状
炭化水素基も用いることができ、特に、−(CH2CH
aO)n−で示される構造を有し、n=1〜30、Ra
=水素原子またはメチル基のものが好適に用いられる。
上記Xは二価の有機基を示し、例えば、−(CH2m
で示されるアルキレン基(m=1〜30)、−(C
2m−で示される基(Rは上記と同じ、m=1〜3
0)等が挙げられる。なお、上記各一般式で示される化
合物において、末端の2つのR基が結合して環状構造と
なり、ラクトン、ラクチド、ラクタム構造等を形成して
いてもよい。
【0027】上記物質の具体例としては、グリシジルメ
タクリレート、グリシジルアクリレート、メタクリル酸
メトキシジエチレングリコール、メタクリル酸メトキシ
ポリエチレングリコール(平均分子量200〜1,20
0)等のアクリル酸またはメタクリル酸エステル、メタ
クリロイルイソシアネート、2−ヒドロキシメチルメタ
クリル酸等が挙げられる。
【0028】このように過充電時に電極で酸化される物
質を非水電解質に加えることで、正極で生じる過充電反
応で消費される電気エネルギーが、正極活物質からのリ
チウムの放出反応ではなく、該物質の電極酸化反応の消
費されることとなり、その結果、図2に示されるよう
に、非水電解質二次電池の過充電時の電池電圧の上昇が
抑制されることとなる。また、この電極酸化反応が起こ
るために、極めて酸化性が高く、熱的に不安定なLi
<0.3CoO2が生じなくなり、電池の暴走反応を起こす
危険性も低くなる。
【0029】本発明の非水電解質二次電池に用いられる
セパレータとしては、上述した電極反応により電池電圧
を4.1〜5.2Vに制御可能であれば、特に限定され
るものではないが、空孔率40%以上のものを用いるこ
とが好ましい。ここで空孔率が40%未満であると、電
解質中の物質が正負極間をスムーズに移動できなくな
り、上述した循環反応の進行が妨げられる虞がある。し
たがって、空孔率は正負極間を隔離できる限度におい
て、できるだけ高いものが好ましく、特に60%以上で
あることが好ましい。
【0030】また、セパレータの材質も特に限定はない
が、セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレンおよび
ポリエステルのいずれか1種以上を含んでなるものが好
ましく、この場合にも空孔率は60%以上であることが
好ましい。さらに、セパレータの厚みは、通常、20〜
50μm、より好ましくは25〜40μm、特に、25
〜35μmであり、この範囲の厚みとすることで、電池
の内部短絡の発生率を低減しつつ、電池の放電負荷特性
の低下を防止することができる。なお、セパレータの構
造としては、特に限定されるものではなく、単層構造の
ものでもよく、複数のフィルムまたはシートを積層した
多層構造のものを用いてもよい。また、セルロース、ポ
リプロピレン、ポリエチレン、およびポリエステルのい
ずれか1種以上の繊維を用いた不織布状のセパレータも
好適に用いることができる。
【0031】上記非水電解質二次電池の非水電解質は、
リチウム塩と有機溶媒とからなる非水系電解質、リチウ
ム塩と分子中に反応性二重結合を有する化合物と有機溶
媒とを主成分とする電解質用組成物をゲル化させて得ら
れるものをいずれも用いることができるが、中でも1種
以上のメタクリル酸エステルおよび/または1種以上の
アクリル酸エステルと、重合開始剤を含む電解質をラジ
カル重合によりゲル化させて得られるゲル電解質である
ことが好ましい。
【0032】上記有機溶媒としては、例えば、環状もし
くは鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状
もしくは鎖状エーテル、リン酸エステル、ラクトン化合
物、ニトリル化合物、アミド化合物等を単独で、または
これらを混合して用いることができる。
【0033】環状炭酸エステルとしては、例えば、プロ
ピレンカーボネート(PC),エチレンカーボネート
(EC),ブチレンカーボネート等のアルキレンカーボ
ネートや、ビニレンカーボネート(VC)などが挙げら
れる。鎖状炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカ
ーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(M
EC)、ジエチルカーボネート(DEC)等のジアルキ
ルカーボネートが挙げられる。鎖状カルボン酸エステル
としては、例えば、酢酸メチル、プロピオン酸メチルな
どが挙げられる。環状または鎖状エーテルとしては、例
えば、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、
1,2−ジメトキシエタンなどが挙げられる。リン酸エ
ステルとしては、例えばリン酸トリメチル、リン酸トリ
エチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチ
ル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸ト
リ(トリフルオロメチル)、リン酸トリ(トリクロロメ
チル)、リン酸トリ(トリフルオロエチル)、リン酸ト
リ(トリパーフルオロエチル)、2−エトキシ−1,
3,2−ジオキサホスホラン−2−オン、2−トリフル
オロエトキシ−1,3,2−ジオキサホスホラン−2−
オン、2−メトキシエトキシ−1,3,2−ジオキサホ
スホラン−2−オンなどが挙げられる。ラクトン化合物
としては、例えば、γ−ブチロラクトンなどが挙げられ
る。ニトリル化合物としては、例えば、アセトニトリル
などが挙げられる。アミド化合物としては、例えば、ジ
メチルフォルムアミドなどが挙げられる。
【0034】これらの中でも、特に、エチレンカーボネ
ート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート
およびジエチルカーボネートから選ばれる1種または2
種以上を有機溶媒として用いることが好ましい。
【0035】また、リチウム塩としては、リチウム二次
電池、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池
に使用できるものであれば特に限定はなく、例えば、4
フッ化硼酸リチウム,6フッ化リン酸リチウム,過塩素
酸リチウム,トリフルオロメタンスルホン酸リチウム,
下記一般式(1)で示されるスルホニルイミドのリチウ
ム塩,下記一般式(2)で示されるスルホニルメチドの
リチウム塩,酢酸リチウム,トリフルオロ酢酸リチウ
ム,安息香酸リチウム,p−トルエンスルホン酸リチウ
ム,硝酸リチウム,臭化リチウム,ヨウ化リチウム,4
フェニル硼酸リチウム等のリチウム塩が挙げられる。 (R1−SO2)(R2−SO2)NLi …(1) (R3−SO2)(R4−SO2)(R5−SO2)CLi …(2) 〔式(1),(2)中、R1〜R5は、それぞれエーテル
基を1個または2個含有してもよい炭素数1〜4のパー
フルオロアルキル基を示す。〕
【0036】上記一般式(1)で示されるスルホニルイ
ミドのリチウム塩としては、具体的には、下記式で表さ
れるものなどが挙げられる。(CF3SO22NLi、
(C25SO22NLi、(C37SO22NLi、
(C49SO22NLi、(CF3SO2)(C25SO
2)NLi、(CF3SO 2)(C37SO2)NLi、
(CF3SO2)(C49SO2)NLi、(C25
2)(C37SO2)NLi、(C25SO2)(C4
9SO2)NLi、(CF3OCF2SO22NLi
【0037】上記一般式(2)で示されるスルホニルメ
チドのリチウム塩としては、具体的には、下記式で表さ
れるものなどが挙げられる。(CF3SO23CLi、
(C25SO23CLi、(C37SO23CLi、
(C49SO23CLi、(CF3SO22(C25
2)CLi、(CF3SO22(C37SO2)CL
i、(CF3SO22(C49SO2)CLi、(CF3
SO2)(C25SO22CLi、(CF3SO2)(C3
7SO22CLi、(CF3SO2)(C49SO22
CLi、(C25SO22(C37SO2)CLi、
(C25SO22(C49SO2)CLi、(CF3OC
2SO23CLi
【0038】これらの中でも、4フッ化硼酸リチウム、
6フッ化リン酸リチウム、上記一般式(1)、および上
記一般式(2)で示されるスルホニルメチドのリチウム
塩が特に高いイオン伝導度を示し、かつ、熱安定性にも
優れたイオン導電性塩であるため好ましい。なお、これ
らのイオン導電性塩は1種を単独でまたは2種以上を組
み合わせて使用することができる。
【0039】また、有機溶媒にリチウム塩を溶解させた
電解質溶液中のリチウム塩の濃度は、通常0.05〜3
mol/L、好ましくは0.1〜2mol/Lである。
リチウム塩の濃度が低すぎると十分なイオン導電性を得
ることができない場合がある。一方、高すぎると有機溶
媒に完全に溶解できない場合がある。
【0040】上述したゲル電解質の場合、電解質用組成
物は、上記リチウム塩および有機溶媒に加え、分子中に
反応性二重結合を2個以上有する化合物を含むものであ
り、好ましくは、さらに直鎖または分岐線状高分子化合
物を含むものである。すなわち、該電解質用組成物をゲ
ル化して得られる高分子ゲル電解質を薄膜に形成して用
いる場合に、形状保持性などの物理的強度を高める点か
ら、分子中に反応性二重結合を2個以上有する化合物を
添加し、この化合物の反応により三次元網目構造を形成
させ、電解質の形状保持能力を高めるものである。
【0041】また、線状高分子化合物をも含む場合に
は、反応性二重結合を有する化合物が架橋してなるポリ
マーの三次元網目構造に、該線状高分子化合物の分子鎖
が相互に絡みついた半相互侵入高分子網目(semi−
Interpenetrating Polymer
Network;(semi−IPN))構造を有する
ゲルが得られ、電解質の形状保持能力および強度を一層
高めることができるとともに、接着性をも高めることが
できるものである。
【0042】上記反応性二重結合を有する化合物として
は、ジビニルベンゼン、ジビニルスルホン、メタクリル
酸アリル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタ
クリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエ
チレングリコール、ジメタクリル酸ポリエチレングリコ
ール(平均分子量200〜1,000)、ジメタクリル
酸1,3−ブチレングリコール、ジメタクリル酸1,6
−ヘキサンジオール、ジメタクリル酸ネオペンチルグリ
コール、ジメタクリル酸ポリプロピレングリコール(平
均分子量400)、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタク
リロキシプロパン、2,2−ビス−[4−(メタクリロ
キシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス−
[4−(メタクリロキシエトキシ・ジエトキシ)フェニ
ル]プロパン、2,2−ビス−[4−(メタクリロキシ
エトキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、ジアク
リル酸エチレングリコール、ジアクリル酸ジエチレング
リコール、ジアクリル酸トリエチレングリコール、ジア
クリル酸ポリエチレングリコール(平均分子量200〜
1,000)、ジアクリル酸1,3−ブチレングリコー
ル、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジアクリ
ル酸ネオペンチルグリコール、ジアクリル酸ポリプロピ
レングリコール(平均分子量400)、2−ヒドロキシ
−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス−
[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、
2,2−ビス−[4−(アクリロキシエトキシ・ジエト
キシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス−[4−(ア
クリロキシエトキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパ
ン、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメ
チロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロー
ルメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテ
トラアクリレート、水溶性ウレタンジアクリレート、水
溶性ウレタンジメタクリレート、トリシクロデカンジメ
タノールアクリレート、水素添加ジシクロペンタジエン
ジアクリレート、ポリエステルジアクリレート、ポリエ
ステルジメタクリレート等の分子中に反応性二重結合を
2個以上有する化合物が挙げられる。
【0043】また必要に応じて、例えば、グリシジルメ
タクリレート、グリシジルアクリレート、メタクリル酸
メトキシジエチレングリコール、メタクリル酸メトキシ
トリエチレングリコール、メタクリル酸メトキシポリエ
チレングリコール(平均分子量200〜1,200)等
のアクリル酸またはメタクリル酸エステル、メタクリロ
イルイソシアネート、2−ヒドロキシメチルメタクリル
酸、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸等の分
子中にアクリル酸基またはメタクリル酸基を1つ有する
化合物を添加することができる。さらに、N−メチロー
ルアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、ダイ
アセトンアクリルアミド等のアクリルアミド化合物、ビ
ニルオキサゾリン類、炭酸ビニレン等のビニル化合物な
ど、またはその他の反応性の二重結合を有する化合物を
添加することもできる。
【0044】ポリマー三次元網目構造を形成するために
は、上記分子中に反応性二重結合を2個以上有する化合
物を添加する必要がある。すなわち、メタクリル酸メチ
ルのような反応性二重結合を1つしか持たない化合物だ
けでは、ポリマー三次元網目構造を形成することはでき
ないので、一部に少なくとも反応性二重結合を2つ以上
有する化合物を添加する必要がある。
【0045】上記反応性二重結合を含有する化合物の中
でも特に好ましい反応性モノマーとしては、下記一般式
(3)で示されるポリオキシアルキレン成分を含有する
ジエステル化合物が挙げられ、これと下記一般式(4)
で示されるポリオキシアルキレン成分を含有するモノエ
ステル化合物、およびトリエステル化合物とを組み合わ
せて用いることが推奨される。
【0046】
【化1】 (但し、式中、R6〜R8は、水素原子、またはメチル
基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−
ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基
等の炭素数1〜6、特に1〜4のアルキル基を示し、X
≧1かつY≧0の条件を満足するものか、またはX≧0
かつY≧1の条件を満足するものであり、好ましくはR
6〜R8は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−
プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル
基、t−ブチル基である。)
【0047】
【化2】 (但し、式中、R9〜R11は、水素原子、またはメチル
基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−
ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基
等の炭素数1〜6、特に1〜4のアルキル基を示し、A
≧1かつB≧0の条件を満足するものか、またはA≧0
かつB≧1の条件を満足するものであり、好ましくはR
9〜R11は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i
−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチ
ル基、t−ブチル基である。)
【0048】上記式(3)において、例えば、X=9、
Y=0、R6=R8=CH3が好ましく用いられる。一
方。上記式(4)において、例えばA=2または9、B
=0、R9=R11=CH3が好ましく用いられる。また、
トリエステル化合物としては、トリメチロールプロパン
トリメタクリレートが好適である。
【0049】上記ポリオキシアルキレン成分を含有する
ジエステル化合物とポリオキシアルキレン成分を含有す
るモノエステル化合物は、イオン導電性塩と有機溶媒と
の混合物中で紫外線、電子線、X線、γ線、マイクロ
波、高周波などを照射することにより、または混合物を
加熱することにより、ポリマー三次元架橋ネットワーク
構造を形成する。この場合、一般にはポリオキシアルキ
レン成分を含有するジエステル化合物は、これ単独で重
合を行い、ポリマー三次元架橋ネットワークを形成する
ことができるが、上述したように、このポリオキシアル
キレン成分を含有するジエステル化合物に、さらに一官
能性モノマーであるポリオキシアルキレン成分を含有す
るモノエステル化合物を添加することによって、三次元
網目上にポリオキシアルキレン分岐鎖を導入することが
できる。
【0050】ここで、ポリオキシアルキレン成分を含有
するジエステル化合物およびモノエステル化合物と、ト
リエステル化合物との組成比は、ポリオキシアルキレン
成分の長さによって適宜設定されるものであり、特に限
定されるものではないが、モル比で、 〔ジエステル化合物/モノエステル化合物〕=0.1〜
2、特に0.3〜1.5 〔ジエステル化合物/トリエステル化合物〕=2〜1
5、特に3〜10 の範囲内がゲル強度向上という点から見て好ましい。
【0051】上記反応性二重結合を有する化合物に、直
鎖または分岐線状高分子化合物を添加してSemi−I
PN構造を形成させることもできる。この場合、必要な
直鎖または分岐線状高分子化合物としては、線状高分子
化合物であれば、特に限定されるものではないが、例え
ば、(a)ヒドロキシアルキル多糖誘導体、(b)オキ
シアルキレン分岐型ポリビニルアルコール誘導体、
(c)ポリグリシドール誘導体、(d)シアノ基置換一
価炭化水素基含有ポリビニルアルコール誘導体、等が挙
げられる。
【0052】上記(a)ヒドロキシアルキル多糖類誘導
体としては、セルロース、デンプン、プルランなどの
天然に産出される多糖類にエチレンオキシドを反応させ
ることによって得られるヒドロキシエチル多糖類、上
記多糖類にプロピレンオキシドを反応させることによっ
て得られるヒドロキシプロピル多糖類、上記多糖類に
グリシドールまたは3−クロロ−1,2−プロパンジオ
ールを反応させることによって得られるジヒドロキシプ
ロピル多糖類等が挙げられ、これらヒドロキシアルキル
多糖類の水酸基の一部または全てがエステル結合もしく
はエーテル結合を介した置換基で封鎖されたものであ
る。なお、上記ヒドロキシアルキル多糖類は、モル置換
度が2〜30、好ましくは2〜20のものである。モル
置換度が2より小さい場合、イオン導電性塩類を溶解す
る能力が低すぎて使用に適さない。
【0053】上記(b)オキシアルキレン分岐型のポリ
ビニルアルコール誘導体としては、分子中に下記一般式
(5)で示されるポリビニルアルコール単位を有する平
均重合度20以上の高分子化合物における上記ポリビニ
ルアルコール単位中の水酸基の一部または全部が、平均
モル置換度0.3以上のオキシアルキレン含有基で置換
されてなる高分子化合物を好適に用いることができる。
【0054】
【化3】 (式中、nは20〜10,000であることが好まし
い。)
【0055】すなわち、上記高分子化合物は、オキシア
ルキレン分率が高いために、多くのイオン導電性塩を溶
解できる能力を有するとともに、分子中にイオンが移動
するオキシアルキレン部分が多くなるので、イオンが移
動し易くなる。その結果、高いイオン導電性を発現でき
る。また、上記高分子化合物は高い粘着性を備えている
から、バインダー成分としての役割および正負極を強固
に接着する機能を十分発揮でき、該高分子化合物からな
る高分子電解質用ポリマーにイオン導電性塩を高濃度に
溶解させた組成物を、フィルム電池等の高分子ゲル電解
質として好適に用いることができる。
【0056】このような高分子化合物としては、ポリ
ビニルアルコール単位を有する高分子化合物と、エチレ
ンオキシド、プロピレンオキシド、グリシドール等のオ
キシラン化合物とを反応させて得られる高分子化合物
(ジヒドロキシプロピル化ポリエチレンビニルアルコー
ル、プロピレンオキシド化ポリビニルアルコール等)、
ポリビニルアルコール単位を有する高分子化合物と、
水酸基に対して反応性を有する置換基を末端に有するポ
リオキシアルキレン化合物とを反応させて得られる高分
子化合物が挙げられる。なお、ポリビニルアルコール単
位を有する高分子化合物とオキシラン化合物、またはオ
キシアルキレン化合物との反応は、水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム、種々のアミン化合物などの塩基性触媒
を用いて行うことができる。
【0057】ここで、ポリビニルアルコール単位を有す
る高分子化合物は、分子中にポリビニルアルコール単位
を有する数平均重合度20以上、好ましくは30以上、
さらに好ましくは50以上の高分子化合物において、上
記ポリビニルアルコール単位中の水酸基の一部または全
部がオキシアルキレン含有基によって置換されたもので
ある。この場合、数平均重合度の上限は、取り扱い性等
を考慮すると、2,000以下、より好ましくは500
以下、特に200以下であることが好ましい。
【0058】上記ポリビニルアルコール単位を有する高
分子化合物は、上記数平均重合度範囲を満たし、かつ、
分子中のポリビニルアルコール単位の分率が98モル%
以上のホモポリマーが最適であるが、これに限定される
ものではなく、上記数平均重合度範囲を満たし、かつ、
ポリビニルアルコール分率が好ましくは60モル%以
上、より好ましくは70モル%以上のポリビニルアルコ
ール単位を有する高分子化合物、例えば、ポリビニルア
ルコールの水酸基の一部がホルマール化されたポリビニ
ルホルマール、ポリビニルアルコールの水酸基の一部が
アルキル化された変性ポリビニルアルコール、ポリ(エ
チレンビニルアルコール)、部分ケン化ポリ酢酸ビニ
ル、その他の変性ポリビニルアルコール等を用いること
ができる。
【0059】この高分子化合物は、上記ポリビニルアル
コール単位中の水酸基の一部または全部が平均モル置換
度0.3以上のオキシアルキレン含有基(なお、このオ
キシアルキレン基は、その水素原子の一部が水酸基によ
って置換されていてもよい)で置換されているものであ
り、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モ
ル%以上置換されているものである。ここで、平均のモ
ル置換度(MS)は、仕込み質量と反応生成物の質量を
正確に測定することで算出できる。
【0060】上記(c)ポリグリシドール誘導体は、下
記式(6)で示される単位(以下、A単位という)と、
下記式(7)で示される単位(以下、B単位という)と
を有し、分子鎖の各末端が分子鎖の末端が所定の置換基
により封鎖されたものである。
【0061】
【化4】
【0062】ここで、上記ポリグリシドールは、グリシ
ドールまたは3−クロロ−1,2−プロパンジオールを
重合させることにより得ることができるが、一般的に
は、グリシドールを原料とし、塩基性触媒またはルイス
酸触媒を用いて重合を行うことが好ましい。
【0063】上記ポリグリシドールは、分子中にA,B
二つの単位を両者合わせて2個以上、好ましくは6個以
上、より好ましくは10個以上有するものである。この
場合、上限は特に制限されないが、通常10,000個
以下程度である。これら各単位の合計数は、必要とする
ポリグリシドールの流動性および粘性等を考慮して適宜
設定すればよい。また、分子中のA単位とB単位との比
率は、モル比でA:B=1/9〜9/1、好ましくは3
/7〜7/3である。なお、A,B単位の出現には規則
性はなく、任意の組み合わせが可能である。
【0064】さらに、上記ポリグリシドールにおけるゲ
ル濾過クロマトグラフィー(GPC)を用いたポリエチ
レングリコール換算の重量平均分子量(Mw)が好まし
くは200〜730,000、より好ましくは200〜
100,000、さらに好ましくは600〜20,00
0のものである。また、平均分子量比(Mw/Mn)が
1.1〜20、より好ましくは1.1〜10である。
【0065】これら上記線状高分子化合物(a)〜
(c)は、分子中の水酸基の一部または全部、好ましく
は10モル%以上をハロゲン原子、炭素数1〜10の非
置換または置換一価炭化水素基、R12CO−基(R12
炭素数1〜10の非置換または置換一価炭化水素基)、
12 3Si−基(R12は上記と同じ)、アミノ基、アル
キルアミノ基およびリン原子を有する基から選ばれる1
種または2種以上の一価の置換基により封鎖し、水酸基
封鎖ポリマー誘導体を得ることができる。
【0066】ここで、炭素数1〜10の非置換または置
換の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチ
ル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペ
ンチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のア
リール基、ベンジル基等のアラルキル基、ビニル基等の
アルケニル基、これらの基の水素原子の一部または全部
をハロゲン原子、シアノ基、水酸基、アミノ基等で置換
したもの等が挙げられ、これらの1種を単独でまたは2
種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】この場合、上記置換基によるオキシアルキ
レン鎖を持つ線状高分子化合物(a)〜(c)の水酸基
の封鎖には、高濃度にイオン導電性塩を含むポリマー
において、低誘電率の高分子マトリックス中では解離し
たカチオンと対アニオンとの再結合が生じやすく、導電
性の低下が生じるが、高分子マトリックスの極性を上げ
るとイオンの会合が起こりにくくなるので、オキシアル
キレン基を持つ線状高分子化合物(a)〜(c)の水酸
基に極性基を導入することにより、マトリックス高分子
の誘電率を上げる目的と、線状高分子化合物(a)〜
(c)に疎水性、難燃性などの優れた特性を付与する目
的とがある。
【0068】ここで、線状高分子化合物(a)〜
(c)の誘電率を上げるためには、オキシアルキレン鎖
を持つ線状高分子化合物(a)〜(c)と、水酸基に対
する反応性を有する化合物とを反応させることにより、
この線状高分子化合物の水酸基の高極性の置換基で封鎖
する。このような高極性の置換基としては、特に制限さ
れるものではないが、イオン性の置換基より中性の置換
基の方が好ましく、例えば、炭素数1〜10の非置換ま
たは置換一価炭化水素基、R12CO−基(R12は上記と
同じ)等が挙げられる。また、必要に応じてアミノ基、
アルキルアミノ基などで封鎖することもできる。
【0069】一方、線状高分子化合物(a)〜(c)
に疎水性、難燃性を付与する場合には、上記線状高分子
化合物の水酸基をハロゲン原子、R12 3Si−基(R12
は上記と同じ)、リン原子を有する基などで封鎖する。
ここで、上記置換基について具体的に説明すると、ハロ
ゲン原子としてはフッ素、臭素、塩素等が挙げられ、炭
素数1〜10(好ましくは1〜8)の非置換または置換
一価炭化水素基としては上記と同様のものを例示するこ
とができる。
【0070】R12 3Si−基としては、R12が炭素数1
〜10(好ましくは1〜6)の上記と同様の非置換また
は置換一価炭化水素基であるものが挙げられ、好ましく
はR 12はアルキル基であり、トリアルキルシリル基、中
でもトリメチルシリル基が好ましい。また、上記置換基
は、アミノ基、アルキルアミノ基、リン原子を有する基
などであってもよい。ここで、上記置換基による末端封
鎖率は10モル%以上であることが好ましく、より好ま
しくは50モル%以上、さらに好ましくは90モル%以
上であり、実質的に全ての末端を上記置換基にて封鎖す
る(封鎖率約100モル%)こともできる。
【0071】なお、ポリマー分子鎖の総ての末端水酸基
をハロゲン原子、R12 3Si−基、リン原子を有する基
で封鎖すると、ポリマー自体のイオン導電性塩溶解能力
が低下する場合があるので、溶解性の程度を考慮しつ
つ、適当量の置換基を導入する必要がある。具体的には
全末端(水酸基)に対して10〜95モル%、好ましく
は50〜95モル%、さらに好ましくは50〜90モル
%である。本発明においては、上記置換基の中でも、特
にシアノ基置換一価炭化水素基が好ましく、具体的には
シアノエチル基、シアノベンジル基、シアノベンゾイル
基、その他のアルキル基にシアノ基が結合した置換基な
どが挙げられる。
【0072】上記(d)シアノ基置換一価炭化水素基置
換ポリビニルアルコール誘導体として、上述の一般式
(5)で示される分子中にポリビニルアルコール単位を
有する平均重合度20以上の高分子化合物における上記
ポリビニルアルコール単位中の水酸基の一部または全部
が、シアノ基置換一価炭化水素基で置換された高分子化
合物も好適に用いることができる。すなわち、当該高分
子化合物は、側鎖が比較的短いものであるため、電解質
用組成物の粘度を低く抑えることができ、該組成物の電
池構造体等への浸透を速やかに行え、電池等の生産性向
上および性能向上を図ることができる。
【0073】このような高分子化合物としては、シアノ
エチル基、シアノベンジル基、シアノベンゾイル基等で
水酸基の一部または全部が置換されたポリビニルアルコ
ールが挙げられ、側鎖が短いという点を考慮すると、特
にシアノエチルポリビニルアルコールが好適である。な
お、ポリビニルアルコールの水酸基をシアノ基置換一価
炭化水素基で置換する手法としては、公知の種々の方法
を採用できる。
【0074】上記分子中に反応性二重結合を2つ以上有
する化合物の配合量は、電解質用組成物全体に対して1
重量%以上、好ましくは5〜40重量%である。分子中
に反応性二重結合を2つ以上有する化合物が少なすぎる
と膜強度が上がらなくなる場合がある。一方、多すぎる
と電解質用組成物中のイオン導電性金属塩溶解能力が低
下し、塩が析出したり、強度が低下し、脆くなる等の不
都合が生じる場合がある。
【0075】上述した電解質用組成物をゲル化させて高
分子ゲル電解質を得る方法としては、特に限定されるも
のではなく、例えば、以下に示したものが挙げられる。
すなわち、上記電解質溶液、分子中に反応性二重結合を
2個以上有する化合物に、紫外線、電子線、X線、γ
線、マイクロ波、高周波などを照射することにより、ま
たは加熱することにより、三次元網目構造を形成し、電
解質溶液を含んだ高分子ゲル電解質を得ることができ
る。また、上記電解質溶液、分子中に反応性二重結合を
有する化合物、線状高分子化合物を配合してなる組成物
に、上記と同様に紫外線等の照射、加熱等を行うこと
で、分子中に反応性二重結合を2個以上有する化合物を
反応または重合させて生成した三次元網目構造と、線状
高分子化合物の分子鎖とが相互に絡み合った三次元架橋
ネットワーク(semi−IPN)構造を有する高分子
ゲル電解質を得ることができる。
【0076】上記重合反応としては、ラジカル重合反応
を行うことが好適であり、重合反応を行う場合は、通
常、重合開始剤を添加する。このような重合開始剤(触
媒)としては、特に限定はなく、以下に示すような公知
の種々の重合開始剤を用いることができる。
【0077】例えば、アセトフェノン,トリクロロアセ
トフェノン,2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェ
ノン,2−ヒドロキシ−2−メチルイソプロピオフェノ
ン,1−ヒドロキシシクロヘキシルケトン,ベンゾイン
エーテル,2,2−ジエトキシアセトフェノン,ベンジ
ルジメチルケタール等の光重合開始剤、クメンヒドロペ
ルオキシド,t−ブチルヒドロペルオキシド,ジクミル
ペルオキシド,ジ−t−ブチルペルオキシド等の高温熱
重合開始剤、過酸化ベンゾイル,過酸化ラウロイル,過
硫酸塩,2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロ
ニトリル),2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,
4−ジメチルバレロニトリル),2,2′−アゾビスイ
ソブチロニトリル等の熱重合開始剤、過酸化水素・第1
鉄塩,過硫酸塩・酸性亜硫酸ナトリウム,クメンヒドロ
ペルオキシド・第1鉄塩,過酸化ベンゾイル・ジメチル
アニリン等の低温熱重合開始剤(レドックス開始剤)、
過酸化物・有機金属アルキル、トリエチルホウ素、ジエ
チル亜鉛、酸素・有機金属アルキル等を用いることがで
きる。
【0078】これらの重合開始剤の1種を単独でまたは
2種以上を混合して用いることができ、その添加量は、
電解質用組成物100重量部に対して0.1〜1重量
部、好ましくは0.1〜0.5重量部の範囲である。触
媒の添加量が0.1重量部未満では重合速度が著しく低
下する場合がある。一方、1重量部を超えても反応性に
影響はなく、試薬の無駄となるだけである。
【0079】上記高分子ゲル電解質は、分子内に反応性
二重結合を2個以上有する化合物を反応させた三次元網
目構造を有するものであり、優れた強度を有し、形状保
持能力の高いものである。さらに、線状高分子化合物を
用い、三次元網目構造中に高分子化合物が絡みついた強
固な半相互侵入高分子網目構造を形成した場合には、異
種高分子鎖間の相溶性を向上することができるととも
に、相間結合力を高めることができ、結果として、形状
保持能力を飛躍的に向上させることができる。
【0080】しかも、半相互侵入高分子網目構造を有す
る場合、分子構造はアモルファスであり、結晶化してい
ないため、分子内をイオン導電体がスムーズに移動する
ことができ、室温で10-3〜10-4S/cm程度の高導
電性および高粘着性を有する上に、蒸発、液漏れの心配
がなく、リチウムイオン二次電池等をはじめとする各種
二次電池の高分子ゲル電解質として好適に使用すること
ができるものである。
【0081】なお、高分子ゲル電解質を薄膜化する方法
としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコ
ーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレー
ド法、スピンコーティング、バーコーダーなどの手段を
用いて、均一な厚みの電解質膜に形成することができ
る。
【0082】上記非水電解質二次電池の正極としては、
正極集電体の表裏両面または片面に、バインダーポリマ
ーと正極活物質とを主成分として含む正極用バインダー
組成物を塗布してなるものを用いることができる。な
お、バインダーポリマーと正極活物質とを主成分として
含む正極用バインダー組成物を溶融混練した後、押出
し、フィルム成形することにより正極を形成することも
できる。
【0083】上記バインダーポリマーとしては、当該用
途に使用できるポリマーであれば特に限定はないが、例
えば、(I)下記式から求めた膨潤率が150〜800
重量%の範囲である熱可塑性樹脂、(II)フッ素系高
分子材料等を一種単独で、または(I),(II)の二
種以上を組み合わせて用いることが好ましい。また、上
記(I)の熱可塑性樹脂は、下記式から求めた膨潤率が
150〜800重量%の範囲であり、より好ましくは2
50〜500重量%、さらに好ましくは250〜400
重量%である。
【0084】
【数1】
【0085】このような熱可塑性樹脂としては、(D)
ポリオール化合物と、(E)ポリイソシアネート化合物
と、必要に応じて(F)鎖伸長剤とを反応させてなる熱
可塑性ポリウレタン系樹脂を用いることが好ましい。な
お、熱可塑性ポリウレタン系樹脂には、ウレタン結合を
有するポリウレタン樹脂以外にも、ウレタン結合とウレ
ア結合とを有するポリウレタンウレア樹脂も含まれる。
【0086】(D)成分のポリオール化合物としては、
ポリエステルポリオール,ポリエステルポリエーテルポ
リオール,ポリエステルポリカーボネートポリオール,
ポリカプロラクトンポリオール、またはこれらの混合物
を用いることが好ましい。このような(D)成分のポリ
オール化合物の数平均分子量は1,000〜5,000
であることが好ましく、より好ましくは1,500〜
3,000である。ポリオール化合物の数平均分子量が
小さすぎると、得られる熱可塑性ポリウレタン系樹脂フ
ィルムの耐熱性、引張り伸び率などの物理特性が低下す
る場合がある。一方、大きすぎると、合成時の粘度が上
昇し、得られる熱可塑性ポリウレタン系樹脂の製造安定
性が低下する場合がある。なお、ここでいうポリオール
化合物の数平均分子量は、いずれもJIS K1577
に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均
分子量を意味する。
【0087】(E)成分のポリイソシアネート化合物と
しては、例えば、トリレンジイソシアネート,4,4′
−ジフェニルメタンジイソシアネート,p−フェニレン
ジイソシアネート,1,5−ナフチレンジイソシアネー
ト,キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシア
ネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート,イソホロ
ンジイソシアネート,4,4′−ジシクロヘキシルメタ
ンジイソシアネート,水添化キシリレンジイソシアネー
ト等の脂肪族または脂環式ジイソシアネート類等が挙げ
られる。
【0088】(F)成分の鎖伸長剤としては、イソシア
ネート基および反応性の活性水素原子を分子中に2個有
し、かつ分子量が300以下である低分子量化合物を用
いることが好ましい。このような低分子量化合物として
は、公知の種々の化合物を使用でき、例えば、エチレン
グリコール,プロピレングリコール,1,3−プロパン
ジオール等の脂肪族ジオール、1,4−ビス(β−ヒド
ロキシエトキシ)ベンゼン,1,4−シクロヘキサンジ
オール,ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート
等の芳香族ジオールまたは脂環式ジオール、ヒドラジ
ン,エチレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン,キシ
リレンジアミン等のジアミン、アジピン酸ヒドラジド等
のアミノアルコール等が挙げられ、これらの1種を単独
でまたは2種以上を組合わせて用いることができる。
【0089】なお、上記熱可塑性ポリウレタン系樹脂に
おいては、(D)成分のポリオール化合物100重量部
に対して(E)成分のポリイソシアネート化合物を5〜
200重量部、好ましくは20〜100重量部添加し、
(F)成分の鎖伸長剤を1〜200重量部、好ましくは
5〜100重量部添加する。
【0090】また、上記(I)のバインダーポリマーと
しては、下記一般式(8)で表わされる単位を含む熱可
塑性樹脂を用いることもできる。
【0091】
【化5】 (式中、rは3〜5、sは5以上の整数を示す。)
【0092】次に、上記(II)のバインダーポリマー
であるフッ素系高分子材料としては、例えば、ポリフッ
化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデンとヘキサ
フルオロプロピレンとの共重合体〔P(VDF−HF
P)〕、フッ化ビニリデンと塩化3フッ化エチレンとの
共重合体〔P(VDF−CTFE)〕等が好ましく用い
られる。これらの内でも、フッ化ビニリデンが50重量
%以上、特に70重量%以上(上限値は97重量%程度
である)であるものが好適である。この場合、フッ素系
ポリマーの重量平均分子量は、特に限定はないが、50
0,000〜2,000,000が好ましく、より好ま
しくは500,000〜1,500,000である。重
量平均分子量が小さすぎると物理的強度が著しく低下す
る場合がある。
【0093】上記正極集電体としては、ステンレス鋼、
アルミニウム、チタン、タンタル、ニッケル等を用いる
ことができる。これらの中でも、アルミニウム箔または
酸化アルミニウム箔が性能と価格との両面から見て好ま
しい。この正極集電体は、箔状、エキスパンドメタル
状、板状、発泡状、ウール状、ネット状等の三次元構造
などの種々の形態のものを採用することができる。
【0094】上記正極活物質は、電池の種類などに応じ
て適宜選定されるが、リチウム二次電池の正極とする場
合には、例えば、CuO,Cu2O,Ag2O,CuS,
CuSO2等のI族金属化合物、TiS,SiO2,Sn
O等のIV族金属化合物、V 25,V613,VOx,N
25,Bi23,Sb23等のV族金属化合物、Cr
3,Cr23,MoO3,MoS2,WO3,SeO2
のVI族金属化合物、MnO2,Mn24等のVII族
金属化合物、Fe23,FeO,Fe34,Ni23
NiO,CoO2等のVIII族金属化合物、ポリピロ
ール,ポリアニリン,ポリパラフェニレン,ポリアセチ
レン,ポリアセン系材料等の導電性高分子化合物などが
挙げられる。
【0095】また、リチウムイオン二次電池の場合に
は、リチウムイオンを吸着離脱可能なカルコゲン化合
物、またはリチウムイオン含有カルコゲン化合物(リチ
ウム含有複合酸化物)等が用いられる。ここで、リチウ
ムイオンを吸着離脱可能なカルコゲン化合物としては、
例えば、FeS2、TiS2、MoS2、V25、V
613、MnO2等が挙げられる。一方、リチウムイオン
含有カルコゲン化合物(リチウム含有複合酸化物)とし
ては、例えば、LiCoO2、LiMnO2、LiMn2
4、LiMo24、LiV38、LiNiO2、Lix
Niy1-y2(但し、Mは、Co,Mn,Ti,C
r,V,Al,Sn,Pb,Znから選ばれる少なくと
も1種以上の金属元素を表し、0.05≦x≦1.1
0、0.5≦y≦1.0)等が挙げられる。
【0096】なお、正極用バインダー組成物には、上述
のバインダー樹脂および正極活物質以外にも、必要に応
じて導電材を添加することができる。導電材としては、
カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブ
ラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、天然黒鉛、人
造黒鉛などが挙げられる。
【0097】上記正極用バインダー組成物において、バ
インダー樹脂100重量部に対して正極活物質の添加量
は1,000〜5,000重量部、好ましくは1,20
0〜3,500重量部であり、導電材の添加量は20〜
500重量部、好ましくは50〜400重量部である。
【0098】本発明の非水電解質二次電池に用いられる
負極は、負極集電体の表裏両面または片面に、バインダ
ーポリマーと負極活物質とを主成分として含む負極用バ
インダー組成物を塗布してなるものである。ここで、バ
インダーポリマーとしては、正極と同じものを用いるこ
とができる。なお、バインダーポリマーと負極活物質と
を主成分として含む負極用バインダー組成物を溶融混練
した後、押出し、フィルム成形することにより負極を形
成してもよい。
【0099】負極集電体としては、銅、ステンレス鋼、
チタン、ニッケルなどが挙げられ、これらの中でも、銅
箔または表面が銅メッキ膜にて被覆された金属箔が性能
と価格との両面から見て好ましい。この集電体は、箔
状、エキスパンドメタル状、板状、発泡状、ウール状、
ネット状等の三次元構造などの種々の形態のものを採用
することができる。
【0100】上記負極活物質としては、アルカリ金属、
アルカリ合金、炭素質材料、上記正極活物質と同じ材料
等を用いることができる。この場合、アルカリ金属とし
ては、Li、Na、K等が挙げられ、アルカリ金属合金
としては、例えば、金属Li、Li−Al、Li−M
g、Li−Al−Ni、Na、Na−Hg、Na−Zn
等が挙げられる。また、炭素質材料としては、グラファ
イト,カーボンブラック,コークス,ガラス状炭素,炭
素繊維、またはこれらの焼結体等が挙げられる。
【0101】なお、リチウムイオン二次電池の場合に
は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出する材料を用
いることとなる。かかる材料としては、難黒鉛化炭素系
材料や黒鉛系材料等の炭素質材料を使用することができ
る。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類(ピッ
チコークス、ニートルコークス、石油コークス)、黒鉛
類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体(フェノ
ール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化し
たもの)、炭素繊維、活性炭等の炭素質材料を使用する
ことができる。このほか、リチウムイオンを可逆的に吸
蔵、放出し得る材料としては、ポリアセチレン、ポリピ
ロール等の高分子やSnO2等の酸化物を使用すること
もできる。なお、負極用バインダー組成物にも、必要に
応じて導電材を添加することができる。導電材として
は、前述の正極用バインダーと同様のものが挙げられ
る。
【0102】上記負極用バインダー組成物において、バ
インダーポリマー100重量部に対して負極活物質の添
加量は500〜1,700重量部、好ましくは700〜
1,300重量部であり、導電材の添加量は0〜70重
量部、好ましくは0〜40重量部である。
【0103】上記負極用バインダー組成物および正極用
バインダー組成物は、通常、分散媒を加えてペースト状
で用いられる。分散媒としては、例えば、N−メチル−
2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジ
メチルアセトアミド、ジメチルスルホアミド等の極性溶
媒が挙げられる。この場合、分散媒の添加量は、正極用
または負極用バインダー組成物100重量部に対して3
0〜300重量部程度である。
【0104】なお、正極および負極を薄膜化する方法と
しては、特に制限されないが、例えば、アプリケータロ
ール等のローラーコーティング、スクリーンコーティン
グ、ドクターブレード法、スピンコーティング、バーコ
ーター等の手段を用いて、乾燥後における活物質層の厚
さを10〜200μm、特に50〜150μmの均一な
厚みに形成することが好ましい。
【0105】上記非水電解質二次電池は、上述した正極
と負極との間にセパレータを介在させてなる電池構造体
を、積層、折畳、または捲回させて、さらにラミネート
型やコイン型に形成し、これを電池缶またはラミネート
パック等の電池容器に収容し、電池缶であれば封缶、ラ
ミネートパックであればヒートシールすることで、組み
立てられる。この場合、セパレータを正極と負極との間
に介在させ、電池容器に収容した後、非水系電解質,電
解質用組成物を充填し、電極間、セパレータと電極間の
空隙に十分に浸透させ、さらに電解質用組成物の場合は
加熱等により反応硬化させることとなる。
【0106】以上説明したように、本発明の電圧制御方
法を適用した非水電解質二次電池は、過充電特性に優れ
ており、保護回路を設けずに過充電した場合でも危険性
がないことから、電池の製造工程の簡略化および製造コ
ストの低減化を図ることができる。また、空孔率の高い
セパレータと高分子ゲル電解質とを組み合わせて用いた
場合には、二次電池の大電流放電特性を維持しつつ、内
部短絡の発生率を一層低くすることが可能となる。
【0107】したがって、上記非水電解質二次電池は、
ビデオカメラ、ノート型パソコン、携帯電話,PHS等
の携帯端末などの主電源、メモリのバックアップ電源用
途をはじめとしたパソコン等の瞬時停電対策用電源、電
気自動車またはハイブリッド自動車への応用、太陽電池
と併用したソーラー発電エネルギー貯蔵システム等の様
々な用途に好適に用いることができるものである。
【0108】
【実施例】以下、合成例、実施例および比較例を挙げ
て、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の
実施例に制限されるものではない。
【0109】[合成例1] ポリビニルアルコール誘導
体の合成 撹拌羽根を装着した反応容器にポリビニルアルコール
(平均重合度500,ビニルアルコール分率=98%以
上)3重量部と、1,4−ジオキサン20重量部と、ア
クリロニトリル14重量部とを仕込み、撹拌下で水酸化
ナトリウム0.16重量部を水1重量部に溶解した水溶
液を徐々に加え、25℃で10時間撹拌した。次に、イ
オン交換樹脂(商品名;アンバーライト IRC−7
6,オルガノ株式会社製)を用いて中和した。イオン交
換樹脂を濾別した後、溶液に50重量部のアセトンを加
えて不溶物を濾別した。アセトン溶液を透析膜チューブ
に入れ、流水で透析した。透析膜チューブ内に沈殿する
ポリマーを集めて、再びアセトンに溶解して濾過し、ア
セトンを蒸発させてシアノエチル化された合成例1のP
VA誘導体を得た。得られたポリマー誘導体は、赤外吸
収スペクトルにおける水酸基の吸収は確認できず、水酸
基が完全にシアノエチル基で封鎖されている(封鎖率1
00%)ことが確認できた。
【0110】得られたPVAポリマー3重量部をジオキ
サン20重量部とアクリロニトリル14重量部に混合し
た。この混合溶液に水酸化ナトリウム0.16重量部を
1重量部の水に溶解した水酸化ナトリウム水溶液を加え
て、25℃で10時間撹拌した。次に、イオン交換樹脂
(商品名;アンバーライト IRC−76,オルガノ
(株)製)を用いて中和した。イオン交換樹脂を濾別し
た後、溶液に50重量部のアセトンを加えて不溶物を濾
別した。濾過後のアセトン溶液を透析膜チューブに入
れ、流水で透析し、透析膜チューブ内に沈殿するポリマ
ーを集めて、再びアセトンに溶解して濾過し、アセトン
を蒸発させてシアノエチル化されたPVAポリマー誘導
体を得た。得られたポリマー誘導体は、赤外吸収スペク
トルにおける水酸基の吸収は確認できず、水酸基が完全
にシアノエチル基で封鎖されている(封鎖率100%)
ことが確認できた。
【0111】[合成例2] 熱可塑性ポリウレタン系樹
脂の合成 撹拌機、温度計および冷却管を備えた反応器に、予め加
熱脱水したポリカプロラクトンジオール(プラクセル2
20N、ダイセル化学工業(株)製)64.34重量部
と、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート2
8.57重量部とを仕込み、窒素気流下、120℃で2
時間撹拌・混合した後、1,4−ブタンジオール7.0
9重量部を加えて、同様に窒素気流下、120℃にて反
応させた。反応が進行し、反応物がゴム状になった時点
で反応を停止した。その後、反応物を反応器から取り出
し、100℃で12時間加熱し、赤外線吸収スペクトル
でイソシアネート基の吸収ピークが消滅したのを確認し
た後加熱を止め、固体状のポリウレタン樹脂を得た。
【0112】得られたポリウレタン樹脂の重量平均分子
量(Mw)は1.71×105であった。このポリウレ
タン樹脂8重量部をN−メチル−2−ピロリドン92重
量部に溶解することによって、ポリウレタン樹脂溶液を
得た。
【0113】[実施例1] 二次電池1 〈正極の作製〉正極活物質であるLiCoO2(正同化
学(株)製)、導電材であるケッチェンブラックEC
(ライオン(株)製)、ポリフッ化ビニリデン(PVD
F1300、呉羽化学(株)製)、合成例2のポリウレ
タン(PU)を、それぞれ質量配合比100.0:4.
35:4.13:2.72の比率で混合し、さらに1−
メチル−2−ピロリドン(NMP、LiCoO2100
に対して質量比56.74)(和光純薬工業(株)製)
に溶解し、分散・混合させてスラリーを作製した。この
スラリーをアルミシート(厚さ0.020mm、日本製
箔(株)製)に塗布した後、乾燥、圧延して50.0m
m(内、塗布部:40.0mm)×20.0mmおよび
50.0×270.0mmに裁断し、正極を得た。
【0114】〈負極の作製〉負極活物質であるMCMB
(MCMB6−28、大阪ガスケミカル(株)製)、ポ
リフッ化ビニリデン(PVDF900、呉羽化学(株)
製)を、それぞれ質量配合比100.0:8.70の比
率で混合し、さらにNMP(MCMB100に対して質
量比121.7)に溶解し、分散・混合させてスラリー
を作製した。このスラリーを銅箔(厚さ0.010m
m、日本製箔(株)製)に塗布した後、乾燥、圧延して
50.0mm(内、塗布部:40.0mm)×20.0
mmおよび50.0×270.0mmに裁断し、負極を
得た。
【0115】〈電極群の作製〉セルロースセパレータ
(厚さ0.035mm、FT40−35、日本高度紙工
業(株)製)を54.0×260.0mmに裁断して2
枚に折り曲げたものに、上述のようにして作製した正極
2枚、負極2枚を対向させて組み、30CB(t=30
μm、50.0mm×20.0mm)にAlテープを溶
接したものをAl/AlOx参照電極としてセパレータ
に介して電極群を得た。
【0116】〈電解質溶液の作製〉エチレンカーボネー
ト(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピ
レンカーボネート(PC)、およびビニレンカーボネー
ト(VC)を質量比100.0:115.9:26.1
5:2.479の割合で混合し、これにLiPF6を1
Mの濃度となるように溶解して電解質溶液を作製した。
【0117】〈プレゲル組成物の作製〉上記電解質溶液
中のECの質量100に対して合成例1のポリビニルア
ルコール誘導体を0.1076、NKエステル M−2
0G(モノメタクリレート),NKエステル 9G(ジ
メタクリレート),NKエステル A−TMPT(トリ
メタクリレート)(いずれも、新中村化学工業(株)
製)をそれぞれ8.475,12.05,1.014、
2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリ
ル)を1.550添加し、撹拌・混合してプレゲル組成
物を得た。
【0118】〈電池の作製〉上記のように作製した電極
群の外径長を測定し、計算による体積に対して等しい容
量(100.0vol%)の上記プレゲル組成物を注液
した後、約76Torrに減圧し、ラミネートパッキン
グした。その後、55℃で2時間、80℃で30分間加
熱し、プレゲル組成物をゲル化させ、非水電解質二次電
池を得た。
【0119】[実施例2]実施例1で得られた正極およ
び負極に、セルロースセパレータ(厚さ0.035m
m、FT40−35、日本高度紙工業(株)製)を5
4.0×670.0mmを介して捲回し、電極群を作製
した以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池
を得た。
【0120】[比較例1]プレゲル組成物作製時に、N
Kエステル M−20G(モノメタクリレート),NK
エステル 9G(ジメタクリレート),NKエステル
A−TMPT(トリメタクリレート)、2,2′−アゾ
ビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を用いなかっ
た以外は、実施例1と同様にして、非水電解質二次電池
を作製した。
【0121】[比較例2]プレゲル組成物作製時に、N
Kエステル M−20G(モノメタクリレート),NK
エステル 9G(ジメタクリレート),NKエステル
A−TMPT(トリメタクリレート)、2,2′−アゾ
ビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を用いなかっ
た以外は、実施例2と同様にして、非水電解質二次電池
を作製した。
【0122】上記実施例1および比較例1で得られた非
水電解質二次電池について、充電容量と電池電圧の関
係、充電容量と正極および負極の電圧との関係を測定
し、結果を図3〜6に示した。なお、正極活物質のファ
ラデー反応 LiCoO2 → LixCoO2 + (1−x)Li+
+ (1−x)e- におけるx=0.5に対応する電気容量の理論値137
mAh/gより算出した正極活物質の容量を電池容量と
し、それを充電状態100%とした。
【0123】この二次電池サンプルに対して、初期充電
として0.01Cの電流率で1.5Vまで充電した後、
さらに0.05Cの充電率で3.2Vまで充電し、その
後、55℃で2時間、さらに80℃で30分間エージン
グを行った。次に、設定電流0.5C、設定電圧4.2
V、0.1C電流終止で定電流−定電圧充電、休止1時
間、1.0Cで3.0V終止の定電流放電、休止1時間
を1サイクルとして、3サイクル行い、この時点を電池
サンプルの初期状態とした。その後、充電量に対する可
逆性を評価する試験として、0.5Cの電流率で充電量
X%だけ充電し、休止1時間の後、電流率1.0C、
3.0V終止で定電流放電を行った。このとき、X=5
0.0、75.0、100.0、150.0、200.
0および250.0として順に充電量Xを増加させなが
ら充放電させた。
【0124】図3には、実施例1で得られた二次電池の
充電容量と電池電圧の関係が示されている。ここからわ
かるように、実施例1の二次電池では、充電量が増加し
ても充電電圧は上昇せず安全性に優れているだけでな
く、放電電圧が顕著に低下することもないことがわか
る。特に、充電量150%以降は、放電電圧の変化が小
さいと言える。
【0125】一方、図4には、比較例1で得られた二次
電池の充電容量と電池電圧の関係が示されている。ここ
からわかるように、比較例1の二次電池では、充電量が
増加すると充電電圧が急激に上昇して安全性に問題があ
るだけでなく、放電電圧も顕著に低下している。250
%を超えて充電した場合には、充電時に破裂、発火の虞
があるとともに、正極が可逆性を失って本来の放電容量
を得ることができなくなる。
【0126】図5には、実施例1で得られた二次電池の
充電容量と正極および負極の電圧の関係が示され、図6
には、比較例1で得られた二次電池の充電容量と正極お
よび負極の電圧の関係が示されている。ここからわかる
ように、実施例1の二次電池では、150,200,2
50%と過充電領域の充電を経験しても、正極および負
極の放電電位は変化の少ない挙動を示している。これに
対して、比較例1の二次電池では、充電量150%を超
えて充電した場合、正極に顕著な電位変化が見られ、活
物質の可逆性が失われており、本来の放電容量が得られ
ないことがわかる。
【0127】図7には、実施例2および比較例2で得ら
れた二次電池の充電量と電圧の関係、並びに充電量と電
池温度の関係が示されている。ここからわかるように、
比較例2の二次電池では、充電量160%付近で温度上
昇を起こし、充電量190%で急激な電圧上昇と温度上
昇を引き起こすのに対し、実施例2の二次電池では、充
電量100%から温度上昇を始めるが、その後、急激な
電圧上昇および温度上昇が生じていないことがわかる。
【0128】実施例1および比較例1で得られた二次電
池に関して、正極で起こる反応は、図8に示されるボル
タモグラムで説明することができる。すなわち、比較例
1では1.05V vs. Ag/AgOx付近および
1.45V vs. Ag/AgOx付近にそれぞれ、 LiCoO2 → Li0.5CoO2 Li0.5CoO2 → Li0.3CoO2 の反応に起因する酸化波を観察することができる。さら
に、1.60V vs.Ag/AgOx付近にの酸化
波を観察することができ、以降の酸化で活物質は可逆
性を失うこととなる。
【0129】これに対して、実施例1では、1.10V
vs. Ag/AgOx付近で、 LiCoO2 → Li0.5CoO2に対応する酸化
波を観察することができる。さらに、1.40V v
s. Ag/AgOx付近に、〜とは異なる酸化波
を観察することができる。このの酸化反応により、
充電の電気エネルギーが消費され、その結果、 Li0.5CoO2 → Li0.3CoO2 の変化が起こらないため、活物質の可逆性が失われず、
しかも、不安定なLi0. 3CoO2が生成しないので、二
次電池の安全性が確保されることとなる。
【0130】[実施例3〜7] 〈電解質溶液の作製〉ジエチルカーボネート(DE
C)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカー
ボネート(PC)、およびビニレンカーボネート(V
C)を重量比50:35:13:2の割合で混合し、こ
れにLiPF6を1Mの濃度となるように溶解して電解
質溶液を作製した。
【0131】〈電解質用組成物の作製〉予め脱水処理さ
れたポリエチレングリコールジメタクリレート(オキシ
レンユニット数=9)100重量部と、メトキシポリエ
チレングリコールモノメタクリレート(オキシレンユニ
ット数=2)70.15重量部と、トリメチロールプロ
パントリメタクリレート8.41重量部とを混合し、こ
の混合組成物100重量部に対し、合成例1で得られた
ポリビニルアルコール誘導体0.5重量部を加え、プレ
ゲル組成物を得た。得られたプレゲル組成物7重量部
と、上記電解質溶液93重量部との混合物に、アゾビス
イソブチロニトリル0.5重量部を加えて電解質用組成
物を得た。
【0132】〈正極の作製〉正極活物質としてLiCo
292重量部、導電材としてケッチェンブラック4重
量部、合成例2で得られたポリウレタン樹脂溶液2.5
重量部、およびポリフッ化ビニリデン10重量部を、N
−メチル−2−ピロリドン90重量部に溶解した溶液3
8重量部と、N−メチル−2−ピロリドン18重量部と
を撹拌、混合し、ペースト状の正極用バインダー組成物
を得た。この正極用バインダー組成物をアルミ箔上に乾
燥膜厚100μmとなるようにドクターブレードにより
塗布した後、80℃で2時間乾燥し、厚みが80μmと
なるようにロールプレスして正極を作製した。
【0133】〈負極の作製〉負極活物質としてMCMB
(MCMB6−28、大阪ガスケミカル(株)製)92
重量部、およびポリフッ化ビニリデン10重量部をN−
メチル−2−ピロリドン90重量部に溶解した溶液80
重量部と、N−メチル−2−ピロリドン40重量部とを
撹拌、混合し、ペースト状の負極用バインダー組成物を
得た。この負極用バインダー組成物を銅箔上に、乾燥膜
厚100μmとなるようにドクターブレードにより塗布
した後、80℃で2時間乾燥し、厚みが80μmとなる
ようにロールプレスして負極を作製した。
【0134】〈電池の作製〉上記のように作製した正
極、負極について、正極は正極活物質層の塗工部が5c
m×48cmの大きさになるように、負極は負極活物質
の塗工部が5.2cm×48.2cmの大きさになるよ
うに、それぞれカットした。但し、この際、正極には正
極活物質の未塗工部分を、負極には負極活物質の未塗工
部分を、それぞれ設けた。次に、正極の正極活物質層の
未塗工部分にアルミの端子リードを、負極の負極活物質
層の未塗工部分にニッケルの端子リードを、それぞれ抵
抗溶接して取り付けた後、端子リードを取り付けた正
極、負極を140℃で12時間真空乾燥させ、乾燥後の
正極、負極と、下記表1に示される所定のセパレータと
を積層したものを捲回して、扁平状電極体を作製した。
続いて、正極、負極より正極端子、負極端子を取り出
し、アルミラミネートケースへ収納して端子部を熱融着
したものを電池構造体とし、上記で作製した電解質用組
成物を注液して真空含浸させた後、アルミラミネートケ
ースを熱融着により封止した。その後、55℃で2時
間、80℃で0.5時間加熱してゲル化させ、非水電解
質二次電池を得た。
【0135】
【表1】
【0136】[1]電池容量、エネルギー密度の測定 上記実施例3〜7で得られた非水電解質二次電池につい
て、25℃で120mA(0.5mA/cm2:0.2
C相当)の定電流で4.2Vまで充電し、その後、2時
間定電圧充電を行った。次に、5分間の休止を置き、終
止電圧を2.7Vとして120mAの定電流で放電を行
い、放電容量およびエネルギー密度を測定した。
【0137】[2]過充電特性試験 [2−1]過充電試験(25℃) 実施例3,5,6,7の二次電池について、25℃で
600mA(2.5mA/cm2:1C相当)の定電流
で2.5時間を上限として過充電試験を行った。2.5
時間の過充電試験中(充電率250%)、実施例の二次
電池の電池電圧の最大値は4.8Vであり、電池表面温
度は、いずれも40℃を超えなかった。 一方、比較例の電池は、全て250%過充電ポイント
に至る前に5.5Vの電圧の急上昇、電池温度100℃
以上への温度の急上昇が見られ、200%過充電付近で
発火した。 実施例4の二次電池について、25℃で1800mA
(7.5mA/cm2:3C相当)の定電流で50分間
を上限として過充電試験を行った。50分間の過充電試
験中(充電率250%)、実施例1の二次電池の電池電
圧の最大値は4.95Vであり、電池表面の最高温度は
52.8℃であった。 実施例4の二次電池について、25℃で300mA
(1.25mA/cm2:0.5C相当)の定電流で4
時間を上限として過充電試験を行った。4時間の過充電
試験中(充電率400%)、実施例4の二次電池は、最
大電圧4.58Vであり、電池の表面温度は40℃を超
えなかった。
【0138】[2−2]過充電試験(60℃) 実施例3の二次電池について、60℃で600mA
(2.5mA/cm2:1C相当)の定電流で2時間を
上限として過充電試験を行った。2時間の過充電試験中
(充電率200%)、実施例3の二次電池は、最大電圧
4.8Vであり、電池の表面温度は90℃を超えず、発
火、爆発しなかった。なお、上記試験結果を表2にまと
めて示す。
【0139】
【表2】
【0140】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の非水電解
質二次電池の電圧制御方法によれば、過充電時に電極で
酸化される物質を非水電解質に加えているから、正極で
生じる過充電反応で消費される電気エネルギーが、正極
活物質からのリチウムの放出反応ではなく、該物質の電
極酸化反応の消費されることとなり、非水電解質二次電
池の過充電時の電池電圧の上昇が抑制されることとな
る。また、この電極酸化反応が起こるために、極めて酸
化性が高く、熱的に不安定なLi<0.3CoO2が生じな
くなり、電池の暴走反応を起こす危険性も低くなり、安
全性に優れた非水電解質二次電池を提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のリチウム系二次電池の過充電時電圧と電
池温度を示すグラフである。
【図2】本発明のリチウム系二次電池の過充電時電圧と
電池温度を示すグラフである。
【図3】実施例1の二次電池における各充電量に対する
充放電時の電圧曲線を示すグラフである。
【図4】比較例1の二次電池における各充電量に対する
充放電時の電圧曲線を示すグラフである。
【図5】実施例1の二次電池における各充電量に対する
充放電時の電位変化を示すグラフである。
【図6】比較例1の二次電池における各充電量に対する
充放電時の電位変化を示すグラフである。
【図7】実施例2および比較例2の二次電池における充
電時の電圧および電池表面温度の変化を示すグラフであ
る。
【図8】実施例1および比較例1の二次電池における正
極のサイクリックボルタモグラム示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 圓尾 龍哉 千葉県千葉市緑区大野台1−2−3 日清 紡績株式会社研究開発センター内 (72)発明者 野津 龍太郎 千葉県千葉市緑区大野台1−2−3 日清 紡績株式会社研究開発センター内 (72)発明者 高木 賢太郎 千葉県千葉市緑区大野台1−2−3 日清 紡績株式会社研究開発センター内 Fターム(参考) 5H021 CC02 EE04 EE08 EE11 HH02 5H029 AJ12 AK02 AK03 AK05 AK16 AL02 AL06 AL12 AL16 AM00 AM02 AM03 AM07 AM16 BJ04 BJ27 DJ04 HJ02 HJ09 HJ16 HJ18 5H030 AA03 AS08 AS14 BB03

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リチウムを吸蔵・放出する材料およびバ
    インダーポリマーを含んでなる正極ならびに負極と、こ
    れらの正負両極を隔離する少なくとも1枚のセパレータ
    と、リチウム塩を含有する非水電解質とを含んで構成さ
    れる非水電解質二次電池を定格容量の100%充電率以
    上に過充電した場合の電圧制御方法であって、 前記過充電時に供給される電気エネルギーによって前記
    正極で酸化される物質を前記非水電解質に加え、該物質
    を電極酸化させて前記過充電時の電池電圧を4.1〜
    5.2Vに制御することを特徴とする非水電解質二次電
    池の電圧制御方法。
  2. 【請求項2】 前記電極酸化により酸素および/または
    二酸化炭素が発生し、該酸素および/または二酸化炭素
    が、前記負極上で微量に生じたリチウム金属をLi2
    および/またはLi2CO3に酸化させることを特徴とす
    る請求項1記載の非水電解質二次電池の電圧制御方法。
  3. 【請求項3】 充電時に供給される電気エネルギーによ
    り、前記Li2CO3および/またはLi2Oが、前記負
    極で金属リチウムおよび/またはリチウムイオンに電極
    還元されることを特徴とする請求項2記載の非水電解質
    二次電池の電圧制御方法。
  4. 【請求項4】 25℃で前記正極の理論容量に対する充
    電電流率、かつ、1.00C以下の電流で充電を行う
    際、下記式の充電率L%まで前記正極および負極の劣化
    が生じないことを特徴とする請求項1,2または3記載
    の非水電解質二次電池の電圧制御方法。 充電率L(%)=(理論容量)×5×(充電電流率C)
    -0.5×100
  5. 【請求項5】 前記電極酸化が、参照極AlOxに対し
    て1.40〜1.60Vの範囲で起こることを特徴とす
    る請求項1乃至4のいずれか1項に記載の非水電解質二
    次電池の電圧制御方法。
  6. 【請求項6】 前記非水電解質が、エチレンカーボネー
    ト、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネートお
    よびジエチルカーボネートから選ばれる1種または2種
    以上の有機溶媒を含み、 該有機溶媒中、298.15K,101.325Paの
    常温常圧条件下で、前記電極酸化が、標準水素電位(S
    HE)に対して1.05〜1.61Vの範囲で起こるこ
    とを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の
    非水電解質二次電池の電圧制御方法。
  7. 【請求項7】 前記正極で酸化される物質が、一般式R
    −CO−R、一般式R−CO−OR、一般式R−CO−
    NR′R、一般式RO−CO−OR、一般式RO−CO
    −X−CO−OR、および一般式RR′N−CO−N
    R′R(上記各式中Rは、互いに同一または異種の置換
    もしくは非置換の一価炭化水素基を、R′は水素原子ま
    たは互いに同一または異種の置換もしくは非置換の一価
    炭化水素基を、Xは二価の有機基を示す。)で示される
    化合物から選ばれる1種または2種以上であることを特
    徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の非水電
    解質二次電池の電圧制御方法。
  8. 【請求項8】 前記セパレータが、空孔率40%以上で
    あることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に
    記載の非水電解質二次電池の電圧制御方法。
  9. 【請求項9】 前記セパレータが、セルロース、ポリプ
    ロピレン、ポリエチレンおよびポリエステルのいずれか
    1種以上を含んでなるとともに、空孔率が60%以上で
    あることを特徴とする請求項8記載の非水電解質二次電
    池の電圧制御方法。
  10. 【請求項10】 前記非水電解質が、1種以上のメタク
    リル酸エステルおよび/または1種以上のアクリル酸エ
    ステルと、重合開始剤とを含むことを特徴とする請求項
    1乃至9のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池の
    電圧制御方法。
  11. 【請求項11】 前記非水電解質が、1種以上のメタク
    リル酸および/または1種以上のアクリル酸エステルを
    ラジカル重合により反応させ、ゲル化させて得られるゲ
    ル電解質であることを特徴とする請求項10記載の非水
    電解質二次電池の電圧制御方法。
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