JP2003267798A - ニオブ酸リチウム単結晶、およびその光素子、およびその製造方法 - Google Patents

ニオブ酸リチウム単結晶、およびその光素子、およびその製造方法

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  • Optical Modulation, Optical Deflection, Nonlinear Optics, Optical Demodulation, Optical Logic Elements (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ニオブ酸リチウム単結晶は、優れた光学特性を
有し大口径で組成均質性の高い単結晶が比較的安価で供
給可能なことから、光学素子の材料として期待されてい
た。しかし、従来の市販のニオブ酸リチウム単結晶は、
数%の不定比欠陥を含むコングルエント組成のため、素
子性能向上には限界があった。 【解決手段】Liが定比組成よりも過剰な組成の融液か
ら育成されたニオブ酸リチウム単結晶において、Mg、
Zn、Sc、Inの少なくとも一種以上の元素をニオブ
酸リチウム単結晶に対して0.1〜3mol%含有する
ことを特徴とするLi2O/(Nb2O5+Li2O)のモ
ル分率が0.490以上0.500未満の間にあるニオ
ブ酸リチウム単結晶、およびその光素子、およびその製
造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、分極制御特性や非
線形光学特性および電気光学特性に優れた光学用途の定
比組成のニオブ酸リチウム単結晶と、その単結晶を用い
た波長変換素子や光変調器、スイッチ、偏向器光素子な
どの光素子、および該ニオブ酸リチウム単結晶を安定に
成長させる製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電気や光、応力などの外部からの情報信
号によって光学的性質を制御できるいわゆる機能性光学
単結晶は、光通信、表示記録、計測、光-光制御など様
々な光エレクトロニクス分野で必要不可欠な素材となっ
ている。特に、ある種の酸化物単結晶は光学的性質と外
部要因との相互作用が特に大きいため、非線形光学効果
を使用した波長変換素子や、電気光学効果を使用した、
光変調器、スイッチ、偏向器などの光素子として使用さ
れている。
【0003】こういった結晶は、多くの場合、成長させ
たままの状態で、素子として使用されるが、一部の強誘
電体結晶は、電圧印加により結晶の破壊なしに誘電分極
の方向を反転させることができるため、周期的に分極を
反転させることで、その機能性を高めることもなされて
いる。
【0004】例えば、波長変換素子においては、強誘電
体分極の分域構造を周期的に反転させることで擬似位相
整合法(Quasi-Phase-Matching:QPM)による波長変
換が可能となる。この方法は、広い波長域で高効率の変
換が可能であるという点で有効な手段であるため、光通
信、表示記録、計測、医療などの分野で強く求められて
いる、紫外、可視から赤外に至る広い波長範囲における
様々な波長のレーザー光源を実現するための波長変換素
子として期待されている。
【0005】また、電気光学素子においては、例えば、
公知文献(M. Yamada et al., Appl.Phys.Lett., 69, p
3659,1996)によると、強誘電体結晶中にレンズやプリ
ズム状の分極反転構造を形成し、これを通過したレーザ
ー光を電気光学効果を利用して偏向する光素子やシリン
ドリカルレンズ、ビームスキャナー、スイッチなどが新
しい光素子として注目されている。
【0006】LiNbO3単結晶(以下LN単結晶と略
記する)は、主に表面弾性波素子や光変調器の基板とし
て使用されている強誘電体であるが、可視から赤外の広
い波長域で透明であり、電圧を印加することで周期的な
分極構造を作成でき、ある程度実用的な光学的非線形性
と電気光学特性を有し、さらに、大口径で組成均質性の
高い単結晶が比較的安価で供給可能なことから、近年、
上述したようなQPMによる波長変換素子(以下QPM素
子と略記する)や電気光学素子の基板としても注目され
ている。
【0007】これまで、入手できるLN単結晶は、表面
弾性波素子の基板も含めて、数%程度の不定比欠陥を含
み、Li2O/(Nb2O5+Li2O)のモル分率が0.
485の一致溶融組成に限られていた。この理由は、L
N単結晶の相図は古くから知られており、従来、組成の
均質性の高いLN単結晶を製造するためには、結晶と融
液が同じ組成で平衡共存する一致溶融組成であるLi2
O/(Nb2O5+Li2O)のモル分率が0.485の
融液から回転引き上げ法で育成するのが良いと考えられ
ていたからである。また、公知例(D.A.Bryan et al. A
ppl. Phys. Lett.44, p847, 1984)で示され
ているように、耐光損傷性を高めることを目的として、
一致溶融組成のLN結晶に4.5mol%以上のMgを
添加することも行われている。
【0008】QPM素子を実現する上で重要なことは、
小型で高効率の素子を作製することである。素子の小型
化や高効率化は素子構造にも大きく依存するが、用いる
材料特性、すなわち、その結晶が本質的に持つ物質的な
特性に制限される要素が非常に大きい。例えば、QPM
素子の変換効率は非線形光学定数と相互作用長の2乗に
比例し、基本波パワー密度に比例する。相互作用長や基
本波パワー密度は素子設計や作製プロセスの精度で決定
されるものであり、技術の改善などにより向上させる可
能性が大きいのに対して、非線形光学定数は材料が本質
的に持っている材料特性である。
【0009】LNは最もポピュラーな非線形光学材料の
ひとつであることから、非線形光学定数の測定も古くか
ら数多く行われてきた。これまで報告されてきた一致溶
融組成のLN結晶は非線形光学定数d33が波長1.06
4ミクロンにおいて、一般には、約27〜34pm/V
とされているが、報告値ごとのばらつきが驚くほど大き
く、最大で2倍にも達する。これらの値は参照物質との
間で非線形光学定数の比を求める相対測定によって得ら
れたものである。ところが、参照物質の絶対値自体が確
定しておらず、人によって用いる値がまちまちであった
ため、これほどまでにばらつきが大きくなっていた。
【0010】従来の測定方法では、参照物質の絶対値
は、非線形光学定数の絶対値を直接測定する絶対測定に
よって得られた値がもとになっている。ところが、その
代表的な測定法である第2高調波発生(SHG)法とパラメ
トリック蛍光(PF)法とでは、得られる値に大きな差異が
あった。例えば、quartzの d11は、基本波波長1.06
4ミクロンで、SHG法をもとにした絶対値スケールでは
0.3pm/Vであるのに対し、PF法では0.5pm/
Vとなる。
【0011】非線形光学定数は絶対値が不正確であった
が、例えば、公知文献(I.Shoji etal., J. Opt.Soc. A
m. B, 14, p2268, 1997)によると、SHG法、PF法両方の
絶対測定を注意深く行った結果、過去のPF法の報告値
は、測定時の迷光の影響などを排除しきれなかったため
に過大評価されており、本質的にはどちらの測定法でも
一致した値が得られることを明らかにされた。最近、よ
うやく精度の高い絶対値測定が可能となり、一致溶融組
成のLN結晶は、Mgを添加したものも含めて、非線形
光学定数33が24.9〜25.2pm/Vであると訂正
され報告されている。
【0012】また、LN単結晶を電気光学素子に用いる
場合には、大きな電気光学定数が望まれる。LN単結晶
の電気光学定数自体は強誘電体単結晶の中では必ずしも
大きくないものの、高品質で大口径の単結晶が安価で安
定に製造できることから各種の電気光学効果を利用する
光素子の基板材料として用いられてきている。LN単結
晶の電気光学定数は一般にマッハツェンダー干渉法を用
いて測定されてきた。従来から用いられてきた一致溶融
組成のLN単結晶では、電気光学定数r13、r33はそれぞ
れ、約8.0pm/V、約32.2pm/Vであると報
告されている。このため、大きな電気光学定数r33定を
用いる素子構造が素子の小型化や高効率化において大き
なメリットを持つ。
【0013】近年、一致溶融組成のLN単結晶の不定比
欠陥の存在を低減する研究、すなわち、結晶組成比を定
比に近付ける研究により、この不定比欠陥の存在が、L
N結晶が本来有する非線形光学定数を低下させ、さら
に、周期的な分極構造を作成するのに必要な印加電圧を
高くしていることが明らかにされてきた。例えば、公知
文献(V. Gopalan etal. Appl. Phys.Lett.72,p1981, 1
998)によると、定比組成に近くすることで、分極反転
電圧が5kV/mm以下になるとされている。
【0014】また、近年、材料性能の大幅な向上を目指
して、一致溶融組成のLN単結晶の不定比欠陥の存在を
低減する研究がされてきた。定比組成のLN結晶を実用
的なものとするべく、その育成法に関する研究も盛んに
行われている。例えば、公知文献(G.I.Molovichiko et
al. Appl. Phys.A,56,p103,1993)によると、一致溶融
組成あるいは定比組成に6mol%以上のK2Oを添加
した融液から結晶を育成することで、この欠陥密度を小
さくし、定比に近い組成のものが得られるとされてい
る。
【0015】図2に示すように、Li2OとNb2O5の
相図から、育成融液のLi2O/(Nb2O5+Li2O)
のモル分率を0.58〜0.60とすることで、Li2O
/(Nb2O5+Li2O)のモル分率が0.500に近い
結晶を育成できることが分かる。しかし、相図から分か
るように、この融液組成比は共晶点に極めて近く、Li
濃度が定比よりも高い組成の融液から定比に近い組成の
結晶を育成した場合には、結晶の析出に伴ってLi成分
の過剰分がるつぼ内に残されることになり、融液のLi
とNbの組成比が徐々に変化するため、育成開始後すぐ
に融液組成比は共晶点に至ってしまう。そのため、従来
から大口径のLN結晶を工業的に大量生産する手段とし
て使用されているチョクラルスキー法(以下CZ法と略
記する)を用いた場合には、定比に近い組成の結晶の固
化率がわずか10%程度しか得られない。
【0016】本発明者らは、特願平10-274047
号(特開2000−103697号公報)で、この低い
固化率を高めるための手段として、原料を連続的に供給
しながら育成する方法(以後連続供給法と略記する)を
提案している。具体的には、育成融液のLi2O/(N
b2O5+Li2O)のモル分率を0.585〜0.59
5とし、るつぼを二重構造にして内側のるつぼから結晶
を引き上げ、引き上げている結晶の重量を随時測定する
ことで成長レートを求め、そのレートで結晶と同じ成分
の粉末を外るつぼと内るつぼの間に連続的に供給すると
いう方法である。この方法を用いることで、長尺の結晶
育成が可能となり、原料供給量に対して100%の結晶
固化率を実現することができる。
【0017】また、上記LN単結晶はQPM素子として
よく使用される。高効率を実現する上で重要なプロセス
技術として、周期的分極反転ドメインを精度よく生成す
る技術がある。すなわち、非線形光学特性を最大限に発
揮させるために、分極反転の幅(以下分極反転幅と略記
する)の比率を1:1に作成するものである。分極反転
幅は目的とする波長変換素子の位相整合波長によって異
なる。例えば、赤外域といった長波長の位相整合では分
極反転幅は十数ミクロンである。一致溶融組成のLN単
結晶の分極反転電圧は21kV/mm以上とされてい
る。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】一致溶融組成のLN単
結晶は、現存する非線形光学結晶の中では大きな非線形
性を示す結晶の部類に属してはいるが、実際に素子作成
を行った場合にはまだ不十分な値である。近年のよう
に、素子設計の完成度や作製プロセスの精度が向上する
にしたがい、プロセスの改善だけでは素子特性の大幅な
向上には限界が見えてきているため、d定数自身をさら
に大きな値とすることが望まれている。
【0019】しかしながら、連続供給法を用いて一致溶
融組成よりも高いLi濃度の融液から引き上げる結晶育
成法は、工業的観点から見た場合には、歩留まりの点で
大きな問題を抱えていることが次第に明らかとなってき
た。すなわち、高いLi濃度の融液を使用した場合に
は、一致溶融組成比で結晶を成長させる場合と異なり、
成長する結晶の組成が融液の組成比に強く依存すること
が我々の調査によりわかったのである。
【0020】このことは、光学特性が均一で光学的均質
性の良い結晶を高い再現性で育成するには、常に同じ組
成比に保った融液からの結晶育成が必要となることを意
味しており、LN結晶の場合、非線形光学定数や周期反
転構造の形成に必要な電圧、および電気光学定数は結晶
組成比に敏感であるため、その最大の特性を引き出すに
は、結晶のLi2O/(Nb2O5+Li2O)のモル分率
を極めて0.500に近い状態に固定しなければならな
いことになる。
【0021】例えば、連続供給法は、育成開始から終了
までの組成制御性が優れているという特徴を持つが、育
成開始時の融液組成比の決定が大変重要であり、最初の
設定が所望の融液組成から仮にずれていると、育成した
結晶全体が必要とする非線形光学定数d33や反転電圧を
満足しない。これを防ぐために、育成前に小さな結晶を
引き上げて、その結晶の組成比から融液の組成比を確認
し、不足している成分を追加してずれを補正することも
可能であるが、この小さな結晶の育成と成分比確認を行
うには最低でも数日は必要となり、生産性が大幅に低減
することとなる。
【0022】また、連続供給法は、組成制御に対して極
めて有効な方法であるが、育成時間も数日から1週間程
度と長い場合には、高温度に保たれた融液表面からわず
かの量の原料の蒸発が起こり得る。これによる結晶組成
の経時変動も、組成を完全に均一に制御した定比組成の
結晶育成が必要な場合には無視できない。この結晶組成
のばらつきのために、同じ特性の結晶を高い歩留まりで
育成することは非常に困難となっており、Li濃度の高
い融液からの欠陥のない完全な定比組成LN単結晶の育
成技術は、工業的に実用化されていない状態にある。
【0023】また、一致溶融組成のLN結晶では、高い
再現性で分極反転幅比を完全な1:1に形成するのは非
常に困難であった。すなわち、電圧印加法ではzカット
の一致溶融組成のLN単結晶の片面に周期電極を反対面
に一様電極を設けてこの電極を通じてパルス電圧を印加
することで周期電極直下の部分をz軸方位に向けて分極
反転させるが、反転分極幅と電極幅は必ずしも一致する
とは限らず、その作製誤差も大きい。また、反対面のz
軸方向に分極反転が形成される途中で、反転が途切れた
り分極反転幅がzカット結晶の両面で異なるなどの問題
があるため、理想的な分極反転幅比は実現されなかっ
た。
【0024】可視域から紫外域といった短波長用途の場
合には位相整合に必要な分極反転幅は3ミクロン程度と
なり、長波長用に比べてより作成が困難となる。しかし
ながら、比較的容易である長波長用のQPM素子でさえ
理想的な素子実現に至っていない。その原因の一つに、
一致溶融組成のLN単結晶の分極反転に必要な印加電圧
(以下分極反転電圧と略記する)の高さがある。分極反
転電圧が21kV/mm以上と高く、この高い反転電圧
のために、基板厚みが0.5mmより薄い場合には基板
全体に分極反転格子を形成することが可能であるが、厚
さが0.5mm以上になると完全な分極反転形成は困難
になり、厚さが1.0mm以上では素子実現が可能な精
度良い分極形成は達成されていない。
【0025】また、たとえ、基板厚みが0.5mmより
薄くても、短波長用のような、数ミクロンの分極反転周
期は実現されていない。特に、MgOを5mol%以上
添加した一致溶融組成LNの場合には内部電場が大きい
ため強誘電体のヒステリシス曲線(P-E曲線)の対称性
が悪く、かつ、抗電場近傍でのP-E曲線の立ち上がりが
なだらかで急峻でないため外部から自発分極と反対方向
の電場を加えた時の自発分極の反転の制御が悪いという
問題がある。
【0026】さらに、MgOを5mol%以上添加した
一致溶融組成LNの場合には電気抵抗が無添加の場合に
比べて約3〜4桁程度以上も低下してしまうので、印加
電圧の微妙な制御が難しく、分極反転幅比を1:1に作
成することがより困難である。分極反転にコロナ放電法
を用いることによりこの問題は解決できるといわれてい
るが、この場合でも、依然として分極反転試料の厚みの
問題は解決されていない。
【0027】LN単結晶の非線形光学効果を利用した波
長変換素子や、電気光学効果を利用した光変調素子、お
よびLN単結晶に形成されたレンズやプリズム状の分極
反転構造を作製しこれを通過したレーザー光を電気光学
効果を利用して偏向する光素子やシリンドリカルレン
ズ、ビームスキャナー、スイッチなども新しい光素子な
どを実現する上で、重要なことは小型で高効率の素子を
安定に作製することである。
【0028】これらの電気光学効果を利用する素子にお
いても、素子の小型化や高効率化は素子構造の作製精度
に依存するが、これらも用いる材料特性に制限される要
素も大きい。例えば、分極反転構造による屈折率の反転
を形成したLN単結晶の電気光学効果を利用した光素子
の性能は、レンズやプリズム状の分極反転構造の設計や
分極反転構造の作製プロセスの精度、および材料の持つ
電気光学定数の大きさで決定される。
【0029】従来の一致溶融組成のLN結晶では分極反
転に大きな印加電圧が必要なために分極反転構造の制御
が困難であった。さらに、電気光学定数は材料が本質的
に持っている特性であり、これを同一結晶で向上させる
のは困難であると考えられていた。また、使用する光の
波長や強度によっては光損傷の発生が大きな難点とされ
る場合もあり、このような場合には、一致溶融組成LN
結晶に5mol%以上のMgOを添加した結晶が耐光損
傷性に優れることから期待されたが、QPM素子を作製
するのと同じような自発分極の反転の制御が悪いという
材料特性の問題から精度の良いレンズやプリズム状の分
極反転構造の作製は実現されていなかった。
【0030】近年のように素子設計の完成度や作製プロ
セスの精度が向上するにしたがい、プロセスの改善だけ
では光学素子特性の大幅な向上には限界が見えてきてい
るため、材料自身の性能向上が望まれている。このた
め、不定比欠陥を低減した定比組成のLN単結晶の育成
技術が開発された。連続供給法を用いて一致溶融組成よ
りも高いLi濃度の融液から定比組成LN単結晶を引き
上げる結晶育成法は、工業的観点から見た場合には、歩
留まりの点で問題を抱えていることが次第に明らかとな
ってきた。
【0031】すなわち、連続供給法は、組成制御に対し
て極めて有効な方法であるが、育成時間も数日から1週
間程度と長い場合には、高温度に保たれた融液表面から
わずかの量の原料の蒸発が起こり得る。これによる結晶
組成の経時変動も、組成を完全に均一に制御した定比組
成の結晶育成が必要な場合には無視できない。この結晶
組成のばらつきのために、同じ特性の結晶を高い歩留ま
りで育成することは非常に困難となっており、Li濃度
の高い融液からの欠陥のない完全な定比組成LN単結晶
の育成技術は、工業的に実用化されていない状態にあ
る。
【0032】このことは、光学特性が均一で光学的均質
性の良い結晶を高い再現性で育成するには、常に同じ組
成比に保った融液からの結晶育成が必要となることを意
味しており、LN結晶の場合、非線形光学定数や周期反
転構造の形成に必要な電圧、および電気光学定数は結晶
組成比に敏感であるため、その最大の特性を引き出すに
は、結晶のLi2O/(Nb2O5+Li2O)のモル分率
を極めて0.500に近い状態に固定しなければならな
いことになる。
【0033】LN単結晶を用いた光素子の性能は、周期
分極反転構造や、レンズやプリズム状の分極反転構造の
設計や分極反転構造の作製プロセスの精度、および材料
の持つ非線形光学定数、電気光学定数および耐光損傷性
の大きさで決定される。従来の一致溶融組成のLN結晶
では分極反転に大きな印加電圧が必要なために分極反転
構造の制御が困難であった。さらに、電気光学定数は材
料が本質的に持っている特性であり、これを同一結晶で
向上させるのは困難であると考えられていた。また、使
用する光の波長や強度によっては光損傷の発生が大きな
難点とされる場合もあり、このような場合には一致溶融
組成LN結晶に5mol%以上のMgOを添加した結晶
が耐光損傷性に優れることから期待されたが、自発分極
の反転の制御が悪いという材料特性の問題から精度の良
いレンズやプリズム状の分極反転構造の作製は実現され
ていなかった。
【0034】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成すべく鋭意研究の結果、可視光域で実質的に吸収
を持たないMg、Zn、Sc、Inの何れかの元素をト
ータル量で0.1pm〜3mol%の範囲で融液に添加
することにより、非線形光学定数d33および電気光学特
性r33を低下させないで小さな分極反転電圧が得られ、
Liの欠陥部分を前記第三の元素により埋めることがで
き、定比組成に近いものの、ある程度の不定比欠陥を有
するニオブ酸リチウム単結晶であっても、Li2O/
(Nb2O5+Li2O)のモル分率が0.500の完全
LN単結晶が持つ大きさと同じ非線形光学定数や周期的
分極構造の作成に必要な印加電圧、および電気光学定数
を実現することを発見、さらには、本手段がLi2O/
(Nb2O5+Li2O)のモル分率が0.490以上
0.500未満という広い範囲のニオブ酸リチウム単結
晶に対して有効であることを知見、ここに本発明をなし
たものである。
【0035】このd33に対するMg、Zn、Sc、In
の何れかの元素、例えばMgの添加の効果は次のように
説明できる。LN結晶の非線形光学特性はLi元素とO
元素の結合により発生するため、Li欠陥の増加に伴っ
て非線形性が減少し、Li2O/(Nb2O5+Li2O)
のモル分率が0.500のLN結晶は含有するLi欠陥
が存在しないために最大の非線形性を示す。定比組成で
ない結晶の場合は、過剰なNb元素がLi欠陥部分に入
り込むが、Nb元素とO元素の結合では非線形性がほと
んど発生しないため、全体としての非線形性が小さくな
る。
【0036】それに対して、Mg添加の場合は、Mgが
Li欠陥部分に入り込み、Mg元素とO元素の結合によ
る非線形性が発生する。このMg元素とO元素の結合非
線形性は、Li元素とO元素の結合で生じる非線形性と
同程度であり、さらに育成融液の組成比変化に起因した
結晶のLi2O/(Nb2O5+Li2O)のモル分率が変
化しても、融液中に存在するMg元素がLi欠陥を埋め
てくれるために、結晶のLi2O/(Nb2O5+Li
2O)のモル比率が多少ばらついても最大の非線形光学
性が保たれていると考えられる。
【0037】また、分極反転電圧に対するMg添加の効
果は次のように説明できる。定比結晶の分極反転電圧が
従来の一致溶融組成LN単結晶に比べて大幅に低減する
のは、分極反転をピンニングするLi欠陥の数が少なく
なることにより説明できる。一方、Mg添加の場合に、
Li2O/(Nb2O5+Li2O)のモル分率が0.49
0以上0.500未満の範囲でばらついているにも関わ
らず最小の電圧値を示すのは、LiサイトにMgが置換
している状態のピンニング効果が、Li欠陥のそれに比
べて小さいことによると考えられる。
【0038】しかし、LiサイトにMgが置換している
状態のピンニング効果は、欠陥のない部分のそれに比べ
ると大きいため、この効果が得られるのは結晶のLi2
O/(Nb2O5+Li2O)のモル分率が0.490以
上0.500未満という狭い範囲のみ顕著にあらわれ
る。例えば、一致溶融組成の結晶にMgを添加した場合
には、分極反転電圧の低下も見られるが、一方では、電
気抵抗が無添加の場合に比べて約4桁以上も小さくなっ
てしまうので、通常の電圧印加法では分極反転はでき
ず、コロナ放電法という特殊な方法が必要であった。L
i2O/(Nb2O5+Li2O)のモル分率が0.490
以上0.500未満の範囲では必要なMg、Zn、S
c、Inの添加量が0.1〜3.0molと小さいので
電気抵抗の急激な低下もない。
【0039】また、r33に対するMg添加の効果につい
ては、現時点では解明されていないが、d33に対する効
果とほぼ同じように考えられる。すなわち、LN結晶の
Li元素とO元素の結合が電気光学特性の主な発現因子
とするならば、Li欠陥の増加に伴って電気光学定数が
減少し、Li2O/(Nb2O5+Li2O)のモル分率が
0.500のLN結晶は含有するLi欠陥が存在しない
ために最大の電気光学定数を示すと期待できる。
【0040】定比組成でない結晶の場合は、過剰なNb
元素がLi欠陥部分に入り込むが、Nb元素とO元素の
結合では電気光学特性がほとんど発生しないため、全体
としての電気光学定数が小さくなる。それに対して、M
g添加の場合は、MgがLi欠陥部分に入り込み、Mg
元素とO元素の結合による電気光学特性が発生する。こ
のMg元素とO元素の結合電気光学特性は、Li元素と
O元素の結合で生じる電気光学特性と同程度であるなら
ば、さらに育成融液の組成比変化に起因した結晶のLi
2O/(Nb2O5+Li2O))のモル分率が変化して
も、融液中に存在するMg元素がLi欠陥を埋めてくれ
るために、結晶のLi2O/(Nb2O5+Li2O)のモ
ル比率が多少ばらついても最大の電気光学定数が保たれ
ていると説明できる。
【0041】本発明は、例えば、連続供給法において
は、Mg、Zn、Sc、Inを0.1mol以上添加す
ることで育成開始時の融液組成比の設定が所望の融液組
成から仮にずれていたとしても、Li2O/(Nb2O5
+Li2O)のモル分率が0.500のLN単結晶が持
つ大きさと同じ非線形光学定数や分極構造作成電圧、お
よび電気光学定数の単結晶が育成できるため、結果とし
てその歩留まりを大幅に向上できるものである。
【0042】さらに、融液の蒸発や育成融液内における
組成比の不均質に起因した育成中に発生する融液組成比
変動や、るつぼ内の温度分布に起因した結晶と融液の界
面における融液温度変動により、結晶内にLi2O/
(Nb2O5+Li2O)のモル分率の不均質が発生する
が、本発明により非線形光学定数や分極構造作成電圧、
および電気光学定数がLi2O/(Nb2O5+Li2O)
のモル分率に依存しなくなるため、これら特性の不均質
は発生せず、結果として高い均質性と優れた性能を合わ
せ持つLN結晶を安定に生産するための育成条件が極端
に緩やかになるものである。
【0043】ここで、Li2O/(Nb2O5+Li2O)
のモル分率を0.490以上0.500未満としたの
は、0.490より小さい組成の結晶では分極反転電圧
の低下が不十分であったためである。さらに、Li2O
/(Nb2O5+Li2O)のモル分率が0.490以上
0.500未満の組成の結晶では、内部電場が殆ど見ら
れず強誘電体のヒステリシス曲線(P-E曲線)の対称性
に優れることと、抗電場近傍でのP-E曲線の立ち上がり
が良いため外部から自発分極と反対方向の電場を加えた
時の自発分極の反転の制御が極端に容易になるのは大き
なメリットである。
【0044】また、Li2O/(Nb2O5+Li2O)の
モル分率が0.490以上0.500未満の組成の結晶
の場合には、必要なMg添加濃度が3mol%未満とな
るので、一致溶融組成の結晶に5.0mol%のMgを
添加した結晶で見られたような急激な電気抵抗の低下を
防ぐことができ、かつ、分極反転幅比がほぼ1:1であ
る非常に高効率のQPM素子を製造することができる。
【0045】上記構成により、単結晶内に入射されたレ
ーザー光波長を変換する光素子において、非線形光学定
数d33が26pm/V以上であり、室温で分極反転する
ために必要な印加電圧が3.7kV/mm未満であるこ
とを特徴とするLN単結晶を製造することが可能であ
る。z軸方向の厚みが1.0mm以上で、分極反転の周
期が30ミクロン以下であるQPM素子は本発明のLN
結晶で始めて実現したものであり、さらに、分極反転の
周期が5ミクロン以下であるQPM素子に関しても、本
発明により始めて実現したものである。
【0046】さらに、上記構成により、単結晶の電気光
学効果を利用して単結晶内に入射されたレーザー光を制
御する光素子において、波長0.633ミクロンにおい
て電気光学定数r33が36pm/V以上であることを特
徴とするニオブ酸リチウム単結晶を製造することが可能
である。ニオブ酸リチウム単結晶の強誘電分極を反転さ
せた構造の大きな屈折率変化を利用して光の偏向、焦
点、スイッチングを高効率でかつ安定に行うことを特徴
とする光素子は本発明のLN結晶により始めて実現した
ものである。
【0047】
【実施例】以下に本発明の実施例を示す。LN単結晶の
場合、一致溶融組成融液から通常の引き上げ法で得られ
るLN単結晶はNb成分過剰となるが、融液の組成を著
しくLi成分過剰(例えば、Li2O/(Nb2O5+Li
2O)のモル分率が0.56〜0.60)にした融液から
結晶を育成すると、定比組成に近いLi2O/(Nb 2O
5+Li2O)のモル分率である0.500、すなわち、
不定比欠陥濃度を極力抑えた単結晶を得ることができ
る。本実施例では原料連続供給を備えた二重るつぼ法を
用いて、Li成分過剰組成の融液から定比組成に近いL
N単結晶を育成した。
【0048】(実施例1)市販の高純度Li2O、Nb2
O5の原料粉末を準備し、Li2O:Nb2O5の比が0.
56〜0.60:0.44〜0.40のLi成分過剰原料
と、Li2O:Nb 2O5=0.50:0.50の定比組成
原料を混合した。次に、1ton/cm2の静水圧でラ
バープレス成形し、それぞれを約1050℃の大気中で
焼結し原料棒を作成した。また、混合済みの定比組成原
料を連続供給用原料として、約1150℃の大気中で焼
結し、粉砕し、大きさが50ミクロン以上500ミクロ
ンのサイズの範囲で分級した。
【0049】次に、二重るつぼ法による単結晶育成に際
して、作成したLi成分過剰原料からなる原料棒を内側
および外側るつぼに予め充填し、次にるつぼを加熱して
Li成分過剰な融液を作成した。Mg添加の効果を確認
する実験では、この充填の際に、市販の高純度MgCO
3を内側および外側るつぼに予め充填した。充填するM
gCO3の重量は、融液中のMg濃度が融液中のNbに
対して各々0.1、0.2、0.5、1.0、3.0mol
%の5種類の実験を行った。また、比較のためにMg濃
度を0、0.05、5.0mol%として実験を行った。
【0050】ここで、定比組成LN結晶を育成する二重
るつぼ法の原理について図1と図2を用いて簡単に説明
する。図1は、LNの相図を示す。相図に見られるよう
に、LN単結晶の一致溶融組成融液から通常の引き上げ
法で得られるLN単結晶はNb成分過剰となるが、融液
の組成を著しくLi成分過剰(例えばLi2O/(Nb 2
O5+Li2O)のモル分率が0.56〜0.60)にした
融液から結晶を育成すると、定比組成に近いLi2O/
(Nb2O5+Li2O)のモル分率である0.500、
すなわち不定比欠陥濃度を極力抑えた単結晶を得ること
ができる。
【0051】図2は、本発明に用いた育成炉1を示すも
のである。本実施例に用いた二重るつぼの構造は外るつ
ぼ35の内部に外るつぼより高さが7.5mm高い円筒
36(内るつぼと呼ぶ)を設置した構造となっており、
内るつぼの底に外るつぼから内るつぼに通じる孔を設け
た。この孔は約20mm×30mmの略四角形状で内る
つぼに3箇所設けた。ここで、育成に用いたるつぼの材
質は白金製のものを用い、かつ周囲を育成炉体47でカ
バーし外部雰囲気の流入を防止した。
【0052】用いた二重るつぼの形状は、外るつぼ35
の高さ/直径の比を0.45としており、内るつぼ/外る
つぼの直径比は0.8とした。その大きさは外るつぼ3
5が直径150mm高さ67.5mm、内るつぼ36が
直径120mm高さ75mmとした。内るつぼ36と外
るつぼ35の間は片側約15mmのスペース34があ
り、ここに原料45がスムーズに落下できるように原料
供給管37を安定に設置した。融液表面の様子をビデオ
カメラ(図示せず)で観察した。るつぼを回転しないと
融液表面の対流はほとんど見られないが、るつぼの回転
数を徐々に上げていくと回転方向への強制的な融液対流
が強くなる様子が見られ、るつぼの回転の効果が観察さ
れた。
【0053】Li成分過剰の内側るつぼの融液41から
結晶を成長させた。融液の温度を高周波発振機48への
投入電力と高周波誘導コイル43により所定の温度に安
定させた後、Z軸方位に切り出した5mm×5mm×長
さ70mmの単一分極状態にあるLN単結晶を種結晶4
0として回転支持棒38の下部に接続し、融液41に付
け、融液温度を制御しながら結晶を回転させて上方向に
引き上げることでLN単結晶42を成長させた。育成雰
囲気は大気中とした。LN単結晶42の回転速度は5〜
20rpmの範囲内で一定とし、引き上げ速度は0.5
〜3.0mm/hの範囲で変化させた。
【0054】育成した結晶から2インチ径のウエハーが
作成できるよう結晶の直胴部に対し、自動直径制御を行
った。育成結晶成長重量をロードセル52により測定
し、結晶化した成長量に見合った量のLi2O/(Nb2
O5+Li2O)のモル分率が0.500の定比の原料4
5を外側るつぼ35に供給した。ここではLN単結晶4
2の成長量変化がコンピュータ49により求められてい
るので、原料45の供給はLN種結晶40から単結晶4
2の育成が始まり直径制御が安定化した時点から開始し
た。
【0055】原料45の供給は、予め育成炉体47上部
に設置した重量測定センサーを兼ね備えた密封容器46
内に保管した原料45をセラミックスあるいは貴金属か
らなる供給管37を通じて行った。供給管37及び密封
容器46に毎分50〜500ccの範囲でガス51を弁
を具備するガス管33を介して流入した。ガス51の流
量は供給する原料45の単位時間当たりの量と粒径によ
って最適化した。これによって、飛散や供給管37内で
の詰まりのない円滑な原料供給を行った。育成中、貴金
属二重るつぼを回転させることで、供給した粉末原料の
融液との均質化と同時に、強制定に結晶成長界面を液面
に対してフラットもしくは凸になるよう融液の対流を制
御した。各々の組成において約1.5週間の育成によ
り、直径60mm,長さ110mmでクラックのない無
色透明のLN結晶体を得た。
【0056】得られた全ての結晶に関して、Li2O/
(Nb2O5+Li2O)のモル分率を化学分析より求め
た。試料の測定位置は種結晶から15mm離れた結晶の
軸中心部を測定位置aとし、また測定位置aから軸中心
に沿って種結晶から離れる方向に10mm毎の位置を3
点とり、順に測定部b、c、dとした。測定試料は測定
位置を中心に7mm角の立方体形状として切りだした。
【0057】表1-1は、Li2O/(Nb2O5+Li2
O)のモル分率の測定結果を示す。化学分析では組成比
の絶対値を精度良く求めることは難しく、LN結晶の場
合Li2O/(Nb2O5+Li2O)のモル分率で約0.
001〜0.005程度の誤差を含んでいる。そこで、
定比に近い組成のLN結晶については非常に慎重に組成
を分析した。表1の結果は同一試料について数カ所の異
なる分析装置を用いて評価した結果の平均値を示してい
る。その結果、LN単結晶の場合、定比に近い組成であ
ってもMg等を添加した結晶ではLi2O/(Nb2O5
+Li2O)のモル分率の値は0.005を超えることは
なかった。また、これら試料のMg含有量に関する測定
も行い、結晶の含有量が融液に添加したMg濃度とほぼ
同じであることを確認した。
【0058】(表1)Li2O/(Nb2O5+Li2O)
のモル分率 無添加 0.05mol% 0.10mol% 0.20mol% 0.50mol% 1.00mol
% 3.00mol% 5.00mol% a 0.492 0.494 0.496 0.498 0.496 0.494 0.492 0.489 b 0.493 0.493 0.495 0.499 0.498 0.495 0.492 0.490 c 0.494 0.494 0.496 0.498 0.497 0.495 0.491 0.491 d 0.494 0.496 0.494 0.497 0.495 0.495 0.492 0.490
【0059】次に、これら試料の非線形光学定数を測定
した。我々はウェッジ法を用いた絶対測定を行い、測定
データに対して多重反射の効果を考慮した解析を行うこ
とによって、非線形光学定数の絶対値を正確に決定し
た。その結果、LN単結晶のような高屈折率の物質(n
> 2)に対する従来の値のほとんどは過大評価されてい
たことを明らかにし、溶融一致組成のLN結晶のd33を
測定したところ、文献で求められてる結果と良く一致す
る25.1pm/Vという値が得られた。測定に使用し
たレーザー光は単一縦モード連続発振の波長は1.06
4ミクロンである。表2に測定の結果を示す。
【0060】Mgの添加量が0.1mol%以上添加し
た場合には、結晶のLi2O/(Nb 2O5+Li2O)の
モル分率が0.489から0.499の間で大きくばらつ
いているにも関わらず、全てが30.0pm/V以上の
値であるのに対し、0.1mol%未満では、それより
若干劣る傾向にある。ウェッジ法を用いた絶対測定法で
は、従来の位相整合法による絶対測定法と異なり、d33
などの対角成分も測定可能である。また、回転型Maker
フリンジ法では多重反射を考慮した厳密な解析を行うの
は極めて困難であり、非線形光学定数を正確に求めるた
めには無反射コーティングを行って多重反射が起きない
条件下で測定するしかない。以上のことから、ウェッジ
法による絶対測定は極めて有効な測定手法であるという
ことができる。
【0061】(表2)非線形光学定数d33(単位:pm
/V) 無添加 0.05mol% 0.10mol% 0.20mol% 0.50mol% 1.00mol
% 3.00mol% 5.00mol% a 27.9 29.5 30.1 30.2 30.1 30.1 30.3 30.3 b 28.8 29.5 30.0 30.3 30.0 30.4 30.2 30.1 c 29.0 29.6 30.0 30.2 30.1 30.3 30.2 30.0 d 29.1 29.6 30.2 30.1 30.3 30.1 30.1 30.1
【0062】次に、上記と同様にして得られた各々の単
結晶に関して、測定位置a〜dの各場所から、断面が1
0mm×10mmで厚みが1.0mmのz板試料を切り
出した。両z軸面に電極を形成した後、電圧を印加し、
結晶が分極反転を起こす電圧を測定した。表3に測定の
結果を示す。
【0063】Mgの添加量が0.1mol%以上添加し
た場合には全てが3.7kV/mm以下であり、0.2m
ol%以上ではより小さな値3.1kV/mm近傍の一
定の値が得られる。これらの結晶では、内部電場が殆ど
見られず強誘電体のヒステリシス曲線(P-E曲線)の対
称性に優れることと、抗電場近傍でのP-E曲線の立ち上
がりが良いため測定値にもばらつきが少ないものと考え
られる。
【0064】一方、0.1mol%未満では、それ以上
の量の添加結晶に比べて分極反転電圧は若干上回る傾向
にあることが分かる。一方、Mgの添加量が5mol%
以上添加した場合には分極反転は小さくなるが、試料毎
のばらつきが大きくなる傾向が見られた。これは、強誘
電体のヒステリシス曲線(P-E曲線)の抗電場近傍でのP
-E曲線の立ち上がりがなだらかで悪いため分極反転電圧
の絶対値測定が困難になること、また、材料の電気抵抗
によることが原因であると考えられた。尚、同様の試料
形状、測定条件で溶融一致組成結晶の反転電圧を測定し
たところ場合によっては測定は困難であった。試料厚み
が0.2〜0.5mm程度の薄い試料で測定ができ、2
1.0kV/mmという非常に高い値であった。
【0065】(表3)反転電圧(単位:kV/mm) 無添加 0.05mol% 0.10mol% 0.20mol% 0.50mol% 1.00mol
% 3.00mol% 5.00mol% a 5.2 3.8 3.3 3.1 3.0 3.1 3.0 2.3 b 5.0 3.9 3.4 2.8 3.0 2.9 3.1 2.9 c 4.9 3.9 3.3 2.9 3.0 3.1 3.1 2.1 d 4.8 3.8 3.3 3.0 3.1 3.1 3.1 2.5
【0066】次に、上記と同様にして得られた各々の単
結晶に関して、測定位置a〜dの各場所から、x、y、z
方位に5mm×3mm×2mmの試料を切り出した。両
z軸面に電極を形成した後、マッハツェンダー干渉法を
用いて試料の電気光学定数を測定した。表4に測定の結
果を示す。
【0067】表4に示すように、これらの定数のいくつ
かは結晶組成に非常に敏感であると言うことが明らかに
された。すなわち、結晶のLi2O/(Nb2O5+Li2
O)のモル分率が0.490以上0.500未満のLN単
結晶では、従来の一致溶融組成LN単結晶と較べて電気
光学定数r13は増大しないが、r33は約20%以上増大
し約36pm/V以上となり、一致溶融組成LN単結晶
の値の約31.5pm/Vに較べて非常に大きいことが
明らかにされた。
【0068】特に、電気光学定数に関しては定比組成に
近づくほど大きくなる傾向が見られた。また、Mgを添
加した結晶では添加量が0.1mol%以上添加した場
合には38pm/V以上と更なる増加が見られ、特に約
1mol%添加した結晶で最大の39.5pm/Vが得
られた。一方、Mgの添加量が1mol%よりも多くな
ると電気光学定数は徐々に低下する傾向も見られた。
【0069】(表4)電気光学定数r33(単位:pm/
V) 無添加 0.05mol% 0.10mol% 0.20mol% 0.50mol% 1.00mol
% 3.00mol% 5.00mol% a 36.0 36.7 38.1 38.5 38.8 39.2 38.4 36.9 b 36.2 37.0 38.0 38.4 38.6 39.5 38.6 37.1 c 37.1 37.8 38.1 38.4 38.8 39.3 38.3 36.5 d 37.8 37.6 38.1 38.3 39.0 39.2 38.2 36.4
【0070】(実施例2)市販の高純度Li2O、Nb2
O5の原料粉末を準備し、Li2O:Nb2O5の比が0.
56〜0.60:0.44〜0.40のLi成分過剰原料
を混合した。次に、1ton/cm2の静水圧でラバー
プレス成形し、約1050℃の大気中で焼結し原料棒を
作成した。次に、一重るつぼ法、すなわち、従来のCZ
法による単結晶育成に際して、作成したLi成分過剰原
料からなる原料棒を予め充填し、次に、るつぼを加熱し
てLi成分過剰な融液を作成した。Mg添加の効果を確
認する実験では、この充填の際に、市販の高純度MgC
O3をるつぼに予め充填した。充填するMgCO3の重量
は、融液中のMg濃度が融液中のNbに対して決定し、
0.1、0.2、0.5、1.0、3.0mol%の5種類
の実験を行った。
【0071】また、比較として無添加、0.05、0.5
mol%添加した以外は同様にして実験を行った。育成
に用いたるつぼは白金製のものを用いた。用いたるつぼ
の形状は、円筒形状であり、その大きさは直径150m
m高さ100mmとした。育成の終始に渡り、融液表面
の様子をビデオカメラで観察した。実施例1と異なり、
るつぼの回転がない場合でも、強い融液対流が観察され
た。
【0072】融液液面のるつぼ中心付近から結晶を成長
させた。融液の温度を所定の温度に安定させた後、Z軸
方位に切り出した5mm×5mm×長さ70mmの単一
分極状態にあるLN単結晶を種結晶60として融液に付
け、融液温度を制御しながら結晶を回転させて上方向に
引き上げることで単結晶を成長させた。るつぼは回転さ
せずに固定した状態とした。育成雰囲気は大気中とし
た。結晶の回転速度は2rpmで一定とし、引き上げ度
は0.5〜3.0mm/hの範囲で変化させた。育成した
結晶から2インチ径のウエハーが作成できるように、育
成の終始に渡って育成結晶成長重量をロードセルにより
測定しながら、結晶の直胴部の直径は約60mmになる
よう種付け直後から自動直径制御を行った。本実施例の
育成では、実施例1の二重るつぼを用いた場合のような
育成中の原料の供給は行わなかった。図3に得られたL
N単結晶の模式図を示す。
【0073】Mgを添加しなかった場合も、また各種濃
度のMgを添加した場合も、直径60mmで引き上げた
ところ、育成開始直後から約30mmまでは透明な単結
晶部61が育成できたが、その後共晶点に達し、共晶点
に達した以後に引き上げた部分は、LN単結晶ではな
く、セラミック層62であった。
【0074】得られた各々の結晶に関して、Li2O/
(Nb2O5+Li2O)のモル分率を化学分析より求め
た。測定位置は種結晶60から5mm離れた結晶の軸中
心部を測定位置gとし、また、測定位置gから軸中心に
沿って種結晶60から離れる方向に10mm毎の位置で
2点とり、順に測定部h、iとした。測定試料は測定位
置を中心に7mm角の立方体形状として切りだした。表
5は、Li2O/(Nb2O5+Li2O)のモル分率の測
定結果を示す。また、これら試料のMg含有量に関する
測定も行い、結晶の含有量が融液に添加したMg濃度と
ほぼ同じであることを確認した。
【0075】(表5)Li2O/(Nb2O5+Li2O)
のモル分率 無添加 0.05mol% 0.10mol% 0.20mol% 0.50mol% 1.00mol
% 3.00mol% 5.00mol% g 0.489 0.489 0.491 0.495 0.495 0.491 0.491 0.490 h 0.491 0.494 0.495 0.498 0.496 0.492 0.492 0.494 i 0.498 0.496 0.497 0.499 0.498 0.494 0.496 0.496
【0076】次に、これら試料の非線形光学定数を測定
した。測定にはウエッジ法を使用した。表6に測定の結
果を示す。表から、Mgの添加量が0.1mol%未満
の場合は、種結晶から共晶点に近づくにしたがって、非
線形光学定数d33が徐々に増加している様子が分かる。
この増加は、育成中に原料の供給を行わなかったため
に、融液組成比が経時的に変動し、その結果生じたもの
と考えられる。一方、Mgの添加量が0.1mol%未
満の場合には、0.1mol%以上の場合に見られたよ
うな増加は見られない。測定位置gからiまでの距離1
0mm間においても非線形光学定数d33はほぼ一定値に
収まり、かつ0.2mol%以上では結晶全体でほぼ一
様に30pm/V以上という最大の値を示している。
【0077】(表6)非線形光学定数d33(単位:pm
/V) 無添加 0.05mol% 0.10mol% 0.20mol% 0.50mol% 1.00mol
% 3.00mol% 5.00mol% g 25.9 27.0 29.5 30.0 30.1 29.9 30.1 29.5 h 27.5 28.2 30.1 30.2 30.0 30.2 30.0 29.9 i 29.6 29.5 30.0 30.1 30.1 30.1 30.1 30.1
【0078】次に、上記と同様にして得られた各々の単
結晶を製造し、測定位置g〜iの各場所から、断面が1
0mm×10mmで厚みが1.0mmのz板試料を切り
出した。両z軸面に電極を形成した後、電圧を印加し、
結晶が分極反転を起こす電圧を測定した。表7に測定の
結果を示す。表から、Mgの添加量が0.1mol%未
満の場合は、種結晶から共晶点に近づくにしたがって、
分極反転電圧が徐々に減少している様子が分かる。この
減少は、育成中に原料の供給を行わなかったために、融
液組成比が経時的に変動し、その結果生じたものと考え
られる。一方、Mgの添加量が0.1mol%以上の場
合には、0.1mol%未満の場合に見られたような減
少は見られず、測定位置gからiまでの距離10mm間
においても反転電圧は0.5kV/mm以内に収まり、
かつ0.2mol%以上では結晶全体でほぼ一様に3.1
kV/mmという最小の値を示している。
【0079】(表7)反転電圧(単位:kV/mm) 無添加 0.05mol% 0.10mol% 0.20mol% 0.50mol% 1.00mol
% 3.00mol% 5.00mol% g 7.0 5.0 3.6 3.1 3.1 3.1 3.1 2.9 h 5.2 3.8 3.3 3.1 3.1 3.1 3.1 3.0 i 3.1 3.1 3.1 3.1 3.1 3.1 3.1 2.6
【0080】(実施例3)次に、実施例1と同様にして
作られたLN単結晶に周期的に分極反転させて種々の光
機能素子を製作した。840nmまたは1064nmの
近赤外光の基本波に対して青色または緑色光を発生する
QPM素子の作成について示す。実施例1で得られた結
晶に関して、各々の濃度でMgを添加した結晶からウエ
ハーを1枚づつ切り出した。切り出したウエハーは、直
径が2インチで、厚みがそれぞれ0.3mm、0.5m
m、1.0mm、2.0mm、3.0mmを用意した。
【0081】両面に研摩を施したz軸方位に切り出し、
+z面にリソグラフを用いて、厚み500nmのCr膜
を電極として櫛形のパターンを形成した。青色、および
緑色光の高調波を高効率で発生させるために1次のQP
M構造となるように電極の周期は3.0ミクロンおよび
6.8ミクロンとした。つぎに、+z面上に厚み0.5ミ
クロンの絶縁膜をオーバーコートし350℃で8時間保
存処理を施した。次に結晶の両z面に塩化リチウム水溶
電界液を介して電極に挟み、高電圧パルスを印加した。
LN単結晶に流れる電流は1キロオームの抵抗を通して
モニターした。
【0082】分極反転格子を形成した後、側面となる結
晶のy面を研摩、フッ酸・硝酸の混合液でエッチングし
て、分極反転格子の様子を観察した。各試料に関して、
この観察と分極反転を繰り返すことで、印加電圧のパル
ス幅や電流の最適化を行い、試料全体にわたって分極反
転格子幅比、およびその分極反転の形が理想的な各々
1:1(1:0.95〜1)に近づくようにした。
【0083】実験の結果、試料の厚みは0.3mm、0.
5mm、1.0mm、2.0mm、3.0mmのいずれの
場合でも、大半の試料に関してはほぼ1:1の分極反転
格子幅比を得ることができたが、Mg濃度が3mol%
より高い濃度の結晶では得ることができなかった。具体
的には、分極反転の直進性が悪く、隣同士がつながった
反転格子が多くの場所で形成される傾向が見られた。こ
れは、Mg濃度が高くなりすぎたために、電気抵抗が低
下し微細な周期的電圧印加が困難になったため、結晶の
不均質が発生し特にMgが多く含まれた場所が分極反転
の直進を妨げたためと思われる。つまり、分極反転させ
る素子作成を考えた場合には、Mg添加濃度は3mol
%以下とすることが望ましい。
【0084】(実施例4)直径が2インチ、厚みを1.
0mmとした以外は実施例3と同様にして分極反転格子
を有する光機能素子を作成した。分極反転格子幅の目標
を5ミクロン毎とし、理想的な各々1:1(1:0.9
5〜1)に近づくようにした。実験の結果、大半の試料
に関してほぼ1:1(1:0.95〜1)の分極反転格
子幅比を得ることができたが、Mg濃度が3mol%よ
り高い結晶では得ることができなかった。
【0085】(実施例5)次に、実施例1で作成したL
N単結晶にレンズやプリズム状の分極反転構造を作製し
電気光学効果を利用した偏向素子やシリンドリカルレン
ズ、ビームスキャナー、スイッチなどの光素子を製作し
た。直径2インチ、厚み0.2〜2.0mm、両面研摩
されたz−カットのLN単結晶を準備し、両z面に厚さ
約200ミクロンのAl電極をスパッタリングにより形
成し、リソグラフを用いて、レンズやプリズム状パター
ンを形成した。その後、+z面にパルス状の電圧を約
3.5KV/mm印加し分極を反転させた。さらに50
0℃で約5時間、空気中で熱処理を施した。これにより
分極反転に際して導入された屈折率の不均一性を解消さ
せた。さらに、結晶の端面を鏡面研磨仕上げを行い、レ
ーザー光の入出射面とした。
【0086】試作した分極反転構造による屈折率の反転
を形成したLN単結晶の電気光学効果を利用した光素子
の性能は、レンズやプリズム状の分極反転構造の設計や
分極反転構造の作製プロセスの精度、および材料の持つ
電気光学定数の大きさで決定された。ここで試作したレ
ンズやプリズム状パターンの分極反転構造で、特筆すべ
きことは、分極反転性の制御が非常に容易であることか
ら良好な素子特性が得られたことである。
【0087】従来の一致溶融組成のLN結晶では分極反
転に大きな印加電圧が必要なために分極反転構造の制御
が困難であった。また、従来の一致溶融組成のLN結晶
これにMgOを5mol%以上添加したLN単結晶では
自発分極の反転の制御が悪いため精度の良いレンズやプ
リズム状の分極反転構造の作製は困難だった。
【0088】実施例1で作成したLN単結晶にレンズや
プリズム状の分極反転構造を作製し電気光学効果を利用
した偏向素子やシリンドリカルレンズ、ビームスキャナ
ー、スイッチなどの光素子を製作した場合には、このよ
うな問題は見られなかった。さらに本結晶は一致溶融組
成の結晶よりも大きな電気光学定数r33を有しているの
で、より小さな動作電圧でより優れたデバイス性能が得
られた。例えば偏向素子の場合には約600V/mmの
電圧で約6°と大きな偏向角が得られた。また、約10
0V/mm近傍で動作するレンズや、約500V/mm
でのスイッチング動作も得られた。
【0089】本実施例では、キュリー温度以下の温度で
分極反転する実施例として電圧印加方法について詳しく
述べたが、本発明によれば1)Ti内拡散法。2)Si
O2装荷熱処理法。3)プロトン交換熱処理法。4)電
子ビーム走査照射法。など他の方法を用いた場合でも、
結晶の完全性と制御性に優れたストイキオメトリ組成L
N単結晶を用いることで、高精度に周期分極反転格子を
形成した光素子を実現することが可能である。
【0090】また、ここでは、840nmまたは106
4nmの近赤外光の基本波に対して青色または緑色光を
発生するQPM素子を作成した実施例に付いて詳しく述
べたが、本発明によれば基本波がこの二つの波長に限る
ことはなく、LN単結晶が透明でかつ位相整合が可能で
ある波長域に関して適用することが可能である。さら
に、本発明のニオブ酸リチウム単結晶の分極構造を周期
的に反転させ、可視から近赤外域の波長を持った入射レ
ーザーの波長を短波長化あるいは長波長化させる光機能
素子は第二高調波発生素子に限らず光パラメトリック発
振器素子など、リモートセンシング、ガス検知をはじめ
とする各種の応用分野での適用が可能とされる。
【0091】(実施例6)市販の高純度Li2O、Nb2
O5の原料粉末を準備し、Li2O:Nb2O5の比が0.
56〜0.60:0.44〜0.40のLi成分過剰原料
と、Li2O:Nb 2O5=0.50:0.50の定比組成
原料を混合した。次に、1ton/cm2の静水圧でラ
バープレス成形し、それぞれを約1050℃の大気中で
焼結し原料棒を作成した。また、混合済みの定比組成原
料を連続供給用原料として、約1150℃の大気中で焼
結し、粉砕し、大きさが50ミクロン以上500ミクロ
ンのサイズの範囲で分級した。次に、二重るつぼ法によ
る単結晶育成に際して、作成したLi成分過剰原料から
なる原料棒を内側および外側るつぼに予め充填し、次に
るつぼを加熱してLi成分過剰な融液を作成した。Sc
添加の効果を確認する実験では、この充填の際に、市販
の高純度Sc2O3を内側および外側るつぼに予め充填し
た。充填するSc2O3の重量は、融液中のSc濃度が融
液中のNbに対して各々0.1、0.2、0.5、1.0、
3.0mol%の5種類の実験を行った。
【0092】育成に用いたるつぼの材質は白金製のもの
を用いた。用いた二重るつぼの形状は、外るつぼの高さ
/直径の比を0.45としており、内るつぼ/外るつぼの
直径比は0.8とした。その大きさは外るつぼが直径1
50mm高さ67.5mm、内るつぼ36が直径120
mm、高さ75mmとした。内るつぼと外るつぼの間は
片側約15mmのスペースがあり、ここに原料をスムー
ズに落下した。
【0093】Li成分過剰の内側るつぼの融液から結晶
を成長させた。融液の温度を高周波発振機への投入電力
と高周波誘導コイルにより所定の温度に安定させた後、
Z軸方位に切り出した5mm×5mm×長さ70mmの
単一分極状態にあるLN単結晶を種結晶として回転支持
棒の下部に接続し、融液に付け、融液温度を制御しなが
ら結晶を回転させて上方向に引き上げることでScを添
加したLN単結晶を成長させた。育成雰囲気は大気中と
した。LN単結晶の回転速度は5〜8rpmの範囲内で
一定とし、引き上げ速度は0.5〜3.0mm/hの範囲
で変化させた。育成した結晶から2インチ径のウエハー
が作成できるよう結晶の直胴部に対し、自動直径制御を
行った。育成結晶成長重量をロードセルにより測定し、
結晶化した成長量に見合った量のLi2O/(Nb2O5
+Li2O)のモル分率が0.500の定比の原料を外側
るつぼに供給した。ここではLN単結晶の成長量変化が
コンピュータにより求められているので、原料粉末の供
給はLN種結晶から単結晶の育成が始まり直径制御が安
定化した時点から開始した。
【0094】原料の供給は、予め育成炉体上部に設置し
た重量測定センサーを兼ね備えた密封容器内に保管した
粉末原料をセラミックスからなる供給管を通じて行っ
た。供給管及び密封容器に毎分200〜500ccの範
囲でガスを弁を具備するガス管を介して流入した。ガス
の流量は供給する原料粉末の単位時間当たりの量と粒径
によって最適化した。これによって、飛散や供給管内で
の詰まりのない円滑な原料供給を行った。育成中、貴金
属二重るつぼを回転させることで、供給した粉末原料の
融液との均質化と同時に、強制定に結晶成長界面を液面
に対してフラットもしくは凸になるよう融液の対流を制
御した。各々の組成において約1.5週間の育成によ
り、直径60mm,長さ110mmでクラックのない無
色透明のScを添加したLN結晶体を得た。
【0095】得られた結晶に関して、Li2O/(Nb2
O5+Li2O)のモル分率を化学分析法および示差熱分
析法により求めた。試料の測定位置は種結晶から15m
m離れた結晶の軸中心部を測定位置aとし、また測定位
置aから軸中心に沿って種結晶から離れる方向に10m
m毎の位置を3点とり、順に測定部b、c、dとした。
測定試料は測定位置を中心に7mm角の立方体形状とし
て切りだした。
【0096】化学分析では組成比の絶対値を精度良く求
めることは難しく、LN結晶の場合Li2O/(Nb2O
5+Li2O)のモル分率で約0.001〜0.005程度
の誤差を含んでいる。そこで定比に近い組成のLN結晶
については非常に慎重に組成を分析し、さらに結晶組成
に敏感な物理量であるキュリー温度を示差熱分析法によ
り求めた。その結果、LN単結晶の場合、定比に近い組
成であってもSc等を添加した結晶ではLi2O/(N
b2O5+Li2O)のモル分率の値は0.005を超える
ことはなかった。また、これら試料のSc元素の含有量
に関する測定も行い、結晶の含有量が融液に添加したS
c濃度と同じで偏析係数はほぼ1であることを確認し
た。
【0097】次に、得られた各々の単結晶に関して、測
定位置a〜dの各場所から、断面が10mm×10mm
で厚みが1.0mmのz板試料を切り出した。両z軸面
に電極を形成した後、電圧を印加し、結晶が分極反転を
起こす電圧を測定した。Scの添加量が0.1mol%
以上添加した場合には全てが3.4kV/mm以下の値
が得られた。これらの結晶では、内部電場が殆ど見られ
ず強誘電体のヒステリシス曲線(P-E曲線)の対称性に
優れることと、抗電場近傍でのP-E曲線の立ち上がりが
良いため測定値にもばらつきが少ないものと考えられ
る。
【0098】一方、0.1mol%未満では、それ以上
の量の添加結晶に比べて分極反転電圧は若干上回る傾向
にあることが分かる。一方、Scの添加量が3mol%
以上添加した場合には分極反転は小さくなるが、試料毎
のばらつきが大きくなる傾向が見られた。これは、強誘
電体のヒステリシス曲線(P-E曲線)の抗電場近傍でのP
-E曲線の立ち上がりがなだらかで悪いため分極反転電圧
の絶対値測定が困難になること、また、材料の電気抵抗
によることが原因であると考えられた。尚、同様の試料
形状、測定条件で溶融一致組成結晶の反転電圧を測定し
たところ場合によっては測定は困難であった。試料厚み
が0.2〜0.5mm程度の薄い試料で測定ができ、2
1.0kV/mmという非常に高い値であった。
【0099】次に、これら試料の非線形光学定数を測定
した。我々はウェッジ法を用いた絶対測定を行い、測定
データに対して多重反射の効果を考慮した解析を行うこ
とによって、非線形光学定数の絶対値を正確に決定し
た。その結果、LN単結晶のような高屈折率の物質(n
> 2)に対する従来の値のほとんどは過大評価されてい
たことを明らかにし、溶融一致組成のLN結晶のd33を
測定したところ、文献で求められてる結果と良く一致す
る25.1pm/Vという値が得られた。測定に使用し
たレーザー光は単一縦モード連続発振の波長は1.06
4ミクロンである。Scの添加量が0.1mol%以上
添加した場合には、結晶のLi2O/(Nb 2O5+Li2
O)のモル分率が0.489から0.499の間で大きく
ばらついているにも関わらず、全てが30.0pm/V
以上の値であるのに対し、0.1mol%未満では、そ
れより若干劣る傾向にある。
【0100】次に、上記と同様にして得られた各々の単
結晶に関して、測定位置a〜dの各場所から、x、y、z
方位に5mm×3mm×2mmの試料を切り出した。両
z軸面に電極を形成した後、マッハツェンダー干渉法を
用いて試料の電気光学定数を測定した。これら定数のい
くつかは結晶組成に非常に敏感であると言うことが明ら
かにされた。すなわち、結晶のLi2O/(Nb2O5+
Li2O)のモル分率が0.490以上0.500未満の
LN単結晶では、従来の一致溶融組成LN単結晶と較べ
て電気光学定数r13は増大しないが、r33は約20%以
上増大し約36pm/V以上となり、一致溶融組成LN
単結晶の値の約31.5pm/Vに較べて非常に大きい
ことが明らかにされた。特に、電気光学定数に関しては
定比組成に近づくほど大きくなる傾向が見られた。ま
た、Scを添加した結晶では添加量が0.1mol%以
上添加した場合には38pm/V以上と更なる増加が見
られ、特に、約1mol%添加した結晶で最大の39.
5pm/Vが得られた。一方、Scの添加量が1mol
%よりも多くなると電気光学定数は徐々に低下する傾向
も見られた。
【0101】次に、上記と同様にして得られた各々の単
結晶に関して、測定位置a〜dの各場所から、x、y、z
方位に2mm×10mm×10mmの試料を切り出し
た。結晶のX方向に波長350,488,532nmの紫
外〜緑色レーザを入射し、その耐光損傷性を評価した。
光損傷が発生すると結晶中に屈折率の回折格子が形成さ
れるため通過ビームのプロファイルが大きく歪むので、
光損傷の有無を容易に判断することができる。Sc等を
添加しないLN結晶では結晶組成に関わらず数kW/c
m2程度の強度の入射で光損傷が発生した。
【0102】Scを添加した結晶では耐光損傷性は大幅
に改善され、結晶のLi2O/(Nb2O5+Li2O)の
モル分率が0.490以上0.500未満のLN単結晶で
は、Scの添加量が0.1mol%と僅かであっても数
MW/cm2の強度の光入射に対して安定であった。こ
れはMgを添加した場合よりも低濃度で大きな改善効果
があることが特徴であり、低濃度であることは結晶品質
を低下させることなく材料性能を向上させるという点で
非常に大きなメリットである。一方、Scを添加した結
晶では3mol%以上添加すると結晶育成が比較的困難
になり、また、結晶品質が劣化するため大きな材料性能
が発現できないというデメリットがあるということが確
認された。
【0103】(実施例7)次に、実施例1と同様にして
作られたLN単結晶に周期的に分極反転させて種々の光
機能素子を製作した。840nmまたは1064nmの
近赤外光の基本波に対して青色または緑色光を発生する
QPM素子の作成について示す。実施例1で得られたS
cを添加した結晶からウエハーを切り出した。切り出し
たウエハーは、直径が2インチで、厚みがそれぞれ0.
3mm、0.5mm、1.0mm、2.0mm、3.0mm
を用意した。、両面に研摩を施したz軸方位に切り出
し、+z面にリソグラフを用いて、厚み500nmのC
r膜を電極として櫛形のパターンを形成した。青色、お
よび緑色光の高調波を高効率で発生させるために1次の
QPM構造となるように電極の周期は3.0ミクロンお
よび6.8ミクロンとした。つぎに、+z面上に厚み0.
5ミクロンの絶縁膜をオーバーコートし350℃で8時
間保存処理を施した。次に結晶の両z面に塩化リチウム
水溶電界液を介して電極に挟み、高電圧パルスを印加し
た。LN単結晶に流れる電流は1キロオームの抵抗を通
してモニターした。
【0104】分極反転格子を形成した後、側面となる結
晶のy面を研摩、フッ酸・硝酸の混合液でエッチングし
て、分極反転格子の様子を観察した。各試料に関して、
この観察と分極反転を繰り返すことで、印加電圧のパル
ス幅や電流の最適化を行い、試料全体にわたって分極反
転格子幅比、およびその分極反転の形が理想的な各々
1:1(1:0.95〜1)に近づくようにした。
【0105】実験の結果、試料の厚みは0.3mm、0.
5mm、1.0mm、2.0mm、3.0mmのいずれの
場合でも、大半の試料に関してはほぼ1:1の分極反転
格子幅比を得ることができたが、Sc濃度が3mol%
より高い濃度の結晶では得ることができなかった。具体
的には、分極反転の直進性が悪く、隣同士がつながった
反転格子が多くの場所で形成される傾向が見られた。こ
れは、Sc濃度が高くなりすぎたために、電気抵抗が低
下し微細な周期的電圧印加が困難になったため、結晶の
不均質が発生し特にScが多く含まれた場所が分極反転
の直進を妨げたためと思われる。つまり、分極反転させ
る素子作成を考えた場合には、Sc添加濃度は3mol
%以下とすることが望ましい。
【0106】(実施例8)次に、実施例1で作成したL
N単結晶にレンズやプリズム状の分極反転構造を作製し
電気光学効果を利用した偏向素子やシリンドリカルレン
ズ、ビームスキャナー、スイッチなどの光素子を製作し
た。直径2インチ、厚み0.2〜2.0mm、両面研摩
されたzーカットのLN単結晶を準備し、両z面に厚さ
約200ミクロンのAl電極をスパッタリングにより形
成し、リソグラフを用いて、レンズやプリズム状パター
ンを形成した。その後、+z面にパルス状の電圧を約
3.5KV/mm印加し分極を反転させた。さらに50
0℃で約5時間、空気中で熱処理を施した。これにより
分極反転に際して導入された屈折率の不均一性を解消さ
せた。さらに結晶の端面を鏡面研磨仕上げを行い、レー
ザー光の入出射面とした。試作した分極反転構造による
屈折率の反転を形成したLN単結晶の電気光学効果を利
用した光素子の性能は、レンズやプリズム状の分極反転
構造の設計や分極反転構造の作製プロセスの精度、およ
び材料の持つ電気光学定数の大きさで決定された。
【0107】ここで試作したレンズやプリズム状パター
ンの分極反転構造で、特筆すべきことは分極反転性の制
御が非常に容易であることから良好な素子特性が得られ
たことである。さらに本結晶は一致溶融組成の結晶より
も大きな電気光学定数r33を有しているので、より小さ
な動作電圧でより優れたデバイス性能が得られた。例え
ば、偏向素子の場合には約600V/mmの電圧で約6
°と大きな偏向角が得られた。また、約100V/mm
近傍で動作するレンズや、約500V/mmでのスイッ
チング動作も得られた。
【0108】本実施例では、キュリー温度以下の温度で
分極反転する実施例として電圧印加方法について詳しく
述べたが、本発明によれば1)Ti内拡散法。2)Si
O2装荷熱処理法。3)プロトン交換熱処理法。4)電
子ビーム走査照射法。など他の方法を用いた場合でも、
結晶の完全性と制御性に優れたストイキオメトリ組成L
N単結晶を用いることで、高精度に周期分極反転格子を
形成した光素子を実現することが可能である。
【0109】また、ここでは、840nmまたは106
4nmの近赤外光の基本波に対して青色または緑色光を
発生するQPM素子を作成した実施例に付いて詳しく述
べたが、本発明によれば基本波がこの二つの波長に限る
ことはなく、LN単結晶が透明でかつ位相整合が可能で
ある波長域に関して適用することが可能である。さら
に、本発明のニオブ酸リチウム単結晶の分極構造を周期
的に反転させ、可視から近赤外域の波長を持った入射レ
ーザーの波長を短波長化あるいは長波長化させる光機能
素子は第二高調波発生素子に限らず光パラメトリック発
振器素子など、リモートセンシング、ガス検知をはじめ
とする各種の応用分野での適用が可能とされる。
【0110】
【発明の効果】以上詳しく述べたように、本発明によれ
ば、LN結晶のLi2O/(Nb2O5+Li2O)のモル
分率を完全に0.500にすることなしに、第三の元素
を加えることでLi2O/(Nb2O5+Li2O))のモ
ル分率が0.500であるLN結晶の非線形光学定数、
分極反転電圧および電気光学定数を有するLN結晶を高
効率に与えることができる。これを利用することによ
り、結晶全体に最高の波長変換特性および電気光学特性
を有する定比組成LN結晶を育成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いたLN単結晶の育成炉を示す一例
である。
【図2】LiとNbとの相図を示す図である。
【図3】一重るつぼを用いた際のLN単結晶の様態を示
す模式図である。
【符号の説明】
1 育成炉 35 外るつぼ 36 内るつぼ 37 原料供給管 40 種結晶 41 融液 42 LN単結晶 43 高周波誘導コイル 45 原料 47 育成炉体 51 ガス 52 ロードセル 61 単結晶部 62 セラミック層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 古川 保典 茨城県つくば市並木1丁目1番 科学技術 庁無機材質研究所内 (72)発明者 北村 健二 茨城県つくば市並木1丁目1番 科学技術 庁無機材質研究所内 (72)発明者 竹川 俊二 茨城県つくば市並木1丁目1番 科学技術 庁無機材質研究所内 (72)発明者 宮本 晃男 埼玉県熊谷市三ヶ尻5200番地 日立金属株 式会社磁性材料研究所内 (72)発明者 寺尾 雅樹 兵庫県加古郡播磨町宮西346番地 多木化 学株式会社内 (72)発明者 須田 昇 京都府相楽郡精華町光台3丁目5番地 京 セラ株式会社中央研究所内 Fターム(参考) 2H079 AA02 AA12 BA01 CA05 CA17 DA02 HA12 2K002 AB12 BA01 CA03 FA11 FA27 HA20 HA21 4G077 AA02 AB01 BC32 CF10 HA06 PD08

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Liが定比組成よりも過剰な組成の融液
    から育成されたニオブ酸リチウム単結晶において、M
    g、Zn、Sc、Inの少なくとも一種以上の元素をニ
    オブ酸リチウム単結晶に対して0.1〜3.0mol%
    含有することを特徴とするLi2O/(Nb2O5+Li2
    O)のモル分率が0.490以上0.500未満の間に
    あるニオブ酸リチウム単結晶。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のニオブ酸リチウム単結
    晶で、波長1.064ミクロンにおいて非線形光学定数
    d33が26pm/V以上であることを特徴とするニオブ
    酸リチウム単結晶。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載のニオブ酸リチウム単結
    晶で、室温で分極反転するために必要な印加電圧が3.
    7kV/mm未満であることを特徴とするニオブ酸リチ
    ウム単結晶。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載のニオブ酸リチウム単結
    晶で、波長0.633ミクロンにおいて電気光学定数r
    33が36pm/V以上であることを特徴とするニオブ酸
    リチウム単結晶。
  5. 【請求項5】 単結晶内に入射されたレーザー光の波長
    を変換する光素子であって、請求項1から3のいずれか
    に記載のニオブ酸リチウム単結晶の強誘電分極を反転さ
    せた構造で疑似位相整合を行うことを特徴とする光素
    子。
  6. 【請求項6】 素子のz軸方向の厚みが1.0mm以上
    で、分極反転の周期が30ミクロン以下であることを特
    徴とする請求項5に記載の光素子。
  7. 【請求項7】 分極反転の周期が5ミクロン以下である
    ことを特徴とする請求項5または6に記載の光素子。
  8. 【請求項8】 単結晶の電気光学効果を利用して単結晶
    内に入射されたレーザー光を制御する光素子であって、
    請求項1、3または4のいずれかに記載のニオブ酸リチ
    ウム単結晶の強誘電分極を反転させた構造の大きな屈折
    率変化を利用して光の偏向、焦点、スイッチングを行う
    ことを特徴とする光素子。
  9. 【請求項9】 Li2O/(Nb2O5+Li2O)のモル
    分率が0.490以上0.500未満の間にあるニオブ
    酸リチウム単結晶を、Liが定比組成よりも過剰な組成
    の融液から引き上げる育成方法において、融液の組成変
    動からくる結晶内の不定比欠陥による特性劣化を防ぎ、
    かつ、高品質の結晶を育成するために、可視光領域で実
    質的に吸収を持たないMg、Zn、Sc、Inの何れか
    の元素を0.1〜3.0mol%含有した結晶が析出す
    る組成融液を使用することを特徴とするニオブ酸リチウ
    ム単結晶の製造方法。
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