JP2003262185A - 可変容量型斜板式圧縮機 - Google Patents

可変容量型斜板式圧縮機

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JP2003262185A
JP2003262185A JP2002061511A JP2002061511A JP2003262185A JP 2003262185 A JP2003262185 A JP 2003262185A JP 2002061511 A JP2002061511 A JP 2002061511A JP 2002061511 A JP2002061511 A JP 2002061511A JP 2003262185 A JP2003262185 A JP 2003262185A
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angle
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inclination angle
compressor
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JP2002061511A
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So Kurita
創 栗田
Hiroshi Uneyama
博 采山
Tetsuhiko Fukanuma
哲彦 深沼
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Toyota Industries Corp
Original Assignee
Toyota Industries Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 斜板の挙動の安定した可変容量型斜板式圧縮
機を得る。 【解決手段】 斜板面を前方から付勢して斜板60の傾
斜角θを減少させるセットスプリング150を備えた圧
縮機において、例えば、斜板面にセットスプリング15
0が稜線170のみで当接する受座154を設け、セッ
トスプリング150による付勢力Xの作用箇所Sの位置
が、少なくとも最小傾斜角およびその近傍の小傾斜角域
において変化しないようにする。斜板60を傾斜させる
力の状態が急変しないことから、圧縮機作動中の斜板の
傾斜角が安定する。また、もう一方の斜板面を後方から
付勢して斜板60の傾斜角を増加させるリターンスプリ
ング152をも備える場合、同様に、斜板面にリターン
スプリング152が稜線172のみで当接する受座15
8を設け、リターンスプリング152による付勢力Yの
作用箇所Tの位置をも変化させないようにすれば、斜板
の傾斜角がより安定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、可変容量型斜板式
圧縮機に関し、特に、作動時における斜板の挙動の安定
化に関する。
【0002】
【従来の技術】斜板式圧縮機は、車両用エアコンディシ
ョナの冷媒圧縮機等に広く利用されており、具体的に
は、例えば、特開平7−91366号公報に記載された
構造のものが存在する。記載されている斜板式圧縮機
は、可変容量型のものであり、他の多くの可変容量型斜
板式圧縮機と同様、斜板の傾斜角(回転軸に直角な平面
に対する斜板の角度)を変更して、吐出容量を変化させ
る構造のものとなっている。斜板の傾斜角の変更は、傾
斜角変更装置によって行われ、この傾斜角変更装置は、
ハウジング内詳しくはハウジングの斜板室内の圧力を調
整することによって傾斜角を変更する機構を主体として
構成されている。
【0003】上記公報に記載の斜板式圧縮機において
は、さらに、斜板面を付勢する弾性部材としての圧縮コ
イルスプリングを備えている。このスプリングは、斜板
の傾斜角が小さくなる向きに斜板の一方の面を付勢して
おり、例えば、圧縮機が作動を停止した場合には、この
スプリングの働きにより斜板が動かされて、その斜板は
所定の小さな角度にセットされる。つまり、そのスプリ
ングは、セットスプリングと称することができ、設定さ
れた始動時位置まで斜板を動かすことを1つの目的とし
ている。
【0004】上記公報に記載の斜板式圧縮機を始めとす
る同様の構造の斜板式圧縮機では、セットスプリング
は、その一端を斜板面の一部に直接当接させて、斜板を
付勢している。斜板の傾斜に応じてスプリングが当接す
る部分も傾斜することから、それによってスプリングが
偏って斜板を付勢すること等を考慮して、斜板の当接部
には、スプリングを受承するための特殊な形状の受座が
形成されている。詳しく説明すれば、この受座は、交線
が斜板の傾斜回動軸に平行な稜線となる2つの平面を有
する山形の形状を有しており、斜板が設定された最小傾
斜角付近および最大傾斜角付近にある状態おいては、で
きるだけ安定した付勢状態を得るために、上記2つの平
面の一方でスプリングの端面が受承可能となるように、
そしてそれらの中間の傾斜角にある状態において、上記
稜線でスプリングの端面を受承するように形成されてい
るのである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効
果】斜板面に直接当接して付勢するセットスプリングを
有する構造の斜板式圧縮機の場合、斜板の傾斜角の変化
によって、付勢力の作用箇所の位置が急変する場合があ
る。例えば、当接部に上記形状の受座を設けた場合、ス
プリングの端面を平面で受承する状態と稜線で受承する
状態とでは、斜板における付勢力の作用箇所の位置が異
なる。上記セットスプリングは、斜板がいずれの傾斜角
にある場合も、斜板面を付勢しつづけており、したがっ
て、最小傾斜角から中間の傾斜角へ移行するとき、その
逆のとき、最大傾斜角から中間の傾斜角へ移行すると
き、および、その逆のときには、上記作用箇所の位置が
急変してしまうのである。
【0006】上述のように付勢力の作用箇所が急変する
場合、斜板に与えられている力の状態が急変することに
なり、上記移行期において斜板の傾斜角が急変するとい
う現象が発生してしまう。また、移行がゆっくりと行わ
れる場合、移行状態あるいはその近傍での作動が継続す
る場合等には、斜板の傾斜角が小刻みに変動して斜板が
ばたつくあるいは揺らぐといった現象が生じることにな
る。斜板の傾斜角が大きい場合は、斜板の傾斜角を変化
させる力のうちスプリングの付勢力が占める割合が小さ
く、上記付勢力の作用箇所の急変による斜板の傾斜角の
変動は、顕著には出現しない。これに対して斜板の傾斜
角が小さい場合、特に、無負荷運転に近い状態の場合で
は、斜板の傾斜角を変化させる力のうちのセットスプリ
ングの付勢力の占める割合が大きく、斜板の傾斜角が最
小傾斜角あるいはその近傍となる状態においては、セッ
トスプリングの付勢力が支配的になるため、上記現象が
顕著に現れることになる。
【0007】可変容量型斜板式圧縮機においては、上述
の斜板の傾斜角の急変を始めとして、斜板の挙動が不安
定となる原因が種々存在する。斜板の不安定な挙動は、
例えば、ハンチング、異音といった現象の発生等に繋が
り、斜板式圧縮機性能を低下させる一因となる。したが
って、可変容量型斜板式圧縮機においは、斜板の挙動を
できるだけ安定させることが強く望まれるのである。
【0008】そこで、本発明は、斜板の挙動が安定した
可変容量型斜板式を得ることを課題としてなされたもの
であり、本発明によって、下記各態様の可変容量型斜板
式圧縮機が得られる。各態様は請求項と同様に、項に区
分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を
引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の
理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的
特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のもの
に限定されると解釈されるべきではない。また、一つの
項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事
項を常に一緒に採用しなければならないわけではない。
一部の事項のみを選択して採用することも可能である。
【0009】なお、以下の各項において、(1)項が請
求項1に相当し、(2)項が請求項2に、(3)項が請
求項3に、(5)項が請求項4に、(6)項が請求項5
に、(9)項が請求項6にそれぞれ相当する。
【0010】(1)各々の中心線が一円筒面上に位置す
る複数のシリンダボアを備えたハウジングと、そのハウ
ジングにより前記一円筒面の中心線を回転軸線として回
転可能に支持された回転軸と、その回転軸に、その回転
軸と共に回転可能にかつ前記回転軸線と直交する平面に
対する傾斜角が変化可能に保持された斜板と、前記シリ
ンダボアにそれぞれ摺動可能に嵌合されるとともに、前
記斜板の外周部と係合させられ、斜板の回転につれてそ
れぞれ上死点と下死点との間で往復運動させられる複数
のピストンと、前記斜板の前記傾斜角を設定された最大
傾斜角と最小傾斜角との間で変更する傾斜角変更装置と
を含む可変容量型斜板式圧縮機であって、当該圧縮機
が、前記傾斜角が減少する向きに前記斜板の一方の面を
付勢する弾性部材である減角弾性部材を含み、少なくと
も前記傾斜角が最小傾斜角ないしその近傍の角度となる
小傾斜角域において、前記傾斜角が変化した場合であっ
ても、前記斜板の前記一方の面における前記減角弾性部
材の付勢力の作用箇所である減角力作用箇所の、前記斜
板の直径のうちの前記傾斜角が最大となる直径である最
大傾斜直径に平行な方向における位置が実質的に変化し
ない構成とされたことを特徴とする可変容量型斜板式圧
縮機。
【0011】可変容量型斜板式圧縮機は、前述したよう
に、斜板室の圧力調整によって斜板の傾斜角を変更する
機構を主体とする傾斜角変更装置を採用する。詳しく
は、斜板の傾斜角は、斜板室と各シリンダの圧縮室との
圧力バランスで決定され、傾斜角変更装置は、例えば、
吐出室から斜板室に適宜吐出圧を導くことにより、上記
バランスを調整して斜板の傾斜角を変更するのである。
本項に記載の斜板式圧縮機では、例えば前述したセット
スプリングとして機能させる等の目的で、上記減角弾性
部材を有しており、この減角弾性部材は、上記圧力バラ
ンスのみでなく、その付勢力も斜板の傾斜角を決定する
一要因となっている。本項に記載の斜板式圧縮機は、そ
の付勢力の斜板面における作用箇所の位置が安定してい
ることで、斜板の挙動が安定するのである。
【0012】以下、斜板の挙動の安定化について、さら
に詳しく説明する。斜板(厳密には斜板本体部)は、略
円形(楕円、長円等であって円に近い形状を含む)の板
状であると考えてよく、厚さ方向の中心に位置して斜板
面に平行な平面を斜板中心面と定義すれば、略円形とな
る斜板中心面を貫いて斜板の回転軸線が位置し、その回
転軸線回りに回転させられる。また、斜板は、回転軸線
と直角に交差(立体交差を含む)して方向が一定な軸線
回りに回動させられることによって傾斜する、この軸線
は、傾斜回動軸線と呼ぶことができる。さらに、斜板
は、ピストンの上死点位置が略一定となるように傾斜さ
せられ、ピストンが上死点に位置するときにそのピスト
ンが係合する斜板中心面の外周位置と、ピストンが下死
点に位置するときにそのピストンが係合する斜板中心面
の外周位置とを結んだ線が最大傾斜直径に相当する。言
い換えれば、最大傾斜直径は、回転軸線が当該面内に位
置して傾斜回動軸線に直角な平面と、斜板中心面との交
線上に位置することになる。このような位置関係に構成
された斜板式圧縮機において、減角弾性部材が斜板の一
方の面を付勢する場合、その一方の面におけるその付勢
力が作用する箇所が最大傾斜直径に平行な方向において
その位置が変化しない場合は、付勢力が変化しない限
り、斜板の傾斜角を変化させる力が変動しない。弾性部
材による付勢力の大きさは、斜板の傾斜角の変化に伴っ
て変化するが、傾斜角の微少変化で急変することはな
く、斜板の傾斜角を変化させる力が急変することはな
い。したがって、本項に記載の斜板式圧縮機では、弾性
部材の付勢力に起因する斜板の傾斜角の急変が抑制され
て、作動中における斜板の挙動が安定するのである。
【0013】前述したように、傾斜角が大きい場合は、
斜板の傾斜角を決定するための力の中で減角弾性体の付
勢力の占める割合は小さい。これに対して、傾斜角が小
さい場合、特に、無負荷に近い状態で作動している状態
においては、減角弾性体の付勢力が斜板の傾斜角の決定
に大きく影響する。したがって、本項に記載の斜板式圧
縮機のように、少なくとも小傾斜角域において減角力作
用箇所の位置が安定していれば、当該圧縮機の作動中の
斜板の挙動は、実用的に満足できる程度に安定化する。
小傾斜角域は、斜板の傾斜角が最小傾斜角ないしその近
傍の角度となる範囲である。最小傾斜角は、0゜に限り
なく設定される場合もあり、また、始動時からある程度
の吐出圧を得る等の目的で、微少角度(例えば1゜〜3
゜程度)に設定される場合もある。また、最小傾斜角
は、所定のストッパ等の何らかの固定的な規定手段を設
けて規定される場合もあり、また、後に詳しく説明する
ように、例えば、付勢力の釣り合い等の作用を利用した
規定手段によって規定されるされる場合もある。いずれ
の規定手段を採用する圧縮機であっても、本項に記載の
態様のものとすることができる。具体的な角度で示せ
ば、小傾斜角域は、例えば、斜板の傾斜角が0゜〜3゜
となる状態として設定することが望ましく、より望まし
くは、0゜〜5゜となる状態として設定するのがよい。
また、最小傾斜角と最大傾斜角との角度差を100%と
した場合に、最小傾斜角から約10%までの範囲を小傾
斜角域とするのが望ましく、さらには、約15%までの
範囲とするのがより望ましい。なお、最小傾斜角から最
大傾斜角までの全域にわたって、減角力作用箇所の位置
が実質的に変化しない構成としてもよい。
【0014】(2)前記減角弾性部材が前記斜板の前記
一方の面の一部に当接してその一部を付勢するものであ
って、その一部が前記減角力作用箇所であり、少なくと
も前記小傾斜角域において、その一部が前記最大傾斜直
径と前記回転軸線との両方に直角な一直線上に位置する
(1)項に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【0015】減角力作用箇所の位置が実質的に変化しな
い構成は種々存在し、いかなる構成を採用してもよい。
最大傾斜直径と回転軸線との両方に直角な直線とは、前
述した斜板の位置関係に従えば、例えば、斜板と減角弾
性部材とを、両者が斜板の傾斜回動軸線に平行な軸線回
りに相対回動可能な状態で連結するという構成を採用す
ることも可能である、この態様の構成では、連結部の位
置が斜板に対して固定されているため、減角力作用箇所
の位置変動が生じない。ところが、連結という手段を用
いるため、この構成では、圧縮機自体の構造が複雑とな
る。このことに考慮すれば、減角弾性部材が斜板面に当
接して、詳しくは、分離可能に接触して、斜板における
その当接箇所が付勢力の作用箇所となる構成とすれば、
簡便な構造の斜板式圧縮機となる。その場合において、
付勢力の作用箇所の位置が上記傾斜回動軸線に平行な一
直線上に固定された態様が、本項に記載の態様である。
つまり、傾斜回動軸線に平行な幅の狭い直線状の箇所に
おいて減角弾性部材を当接して受承すれば、傾斜角が変
動した場合であっても、斜板における弾性部材の当接箇
所の実質的な位置変動はなく、斜板の挙動は安定する。
なお、減角力作用箇所が幅の狭い直線状の箇所となると
は、当接箇所の長さが短く、あたかも一点で当接する場
合をも含む意味である。また、当接箇所が1箇所である
必要はなく、複数の箇所において当接し、それぞれの当
接箇所が、上記一直線上に位置する態様をも含む意味で
ある。
【0016】(3)前記斜板が、前記一方の面に前記減
角弾性部材を受承する減角弾性部材受座を備え、その受
座が、交線が前記最大傾斜直径と前記回転軸線との両者
に直角な稜線となる2つの平面を有し、少なくとも前記
小傾斜角域において、前記減角弾性部材の一端面がその
稜線にのみ当接する(2)項に記載の可変容量型斜板式圧
縮機。
【0017】減角弾性部材が斜板の前記一直線上に位置
する箇所で当接する前記態様は、斜板側と弾性部材側の
一方若しくは両方に何らかの手段を施す態様が含まれ
る。弾性部材側にその手段を設ける態様として、例え
ば、弾性部材端部である当接部を山形に形成して、その
山の稜線が傾斜回動軸線と平行になるように斜板に当接
させる態様を採用することができる。これに対し、本項
に記載の態様は、斜板側に手段を設けた態様である。本
項に記載の態様では、最大傾斜直径と回転軸線との両者
に直角な稜線、つまり、斜板の傾斜回動軸線に平行な稜
線を有する山形の座面をを有する受座を斜板面に設け、
少なくとも小傾斜角域においてその稜線のみで弾性部材
を受承するという手段を採用する。弾性部材をかかる一
直線上の箇所に当接させて受承するため、付勢力の作用
箇所の最大傾斜直径に平行な方向の位置変化がなく、斜
板の傾斜角が安定する。なお、受座は、斜板面を加工等
して形成するものであってもよく、また、そのように加
工した別体となる受座部材を斜板面に取り付けるもので
あってもよい。
【0018】(4)前記減角弾性部材が圧縮コイルスプ
リングを含む(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の可変
容量型斜板式圧縮機。
【0019】圧縮コイルスプリングは、付勢力を発生さ
せる弾性部材として、簡便なものであり、かつ、安価で
あり、設定された付勢力が得られるものが容易に製造可
能である。本項に記載の態様では、減角弾性部材は、圧
縮コイルスプリングのみで構成するものであってもよ
く、また、圧縮コイルスプリングを主体として、例え
ば、そのスプリングに斜板面への当接部あるいはその反
対側の支持部に設けられた当接部材あるいは支持部材等
の別部材を含む態様であってもよい。
【0020】(5)前記斜板が、前記回転軸が貫通する
貫通穴を有しており、前記減角弾性部材受座が、その貫
通穴の周囲に環状に形成されており、前記減角弾性部材
が、前記回転軸の外周に前記回転軸線に平行に配設され
た圧縮コイルスプリングを含む(3)項に記載の可変容量
型斜板式圧縮機。
【0021】斜板式圧縮機では、前述のように斜板中心
面をを貫く格好で、回転軸線が存在する。そのため、一
般的には、斜板面に貫通穴が設けられこの貫通穴を貫通
させて回転軸に配設される。本項に記載の態様は、かか
る構成の圧縮機において、圧縮コイルスプリングを主体
とする減角弾性部材を配設する場合の一態様であり、回
転軸を挿入させてスプリングを配設する態様である。そ
のため、斜板式圧縮機をコンパクト化することができ
る。また、スプリング径と回転軸径とを適正な関係とす
れば、スプリングが大きく偏って変形することを回転軸
によって抑制することが可能となる。
【0022】(6)少なくとも前記小傾斜角域におい
て、前記減角弾性部材受座の前記稜線と前記減角弾性部
材を構成する前記圧縮コイルスプリングの中心線とが略
一平面内に位置する(5)項に記載の可変容量型斜板式圧
縮機。
【0023】コイルスプリングを主体とする弾性部材の
端面を受座の稜線に当接させて斜板を付勢する場合、そ
の端面のどの位置で当接するかについては、特に限定さ
れるものではない。本項に記載の態様では、スプリング
の中心に斜板からの反力が作用するため、スプリングの
偏り変形が抑制される。
【0024】(7)前記斜板が、前記回転軸線と略一平
面内に位置する傾斜回動軸線を中心に回動して傾斜する
ものであり、少なくとも前記小傾斜角域において、前記
減角弾性部材の付勢方向がその一平面に略平行であり、
かつ、前記減角力作用箇所が略その一平面内に位置する
(1)項ないし(6)項のいずれかに記載の可変容量型斜板式
圧縮機。
【0025】(8)前記斜板が、前記回転軸線と略一平
面内に位置する傾斜回動軸線を中心に回動して傾斜する
ものであり、少なくとも前記小傾斜角域において、前記
減角弾性部材の付勢方向がその一平面に略平行であり、
前記減角力作用箇所がその一平面から離間して位置する
(1)項ないし(6)項のいずれかに記載の可変容量型斜板式
圧縮機。
【0026】可変容量型斜板式圧縮機では、例えばヒン
ジ機構が採用される等して、斜板は各ピストンの上死点
位置を略一定に保ちつつ傾斜角が変更させられる。多く
の圧縮機は、斜板の傾斜回動軸線が回転軸線とが略一平
面内に位置するようにかつ回転軸線に略平行な方向に減
角弾性部材が付勢するように構成される。したがって、
その場合、傾斜回動軸線は、その方向を一定に保ちつ
つ、斜板の傾斜角に応じた位置に回転軸線に沿って移動
させられことになる。上記2つの態様は、かかる斜板式
圧縮機における減角弾性部材の付勢力の作用箇所ついて
の限定である。傾斜回動軸線および回転軸線に対する作
用箇所の位置等を変更することにより、減角力の特性を
種々に変更することが可能である。例えば、(7)項に記
載の態様では、減角弾性部材の付勢力が斜板に対して回
動モーメントを与え難く、斜板に対して無理な力が作用
しないという利点がある、これに対し、(8)項に記載の
態様では、回動モーメントをを与えつつ付勢することか
ら、斜板の安定度が増すという利点がある。
【0027】(9)当該圧縮機が、少なくとも前記小傾
斜角域において、前記傾斜角が増加する向きに前記斜板
の他方の面を付勢する弾性部材である増角弾性部材を含
む(1)項ないし(8)項のいずれかに記載の可変容量型斜板
式圧縮機。
【0028】本項に記載の態様は、上記減角弾性部材と
は別の弾性部材であって、減角弾性部材とは逆に斜板の
傾斜角を増加させる付勢力を付与する弾性部材を配設し
た態様である。前述したように、圧縮機の始動時、ある
いは、無負荷に近い状態から負荷状態の作動に切り替え
る時には、ある程度の吐出圧が得られるように構成すれ
ば、圧縮機の応答性が良好となる。したがって、始動時
あるいは上記切替時には、小さい角度ではあるが斜板が
ある程度傾斜させられていることが望ましい。逆に、ク
ラッチレスタイプの圧縮機等では、無負荷状態で作動さ
せるという要望があり、その状態では、エネルギロスを
考慮すれば、斜板の傾斜角がきわめて0゜に近い状態に
なることが望ましい。そこで、前述のセットスプリング
としての減角弾性部材に対向するもう1つの弾性部材を
設け、2つの弾性部材の付勢力のバランスによって、始
動時等の斜板の傾斜角を決定させるという機構を採用す
ることがある。かかる機構における上記もう1つの弾性
部材が、本項における増角弾性部材に相当するものとな
る。
【0029】上記セットスプリングに対向する弾性部材
を設ける態様では、斜板室の圧力を調整することで、斜
板の傾斜角を極めて0゜に近い角度に保持して圧縮機を
作動させることができるとともに、作動を停止した場合
には、2つの弾性部材の釣り合いにより、次の始動時に
適切な傾斜角に斜板を保持することが可能となり、ま
た、無負荷状態での作動から負荷状態での作動への切替
時における圧縮機の応答性が良好なものとなる。つま
り、その場合の増角弾性部材は、減角弾性部材の付勢力
に抗って斜板の傾斜角を押し戻す働きをすることから、
リターンスプリングと称することができる。かかるリタ
ーンスプリングとしての増角弾性部材を配設した態様の
斜板式圧縮機は、無負荷運転およびそれに近い状態での
斜板の傾斜角の安定性がより重視されるため、減角弾性
部材による付勢力の作用箇所の位置が変動しない本発明
の斜板式圧縮を適用するメリットは特に大きなものとな
る。
【0030】(10)少なくとも前記小傾斜角域におい
て、前記傾斜角が変化した場合であっても、前記斜板の
前記他方の面における前記増角弾性部材の付勢力の作用
箇所である増角力作用箇所の前記最大傾斜直径に平行な
方向における位置が実質的に変化しない構成とされた
(9)項に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【0031】本項に記載の態様は、減角弾性部材に加
え、増角弾性部材の付勢力の作用箇所の位置も変化しな
い態様の斜板式圧縮機であり、作動時の斜板の挙動の安
定性はより優れたものとなる。増角弾性部材の付勢力の
作用箇所が変化しないことの作用については、前述の減
角弾性部材の場合と同様であり、説明は省略する。ま
た、減角弾性部材に関する各種限定を行った前記(2)項
〜(8)項に記載された技術的特徴は、増角弾性部材につ
いても同様に採用可能であり、以下、(11)項〜(17)項
は、増角弾性部材に対してそれらの技術的特徴に関する
限定を加えた態様を示す項である。それらの態様の作用
および効果については、先の記載に詳しく、また、先の
記載内容と同等であるため、以下の記載は、構成のみを
列挙するに留める。
【0032】(11)前記増角弾性部材が前記斜板の前
記他方の面の一部に当接してその一部を付勢するもので
あって、その一部が前記増角力作用箇所であり、少なく
とも前記小傾斜角域において、その一部が前記最大傾斜
直径と前記回転軸線との両方に直角な一直線上に位置す
る(10)項に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【0033】(12)前記斜板が、前記他方の面に前記
増角弾性部材を受承する増角弾性部材受座を備え、その
受座が、交線が前記最大傾斜直径と前記回転軸線との両
者に直角な稜線となる2つの平面を有し、少なくとも前
記小傾斜角域において、前記増角弾性部材の一端面がそ
の稜線にのみ当接する(11)項に記載の可変容量型斜板式
圧縮機。
【0034】(13)前記増角弾性部材が圧縮コイルス
プリングを含む(9)項ないし(12)項のいずれかに記載の
可変容量型斜板式圧縮機。
【0035】(14)前記斜板が、前記回転軸が貫通す
る貫通穴を有しており、前記増角弾性部材受座が、その
貫通穴の周囲に環状に形成されており、前記増角弾性部
材が、前記回転軸の外周に前記回転軸線に平行に配設さ
れた圧縮コイルスプリングを含む(12)項に記載の可変容
量型斜板式圧縮機。
【0036】(15)少なくとも前記小傾斜角域におい
て、前記増角弾性部材受座の前記稜線と前記増角弾性部
材としての前記圧縮コイルスプリングの中心線とが略一
平面内に位置する(14)項に記載の可変容量型斜板式圧縮
機。
【0037】(16)前記斜板が、前記回転軸線と略一
平面内に位置する傾斜回動軸線を中心に回動して傾斜す
るものであり、少なくとも前記小傾斜角域において、前
記増角弾性部材の付勢方向がその一平面に略平行であ
り、かつ、前記増角力作用箇所が略その一平面内に位置
する(10)項ないし(15)項のいずれかに記載の可変容量型
斜板式圧縮機。
【0038】(17)前記斜板が、前記回転軸線と略一
平面内に位置する傾斜回動軸線を中心に回動して傾斜す
るものであり、少なくとも前記小傾斜角域において、前
記増角弾性部材の付勢方向がその一平面に略平行であ
り、かつ、前記増角力作用箇所がその一平面から離間し
て位置する(10)項ないし(15)項のいずれかに記載の可変
容量型斜板式圧縮機。
【0039】(18)前記減角弾性部材の付勢方向と前
記増角弾性部材の付勢方向とが互いに反対の向きであ
り、少なくとも前記小傾斜角域において、前記減角力作
用箇所と前記増角力作用箇所とが、前記最大傾斜直径に
平行な方向において略同じ位置にある(10)ないし(15)項
のいずれかに記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【0040】(19)前記減角弾性部材の付勢方向と前
記増角弾性部材の付勢方向とが互いに反対の向きであ
り、少なくとも前記小傾斜角域において、前記減角力作
用箇所と前記増角力作用箇所とが、前記最大傾斜直径に
平行な方向において互いに異なる位置にある(10)項ない
し(15)項に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【0041】(20)前記斜板が、前記回転軸線と略一
平面内に位置する傾斜回動軸線を中心に回動して傾斜す
るものであり、少なくとも前記小傾斜角域において、前
記減角作用箇所と前記増角作用箇所とが互いにその一平
面の反対側に位置する(19)項に記載の可変容量型斜板式
圧縮機。
【0042】上記(18)項〜(20)項に記載の態様は、減角
弾性部材と増角弾性部材との2つの弾性部材のそれぞれ
の付勢力の作用箇所の位置関係に関する限定が加えられ
た態様である。2つの作用箇所を種々変更することによ
り、異なる特性、異なる利点を有する斜板式圧縮機が得
られる。一般的な斜板式圧縮機では、減角弾性部材の付
勢方向と増角弾性部材との付勢方向は互いに反対の向き
となることが多い。その前提に基づく場合、付勢力の作
用箇所が最大傾斜直径に平行な方向において略同じ位置
にある(18)項に記載のものは、傾斜回動軸線に対する2
つの付勢力によるモーメントが打ち消しあう方向にそれ
ぞれの付勢力が働くため、余分な方向の力が斜板に作用
しないという利点がある。これに対し、作用箇所が異な
る(19)項の態様の場合、その2つの作用箇所の位置差
による斜板の回動モーメントが発生し、その回動モーメ
ントを利用して、斜板の挙動を安定化させることができ
る。また、その場合、傾斜回動軸線を挟んで対向するよ
うに2つの付勢力が作用する(20)項の態様は、より積極
的にその回動モーメントを利用することができる。な
お、(20)項の態様を採用する場合、最小傾斜角付近での
斜板の挙動の安定性を重視するため、より傾斜角が小さ
くなるような方向に上記回動モーメントが発生する向き
に、それぞれの付勢力の作用箇所が回動軸線から離間す
る方が望ましい。さらにまた、2つの作用箇所が最大傾
斜直径に平行な方向において互いに異なる(19)項およ
び(20)項に記載の態様の場合、実質的な上記利点を発揮
するためには、2つの作用箇所の最大傾斜直径に平行な
方向における離間距離は、斜板面に直角な方向における
離間距離(略斜板の厚さに相当する)の1/2以上であ
ることが望ましく、その離間距離以上であることがより
望ましい。
【0043】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態とその
変形態様を、車両用エアコンディショナに用いられる可
変容量型斜板式圧縮機を例に取り、図面に基づいて詳細
に説明する。なお、本発明は、決して下記実施形態およ
びその変形態様に限定されるものではない。本発明は、
それらの形態の他、前記〔発明が解決しようとする課
題,課題解決手段および効果〕の項に記載された態様を
始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良
を施した形態で実施することができる。
【0044】<斜板式圧縮機の全体構成>図1および図
2に本発明の実施形態としての可変容量型斜板式圧縮機
を示す。図1は、斜板の傾斜角が最小傾斜角となる状態
を示し、図2は、斜板の傾斜角が最大傾斜角となる状態
を示している。10はシリンダブロックであり、シリン
ダブロック10の中心線を中心とする一円筒面上には、
その中心線に平行に延びる複数のシリンダボア12が等
角度間隔で形成されている。シリンダボア12の各々に
は、片頭ピストン14(以下、ピストン14と略称す
る)が往復運動可能に配設されている。シリンダブロッ
ク10の軸方向の一端面(図の左側の端面であり、前端
面と称する)には、フロントハウジング16が取り付け
られ、他方の端面(図の右側の端面であり、後端面と称
する)には、リヤハウジング18がバルブプレート20
を介して取り付けられている。フロントハウジング1
6,リヤハウジング18,シリンダブロック10等によ
り斜板式圧縮機のハウジングが構成される。リヤハウジ
ング18とバルブプレート20との間には、吸入室2
2,吐出室24が形成され、それぞれ、導入ポート2
6,供給ポート28を経て、図示しない冷凍回路に接続
される。バルブプレート20には、吸入孔32,吸入弁
34,吐出孔36,吐出弁38等が設けられている。
【0045】上記ハウジング内には、回転軸50が、シ
リンダブロック10の中心線を回転軸線Mとして回転可
能に設けられている。回転軸50は、その両端部におい
てそれぞれフロントハウジング16,シリンダブロック
10にベアリングを介して回転可能に支持されている。
シリンダブロック10の中心部には、支持穴56が形成
されており、その支持穴56において上記ベアリングを
介して支持されているのである。回転軸50のフロント
ハウジング16側の端部はシリンダブロック10外へ突
出し、図示しない駆動源の一種である外部駆動源として
の車両エンジンに、そのエンジンの回転を伝達可能に連
結されている。クラッチ機構を介在させない場合は、車
両エンジンの作動中においては、常に、回転軸50は回
転軸線Mまわりに回転させられている。
【0046】回転軸50には、斜板60が軸方向に相対
移動可能かつ傾動可能に保持されている。斜板60は、
円板状の本体部62を有し、本体部62を板厚方向に貫
通する貫通穴64が形成されている。この貫通穴64に
回転軸50が挿通されることにより、斜板60が回転軸
50に支持されている。回転軸50には、回転板66が
固定され、スラストベアリング68を介してフロントハ
ウジング16に係合させられている。斜板60は、ヒン
ジ機構74により、回転軸50と一体的に回転させられ
るとともに、軸方向の移動を伴う傾動を許される。ヒン
ジ機構74は、回転板66の回転軸線Mから偏心した位
置であって、周方向に隔たった2箇所に固定的に設けら
れたアーム部76と、斜板60の本体部62に固定的に
設けられ、各アーム部76の係合穴78にスライド可能
に嵌合された2つの係合突部80と、斜板60の貫通穴
64と、回転軸50の外周面82とを含むものである。
係合突部80は、斜板60の本体部62から斜板中心面
Nに対して傾いた方向(圧縮機の外周側に向かう方向)
に延び出し、その自由端部に形成された球状部84が、
アーム部76の横断面形状が円形の係合穴78内に嵌入
させられ、斜板60の傾動は許容されるが相対回転は防
止されている。本実施形態においては、斜板60,回転
軸50,ヒンジ機構74等がピストン14を往復運動さ
せる往復駆動装置を構成している。
【0047】前記ピストン14は、中空ピストンの一種
であり、斜板60と係合させられる係合部90と、係合
部90と一体的に設けられ、シリンダボア12に嵌合さ
れる中空円筒状の中空頭部としての頭部92とを備えて
いる。係合部90は、概してU字形をなし、頭部92の
中心軸線と直交する方向に延び出す一対のアーム部9
4,96と、アーム部94,96の基端部同士を連結す
る連結部98とを備えている。アーム部94,96の互
いに対向する内側面には、それぞれ凹部100が形成さ
れている。これら凹部100の内面は凹球面状をなし、
2つの凹球面が一球面上に位置している。係合部90に
球冠状の一対のシュー104を介して斜板60が係合さ
せられている。シュー104は、球面部において係合部
90の凹部100に摺動可能に保持され、平面部におい
て斜板60の両面に接触し、斜板60の外周部を両側か
ら摺動可能に挟持している。ピストン14の頭部92
は、一端が開口し、他端が閉塞された有底円筒状をなす
有底円筒状部106と、有底円筒状部106に固定さ
れ、有底円筒状部106の開口を閉塞する閉塞部材とし
てのキャップ108とを備えている。有底円筒状部10
6は、底壁部において係合部90のアーム部96側と一
体に形成されている。
【0048】シリンダブロック10およびピストン14
は、金属の一種であるアルミニウム合金製のものとさ
れ、斜板60は、球状黒鉛鋳鉄製、シュー104は、ア
ルミニウム合金製あるいは高炭素クロム軸受鋼製のもの
とされている。ピストン14の外周面、シュー104と
ピストン14の係合部90の互いの摺接面には、耐焼付
き性、耐摩耗性、摺動特性等を良好なものとするため
に、所定の表面処理が施されている。なお、シリンダブ
ロック10、ピストン14等の材料は、上述の材料に限
らず、また、他の材料であってもよい。
【0049】斜板60の回転運動は、シュー104を介
してピストン14の往復直線運動に変換される。ピスト
ン14が上死点から下死点へ移動する吸入行程におい
て、吸入室22内の冷媒ガスが吸入孔32,吸入弁34
を経てシリンダボア12内に吸入される。ピストン14
が下死点から上死点へ移動する圧縮行程において、シリ
ンダボア12内の圧縮室の冷媒ガスが圧縮され、吐出孔
36,吐出弁38を経て吐出室24に吐出される。斜板
60の、ピストン14を上死点に位置させる部分が上死
点部110であり、下死点に位置させる部分が下死点部
112である。上死点部110と下死点部112とは回
転軸線Mの丁度反対側、すなわち、斜板60の直径方向
に隔たった位置にある。これら上死点部110および下
死点部112の位置は、回転軸50,斜板60および回
転板66の回転につれて変わるが、図1および図2に
は、上死点部110が最上の位置、下死点部112が最
下の位置にある状態が示されている。冷媒ガスの圧縮に
伴ってピストン14には、軸方向の圧縮反力が作用す
る。圧縮反力は、ピストン14,斜板60,回転板66
およびスラストベアリング68を介して、シリンダブロ
ック10,フロントハウジング16,リヤハウジング1
8等から成るハウジングに受けられる。ピストン14の
係合部90には、回転規制部(図示省略)が一体的に設
けられている。回転規制部は、フロントハウジング16
の内周面に接触する状態とされ、ピストン14の中心軸
線回りの回転を規制し、ピストン14と斜板60との衝
突を回避する構造となっている。
【0050】本圧縮機には、シリンダブロック10を貫
通して給気通路120が設けられている。この給気通路
120により、吐出室24と、シリンダブロック10内
に形成された斜板室122とが接続されている。給気通
路120の途中には、電磁制御弁124が設けられてい
る。電磁制御弁124のソレノイド126はコンピュー
タを主体とする制御装置(図示省略)により励磁,消磁
され、冷房負荷等の情報に応じて供給電流量が制御され
て電磁制御弁124の開度が調節される。
【0051】また、回転軸50の内部には、排出通路1
30が設けられている。排出通路130は、一端におい
て前記支持穴56に開口させられるとともに、他端にお
いて斜板室122に開口させられている。支持穴56は
排出ポート134を経て吸入室22に連通させられてい
る。
【0052】本斜板式圧縮機は可変容量型であり、高圧
源としての吐出室24と低圧源としての吸入室22との
圧力差を利用して斜板室122内の圧力が制御されるこ
とにより、ピストン14の前後に作用するシリンダボア
12内に形成される圧縮室の圧力と斜板室122の圧力
との差が調節され、回転軸線Mと直交する平面に対する
斜板60の傾斜角度が変更されてピストン14のストロ
ークが変更され、圧縮機の吐出容量が調節される。具体
的には、電磁制御弁124の励磁,消磁の制御により、
斜板室122の圧力が制御される。
【0053】ソレノイド126の消磁状態では、電磁制
御弁124が全開させられて給気通路120が連通させ
られた状態となり、吐出室24の高圧の冷媒ガスが斜板
室122に供給され、斜板室122内の圧力が高くな
り、斜板60の傾斜角が最小となって回転軸線Mに対し
て略直角な姿勢となる(図1参照)。ピストン14は、
斜板60の回転に伴って往復移動させられるが、斜板6
0の傾斜角が最小となると、ピストン14の容積変化率
が小さくなり、圧縮機の吐出容量が最小となる。ソレノ
イド126の励磁状態では、供給電流量を多くして電磁
制御弁124の開度が小さくなる(開度0も含む)ほ
ど、吐出室24の高圧の冷媒ガスの斜板室122への供
給量が減り、斜板室122内の冷媒ガスは、排出通路1
30を経て吸入室22に放出されるため、斜板室122
内の圧力が低くなる。それに伴って斜板60の傾斜角が
大きくなり、ピストン14の容積変化率が大きくなって
圧縮機の吐出容量が大きくなる。ソレノイド126の励
磁により給気通路120が遮断された状態では、吐出室
24の高圧の冷媒ガスが斜板室122に供給されない状
態となって斜板60の傾斜角が最大となり(図2参
照)、圧縮機の吐出容量が最大となる。給気通路12
0,斜板室122,電磁制御弁124,排出通路13
0,排出ポート134,制御装置等により、傾斜角変更
装置が構成されている。
【0054】斜板60の傾動についてさらに詳しく説明
すれば、以下のようになる。斜板60は、それぞれのピ
ストン14の上死点の位置を略一定に保ちつつ、下死点
の位置のみを変化させられる。斜板60の傾動は、ある
回動軸線を中心とした回動と、回転軸方向への移動とが
複合した動作となる。詳しい機構の説明は省略するが、
貫通穴64の形状、ヒンジ機構74がその動作を担保す
る構造となっている。回転軸50は、斜板60の中央を
貫通している。詳しくは、回転軸50の軸線である回転
軸線Mが、概ね、斜板60の本体部62の板厚方向の中
心面(斜板中心面)N上の斜板中心Pを通るように貫通
している。斜板60がどの傾斜位置にある場合でも、斜
板中心Pは、略回転軸線M上に位置している。また、斜
板60は、略斜板中心Pを通って斜板中心面N内に位置
して回転軸線Mに直角な直線回りに回動する。つまり、
その直線は、斜板60の傾斜回動軸線と称することがで
き、図では紙面に直交する直線であるため、便宜的に、
Qと符号付けする。この傾斜回動軸線Qは、斜板60の
傾斜に応じて略回転軸線Mに沿って移動する。詳しく
は、斜板の傾斜が小さいときは、傾斜回動軸線Qは、シ
リンダブロック10に近い側に位置し(図1参照)、斜
板の傾斜が大きくなるにつれて、回転板66側に移動す
るのである(図2参照)。斜板60がこのような傾動を
許容されているため、ピストン14の上死点位置を略一
定に保つことができるのである。
【0055】斜板60の傾斜角θは、回転軸線Mと直交
する平面Rに対する斜板中心面Nとのなす角度である
(図2参照)。図1は、斜板60の傾斜角θが最小傾斜
角となる状態であり、傾斜角θは略0゜である。斜板6
0の傾斜角θは、前述したような機構により変更される
が、傾斜角θが0゜となる場合は冷媒は圧縮されず、斜
板室122への圧力供給ができなくなり、それ以上傾斜
角θを減じることはできない。したがって、最小傾斜角
は、前記傾斜角変更装置の特性により、略0゜に決定さ
れるのである。なお、上死点位置においてピストン14
の先端がバルブプレート20に接触する直前の位置とな
るように設計されており、斜板60が逆側に傾斜すれ
ば、シリンダの先端がバルブプレート20に当接するこ
とからも、マイナス角とはならないのである。図2は、
斜板の傾斜角θが最大傾斜角となる状態であり、斜板6
0の最大傾斜角は、斜板60に設けられた部分円筒状を
なすストッパ部138の回転板66への当接によって規
定される。
【0056】なお、以下の説明で使用する「最大傾斜直
径に平行な方向」とは、図における斜板中心面Nを表す
一点鎖線の延びる方向を意味する。ちなみに、図1およ
び図2は、上死点部110と下死点部112とを結ぶ直
線と回転軸線Mとを含む平面で切断した図であり、斜板
60の直径のうち回転軸線Mと直交する平面Rとのなす
角度が最大となる直径である最大傾斜直径は、図におい
て、上記一点鎖線上に位置している。
【0057】<減角弾性部材および増角弾性部材>本実
施形態の斜板式圧縮機は、減角弾性部材としてセットス
プリング150と、増角弾性部材としてのリターンスプ
リング152とを備えている。セットスプリング150
は、圧縮コイルスプリングであり、一端が回転板66に
支持され、他端が斜板の一方の面(回転板66と向き合
う面)に形成された減角弾性部材受座としてのセットス
プリング受座154に受承されて、斜板60の傾斜角θ
が最小傾斜角となる状態から最大傾斜角となる状態まで
の全傾斜角域にわたって、斜板60を傾斜角θが減少す
る向きに付勢している。詳しくは、セットスプリング1
50の付勢方向は、回転軸線Mに略平行であり、図の右
向きである。リターンスプリング152は、圧縮コイル
スプリングであり、斜板の傾斜角θが小さい状態におい
て、回転軸50に鍔状に設けられた弾性部材支持部材と
しての支持リング156に一端が支持され、斜板の他方
の面(シリンダブロック10と向き合う面)に形成され
た増角弾性部材受座としてのリターンスプリング受座1
58に他端が受承されて、斜板60を傾斜角θが増加す
る向きに付勢している。詳しくは、リターンスプリング
152の付勢方向は、回転軸線Mに略平行であり、図の
左向きである。なお、傾斜角θが大きくなる場合には、
リターンスプリング152のスプリング長を超えて、支
持リング156とリターンスプリング受座158とが離
間するため、リターンスプリング152の付勢力が斜板
60には作用しない。ちなみに、リターンスプリング1
52は、少なくとも傾斜角θが最小傾斜角ないしその近
傍となる小傾斜角域において付勢力が作用するように、
そのスプリング長が調整されている。
【0058】図3および図4に、2つのスプリング15
0,152と斜板60との関係を拡大して示す。図3
は、斜板60の傾斜角θが最小傾斜角となる状態(以
下、「最小傾斜角状態」と略す)を示し、図4は、傾斜
角θが最大傾斜角となる状態(以下、「最大傾斜角状
態」と略す)を示している。また、図5に、斜板面に形
成されたスプリング受座を斜板面に正対する方向から見
た図を示す。なお、図5は、リターンスプリング受座1
58を示しているが、セットスプリング受座154も、
斜板面に正対する方向から見た場合、同様の形状に表さ
れるため、図示は省略するとともに、リターンスプリン
グ受座158の各部に対応するセットスプリング受座1
54の部分の符号を、括弧を付けて記す。
【0059】セットスプリング受座154およびリター
ンスプリング受座158は、斜板60の貫通穴64の周
囲に、環状に形成されている。それぞれの受座154,
158は、交差する2つの平面である受座面160,1
62,164,166を有して構成されており、それら
の交線が稜線170,172となって、それぞれのスプ
リング150,152に向かって山形となる形状をなし
ている。受座面160,162は、セットスプリング1
50の一端が全傾斜角域において稜線170のみに当接
するように、斜板中心面Nに対して所定の傾きを有して
形成されている。したがって、斜板60におけるセット
スプリング150の付勢力(減角力X)の作用箇所であ
る減角力作用箇所Sは、全傾斜角域において、稜線17
0の位置となる。同様に、受座面164,166は、リ
ターンスプリング152の一端が当接する傾斜角域にお
いて稜線172のみに当接するように、斜板中心面Nに
対して所定の傾きを有して形成されている。したがっ
て、斜板60におけるリターンスプリング152の付勢
力(増角力Y)の作用箇所である減角力作用箇所Tは、
その傾斜角域において、稜線172の位置となる。な
お、2つの稜線170,172の各々は、すなわち、2
つの付勢力の作用箇所S,Tの各々は、前記最大傾斜直
径と回転軸線Mとの両方に直角な一直線上に位置してい
る。つまり、これらの作用箇所S,Tは、斜板の傾斜回
動軸線Qに平行に位置しているのである。
【0060】本斜板式圧縮機が停止している状態では、
斜板に対しては、上記減角力Xおよび増角力Y以外の力
が斜板60に対して作用せず、傾斜角θは、減角力Xと
増角力Yとの釣り合いで決定される。釣り合いの取れた
状態では、傾斜角θは、最小傾斜角より若干量大きな角
度(例えば、本圧縮機では2゜程度)となるように、セ
ットスプリング150およびリターンスプリング152
のばね定数は設定されている。この釣り合い状態となる
傾斜角θが、圧縮機始動傾斜角となる。無負荷に近い運
転の場合は、斜板室122の圧力調整により、最小傾斜
角まで傾斜角θが減じられた状態での圧縮機の作動が可
能である。
【0061】ここで、比較のために、従来の斜板式圧縮
機のセットスプリングと斜板との関係について説明す
る。図10に、前述の特開平7−91366号公報に記
載された斜板式圧縮機を例にとって、それにおけるセッ
トスプリングと斜板との関係を示す。なお、図では、対
応する部分に同じ符号を使用する。比較例となる斜板式
圧縮機では、セットスプリング150のみが配設され、
リターンスプリングは配設されていない。図は、最小傾
斜角状態を示しており、斜板60の一方の面に形成され
たセットスプリング受座154でセットスプリング15
0を受承しつつ、回転軸50に取り付けられた斜板傾斜
角規定部材としての位置決めリング182に斜板60の
他方の面に形成された位置決め座184が当接すること
で、斜板60の位置が規定されている。セットスプリン
グ受座154は、上記実施形態の場合と同様、2つの受
座面160,162を有して、それらの交線が稜線17
2となるように山形に形成されている。ただし、上記実
施形態と異なり、最小傾斜角状態において、一方の受座
面160の全面がセットスプリング150の端面に当接
するようにセットスプリング座が形成されている状態と
なっている。なお、図示は省略するが、最大傾斜角状態
では、他方の受座面162がセットスプリング150の
端面に当接するようにされている。
【0062】最小傾斜角状態において受座面160全体
でセットスプリング150を受承するため、減角力X’
の作用箇所S’(面で受承するのと等価な直線上の作用
箇所として換算したもの)は、斜板60の最大傾斜直径
に平行な方向において、回転軸線Mから上方に離れた位
置に位置することになる。最小傾斜角状態から傾斜角θ
が大きくなると、受座面160による受承が解かれ、稜
線170のみに当接する状態で、セットスプリング15
0が受承される。この状態では、減角力Xは、稜線17
0の位置となる作用箇所Sに作用することになる。作用
箇所が変化すれば、斜板60の傾斜回動軸線Qに対する
回動モーメントが変化することになる。本比較例の場
合、作用箇所S’から作用箇所Sへの変化は、急変であ
り、斜板60に作用する回動モーメントも急変すること
になる。すると、斜板の傾斜角θも急変することにな
る。例えば、最小傾斜角状態に近い状態、つまり、小傾
斜角域において圧縮機を作動させると、減角力の作用箇
所がSとS’との間を行き来することになり、斜板60
の挙動が不安定になるのである。本比較例の斜板式圧縮
機では、リターンスプリングのない態様であるが、本実
施形態の斜板式圧縮機をのようにリターンスプリングを
配設して、そのリターンスプリングの受承を本セットス
プリング150と同様の態様とすれば、リターンスプリ
ング側においても作用箇所の急変が生じ、斜板の挙動は
より不安定なものとなる。これに対して、本実施形態の
斜板式圧縮機では、前述したように、最大傾斜直径に平
行な方向において、2つのスプリング150,152に
よる付勢力の作用箇所S,Tの位置が変化せず、傾斜角
θの急変が抑制され、斜板の挙動が安定するのである。
【0063】なお、本実施形態の斜板式圧縮機では、図
3に示すように、小傾斜角域において、2つのスプリン
グ150,152の付勢力の作用箇所S,Tとなるそれ
ぞれの受座154,158の稜線170,172と、そ
れぞれのスプリング150,152の中心線(図3にお
いては、回転軸線Mと略一致している)とが、略一平面
内に位置している。このことから、2つのスプリング1
50,152は、それぞれが受承される受座154,1
58からの反力が偏ることなく作用することから、偏っ
た弾性変形が生じることが抑制されている。
【0064】また、セットスプリング150の作用箇所
Sの傾斜回動軸線Qに対する位置は、傾斜角θの変化に
よって変化するが、全傾斜角位置において、傾斜回動軸
線Qと作用箇所Sとは略一平面内に位置し、付勢方向も
その一平面に略平行である。そのことにより、セットス
プリング150は、全傾斜角域において、斜板に対して
回動モーメントを殆ど与えないものとなっている。同様
に、リターンスプリング152の作用箇所Tの傾斜回動
軸線Qに対する位置も、傾斜角θの変化によって変化す
るが、少なくとも小傾斜角域において、傾斜回動軸線Q
と作用箇所Tとは略一平面内に位置し、付勢方向もその
一平面に略平行である。そのことにより、リターンスプ
リング152も、少なくとも小傾斜角域において、斜板
に対して回動モーメントを殆ど与えないものとなってい
る。なお、本実施形態では、減角力作用箇所Sと増角力
作用箇所Tとの両者ともが、最大傾斜直径に平行な方向
において同じ位置にあるといえる。その場合、スプリン
グ150,152の付勢方向が互いに反対向きであると
きは、例えば、両付勢力作用箇所S,Tが上記一平面か
ら離間した位置にあっても、それぞれのスプリング15
0,152の付勢力によって生じる回動モーメントが打
ち消しあうように作用する。
【0065】<変形態様>上記実施形態の斜板式圧縮機
において、セットスプリング150の付勢力の作用箇所
Sの位置とリターンスプリング152の付勢力の作用箇
所Tの位置とを、最大傾斜直径に平行な方向において異
ならせることも可能である。図6に、減角力作用箇所の
位置と増角力作用箇所の位置とを最大傾斜直径に平行な
方向において異ならせた一変形態様においての、スプリ
ングと斜板との関係を拡大して示す。図は、最小傾斜角
状態での関係を示している。なお、対応する部分の符号
は、上記実施形態の場合と同一のものとする。
【0066】図に示すものは、上記実施形態のものと比
較して、2つの受座154,158の形状が変更されて
いる。詳しくは、2つの受座面160,162の交線で
ある稜線170が回転軸線Mに対して図の下方に位置す
るようにセットスプリング受座154が形成され、2つ
の受座面164,166の交線である稜線172が回転
軸線Mに対して図の上方に位置するようにリターンスプ
リング受座158が形成されている。なお、セットスプ
リング150の一端は、全傾斜角域において、稜線17
0に当接してその稜線170のが減角力作用箇所Sとな
り、リターンスプリング152の一端は、それが受承さ
れている傾斜角域(小傾斜角域を含む)において、稜線
172に当接してその稜線172が増角力作用箇所Tと
なる。
【0067】上記構成の変形態様の斜板式圧縮機も、少
なくとも小傾斜角域において、2つの付勢力作用箇所
S,Tの最大傾斜直径に平行な方向における位置が変化
しないため、斜板の傾斜角θが急変することがなく、斜
板の挙動が安定している。また、回転軸線Mおよび傾斜
回動軸線Qを含む平面から、2つの付勢力作用箇所S,
Tの各々が離間しており、減角力Xと増角力Yとの両者
が、斜板60に回動モーメントを与えている。また、2
つの付勢力作用箇所S,Tの位置は、最大傾斜直径に平
行な方向において、斜板60の本体部62の板厚tを超
える程度に離間しており、さらに、回転軸線Mおよび傾
斜回動軸線Qを含む平面に対して減角力作用箇所Sは図
の下方側に、増角力作用箇所Tは反対側である上方側に
位置している。このことから、斜板60は、全傾斜角位
置において、傾斜角θを小さくする方向への回動モーメ
ントが与えられており(図の黒太矢印)、そのことによ
っても挙動が安定させられているのである。
【0068】上記変形態様では、2つのスプリング15
0,152の付勢力の作用箇所S,Tとなるそれぞれの
受座154,158の稜線170,172と、それぞれ
のスプリング150,152の中心線とが、立体交差す
る位置関係にある。このことから、2つのスプリング1
50,152は、それぞれの154,158受座からの
反力によりある程度の偏り変形が生じる。偏り変形の影
響が少ない場合に、有効な変形態様であるといえるが、
この偏り変形は、回転軸50の外周面とスプリング15
0,152の内周との間の隙間を小さくすることによ
り、軽減できる。また、上記変形態様では、2つの付勢
力作用箇所S,Tの位置が、回転軸線Mおよび傾斜回動
軸線Qを含む平面に対して互いに反対側に位置してい
る。この態様に代えて、2つの付勢力作用箇所S,Tの
位置を互いに変更して、傾斜角θを大きくする方向への
回動モーメントが付与される態様で実施することもでき
る。さらにまた、上記平面の同じ側に位置する態様で、
いずれかの方向への回動モーメントが与えられる態様で
あってもよく、また、いずれか一方の付勢力作用箇所を
上記平面内に位置させる態様で実施することも可能であ
る。
【0069】次にもう1つの変形態様について説明す
る。図7に、リターンスプリング側の受座の形状を変更
した変形態様におけるスプリングと斜板との関係を示
す。図に示すものは、リターンスプリング152側の受
座190が、最小傾斜角状態において、回転軸線Mに直
角となる1平面が受座面192となるように形成されて
いる。最小傾斜角状態において、増角力作用箇所T’
は、回転軸線Mおよび傾斜回動軸線Qを含む一平面内に
位置しているが、傾斜角θの変更とともに、最大傾斜直
径に平行な方向における位置が若干ではあるが変動す
る。例えば、小傾斜角域の角度幅が小さく、リターンス
プリング152の付勢力の作用箇所T’の変化の影響が
少ないと考えられる場合のように、増角弾性部材の付勢
力の作用箇所の変化の影響を無視し得る場合等には、本
図が示すような構成の斜板式圧縮機とすることも有効で
ある。
【0070】さらにもう1つの変形態様について説明す
る。図8に、弾性部材側に付勢力作用箇所の位置を一定
化する手段を設けた変形態様におけるスプリングと斜板
との関係を示す。図に示す態様は、斜板60への当接部
に、セットスプリング150とは別体をなす当接部材と
しての当接リング200を設けた態様である。図9に、
当接リング200を回転軸線Mの方向の右側から見た図
を示す。当接リング200は、概して長さが短い円筒状
をなし、一端が、2つの平端面202,204を有して
それらの交線が稜線206となる山形に形成されてい
る、他端には、セットスプリング150の外周を内周部
の大径部208に嵌合させて、セットスプリング150
が取り付けられる。当接リング200の内周部には、セ
ットスプリング150の一端を受承する受承面210が
形成されている。内周の小径部212は、回転軸50が
隙間を有して嵌入可能な内径とされている。本変形態様
では、減角弾性部材は、セットスプリング150と当接
リング200とを含んで構成されているのである。
【0071】減角弾性部材は、当接リング200の取り
付けられていない一端(セットスプリング150の一端
である)が回転板66に支持され、当接リング200の
稜線206を斜板60の一方の面に当接させて、斜板6
0を傾斜角θが減少する向きに付勢する。付勢方向は、
回転軸線Mに平行な方向であって図における矢印Xが示
す向きである。当接リング200の稜線206は、傾斜
回動軸線Qに平行に位置させられている。斜板60の一
方の面におけるこの稜線206が当接する部分が、減角
力Xの作用箇所Sとなる。図8は、最小傾斜角状態を示
すが、最小傾斜角状態だけでなく、最大傾斜角状態に至
る全傾斜角域において、上記稜線206のみが当接する
ように当接リング200は形成されている。図示は省略
するが、本変形態様では、斜板面における減角力作用箇
所Sの最大傾斜直径に平行な方向における位置は、傾斜
角θの変動に応じて変化するが、比較的角度幅の狭い傾
斜角域においては、殆ど変化がないものと考えることが
できるため、少なくとも小傾斜角域においては減角作用
箇所Sの位置の変化は実質的に存在しない。したがっ
て、本変形態様の場合も、傾斜角の急変が抑制され、斜
板の挙動は安定化する。
【0072】この変形態様のように、弾性部材側に付勢
力作用箇所の位置を一定化する手段を設けた場合、例え
ば、斜板60側に上記受座154を形成する必要がない
ため、斜板60の加工が容易となる。なお、本変形態様
では、リターンスプリングは配設されておらず、回転軸
50に設けられた位置決めリング182に斜板60の他
方の面を直接当接させて、最小傾斜角を規定している。
このように、本発明は、増角弾性部材を備えていない斜
板式圧縮機においても適用可能である。また、増角弾性
部材を備える場合、その増角弾性部材側を本変形態様の
減角弾性部材側と同様の構成とすることもできる。ま
た、一方の弾性部材側を本変形態様の構成とし、他方の
弾性部材側を、斜板に受座を設けた前述の態様の構成と
することもできる。さらに、本変形態様では、小傾斜角
域における当接リング200の稜線206の位置が回転
軸線Mと略一平面となるように構成されているが、付勢
力の作用箇所の最大傾斜直径に平行にな方向における位
置は、その一平面から離間した任意の位置とすることも
できるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態としての可変容量型斜板式圧
縮機であって、斜板の傾斜角が最小傾斜角となる状態の
ものを示す図である。
【図2】本発明の実施形態としての可変容量型斜板式圧
縮機であって、斜板の傾斜角が最大傾斜角となる状態の
ものを示す図である。
【図3】上記実施形態の可変容量型斜板式圧縮機におけ
る斜板の傾斜角が最小傾斜角となる状態でのスプリング
と斜板との関係を拡大して示す図である。
【図4】上記実施形態の可変容量型斜板式圧縮機におけ
る斜板の傾斜角が最大傾斜角となる状態でのスプリング
と斜板との関係を拡大して示す図である。
【図5】上記実施形態の可変容量型斜板式圧縮機の斜板
面に形成されたスプリング受座を斜板面に正対する方向
から見た図を示す。
【図6】上記実施形態の一変形態様である減角力作用箇
所の位置と増角力作用箇所の位置とを最大傾斜直径に平
行な方向において異ならせた態様の可変容量型斜板式圧
縮機において、斜板の傾斜角が最小傾斜角となる状態で
のスプリングと斜板との関係を拡大して示す図である。
【図7】上記実施形態の一変形態様であるリターンスプ
リング側の受座の形状を変更した態様の可変容量型斜板
式圧縮機において、斜板の傾斜角が最小傾斜角となる状
態でのスプリングと斜板との関係を拡大して示す図であ
る。
【図8】上記実施形態の一変形態様であるスプリング側
に付勢力作用箇所の位置を一定化する手段を設けた態様
の可変容量型斜板式圧縮機において、斜板の傾斜角が最
小傾斜角となる状態でのスプリングと斜板との関係を拡
大して示す図である。
【図9】図8示す変形態様における付勢力作用箇所の位
置を一定化する手段としての当接リングを回転軸線方向
から見た図である。
【図10】従来の斜板式圧縮機における斜板とスプリン
グとの関係を例示する図である。
【符号の説明】
10:シリンダブロック 12:シリンダボア 14:
片頭ピストン 50:回転軸 60:斜板 66:回転
板 74:ヒンジ機構 120:給気通路 122:斜
板室 124:電磁制御弁 130:排気通路 13
4:排出ポート 150:セットスプリング 152:リターンスプリン
グ 154:セットスプリング受座 158:リターン
スプリング受座 170:稜線 172:稜線 200:当接リング 206:稜線 M:回転軸線
N:斜板中心面 P:斜板中心 Q:傾斜回動軸線
R:回転軸線と直交する平面 S:減角力作用箇所 T:増角力作用箇所 X:減角力 Y:増角力
フロントページの続き (72)発明者 深沼 哲彦 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機内 Fターム(参考) 3H076 AA06 BB01 BB02 CC12 CC20 CC31 CC35 CC36

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 各々の中心線が一円筒面上に位置する複
    数のシリンダボアを備えたハウジングと、 そのハウジングにより前記一円筒面の中心線を回転軸線
    として回転可能に支持された回転軸と、 その回転軸に、その回転軸と共に回転可能にかつ前記回
    転軸線と直交する平面に対する傾斜角が変化可能に保持
    された斜板と、 前記シリンダボアにそれぞれ摺動可能に嵌合されるとと
    もに、前記斜板の外周部と係合させられ、斜板の回転に
    つれてそれぞれ上死点と下死点との間で往復運動させら
    れる複数のピストンと、 前記斜板の前記傾斜角を設定された最大傾斜角と最小傾
    斜角との間で変更する傾斜角変更装置とを含む可変容量
    型斜板式圧縮機であって、 当該圧縮機が、前記傾斜角が減少する向きに前記斜板の
    一方の面を付勢する弾性部材である減角弾性部材を含
    み、少なくとも前記傾斜角が最小傾斜角ないしその近傍
    の角度となる小傾斜角域において、前記傾斜角が変化し
    た場合であっても、前記斜板の前記一方の面における前
    記減角弾性部材の付勢力の作用箇所である減角力作用箇
    所の、前記斜板の直径のうちの前記傾斜角が最大となる
    直径である最大傾斜直径に平行な方向における位置が実
    質的に変化しない構成とされたことを特徴とする可変容
    量型斜板式圧縮機。
  2. 【請求項2】 前記減角弾性部材が前記斜板の前記一方
    の面の一部に当接してその一部を付勢するものであっ
    て、その一部が前記減角力作用箇所であり、少なくとも
    前記小傾斜角域において、その一部が前記最大傾斜直径
    と前記回転軸線との両方に直角な一直線上に位置する請
    求項1に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
  3. 【請求項3】 前記斜板が、前記一方の面に前記減角弾
    性部材を受承する減角弾性部材受座を備え、その受座
    が、交線が前記最大傾斜直径と前記回転軸線との両者に
    直角な稜線となる2つの平面を有し、少なくとも前記小
    傾斜角域において、前記減角弾性部材の一端面がその稜
    線にのみ当接する請求項2に記載の可変容量型斜板式圧
    縮機。
  4. 【請求項4】 前記斜板が、前記回転軸が貫通する貫通
    穴を有しており、前記減角弾性部材受座が、その貫通穴
    の周囲に環状に形成されており、前記減角弾性部材が、
    前記回転軸の外周に前記回転軸線に平行に配設された圧
    縮コイルスプリングを含む請求項3に記載の可変容量型
    斜板式圧縮機。
  5. 【請求項5】 少なくとも前記小傾斜角域において、前
    記減角弾性部材受座の前記稜線と前記圧縮コイルスプリ
    ングの中心線とが略一平面内に位置する請求項4に記載
    の可変容量型斜板式圧縮機。
  6. 【請求項6】 当該圧縮機が、少なくとも前記小傾斜角
    域において前記傾斜角が増加する向きに前記斜板の他方
    の面を付勢する弾性部材である増角弾性部材を含む請求
    項1ないし請求項5のいずれかに記載の可変容量型斜板
    式圧縮機。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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