JP2001159392A - 斜板式圧縮機用の片頭ピストン - Google Patents

斜板式圧縮機用の片頭ピストン

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JP2001159392A
JP2001159392A JP2000288110A JP2000288110A JP2001159392A JP 2001159392 A JP2001159392 A JP 2001159392A JP 2000288110 A JP2000288110 A JP 2000288110A JP 2000288110 A JP2000288110 A JP 2000288110A JP 2001159392 A JP2001159392 A JP 2001159392A
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piston
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swash plate
outer peripheral
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JP2000288110A
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Fuminobu Enoshima
史修 榎島
Takahiro Hoshida
隆宏 星田
Seiji Katayama
誠二 片山
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Toyota Industries Corp
Original Assignee
Toyoda Automatic Loom Works Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】片頭ピストンを備える斜板圧縮機の運転騒音を
低減する。 【解決手段】斜板圧縮機の片頭ピストン14は、斜板に
シューを介して係合する首部80とシリンダボア12内
を摺動する頭部82とを備える。頭部82は、本体部1
24と、本体部124から首部80側に突出する外周側
摺動部126,内周側摺動部128を備える。頭部82
の外周面を、円筒面152と円筒面152の端から滑ら
かに延びる曲面146,148,150とする。曲面1
46,148,150は、円筒面152から離れるに従
って円筒面152の中心線からの距離が漸減するととも
に、円筒面152の中心線を含む切断平面による断面形
状が曲率半径一定の円弧を成す。この円弧の曲率半径は
シリンダボア12の直径より大きい。曲面146,14
8,150の形成により、シリンダボア12内の往復動
時に、ピストン14がシリンダボア12の内周面に接触
することが防止されるか、あるいは接触面圧が低減さ
れ、運転騒音が低減する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、斜板式圧縮機に用
いられる片頭ピストンに関するものであり、特に、斜板
式圧縮機の運転騒音を低減させ得る片頭ピストンに関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】この種の片頭ピストンの一例が特開平9
−105380号公報に記載されている。片頭ピストン
は、一般に、シリンダボアの内周面上を摺動する外周面
を有する頭部と、斜板と係合する係合部とを備えるよう
に構成される。頭部が、シリンダのシリンダボアに摺動
可能に嵌合されて圧縮室を形成する一方、係合部が、斜
板の外周部にシューを介してその外周部を両側から挟む
状態で係合させられる。斜板の回転につれてピストンの
頭部がシリンダボア内で往復動し、冷媒ガス等の気体を
圧縮室内で圧縮して外部へ吐出する。上記公報に記載さ
れた片頭ピストンもそうであるように、多くは斜板の傾
き角度が可変の可変容量型の圧縮機に使用されるが、斜
板の傾き角度が不変の固定容量型斜板式圧縮機にも使用
可能である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効
果】片頭ピストンを備えた斜板式圧縮機においては、従
来から、両頭ピストンを使用する固定容量型斜板式圧縮
機に比較して、運転騒音が大きくなり易いという問題が
指摘されていた。本発明の発明者らは、この対策を追求
するうち、片頭ピストンの頭部の外周面の端に曲率半径
の大きい曲面を形成することが運転騒音の低減に有効で
あることを発見し、本発明に到達した。本発明によれ
ば、下記各態様の片頭ピストンにより斜板式圧縮機の運
転騒音を低減し得る。各態様は請求項と同様に、項に区
分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を
引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の
理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的
特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のもの
に限定されると解釈されるべきではない。また、1つの
項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事
項を常に一緒に採用しなければならないわけではなく、
一部の事項のみを取り出して採用することも可能であ
る。 (1)シリンダボアの内周面上を摺動する外周面を有す
る頭部と、斜板と係合する係合部とを備えた斜板式圧縮
機用の片頭ピストンにおいて、前記頭部の外周面を、円
筒面と、その円筒面の軸方向の少なくとも一方の端の少
なくとも周方向の一部から滑らかに延びる曲面とを含む
ものとし、かつ、その曲面を、円筒面から離れるに従っ
て円筒面の中心線からの距離が漸減するとともに、円筒
面の中心線を含む切断平面による断面形状の曲率半径が
前記内周面の直径より大きいものとしたことを特徴とす
る片頭ピストン(請求項1)。このように、片頭ピスト
ンの頭部の外周面の端に曲面を形成すれば、斜板式圧縮
機の運転騒音が低減する。曲面の形成により、ピストン
頭部のシリンダボア内における摺動が滑らかになること
が一因と考えられる。 (2)前記曲面が、前記頭部外周面の、軸方向において
前記係合部に近い側の端の、周方向において前記斜板の
回転軸線に近い側の部分と、軸方向において係合部から
遠い側の端の、周方向において斜板の回転軸線から遠い
側の部分との少なくとも一方に形成された (1)項に記載
の片頭ピストン(請求項2)。上記2部分はいずれも、
斜板式圧縮機の運転時にシリンダボア内周面に対する接
触面圧が特に大きくなる部分であり、これらの部分に曲
面を形成することが特に有効である。 (3)前記曲面が、前記頭部外周面の、軸方向において
前記係合部から遠い側の端の全周に形成された (2)項に
記載の片頭ピストン(請求項3)。ピストン頭部の係合
部から遠い側の端に曲面を形成することが特に有効であ
ることが判っている。また、係合部から遠い側の端面は
単純な円形とされるのが普通であって、円形と円筒面と
の交線は単純な円となるため、この部分の全周に曲面を
形成することは容易である。 (4)前記曲面が、前記頭部外周面の、軸方向において
前記係合部に近い側の端の全周に形成された (2)項また
は (3)項に記載の片頭ピストン(請求項4)。頭部が中
空円筒状である場合の片頭ピストンは、一般に、頭部外
周面の係合部に近い側の端も単純な円とされるため、そ
の端の全周に容易に曲面を形成することができる。ただ
し、頭部外周面の係合部に近い側の端が単純な円ではな
い場合でも、その全周に曲面を形成することは可能であ
る。 (5)前記曲面の、前記円筒面の中心線を含む切断平面
による断面形状が円弧である (1)項ないし (4)項のいず
れか1つに記載の片頭ピストン(請求項5)。曲面の断
面形状は、曲率半径を異にする複数の円弧の集合、楕
円,双曲線の一部等、外に凸の滑らかな曲線であれば採
用が可能であるが、単純な円弧とすれば形成が容易とな
り、製造コストを低減させることができる。 (6)前記曲面の、前記円筒面に連なる側とは反対側の
部分と、円筒面の延長面との隙間が15μm以下である
(1)項ないし (5)項のいずれか1つに記載の片頭ピスト
ン(請求項6)。上記隙間が過大であれば、シリンダボ
ア内周面と頭部外周面との間に形成される楔形の隙間の
潤滑油の引込み機能が低下し、曲面形成の効果が低下す
るため、15μm以下とすることが望ましく、10μm
以下,5μm以下とすることがさらに望ましい。逆に、
隙間が過小であっても潤滑油の引込み機能が低下するた
め、1μm以上あるいは2μm以上とすることが望まし
い。 (7)前記曲面の、前記円筒面に連なる側とは反対側の
部分と円筒面の延長面との隙間を、その曲面の、前記円
筒面の中心線に平行な方向の寸法で割った商が、前記頭
部の外周面と前記シリンダボアの内周面との直径差であ
る嵌合クリアランスを前記円筒面の長さで割った商とほ
ぼ等しい (1)項ないし (6)項のいずれか1つに記載の片
頭ピストン(請求項7)。本態様の片頭ピストンがシリ
ンダボア内で嵌合クリアランス分だけ傾いた場合に、曲
面の、円筒面の中心線に平行な方向における中間部がシ
リンダボアの内周面に接触する状態となる。そのため、
頭部外周面とシリンダボア内周面との軽快な摺動が保証
され、本発明の効果を良好に享受することができる。な
お、上記「円筒面の長さ」は、曲面のうち、斜板からピ
ストンに与えられるサイドフォース(ピストンの中心線
に直角な方向の力)により頭部がシリンダボア内で傾か
された場合にシリンダボアに接触する部分と円筒面との
境界点と、その境界点とは頭部の直径方向に隔たり、か
つ、軸方向において最も隔たった円筒面の端との、軸方
向の距離を意味する。この「円筒面の長さ」と嵌合クリ
アランスとにより頭部のシリンダボア内での傾き角度が
決まり、その傾き角度によって曲面とシリンダボア内周
面との接触状況が決まるからである。要するに、ピスト
ンの頭部が嵌合クリアランス一杯に傾いた状態で、曲面
のシリンダボア内周面に接触している部分と、シリンダ
ボア内周面との間に、潤滑油の引き込みに適した大きさ
の楔形の隙間が形成されるようにすればよいのである。
上記のように円筒面の長さは頭部の傾きを規定するの
で、円筒面の、係合部から遠い側の端と近い側の端との
間に円筒面の途切れがあったとしても、遠近両端部間の
軸方向の距離が円筒面の長さとなる。 (8)前記曲面の、前記円筒面の中心線に平行な方向の
長さが、円筒面の長さの1/5以下である (1)項ないし
(7)項のいずれか1つに記載の片頭ピストン(請求項
8)。曲面の、円筒面の中心線に平行な方向の長さが大
きいほど、円筒面の長さが短くなり、頭部のシリンダボ
ア内における傾き角度が大きくなるため、曲面が長過ぎ
ることは望ましくない。円筒面の長さの1/5以下であ
ることが望ましく、1/8以下,1/15以下とするこ
ともできる。ただし、短過ぎることは望ましくなく、1
/100以上とすることが望ましい。 (9)前記曲面の、前記円筒面に連なる側とは反対側
に、曲面に滑らかに連なるとともに曲面から離れるに従
って直径が直線的に減少するテーパ面が形成され、その
テーパ面の大径端と小径端との半径差が1μm以上15
μm以下の範囲の値とされた (1)項ないし (8)項のいず
れか1つに記載の片頭ピストン。テーパ面は、曲面と共
同して潤滑油の引込み機能を果たす楔形の隙間を形成す
るものである。したがって、テーパ面のテーパは、通常
頭部の端に形成される面取りのテーパに比較して著しく
小さくされ、そのテーパ面の大径端と小径端との半径差
(あるいは大径端と小径端との直径差の1/2)が1μ
m以上15μm以下の範囲の値とされる。2μm以上5
μm以下とされることがさらに望ましい。 (10)シリンダボアの内周面上を摺動する外周面を有
する頭部と、斜板と係合する係合部とを備えた斜板式圧
縮機用の片頭ピストンにおいて、前記頭部の外周面を、
円筒面と、その円筒面の軸方向の少なくとも一方の端の
少なくとも周方向の一部から延びるテーパ面とを含むも
のとし、かつ、そのテーパ面の大径端と小径端との半径
差を1μm以上15μm以下の範囲の値とされたことを
特徴とする片頭ピストン。このように、片頭ピストンの
頭部の外周面の端にテーパ面を形成すれば、斜板式圧縮
機の運転騒音が低減する。テーパ面の形成により、ピス
トン頭部のシリンダボア内における摺動が滑らかになる
ことが一因と考えられる。テーパ面と円筒面との境界部
が丸みを有している場合は勿論、実質的に丸みを有して
いない場合でも、運転騒音の低減効果が得られる。これ
は、テーパ面と円筒面とのなす角度が180度にきわめ
て近いことと、テーパ面とシリンダボア内周面との間に
形成される楔形の隙間の潤滑油引込み機能により、テー
パ面と円筒面との交線のシリンダボア内周面への接触が
防止されるか、あるいは接触面圧が低減させられること
とによると推測される。 (11)前記ピストンの頭部が中空円筒状である (1)項
ないし(10)項のいずれか1つに記載の片頭ピストン。頭
部が中空円筒状であるピストンは軽量化が容易であり、
運転騒音を低減させ易い。また、外周面を、円筒面をそ
れの中心線に直角で互いに隔たった2平面で切断したも
のに相当する単純な形状とすることが容易であり、その
場合には、外周面の両端部の全周に容易に曲面を形成す
ることができる。 (12)前記ピストンの頭部が、横断面形状が円形であ
るシール部と、そのシール部より前記係合部の側であっ
てかつ斜板の回転軸線に近い側と遠い側とにそれぞれ位
置する2つの補助摺動面とを備え、それら補助摺動面が
前記シール部の外周面と同一円筒面上に位置する (1)項
ないし(10)項のいずれか1つに記載の片頭ピストン。こ
の種のピストンにおいては、補助摺動面がシール部の外
周面と共にピストン頭部の外周面を構成する。したがっ
て、外周面の係合部に近い側の端に曲面が形成される場
合には、補助摺動面の係合部に近い側の端に形成される
ことになる。 (13)シリンダボアを備えたハウジングと、そのハウ
ジングに回転可能に支持された回転軸と、その回転軸に
対して相対回転不能でありかつ回転軸の軸線に対して傾
斜させられた斜板と、前記シリンダボアに摺動可能に嵌
合された頭部と、前記斜板の外周部を一対のシューを介
して挟む状態で斜板と係合する係合部とを備えたピスト
ンとを含む斜板式圧縮機において、前記ピストンを、
(1)項ないし(12)項のいずれか1つに記載のピストンと
したことを特徴とする斜板式圧縮機。 (14)前記斜板の前記回転軸の軸線に対する傾斜角度
を変更する傾斜角度変更装置を含む(14)項に記載の斜板
式圧縮機。斜板の傾斜角度が可変である斜板式圧縮機、
中でも、傾斜角度変更装置が、斜板の傾斜角度をクラン
ク室(斜板室)の圧力の調節により変更する圧力バラン
ス型である可変容量型斜板式圧縮機において特に運転騒
音が問題になっている。したがって、本発明は可変容量
型斜板式圧縮機、特に圧力バランス型の傾斜角度変更装
置を備えた可変容量型斜板式圧縮機に適用して顕著な効
果が得られるものである。
【0004】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態である
車両用空調装置に用いられる斜板式圧縮機用の片頭ピス
トンを図面に基づいて詳細に説明する。図1に本実施形
態の斜板式圧縮機を示す。図1において、10はシリン
ダブロックであり、シリンダブロック10の中心軸線M
回りの一円周上には、軸方向に延びる複数のシリンダボ
ア12が形成されている。シリンダボア12の各々に
は、片頭ピストン14(以下、ピストン14と略称す
る)が往復運動可能に配設されている。シリンダブロッ
ク10の軸方向の一端面(図1の左側の端面であり、前
端面と称する)には、フロントハウジング16が取り付
けられ、他方の端面(図1の右側の端面であり、後端面
と称する)には、リヤハウジング18がバルブプレート
20を介して取り付けられている。フロントハウジング
16,リヤハウジング18,シリンダブロック10等に
より斜板式圧縮機の本体が構成される。リヤハウジング
18とバルブプレート20との間には、吸気室22,吐
出室24が形成され、それぞれ、吸入ポート26,吐出
ポート28を介して、図示しない冷凍回路に接続されて
いる。バルブプレート20には、吸入孔40,吸入バル
ブ42,吐出孔46,吐出バルブ48等が設けられてい
る。
【0005】それに対して、シリンダブロック10の中
心軸線M上には、回転軸50が相対回転可能に設けられ
ている。回転軸50は、両端部においてそれぞれベアリ
ングを介してフロントハウジング16,シリンダブロッ
ク10に支持されている。シリンダブロック10の中心
部には、中心支持穴56が形成されており、その中心支
持穴56において支持されているのである。回転軸50
のフロントハウジング16側の端部は、図示しない駆動
源の一種である外部駆動源としての車両エンジンに、電
磁クラッチ等のクラッチ機構を介して連結されている。
したがって、車両エンジンの作動時に、クラッチ機構に
よって回転軸50が車両エンジンに接続されれば、回転
軸50が自身の軸線まわりに回転させられる。
【0006】回転軸50には、斜板60が軸方向に相対
移動可能かつ傾動可能に取り付けられている。回転軸5
0には、また、回転板62が固定され、スラストベアリ
ング66を介してフロントハウジング16に係合させら
れている。斜板60は、ヒンジ機構68によって回転軸
50と一体的に回転させられるとともに、軸方向Mの移
動を伴う傾動を許される。ヒンジ機構68は、回転板6
2に固定的に設けられた支持アーム70、斜板60に固
定的に設けられたガイドピン72等を含むものであり、
ガイドピン72が、支持アーム70に形成されたガイド
穴74にスライド可能に嵌入させられている。
【0007】前記ピストン14は、斜板60と係合する
係合部としての首部80と、シリンダボア12に嵌合さ
れる頭部82と、これら首部80と頭部82とを連結す
る連結部83とを含むものであり、首部80に形成され
た溝84に半球状の一対のシュー86を介して斜板60
が係合させられている。半球状のシュー86は、球面部
において首部80に摺動可能に保持され、平面部におい
て斜板60の外周部を両側から摺動可能に挟持してい
る。ピストン14の形状についてのさらに詳細な説明は
後に行う。
【0008】斜板60の回転運動は、シュー86を介し
てピストン14の往復直線運動に変換される。ピストン
14が上死点から下死点へ移動する吸入工程において、
吸気室22内の冷媒ガスが吸入孔40を経て、吸入バル
ブ42を押し開いてシリンダボア12内に流入する。ピ
ストン14が下死点から上死点へ移動する圧縮工程にお
いて、シリンダボア12内の冷媒ガスが圧縮されて、吐
出孔46を経て、吐出バルブ48を押し開いて、吐出室
24に流出する。冷媒ガスの圧縮に伴ってピストン14
には、軸方向の圧縮反力が作用する。圧縮反力は、ピス
トン14,斜板60,回転板62およびスラストベアリ
ング66を介してフロントハウジング16に受けられ
る。また、ピストン14の首部80には、回り止め部8
8(図2参照)が一体的に設けられている。回り止め部
88は、フロントハウジング16の内周面に接触する状
態とされ、ピストン14の中心軸線N回りの回転を阻止
する。
【0009】シリンダブロック10を貫通して給気通路
94が設けられている。給気通路94により、吐出室2
4と、フロントハウジング16とシリンダブロック10
との間に形成された斜板室96とが接続される。給気通
路94の途中には、電磁制御弁100が設けられ、斜板
室96の圧力が制御される。電磁制御弁100は、ソレ
ノイド102と、ソレノイド102の励磁状態に基づい
て開閉させられる開閉弁104とを含むものであり、ソ
レノイド102が励磁されると開閉弁104が閉状態と
なり、消磁されると開状態となる。回転軸50の内部に
は、排出通路110が設けられている。排出通路110
は、一端において前記中心支持穴56に開口させられる
とともに、連通路112を経て斜板室96に連通させら
れている。中心支持穴56の底部は、排出ポート114
を経て吸気室22に連通させられている。
【0010】電磁制御弁100においてソレノイド10
2が励磁されると、給気通路94が遮断され、吐出室2
4の高圧の冷媒ガスが斜板室96に供給されない状態と
なる。斜板室96内の冷媒ガスは、排出通路110,排
出ポート114を経て吸気室22に放出されるため、斜
板室96内の圧力は低くなる。それに伴って斜板60の
傾斜角度が大きくなり、ピストン14の容積変化率が大
きくなって、圧縮機の吐出容量が大きくなる。ソレノイ
ド102の消磁により給気通路94が連通させられた状
態においては、吐出室24の高圧の冷媒ガスが斜板室9
6に供給され、斜板室96内の圧力は高くなる。それに
伴って斜板60の傾斜角度が小さくなり、圧縮機の吐出
容量が小さくなる。斜板60の最大傾きは、斜板60に
設けられたストッパ120が回転板62に当接すること
によって規定され、最小傾きは、回転軸50に固定され
たリング状のストッパ122に斜板60が当接すること
によって規定される。
【0011】このように、電磁制御弁100の制御によ
り、斜板室96が吐出室24に連通させられたり、遮断
されたりすることによって、斜板室96の圧力が制御さ
れる。斜板室96の圧力の変化に伴って斜板60の傾斜
角度が変化させられ、圧縮機の吐出容量が制御される。
電磁制御弁100のソレノイド102の励磁状態は、図
示しないコンピュータを主体とする制御装置によって、
冷房負荷等の情報に応じて制御される。本斜板式圧縮機
は可変容量型なのであり、給気通路94,斜板室96,
電磁制御弁100,排出通路110,排出ポート11
4,制御装置等により、圧力バランス型の傾斜角度変更
装置が構成されている。
【0012】シリンダブロック10およびピストン14
は、アルミニウム合金製のものとされ、ピストン14の
外周面には、フッ素樹脂のコーティングが施されてい
る。フッ素樹脂でコーティングすれば、同種金属との直
接接触を回避し、シリンダボア12との嵌合隙間を可及
的に狭くすることができる。なお、シリンダブロック1
0およびピストン14は、アルミニウム珪素系合金製の
もの等とすることができる。シリンダブロック10やピ
ストン14の材料、コーティング層の材料等は、上述の
材料に限らず、他の材料であってもよい。
【0013】次に、ピストン14の形状について説明す
る。図2および図3に示すように、ピストン14の頭部
82は、本体部124,外周側摺動部126および内周
側摺動部128を備えている。シリンダブロック10の
中心軸線Mから見て遠い側を外周側、近い側を内周側と
したとき、外周側摺動部126,内周側摺動部128と
いうのは、上記外周側の部分,内周側の部分において、
横断面形状が円形を成す本体部124からそれぞれ首部
80側へ突出して設けられたものであり、本体部124
の外周面130と外周側摺動部126および内周側摺動
部128の外周面132,134とが同一円筒面上に位
置している。そして、外周側摺動部126および内周側
摺動部128は、シリンダボア12の内周面の外周側の
部分上、内周側の部分上をそれぞれ摺動する。連結部8
3は、外周側摺動部126と首部80とを連結する外周
側ブリッジ137と、内周側摺動部128と首部80と
を連結する内周側ブリッジ138とにより構成されてい
る。
【0014】本実施形態においては、図3に示すよう
に、本体部124と内周側摺動部128とを合わせた部
分の軸方向の長さ(この長さは頭部82の内周側長さで
あるため、以下、頭部内周側長さと称する。)L1 が、
本体部124と外周側摺動部126とを合わせた部分の
軸方向の長さ(頭部82の外周側長さであるため、以
下、頭部外周側長さと称する。)L2 より長くされてい
る。すなわち、本体部124の頂面136から内周側摺
動部128の首部80側の端までの距離L1 が、外周側
摺動部126の対応する距離L2 より長くされているの
である。内周側摺動部128を長くすれば、ピストン1
4の圧縮工程末期における摺動面圧を抑制し得、耐久性
を向上させ得る。ピストン14のフッ素樹脂コーティン
グ層の磨耗や剥がれを良好に防止することができるので
ある。しかし、軸方向長さL1 を長くするとピストン1
4の重量が大きくなる。また、ピストン14のストロー
クは決まっている。したがって、軸方向長さL1 は、こ
れらを勘案して決定することが望ましい。なお、ピスト
ン14は、それぞれ別部材である頭部82,首部80,
連結部83の接合により構成されても、これら頭部8
2,首部80,連結部83が一体的に形成されてもよ
い。
【0015】内周側摺動部128は、図2に示すよう
に、軸方向に一様な横断面形状を有するものではなく、
首部82側の端部が本体部124側の部分より、中心角
(本体部124の中心線と内周側摺動部128の周方向
の両端とをそれぞれ結ぶ直線のなす角)が小さくされて
いる。このようにすれば、内周側摺動部128全体を同
じ大きさの中心角とする場合より、ピストン14の重量
増加を抑制することができる。内周側摺動部128の上
記首部82側の部分の中心角を大きくするほどこの部分
の摺動面圧を小さくできるが、ピストン14が重くな
る。したがって、中心角の大きさはこれらを勘案して決
定することが望ましい。
【0016】本体部124,外周側摺動部126および
内周側摺動部128の外周面130,132,134
は、円筒面152と、円筒面152から滑らかに延びる
曲面146,148,150とを備えている。なお、円
筒面152の外周側摺動部126,内周側摺動部128
側の部分は、それぞれ部分円筒面とされている。曲面1
46,148,150の円筒面152に連なる側とは反
対側の端には、それぞれ面取り140,142,144
が形成されている。これら曲面146,148,150
は、図4に代表的に本体部124側の一部の曲面146
を誇張して示すように、円筒面152から離れるに従っ
て円筒面152の中心線からの距離が漸減するととも
に、円筒面152の中心線を含む切断平面による断面形
状が曲率半径一定の円弧状を成している。この円弧の曲
率半径は、シリンダボア12の内周面の直径より大きく
され、本実施形態では1000mmとされている。これ
ら円筒面152と曲面146,148,150とが頭部
82の外周面を構成している。
【0017】上記曲面146,148,150の、円筒
面152に連なる側と反対側の部分と円筒面152の延
長面との隙間の寸法(曲面の厚さと称する)r1 を、曲
面146,148,150のピストン14の軸線方向の
寸法(曲面の幅と称する)l 1 で割った商r1 /l
1 と、シリンダボア12の内周面の直径d1 とピストン
14の円筒面152の直径d2 との差である嵌合クリア
ランスr2 を円筒面152の軸方向の寸法l2 で割った
商r2 /l2 とがほぼ等しくなるように、各曲面14
6,148,150が形成されている。ここで、円筒面
152の軸方向寸法l 2 とは、曲面146,148,1
50のうち、斜板60からピストン14に与えられるサ
イドフォース(ピストン14の半径方向の力)により頭
部82がシリンダボア12内で傾かされた場合にシリン
ダボア12の内周面に接触する部分と、円筒面152と
の境界点と、その境界点とは頭部82の直径方向に隔た
り、かつ、軸方向において最も隔たった円筒面152の
端との、ピストン14の軸方向における距離を意味す
る。したがって、本実施形態においては、前述のように
L1がL2 より長くされているため、頭部82の先端部
(頂面側の部分)がシリンダボア12の外周側に近づく
向きに傾かされる場合と、逆に内周側に傾かされる場合
とで円筒面152の軸方向寸法l2 は異なる。図5
(a),図5(b)にそれぞれの場合について示す。な
お、図5(a),(b)では、理解を容易にするため
に、ピストン14の頭部82側のみを概略的に示す(面
取り140,142,144の図示は省略する)ととも
に、その傾きを誇張して示す。図5(a)に示すよう
に、頭部82の先端側がシリンダボア12の外周側に傾
かされる場合には、円筒面152の軸方向寸法l2 は、
シリンダボア12の外周側内周面に接触させられた本体
部124外周側の曲面146と円筒面152との境界点
と、シリンダボア12の内周側に接触させられた内周側
摺動部128側の円筒面152と曲面150との境界点
との軸方向の距離と考えるべきである。また、図5
(b)に示すように、頭部82の先端側がシリンダボア
12の内周側に傾かされる場合には、円筒面152の軸
方向寸法l2 は、本体部124内周側の曲面146と円
筒面152との境界点と、外周側摺動部126側の円筒
面152と曲面148との境界点との軸方向の距離と考
えるべきである。
【0018】次に、曲面の厚さr1 を曲面の幅l1 で割
った商r1 /l1 と、嵌合クリアランスr2 を円筒面1
52の軸方向の寸法l2 で割った商r2 /l2 とがほぼ
等しくなるようにすることの意味について、図6に基づ
いて説明する。図6には、本体部124の外周側が誇大
にかつ概略的に示されている。まず理解を容易にするた
めに、曲面146の代わりに、曲面146の厚さおよび
幅と同じ厚さおよび幅を有するテーパ面156(二点鎖
線で示す)を想定する。嵌合クリアランスr2を円筒面
152の軸方向寸法l2 で割った商は、頭部82のシリ
ンダボア12内での傾き角度δ1 (ラジアン)に等し
い。また、テーパ面156の厚さ(テーパ面156の、
円筒面152に連なる側とは反対側の部分と円筒面15
2の延長面との隙間の寸法)をテーパ面156の幅(テ
ーパ面156の頭部82の軸方向の寸法)で割った商
は、テーパ面156の、円筒面152の延長面に対する
傾き角度δ2 に等しい。これら傾き角度δ1 ,δ2 を等
しくするということは、頭部82が傾き角度δ1 で傾い
た場合に、テーパ面156がシリンダボア内周面に平行
になり、丁度シリンダボア内周面に接する状態となるこ
とを示している。実際にはテーパ面156ではなく曲面
146とされているため、テーパ面156がシリンダボ
ア内周面に接することはなく、曲面146が接する。そ
して、曲面146はテーパ面156より外周側に突出し
ているため、頭部82の傾き角度は図6に実線で示すよ
うに、二点鎖線で示す場合より小さくなり、曲面146
の軸方向における中間部がシリンダボア内周面に接触
し、曲面146とシリンダボア内周面との間に楔形の隙
間が形成されることが保証される。この楔形の隙間の効
果については後に説明する。内周側の曲面146,曲面
148,150についても同じである。なお、曲面14
6,148,150の、円筒面152の中心線に平行な
方向(軸方向)における中央より円筒面152との境界
点に近い部分がシリンダボア内周面と接触するように各
寸法を設定することが望ましい。本実施形態において
は、上記曲面146,148,150の厚さr1 が2μ
m〜4μmとされ、軸方向寸法l1 が1.8mm〜2.
8mmとされている。この軸方向寸法l1 は円筒面15
2の軸方向の寸法l2 の1/8〜1/13である。ま
た、頭部82がシリンダボア12内で傾いて曲面146
の軸方向における中間部がシリンダボア内周面に接触し
た状態で、曲面146,148,150の円筒面152
に連なる側とは反対側の端(曲面146,148,15
0と面取り140,142,144との境界部)とシリ
ンダボア12の内周面との間の隙間が、2μm〜8μm
とされることが望ましい。
【0019】以上のように構成されたピストン14を備
える斜板式圧縮機において、運転時に発生する騒音が低
減することが以下の実験によって確かめられている。本
実験は、ピストン径32mmの片頭ピストン14を備え
る7気筒の可変容量型斜板式圧縮機において、一方の斜
板式圧縮機は、上述のような曲面を有しない片頭ピスト
ンを備える斜板式圧縮機であり、他方の斜板式圧縮機は
曲面146,148,150を有する片頭ピストン14
を備える斜板式圧縮機として行った。循環条件は共に同
じとし、吐出圧1.5MPa、回転数1000rpmで
運転して、両圧縮機により発生させられる騒音を比較し
た結果、曲面を有する片頭ピストンを備える斜板式圧縮
機の方が曲面を有しない片頭ピストンを備える斜板式圧
縮機より騒音が3〜4デシベル低下した。
【0020】騒音低減の一因は、ピストン14のシリン
ダボア12内での往復運動時の摺動抵抗が低減するため
であると推測される。ピストン14の頭部82がシリン
ダボア12内を摺動する際に、斜板60からピストン1
4に与えられるサイドフォースによる回転モーメントの
影響を受けてピストン14がシリンダボア12内で傾か
される。特に、圧縮工程においては、図5(a)に示す
ように、本体部124の外周側と内周側摺動部128と
が強くシリンダボア12の内周面に押圧されるのである
が、曲面146,150の形成により、このシリンダボ
ア12への接触面圧が軽減される。本実施形態において
は、上記のように、ピストン14の頭部82がシリンダ
ボア12内で傾かされた場合に、曲面146,148,
150においてシリンダボア12の内周面に接触するよ
うに各部分の寸法が設定されているため、接触面圧が低
減される。頭部82の外周面が完全な円筒面とされれ
ば、ピストン14が僅かな角度傾かされただけでも頭部
82の角部がシリンダボア12の内周面に高い面圧で押
し付けられ、シリンダボア12に付着した油膜を掻き退
ける状態となり、焼付きが発生し易い。それに対し、本
実施形態においては曲面146,148,150が形成
されているためにそのような事態の発生が回避され、ピ
ストン14の摺動抵抗が低減される。曲面146,14
8,150とシリンダボア12の内周面との間に極めて
角度の小さい、しかもその角度が滑らかに減少する楔状
の隙間が形成されるため、ピストン14の摺動が行われ
ると、シリンダボア12の内周面に付着している潤滑油
および冷媒ガスにミスト状に分散された潤滑油がその楔
状の隙間に引き込まれて、両者を直接接触させない油膜
が形成される流体潤滑が達成され、ピストン14とシリ
ンダボア12内周面との接触が防止されるか、あるいは
両者の接触面圧が低減され、ピストン14のシリンダボ
ア12内での摺動が滑らかになるのである。
【0021】さらに、例えばピストン14に図5(a)
のように回転モーメントが作用した場合、ピストン14
に微小角度の回動が許容される。このピストン14の回
動に伴って、曲面146,150がシリンダボア12の
内周面に接近し、両者間の隙間が減少するのであるが、
この隙間は潤滑油が逃げることを容易に許容しない程度
に小さなものであるため、ピストン14の回動に伴って
曲面146,150とシリンダボア内周面との間に高い
油膜圧力が発生し、ピストン14がそれ以上傾くことを
阻止する役割を果たす。特に、図5(a)のようにピス
トン14が傾いた状態で上死点に向かって右方に移動す
る際、曲面146とシリンダボア内周面との間にウエッ
ジ効果による高い油圧力が発生し、曲面146をシリン
ダボア内周面から押し離す。その結果として、金属接触
を引き起こす状態になる機会がほとんど生ぜず、このこ
とによっても、ピストン14の頭部82のシリンダボア
12内での摺動抵抗が低減される。
【0022】本実施形態における斜板式圧縮機において
は、上述のように、ピストン14のシリンダボア12内
での傾きが抑制されたり、ピストン14がシリンダボア
12内を円滑に摺動するため、頭部82の外周面に施さ
れているコーティング層の局部的な摩耗や剥離が抑制さ
れる効果も得られる。また、頭部82の本体部124側
の端面は単純な円形とされているため、全周に曲面14
6を形成するのは容易である。
【0023】本実施形態においては、本体部124がシ
ール部を構成し、外周側摺動部126および内周側摺動
部128の外周面が補助摺動面を構成している。曲面を
設けるのは、斜板60からピストン14に与えられるサ
イドフォースによって圧縮行程時に特に強くシリンダボ
ア12の内周面に押圧される傾向がある本体部124の
外周側と内周側摺動部128とのみにしてもよい。ま
た、本体部124,内周側摺動部128または外周側摺
動部126の端部の少なくとも1つの外周面に曲面を形
成することも可能であり、さらに、それらのうち、シリ
ンダボア12の内周面に接触させられる部分のみ、ある
いは接触させられる部分およびそれに隣接する部分のみ
に曲面を形成することも可能である。曲面の断面形状
は、本実施形態における曲率半径一定の円弧以外にも、
外に凸の滑らかな曲線である種々の形状を採用可能であ
る。例えば、円筒面から遠ざかるにつれて曲率半径が漸
減する複数の円弧の集合としてもよい。
【0024】ピストン14の頭部82の外周面を図7に
示す形態としてもよい。なお、本実施形態においては、
図1〜図6とは異なる部分のみ図示,説明し、同様に構
成される部分には同じ符号を付して説明を省略する。図
7に誇張して示すように、頭部82の本体部124側の
外周面は、円筒面152と、円筒面152に滑らかに延
びる曲面200と、曲面200の円筒面152に連なる
側とは反対側に滑らかに連なるテーパ面202とを備え
ている。これら曲面200およびテーパ面202は、本
体部124の全周にわたって形成されるが、図7にはそ
の外周側の部分のみ図示する。曲面200は、前記曲面
146と同様に構成され、円筒面152から離れるに従
って円筒面152の中心線からの距離が漸減するととも
に、円筒面152の中心線を含む切断平面による断面形
状が曲率半径一定の円弧状を成している。テーパ面20
2は、曲面200から遠ざかるに従って直径が直線的に
減少している。テーパ面202の曲面200に連なる側
とは反対側の端には、面取り140が形成されている。
テーパ面202のテーパは、面取り140のテーパより
小さくされ、テーパ面202の大径端の半径(曲面20
0とテーパ面202との境界部の半径)と小径端の半径
(テーパ面202と面取り140との境界部の半径)と
の差A(あるいは、テーパ面202の大径端の直径D1
と小径端の直径D2 との差の1/2)が、1μm以上1
5μm以下とされる。このようにすれば、テーパ面20
2および曲面200とシリンダボア12の内周面との間
に形成される楔状の隙間の楔効果により、シリンダボア
12の内周面に付着している潤滑油および冷媒ガスにミ
スト状に分散された潤滑油が良好に引き込まれるのであ
る。頭部82の外周側摺動部126および内周側摺動部
128の外周面についても、本実施形態と同様に曲面と
それに滑らかに連なるテーパ面とを形成してもよい。ま
た、ピストン14のシリンダボア内周面と接触する部分
を曲面200とすれば、前記実施形態と同様、接触面圧
が低減される。したがって、本実施形態においても、ピ
ストン14のシリンダボア内周面への接触が防止される
か、あるいは接触面圧が低減させられて、ピストン14
の摺動抵抗が低減させられる。
【0025】頭部82の外周面を、円筒面と円筒面の端
から延びるテーパ面とを備えるものとすることも可能で
ある。このテーパ面は、テーパ面202と同様、円筒面
から遠ざかるに従って直径が直線的に減少するものとさ
れ、そのテーパ面のテーパが、そのテーパ面に連なる面
取りのテーパより小さくされ、テーパ面の大径端の半径
(円筒面の半径)と小径端の半径(テーパ面と面取りと
の境界部の半径)との差が、1μm以上15μm以下の
範囲の値とされることが望ましい。このテーパ面とシリ
ンダボア内周面との間に形成される楔形の隙間の楔効果
により、圧縮機の運転騒音の低減効果が得られる。この
楔効果を有効に享受するために、頭部82がシリンダボ
ア12内で最大限まで傾いても、上記テーパ面の小径端
とシリンダボア内周面との間に形成される隙間が1μm
〜5μmとなるように、上記半径差,嵌合クリアランス
等の各寸法が設定されることが望ましい。
【0026】なお、ピストン14の形状は、上記各実施
形態における形状に限らず、他の形状とすることもでき
る。例えば、連結部83において、ブリッジ部137,
138の両方を設けることは不可欠ではなく、いずれか
一方のみでもよい。また、外周側摺動部126および内
周側摺動部128の前記首部80側の形状,大きさは、
前記実施形態におけるそれに限らず、ピストン14の耐
久性を向上させることができれば、どのような形状,大
きさのものであってもよい。例えば、内周側摺動部12
8の形状を、中心角(本体部124の中心線と内周側摺
動部128の周方向の両端とをそれぞれ結ぶ直線のなす
角)が、本体部124側の端部から首部80側の端部に
向かうに従って曲線的に漸減させられた形状としてもよ
い。この場合、曲面150は、面取り144と連なる全
ての部分に設けてもよいし、そのうちのシリンダボア1
2の内周面に接触する一部のみに設けてもよい。外周側
摺動部126や内周側摺動部128は、ピストン14の
中心軸線Nとシリンダブロック10の中心軸線Mとを通
る平面に対して対称な形状であっても、非対称な形状で
あってもよい。その他、本出願人による未だ公開されて
いない特願平11−150448号に記載のように、種
々のピストン14の形状も採用可能である。
【0027】上記各実施形態においては、ピストンの中
間部分に貫通穴が形成されて、質量軽減が図られてい
る。ピストンの頭部外周面のうち、特に摺動面圧が高く
なるのは、シリンダボアのシリンダブロック外周側の部
分と内周側の部分とであって、中間部分はそれほど摺動
面圧が高くないため、貫通穴を形成して質量軽減を図っ
ても差し支えないのである。しかし、図8に示すよう
に、頭部が中空円筒状を成す形態の片頭ピストン300
としてもよい。図8に示す実施形態においては、斜板式
圧縮機全体の構造は図1ないし図6に示す実施形態と同
様の構造であるため、図示,説明を省略する。ピストン
300は、頭部302と、頭部302と一体的に設けら
れた係合部としての首部304とを備えている。頭部3
02は、首部304側とは反対側に開口する中空円筒状
の頭部本体部306と、頭部本体部306に固定され、
頭部本体部306の開口を閉塞する閉塞部材308とを
含む。頭部本体部306には円筒面をなす内周面310
が形成されている。閉塞部材308は、円板状の閉塞部
材本体部312と、閉塞部材本体部312の一端面から
突出し、閉塞部材本体部312より小径の嵌合突部31
4とを備えている。閉塞部材本体部312と嵌合突部3
14との間には肩面316が形成されている。閉塞部材
308の嵌合突部314は、頭部本体部306の内周面
310に嵌合されるとともに、頭部本体部306の開口
側端面318と閉塞部材308の肩面316との当接に
より嵌合深さが規定されている。閉塞部材308が頭部
本体部306に嵌合された状態で、両部材が溶接等適宜
の手段により固定されている。
【0028】頭部302の外周面は、円筒面324と、
円筒面324の端から滑らかに延びる曲面326,32
8とを含む。曲面326,328の円筒面324に連な
る側とは反対側の端には、面取り330,332が形成
されている。曲面326,328は、円筒面324から
離れるに従って円筒面324の中心線からの距離が漸減
するとともに、円筒面324の中心線を含む切断平面に
よる断面形状が曲率半径一定の円弧状を成している。曲
面326,328は、頭部302において首部304に
近い側と遠い側との両端部の全周にわたって形成されて
いる。曲面326,328の寸法,形状等は、曲面14
6,148,150と同様であるため、詳細な図示,説
明は省略する。ただし、本実施形態の場合、図1〜図6
に示す実施形態とは異なり、円筒面324の軸方向寸法
2 は、頭部302の先端部がシリンダボア内周面の外
周側に傾かされる場合と、内周側に傾かされる場合とで
共に同じである。したがって、この点を勘案して曲面3
26,328の寸法が決定される。本実施形態における
ピストン300を備える斜板式圧縮機においても、前記
ピストン14を備える斜板式圧縮機において得られた効
果と同様に、ピストン300のシリンダボア内での往復
運動時の摺動抵抗が低減され、運転騒音が低減される。
また、頭部302の首部304に近い側の端部に曲面3
28を形成することによって、頭部302がシリンダボ
ア12内で傾かされる場合に特に強く接触する部分の接
触面圧を低減することができ、耐久性に優れたピストン
が得られる。頭部302の外周面の両端は、単純な円形
とされているため、全周に曲面326,328を形成す
るのは容易である。曲面は、図1ないし図6に示す実施
形態において述べたように、頭部302の両端部のいず
れか一方のみに形成することも可能であるし、端部の一
部のみに形成することも可能である。また、図7におい
て説明したように、曲面200とテーパ面202とを形
成することも可能である。さらに、曲面の断面形状は、
外に凸の滑らかな曲線である種々の形状を採用可能であ
る。
【0029】斜板式圧縮機の構造は、上記各実施形態に
おけるそれに限らず、他の構造のものとすることもでき
る。例えば、電磁制御弁100は不可欠ではなく、吐出
室24の圧力と斜板室96の圧力との差圧に基づいて機
械的に開閉させられる開閉弁を設けることもできる。ま
た、電磁制御弁100に代えて、あるいはそれととも
に、排出通路100の途中に、電磁制御弁100と同様
な電磁制御弁を設けてもよいし、あるいは斜板室96の
圧力と吸気室22との圧力との差圧に基づいて機械的に
開閉させられる開閉弁を設けてもよい。また、斜板の傾
斜角度が不変の固定容量型斜板式圧縮機用のピストンと
することも可能である。
【0030】以上、本発明のいくつかの実施形態を詳細
に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明は、前記
〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効
果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識
に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である片頭ピストンを備え
た斜板式圧縮機を示す正面断面図である。
【図2】上記片頭ピストンの斜視図である。
【図3】上記片頭ピストンの正面図である。
【図4】上記片頭ピストンの一部を誇張して示す正面図
である。
【図5】上記斜板式圧縮機において片頭ピストンが傾い
た状態を誇張して示す正面図である。
【図6】図5(a)の一部を拡大して示す図である。
【図7】本発明の別の実施形態である片頭ピストンの一
部を誇張して示す正面図である。
【図8】本発明のさらに別の実施形態である片頭ピスト
ンを示す正面断面図である。
【符号の説明】
10:シリンダブロック 12:シリンダボア 1
4:片頭ピストン 16:フロントハウジング 1
8:リヤハウジング 50:回転軸 60:斜板
80:首部 82:頭部 86:シュー 12
4:本体部 126:外周側摺動部 128:内周
側摺動部 146,148,150:曲面 15
2:円筒面 200:曲面 202:テーパ面
300:片頭ピストン 302:頭部 304:首
部 324:円筒面 326,328:曲面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 片山 誠二 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 Fターム(参考) 3H003 AA03 AC03 AD03 BA00 BD10 CB04 3H076 AA06 BB01 BB26 CC12 CC31 3J044 AA05 AA12 CA01 CA15 DA10

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シリンダボアの内周面上を摺動する外周
    面を有する頭部と、斜板と係合する係合部とを備えた斜
    板式圧縮機用の片頭ピストンにおいて、 前記頭部の外周面を、円筒面と、その円筒面の中心線に
    平行な方向の少なくとも一方の端の少なくとも周方向の
    一部から滑らかに延びる曲面とを含むものとし、かつ、
    その曲面を、円筒面から離れるに従って円筒面の中心線
    からの距離が漸減するとともに、円筒面の中心線を含む
    切断平面による断面形状の曲率半径が前記内周面の直径
    より大きいものとしたことを特徴とする片頭ピストン。
  2. 【請求項2】 前記曲面が、前記頭部外周面の、軸方向
    において前記係合部に近い側の端の、周方向において前
    記斜板の回転軸線に近い側の部分と、軸方向において係
    合部から遠い側の端の、周方向において斜板の回転軸線
    から遠い側の部分との少なくとも一方に形成された請求
    項1に記載の片頭ピストン。
  3. 【請求項3】 前記曲面が、前記頭部外周面の、軸方向
    において前記係合部から遠い側の端の全周に形成された
    請求項2に記載の片頭ピストン。
  4. 【請求項4】 前記曲面が、前記頭部外周面の、軸方向
    において前記係合部に近い側の端の全周に形成された請
    求項2または3に記載の片頭ピストン。
  5. 【請求項5】 前記曲面の、前記円筒面の中心線を含む
    切断平面による断面形状が円弧である請求項1ないし4
    のいずれか1つに記載の片頭ピストン。
  6. 【請求項6】 前記曲面の、前記円筒面に連なる側とは
    反対側の部分と、円筒面の延長面との隙間が15μm以
    下である請求項1ないし5のいずれか1つに記載の片頭
    ピストン。
  7. 【請求項7】 前記曲面の、前記円筒面に連なる側とは
    反対側の部分と円筒面の延長面との隙間を、その曲面
    の、前記円筒面の中心線に平行な方向の寸法で割った商
    が、前記頭部の外周面と前記シリンダボアの内周面との
    直径差である嵌合クリアランスを前記円筒面の長さで割
    った商とほぼ等しい請求項1ないし6のいずれか1つに
    記載の片頭ピストン。
  8. 【請求項8】 前記曲面の、前記円筒面の中心線に平行
    な方向の長さが、円筒面の長さの1/5以下である請求
    項1ないし7のいずれか1つに記載の片頭ピストン。
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WO2008059784A1 (fr) * 2006-11-15 2008-05-22 Sanden Corporation Compresseur

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