JP2002081371A - 可変容量型斜板式圧縮機 - Google Patents

可変容量型斜板式圧縮機

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JP2002081371A
JP2002081371A JP2001142694A JP2001142694A JP2002081371A JP 2002081371 A JP2002081371 A JP 2002081371A JP 2001142694 A JP2001142694 A JP 2001142694A JP 2001142694 A JP2001142694 A JP 2001142694A JP 2002081371 A JP2002081371 A JP 2002081371A
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center
rotation axis
dead center
minimum
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JP2001142694A
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Masaki Ota
太田  雅樹
Akira Matsubara
亮 松原
Tomoji Taruya
知二 樽谷
Takeshi Mizufuji
健 水藤
Kenta Nishimura
健太 西村
Hiroshi Ataya
拓 安谷屋
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Toyota Industries Corp
Original Assignee
Toyota Industries Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】圧縮機の回転部の動的バランスをできる限り損
わずに、斜板の貫通穴の内周面の下死点側の部分が回転
軸の外周面に押し付けられ続けるようにする。 【解決手段】斜板60の貫通穴64の下死点部112側
の内周面に移動限度規定部160を形成する。移動限度
規定部160は、断面形状が円弧で画定される形状をな
し、その円弧の中心が斜板本体部62の厚さ方向の中央
を通る中央面lより係合突部80側に位置する。円弧の
中心点と斜板60の中心点との相対位置関係を適正に設
定することで、斜板60の最小,最大傾斜時中心点が共
に回転軸線Mより上死点部110側に位置し、最小傾斜
時中心点の回転軸線Mからの距離が最大傾斜時中心点の
回転軸線Mからの距離より大きくなる。また、斜板60
の重心点が中央面lより係合突部80側にあり、最小,
最大傾斜時重心点が共に回転軸線Mより上死点部110
側に位置し、かつ、最小傾斜時重心点の回転軸線Mから
の距離と最大傾斜時重心点の回転軸線Mからの距離とが
等しくなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は可変容量型斜板式圧
縮機に関するものであり、特に、圧縮機の作動時に回転
する斜板の挙動の安定化に関するものである。
【0002】
【従来の技術】可変容量型斜板式圧縮機の一種が特開平
7−91366号公報に記載されている。この圧縮機
は、(a) 一直線を中心とする一円筒面上に(通常は、等
角度間隔で)形成された複数のシリンダボアを備えたハ
ウジングと、(b) そのハウジングにより前記一直線を回
転軸線として回転可能に支持された回転軸と、(c) その
回転軸に、前記回転軸線と直交する直交平面に対する傾
斜角が変化可能にかつ回転軸と共に回転可能に保持され
た斜板と、(d) 前記複数のシリンダボアにそれぞれ摺動
可能に嵌合されるとともに、斜板の外周部と係合させら
れ、斜板の回転につれてそれぞれ上死点と下死点との間
で往復運動する複数のピストンと、(e) 斜板の傾斜角を
最大傾斜角と最小傾斜角との間で変更する傾斜角変更装
置とを含むものである。
【0003】さらに具体的には、斜板の本体部から、そ
の本体部に対して傾斜した方向に係合突部が延び出させ
られ、その係合突部の自由端部に球状部が形成され、そ
の球状部が、回転軸に固定の回転板に形成された係合穴
に嵌入させられている。また、斜板の中央部に貫通穴が
形成され、その貫通穴に回転軸が挿通されることによ
り、斜板が回転軸に支持されている。貫通穴は、斜板の
回転軸に直角な姿勢と一定角度傾斜した姿勢との間での
傾動(傾斜を変更するための回動)を許容する形状とさ
れている。
【0004】斜板が傾斜した状態で回転すれば、その斜
板の外周部と係合している複数のピストンが各シリンダ
ボア内で往復運動し、シリンダボア内の空間である圧縮
室の容積を増減させる。圧縮室の容積が増大する行程が
気体を吸入する吸入行程であり、減少する行程が気体を
圧縮する圧縮行程である。圧縮室の容積が最小となるピ
ストンの位置が上死点、容積が最大となる位置が下死点
であり、斜板の、ピストンを上死点へ移動させる部分が
上死点部であり、ピストンを下死点に移動させる部分が
下死点部である。斜板の本体部は円形の平板状とされる
のが普通であるため、上死点部と下死点部とは回転軸の
回転軸線に対して丁度反対側に位置することとなる。上
記のように、斜板が傾斜した状態で回転し、ピストンを
往復運動させる際、圧縮行程にあるピストンからの反力
が傾斜面により受けられることとなるため、斜面の効果
により、斜板には下死点部側から上死点部側に向かう向
きの力が作用することとなる。そのため、斜板の貫通穴
の内周面の、下死点部側の部分が回転軸の外周面に押し
付けられつつ、斜板が回転軸と共に回転する。
【0005】それに対して、斜板が回転軸に対してほぼ
直角な姿勢で回転する際には、ピストンの下死点位置が
上死点位置とほぼ一致し、圧縮室の容積が殆ど変化しな
いため、気体の圧縮が殆ど行われない。そのため、ピス
トンから斜板への反力が0に近くなり、かつ、その反力
を受ける斜板の面もほぼ直角であるため、上述の下死点
部側から上死点部側に向かう向きの力が斜板に作用しな
くなるか、ごく小さくなる。しかし、本来は、この状態
においても斜板には下死点部側から上死点部側に向かう
向きの力が作用し、斜板の貫通穴の内周面の、下死点側
の部分が回転軸の外周面に押し付けられ続けるようにす
ることが望ましい。仮に、上死点側の部分が押し付けら
れるようにされているとすれば、斜板の傾斜角が増大さ
せられる過程において、斜板が必ず1回下死点部側から
上死点部側へ移動させられることととなり、斜板と回転
軸との衝突音が発生する。しかも、この移動に伴って圧
縮室の容積が急変するため、圧縮機の吐出容量が急変す
ることとなる。これらはいずれも望ましいことではない
ため、斜板の傾斜角のいかんを問わず、斜板の貫通穴の
内周面の、下死点側の部分が回転軸の外周面に押し付け
られ続けるようにすることが望ましいのである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効
果】斜板が回転軸に対してほぼ直角な状態においても、
斜板に下死点部側から上死点部側に向かう向きの力が作
用するようにするためには、斜板の重心点を回転軸の回
転軸線より上死点部側に位置させることが考えられる。
そのようにすれば、遠心力に基づいて斜板に下死点部側
から上死点部側に向かう向きの力が作用するからであ
る。しかし、この遠心力は圧縮機の回転部全体の動バラ
ンスを悪くするため、できる限り小さいことが望まし
い。
【0007】そこで、本発明は、圧縮機の回転部全体の
動的バランスをできる限り損なうことなく、斜板の貫通
穴の内周面の、下死点側の部分が回転軸の外周面に押し
付けられ続けるようにすることを課題としてなされたも
のであり、本発明によって、下記各態様の可変容量型斜
板式圧縮機が得られる。各態様は請求項と同様に、項に
区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号
を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明
の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術
的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のも
のに限定されると解釈されるべきではない。また、一つ
の項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の
事項を常に一緒に採用しなければならないわけではな
い。一部の事項のみを選択して採用することも可能なの
である。
【0008】(1)一直線を中心とする一円筒面上に形
成された複数のシリンダボアを備えたハウジングと、そ
のハウジングにより前記一直線を回転軸線として回転可
能に支持された回転軸と、その回転軸に、前記回転軸線
と直交する直交平面に対する傾斜角が変化可能にかつ回
転軸と共に回転可能に保持された斜板と、前記複数のシ
リンダボアにそれぞれ摺動可能に嵌合されるとともに、
前記斜板の外周部と係合させられ、斜板の回転につれて
それぞれ上死点と下死点との間で往復運動する複数のピ
ストンと、前記斜板の傾斜角を最大傾斜角と最小傾斜角
との間で変更する傾斜角変更装置とを含む可変容量型斜
板式圧縮機において、前記斜板の厚さ方向の中央に位置
する平面である中央面と前記斜板の中心線との交点であ
る中心点の、前記傾斜角が前記最大傾斜角である状態に
おける位置である最大傾斜時中心点位置と、傾斜角が前
記最小傾斜角である状態における前記中心点の位置であ
る最小傾斜時中心点位置とを共に、前記回転軸の回転軸
線上または回転軸線より斜板の上死点部側に位置させる
とともに、最小傾斜時中心点位置の回転軸線からの距離
を最大傾斜時中心点位置の回転軸線からの距離以上とし
たことを特徴とする可変容量型斜板式圧縮機(請求項
1)。従来の可変容量型斜板式圧縮機においては、最大
傾斜時中心点位置がほぼ回転軸線上にあり、斜板の傾斜
角の減少につれて、一旦中心点位置が回転軸線より上死
点部側に位置する状態となった後、下死点部側へ移動
し、最小傾斜時中心点位置が回転軸線より下死点部側に
あるようにされていた。中心点位置ができる限り、回転
軸線から離れないようにされていたのである。そして、
斜板の重心点は斜板の中央面に対して、シリンダボアと
は反対側に位置していたため、斜板の傾斜角が最小傾斜
角である状態における斜板の重心点である最小傾斜時重
心点は、当然、斜板の傾斜角が最大傾斜角である状態に
おける斜板の重心点である最大傾斜時重心点より、斜板
の下死点部側に位置することとなる。前述のように、斜
板の重心点は回転軸の回転軸線より上死点部側に位置さ
せ、下死点部側から上死点部側に向かう向きの遠心力を
発生させることが望ましく、かつ、その遠心力はできる
限り小さいことが望ましい。遠心力はまた、最小傾斜角
時には最大傾斜角時より大きいことが望ましい。前述の
ように、最大傾斜角時には、圧縮行程にあるピストンか
らの反力が傾斜面により受けられ、斜面の効果により、
斜板には下死点部側から上死点部側に向かう向きの力が
作用するのに対し、最小傾斜角時にはその力が無くなる
か、あるいはごく小さくなるからである。それに対し
て、従来は、上記のように、最小傾斜時重心点が最大傾
斜時重心点より、斜板の下死点部側に位置するようにさ
れていたのであり、上記望ましい方向とは逆であった。
本発明に従って、最大傾斜時中心点位置と最小傾斜時中
心点位置とを共に回転軸線上または回転軸線より上死点
部側に位置させるとともに、最小傾斜時中心点位置の回
転軸線からの距離を最大傾斜時中心点位置の回転軸線か
らの距離以上とすれば、最小傾斜時重心点と最大傾斜時
重心点との相対位置が少なくとも従来よりは望ましい方
向に変化する。したがって、本発明に従えば、最小傾斜
時と最大傾斜時との両方において、斜板の遠心力を下死
点部側から上死点部側に向かう向きに発生させつつ、そ
の遠心力の最大値を従来より小さく抑制することが従来
に較べて容易となる。また、仮に、最小傾斜時重心点位
置が、回転軸線より下死点部側になるようにされる場合
であっても、回転軸線からの距離が従来に比較して小さ
くなるため、遠心力も小さくなり、斜板の貫通穴の内周
面の、下死点側の部分が回転軸の外周面に押し付けられ
続けるようにすることが容易となる。例えば、最小傾斜
時における斜板の傾斜角が0ではなく、正の値である場
合には、前述のように、圧縮行程にあるピストンからの
反力に基づいて斜板には下死点部側から上死点部側に向
かう向きの力が作用するため、この力が斜板の最小傾斜
時における遠心力に基づく上死点部側から下死点部側に
向かう向きの力より大きくなるようにすれば、斜板の貫
通穴の内周面の、下死点側の部分が回転軸の外周面に押
し付けられ続けるようにすることができる。また、最小
傾斜時の斜板の傾斜角が0の場合であっても、例えば、
回転軸と斜板との間にばね部材を配設する等、斜板を下
死点部側から上死点部側に向かって付勢する付勢装置を
設ければ、斜板の貫通穴の内周面の、下死点側の部分が
回転軸の外周面に押し付けられ続けるようにすることが
できる。このように、最小傾斜時における斜板の傾斜角
を正にし、あるいは付勢装置を設ければ、本発明に従わ
なくても、斜板の貫通穴の内周面の、下死点側の部分が
回転軸の外周面に押し付けられ続けるようにすることは
できるのであるが、本発明に従えば、最小傾斜時におけ
る斜板の傾斜角や付勢装置の付勢力が小さくて済むので
ある。 (2)前記 (1)項に記載の可変容量型斜板式圧縮機と同
様に、ハウジング,回転軸,斜板,ピストンおよび傾斜
角変更装置を含むものにおいて、前記傾斜角が前記最大
傾斜角である状態における斜板の重心点の位置である最
大傾斜時重心点位置と、傾斜角が前記最小傾斜角である
状態における斜板の重心点の位置である最小傾斜時重心
点位置とを共に、前記回転軸の回転軸線上または回転軸
線より斜板の上死点部側に位置させ、かつ、最小傾斜時
重心点位置の回転軸線からの距離と最大傾斜時重心点位
置の回転軸線からの距離とをほぼ等しくしたことを特徴
とする可変容量型斜板式圧縮機(請求項2)。最小傾斜
時重心点位置の回転軸線からの距離は最大傾斜時重心点
位置の回転軸線からの距離とほぼ等しければよいのであ
り、丁度等しくても、僅かに大きくても、僅かに小さく
てもよい。本発明に従えば、最小傾斜時においても最大
傾斜時においても、斜板の遠心力を、斜板の下死点部側
から上死点部側に向かう向きに発生させつつ、遠心力の
最大値を極力小さく抑えることができる。 (3)前記 (1)項に記載の可変容量型斜板式圧縮機と同
様に、ハウジング,回転軸,斜板,ピストンおよび傾斜
角変更装置を含むものにおいて、前記傾斜角が前記最小
傾斜角である状態における前記斜板の重心点の位置であ
る最小傾斜時重心点位置を、傾斜角が前記最大傾斜角で
ある状態における斜板の重心点の位置である最大傾斜時
重心点位置に比較して、斜板の上死点部側に位置させた
可変容量型斜板式圧縮機(請求項3)。本項に記載の発
明に従えば、最小傾斜時と最大傾斜時との両方におい
て、斜板の遠心力を下死点部側から上死点部側に向かう
向きに発生させつつ、その遠心力の最大値を従来より小
さく抑制することが従来に較べて容易となる。 (4)前記最小傾斜時重心点位置を前記回転軸線上また
は回転軸線より斜板の上死点部側に位置させた (3)項に
記載の可変容量型斜板圧縮機(請求項4)。前記傾斜角
が前記最小傾斜角である状態における斜板の重心点の位
置である最小傾斜時重心点位置を、前記回転軸の回転軸
線より斜板の上死点部側に位置させる一方、傾斜角が前
記最大傾斜角である状態における斜板の重心点の位置で
ある最大傾斜時重心点位置を、回転軸の回転軸線より斜
板の下死点部側に位置させる態様が本項に記載の発明の
一態様である。このようにすれば、少なくとも、圧縮行
程にあるピストンからの反力と斜面の効果とにより、下
死点部側から上死点部側に向かう向きの力が斜板に作用
することを期待できないか、あるいは不十分である最小
傾斜時に、斜板の遠心力を下死点部側から上死点部側に
向かう向きに発生させることができ、斜板の挙動を安定
化させることができる。本項に記載の発明の別の態様
は、前記最小傾斜時重心点位置のみならず、前記傾斜角
が前記最大傾斜角である状態における斜板の重心点の位
置である最大傾斜時重心点位置も、前記回転軸の回転軸
線より斜板の上死点部側に位置させ、かつ、最小傾斜時
重心点位置の回転軸線からの距離を最大傾斜時重心点位
置の回転軸線からの距離より大きくする態様である。こ
のようにすれば、最小傾斜時においても最大傾斜時にお
いても、斜板の遠心力を、斜板の下死点部側から上死点
部側に向かう向きに発生させ得、かつ、その遠心力を最
大傾斜時より大きくすることができ、斜板の挙動安定化
の観点から理想的な状態またはそれに近い状態の可変容
量型斜板式圧縮機を得ることができる。最小傾斜時重心
点位置の回転軸線からの距離が最大となるようにするこ
とが特に望ましい。 (5)前記回転軸線から偏心した位置に設けられ、前記
回転軸と一体的に回転する第一係合部と、前記斜板に固
定的に設けられ、前記第一係合部と、斜板の前記傾斜角
の変更は許容するが相対回転は防止する状態で係合する
第二係合部とを含む (1)項ないし (4)項のいずれか一つ
に記載の可変容量型斜板式圧縮機。このように第一係合
部と第二係合部との係合によれば、回転軸の回転を斜板
に良好に伝達することができる。 (6)前記第一係合部が、前記回転軸に固定された回転
板に設けられた (5)項に記載の可変容量型斜板式圧縮
機。第一係合部を回転軸自体に設けることも可能である
が、本項におけるように、回転軸に回転板を固定し、そ
の回転板に第一係合部を設ければ、第一係合部の配設が
容易となる。 (7)前記回転板の重心点が前記回転軸の回転軸線上ま
たは回転軸線より前記斜板の前記下死点部側にある (1)
項ないし (6)項のいずれか一つに記載の可変容量型斜板
式圧縮機。前述のように、斜板の挙動を安定化させるた
めには、斜板の重心点を回転軸の回転軸線より上死点部
側にすることが有効なのであるが、その場合には、斜板
自体の動的バランスがやや悪くなる。それに対し、本項
におけるように、回転板の重心点を回転軸の回転軸線よ
り下死点部側に位置させれば、斜板の遠心力を回転板の
遠心力により打ち消し、あるいは軽減することができ
る。特に、前記 (2)項に記載の可変容量型斜板式圧縮機
におけるように、最大傾斜時重心点位置と最小傾斜時重
心点位置とが共に回転軸線より斜板の上死点部側に位置
し、かつ、それらの回転軸線からの距離がほぼ等しい場
合には、斜板に作用する遠心力が斜板の傾斜角度のいか
んを問わずほぼ一定となるため、回転板の重心点を回転
軸線より斜板の下死点部側とし、かつ、斜板の遠心力と
釣り合う遠心力が生じるようにすれば、回転軸,斜板お
よび回転板を含む回転体全体の動的バランスを斜板の傾
斜角度のいかんを問わず良好に保ち、可変容量型斜板式
圧縮機の吐出容量のいかんを問わず振動を良好に防止す
ることができる。 (8)前記第一係合部が横断面形状が円形の係合穴を備
え、前記第二係合部が、前記斜板の本体部からその本体
部に対して傾斜した方向に延び出させられるとともに、
自由端部に前記係合穴に嵌入可能な球状部を備えた係合
突部により構成された (5)項ないし (7)項のいずれか一
つに記載の可変容量型斜板式圧縮機。 (9)前記斜板の中央部に形成された貫通穴の内周面
の、斜板の下死点部側の部分に設けられ、前記回転軸の
外周面と係合することにより、斜板の回転軸に対する上
死点部側への相対移動限度を規定する移動限度規定部を
含む (1)項ないし (8)項のいずれか一つに記載の可変容
量型斜板式圧縮機。 (10)前記移動限度規定部が、前記斜板の上死点部と
下死点部とを通るとともに前記回転軸の回転軸線を含む
平面である斜板傾動平面を切断平面とする断面形状が曲
線により画定される形状を有する (9)項に記載の可変容
量型斜板式圧縮機。前記 (1)項ないし (4)項のいずれか
一つに記載の可変容量型斜板式圧縮機においては、上記
曲線の形状と位置とが、 (1)項ないし (4)項のいずれか
一つに記載の条件を満たす形状および位置に選定され
る。曲線は次項の円弧を含むが、円弧以外の曲線とすれ
ば、曲線の形状を変えることにより、移動限度規定部と
回転軸との接触状態における斜板の、回転軸の回転軸線
に直角な方向の位置も変えることができる。 (11)前記曲線が円弧である(10)項に記載の可変容量
型斜板式圧縮機。前記 (1)項ないし (4)項のいずれか一
つに記載の可変容量型斜板式圧縮機においては、上記円
弧の中心点と斜板の中心点あるいは重心点との相対位置
が、 (1)項ないし (4)項のいずれか一つに記載の条件を
満たす相対位置に選定される。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態である車
両用エアコンディショナに用いられる可変容量型斜板式
圧縮機を例に取り、図面に基づいて詳細に説明する。図
1に本実施形態における可変容量型斜板式圧縮機を示
す。図1において、10はシリンダブロックであり、シ
リンダブロック10の中心軸線を中心とする一円筒面上
には、上記中心軸線に平行に延びる複数のシリンダボア
12が等角度間隔で形成されている。シリンダボア12
の各々には、片頭ピストン14(以下、ピストン14と
略称する)が往復運動可能に配設されている。シリンダ
ブロック10の軸方向の一端面(図1の左側の端面であ
り、前端面と称する)には、フロントハウジング16が
取り付けられ、他方の端面(図1の右側の端面であり、
後端面と称する)には、リヤハウジング18がバルブプ
レート20を介して取り付けられている。フロントハウ
ジング16,リヤハウジング18,シリンダブロック1
0等により斜板式圧縮機のハウジングが構成される。リ
ヤハウジング18とバルブプレート20との間には、吸
入室22,吐出室24が形成され、それぞれ、吸入ポー
ト26,供給ポート28を経て、図示しない冷凍回路に
接続される。バルブプレート20には、吸入孔32,吸
入弁34,吐出孔36,吐出弁38等が設けられてい
る。
【0010】上記ハウジング内には、回転軸50が、シ
リンダブロック10の中心軸線を回転軸線Mとして回転
可能に設けられている。回転軸50は、その両端部にお
いてそれぞれフロントハウジング16,シリンダブロッ
ク10にベアリングを介して回転可能に支持されてい
る。シリンダブロック10の中心部には、支持穴56が
形成されており、その支持穴56において上記ベアリン
グを介して支持されているのである。回転軸50のフロ
ントハウジング16側の端部はシリンダブロック10外
へ突出し、図示しない駆動源の一種である外部駆動源と
しての車両エンジンに、電磁クラッチ等のクラッチ機構
を介して連結されている。したがって、車両エンジンの
作動時に、クラッチ機構によって回転軸50が車両エン
ジンに接続されれば、回転軸50が回転軸線Mまわりに
回転させられる。
【0011】回転軸50には、斜板60が軸方向に相対
移動可能かつ傾動可能に保持されている。斜板60は、
円板状の本体部62を有し、本体部62の中心線Nを通
る貫通穴64が形成されている。この貫通穴64に回転
軸50が挿通されることにより、斜板60が回転軸50
に支持されている。回転軸50には、回転板66が固定
され、スラストベアリング68を介してフロントハウジ
ング16に係合させられている。斜板60は、ヒンジ機
構74により、回転軸50と一体的に回転させられると
ともに、軸方向の移動を伴う傾動を許される。ヒンジ機
構74は、回転板66の回転軸線Mから偏心した位置で
あって、周方向に隔たった2箇所に固定的に設けられた
アーム部76と、斜板60の本体部62に固定的に設け
られ、各アーム部76の係合穴78にスライド可能に嵌
合された2つの係合突部80と、斜板60の貫通穴64
と、回転軸50の外周面82とを含むものである。係合
突部80は、斜板60の本体部62から斜板60の中心
線Nに対して傾斜する方向(圧縮機の外周側に向かう方
向)に延び出し、その自由端部に形成された球状部84
が、アーム部76の横断面形状が円形の係合穴78内に
嵌入させられ、斜板60の傾動は許容されるが相対回転
は防止されている。本実施形態においては、斜板60,
回転軸50,ヒンジ機構74等がピストン14を往復運
動させる往復駆動装置を構成している。また、アーム部
76の係合穴78が第一係合部を構成し、係合突部80
が第二係合部を構成している。
【0012】前記ピストン14は、中空ピストンの一種
であり、斜板60と係合させられる係合部90と、係合
部90と一体的に設けられ、シリンダボア12に嵌合さ
れる中空円筒状の中空頭部としての頭部92とを備えて
いる。係合部90は、概してU字形をなし、頭部92の
中心軸線と直交する方向に延び出す一対のアーム部9
4,96と、アーム部94,96の基端部同士を連結す
る連結部98とを備えている。アーム部94,96の互
いに対向する内側面には、それぞれ凹部100が形成さ
れている。これら凹部100の内面は凹球面状をなし、
2つの凹球面が一球面上に位置している。係合部90に
球冠状の一対のシュー104を介して斜板60が係合さ
せられている。シュー104は、球面部において係合部
90の凹部100に摺動可能に保持され、平面部におい
て斜板60の両面に接触し、斜板60の外周部を両側か
ら摺動可能に挟持している。ピストン14の頭部92
は、一端が開口し、他端が閉塞された有底円筒状をなす
有底円筒状部106と、有底円筒状部106に固定さ
れ、有底円筒状部106の開口を閉塞する閉塞部材とし
てのキャップ108とを備えている。有底円筒状部10
6は、底壁部において係合部90のアーム部96側と一
体に形成されている。
【0013】シリンダブロック10およびピストン14
は、金属の一種であるアルミニウム合金製のものとさ
れ、ピストン14の外周面には、フッ素樹脂のコーティ
ングが施されている。フッ素樹脂でコーティングすれ
ば、同種金属との直接接触を回避して焼付きを防止しつ
つシリンダボア12との嵌合隙間を可及的に狭くするこ
とができる。なお、シリンダブロック10およびピスト
ン14は、アルミニウム珪素系合金製のもの等とするこ
とが望ましい。ただし、シリンダブロック10やピスト
ン14の材料、コーティング層の材料等は、上述の材料
に限らず、他の材料であってもよい。
【0014】斜板60の回転運動は、シュー104を介
してピストン14の往復直線運動に変換される。ピスト
ン14が上死点から下死点へ移動する吸入行程におい
て、吸入室22内の冷媒ガスが吸入孔32,吸入弁34
を経てシリンダボア12内に吸入される。ピストン14
が下死点から上死点へ移動する圧縮行程において、シリ
ンダボア12内の圧縮室の冷媒ガスが圧縮され、吐出孔
36,吐出弁38を経て吐出室24に吐出される。斜板
60の、ピストン14を上死点に位置させる部分が上死
点部110であり、下死点に位置させる部分が下死点部
112である。上死点部110と下死点部112とは回
転軸線Mの丁度反対側、すなわち、斜板60の直径方向
に隔たった位置にある。これら上死点部110および下
死点部112の位置は、回転軸50,斜板60および回
転板66の回転につれて変わるが、図1および図2に
は、上死点部110が最上の位置、下死点部112が最
下の位置にある状態が示されている。冷媒ガスの圧縮に
伴ってピストン14には、軸方向の圧縮反力が作用す
る。圧縮反力は、ピストン14,斜板60,回転板66
およびスラストベアリング68を介して、シリンダブロ
ック10,フロントハウジング16,リヤハウジング1
8等から成るハウジングに受けられる。ピストン14の
係合部90には、回転規制部(図示省略)が一体的に設
けられている。回転規制部は、フロントハウジング16
の内周面に接触する状態とされ、ピストン14の中心軸
線回りの回転を規制し、ピストン14と斜板60との衝
突を回避する。
【0015】シリンダブロック10を貫通して給気通路
120が設けられている。この給気通路120により、
吐出室24と、シリンダブロック10内に形成された斜
板室122とが接続されている。給気通路120の途中
には、電磁制御弁124が設けられている。電磁制御弁
124のソレノイド126はコンピュータを主体とする
制御装置(図示省略)により励磁,消磁され、冷房負荷
等の情報に応じて供給電流量が制御されて電磁制御弁1
24の開度が調節される。
【0016】回転軸50の内部には、排出通路130が
設けられている。排出通路130は、一端において前記
支持穴56に開口させられるとともに、他端において斜
板室122に開口させられている。支持穴56は排出ポ
ート134を経て吸入室22に連通させられている。
【0017】本斜板式圧縮機は可変容量型であり、高圧
源としての吐出室24と低圧源としての吸入室22との
圧力差を利用して斜板室122内の圧力が制御されるこ
とにより、ピストン14の前後に作用するシリンダボア
12内の圧力と斜板室122の圧力との差が調節され、
斜板60の回転軸線Mと直交する直交平面に対する傾斜
角度が変更されてピストン14のストロークが変更さ
れ、圧縮機の吐出容量が調節される。具体的には、電磁
制御弁124の励磁,消磁の制御により、斜板室122
の圧力が制御される。
【0018】ソレノイド126の消磁状態では、電磁制
御弁124が全開させられて給気通路120が連通させ
られた状態となり、吐出室24の高圧の冷媒ガスが斜板
室122に供給され、斜板室122内の圧力が高くな
り、斜板60の傾斜角が最小となって回転軸線Mに対し
てほぼ直角な姿勢となる(図1参照)。ピストン14
は、斜板60の回転に伴って往復移動させられるが、斜
板60の傾斜角が最小となると、ピストン14の容積変
化率が小さくなり、圧縮機の吐出容量が最小となる。ソ
レノイド126の励磁状態では、供給電流量を多くして
電磁制御弁124の開度が小さくなる(開度0も含む)
ほど、吐出室24の高圧の冷媒ガスの斜板室122への
供給量が減り、斜板室122内の冷媒ガスは、排出通路
130を経て吸入室22に放出されるため、斜板室12
2内の圧力が低くなる。それに伴って斜板60の傾斜角
が大きくなり、ピストン14の容積変化率が大きくなっ
て圧縮機の吐出容量が大きくなる。ソレノイド126の
励磁により給気通路120が遮断された状態では、吐出
室24の高圧の冷媒ガスが斜板室122に供給されない
状態となって斜板60の傾斜角が最大となり(図2参
照)、圧縮機の吐出容量が最大となる。斜板60の最小
傾斜角位置は、回転軸50上のストッパ136への当接
によって規定され、斜板60の最大傾斜角位置は、斜板
60に設けられた部分円筒状をなすストッパ138の回
転板66への当接によって規定される。給気通路12
0,斜板室122,電磁制御弁124,排出通路13
0,排出ポート134,制御装置等により、傾斜角変更
装置が構成されている。
【0019】斜板60の一方の側(フロントハウジング
16側)には、付勢装置の一種である弾性部材としての
圧縮コイルスプリング140が配設されている。圧縮コ
イルスプリング140は、一端が回転板66に受けら
れ、他端が斜板60の本体部62の係合突部80が形成
された側(回転板66に対向する側)に受けられ、斜板
60を前記最小傾斜角位置に向かって付勢している。
【0020】斜板60の貫通穴64の回転板66側の端
部には、他の部分より大径の凹部150が形成され、斜
板60が最大傾斜角まで傾かされた状態では、凹部15
0の、前記ハウジングの中心軸線に対して直角をなす受
面154においてスプリング140の一端が受けられ、
最小傾斜角となる状態では、中心軸線に対して直角をな
す受面152において受けられる。したがって、圧縮機
の運転が停止させられれば、斜板60は、スプリング1
40の付勢力により最小傾斜角位置に移動させられ、再
起動に備えて待機する状態となる。
【0021】斜板60の貫通穴64の下死点部112側
の内周面には、曲面により画定された移動限度規定部1
60が形成されている。移動限度規定部160は、斜板
60の上死点部110と下死点部112とを通るととも
に、回転軸50の回転軸線Mを含む平面である斜板傾動
平面を切断平面とする断面形状が円弧により画定される
形状を有している。本実施形態の場合、移動限度規定部
160は、前記受面154に隣接した部分により形成さ
れており、上記切断平面による断面形状が部分円をなす
形状とされている。移動限度規定部160は、その部分
円の円弧の中心点a(図3参照)が斜板60の本体部6
2の厚さ方向(中心線Nに平行な方向)の中央を通る中
央面lより係合突部80側に位置するように、形成され
ている。また、斜板60の貫通穴64の形状は、移動限
度規定部160が回転軸50の外周面82に接触するこ
とにより、斜板60の回転軸50に対する上死点部11
0側への移動が規定された状態で、斜板60の傾動を許
容する形状とされている。
【0022】このように構成された移動限度規定部16
0の円弧の中心点aと、斜板60の本体部62の中心点
b(すなわち、前記中心線Nと前記中央面lとの交点)
との相対位置関係は、以下の式が成り立つように設定さ
れている。まず、図3に概略的に示すように、斜板60
が最大傾斜角位置にある状態では、以下の式が成り立
つ。 D/2+R=Hcosθ100 −Asinθ100 −B100 ただし、D/2:回転軸50の半径,R:円弧の半径,
H:円弧の中心点aから斜板60の中心線Nまでの距
離,θ100 :斜板60の最大傾斜時(100%容量)の
傾斜角度,A:移動限度規定部160の円弧の中心点a
から上記中央面lまでの距離,B:斜板60の中心点b
から回転軸50の回転軸線Mまでの距離 上式の右項にあるB100 を左辺に移行し、左辺にあるD
/2+Rを右辺に移行すると以下の式が成り立つ。 B100 =Hcosθ100 −Asinθ100 −D/2−R ・・・(1)
【0023】また、斜板60が最小傾斜角位置にある状
態における中心点a,b等の相対位置関係を図4に概略
的に示す。最小斜板傾斜角をθmin で表すと、上記
(1)式に対応して、以下の式が成り立つ。 Bmin =Hcosθmin −Asinθmin −D/2−R ・・・(2) このように表されるB100 とBmin とが以下の(3)式
の関係が成り立つように、上記A,H,Rの各値が設定
されている。 Bmin −B100 >0 ・・・(3) 上記(3)式が成り立つようにA,H,Rの値が設定さ
れているため、斜板60の最小傾斜時中心点bmin は、
最大傾斜時中心点b100 より回転軸線Mに対して距離Δ
H(Bmin −B100 )だけ上死点部110側(係合突部
80側)に寄った位置に位置することになる。つまり、
本実施形態においては、最大傾斜時中心点b100 と最小
傾斜時中心点bmin とは共に、回転軸線M上またはそれ
より斜板60の上死点部110側に位置させられ、か
つ、最小傾斜時中心点bmin の回転軸線Mからの距離B
min が、最大傾斜時中心点b100 の回転軸線Mからの距
離B 100 より大きくなっているのである。具体的には、
最大傾斜時中心点b100 が回転軸50の回転軸線M上に
あり、最小傾斜時中心点bmin は回転軸線Mより上死点
部110側に位置するように上記各値が設定されてい
る。
【0024】図5に、本実施形態における最小傾斜時中
心点bmin ,最大傾斜時中心点b10 0 と、斜板60の最
小傾斜時の重心点dmin ,最大傾斜時の重心点d
100 と、移動限度規定部160の中心点aと回転軸50
の回転軸線Mとの各相対位置関係を示す。なお、実際に
は、斜板60の傾斜角度の変更に伴い、移動限度規定部
160は軸方向に移動するのであるが、図5において
は、理解を容易にするために、移動限度規定部160の
位置を固定し、その移動限度規定部160の中心点aに
対する斜板60の最小傾斜時と最大傾斜時との各中心
点,重心点の回転軸線Mからの距離の変化を示す。上述
のように、最大傾斜時中心点b100 と最小傾斜時中心点
min とが共に回転軸線M上またはそれより上死点部1
10側に位置し、かつ、中心点bmin の回転軸線Mから
の距離Bmin が中心点b100 の回転軸線Mからの距離B
100 より大きくなっており、かつ、本実施形態において
は、斜板60の重心点が中心点より上死点部110側に
あって、中央面lより係合突部80側に位置していて、
最小傾斜時重心点dmin と最大傾斜時重心点d100 とが
共に回転軸線Mより上死点部110側に位置し、かつ、
最小傾斜時重心点dmin の回転軸線Mからの距離と最大
傾斜時重心点d100 の回転軸線Mからの距離とが等しく
なっている。
【0025】それに対し、従来は、図6に示すように、
斜板60の最大傾斜時中心点b100が回転軸線M上にあ
り、斜板60の傾斜角の減少につれて一旦回転軸線Mよ
り僅かに上死点部110側となるが、さらに傾斜角が減
少すれば、下死点部112側へ移動し、最小傾斜時中心
点bmin は回転軸線Mより下死点部112側に位置する
ようにされていた。そして、重心点が中央面lより係合
突部80側にあり、最大傾斜時重心点d100 が最小傾斜
時重心点dmin より上死点部110側に位置し、かつ、
回転軸線Mより上死点部110側に位置していた。その
ため、最大傾斜時には、下死点部112側から上死点部
110側に向かう向きの遠心力が作用するようになって
いた。それに対し、最小傾斜時には、向きは最大傾斜時
と同じく下死点部112側から上死点部110側に向か
う向きであったが、遠心力の大きさは、最大傾斜時より
小さかった。最大傾斜時には、斜板60に、斜面の効果
により下死点部112側から上死点部110側に向かう
向きの力が作用するのであるが、その力に加えて、最小
傾斜時よりも大きい遠心力が作用するようになっていた
のである。前述したように、斜板60の安定的な挙動の
ためには、斜板60の内周面の下死点部112側の部分
である移動限度規定部160が回転軸50の外周面82
に押し付けられ続けることが望ましいのであるが、最大
傾斜時に無用に大きな遠心力が作用することになれば、
斜板60を含む回転部の動的バランスが悪くなる。この
ため、従来においては、回転板66にバランスウェイト
部を一体的に設けるなどして、回転板66の重心を回転
軸線Mより斜板60の下死点部112側に位置させるこ
とにより、斜板60の遠心力を回転板66の遠心力によ
り軽減する試みがなされていたのであるが、上記のよう
に斜板60の最大傾斜時と最小傾斜時とにおいて遠心力
が大きく変化するため、遠心力が一定である回転板66
の遠心力により、最大傾斜時と最小傾斜時との両方にお
いて動的アンバランスを良好に抑制することはできず、
しかも、バランスウェイト部を付加する必要があり、回
転部全体が重くなる問題もあった。
【0026】本実施形態においては、従来における上記
問題が解消される。最小傾斜時中心点bmin から回転軸
線Mまでの距離Bmin が最大傾斜時中心点b100 から回
転軸線Mまでの距離B100 より大きくされることによ
り、最小傾斜時重心点dmin が最大傾斜時重心点d100
より下死点部112側に位置することが回避され、最小
傾斜位置にある斜板60にも下死点部112側から上死
点部110側に移動させる向きの遠心力が作用する。斜
板60の最小傾斜時には、斜面の効果は小さくなるので
あるが、上記遠心力により、移動限度規定部160が回
転軸50の外周面82に押し付けられ続けることが保証
され、斜板60の半径方向の移動限度が規定された状態
で安定的に傾斜角の変更が行われるのである。また、従
来に比較して、最大傾斜時重心点d100 と最小傾斜時重
心点dmin とを結ぶ軌跡が回転軸線Mに対して平行な状
態に近くなり、斜板60に作用する遠心力の最大値を必
要最小限に抑えつつ、斜板60に下死点部112から上
死点部110に向かう向きの力を確実に作用させること
ができる。このように最大傾斜時重心点d100 と最小傾
斜時重心点dmin とを結ぶ軌跡が回転軸線Mに対して平
行な状態に近くなるということは、斜板60に作用する
遠心力が斜板60の傾斜角度のいかんを問わずほぼ一定
に保たれるということであり、回転板66の一定の遠心
力により動的アンバランスをほぼ完全に除去することが
できる。あるいは、斜板60に作用する遠心力の最大値
を必要最小限に抑え得るため、回転板66の重心を回転
軸線M上に位置させても、回転部の動的アンバランスは
小さくて済み、回転板66の重心を回転軸線Mより下死
点部112側に位置させるための特別な対策が不要とな
るか、あるいは少しで済む。
【0027】また、図7に本発明の別の実施形態を示
す。本実施形態のように、最大傾斜時中心点b100 と最
小傾斜時中心点bmin とが共に回転軸線M上またはそれ
より上死点部110側に位置し、かつ、中心点bmin
回転軸線Mからの距離Bmin が中心点b100 の回転軸線
Mからの距離B100 より大きくなるとともに、最小傾斜
時重心点dmin と最大傾斜時重心点d100 とが共に回転
軸線Mより上死点部110側に位置し、かつ、最小傾斜
時重心点dmin から回転軸線Mまでの距離Bminが、最
大傾斜時重心点d100 から回転軸線までの距離B100
り大きくなれば、斜板60の最小傾斜時において、斜板
60に作用する遠心力を最大傾斜時より大きくすること
ができる。斜板60の傾斜角度が大きくなって、斜面の
効果により斜板60に下死点部112側から上死点部1
10側に向かう向きに作用する力が大きくなるにつれて
遠心力を小さくすることができるのであり、斜面の効果
と遠心力とに互いの変化の影響を軽減し合わせることが
できるのである。特に、斜面の効果の増大と遠心力の減
少とが丁度相殺し合うようにすれば、斜板60に下死点
部112側から上死点部110側に向かう向きに作用す
る力を斜板60の傾斜角度のいかんを問わず一定にする
ことができる。また、斜板60の最小傾斜時において必
要最小限の遠心力が得られるようにすれば、斜板60の
傾斜角度が増大するにつれて遠心力が小さくなり、傾斜
角度の変化範囲全体における平均遠心力が図5の実施形
態に比較して小さくて済む。したがって、回転板66の
重心を回転軸線Mより下死点部112側にすることによ
る動的アンバランス除去対策を講じない場合における圧
縮機の振動が、図5の実施形態に比較して、吐出容量最
小の状態を除くあらゆる運転状態において小さくて済む
こととなる。
【0028】斜板式圧縮機の構造は、上記実施形態にお
けるそれに限らず、他の構造のものとすることもでき
る。例えば、電磁制御弁124は不可欠ではなく、吐出
室24の圧力と斜板室122の圧力との差圧に基づいて
機械的に開閉させられる開閉弁を設けることもできる。
また、電磁制御弁124に代えて、あるいはそれととも
に、排出通路130の途中に、電磁制御弁124と同様
な電磁制御弁を設けてもよいし、あるいは斜板室122
の圧力と吸入室22の圧力との差圧に基づいて機械的に
開閉させられる開閉弁を設けてもよい。
【0029】以上、本発明のいくつかの実施形態を詳細
に説明したが、これは例示に過ぎず、本発明は、前記
〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効
果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識
に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である可変容量型斜板式圧
縮機において斜板が最小傾斜角位置にある状態を示す正
面断面図である。
【図2】上記可変容量型斜板式圧縮機において斜板が最
大傾斜角位置にある状態を示す正面断面図である。
【図3】上記斜板の最大傾斜時における斜板の中心点,
回転軸の回転軸線および移動限度規定部の円弧の中心点
の相対位置関係を概略的に示す図である。
【図4】上記斜板の最小傾斜時における斜板の中心点,
回転軸の回転軸線および移動限度規定部の円弧の中心点
の相対位置関係を概略的に示す図である。
【図5】上記斜板の最小傾斜時と最大傾斜時とにおける
中心点および重心点と移動限度規定部の円弧の中心点と
の相対位置関係を概略的に示す図である。
【図6】従来の、斜板の最小傾斜時と最大傾斜時とにお
ける中心点および重心点と移動限度規定部の円弧の中心
点との相対位置関係を概略的に示す図である。
【図7】本発明の別の実施形態である可変容量型斜板式
圧縮機の斜板の最小傾斜時と最大傾斜時とにおける中心
点および重心点と移動限度規定部の円弧の中心点との相
対位置関係を概略的に示す図である。
【符号の説明】
12:シリンダボア 14:片頭ピストン 50:
回転軸 60:斜板 62:本体部 64:貫通穴 66:回転板 7
6:アーム部 78:係合穴 80:係合突部
82:外周面 84:球状部 90:係合部 9
2:頭部 110:上死点部 112:下死点部
122:斜板室 160:移動限度規定部
フロントページの続き (72)発明者 樽谷 知二 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 (72)発明者 水藤 健 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 (72)発明者 西村 健太 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 (72)発明者 安谷屋 拓 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 Fターム(参考) 3H076 AA06 BB01 BB26 BB31 CC20 CC36 CC40

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一直線を中心とする一円筒面上に形成さ
    れた複数のシリンダボアを備えたハウジングと、 そのハウジングにより前記一直線を回転軸線として回転
    可能に支持された回転軸と、 その回転軸に、前記回転軸線と直交する直交平面に対す
    る傾斜角が変化可能にかつ回転軸と共に回転可能に保持
    された斜板と、 前記複数のシリンダボアにそれぞれ摺動可能に嵌合され
    るとともに、前記斜板の外周部と係合させられ、斜板の
    回転につれてそれぞれ上死点と下死点との間で往復運動
    する複数のピストンと、 前記斜板の傾斜角を最大傾斜角と最小傾斜角との間で変
    更する傾斜角変更装置とを含む可変容量型斜板式圧縮機
    において、 前記斜板の厚さ方向の中央に位置する平面である中央面
    と前記斜板の中心線との交点である中心点の、前記傾斜
    角が前記最大傾斜角である状態における位置である最大
    傾斜時中心点位置と、傾斜角が前記最小傾斜角である状
    態における前記中心点の位置である最小傾斜時中心点位
    置とを共に、前記回転軸の回転軸線上または回転軸線よ
    り斜板の上死点部側に位置させるとともに、最小傾斜時
    中心点位置の回転軸線からの距離を最大傾斜時中心点位
    置の回転軸線からの距離以上としたことを特徴とする可
    変容量型斜板式圧縮機。
  2. 【請求項2】 一直線を中心とする一円筒面上に形成さ
    れた複数のシリンダボアを備えたハウジングと、 そのハウジングにより前記一直線を回転軸線として回転
    可能に支持された回転軸と、 その回転軸に、前記回転軸線と直交する直交平面に対す
    る傾斜角が変化可能にかつ回転軸と共に回転可能に保持
    された斜板と、 前記複数のシリンダボアにそれぞれ摺動可能に嵌合され
    るとともに、前記斜板の外周部と係合させられ、斜板の
    回転につれてそれぞれ上死点と下死点との間で往復運動
    する複数のピストンと、 前記斜板の傾斜角を最大傾斜角と最小傾斜角との間で変
    更する傾斜角変更装置とを含む可変容量型斜板式圧縮機
    において、 前記傾斜角が前記最大傾斜角である状態における斜板の
    重心点の位置である最大傾斜時重心点位置と、傾斜角が
    前記最小傾斜角である状態における斜板の重心点の位置
    である最小傾斜時重心点位置とを共に、前記回転軸の回
    転軸線上または回転軸線より斜板の上死点部側に位置さ
    せ、かつ、最小傾斜時重心点位置の回転軸線からの距離
    と最大傾斜時重心点位置の回転軸線からの距離とをほぼ
    等しくしたことを特徴とする可変容量型斜板式圧縮機。
  3. 【請求項3】 一直線を中心とする一円筒面上に形成さ
    れた複数のシリンダボアを備えたハウジングと、 そのハウジングにより前記一直線を回転軸線として回転
    可能に支持された回転軸と、 その回転軸に、前記回転軸線と直交する直交平面に対す
    る傾斜角が変化可能にかつ回転軸と共に回転可能に保持
    された斜板と、 前記複数のシリンダボアにそれぞれ摺動可能に嵌合され
    るとともに、前記斜板の外周部と係合させられ、斜板の
    回転につれてそれぞれ上死点と下死点との間で往復運動
    する複数のピストンと、 前記斜板の傾斜角を最大傾斜角と最小傾斜角との間で変
    更する傾斜角変更装置とを含む可変容量型斜板式圧縮機
    において、 前記傾斜角が前記最小傾斜角である状態における前記斜
    板の重心点の位置である最小傾斜時重心点位置を、傾斜
    角が前記最大傾斜角である状態における斜板の重心点の
    位置である最大傾斜時重心点位置に比較して、斜板の上
    死点部側に位置させたことを特徴とする可変容量型斜板
    式圧縮機。
  4. 【請求項4】 前記最小傾斜時重心点位置を前記回転軸
    線上または回転軸線より斜板の上死点部側に位置させた
    ことを特徴とする請求項3に記載の可変容量型斜板圧縮
    機。
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