JP2003250581A - プロリダーゼ、その遺伝子及びプロリダーゼの製造方法 - Google Patents
プロリダーゼ、その遺伝子及びプロリダーゼの製造方法Info
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- JP2003250581A JP2003250581A JP2002283795A JP2002283795A JP2003250581A JP 2003250581 A JP2003250581 A JP 2003250581A JP 2002283795 A JP2002283795 A JP 2002283795A JP 2002283795 A JP2002283795 A JP 2002283795A JP 2003250581 A JP2003250581 A JP 2003250581A
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Abstract
なるプロリダーゼ活性を有する蛋白質、該蛋白質をコー
ドするプロリダーゼ遺伝子、特定の配列で表される塩基
配列からなるプロリダーゼ遺伝子、これら遺伝子をベク
ターDNAに挿入した組み換え体DNA、前記組み換え体DNA
を含む形質転換体又は形質導入体、及び前記形質転換体
又は形質導入体を用いたプロリダーゼの製造方法であ
る。 【効果】 上記プロリダーゼの蛋白質工学的な改良が行
なえるようになった。また、食品加工用の酵素生産、醸
造食品の生産に用いる微生物の改良にも用いることがで
きる。
Description
ーゼ遺伝子、組み換え体DNA及びプロリダーゼの製造法
に関する。
ゼ、イミドジペプチダーゼ、EC3.4.13.9、以下、プロリ
ダーゼという)は、C末端にプロリン又はヒドロキシプロ
リン残基を有するジペプチドを加水分解する酵素であ
る。
くのプロリダーゼの酵素学的性質が決定され、また、遺
伝子についても解析されてきた。例えば、哺乳類ではマ
ウスの肝臓由来[非特許文献1参照]、ヒトの肝臓由来
[非特許文献2]のものが知られており、バクテリアで
は、大腸菌(E. coli)[ 非特許文献3]、ラクトバチルス
・デルブルエキー(Lactobacillus delbrueckii)[非特
許文献4]由来のものが知られている。また、古細菌で
は、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosu
s )[非特許文献5]由来のもの等が知られている。以上
のプロリダーゼは、遺伝子についても報告されている。
また、酵素のみが知られていて、遺伝子についての報告
がないものとしては、例えば、キサントモナス・マルト
フィリア(Xanthomonas maltophilia)(特許文献1)
由来のもの等がある。
リゼー及びアスペルギルス・ソーヤは、味噌・醤油・日
本酒等の日本における醸造食品の製造に古くから使われ
てきており、高い酵素生産性と、長年の利用による安全
性に対する信頼の高さから、産業上特に重要な微生物で
ある。これら黄麹菌を含むアスペルギルス属について
は、アスペルギルス・ニドランス由来のプロリダーゼの
み、遺伝子データベースであるGenbankに遺伝子配列情
報の報告があるものの(ACCESSION;AJ296646)、精製
酵素及び該遺伝子産物のプロリダーゼ活性についての報
告はなされていない。
15-16 (1996)
(1989)
(1990)
5)
8)
の分解は、麹菌により生産されるプロテアーゼによって
ポリペプチドに分解され、更にポリペプチドからロイシ
ンアミノペプチダーゼによりアミノ末端から、酸性カル
ボキシペプチダーゼによりカルボキシル末端から分解さ
れ、アミノ酸及びジペプチドを主体とした低分子ペプチ
ドに分解される。
ーゼは、基質がトリペプチドになると分解しにくくな
り、ジペプチドとなると更に分解しにくくなる。特に、
カルボキシル末端がプロリンのペプチドを分解しにくい
ため、これらのペプチドは醤油中に残存しやすい。
ミノ末端がグリシンのペプチドや酸性ペプチドを分解し
にくいため、これらのペプチドが醤油中に残存しやす
い。また、ロイシンアミノペプチダーゼは、ペプチド中
にプロリンが存在する場合、プロリンのイミノ基側にア
ミノ酸が一つ結合したXaa-Pro-ペプチドの状態で作用が
停止する。醤油諸味中では、このXaa-Pro-ペプチドにプ
ロリルジペプチジルペプチダーゼが特異的に作用しXaa-
Proを遊離することにより、更にロイシンアミノペプチ
ダーゼの作用が可能となり、アミノ酸の遊離生成が進行
するものと考えられている。醤油中のジペプチドとし
て、中性ペプチドが13種類、酸性ペプチドが13種類の存
在が報告され、その構造も推定されているが、上記の影
響からGly-ProをはじめとするXaa-Proが多数認められて
いる。
解することにより、醤油及び酵素分解調味料のアミノ化
率を向上させることが可能となる。更に、プロリン自体
が呈味性を有するアミノ酸であるため、呈味の改変が可
能となり、Glu-Pro、Asp-Pro等Xaaが旨味に関わるアミ
ノ酸の場合にも、旨みの向上といった効果が期待でき
る。
ては、Ser-Pro、Thr-Pro、Ala-Pro、Gly-Proが同定され
ているが、これらのXaaは全て甘味や旨味を呈するアミ
ノ酸であり、醤油の甘味や旨味の向上が期待できる。そ
のため、酵素の大量調製が比較的容易な微生物からプロ
リダーゼを得ることが待ち望まれており、麹菌のような
安全性の高い微生物より単離されることは更に強く望ま
れている。これ故、本発明は、醤油及び酵素分解調味料
中に存在するXaa-Proを分解することができる新規プロ
リダーゼ、プロリダーゼ遺伝子、組み換え体DNA及びプ
ロリダーゼの製造法を提供することを目的とするもので
ある。
記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、黄麹菌よ
り新規プロリダーゼ遺伝子をクローニングすることに成
功し、本発明を完成した。
くは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたア
ミノ酸配列からなり、かつプロリダーゼ活性を有する蛋
白質。
長と70%以上の配列相同性を示すアミノ酸配列からなる
蛋白質又はその部分断片であり、かつプロリダーゼ活性
を有する蛋白質。
るプロリダーゼ遺伝子。 (a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質 (b) 配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若し
くは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたア
ミノ酸配列からなり、かつプロリダーゼ活性を有する蛋
白質。
長と70%以上の配列相同性を示すアミノ酸配列からなる
蛋白質又はその部分断片であり、かつプロリダーゼ活性
を有する蛋白質をコードするプロリダーゼ遺伝子。
リダーゼ遺伝子。 (a) 配列番号1で表される塩基配列からなるDNA (b) 配列番号1で表される塩基配列からなるDNAと相補
的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下
でハイブリダイズし、かつプロリダーゼ活性を有する蛋
白質をコードするDNA。
子をベクターDNAに挿入したことを特徴とする組み換え
体DNA。 7.前記6.記載の組み換え体DNAを含む形質転換体又
は形質導入体。 8.前記7.記載の形質転換体又は形質導入体を培地に
培養し、培養物よりプロリダーゼを採取することを特徴
とするプロリダーゼの製造方法である。
酸配列からなる蛋白質である。該酵素は、例えば、アス
ペルギルス・ソーヤあるいはアスペルギルス・オリゼー
等の黄麹菌の培養物から精製することができる。また、
該酵素は、上記黄麹菌等からクローニングしたプロリダ
ーゼ遺伝子を適当な宿主-ベクター系で発現させること
により得ることができる。
る限り、配列番号2で表されるアミノ酸配列において1
若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され
ていてもよい。更に、プロリダーゼ活性を有する限り、
配列番号2で表されるアミノ酸配列の全長と70%以上、
望ましくは75%以上、更に望ましくは80%以上、最も望
ましくは85%以上の配列相同性を示すアミノ酸配列から
なる蛋白質又はその部分断片であってもよい。
配列相同性を決定するために、配列は比較に最適な状態
に前処理される。例えば、一方の配列にギャップを入れ
ることにより、他方の配列とのアラインメントの最適化
を行なう。その後、各部位におけるアミノ酸残基又は塩
基が比較される。第一の配列におけるある部位に、第二
の配列の相当する部位と同じアミノ酸残基又は塩基が存
在する場合、それらの配列は、その部位において同一で
ある。2つの配列における配列相同性は、配列間での同
一である部位数の全部位(全アミノ酸又は全塩基)数に
対する百分率で示される。
は塩基配列における配列相同性は、Karlin及び Altschu
l のアルゴリズム(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:226
4-2268, 1990及びProc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873
-5877, 1993)により決定される。このようなアルゴリズ
ムを用いたBLASTプログラムがAltschul等によって開発
された(J. Mol. Biol. 215:403-410, 1990)。更に、Gap
ped BLASTは、BLASTより感度良く配列相同性を決定する
プログラムである(Nucleic Acids Res. 25:3389-3402,
1997)。上記のプログラムは、主に与えられた配列に対
し、高い配列相同性を示す配列をデータベース中から検
索するために用いられる。これらは、例えば米国Nation
al Center for Biotechnology Informationのインター
ネット上のウェブサイトにおいて利用可能である。
は、Tatiana A. Tatusova等によって開発されたBLAST 2
Sequencesソフトウェア(FEMS Microbiol Lett., 174:2
47-250,1999)を用いて決定した値を用いる。このソフト
ウェアは、米国National Center for Biotechnology In
formationのインターネット上のウェブサイトにおいて
利用可能であり、入手も可能である。用いるプログラム
及びパラメーターは、以下の通りである。アミノ酸配列
の場合、blastpプログラムを用いパラメーターとして
は、Open gap: 11 and extension gap:1 penalties, ga
p x_dropoff: 50,expect: 10, word size: 3, Filter:
ON を用いる。塩基配列の場合、blastnプログラムを用
いパラメーターとしては、Reward for a match: 1, Pen
alty for amismatch: -2, Strand option: Both strand
s, Open gap: 5 and extension gap: 2 penalties, gap
x_dropoff: 50, expect: 10, word size: 11, Filter:
ONを用いる。いずれのパラメーターも、ウェブサイト
上でデフォルト値として用いられているものである。
配列相同性を示す配列が見つからない場合には、更に、
高感度なFASTAソフトウェア(W.R. Pearson and D.J. Li
pman, Proc. Natl. Acad. Sci., 85:2444-2448, 1988)
を用いて配列相同性を示す配列をデータベースから検索
することもできる。FASTAソフトウェアは、例えば、ゲ
ノムネットのウェブサイトで利用できる。この場合も、
パラメーターとしてデフォルト値を用いる。例えば、塩
基配列についての検索を行なう場合は、データベースに
nr-ntを用い、ktup値は6を用いる。ただし、いずれの場
合も、全体の30%以上、50%以上、又は70%以上のオーバ
ーラップを示さない場合は、機能的に相関しているとは
必ずしも推定されないため、2つの配列間の配列相同性
を示す値としては用いない。
ス・ソーヤあるいはアスペルギルス・オリゼ等の黄麹
菌、その他の糸状菌、又はその他の真菌類から得ること
ができる。更に具体的には、例えば、アスペルギルス・
オリゼーRIB40株(Aspergillus oryzae var. viridis Mu
rakami,anamorph;ATCC42149)が挙げられる。これらの菌
体を、プロリダーゼを生産する条件の培地で培養したも
のから、常法により全RNAを回収する。培地としては、
例えば、ふすま培地(2.78gの小麦ふすまに2.22gの脱イ
オン水を加え、121℃・50分間オートクレーブしたも
の)を用いることができる。上記培地で適当な時間、例
えば30時間培養したのち、液体窒素を満たした乳鉢中に
適量(例えば1g)を移し、乳棒を用いて粉砕し、Cath
ala等の方法(DNA, 2(4):329-335, 1983)で全RNAを調
製する。
て、RT-PCRを行なう。プライマーとしては、本発明のプ
ロリダーゼ遺伝子を増幅することのできる組み合わせで
あればどのような組み合わせのものを用いてもよく、例
えば、配列番号3及び配列番号4の配列のオリゴヌクレ
オチドを用いることができる。RT-PCRは、市販のキッ
ト、例えば、RNA LA-PCR Kit(宝酒造社製)を用いて常
法により行なうことができる。得られた本発明のプロリ
ダーゼ遺伝子を含むDNAは、例えば、常法によりプラス
ミドに組み込むことができる。このようにして得られた
DNAの塩基配列は、サンガー法により、市販の試薬及びD
NAシークエンサーを用いて決定することができる。この
ようにして得られる本発明のプロリダーゼ遺伝子を含む
DNA及びそれによりコードされるプロリダーゼ遺伝子の
例を夫々配列番号1及び配列番号2に例示する。
ののほか、プロリダーゼ活性を有する限り、配列番号2
で表されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミ
ノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含
む蛋白質をコードしている遺伝子であってもよい。この
ような遺伝子は、後述するハイブリダイゼーションによ
る選択のほか、種々の公知の変異導入方法によって得る
こともできる。
に、ハイブリダイゼーションによる選択法を用いて得る
こともできる。遺伝子源としては、例えば、アスペルギ
ルス・ソーヤ又はアスペルギルス・オリゼ等の黄麹菌が
挙げられる。これらの生物から、常法によりRNA又はゲ
ノムDNAを調製し、プラスミド又はファージに組み込
み、ライブラリーを調製する。次いで、プローブとして
用いる核酸を検出法に応じた方法で標識する。プローブ
として用いる核酸、充分な特異性を得られる長さであれ
ばよく、例えば、配列番号1に記載の配列の少なくとも
100塩基以上、望ましくは200塩基以上、最も望ましくは
450塩基以上の部分又は全体を含むものが挙げられる。
次いで、標識したプローブにストリンジェントな条件で
ハイブリダイズするクローンを上記ライブラリーから選
択する。ハイブリダイゼーションは、プラスミドライブ
ラリーであれば、コロニーハイブリダイゼーションによ
って、ファージライブラリーであれば、プラークハイブ
リダイゼーションによって行うことができる。ストリン
ジェントな条件とは、特異的なハイブリッドのシグナル
が非特異的なハイブリッドのシグナルと明確に識別され
る条件であり、使用するハイブリダイゼーションの系
と、プローブの種類、配列及び長さによって異なる。そ
のような条件は、ハイブリダイゼーションの温度を変え
ること、洗浄の温度及び塩濃度を変えることにより決定
可能である。例えば、非特異的なハイブリッドのシグナ
ルまで強く検出されてしまう場合には、ハイブリダイゼ
ーション及び洗浄の温度を上げるとともに、必要により
洗浄の塩濃度を下げることにより特異性を上げることが
できる。また、特異的なハイブリッドのシグナルも検出
されない場合には、ハイブリダイゼーション及び洗浄の
温度を下げるとともに、必要により洗浄の塩濃度を上げ
ることにより、ハイブリッドを安定化させることが出来
る。このような最適化は、本技術分野の研究者が容易に
行ないうるものである。
は、例えば、ハイブリダイゼーションは、5 ×SSC 、1.
0 %(W/V)核酸ハイブリダイゼーション用ブロッキング試
薬(ベーリンガ・マンハイム社製)、0.1 %(W/V) N-ラ
ウロイルサルコシン、0.02%(W/V)SDSを用い一晩(8〜
16時間程度)で行ない、洗いは、0.5×SSC、0.1%(W/
V)SDS、好ましくは0.1×SSC 、0.1%(W/V)SDSを用い、15
分間、2 回行なう。ハイブリダイゼーションと洗いの温
度は、52℃以上、好ましくは57℃以上、更に好ましくは
62℃以上、最も好ましくは67℃以上である。
以上、望ましくは75%以上、更に望ましくは80%以上、
最も望ましくは85%以上の配列相同性を示すような塩基
配列は、本発明のプロリダーゼと実質的に同等の活性を
有する蛋白質をコードしていると考えられる。
ードするアミノ酸配列の配列相同性を示すようなDNA
は、上記のようにハイブリダイゼーションを指標に得る
こともでき、ゲノム塩基配列解析等によって得られた機
能未知のDNA群又は公共データベースのなかから、例え
ば、前述のBLASTソフトウェアを用いた検索により発見
することも容易である。このような検索は、本技術分野
の研究者が通常用いている方法である。
ゼ活性を有する蛋白質をコードしていることは、後述の
ように、適当なベクターに組み込み、適当な宿主を形質
転換し、形質転換体を培養してプロリダーゼ活性を測定
することにより確認することができる。
伝子を適当なベクター上に連結することにより得ること
ができる。ベクターとしては、形質転換する宿主中でプ
ロリダーゼを生産させうるものであれば如何なるもので
も用いることができる。例えば、プラスミド、コスミ
ド、ファージ、ウイルス、染色体組み込み型、人工染色
体等のベクターを用いることができる。
選択することを可能にするためのマーカー遺伝子が含ま
れていてもよい。マーカー遺伝子としては、例えば、UR
A3、niaDのような、宿主の栄養要求性を相補する遺伝子
又はアンピシリン、カナマイシンあるいはオリゴマイシ
ン等の薬剤に対する抵抗遺伝子等が挙げられる。また、
組み換えベクターは、宿主細胞中で本発明の遺伝子を発
現することのできるプロモーター又はその他の制御配列
(例えば、エンハンサー配列、ターミネーター配列、ポ
リアデニル化配列等)を含むことが望ましい。プロモー
ターとしては、具体的には、例えば、GAL1プロモータ
ー、amyBプロモーター、lacプロモーター等が挙げられ
る。また、精製のためのタグをつけることもできる。例
えば、プロリダーゼ遺伝子の下流に適宜リンカー配列を
接続し、ヒスチジンをコードする塩基配列を6コドン以
上接続することにより、ニッケルカラムを用いた精製を
可能にすることができる。
ターで形質転換することにより得られる。宿主として
は、本発明のプロリダーゼを生産することができるもの
であれば特に限定されず、例えば、サッカロミセス・セ
レビシエ、チゴサッカロミセス・ルキシー等の酵母、ア
スペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・オリゼ、アス
ペルギルス・ニガー等の糸状菌、エシェリシア・コリ、
バチルス・ズブチルス等の細菌が挙げられる。形質転換
は、宿主により公知の方法で行なうことができる。酵母
の場合は、例えば、酢酸リチウムを用いる方法(Method
s Mol. Cell. Biol., 5, 255-269(1995))等を用いるこ
とができる。糸状菌の場合は、例えば、プロトプラスト
化した後ポリエチレングリコール及び塩化カルシウムを
用いる方法(Mol. Gen. Genet., 218, 99-104(1989))
を用いることができる。細菌を用いる場合は、例えば、
エレクトロポレーションによる方法(MethodsEnzymol.,
194, 182-187(1990))等を用いることができる。
又は形質導入体を培養し、得られる培養物からプロリダ
ーゼ蛋白質を採取することからなるものである。培地及
び培養方法は、宿主の種類と組み換えベクター中の発現
制御配列によって適当なものを選べばよい。例えば、宿
主がサッカロミセス・セルビシエであり、発現制御配列
がGAL1プロモーターである場合、例えば、ラフィノース
を炭素源とする液体最少培地で前培養した菌体を、ガラ
クトース及びラフィノースを炭素源とする液体最少培地
に希釈・接種し、培養することにより、本発明のプロリ
ダーゼを生産させることができる。また、例えば、宿主
がアスペルギルス・ソーヤであり、発現制御配列がamyB
プロモーターである場合、例えば、マルトースを炭素源
とする液体最少培地で培養することにより、本発明のプ
ロリダーゼを生産させることができる。
制御配列がlacプロモーターである場合、IPTGを含有す
る液体培地で培養することにより本発明のプロリダーゼ
を生産することができる。本発明のプロリダーゼが菌体
内又は菌体表面に生産された場合は、菌体を培地から分
離し、その菌体を適当に処理することにより本発明のプ
ロリダーゼを得ることができる。例えば、サッカロミセ
ス・セレビシエの菌体表面に生産された場合、菌体その
ものを酵素剤として用いて、細菌を破砕した後、Triton
X-100, Tween-20, Nonidet P-40等の非イオン性の界面
活性剤を低濃度で作用させ、遠心分離し、その上清から
本発明のプロリダーゼを回収することができる。培養液
中に本発明のプロリダーゼが生産された場合は、遠心分
離・ろ過等により菌体を除去することにより本発明のプ
ロリダーゼを得ることができる。何れの場合も、硫安分
画、各種クロマトグラフィー、アルコール沈殿、限外ろ
過等を用いた常法により、本発明のプロリダーゼを更に
純度の高いものとして得ることもできる。
リダーゼの活性は、Leu-Proを基質とし、酵素作用によ
って遊離するアミノ酸のアミノ基を酸ニンヒドリン法を
用いて測定できる。 基質溶液: L-Leu-Pro (シグマ社製)を終濃度20mMとなる
ように20 mM トリス緩衝液(pH7.5)に溶解させた溶液 反応停止液: 氷酢酸 ニンヒドリン試薬:3%(w/v)ニンヒドリン(ナカライテス
ク社製)、 60%(v/v)氷酢酸、40%(v/v)リン酸 酵素溶液10μlに20 mM トリス緩衝液(pH7.5) 390μlを
加えて、37℃、5分間プレインキュベートした後、基質
溶液を100μl加えて、37℃で15分間反応させ、500μlの
反応停止液を加えて、酵素反応を停止させる。更に、ニ
ンヒドリン試薬500μlを加えて、100℃で10分間煮沸
後、冷却して515nmの吸光度を測定する。上記の条件下
で1分間あたり1μモルのプロリンを生成する酵素量を1
単位(U)とする。
説明する。但し、本件発明はこれらの実施例に限定され
るものではない。 実施例 1.アスペルギルス・オリゼのプロリダーゼ遺伝子のク
ローニング アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae )RIB40株
(Aspergillus oryzaevar. viridis Murakami,anamorph;
ATCC42149)の分生子約100,000個を150ml容の三角フラス
コに入った5gのふすま培地(前述)に接種し、30℃で、
30時間静置培養し培養物を得た。液体窒素を注いで冷却
してある乳鉢に培養物を入れ、液体窒素を追加した後、
液体窒素で冷却してある乳棒を用いて念入りに粉砕し
た。粉砕された菌体から、Cathala等の方法[DNA, 2
(4):329-335, 1983]で全RNAを抽出した。更に、DNA-fr
eeキット(Amibion社製)を用いてDNase I処理を行な
い、混入していたDNAを分解した。得られた全RNA1.0 ug
を鋳型として、Marathon cDNAAmplification Kit(Clon
tech社製)を用いてRT-PCRを行なった。逆転写反応のプ
ライマーは、オリゴdTの3'側にアダプター配列の付いた
キットに付属のものを用い、逆転写反応は、42℃で60分
間行なった。
添付の説明書に従い、RNaseH、DNAポリメラーゼ及びDNA
リガーゼ等を含んだカクテルを加え、16℃で90分間反応
させた後、更に、T4DNAポリメラーゼを加え、16℃、50
分間反応させ、2本鎖cDNAのライブラリーを合成し
た。次いで、上記反応物にアダプターDNA、DNAリガーゼ
等を加え、アダプターを結合させた二本鎖cDNAのライ
ブラリーを合成した。夫々の反応液組成及び反応条件
は、全て添付の説明書に従った。
イブラリーを鋳型として、配列番号3及び配列番号4の
プライマーを用いて、PCRを行ない、5'側は、開始コド
ンの直前から、3'側は、終止コドン直後から増幅した。
夫々のプライマーの5'側にはクローニングを容易にする
ために制限酵素サイトを付加させた(例えば、配列番号
3にはKpnI、配列番号4にはBam HIを導入した)。耐熱
性 DNAポリメラーゼとしては、 Takara EX Taq DNA Pol
ymerase(宝酒造社製)を用い、反応液の組成はポリメ
ラーゼに添付の説明書に従った。
間、55℃、30秒間、72℃、2分間を30サイクル行ない、7
2℃、5分間行なった。増幅産物の一部を0.7%アガロース
ゲルで電気泳動したところ、約1.5kbのバンドが確認さ
れた。なお、サーマルサイクラーとしては、GeneAmp 57
00 Sequence detection system(PE Applied Biosystem
s社製)を用い、温度コントロール法は、カリキュレー
トコントロールによった。
n社製)を用いて、上記増幅産物をpCR2.1TOPOベクター
上に組み込み、大腸菌TOP10F'株(Invitrogen社製)を
形質転換し、形質転換体を得た。形質転換体よりQIApre
p spin Miniprep Kit(キアゲン社製)を用いてプラスミ
ドを抽出し、サーモ・シークェネース・サイクル・シー
クエンシング・キット(Thermo Sequenase Cycle Seque
ncing Kit)(AmershamPharmacia Biotech社製)を用い
てシークエンス反応を行ない、LI-COR MODEL4200Lシー
クエンサー(LI-COR社製)で塩基配列を決定した。
ープンリーディングフレーム(ORF)のDNA配列が明らか
となった。このプラスミドpPEPP5347は、独立行政法人
産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにFERM BP-
7826として寄託されている。また、pPEPP5347に含まれ
るクローンの開始コドンから終止コドン直前までの塩基
配列を配列番号1に記載した。上記塩基配列を解析した
ところ、このDNAは、500アミノ酸残基からなる蛋白質を
コードしていることが分かった。このアミノ酸配列は配
列番号2に記載した。
配列データベースに対して配列相同性の高い配列を検索
した。検索には、NCBI blastp( HYPERLINK http://ww
w.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を用い、データベースとし
ては、nrを指定した。その結果、一致する配列は無く、
最も高い配列相同性を示したものは、アスペルギルス・
ニドランスのプロリダーゼ(GenBank:AJ296646)であ
り、35%の配列相同性を示した。
相同性の高い配列を検索した。検索に、NCBI blastn(H
YPERLINK http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を用
い、データベースとしては、nrを指定した。その結果、
一致する配列は無く、最も高い配列相同性を示したもの
は、上記アスペルギルス・ニドランスのプロリダーゼを
コードする遺伝子(GenBank: AJ296646)であった。コ
ード領域全長の配列相同性を解析ソフトGENETYX-WIN Ve
r.5.0で調べたところ、1416塩基にわたり、44%の配列相
同性であった。
含む配列番号5及び終始コドンを含む配列番号6のプライ
マーを用いて、全長プロリダーゼcDNAをPCR増幅した。
次いで、このPCR産物を酵母発現ベクターpYES2.1-V5-hi
s-TOPO(Invitorogen社製)にTAクローニングし、プラス
ミド pYES5347を作製した。上記のプラスミドは、ガラ
クトースにより目的蛋白質(プロリダーゼ)の誘導発現が
可能である。宿主は、INVSc1 (Genotype:MATa、his3Δ
1、leu2、trp1-289、ura3-52/ MATα、his3Δ1、leu2、
trp1-289、ura3-52)を使用し、酢酸リチウム法により、
上記のプラスミド pYES5347により宿主酵母を形質転換
した。選択培地には、[0.67% アミノ酸を含まないYeas
t Nitrogenbase (Difco社製)、2% ラフィノース (和光
純薬工業社製)、ウラシルを含まないYeast Synthetic D
ropout Medium Supplement (SIGMA社製)]を使用した。
酢酸リチウム法は、「蛋白質実験プロトコール-機能解
析編-」(P63-P88細胞工学別冊:秀潤社)の記載に従っ
た。
ES2.1-V5-his-TOPOベクターに添付のプロトコールに従
い、蛋白質の発現を行なった。200 ml用バッフル付三角
フラスコを用いて選択培地20 mlに形質転換体をコロニ
ーより植菌し、30 ℃、140 rpmで約14時間、旋回培養し
て、これを種培養とした。次いで、種培養の濁度(O
D60 0)を測定し、初期濁度がOD600 = 0.4となるように蛋
白質発現誘導培地へ種培養を接種した。蛋白質発現誘導
培地による培養は500 ml用坂口フラスコを使用し、培地
50 mlで30 ℃、140rpmで振とう培養した。蛋白質発現誘
導培地は、選択培地の炭素源を1% ラフィノース、2% ガ
ラクトース(和光純薬工業社製)としたものを使用した。
00rpmで10分間遠心分離し、上清を菌体外分泌蛋白質画
分、沈殿を菌体画分とした。菌体画分に対し、ペレット
と等容の抽出バッファー(20mM tris-HCl pH7.5、45mM K
Cl、25mM グリセロール)を加えて懸濁し、菌体懸濁液を
調製した。この懸濁液に、等容のグリセロールを加えて
15分間激しく攪拌した後、15000rpm、20分間遠心分離を
行ない、上清を菌体内蛋白質抽出画分とし、沈殿を菌体
表面残渣画分とした。
酵素液とし、プロリダーゼ活性を測定した。その結果を
表1に示した。表中の数値は、蛋白質の発現誘導48時間
後の培養液1 mlあたりのプロリダーゼ活性(mU/ml)を
示す。「ベクター」はプラスミド pYES2.1-V5-his-TOPO
の形質転換体、「5347」は、プラスミド pYES5347の形
質転換体を夫々示す。また、(-)は、ガラクトースを含
まない蛋白質非発現誘導培地、(+)は、ガラクトースを
含む蛋白質発現誘導培地で培養したことを示す。
pYES5347の形質転換体は、プラスミド pYES2.1-V5-his
-TOPOの形質転換体と比較して約12倍のプロリダーゼ活
性を示した。また、プラスミド pYES5347の形質転換体
を、ガラクトースを含まない蛋白質非発現誘導培地で培
養した時と比較しても約18倍のプロリダーゼ活性を示し
た。以上のことより、本発明により得られた遺伝子がプ
ロリダーゼ遺伝子であり、本遺伝子を使用することでプ
ロリダーゼの大量製造が可能となることが明らかとなっ
た。
伝子、組み換え体DNA及びプロリダーゼの製造法が提供
された。本発明により、上記プロリダーゼの蛋白質工学
的な改良が行なえるようになった。また本発明は、食品
加工用の酵素生産、醸造食品の生産に用いる微生物の改
良にも用いることができる。
Claims (8)
- 【請求項1】 以下の(a)又は(b)の蛋白質。 (a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質 (b) 配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若し
くは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたア
ミノ酸配列からなり、かつプロリダーゼ活性を有する蛋
白質 - 【請求項2】 配列番号2で表されるアミノ酸配列全長
と70%以上の配列相同性を示すアミノ酸配列からなる蛋
白質又はその部分断片であり、かつプロリダーゼ活性を
有する蛋白質。 - 【請求項3】 以下の(a)又は(b)の蛋白質をコードする
プロリダーゼ遺伝子。 (a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質 (b) 配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若し
くは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたア
ミノ酸配列からなり、かつプロリダーゼ活性を有する蛋
白質 - 【請求項4】 配列番号2で表されるアミノ酸配列全長
と70%以上の配列相同性を示すアミノ酸配列からなる蛋
白質又はその部分断片であり、かつプロリダーゼ活性を
有する蛋白質をコードするプロリダーゼ遺伝子。 - 【請求項5】 以下の(a)又は(b)のDNAからなるプロリ
ダーゼ遺伝子。 (a) 配列番号1で表される塩基配列からなるDNA (b) 配列番号1で表される塩基配列からなるDNAと相補
的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下
でハイブリダイズし、かつプロリダーゼ活性を有する蛋
白質をコードするDNA - 【請求項6】 請求項3、4又は5に記載の遺伝子をベ
クターDNAに挿入したことを特徴とする組み換え体DNA。 - 【請求項7】 請求項6記載の組み換え体DNAを含む形質
転換体又は形質導入体。 - 【請求項8】 請求項7記載の形質転換体又は形質導入
体を培地に培養し、培養物よりプロリダーゼを採取する
ことを特徴とするプロリダーゼの製造方法。
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