JP2003239148A - 加工糸およびその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】ソフトな風合い、生地が薄くドレープ感があ
り、優美なシボ調の外観、シャリミのある触感を有する
ストレッチ布帛を得ること。 【解決手段】芯糸と鞘糸からなる加工糸であって、芯糸
に構成成分の一方がポリエチレンテレフタレートを主成
分とし、他方の構成成分がポリトリメチレンテレフタレ
ートを主成分とするサイドバイサイド型または偏芯シー
ス・コア型であるポリエステル系複合繊維が用いられ、
鞘糸に他の繊維が用いられてなり、先撚と同一方向に仮
撚が施されてなることを特徴とする加工糸。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、加工糸およびその
製造方法に関する。

【０００２】さらに詳しくは、本発明の加工糸を用い、
高次加工して、衣服などに使用することにより、耐久
性、耐塩素性、耐光性に優れ、生地が薄くフラット感が
あり、優美なシボ感、シャリミのある触感を有するスト
レッチ布帛を得ることができるという加工糸およびその
製造方法に関する。

【０００３】

【従来の技術】従来より、ストレッチ素材として、ポリ
ウレタン系弾性繊維にポリアミド繊維やポリエチレンテ
レフタレート繊維などと引き揃えた後、同時仮撚した仮
撚加工糸、一重あるいは二重に被覆した被覆弾性糸など
が、ストッキング、ソックス、インナー、アウターなど
一般衣料用途に使用されてきた。このように、芯糸とし
てポリウレタン系弾性繊維を用いた加工糸で編織物を形
成する場合、布帛表面が単調であり、着用時のフィット
性、伸縮性が不十分であり、これら欠点を改善できる加
工糸の開発が急がれている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高次
加工して、衣服などに使用する際、従来の技術では得ら
れなかった耐久性、耐塩素性、耐光性に優れ、生地が薄
くフラット感があり、ソフトな風合い、優美なシボ調の
外観、シャリミのある触感を有するストレッチ布帛を得
ることができる加工糸およびその製造方法を提供するこ
とにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明の加工糸は、前記
課題を解決するため以下の手段を採用する。

【０００６】すなわち、芯糸と鞘糸からなる加工糸であ
って、芯糸に構成成分の一方がポリエチレンテレフタレ
ートを主成分とし、他方の構成成分がポリトリメチレン
テレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型また
は偏芯シース・コア型であるポリエステル系複合繊維が
用いられ、鞘糸に他の繊維が用いられてなり、先撚と同
一方向に仮撚が施されてなることを特徴とする加工糸で
ある。

【０００７】また、本発明の加工糸の製造方法は、前記
課題を解決するため以下の手段を採用する。

【０００８】すなわち、構成成分の一方がポリエチレン
テレフタレートを主成分とし、他方の構成成分がポリト
リメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサ
イド型または偏芯シース・コア型であるポリエステル系
複合繊維を芯糸として用い、鞘糸として他の繊維を用
い、芯糸と鞘糸を引き揃え、先撚を施した後、上記先撚
と同一方向に仮撚を施すことを特徴とする加工糸の製造
方法である。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下、本発明の加工糸について説
明する。図１は本発明の加工糸の一例を示す概略側面図
である。本発明の加工糸（イ）は、芯糸であるポリエス
テル系複合繊維（ロ）の周りが鞘糸であるポリアミド繊
維、ポリエチレンテレフタレート繊維等の他の繊維
（ハ）によって撚回被覆され、先撚が残った状態の糸形
態を示し、糸長さ方向に微細な拘束部（ニ）と開繊部
（ホ）を交互に有している。

【００１０】本発明の加工糸の芯糸には、構成成分の一
方がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方の
構成成分がポリトリメチレンテレフタレートを主成分と
するサイドバイサイド型または偏芯シース・コア型であ
るポリエステル系複合繊維が用いられる。

【００１１】前記ポリエステル系複合繊維において極限
粘度の異なる重合体が貼り合わされることによって、紡
糸、延伸時に高粘度側に応力が集中するため、２成分間
で内部歪みが異なる。そのため、延伸後の弾性回復率差
および布帛の熱処理工程での熱収縮差により高粘度側が
大きく収縮し、単繊維内で歪みが生じて３次元コイル捲
縮の形態をとる。この３次元コイルの径および単繊維長
当たりのコイル数は、高収縮成分と低収縮成分との収縮
差（弾性回復率差を含む）によって決まるといってもよ
く、収縮差が大きいほどコイル径が小さく、単位繊維長
当たりのコイル数が多くなる。

【００１２】ストレッチ素材として要求されるコイル捲
縮は、コイル径が小さく、単位繊維長当たりのコイル数
が多い（伸長特性に優れ、見映えがよい）、コイルの耐
へたり性がよい（伸縮回数に応じたコイルのへたり量が
小さく、ストレッチ保持性に優れる）、さらにはコイル
の伸縮特性は、低収縮成分を支点とした高収縮成分の伸
縮特性が支配的となるため、高収縮成分に用いる重合体
には高い伸長性および回復性が要求される。そこで、本
発明者らはポリエステルの特性を損なうことなく前記特
性を満足させるために鋭意検討した結果、低収縮成分に
ポリエチレンテレフタレートを主成分とし、高収縮成分
に、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分としたポ
リエステル系複合繊維を用いることを見いだした。ポリ
トリメチレンテレフタレート繊維は、代表的なポリエス
テル繊維であるポリエチレンテレフタレート繊維やポリ
ブチレンテレフタレート繊維と同等の力学的特性や化学
的特性を有しつつ、伸長回復性がきわめて優れている。
これは、ポリトリメチレンテレフタレートの結晶構造に
おいてアルキレングリコール部のメチレン鎖がゴーシュ
−ゴーシュ構造（分子鎖が９０度に屈曲）であること、
さらにはベンゼン環同士の相互作用（スタッキング、並
列）による拘束点密度が低く、フレキシビリティーが高
いことから、メチレン基の回転により分子鎖が容易に伸
長・回復するためと考えている。

【００１３】本発明の加工糸の芯糸として使用されるポ
リエステル系複合繊維の構成成分であるポリエチレンテ
レフタレートとしては、ポリエチレンテレフタレート単
位を主たる繰り返し単位とする重合体成分からなるもの
が好ましい。

【００１４】すなわち、ポリエチレンテレフタレートと
しては、テレフタル酸を主たる酸成分とし、エチレング
リコールを主たるグリコ−ル成分として得られるポリエ
ステルが好ましい。ただし、他のエステル結合を形成可
能な共重合成分が２０モル％以下の割合で含まれるもの
も好ましく、１０モル％以下の割合で含まれるものはよ
り好ましい。共重合可能な化合物として、たとえばスル
フォン酸、ナトリウムスルフォン酸、硫酸、硫酸エステ
ル、硫酸ジエチル、硫酸エチル、脂肪族スルフォン酸、
エタンスルフォン酸、クロロベンゼンスルフォン酸、脂
環式スルフォン酸、イソフタル酸、セバシン酸、アゼラ
イン酸、ダイマー酸、アジピン酸、シュウ酸、デカンジ
カルボン酸などのジカルボン酸、ｐ−ヒドロキシ安息香
酸、ε−カプロラクトンなどのヒドロキシカルボン酸な
どのジカルボン酸類、トリエチレングリコール、ポリエ
チレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオー
ル、ペンタンジオール、ハイドロキノン、ビスフェノー
ルＡなどのジオール類が好ましく使用される。

【００１５】また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸
化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗
酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、着色顔料な
どを添加してもよい。

【００１６】本発明の加工糸の芯糸として使用されるポ
リエステル系複合繊維の他の構成成分であるポリトリメ
チレンテレフタレートとは、トリメチレンテレフタレー
ト単位を主たる繰り返し単位とする重合体成分からなる
ものが好ましい。

【００１７】すなわち、ポリトリメチレンテレフタレー
トとしては、テレフタル酸を主たる酸成分とし、１，３
プロパンジオ−ルを主たるグリコ−ル成分として得られ
るポリエステルが好ましい。ただし、他のエステル結合
を形成可能な共重合成分が２０モル％以下の割合で含ま
れるものも好ましく、１０モル％以下の割合で含まれる
ものはより好ましい。共重合可能な化合物として、たと
えばイソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボ
ン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、５−ナトリ
ウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、エチレ
ングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオー
ル、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノ
ール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコ
ールなどのジオール類が好ましく使用される。

【００１８】また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸
化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗
酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、着色顔料な
どを添加してもよい。

【００１９】本発明において、コイル状捲縮を発現さ
せ、編織物を形成した際に所望の伸縮性を得る観点か
ら、ポリトリメチレンテレフタレートの極限粘度は１．
０以上であるのが好ましく、１．２以上であるのがより
好ましい。

【００２０】本発明で使用するポリエステル系複合繊維
の単糸断面形状はサイドバイサイド型または偏芯シース
・コア型とするものである。

【００２１】断面形状がサイドバイサイド型または偏芯
シース・コア型でないと、糸条に熱が付与された際に、
コイル状捲縮が発現せず、糸条に伸縮性を付与すること
ができない問題がある。

【００２２】また、ポリエステル系複合繊維におけるポ
リエチレンテレフタレート／ポリトリメチレンテレフタ
レートの重量比率は、製糸性および繊維長さ方向のコイ
ルの寸法均質性の観点から３０／７０以上７０／３０以
下の範囲であることが好ましい。

【００２３】ポリエステル系複合繊維の繊度は、用途目
的に応じて２０デシテックス以上１０００デシテックス
以下の範囲が好ましい。

【００２４】さらにポリエステル系複合繊維の単糸繊度
は、用途に応じて０．４デシテックス以上２５デシテッ
クス以下の範囲が好ましい。

【００２５】本発明の加工糸の鞘糸には、他の繊維が用
いられる。他の繊維としては、例えば、ポリアミド繊維
またはポリエチレンテレフタレート繊維等のフィラメン
ト糸が好ましい。

【００２６】鞘糸の態様としては延伸糸、高配向未延伸
糸のいずれであってもよい。

【００２７】鞘糸の繊度は、用途目的に応じて２０デシ
テックス以上１０００デシテックス以下の範囲が好まし
い。

【００２８】さらに鞘糸の単糸繊度は用途に応じて０．
４デシテックス以上２５デシテックス以下の範囲が好ま
しい。

【００２９】本発明の加工糸は、先撚と同一方向に仮撚
が施されてなるものである。仮撚の加撚方向が先撚と同
一方向でないと、加工糸に未解撚部分が全く残らず、均
一な嵩高加工糸となり、所望の凹凸感を得ることができ
ない問題がある。

【００３０】加工糸の状態で、未解撚による収束部分を
十分なものとし、凹凸感に優れたものとし、布帛を形成
した際に美しいシボ感を得る観点および編織工程におい
て糸切れの原因となる二重撚りやビリの発生を防止する
観点から、下記一般式（Ｉ）で定義される撚係数Ｋが、
４４０≦Ｋ≦３５００となるように先撚が施されるのが
好ましい。

【００３１】Ｋ＝Ｔｔ×Ｄ^1/2 ・・・（Ｉ） ただし、Ｔｔ：１ｍあたりの先撚数（Ｔ／ｍ） Ｄ：繊度（デシテックス） 本発明においては、布帛を形成した際に、十分なシボ
感、ストレッチ性を得るため、または、加工糸の状態で
トルクが大きすぎるため製織あるいは編成工程でビリを
発生したり、布帛が斜行することを防止するため、トル
ク撚数Ｔｏ（Ｔ／ｍ）は１６０≦Ｔｏ≦４２０であるこ
とが好ましい。

【００３２】本発明の加工糸の繊度は、用途目的に応じ
て２０デシテックス以上１６００デシテックス以下の範
囲が好ましい。

【００３３】さらに本発明の加工糸の単糸繊度は、用途
に応じて０．４デシテックス以上２５デシテックス以下
の範囲が好ましい。

【００３４】次に、本発明の加工糸の製造方法を図面を
用いて説明する。

【００３５】図２は本発明の加工糸の製造方法の一例を
示す概略模式図である。本発明の製造方法では、芯糸で
ある構成成分の一方がポリエチレンテレフタレートを主
成分とし、他方の構成成分がポリトリメチレンテレフタ
レートを主成分とするサイドバイサイド型または偏芯シ
ース・コア型であるポリエステル系複合繊維と鞘糸であ
る他の繊維を引き揃え、先撚を施した後、先撚と同一方
向に仮撚加工する。

【００３６】図２においては、先撚工程でポリエステル
系複合繊維と他の繊維が引き揃えて、先撚した合撚糸が
巻き取られた巻糸体を用い、仮撚工程に合撚糸１を供給
して仮撚を施している。

【００３７】先撚工程における先撚の方向はＳ、Ｚのど
ちらでもよく、イタリ撚糸機、アップツイスタ、ダブル
ツイスタなどの一般の撚糸機を用い、定法に従い撚糸す
ればよい。本発明の加工糸に適度なストレッチ性、シャ
リミ、シボ感を付与する観点から、撚係数Ｋが、４４０
≦Ｋ≦３５００となるように先撚を施すことが好まし
い。

【００３８】図２において、前記先撚工程で得られた合
撚糸１は、ビリ止め装置２を介して仮撚加工機に給糸す
ることが好ましい。

【００３９】すなわち、合撚糸１はトルクを有するた
め、糸にかかる張力が低減するとビリやスナールを発生
しやすくなるため、適当な張力を付与することによって
ビリやスナールを抑えることができる。ビリ止め装置２
としてボビンキャップなどが好ましく使用される。ビリ
止め装置２は、ボビンキャップ以外でも適当な張力を付
与できる装置であればどのような装置を使用してもよ
い。合撚糸１はフィードローラ４に引っ張られ、ビリ止
め装置２を経て解舒され、リングテンサ３を介し、フィ
ードローラ４〜デリベリローラ７の間で仮撚される。

【００４０】施撚体６により、先撚方向と同一方向に施
撚されながら、熱板５上で熱セットが施される。仮撚加
工に用いられる施撚体６としては、ピン、フリクション
ディスク、ベルトのいずれを用いてもよい。仮撚加工条
件は、使用される前記ポリエステル系複合繊維の繊度、
フィラメント数や、前記先撚工程における先撚数などに
応じて適宜決定されるのが好ましい。

【００４１】十分な捲縮を得ること、および二重撚の発
生による糸切れを防止する観点から、仮撚は、前記先撚
と同一方向に仮撚数Ｔｆ（Ｔ／ｍ）が、５００≦Ｔｆ≦
４０００となるように施すことが好ましい。

【００４２】捲縮を十分に付与する観点および繊維の熱
劣化による単糸切れや毛羽の発生を抑える観点から、仮
撚の際の加工温度Ｔ（℃）は１２０℃≦Ｔ≦２１０℃で
あることが好ましい。

【００４３】仮撚された加工糸はデリベリローラ７を経
て、テイクアップローラ８により巻き取られる。

【００４４】本発明の加工糸を用いた編織物は、ソフト
な風合い、生地が薄く、ドレープ性、優美なシボ感、シ
ャリミのある触感を有し、ストレッチ性に優れ、婦人向
けの和装、洋装や、シャツ、ナイトウェア、インナーウ
ェア、スポーツ衣料、ベビー衣料などストレッチ素材と
して用いることができる。

【００４５】

【実施例】以下実施例により本発明をより詳細に説明す
る。

【００４６】なお実施例中の極限粘度（η）およびトル
ク撚数（Ｔ／ｍ）は次の方法で求めた。ただし、本発明
がこれら実施例により限定されるものではない。 ［極限粘度（η）］オルソクロロフェノール１０ｍｌに
対し試料０．１０ｇを溶解し、温度２５℃においてオス
トワルド粘度計を用いて測定した。 ［トルク撚数Ｔｏ（Ｔ／ｍ）］図３に示す１ｍの長さに
サンプリングした加工糸の両端を横方向に固定し、加工
糸の中央に０．４４ｃＮ／ｄｔｅｘの荷重を吊した状態
で徐々に両端を近づけ完全に両端が一致したときに撚合
った数を５０ｃｍあたりのトルク撚数として測定し、１
ｍ当たりに換算して求めたものをいう。

【００４７】［実施例１］極限粘度が１．３１のポリト
リメチレンテレフタレートと極限粘度が０．５２のポリ
エチレンテレフタレートをそれぞれ別々に溶融し、紡糸
温度２６０℃で２４孔の複合紡糸口金よりポリエチレン
テレフタレート／ポリトリメチレンテレフタレートの重
量比率が５０／５０となるように吐出し、紡糸速度１４
００ｍ／分で引き取り、１６５ｄｔｅｘ２４フィラメン
トの未延伸糸を得た。さらに、ホットロール−熱板系延
伸機を用い、ホットロール温度７０℃、熱板温度１４５
℃、延伸倍率３．０で延伸して、５６ｄｔｅｘ２４フィ
ラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維
（延伸糸）を得た。

【００４８】得られたポリエステル系複合繊維と３３ｄ
ｔｅｘ１２フィラメントポリアミド延伸糸を引き揃え、
合撚機を用いて、Ｓ２００Ｔ／ｍ（Ｋ＝１８８７）で撚
糸し、引き続き図２に示される工程を使用して、以下の
条件で仮撚加工を施し、加工糸を得た。

【００４９】 加工速度 ：２００ｍ／ｍｉｎ（デリベリローラ７上での糸速） 延伸倍率 ：１．０３ 施撚体 ：フリクションディスク（セラミック製） 仮撚方向 ：Ｓ 仮撚数 ：３６８０Ｔ／ｍ ヒータ ：ホットプレート（２．５ｍ） 仮撚加工温度：１７５℃ 得られた加工糸のトルク撚数は２２１Ｔ／ｍであった。

【００５０】得られた加工糸を用いて、２８ゲージ、１
口編機で編成し、分散染料と酸性染料で一浴染色し、仕
上げ加工した結果、杢調で優美なシボ感があり、シャリ
ミのある触感を有するストレッチ性が良好であり、タイ
ツに好適な編地を得た。

【００５１】さらに、得られた加工糸を緯糸として用い
て織物を形成し、引き続き９７℃の熱水でリラックス精
練、１６０℃で仕上熱固定し、１／３のツイル織物を得
た。本発明の加工糸を使用した織物は優美なシボ感、シ
ャリミ、ソフト感を併せ持ち、ストレッチ性が良好であ
り、婦人向け洋装に好適なものであった。

【００５２】［実施例２］極限粘度が１．３１のポリト
リメチレンテレフタレートと極限粘度が０．５２のポリ
エチレンテレフタレートをそれぞれ別々に溶融し、紡糸
温度２６０℃で２４孔の複合紡糸口金よりポリエチレン
テレフタレート／ポリトリメチレンテレフタレートの重
量比率が５０／５０となるように吐出し、紡糸速度１４
００ｍ／分で引き取り、４９５ｄｔｅｘ６８フィラメン
トの未延伸糸を得た。さらに、ホットロール−熱板系延
伸機を用い、ホットロール温度７０℃、熱板温度１４５
℃、延伸倍率３．０で延伸して、１６５ｄｔｅｘ６８フ
ィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊
維（延伸糸）を得た。

【００５３】次いで、得られた１６５ｄｔｅｘ６８フィ
ラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維
（延伸糸）と１６５ｄｔｅｘ６８フィラメントのポリエ
チレンテレフタレート高配向を引き揃え、合撚機を用い
て、Ｓ１００Ｔ／ｍ（Ｋ＝１８１７）で撚糸加工を施し
た後、以下の条件で仮撚加工を施した。

【００５４】 加工速度 ：２００ｍ／ｍｉｎ（デリベリローラ７上での糸速） 延伸倍率 ：１．０３ 施撚体 ：フリクションディスク（セラミック製） 仮撚方向 ：Ｓ 仮撚数 ：２０１０Ｔ／ｍ ヒータ ：ホットプレート（２．５ｍ） 仮撚加工温度：１７５℃ 得られた加工糸のトルク撚数は１９８Ｔ／ｍであった。

【００５５】得られた加工糸を緯糸として用いて織物を
形成し、引き続き９７℃の熱水でリラックス精練、１６
０℃で仕上熱固定し、１／３のツイル織物を得た。本発
明の加工糸を使用した織物はハリ、コシ、反発性に富
み、優美なシボ感、ソフト感を併せ持ち、ストレッチ性
が良好であり、中厚地のアウターに好適なものであっ
た。

【００５６】［実施例３］実施例１で使用したものと同
じ５６ｄｔｅｘ２４フィラメントのサイドバイサイド型
ポリエステル系複合繊維（延伸糸）と３３ｄｔｅｘ１２
フィラメントのポリエチレンテレフタレート延伸糸を引
き揃えＳ３２０Ｔ／ｍ（Ｋ＝２６１９）で撚糸し、引き
続き図３に示される工程を使用して、以下の条件で仮撚
加工を施し、加工糸を得た。

【００５７】 加工速度 ：２００ｍ／ｍｉｎ（デリベリローラ７上での糸速） 延伸倍率 ：１．０３ 施撚体 ：フリクションディスク（セラミック製） 仮撚方向 ：Ｓ 仮撚数 ：３６８０Ｔ／ｍ ヒータ ：ホットプレート（２．５ｍ） 仮撚加工温度：１７５℃ 得られた加工糸のトルク撚数は３１２Ｔ／ｍであった。

【００５８】得られた加工糸を緯糸として用いて織物を
形成し、引き続き９７℃の熱水でリラックス精練、１６
０℃で仕上熱固定し、１／３のツイル織物を得た。本発
明の加工糸を使用した織物はハリ、コシ、反発性に富
み、優美なシボ感、ドライ感、清涼感を併せ持ち、スト
レッチ性が良好であり、春夏向けのアウターに好適なも
のであった。

【００５９】［実施例４］実施例１で使用したものと同
じ５６ｄｔｅｘ２４フィラメントのサイドバイサイド型
ポリエステル系複合繊維（延伸糸）と３３ｄｔｅｘ１２
フィラメントポリアミド延伸糸を引き揃え、合撚機を用
いて、Ｓ５０Ｔ／ｍ（Ｋ＝３７４）の先撚を施し、以下
の条件で仮撚加工を施した。

【００６０】 加工速度 ：２００ｍ／ｍｉｎ（デリベリローラ７上での糸速） 延伸倍率 ：１．０３ 施撚体 ：フリクションディスク（セラミック製） 仮撚方向 ：Ｓ 仮撚数 ：３６８０Ｔ／ｍ ヒータ ：ホットプレート（２．５ｍ） 仮撚加工温度：１７５℃ 得られた加工糸のトルク撚数は８８Ｔ／ｍであった。

【００６１】得られた加工糸を緯糸として用いて織物を
形成し、引き続き９７℃の熱水でリラックス精練、１６
０℃で仕上熱固定し、１／３のツイル織物を得た。本発
明の加工糸を使用した織物は、優美なシボ感がやや劣る
が、フラットな表面を有し、ハリ、コシ、反発性に富
み、ストレッチ性が良好であり、春夏向けの洋装、和装
に好適なものであった。

【００６２】［実施例５］実施例１で使用したものと同
じ５６ｄｔｅｘ２４フィラメントのサイドバイサイド型
ポリエステル系複合繊維（延伸糸）と３３ｄｔｅｘ１２
フィラメントポリアミド延伸糸を引き揃え、合撚機を用
いて、Ｓ４００Ｔ／ｍ（Ｋ＝３７７４）の先撚を施し、
以下の条件で仮撚加工を施した。

【００６３】 加工速度 ：２００ｍ／ｍｉｎ（デリベリローラ７上での糸速） 延伸倍率 ：１．０３ 施撚体 ：フリクションディスク（セラミック製） 仮撚方向 ：Ｓ 仮撚数 ：３６８０Ｔ／ｍ ヒータ ：ホットプレート（２．５ｍ） 仮撚加工温度：１７５℃ 得られた加工糸のトルク撚数は５２１Ｔ／ｍであった。

【００６４】得られた加工糸を緯糸として用いて織物を
形成し、引き続き９７℃の熱水でリラックス精練、１６
０℃で仕上熱固定し、１／３のツイル織物を得た。本発
明の加工糸を使用した織物は、表面に細かい凹凸が発生
し、ハリ、コシ、反発性に富み、強撚調のドライ感、清
涼感を併せ持ち、ストレッチ性が良好であり、春夏向け
の洋装、和装に好適なものであった。

【００６５】［比較例１］実施例１で使用したものと同
じ５６ｄｔｅｘ２４フィラメントのサイドバイサイド型
ポリエステル系複合繊維（延伸糸）をダブルツイスター
を用いてＳ２００Ｔ／ｍ（Ｋ＝１４９７）で撚糸加工を
施した。

【００６６】前記先撚工程で得た撚糸を以下の条件で仮
撚加工を施した。

【００６７】 加工速度 ：２００ｍ／ｍｉｎ（デリベリローラ７上での糸速） 延伸倍率 ：１．０３ 施撚体 ：フリクションディスク（セラミック製） 仮撚方向 ：Ｓ 仮撚数 ：３６８０Ｔ／ｍ ヒータ ：ホットプレート（２．５ｍ） 仮撚加工温度：１７５℃ 得られた加工糸のトルク撚数は２６１Ｔ／ｍであった。

【００６８】得られた加工糸を緯糸として用いて織物を
形成し、引き続き９７℃の熱水でリラックス精練、１６
０℃で仕上熱固定し、１／３のツイル織物を得た。本発
明の加工糸を使用した織物はストレッチ性に優れるが、
ハリコシ感に欠け、表面に細かい凹凸が発生し、外観品
位の悪いものであった。

【００６９】［比較例２］５６ｄｔｅｘ２４フィラメン
トのポリエチレンテレフタレート繊維（延伸糸）をダブ
ルツイスターを用いてＳ２００Ｔ／ｍ（Ｋ＝１４９７）
で撚糸加工を施した。

【００７０】前記先撚工程で得た撚糸を以下の条件で仮
撚加工を施した。

【００７１】 加工速度 ：２００ｍ／ｍｉｎ（デリベリローラ７上での糸速） 延伸倍率 ：１．０３ 施撚体 ：フリクションディスク（セラミック製） 仮撚方向 ：Ｓ 仮撚数 ：３６８０Ｔ／ｍ ヒータ ：ホットプレート（２．５ｍ） 仮撚加工温度：１７５℃ 得られた加工糸のトルク撚数は３４４Ｔ／ｍであった。

【００７２】得られた加工糸を緯糸として用いて織物を
形成し、引き続き９７℃の熱水でリラックス精練、１６
０℃で仕上熱固定し、１／３のツイル織物を得た。本発
明の加工糸を使用した織物はハリコシ感に欠け、表面に
細かい凹凸が発生し、外観品位が悪く、ストレッチ性に
劣るものであった。

【００７３】［比較例３］実施例１で使用したものと同
じ５６ｄｔｅｘ２４フィラメントのサイドバイサイド型
ポリエステル系複合繊維（延伸糸）と３３ｄｔｅｘ１２
フィラメントポリアミド延伸糸を引き揃え、合撚機を用
いて、Ｓ２００Ｔ／ｍ（Ｋ＝１８８７）の先撚を施し、
以下の条件で仮撚加工を施した。

【００７４】 加工速度 ：２００ｍ／ｍｉｎ（デリベリローラ７上での糸速） 延伸倍率 ：１．０３ 施撚体 ：フリクションディスク（セラミック製） 仮撚方向 ：Ｚ 仮撚数 ：３６８０Ｔ／ｍ ヒータ ：ホットプレート（２．５ｍ） 仮撚加工温度：１７５℃ 得られた加工糸のトルク撚数は３９８Ｔ／ｍであり、糸
長手方向に凹凸ムラがなく、ほぼ均一な嵩高な加工糸で
あった。

【００７５】得られた加工糸を用いて、２８ゲージ、１
口編機で編成し、ポリエステル用分散染料と酸性染料で
一浴染色し、仕上げ加工した結果、生地が嵩高であり、
シボ感に欠けた編地を得た。

【００７６】［比較例４］３３ｄｔｅｘのポリウレタン
系弾性繊維を予め２．８倍でドラフトし、５６ｄｔｅｘ
２４フィラメントのナイロン延伸糸と引き揃え、Ｓ２０
０Ｔ／ｍ（Ｋ＝１８８７）で撚糸し、続いて、図２の仮
撚工程を使用して実施例１と同様に以下の条件で仮撚加
工を施した。

【００７７】 加工速度 ：２００ｍ／ｍｉｎ（デリベリローラ７上での糸速） 延伸倍率 ：１．０３ 施撚体 ：フリクションディスク（セラミック製） 仮撚方向 ：Ｓ 仮撚数 ：３６８０Ｔ／ｍ ヒータ ：ホットプレート（２．５ｍ） 仮撚加工温度：１６５℃ 得られた加工糸のトルク撚数は２９８Ｔ／ｍであった。

【００７８】得られた加工糸を用いて、実施例１と同様
に、２８ゲージ、１口編機で編成し、酸性染料で染色、
仕上げ加工した結果、シャリミ感に劣り、優美なシボ感
に欠けた編地を得た。

【００７９】

【発明の効果】本発明の加工糸を用いることにより、生
地が薄く、ドレープ性、優美なシボ感、シャリミのある
触感を有するストレッチ布帛を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の加工糸の一例を示す概略側面図であ
る。

【図２】本発明の加工糸の製造方法の一例を示す概略模
式図である。

【図３】トルク撚数の測定方法を示す概略模式図であ
る。

【符号の説明】

（イ）：加工糸 （ロ）：ポリエステル系複合繊維 （ハ）：他の繊維 （ロ）：拘束部 （ハ）：開繊部 １：合撚糸 ２：ビリ止め装置 ３：リングテンサ ４：フィードローラ ５：ホットプレート ６：施撚体 ７：デリベリローラ ８：テイクアップローラ ９：加工糸 １０：荷重

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【手続補正書】

【提出日】平成１５年２月３日（２００３．２．３）

【手続補正１】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】特許請求の範囲

【補正方法】変更

【補正内容】

【特許請求の範囲】

【請求項６】構成成分の一方がポリエチレンテレフタレ
ートを主成分とし、他方の構成成分がポリトリメチレン
テレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型また
は偏芯シース・コア型であるポリエステル系複合繊維を
芯糸として用い、鞘糸として他の繊維を用い、芯糸と鞘
糸を引き揃え、先撚を施した後、上記先撚と同一方向に
仮撚を施すことを特徴とする加工糸の製造方法。

【請求項７】仮撚の際の温度Ｔ（℃）が１２０≦Ｔ≦２
１０であることを特徴とする請求項６に記載の加工糸の
製造方法。

【手続補正２】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００３１

【補正方法】変更

【補正内容】

【００３１】Ｋ＝Ｔｔ×Ｄ^1/2 ・・・（Ｉ） ただし、Ｔｔ：１ｍあたりの先撚数（Ｔ／ｍ） Ｄ：繊度（デシテックス）

【手続補正３】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００４６

【補正方法】変更

【補正内容】

【００４６】なお実施例中の極限粘度（η）は次の方法
で求めた。ただし、本発明がこれら実施例により限定さ
れるものではない。 ［極限粘度（η）］オルソクロロフェノール１０ｍｌに
対し試料０．１０ｇを溶解し、温度２５℃においてオス
トワルド粘度計を用いて測定した。

【手続補正４】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００４９

【補正方法】変更

【補正内容】

【００４９】 加工速度 ：２００ｍ／ｍｉｎ（デリベリローラ７上での糸速） 延伸倍率 ：１．０３ 施撚体 ：フリクションディスク（セラミック製） 仮撚方向 ：Ｓ 仮撚数 ：３６８０Ｔ／ｍ ヒータ ：ホットプレート（２．５ｍ） 仮撚加工温度：１７５℃

【手続補正５】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００５４

【補正方法】変更

【補正内容】

【００５４】 加工速度 ：２００ｍ／ｍｉｎ（デリベリローラ７上での糸速） 延伸倍率 ：１．０３ 施撚体 ：フリクションディスク（セラミック製） 仮撚方向 ：Ｓ 仮撚数 ：２０１０Ｔ／ｍ ヒータ ：ホットプレート（２．５ｍ） 仮撚加工温度：１７５℃

【手続補正６】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００５７

【補正方法】変更

【補正内容】

【００５７】 加工速度 ：２００ｍ／ｍｉｎ（デリベリローラ７上での糸速） 延伸倍率 ：１．０３ 施撚体 ：フリクションディスク（セラミック製） 仮撚方向 ：Ｓ 仮撚数 ：３６８０Ｔ／ｍ ヒータ ：ホットプレート（２．５ｍ） 仮撚加工温度：１７５℃

【手続補正７】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００６０

【補正方法】変更

【補正内容】

【００６０】 加工速度 ：２００ｍ／ｍｉｎ（デリベリローラ７上での糸速） 延伸倍率 ：１．０３ 施撚体 ：フリクションディスク（セラミック製） 仮撚方向 ：Ｓ 仮撚数 ：３６８０Ｔ／ｍ ヒータ ：ホットプレート（２．５ｍ） 仮撚加工温度：１７５℃

【手続補正８】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００６３

【補正方法】変更

【補正内容】

【００６３】 加工速度 ：２００ｍ／ｍｉｎ（デリベリローラ７上での糸速） 延伸倍率 ：１．０３ 施撚体 ：フリクションディスク（セラミック製） 仮撚方向 ：Ｓ 仮撚数 ：３６８０Ｔ／ｍ ヒータ ：ホットプレート（２．５ｍ） 仮撚加工温度：１７５℃

【手続補正９】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００６７

【補正方法】変更

【補正内容】

【００６７】 加工速度 ：２００ｍ／ｍｉｎ（デリベリローラ７上での糸速） 延伸倍率 ：１．０３ 施撚体 ：フリクションディスク（セラミック製） 仮撚方向 ：Ｓ 仮撚数 ：３６８０Ｔ／ｍ ヒータ ：ホットプレート（２．５ｍ） 仮撚加工温度：１７５℃

【手続補正１０】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００７１

【補正方法】変更

【補正内容】

【００７１】 加工速度 ：２００ｍ／ｍｉｎ（デリベリローラ７上での糸速） 延伸倍率 ：１．０３ 施撚体 ：フリクションディスク（セラミック製） 仮撚方向 ：Ｓ 仮撚数 ：３６８０Ｔ／ｍ ヒータ ：ホットプレート（２．５ｍ） 仮撚加工温度：１７５℃

【手続補正１１】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００７４

【補正方法】変更

【補正内容】

【００７４】 加工速度 ：２００ｍ／ｍｉｎ（デリベリローラ７上での糸速） 延伸倍率 ：１．０３ 施撚体 ：フリクションディスク（セラミック製） 仮撚方向 ：Ｚ 仮撚数 ：３６８０Ｔ／ｍ ヒータ ：ホットプレート（２．５ｍ） 仮撚加工温度：１７５℃ 得られた加工糸は、糸長手方向に凹凸ムラがなく、ほぼ
均一な嵩高な加工糸であった。

【手続補正１２】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００７７

【補正方法】変更

【補正内容】

【００７７】 加工速度 ：２００ｍ／ｍｉｎ（デリベリローラ７上での糸速） 延伸倍率 ：１．０３ 施撚体 ：フリクションディスク（セラミック製） 仮撚方向 ：Ｓ 仮撚数 ：３６８０Ｔ／ｍ ヒータ ：ホットプレート（２．５ｍ） 仮撚加工温度：１６５℃

【手続補正１３】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】図３

【補正方法】削除

【手続補正１４】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】符号の説明

【補正方法】変更

【補正内容】

【符号の説明】 （イ）：加工糸 （ロ）：ポリエステル系複合繊維 （ハ）：他の繊維 （ロ）：拘束部 （ハ）：開繊部 １：合撚糸 ２：ビリ止め装置 ３：リングテンサ ４：フィードローラ ５：ホットプレート ６：施撚体 ７：デリベリローラ ８：テイクアップローラ ９：加工糸

【手続補正１５】

【補正対象書類名】図面

【補正対象項目名】図３

【補正方法】削除

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浦中 宏典 滋賀県大津市園山１丁目１番２号 東レ・ デュポン株式会社滋賀事業場内 Ｆターム(参考） 4L036 MA05 MA06 MA33 PA05 PA21 UA01 UA07

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】芯糸と鞘糸からなる加工糸であって、芯糸
   に構成成分の一方がポリエチレンテレフタレートを主成
   分とし、他方の構成成分がポリトリメチレンテレフタレ
   ートを主成分とするサイドバイサイド型または偏芯シー
   ス・コア型であるポリエステル系複合繊維が用いられ、
   鞘糸に他の繊維が用いられてなり、先撚と同一方向に仮
   撚が施されてなることを特徴とする加工糸。
2. 【請求項２】下記一般式（Ｉ）で定義される撚係数Ｋ
   が、４４０≦Ｋ≦３５００となるように先撚が施されて
   なることを特徴とする請求項１に記載の加工糸。 Ｋ＝Ｔｔ×Ｄ^1/2 ・・・（Ｉ） ただし、Ｔｔ：１ｍあたりの先撚数（Ｔ／ｍ） Ｄ：繊度（デシテックス）
3. 【請求項３】前記ポリエステル系複合繊維のポリエチレ
   ンテレフタレート／ポリトリメチレンテレフタレートの
   重量比率が３０／７０〜７０／３０であることを特徴と
   する請求項１または２に記載の加工糸。
4. 【請求項４】他の繊維がポリアミド繊維であることを特
   徴とする請求項１〜３のいずれかに記載の加工糸。
5. 【請求項５】他の繊維がポリエチレンテレフタレート繊
   維であることを特徴とする請求項１〜４のいずれかに記
   載の加工糸。
6. 【請求項６】トルク撚数Ｔｏ（Ｔ／ｍ）が１６０≦Ｔｏ
   ≦４２０であることを特徴とする請求項１〜５に記載の
   加工糸。
7. 【請求項７】構成成分の一方がポリエチレンテレフタレ
   ートを主成分とし、他方の構成成分がポリトリメチレン
   テレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型また
   は偏芯シース・コア型であるポリエステル系複合繊維を
   芯糸として用い、鞘糸として他の繊維を用い、芯糸と鞘
   糸を引き揃え、先撚を施した後、上記先撚と同一方向に
   仮撚を施すことを特徴とする加工糸の製造方法。
8. 【請求項８】仮撚の際の温度Ｔ（℃）が１２０≦Ｔ≦２
   １０であることを特徴とする請求項７に記載の加工糸の
   製造方法。