JP2003235956A - 湿潤時に潤滑性を有する医療用具及びその製造方法 - Google Patents

湿潤時に潤滑性を有する医療用具及びその製造方法

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JP2003235956A JP2002037808A JP2002037808A JP2003235956A JP 2003235956 A JP2003235956 A JP 2003235956A JP 2002037808 A JP2002037808 A JP 2002037808A JP 2002037808 A JP2002037808 A JP 2002037808A JP 2003235956 A JP2003235956 A JP 2003235956A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ポリアミドを表面に含有する医療用具におい
て、湿潤時に潤滑性を発現し、かつ繰り返し摺動しても
容易に潤滑性が低下しない医療用具およびその製造方法
を提供する。 【解決手段】 ポリアミドを含む表面を有する医療用具
の表面に、ウレタン系高分子物質を含有する層を有し、
次いで、該ウレタン系高分子層の上に、ポリビニルピロ
リドン層を有することを特徴とする湿潤時に潤滑性を有
する医療用具およびその製造方法であって、ポリアミド
を表面に含有する医療用具の表面に、該ポリアミドを膨
潤または溶解する化合物を含む溶液に浸漬した後、ウレ
タン系高分子物質を含有する被膜を形成させ、次いで、
ポリビニルピロリドンを含有する被膜を形成させる湿潤
時に潤滑性を有する医療用具の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、湿潤時に潤滑性を
有する医療用具およびその製造方法に関し、さらに詳し
くは、ポリアミドを表面に含有する医療用具、例えば、
カテーテル、ガイドワイヤーまたはバルーンカテーテル
の表面に親水性高分子物質を被覆して、水または体液と
の接触により、優れた表面潤滑性を発現し、繰り返し摺
動によっても容易に潤滑性が低下しない医療用具ならび
にその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、医療分野では血管、消化管、
尿管、気管、胆管あるいはその他の体腔、あるいは組織
中に挿入されるカテーテル、その内腔に挿入されるガイ
ドワイヤー、あるいは血管内の狭窄部を治療するため、
あるいはバルーンを膨らますことにより狭窄部を拡張
し、狭窄部末梢側における血流の改善を図るためのPTCA
バルーンカテーテル、PTAバルーンカテーテル等の医療
器具が広範囲に使用されている。これらのカテーテル、
バルーンカテーテル、カテーテル導入管、ガイドワイヤ
ー等の各種医療用具には、低摩擦性の親水性被覆を設け
ることが有用である。これらの医療器具表面を低摩擦性
とすることにより、血管、消化管、尿管、気管、胆管あ
るいはその他の体腔及び通路などに、これらの医療器具
は容易に入り込む。
【0003】所望の低摩擦性表面を設けるために、医療
用具の基材表面上に非反応性イソシアネート基を有する
ポリウレタンの第1被覆層を形成させ、その表面にポリ
ビニルピロリドンを反応させて、前記非反応性イソシア
ネート基と化学的に結合した第2被覆層を形成させるこ
とにより、湿潤時に表面に潤滑性を有するようにした基
材が公知である(特公昭59-19582号公報)。しかしなが
ら、この方法では基材はポリウレタンであって、ポリウ
レタン以外の材料、例えばポリアミド系高分子物質を基
材とした場合、前記被覆層との接着性が低いため、被覆
層が剥離しやすく、繰り返し摩擦擦過するに従い、潤滑
性が低下するという問題を有している。
【0004】基材がポリウレタンである医療用具の表面
に潤滑性を付与させるためには、その他、種々の試みが
行われている。例えば、ポリウレタン基材表面上に、未
反応イソシアネート基を生成させたのちに、親水性重合
体をカップリングさせることにより、安定で、かつ、耐
加水分解抵抗性を示す潤滑性表面を設ける方法(特開昭
59-81341号公報)、ポリウレタン基材に遊離イソシアネ
ート基を含む接着性被膜を形成し、N−ビニルピロリド
ンと活性水素を有するエチレン性不飽和モノマーとの共
重合体を化学的に結合させることによって、親水性被覆
を設ける方法(特開昭63-238170号公報)、ポリウレタ
ン基材に遊離イソシアネート基を含む接着性被膜を形成
し、N−ビニルピロリドンと活性水素を有するエチレン
性不飽和モノマーとの共重合体を化学的に結合させるこ
とによって、親水性被覆を設ける方法(特開昭63-23817
0号公報)、基材表面がポリウレタンからなるカテーテ
ルの表面をビニルピロリドンの重合体とポリウレタンと
よりなる組成物を被覆する方法(特開平2-246979号公
報)などが公知である。しかしながら、これらの潤滑性
付与剤をポリアミド系高分子物質である基材に施して
も、満足すべき潤滑性が得られない。
【0005】また、表面が下記重合体からなる物品の表
面を、1分子当たり2個以上のイソシアネート基を有す
る化合物を含有する溶液と接触させた後に、ポリビニル
ピロリドンを含有する溶液と接触させることにより、湿
潤時に低い摩擦係数を有する表面を有する物品の製造方
法も公知である(特開昭58-193767号公報)。しかしな
がら、対象とする重合体は、ラテックスゴム、その他の
ゴム、ポリ塩化ビニル、その他のビニル重合体、ポリエ
ステルおよびポリアクリレートであり、ポリアミド系重
合体を対象とした場合、上記イソシアネート基含有溶液
およびポリビニルピロリドン溶液と接触させることによ
り得られた被覆層は、剥離しやすく、繰り返し摺動する
ことにより、かつ、徐々に抵抗が上昇するという問題を
有している。
【0006】また、親水性ポリマーとジイソシアネー
ト、親水性ポリエーテルグリコール、及び鎖延長剤の反
応生成物であるエラストマーセグメント親水性ポリエー
テルウレタンからなる潤滑性被膜が開示されている(特
開平3-21677号公報)。ポリマー基材としては、ポリテ
トラフルオロエチレン、ポリエステル、ポリアミド、P
VC、ポリアクリレート、ポリスチレン、ラテックス、
およびポリウレタンが例示されている。しかし、これら
も同様にアミド系高分子物質と親水性ポリエーテルウレ
タンとの接着性は十分でなく、湿潤時に潤滑性を発現し
ても、容易に摺動抵抗が上昇する。
【0007】さらに、種々の基材上に親水性ポリマーと
安定用ポリマーを含んでなる親水性被膜を設けることが
公知である(特表平6-505029号公報)。ポリアミド系高
分子物質の基材に関しては、ポリアミド系高分子物質の
トリフルオロエタノール溶液なる「安定用ポリマー」で
被覆した後に、ポリビニルピロリドン、ポリアミド系高
分子物質との混合溶液を上塗りした水に不溶な被膜が紹
介されている。しかしながら、ポリアミド系高分子物
質のトリフルオロエタノール溶液に、ポリアミド系高分
子チューブを浸漬すると、トリフルオロエタノールの溶
解性が強いため、チューブが変形する可能性がある、
ポリビニルピロリドンとポリアミド系高分子物質との相
溶性はよくないため、不溶性の被膜であっても繰り返し
摺動によって、ポリビニルピロリドンの層は容易に剥離
し、摩擦抵抗が上昇すると考えられる。
【0008】また、有機基材(例えば、ポリエーテルブ
ロックポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテルウレタ
ン、ポリエステルウレタン、天然ゴム、合成ゴム、ラテ
ックス、ゴム、ポリエステル-ポリエーテルコポリマ
ー、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタラートな
ど)上にポリビニルピロリドンと架橋ポリウレタンから
なる親水性の被膜を設けることが公知である(特開平5-
156203号公報)。この親水性の被膜も、アミド系高分子
物質を表面に含有する医療用具では、湿潤時に潤滑性を
発現しても容易に摺動抵抗が上昇する。
【0009】合成樹脂膜の表面にイソシアネート基を介
して結合されたポリビニルピロリドン分子が相互に重合
されたもので形成された親水性被膜が既に開示されてい
る(特開平7-80078号公報)。この親水性被膜も、合成
樹脂膜がポリウレタンであれば、良好な潤滑性、耐久性
を有するが、イソシアネート基と実質的に反応しないア
ミド系高分子物質を表面に含有する医療用具表面では十
分な効果を発現しない。
【0010】ポリエーテルブロックアミドからなる合成
樹脂膜表面にイソシアネート基を介して結合されたポリ
ビニルピロリドンからなるガイドワイヤーが開示されて
いる(特開平7-124263号公報)。また、イソシアネート
基を含む溶液を接触させる前にポリエーテルブロックポ
リアミドを膨潤させる溶媒で処理する旨も開示されてい
る。このときの溶媒として、メチルエチルケトン、トリ
クレン、クロロホルム等が示されている。しかしなが
ら、エーテル結合を有さない一般的なポリアミド系高分
子物質、例えば、ナイロン12やナイロン6、6、ナイ
ロン6では、これらの溶媒を用いてもコーティング後に
おける耐久性は不十分である。
【0011】しかしながら、これらの従来技術がアミド
系高分子物質を表面に含有する医療用具で十分な効果を
発現しなかったのは、この材料では、イソシアネート基
等の官能基と反応せずに、物理的に湿潤時に潤滑性を発
現する被覆が積層しているのみであり、その結果、繰り
返し摺動により、この被膜が剥離し、潤滑性が急激に低
下するためであると考えられる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、アミ
ド系高分子物質を表面に含有する医療用具において、湿
潤時に潤滑性を発現し、かつ繰り返し摺動しても容易に
潤滑性が低下しない医療用具及びその製造方法を提供す
ることである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決するために種々鋭意検討した結果、アミド系高分子
物質を表面に含有する医療用具に、該材料を膨潤または
溶解する化合物を含む溶液に浸漬した後に、ウレタン系
高分子物質を含む被膜を形成し、その後にポリビニルピ
ロリドンを含む被膜を形成することにより得られた被膜
が、湿潤時に潤滑性を有し、繰り返し摺動した場合にお
いてもその潤滑性が低下しないことを見いだし、本発明
に到達した。
【0014】すなわち、本発明はポリアミドを表面に含
有する医療用具の表面を、該ポリアミドを膨潤または溶
解する化合物を含む溶液に浸漬した後、ウレタン系高分
子物質を含有する被膜を形成させ、次いで、ポリビニル
ピロリドンを含有する被膜を形成させることを特徴とす
る湿潤時に潤滑性を有する医療用具の製造方法である。
【0015】また、本発明はポリアミドを含む表面を有
する医療用具の表面に、ウレタン系高分子物質を含有す
る層を有し、次いで、該ウレタン系高分子層の上に、ポ
リビニルピロリドン層を有することを特徴とする湿潤時
に潤滑性を有する医療用具である。
【0016】
【発明の実施の態様】本発明では、まず、ポリアミドを
表面に含有する医療用具を、ポリアミドを膨潤または溶
解する化合物を含む液体に浸漬した後に、ウレタン系高
分子物質を含有する溶液に浸漬する。これにより、ポリ
アミドを表面に含有する医療用具表面に強固に接着した
ウレタン系高分子物質を含有する被膜が得られる。そし
て、ポリビニルピロリドンを含有する溶液に浸漬するこ
とにより、ウレタン系高分子物質を含有する被膜上にポ
リビニルピロリドンを含有する湿潤時に潤滑性を有する
被膜が得られる。
【0017】本発明における医療器具とは、その表面に
潤滑性を必要とする医療器具であって、具体的にはガイ
ドワイヤー、PTCAバルーンカテーテル、PTAバル
ーンカテーテル、造影用カテーテル、カテーテル導入
管、マイクロカテーテルなどが挙げられる。また、ポリ
アミドを表面に含有する医療用具とは、最外表面にポリ
アミド層を有する上記医療器具であって、基材本体がポ
リアミドからなるか、あるいは基材本体は金属、他の高
分子物質、例えば、ポリウレタン、ポリテトラフルオロ
エチレン、ポリエステル、ポリアミド、PVC、ポリア
クリレート、ポリスチレン、ラテックスなどであるが、
その表面にポリアミドからなる層が設けられたものが挙
げられる。
【0018】本発明に使用するポリアミドとしては、ナ
イロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12
またはこれらの共重合体が例示される。このようなポリ
アミドとしては、商品名、ダイアミド(ダイセルテグザ
社製)、リルサン(アトフィナ社製)、UBEナイロン103
0B:(宇部興産社製)、UBEナイロン2026B:(宇部興産
社製)などが挙げられる。
【0019】本発明では、必要に応じて、ポリアミドと
他の高分子物質とのブレンド、2種以上のポリアミドの
混合物も好適に使用される。ポリアミドとポリウレタン
およびポリアミドと低密度ポリエチレンのブレンドなど
が例示される。
【0020】また、基材は表面にポリアミドを含むもの
であれば、単層または多層被覆構造を有していてもよ
い。これらのポリアミド層を形成する方法としては、種
々の方法が採用できる。基材としては、金属、ポリウレ
タン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、ポ
リアミド、PVC、ポリアクリレート、ポリスチレン、
ラテックスなどであるが、その表面にポリアミドが被覆
されたものなどが例示され、ポリアミドを被覆するに
は、溶媒として、トリフルオロエタノール、クレゾール
などがあり、溶融被覆など、当該技術分野で公知である
方法が採用できる。
【0021】第1工程:本発明において、ポリアミドを
膨潤または溶解する化合物とは、上記ポリアミドを室温
において、処理前の重量を処理後、20〜40重量%増加さ
せる作用を有するか、あるいは肉眼にて観察して、表面
が若干白化した状態にさせ得る作用を有する化合物をい
う。具体的には、1,1,1,3,3,3−ヘキサフル
オロ−2−プロパノール(HFPともいう)、トリフルオ
ロエタノール(TFEともいう)などのフッ素系溶媒、クロ
ロホルムなどの塩素系溶媒、フェノール、クレゾール、
アニリン、ニトロベンゼンなどの芳香族系有機溶媒、蟻
酸等の有機酸、塩酸、硝酸、クロム酸等の無機酸などが
挙げられる。特に好ましくは、1,1,1,3,3,3
−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、クレゾールがあ
る。これらの溶媒の選択は、基材であるポリアミドの化
学組成によって適宜選択される。
【0022】ポリアミドを膨潤または溶解する化合物
は、そのままで使用しても構わないが、著しく膨潤、溶
解または変形が生じる場合には、適宜溶液として使用す
ることもできる。この溶媒としては、クロロホルム、テ
トラヒドロフラン等の有機溶媒など様々な溶媒を選択す
ることができるが、基材であるポリアミドに悪影響を与
えるものは避けるべきである。
【0023】本発明では、かかるポリアミドを膨潤また
は溶解する化合物の溶液に、ポリアミドを表面に含有す
る医療用具を浸漬する。浸漬は通常、室温で10〜60
秒間行う。その後、室温で1〜12時間放置することが
好ましい。
【0024】第2工程:本発明で使用するウレタン系高
分子物質を含有する溶液とは、ウレタン系高分子物質を
通常、1.0〜10.0重量%含有する溶液である。ウ
レタン系高分子物質としては、通常のエーテル系ポリウ
レタン、商品名、ペレセン(ダウケミカル社製)、テコ
フレックス(サーメディックス社製)、テコタン(サー
メディックス社製)等が使用でき、溶媒としてはメチル
エチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムア
ミド、ジメチルスルホキシド等が使用される。濃度は
1.0〜10重量%、好ましくは、1.0〜4.0重量
%である。1.0重量%未満であれば、被膜の厚さが十
分とならず、10重量%を超えると、溶液の粘度が高く
なりすぎて、均一に塗布できなくなる。該溶液には、ポ
リイソシアネートが含有していてもよい。ポリイソシア
ネートを含有することにより、ウレタン系高分子物質が
架橋し、ポリアミドを含有する表面との接着性が向上す
るものと考えられる。ポリイソシアネートとしては、ジ
フェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシア
ネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイ
ソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシ
クロヘキシルメタンジイソシアネートが使用される。
【0025】本発明では、第1工程に次いで、ウレタン
系高分子物質および必要によりポリイソシアネートを含
有する溶液に浸漬することにより、ウレタン系高分子物
質を含有する被膜を形成する。
【0026】第3工程:本発明では、次いで、ポリビニ
ルピロリドンを含有する溶液に浸漬することにより、ポ
リビニルピロリドンを含有する被膜を形成する。ポリビ
ニルピロリドンとしては、平均分子量が30,000以上のも
のが使用される。平均分子量が30,000未満であれば、湿
潤時に潤滑性を発現するが、繰り返し摺動により容易に
剥離し抵抗が上昇する。また、ポリビニルピロリドンを
含有する溶液の媒体としては、クロロホルム、メチルア
ルコール、エチルアルコール等が使用でき、このときの
ポリビニルピロリドンの濃度は通常、1.0〜5.0重
量%である。このポリビニルピロリドンを含有する溶液
は、ウレタン系高分子物質、あるいはポリイソシアネー
トを含有していてもよい。ウレタン系高分子物質として
は上記したウレタン系高分子物質などが使用でき、ポリ
イソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシア
ネート、トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソ
シアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチ
レンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソ
シアネートなどが使用される。これらの化合物を含有す
ることにより、ポリビニルピロリドンの被膜が強化さ
れ、初期の摺動抵抗は若干上昇するが、繰り返し摺動に
対する耐性が向上し、容易に摺動抵抗が上昇しなくな
る。
【0027】第4工程:本発明では上記被覆を設けた
後、基材を加熱処理する。温度は60〜120℃であり、時
間は60〜120分間である。加熱処理を施さないと、ポリ
イソシアネートの反応性が低いため、剥離しやすくな
る。
【0028】
【実施例】次に、実施例を用いて本発明を詳細に説明す
る。これらの実施例では、表面潤滑性試験は、容器A、
治具B、錘Cと引張試験機(インストロン5565型)を用い
る(図1参照)。約20cmの長さにカットし、内部に
芯線を通したポリアミドチューブを、生理食塩水で満た
した容器Aの所定位置に配置し、その上部を引張試験機
に固定する。次いで、治具B(表面はポリウレタン)に1
00gの錘Cを乗せ、ポリアミドチューブに荷重をかけ
る。その後、引張試験機を用いて速度500mm/分で
繰り返し上下させ、所定繰り返し回数における摩擦抵抗
を測定した。摩擦抵抗値(g)は、上昇時の応力と下降
時の応力の和の2分の1とした。
【0029】実施例1 HFPをクロロホルムで希釈した溶液(HFP濃度5容
量%)に、外径約0.9mm、長さ20cmのポリアミ
ド (ナイロン12:ダイセルテグザ社製ダイアミド)チュ
ーブを10秒間浸漬した後、室温で1時間乾燥させた。
次いで、ポリウレタン(ダウケミカル社製ペレセン2363
80AE)3.0重量%および4,4−ジフェニルメタンジ
イソシアネート1.0重量%のテトラヒドロフラン溶液
に該チューブを10秒間浸漬し、室温で1時間乾燥させ
た。次いで、ポリビニルピロリドン(ISP社製プラスドン
K-90)3.0重量%のクロロホルム溶液に該チューブを
10秒間浸漬し、室温で1時間乾燥させた。その後、6
0℃で1時間加熱処理した。このようにして得られたポ
リアミドチューブを表面潤滑性試験に供した。その摩擦
抵抗値を表1に示す。
【0030】実施例2 クレゾールをクロロホルムで希釈した溶液(クレゾール
濃度5容量%)に、外径約0.9mm、長さ20cmのポ
リアミド (ナイロン12:ダイセルテグザ社製ダイアミ
ド)チューブを10秒間浸漬した後室温で1時間乾燥させ
た。次いで、ポリウレタン(ダウケミカル社製ペレセン2
363 80AE)3.0重量%、4,4−ジフェニルメタンジ
イソシアネート1.0重量%のテトラヒドロフラン溶液
に10秒間浸漬し、室温で1時間乾燥させた後、ポリビ
ニルピロリドン(ISP社製プラスドンK−90)3.
0重量%のクロロホルム溶液に10秒間浸漬し、室温で
1時間乾燥させた。その後、60℃で1時間加熱処理し
た。このようにして得られたポリアミドチューブを表面
潤滑性試験に供した。その摩擦抵抗値を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】比較例1 ポリアミドチューブ(実施例1と同様)を被覆なしの状
態で表面潤滑性試験に供した。その摺動抵抗値を表2に
示す。
【0033】比較例2 ポリアミドチューブ(実施例1と同様)をポリウレタン
(ダウケミカル社製ペレセン2363 80AE)3.0重量%お
よび4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート1.0
重量%のテトラヒドロフラン溶液に、10秒間浸漬し、
室温で1時間乾燥させた(第2工程)。その後、60℃
で1時間加熱処理した(第4工程)。このようにして得
られたポリアミドチューブを表面潤滑性試験に供した。
その摩擦抵抗値を表2に示す。
【0034】比較例3 ポリアミドチューブ(実施例1と同様)をポリウレタン
(ダウケミカル社製ペレセン2363 80AE)3.0重量%お
よび4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート1.0
重量%のテトラヒドロフラン溶液に、10秒間浸漬し、
室温で1時間乾燥させた(第2工程)。次いで、ポリビ
ニルピロリドン(ISP社製プラスドンK−90)3.
0重量%のクロロホルム溶液に10秒間浸漬し、室温で
1時間乾燥させた(第3工程)。その後、60℃で1時間
加熱処理した(第4工程)。このようにして得られたポ
リアミドチューブを表面潤滑性試験に供し、その摩擦抵
抗を表2に示す。
【0035】比較例4 ポリアミドチューブ(実施例1と同様)をポリビニルピ
ロリドン(ISP社製プラスドンK−90)3.0重量
%のクロロホルム溶液に10秒間浸漬し、室温で1時間
乾燥させた(第3工程)。その後、60℃で1時間加熱
処理した(第4工程)。このようにして得られたポリア
ミドチューブを表面潤滑性試験に供し、その摩擦抵抗を
表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】実施例3および4 実施例1におけるHFPをTFEまたはクロロホルムに
代えることを除いて、実施例1と同様に被覆処理を行っ
た。このようにして得られたポリアミドチューブを表面
潤滑性試験に供した。その摩擦抵抗値を表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】実施例5 実施例1におけるポリアミド(ナイロン12:ダイセルテ
グザ社製ダイアミド)チューブをポリアミド(ナイロン1
1:アトフィナ社製リルサン)チューブに代えて、実施例
1と同様にして溶媒処理(第1工程 これは60秒間浸漬
した)、ポリウレタンおよびジイソシアネート溶液処理
(第2工程)、ポリビニルピロリドン溶液処理(第3工
程)および加熱処理(第4工程)を実施した。このよう
にして得られたポリアミドチューブを表面潤滑性試験に
供し、その摩擦抵抗を表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】表1〜4から明らかなように、本発明によ
り被覆されたポリアミドチューブ(実施例1〜5)はい
ずれも表面潤滑性に優れ、摩擦耐久性に優れている。こ
れに対して、比較例1、2のポリアミドチューブは摺動
初期から潤滑性が悪く、また、比較例3、4では摺動初
期の潤滑性は本発明の被覆を行ったポリアミドチューブ
に近い摩擦抵抗値を示したが、その後、摺動回数を増加
させることによって摩擦抵抗値が大きくなり摩擦耐久性
が悪くなった。
【0042】
【発明の効果】本発明では、ポリアミドを膨潤または溶
解する化合物を含有する溶液に浸漬することにより、ポ
リアミドを含有する表面とウレタン系高分子物質を含有
する被膜との接着性が向上するため、ウレタン系高分子
物質を含有する被膜を形成した後に、ポリビニルピロリ
ドンを含有する被膜を形成すれば、湿潤時に潤滑性を有
するだけでなく、繰り返し摺動によっても容易にポリビ
ニルピロリドンを含有する被膜が剥離しにくくなり、潤
滑性が低下しないものとなる。したがって、本発明の医
療器具は、水または体液との接触によっても容易に溶出
せず、持続的な潤滑性を発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明方法により得られた医療用具の表面潤
滑性試験の説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4C081 AC08 AC09 AC10 BB05 CA062 CA212 CA232 CB042 DA03 DB03 DC04

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリアミドを表面に含有する医療用具の
    表面を、該ポリアミドを膨潤または溶解する化合物を含
    む溶液に浸漬した後、ウレタン系高分子物質を含有する
    被膜を形成させ、次いで、ポリビニルピロリドンを含有
    する被膜を形成させることを特徴とする湿潤時に潤滑性
    を有する医療用具の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記ポリアミドは、ナイロン6、ナイロ
    ン66、ナイロン11、ナイロン12およびこれらの共
    重合体からなる群から選ばれたポリマーである、請求項
    1記載の医療用具の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記アミド系高分子物質を膨潤または溶
    解する化合物は、フッ素系溶媒、塩素系溶媒、芳香族系
    有機溶媒、有機酸または無機酸である、請求項1記載の
    医療用具の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記アミド系高分子物質を膨潤または溶
    解する化合物は、1,1,1,3,3,3−ヘキサフル
    オロ−2−プロパノール、フェノール、クレゾール、テ
    トラフルオロエタノール、クロロホルムおよび蟻酸から
    なる群から選択される1種以上の化合物である、請求項
    1記載の医療用具の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記ウレタン系高分子物質を含有する被
    膜は、ウレタン系高分子物質とポリイソシアネートとを
    含むものである、請求項1記載の医療用具の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記ポリビニルピロリドンを含む被膜
    は、ポリビニルピロリドンとウレタン系高分子物質との
    混合物、あるいはポリビニルピロリドンとポリイソシア
    ネートの混合物を含有するものである、請求項1記載の
    医療用具の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記医療用具は、カテーテル、ガイドワ
    イヤーまたはバルーンカテーテルである、請求項1記載
    の医療用具。
  8. 【請求項8】 ポリアミドを表面に有する医療用具の表
    面に、ウレタン系高分子物質を含有する層を有し、次い
    で、該ウレタン系高分子層の上に、ポリビニルピロリド
    ン層を有することを特徴とする湿潤時に潤滑性を有する
    医療用具。
  9. 【請求項9】 前記アミド系高分子物質は、ナイロン
    6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12または
    これらの共重合体からなる群から選択されたポリマーで
    ある、請求項8記載の医療用具。
  10. 【請求項10】 前記医療用具は、カテーテル、ガイド
    ワイヤーまたはバルーンカテーテルである、請求項8記
    載の医療用具。
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