JP2003221359A - ジカルボン酸の製造方法 - Google Patents

ジカルボン酸の製造方法

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JP2003221359A
JP2003221359A JP2002020616A JP2002020616A JP2003221359A JP 2003221359 A JP2003221359 A JP 2003221359A JP 2002020616 A JP2002020616 A JP 2002020616A JP 2002020616 A JP2002020616 A JP 2002020616A JP 2003221359 A JP2003221359 A JP 2003221359A
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Hiroyuki Miura
裕幸 三浦
Akihiro Kuwana
章博 桑名
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Daicel Chemical Industries Ltd
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    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01DSEPARATION
    • B01D15/00Separating processes involving the treatment of liquids with solid sorbents; Apparatus therefor
    • B01D15/08Selective adsorption, e.g. chromatography
    • B01D15/26Selective adsorption, e.g. chromatography characterised by the separation mechanism
    • B01D15/36Selective adsorption, e.g. chromatography characterised by the separation mechanism involving ionic interaction
    • B01D15/361Ion-exchange

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  • Analytical Chemistry (AREA)
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  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 シクロアルカン類をイミド系化合物触媒存在
下に酸素酸化して得られた反応混合物からシクロアルカ
ン類に対応するジカルボン酸を取得するに際し、前記イ
ミド系化合物又はその分解生成物を効率よく分離除去す
る。 【解決手段】 ジカルボン酸の製造方法は、シクロアル
カン類を、下記式(I) [式中、nは0又は1を示す。Xは酸素原子又は−OR
基(Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を示す)
を示す]で表される環状イミド骨格を有するイミド系化
合物の存在下、酸素と接触させて得られた反応混合物か
ら、前記シクロアルカン類に対応するジカルボン酸を得
るジカルボン酸の製造方法であって、前記反応混合物を
イオン交換樹脂処理に付し、前記シクロアルカン類に対
応するジカルボン酸と前記イミド系化合物又は該イミド
系化合物に由来する分解生成物とを分離する工程を含
む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリアミドやポリ
エステルの原料、精密化学品の中間原料等として有用な
ジカルボン酸の製造方法に関し、より詳細には、シクロ
アルカン類を触媒の存在下で酸素により酸化開裂して対
応するジカルボン酸を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ジカルボン酸の製造法として、シクロア
ルカノンとシクロアルカノールとの混合物を酸化的に開
裂する方法が知られている。例えば、ポリアミド等の原
料であるアジピン酸は、シクロヘキサンを空気酸化によ
りシクロヘキサノンとシクロヘキサノールの混合物に変
換し、これを硝酸で酸化する方法により製造されてい
る。しかし、この方法では、硝酸酸化の際、地球温暖化
ガスとされている窒素酸化物が多量に発生し、その処理
に多大な設備や労力が必要となる。
【0003】これに対し、窒素酸化物の副生を伴わない
方法として、シクロアルカン(例えば、シクロヘキサ
ン)を直接、酸素により酸化して対応するジカルボン酸
(例えば、アジピン酸)に変換する方法が長年検討され
てきた。従来、その検討は触媒として遷移金属塩のみを
用いたものであったが、最近、N−ヒドロキシフタルイ
ミド等のN−置換環状イミド化合物又は該N−置換環状
イミド化合物と遷移金属塩とからなる触媒系を用いたジ
カルボン酸の製造方法が提案されている(特開平9−3
27626号公報、特開平10−286467号公報な
ど)。この方法によれば、従来の遷移金属塩単独系と比
べてより効率よくジカルボン酸を製造することができ
る。しかしながら、この方法では、N−置換環状イミド
化合物が反応系中で分解して、対応するジカルボン酸、
ジカルボン酸無水物、ジカルボン酸イミドが副生する。
例えば、N−ヒドロキシフタルイミドはフタル酸、無水
フタル酸、フタルイミドなどに分解され、さらに前記無
水フタル酸及びフタルイミドは反応系中に存在する水と
反応して最終的にフタル酸となる。これらの副生物は、
ジカルボン酸の製造工程で一般的に行われる晶析操作だ
けでは、目的化合物であるジカルボン酸(例えば、アジ
ピン酸)と効率よく分離することが困難である。そのた
め、晶析以外の他の安価な方法で、目的のジカルボン酸
をロスすることなく、前記イミド化合物触媒由来の副生
物を簡易に分離除去できる方法が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、シクロアルカン類をイミド系化合物触媒存在下に酸
素酸化して得られた反応混合物から前記シクロアルカン
類に対応するジカルボン酸を取得するに際し、前記イミ
ド系化合物又はそれに由来する分解生成物を、目的のジ
カルボン酸の回収率を低下させることなく、効率よく分
離除去できる方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するため鋭意検討した結果、目的化合物であるジ
カルボン酸とイミド系化合物触媒又はこれに由来する分
解生成物との間でイオン交換樹脂に対する吸着特性が大
きく異なること、そのためこの性質の差を利用すること
により両者を簡易な手段で効率よく分離できることを見
出し、本発明を完成した。
【0006】すなわち、本発明は、シクロアルカン類
を、下記式(I)
【化3】 [式中、nは0又は1を示す。Xは酸素原子又は−OR
基(Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を示す)
を示す]で表される環状イミド骨格を有するイミド系化
合物の存在下、酸素と接触させて得られた反応混合物か
ら、前記シクロアルカン類に対応するジカルボン酸を得
るジカルボン酸の製造方法であって、前記反応混合物を
イオン交換樹脂処理に付し、前記シクロアルカン類に対
応するジカルボン酸と、前記イミド系化合物又は該イミ
ド系化合物由来の分解生成物とを分離する工程を含むジ
カルボン酸の製造方法を提供する。
【0007】前記イミド系化合物には、下記式(1)
【化4】 [式中、nは0又は1を示す。Xは酸素原子又は−OR
基(Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を示す)
を示す。R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、同一又は
異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリ
ール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキ
シ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシ
ル基又はアシルオキシ基を示し、R1、R2、R3、R4
5及びR6のうち少なくとも2つが互いに結合して二重
結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成して
もよい。前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、又は
1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つ
が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若し
くは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN
−置換環状イミド基がさらに1又は2個以上形成されて
いてもよい]で表される化合物が含まれる。
【0008】イオン交換樹脂としては、キレート樹脂又
は陰イオン交換樹脂が好ましい。イオン交換樹脂処理は
連続式で行うのが好ましく、その際、イオン交換樹脂処
理槽を複数個直列につないでイオン交換樹脂処理を行っ
てもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】[シクロアルカン類]本発明で
は、原料化合物としてシクロアルカン類(以下、単に
「基質」と称することがある)が使用される。
【0010】シクロアルカンとしては、例えば、シクロ
プロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキ
サン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナ
ン、シクロデカン、シクロドデカン、シクロテトラデカ
ン、シクロヘキサデカン、シクロオクタデカン、シクロ
イコサン、シクロドコサン、シクロトリアコンタン等の
3〜30員程度のシクロアルカンなどが挙げられる。な
かでも、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオク
タン、シクロドデカン等の5〜15員程度のシクロアル
カンが好ましく、特に、シクロヘキサン及びシクロドデ
カンなどが好ましい。
【0011】前記シクロアルカンは反応を阻害しない範
囲で置換基を有していてもよい。このような置換基とし
て、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル
基、メルカプト基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ
基、アリールオキシ基、アシルオキシ基など)、置換チ
オ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換
又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換
又は無置換アミノ基、アルキル基(例えば、メチル、エ
チル、イソプロピル、t−ブチル、ヘキシル、オクチ
ル、デシル基等のC1-20アルキル基など、特にC1-4
ルキル基)、アルケニル基、アルキニル基、シクロアル
キル基、シクロアルケニル基、アリール基(例えば、フ
ェニル、ナフチル基など)、アラルキル基(例えば、ベ
ンジル基など)、複素環基などが挙げられる。また、シ
クロアルカンは、シクロアルカン環に反応を阻害しない
範囲で芳香族性又は非芳香族性の炭素環や複素環が縮合
していてもよい。従って、橋かけ環式炭化水素であって
もよい。
【0012】なお、反応系に、シクロアルカン類に加え
て、該シクロアルカン類に対応するシクロアルカノール
類やシクロアルカノン類を供給してもよい。これらの化
合物も、対応するジカルボン酸に変換されうる。
【0013】[酸素]酸素としては、分子状酸素及び発
生期の酸素の何れを使用してもよい。分子状酸素は特に
制限されず、純粋な酸素を用いてもよく、窒素、ヘリウ
ム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスで希釈した
酸素や空気を使用してもよい。酸素は系内で発生させて
もよい。酸素の使用量は、基質の種類によっても異なる
が、通常、基質1モルに対して0.5モル以上(例え
ば、1モル以上)、好ましくは1〜100モル、さらに
好ましくは2〜50モル程度である。基質に対して過剰
モルの酸素を使用する場合が多い。
【0014】[イミド系化合物]本発明では、触媒とし
て前記式(I)で表される環状イミド骨格を有するイミ
ド系化合物が使用される。
【0015】式(I)において、窒素原子とXとの結合
は単結合又は二重結合である。前記イミド系化合物は、
分子中に、式(I)で表されるN−置換環状イミド骨格
を複数個有していてもよい。また、このイミド化合物
は、前記Xが−OR基であり且つRがヒドロキシル基の
保護基である場合、N−置換環状イミド骨格のうちRを
除く部分(N−オキシ環状イミド骨格)が複数個、Rを
介して結合していてもよい。
【0016】式(I)中、Rで示されるヒドロキシル基
の保護基としては、有機合成の分野で慣用のヒドロキシ
ル基の保護基を用いることができる。このような保護基
として、例えば、アルキル基(例えば、メチル、t−ブ
チル基などのC1-4アルキル基など)、アルケニル基
(例えば、アリル基など)、シクロアルキル基(例え
ば、シクロヘキシル基など)、アリール基(例えば、
2,4−ジニトロフェニル基など)、アラルキル基(例
えば、ベンジル、2,6−ジクロロベンジル、3−ブロ
モベンジル、2−ニトロベンジル、トリフェニルメチル
基など);置換メチル基(例えば、メトキシメチル、メ
チルチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシ
メチル、2−メトキシエトキシメチル、2,2,2−ト
リクロロエトキシメチル、ビス(2−クロロエトキシ)
メチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル基な
ど)、置換エチル基(例えば、1−エトキシエチル、1
−メチル−1−メトキシエチル、1−イソプロポキシエ
チル、2,2,2−トリクロロエチル、2−メトキシエ
チル基など)、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロ
フラニル基、1−ヒドロキシアルキル基(例えば、1−
ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシヘキシル、1−ヒド
ロキシデシル、1−ヒドロキシヘキサデシル、1−ヒド
ロキシ−1−フェニルメチル基など)等のヒドロキシル
基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基な
ど;アシル基(例えば、ホルミル、アセチル、プロピオ
ニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイ
ル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナ
ノイル、デカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パル
ミトイル、ステアロイル基などのC1-20脂肪族アシル基
等の脂肪族飽和又は不飽和アシル基;アセトアセチル
基;シクロペンタンカルボニル、シクロヘキサンカルボ
ニル基などのシクロアルカンカルボニル基等の脂環式ア
シル基;ベンゾイル、ナフトイル基などの芳香族アシル
基など)、スルホニル基(メタンスルホニル、エタンス
ルホニル、トリフルオロメタンスルホニル、ベンゼンス
ルホニル、p−トルエンスルホニル、ナフタレンスルホ
ニル基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メト
キシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカ
ルボニル基などのC1-4アルコキシ−カルボニル基な
ど)、アラルキルオキシカルボニル基(例えば、ベンジ
ルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカ
ルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基(例
えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、フェニルカ
ルバモイル基など)、無機酸(硫酸、硝酸、リン酸、ホ
ウ酸など)からOH基を除した基、ジアルキルホスフィ
ノチオイル基(例えば、ジメチルホスフィノチオイル基
など)、ジアリールホスフィノチオイル基(例えば、ジ
フェニルホスフィノチオイル基など)、置換シリル基
(例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリ
ル、トリベンジルシリル、トリフェニルシリル基など)
などが挙げられる。
【0017】また、Xが−OR基である場合において、
N−置換環状イミド骨格のうちRを除く部分(N−オキ
シ環状イミド骨格)が複数個、Rを介して結合する場
合、該Rとして、例えば、オキサリル、マロニル、スク
シニル、グルタリル、アジポイル、フタロイル、イソフ
タロイル、テレフタロイル基などのポリカルボン酸アシ
ル基;カルボニル基;メチレン、エチリデン、イソプロ
ピリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、
ベンジリデン基などの多価の炭化水素基(特に、2つの
ヒドロキシル基とアセタール結合を形成する基)などが
挙げられる。
【0018】好ましいRには、例えば、水素原子;ヒド
ロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可
能な基;カルボン酸、スルホン酸、炭酸、カルバミン
酸、硫酸、リン酸、ホウ酸などの酸からOH基を除した
基(アシル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル
基、カルバモイル基等)などの加水分解により脱離可能
な加水分解性保護基などが含まれる。
【0019】式(I)において、nは0又は1を示す。
すなわち、式(I)は、nが0の場合は5員のN−置換
環状イミド骨格を表し、nが1の場合は6員のN−置換
環状イミド骨格を表す。
【0020】前記イミド系化合物の代表的な例として、
前記式(1)で表されるイミド化合物が挙げられる。こ
のイミド化合物において、置換基R1、R2、R3、R4
5及びR6のうちハロゲン原子には、ヨウ素、臭素、塩
素およびフッ素原子が含まれる。アルキル基には、例え
ば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチ
ル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、
デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル基など
の炭素数1〜30程度(特に、炭素数1〜20程度)の
直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が含まれる。
【0021】アリール基には、フェニル、ナフチル基な
どが含まれ、シクロアルキル基には、シクロペンチル、
シクロヘキシル基などが含まれる。アルコキシ基には、
例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ブトキ
シ、t−ブトキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、
デシルオキシ、ドデシルオキシ、テトラデシルオキシ、
オクタデシルオキシ基などの炭素数1〜30程度(特
に、炭素数1〜20程度)のアルコキシ基が含まれる。
【0022】置換オキシカルボニル基には、例えば、メ
トキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキ
シカルボニル、ブトキシカルボニル、t−ブトキシカル
ボニル、ヘキシルオキシカルボニル、デシルオキシカル
ボニル、ヘキサデシルオキシカルボニル基などのC1-30
アルコキシ−カルボニル基(特に、C1-20アルコキシ−
カルボニル基);シクロペンチルオキシカルボニル、シ
クロヘキシルオキシカルボニル基などのシクロアルキル
オキシカルボニル基(特に、3〜20員シクロアルキル
オキシカルボニル基);フェニルオキシカルボニル、ナ
フチルオキシカルボニル基などのアリールオキシカルボ
ニル基(特に、C6-20アリールオキシ−カルボニル
基);ベンジルオキシカルボニル基などのアラルキルオ
キシカルボニル基(特に、C7-21アラルキルオキシ−カ
ルボニル基)などが挙げられる。
【0023】アシル基としては、例えば、ホルミル、ア
セチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレ
リル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカ
ノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ス
テアロイル基などのC1-30脂肪族アシル基(特に、C
1-20脂肪族アシル基)等の脂肪族飽和又は不飽和アシル
基;アセトアセチル基;シクロペンタンカルボニル、シ
クロヘキサンカルボニル基などのシクロアルカンカルボ
ニル基等の脂環式アシル基;ベンゾイル、ナフトイル基
などの芳香族アシル基などが例示できる。
【0024】アシルオキシ基としては、例えば、ホルミ
ルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチ
リルオキシ、イソブチリルオキシ、バレリルオキシ、ピ
バロイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、オクタノイルオ
キシ、デカノイルオキシ、ラウロイルオキシ、ミリスト
イルオキシ、パルミトイルオキシ、ステアロイルオキシ
基などのC1-30脂肪族アシルオキシ基(特に、C1-20
肪族アシルオキシ基)等の脂肪族飽和又は不飽和アシル
オキシ基;アセトアセチルオキシ基;シクロペンタンカ
ルボニルオキシ、シクロヘキサンカルボニルオキシ基な
どのシクロアルカンカルボニルオキシ基等の脂環式アシ
ルオキシ基;ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ基な
どの芳香族アシルオキシ基などが例示できる。
【0025】前記置換基R1、R2、R3、R4、R5及び
6は、同一又は異なっていてもよい。また、前記式
(1)において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のう
ち少なくとも2つが互いに結合して、二重結合、または
芳香族性又は非芳香属性の環を形成してもよい。好まし
い芳香族性又は非芳香族性環は5〜12員環、特に6〜
10員環程度であり、複素環又は縮合複素環であっても
よいが、炭化水素環である場合が多い。このような環に
は、例えば、非芳香族性脂環式環(シクロヘキサン環な
どの置換基を有していてもよいシクロアルカン環、シク
ロヘキセン環などの置換基を有していてもよいシクロア
ルケン環など)、非芳香族性橋かけ環(5−ノルボルネ
ン環などの置換基を有していてもよい橋かけ式炭化水素
環など)、ベンゼン環、ナフタレン環などの置換基を有
していてもよい芳香族環(縮合環を含む)が含まれる。
前記環は、芳香族環で構成される場合が多い。前記環
は、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、ア
ルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル
基、アシル基、アシルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、
アミノ基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよ
い。
【0026】前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、又は
1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つ
が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若し
くは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN
−置換環状イミド基がさらに1又は2個以上形成されて
いてもよい。例えば、R1、R2、R3、R4、R5又はR6
が炭素数2以上のアルキル基である場合、このアルキル
基を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで前記N−
置換環状イミド基が形成されていてもよい。また、
1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つ
が互いに結合して二重結合を形成する場合、該二重結合
を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていても
よい。さらに、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち
少なくとも2つが互いに結合して芳香族性若しくは非芳
香族性の環を形成する場合、該環を構成する隣接する2
つの炭素原子を含んで前記N−置換環状イミド基が形成
されていてもよい。
【0027】好ましいイミド化合物には、下記式で表さ
れる化合物が含まれる。
【化5】 (式中、R11〜R16は、同一又は異なって、水素原子、
ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキ
ル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル
基、置換オキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキ
シ基を示す。R17〜R26は、同一又は異なって、水素原
子、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、ア
ルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル
基、アシル基、アシルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、
アミノ基、ハロゲン原子を示す。R17〜R26は、隣接す
る基同士が結合して、式(1c)、(1d)、(1e)、(1
f)、(1h)又は(1i)中に示される5員又は6員のN
−置換環状イミド骨格を形成していてもよい。Xは前記
に同じ)
【0028】置換基R11〜R16におけるハロゲン原子、
アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキ
シル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカ
ルボニル基、アシル基、アシルオキシ基としては、前記
1〜R6における対応する基と同様のものが例示され
る。
【0029】置換基R17〜R26において、アルキル基に
は、前記例示のアルキル基と同様のアルキル基、特に炭
素数1〜6程度のアルキル基が含まれ、ハロアルキル基
には、トリフルオロメチル基などの炭素数1〜4程度の
ハロアルキル基、アルコキシ基には、前記と同様のアル
コキシ基、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基、
置換オキシカルボニル基には、前記と同様の置換オキシ
カルボニル基(アルコキシカルボニル基、シクロアルキ
ルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、
アラルキルオキシカルボニル基など)が含まれる。ま
た、アシル基としては前記と同様のアシル基(脂肪族飽
和又は不飽和アシル基、アセトアセチル基、脂環式アシ
ル基、芳香族アシル基等)などが例示され、アシルオキ
シ基としては前記と同様のアシルオキシ基(脂肪族飽和
又は不飽和アシルオキシ基、アセトアセチルオキシ基、
脂環式アシルオキシ基、芳香族アシルオキシ基等)など
が例示される。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、
臭素原子が例示できる。置換基R17〜R26は、通常、水
素原子、炭素数1〜4程度の低級アルキル基、カルボキ
シル基、置換オキシカルボニル基、ニトロ基、ハロゲン
原子である場合が多い。
【0030】好ましいイミド化合物のうち5員のN−置
換環状イミド骨格を有する化合物の代表的な例として、
例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキ
シ−α−メチルコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,
α−ジメチルコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,β
−ジメチルコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,α,
β,β−テトラメチルコハク酸イミド、N−ヒドロキシ
マレイン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル
酸イミド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテト
ラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシフタル酸イミ
ド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−
ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキ
シヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミ
ド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N′−
ジヒドロキシピロメリット酸ジイミド、N,N′−ジヒ
ドロキシナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、α,β
−ジアセトキシ−N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−
ヒドロキシ−α,β−ビス(プロピオニルオキシ)コハ
ク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,β−ビス(バレリル
オキシ)コハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,β−ビ
ス(ラウロイルオキシ)コハク酸イミド、α,β−ビス
(ベンゾイルオキシ)−N−ヒドロキシコハク酸イミ
ド、N−ヒドロキシ−4−メトキシカルボニルフタル酸
イミド、4−エトキシカルボニル−N−ヒドロキシフタ
ル酸イミド、N−ヒドロキシ−4−ペンチルオキシカル
ボニルフタル酸イミド、4−ドデシルオキシ−N−ヒド
ロキシカルボニルフタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4
−フェノキシカルボニルフタル酸イミド、N−ヒドロキ
シ−4,5−ビス(メトキシカルボニル)フタル酸イミ
ド、4,5−ビス(エトキシカルボニル)−N−ヒドロ
キシフタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4,5−ビス
(ペンチルオキシカルボニル)フタル酸イミド、4,5
−ビス(ドデシルオキシカルボニル)−N−ヒドロキシ
フタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4,5−ビス(フェ
ノキシカルボニル)フタル酸イミドなどの式(1)にお
けるXが−OR基で且つRが水素原子である化合物;こ
れらの化合物に対応する、Rがアセチル基、プロピオニ
ル基、ベンゾイル基等のアシル基である化合物;N−メ
トキシメチルオキシフタル酸イミド、N−(2−メトキ
シエトキシメチルオキシ)フタル酸イミド、N−テトラ
ヒドロピラニルオキシフタル酸イミドなどの式(1)に
おけるXが−OR基で且つRがヒドロキシル基とアセタ
ール又はヘミアセタール結合を形成可能な基である化合
物;N−メタンスルホニルオキシフタル酸イミド、N−
(p−トルエンスルホニルオキシ)フタル酸イミドなど
の式(1)におけるXが−OR基で且つRがスルホニル
基である化合物;N−ヒドロキシフタル酸イミドの硫酸
エステル、硝酸エステル、リン酸エステル又はホウ酸エ
ステルなどの式(1)におけるXが−OR基で且つRが
無機酸からOH基を除した基である化合物などが挙げら
れる。
【0031】好ましいイミド化合物のうち6員のN−置
換環状イミド骨格を有する化合物の代表的な例として、
例えば、N−ヒドロキシグルタルイミド、N−ヒドロキ
シ−α,α−ジメチルグルタルイミド、N−ヒドロキシ
−β,β−ジメチルグルタルイミド、N−ヒドロキシ−
1,8−デカリンジカルボン酸イミド、N,N′−ジヒ
ドロキシ−1,8;4,5−デカリンテトラカルボン酸
ジイミド、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタレンジカル
ボン酸イミド(N−ヒドロキシナフタル酸イミド)、
N,N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−ナフタレン
テトラカルボン酸ジイミドなどの式(1)におけるXが
−OR基で且つRが水素原子である化合物;これらの化
合物に対応する、Rがアセチル基、プロピオニル基、ベ
ンゾイル基等のアシル基である化合物;N−メトキシメ
チルオキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド、
N,N′−ビス(メトキシメチルオキシ)−1,8;
4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなどの式
(1)におけるXが−OR基で且つRがヒドロキシル基
とアセタール又はヘミアセタール結合を形成可能な基で
ある化合物;N−メタンスルホニルオキシ−1,8−ナ
フタレンジカルボン酸イミド、N,N′−ビス(メタン
スルホニルオキシ)−1,8;4,5−ナフタレンテト
ラカルボン酸ジイミドなどの式(1)におけるXが−O
R基で且つRがスルホニル基である化合物;N−ヒドロ
キシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド又はN,
N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−ナフタレンテト
ラカルボン酸ジイミドの硫酸エステル、硝酸エステル、
リン酸エステル又はホウ酸エステルなどの式(1)にお
けるXが−OR基で且つRが無機酸からOH基を除した
基である化合物などが挙げられる。
【0032】前記イミド系化合物のうち、Xが−OR基
で且つRが水素原子である化合物(N−ヒドロキシ環状
イミド化合物)は、慣用のイミド化反応、例えば、対応
する酸無水物とヒドロキシルアミンとを反応させ、酸無
水物基の開環及び閉環を経てイミド化する方法により得
ることができる。また、前記イミド系化合物のうち、X
が−OR基で且つRがヒドロキシル基の保護基である化
合物は、対応するRが水素原子である化合物(N−ヒド
ロキシ環状イミド化合物)に、慣用の保護基導入反応を
利用して、所望の保護基を導入することにより調製する
ことができる。例えば、N−アセトキシフタル酸イミド
は、N−ヒドロキシフタル酸イミドに無水酢酸を反応さ
せたり、塩基の存在下でアセチルハライドを反応させる
ことにより得ることができる。また、これ以外の方法で
製造することも可能である。
【0033】特に好ましいイミド化合物は、脂環式多価
カルボン酸無水物又は芳香族多価カルボン酸無水物から
誘導されるN−ヒドロキシイミド化合物(例えば、N−
ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イ
ミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸ジイミ
ド、N−ヒドロキシグルタルイミド、N−ヒドロキシ−
1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド、N,N′−ジ
ヒドロキシ−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボ
ン酸ジイミドなど);及び該N−ヒドロキシイミド化合
物のヒドロキシル基に保護基を導入することにより得ら
れる化合物などが含まれる。
【0034】式(I)で表されるN−置換環状イミド骨
格を有するイミド系化合物は、反応において、単独で又
は2種以上組み合わせて使用できる。前記イミド系化合
物は反応系内で生成させてもよい。
【0035】前記イミド系化合物の使用量は、広い範囲
で選択でき、例えば、反応成分(基質)1モルに対して
0.0000001〜1モル、好ましくは0.0000
01〜0.5モル、さらに好ましくは0.00001〜
0.4モル程度であり、0.0001〜0.35モル程
度である場合が多い。
【0036】[助触媒]反応においては、前記イミド系
化合物とともに助触媒を用いることもできる。助触媒と
して金属化合物が挙げられる。前記イミド系化合物と金
属化合物とを併用することにより反応速度や反応の選択
性を向上させることができる。
【0037】金属化合物を構成する金属元素としては、
特に限定されないが、周期表1〜15族の金属元素を用
いる場合が多い。なお、本明細書では、ホウ素Bも金属
元素に含まれるものとする。好ましい金属元素には、遷
移金属元素(周期表3〜12族元素)が含まれる。なか
でも、周期表5〜11族元素、特に5族〜9族元素が好
ましく、とりわけV、Mo、Mn、Coなどが好まし
い。また、遷移金属元素と周期表1族又は2族元素との
併用により活性が向上する場合がある。金属元素の原子
価は特に制限されず、例えば0〜6価程度である。
【0038】金属化合物としては、前記金属元素の単
体、水酸化物、酸化物(複合酸化物を含む)、ハロゲン
化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、オキソ
酸塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、
炭酸塩など)、イソポリ酸の塩、ヘテロポリ酸の塩など
の無機化合物;有機酸塩(例えば、酢酸塩、プロピオン
酸塩、青酸塩、ナフテン酸塩、ステアリン酸塩など)、
錯体などの有機化合物が挙げられる。前記錯体を構成す
る配位子としては、OH(ヒドロキソ)、アルコキシ
(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなど)、
アシル(アセチル、プロピオニルなど)、アルコキシカ
ルボニル(メトキシカルボニル、エトキシカルボニルな
ど)、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニル基、
ハロゲン原子(塩素、臭素など)、CO、CN、酸素原
子、H2O(アコ)、ホスフィン(トリフェニルホスフ
ィンなどのトリアリールホスフィンなど)のリン化合
物、NH 3(アンミン)、NO、NO2(ニトロ)、NO
3(ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリア
ミン、ピリジン、フェナントロリンなどの窒素含有化合
物などが挙げられる。
【0039】金属化合物の具体例としては、例えば、コ
バルト化合物を例にとると、水酸化コバルト、酸化コバ
ルト、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、硫
酸コバルト、リン酸コバルトなどの無機化合物;酢酸コ
バルト、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルトな
どの有機酸塩;コバルトアセチルアセトナトなどの錯体
等の2価又は3価のコバルト化合物などが挙げられる。
また、バナジウム化合物の例としては、水酸化バナジウ
ム、酸化バナジウム、塩化バナジウム、塩化バナジル、
硫酸バナジウム、硫酸バナジル、バナジン酸ナトリウム
などの無機化合物;バナジウムアセチルアセトナト、バ
ナジルアセチルアセトナトなどの錯体等の2〜5価のバ
ナジウム化合物などが挙げられる。さらに、ナトリウム
化合物の例としては、ナトリウム、水酸化ナトリウム、
炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウ
ム、硫酸ナトリウムなどの無機化合物(金属単体を含
む);ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、
酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、p−トルエンス
ルホン酸ナトリウムなどの有機化合物が挙げられる。他
の金属元素の化合物としては、前記コバルト化合物、バ
ナジウム化合物又はナトリウム化合物に対応する化合物
などが例示される。金属化合物は単独で又は2種以上組
み合わせて使用できる。特に、コバルト化合物とマンガ
ン化合物とを組み合わせると反応速度が著しく向上する
ことが多い。また、価数の異なる複数の金属化合物(例
えば、2価の金属化合物と3価の金属化合物)を組み合
わせて用いるのも好ましい。さらに、式(I)において
Xが−OR基で且つRがヒドロキシル基の保護基である
触媒を用いた場合には、金属化合物としてコバルト化合
物などの遷移金属元素化合物と周期表1族元素又は2族
元素化合物とを組み合わせて用いると、非酸性溶媒や非
プロトン性溶媒中での反応においても、高い触媒活性が
得られるとともに、基質と触媒との反応を抑制すること
ができる。
【0040】前記金属化合物の使用量は、例えば、前記
イミド系化合物1モルに対して、0.0001〜10モ
ル、好ましくは0.005〜3モル程度である。また、
金属化合物の使用量は、反応成分(基質)1モルに対し
て、例えば0.00001モル%〜10モル%、好まし
くは0.1モル%〜5モル%程度である。
【0041】また、助触媒として、少なくとも1つの有
機基が結合した周期表15族又は16族元素を含む多原
子陽イオン又は多原子陰イオンとカウンターイオンとで
構成された有機塩が用いられることもある。助触媒とし
て前記有機塩を用いることにより、反応速度や反応の選
択性を向上させることができる。
【0042】前記有機塩において、周期表15族元素に
は、N、P、As、Sb、Biが含まれる。周期表16
族元素には、O、S、Se、Teなどが含まれる。好ま
しい元素としては、N、P、As、Sb、Sが挙げら
れ、特に、N、P、Sなどが好ましい。
【0043】前記元素の原子に結合する有機基には、置
換基を有していてもよい炭化水素基(脂肪族炭化水素
基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基など)、置換
オキシ基(アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキ
ルオキシ基など)などが含まれる。
【0044】前記有機塩の代表的な例として、有機アン
モニウム塩、有機ホスホニウム塩、有機スルホニウム塩
などの有機オニウム塩が挙げられる。有機アンモニウム
塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウムクロリ
ド、テトラブチルアンモニウムクロリド、トリエチルフ
ェニルアンモニウムクロリドなどの第4級アンモニウム
クロリド、及び対応する第4級アンモニウムブロミドな
どの、窒素原子に4つの炭化水素基が結合した第4級ア
ンモニウム塩;ジメチルピペリジニウムクロリド、ヘキ
サデシルピリジニウムクロリド、メチルキノリニウムク
ロリドなどの環状第4級アンモニウム塩などが挙げられ
る。また、有機ホスホニウム塩の具体例としては、テト
ラメチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニ
ウムクロリドなどの第4級ホスホニウムクロリド、及び
対応する第4級ホスホニウムブロミドなどの、リン原子
に4つの炭化水素基が結合した第4級ホスホニウム塩な
どが挙げられる。有機スルホニウム塩の具体例として
は、トリエチルスルホニウムイオジド、エチルジフェニ
ルスルホニウムイオジドなどの、イオウ原子に3つの炭
化水素基が結合したスルホニウム塩などが挙げられる。
【0045】また、前記有機塩には、メタンスルホン酸
塩、ドデカンスルホン酸塩などのアルキルスルホン酸塩
(例えば、C6-18アルキルスルホン酸塩);ベンゼンス
ルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ナフタレンス
ルホン酸塩などのアルキル基で置換されていてもよいア
リールスルホン酸塩(例えば、C6-18アルキル−アリー
ルスルホン酸塩);スルホン酸型イオン交換樹脂(イオ
ン交換体);ホスホン酸型イオン交換樹脂(イオン交換
体)なども含まれる。
【0046】前記有機塩の使用量は、例えば、前記イミ
ド系化合物1モルに対して、0.001〜0.1モル程
度、好ましくは0.005〜0.08モル程度である。
【0047】また、助触媒として、強酸(例えば、pK
a2(25℃)以下の化合物)が使用されることもあ
る。好ましい強酸には、例えば、ハロゲン化水素、ハロ
ゲン化水素酸、硫酸、ヘテロポリ酸などが含まれる。強
酸の使用量は、前記イミド系化合物1モルに対して、例
えば0.001〜3モル程度である。
【0048】さらに、助触媒として、電子吸引基が結合
したカルボニル基を有する化合物が用いられる場合もあ
る。電子吸引基が結合したカルボニル基を有する化合物
の代表的な例として、ヘキサフルオロアセトン、トリフ
ルオロ酢酸、ペンタフルオロフェニルケトン、ペンタフ
ルオロフェニルケトン、安息香酸などが挙げられる。こ
の化合物の使用量は、反応成分(基質)1モルに対し
て、例えば0.0001〜3モル程度である。
【0049】また、反応系内にラジカル発生剤やラジカ
ル反応促進剤を存在させることもある。このような成分
として、例えば、ハロゲン(塩素、臭素など)、過酸
(過酢酸、m−クロロ過安息香酸など)、過酸化物(過
酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)
等のヒドロペルオキシドなど)、硝酸又は亜硝酸若しく
はそれらの塩、二酸化窒素、ベンズアルデヒド等のアル
デヒドなどが挙げられる。これらの成分を系内に存在さ
せると、反応が促進される場合がある。前記成分の使用
量は、前記イミド系化合物1モルに対して、例えば0.
001〜3モル程度である。
【0050】[反応]反応は溶媒の存在下又は非存在下
で行われる。溶媒としては、例えば、ベンゼンなどの芳
香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,
2−ジクロロエタン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン
化炭化水素類;t−ブタノール、t−アミルアルコール
などのアルコール類;アセトニトリル、ベンゾニトリル
などのニトリル類;酢酸、プロピオン酸などの有機酸;
ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド
(DMF)、ジメチルアセトアミドなどのアミド類など
が例示でき、これらの溶媒は混合して使用してもよい。
上記の溶媒の中でも、有機酸等のプロトン性有機溶媒及
びニトリル類などが好ましい。なお、反応生成物である
ジカルボン酸も反応溶媒として機能する。
【0051】反応温度は、通常20〜250℃、好まし
くは80〜200℃、さらに好ましくは80〜150℃
であり、特に90〜140℃程度が好適である。反応圧
力は、常圧、加圧下の何れであってもよい。加圧下で行
う場合、反応圧力は、例えば0.5〜20MPa程度、
好ましくは1〜15MPa程度である。反応は、酸素の
存在下又は酸素の流通下、回分式、半回分式、連続式等
の慣用の方法により行うことができる。
【0052】反応により、原料として用いたシクロアル
カン類が酸化的に開裂して、シクロアルカン環を構成す
る炭素数と同じ炭素数の炭素鎖を有するジカルボン酸が
主に生成する。すなわち、シクロヘキサンからはアジピ
ン酸が、シクロドデカンからはドデカン二酸が生成す
る。なお、条件により、シクロアルカン環を構成する炭
素数よりも1又は2個炭素数の少ない炭素鎖を有するジ
カルボン酸や、対応するシクロアルカノール、シクロア
ルカノン等が副生する場合がある。例えば、シクロヘキ
サンを原料とした場合には、グルタル酸、コハク酸、シ
クロヘキサノール、シクロヘキサノン、酢酸、酢酸シク
ロヘキシル、ラクトン類、アジピン酸エステル類などが
副生することがある。これらのうち、シクロアルカノー
ルやシクロアルカノン等は反応系にリサイクルすること
ができる。
【0053】また、反応中に、触媒として用いたイミド
系化合物の分解生成物が副生する。例えば、前記式
(1)で表されるイミド系化合物からは、下記式(2)
で表されるN−無置換環状イミド化合物や式(3)で表
されるジカルボン酸化合物が副生する。例えば、触媒と
してN−ヒドロキシフタルイミド又はこの化合物のヒド
ロキシル基保護体を用いた場合には、フタルイミド、フ
タル酸などが副生する。
【化6】 (式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、nは前記に同
じ)
【0054】[イオン交換樹脂処理]本発明の重要な特
徴は、上記の反応で得られた反応混合物からシクロアル
カン類に対応するジカルボン酸を回収するに際し、前記
反応混合物をイオン交換樹脂処理に付し、目的化合物で
あるジカルボン酸と触媒として用いたイミド系化合物又
は該イミド系化合物由来の分解生成物とを分離する工程
を含む点にある。反応混合物をイオン交換樹脂で処理す
ると、シクロアルカン類の酸化開裂により生成したジカ
ルボン酸と触媒として用いたイミド系化合物及びその分
解生成物との間でイオン交換樹脂に対する吸着特性が大
きく異なることから、一方が優先的、選択的にイオン交
換樹脂に吸着するため、両者を効率よく分離することが
できる。例えば、イオン交換樹脂としてキレート樹脂又
は陰イオン交換樹脂を用いた場合には、シクロアルカン
類の酸化開裂により生成するジカルボン酸は該イオン交
換樹脂に物理吸着するのに対し、触媒として用いたイミ
ド系化合物及びその分解生成物[特に、芳香環を有する
イミド系化合物(芳香族多価カルボン酸無水物から誘導
されるイミド系化合物など)の分解生成物、例えばフタ
ル酸等]は該イオン交換樹脂に配位するため(或いは、
両者間で配位又は結合の程度が著しく相違するため)
か、後者が優先してイオン交換樹脂に捕捉されるので、
後者を効率よく分離除去することができる。
【0055】イオン交換樹脂処理に供する反応混合物と
しては、目的化合物であるジカルボン酸とイミド系化合
物触媒又はその分解生成物とを含有する混合物であれば
よく、反応終了時の反応混合液のほか、これに濃縮、希
釈、溶媒交換、濾過、抽出、晶析等の物理的処理を施し
た後の混合物を用いることもできる。
【0056】イオン交換樹脂には、強酸性陽イオン交換
樹脂(交換基:スルホン酸など)、弱酸性陽イオン交換
樹脂(交換基:カルボン酸など)、強塩基性陰イオン交
換樹脂(交換基:第4級アンモニウム、亜硫酸塩な
ど)、弱塩基性陰イオン交換樹脂(交換基:第1級乃至
第3級アミンなど)、キレート樹脂[交換基(配位
基):イミノジ酢酸、アミノ酸、オキシム、アミドキシ
ム、オキシン、グルカミン、ポリアミン、アミノリン
酸、アミドオキシム、チオ尿素、ジ−2−エチルヘキシ
ルホスフェート]、その他の特殊樹脂などが含まれる。
【0057】キレート樹脂としては、(i)配位座を構
成する電子供与性元素がNとOであるもの、(ii)配位
座を構成する電子供与性元素がNであるもの、(iii)
配位座を構成する電子供与性元素がNとSであるもの、
(iv)配位座を構成する電子供与性元素がOであるも
の、(v)配位座を構成する電子供与性元素がPである
もの、(vi)配位座を構成する電子供与性元素がSであ
るものなどが挙げられる。前記(i)のキレート樹脂に
は、配位基がイミノジ酢酸、アミノ酸などのカルボキシ
ル基とアミノ基との組み合わせからなるキレート樹脂、
配位基がオキシム、アミドキシム、オキシン、グルカミ
ンなどのアミノ基とヒドロキシル基との組み合わせから
なるキレート樹脂、配位基がシッフ塩基とヒドロキシル
基との組み合わせからなるキレート樹脂、配位基がアゾ
結合とヒドロキシル基との組み合わせからなるキレート
樹脂、配位基がアゾ結合とカルボキシル基との組み合わ
せからなるキレート樹脂、配位基がアミノ基とリン酸基
との組み合わせ(アミノリン酸)からなるキレート樹
脂、配位基がカルボニル基とアミノ基とヒドロキシル基
との組み合わせからなるキレート樹脂、配位基がクリプ
タンドであるキレート樹脂などが含まれる。(ii)のキ
レート樹脂には、配位基がポリアミンであるキレート樹
脂、配位基がアミノ基であるキレート樹脂、配位基がシ
ッフ塩基とアミノ基との組み合わせからなるキレート樹
脂などが含まれる。(iii)のキレート樹脂には、配位
基がジチオカルバミン酸などのアミノ基とチオカルボン
酸基との組み合わせからなるキレート樹脂、配位基がチ
オ尿素などのアミノ基とチオカルボニル基との組み合わ
せからなるキレート樹脂などが含まれる。(iv)のキレ
ート樹脂には、配位基がβ−ジケトンなどのカルボニル
基であるキレート樹脂、配位基がクラウンエーテルであ
るキレート樹脂、配位基がカルボニル基とヒドロキシル
基との組み合わせからなるキレート樹脂、配位基がヒド
ロキシル基(糖を構成するヒドロキシル基など)である
キレート樹脂などが含まれる。(v)のキレート樹脂に
は、配位基がリン酸基であるキレート樹脂などが含まれ
る。(vi)のキレート樹脂には、配位基がチオール基で
あるキレート樹脂などが含まれる。なお、上記の各アミ
ノ基には、通常の第1級乃至第3級アミノ基(無置換又
は置換アミノ基)の他、ピリジン環などの含窒素芳香族
性複素環を構成する窒素含有基(−N=)も含まれるも
のとする。
【0058】例えば、前記(ii)のキレート樹脂には、
広栄化学社製の「KEX212」のようなビニルピリジ
ン類と他のモノマーとの共重合体も含まれる。ビニルピ
リジン類として、例えば、2−ビニルピリジン、4−ビ
ニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、5−
エチル−2−ビニルピリジン、3,5−ジビニルピリジ
ン、2,4−ジビニルピリジンなどが挙げられる。前記
他のモノマーとして、例えば、スチレン、アクリル酸エ
ステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、ジ
ビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、エチレングリコ
ールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレ
ートなどが挙げられる。
【0059】上記のイオン交換樹脂のなかでも、分離性
能の点で、キレート樹脂又は陰イオン交換樹脂(弱塩基
性陰イオン交換樹脂、強塩基性陰イオン交換樹脂)が好
ましく、特に、前記(i)、(ii)、(iii)のキレー
ト樹脂のような配位座を構成する電子供与性元素として
Nを有するキレート樹脂(例えば、ピリジン環を含むキ
レート樹脂)、又は交換基が第1級乃至第3級アミンで
ある弱塩基性陰イオン交換樹脂が好ましい。
【0060】イオン交換樹脂処理は、イオン交換樹脂を
充填した容器(イオン交換樹脂処理槽)に被処理液を供
給することにより行うことができる。前記イオン交換樹
脂処理槽は塔型であってもよい。また、処理方式は、固
定床方式、流動床方式等の何れであってもよい。処理温
度は、例えば0〜100℃程度である。
【0061】イオン交換樹脂処理はバッチ式で行うこと
もできるが、目的化合物であるジカルボン酸とイミド系
化合物又はその分解生成物との分離効率をより高めるた
めには、連続式が好ましい。イオン交換樹脂処理を連続
式で行うと、当初は、目的化合物であるジカルボン酸と
イミド系化合物又はその分解生成物のうち吸着性の高い
方の成分(以下、「高吸着性成分」と称する場合があ
る)とともに、吸着性の低い方の成分(以下「低吸着性
成分」と称する場合がある)もある程度イオン交換樹脂
に吸着されるが、被処理液を供給し続けるうちに、一旦
吸着した低吸着性成分が次第に高吸着性成分に置き換わ
るため、バッチ式と比較して両成分の分離効率が著しく
向上する。
【0062】また、イオン交換樹脂処理を連続式で行う
場合、イオン交換樹脂処理槽を複数個(2基又は3基以
上)直列に接続することにより処理効率を高めることが
できる。以下、この方法について説明する。
【0063】図1は、シクロアルカン類に対応するジカ
ルボン酸とイミド系化合物又はその分解生成物とを分離
する工程の一例を示すフロー図である。この例では、第
1処理槽1、第2処理槽2及び第3処理槽3の3基のイ
オン交換樹脂処理槽が直列に接続されているとともに、
イオン交換樹脂の整粒や吸着成分の脱着操作(イオン交
換樹脂の再生操作)を1基ずつ独立して行えるように、
配管に切り替えバルブ4が設けられている。また、吸着
成分の脱着に用いる脱着溶媒を供給するための脱着溶媒
供給ライン5、及びバルブ6が設けられている。被処理
液は図中の「in」の箇所から供給され、処理された液は
図中の「out」の箇所から排出される。
【0064】操作の手順としては、まず、被処理液を矢
印aに沿って第1処理槽1に通液して処理を開始し、第
1処理槽1のイオン交換樹脂が破過した時点で、第1処
理槽1の出口液を第2処理槽2に送液・処理開始する。
そして、第2処理槽2のイオン交換樹脂が破過した時点
(又は、第1処理槽1の出口液における特定の吸着成分
濃度が所定値以上となった時点)で、被処理液を直接第
2処理槽2に通液するとともに、第2処理槽2の出口液
を第3処理槽3に送液・処理開始する。第1処理槽1
は、液抜き後、脱着溶媒を供給して吸着成分を脱着し、
イオン交換樹脂を再生させる。続いて、第3処理槽3の
イオン交換樹脂が破過した時点(又は、第2処理槽2の
出口液における特定の吸着成分濃度が所定値以上となっ
た時点)で、被処理液を直接第3処理槽3に通液すると
ともに、第3処理槽3の出口液を再生済みの第1処理槽
1に送液・処理開始する。第2処理槽2は、液抜き後、
脱着溶媒を供給して吸着成分を脱着し、イオン交換樹脂
を再生させる。以後、上記の操作を繰り返す。
【0065】このような操作を行うと、まず第1処理槽
1において、最初は目的化合物であるジカルボン酸と触
媒として用いたイミド系化合物又はその分解生成物のう
ち高吸着性成分(例えば、イミド系化合物又はその分解
生成物)と低吸着性成分(例えば、目的化合物であるジ
カルボン酸)の両方が、その吸着性の差に応じた所定の
割合でイオン交換樹脂に吸着されるが、長時間通液する
うちに、吸着した低吸着性成分が高吸着性成分と徐々に
置き換わり、最後にはほとんど高吸着性成分のみがイオ
ン交換樹脂に吸着された状態となる。そのため、第1処
理槽1を再生処理することにより、低吸着性成分を損失
することなく高吸着性成分を分離することができる。そ
の後、第2処理槽2の後ろに第3処理槽3をつないで通
液することで、第2処理槽2もまたほとんど高吸着性成
分のみが吸着された状態となり、同様に再生処理を施す
ことにより、低吸着性成分を損失することなく高吸着性
成分を分離できる。さらに、再生処理の済んだ第1処理
槽1を第3処理槽3の後ろにつないで通液することで、
第3処理槽3も高吸着性分のみが吸着された状態とな
る。こうして、同様の操作を繰り返すことにより、イオ
ン交換樹脂を有効に使用しつつ、低吸着性成分のロスを
伴うことなく、高吸着性成分を効率よく分離することが
可能となる。
【0066】なお、被処理液を図中の矢印bに沿って、
第1処理槽1及び第2処理槽2に通液して処理を開始
し、第2処理槽2のイオン交換樹脂が破過した時点(又
は、第1処理槽1の出口液における特定の吸着成分濃度
が所定値以上となった時点)で、被処理液を直接第2処
理槽2に通液するとともに、第2処理槽2の出口液を第
3処理槽3に送液・処理開始し、以後は上記と同様の操
作を行うこともできる。この方法によれば、例えば第2
処理槽2のイオン交換樹脂が破過する時点まで液を流す
ことができるので、第1処理槽1のイオン交換樹脂を有
効に利用でき、経済的に有利である。
【0067】被処理液を通液する処理槽の切り替え時
は、必ずしも厳密な破過点である必要はなく、分離効率
や作業性、経済性等を考慮し、吸着成分の吸着帯長さ及
び吸着帯移動速度からその適正値を設定することができ
る。イオン交換樹脂の交換能力に余裕を見ておけば、1
日(又はそれ以上の時間)に1回程度の切り替えで十分
に運転が可能である。
【0068】吸着成分を脱着してイオン交換樹脂を再生
させるために用いる脱着溶媒としては、吸着成分やイオ
ン交換樹脂の種類等に応じて適当に選択でき、例えば、
アルカリ水溶液(水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリ
ウム水溶液など)、酸水溶液(希塩酸など)、水溶性有
機溶媒(例えば、メタノール、エタノールなどのアルコ
ール;アセトンなどのケトン;アセトニトリルなどのニ
トリル;テトラヒドロフランなどのエーテル;酢酸など
の有機酸;トリエチルアミンなどのアミン;ピリジンな
どの含窒素芳香族複素環化合物等)、水溶液有機溶媒と
水との混合液などを使用できる。吸着成分は、脱着処理
液を、例えば、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶等の分
離手段に付すことにより単離することができる。
【0069】また、処理液(イオン交換樹脂処理された
液)は、必要に応じて、純度をより高めるため、繰り返
しイオン交換樹脂処理に付すこともできる。また、処理
液中の成分は、その物性に応じて、例えば、濃縮、蒸
留、抽出、晶析、再結晶等の分離手段により単離するこ
とができる。
【0070】本発明の製造方法により得られたジカルボ
ン酸は、ポリアミド(ナイロン)やポリエステルの原
料、精密化学品の中間原料などとして利用できる。
【0071】
【発明の効果】本発明によれば、シクロアルカン類をイ
ミド系化合物触媒存在下に酸素酸化して得られた反応混
合物から前記シクロアルカン類に対応するジカルボン酸
を取得するに際し、前記イミド系化合物又はそれに由来
する分解生成物を、目的のジカルボン酸の回収率を低下
させることなく、効率よく分離除去できる
【0072】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に
説明するが、本発明はこれらの実施例により限定される
ものではない。なお、分析はガスクロマトグラフィー及
び高速液体クロマトグラフィーにより行った。
【0073】実施例1 内径22mmのガラス製カラムにイオン交換樹脂[広栄
化学社製、商品名「KEX212」(ピリジン環を有す
るキレート樹脂)]を42cc充填し、整粒した。この
イオン交換樹脂充填槽に、アジピン酸1.77重量%、
グルタル酸1.76重量%、コハク酸1.72重量%、
フタル酸0.55重量%、フタルイミド0.06重量
%、及びN−ヒドロキシフタルイミド(NHPI)0.
024重量%を含む水溶液(被処理液)を140cc/
hrの流量で供給した。処理温度は20℃である。任意
時間(通液開始して6時間、10時間、15時間、20
時間、25時間及び30時間経過した時点)において、
イオン交換樹脂充填槽出口の液の分析を行い、次式に従
って該任意時間での各成分の捕集率を求めた。その結果
を表1に示す。表中の数字は捕集率である。 各成分捕集率(%)=任意時間における[(処理前の成
分重量−処理後の成分重量)/(処理前の成分重量)]
×100 なお、前記被処理液は、シクロヘキサンをN−ヒドロキ
シフタルイミド及び酢酸コバルト(II)の存在下、圧力
1MPa、温度125℃の条件で、酸素と45分接触さ
せて得られた反応混合液(アジピン酸9.1重量%、グ
ルタル酸1.7重量%、コハク酸1.1重量%、フタル
酸0.15重量%、フタルイミド0.04重量%、N−
ヒドロキシフタルイミド0.01重量%含む)から、ア
ジピン酸をある程度回収した後の混合液(モデル液)で
ある。
【0074】
【表1】
【0075】10時間通液して得られた全処理液を分析
した結果、各成分の比率(重量比)は、アジピン酸:グ
ルタル酸:コハク酸:フタル酸:フタルイミド:N−ヒ
ドロキシフタルイミド=33.18:33.36:3
2.20:0.09:0.24:0.09であり、アジ
ピン酸の回収率は91.2%、フタル酸の除去率は9
9.1%、フタルイミドの除去率は23.8%、N−ヒ
ドロキシフタルイミドの除去率は47.1%であった。
また、20時間通液した時点でイオン交換樹脂に捕集さ
れている各成分の比率(重量比)は、アジピン酸:グル
タル酸:コハク酸:フタル酸:フタルイミド:N−ヒド
ロキシフタルイミド=1.94:1.81:2.44:
92.51:0.75:0.54であり、触媒の分解生
成物であるフタル酸が選択的に吸着されたことがわか
る。次に、30時間通液後のイオン交換樹脂充填槽に、
4重量%水酸化ナトリウム水溶液を供給して捕集成分
(吸着成分)を脱着させたところ、捕集成分のほぼ全量
を回収することができた。なお、4重量%水酸化ナトリ
ウムの代わりにメタノールを脱離液として用いた場合も
同様の結果が得られた。
【0076】実施例2 内径22mmのガラス製カラム3本にイオン交換樹脂
[広栄化学社製、商品名「KEX212」(ピリジン環
を有するキレート樹脂)]を42ccずつ充填してイオ
ン交換樹脂充填槽(第1処理槽、第2処理槽及び第3処
理槽)を作成し、前記図1のように、これらを直列につ
ないだ。このイオン交換樹脂充填槽に、アジピン酸1.
77重量%、グルタル酸1.76重量%、コハク酸1.
72重量%、フタル酸0.55重量%、フタルイミド
0.06重量%、及びN−ヒドロキシフタルイミド(N
HPI)0.024重量%を含む水溶液(被処理液)を
140cc/hrの流量で供給した。なお、被処理液は
供給開始から20時間までは第1処理槽に、20〜35
時間までは第2処理槽に、35〜50時間までは第3処
理槽に供給した。一方、出口液については、0〜10時
間までは第1処理槽出口液をそのまま排出し、10〜2
0時間までは第1処理槽出口液を第2処理槽に送液し
た。また、10〜25時間までは第2処理槽出口液を排
出し、25〜35時間までは第2処理槽出口液を第3処
理槽に送液した。25〜50時間までは第3処理槽出口
液を排出した。このような操作を実施し、第2処理槽か
ら排出した出口液を分析したところ、各成分の比率(重
量比)は、アジピン酸:グルタル酸:コハク酸:フタル
酸:フタルイミド:N−ヒドロキシフタルイミド=3
2.91:32.95:31.95:1.03:0.2
3:0.94であり、アジピン酸の回収率は95.8
%、フタル酸の除去率は90.2%であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】シクロアルカン類に対応するジカルボン酸とイ
ミド系化合物又はその分解生成物とを分離する工程の一
例を示すフロー図である。
【符号の説明】
1 第1処理槽 2 第2処理槽 3 第3処理槽 4 切り替えバルブ 5 脱着溶媒供給ライン 6 バルブ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07C 55/14 C07C 55/14 // C07B 61/00 300 C07B 61/00 300 Fターム(参考) 4D017 AA03 BA04 CA13 CA17 CB01 DA01 EA03 4H006 AA02 AC46 AD32 BA12 BA14 BA16 BA20 BA51 BB11 BB12 BB14 BB17 BB20 BB21 BC10 BC11 BC50 BC51 BD84 BE30 BS10 DA66 4H039 CA65 CC40

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シクロアルカン類を、下記式(I) 【化1】 [式中、nは0又は1を示す。Xは酸素原子又は−OR
    基(Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を示す)
    を示す]で表される環状イミド骨格を有するイミド系化
    合物の存在下、酸素と接触させて得られた反応混合物か
    ら、前記シクロアルカン類に対応するジカルボン酸を得
    るジカルボン酸の製造方法であって、前記反応混合物を
    イオン交換樹脂処理に付し、前記シクロアルカン類に対
    応するジカルボン酸と、前記イミド系化合物又は該イミ
    ド系化合物由来の分解生成物とを分離する工程を含むジ
    カルボン酸の製造方法。
  2. 【請求項2】 イミド系化合物が、下記式(1) 【化2】 [式中、nは0又は1を示す。Xは酸素原子又は−OR
    基(Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を示す)
    を示す。R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、同一又は
    異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリ
    ール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキ
    シ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシ
    ル基又はアシルオキシ基を示し、R1、R2、R3、R4
    5及びR6のうち少なくとも2つが互いに結合して二重
    結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成して
    もよい。前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、又は
    1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つ
    が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若し
    くは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN
    −置換環状イミド基がさらに1又は2個以上形成されて
    いてもよい]で表される化合物である請求項1記載のジ
    カルボン酸の製造方法。
  3. 【請求項3】 イオン交換樹脂がキレート樹脂又は陰イ
    オン交換樹脂である請求項1又は2記載のジカルボン酸
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 イオン交換樹脂処理を連続式で行う請求
    項1〜3の何れかの項に記載のジカルボン酸の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 イオン交換樹脂処理槽を複数個直列につ
    ないでイオン交換樹脂処理を行う請求項4記載のジカル
    ボン酸の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2006103989A1 (ja) * 2005-03-28 2008-09-04 ダイセル化学工業株式会社 有機化合物の製造方法、及びジカルボキシイミド骨格を有する化合物の分解方法
JP2011500816A (ja) * 2007-10-31 2011-01-06 エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク 炭化水素の酸化
CN101955424A (zh) * 2010-04-30 2011-01-26 山东瀚霖生物技术有限公司 长碳链二元酸精制生产过程溶剂回收装置
WO2019138338A1 (en) 2018-01-09 2019-07-18 Universidade Do Porto Process of separation and purification of glycerol derivatives

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