JP2003218636A5 - - Google Patents

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Description

【書類名】 明細書
【発明の名称】 温度補償型発振器とその製造方法
【特許請求の範囲】
【請求項1】 温度変化に伴って発振周波数が変化する発振回路と、
該発振回路の発振出力に基いて信号を出力する出力線と、
前記発振回路近傍の温度状態を検出する温度検出回路と、
該温度検出回路からの出力に基づいて前記出力線に出力される信号の周波数を略一定値
に保つための温度補償回路と
を有する温度補償型発振器において、
前記温度補償回路の温度補償機能を有効状態にするか無効状態にするかを選択する選択
手段を設け
該選択手段が前記温度補償機能を有効状態にする場合には、前記温度補償回路に前記発
振回路の発振容量の値を前記温度検出回路によって検出される温度に依存して変化させる
ようにし、前記温度補償機能を無効状態にする場合には、前記発振回路の発振容量を所定
の容量値に固定させるようにしたことを特徴とする温度補償型発振器。
【請求項2】 請求項1記載の温度補償型発振器において、
前記温度補償機能を有効状態にするスイッチと、前記温度補償機能を無効状態にするス
イッチとを有することを特徴とする温度補償型発振器。
【請求項3】 請求項2に記載の温度補償型発振器において、
前記温度補償機能を無効状態にするスイッチは、前記発振容量を所定の容量値に固定す
る手段であり、前記温度補償機能を有効状態にするスイッチがオンの場合には、前記発振
容量を所定の容量値に固定する手段からの信号の入力を禁止し、前記温度補償機能を無効
状態にするスイッチがオンの時は前記温度補償回路からの信号の前記発振回路への入力を
禁止するようにしたことを特徴とする温度補償型発振器。
【請求項4】 前記発振容量は印加電圧に応じて容量値が変化する可変容量を有し、
前記温度補償回路は、該可変容量への印加電圧を変化させて前記発振容量の値を変化させ
る手段を有することを特徴とする請求項に記載の温度補償型発振器。
【請求項】 前記選択手段は、前記発振容量を所定の容量値に固定するときには、
前記可変容量への印加電圧を所定の値に固定する手段を有することを特徴とする請求項
に記載の温度補償型発振器。
【請求項6】 前記発振容量を所定の容量値に固定する手段は定電圧発生回路である
ことを特徴とする請求項1に記載の温度補償型発振器。
【請求項7】 請求項1に記載の温度補償型発振器において、選択情報記憶回路を設
け、
前記選択手段は、該選択情報記憶回路からの信号により前記温度補償回路の温度補償機
能を有効状態にするか無効状態にするかを選択することを特徴とする温度補償型発振器。
【請求項8】 前記選択情報記憶回路は複数ビットのメモリからなり、該複数ビット
のメモリが予め決められた組み合わせにおいて前記温度補償回路の温度補償機能を有効状
態にすることを特徴とする請求項7に記載の温度補償型発振器。
【請求項】 前記選択情報記憶回路導電パターンからなり、該導電パターンが切
断されることによって、前記温度補償回路の温度補償機能を有効状態にすることを特徴と
する請求項記載の温度補償型発振器。
【請求項10】 前記発振容量は複数の固定容量を有し、前記温度補償回路は、その
複数の固定容量の接続状態を変化させて前記発振容量を変化させる手段を有することを特
徴とする請求項に記載の温度補償型発振器。
【請求項11】 請求項に記載の温度補償型発振器において、
前記発振回路と前記出力線との間に可変分周回路を設け、
前記選択手段は、前記温度補償回路の温度補償機能を有効状態にする場合には、該温度
補償回路に、前記可変分周回路の分周比を前記温度検出回路によって検出される温度に依
存して変化させるようにし、該温度補償機能を無効状態にする場合には、前記可変分周回
路の分周比を所定の値に固定する手段を有することを特徴とする温度補償型発振器。
【請求項12】 前記選択手段は、前記発振容量を所定の容量値に固定するときには
、前記可変容量を前記発振容量に含まれないように切り離す手段を有することを特徴とす
る請求項に記載の温度補償型発振器。
【請求項13】 請求項1乃至12のいずれか一項に記載の温度補償型発振器におい
て、
前記温度補償回路の温度補償データを記憶する補償データ記憶回路を設けたことを特徴
とする温度補償型発振器。
【請求項14】 請求項7又は8に記載の温度補償型発振器において、前記温度補償
回路の温度補償データを記憶する補償データ記憶回路を設け、
前記選択情報記憶回路と前記補償データ記憶回路とが一体の記憶回路であることを特徴
とする温度補償型発振器。
【請求項15】 請求項11に記載の温度補償型発器において、
前記選択手段の選択状態を制御するための制御情報を記憶する選択情報記憶回路と、前
記温度補償回路の温度補償データを記憶する補償データ記憶回路とを設け、前記選択情報
記憶回路と前記補償データ記憶回路とが一体の記憶回路であることを特徴とする温度補償
型発振器。
【請求項16】 請求項1乃至のいずれか一項に記載の温度補償型発振器において

前記選択手段の選択状態を制御する制御情報を外部から入力するための制御情報入力端
子を設けたことを特徴とする温度補償型発振器。
【請求項17】 前記制御情報入力端子は、この温度補償型発振器を構成するパッケ
ージに設けた外部端子であることを特徴とする請求項16に記載の温度補償型発振器。
【請求項18】 パッケージ内に、発振回路及び補償データ記憶回路を有する温度補
償回路を構成するICチップと、前記発振回路の振動子とを実装して発振器を構成する工
程と、
該発振器を基準温度に保ち、前記温度補償回路の温度補償機能が無効になっている状態
で、前記発振回路の発振周波数が所望の発振周波数になるように前記振動子を調整する工
程と、
前記振動子を気密封止する工程と、
温度補償データを作成して前記補償データ記憶回路に書き込む工程と、
前記温度補償回路の温度補償機能を有効にする工程と
を有することを特徴とする温度補償型発振器の製造方法。
【請求項19】 前記振動子を調整する工程で、前記発振器を基準温度に保つのは、
前記パッケージを恒温槽に入れて行うことを特徴とする請求項18に記載の温度補償型発
振器の製造方法。
【請求項20】 温度補償データを作成して前記補償データ記憶回路に書き込む工程
は、前記パッケージを恒温槽に入れて行うことを特徴とする請求項18に記載の温度補償
型発振器の製造方法。
【請求項21】 前記温度補償データを作成して前記補償データ記憶回路に書き込む
工程で、前記発振器を複数の温度にさらし、その各温度状態で前記発振回路の発振周波数
を測定して、前記所望の発振周波数との差を測定し、その測定値に基づいて前記温度補償
データを作成することを特徴とする請求項18乃至20のいずれか一項に記載の温度補償
型発振器の製造方法。
【請求項22】 前記発振器をさらす複数の温度が、該発振器の動作保証温度範囲内
の適宜のポイントであることを特徴とする請求項21に記載の温度補償型発振器の製造方
法。
【請求項23】 前記動作保証温度範囲がマイナス40℃からプラス100℃の間で
あり、前記ポイントが11ポイントであることを特徴とする請求項22に記載の温度補償
型発振器の製造方法。
【請求項24】 前記温度補償回路の温度補償機能を有効にする工程では、特定の選
択情報によって温度補償機能を有効にすることを特徴とする請求項18乃至20のいずれ
か一項に記載の温度補償型発振器の製造方法。
【請求項25】 前記特定の選択情報は、予め定められた組み合わせによる複数ビッ
トの情報であることを特徴とする請求項24に記載の温度補償型発振器の製造方法。
【請求項26】 前記振動子を調整する工程では、予め前記振動子の表面に金属膜を
蒸着して共振周波数を基準周波数より低くしておき、その振動子表面の電極膜にイオンビ
ームを照射するかスパッタエッチングを行って、該電極膜の質量を僅かずつ減少させるこ
とによって調整することを特徴とする請求項18乃至20のいずれか一項に記載の温度補
償型発振器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、周囲温度の変化に係わらず出力信号の周波数を略一定に保つようにした温
度補償型発振器に関し、特にその温度補償機能を無効状態にすることも可能にした温度補
償型発振器とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
温度補償型発振器(TCXO)は種々の分野で使用されているが、近年携帯電話機等の
携帯用移動通信機器に多用されている。この種の温度補償型発振器は一般に、10MHz
帯のATカット水晶片(振動子)を振動源として発振回路を構成し、これに何らかの周波
数可変手段を用いた温度補償回路を設け、ATカット水晶片の3次曲線の温度特性を打ち
消すことにより発振周波数を安定化させるようにした水晶発振器が多用されている。
そして、その温度補償回路の構成により、アナログ温度補償型発振器とデジタル温度補
償型発振器とに大別される。
【0003】
この種の温度補償型発振器に対しては、発振出力信号の安定性とともに、小型軽量化と
低価格化が求められている。
超小型の表面実装用温度補償型発振器のパッケージ構成例を図8に示す。
この温度補償型発振器は、パッケージ本体11と溶接リング12とカバー13とによっ
てパッケージ(容器)10を構成しており、その内部に水晶片15と、後述する発振回路
および温度補償回路を構成するMOS型のIC(集積回路)チップ16と、チップ容量等
の回路素子17を取り付けて密封している。
【0004】
この温度補償型発振器の回路構成は図9に示すようになっている。発振回路20は、水
晶片15とインバータ21と帰還抵抗22とを並列に接続し、その両接続点をそれぞれ直
流カット容量Cc,Cdと発振容量である電圧制御型可変容量(コンデンサ:capacitor
)23,24を介して接地して、インバータ発振回路を構成している。そして、インバー
タ21の出力側の接続点から発振出力に基く信号を出力する出力線25を引き出し、出力
端子26に接続している。なお、振動子として水晶片15に代えて他の圧電素子を用いる
ことも可能である。
さらに、この発振回路20における水晶片15の近傍の温度状態をサーミスタ等によっ
て検出する温度検出回路18と、その温度検出回路18からの出力信号に基いて発振回路
20の出力線25に出力される信号の周波数を一定に保つための温度補償回路30とを設
けている。
【0005】
その温度補償回路30は、温度補償を行うための補償データを記憶する補償データ記憶
回路(不揮発性メモリ)31と、その補償データと温度検出回路18からの検出温度を示
す出力信号とに基いて制御電圧を発生するD/A変換回路32とからなる。そして、その
D/A変換回路32から出力する制御電圧を、発振回路20に設けた抵抗R1,R2を介
してそれぞれ各電圧制御型可変容量23,24の正極側(直流カット容量Cc,Cdとの
各接続点)に印加し、その電圧に応じて各電圧制御型可変容量23,24の発振容量を変
化させる。それによって、発振回路20の発振周波数を制御して出力信号の周波数を略一
定に保つようにする。
【0006】
このような温度補償型発振器において、水晶片15およびICチップ16内に形成され
る発振回路20は製造上のバラツキ等によって、全てを完全に同一に作ることはできない
ため、それぞれ異なる温度−周波数特性を有してしまう。したがって、全ての発振回路2
0を同一の基準によって温度補償することはできない。そのため、個々の発振回路毎に異
なる補償データを作成して補償データ記憶回路31に記憶させることが必要になる。しか
し、水晶片15の特性のバラツキが大きいと補償しきれなくなるので、予め水晶片15の
特性をできるだけ揃えるように調整する必要がある。
【0007】
そこで、従来は次のようなステップで調整作業を行なっていた。
ステップ1:パッケージ(図8のパッケージ本体11)内に水晶片15等の圧電素子だけ
を実装する。
ステップ2:パッケージを基準温度(一般に室温:25℃)に保ち、ネットワークアナラ
イザなどでその圧電素子の共振周波数をモニタしながら、イオンビーム等で圧電素子表面
の電極膜を除去して所望の周波数になるように調整する。
ステップ3:パッケージに発振回路および温度補償回路を構成するICチップを実装する

ステップ4:パッケージを複数の温度状態にさらし、その各温度状態で発振周波数を測定
して、所望の発振周波数fとの差を測定する。
ステップ5:その測定値に基いて温度補償データを作成し、それをICチップの補償デー
タ記憶回路(不揮発性メモリ)に書き込む。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の温度補償型発振器の調整方法では、水晶片等の圧電素子の特性を調
整する際には、発振回路を構成するICチップは実装せず、ネットワークアナライザなど
で外部から圧電素子を共振させてその共振周波数をモニタし、その周波数が所望の値にな
るように圧電素子表面の電極膜を除去していた。
そのため、パッケージにICチップも実装して圧電素子とともに発振回路を構成して発
振動作をさせた時の発振周波数と、予め調整した共振周波数との間にずれが生じてしまう
という問題があった。しかも、調整ステップも多くなり、調整コストが余分にかかってい
た。
【0009】
そこで、パッケージ内に圧電素子とICチップを実装して発振回路を動作させ、その発
振周波数をモニタして、室温での圧電素子の共振周波数の調整とその後の補償データの作
成とを、実際の使用状態に近い状態で続けて行なえるようにすることが考えられるが、そ
の場合、温度補償回路も動作してしまう。しかも、温度補償データ記憶回路には初期状態
では補償データは記憶されていないが、それを記憶するためのレジスタの各ビットが全て
“0”になっている場合と、全て“1”になっている場合とがあり、初期値が判らない。
そのため、水晶片等の圧電素子の共振周波数を適切に調整することができず、その後の補
償データの作成も適切にできないという問題がある。
【0010】
この発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、パッケージ内に水
晶片等の圧電素子とICチップなどを実装して温度補償型発振器を構成した状態で、その
発振回路を動作させて圧電素子自体の温度特性を正確に調整できるようにし、且つその後
の補償データの作成とそれを補償データ記憶回路に記憶させる作業も、続けて適切に行な
えるようにし、温度補償型発振器の調整工程の簡素化と高精度化を図ることを目的とする

【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明による温度補償型発振器は上記の目的を達成するため、温度変化に伴って発振
周波数が変化する発振回路と、その発振出力に基いて信号を出力する出力線と、発振回路
近傍の温度状態を検出する温度検出回路と、その温度検出信号に基づいて上記出力線に出
力される信号の周波数を略一定値に保つための温度補償回路とを有する温度補償型発振器
において、温度補償回路の温度補償機能を有効状態にするか無効状態にするかを選択する
選択手段を設けた。
そして、その選択手段が上記温度補償機能を有効状態にする場合には、上記温度補償回
路に上記発振回路の発振容量の値を上記温度検出回路によって検出される温度に依存して
変化させるようにし、上記温度補償機能を無効状態にする場合には、上前記発振回路の発
振容量を所定の容量値に固定させるようにする。
【0012】
上記温度補償型発振器は、上記温度補償機能を有効状態にするスイッチと、上記温度補
償機能を無効状態にするスイッチとを有するとよい。
上記温度補償機能を無効状態にするスイッチは、上記発振容量を所定の容量値に固定す
る手段であるとよい。そして、上記温度補償機能を有効状態にするスイッチがオンの場合
には、上記発振容量を所定の容量値に固定する手段からの信号の入力を禁止し、上記温度
補償機能を無効状態にするスイッチがオンの時は上記温度補償回路からの信号の上記発振
回路への入力を禁止するようにするとよい。
その発振容量は印加電圧に応じて容量値が変化する可変容量を有し、上記温度補償回路
は、その可変容量への印加電圧を変化させて発振容量の値を変化させる手段を有するとよ
い。
その場合、上記選択手段は、上記発振容量を所定の容量値に固定するときには、上記可
変容量への印加電圧を所定の値に固定する手段を有するとよい。
【0013】
また、上記発振容量を所定の容量値に固定する手段は定電圧発生回路であってもよい。
さらに、選択情報記憶回路を設け、上記選択手段は、その選択情報記憶回路からの信号
により上記温度補償回路の温度補償機能を有効状態にするか無効状態にするかを選択する
ようにしてもよい。
上記選択情報記憶回路は複数ビットのメモリからなり、その複数ビットのメモリが予め
決められた組み合わせにおいて上記温度補償回路の温度補償機能を有効状態にするように
することもできる。
【0014】
上記選択情報記憶回路が導電パターンからなり、その導電パターンが切断されることに
よって、上記温度補償回路の温度補償機能を有効状態にすることもできる。
あるいは、上記発振容量は複数の固定容量を有し、上記温度補償回路は、その複数の固
定容量の接続状態を変化させて発振容量を変化させる手段を有するようにしてもよい。
また、前述の選択手段は、発振容量を所定の容量値に固定するときには、可変容量を発
振容量に含まれないように切り離す手段を有するようにしてもよい。
【0015】
前述した温度補償型発振器において、上記発振回路と上記出力線との間に可変分周回路
を設け、上記選択手段は、上記温度補償回路の温度補償機能を有効状態にする場合には、
該温度補償回路に、上記可変分周回路の分周比を上記温度検出回路によって検出される温
度に依存して変化させるようにし、該温度補償機能を無効状態にする場合には、上記可変
分周回路の分周比を所定の値に固定する手段を有するようにしてもよい。
【0016】
これらの温度補償型発振器において、上記温度補償回路の温度補償データを記憶する補
償データ記憶回路を設け、上記選択情報記憶回路とこの補償データ記憶回路とを一体の記
憶回路にすることもできる。
あるいは、上記選択手段の選択状態を制御するための制御情報を記憶する選択情報記憶
回路と、上記温度補償回路の温度補償データを記憶する補償データ記憶回路とを設け、
の補償データ記憶回路と上記選択情報記憶回路とを一体の記憶回路(例えば、1個の不揮
発性メモリ)で構成することができる。
上記選択手段の選択状態を制御する制御情報を外部から入力するための制御情報入力端
子を設けてもよい。その制御情報入力端子は、この温度補償型発振器を構成するパッケー
ジに設けた外部端子であってもよい。
【0017】
次に、この発明による温度補償型発振の製造法方は、パッケージ内に、発振回路及び補
償データ記憶回路を有する温度補償回路を構成するICチップと、上記発振回路の振動子
とを実装して発振器を構成する工程と、
その発振器を基準温度に保ち、上記温度補償回路の温度補償機能が無効になっている状
態で、上記発振回路の発振周波数が所望の発振周波数になるように上記振動子を調整する
工程と、
上記振動子を気密封止する工程と、
温度補償データを作成して上記補償データ記憶回路に書き込む工程と、
上記温度補償回路の温度補償機能を有効にする工程とを有する。
【0018】
上記振動子を調整する工程で、上記発振器を基準温度に保つのは、上前記パッケージを
恒温槽に入れて行うとよい。
上記温度補償データを作成して上記補償データ記憶回路に書き込む工程も、上記パッケ
ージを恒温槽に入れて行うとよい。
上記温度補償データを作成して上記補償データ記憶回路に書き込む工程で、上前記発振
器を複数の温度にさらし、その各温度状態で上記発振回路の発振周波数を測定して、上記
所望の発振周波数との差を測定し、その測定値に基づいて上記温度補償データを作成する
ことができる。
上記発振器をさらす複数の温度が、該発振器の動作保証温度範囲内の適宜のポイントで
あるとよい。
その動作保証温度範囲がマイナス40℃からプラス100℃の間であり、上記ポイント
が11ポイントであるのが望ましい。
【0019】
上記温度補償回路の温度補償機能を有効にする工程では、特定の選択情報によって温度
補償機能を有効にすることができる。
その特定の選択情報は、予め定められた組み合わせによる複数ビットの情報であっても
よい。
上記振動子を調整する工程では、予め上記振動子の表面に金属膜を蒸着して共振周波数
を基準周波数より低くしておき、その振動子表面の電極膜にイオンビームを照射するかス
パッタエッチングを行って、該電極膜の質量を僅かずつ減少させることによって調整する
ことができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1はこの発明による温度補償型発振器の第1の実施形態の構成を示すブロック回路図
であり、図8及び図9と同様な部分には同じ符号を付してあり、それらの説明は省略する

この図1に示す温度補償型発振器は、図9に示した従来例と同様な出力線25および出
力端子26を有する発振回路20と、温度検出回路18及び温度補償回路30を備えてい
る。さらに、この実施形態に特有のものとして、選択手段である選択回路40と、その選
択状態を制御するための制御情報を記憶する選択情報記憶回路(不揮発性メモリ)50と
、一定電圧Vkを出力する定電圧発生回路51とを備えている。
【0021】
また、選択情報記憶回路50とは別に、選択回路40の選択状態を制御するための制御
情報を入力する制御情報入力端子を、図8に示したパッケージ10の外部に外部端子52
として設けている。この制御情報入力端子は、パッケージ本体11の内部に設けてもよい

選択回路40は、一対のトランスミッションゲート41,42と、3入力のNAND回
路43と、2個のインバータ(NOT回路)44,45によって構成されている。そして
、温度補償回路30の出力である制御電圧Vcは、一方のトランスミッションゲート41
を介して発振回路20の図9に示した抵抗R1,R2の共通接続点に印可される。定電圧
発生回路51の出力である一定電圧Vkは、他方のトランスミッションゲート42を介し
て、同じく発振回路20の抵抗R1,R2の共通接続点に印加される。
【0022】
選択情報記憶回路50は3ビットの選択情報を出力し、そのビット1とビット3の出力
はそのまま3入力のNAND回路43の2つの入力となり、ビット2の出力はインバータ
44によって反転されてNAND回路43の残る一つの入力となる。したがって、選択情
報記憶回路50から出力される選択情報が“101”のときにのみ、NAND回路43の
3つの入力が全て“1”になるのでその出力が“0”になる。
このNAND回路43の出力は、トランスミッションゲート41の負論理側のゲートと
トランスミッションゲート42の正論理側のゲートに直接印加され、また、トランスミッ
ションゲート41の正論理側のゲートと、トランスミッションゲート42の負論理側のゲ
ートにインバータ45で反転されて印加される。
【0023】
そのため、選択情報記憶回路50から出力される選択情報が“101”のときにのみ、
トランスミッションゲート41がオンになり、トランスミッションゲート42はオフにな
るので、温度補償回路30から出力する制御電圧Vcがトランスミッションゲート41を
通過して発振回路20へ印加され、図9に示した抵抗R1,R2を介して電圧制御型可変
容量23,24に印加されるため、その発振容量の値が温度に依存して変化し、発振回路
20の発振周波数を一定に保つように温度補償される。
選択情報記憶回路50から出力される選択情報が“101”以外のときには、トランス
ミッションゲート42がオンになり、トランスミッションゲート41はオフになるので、
定電圧発生回路51から出力する一定電圧Vkがトランスミッションゲート42を通過し
て発振回路20へ印加され、図9に示した抵抗R1,R2を介して電圧制御型可変容量2
3,24に印加されるため、その発振容量の値はその一定電圧に応じた所定の容量値に固
定され、発振回路20の発振周波数の温度補償はなされない。
【0024】
したがって、選択回路40は、選択情報記憶回路50から出力される3ビットの選択情
報に基いて、発振回路20に対して温度補償回路30からの制御電圧Vcを供給して温度
補償機能を有効にするか、または定電圧発生回路からの一定(固定)電圧Vkを供給して
温度補償機能を無効にするかを選択する。
この選択回路40の切り換えは、外部端子52に制御情報としてハイレベル“1”の信
号(電圧)を印可するか、ローレベル“0”の信号(電圧)を印可することによっても行
なうことができる。
この外部端子52のような制御情報入力端子を設けた場合には、図1における選択情報
記憶回路50とNAND回路43とインバータ44を省略してもよい。
【0025】
この温度補償型発振器よれば、発振回路20の水晶片の初期調整および温度補償データ
を作成して記憶させる調整作業は、パッケージ内に水晶片と発振回路及び温度補償回路等
を構成するICチップなどを実装して温度補償型発振器を完成した状態で、その発振回路
20を動作させて行なうことができる。その調整時には、選択情報記憶回路50の選択情
報を“101”以外にしておくことにより、温度補償機能を無効にし、発振回路20を所
定の発振容量で発振動作させる。
【0026】
その調整作業のステップは次のようになる。
ステップ1:パッケージ(例えば図8に示したパッケージ本体11)内に、発振回路20
及び図1に示した各回路を構成するICチップを実装し、次いで水晶片を実装する。
ステップ2:パッケージを基準温度(一般に室温:25℃)に保ち、その温度補償型発振
器の温度補償機能を無効にして単純な発振器として動作させ、その発振周波数をネットワ
ークアナライザなどでモニタしながら、イオンビーム等で水晶片表面の電極膜を除去して
所望の発振周波数fになるように調整する。
ステップ3:パッケージにカバーを取付け、水晶片を気密封止する。
ステップ4:パッケージを複数の温度にさらし、その各温度状態で発振周波数を測定して
、所望の発振周波数fとの差を測定する。
ステップ5:その測定値に基いて温度補償データを作成し、それをICチップの補償デー
タ記憶回路(不揮発性メモリ)に書き込む。
【0027】
この調整後に、選択情報記憶回路50の選択情報を“101”にすれば、温度補償機能
が有効になり、温度補償型発振器として正常に動作可能になり、超小型の温度補償型発振
器が完成する。
したがって、この発明による温度補償型発振器の製造方法においては、発振回路を実際
の使用状態と同様に発振させながら、水晶片の温度特性を温度補償回路の影響を受けずに
正確に調整でき、且つその後の補償データの作成とそれを補償データ記憶回路に記憶させ
る作業も、続けて適切に行なうことができる。そのため、温度補償型発振器の調整工程の
簡素化と高精度化を図ることができる。
【0028】
ステップで、パッケージを基準温度(一般に室温:25℃)に保つのは、パッケージ
を恒温槽に入れて調整作業を行なうとよい。
ステップで、パッケージを複数の温度状態にさらすのも、恒温槽の設定温度を順次変
化させるか、異なる温度に設定した複数の恒温槽に順次パッケージを収納すればよい。そ
の測定温度範囲は、この発振器の動作保証温度範囲であり、例えばマイナス40℃〜プラ
ス100℃の間の適宜のポイント(例えば11ポイント程度)とする。
水晶片の基準周波数の調整は、予め水晶片の表面に銀等の金属膜を蒸着して、共振周波
数を基準周波数より低めにする膜厚(厚め)に形成しておき、その水晶片表面の電極膜に
イオンガンを用いてイオンビームを照射したり、スパッタエッチングを行ったりして、電
極膜の質量を僅かずつ減少させることによって行う。
なお、発振回路の振動子として、水晶片に代えて他の圧電素子を使用する場合も同様で
ある。
【0029】
ATカット水晶片を振動子とする発振回路の発振周波数の温度特性はほぼ3次曲線にな
るため、基準温度で発振周波数が所望の周波数fになるように調整しても、環境温度が
変化すると発振周波数がずれてまう。そのため、使用保証温度範囲の下限から上限までの
間で実際に温度を変化させて、その各温度状態(測定ポイント)で発振回路の実際の発振
周波数すなわち出力端子26に出力される信号の周波数を測定し、所望の発振周波数f
との差を測定する。
そして、その差を0にするための制御電圧Vcを温度補償回路30で発生させるのに必
要な温度補償データを算出して、図9に示した補償データ記憶回路(不揮発性メモリ)3
1に温度データに対応させて書き込む。
なお、測定ポイントは多い方が精度の高い温度補償データを作成できるが、測定時間が
長くなってしまうので、適当数(例えば11ポイント程度)の温度状態での測定結果から
その発振回路の温度特性の3次曲線を推定して、各測定ポイント間の温度に対する温度補
償データも補間して作成し、それを補償データ記憶回路に書き込むようにするとよい。
【0030】
次に、発振回路の異なる例、特にその発振容量とその容量可変手段の異なる例を図2及
び図3に示す。
図2に示す発振回路は、図9に示した発振回路20と同様に、水晶片15とインバータ
21と帰還抵抗22とを並列に接続し、その両接続点をそれぞれ発振容量を介して接地し
て、インバータ発振回路を構成している。しかし、その発振容量として、電圧制御型可変
容量に代えて、複数の固定容量の並列回路を用いている。
すなわち、コンデンサC1〜C5をそれぞれスイッチS1〜S5を介して並列に接続し
た第1の容量アレイ27をインバータ21の入力側とアースとの間に設け、コンデンサC
6〜C10をそれぞれスイッチS7〜S10を介して並列に接続した第2の容量アレイ2
8とし、インバータ21の出力側とアースとの間に設けている。各スイッチS1〜S10
には、MOS−FET等のスイッチング素子を使用するとよい。
【0031】
この場合、温度補償回路には図9に示したD/A変換回路に代えて、補償データ記憶回
路31から温度検出回路18による温度検出データに対応する補償データを読み出して、
発振回路のスイッチS1〜S10のON/OFF状態を制御する可変のスイッチ制御信号
を出力する回路を設ける。
また、図1に示した定電圧発生回路51に変えて、発振回路のスイッチS1〜S10の
うちの所定のスイッチ(例えば、スイッチS1〜S3とS6〜S8)をONにし、他のス
イッチはOFFにする固定のスイッチ制御信号を発生する回路を設け、その固定のスイッ
チ制御信号と上述した温度補償回路が発生する可変のスイッチ制御信号のいずれかを選択
手段によって選択して、発振回路のスイッチS1〜S10の各制御電極に印加して、その
ON/OFFを制御するようにする。
【0032】
そして、初期調整時に温度補償機能を無効にする際には、選択手段によって上記固定の
スイッチ制御信号を選択して発振回路に入力させ、例えばスイッチS1〜S3とS6〜S
8をONにして他のスイッチはOFFにする。それによって、第1の容量アレイ27の容
量値はコンデンサC1〜C3の並列回路の容量値に固定され、第2の容量アレイ28の容
量値はコンデンサC6〜C8の並列回路の容量値に固定される。したがって、発振容量は
温度変化に関係なく一定となる。
初期調整後、温度補償機能を有効にするときには、選択手段によって温度補償回路から
の可変のスイッチ制御信号を選択して発振回路に入力させ、第1の容量アレイ27のスイ
ッチS1〜S5及び第2の容量アレイ28のスイッチS6〜S10のそれぞれ1個以上を
選択的にONにする。それによって、第1の容量アレイ27及び第2の容量アレイ28の
有効なコンデンサの組み合わせ(接続状態)を変え、各容量アレイ27,28の容量値(
発振容量)を温度変化に依存して変化させる。
【0033】
例えば、前述のように第1の容量アレイ27のスイッチS1〜S3と第2の容量アレイ
28のS6〜S8をONにして、コンデンサC1〜C3、コンデンサC6〜C8がそれぞ
れ並列接続された状態を基準状態とすると、その状態からスイッチS1又はS2あるいは
その両方をOFFにし、スイッチS6又はS7あるいはその両方をOFFにすると、第1
の容量アレイ27及び第2の容量アレイ28による各容量値は減少する。また、標準状態
から、スイッチS4又はS5あるいはその両方をONにし、スイッチS9又はS10ある
いはその両方をONにすると、第1の容量アレイ27及び第2の容量アレイ28による各
容量値は増加する。
さらに、第1の容量アレイ27及び第2の容量アレイ28を構成するコンデンサの数及
びその各コンデンサの容量値を適宜選定し、その接続状態を変化させることによって、発
振容量をかなり細かく制御して発振周波数の温度補償を行うことができる。
【0034】
図3に示す発振回路は、図9に示した発振回路20における電圧制御型可変容量23,
24にそれぞれ直列にスイッチS11,S12を介挿し、それらと並列にそれぞれコンデ
ンサCaとスイッチS13の直列回路、およびコンデンサCbとスイッチS14の直列回
路を接続している。コンデンサCa,Cbは固定容量である。Cc,Cdは直流分カット
容量である。
そして、初期調整時に温度補償機能を無効にする際には、選択回路によってスイッチS
11,S12をOFFにして、スイッチS13,S14をONにすることにより発振容量
はコンデンサCa,Cbの容量値に固定される。このとき電圧制御型可変容量23,24
は、発振容量に含まれないように切り離された状態になる。
【0035】
初期調整後、温度補償機能を有効にするときには、選択回路によってスイッチS11,
S12をONにし、スイッチS13,S14をOFFにすることにより、電圧制御可変型
容量23,24が発振容量となり、温度補償回路からの制御電圧が抵抗R1,R2を介し
て印加され、その各容量値が温度変化に依存して変化するため、発振周波数の温度補償を
行うことができる。
なお、これらの発振回路においても、振動子として水晶片に代えて他の圧電素子を使用
することもできる。
【0036】
次に、この発明による温度補償型発振器の第2の実施形態を図4によって説明する。図
4において、図1及び図9と同等な部分には同一の符号を付してあり、それらの説明は省
略する。但し、この実施形態における温度補償回路の補償データ記憶回路31と選択情報
記憶回路50は一体の記憶回路であり、1個の不揮発性メモリ19を兼用し、その記憶領
域の殆どを補償データ記憶回路31として使用し、一部を選択情報記憶回路50として使
用している。
この図4に示す温度補償型発振器は、発振回路20と出力線25との間に可変分周回路
60を設け、選択手段として、第1の選択回路40Aと第2の選択回路40Bとを設けて
いる。この第1,第2の選択回路40A,40Bは同じ回路構成であり、第2の選択回路
40Bに示すように、デジタルゲート回路47,48
と、3入力のAND回路46と、2個のインバータ(NOT回路)44,49によって構
成されている。
【0037】
選択情報記憶回路50が出力する3ビットの選択情報のうちビット1とビット3の出力
はそのまま3入力のAND回路46の2つの入力となり、ビット2の出力はインバータ4
4によって反転されてAND回路46の残る一つの入力となる。したがって、選択情報記
憶回路50から出力される選択情報が“101”のときにのみ、AND回路46の3つの
入力が全て“1”になるのでその出力が“1”になる。選択情報記憶回路50から出力さ
れる選択情報が“101”以外のときには、AND回路46の出力は“0”になる。
このAND回路46の出力は、デジタルゲート回路47の制御端子Cに直接印加され、
また、デジタルゲート回路48の制御端子Cへはインバータ49で反転されて印加される

【0038】
そのため、この第2の選択回路40Bは、選択情報記憶回路50から出力される選択情
報が“101”のときにのみ、デジタルゲート回路47がオンになりデジタルゲート回路
48はオフになるので、温度補償回路30′の補償データ出力回路33から入力する可変
の分周数データDcを選択して可変分周回路60へ出力し、選択情報記憶回路50から出
力される選択情報が“101”以外のときには、デジタルゲート回路48がオンになりデ
ジタルゲート回路47はオフになるので、ROM52から入力する固定の分周数データD
kを選択して可変分周回路60へ出力する。
第1の選択回路40Aもこれと全く同じ構成であり、選択するのがスイッチ制御データ
Sc,Skで、選択したスイッチ制御データの出力先が発振回路20である点が異なるだ
けである。
【0039】
温度補償回路30′の補償データ出力回路33は、温度検出回路18によって検出され
る温度のデータに応じて、補償データ記憶回路31の補償データを参照して、温度補償を
行うための可変のスイッチ制御信号(デジタルデータ)Scと分周数データDcとを出力
し、それぞれれ第1,第2の選択回路40A,40Bのデジタルゲート回路47へ入力さ
せる。
一方、読み出し専用メモリであるROM52には、固定のスイッチ制御信号(デジタル
データ)Skと分周数データDkとが予め記憶されており、図示を省略している読み出し
回路によってその各データを読み出して、それぞれ、第1,第2の選択回路40A,40
Bのデジタルゲート回路48へ入力させる。
【0040】
そこで、第1の選択回路40Aは、選択情報記憶回路50から出力される選択情報が“
101”のときにのみ、温度補償回路30′の補償データ出力回路33から入力する可変
のスイッチ制御信号Scを選択して発振回路20へ出力し、選択情報記憶回路50から出
力される選択情報が“101”以外のときには、ROM52から入力する固定のスイッチ
制御信号Skを選択して発振回路20へ出力する。
発振回路20は、例えば図2に示したように、発振容量として多数のコンデンサをスイ
ッチを介して並列に設けた第1,第2の容量アレイ27,28を用いた回路であり、その
各スイッチS1〜S10のON/OFFを第1の選択回路40Aから出力されるスイッチ
制御信号(デジタルデータ)Sc又はSkによって制御することにより、その発振容量を
制御して発振周波数を可変することができる。図2に示したスイッチS1〜S10として
はMOS型アナログスイッチ等の1ビットのデジタル信号でON/OFFを制御できる電
子スイッチを用いる。
【0041】
可変分周回路60としては公知の回路を使用するが、その一例を図5によって説明する
。この可変分周回路60は、リファレンスデバイダ61、位相比較器62、ローパスフィ
ルタ(以下「LPF」と略称する)63、電圧制御型発振回路(以下「VCO」と略称す
る)64、フィードバックデバイダ65、および出力バッファ66によって構成されてい
る。
そして、発振回路20からの発振出力信号をリファレンスデバイダ61によって分周し
て、位相比較器62に基準信号として入力する。一方、VCO64の発振信号がフィード
バックデバイダ65によって分周されて、位相比較器62に比較信号して入力する。位相
比較器62はその二つの入力信号の位相差に応じた電圧を出力し、それがLPF63を介
してVCO64に供給され、VCO64の発振周波数を制御する。そのVCOの発振信号
が出力バッファ66を介して出力線25に出力される。
リファレンスデバイダ61とフィードバックデバイダ65は、いずれも可変の整数値で
分周できるプログラマブルデバイダである。
【0042】
この可変分周回路60の出力信号の周波数foは、発振回路20からの発振出力信号の
周波数をfcとすると、リファレンスデバイダ61の分周数Mとフィードバックデバイダ
65の分周数Nとによって決り、その関係は次式で示される。
fo=fc×N/M
リファレンスデバイダ61は入力信号の周波数を1/Mに分周して出力し、フィードバ
ックデバイダ65は入力信号の周波数を1/Nに分周して出力する。
N/Mが分周比(この場合は逓倍数)であり、分周数MとNの値によって任意に設定で
きる。例えば、M=N=100を基準値として、分周数MとNの値を図6に示すように変
化させることにより、分周比(逓倍数)を1.000から0.005刻みで増加させたり
減少させたりすることができる。
したがって、発振回路20からの発振出力信号の周波数fcが20MHzであった場合
、出力信号の周波数foを、20MHzを基準にして0.1MHz刻みで増減させること
ができる。
【0043】
そこで、図4に示したROM52に記憶させる固定の分周数データDkを分周数MとN
によって構成してM=N=100とし、補償データ出力回路33から出力する可変の分周
数データDcも分周数MとNによって構成して図6に示したようにすれば、図4における
第2の選択回路40BがROM52からの固定の分周数データDkを選択して可変分周回
路60に入力させたときには、M=N=100であるから、分周比は1.000となり、
出力信号の周波数foは、発振回路20からの発振出力信号の周波数fcと同じ(図6の
例では20MHz)になる。
図4における第2の選択回路40Bが補償データ出力回路33から出力する可変の分周
数データDcを選択して可変分周回路60に入力させたときには、分周数データDcを構
成する分周数MとNの値によって、分周比を種々に変化させることができ、図6に示した
例では、分周比(逓倍数)を1.000から0.005刻みで増加させたり減少させたり
して、出力信号の周波数foを20MHzを基準にして0.1MHz刻みで増減させるこ
とができる。
【0044】
この分周比(逓倍数)の最小可変幅(刻み幅)及び最大可変範囲は、分周数MとNの選
択によって任意に設定することができる。
この実施形態によっても、発振回路20の水晶片の共振周波数を調整し、補償データを
作成して補償データ記憶回路31に記憶させるまでの初期調整時には、選択情報記憶回路
50の3ビットの選択情報が“101”以外の状態になっている。
したがって、第1の選択回路40AはROM52から入力する固定のスイッチ制御信号
Skを選択して発振回路20へ出力する。また、第2の選択回路40BもROM52から
入力する固定の分周数データDkを選択して可変分周回路60へ出力する。
【0045】
それによって、発振回路20はその固定のスイッチ制御信号Skによって、例えば図2
に示したスイッチS1〜S3とS6〜S8だけがONになって他のスイッチはOFFにな
る。そのため、第1の容量アレイ27の容量値はコンデンサC1〜C3の並列回路の容量
値に固定され、第2の容量アレイ28の容量値はコンデンサC6〜C8の並列回路の容量
値に固定される。これが標準状態で、発振容量は温度変化に関係なく一定となり、発振出
力信号の周波数fcは水晶片15の温度特性によって多少変動するが温度補償はなされな
い。
一方、可変分周回路60は、固定の分周数データDkのM=N=100によって、分周
比が1.000に固定され、出力線に出力する信号の周波数foは発振回路20の発振出
力信号の周波数fcと同じになり、ここでも温度補償はなされない。すなわち、この時は
温度補償機能は無効になり、図4に示した温度補償型発振器は単なる発振器として動作す
る。
【0046】
調整作業が完了すると、補償データ記憶回路31への最後の補償データの書き込み時あ
るいはその直後に、同じ不揮発性メモリ19内の選択情報記憶回路50に選択情報として
“101”を書き込む。
それによって、選択情報記憶回路50が出力する選択情報が“101”になり、第1の
選択回路40Aは温度補償回路30′の補償データ出力回路33からの可変のスイッチ制
御信号Scを選択して発振回路20へ出力する。また、第2の選択回路40Bも補償デー
タ出力回路33からの可変の分周数データDcを選択して可変分周回路60へ出力する。
【0047】
発振回路20は、その可変のスイッチ制御信号Scによって、例えば図2に示した第1
の容量アレイ27のスイッチS1〜S5及び第2の容量アレイ28のスイッチS6〜S1
0のそれぞれ1個以上を選択的にONにする。したがって、第1の容量アレイ27及び第
2の容量アレイ28の有効なコンデンサの組み合わせ(接続状態)を変え、各容量アレイ
27,28の容量値(発振容量)を温度変化に依存して変化させ、発振回路20の発振信
号の周波数fcが温度によって変動するのを補償するように調整する。
【0048】
また、可変分周回路60は、入力される分周数データDcを構成する分周数MとNの値
によって分周比を変化させ、出力信号の周波数foを、fc×N/Mにして出力する。図
6に示した例では出力信号の周波数を20MHzを基準にして0.1MHz刻みで増減さ
せることができる。
このように、温度補償機能を有効にしたときには、発振回路20における発振容量の値
の調整と、可変分周回路60における分周比(逓倍数)の調整の組み合わせによって、水
晶片の温度特性に基く発振周波数の変動を補償して、常に一定周波数の出力信号を出力端
子26に出力させることができる。
この実施形態においても、発振回路20の振動子として、水晶片に代えて他の圧電素子
を使用することもできる。
【0049】
次に、この発明による温度補償型発振器の第3の実施形態を図7によって説明する。図
7において、図1と同等な部分には同一の符号を付してあり、それらの説明は省略する。
この図7に示す温度補償型発振器は、その選択回路40′が図1に示した選択回路40
からNAND回路43とインバータ44を除いた回路であり、図1に示した温度補償型発
振器における不揮発性メモリによる選択情報記憶回路50に代えて、所定の導電パターン
56を用いた選択情報記憶回路55を設けている。なお、図1における外部端子52は設
けていない。
【0050】
その導電パターン56は、例えば図8に示したパッケージ本体11内あるいは外部の初
期調整完了時に外部から操作できる部位に設けた絶縁基板上に形成される。そして、その
一端を正の電源ライン57に接続し、他端は抵抗58を介して接地される。その導電パタ
ーン56と抵抗58との接続点であるP点の電圧レベルを2値の選択情報として選択回路
40′に出力し、それを図示のようにトランスミッションゲート41,42の各ゲートに
直接あるいはインバータ45によって反転して印加する。
【0051】
初期状態では選択情報記憶回路55の導電パターン56が導通しており、P点の電圧レ
ベルはハイ“1”であるから、選択回路40′のトランスミッションゲート42がONに
なり、トランスミッションゲート41はOFFになっている。したがって、定電圧発生回
路51が出力する一定電圧Vkがトランスミッションゲート42を通して発振回路20に
供給され、発振回路20の発振容量の値を所定容量値に固定するので、温度補償機能は無
効になる。
【0052】
初期調整が完了した後、選択情報記憶回路55の導電パターン56を切断すると、P点
の電圧レベルが接地レベルすなわちロー“0”になるので、選択回路40′のトランスミ
ッションゲート41がONになり、トランスミッションゲート42はOFFになる。した
がって、温度補償回路30が温度検出回路18による温度検出信号に応じて出力する制御
電圧Vcが、トランスミッションゲート41を通して発振回路20に供給され、発振回路
20の発振容量値を温度変化に依存して変化させる。それによって、環境温度が変動して
も発振周波数すなわち出力線25を通して出力端子26に出力される信号の周波数を一定
に保持するように、温度補償機能が有効に作用する。
【0053】
前述した第1,第2の実施形態では、選択情報記憶回路50の選択情報を“101”に
することによって温度補償機能を有効にしているが、これに限定するものではなく、どの
ようなデータをその選択情報として用いてもよいし、そのデータの桁数の任意である。但
し、一般に選択情報記憶回路50を構成する不揮発性メモリ等は、初期状態でのデータが
すべて“1”またはすべて“0”になる確率が高いので、上述の選択情報としては“11
1”や“000”を避けて設定した方が好ましい。
【0054】
【発明の効果】
以上説明してきたように、この発明による温度補償型発振器およびその製造方法によれ
、パッケージ内に水晶片等の圧電素子とICチップなどを実装して温度補償型発振器を
構成した状態で、その発振回路を動作させて圧電素子自体の温度特性を正確に調整するこ
とができる。また、その後の補償データの作成とそれを補償データ記憶回路に記憶させる
作業も、続けて適切に行うことができ、調整工程の簡素化と高精度化を図ることができる

【図面の簡単な説明】
【図1】
この発明による温度補償型発振器の第1の実施形態の構成を示すブロック回路図である

【図2】
その発振回路の異なる例を示す回路図である。
【図3】
同じく発振回路のさらに異なる例を示す回路図である。
【図4】
この発明による温度補償型発振器の第2の実施形態の構成を示すブロック回路図である

【図5】
図4における可変分周回路の一例を示すブロック図である。
【図6】
同じくその可変分周回路による分周数M,Nと分周比(逓倍数)および出力周波数の関
係の一例を示す図である。
【図7】
この発明による温度補償型発振器の第3の実施形態の構成を示すブロック回路図である

【図8】
温度補償型発振器のパッケージの一例を示す概略断面図である。
【図9】
従来の温度補償型発振器の構成例を示すブロック回路図である。
【符号の説明】
10:パッケージ(容器) 11:パッケージ本体
12:溶接リング 13:カバー
15:水晶片(振動子) 16:IC(集積回路)
17:チップ容量等の回路素子 18:温度検出回路
19:不揮発性メモリ 20:発振回路
21:インバータ 22:帰還抵抗
23,24:電圧制御型可変容量 25:出力線
26:出力端子 27:第1の容量アレイ
28:第2の容量アレイ 30,30′:温度補償回路
31:補償データ記憶回路 32:D/A変換回路
33:補償データ出力回路
40,40′:選択回路(選択手段)
40A:第1の選択回路 40B:第2の選択回路
41,42:トランスミッションゲート
47,48:デジタルゲート回路
50:選択情報記憶回路 51:定電圧発生回路
52:外部端子(制御情報入力端子)
55:選択情報記憶回路 56:導電パターン
57:正の電源ライン 58:抵抗

Claims (1)

  1. 請求項1記載の温度補償型発振器において、
    前記発振回路と前記出力線との間に可変分周回路を設け、
    前記選択手段は、前記温度補償回路の温度補償機能を有効状態にする場合には、該温度補償回路に前記可変分周回路の分周比を温度変化に依存して変化させるようにし、該温度補償機能を無効状態にする場合には、前記可変分周回路の分周比を所定の値に固定する手段を有することを特徴とする温度補償型発振器。
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