JP2003214952A - 分光器 - Google Patents
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Abstract
散方向のドリフトを分光器の形態に関わらず確実に軽減
できる温度補償機構を備えた簡素な分光器を得る。 【解決手段】 入射部材11と集光光学系13と検出素
子15とを一体に支持する第1部材17と、線膨張係数
が第1部材とは異なる材料により構成され、波長分散素
子14を支持する第2部材21と、環境温度が変化した
ときに、第1部材の伸縮量を第2部材に伝達する伝達部
材24,25とを備える。第2部材は、環境温度が変化
したときに、自身の伸縮量と第1部材の伸縮量との相異
に応じて弾性変形する変形部材28を含み、変形部材の
弾性変形に応じて微小回転する回転部材26を含む。波
長分散素子は、波長分散方向が回転部材の軸方向に対し
て直交する向きで、回転部材に取り付けられる。
Description
プリズムなどの波長分散素子を用いた分光器に関する。
は、物理分析や化学分析などの様々な分野において広く
使用されている。ただし、分光器の測定波長精度は環境
温度の変化による影響を受けて不安定になりやすいた
め、分光器を使用する際の環境温度は原則として一定に
保たれる。環境温度が一定に保たれていれば、分光器に
入射した光のスペクトル像が波長分散方向にドリフトす
る事態をほぼ回避することができ、分光器の測定波長精
度が安定化する。
を一定に保つことが難しい場合もある。このため、近年
では、環境温度が変化してもスペクトル像が波長分散方
向にドリフトしないように分光器を構成することが望ま
れている。このような温度補償機構付き分光器として既
に提案されているものは、波長分散素子として凹面反射
型のグレーティングを用い、スペクトル像を検出するデ
ィテクタとしてダイオードアレイを用いた分光器がほと
んどである。
公報や特開平9−218091号公報には、ダイオード
アレイの熱膨張係数と適合するようにグレーティングホ
ルダとケーシングの熱膨張係数を選択し、グレーティン
グホルダの形状をケーシングと適合させることで、環境
温度の変化によるスペクトル像のドリフトを軽減するこ
とが提案されている。
には、グレーティングやダイオードアレイの保持の仕方
を工夫し、グレーティング保持部材とダイオードアレイ
保持部材とキャリアとの位置決め構造を最適化すること
で、環境温度の変化によるスペクトル像のドリフトを軽
減することが提案されている。
た従来の温度補償機構付き分光器において提案された温
度補償技術は、飽くまでも、波長分散素子として凹面反
射型のグレーティングを用い、ディテクタとしてダイオ
ードアレイを用いた分光器に固有の技術である。このた
め、その他の様々な形態の分光器に上記の温度補償技術
を適用することは困難であり、無理に適用しようとする
と構成が複雑になってしまう。
ペクトル像の波長分散方向のドリフトを分光器の形態に
関わらず確実に軽減できる温度補償機構が組み込まれた
簡素な分光器を提供することにある。
は、被測定光を取り込む入射部材と、前記入射部材から
の前記被測定光を波長に応じて分散させる波長分散素子
と、前記波長分散素子による分散後の前記被測定光を集
光してスペクトル像を形成する集光光学系と、前記スペ
クトル像を検出する検出素子と、前記入射部材と前記集
光光学系と前記検出素子とを一体に支持する第1支持部
材と、線膨張係数が前記第1支持部材とは異なる材料に
よって構成され、前記波長分散素子を支持する第2支持
部材と、環境温度が変化したときに、前記第1支持部材
の伸縮量を前記第2支持部材に伝達する伝達部材とを備
えたものであり、さらに、前記第2支持部材は、環境温
度が変化したときに、前記伝達部材から伝達される前記
第1支持部材の伸縮量と当該第2支持部材の伸縮量との
相異に応じて弾性変形する変形部材を含むと共に、該変
形部材の弾性変形に応じて微小回転する回転部材を含
み、前記波長分散素子は、その波長分散方向が前記回転
部材の軸方向に対して直交する向きで、前記回転部材に
取り付けられている。
の分光器において、環境温度が変化したときの前記回転
部材の回転角度および回転方向が、前記スペクトル像の
波長分散方向のドリフトを相殺するように予め設定され
たものである。請求項3に記載の発明は、請求項1また
は請求項2に記載の分光器において、前記第2支持部材
は、2つのアーム部材が薄肉状の前記変形部材を介して
連結され、前記2つのアーム部材のうち一方が前記回転
部材を構成しているV字形部材であり、前記伝達部材
は、前記V字形部材の両端部と前記第1支持部材とを各
々連結すると共に、前記2つのアーム部材のなす角度を
前記第1支持部材の伸縮に応じて変化させる部材であ
る。
の分光器において、環境温度が1℃変化したときの前記
スペクトル像の波長分散方向のドリフトを相殺可能な前
記回転部材の回転角度をΔaとするとき、前記第1支持
部材の線膨張係数ρbと、前記第2支持部材の線膨張係
数ρmと、前記2つのアーム部材のうち一方の長さyお
よび他方の長さzと、前記2つのアーム部材のなす角度
aとは、以下の関係式を満足するものである。
形態を詳細に説明する。
に対応する。本実施形態の分光器10は、図1に示すよ
うに、オプティカルファイバ11と、ミラー12と、リ
トローレンズ13と、グレーティング14と、1次元ラ
インセンサ15と、グレーティングマウント16と、ベ
ース部材17とで構成されている。なお、オプティカル
ファイバ11の前段には不図示の光源が配置されてい
る。
1〜15)のうち、オプティカルファイバ11,ミラー1
2,リトローレンズ13,1次元ラインセンサ15は、ベ
ース部材17の上に設置され、グレーティング14は、
グレーティングマウント16の上に設置され、このグレ
ーティングマウント16は、ベース部材17の上に設置
されている。
20℃から+60℃までの範囲において使用可能な温度
補償機能付き分光器である。先ず初めに、光学素子(1
1〜15)の構成や機能の説明を行い、その後で、グレ
ーティングマウント16とベース部材17について具体
的に説明する。オプティカルファイバ11は、光源(不
図示)からの被測定光を分光器10の内部に取り込むた
めの部材(例えばシングルモードファイバ)であり、そ
の光射出部の直径は例えば10μmである。オプティカ
ルファイバ11は、請求項の「入射部材」に対応する。
からの被測定光を反射してリトローレンズ13に導くた
めの光学素子である。リトローレンズ13は、ミラー1
2からの被測定光L1をコリメートする機能と、グレー
ティング14からの回折光L3(後述する)を集光してス
ペクトル像を形成する機能とを兼ね備えたレンズである
(焦点距離は例えば50mm)。リトローレンズ13に
よってコリメートされた被測定光L2は、グレーティン
グ14に導かれ、リトローレンズ13によって集光され
た被測定光L4は、1次元ラインセンサ15に導かれ
る。リトローレンズ13は、請求項の「集光光学系」に
対応する。
1次元配列された反射型平面回折格子である。多数の溝
の配列方向は、グレーティング14の波長分散方向に相
当する。グレーティング14は、オプティカルファイバ
11からミラー12とリトローレンズ13を介して導か
れた被測定光L2を波長に応じて分散させる。グレーテ
ィング14による分散後の被測定光が上記の回折光L3
に対応する。グレーティング14は、請求項の「波長分
散素子」に対応する。
ズ13とグレーティング14とは、両側テレセントリッ
ク光学系を構成している。すなわち、グレーティング1
4を開口絞りと見なして、リトローレンズ13の焦点位
置に配置している。1次元ラインセンサ15は、多数の
受光部が1次元配列された受光面を有し、この受光面が
リトローレンズ13の焦点位置(スペクトル像が形成さ
れる位置)と一致するように配置されている。1次元ラ
インセンサ15は、リトローレンズ13によって形成さ
れたスペクトル像を検出する検出素子である。なお、多
数の受光部の配列方向は、グレーティング14の波長分
散方向に相当する。
は、スペクトル像の検出に必要な波長分解能に応じて設
定されている(例えば25μm)。1次元ラインセンサ
15の受光面に配列された受光部の数は、スペクトル像
の検出に必要な波長範囲に応じて、この波長範囲を余す
ところなく検出できるように設定される。上記した光学
素子(11〜15)において、オプティカルファイバ11
から分光器10の内部に入射した被測定光は、リトロー
レンズ13でコリメートされ、グレーティング14で回
折され、再びリトローレンズ13に戻って集光される。
その結果、1次元アレイセンサ15の受光面上にはスペ
クトル像が形成され、受光面に配列された各々の受光部
によってスペクトル像が検出される。
単色光(任意の単一波長の光)である場合、スペクトル
像は、オプティカルファイバ11の光射出部とほぼ相似
なスポット状になる。また、被測定光が波長の異なる多
種類の光を含む場合、スペクトル像は、波長分散方向に
沿って広がった形状となる。波長分散方向に沿ってスポ
ット状のスペクトル像が離散的に多数配列された状態と
なることもある。
面上においてスペクトル像が波長分散方向にドリフトす
ると、分光器10の測定精度が低下してしまう。このよ
うなスペクトル像の波長分散方向のドリフトは、環境温
度が変化したときに生じやすく、次の(1)〜(5)が主な
要因として考えられる。(1)は、リトローレンズ13の
焦点距離の変動である。(2)は、空気の屈折率の変動で
ある。(3)は、グレーティング14の伸縮による格子定
数の変動である。(4)は、ベース部材17の伸縮による
オプティカルファイバ11の波長分散方向への移動であ
る。(5)は、グレーティング14の刻線方向を中心とし
た回転である。
(1)リトローレンズ13の焦点距離の変動は、光学設計
により実用上問題とならない程度に小さく抑えることが
できる。また、(2)空気の屈折率の変動は、環境温度の
変化幅が100℃程度であれば問題とならない。すなわ
ち、環境温度が100℃程度変化しても、空気中の光の
波長変化は無視できる程度にしかならない。
て実際に考慮するべきスペクトル像のドリフトの要因
は、(3)グレーティング14の格子定数の変動と、(4)
オプティカルファイバ11の波長分散方向への移動と、
(5)グレーティング14の刻線方向を中心とした回転と
の3つである。
が最低温度(−20℃)から最高温度(+60℃)まで80
℃上昇したときに、スペクトル像が上記した要因(3)
(4)によって20μmだけ短波長側にドリフトするよう
設計されているとする。短波長側とは図1に矢印Bで示
す方向である。また、環境温度の変化によるスペクトル
像のドリフトは、温度変化にほぼ比例している。このた
め、スペクトル像の温度変化1℃あたりのドリフト量Δ
sは、20μm/80℃=0.25μm/℃となる。この
ドリフト量Δsは、1次元アレイセンサ15の1つの受
光部の波長分散方向の幅(25μm)に対して無視でき
ない量である。
長の異なる多種類の光を含む場合のスペクトル像は、既
に述べたように、波長分散方向に沿って広がった形状と
なったり、スポット像が離散的に多数配列された状態と
なったりする。厳密にいえば、各々の波長ごとにドリフ
ト量は少し異なるが、その相違は無視できる程度であ
る。このため、本実施形態では、分光器10に入射する
被測定光のうち、着目する波長の光(例えば中心波長の
光)と、この着目する波長前後近傍の波長の光とは、環
境温度の変化によってほぼ同じ挙動を示す、つまり、同
じ量Δsだけドリフトする(0.25μm/℃)と見なすこ
とにする。
度の上昇に伴ってスペクトル像が短波長側(矢印Bの方
向)に0.25μm/℃だけドリフトすることは、既に説
明した通りである。また、スペクトル像のドリフトの要
因には、あと、(5)グレーティング14の刻線方向を中
心とした回転が残されていることも、既に説明した通り
である。
(3)(4)によるスペクトル像のドリフトΔs(短波長側
に0.25μm/℃)を相殺するように、グレーティング
14を回転させるものである。グレーティング14を回
転させる機構(グレーティングマウント16,ベース部
材17)についての詳細な説明は後述する。
面に垂直な方向)を中心として回転すると、グレーティ
ング14から射出される回折光L3は偏向され、その結
果、1次元アレイセンサ15の受光面上においてスペク
トル像が波長分散方向にドリフトする。このとき、グレ
ーティング14に入射する被測定光L2の入射角度αが
小さくなる方向(図1に矢印Cで示す方向)にグレーテ
ィング14を回転させると、この回転によってスペクト
ル像は長波長側(矢印Bとは反対の方向)にドリフトす
ることになる。これは、上記の要因(3)(4)によるドリ
フトΔsを相殺する方向へのドリフトである。上記の入
射角度αは、グレーティング14の法線14aを起点と
する角度である。
Δs(=0.25μm/℃)を相殺可能なグレーティング1
4の回転角度Δaは、リトローレンズ13の焦点距離f
と、グレーティング14に入射する被測定光L2の入射
角度αと、グレーティング14から射出される回折光L
3の回折角度βとを用いて、次の式(1)で表すことがで
きる。回折角度βも法線14aを起点とする角度であ
る。
動を無視できることが前提となっている。グレーティン
グ14の回転角度Δaは、温度変化1℃あたりの必要な
回転角度である。上記式(1)に基づいて具体的なグレー
ティング14の回転角度Δaを計算すると、Δa=2.
76×10-6radian となる。この計算に当たっては、
Δs=0.25μm/℃,f=50mm,α=70°,β=
65°を用いた。α,βの値は、着目する波長の光(例
えば中心波長の光)に関する角度である。
グレーティング14を入射角度αが小さくなる方向(矢
印Cの方向)に上記した回転角度Δaだけ回転させれ
ば、上記の要因(3)(4)によるスペクトル像のドリフト
Δs(短波長側に0.25μm/℃)を相殺することができ
る。次に、グレーティング14を回転させる機構(グレ
ーティングマウント16,ベース部材17)について、
詳細に説明する。この機構の特徴は、ベース部材17と
グレーティングマウント16の線膨脹係数の違いを利用
した点にある。
11,ミラー12,リトローレンズ13,1次元ラインセ
ンサ15を一体に支持している。このベース部材17
は、請求項の「第1支持部材」に対応する。本実施形態
のベース部材17は、線膨張係数ρb(=24.3×10
-6degree-1)のアルミニウム合金によって構成されてい
る。環境温度が変化したとき、ベース部材17は、自身
の線膨張係数ρbに応じて伸縮する。なお、ベース部材
17の上に設置されたオプティカルファイバ11,ミラ
ー12,リトローレンズ13,1次元ラインセンサ15の
相対位置関係は、等方的に変化する。
(a),(b)に示すように、グレーティング14を支持す
るV字形部材21と、このV字形部材21の両端部2
2,23をベース部材17に各々連結する連結部材24,
25とで構成されている。図2(a)は上面図、図2(b)
は側面図である。図2(b)において、V字形部材21に
対応する部分には、点ハッチングを付した。
は、線膨張係数ρm(=23.6×10-6degree-1)のア
ルミニウム合金によって構成されている。グレーティン
グマウント16のV字形部材21は請求項の「第2支持
部材」に対応する。連結部材24,25は「伝達部材」
に対応する。環境温度が変化したとき、グレーティング
マウント16は、自身の線膨張係数ρmに応じて伸縮す
る。なお、グレーティングマウント16の線膨張係数ρ
mがベース部材17の線膨張係数ρbとは異なるため、
環境温度が変化したときの伸縮量は、グレーティングマ
ウント16とベース部材17とで異なることになる。
明する。V字形部材21は、2つのアーム部材26,2
7が、弾性変形可能な薄肉状の変形部材28を介して連
結された構成となっている。また、V字形部材21は、
上記の通り、その両端部22,23が連結部材24,25
を介してベース部材17に各々連結されている。さら
に、V字形部材21の両端部22,23は、上記した変
形部材28と同様、弾性変形可能な薄肉状の変形部材で
ある。
ス部材17が線膨張係数ρbに応じて伸縮すると、ベー
ス部材17の伸縮量は、連結部材24,25からV字形
部材21に伝達される。つまり、ベース部材17が伸縮
した分だけ連結部材24,25の距離が変化し、V字形
部材21の両端部22,23の距離も変化することにな
る。また、V字形部材21の両端部22,23と変形部
材28とは、自身の伸縮量とベース部材17の伸縮量と
の相異に応じて弾性変形する。この弾性変形は、全て、
折れ曲がり角度の変化によって吸収される。そして、V
字形部材21のアーム部材26,27は、自身の線膨張
係数ρmに応じて伸縮する。
心を「I」、他端部23の中心を「K」、変形部材28の中
心を「J」とし、3つの中心I,J,Kを結んで得られる三
角形IJK(図3)に注目して、環境温度の変化による
V字形部材21の変形、つまり三角形IJKの変形につ
いて考える。環境温度が変化すると、三角形IJKの辺
IKの長さ(両端部22,23の距離)は、ベース部材
17の伸縮量に応じて変化する。これに対し、残りの2
辺の長さ、つまり、辺IJの長さ(アーム部材27の長
さ)と、辺JKの長さ(アーム部材26の長さ)とは、
自身のV字形部材21の伸縮量に応じて変化する。
形I'J'K'は、元々の三角形IJKとは相似形になら
ない。また、三角形I'J'K'の頂角a'(=∠I'J'
K')は、三角形IJKの頂角a(=∠IJK)とは異
なることになる。なお、頂角a'または頂角aは、変形
部材28の折れ曲がり角度を表す。変形部材28の折れ
曲がり角度の変化(頂角a→a')は、弾性変形であ
る。
三角形IJKの頂角aが変化すると、この頂角aを挟む
2つの辺JK,JI(アーム部材26,27)は、なす角
度が変化し、結果として微小回転することになる。この
微小回転の軸方向は、三角形IJKによる平面(紙面に
平行な平面)に対して直交する。また、環境温度が上昇
したときに三角形IJKの辺JK(アーム部材26)が
微小回転する方向(回転方向)は、自身の線膨張係数ρ
mがベース部材17の線膨張係数ρbより小さいことを
考慮すると、三角形IJKの頂角aは環境温度の上昇に
よって大きくなるため、図1に示す矢印Cの方向(入射
角度αが小さくなる方向)と一致することが分かる。
部材21の一方のアーム部材26の上に、波長分散方向
がアーム部材26の軸方向(紙面に垂直な方向)に対し
て直交する向きで取り付けられる。これにより、グレー
ティング14の刻線方向は、アーム部材26の軸方向に
対して平行となる。なお、アーム部材26とグレーティ
ング14とは、それぞれの線膨張係数の差によってたわ
みが生じないように、例えば弾力性のある接着剤を使用
するなどの方式で接合される。V字形部材21のアーム
部材26は、請求項の「回転部材」に対応する。
付けられたグレーティング14は、常に、アーム部材2
6と共に、グレーティング14の刻線方向を中心に微小
回転することになる。そして、環境温度が上昇したとき
には、図1に示す入射角度αが小さくなる方向(矢印C
の方向)に微小回転する。ここで、前述した要因(3)
(4)によるスペクトル像のドリフトΔs(=0.25μm
/℃)を相殺可能なグレーティング14の回転角度Δa、
つまり、環境温度が1℃変化したときに必要な回転角度
Δaは、上記式(1)の通りであり、具体的には Δa=
2.76×10-6radian である。
ているV字形部材21のアーム部材26が温度変化1℃
のときに上記の回転角度Δaだけ回転するように構成す
れば、グレーティング14の回転角度Δaが実際に実現
することになる。温度変化1℃のときのアーム部材26
の回転角度Δa=a'−aとするとき、この回転角度Δ
aと、ベース部材17の線膨張係数ρbと、グレーティ
ングマウント16の線膨張係数ρmと、アーム部材26
(辺JK)の長さyと、アーム部材27(辺JI)の長さz
と、アーム部材26,27のなす角度a(=∠IJK)と
は、次の関係式(2),(3)を満足する。
0における具体的な数値(a=90°,Δa=2.76×
10-6radian,ρb=24.3×10-6degree- 1,ρm
=23.6×10-6degree-1)を代入することにより、
パラメータAの値は A=3.94 と求められ、結果と
して、アーム部材26(辺JK)とアーム部材27(辺J
I)との長さの比(y/z)は y/z=3.67(または1/
3.67) と求められる。
材26,27(辺JK,JI)の長さy,zを決定し、アー
ム部材26,27のなす角度aが90°となるようにV
字形部材21を構築すれば、環境温度が1℃上昇したと
きに、アーム部材26を上記の回転角度Δaだけ図1の
矢印Cの方向に微小回転させることができる。その結
果、アーム部材26の上に取り付けられたグレーティン
グ14も、環境温度が1℃上昇したときに、上記の回転
角度Δaだけ図1の矢印Cの方向(入射角度αが小さく
なる方向)に微小回転することになる。したがって、前
述した要因(3)(4)によるスペクトル像のドリフトΔs
(短波長側に0.25μm/℃)を相殺することができる。
ば、環境温度が変化したときにベース部材17とグレー
ティングマウント16(V字形部材21)とが異なる量の
伸縮をし、この伸縮量の違いに応じてグレーティング1
4が予め定めた角度だけ微小回転して、スペクトル像の
波長分散方向のドリフトを確実に相殺するので、1次元
アレイセンサ15の受光面におけるスペクトル像の位置
を環境温度が変化しても同じ位置に留めることができ
る。
保つことが難しく、環境温度が−20℃から+60℃ま
での範囲において変化した場合でも、安定した測定精度
による被測定光のスペクトル測定が可能となる。また、
特別に環境温度をコントロールする必要もなく、分光器
10自体に環境温度をコントロール機能を設ける必要も
ないため、安価で使いやすい分光器10が実現できる。
ペクトル像を受光する素子として1次元ラインセンサ1
5を用いたので、グレーティング14を固定させた状態
でも、多数の波長のスペクトル像を同時に受光すること
ができる。つまり、被測定光が波長の異なる多種類の光
を含む場合、被測定光の波長ごとの強度を簡単に測定す
ることができる。
割多重(WDM)方式の光通信システムにおいて、光源で
ある半導体レーザ(予め決められた複数の周波数光が重
合された光源)(例えば1.5μm帯)から射出される光
を分光し、各々の周波数ごとの強度特性を監視する装置
(波長モニター)として用いるのに好適である。光通信
機器には一般に厳しい環境温度条件の下で作動すること
が要求されるため、本実施形態の分光器10を波長モニ
ターとして用い、分光器10による測定結果を半導体レ
ーザにフィードバックすることで、環境温度が変化した
場合でも、半導体レーザから射出される光の強度を波長
ごとに一定に保つことができ、安定した光通信が可能と
なる。
折格子を用いた分光器10の例を説明したが、透過型の
回折格子を用いた構成にも本発明を適用できる。また、
平面回折格子およびリトローレンズに代えて、1つの凹
面回折格子を用いた分光器にも適用できる。さらに、1
つのリトローレンズに代えて、コリメート光学系と集光
光学系とを別々に配置しても良い。コリメート光学系と
集光光学系とは、屈折光学系でも反射光学系でも良い。
また、波長分散素子としてグレーティング(回折格子)を
用いたが、プリズムを用いることもできる。
も、本発明は簡単に適用することができる。つまり、各
々の分光器の波長分散素子を上記アーム部材26と同様
の回転部材に取り付けるだけで、スペクトル像の波長分
散方向のドリフトを相殺することができる。つまり、本
発明を適用した温度補償機能付き分光器の構成が複雑に
なることはない。
けるに当たっては、波長分散方向を回転部材の軸方向に
対して直交させなければならない。また、この回転部材
を含む支持部材(V字形部材21に対応)の線膨張係数ρ
mや、波長分散素子を除く他の部材(オプティカルファ
イバ11など)を支持するベース部材の線膨張係数ρb
などの各種パラメータを適切に選択することも必要であ
る。さらに、温度補償に必要な波長分散素子の回転角度
Δaは、個々の分光器を設計する際に、最適な値を決定
することが好ましい。
像を検出する素子として1次元ラインセンサ15を用い
たが、この1次元ラインセンサ15に代えて、射出スリ
ットとディテクタとを用いることもできる。射出スリッ
ト(検出素子)は、細長い1つの開口部を有し、この開
口部がスペクトル像の形成位置と一致するように配置さ
れる。そして、スペクトル像のうち開口部を通過した部
分像がディテクタにより受光される。
クタを波長分散方向に沿って移動させたり、波長分散素
子を波長分散方向と直交する軸まわりに回転させたりす
ることで、異なる波長の光を測定することができる。こ
のような構成の分光器も、波長分割多重(WDM)方式の
光通信システムにおける上記の波長モニターとして用い
るのに好適である。
0に被測定光を入射させる入射部材としてオプティカル
ファイバ11を用いたが、これに代えて入射スリットを
用いることもできる。入射スリットは、細長い1つの開
口部を有する。また、上記した実施形態では、リトロー
レンズ13とグレーティング14とで両側テレセントリ
ック光学系を構成したが、本発明はこれに限定されな
い。リトローレンズ13とグレーティング14とのテレ
セン性がずれた構成でも、本発明を適用できる。
環境温度の変化によるスペクトル像の波長分散方向のド
リフトを分光器の形態に関わらず確実に軽減できる温度
補償機構が組み込まれた簡素な分光器を提供できる。
ある。
ある。
図である。
Claims (4)
- 【請求項1】 被測定光を取り込む入射部材と、 前記入射部材からの前記被測定光を波長に応じて分散さ
せる波長分散素子と、 前記波長分散素子による分散後の前記被測定光を集光し
てスペクトル像を形成する集光光学系と、 前記スペクトル像を検出する検出素子と、 前記入射部材と前記集光光学系と前記検出素子とを一体
に支持する第1支持部材と、 線膨張係数が前記第1支持部材とは異なる材料によって
構成され、前記波長分散素子を支持する第2支持部材
と、 環境温度が変化したときに、前記第1支持部材の伸縮量
を前記第2支持部材に伝達する伝達部材とを備え、 前記第2支持部材は、環境温度が変化したときに、前記
伝達部材から伝達される前記第1支持部材の伸縮量と当
該第2支持部材の伸縮量との相異に応じて弾性変形する
変形部材を含むと共に、該変形部材の弾性変形に応じて
微小回転する回転部材を含み、 前記波長分散素子は、その波長分散方向が前記回転部材
の軸方向に対して直交する向きで、前記回転部材に取り
付けられることを特徴とする分光器。 - 【請求項2】 請求項1に記載の分光器において、 環境温度が変化したときの前記回転部材の回転角度およ
び回転方向は、前記スペクトル像の波長分散方向のドリ
フトを相殺するように予め設定されていることを特徴と
する分光器。 - 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の分光器
において、 前記第2支持部材は、2つのアーム部材が薄肉状の前記
変形部材を介して連結され、前記2つのアーム部材のう
ち一方が前記回転部材を構成しているV字形部材であ
り、 前記伝達部材は、前記V字形部材の両端部と前記第1支
持部材とを各々連結すると共に、前記2つのアーム部材
のなす角度を前記第1支持部材の伸縮に応じて変化させ
る部材であることを特徴とする分光器。 - 【請求項4】 請求項3に記載の分光器において、 環境温度が1℃変化したときの前記スペクトル像の波長
分散方向のドリフトを相殺可能な前記回転部材の回転角
度をΔaとするとき、 前記第1支持部材の線膨張係数ρbと、前記第2支持部
材の線膨張係数ρmと、前記2つのアーム部材のうち一
方の長さyおよび他方の長さzと、前記2つのアーム部
材のなす角度aとは、以下の関係式を満足することを特
徴とする分光器。 y/z={A±√(A2−4)}/2 A=2cosa+sina・Δa/(ρb−ρm)
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