JP2003213565A - 難燃抗菌性繊維製品及びその製造方法 - Google Patents

難燃抗菌性繊維製品及びその製造方法

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JP2003213565A
JP2003213565A JP2002011567A JP2002011567A JP2003213565A JP 2003213565 A JP2003213565 A JP 2003213565A JP 2002011567 A JP2002011567 A JP 2002011567A JP 2002011567 A JP2002011567 A JP 2002011567A JP 2003213565 A JP2003213565 A JP 2003213565A
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JP2002011567A
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Kazuo Yanagihara
和夫 柳原
Kenichiro Takasu
健一郎 高須
Mikio Tanaka
美喜男 田中
Toshio Yasuhara
利夫 安原
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MORIKIKU KK
RIKAKEN CO Ltd
Daido Steel Co Ltd
Suzutora KK
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MORIKIKU KK
RIKAKEN CO Ltd
Daido Steel Co Ltd
Suzutora KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた抗菌性及び防臭性を備えると共に難燃
性にも優れ、特に病院、老人ホーム等の施設で使用され
る防炎防火用のカーテン、リネン材等の繊維製品として
使用可能な難燃抗菌性繊維製品及びその製造方法を提供
すること。 【解決手段】 酸化チタン粒子を水溶液中に分散させ、
その溶液中に銀アンモニウム錯体及び銅アンモニウム錯
体の少なくともいずれかを添加し、還元剤を入れて酸化
チタン粒子の表面に銀及び銅の少なくともいずれかの金
属粒子を還元析出により分散担持させてなる抗菌光触媒
剤を、難燃性のバインダーと共に溶媒中に分散させて難
燃抗菌性のコーティング液を作製し、このコーティング
液を抗菌光触媒剤及びバインダーが繊維製品の目付量に
対して0.2重量%以上10重量%以下の範囲で繊維製
品に付着されるように、繊維製品の表面に塗布し乾燥さ
せることにより繊維製品表面に難燃抗菌性を備えたコー
ティング層を形成させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、難燃抗菌性繊維製
品及びその製造方法に関し、更に詳しくは、高い衛生状
態が要求されると共に防炎防火対象施設にもなっている
病院、老人保健施設等で用いられるカーテン・じゅうた
ん等の繊維製品として好適な難燃性、抗菌性、及び防臭
性に優れた難燃抗菌性繊維製品及びその製造方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、病院、老人保健施設、宿泊施
設、学校、その他公共施設等、不特定多数の者が集団で
共同生活を営むような場所では、日常的に発生しうる種
々の病原菌への感染を未然に防止するために、施設内の
衛生管理に対して細心の注意が払われている。その中で
も特に、病院や老人福祉施設等は高いレベルでの衛生管
理が要求され、院内感染あるいは施設内での集団感染を
予防することは極めて重要な責務である。したがって、
このような施設内の備品に対する衛生管理には十分に気
が配られる必要があり、その一つの手段として、施設内
で使用されるカーテンあるいはシーツ等のいわゆる繊維
製品に抗菌性能を持たせたものが多用されるようになっ
てきた。
【0003】また、上記施設においては、病原菌対策の
問題ばかりでなく、例えば、病院内においてカーテン、
シーツ等の繊維製品に薬品等が染み込むことによって発
生する病院特有の臭いや、老人福祉施設で生じる特有の
老人臭など、施設内における臭いも解決すべき課題の一
つであり、利用者側からも防臭を求める声は強い。
【0004】さらに、病院や老人福祉施設等は消防法で
定められる防炎防火対象物でもあり、こうした施設で
は、上記のような高い衛生管理や防臭対策に加えて防炎
防火対策も万全でなければならない。特に、カーテン、
じゅうたん、リネン材等の繊維製品は比較的燃え広がり
やすいため、十分な防炎防火対策が必要となる。したが
って、これら繊維製品に用いる材質については十分に検
討すべきである。
【0005】このように、上記施設で使用されるカーテ
ン、リネン材等の繊維製品には、抗菌特性、防臭特性に
加えて難燃特性をも備えていることが要求される。ま
た、近年の我々の清潔志向の高まりに伴い上記のような
特殊な施設だけでなく、一般家庭で使用されるカーテ
ン、寝具等にも抗菌・防臭、さらには防炎(難燃)に対
する関心が高まってきており、今後の需要拡大が予想さ
れる。ここで「難燃性」とは、燃えにくさを示す指標で
あり、繊維等が小さな火元に接しても容易に燃え上がら
ず、もし着火しても際限なく燃え広がらない性質をい
う。
【0006】従来より、抗菌特性、防臭特性、難燃特性
などの諸特性を備えてなる繊維並びに繊維製品、及びこ
れら繊維製品等に塗布する上記諸特性を有するコーティ
ング剤に関しては種々の研究がなされている。
【0007】例えば、特開2001−254245号公
報には、光触媒粒子の表面が光触媒作用に対して不活性
なセラミックス膜で被覆された光触媒を含有するモノフ
ィラメント糸を紡糸して作製し、この糸を織り上げてな
る織物を所定の減量率になるまで高粘度のアルカリ性溶
液に浸漬し、糸の表面のみを溶解する光触媒機能を有す
る織物及びその製造方法について開示がなされている。
この公報では、糸中に練り込まれた光触媒が光触媒機能
を十分に発揮することにより脱臭、除塵及び殺菌等の効
果を向上させることができるということが示されてい
る。
【0008】また、特開平7−189033号公報に
は、80モル%以上のエチレンテレフタレートを含むポ
リエステルに、銀イオンを担持した白色のリン酸塩粒子
又はヒドロキシアパタイト粒子が含有されてなる抗菌性
ポリエステル繊維について開示されている。この公報で
は、溶融紡糸時の油剤の組成を限定することなく、且つ
経時的な着色もほぼ完全に防止され、アルカリ減量処理
前でも十分な抗菌性を有し、アルカリ減量処理による着
色もほぼ完全に防止された白色の抗菌性ポリエステル繊
維が得られることが示されている。
【0009】また、特開2000−239823号公報
には、ルチル型の酸化チタンの微粉末を低温溶射により
基材上に溶射してアナターゼ型とルチル型の酸化チタン
とからなる光触媒被膜を基材上に形成した光触媒機能
体、または、アナターゼ型とルチル型からなる酸化チタ
ン微粒子と、金属微粒子と、吸着剤としてのセラミック
ス微粒子をバインダー中に混入して形成した塗料又は印
刷インキを基材上にコーティング又は印刷した光触媒機
能体について開示がなされている。この公報では、アナ
ターゼ型とルチル型の酸化チタンの存在比を適切に設定
することによって、基材を侵すことなく、良好な殺菌
性、脱臭性を発揮させることが示されている。
【0010】また、特開2001−245781号公報
には、繊維表面に、アルキルシリケート系樹脂、シリコ
ーン系樹脂及びフッ素系樹脂から選ばれた少なくとも1
種のバインダーと、チタンとケイ素からなる複合酸化物
である光触媒剤を有するカーテン類について開示がなさ
れている。この公報では、上記成分を有するカーテン類
は、耐久性のある着色防止性、消臭性、抗菌性、防カビ
性及び防汚性を同時に有する優れた機能性を有すること
が示されている。
【0011】さらに、特開平5−51817号公報に
は、抗菌性を有する金属イオン及び安定化剤化合物を含
有するリン酸塩型の層状化合物と特定の構造で表される
融点が200℃以下の有機燐化合物との混合物がポリエ
ステル繊維中に分散されてなる難燃性及び抗菌性を有す
るポリエステル繊維について開示がなされている。この
公報では、得られるポリエステル繊維は、上記層状化合
物より放出される殺菌効果を有する微量の抗菌性金属イ
オンを有効に徐放することによって、優れた抗菌性、防
臭性が保持されると共に優れた難燃性が付与されること
が示されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記特開20
01−254245号公報に開示される織物の製造方法
は、製造工程が複雑でコスト高となる上に、織物を構成
する繊維中には光触媒を練り込んであるため、光照射時
にこの光触媒による光触媒作用によって繊維の分解反応
が生じ、その結果、強度等の諸特性を阻害されるおそれ
がある。
【0013】また、特開平7−189033号公報に開
示される抗菌性ポリエステル繊維についても同様に、銀
イオンを担持させてなるリン酸塩粒子又はヒドロキシア
パタイト粒子をポリエステル繊維中に練り込んだもので
あるので、繊維の強度等の諸特性が阻害されるおそれが
ある。
【0014】また、上記特開2000−239823号
公報に開示される光触媒機能体は、低温溶射により基材
上に光触媒皮膜を形成する場合には、低温溶射の装置が
複雑であり、且つ、制御が難しく製造コストが高くなる
という問題があり、また、もう1つの光触媒皮膜を製造
する手段においては、光触媒皮膜の構成成分として多量
のバインダーが用いられているため難燃性が阻害される
といった問題がある。
【0015】また、上記特開2001−245781号
公報に開示されるカーテン類では、光触媒剤をカーテン
生地に定着させるバインダーとしてアルキルシリケート
樹脂、シリコーン樹脂、及びフッ素系樹脂が用いられて
いるため、難燃性が十分に発揮されてないといった問題
がある。
【0016】さらに、特開平5−51817号公報に開
示されるポリエステル繊維は、繊維中に抗菌性を有する
金属イオンを含有するリン酸塩型の層状化合物と難燃剤
として融点が200℃以下の有機リン化合物を練り込む
ことで難燃性及び抗菌性を付与させたものであるが、抗
菌剤である金属イオン及び難燃剤である有機リン化合物
共にポリエステル繊維中に分散させたものであり、細菌
類等の殺菌作用はあるものの、光触媒機能は有しないた
め分解作用はなく防臭、防カビ、防汚等の諸性能は発揮
できないといった問題がある。
【0017】本発明の解決しようとする課題は、優れた
抗菌性及び防臭性を備えると共に難燃性にも優れ、特に
病院、老人ホーム等の施設で使用される防炎防火用のカ
ーテン、じゅうたん、リネン材等の繊維製品として使用
可能な難燃抗菌性繊維製品及びその製造方法を提供する
ことである。
【0018】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するため
に本発明に係る難燃抗菌性繊維製品は、酸化チタン粒子
の表面に、銀及び銅の少なくともいずれかからなる金属
粒子を分散付着させてなる抗菌光触媒剤を難燃性のバイ
ンダー中に配合して得られる難燃抗菌性のコーティング
液を繊維製品に塗布してなる難燃抗菌性繊維製品であっ
て、前記バインダーは、ポリウレタン系又はポリエステ
ル系の水溶性樹脂を主成分とし、この樹脂成分中の水素
原子の一部が臭素原子又は塩素原子に置換されたものあ
るいは有機リン化合物を含むものであることを要旨とす
るものである。
【0019】酸化チタン粒子の表面に銀若しくは銅の金
属粒子を分散担持させることにより、光照射下において
酸化チタンが有する光触媒作用と、金属銀のもつ強い抗
菌効果の両方が作用し、さらに両方の効果が相乗的に高
められることによって抗菌性・防臭性に優れた抗菌光触
媒剤が得られる。
【0020】また、この抗菌光触媒剤を水溶性樹脂を主
成分とする難燃性を有するバインダーと共に配合するこ
とで、溶媒である水溶液中に分散させる際に分散性がよ
く、上記抗菌光触媒剤とバインダーとが均一に分散され
た難燃抗菌性のコーティング液が得られる。このコーテ
ィング液を繊維製品の表面に塗布することにより、繊維
製品表面に塗布ムラのない均一な難燃抗菌性を備えたコ
ーティング層が得られる。
【0021】さらに、この難燃性のバインダーが、樹脂
成分中の水素原子の一部が臭素原子又塩素原子に置換さ
れたものあるいは有機リン化合物を含むものであれば、
コーティング剤並びにこれをコーティングしてなる繊維
製品の難燃特性はさらに向上する。
【0022】また、本発明に係る繊維製品の製造方法
は、酸化チタン粒子を水溶液中に分散させておき、その
溶液中に銀アンモニウム錯体及び銅アンモニウム錯体の
少なくともいずれかを添加し、還元剤を入れて酸化チタ
ン粒子の表面に銀及び銅の少なくともいずれかの金属粒
子を還元析出により分散担持させてなる抗菌光触媒剤
を、難燃性のバインダーと共に溶媒中に分散させて難燃
抗菌性のコーティング液を作製し、このコーティング液
を、前記抗菌光触媒剤及びバインダーが繊維製品の目付
量に対して0.2重量%以上10重量%以下の範囲で繊
維製品に付着されるように、繊維製品の表面に塗布し
て、その後乾燥させることによりこの繊維製品の表面に
難燃抗菌性を備えてなるコーティング層を形成させるこ
とを要旨とするものである。
【0023】酸化チタンの分散水溶液と銀アンモニウム
錯体及び銅アンモニウム錯体の少なくともいずれかとを
混合して、金属銀粒子を酸化チタン粒子上に分散担持さ
せることにより、金属銀の粒子が酸化チタン粒子上に均
一に分散担持され、優れた抗菌性及び防臭性を発揮する
抗菌光触媒剤が得られる。
【0024】また、この抗菌光触媒剤を水溶液中に分散
させこれに水溶性樹脂を主成分とする難燃性のバインダ
ーを添加・配合することにより、抗菌光触媒剤とバイン
ダーとの分散性の優れた難燃抗菌性を有するコーティン
グ液を得ることができ、これを塗布してなる繊維製品は
抗菌性、難燃性等の諸特性にムラのない良好な難燃抗菌
性繊維製品となる。
【0025】さらに、コーティング液を、抗菌光触媒剤
が繊維製品の目付量に対して0.2重量%以上10重量
%以下の範囲で繊維製品に付着されるように、繊維製品
の表面に塗布して繊維製品表面にコーティング層を形成
するようにすれば、上記抗菌性、難燃性等の諸特性はよ
り顕著なものとなる。
【0026】
【発明の実施の形態】初めに、本発明に係る難燃抗菌性
繊維製品について説明する。この難燃抗菌性繊維製品
は、抗菌特性及び防臭特性を発現する抗菌光触媒剤と、
水溶性樹脂を主成分とする難燃性のバインダーとを配合
してなるコーティング液を、繊維製品の表面に塗布して
なるものである。
【0027】本発明に係る難燃抗菌性繊維製品として用
いられる繊維製品は、ポリエステル、ポリアミド、アク
リル等の合成繊維であることが好ましい。使用される繊
維製品が木綿等の天然繊維であると、この繊維製品表面
にコーティングされる抗菌光触媒剤の光触媒効果により
繊維生地が分解され、その結果、強度劣化等が生じるお
それがある。さらに、優れた難燃特性を保有する繊維製
品を得るためには、繊維製品自身も難燃性を有するもの
であることが望ましく、具体的には難燃性ポリエステル
や難燃性アクリル等からなる合成繊維か、上記ポリエス
テル、ポリアミド、アクリル等の合成繊維を臭素系ある
いは有機リン系の防炎剤で加工した繊維製品を用いるこ
とが望ましい。
【0028】上記繊維製品の難燃性を保有させるバイン
ダーとしては、ポリウレタン系又はポリエステル系の水
溶性樹脂を主成分とし、この樹脂成分中の水素原子の一
部が臭素原子又は塩素原子に置換されたもの、あるいは
有機リン化合物を含むものであることが望ましい。バイ
ンダーが水溶性樹脂を主成分とするものであれば、バイ
ンダーと共に配合する後述する抗菌光触媒剤を溶媒の水
溶液に分散させ、上記繊維製品の表面上にコーティング
すれば、有機溶媒を用いる方法に比べコーティングが容
易であり、且つ製造時に環境を汚染することはない。
【0029】また、このときの難燃性のバインダーの添
加量は、抗菌光触媒剤に対する固形分比が0.1以上
5.0以下の範囲となるように配合されることが望まし
い。このバインダーは有機物であるため、その添加量が
増えると抗菌光触媒性能が低下するので好ましくない。
具体的には、抗菌光触媒剤に対する固形分比が5.0を
超えるとその低下が顕著なものとなるため好ましくな
い。一方、抗菌光触媒剤に対する固形分比が0.1未満
であるとバインダーとしての機能が低下し、抗菌光触媒
が固定されない。
【0030】ここで用いる難燃性のバインダーとして
は、水溶性アクリル樹脂、ウレタン/アクリル複合エマ
ルジョン、ポリウレタンエマルジョン、塩化ビニリデン
/アクリル系エマルジョン、アニオン系ポリマー・ハロ
ゲン系有機化合物・アンチモン化合物・非イオン界面活
性剤の複合物等が挙げられる。
【0031】次に、抗菌・防臭特性を発現する抗菌光触
媒剤について説明する。本発明に係る難燃抗菌性繊維製
品に用いられる抗菌光触媒剤は、酸化チタン粒子の表面
上に銀及び銅の少なくともいずれかの金属粒子を分散担
持させてなるものである。ここで抗菌光触媒剤の基材と
なる酸化チタン粒子は、紫外線が照射されると、酸化チ
タン表面に存在する吸着水(HO)や吸着酸素
(O)と反応して、強力な酸化力をもつヒドロキシラ
ジカル(・OH)やスーパーオキサイドアニオン(・O
)等の活性酸素種を発生させ、空気中の細菌を始め
悪臭、有毒ガス等を分解する光触媒効果を有する物質で
ある。このような性質を持つことから、光照射下では酸
化チタン単独でも優れた抗菌・防臭等の作用を呈する。
【0032】また、酸化チタンの結晶構造は、アナター
ゼ型の結晶構造であることが望ましい。酸化チタンの主
な結晶構造にはアナターゼ型とルチル型とがある。ルチ
ル型の酸化チタンは、光触媒活性が比較的低く主に白色
顔料・塗料としての用途の使われているものであるので
光触媒材料としては好ましくない。これに対してアナタ
ーゼ型の酸化チタンは、ルチル型よりも高い触媒活性を
有し、紫外線照射により強い酸化・還元作用を呈するの
で抗菌性能にも優れ、光触媒材料として好適な結晶構造
である。
【0033】この酸化チタン粒子の平均粒子径は、0.
1μm未満であることが望ましい。平均粒子径が0.1
μm以上となると酸化チタン粒子の比表面積が小さくな
ることにより単位面積当たりの被分解物質との反応量が
低下するため、抗菌性及び防臭性等の光触媒作用による
分解反応の速度の低下が懸念される。
【0034】一方、酸化チタン粒子の表面に担持される
銀若しくは銅の金属粒子は、強い抗菌作用を備えた物質
である。特に、銀は抗菌性の極めて強い物質であり、好
ましくは金属銀を用いることが望ましい。これら金属粒
子を酸化チタン粒子の表面に担持することにより、酸化
チタンの光触媒効果が及ばない暗所においても高い抗菌
性能を維持することができる。また光照射下において
は、酸化チタンの光触媒性能をさらに高める光触媒活性
剤としての役割も果たす。
【0035】また、本願発明においては金属銀の酸化チ
タン粒子表面への担持量は、酸化チタン粒子の単位重量
当たり0.02重量%以上5.0重量%以下であること
を要する。金属粒子が5.0重量%を超えると酸化チタ
ン粒子の表面にしめる金属粒子の割合が大きくなるため
紫外線の吸収が妨げられ、光触媒作用が低下するため好
ましくない。一方、金属粒子の担持量が0.02重量%
未満であると金属粒子の有する抗菌作用ならびに光触媒
性能の向上が認められない。従って、この範囲内で金属
粒子を担持すれば、得られる抗菌光触媒剤の抗菌作用及
び光触媒作用は一層顕著なものとなり、優れた抗菌性及
び防臭性等の諸特性を発現させることができる。
【0036】さらに、金属銀粒子の平均粒子径は4nm
未満であることが望ましい。平均粒子径が4nmを超え
ると、抗菌光触媒剤としての機能を十分に発揮すること
ができず、全体としての抗菌作用及び光触媒作用が逆に
低下することとなり好ましくない。
【0037】また、上記金属粒子を酸化チタン粒子の表
面に分散担持させてなる抗菌光触媒剤は、さらに酸化チ
タン粒子の触媒性能を高める白金及びパラジウムの少な
くともいずれかを含有されていることが望ましい。これ
らの触媒金属が含有されることによって酸化チタン粒子
の光触媒性能はより一層高められることとなる。
【0038】また、上記難燃性バインダーには、さらに
抗菌光触媒剤の分散性を向上させる分散剤が添加されて
いることが望ましい。分散剤を添加することによって、
抗菌光触媒剤のバインダー中への分散性がより一層高め
られ繊維製品にコーティングした場合に塗布ムラが生じ
る心配がなく良好な難燃性繊維製品が得られる。
【0039】ここで使用される分散剤としては、ポリカ
ルボン酸ナトリウム塩、ポリカルボン酸アンモニウム
塩、水溶性アニオンポリマーのアンモニウム塩、高縮合
ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩、カチオン系触媒、
ポリリン酸未中和品、ポリリン酸アミノアルコール中和
品、ポリカルボン酸アルカノールアミン塩、アニオン/
ノニオン配合物等のいわゆる界面活性剤が挙げられる。
これらの分散剤は、用いる難燃性バインダーの種類によ
って適宜使い分けるのが望ましい。例えば、ポリウレタ
ンエマルジョンのバインダーを用いた場合には、分散剤
としてポリカルボン酸塩等のアニオン系界面活性剤を用
いるのが好ましい。
【0040】また、この分散剤は、繊維製品への付着量
が前記繊維製品の単位重量当たり0.02重量%以上
0.5重量%以下の範囲となっていることが望ましい。
添加量が0.5重量%を超えるとコーティング液の難燃
性の低下を招き、一方、0.02重量%未満であると分
散性の向上が見られない。
【0041】また、上記難燃性のバインダーには、さら
に前記抗菌性粒子の風合を向上させる柔軟剤が添加され
ていることが望ましい。柔軟剤の添加により繊維製品の
風合が改善され、特に、バインダーの添加量が多いと元
々の繊維製品の風合が低下するので、柔軟剤の添加によ
り風合を改善することが望ましい。ここで、使用される
柔軟剤としては、ポリエステル系エマルジョン等が挙げ
られる。
【0042】この柔軟剤は、繊維製品への付着量が、前
記繊維製品の単位重量当たり0.05重量%以上1.0
重量%以下の範囲となっていることが望ましい。添加量
が1.0重量%を超えるとコーティング液の難燃性の低
下を招き、一方、0.05重量%未満であると風合の向
上は見られない。
【0043】次に、本発明に係る難燃抗菌性繊維製品の
製造方法について説明する。本発明に係る難燃抗菌性繊
維製品の製造方法は、酸化チタン粒子を水溶液中に分散
させておき、その溶液中に銀アンモニウム錯体及び銅ア
ンモニウム錯体の少なくともいずれかを添加し、還元剤
を入れて酸化チタン粒子の表面に銀及び銅の少なくとも
いずれかの金属粒子を還元析出により分散担持させてな
る抗菌光触媒剤を、前記難燃性のバインダーと共に溶媒
中に分散させて難燃抗菌性のコーティング液を作製し、
このコーティング液を、前記抗菌光触媒剤及びバインダ
ーが前記繊維製品の目付量に対して0.2重量%以上1
0重量%以下の範囲で繊維製品に付着されるように、繊
維製品の表面に塗布して、その後乾燥させることにより
この繊維製品の表面に難燃抗菌性を備えてなるコーティ
ング層を形成させるというものである。
【0044】抗菌光触媒剤を分散させる溶媒としては、
水やエチルアルコール等の種々のアルコール類、その他
水溶液が挙げられる。また、上記工程により得られたコ
ーティング液が、抗菌光触媒剤及びバインダーが繊維製
品の目付量に対して0.2重量%以上10重量%以下の
範囲で繊維製品に付着されるように、繊維製品表面に塗
布されれば、優れた難燃性、抗菌性及び防臭性を発現す
る難燃抗菌性繊維製品が得られる。このとき抗菌光触媒
剤及びバインダーの総量が10重量%を超えると、繊維
製品の風合等が悪くなるといった問題があり、一方、
0.2重量%未満であるとコーティング液のコーティン
グ効果が小さく、十分な難燃・抗菌効果等が発現されな
いといった問題がある。
【0045】なお、上記コーティング液に分散剤及び柔
軟剤の少なくともいずれかを添加する場合には、バイン
ダーの添加量の一部を分散剤及び柔軟剤の少なくともい
ずれかの添加量に置き換えて、繊維製品に付着される抗
菌光触媒剤及びバインダーと分散剤及び柔軟剤の少なく
ともいずれかとを含めた総重量が繊維製品の目付量に対
して0.2重量%以上10重量%以下の範囲となってい
ればよい。
【0046】このコーティング液を繊維製品の塗布する
手段としては、ディッピング法、スプレー法、ロールコ
ート法、プリント法のいずれかの方法を用いるのが望ま
しい。いずれのコーティング方法も、抗菌光触媒剤及び
バインダーが分散されたコーティング液を繊維製品上に
塗布して乾燥・硬化させるものであるので、コーティン
グ液が抗菌光触媒剤及びバインダーが均一に分散された
ものであれば、繊維製品表面に均一でムラのないコーテ
ィング層を形成させることができる。
【0047】ここで、金属粒子を分散担持させた酸化チ
タン粒子すなわち抗菌光触媒剤の光触媒効果および抗菌
効果について図1〜図5を用いて説明する。ここでは金
属粒子として銀を担持させた場合について説明する。こ
の抗菌光触媒剤1は、図1に示すように、酸化チタン
(TiO)粒子2の表面に銀(Ag)粒子3が分散担
持されている。酸化チタンに光すなわち紫外線(UV)
が照射されると、酸化チタン2がこれを吸収し、酸化チ
タン2の結晶中では電子(e)と正孔(h)の2つ
の伝導キャリア(電子正孔対)が発生する。電子正孔対
が発生するメカニズムは以下の通りである。すなわち、
本発明で使用されるアナターゼ型の酸化チタンのエネル
ギーのバンドギャップ(禁止帯)は3.2eVであり、
この酸化チタンにバンドギャップを超える3.2eV以
上のエネルギー、波長に換算すると388nm以下の波
長を有する光すなわち紫外線を照射すると、価電子帯中
の電子が伝導帯へと励起され、これにより価電子帯と伝
導帯に正孔(h+)と電子(e−)の対(電子正孔対)
が生成するというものである(図2参照)。
【0048】上記メカニズムにより酸化チタンの結晶中
に発生する電子(e)と正孔(h )は、それぞれ強
い還元力、酸化力をもっている。図3に示すように、価
電子帯において発生する正孔(h)は、酸化チタン粒
子2の表面に存在する吸着水(HO)あるいは大気中
の水分を酸化して、化1で表される高い酸化力を有する
ヒドロキシラジカル(・OH)なる活性酸素種を生成さ
せ、この活性酸素種が細菌類等の酸化分解に寄与する。
【0049】
【化1】HO+h→・OH+H
【0050】一方、価電子帯から伝導帯へと励起された
電子(e)は、酸化チタン粒子の表面に吸着される酸
素(O)を還元して、化2に表されるスーパーオキサ
イドアニオン(・O )を生成させる(図1(a)参
照)。このスーパーオキサイドアニオン(・O )も
酸化力の高い活性酸素種であり、ヒドロキシラジカル
(・OH)と同様に細菌類等の酸化分解に寄与する。
【0051】
【化2】O+e→・O
【0052】上記のように正孔(h+)および電子(e
−)による酸化および還元反応によって生成される活性
酸素種であるヒドロキシラジカル(・OH)およびスー
パーオキサイドアニオン(・O )は、細菌類、悪臭
などの有機物を連鎖的に酸化分解して、最終的に人体に
対して無害な水(HO)と二酸化炭素(CO)へと
分解する。
【0053】しかし、紫外線照射によって生じる正孔
(h)および電子(e)はすべてが上記の酸化およ
び還元反応に寄与するわけではなく、時間の経過と共に
生成した正孔と電子が再結合してしまい反応に寄与しな
くなる。したがって、光触媒作用を効果的に発現させる
ためには、得られる正孔(h)と電子(e)の再結
合をできるだけ防止して、多くの正孔(h)および電
子(e)を酸化及び還元反応に寄与させて活性酸素種
を作り出すことが必要である。特に、太陽光が照射され
ない室内で使用する場合には、屋外ほどの高い紫外線の
照射量が望めないため、発生する電子正孔対を有効に利
用する必要がある。
【0054】この正孔と電子の再結合は、酸化チタン粒
子2の表面に銀、銅、白金、パラジウム等の金属粒子3
を付着させることによって抑制されることが知られてい
る。すなわち、紫外線照射により生成した電子が酸化チ
タン粒子2の表面に付着した金属粒子3に集まり、正孔
との再結合が抑制(電荷分離)されるというものである
(図4参照)。そこで、図4に示すように酸化チタン粒
子2の表面に金属銀3を付着させることによって電荷分
離効率が高められ、照射力の弱い光(室内光など)の下
でも十分な光触媒効果が得られ、さらに金属銀3による
優れた抗菌効果も得られる。
【0055】すなわち、酸化チタン粒子2と金属銀3と
から構成される抗菌光触媒剤は、金属銀3特有の強い抗
菌(殺菌)作用によって細菌や病原菌等を死滅させる抗
菌(殺菌)効果と、その死骸を酸化チタン2と金属銀3
とが互いに作用し合うことによって生じる光触媒作用に
よって分解する分解(解毒)効果とを有するという優れ
た特性を備えた材料である。
【0056】
【実施例】以下に本発明に係る実施例について詳細に説
明する。まず、本発明に係る製造方法によって得られる
難燃抗菌性繊維製品の評価手段について説明する。難燃
抗菌性繊維製品の評価としては、光触媒性能試験(アセ
トアルデヒドガスの分解率測定試験)、抗菌性能試験、
防炎性能試験、耐光性試験(紫外線照射前後の引張り強
さ及び伸び率の測定試験)、及び風合の測定試験を行っ
た。以下に、各試験方法について説明する。
【0057】(光触媒性能試験)光触媒性能は、図6に
示す測定装置を用いて評価した。この測定装置は、得ら
れた繊維製品を一定寸法に切り出して調製した試験片S
を収容設置する全容量が5Lのセパラブルフラスコ4
と、この上方にフラスコ4内に向けて紫外線を照射する
ためのブラックライト5と、フラスコ4内を真空引き並
びに試験ガスを循環するための真空ポンプ6と、抽出さ
れた試験ガスの収集及び排出するためのオートサンプラ
ー7と、このオートサンプラー7内に収集されたガス成
分の分析を行うFIDガスクロマトグラフ8とから構成
されるものである。
【0058】使用する試験片Sは、繊維製品を約50m
m×100mm角の寸法に切り出したものを用い、セパ
ラブルフラスコ4内の設置台9上に設置される。試験ガ
スとしてはアセトアルデヒドを使用し、セパラブルフラ
スコ4内をいったん真空ポンプ6を用いて真空にした後
にこれをセパラブルフラスコ4の蓋部に設けられるガス
注入口10より導入する。なお、アセトアルデヒドの濃
度が約25ppmとなるように約2000ppmのガス
を導入し、空気中で希釈する。また、ブラックライト5
による紫外線の照射量は試験片Sの単位面積当たり1m
W/cmとしている。以上の条件により、セパラブル
フラスコ4内に導入したアセトアルデヒドの初期濃度と
2時間後の残留濃度とを測定することで以下の式1を用
いて、試験片の光触媒効果によるアセトアルデヒドの分
解率を算出し光触媒性能の評価とした。なお、測定は後
述する試験片の洗濯処理の前後でそれぞれ行った。
【0059】
【数1】アセトアルデヒドの分解率=(2時間後の残留
濃度/初期濃度)×100(%)
【0060】(抗菌性能試験)試験片の抗菌性能は、J
IS規格(JIS L 1902)に準拠して行った。
この抗菌性試験に当たっては、まず、(1)接種菌液の
調整を行い、次いで、(2)試料の調整を行い、次に、
(3)菌液の接種を行い、最後に、(4)菌数算定操作
を行った。なお、使用する試験菌は、黄色ブドウ球菌
「Staphylococcusaureus IFO 12732」を用い、使用培
地は、増菌用として、「NA普通寒天培地」(栄研化学
(株)製)及び「NB普通ブイヨン培地」(栄研化学
(株)製)を、菌数算定用として、「標準寒天培地」
(日水製薬(株)製)をそれぞれ使用した。以下に具体
的な操作手順について説明する。
【0061】(1)接種菌液の調整 必要な器具・試験片の滅菌を行った後、試験菌をNA培
地に移植し、37℃で48時間培養する。培養した菌を
NA培地に1白金耳移植し、37℃で18〜20時間培
養する。前培養した菌を1/20NB培地に均一に分散
させた後、1ml当たりの菌数が10となるように1
/20NB培地で希釈し、接種用菌液とした。初期菌数
算定のため、接種用菌液を30〜300個/mlとなる
ように希釈し、標準寒天培地にて培養を行い、37℃で
24〜48時間培養した後コロニー数を算定した。
【0062】(2)試料の調整 18mmの正方形の試験片約0.4gを採取し、容積が
30mlのバイアル瓶に入れ、ふたを緩めて121℃で
15分間高圧蒸気滅菌した。
【0063】(3)菌液の接種 滅菌バイアル瓶中の試験片上に、菌液0.2mlを均一
に接種し、37℃で18時間静置培養した。
【0064】(4)菌数算定操作 バイアル瓶中に滅菌緩衝生理食塩水20mlを加え、試
験片中の生菌を液中に分散させ、適宜希釈して1.0m
lを標準寒天培地に重層し、37℃で24〜48時間培
養後コロニー数を算定した。抗菌未加工品は、接種直後
と18時間培養後に、加工品は18時間培養後につい
て、それぞれの菌数算定を行った。なお、菌数算定は後
述する試験片の洗濯処理の前後でそれぞれ行った。
【0065】(防炎性能試験)試験片の防炎性能試験
は、(1)D法(接炎試験/JIS規格「JIS L1
091」に準拠)と(2)45°メセナミン錠剤法(表
面燃焼試験/JIS規格「JIS L 1091附属書
9(参考)」に準拠)の2つ方法を用いて行った。以下
に各試験方法について説明する。
【0066】(1)D法(接炎試験) 試験片を幅100mm、質量1gとし、縦・横それぞれ
5枚採取した。この試験片を難燃性試験器内の試験片支
持コイル内の中央に挿入し、45°の傾斜に保持した。
ついで、バーナの炎が試験片支持コイル内の試験片の最
下端に接する位置に調節し、試験片が溶融しつつ燃焼を
停止するまで加熱した。残った試験片の最下端が炎に接
する位置に調節し直して、前回と同様の試験を行い、試
験片の下端から90mmのところが溶融し燃焼するま
で、この操作を繰り返した。試験後の評価としては、接
炎回数が平均3回以上のものを合格「○」とし、3回に
達したなかったものを不合格「×」とした。なお、この
試験は後述する試験片の洗濯処理の前後でそれぞれ行っ
た。
【0067】 (2)45°メセナミン錠剤法(表面燃焼試験)試験片
の大きさは、490mm×220mmとし、縦・横それ
ぞれ3枚を採取する。試験片を1枚ずつデシケーターか
ら取り出し、手早く試験室の室温と同温度のパーライト
板上に置き、抑え枠で動かないように周囲を抑え、燃焼
試験箱に45°の傾斜をもたせて固定する。火源は抑え
枠の下端から70mm、かつ、よこ方向の中心の位置に
移動しない方法で置き、マッチでこれに点火し、点火後
は速やかに燃焼試験箱のガラス窓を閉じる。試験後の評
価としては、試験片が炭化された長さ(以下「炭化長」
という)が最大70mm以下で、平均が50mm以下の
ものを合格「○」とし、これを超えるものは不合格
「×」とした。なお、この試験は後述する試験片の洗濯
処理の前後でそれぞれ行った。
【0068】(洗濯処理)上述のように、上記光触媒性
能試験、抗菌性能試験、及び防炎性能試験は、洗濯処理
の前後でそれぞれ評価を行っている。洗濯処理は、JI
S規格「JISL 1091附属書7(規定)繊維−繊
維生地の燃焼性試験の前処理としての家庭洗濯手順」に
準拠して行った。具体的な洗濯手順については割愛する
が、洗濯回数は5回として洗濯後の試験片についてそれ
ぞれ触媒性能試験、抗菌性能試験、及び防炎性能試験を
行った。
【0069】(耐光性試験)試験片の耐光性の評価は、
JIS規格「JIS B 7751紫外線カーボンアー
ク灯式耐光性及び耐光性試験機」に準拠して試験片に紫
外線を照射した後、JIS規格「JIS L 1096
附属書7(規定)繊維製品−織物−引張強さ及び伸び率
の測定」に準拠して試験片の引張強さ及び伸び率を測定
することにより行った。紫外線の照射時間は100時間
とした。引張強さは試験片を破断するまで引き延ばす試
験の間に観測される最大引張荷重であり、伸び率は引張
試験の間に試験片が増大した長さである。なお本願にお
ける引張強さ及び伸び率は、本発明で作製したコーティ
ング液のコーティング前後における試験片について測定
を行い、コーティング前における測定値(初期値)に対
するコーティング後の測定値を百分率で表すことにより
評価を行った。
【0070】(風合の評価)未加工布(コーティング液
の塗布前)と加工布(塗布後)の手触りの違いで判定し
た。すなわち、手触りがほぼ変わらないものを合格
「○」とし、一方、やや異なるものを「△」、明らかに
異なるものを「×」としてそれぞれ不合格とした。
【0071】(実施例1)まず、抗菌光触媒剤の作製手
順について説明する。硝酸銀1.2g(金属銀0.76
gに相当)を10mlの純水に溶解し、この溶液にアン
モニア水4mlを加えることによって、硝酸銀のアンモ
ニア錯体を得た。一方、平均粒子径が0.007μmの
アナターゼ型の酸化チタン(TiO粒子を純水800
mlに添加・攪拌して、この攪拌溶液中に上記硝酸銀の
アンモニア錯体の溶液を加えさらに攪拌・分散させた。
【0072】次に、この分散溶液に還元剤としてブドウ
糖8gを含むブドウ糖溶液100mlを添加した後30
〜50℃に加熱して1時間攪拌することによって、酸化
チタン粒子の表面に金属銀を析出させた。得られた混合
溶液は、デカンテーションによって分離し、水洗浄及び
乾燥することによって平均粒子径が0.007μmの酸
化チタン粒子の表面に0.76g(0.3重量%)の金
属銀からなる金属粒子が分散担持してなる抗菌光触媒剤
を約250g得た。
【0073】次に、得られた抗菌光触媒剤と難燃性バイ
ンダーとを配合してコーティング液を作製する。具体的
には、抗菌光触媒剤2.0重量%と、バインダーとして
難燃処理が施された臭素含有ポリエーテル型ウレタン樹
脂0.6重量%(難燃性バインダーの抗菌光触媒剤に対
する固形分比率が0.3)を溶媒である純水に添加し、
さらにこれに柔軟剤としてポリエステル系エマルジョン
0.3重量%を加え、攪拌・分散させてコーティング液
とした。得られたコーティング液をディッピング法によ
って、繊維製品であるポリエステル難燃加工布(目付量
が159g/cm)表面に塗布し、その後乾燥させて
最終繊維製品とした。このときの難燃性抗菌剤の付着量
は、繊維製品の目付量に対し3.0重量%であった。
【0074】(実施例2)上記実施例1と同様の手法に
より作製した抗菌光触媒剤2.0重量%と、バインダー
として難燃処理が施された臭素含有ポリエーテル型ウレ
タン樹脂0.6重量%(難燃性バインダーの抗菌光触媒
剤に対する固形分比率が0.3)を溶媒である純水に添
加し、さらにこれに柔軟剤としてポリエステル系エマル
ジョン0.3重量%を加え、攪拌・分散させてコーティ
ング液とした。得られたコーティング液をディッピング
法によって、繊維製品であるポリエステル難燃加工布
(目付量が159g/cm)表面に塗布し、その後乾
燥させて最終繊維製品とした。このときの難燃性抗菌剤
の付着量は、繊維製品の目付量に対し4.2重量%であ
った。
【0075】(実施例3)上記実施例1と同様の手法に
より作製した抗菌光触媒剤2.0重量%と、バインダー
として難燃処理が施された臭素含有ポリエーテル型ウレ
タン樹脂0.6重量%(難燃性バインダーの抗菌光触媒
剤に対する固形分比率が0.3)を溶媒である純水に添
加し、さらにこれに分散剤としてポリカルボン酸ナトリ
ウム塩0.38重量%、及び柔軟剤としてポリエステル
系エマルジョン0.3重量%を加え、攪拌・分散させて
コーティング液とした。得られたコーティング液をディ
ッピング法によって、繊維製品であるポリエステル難燃
加工布(目付量が103g/cm)表面に塗布し、そ
の後乾燥させて最終繊維製品とした。このときの難燃性
抗菌剤の付着量は、繊維製品の目付量に対し2.1重量
%であった。
【0076】(比較例1)上記実施例1と同様の手法に
より作製した抗菌光触媒剤1.0重量%を溶媒である純
水に添加し分散させたものをコーティング液とした。得
られたコーティング液をディッピング法によって、繊維
製品であるポリエステル難燃加工布(目付量が159g
/cm)表面に塗布し、その後乾燥させて最終繊維製
品とした。このときの難燃性抗菌剤の付着量は、繊維製
品の目付量に対し2.0重量%であった。
【0077】(比較例2)上記実施例1と同様の手法に
より作製した抗菌光触媒剤3.3重量%と、バインダー
として難燃処理が施された臭素含有ポリエーテル型ウレ
タン樹脂20重量%(難燃性バインダーの抗菌光触媒剤
に対する固形分比率が6.0)を溶媒である純水に添加
し、これを攪拌・分散させたものをコーティング液とし
た。得られたコーティング液をプリント法によって、繊
維製品であるポリエステル難燃加工布(目付量が103
g/cm)表面に塗布し、その後乾燥させて最終繊維
製品とした。このときの難燃性抗菌剤の付着量は、繊維
製品の目付量に対し28重量%であった。
【0078】(比較例3)上記抗菌光触媒剤を4.5重
量%とし、さらに上記臭素含有ポリエーテル型ウレタン
樹脂を23.5重量%(バインダーの抗菌光触媒剤に対
する固形分比率が5.2)とした以外は比較例品2と同
様である。
【0079】(比較例4)上記実施例1と同様の手法に
より作製した抗菌光触媒剤4.8重量%と、バインダー
として難燃処理が施されていないアクリル樹脂11.6
重量%(バインダーの抗菌光触媒剤に対する固形分比率
が2.4)ととを溶媒である純水中に添加し、さらにこ
の溶媒中に乾燥した時点で蒸発してしまう乳化剤(分散
剤)を0.29重量%、及び消泡剤として界面活性剤を
0.13重量%加えて、これを攪拌・分散させることに
よってコーティング液とした。得られたコーティング液
をロールコート法によって、天然の繊維製品である木綿
(目付量が107g/cm)表面に塗布し、その後乾
燥させて最終繊維製品とした。このときの難燃性抗菌剤
の付着量は、繊維製品の目付量に対し8.8重量%であ
った。なお、本比較例において分散剤の代わりに乳化剤
を添加しているが、これはロールコート法でコーティン
グする場合はコーティング液を繊維製品の展着させるの
で、コーティング液に高い粘性が必要となり、粘性向上
のために用いたものである。
【0080】(比較例5)上記比較例4における抗菌光
触媒剤の配合割合を5.4重量%とし、さらにバインダ
ーとして難燃処理が施されていないアクリル共重合体ウ
レタン樹脂を13重量%(バインダーの抗菌光触媒剤に
対する固形分比率が2.4)と配合したことを除いて
は、上記比較例品4と同様の手法により最終繊維製品を
作製した。
【0081】(比較例6)上記実施例4と同様の手法に
より作製した抗菌光触媒剤4.8重量%と、バインダー
として難燃処理が施されていないアクリル樹脂11.6
重量%(バインダーの抗菌光触媒剤に対する固形分比率
が2.4)とを溶媒である純水中に添加し、さらにこの
溶媒中に乾燥した時点で蒸発してしまう乳化剤(分散
剤)を0.29重量%、及び消泡剤として界面活性剤を
0.13重量%加えて、これを攪拌・分散させることに
よってコーティング液とした。得られたコーティング液
をロールコート法によって、難燃ポリエステルレース
(目付量が58g/cm)表面に塗布し、その後乾燥
させて最終繊維製品とした。このときの難燃性抗菌剤の
付着量は、繊維製品の目付量に対し3.6重量%であっ
た。
【0082】(比較例7)上記比較例6における抗菌光
触媒剤の配合割合を5.4重量%とし、さらにバインダ
ーとして難燃処理が施されていないアクリル共重合体ウ
レタン樹脂を13重量%(バインダーの抗菌光触媒剤に
対する固形分比率が2.4)配合したことを除いては、
上記比較例品4と同様の手法により最終繊維製品を作製
した。
【0083】上記手法により得られた実施例品1〜3及
び比較例品1〜7について抗菌性、光触媒性、難燃性、
及び風合の各特性を評価した。各試験品の評価結果を表
1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】まず、実施例品(実施例1〜3)につい
て、抗菌性はいずれの実施例品とも洗濯前後において生
菌数は10未満と算定され、極めて良い抗菌性能を示し
た。洗濯後においても抗菌性能に劣化は見られないこと
から、バインダーとして用いた臭素含有ポリエーテル型
ウレタン樹脂の繊維製品との結合力が極めて高く、洗濯
における抗菌光触媒剤の損失がほとんどない耐久性に優
れた繊維製品であると考えられる。
【0086】また、光触媒性について、洗濯前において
はいずれの実施例品もアセトアルデヒドの分解率が90
%を超えており極めて高い光触媒性能を発揮していた。
また、洗濯後においても実施例品1で分解率が56%と
落ちるものの実施例品2及び3については洗濯後の分解
率の低下はほとんど見られず依然高い光触媒性能が維持
されていた。
【0087】図7(a)に実施例品1〜3及び比較例品
1の光触媒性能を示す結果として、洗濯前後における紫
外線の照射時間に対するアセトアルデヒドの分解率の結
果を示す。図に示すように、紫外線を2時間照射した後
ではいずれの実施例品とも高い分解性能を示すが、分解
速度で比較すると洗濯前においては実施例2が最も分解
速度が速く、照射時間70minでほとんどのアセトア
ルデヒドが分解されている。これは元々の抗菌光触媒剤
が2.9重量%と他の実施例品に比べて多いことがその
理由と考えられる。
【0088】また、実施例品3は洗濯後における分解率
すなわち光触媒性能の低下が最も小さいがその理由とし
ては、分散剤としてカルボン酸ナトリウム塩を添加した
ことによりコーティング液中の抗菌光触媒剤の分散性が
向上し、アセトアルデヒドの分解反応効率がさらに向上
したことによると考えられる。
【0089】上記のように、抗菌光触媒剤の光触媒作用
によってアセトアルデヒドが効果的に分解されたが、こ
れと同時にアセトアルデヒド特有の臭いも分解されてお
り、高い防臭効果が得られた。
【0090】また、難燃性については、いずれの実施例
品とも洗濯後における低下は見られず高い性能を維持し
ている。この高い難燃性は、コーティング層中のバイン
ダーとして配合した臭素含有ポリエーテル型ウレタン樹
脂が高い難燃性を有していること、繊維生地であるポリ
エステル繊維加工布が難燃性繊維により作製されたもの
であること、の両方の効果が起因していると考えられ
る。また、塗布されたコーティングがバインダーを介し
て繊維製品表面に強固に付着された状態にあるので耐久
性に優れ、洗濯後においても難燃性が劣化がほとんどな
い。
【0091】また、耐光性については、いずれの実施例
品ともコーティング液の塗布前後における引張強度及び
伸びの変化はほとんど無く、各繊維製品ともコーティン
グ層を形成させたことによる悪影響は全く見られなかっ
た。さらに、各繊維製品の手触りによって評価した風合
もいずれの比較例品ともに良好であり、コーティング液
の塗布前後での繊維製品の手触りの違いにほとんど差は
認められず、塗布前の繊維製品の風合特性が維持されて
いた。
【0092】一方、比較例品について見てみると、まず
比較例品1は、バインダーが一切添加されていないため
コーティングした抗菌光触媒剤は繊維製品とほとんど接
着されておらず、このため、洗濯前は優れた抗菌性及び
光触媒性を示すものの、洗濯後は表面のコーティング層
がほとんど洗い流されてしまったため殺菌効果は全くな
く、またアセトアルデヒドの分解率は図7(b)に示し
たように5%と抗菌性能及び光触媒性能はほとんど失わ
れた状態となっていた。
【0093】また、比較例品2及び3は、バインダーと
して難燃性の臭素含有ポリエーテル型ウレタン樹脂を配
合してなるコーティング液を用いているが、バインダー
の固形分比率がそれぞれ6.0、5.2と多いため、繊
維製品表面に塗布したコーティング層中の抗菌光触媒剤
の多くがバインダー中に埋もれた状態となっており、光
触媒剤である酸化チタン粒子に直接紫外線が照射されな
い状態となっている。このため、コーティング層による
光触媒効果はほとんど得られず、アセトアルデヒドは表
1及び図7(b)に示したようにほとんど分解されてい
ない。また、バインダーが繊維製品の表面に多量に塗布
されたこと、さらには柔軟剤が配合されていないこと等
が原因となって風合がコーティング前後で大きく異なっ
た。
【0094】また、比較例品4〜7は、バインダーの添
加量は適量(抗菌光触媒剤に対する固形分比率が0.1
〜5.0の範囲内)であるが、添加したバインダーは難
燃性の施されていないものであるため、いずれの比較例
品ともに難燃性が極めて悪かった。特に比較例品6及び
7は繊維生地自身が難燃性ポリエステルからなるもので
あるにもかかわらず難燃性が付与されていない。この理
由としては以下のことが考えられる。表面に塗布したコ
ーティング層には元々難燃特性がなく燃え広がりやすい
ため、たとえ繊維生地が難燃性を有するものであっても
このコーティング層が全面に塗布された状態では当然に
繊維製品にも燃え移りやすくなる。従って、コーティン
グ液が塗布された繊維製品全体としては難燃性が付与さ
れていないと考えられる。
【0095】また、繊維生地として天然の木綿繊維を用
いた比較例品4及び5は、いずれも引張強度、伸び率共
にコーティング層の形成前後で大きな低下が生じており
耐光性に劣るという結果が得られた。これは、紫外線の
照射によって繊維表面のコーティング層では抗菌光触媒
剤による光触媒作用が活性化し、このとき発生する反応
活性なヒドロキシラジカル(・OH)及びスーパーオキ
サイドアニオン(・O )等によって木綿生地自身も
一部が酸化分解されてしまったことが原因と考えられ
る。また、これに伴い比較例品4及び5は風合特性も大
きく変化していた。
【0096】上記のように、抗菌光触媒剤と難燃性を有
する水溶性のバインダーを配合してなるコーティング液
を難燃性の繊維製品に塗布することによって、優れた難
燃性、抗菌性及び防臭性(光触媒性)を示す繊維製品が
得られた。すなわち、水溶性のバインダーを用いたこと
により、抗菌光触媒剤をバインダー中に配合する際に抗
菌光触媒剤の分散性がよく、抗菌光触媒剤とバインダー
が均一に配合されてなる難燃性、抗菌性を有するコーテ
ィング液が得られた。そして、このコーティング液をデ
ィッピング法、ロールコート法等の塗布方法を用いて塗
布することにより抗菌特性及び光触媒特性に加え難燃特
性をも有するコーティング層が形成された繊維製品が得
られるものである。
【0097】こうして得られた繊維製品は、病院、老人
福祉施設等で、カーテン、じゅうたん、リネン材等とし
て使用した場合に、細菌、病原菌等の殺菌効果、薬品
臭、老人臭等の防臭効果、さらに火災等が起こった場合
にもこの繊維製品自体は燃え広がらず火災等の被害を最
小限に食い止めることができるなどの種々の効果を有し
ており、上記施設で使用される繊維製品として好適なも
のであるといえる。また、上記施設に限らず一般家庭に
おける寝具等としても勿論使用することができる。
【0098】以上、実施例について説明したが、本発明
の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例
えば、上記実施例では、難燃性のバインダーとして臭素
含有ポリエーテル型ウレタン樹脂を用いて説明したがこ
れに限られず、難燃性を有し且つ水溶性のポリウレタン
系又はポリエステル系の樹脂からなるものであれば種々
のバインダーが適用可能である。
【0099】また、抗菌光触媒剤は、酸化チタン粒子に
担持される金属粒子の担持量が酸化チタン粒子の単位重
量当たり0.01以上5.0重量%以下の範囲内で担持
されたものであれば上記実施例の担持量には限定され
ず、担持する金属粒子として銀の代わりに銅を用いるこ
とも可能であり、さらには触媒性能を高める目的で白
金、パラジウムを添加したものであってもよい。
【0100】コーティング液を塗布する繊維生地も上記
実施例のものには限られず、難燃抗菌性繊維製品として
その機能を果たすものであれば、如何なる種類の繊維生
地からなるものであっても構わない。
【0101】さらに、コーティング液を繊維製品に塗布
する方法としては、上記実施例ではディッピング法を用
いて塗布を施しているが、それ以外のスプレー法、ロー
ルコート法、プリント法のいずれの方法を用いて塗布す
るものであってもよいことは言うまでもない。
【0102】
【発明の効果】本発明に係る難燃抗菌性繊維製品によれ
ば、繊維製品に酸化チタン粒子表面に銀及び銅の少なく
ともいずれかの金属粒子を担持してなる抗菌光触媒剤を
塗布させたものであるから、この繊維製品に太陽光など
の紫外線が照射されることにより抗菌光触媒剤が優れた
抗菌性及び光触媒性を発揮し、この繊維製品に付着した
細菌や病原菌等を死滅させ、さらにその死骸を分解する
ことによって優れた防臭効果も得られる。
【0103】また、コーティング液に配合するバインダ
ーは、難燃性 難燃性を有する水溶液樹脂からなるもの
であるので、上記抗菌光触媒剤とバインダーを溶媒中に
分散させる際に抗菌光触媒剤が均一に分散し、これらか
らなるコーティング液は均一に配合され、このコーティ
ング液を塗布してなる繊維製品は、抗菌特性、光触媒特
性が場所によってムラが生じるといったことが生じる心
配はなく、均一にその機能が発揮される。さらに、バイ
ンダーの配合量が抗菌光触媒剤に対する固形分比率が
0.1〜5.0の範囲となるように設定されており、比
較的少量での配合でバインダーとしての機能を十分に発
揮する。したがって、バインダーがたとえ難燃性を有す
るものであっても多量に配合された場合には逆に難燃性
の低下を招くといった問題が生じることはなく、これを
バインダーを配合したコーティング液を塗布してなる繊
維製品は優れた難燃特性を発揮する。
【0104】また、上記抗菌光触媒剤とバインダーから
なるコーティング液にさらに分散剤が配合されることに
よって、コーティング液の分散性はさらに向上し、これ
を繊維製品に塗布すれば、難燃性、抗菌性及び防臭性の
各特性をより効果的に発揮させることができる。さら
に、上記コーティング液に柔軟剤が配合されることによ
って、このコーティング液が塗布されてなる繊維製品は
風合が改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に使用する抗菌光触媒剤の模式図であ
る。
【図2】 酸化チタンのエネルギーバンド構造を示した
模式図である。
【図3】 酸化チタンの光触媒作用を示した模式図であ
る。
【図4】 酸化チタン粒子表面に金属銀を担持させたと
きの電解分離のメカニズムを示した模式図である。
【図5】 図1に示した抗菌光触媒剤の抗菌作用及び光
触媒作用を示した模式図である。
【図6】 本願発明の実施例に係る光触媒性能の測定装
置の概略を示した図である。
【図7】 本願発明に難燃抗菌性繊維製品の光触媒性能
を表すアセトアルデヒドの分解率の紫外線照射時間依存
性を示した図であり、(a)が実施例品1〜3及び比較
例品1の洗濯前後における測定結果であり、(b)が比
較例品1〜7の洗濯前の測定結果である。
【符号の説明】
1 抗菌光触媒剤 2 酸化チタン粒子 3 金属粒子(金属銀) S 試験片 4 セパラブルフラスコ 5 ブラックライト 6 真空ポンプ 7 オートサンプラー 8 FIDガスクロマトグラフ 9 設置台 10 ガス注入口
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A01N 59/20 B01J 23/50 M B01J 23/50 35/02 J 35/02 C09K 21/12 C09K 21/12 21/14 21/14 D06M 13/282 D06M 11/83 15/568 13/282 B68G 3/00 15/507 D06M 11/12 15/568 11/00 A // B68G 3/00 15/507 Z (71)出願人 502022645 理科研株式会社 愛知県名古屋市守山区元郷2丁目107番地 (72)発明者 柳原 和夫 愛知県名古屋市南区大同町2丁目30番地 大同特殊鋼株式会社技術開発研究所内 (72)発明者 高須 健一郎 愛知県蒲郡市浜町36 株式会社鈴寅内 (72)発明者 田中 美喜男 愛知県蒲郡市旭町10番2号 森菊株式会社 内 (72)発明者 安原 利夫 愛知県名古屋市守山区元郷2丁目107番地 理科研株式会社内 Fターム(参考) 4G069 AA03 AA08 BA04A BA04B BA48A BB02A BB02B BC31A BC32A BC32B BC72A BC75A CA01 CA11 EA09 EB19 EC22X EC22Y FA03 FB15 FB23 FC08 4H011 AA02 BA01 BB18 BC06 BC18 BC19 DA02 DA07 DA15 DC10 DH03 DH04 DH05 DH19 4H028 AA34 AA43 BA04 4L031 AA18 AB31 BA04 BA09 DA12 4L033 AA07 AB05 AC05 AC10 AC15 BA35 CA45 CA50 DA06

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化チタン粒子の表面に、銀及び銅の少
    なくともいずれかからなる金属粒子を分散付着させてな
    る抗菌光触媒剤を難燃性のバインダー中に配合して得ら
    れる難燃抗菌性のコーティング液を繊維製品に塗布して
    なる難燃抗菌性繊維製品であって、前記バインダーは、
    ポリウレタン系又はポリエステル系の水溶性樹脂を主成
    分とし、この樹脂成分中の水素原子の一部が臭素原子又
    は塩素原子に置換されたものあるいは有機リン化合物を
    含むものであることを特徴とする難燃抗菌性繊維製品。
  2. 【請求項2】 前記難燃性のバインダーは、前記抗菌光
    触媒剤に対する固形分比が0.1以上5.0以下の範囲
    となるように配合されることを特徴とする請求項1に記
    載の難燃抗菌性繊維製品。
  3. 【請求項3】 前記酸化チタン粒子は、アナターゼ型の
    結晶構造を有していることを特徴とする請求項1又は2
    に記載の難燃抗菌性繊維製品。
  4. 【請求項4】 前記酸化チタン粒子は、平均粒子径が
    0.1μm未満であることを特徴とする請求項1ないし
    3のいずれかに記載の難燃抗菌性繊維製品。
  5. 【請求項5】 前記金属粒子は、平均粒子径が4nm未
    満であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか
    に記載の難燃抗菌性繊維製品。
  6. 【請求項6】 前記酸化チタン粒子に分散付着される金
    属粒子の付着量は、前記酸化チタン粒子の単位重量当た
    り0.01重量%以上5.0重量%以下であることを特
    徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の難燃抗菌
    性繊維製品。
  7. 【請求項7】 前記抗菌光触媒剤は、さらに酸化チタン
    粒子の触媒性能を高める白金及びパラジウムの少なくと
    もいずれかを含有することを特徴とする請求項1ないし
    6のいずれかに記載の難燃抗菌性繊維製品。
  8. 【請求項8】 前記難燃性のバインダーには、さらに前
    記抗菌性粒子の分散性を向上させる水溶性の分散剤が添
    加され、この分散剤の前記繊維製品への付着量が、前記
    繊維製品の単位重量当たり0.02重量%以上0.5重
    量%以下の範囲となることを特徴とする請求項1ないし
    7のいずれかに記載の難燃抗菌性繊維製品。
  9. 【請求項9】 前記難燃性のバインダーには、さらに前
    記抗菌性粒子の風合を改善する柔軟剤が添加され、この
    柔軟剤の前記繊維製品への付着量が、前記繊維製品の単
    位重量当たり0.05重量%以上1.0重量%以下の範
    囲となることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか
    に記載の難燃抗菌性繊維製品。
  10. 【請求項10】 酸化チタン粒子を水溶液中に分散させ
    ておき、その溶液中に銀アンモニウム錯体及び銅アンモ
    ニウム錯体の少なくともいずれかを添加し、還元剤を入
    れて酸化チタン粒子の表面に銀及び銅の少なくともいず
    れかの金属粒子を還元析出により分散担持させてなる抗
    菌光触媒剤を、難燃性のバインダーと共に溶媒中に分散
    させて難燃抗菌性のコーティング液を作製し、このコー
    ティング液を、前記抗菌光触媒剤及びバインダーが繊維
    製品の目付量に対して0.2重量%以上10重量%以下
    の範囲で前記繊維製品に付着されるように、繊維製品の
    表面に塗布して、その後乾燥させることによりこの繊維
    製品の表面に難燃抗菌性を備えてなるコーティング層を
    形成させることを特徴とする難燃抗菌性繊維製品の製造
    方法。
  11. 【請求項11】 前記コーティング液は、ディッピング
    法、スプレー法、ロールコート法、プリント法のいずれ
    かの塗布方法を用いて前記繊維製品に塗布されることを
    特徴とする請求項10に記載の難燃抗菌性繊維製品の製
    造方法。
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