JP2003203563A - 電界放射型電子源およびその製造方法 - Google Patents

電界放射型電子源およびその製造方法

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卓哉 菰田
Koichi Aizawa
浩一 相澤
Yoshiaki Honda
由明 本多
Yoshifumi Watabe
祥文 渡部
Tsutomu Kunugibara
勉 櫟原
Toru Baba
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Abstract

(57)【要約】 【課題】電子放出特性が向上した電界放射型電子源およ
びその製造方法を提供する。 【解決手段】強電界ドリフト層6は、n形シリコン基板
1上に形成された多孔質多結晶シリコン層4を、電解液
中にて電気化学的に酸化する酸化工程により形成されて
いる。酸化工程では、例えばエチレングリコールからな
る有機溶媒中に0.04Mの硝酸カリウムからなる溶質
を溶かした電解液の入った酸化処理槽を利用し、白金電
極(図示せず)を負極、n形シリコン基板1とオーミッ
ク電極2とからなる下部電極を正極として、定電流を流
し多孔質多結晶シリコン層4を電気化学的に酸化する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電界放射により電
子線を放射するようにした電界放射型電子源およびその
製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、下部電極と、下部電極に対向
する導電性薄膜よりなる表面電極と、下部電極と表面電
極との間に介在し下部電極と表面電極との間に表面電極
を高電位側として電圧を印加したときに下部電極から注
入された電子がドリフトする強電界ドリフト層とを備え
た電界放射型電子源が提案されている(例えば、特許第
2987140号公報、特許第2966842号公報、
特許第3079086号公報など参照)。ここに、強電
界ドリフト層は、酸化した多孔質半導体層たる多孔質多
結晶シリコン層により構成されている。この種の電界放
射型電子源は、表面電極を真空中に配置するとともに表
面電極に対向してコレクタ電極を配置し、表面電極と下
部電極との間に表面電極を高電位側として直流電圧を印
加するとともに、コレクタ電極と表面電極との間にコレ
クタ電極を高電位側として直流電圧を印加することによ
り、強電界ドリフト層をドリフトした電子が表面電極を
通して放出されるものである。したがって、表面電極に
は仕事関数の小さな金属材料(例えば、金)が採用さ
れ、表面電極の膜厚は10〜15nm程度に設定されて
いる。また、この種の電界放射型電子源においては、抵
抗率が導体の抵抗率に比較的近い半導体基板と当該半導
体基板の裏面に形成したオーミック電極とで下部電極を
構成したものや、絶縁性基板(ガラス基板、セラミック
基板など)の一表面側に形成された導電性層により下部
電極を構成したものなどがある。
【0003】上述の電界放射型電子源において、表面電
極と下部電極との間に流れる電流をダイオード電流Ips
と呼び、コレクタ電極と表面電極との間に流れる電流を
エミッション電流(放出電子電流)Ieと呼ぶことにす
れば、ダイオード電流Ipsに対するエミッション電流I
eの比率(=Ie/Ips)が大きいほど電子放出効率(=
(Ie/Ips)×100〔%〕)が高くなるが、上述の
電界放射型電子源では、表面電極と下部電極との間に印
加する直流電圧を10〜20V程度の低電圧としても電
子を放出させることができ、電子放出特性の真空度依存
性が小さく且つ電子放出時にポッピング現象が発生せず
安定して電子を高い電子放出効率で放出することができ
る。
【0004】ところで、上記従来構成を有する電界放射
型電子源における強電界ドリフト層は、多孔質多結晶シ
リコン層を酸化することで、多孔質多結晶シリコン層に
含まれていた多数のシリコン微結晶および多数のグレイ
ンそれぞれの表面に薄いシリコン酸化膜が形成されてい
るものと考えられ、全てのシリコン微結晶およびグレイ
ンの表面に良好な膜質のシリコン酸化膜を形成すること
を目的として、強電界ドリフト層を形成するにあたっ
て、例えば、1mol/lの硫酸、硝酸などの水溶液か
らなる電解質溶液中にて多孔質多結晶シリコン層を電気
化学的に酸化する方法が提案されている。ここにおける
電解質溶液は、質量分率で90%(90wt%)以上の
水を含んでいる。なお、多孔質多結晶シリコン層を電気
化学的に酸化する方法を採用することにより、多孔質多
結晶シリコン層を急速熱酸化して強電界ドリフト層を形
成する場合に比べてプロセス温度を低温化することがで
き、基板の材料の制約が少なくなり、電界放射型電子源
の大面積化および低コスト化を図れるという利点もあ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、硫酸、
硝酸などの水溶液からなる電解質溶液中にて多孔質多結
晶シリコン層を電気化学的に酸化することで強電界ドリ
フト層を形成した電界放射型電子源では、工業的な利用
を考えた場合にエミッション電流Ieや電子放出効率が
小さい(不十分である)という不具合や、ダイオード電
流Ipsが徐々に増加していくとともに、エミッション電
流Ieが徐々に減少していくという不具合があった。こ
のようにエミッション電流Ieや電子放出効率が小さい
という不具合や、電子放出特性の経時変化が起こる原因
としては、強電界ドリフト層を形成するにあたって多孔
質多結晶シリコン層の酸化を硫酸や硝酸などの水溶液か
らなる電解質溶液中で行っていることにあると考えられ
る。すなわち、電解質溶液中に90wt%以上の水を含
んでいることにより、強電界ドリフト層に形成されたシ
リコン酸化膜中にSi−H、Si−H、Si−OHな
どの水の分子に関連した結合が多量に存在してシリコン
酸化膜の緻密性が悪いために電子の散乱が起こりやすく
なっていること、絶縁耐圧が低くなっていることなどが
考えられる。
【0006】本発明は上記事由に鑑みて為されたもので
あり、その目的は、電子放出特性の経時安定性が向上し
た電界放射型電子源およびその製造方法を提供すること
にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、上記
目的を達成するために、下部電極と、下部電極に対向す
る表面電極と、下部電極と表面電極との間に介在し酸化
した多孔質半導体層よりなる強電界ドリフト層とを備
え、強電界ドリフト層がナノメータオーダの多数の半導
体微結晶と各半導体微結晶それぞれの表面に形成され半
導体微結晶の結晶粒径よりも小さな膜厚の酸化膜よりな
る多数の絶縁膜とを有し、下部電極と表面電極との間に
表面電極を高電位側として電圧を印加することにより下
部電極から注入された電子が強電界ドリフト層をドリフ
トし表面電極を通して放出される電界放射型電子源であ
って、強電界ドリフト層は、有機溶媒中に溶質を溶かし
た電解液中において多孔質半導体層を電気化学的に酸化
する酸化工程を含むプロセスにより形成されてなること
を特徴とするものであり、有機溶媒中に溶質を溶かした
電解液中において多孔質半導体層を電気化学的に酸化す
る酸化工程を含むプロセスにより強電界ドリフト層を形
成しているので、従来のように硫酸、硝酸などの水溶液
からなる電解質溶液中にて多孔質多結晶シリコン層を電
気化学的に酸化することで強電界ドリフト層を形成した
ものに比べて、エミッション電流、電子放出効率などが
大きく、電子放出特性の経時安定性が向上する。ここ
に、従来に比べてエミッション電流および電子放出効率
が向上し電子放出特性の経時安定性が向上するのは、従
来のように硫酸、硝酸などの水溶液からなる電解質溶液
中にて多孔質多結晶シリコン層を電気化学的に酸化する
ことで強電界ドリフト層を形成したものに比べて、酸化
膜の緻密性が高くなって酸化膜の絶縁耐圧が向上するか
らであると考えられる。
【0008】請求項2の発明は、下部電極と、下部電極
に対向する表面電極と、下部電極と表面電極との間に介
在し酸化した多孔質半導体層よりなる強電界ドリフト層
とを備え、強電界ドリフト層がナノメータオーダの多数
の半導体微結晶と各半導体微結晶それぞれの表面に形成
され半導体微結晶の結晶粒径よりも小さな膜厚の酸化膜
よりなる多数の絶縁膜とを有し、下部電極と表面電極と
の間に表面電極を高電位側として電圧を印加することに
より下部電極から注入された電子が強電界ドリフト層を
ドリフトし表面電極を通して放出される電界放射型電子
源の製造方法であって、強電界ドリフト層を形成するに
あたっては、有機溶媒中に溶質を溶かした電解液中にお
いて多孔質半導体層を電気化学的に酸化する主酸化処理
過程を備えることを特徴とし、従来に比べてエミッショ
ン電流、電子放出効率などが大きく、電子放出特性の経
時安定性が向上した電界放射型電子源を提供できる。こ
こに、従来に比べてエミッション電流および電子放出効
率が向上し電子放出特性の経時安定性が向上するのは、
従来のように硫酸、硝酸などの水溶液からなる電解質溶
液中にて多孔質多結晶シリコン層を電気化学的に酸化す
ることで強電界ドリフト層を形成したものに比べて、酸
化膜の緻密性が高くなって酸化膜の絶縁耐圧が向上する
からであると考えられる。また、多孔質半導体層を急速
熱酸化して強電界ドリフト層を形成する場合に比べてプ
ロセス温度を低温化することが可能であり、電界放射型
電子源の大面積化および低コスト化を図れる。
【0009】請求項3の発明は、請求項2の発明におい
て、前記電解液に水を添加してあるので、前記溶質とし
て前記有機溶媒に対して溶解度が小さいが水に対しては
溶解度が大きいような物質を用いた場合、水を添加する
ことによって前記電解液中の前記溶質の濃度を高くする
ことができるから、前記酸化膜の膜質が向上する。ま
た、前記溶質の濃度が高くなれば前記電解液の導電率も
高くなるので、前記酸化膜の膜厚の面内ばらつきを抑制
することができる。
【0010】請求項4の発明は、請求項2または請求項
3の発明において、前記有機溶媒としてアルコールを用
いるので、前記有機溶媒の取り扱いが容易になる。
【0011】請求項5の発明は、請求項4の発明におい
て、前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロ
パノール、ブタノールから選択されるので、前記アルコ
ールを比較的低コストで容易に入手することができ、結
果的に電界放射型電子源の製造コストを低減することが
できる。
【0012】請求項6の発明は、請求項2または請求項
3の発明において、前記有機溶媒としてエチレングリコ
ールを用いるので、前記有機溶媒を比較的低コストで容
易に入手することができ、結果的に電界放射型電子源の
製造コストを低減することができる。
【0013】請求項7の発明は、請求項2ないし請求項
6の発明において、前記溶質は、硝酸、硫酸、炭酸、リ
ン酸、クロム酸、酒石酸、塩酸から選択される少なくと
も1種類の酸であるので、容易に電離することができ
る。
【0014】請求項8の発明は、請求項2ないし請求項
6の発明において、前記溶質は、硝酸、硫酸、炭酸、リ
ン酸、クロム酸、酒石酸、塩酸から選択される少なくと
も1種類の酸の塩であるので、容易に電離することがで
きる。
【0015】請求項9の発明は、請求項2ないし請求項
6の発明において、前記溶質は、水酸化物であるので、
容易に電離することができる。
【0016】請求項10の発明は、請求項2ないし請求
項6の発明において、前記溶質は、水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、
塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩
化アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、
硝酸リチウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カ
ルシウム、酒石酸アンモニウムから選択される少なくと
も1種類の塩であるので、前記溶質を比較的低コストで
容易に入手することができ、結果的に電界放射型電子源
の製造コストを低減することができる。
【0017】請求項11の発明は、請求項2ないし請求
項10の発明において、前記主酸化処理過程の以前と以
後との少なくとも一方に、熱酸化法により前記多孔質半
導体層を酸化する補助酸化処理過程を備えるので、前記
酸化膜の緻密性をより向上させることができる。
【0018】請求項12の発明は、請求項2ないし請求
項10の発明において、前記主酸化処理過程の前に、前
記多孔質半導体層の酸化を行う前酸化処理過程を備える
ので、前記酸化膜の緻密性をより向上させることができ
るとともに、前記強電界ドリフト層の厚み方向において
前記表面電極に比較的近い領域に存在する前記酸化膜の
膜厚が前記表面電極から比較的遠い領域に存在する前記
酸化膜の膜厚よりも大きくなるのを抑制することがで
き、電子放出効率および経時安定性の向上を図れる。
【0019】請求項13の発明は、請求項11の発明に
おいて、前記主酸化処理過程および前記補助酸化処理過
程よりも前に、前記多孔質半導体層の酸化を行う前酸化
処理過程を備えるので、前記強電界ドリフト層の厚み方
向において前記表面電極に比較的近い領域に存在する前
記酸化膜の膜厚が前記表面電極から比較的遠い領域に存
在する前記酸化膜の膜厚よりも大きくなるのを抑制する
ことができ、電子放出効率および経時安定性の向上を図
れる。
【0020】請求項14の発明は、請求項2ないし請求
項13の発明において、前記主酸化処理過程の後に、前
記多孔質半導体層を洗浄する洗浄過程を備えるので、前
記多孔質半導体層中にアルカリ金属や重金属のような不
純物が混入していても洗浄過程によって不純物を除去す
ることができ、結果的に電界放射型電子源の電子放出特
性を安定化できるとともに長期的信頼性を向上できる。
【0021】請求項15の発明は、請求項14の発明に
おいて、前記洗浄過程では、硫酸と過酸化水素との混合
液、塩酸と過酸化水素と水との混合液、王水から選択さ
れる洗浄液を用いるので、前記洗浄過程で用いる洗浄液
を比較的低コストで得ることがことができ、結果的に電
界放射型電子源の製造コストを低減することができる。
【0022】請求項16の発明は、請求項2ないし請求
項10の発明において、前記主酸化処理過程の後に、ア
ニール処理を行うアニール処理過程を備えるので、前記
酸化膜の緻密性をさらに向上させることができる。
【0023】請求項17の発明は、請求項16の発明に
おいて、前記アニール処理は、600℃以下のアニール
温度で行うので、例えばガラス基板に下部電極を形成し
た構成を採用するような場合に、ガラス基板として石英
ガラス基板に比べて耐熱温度が低く安価なガラス基板を
用いることが可能になって低コスト化を図れ、しかも、
アニール時間を比較的長くすることができ、前記酸化膜
の緻密性が向上する。
【0024】請求項18の発明は、請求項16または請
求項17の発明において、前記アニール処理は、真空中
で行うので、アニール温度を比較的低く設定することが
できる。
【0025】請求項19の発明は、請求項16または請
求項17の発明において、前記アニール処理は、不活性
ガス雰囲気中で行うので、前記酸化膜に不純物が導入さ
れたり前記酸化膜の表面に別の膜が形成されるのを防止
することができ、また、前記アニール処理を行うために
真空装置を用いる必要がなく、真空装置に比べて簡便な
装置を用いることができて、前記アニール処理を行う装
置におけるスループットを向上させることができる。
【0026】請求項20の発明は、請求項16または請
求項17の発明において、前記アニール処理は、酸化種
を含む雰囲気中で行うので、前記酸化膜中に不純物が導
入されるのを防止することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】(実施形態1)本実施形態の電界
放射型電子源10は、図2に示すように、導電性基板で
あるn形シリコン基板(抵抗率が略0.01Ωcm〜
0.02Ωcmの(100)基板)1の主表面側に酸化
した多孔質多結晶シリコン層よりなる強電界ドリフト層
6が形成され、強電界ドリフト層6上に表面電極7が形
成され、n形シリコン基板1の裏面にオーミック電極2
が形成されている。本実施形態では、n形シリコン基板
1とオーミック電極2とで下部電極を構成している。し
たがって、表面電極7は下部電極に対向しており、下部
電極と表面電極7との間に強電界ドリフト層6が介在し
ている。なお、本実施形態では、下部電極上に強電界ド
リフト層6が形成されているが、下部電極と強電界ドリ
フト層6との間に半導体層(例えば、多結晶シリコン
層)を介在させてもよい。
【0028】表面電極7の材料には仕事関数の小さな材
料(本実施形態では、金)が採用され、表面電極7の厚
さは10nmに設定されている(すなわち、本実施形態
では、金薄膜により表面電極7が構成されている)。な
お、表面電極7の厚さは強電界ドリフト層6を通ってき
た電子がトンネルできる厚さであればよく、10〜15
nm程度に設定すればよい。
【0029】図2に示す構成の電界放射型電子源10か
ら電子を放出させるには、例えば、図3に示すように、
表面電極7に対向配置されたコレクタ電極21を設け、
表面電極7とコレクタ電極21との間を真空とした状態
で、表面電極7がn形シリコン基板1とオーミック電極
2とからなる下部電極に対して高電位側(正極)となる
ように表面電極7と下部電極との間に直流電圧Vpsを印
加するとともに、コレクタ電極21が表面電極7に対し
て高電位側(正極)となるようにコレクタ電極21と表
面電極7との間に直流電圧Vcを印加する。各直流電圧
Vps,Vcを適宜に設定すれば、n形シリコン基板1か
ら注入された電子が強電界ドリフト層6をドリフトし表
面電極7を通して放出される(図3中の一点鎖線は表面
電極7を通して放出された電子eの流れを示す)。な
お、強電界ドリフト層6の表面に到達した電子はホット
エレクトロンであると考えられ、表面電極7を容易にト
ンネルし真空中に放出される。
【0030】本実施形態の電界放射型電子源10では、
表面電極7と下部電極との間に流れる電流をダイオード
電流Ipsと呼び、コレクタ電極21と表面電極7との間
に流れる電流をエミッション電流(放出電子電流)Ie
と呼ぶことにすれば(図3参照)、ダイオード電流Ips
に対するエミッション電流Ieの比率(=Ie/Ips)が
大きいほど電子放出効率(=(Ie/Ips)×100
〔%〕)が高くなる。
【0031】強電界ドリフト層6は、図4に示すよう
に、少なくとも、n形シリコン基板1の上記一表面側に
列設された柱状の多結晶シリコンのグレイン(半導体結
晶)51と、グレイン51の表面に形成された薄いシリ
コン酸化膜52と、グレイン51間に介在する多数のナ
ノメータオーダのシリコン微結晶(半導体微結晶)63
と、各シリコン微結晶63の表面に形成され当該シリコ
ン微結晶63の結晶粒径よりも小さな膜厚の酸化膜であ
る多数のシリコン酸化膜(絶縁膜)64とから構成され
ると考えられる。要するに、強電界ドリフト層6は、各
グレインの表面が多孔質化し各グレインの中心部分では
結晶状態が維持されている。なお、各グレイン51は、
下部電極に交差する方向(n形シリコン基板1の主表面
に略直交する方向)に延びている。
【0032】本実施形態の電界放射型電子源10では、
次のようなモデルで電子放出が起こると考えられる。す
なわち、表面電極7と下部電極との間に表面電極7を高
電位側として直流電圧Vpsを印加するとともに、コレク
タ電極21と表面電極7との間にコレクタ電極21を高
電位側として直流電圧Vcを印加することにより、直流
電圧Vpsが所定値(臨界値)に達すると、n形シリコン
基板1から強電界ドリフト層6へ熱的励起により電子e
が注入される。一方、強電界ドリフト層6に印加され
た電界の大部分はシリコン酸化膜64にかかるから、注
入された電子e はシリコン酸化膜64にかかっている
強電界により加速され、強電界ドリフト層6におけるグ
レイン51の間の領域を表面に向かって図4中の矢印の
向き(図4における上向き)へドリフトし、表面電極7
をトンネルし真空中に放出される。しかして、強電界ド
リフト層6ではn形シリコン基板1から注入された電子
がシリコン微結晶63でほとんど散乱されることなくシ
リコン酸化膜64にかかっている電界で加速されてドリ
フトし、表面電極7を通して放出され(弾道型電子放出
現象)、強電界ドリフト層6で発生した熱がグレイン5
1を通して放熱されるから、電子放出時にポッピング現
象が発生せず、安定して電子を放出することができる。
なお、強電界ドリフト層6の表面に到達した電子はホッ
トエレクトロンであると考えられ、表面電極7を容易に
トンネルし真空中に放出される。
【0033】以下、本実施形態の電界放射型電子源10
の製造方法について図1を参照しながら説明する。
【0034】まず、n形シリコン基板1の裏面にオーミ
ック電極2を形成した後、n形シリコン基板1の主表面
上に所定膜厚(例えば、1.5μm)のノンドープの多
結晶シリコン層3を例えばLPCVD法によって形成す
ることにより、図1(a)に示すような構造が得られ
る。ここに、多結晶シリコン層3の成膜条件は、真空度
を20Pa、基板温度を640℃、モノシランガスの流
量を標準状態で0.6L/min(600sccm)と
した。なお、多結晶シリコン層3の成膜方法としては、
例えば、CVD法(LPCVD法、プラズマCVD法、
触媒CVD法など)やスパッタ法やCGS(Continuous
Grain Silicon)法などを採用すればよい。
【0035】ノンドープの多結晶シリコン層3を形成し
た後、陽極酸化処理工程にて多結晶シリコン層3を多孔
質化することにより、多孔質半導体層たる多孔質多結晶
シリコン層4が形成され、図1(b)に示すような構造
が得られる。ここにおいて、陽極酸化処理工程では、5
5wt%のフッ化水素水溶液とエタノールとを略1:1
で混合した混合液よりなる電解液の入った処理槽を利用
し、白金電極(図示せず)を負極、n形シリコン基板1
とオーミック電極2とからなる下部電極を正極として、
多結晶シリコン層3に光照射を行いながら定電流で陽極
酸化処理を行うことによって多孔質多結晶シリコン層4
が形成される。このようにして形成された多孔質多結晶
シリコン層4は、多結晶シリコンのグレインおよびシリ
コン微結晶を含んでいる。なお、本実施形態では、陽極
酸化処理の条件として、電流密度を30mA/cm
定、陽極酸化時間を10秒とするとともに、陽極酸化処
理中に500Wのタングステンランプにより多結晶シリ
コン層3の表面に光照射を行った。
【0036】上述の陽極酸化処理工程の終了した後に、
多孔質多結晶シリコン層4を酸化工程にて酸化すること
によって酸化した多孔質多結晶シリコン層よりなる強電
界ドリフト層6が形成され、図1(c)に示すような構
造が得られる。酸化工程では、例えばエチレングリコー
ルからなる有機溶媒中に0.04mol/l(以下、
「mol/l」は「M」と記載する)の硝酸カリウムか
らなる溶質を溶かした電解液の入った処理槽を利用し、
白金電極(図示せず)を負極(陰極)、n形シリコン基
板1とオーミック電極2とからなる下部電極を正極(陽
極)として、定電流を流し多孔質多結晶シリコン層4を
電気化学的に酸化することによって上述のグレイン5
1、シリコン微結晶63、各シリコン酸化膜52,64
を含む強電界ドリフト層6を形成するようになってい
る。すなわち、本実施形態では、水を含まない電解液を
利用して多孔質多結晶シリコン層4を電気化学的に酸化
している。なお、本実施形態では、酸化工程の条件とし
て、正極と負極との間の電圧が20Vに上昇するまで
0.1mA/cmの定電流を流すことにより多孔質多
結晶シリコン層4の酸化を行ったが、この条件は適宜変
更してもよい。例えば、正極と負極との間の電圧が所定
電圧(例えば、20V)に上昇するまで定電流で酸化を
行った後に、正極と負極との間の電圧を上記所定電圧に
維持して化成電流密度が所定値(例えば、0.01mA
/cm)まで減少したときに通電を停止するようにし
てもよく、このような条件で酸化を行うことにより、強
電界ドリフト層6においてn形シリコン基板1に近い領
域でのシリコン酸化膜52,64の緻密性を向上させる
ことが可能になる。
【0037】強電界ドリフト層6を形成した後は、例え
ば蒸着法などによって金薄膜からなる表面電極7を強電
界ドリフト層6上に形成することにより、図1(d)に
示す構造の電界放射型電子源10が得られる。
【0038】以上説明した製造方法によれば、強電界ド
リフト層6を形成するにあたっては、有機溶媒中に溶質
を溶かした電解液中において多孔質半導体層たる多孔質
多結晶シリコン層4を電気化学的に酸化する(主酸化処
理過程)ので、エミッション電流、電子放出効率などが
向上し且つ電子放出特性の経時安定性が向上した電界放
射型電子源10を提供できる(したがって、電界放射型
電子源10の長寿命化を図れる)。ここに、従来に比べ
て電子放出特性が向上するとともに経時安定性が向上す
るのは、酸化工程にて用いる電解液中に水が存在しない
ので、シリコン酸化膜52,64の緻密性が高くなって
シリコン酸化膜52,64の絶縁耐圧が向上するからで
あると考えられる。しかも、従来に比べて電子放出効率
が向上し、これは、強電界ドリフト層6におけるシリコ
ン酸化膜52中での電子の散乱などによるエネルギ損失
が低減されるからであると考えられる。また、酸化工程
として多孔質多結晶シリコン層4を急速熱酸化すること
で強電界ドリフト層を形成するようなプロセスを採用す
る場合に比べてプロセス温度を低温化でき、大面積化お
よび低コスト化が容易になる。つまり、プロセス温度の
低温化によって基板材料の制約が少なくなり、大面積で
安価なガラス基板(例えば、無アルカリガラス基板、低
アルカリガラス基板、ソーダライムガラス基板など)を
用いることが可能になる。なお、ガラス基板を用いる場
合にはガラス基板の一表面側に導電性材料よりなる下部
電極を形成すればよい。
【0039】上述の製造方法で製造された電界放射型電
子源10は、強電界ドリフト層6が、有機溶媒中に溶質
を溶かした電解液中において多孔質半導体層たる多孔質
多結晶シリコン層4を電気化学的に酸化する酸化工程を
含むプロセスにより形成されているので、従来のように
硫酸、硝酸などの水溶液からなる電解質溶液中にて多孔
質多結晶シリコン層を電気化学的に酸化することで強電
界ドリフト層を形成したものに比べて、エミッション電
流、電子放出効率などが向上するとともに、電子放出特
性の経時安定性が向上する。
【0040】ところで、上述の酸化工程で用いる電解液
の有機溶媒は、エチレングリコールに限定されるもので
はなく、例えば、エチレングリコール、メタノール、エ
タノール、プロパノール、ブタノール、ジエチレングリ
コール、メトキシエタノール、グリセリン、ポリエチレ
ングリコール、ジメチルホルムアミド、プロピレングリ
コール、セロソルブ、ブチルラクトン、バレロラクト
ン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、
メチルホルムアミド、エチルホルムアミド、ジエチルホ
ルムアミド、メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミ
ド、テトラヒドロフルフリルアルコールなどの有機溶媒
の1種または2種以上の混合液を用いればよい。また、
電解液の溶質は、硝酸カリウムに限定されるものではな
く、水酸化物、塩化物、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ク
ロム酸、酒石酸、塩酸、シュウ酸、マロン酸、アジピン
酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、パルミチン酸、オレイ
ン酸、ワリチル酸、フタル酸、安息香酸、レゾルシン
酸、クミル酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、ピメリ
ン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイ
ン酸、フマル酸、シトラコン酸、ホウ酸、タングステン
酸、モリブデン酸、バナジン酸などの酸の1種または2
種以上の混合物や、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸
塩、クロム酸塩、酒石酸塩、塩酸塩、シュウ酸塩、マロ
ン酸塩、アジピン酸塩、カプリル酸塩、ペラルゴン酸
塩、パルミチン酸塩、オレイン酸塩、ワリチル酸塩、フ
タル酸塩、安息香酸塩、レゾルシン酸塩、クミル酸塩、
クエン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、ピメリン酸塩、
スベリン酸塩、アゼライン酸塩、セバシン酸塩、マレイ
ン酸塩、フマル酸塩、シトラコン酸塩、ホウ酸塩、タン
グステン酸塩、モリブデン酸塩、バナジン酸塩などの塩
の1種または2種以上の混合物を用いればよい。塩の具
体例を挙げれば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、
水酸化リチウム、水酸化カルシウム、塩化ナトリウム、
塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、
硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硝酸リチウム、硝
酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、酒石酸
アンモニウムなどの塩の1種または2種以上の混合物を
用いればよい。
【0041】ところで、本実施形態のように、主酸化処
理過程において硝酸カリウムのようなアルカリ金属を含
む電解液を用いて多孔質多結晶シリコン層4を電気化学
的に酸化した場合、多孔質多結晶シリコン層4中にアル
カリ金属のような不純物が混入してしまうことが考えら
れるので、主酸化処理過程の後に、多孔質多結晶シリコ
ン層4を洗浄する洗浄過程を行うことが望ましい。この
ような洗浄過程を行うことにより、多孔質多結晶シリコ
ン層4中にアルカリ金属や重金属のような不純物が混入
していても洗浄過程によって不純物を除去することがで
き、結果的に電界放射型電子源10の電子放出特性を安
定化できるとともに長期的信頼性を向上できる。ここに
おいて、洗浄過程では、例えば、硫酸と過酸化水素との
混合液、塩酸と過酸化水素と水との混合液、王水などを
洗浄液として用いればよく、これらのいずれかの洗浄液
を用いれば、洗浄過程で用いる洗浄液を比較的低コスト
で得ることがことができ、結果的に電界放射型電子源の
製造コストを低減することができる。
【0042】(実施形態2)本実施形態では、実施形態
1で説明した製造方法において陽極酸化処理にて形成さ
れた多孔質多結晶シリコン層4を上述の電解液を利用し
て酸化する主酸化処理過程の前に、ランプアニール装置
を用いた急速加熱法(熱酸化法)により比較的短時間の
急速熱酸化を行う補助酸化処理過程を備えている点が相
違するだけである。多孔質多結晶シリコン層4を急速加
熱法によって急速熱酸化する条件は、酸素ガスの流量を
標準状態で0.3L/min(300sccm)、酸化
温度を900℃、酸化時間を5分とした。なお、急速熱
酸化だけで強電界ドリフト層を形成する場合の酸化時間
は1時間程度の比較的長い時間である。
【0043】本実施形態の製造方法により形成された電
界放射型電子源10は、実施形態1に比べて電子放出特
性の経時安定性がさらに向上する。これは実施形態1に
比べて、シリコン酸化膜52,64の緻密性がより向上
しているためであると考えられる。
【0044】なお、本実施形態では、主酸化処理過程の
前に補助酸化処理過程を行っているが、主酸化処理過程
の後に補助酸化処理過程を行うようにしてもよい。
【0045】(実施形態3)ところで、実施形態1の電
界放射型電子源10は陽極酸化処理にて形成された多孔
質多結晶シリコン層4を上述の電解液を利用して電気化
学的に酸化することによって強電界ドリフト層6を形成
している。しかしながら、陽極酸化処理においてはフッ
化水素水溶液とエタノールとの混合液を利用しているの
で、多孔質多結晶シリコン層4中のシリコン微結晶の表
面が水素で終端されることになるから、強電界ドリフト
層6中の水素の含有量が比較的多くなってしまう恐れが
ある。
【0046】これに対して、本実施形態では、上述の陽
極酸化処理にて形成された多孔質多結晶シリコン層4を
上述の電解液を利用して電気化学的に酸化する主酸化処
理過程の前に、多孔質多結晶シリコン層4を酸化性溶液
により酸化している(前酸化処理過程)。すなわち、本
実施形態では、主酸化処理過程の前に、シリコン微結晶
およびグレインの極表面が酸化する程度の時間だけ酸化
性溶液に浸すことにより、シリコン原子を終端している
水素原子を酸素原子に置換している。なお、前酸化処理
過程の条件としては、酸化性溶液として115℃に加熱
した硝酸(濃度70%)を用い、酸化時間は10分とし
た。ここに、酸化性溶液を加熱しておくことにより、酸
化速度が速くなるので、酸化性溶液による処理時間を短
くすることができる。酸化性溶液としては、硝酸、硫
酸、塩酸、過酸化水素水からなる群より選択される1種
または2種以上の酸化剤を用いることができる。
【0047】本実施形態の製造方法により形成された電
界放射型電子源10は、実施形態1に比べて電子放出特
性の経時安定性がさらに向上する。これは実施形態1に
比べて、シリコン酸化膜52,64における水素含有量
が少なくなってシリコン酸化膜52,64の緻密性がよ
り向上していることが考えられる。また、陽極酸化処理
にて形成された多孔質多結晶シリコン層4はナノメータ
オーダの微細な構造を有しているので、多孔質多結晶シ
リコン層4を電解液を利用して電気化学的に酸化する主
酸化処理過程を行った場合、多孔質多結晶シリコン層4
の表面側には常に新しい電解液が供給される一方で、多
孔質多結晶シリコン層4の厚み方向において表面から比
較的離れた領域へは電解液が侵入しにくく且つ電解液の
入れ替わりが起こりにくく、多孔質多結晶シリコン層4
の厚み方向において表面に比較的近い領域でシリコン酸
化膜64の膜厚が厚くなるとともに表面から比較的近い
領域でシリコン酸化膜64の膜厚が薄くなり過ぎること
が考えられる。このため、結果的に強電界ドリフト層6
の厚み方向において表面電極7に比較的近い領域でシリ
コン酸化膜64の膜厚が厚すぎるために電子の散乱が起
こりやすくなって電子放出効率が低下し、また、強電界
ドリフト層6の厚み方向において表面電極7から比較的
遠い領域でシリコン酸化膜64の膜厚が薄すぎるために
絶縁耐圧が低くなり経時特性が悪くなることが考えられ
る。これに対して、本実施形態では、多孔質多結晶シリ
コン層4を電気化学的に酸化する主酸化処理過程の前に
多孔質多結晶シリコン層4を酸化する前酸化処理過程を
行っている(つまり、前酸化処理過程を行ってから主酸
化処理過程を行っている)ことにより、主酸化処理過程
を開始する前に多孔質多結晶シリコン層4の表面側が既
に酸化されているので、主酸化処理過程では、多孔質多
結晶シリコン層4の厚み方向において表面に比較的近い
領域では電流が流れにくくて酸化反応が進行せず、表面
から比較的遠い領域で酸化が進行することになり、強電
界ドリフト層6の厚み方向において表面電極7に比較的
近い領域に存在するシリコン酸化膜52,64の膜厚が
表面電極7から比較的遠い領域に存在するシリコン酸化
膜52,64の膜厚よりも大きくなるのを抑制すること
ができるためであると考えられる。要するに、強電界ド
リフト層6中に多数存在するシリコン酸化膜64の膜厚
のばらつきを小さくすることができ、結果的に強電界ド
リフト層6中での電子散乱が抑制されるとともに絶縁耐
圧の低下が抑制されるものと考えられる。
【0048】なお、本実施形態では、前酸化処理過程に
おいて酸化性溶液を用いて多孔質多結晶シリコン層4の
酸化を行っているが、前酸化処理過程では、酸化性溶液
に限らず、例えば、酸素、オゾンなどの酸化性の気体を
用いて多孔質多結晶シリコン層を酸化するようにしても
よい。また、単に、多孔質多結晶シリコン層4の表面を
大気に曝すことにより酸化を行ってもよい。ただし、こ
の場合は、形成される酸化膜の膜質が悪くなる可能性が
あるので、後述の実施形態5と同様のアニール処理を行
うことが望ましい。
【0049】また、実施形態2のように主酸化処理過程
の以前に補助酸化処理過程が行われる場合には、補助酸
化処理過程の前に前酸化処理過程を行うようにすること
で、電子放出特性の経時安定性をさらに向上させること
ができる。
【0050】(実施形態4)本実施形態では、実施形態
1で説明した製造方法において、多孔質多結晶シリコン
層4を電気化学的に酸化する主酸化処理過程で用いる電
解液に水を添加している点に特徴がある。ここに、本実
施形態では、電解液における有機溶媒として、エチレン
グリコールを用い、溶質として0.04Mの硝酸カリウ
ムを用いており、電解液中に6wt%の水を含むように
している。
【0051】本実施形態の製造方法によれば、実施形態
1の製造方法で製造された電界放射型電子源10(図1
参照)と同様、従来のように硫酸、硝酸などの水溶液か
らなる電解質溶液中にて多孔質多結晶シリコン層を電気
化学的に酸化することで強電界ドリフト層を形成したも
のに比べて、エミッション電流および電子放出効率が向
上するとともに、電子放出特性の経時安定性がさらに向
上する。また、電解液に水を添加してあるので、溶質と
して有機溶媒に対して溶解度が小さいが水に対しては溶
解度が大きいような物質を用いた場合、水を添加するこ
とによって電解液中の溶質の濃度を高くすることができ
るから、シリコン酸化膜52,64の膜質が向上する。
また、溶質の濃度が高くなれば電解液の導電率も高くな
るので、酸化膜52,64の膜厚の面内ばらつきを抑制
することができる。
【0052】なお、有機溶媒および溶質としては実施形
態1において列挙したものが採用可能である。また、電
解液中に含まれる水の割合は10wt%以下にすること
が好ましいが、20wt%以下でも従来に比べてエミッ
ション電流および電子放出効率を向上でき、50wt%
以下でも従来に比べてエミッション電流および電子放出
効率を向上できる。
【0053】(実施形態5)ところで、主酸化処理過程
の後に大気に曝した場合にはシリコン酸化膜52,64
の膜質が悪化する可能性がある。これに対して、本実施
形態では、実施形態1で説明した製造方法において、多
孔質多結晶シリコン層4を上述の電解液を利用して電気
化学的に酸化する主酸化処理過程の後に、アニール処理
を行うアニール処理過程を備えている点が相違するだけ
である。ここにおいて、アニール処理は、酸素ガス雰囲
気(つまり、酸化種を含む雰囲気)中で所定のアニール
温度(例えば、500℃)を所定のアニール時間(例え
ば、1時間)だけ維持することによって行っている。な
お、アニール温度は600℃以下に設定することが望ま
しく、アニール温度を600℃以下に設定すれば、例え
ばガラス基板に下部電極を形成した構成を採用するよう
な場合に、ガラス基板として石英ガラス基板に比べて耐
熱温度が低く安価なガラス基板を用いることが可能にな
って低コスト化を図れ、しかも、アニール時間を比較的
長くすることができ、シリコン酸化膜52,64(図4
参照)の緻密性が向上する。
【0054】本実施形態の製造方法によれば、実施形態
1の製造方法で製造された電界放射型電子源10(図1
参照)に比べてエミッション電流および電子放出効率が
向上する。これは実施形態1に比べて、シリコン酸化膜
52,64の緻密性がより向上しているためであると考
えられる。なお、上述のように、アニール処理を、酸化
種を含む雰囲気中で行うことで、シリコン酸化膜52,
64中に不純物が導入されるのを防止することができ
る。
【0055】なお、アニール処理は真空中若しくは不活
性ガス雰囲気中で行うようにしてもよく、アニール処理
を真空中で行うようにすれば、アニール温度を比較的低
く設定することができる。一方、アニール処理を不活性
ガス雰囲気中で行うようにすれば、シリコン酸化膜5
2,64に不純物が導入されたりシリコン酸化膜52,
64の表面に別の膜が形成されるのを防止することがで
き、また、アニール処理を行うために真空装置を用いる
必要がなく、真空装置に比べて簡便な装置を用いること
ができて、アニール処理を行う装置におけるスループッ
トを向上させることができ、ひいては製造コストの低減
を図れる。
【0056】(実施例)実施形態1にて説明した電界放
射型電子源10の製造方法を基本として酸化工程の条件
を種々変化させて電界放射型電子源10を作成して電子
放出特性の測定した結果について図5〜図11を参照し
て説明するが、その前にまず、各電界放射型電子源10
の製造方法に関して共通の条件について簡単に説明す
る。
【0057】n形シリコン基板1としては、抵抗率が
0.01〜0.02Ωcm、厚さが525μmの(10
0)基板を用いた。多結晶シリコン層3(図1(a)参
照)の膜厚は1.5μmとし、多結晶シリコン層3の成
膜は、LPCVD法により行い、成膜条件は、真空度を
20Pa、基板温度を640℃、モノシランガスの流量
を標準状態において0.6L/min(600scc
m)とした。陽極酸化処理工程では電解液として、55
wt%のフッ化水素水溶液とエタノールとを略1:1で
混合した電解液を用いた。また、陽極酸化時には、光源
としての500Wのタングステンランプから多結晶シリ
コン層3の主表面に光照射を行いながら、陽極たる下部
電極12と白金電極からなる陰極との間に電源から1
2.5mAの定電流を所定時間だけ流した。表面電極7
としては、蒸着法によって膜厚が10nmの金薄膜を形
成した。
【0058】図5は、実施形態1の製造方法において有
機溶媒としてのエチレングリコールに溶質として0.0
4Mの硝酸カリウムを溶かした電解液を用いた場合の電
界放射型電子源(以下、実施例1の電界放射型電子源と
称す)、図6は、実施形態1の製造方法において有機溶
媒としてのエチレングリコールに溶質として0.04M
の硝酸カリウムを溶かしてさらに3wt%の水を添加し
た電解液を用いた場合(つまり、実施形態4の製造方
法)の電界放射型電子源(以下、実施例2の電界放射型
電子源と称す)、図7は、実施形態1の製造方法におい
て有機溶媒としてのエチレングリコールに溶質として
0.04Mの硝酸カリウムを溶かしてさらに6wt%の
水を添加した電解液を用いた場合(つまり、実施形態4
の製造方法)の電界放射型電子源(以下、実施例3の電
界放射型電子源と称す)、図8は、実施形態1の製造方
法において有機溶媒としてのエチレングリコールに溶質
として0.04Mの硝酸カリウムを溶かしてさらに10
wt%の水を添加した電解液を用いた場合(つまり、実
施形態4の製造方法)の電界放射型電子源(以下、実施
例4の電界放射型電子源と称す)、図10は、実施形態
1の製造方法において有機溶媒としてのエチレングリコ
ールに溶質として0.04Mの硝酸カリウムを溶かした
電解液を用いて電気化学的な酸化を行った後に500℃
のアニール温度で1時間のアニール処理を行った場合
(つまり、実施形態5の製造方法)の電界放射型電子源
(以下、実施例5の電界放射型電子源と称す)、図11
は、電解液として1Mの硫酸水溶液を用いた場合の電界
放射型電子源(以下、比較例の電界放射型電子源と称
す)、それぞれの測定結果を示しており、図9は図5〜
図8の結果を比較したものである。
【0059】各電界放射型電子源の電子放出特性の測定
は、真空チャンバ(図示せず)内に電界放射型電子源を
導入して、上述の図3のように、表面電極7に対向して
コレクタ電極21を配置し、表面電極7を下部電極に対
して高電位側として直流電圧Vpsを印加するとともに、
コレクタ電極21を表面電極7に対して高電位側として
直流電圧Vcを印加することによって行った。図5〜図
8および図10,11は上述の直流電圧Vcを100V
一定とし、真空チャンバ内の真空度を5×10 −5Pa
としたときの電子放出特性の測定結果を示したものであ
って、各図の横軸は直流電圧Vps、左側の縦軸は電流密
度、右側の縦軸は電子放出効率であり、イはダイオード
電流Ipsの電流密度、ロはエミッション電流Ieの電流
密度、ハは電子放出効率を示している。また、図9は、
図5〜図8の結果において直流電圧Vpsが14Vの時の
データをグラフ化してあり、図9の横軸は質量分率での
水の含水率、左側の縦軸は電流密度、右側の縦軸は電子
放出効率であり、ロはエミッション電流Ieの電流密
度、ハは電子放出効率を示している。
【0060】図5〜図10および図11から、各実施例
1〜5の電界放射型電子源の方が比較例に比べてエミッ
ション電流Ieの電流密度および電子放出効率がそれぞ
れ向上していることが分かる。
【0061】
【発明の効果】請求項1の発明は、下部電極と、下部電
極に対向する表面電極と、下部電極と表面電極との間に
介在し酸化した多孔質半導体層よりなる強電界ドリフト
層とを備え、強電界ドリフト層がナノメータオーダの多
数の半導体微結晶と各半導体微結晶それぞれの表面に形
成され半導体微結晶の結晶粒径よりも小さな膜厚の酸化
膜よりなる多数の絶縁膜とを有し、下部電極と表面電極
との間に表面電極を高電位側として電圧を印加すること
により下部電極から注入された電子が強電界ドリフト層
をドリフトし表面電極を通して放出される電界放射型電
子源であって、強電界ドリフト層は、有機溶媒中に溶質
を溶かした電解液中において多孔質半導体層を電気化学
的に酸化する酸化工程を含むプロセスにより形成されて
なるものであり、有機溶媒中に溶質を溶かした電解液中
において多孔質半導体層を電気化学的に酸化する酸化工
程を含むプロセスにより強電界ドリフト層を形成してい
るので、従来のように硫酸、硝酸などの水溶液からなる
電解質溶液中にて多孔質多結晶シリコン層を電気化学的
に酸化することで強電界ドリフト層を形成したものに比
べて、エミッション電流、電子放出効率などが大きく、
電子放出特性の経時安定性が向上するという効果があ
る。ここに、従来に比べてエミッション電流および電子
放出効率が向上し電子放出特性の経時安定性が向上する
のは、従来のように硫酸、硝酸などの水溶液からなる電
解質溶液中にて多孔質多結晶シリコン層を電気化学的に
酸化することで強電界ドリフト層を形成したものに比べ
て、酸化膜の緻密性が高くなって酸化膜の絶縁耐圧が向
上するからであると考えられる。
【0062】請求項2の発明は、下部電極と、下部電極
に対向する表面電極と、下部電極と表面電極との間に介
在し酸化した多孔質半導体層よりなる強電界ドリフト層
とを備え、強電界ドリフト層がナノメータオーダの多数
の半導体微結晶と各半導体微結晶それぞれの表面に形成
され半導体微結晶の結晶粒径よりも小さな膜厚の酸化膜
よりなる多数の絶縁膜とを有し、下部電極と表面電極と
の間に表面電極を高電位側として電圧を印加することに
より下部電極から注入された電子が強電界ドリフト層を
ドリフトし表面電極を通して放出される電界放射型電子
源の製造方法であって、強電界ドリフト層を形成するに
あたっては、有機溶媒中に溶質を溶かした電解液中にお
いて多孔質半導体層を電気化学的に酸化する主酸化処理
過程を備えるので、従来に比べてエミッション電流、電
子放出効率などが大きく、電子放出特性の経時安定性が
向上した電界放射型電子源を提供できるという効果があ
る。ここに、従来に比べてエミッション電流および電子
放出効率が向上し電子放出特性の経時安定性が向上する
のは、従来のように硫酸、硝酸などの水溶液からなる電
解質溶液中にて多孔質多結晶シリコン層を電気化学的に
酸化することで強電界ドリフト層を形成したものに比べ
て、酸化膜の緻密性が高くなって酸化膜の絶縁耐圧が向
上するからであると考えられる。また、多孔質半導体層
を急速熱酸化して強電界ドリフト層を形成する場合に比
べてプロセス温度を低温化することが可能であり、電界
放射型電子源の大面積化および低コスト化を図れる。
【0063】請求項3の発明は、請求項2の発明におい
て、前記電解液に水を添加してあるので、前記溶質とし
て前記有機溶媒に対して溶解度が小さいが水に対しては
溶解度が大きいような物質を用いた場合、水を添加する
ことによって前記電解液中の前記溶質の濃度を高くする
ことができるから、前記酸化膜の膜質が向上する。ま
た、前記溶質の濃度が高くなれば前記電解液の導電率も
高くなるので、前記酸化膜の膜厚の面内ばらつきを抑制
することができるという効果がある。
【0064】請求項4の発明は、請求項2または請求項
3の発明において、前記有機溶媒としてアルコールを用
いるので、前記有機溶媒の取り扱いが容易になるという
効果がある。
【0065】請求項5の発明は、請求項4の発明におい
て、前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロ
パノール、ブタノールから選択されるので、前記アルコ
ールを比較的低コストで容易に入手することができ、結
果的に電界放射型電子源の製造コストを低減することが
できるという効果がある。
【0066】請求項6の発明は、請求項2または請求項
3の発明において、前記有機溶媒としてエチレングリコ
ールを用いるので、前記有機溶媒を比較的低コストで容
易に入手することができ、結果的に電界放射型電子源の
製造コストを低減することができるという効果がある。
【0067】請求項7の発明は、請求項2ないし請求項
6の発明において、前記溶質は、硝酸、硫酸、炭酸、リ
ン酸、クロム酸、酒石酸、塩酸から選択される少なくと
も1種類の酸であるので、容易に電離することができる
という効果がある。
【0068】請求項8の発明は、請求項2ないし請求項
6の発明において、前記溶質は、硝酸、硫酸、炭酸、リ
ン酸、クロム酸、酒石酸、塩酸から選択される少なくと
も1種類の酸の塩であるので、容易に電離することがで
きるという効果がある。
【0069】請求項9の発明は、請求項2ないし請求項
6の発明において、前記溶質は、水酸化物であるので、
容易に電離することができるという効果がある。
【0070】請求項10の発明は、請求項2ないし請求
項6の発明において、前記溶質は、水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、
塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩
化アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、
硝酸リチウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カ
ルシウム、酒石酸アンモニウムから選択される少なくと
も1種類の塩であるので、前記溶質を比較的低コストで
容易に入手することができ、結果的に電界放射型電子源
の製造コストを低減することができるという効果があ
る。
【0071】請求項11の発明は、請求項2ないし請求
項10の発明において、前記主酸化処理過程の以前と以
後との少なくとも一方に、熱酸化法により前記多孔質半
導体層を酸化する補助酸化処理過程を備えるので、前記
酸化膜の緻密性をより向上させることができるという効
果がある。
【0072】請求項12の発明は、請求項2ないし請求
項10の発明において、前記主酸化処理過程の前に、前
記多孔質半導体層の酸化を行う前酸化処理過程を備える
ので、前記酸化膜の緻密性をより向上させることができ
るとともに、前記強電界ドリフト層の厚み方向において
前記表面電極に比較的近い領域に存在する前記酸化膜の
膜厚が前記表面電極から比較的遠い領域に存在する前記
酸化膜の膜厚よりも大きくなるのを抑制することがで
き、電子放出効率および経時安定性の向上を図れるとい
う効果がある。
【0073】請求項13の発明は、請求項11の発明に
おいて、前記主酸化処理過程および前記補助酸化処理過
程よりも前に、前記多孔質半導体層の酸化を行う前酸化
処理過程を備えるので、前記強電界ドリフト層の厚み方
向において前記表面電極に比較的近い領域に存在する前
記酸化膜の膜厚が前記表面電極から比較的遠い領域に存
在する前記酸化膜の膜厚よりも大きくなるのを抑制する
ことができ、電子放出効率および経時安定性の向上を図
れるという効果がある。
【0074】請求項14の発明は、請求項2ないし請求
項13の発明において、前記主酸化処理過程の後に、前
記多孔質半導体層を洗浄する洗浄過程を備えるので、前
記多孔質半導体層中にアルカリ金属や重金属のような不
純物が混入していても洗浄過程によって不純物を除去す
ることができ、結果的に電界放射型電子源の電子放出特
性を安定化できるとともに長期的信頼性を向上できると
いう効果がある。
【0075】請求項15の発明は、請求項14の発明に
おいて、前記洗浄過程では、硫酸と過酸化水素との混合
液、塩酸と過酸化水素と水との混合液、王水から選択さ
れる洗浄液を用いるので、前記洗浄過程で用いる洗浄液
を比較的低コストで得ることがことができ、結果的に電
界放射型電子源の製造コストを低減することができると
いう効果がある。
【0076】請求項16の発明は、請求項2ないし請求
項10の発明において、前記主酸化処理過程の後に、ア
ニール処理を行うアニール処理過程を備えるので、前記
酸化膜の緻密性をさらに向上させることができるという
効果がある。
【0077】請求項17の発明は、請求項16の発明に
おいて、前記アニール処理は、600℃以下のアニール
温度で行うので、例えばガラス基板に下部電極を形成し
た構成を採用するような場合に、ガラス基板として石英
ガラス基板に比べて耐熱温度が低く安価なガラス基板を
用いることが可能になって低コスト化を図れ、しかも、
アニール時間を比較的長くすることができ、前記酸化膜
の緻密性が向上するという効果がある。
【0078】請求項18の発明は、請求項16または請
求項17の発明において、前記アニール処理は、真空中
で行うので、アニール温度を比較的低く設定することが
できるという効果がある。
【0079】請求項19の発明は、請求項16または請
求項17の発明において、前記アニール処理は、不活性
ガス雰囲気中で行うので、前記酸化膜に不純物が導入さ
れたり前記酸化膜の表面に別の膜が形成されるのを防止
することができ、また、前記アニール処理を行うために
真空装置を用いる必要がなく、真空装置に比べて簡便な
装置を用いることができて、前記アニール処理を行う装
置におけるスループットを向上させることができるとい
う効果がある。
【0080】請求項20の発明は、請求項16または請
求項17の発明において、前記アニール処理は、酸化種
を含む雰囲気中で行うので、前記酸化膜中に不純物が導
入されるのを防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1の電界放射型電子源の製造方法を説
明するための主要工程断面図である。
【図2】同上の電界放射型電子源の概略断面図である。
【図3】同上の動作説明図である。
【図4】同上の動作説明図である。
【図5】実施例1の電界放射型電子源の電子放出特性図
である。
【図6】実施例2の電界放射型電子源の電子放出特性図
である。
【図7】実施例3の電界放射型電子源の電子放出特性図
である。
【図8】実施例4の電界放射型電子源の電子放出特性図
である。
【図9】実施例1〜4の電界放射型電子源の電子放出特
性の比較図である。
【図10】実施例5の電界放射型電子源の電子放出特性
図である。
【図11】比較例の電界放射型電子源の電子放出特性図
である。
【符号の説明】
1 n形シリコン基板 2 オーミック電極 3 多結晶シリコン層 4 多孔質多結晶シリコン層 6 強電界ドリフト層 7 表面電極 10 電界放射型電子源
フロントページの続き (72)発明者 相澤 浩一 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 (72)発明者 本多 由明 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 (72)発明者 渡部 祥文 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 (72)発明者 櫟原 勉 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 (72)発明者 馬場 徹 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 Fターム(参考) 5C127 AA01 CC22 DD08 DD77 DD78 EE02 5C135 CC09 DD09 GG02 GG13 HH02 HH03

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下部電極と、下部電極に対向する表面電
    極と、下部電極と表面電極との間に介在し酸化した多孔
    質半導体層よりなる強電界ドリフト層とを備え、強電界
    ドリフト層がナノメータオーダの多数の半導体微結晶と
    各半導体微結晶それぞれの表面に形成され半導体微結晶
    の結晶粒径よりも小さな膜厚の酸化膜よりなる多数の絶
    縁膜とを有し、下部電極と表面電極との間に表面電極を
    高電位側として電圧を印加することにより下部電極から
    注入された電子が強電界ドリフト層をドリフトし表面電
    極を通して放出される電界放射型電子源であって、強電
    界ドリフト層は、有機溶媒中に溶質を溶かした電解液中
    において多孔質半導体層を電気化学的に酸化する酸化工
    程を含むプロセスにより形成されてなることを特徴とす
    る電界放射型電子源。
  2. 【請求項2】 下部電極と、下部電極に対向する表面電
    極と、下部電極と表面電極との間に介在し酸化した多孔
    質半導体層よりなる強電界ドリフト層とを備え、強電界
    ドリフト層がナノメータオーダの多数の半導体微結晶と
    各半導体微結晶それぞれの表面に形成され半導体微結晶
    の結晶粒径よりも小さな膜厚の酸化膜よりなる多数の絶
    縁膜とを有し、下部電極と表面電極との間に表面電極を
    高電位側として電圧を印加することにより下部電極から
    注入された電子が強電界ドリフト層をドリフトし表面電
    極を通して放出される電界放射型電子源の製造方法であ
    って、強電界ドリフト層を形成するにあたっては、有機
    溶媒中に溶質を溶かした電解液中において多孔質半導体
    層を電気化学的に酸化する主酸化処理過程を備えること
    を特徴とする電界放射型電子源の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記電解液に水を添加してなることを特
    徴とする請求項2記載の電界放射型電子源の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記有機溶媒としてアルコールを用いる
    ことを特徴とする請求項2または請求項3記載の電界放
    射型電子源の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記アルコールは、メタノール、エタノ
    ール、プロパノール、ブタノールから選択されることを
    特徴とする請求項4記載の電界放射型電子源の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 前記有機溶媒としてエチレングリコール
    を用いることを特徴とする請求項2または請求項3記載
    の電界放射型電子源の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記溶質は、硝酸、硫酸、炭酸、リン
    酸、クロム酸、酒石酸、塩酸から選択される少なくとも
    1種類の酸であることを特徴とする請求項2ないし請求
    項6のいずれかに記載の電界放射型電子源の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記溶質は、硝酸、硫酸、炭酸、リン
    酸、クロム酸、酒石酸、塩酸から選択される少なくとも
    1種類の酸の塩であることを特徴とする請求項2ないし
    請求項6のいずれかに記載の電界放射型電子源の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 前記溶質は、水酸化物であることを特徴
    とする請求項2ないし請求項6のいずれかに記載の電界
    放射型電子源の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記溶質は、水酸化ナトリウム、水酸
    化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、塩化
    ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化ア
    ルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硝酸
    リチウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシ
    ウム、酒石酸アンモニウムから選択される少なくとも1
    種類の塩であることを特徴とする請求項2ないし請求項
    6のいずれかに記載の電界放射型電子源の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記主酸化処理過程の以前と以後との
    少なくとも一方に、熱酸化法により前記多孔質半導体層
    を酸化する補助酸化処理過程を備えることを特徴とする
    請求項2ないし請求項10のいずれかに記載の電界放射
    型電子源の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記主酸化処理過程の前に、前記多孔
    質半導体層の酸化を行う前酸化処理過程を備えることを
    特徴とする請求項2ないし請求項10のいずれかに記載
    の電界放射型電子源の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記主酸化処理過程および前記補助酸
    化処理過程よりも前に、前記多孔質半導体層の酸化を行
    う前酸化処理過程を備えることを特徴とする請求項11
    記載の電界放射型電子源の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記主酸化処理過程の後に、前記多孔
    質半導体層を洗浄する洗浄過程を備えることを特徴とす
    る請求項2ないし請求項13のいずれかに記載の電界放
    射型電子源の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記洗浄過程では、硫酸と過酸化水素
    との混合液、塩酸と過酸化水素と水との混合液、王水か
    ら選択される洗浄液を用いることを特徴とする請求項1
    4記載の電界放射型電子源の製造方法。
  16. 【請求項16】 前記主酸化処理過程の後に、アニール
    処理を行うアニール処理過程を備えることを特徴とする
    請求項2ないし請求項10のいずれかに記載の電界放射
    型電子源の製造方法。
  17. 【請求項17】 前記アニール処理は、600℃以下の
    アニール温度で行うことを特徴とする請求項16記載の
    電界放射型電子源の製造方法。
  18. 【請求項18】 前記アニール処理は、真空中で行うこ
    とを特徴とする請求項16または請求項17記載の電界
    放射型電子源の製造方法。
  19. 【請求項19】 前記アニール処理は、不活性ガス雰囲
    気中で行うことを特徴とする請求項16または請求項1
    7記載の電界放射型電子源の製造方法。
  20. 【請求項20】 前記アニール処理は、酸化種を含む雰
    囲気中で行うことを特徴とする請求項16または請求項
    17記載の電界放射型電子源の製造方法。
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