JP2003200284A - レーザビーム溶接継手およびレーザビーム溶接継手の製造方法 - Google Patents

レーザビーム溶接継手およびレーザビーム溶接継手の製造方法

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JP2003200284A JP2002319797A JP2002319797A JP2003200284A JP 2003200284 A JP2003200284 A JP 2003200284A JP 2002319797 A JP2002319797 A JP 2002319797A JP 2002319797 A JP2002319797 A JP 2002319797A JP 2003200284 A JP2003200284 A JP 2003200284A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高エネルギービーム溶接による優れた溶接金属
部靱性、溶接熱影響部靭性を有する高エネルギービーム
溶接継手の製造方法を提案する。 【解決手段】Ti: 0.005〜0.080 %、B:0.0030%以
下、Al:0.05%以下を含み、かつ炭素当量Ceqが0.20〜
0.42%である組成を有する鋼材と、Ti:0.01〜0.20%、
B:0.0030〜0.0200%を含み、かつ炭素当量Ceqが0.16
〜0.50%である組成を有する溶接材料を用いて、シール
ドガスを、酸素供給ガスを含有する不活性ガスとして高
エネルギービーム溶接により溶接接合する。これによ
り、面積率で60%以上のアシキュラーフェライト相を含
む溶接金属組織を有する溶接金属部靱性および、HAZ
靭性に優れた高エネルギービーム溶接継手が得られる。
なお、溶接金属靭性向上の観点からは、溶接金属中のAl
/Oを0.5 超え1.2 未満に調整することが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、船舶、建築、鉄鋼
構造物等の溶接構造物に用いて好適な鋼材の溶接方法に
係り、とくにレーザビームを用いて溶接接合したレーザ
ビーム溶接継手部における靱性改善に関する。なお、本
発明における鋼材は、鋼板、形鋼、鋼管を含むものとす
る。
【0002】
【従来の技術】高エネルギービーム溶接は高いエネルギ
ー密度を有することから、深溶け込みの高速溶接が可能
であり、高能率溶接法として期待されている。高エネル
ギービームの一種であるレーザビームは、光学系の改
良、 制御機器の信頼性向上等により、その出力が年々増
大してきている。なかでも、炭酸ガスレーザにおいて
は、利用可能な出力は50kWにも達し、数十mm厚の鋼材を
貫通できるまでになっている。また、最近では高出力の
YAGレーザも市販されており、ビーム伝送の柔軟性か
らレーザ溶接機としての利用が拡大されつつある。
【0003】しかし、この高エネルギービーム溶接で
は、極めて局所的な溶融となるため、板厚あたりに投入
される熱量が従来のアーク溶接に比べて著しく小さい、
いわゆる小入熱溶接となる。このため、溶接部の冷却速
度が速くなり、例えば、溶接金属は著しく硬化し、溶接
金属および熱影響部(以下、HAZ:Heat Affected Zoneと
もいう) の靱性が劣化する場合が多いという問題があ
る。
【0004】このような問題に対し、例えば特許文献1
には、鋼の酸素量を高め鋼の焼入れ性を低減することに
より、高エネルギー溶接の一種である電子ビーム溶接の
溶接部硬化性を低減させる技術が提案されている。しか
しながら、鋼中酸素量の増加は母材靱性を著しく劣化さ
せる場合があるため、実用的な改善策とはいい難い。ま
た、特許文献2には、Ti:0.003 〜0.06%および固溶A
l:0.001 〜 0.015%を含有する鋼材に高エネルギー密
度ビーム溶接を行うに当り、シールドガスに適量の酸素
を混合することにより、溶接金属中にAlやTiの微細な酸
化物が分散し、これによって溶接金属の組織を微細化
し、溶接部の靱性を向上させる溶接方法が提案されてい
る。しかし、特許文献2に記載された技術では、溶接金
属の組織は微細化され高靱性化されるが HAZの高靭化に
は効果が認められないという問題がある。
【0005】さらに、高エネルギービーム溶接では、ビ
ーム径が小さいため、開先精度が悪くルートギャップが
ある突き合わせ溶接継手の場合、ビームがそのまま通り
抜けてしまうことが多々あり、健全な溶接ができないと
いう問題がある。健全な高エネルギービーム溶接を行う
ために、厳しい精度で開先を形成することが要求されて
いる。このような開先精度の厳しさが、高エネルギービ
ーム溶接の普及を妨げている原因の一つであると言われ
ている。
【0006】また、特許文献3には、レーザビーム溶接
用ワイヤが開示されている。特許文献3に記載された技
術では、B、TiまたはZrを同時に含有し、かつ炭素当量
の低いフィラワイヤを用いて溶接金属組成を制御し溶接
金属の焼入れ性を低下させて、溶接金属組織を微細なア
シキュラーフェライト組織とすることにより、レーザビ
ーム溶接継手部靭性を高靭性とする技術である。
【0007】
【特許文献1】特開昭62−64486 号公報
【特許文献2】特開平8−155658号公報
【特許文献3】特開平5−185280号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特許文
献3に記載された技術では、レーザビーム溶接継手の溶
接金属靭性は改善されるが、HAZ靭性を高めるまでに
は至っていない。本発明は、上記した従来技術の問題を
有利に解決し、溶接金属靭性およびHAZ靱性に優れた
レーザビーム溶接継手およびその製造方法を提案するこ
とを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した
課題を達成するため、溶接金属の成分組成、溶接金属の
組織、被溶接材である鋼材の成分組成、シールドガスに
ついて、種々の検討を重ねて本発明を完成させた。すな
わち、本発明は、鋼材をレーザビーム溶接により溶接接
合したレーザビーム溶接継手であって、前記溶接継手の
溶接金属が、mass%で、Ti:0.005 〜 0.060%、B:0.
0003〜0.0070%、Al:0.04%以下を含み、かつAl/Oが
0.5 超え1.2 未満であり、さらに次(1)式 Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 ……(1) (ここで、Ceq:炭素当量(mass%)、C、Mn、Cr、M
o、V、Cu、Ni:各合金元素の含有量(mass%))で定
義される炭素当量Ceqが0.17〜0.42%である溶接金属組
成と、面積率で60%以上のアシキュラーフェライト相を
含む溶接金属組織と、を有することを特徴とする溶接金
属部靱性に優れたレーザビーム溶接継手である。
【0010】また、本発明は、鋼材を溶接材料を用いる
レーザビーム溶接により溶接接合して溶接継手を製造す
るにあたり、前記鋼材を、mass%で、Ti: 0.005〜0.08
0 %、B:0.0030%以下、さらにAl:0.05%以下を含
み、かつ次(1)式 Ceq =C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 ・・・(1) (ここで Ceq:炭素当量(mass%)、C、Mn、Cr、Mo、
V、Cu、Ni:各合金元素の含有量(mass%))で定義さ
れる炭素当量Ceqが0.20〜0.42%である鋼材組成を有す
る鋼材とし、前記溶接材料を、mass%で、Ti:0.01〜0.
20%、B:0.0010〜0.0200%を含み、かつ下記(1)式
で定義される炭素当量Ceqが0.16〜0.50%である溶接材
料組成を有する溶接材料とし、前記レーザビーム溶接の
シールドガスを、酸素供給ガスを含有するガスとし、好
ましくはルートギャップを2mm以下として、溶接接合す
ることを特徴とする溶接金属部靱性に優れたレーザビー
ム溶接継手の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明では、鋼材を、溶接材料を
用いるレーザビーム溶接により溶接接合して溶接継手を
製造する。本発明で使用する鋼材は、mass%で、Ti:
0.005〜0.080%、B:0.0030%以下、Al:0.05%以下を
含有し、かつ炭素当量Ceqが0.20〜0.42%である鋼材と
することが好ましい。
【0012】まず、本発明で使用する鋼材の鋼材組成の
限定理由について説明する。以下、組成におけるmass%
は単に%で記す。 Ti: 0.005〜0.080 % Tiは、Nとの結合力が大きく、TiN として析出し、HA
Z組織の粗大化を抑制しHAZ靱性を向上させる効果を
有している。これらの効果は0.005 %以上の含有で認め
られる。一方、0.080 %を超えて含有しても効果が飽和
するうえ、不要な析出物が増加する。このため、Tiは
0.005〜0.080 %の範囲に限定することが好ましい。な
お、鋼材中に含有されるTiは、溶接時に鋼材からの希釈
により溶接金属中に移行し溶接金属の高靭化にも寄与す
る。
【0013】B:0.0030%以下 Bは、オーステナイト粒界に偏析し、焼入れ性を向上さ
せる元素であり、レーザビーム溶接に際しては、溶接熱
影響部(HAZ)の焼入れ性を増加させ、HAZ靱性を
著しく低下させる。このため、HAZ靭性向上の観点か
ら、鋼材中にはBはできるだけ含有させないことが望ま
しい。しかし、Bは溶接金属中に極僅かに存在するだけ
で溶接金属の粒界フェライト抑制の効果がある。このた
め、本発明では、鋼材中にBを少量、具体的には0.0030
%以下、好ましくは、0.0002%以上含有させておき、溶
接時に鋼材からの希釈により溶接金属の靭性向上に必要
なB量を確保することが好ましい。なお、より好ましく
は0.0003〜0.0015%である。
【0014】Al:0.05%以下 Alは、脱酸剤として作用するとともに、結晶粒の微細化
に寄与する元素であり、0.005 %以上含有することが好
ましいが、0.05%を超えて多量に含有すると介在物中の
Al2 3 濃度が増加し、大型クラスター介在物を生成
し、延性、靭性を低下させる。レーザ溶接継手の溶接金
属組成は、鋼材組成の影響を強く受けるため、鋼材がAl
を多く含有していると、溶接金属中のAl含有量も多くな
る。溶接金属中のAl含有量が多くなると、溶接金属組織
をアシキュラーフェライト組織とするために必要な条件
である、Al/O:1.2 以下を満足させるために、溶接金
属中のO含有量を多くする必要があり、そのため、必要
以上の酸化物が形成され、靭性低下の要因となる。この
ようなことから、鋼材中のAlは0.05%以下に限定するこ
とが好ましい。なお、より好ましくは0.005 〜0.010 %
である。
【0015】Ceq :0.20〜0.42% 本発明では、Ceq (炭素当量)は、次(1)式 Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 ……(1) (ここで、Ceq:炭素当量(%)、C、Mn、Cr、Mo、
V、Cu、Ni:各合金元素の含有量(%))で定義され
る。
【0016】(1)式で定義される炭素当量Ceq は、鋼
板の強度および焼入れ性に及ぼす化学成分の影響を示す
指数であり、Ceq の値が高くなるほど焼入れ性が増加
し、鋼板の強度が高くなりやすい。本発明では、Ceq が
0.20%未満では所望の鋼材強度が得られない。一方、Ce
q が0.42%を超えると、レーザビーム溶接を行った場合
にHAZ組織がマルテンサイト組織となり、高いHAZ
靱性が得られない。このようなことから、鋼材のCeq は
0.20〜0.42%に限定することが好ましい。なお、より好
ましくは Ceq:0.24〜0.29%である。
【0017】本発明で使用される鋼材は、HAZ靭性お
よび溶接金属部靱性に優れたレーザビーム溶接継手を得
るために、上記したように基本成分を限定する。なお、
それ以外の成分は特に限定されないが、高強度、 高靭性
鋼材とするために、下記のような組成とすることが好ま
しい。 C:0.02〜0.20% Cは、鋼の強度を増加させる元素であり、所望の強度に
応じ含有できる。本発明では、0.02%以上含有すること
が好ましい。しかし、0.20%を超えてCを含有すると、
溶接熱影響部の硬さが増加し、耐溶接割れ性、靭性を劣
化させる。このため、Cは0.02〜0.20%の範囲とするこ
とが好ましい。なお、より好ましくは、0.025 %超であ
る。
【0018】Si:1.0 %以下 Siは、脱酸剤として作用するとともに、鋼の強度を増加
させる作用を有する元素である。このような効果は、0.
01%以上の含有で顕著となる。一方、 1.0%を超えて含
有すると、鋼材靱性が低下する。このため、Siは1.0 %
以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは
0.05〜0.35%である。
【0019】Mn:2.0 %以下 Mnは、鋼の強度を増加させる作用を有する元素であり、
他の強化元素の含有量とのバランスをとりつつ含有する
ことができる。本発明では所望の強度を確保するために
0.5 %以上含有することが好ましい。一方、 2.0%を超
えて含有すると、鋼材靱性が低下する。このため、Mnは
2.0 %以下とすることが好ましい。なお、 より好ましく
は 0.5〜 1.4%である。
【0020】P:0.030 %以下 Pは、不純物として鋼の靱性を劣化させ、さらに溶接割
れを起こしやすくするため、できるだけ低減することが
好ましい。しかし、0.030 %以下に低減することによ
り、溶接割れは防止できる。このため、Pは0.030 %ま
では許容できる。 S:0.030 %以下 Sは、不純物として鋼の靱性を劣化させ、さらに溶接割
れを起こしやすくするため、できるだけ低減することが
好ましい。しかし、0.030 %以下に低減することによ
り、溶接割れは防止できる。このため、Sは0.030 %ま
では許容できる。
【0021】本発明で使用する鋼材は、上記した成分に
加えてさらに、下記の成分を含有することが好ましい。 Cu:1.0 %以下、Ni:5.0 %以下、Cr:1.0 %以下、M
o:1.5 %以下、Nb:0.2 %以下、V:0.1 %以下のう
ちから選ばれた1種または2種以上 Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、Vは、いずれも鋼の強度を上昇さ
せる作用を有する元素であり、必要に応じて選択して含
有することができる。しかし、Cu:1.0 %、Ni:5.0
%、Cr:1.0 %、Mo:1.5 %、Nb:0.2 %、V:0.2 %
をそれぞれ超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に
見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利となる。
【0022】Ca:0.0040%以下、REM (希土類元素):
0.0080%以下のうちから選ばれた1種または2種 Ca、REM は、いずれもHAZの粗粒化を抑制する作用を
有し、必要に応じ、選択して含有できる。このような効
果は、Ca:0.0005%以上、REM :0.0020%以上の含有で
顕著に認められる。一方、Ca:0.0040%、REM :0.0080
%を超える含有は、介在物が過剰となるとともに、クラ
スター状となり靭性に悪影響を及ぼす。
【0023】上記した成分以外の残部は、好ましくはFe
および不可避的不純物である。不可避的不純物として
は、O:0.005 %以下が許容できる。上記した組成の鋼
材を、溶接材料を用いるレーザビーム溶接により溶接接
合して、レーザビーム溶接継手を製造する。本発明で使
用するレーザビーム溶接のビーム源としては、炭酸ガス
レーザ、YAGレーザ等が好適であるが、これに限定さ
れるものではなく、公知のレーザビームがいずれも適用
できることはいうまでもない。
【0024】本発明では、レーザビーム溶接は、シール
ドガスとして酸素供給ガスを含むガスを用いる。酸素供
給ガスを含有するガスとしては、酸素ガス、炭酸ガスあ
るいはそれらの混合ガスを含む不活性ガスが例示され
る。酸素供給ガスを含有する酸化性雰囲気中で溶接する
ことにより、酸素が溶接金属中に供給され、主として溶
接材料に含有されるTiが酸素との親和力の比較的大きな
他の元素(例えば、Mn)と共に酸化され、Ti系複合酸化
物を形成し、溶接金属中に分散される。Ti系複合酸化物
に、例えばMnを含有する酸化物を含むことにより、周辺
にはMnの少ないMn欠乏層が形成され、その部分の炭素当
量が低下し、フェライト相が形成されやすくなるととも
に、このTi系複合酸化物は、フェライトとの整合性に優
れるため、アシキュラーフェライトの核生成サイトとし
て有効に働き、溶接金属組織を微細なアシキュラーフェ
ライト主体の組織とし、高い溶接金属靱性が得られるよ
うになる。また、Tiは、Bより酸素との親和力が強いた
め、溶接金属中のBの酸化を抑制し、Bによる粒界フェ
ライト抑制作用が低下することを防止でき、したがっ
て、アシキュラーフェライト主体の溶接金属組織の形成
をより促進できるという効果もある。
【0025】なお、酸素供給ガスを含有するガスとし
て、酸素ガス、炭酸ガスあるいはそれらの混合ガスを含
有する不活性ガスを用いる場合は、次(2)式 1 ≦VO2+0.2 VCO2 ≦ 15 ………(2) ここで、VO2 :シールドガス中の酸素ガスの体積分率
(vol %) VCO2 :シールドガス中の炭素ガスの体積分率(vol
%) を満足するガス組成とすることが好ましい。
【0026】シールドガス中のVO2+ 0.2VCO2 が1vo
l %未満では、溶接金属組織の顕著な微細化が得られ
ず、一方、VO2+ 0.2VCO2 が 15vol%を超えると、溶
接金属の激しい酸化が生じ、気泡等の欠陥が生じるほ
か、溶接金属中に粒界フェライトが多量に生成し、アシ
キュラーフェライトの生成が抑制され、溶接金属の靱性
が劣化する。なお、不活性ガスとしては入手の容易さか
らHeガスまたはArガスとすることが好ましい。なお、よ
り好ましくはVO2+ 0.2VCO2 が3〜6 vol%以下であ
る。
【0027】本発明では、レーザビーム溶接において、
溶接材料を供給して溶接するため、開先のルートギャッ
プは、溶接材料を供給しない場合にくらべ広いルートギ
ャップが許容できる。しかし、ルートギャップが2mmを
超えると溶接材料を供給しても開先面を溶融できず、健
全な溶接継手が得られず好ましくない。このため、ルー
トギャップは2mm以下に限定することが好ましい。な
お、本発明では、ビームのオシレーションを行ってもよ
く、これによりギャップ間隔をより広くすることができ
る。
【0028】また、本発明における溶接手段にはレーザ
ビームだけでなく TIGあるいは MIG、MAG といったアー
ク溶接方法を併用することも可能である。これらのアー
ク熱源を併用することにより、さらに要求される突合わ
せ精度を緩和することが可能となる。また、溶接材料が
アークにより容易に融解されるため、溶接材料の供給も
容易になる。更に、アークからの入熱により冷却速度を
低減することも可能となり、継手部靱性をより向上させ
ることも可能である。なお、溶接金属中へ供給する酸素
は、この併用するアーク溶接のシールドガスから供給し
てもよい。
【0029】また、本発明で使用するフィラワイヤ等の
溶接材料は、mass%で、Ti:0.01〜0.20%、B:0.0010
〜0.0200%を含み、かつ炭素当量Ceqが0.16〜0.50%で
ある溶接材料とすることが好ましい。つぎに、本発明で
使用する溶接材料の組成限定理由について説明する。 Ti:0.01〜0.20% Tiは、Ti系複合酸化物を介し均一なアシキュラーフェラ
イト生成に有効に働き、溶接金属の高靱性化に寄与す
る。酸素供給ガスを含むシールドガス中でレーザビーム
溶接を行うことにより、溶接材料中に含まれるTiは、酸
素との親和力の大きな他の元素(例えば、Mnなど)と共
に複合酸化物を形成し、溶接金属中に分散する。このTi
系複合酸化物が、アシキュラーフェライト等の微細組織
の核生成サイトとして有効に働くとともに、TiがBの酸
化を防止することによりBの粒界フェライト生成抑制能
の低下を防止し、溶接金属組織を微細なアシキュラーフ
ェライト主体の組織とする。これにより、高靱性の溶接
金属が得られる。このような効果は、溶接金属中のTi量
が 0.005〜 0.060%であればよい。溶接材料中のTi量は
被溶接材である鋼材からの希釈およびスラグとして排出
される分を考慮して 0.01 〜 0.20 %とすることが好ま
しい。溶接材料中のTi量が0.01%未満では、溶接金属中
に十分な量のTi系複合酸化物を得ることができない。一
方、0.20%を超えて含有しても、効果が飽和するととも
に、溶接金属中に不要な析出物が増加する。このため、
溶接材料中のTiは0.01〜0.20%に限定することが好まし
い。なお、より好ましくは 0.0010 〜 0.080%である。
【0030】B:0.0010〜0.0200% Bは、結晶粒界に偏析し粒界フェライトの発生を抑制し
て、溶接金属の高靭性化に大きく寄与する元素である。
シールドガスから酸素を供給し、Tiを含む複合酸化物を
形成させる本発明の場合には、粒界フェライトが生成し
やすく、溶接金属の高靭性化の観点から、Bの添加は特
に有効となる。溶接金属中へのBの添加は、 被溶接材で
ある鋼材のみからの希釈としてもよいが、粒界フェライ
トの生成を抑制するためには、鋼材中にBを0.0020%を
超えて含有することが必要となる。しかし、溶接継手部
の溶接熱影響部の靭性を低下させないためには鋼材中の
Bはできるだけ低減しておくことが望ましい。このた
め、本発明ではBは溶接材料から主として供給する。
【0031】フィラワイヤ等の溶接材料中のB含有量が
0.0010%未満では粒界フェライトの生成を抑制すること
が困難であり、一方、0.0200%を超えて含有すると、B
N、B化合物を形成して溶接金属の靭性を低下させる。
このため、溶接材料中のBは0.0010〜0.0200%の範囲と
することが好ましい。なお、より好ましくは0.0030〜0.
0060%である。
【0032】Ceq:0.16〜0.50% 溶接金属をさらに高靱性とするには、溶接金属の組成
を、前記(1)式で定義される炭素当量Ceq を0.16〜0.
50%とすることが好ましい。Ceq が0.50%を超えて高く
なると焼入れ性が増加して溶接金属の硬さが増加し、靭
性が劣化しやすくなる。一方、Ceq が0.16%未満では粒
界フェライトが生成しやすくなり、 溶接金属靭性が劣化
する。したがって、溶接金属のCeq を0.16〜0.50%とな
るように、鋼材の組成、溶接条件に応じ、溶接材料のCe
q を0.16〜0.50%とすることが好ましい。なお、より好
ましくは Ceq:0.20〜0.35%、さらに好ましくは Ceq:
0.20〜0.30%である。
【0033】高靭性の溶接金属を得るためには、溶接材
料は、上記した基本組成としたうえで、さらに、下記に
示す成分を含有することが好ましい。 C:0.24%以下 Cは、焼入れ性を増加させる元素であり、C含有量が多
くなるとレーザビーム溶接では溶接金属が急冷されるた
め、溶接金属中のC含有量が多くなり、マルテンサイ
ト、 ベイナイトを生成しやすく、溶接金属を硬化させ靭
性を劣化させる傾向を有する。このため、溶接材料溶中
のC含有量はできるだけ低減するほうが溶接金属の高靭
性化のためには好ましい。本発明で溶接継手の製造に使
用される鋼材のC含有量が0.02〜0.20%であり、また、
シールドガスが酸素供給を含み、溶接金属中のCは酸素
と反応してCOガスとなり、溶接金属中のC含有量は減
少する。このため、溶接材料中のC含有量が0.24%以下
であれば、溶接金属の硬化、靭性の低下は抑制できる。
【0034】Mn:0.80〜2.60% Mnは、酸素との親和力が強く、また炭素当量Ceqへの寄
与も大きく、焼入れ性を増加させる元素である。シール
ドガスを酸素供給ガスとしてレーザ溶接する本発明の場
合には、溶接金属中でMn酸化物が形成されると、その周
辺ではMn欠乏層が形成される。そのMn欠乏層では炭素当
量が低下しアシキュラーフェライト相が生成する。本発
明では、Mnは溶接金属組織をアシキュラーフェライト組
織とし溶接金属の靭性向上に寄与する重要な元素であ
る。
【0035】レーザビーム溶接のシールドガス中に酸素
含有ガスが含まれる本発明の場合には、Mnは酸素と結合
してスラグとして溶接金属から排出される割合が多くな
る。そのため、溶接金属の強度を確保するために、Mnは
溶接材料中に0.80%以上含有することが好ましい。一
方、材料中に2.60%を超えて含有すると、C含有量を低
減しても島状マルテンサイト等の低靭性組織の生成を避
けることができない。このため、溶接材料中のMnは0.80
〜2.60%の範囲に限定することが好ましい。なお、 より
好ましくは0.80〜1.40%である。
【0036】なお、 本発明に使用する溶接材料は、上記
した成分以外にさらに、Cu,Ni,Cr,Mo,Vのうちから選ば
れた1種または2種以上を前記した炭素当量Ceqの範囲
内で含有することができる。また、Nb:0.80%以下を溶
接金属の強度増加のために必要に応じ含有することもで
きる。本発明に使用する溶接材料は、上記した成分以外
の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。不可避的
不純物としては、P:0.030 %以下、S:0.030 %以
下、が許容できる。
【0037】上記した組成の鋼材、溶接材料、溶接方法
を用いてレーザビーム溶接継手を得る。レーザビーム溶
接継手の溶接金属の靱性はその化学組成に大きく影響さ
れ、本発明においては溶接材料を用いるため、溶接材料
の化学組成と鋼材からの希釈により溶接金属の靱性が決
定される。本発明のレーザビーム溶接継手における溶接
金属は、mass%で、Ti:0.005 〜 0.060%、B:0.0010
〜0.0070%、Al:0.04%以下を含み、かつAl/Oが0.5
超え1.2 未満であり、さらに前記(1)式で定義される
炭素当量Ceqが0.17〜0.42%である溶接金属組成と、面
積率で60%以上のアシキュラーフェライト相を含む溶接
金属組織と、を有する。
【0038】以下、溶接金属の組成、組織の限定理由に
ついて説明する。 Ti:0.005 〜 0.060% Tiは、前記したように、Ti系複合酸化物を介し均一なア
シキュラーフェライト生成に有効に働き、レーザビーム
溶接における溶接金属の高靱性化に寄与する。レーザビ
ーム溶接を酸素供給ガスを含むシールドガス中で行うこ
とにより、溶接材料、鋼材に含まれるTiは酸素との親和
力の大きな他の元素(例えば、Mn)と共に複合酸化物を
形成する。このTi系複合酸化物が、アシキュラーフェラ
イト等の微細組織の核生成サイトとして有効に働くとと
もに、TiがBの酸化を防止することによりBの粒界フェ
ライト生成抑制能の低下を防止し、溶接金属組織を微細
なアシキュラーフェライト主体の組織とする。これによ
り高靱性の溶接金属が得られる。
【0039】このような効果を得るには、溶接金属中の
Ti量を 0.005〜 0.060%とする。 0.005%未満では、溶
接金属中に十分な量のTi系複合酸化物を得ることができ
ない。また、 0.060%を超えて含有すると、その効果が
飽和するだけでなく、溶接金属中に不要な析出物を増加
させ、靱性が向上しない。このようなことから、溶接金
属中のTiは0.005 〜 0.060%の範囲とした。なお、好ま
しくは0.01〜0.02%である。
【0040】B:0.0003〜0.0070% Bは、結晶粒界に偏析し粒界フェライトの発生を抑制し
て、溶接金属の高靭性化に大きく寄与する元素である。
シールドガスから酸素を供給し、Tiを含む複合酸化物を
形成させる本発明の場合にはこのシールドガスからの酸
素添加により溶接金属には粒界フェライトが生成しやす
く、溶接金属の高靭性化の観点から、Bは特に有効とな
る。B含有量が、0.0003%未満では粒界フェライト抑制
の効果が得られず、一方、0.0070%を超える場合はBN
およびB化合物を生成して溶接金属靱性を低下させる。
このため、溶接金属中のBは0.0003〜0.0070%の範囲と
した。なお、好ましくは、0.0010〜0.0070%であり、よ
り好ましくは0.0020〜0.0040%である。
【0041】Al:0.04%以下 Alは、Ti、Mnよりも酸素との親和力が強く、溶接金属の
凝固過程の初期(高温)に酸化物(Al2O3 )を形成す
る。しかし、Al2O3 はアシキュラーフェライトの核生成
サイトとして機能しない酸化物であり、またAlは炭素当
量にも影響を与えないため、Alは溶接金属の組織をアシ
キュラーフェライト化することには何の効果も示さな
い。したがって、本発明では、溶接金属組織のアシキュ
ラーフェライト化という観点からは溶接金属中のAl含有
量はできるだけ低減することが好ましいが、0.04%まで
は許容できる。Alを0.04%超えて含有すると、溶接金属
組織をアシキュラーフェライトするためには、多量の酸
素を含有することが必要となり、酸化物が過剰となり靭
性が低下する。このため、Alは0.04%以下に限定した。
なお、少ない酸素含有量で溶接金属組織をアシキュラー
フェライト化するために、Alは0.01%以下とすることが
より好ましい。
【0042】Al/O:0.5 超え1.2 未満 溶接金属組織のアシキュラーフェライト化の観点から、
Mn、Ti系の複合酸化物を形成させるためには、Al2O3
成により消費される以上の酸素が溶接金属中に存在する
必要があり、そのためには、溶接金属中のAl含有量とO
含有量の比、Al/Oが1.2 未満となるようにAl含有量と
O含有量を調整することが好ましい。Al/Oが1.2 以上
となると、溶接金属中の酸素含有量が多くなりすぎ、酸
化物量が多くなり、延性破壊の起点となる酸化物が多く
なり、衝撃試験の吸収エネルギーが低下する。また、Al
/Oが小さくなりすぎると、Bが酸化され、粒界フェラ
イト生成を抑制することができず、溶接金属靭性が低下
する。このため、Al/Oを0.5 超えに調整する。なお、
好ましくは0.8 〜1.0 である。
【0043】Ceq:0.17〜0.42% 前記した(1)式で定義されるCeq は、溶接金属靱性に
大きな影響を与える。レーザビーム溶接のように冷却速
度の速い溶接においては、溶接金属のCeq が0.42%を超
えると、溶接金属が著しく硬化し、靱性が低下する。一
方、溶接金属のCeq が0.17%未満と低い場合は、レーザ
ビーム溶接のような冷却速度の速い溶接においても、粗
大な粒界フェライトが発生し、靱性が低下する。このた
め、溶接金属の炭素当量Ceq は0.17〜0.42%とした。な
お、好ましくは0.17〜0.38%である。
【0044】溶接金属の組成は、上記した基本成分以外
の成分は特に限定されるものではないが、上記した基本
成分に加えて、さらに、下記成分を含有することが好ま
しい。 C:0.02〜0.20% Cは、溶接金属の強度を所望の強度とするために、 本発
明では、0.02%以上含有することが好ましい。しかし、
0.20%を超えてCを含有すると、溶接金属の硬さが増加
し、耐溶接割れ性、靭性を劣化させる。このため、Cは
0.02〜0.20%の範囲とすることが好ましい。
【0045】Si:1.0 %以下 Siは、溶接金属の強度を増加させる作用を有し、0.01%
以上含有することがより好ましいが、1.0 %を超えて含
有すると、溶接金属の靱性が低下する。このため、溶接
金属のSiは 1.0%以下に限定することが好ましい。な
お、より好ましくは、0.7 %以下である。
【0046】Mn:0.5 〜 2.00 % Mnは、酸素との親和力が強く、また炭素当量Ceqへの寄
与も大きく、焼入れ性を増加させ溶接金属の強度を増加
させる元素であるが、溶接金属の強度を所望の強度とす
るためには、0.5 %以上含有することが好ましい。一
方、 2.00 %を超えて含有すると、溶接金属靱性が低下
する。このため、溶接金属のMnは0.5 〜 2.00 %の範囲
内とすることが好ましい。
【0047】Mnは、酸素との親和力が強く、また炭素当
量Ceqへの寄与も大きく、焼入れ性を増加させる。シー
ルドガスを酸素供給ガスとするレーザ溶接の場合には、
Mnは溶接金属中で酸化物を形成すると同時に、その周辺
ではMn欠乏層が形成される。そのMn欠乏層では炭素当量
が低下しアシキュラーフェライト相が生成しやすくな
る。Mnは溶接金属組織をアシキュラーフェライト組織と
し溶接金属の靭性向上させる重要な元素である。
【0048】レーザビーム溶接のシールドガス中に酸素
含有ガスが含まれる本発明の場合には、Mnは酸素と結合
してスラグとして溶接金属から排出される割合が多くな
る。そのため、溶接金属の強度を確保するために、Mnは
溶接金属中に0.50%以上含有することが好ましい。一
方、2.00%を超えて含有すると、C含有量を低減しても
島状マルテンサイト等の低靭性組織の生成を避けること
ができない。このため、溶接金属中のMnは0.50〜2.00%
の範囲に限定することが好ましい。なお、 より好ましく
は0.8 〜1.8 %である。
【0049】本発明における溶接金属は、上記した成分
に加えてさらに、下記の成分を含有してもよい。 Cu:1.0 %以下、Ni:5.0 %以下、Cr:1.0 %以下、M
o:1.5 %以下、V:0.1 %以下のうちから選ばれた1
種または2種以上 Cu、Ni、Cr、Mo、Vは、いずれも溶接金属の強度を上昇
させる作用を有する元素であり、必要に応じて選択し
て、上記したCeq の範囲内で含有することができる。し
かし、Cu:1.0 %、Ni:5.0 %、Cr:1.0 %、Mo:1.5
%、V:0.1 %をそれぞれ超えて含有しても、効果が飽
和し、含有量に見合う効果が期待できなくなる。
【0050】また、本発明の溶接金属ではNb:0.2 %以
下含有してもよい。Nbが 0.2%超えて含有すると、強度
が増加しすぎて溶接金属の靭性が劣化する。上記した成
分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。不可
避的不純物としては、P:0.030 %以下、S:0.030 %
以下が許容できる。なお、本発明の溶接方法では、シー
ルドガスに酸素供給ガスを含有させているため、溶接金
属中には、0.0050〜0.0300%の酸素(O)が含有されて
いる。この酸素は、アシキュラーフェライトの核生成サ
イトとなる複合酸化物として含有されている酸素を含ん
でいる。
【0051】また、本発明の溶接継手の溶接金属の組織
は、十分な靱性を確保するためにアシキューフェライト
相が面積率で60%以上である組織とする。アシキューフ
ェライト相以外の組織としてはベイナイト相および/ま
たは粒界フェライト相である。なお、組織分率は、光学
顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡により5箇所以上で倍
率:400 倍で撮像した組織を画像解析装置により求めた
平均値を使用するものとする。
【0052】
【実施例】以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に
説明する。表1に示す組成を有する鋼板(板厚:7mm)
と、表2に示す溶接材料(フィラワイヤ:直径0.9mm ま
たは 1.0mm)と、を用いて、表3に示す溶接条件(溶接
速度、シールドガス、ガス流量、ワイヤ供給速度)でレ
ーザビーム溶接を行った。なお、溶接装置はレーザ出力
5.5kWのレーザ溶接装置を用いた。開先はI開先とし、
ルートギャップ:1.4 mmまたは 1.0mmとした。なお、開
先は切削加工により形成した。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】得られたレーザビーム溶接継手の溶接金属
(WM)中央部、HAZから、 シャルピー衝撃試験片を
採取し、JIS Z 2202の規定に準拠してシャルピー衝撃試
験を実施し、0℃における吸収エネルギー(vE0 )およ
び延性−脆性破面遷移温度(vTrs)を求め、溶接金属
(溶接金属中央部)およびHAZの靭性を評価した。ま
た、溶接金属中央部から分析試料を採取し、溶接金属組
成を調査した。
【0057】なお、シャルピー衝撃試験片は、鋼板の厚
さの制限と、衝撃試験時に亀裂が母材側に逃れる現象
(Fracture Pass Deviation )を防止するため、深さ0.
5mm のサイドノッチを付与したハーフサイズ2mmVノッ
チシャルピー衝撃試験片とした。また、溶接金属部の組
織観察を行い、溶接金属中に占めるアシキュラーフェラ
イトの組織分率を測定した。組織観察は、光学顕微鏡
( 400倍)で少なくとも5視野観察して、画像解析装置
により各視野におけるアシキュラーフェライトの面積率
を計測し、観察した視野における平均値を求め、溶接金
属中のアシキュラーフェライトの面積率とした。得られ
た結果を表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】本発明例はいずれも、0℃での吸収エネル
ギー(vE0 )が、溶接金属で 58J以上、HAZで50J以
上と高く、vTrsも溶接金属で−40℃未満、HAZで−43
℃以下と低温であり、良好な溶接金属靭性、およびHA
Z靭性を有する溶接継手となっている。一方、本発明の
範囲を外れる比較例では、溶接金属、HAZのいずれか
で、0℃での吸収エネルギーvE0 が低いか、vTrsが高温
となっており、溶接金属靭性および/またはHAZ靭性
が低下している。
【0061】使用した鋼板の組成が本発明の好適範囲を
外れる継手No.19 〜No.22 では、溶接金属靭性が劣化し
ている。また、使用した溶接材料が本発明の好適範囲を
外れる継手No.13 、No.15 、No.16 、No.18 〜No.20 、
No.28 、No.29 、No.31 、No.40 では、溶接金属靱性が
低下している。また、使用したシールドガスが本発明の
好適範囲から外れるHeガスを使用して溶接した継手No.
1、No.3、No.5、No.7、No.9、No.11 、No.19 〜No.22
では、溶接金属組織が本発明範囲から外れ、溶接金属靭
性が劣化している。
【0062】また、溶接金属中のAl含有量と酸素(O)
含有量の比、Al/Oが本発明の好適範囲から外れる継手
(No.1〜7 、No.9 、No.11 、No.14 〜No.26 、No.33
、No.34 、No.37 )では、アシキュラーフェライトの
生成量が少なくなる傾向を示し、溶接金属靭性が低下す
る傾向を示す。
【0063】
【発明の効果】以上、詳述したように、本発明によれ
ば、溶接金属靱性、および溶接熱影響部靭性に優れたレ
ーザビーム溶接継手およびレーザビーム溶接継手の製造
方法を提供でき、産業上格段の効果を奏する。また、本
発明によれば、船舶、建築、鉄鋼構造物等の溶接構造物
の分野でレーザビーム溶接の適用が可能となり、工業的
意義は極めて大きい。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 安田 功一 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 Fターム(参考) 4E068 BA00 BA06 CA17 CH08 CJ01 CJ05 DB01

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼材をレーザビーム溶接により溶接接合
    したレーザビーム溶接継手であって、前記溶接継手の溶
    接金属が、mass%で、Ti:0.005 〜 0.060%、B:0.00
    03〜0.0070%、Al:0.04%以下を含み、かつAl/Oが0.
    5 超え1.2 未満であり、さらに下記(1)式で定義され
    る炭素当量Ceqが0.17〜0.42%である溶接金属組成と、
    面積率で60%以上のアシキュラーフェライト相を含む溶
    接金属組織と、を有することを特徴とする溶接金属部靱
    性に優れたレーザビーム溶接継手。 記 Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 ……(1) ここで、Ceq:炭素当量(mass%) C、Mn、Cr、Mo、V、Cu、Ni:各合金元素の含有量(ma
    ss%)
  2. 【請求項2】 鋼材を溶接材料を用いるレーザビーム溶
    接により溶接接合して溶接継手を製造するにあたり、前
    記鋼材を、mass%で、Ti: 0.005〜0.080 %、B:0.00
    30%以下、さらにAl:0.05%以下を含み、かつ下記
    (1)式で定義される炭素当量Ceqが0.20〜0.42%であ
    る鋼材組成を有する鋼材とし、前記溶接材料を、mass%
    で、Ti:0.01〜0.20%、B:0.0010〜0.0200%を含み、
    かつ下記(1)式で定義される炭素当量Ceqが0.16〜0.
    50%である溶接材料組成を有する溶接材料とし、前記レ
    ーザビーム溶接のシールドガスを、酸素供給ガスを含有
    するガスとすることを特徴とする溶接金属部靱性に優れ
    たレーザビーム溶接継手の製造方法。 記 Ceq =C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 ・・・(1) ここで Ceq:炭素当量(mass%) C、Mn、Cr、Mo、V、Cu、Ni:各合金元素の含有量(ma
    ss%)
  3. 【請求項3】 前記レーザビーム溶接におけるルートギ
    ャップを2mm以下とすることを特徴とする請求項2に記
    載のレーザビーム溶接継手の製造方法。
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