JP2002121642A - 鋼材のレーザ溶接継手およびレーザ溶接方法 - Google Patents

鋼材のレーザ溶接継手およびレーザ溶接方法

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JP2002121642A JP2000317414A JP2000317414A JP2002121642A JP 2002121642 A JP2002121642 A JP 2002121642A JP 2000317414 A JP2000317414 A JP 2000317414A JP 2000317414 A JP2000317414 A JP 2000317414A JP 2002121642 A JP2002121642 A JP 2002121642A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 レーザ溶接ままの状態で高靱性が得られる鋼
材の溶接継手を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.1
〜0.8 %、Mn:0.5 〜1.7 %、P:0.02%以下、S:0.
01%以下、 Ti:0.005 〜0.050 %、Al:0.005 〜0.05
0 %を含有するとともに、下記 (1)式で表される炭素当
量がCeq:0.17〜0.35%を満たす成分組成の母材を、溶
接入熱量を4kJ/cm以下、酸化性雰囲気中の下で、溶接
金属中の酸素含有量が0.0200質量%以下かつ前記母材の
Al含有量とこの酸素含有量との比Al/Oが0.5 〜1.2 に
なるように、完全溶け込みでレーザ溶接する。 記 Ceq(質量%)=C+Mn/6 + (Cr+Mo+V) /5 + (Cu+Ni) /15 … (1)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として船舶、建
築、鉄鋼構造物等の分野に用いられる、溶接金属の靱性
に優れた鋼材のレーザ溶接継手および溶接方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】レーザ溶接は、高いエネルギー密度を得
ることができるため、深溶け込みの高速溶接を可能と
し、高能率溶接法として期待される溶接方法である。し
かも、このレーザ溶接は、同様の高エネルギー密度を得
ることができる電子ビーム溶接とは異なり、必ずしも真
空雰囲気を必要としないという利点を有している。とこ
ろで、今日広く使用されている炭酸ガスレーザ発振器の
出力は6kW以下のものが主流となっている。しかし、
これら炭酸ガスレーザ発振器を用いて鋼材を溶接した溶
接継手では、溶接金属の靱性が低く実用に耐えられない
といった問題があった。その大きな理由は、レーザ溶接
が高エネルギー密度熱源による溶接であるために、同じ
厚みの鋼材を溶接するために必要な投入エネルギー量が
少なくてすみ、結果的に従来のアーク溶接に比較して溶
接金属の冷却速度が大きくなることにある。このような
大きな冷却速度のもとで、従来のアーク溶接金属の成分
設計を踏襲してレーザ溶接すると、溶接金属はマルテン
サイト変態によって著しく硬化し、低い靱性しか得られ
ないのである。なお、単に靱性の高い溶接金属を得るだ
けであれば、溶接後に後熱処理を行う方法があるが、こ
のような方法は工程を増やすことになり、折角のレーザ
溶接の利点を相殺してしまうので実用できるものではな
い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】近年では、レーザ発振
器の高出力化により、例えば、出力24kW、溶接速度1
m/min での炭酸ガスレーザ溶接においては、溶接入熱
は14.4kJ/cmとなり、溶接金属の 800℃〜500 ℃までの
冷却速度は約60℃/min と、低電流のアーク溶接程度に
相当する冷却速度にまで低下する。しかしながら、現在
広く使用されている炭酸ガスレーザ発振器は6kW以下の
ものである。この出力レベルのレーザにおいて鋼材の溶
接を行う場合、例えば、出力5.5 kW、溶接速度1m/mi
n で溶接を行った場合は、溶接入熱は3.3 kJ/cmとな
り、溶接入熱は非常に小さく、 800℃〜500 ℃の溶接金
属の冷却速度は 300℃/sec を超え非常に速い。このた
めに、溶接金属には強烈な焼きが入り、溶接金属には硬
くてもろいマルテンサイトの組織が現れ、靱性に優れた
レーザ溶接継手を得るのは困難である。
【0004】冷却速度が大きいために溶接金属の靱性が
得られない場合の改善策として、溶接金属の炭素当量を
下げる手段が知られている。しかし、単に溶接金属の炭
素当量を下げるだけでは、粒界フェライトあるいはポリ
ゴナルフェライト組織が溶接金属中を占める割合が高く
なり、靱性が低下してしまう。このような場合、高靱性
を得るに有利な溶接金属の金属組織は、サブマージアー
ク溶接等の分野で多くの研究がなされているように、ア
シキュラーフェライトの発達した組織である。
【0005】溶接金属をアシキュラーフェライト主体の
組織にするための手段として、Tiを含む酸化物系介在物
等をフラックスから溶接金属部に導入することが知られ
ている。このようにTiを有効に利用すれば、Ti系酸化物
を核生成サイトとしたアシキュラーフェライトからなる
微細な組織を発達させることができる。しかし、従来の
レーザ溶接技術においては、アシキュラーフェライトを
主体とした組織を得ることができず、溶接金属の靱性向
上が困難であった。その原因は、溶接でのレーザ照射部
をアルゴンなどの不活性ガスによりシールドすることに
あった。この不活性ガスによるレーザ照射部のシールド
により溶接金属中の酸素量が少なくなり、アシキュラー
フェライトの核生成サイトを担う酸化物系介在物を形成
することが困難になっていたのである。
【0006】このような問題を解決する方法として、特
開平8−141763号公報には、鋼材の溶接割れ感受性組成
(Pcm) およびTi含有量がある範囲内の鋼材を、酸化性
の雰囲気でレーザ溶接することにより、アシキュラーフ
ェライトの発達した組織を得る技術が開示されている。
しかし、単に酸化性の雰囲気にしただけでは、鋼中のC
と溶解した酸素との反応により発生したCOやCO
スのために、ブローホールやポロシティー等の溶接欠陥
をもたらすという新たな問題を生じて、満足な品質の溶
接継手を得ることが困難であった。そこで、本発明は、
従来技術が抱えていたこのような事情に鑑みて、低入熱
であるが故に冷却速度が著しく大きいレーザ溶接におい
て、溶接ままでも高靱性のレーザ溶接継手を得る技術を
提案することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】発明者らは、低入熱で冷
却速度が著しく速いレーザ溶接における溶接継手の高靱
性化について鋭意検討し、上記課題を解決するに至っ
た。すなわち、本発明の要旨構成は、次のとおりであ
る。 (1) 母材の成分組成が、質量%で、C:0.01〜0.20
%、Si:0.1 〜0.8 %、Mn:0.5 〜1.7 %、P:0.02%
以下、S:0.01%以下、 Ti:0.005 〜0.050 %、Al:
0.005 〜0.050 %を含有するとともに、これらは下記
(1)式で表される炭素当量Ceq:0.17〜0.35%を満たし
て含有して、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、
完全溶け込み溶接した溶接金属中の酸素含有量が、0.02
00質量%以下かつ前記母材のAl含有量とこの酸素含有量
との比Al/O:0.5 〜1.2 を満たすことを特徴とする鋼
材のレーザ溶接継手。 記 Ceq(質量%)=C+Mn/6 + (Cr+Mo+V) /5 + (Cu+Ni) /15 … (1)
【0008】(2) 母材の成分組成が、質量%で、C:
0.01〜0.20%、Si:0.1 〜0.8 %、Mn:0.5 〜1.7 %、
P:0.02%以下、S:0.01%以下、 Ti:0.005 〜0.05
0 %、Al:0.005 〜0.050 %を含み、かつCu:1.0 %以
下、 Ni:5.0 %以下、Cr:1.0 %以下、Mo:1.5 %以
下、V:0.2 %以下およびNb:0.2 %以下から選ばれる
1種または2種以上、および/またはB:0.01%以下を
含有するとともに、これらは下記 (1)式で表される炭素
当量Ceq:0.17〜0.35%を満たして含有して、残部はFe
および不可避的不純物からなり、完全溶け込み溶接した
溶接金属中の酸素含有量が、0.0200質量%以下かつ前記
母材のAl含有量とこの酸素含有量との比Al/O:0.5 〜
1.2 を満たすことを特徴とする鋼材のレーザ溶接継手。 記 Ceq(質量%)=C+Mn/6 + (Cr+Mo+V) /5 + (Cu+Ni) /15 … (1)
【0009】(3) 質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:
0.1 〜0.8 %、Mn:0.5 〜1.7 %、P:0.02%以下、
S:0.01%以下、 Ti:0.005 〜0.050 %、Al:0.005
〜0.050 %を含有するとともに、下記 (1)式で表される
炭素当量がCeq:0.17〜0.35%を満たす成分組成の母材
を、溶接入熱量を4kJ/cm以下、酸化性雰囲気中の下
で、溶接金属中の酸素含有量が0.0200質量%以下かつ前
記母材のAl含有量とこの酸素含有量との比Al/Oが0.5
〜1.2 になるように、完全溶け込み溶接することを特徴
とする鋼材のレーザ溶接方法。 記 Ceq(質量%)=C+Mn/6 + (Cr+Mo+V) /5 + (Cu+Ni) /15 … (1)
【0010】
【発明の実施の形態】本発明は、冷却速度の著しく速い
レーザ溶接においても、溶接母材となる鋼材の成分含有
量、溶接金属中酸素含有量、母材中Al含有量と溶接金属
中酸素含有量の比等を制御することにより、溶接金属組
織をアシキュラーフェライトの発達した組織として、優
れた靱性を有する溶接継手を提供するものである。以
下、本発明について詳細に説明する。
【0011】本発明における母材の化学組成、溶接金属
中酸素含有量、母材中Al含有量と溶接金属中酸素含有量
の比等を限定した理由について説明する。以下、質量%
は単に%で記述する。 C:0.01〜0.20% C量は、鋼の強度を調整するのに用いる元素である。そ
の含有量が0.01%未満では必要とする強度が得られない
ばかりでなく、冷却速度の速いレーザ溶接の下でアシキ
ュラーフェライトの発達した組織とするために酸素を添
加すると、粒界フェライトあるいはポリゴナルフェライ
ト主体の組織となり、靱性が低くなってしまう。一方、
0.20%を超えて含有すると、焼入れ性が過度に高まるた
め、高靱性の溶接金属が得られにくくなるほか、溶接割
れも起こりやすくなる。
【0012】Si:0.1 〜0.8 % Siは、鋼の脱酸および強度確保を目的として添加され
る。その含有量が0.1 %未満ではその効果が十分ではな
く、一方、0.8 %超では、母材、溶接部共に靱性が低下
する。よって、Siは0.1 %以上、0.8 %以下とする。
【0013】Mn:0.5 〜1.7 % Mnは、鋼の強度確保のために必要な元素であるととも
に、ガスシールド雰囲気を後述するような酸化性とした
ときに、酸化熱を発生して、完全溶け込み溶接を容易に
達成することができる。Mn含有量が0.5 %未満では強度
確保には効果がなく、一方、1.7 %超では溶接金属の靱
性が低下する。よって、Mnは0.5 %以上、1.7 %以下と
する。
【0014】P:0.02%以下 Pは、鋼の靱性を劣化させるので、含有量が少ないほど
良い。とくに0.02%を超えて含有すると溶接割れを招く
ため、この値以下に抑制する。
【0015】S:0.01%以下 Sは、鋼の靱性を劣化させるので、含有量は少ないほど
良い。とくに0.01%を超えて含有すると溶接割れを招く
ため、この値以下とする。
【0016】Ti:0.005 〜0.050 % Tiは、高靱性化に寄与し、本発明において重要な役割を
示す元素である。鋼中のTiは酸化性雰囲気で溶接したと
きに、酸素との親和力の大きな他の元素と共に複合酸化
物を形成する。このTi系の複合酸化物はフェライトとの
整合性に優れるため、アシキュラーフェライトの核生成
サイトとして有効に働く。その結果、溶接金属組織は微
細なアシキュラーフェライトの発達した組織となり、高
い靱性が得られる。Ti含有量が、0.005 %未満ではその
効果は得られず、一方、0.050 %超ではその効果が飽和
するだけでなく、不要な析出物を増加させることにもな
るため、上限を0.050 %とする。
【0017】Al:0.005 〜0.050 % Alも、本発明において重要な元素の1つである。Alは、
鋼の脱酸上、0.005 %以上必要である。また、Oとも反
応しやすく、ブローホールやポロシティーを低減する効
果が期待できる。しかし、AlはTiよりも酸素との親和力
が強いため、Al含有量が多いと溶接金属組織の微細化に
効果のあるTi系の酸化物が生じにくくなる。したがっ
て、Al含有量の多い鋼でTi系酸化物を生成するに必要な
酸素も多くなり、組織微細化に効果の少ない介在物を多
く形成することとなり、また、粒界フェライトも発達す
るため、靱性が低下してしまう。このような悪影響は、
0.050 %を超えると顕著になる。よって、鋼中Al含有量
の上限は0.050 %とする。
【0018】B:0.01%以下 Bは、溶接金属中ではオーステナイト粒界に偏析し、粒
界フェライトの析出を抑制することにより靱性の向上に
寄与するが、0.01%を超えた過剰な添加は逆に靱性を劣
化させるため、その上限を0.01%とすることが好まし
い。
【0019】Cu:1.0 %以下、Ni:5.0 %以下、Cr:1.
0 %以下、Mo:1.5 %以下、V:0.2%以下、Nb:0.2
%以下 Cu,Ni,Cr,Mo,NbおよびVは、鋼の強度を上昇させる
共通の作用をもつ元素であり、必要に応じてこれらのう
ちのいずれか1種または2種以上を含有させることが好
ましい。これらの含有範囲の上限を超えて含有させて
も、その作用効果が飽和したり、コスト上昇を招き、経
済的ではない。よって、これら元素の含有量はそれぞ
れ、Cu:1.0 %以下、Ni:5.0 %以下、Cr:1.0 %以
下、Mo:1.5 %以下、Nb:0.2 %以下およびV:0.2 %
以下が好ましい。
【0020】Ceq:Ceqは、溶接硬化性および焼入れ性
の指標であり、母材の強度および靱性、溶接継手の強度
および靱性に影響を与える。Ceqが0.17%未満の場合に
は、母材の強度が低く、また、溶接金属では焼きが入ら
ず粒界フェライトあるいはポリゴナルフェライトの発達
した組織となり、高い靱性が得られない。一方、Ceqが
0.35%を超える場合は、レーザ溶接の特徴である溶接金
属の急速冷却により焼きが入り、マルテンサイトあるい
はベイナイト主体の組織となり、同様に靱性が低下す
る。従って、Ceqは0.17%以上0.35%以下に限定する。
なお、Ceqは、Ceq=C+Mn/6 + (Cr+Mo+V) /5
+ (Cu+Ni) /15で表されるものをさし、Cr、Mo、V、
Cu、Niを積極的に添加しない場合でも分析可能な数値
(いずれも質量%)で含まれる場合にはこの式に算入す
るものとする。
【0021】O:本発明において、溶接金属中の酸素含
有量は高靱性化に対して重要な役割を有している。前述
したように母材中に適当量のTiを含有していると、この
酸素とTiが結合して、溶接金属中には多くのTiを含む酸
化物系介在物が生成される。この酸化物を核生成サイト
として、アシキュラーフェライトの微細な組織が発達
し、溶接金属の靱性が向上する。ただし、酸素含有量が
多すぎると、組織微細化に効果のない介在物数の増加や
粒界フェライトの発達を招き靱性が低下するので、溶接
金属中の酸素含有量は0.0200%を上限とする。
【0022】溶接金属中の適正な酸素含有量は母材のAl
ともバランスさせることが必要である。なぜなら、Alは
Tiよりも酸素との親和力が強いために、溶接中にTiと結
合する有効なO量は母材のAl含有量によって影響され、
影響の程度はAl/O (Alは母材中の質量%、Oは溶接金
属中の質量%) に依存するのである。Al/Oの値が0.5
未満では、溶接金属中の酸素含有量が過剰な状態とな
り、組織の微細化に効果のない介在物数が増加し、粒界
フェライトが発達する。一方、Al/O値が1.2 超では、
Alが過剰な状態となり、組織微細化に有効なTi系の酸化
物介在物が得られにくくなる。したがって、組織微細化
に有効なAl/Oの範囲は0.5〜1.2 である。
【0023】上述したように、溶接金属の酸素含有量と
Al/Oを所定の範囲に調整して、微細アシキュラーフェ
ライトの核生成サイトとしてのTi系酸化物の機能を発揮
させるには、母材の成分組成を適正化するとともに、レ
ーザ溶接の雰囲気を酸化性にすることが必要である。こ
こに、酸化性の雰囲気にするには、ArやHeまたはこ
れらを混合したものにO及び/又はCOを1〜40
vol%を混合することで可能となる。
【0024】また本発明では、完全溶け込み溶接の溶接
継手に限定する。仮に、ビードオンプレートで不完全溶
け込み溶接を行った場合には、溶接ビードの底部分にお
いては熱が平面方向だけでなく深さ方向にも多く拡散し
ていくため、冷却速度がさらに速くなる。その結果、溶
接金属は一層強く焼入れされて硬くなり、靱性が低下し
てしまう。一方、完全溶け込み溶接を行った場合には、
深さ方向への熱の拡散が減少するため、冷却速度が緩和
され、硬さが低下し、靱性の低下を抑制することができ
る。また、完全溶け込み溶接とすることで、ブローホー
ルも低減させることができる。よって、本発明において
は完全溶け込み溶接に限定する。
【0025】上記のような本発明の効果を得るために
は、レーザ溶接における溶接入熱量を4kJ/cm以下とす
るのが好ましい。というのは、本発明で規定する溶接継
手において、溶接入熱量が4kJ/cmを超えると、冷却速
度が遅くなるために粒界フェライトあるいはポリゴナル
フェライト組織の溶接金属中に占める割合が高くなり、
靱性が低下するからである。
【0026】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明を説明す
る。表1に、供試母材の化学組成を示す。これらの供試
材は、真空溶解炉で溶製し、板厚6mmに熱間圧延したも
のである。
【表1】
【0027】また、これらの母材に対して、ビードオン
プレートレーザ溶接を行った。溶接条件は以下のとおり
である。 ・レーザ出力 5.5 kW ・溶接速度 0.8m/min, 1.0 m/min, 1.5 m/min ・シールドガス He, He-5%O, He-10%O ・シールドガス流量 30.0 l/min
【0028】表2に示すシールドガス組成、母材No. 、
溶接入熱量の各組み合わせ条件で完全溶け込みのレーザ
溶接行った。得られた溶接金属について、溶接金属中酸
素含有量、Al/O、溶接金属中に占めるアシキュラーフ
ェライトの割合、延性−脆性破面遷移温度(vTrs)、0℃
における0.5 mmサイドノッチ付きシャルピー吸収エネル
ギー(vEo) を測定した。その結果を表2に併せて示す。
なお、本発明におけるシャルピー衝撃試験は、板厚が6
mmという寸法上の制限と、溶接ビード幅が狭いためクラ
ックが溶接金属から外れてしまうといった問題を回避す
る必要があることから、サイドノッチ付きハーフサイズ
2mmVノッチシャルピー衝撃試験片を用いて行った。
【0029】
【表2】
【0030】表2から明らかなように、発明例において
は、溶接金属の金属組織がアシキュラーフェライト量2
0%以上であり、その延性−脆性破面遷移温度は低く、
シャルピー吸収エネルギーは高く、優れた靱性を有する
溶接継手が得られた。一方、母材のTi含有量、母材のC
eq、Al/O値の少なくとも1つがこの発明範囲から外れ
るなどの比較例では、アシキュラーフェライトの割合が
低く、良好な靱性も得られなかった。
【0031】具体的には、母材のTi含有量が本発明範囲
を外れる溶接金属No. 4で、靱性が劣っているのは、ア
シキュラーフェライト量が少ないことによるものであ
る。また、この場合には、粒界フェライトが大きく発達
した組織も観察された。Al/O値が1.20を超えて本発明
範囲を外れた、溶接金属No. 1、5、8、17では、シャ
ルピー吸収エネルギー(vEo) が高い場合もあるが、延性
−脆性破面遷移温度(vTrs)が劣り、良好な靱性が得られ
なかった。溶接金属13は、母材中のCeqが低く、本発
明範囲を外れて、靱性が劣るものである。これは、アシ
キュラーフェライトの発達した組織とはならず、粒界フ
ェライトあるいはポリゴナルフェライトが発達したこと
で説明される。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
冷却速度が大きい小出力のレーザ溶接においても、溶接
ままの状態で、優れた靱性を有するレーザ継手を得るこ
とが可能になる。したがって、この発明によれば、船
舶、建築、鉄鋼構造物等の高靱性が必要な分野に、現在
商用化の進んでいる6kVまでの比較的小出力のレーザ
溶接機を適用することを可能とし、その工業的意義は極
めて大きい。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 安田 功一 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 Fターム(参考) 4E068 BA00 DB01

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 母材の成分組成が、質量%で、 C:0.01〜0.20%、Si:0.1 〜0.8 %、 Mn:0.5 〜1.7 %、P:0.02%以下、 S:0.01%以下、 Ti:0.005 〜0.050 %、 Al:0.005 〜0.050 % を含有するとともに、これらは下記 (1)式で表される炭
    素当量Ceq:0.17〜0.35%を満たして含有して、残部は
    Feおよび不可避的不純物からなり、完全溶け込み溶接し
    た溶接金属中の酸素含有量が、0.0200質量%以下かつ前
    記母材のAl含有量とこの酸素含有量との比Al/O:0.5
    〜1.2 を満たすことを特徴とする鋼材のレーザ溶接継
    手。 記 Ceq(質量%)=C+Mn/6 + (Cr+Mo+V) /5 + (Cu+Ni) /15 … (1)
  2. 【請求項2】 母材の成分組成が、質量%で、 C:0.01〜0.20%、Si:0.1 〜0.8 %、 Mn:0.5 〜1.7 %、P:0.02%以下、 S:0.01%以下、 Ti:0.005 〜0.050 %、 Al:0.005 〜0.050 %を含み、かつ Cu:1.0 %以下、 Ni:5.0 %以下、 Cr:1.0 %以下、Mo:1.5 %以下、 V:0.2 %以下およびNb:0.2 %以下 から選ばれる1種または2種以上および/またはB:0.
    01%以下を含有するとともに、これらは下記 (1)式で表
    される炭素当量Ceq:0.17〜0.35%を満たして含有し
    て、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、完全溶け
    込み溶接した溶接金属中の酸素含有量が、0.0200質量%
    以下かつ前記母材のAl含有量とこの酸素含有量との比Al
    /O:0.5 〜1.2 を満たすことを特徴とする鋼材のレー
    ザ溶接継手。 記 Ceq(質量%)=C+Mn/6 + (Cr+Mo+V) /5 + (Cu+Ni) /15 … (1)
  3. 【請求項3】 質量%で、 C:0.01〜0.20%、Si:0.1 〜0.8 %、 Mn:0.5 〜1.7 %、P:0.02%以下、 S:0.01%以下、 Ti:0.005 〜0.050 %、 Al:0.005 〜0.050 % を含有するとともに、下記 (1)式で表される炭素当量が
    Ceq:0.17〜0.35%を満たす成分組成の母材を、溶接入
    熱量を4kJ/cm以下、酸化性雰囲気中の下で、溶接金属
    中の酸素含有量が0.0200質量%以下かつ前記母材のAl含
    有量とこの酸素含有量との比Al/Oが0.5 〜1.2 になる
    ように、完全溶け込み溶接することを特徴とする鋼材の
    レーザ溶接方法。 記 Ceq(質量%)=C+Mn/6 + (Cr+Mo+V) /5 + (Cu+Ni) /15 … (1)
JP2000317414A 2000-10-18 2000-10-18 鋼材のレーザ溶接継手およびレーザ溶接方法 Expired - Lifetime JP4438210B2 (ja)

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