JP4438210B2 - 鋼材のレーザ溶接継手およびレーザ溶接方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として船舶、建築、鉄鋼構造物等の分野に用いられる、溶接金属の靱性に優れた鋼材のレーザ溶接継手および溶接方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
レーザ溶接は、高いエネルギー密度を得ることができるため、深溶け込みの高速溶接を可能とし、高能率溶接法として期待される溶接方法である。しかも、このレーザ溶接は、同様の高エネルギー密度を得ることができる電子ビーム溶接とは異なり、必ずしも真空雰囲気を必要としないという利点を有している。
ところで、今日広く使用されている炭酸ガスレーザ発振器の出力は6kW以下のものが主流となっている。しかし、これら炭酸ガスレーザ発振器を用いて鋼材を溶接した溶接継手では、溶接金属の靱性が低く実用に耐えられないといった問題があった。その大きな理由は、レーザ溶接が高エネルギー密度熱源による溶接であるために、同じ厚みの鋼材を溶接するために必要な投入エネルギー量が少なくてすみ、結果的に従来のアーク溶接に比較して溶接金属の冷却速度が大きくなることにある。このような大きな冷却速度のもとで、従来のアーク溶接金属の成分設計を踏襲してレーザ溶接すると、溶接金属はマルテンサイト変態によって著しく硬化し、低い靱性しか得られないのである。なお、単に靱性の高い溶接金属を得るだけであれば、溶接後に後熱処理を行う方法があるが、このような方法は工程を増やすことになり、折角のレーザ溶接の利点を相殺してしまうので実用できるものではない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年では、レーザ発振器の高出力化により、例えば、出力24kW、溶接速度1m/min での炭酸ガスレーザ溶接においては、溶接入熱は14.4kJ/cmとなり、溶接金属の 800℃〜500 ℃までの冷却速度は約60℃/min と、低電流のアーク溶接程度に相当する冷却速度にまで低下する。しかしながら、現在広く使用されている炭酸ガスレーザ発振器は6kW以下のものである。この出力レベルのレーザにおいて鋼材の溶接を行う場合、例えば、出力5.5 kW、溶接速度1m/min で溶接を行った場合は、溶接入熱は3.3 kJ/cmとなり、溶接入熱は非常に小さく、 800℃〜500 ℃の溶接金属の冷却速度は 300℃/sec を超え非常に速い。このために、溶接金属には強烈な焼きが入り、溶接金属には硬くてもろいマルテンサイトの組織が現れ、靱性に優れたレーザ溶接継手を得るのは困難である。
【0004】
冷却速度が大きいために溶接金属の靱性が得られない場合の改善策として、溶接金属の炭素当量を下げる手段が知られている。しかし、単に溶接金属の炭素当量を下げるだけでは、粒界フェライトあるいはポリゴナルフェライト組織が溶接金属中を占める割合が高くなり、靱性が低下してしまう。このような場合、高靱性を得るに有利な溶接金属の金属組織は、サブマージアーク溶接等の分野で多くの研究がなされているように、アシキュラーフェライトの発達した組織である。
【0005】
溶接金属をアシキュラーフェライト主体の組織にするための手段として、Tiを含む酸化物系介在物等をフラックスから溶接金属部に導入することが知られている。このようにTiを有効に利用すれば、Ti系酸化物を核生成サイトとしたアシキュラーフェライトからなる微細な組織を発達させることができる。
しかし、従来のレーザ溶接技術においては、アシキュラーフェライトを主体とした組織を得ることができず、溶接金属の靱性向上が困難であった。その原因は、溶接でのレーザ照射部をアルゴンなどの不活性ガスによりシールドすることにあった。この不活性ガスによるレーザ照射部のシールドにより溶接金属中の酸素量が少なくなり、アシキュラーフェライトの核生成サイトを担う酸化物系介在物を形成することが困難になっていたのである。
【0006】
このような問題を解決する方法として、特開平8−141763号公報には、鋼材の溶接割れ感受性組成 (Pcm) およびTi含有量がある範囲内の鋼材を、酸化性の雰囲気でレーザ溶接することにより、アシキュラーフェライトの発達した組織を得る技術が開示されている。
しかし、単に酸化性の雰囲気にしただけでは、鋼中のCと溶解した酸素との反応により発生したCOやCO2ガスのために、ブローホールやポロシティー等の溶接欠陥をもたらすという新たな問題を生じて、満足な品質の溶接継手を得ることが困難であった。
そこで、本発明は、従来技術が抱えていたこのような事情に鑑みて、低入熱であるが故に冷却速度が著しく大きいレーザ溶接において、溶接ままでも高靱性のレーザ溶接継手を得る技術を提案することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、低入熱で冷却速度が著しく速いレーザ溶接における溶接継手の高靱性化について鋭意検討し、上記課題を解決するに至った。すなわち、本発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1)母材の成分組成が、質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.5〜1.7%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Ti:0.005〜0.050%、Al:0.005〜0.050%を含有するとともに、これらは下記(1)式で表される炭素当量Ceq:0.17〜0.35%を満たして含有して、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、完全溶け込み溶接した溶接金属中の酸素含有量が、0.0200質量%以下かつ前記母材のAl含有量とこの酸素含有量との比Al/O:0.5〜1.2を満たし、溶接金属組織中のアシキュラーフェライト量が20%以上であることを特徴とする鋼材のレーザ溶接継手。
記
Ceq(質量%)=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15
・・・・・・(1)
【0008】
(2)母材の成分組成が、質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.5〜1.7%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Ti:0.005〜0.050%、Al:0.005〜0.050%を含み、かつCu:1.0%以下、Ni:5.0%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.5%以下、V:0.2%以下およびNb:0.2%以下から選ばれる1種または2種以上および/またはB:0.01%以下を含有するとともに、これらは下記(1)式で表される炭素当量Ceq:0.17〜0.35%を満たして含有して、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、完全溶け込み溶接した溶接金属中の酸素含有量が、0.0200質量%以下かつ前記母材のAl含有量とこの酸素含有量との比Al/O:0.5〜1.2を満たし、溶接金属組織中のアシキュラーフェライト量が20%以上であることを特徴とする鋼材のレーザ溶接継手。
記
Ceq(質量%)=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15
・・・・・・(1)
【0009】
(3)質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.5〜1.7%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Ti:0.005〜0.050%、Al:0.005〜0.050%を含有するとともに、下記(1)式で表される炭素当量がCeq:0.17〜0.35%を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成の母材を、溶接入熱量を4kJ/cm以下、酸化性雰囲気中の下で、溶接金属中の酸素含有量が0.0200質量%以下かつ前記母材のAl含有量とこの酸素含有量との比Al/Oが0.5〜1.2になるよう、かつ、溶接金属組織中のアシキュラーフェライト量が20%以上となるように、完全溶け込み溶接することを特徴とする鋼材のレーザ溶接方法。
記
Ceq(質量%)=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15
・・・・・・(1)
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、冷却速度の著しく速いレーザ溶接においても、溶接母材となる鋼材の成分含有量、溶接金属中酸素含有量、母材中Al含有量と溶接金属中酸素含有量の比等を制御することにより、溶接金属組織をアシキュラーフェライトの発達した組織として、優れた靱性を有する溶接継手を提供するものである。以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明における母材の化学組成、溶接金属中酸素含有量、母材中Al含有量と溶接金属中酸素含有量の比等を限定した理由について説明する。以下、質量%は単に%で記述する。
C:0.01〜0.20%
C量は、鋼の強度を調整するのに用いる元素である。その含有量が0.01%未満では必要とする強度が得られないばかりでなく、冷却速度の速いレーザ溶接の下でアシキュラーフェライトの発達した組織とするために酸素を添加すると、粒界フェライトあるいはポリゴナルフェライト主体の組織となり、靱性が低くなってしまう。一方、0.20%を超えて含有すると、焼入れ性が過度に高まるため、高靱性の溶接金属が得られにくくなるほか、溶接割れも起こりやすくなる。
【0012】
Si:0.1 〜0.8 %
Siは、鋼の脱酸および強度確保を目的として添加される。その含有量が0.1 %未満ではその効果が十分ではなく、一方、0.8 %超では、母材、溶接部共に靱性が低下する。よって、Siは0.1 %以上、0.8 %以下とする。
【0013】
Mn:0.5 〜1.7 %
Mnは、鋼の強度確保のために必要な元素であるとともに、ガスシールド雰囲気を後述するような酸化性としたときに、酸化熱を発生して、完全溶け込み溶接を容易に達成することができる。Mn含有量が0.5 %未満では強度確保には効果がなく、一方、1.7 %超では溶接金属の靱性が低下する。よって、Mnは0.5 %以上、1.7 %以下とする。
【0014】
P:0.02%以下
Pは、鋼の靱性を劣化させるので、含有量が少ないほど良い。とくに0.02%を超えて含有すると溶接割れを招くため、この値以下に抑制する。
【0015】
S:0.01%以下
Sは、鋼の靱性を劣化させるので、含有量は少ないほど良い。とくに0.01%を超えて含有すると溶接割れを招くため、この値以下とする。
【0016】
Ti:0.005 〜0.050 %
Tiは、高靱性化に寄与し、本発明において重要な役割を示す元素である。鋼中のTiは酸化性雰囲気で溶接したときに、酸素との親和力の大きな他の元素と共に複合酸化物を形成する。このTi系の複合酸化物はフェライトとの整合性に優れるため、アシキュラーフェライトの核生成サイトとして有効に働く。その結果、溶接金属組織は微細なアシキュラーフェライトの発達した組織となり、高い靱性が得られる。Ti含有量が、0.005 %未満ではその効果は得られず、一方、0.050 %超ではその効果が飽和するだけでなく、不要な析出物を増加させることにもなるため、上限を0.050 %とする。
【0017】
Al:0.005 〜0.050 %
Alも、本発明において重要な元素の1つである。Alは、鋼の脱酸上、0.005 %以上必要である。また、Oとも反応しやすく、ブローホールやポロシティーを低減する効果が期待できる。しかし、AlはTiよりも酸素との親和力が強いため、Al含有量が多いと溶接金属組織の微細化に効果のあるTi系の酸化物が生じにくくなる。したがって、Al含有量の多い鋼でTi系酸化物を生成するに必要な酸素も多くなり、組織微細化に効果の少ない介在物を多く形成することとなり、また、粒界フェライトも発達するため、靱性が低下してしまう。このような悪影響は、0.050 %を超えると顕著になる。よって、鋼中Al含有量の上限は0.050 %とする。
【0018】
B:0.01%以下
Bは、溶接金属中ではオーステナイト粒界に偏析し、粒界フェライトの析出を抑制することにより靱性の向上に寄与するが、0.01%を超えた過剰な添加は逆に靱性を劣化させるため、その上限を0.01%とすることが好ましい。
【0019】
Cu:1.0 %以下、Ni:5.0 %以下、Cr:1.0 %以下、Mo:1.5 %以下、V:0.2%以下、Nb:0.2 %以下
Cu,Ni,Cr,Mo,NbおよびVは、鋼の強度を上昇させる共通の作用をもつ元素であり、必要に応じてこれらのうちのいずれか1種または2種以上を含有させることが好ましい。これらの含有範囲の上限を超えて含有させても、その作用効果が飽和したり、コスト上昇を招き、経済的ではない。よって、これら元素の含有量はそれぞれ、Cu:1.0 %以下、Ni:5.0 %以下、Cr:1.0 %以下、Mo:1.5 %以下、Nb:0.2 %以下およびV:0.2 %以下が好ましい。
【0020】
Ceq:
Ceqは、溶接硬化性および焼入れ性の指標であり、母材の強度および靱性、溶接継手の強度および靱性に影響を与える。Ceqが0.17%未満の場合には、母材の強度が低く、また、溶接金属では焼きが入らず粒界フェライトあるいはポリゴナルフェライトの発達した組織となり、高い靱性が得られない。一方、Ceqが0.35%を超える場合は、レーザ溶接の特徴である溶接金属の急速冷却により焼きが入り、マルテンサイトあるいはベイナイト主体の組織となり、同様に靱性が低下する。従って、Ceqは0.17%以上0.35%以下に限定する。
なお、Ceqは、Ceq=C+Mn/6 + (Cr+Mo+V) /5 + (Cu+Ni) /15で表されるものをさし、Cr、Mo、V、Cu、Niを積極的に添加しない場合でも分析可能な数値(いずれも質量%)で含まれる場合にはこの式に算入するものとする。
【0021】
O:
本発明において、溶接金属中の酸素含有量は高靱性化に対して重要な役割を有している。前述したように母材中に適当量のTiを含有していると、この酸素とTiが結合して、溶接金属中には多くのTiを含む酸化物系介在物が生成される。この酸化物を核生成サイトとして、アシキュラーフェライトの微細な組織が発達し、溶接金属の靱性が向上する。ただし、酸素含有量が多すぎると、組織微細化に効果のない介在物数の増加や粒界フェライトの発達を招き靱性が低下するので、溶接金属中の酸素含有量は0.0200%を上限とする。
【0022】
溶接金属中の適正な酸素含有量は母材のAlともバランスさせることが必要である。なぜなら、AlはTiよりも酸素との親和力が強いために、溶接中にTiと結合する有効なO量は母材のAl含有量によって影響され、影響の程度はAl/O (Alは母材中の質量%、Oは溶接金属中の質量%) に依存するのである。
Al/Oの値が0.5 未満では、溶接金属中の酸素含有量が過剰な状態となり、組織の微細化に効果のない介在物数が増加し、粒界フェライトが発達する。一方、Al/O値が1.2 超では、Alが過剰な状態となり、組織微細化に有効なTi系の酸化物介在物が得られにくくなる。したがって、組織微細化に有効なAl/Oの範囲は 0.5〜1.2 である。
【0023】
上述したように、溶接金属の酸素含有量とAl/Oを所定の範囲に調整して、微細アシキュラーフェライトの核生成サイトとしてのTi系酸化物の機能を発揮させるには、母材の成分組成を適正化するとともに、レーザ溶接の雰囲気を酸化性にすることが必要である。ここに、酸化性の雰囲気にするには、ArやHeまたはこれらを混合したものにO2及び/又はCO2を1〜40 vol%を混合することで可能となる。
【0024】
また本発明では、完全溶け込み溶接の溶接継手に限定する。仮に、ビードオンプレートで不完全溶け込み溶接を行った場合には、溶接ビードの底部分においては熱が平面方向だけでなく深さ方向にも多く拡散していくため、冷却速度がさらに速くなる。その結果、溶接金属は一層強く焼入れされて硬くなり、靱性が低下してしまう。一方、完全溶け込み溶接を行った場合には、深さ方向への熱の拡散が減少するため、冷却速度が緩和され、硬さが低下し、靱性の低下を抑制することができる。また、完全溶け込み溶接とすることで、ブローホールも低減させることができる。よって、本発明においては完全溶け込み溶接に限定する。
【0025】
上記のような本発明の効果を得るためには、レーザ溶接における溶接入熱量を4kJ/cm以下とするのが好ましい。というのは、本発明で規定する溶接継手において、溶接入熱量が4kJ/cmを超えると、冷却速度が遅くなるために粒界フェライトあるいはポリゴナルフェライト組織の溶接金属中に占める割合が高くなり、靱性が低下するからである。
【0026】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明を説明する。表1に、供試母材の化学組成を示す。これらの供試材は、真空溶解炉で溶製し、板厚6mmに熱間圧延したものである。
【表1】
【0027】
また、これらの母材に対して、ビードオンプレートレーザ溶接を行った。溶接条件は以下のとおりである。
・レーザ出力 5.5 kW
・溶接速度 0.8m/min, 1.0 m/min, 1.5 m/min
・シールドガス He, He-5%O2, He-10%O2
・シールドガス流量 30.0 l/min
【0028】
表2に示すシールドガス組成、母材No. 、溶接入熱量の各組み合わせ条件で完全溶け込みのレーザ溶接行った。得られた溶接金属について、溶接金属中酸素含有量、Al/O、溶接金属中に占めるアシキュラーフェライトの割合、延性−脆性破面遷移温度(vTrs)、0℃における0.5 mmサイドノッチ付きシャルピー吸収エネルギー(vEo) を測定した。その結果を表2に併せて示す。
なお、本発明におけるシャルピー衝撃試験は、板厚が6mmという寸法上の制限と、溶接ビード幅が狭いためクラックが溶接金属から外れてしまうといった問題を回避する必要があることから、サイドノッチ付きハーフサイズ2mmVノッチシャルピー衝撃試験片を用いて行った。
【0029】
【表2】
【0030】
表2から明らかなように、発明例においては、溶接金属の金属組織がアシキュラーフェライト量20%以上であり、その延性−脆性破面遷移温度は低く、シャルピー吸収エネルギーは高く、優れた靱性を有する溶接継手が得られた。
一方、母材のTi含有量、母材のCeq、Al/O値の少なくとも1つがこの発明範囲から外れるなどの比較例では、アシキュラーフェライトの割合が低く、良好な靱性も得られなかった。
【0031】
具体的には、母材のTi含有量が本発明範囲を外れる溶接金属No. 4で、靱性が劣っているのは、アシキュラーフェライト量が少ないことによるものである。また、この場合には、粒界フェライトが大きく発達した組織も観察された。
Al/O値が1.20を超えて本発明範囲を外れた、溶接金属No. 1、5、8、17では、シャルピー吸収エネルギー(vEo) が高い場合もあるが、延性−脆性破面遷移温度(vTrs)が劣り、良好な靱性が得られなかった。
溶接金属13は、母材中のCeqが低く、本発明範囲を外れて、靱性が劣るものである。これは、アシキュラーフェライトの発達した組織とはならず、粒界フェライトあるいはポリゴナルフェライトが発達したことで説明される。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、冷却速度が大きい小出力のレーザ溶接においても、溶接ままの状態で、優れた靱性を有するレーザ継手を得ることが可能になる。
したがって、この発明によれば、船舶、建築、鉄鋼構造物等の高靱性が必要な分野に、現在商用化の進んでいる6kVまでの比較的小出力のレーザ溶接機を適用することを可能とし、その工業的意義は極めて大きい。
Claims (3)
- 母材の成分組成が、質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.5〜1.7%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Ti:0.005〜0.050%、Al:0.005〜0.050%を含有するとともに、これらは下記(1)式で表される炭素当量Ceq:0.17〜0.35%を満たして含有して、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、完全溶け込み溶接した溶接金属中の酸素含有量が、0.0200質量%以下かつ前記母材のAl含有量とこの酸素含有量との比Al/O:0.5〜1.2を満たし、溶接金属組織中のアシキュラーフェライト量が20%以上であることを特徴とする鋼材のレーザ溶接継手。
記
Ceq(質量%)=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15
・・・・・・(1) - 母材の成分組成が、質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.5〜1.7%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Ti:0.005〜0.050%、Al:0.005〜0.050%を含み、かつCu:1.0%以下、Ni:5.0%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.5%以下、V:0.2%以下およびNb:0.2%以下から選ばれる1種または2種以上および/またはB:0.01%以下を含有するとともに、これらは下記(1)式で表される炭素当量Ceq:0.17〜0.35%を満たして含有して、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、完全溶け込み溶接した溶接金属中の酸素含有量が、0.0200質量%以下かつ前記母材のAl含有量とこの酸素含有量との比Al/O:0.5〜1.2を満たし、溶接金属組織中のアシキュラーフェライト量が20%以上であることを特徴とする鋼材のレーザ溶接継手。
記
Ceq(質量%)=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15
・・・・・・(1) - 質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.5〜1.7%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Ti:0.005〜0.050%、Al:0.005〜0.050%を含有するとともに、下記(1)式で表される炭素当量がCeq:0.17〜0.35%を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成の母材を、溶接入熱量を4kJ/cm以下、酸化性雰囲気中の下で、溶接金属中の酸素含有量が0.0200質量%以下かつ前記母材のAl含有量とこの酸素含有量との比Al/Oが0.5〜1.2になるよう、かつ、溶接金属組織中のアシキュラーフェライト量が20%以上となるように、完全溶け込み溶接することを特徴とする鋼材のレーザ溶接方法。
記
Ceq(質量%)=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15
・・・・・・(1)
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