JP3884363B2 - レーザ溶接用鉄系溶加材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒素を主成分とするシールドガスを用いて鋼材同士をレーザ溶接する際に用いる鉄系溶加材に関するものであり、より詳細には、溶接作業性が良好であると共に、高靭性で、且つ、ブローホール欠陥の少ない溶接金属を得ることのできるレーザ溶接用鉄系溶加材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼材同士を溶接接合する方法としては、ガスシールドアーク溶接法やサブマージアーク溶接法といったアーク溶接法や、電子ビームやレーザビーム等を用いた高エネルギー密度ビーム溶接法などが挙げられる。高エネルギー密度ビーム溶接法の中でも、レーザ溶接法は、狭幅で深溶込みの溶接を高速で行なうことができ、また、電子ビーム溶接法の様に溶接雰囲気を真空とする必要もないので、産業機械や建設、造船等の幅広い分野での適用が期待されている。殊に近年では、大型レーザ溶接機の開発により厚鋼板同士の溶接も可能となったため、適用分野は一層拡大していくものと期待される。
【0003】
レーザ溶接法で鋼材同士を溶接接合する際には、溶融金属部が急冷され易いため溶接金属部は靭性不足になり易い。この理由として、▲1▼溶接対象となる鋼材には、含有量の差はあるもののCが必須成分として含有まれており、▲2▼レーザ溶接時に形成される溶融金属部の幅が狭いため該溶融金属部は急冷され易く、これら▲1▼と▲2▼の要因が相俟って、溶融金属部が冷却される際にマルテンサイト変態を起こして硬化し、低温割れを発生することが挙げられる。
【0004】
溶接金属部の靭性を向上させる方法としては、例えば、溶接金属部の組織を制御するため溶接時に供給する溶加材の成分組成を調整することが提案されている(例えば、特許文献1や2参照)。また、特許文献3や4には、溶接金属部の組織を制御するためレーザ溶接の対象となる鋼板の成分組成と焼入れ臨界直径(Di値)を制御することが提案されている。
【0005】
さらに、金属同士をレーザ溶接すると溶接金属部にブローホールと呼ばれる気孔欠陥が発生することがあり、このブローホールは重大な溶接欠陥となることから発生を防止する技術が望まれている。例えば特許文献5では、シールドガスの巻き込みに起因するブローホールの発生を防止するため、レーザビームの波長とシールドガス中の窒素比率を規定している。
【0006】
ここで、溶加材を供給しつつレーザ溶接する方法は、溶接対象となる金属材料の成分組成や組織等に関係なく適用できるので、その適用範囲は広い。しかし、非特許文献1には、溶接条件によっては溶加材成分が溶融金属内で均一混合され難いことが指摘されており、溶接金属部の成分組成を均一にして特性のバラツキを低減するには更なる検討を要する。
【0007】
【特許文献1】
特開平9-122957号公報
【特許文献2】
特開平6-670号公報
【特許文献3】
特開平8-276286号公報
【特許文献4】
特開平10-94890号公報
【特許文献5】
特開平9-314368号公報
【非特許文献1】
「全国大会講演概要集」、溶接学会、2002年、第70集、p.18〜19
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、鋼材同士をレーザ溶接する際に用いる鉄系溶加材であって、溶接作業性が良好であると共に、溶接金属部の成分組成を均一にすることにより特性のバラツキを低減して、高靭性の溶接金属を確実に得、さらにはブローホール欠陥の少ない健全な溶接金属を得ることのできるレーザ溶接用鉄系溶加材を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明に係るレーザ溶接用鉄系溶加材とは、窒素を主成分とするシールドガスを用いて鋼材同士をレーザ溶接する際に用いる鉄系溶加材であって、S,SeおよびTeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素:合計で0.03〜0.6%(溶加材の全質量に対する「質量%」の意味、溶加材については以下同じ)、および、Si:1〜8%を含有する点に要旨を有する。
【0010】
本発明のレーザ溶接用鉄系溶加材としては、
▲1▼軟鋼製シース内へ金属粉を充填してなるコアドワイヤであり、前記金属粉が、コアドワイヤの全質量に対して、C:0.3〜1.2%(「質量%」の意味、以下同じ)、および、Mn:15〜30%を含有するか、
▲2▼ステンレス鋼製シース内へ金属粉を充填してなるコアドワイヤであり、前記金属粉が、コアドワイヤの全質量に対して、C:0.3〜1.2%(「質量%」の意味、以下同じ)、および、Mn:5〜30%を含有するか、
▲3▼ソリッドワイヤであり、ソリッドワイヤの全質量に対して、C:0.10〜1.2%(「質量%」の意味、以下同じ)、Mn:5〜40%、Ni:5〜15%、および、Cr:20%以下(0%を含む)を含有する、
ものであることが好ましい。
【0011】
なお、前記ステンレス鋼製シースとしては、オーステナイト系ステンレス鋼を用いることが推奨される。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、様々な角度から検討してきた。その結果、鋼材同士をレーザ溶接する際に窒素を主成分とするシールドガスを用いると共に、レーザ溶接時に用いる鉄系溶加材の成分組成を厳密に規定すれば、上記課題が見事に解決されることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明の構成および作用効果について説明する。
【0013】
一般にレーザ溶接では、シールドガスとしてヘリウム(He)やアルゴン(Ar)といった不活性ガスを使用することで、大気中に含まれる酸素と溶融金属の反応を防止している。しかし、これらの不活性シールドガスが溶融金属内に巻き込まれると、レーザ溶接では溶融金属の冷却速度が非常に大きいため、溶融金属がシールドガスを巻き込んだまま凝固し、ブローホール発生の原因となる。
【0014】
そこで、後述する本発明のレーザ溶接用鉄系溶加材を用いて鋼材同士をレーザ溶接するに当たっては、窒素を主成分とするシールドガスを使用する必要がある。窒素を主成分とするシールドガスを使用すれば、該シールドガスが溶融金属内に巻き込まれたとしても、シールドガス中の窒素分が溶融金属内へ溶解するので、ブローホール欠陥を発生し難くなるからである。
【0015】
すなわち、例えばアーク溶接では、窒素を主成分とするシールドガスは、窒素がブローホールの原因となるので、殆ど用いられていなかったが、本発明者らがレーザ溶接する際に用いるシールドガスについて検討したところ、レーザ溶接するに当たっては、窒素を主成分とするシールドガスを使用すれば、ブローホールが却って抑制されるという新しい知見を得たのである。
【0016】
なお、「窒素を主成分とするシールドガス」とは、シールドガス中の窒素含量が50体積%以上のガスを指し、例えば、100%の窒素、或いは、圧縮空気によるシールドガスなどが非限定的に例示される。
【0017】
本発明の溶加材は、鉄系の溶加材であり、S,SeおよびTeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とSiを含有することが重要である。
【0018】
すなわち、S,SeおよびTeよりなる群から選出される元素は、溶融金属中に溶解して溶融金属の表面張力を著しく低下させることが知られており、溶融金属の表面張力を低下させることで、溶融金属を溶融池の底方向へ流す駆動力を生じさせる。この駆動力に起因して溶融金属の対流が生じ、該溶加材成分は溶融金属内に均一分散される。また、レーザ溶接時には、溶加材と共に母材(鋼材)の一部も溶融するが、上述した様に、溶融した溶加材成分による表面張力低減作用によって溶加材成分と母材成分の混合も加速され、溶接金属の成分組成は均一になる。
【0019】
なお、S,SeおよびTeよりなる群に属する同族元素としては、酸素(O)があり、酸素も溶融金属の表面張力を低下させる作用を有する。ところが、溶融金属の表面張力を低下させる効果は、SやSe,Teに較べて小さく、酸素のみでは溶加材成分を溶融金属内へ均一混合させる程度の駆動力は生じない。しかも、溶融金属内へ溶解させる酸素量を多くしすぎると、ブローホールの発生といった新たな問題が生じる。従って、酸素を溶融金属内へ溶解させて溶融金属の表面張力を低下させ、溶接金属の成分組成を均一にするには、S,SeおよびTeよりなる群から選ばれる元素と併用するのが望ましい。酸素を溶融金属内へ含有させる方法としては、例えば、シールドガス中に酸素源(例えば、酸素ガスやCO2ガス等)を添加する方法や、フラックスコアドワイヤ内に酸化物をフラックスとして充填する方法などが挙げられる。
【0020】
また、Siは、溶融金属の流動性を高める元素であり、溶融金属の流動性が高くなると溶融した溶加材成分が溶融金属内に均一混合され易くなるので、本発明の溶加材では必須元素である。
【0021】
この様な観点から、本発明のレーザ溶接用鉄系溶加材は、S,SeおよびTeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素:合計で0.03〜0.6%、および、Si:1〜8%を含有する必要がある。このように数値範囲を限定した理由を次に示す。
【0022】
S,SeおよびTeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素:合計で 0.03 0.6
S,SeおよびTeは、溶融金属の表面張力を低下させる元素であり、溶融金属にこれらのうち1種以上の元素を含有させることで、溶加材成分を溶接金属内へ均一に混合させることができる。但し、溶加材成分を均一混合させるための駆動力を得るには、当該元素が溶融金属へ移行しなければならないが、これらの元素は何れも酸化され易く、シールドガス中に含まれる酸素や、溶接時に巻き込まれる大気中の酸素と反応して容易に消費されるため、溶接金属中への歩留まりが悪い。従って、溶接金属への歩留まりを考慮すると、0.03%以上、好ましくは0.05%以上含有させる必要がある。一方、これらの元素の蒸気圧は何れも比較的高いので、含量が多くなると蒸発量が増大してスパッタ等を多発し、溶接作業性を著しく劣化させる。従って、含量は0.6%以下、好ましくは0.5%以下に抑制する必要がある。
【0023】
なお、溶融金属の表面張力低減効果は、SよりもSeやTeの方が大きいが、SeやTeはSより酸化され易いばかりでなく蒸気圧も高いため、溶接金属への歩留まりが極めて悪い。そのため溶接金属へ含有させるSeやTeは、Sよりも少量でその添加効果を発揮するが、SeやTeの歩留まり率を考慮すると溶加材への含有量はSと同程度にする必要がある。
【0024】
また、S,SeおよびTeよりなる群から選ばれる元素は、それぞれ単独で溶加材へ含有させることにより所期の効果を発揮させることができるが、これらの元素群より任意に選ばれる2種以上を溶加材へ複合添加すると、溶融金属の表面張力低減効果はさらに大きくなる。
【0025】
Si: 1 8
Siは、鉄系溶融金属の粘性を低下させて流動性を高める元素であり、溶融した溶加材成分が溶融金属内へ均一混合するのを促進する。またSiは、強力な脱酸効果を有する元素であり、気泡の発生を防止したり、溶接金属の酸化を抑えて強度低下を防止する。この様な添加効果を得るには、溶加材の全質量に対して1%以上、好ましくは1.1%以上含有させる必要がある。含有量が1%未満では、溶融金属の粘性が充分に低下せず、溶融した溶加材成分が溶融金属内へ充分に混合しないからである。一方、Si含量が8%を超えると、溶接金属の靭性が劣化して溶接金属に割れが発生し易くなる。従って、Si含量は8%以下、好ましくは7%以下に抑制すべきである。
【0026】
本発明におけるレーザ溶接用鉄系溶加材の形態は特に限定されず、例えば、コアドワイヤやソリッドワイヤの形態を採用すれば良い。以下、本発明におけるレーザ溶接用鉄系溶加材の具体的な形態について説明する。
【0027】
本発明におけるレーザ溶接用鉄系溶加材の具体的な形態の一例として、軟鋼製シース内へ金属粉を充填してなるコアドワイヤが挙げられる。
【0028】
レーザ溶接用鉄系溶加材が、軟鋼製シース内へ金属粉を充填してなるコアドワイヤである場合は、前記金属粉が、コアドワイヤの全質量に対して、C:0.3〜1.2%およびMn:15〜30%を含むものが好ましい。金属粉の成分組成をこの様な範囲に定めた理由は、次に示す通りである。
【0029】
C: 0.3 1.2
Cは、オーステナイト形成元素であり、溶接金属のオーステナイト化に寄与する元素である。こうしたCの添加効果を有効に発揮させるには、軟鋼製シース内へ充填される金属粉が、コアドワイヤの全質量に対して、0.3%以上含有することが好ましく、より好ましくは0.4%以上含有することが推奨される。一方、前記金属粉が含有するC量の上限は特に限定されないが、金属粉がコアドワイヤの全質量に対して1.2%超のCを含有しても添加効果は飽和するので、好ましい上限は1.2%、より好ましい上限は1.1%である。
【0030】
但し、金属粉に含有させるC量は、溶接対象となる鋼材(母材)に含まれるC量も考慮して定めるのが好ましく、例えば、鋼材中に含まれるC量が比較的多い場合は(例えば、C量が鋼材の全質量に対して0.5〜0.7%程度)、金属粉へコアドワイヤの全質量に対して0.3%程度のCを含有させることにより溶接金属のオーステナイト化を達成できる。これに対し、鋼材中に含まれるC量が比較的少ない場合は(例えば、C量が鋼材の全質量に対して0.002〜0.03%程度)、溶接金属のオーステナイト化を達成するには、金属粉へコアドワイヤの全質量に対して1.2%程度のCを含有させるのがよい。
【0031】
Mn: 15 30
Mnもオーステナイト形成元素であり、金属粉に適量のMnを含有させることで溶接金属の組織はオーステナイト単相組織またはオーステナイトとマルテンサイトの混合組織となり、マルテンサイト変態が抑制されて、低温割れの発生を防止できる。またMnは、Sと反応してMnSを形成することで、溶接金属の高温割れを抑制する作用も有している。さらにMnは、溶融金属内への窒素の溶解度を高めると共に脱酸剤としても作用し、ブローホールの抑制にも寄与する。これらの効果を有効に発揮させるには、金属粉がコアドワイヤの全質量に対して15%以上含有することが好ましい。Mn量が15%未満では、溶接金属に歩留まるMn量が蒸発等の影響により不足する場合があるからである。特に、溶融金属内への窒素の溶解度を高めてブローホールの発生を抑制するには、金属粉へコアドワイヤの全質量に対して20%以上含有させるのがより好ましい。一方、金属粉へMnを多く含有させてもその添加効果は飽和するので、軟鋼製シースに含まれているMn量を考慮すると、金属粉に含有させるMnはコアドワイヤの全質量に対して30%以下とするのが好ましく、より好ましくは28%以下である。
【0032】
なお、前記金属粉は上記化学成分を含有するものであり、残部は基本的に鉄および不可避不純物からなるが、本発明の効果を損なわない範囲で他の元素を含有させても良い。
【0033】
軟鋼製シース
軟鋼製シースとしては、その成分組成は特に限定されず、公知のものを用いれば良い。また、軟鋼製シースと金属粉の割合や、軟鋼製シース内への金属粉の充填率は特に限定されない。
【0034】
本発明におけるレーザ溶接用鉄系溶加材の具体的な形態の他の例として、ステンレス鋼製シース内へ金属粉を充填してなるコアドワイヤが挙げられる。
【0035】
レーザ溶接用鉄系溶加材が、ステンレス鋼製シース内へ金属粉を充填してなるコアドワイヤである場合は、前記金属粉が、コアドワイヤの全質量に対して、C:0.3〜1.2%およびMn:5〜30%を含むものが好ましい。金属粉の成分組成をこの様な範囲に定めた理由は、次に示す通りである。
【0036】
ステンレス鋼製シース
鋼材同士をレーザ溶接するときに鉄系溶加材を用いる場合、溶込み深さを確保するには、溶加材の供給量が制限される。このため上述したC−高Mn系溶加材(軟鋼製シース内へ金属粉を充填してなるコアドワイヤ)では、溶接金属の組織を完全にオーステナイト化するのが難しいときがあり、溶接金属中にマルテンサイトが生成しやすくなるため靭性不足になり易い。そこで、本発明者らは、鋼材同士をレーザ溶接する際に用いる溶加材であって、Cと高Mnを含有すると共に、溶加材の供給量が少なくても靭性に優れる溶接金属を提供できる溶加材について検討した。その結果、前記軟鋼製シースの代わりにステンレス鋼製シースを使用すれば、溶加材の供給量が少なくても靭性に優れた溶接金属が得られることを知った。ステンレス鋼製シースの種類は特に限定されず、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼製シースやマルテンサイト系ステンレス鋼製シース、フェライト系ステンレス鋼製シース等が挙げられる。そして、更に検討を重ねた結果、ステンレス鋼製シースの中でも、オーステナイト系ステンレス鋼製シースが特に好ましいことを確認した。
【0037】
すなわち、一般にオーステナイト系ステンレス鋼は、Crと共に7%程度以上のNiを含有しているので、オーステナイト系ステンレス鋼を溶加材のシースとして用いると、このシースから溶接金属へNiを添加することができ、溶接金属のオーステナイト化が一層促進される。従って、溶加材の供給量が少なくても溶接金属をオーステナイト化でき、溶接金属の靭性を高めることができるのである。また、オーステナイト系ステンレス鋼は、Niの他にCrも含有しているので、溶融鉄への窒素の溶解度を高めることができ、そのためブローホールの発生も抑制できる。
【0038】
なお、ステンレス鋼製シースとしては、その成分組成は特に限定されず、公知のものを用いれば良い。また、ステンレス鋼製シースと金属粉の割合や、ステンレス鋼製シース内への金属粉の充填率は特に限定されない。
【0039】
C: 0.3 1.2
Cは、オーステナイト形成元素であり、溶接金属のオーステナイト化に寄与する元素である。こうしたCの添加効果を有効に発揮させるには、ステンレス鋼製シース内へ充填される金属粉が、コアドワイヤの全質量に対して、0.3%以上含有することが好ましく、より好ましくは0.4%以上含有することが推奨される。一方、前記金属粉が含有するC量の上限は特に限定されないが、金属粉がコアドワイヤの全質量に対して1.2%超のCを含有しても添加効果は飽和するので、好ましい上限は1.2%、より好ましい上限は1.1%である。
【0040】
なお、金属粉に含有させるC量は、上述した様に、溶接対象となる鋼材(母材)に含まれるC量も考慮して定めるのが好ましい。
【0041】
Mn: 5 30
Mnもオーステナイト形成元素であり、金属粉に適量のMnを含有させることで溶接金属の組織はオーステナイト単相組織またはオーステナイトとマルテンサイトの混合組織となり、マルテンサイト変態が抑制されて、低温割れの発生を防止できる。またMnは、Sと反応してMnSを形成することで、溶接金属の高温割れを抑制する作用も有している。さらにMnは、溶融金属内への窒素の溶解度を高めると共に脱酸剤としても作用し、ブローホールの抑制にも寄与する。これらの効果を有効に発揮させるには、金属粉がコアドワイヤの全質量に対して5%以上含有することが好ましい。すなわち、シース材としてステンレス鋼を用いた場合であって、特にオーステナイト系ステンレス鋼を用いたときは、該オーステナイト系ステンレス鋼に7%程度以上のNiが含まれているので、溶接金属のオーステナイト化が促進される。従って、金属粉が含有するMn量は、シース材として軟鋼を用いるときよりも少なくできる。但し、Mn量が5%未満では、溶接金属に歩留まるMn量が蒸発等の影響により不足する場合があるからである。特に、溶融金属内への窒素の溶解度を高めてブローホールの発生を抑制するには、金属粉へコアドワイヤの全質量に対して15%以上含有させるのがより好ましい。一方、金属粉へMnを多く含有させてもその添加効果は飽和するので、ステンレス鋼製シースに含まれているMn量を考慮すると、金属粉に含有させるMnはコアドワイヤの全質量に対して30%以下とするのが好ましく、より好ましくは28%以下である。
【0042】
なお、前記金属粉は上記化学成分を含有するものであり、残部は基本的に鉄および不可避不純物からなるが、本発明の効果を損なわない範囲で他の元素を含有させても良い。
【0043】
本発明のコアドワイヤにおいては、上記S,SeおよびTeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素やSiを含有させる部位は特に限定されず、シースおよび/またはシース内へ充填する金属粉に含有させれば良い。
【0044】
ところで、上記では、レーザ溶接用鉄系溶加材がコアドワイヤの場合について説明したが、コアドワイヤは、ワイヤ供給時におけるワイヤの指向性に若干の問題が生じることがある。すなわち、レーザ溶接時に溶加材としてコアドワイヤを用いると、コアドワイヤはワイヤに残留する応力が原因となって曲がりやすいので、当該ビームからワイヤが脱離しやすく、特にレーザが低出力のときにこの脱離は顕著となる。また、コアドワイヤには、シースに合わせ目(継ぎ目)があるので、この合わせ目から若干の空気がシース内へ入り、シース内の金属粉が吸湿して酸化され、ブローホールの原因になる。さらに、ワイヤの安定供給を目指すと、ワイヤ径は小さい方が好ましいが、コアドワイヤではシース内に金属粉を充填する必要があるので、ワイヤ径には限界がある。
【0045】
この様な若干の問題を解決するには、レーザ溶接用鉄系溶加材をソリッドワイヤとするのがよい。すなわち、レーザ溶接時のレーザが低出力ビームであっても、ソリッドワイヤであればビームの狙い位置にワイヤを安定して供給することが可能となり、当該ビームからワイヤが脱離し難くなるからである。また、ソリッドワイヤには、シースの合わせ目(継ぎ目)が無いので金属粉の吸湿といった不具合も生じない。さらに、金属粉を用いていないので、ワイヤ径も小さくできる。
【0046】
本発明におけるレーザ溶接用鉄系溶加材が、ソリッドワイヤの場合は、ソリッドワイヤの全質量に対して、C:0.10〜1.2%、Mn:5〜40%、Ni:5〜15%、Cr:20%以下(0%を含む)を含有するものが好ましい。ソリッドワイヤの成分組成をこの様な範囲に定めた理由は、下記の通りである。
【0047】
C: 0.10 1.2
Cは、オーステナイト形成元素であり、溶接金属のオーステナイト化に寄与する元素である。こうしたCの添加効果を有効に発揮させるには、ソリッドワイヤの全質量に対して、0.10%以上含有することが好ましく、より好ましくは0.2%以上含有することが推奨される。一方、C量の上限は特に限定されないが、ソリッドワイヤの全質量に対して1.2%超のCを含有しても添加効果は飽和するので、好ましい上限は1.2%、より好ましい上限は1.1%である。
【0048】
但し、ソリッドワイヤに含有させるC量は、上述した様に、溶接対象となる鋼材(母材)に含まれるC量も考慮して定めるのが好ましい。
【0049】
Mn: 5 40
Mnもオーステナイト形成元素であり、ソリッドワイヤに適量のMnを含有させることで溶接金属の組織はオーステナイト単相組織またはオーステナイトとマルテンサイトの混合組織となり、マルテンサイト変態が抑制されて、低温割れの発生を防止できる。またMnは、Sと反応してMnSを形成することで、溶接金属の高温割れを抑制する作用も有している。さらにMnは、溶融金属内への窒素の溶解度を高めると共に脱酸剤としても作用し、ブローホールの抑制にも寄与する。これらの効果を有効に発揮させるには、ソリッドワイヤの全質量に対して5%以上含有することが好ましい。Mn量が5%未満では、溶接金属に歩留まるMn量が蒸発等の影響により不足する場合があるからである。特に、溶融金属内への窒素の溶解度を高めてブローホールの発生を抑制するには、ソリッドワイヤの全質量に対して10%以上含有させるのがより好ましい。一方、Mnの添加効果は約40%で飽和すると共に、Mn量がそれ以上になると伸線性が劣化して、ソリッドワイヤ自体の製造が困難になるので、含量は40%以下とするのが好ましく、より好ましくは35%以下に抑えれば良い。
【0050】
Ni: 5 15
Niは、溶接金属のオーステナイト化を促進すると共に、溶接金属の靭性を高める元素である。従って、Niを含有させることにより溶接金属の低温割れ防止効果がより高まる。その効果を発揮させるには、溶接金属内への歩留まりを考慮すると、ソリッドワイヤの全質量に対して5%以上含有させることが好ましく、より好ましくは6%以上含有させるのが推奨される。しかし、15%を超えて含有させてもその添加効果は飽和すると共に、経済的に無駄となるので、好ましくは15%以下、より好ましくは14%以下に抑えるのが望ましい。
【0051】
Cr: 20 %以下( 0 %を含む)
Crは、溶接金属の耐食性を高めると共に、溶融鉄中への窒素の溶解度を高める元素である。溶融金属内へCrを溶解させると、窒素吸収作用によってブローホールの発生を防止できる。しかし、Crはフェライト形成元素であるため溶接金属のオーステナイト化を阻害し、溶接金属の靭性を劣化させる。従って、Cr含量は20%以下に抑えるのが好ましく、より好ましくは18%以下に抑えるのが推奨される。なお、Crを含有させるときの下限値は特に限定されないが、溶融鉄中への窒素の溶解度向上作用によりブローホールの発生を防止するには、5%以上含有させることが望まれる。
【0052】
なお、前記ソリッドワイヤは上記化学成分を含有するものであり、残部は基本的に鉄および不可避不純物からなるが、本発明の効果を損なわない範囲で他の元素を含有させても良い。
【0053】
本発明で溶接の対象となる鋼材は、特に限定されるものでなく、機械構造用炭素鋼や合金鋼材(例えば、Ni−Cr鋼、Ni−Cr−Mo鋼、Cr鋼、Cr−Mo鋼、Mn鋼、Mn−Cr鋼など)を用いたり、圧延鋼材として、一般構造用圧延鋼材や、溶接構造用圧延鋼材、建築構造用圧延鋼材などを用いることができる。
【0054】
また、溶接方法としては、熱源としてレーザを用いるものであれば特に限定されず、例えば、汎用されているCO2レーザ、YAGレーザ、半導体レーザ等を熱源として用いるレーザ溶接法を採用できる。
【0055】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0056】
実施例1
鋼材(鋼種:JIS規格 SM490)同士を、鉄系溶加材を用いてレーザ溶接した。鋼材の大きさは、W:100mm×L:300mm×T:12mmである。
【0057】
レーザ溶接に用いた鉄系溶加材は、軟鋼製シース内に金属粉を充填してなるコアドワイヤであり、その成分組成を表1に示す。但し、表1に示したCおよびMn量は、軟鋼製シースへ充填した金属粉が含有する量であり、その他の元素は軟鋼製シースおよび該軟鋼製シースへ充填した金属粉が含有する合計量であり、何れもコアドワイヤの全質量に対する割合である。なお、ワイヤ径はφ1.2mmである。
【0058】
【表1】
Figure 0003884363
【0059】
レーザ溶接は突き合わせ溶接とし、溶接条件は次の通りとした。なお、レーザ溶接時に用いたシールドガスの種類は表2に示した。
【0060】
<レーザ溶接条件>
・レーザの種類:CO2
・溶接速度:1.5m/min
・出力:8kW
・シールドガス流量:20L/min
・溶接材料供給速度:1〜4m/min
【0061】
レーザ溶接時の様子を図1に示す。図中、1は母材(鋼材)、2は溶接材料、3はレーザ取出ノズル、4はレーザビーム、5は溶接ビード、6は溶加材供給トーチを夫々示しており、母材は図中に示した矢印7の方向へ移動している。すなわち、母材の移動速度が上記溶接速度となる。
【0062】
レーザ溶接時における溶接作業性を評価すると共に、得られた溶接金属内に生じた低温割れの有無およびブローホール数を測定した。
【0063】
溶接作業性は、目視にてスパッタ、ヒュームの発生程度を観察して評価した。評価結果を表2に示す。表中、○は溶接作業性良好、×は溶接作業性不良、である。
【0064】
溶接金属内に生じた低温割れの有無およびブローホール数は、溶接金属部のX線検査、断面検査および浸透探傷検査で確認した。溶接金属内に生じた低温割れの有無を観察した結果を表2に示す。表中、○は低温割れが無い場合、×は低温割れが有る場合、を夫々示している。
【0065】
溶接金属内に生じたブローホール数は、ビード30mm長さあたりのブローホール数(個/30mm)を算出し、ブローホール数が24個以下の場合を合格、25個以上の場合を不合格とした。評価結果を表2に示す。なお、ブローホール数は、下記に示す様にランク分けして評価している。
【0066】
<ランク分け>
◎◎:ブローホール数が0個(合格)
◎ :ブローホール数が1〜5個(合格)
○○:ブローホール数が6〜10個(合格)
○ :ブローホール数が11〜24個(合格)
× :ブローホール数が25個以上(不合格)
【0067】
溶接金属内に低温割れが認められず、ブローホール数が24個以下(合格)の試験片については、さらに溶接金属断面の硬度を測定し、特性のバラツキを調べた。特性のバラツキとは、溶接金属の中央部を0.5mm間隔でビッカース硬度を測定(荷重200g)し、硬度の最大値と最小値の差が300以下のものをバラツキ無し(○)、300超のものをバラツキ有り(×)とした。評価結果を表2に示す。
【0068】
【表2】
Figure 0003884363
【0069】
表2から次の様に考察できる。
【0070】
No.1〜3は、本発明の要件を満足する例であり、溶接作業性が良好であると共に、溶接金属に低温割れは観察されなかった。また、レーザ溶接時にシールドガスとして窒素を主成分とするガスを用いているので、ブローホールの発生数も少ない。さらに、溶接金属断面における硬度バラツキが少ない。特に、溶加材へ含有させるMn量を20%以上とした場合は、ブローホール抑制効果が大きいことがわかる。
【0071】
No.4〜12は、本発明で規定する何れかの要件を満足しない例であり、溶接作業性不良、低温割れ発生、ブローホール発生、特性のバラツキ発生のうち少なくとも一つが認められる。
【0072】
すなわち、No.4と5は、溶加材に含有させるC量またはMn量が本発明で規定する範囲から逸脱し、少ない場合の例であり、溶接金属の靭性が低下して低温割れが発生している。
【0073】
No.6と7は、溶加材に含有させるSi量が本発明で規定する範囲から外れる例である。No.6は、Si含量が少なく、溶加材成分が溶接金属内に均一に混合しないので、溶接金属の特性にバラツキを生じている。No.7は、Si含量が多く、溶接金属の靭性が低下して低温割れが発生した。
【0074】
No.8と9は、溶加材として含有するS,SeおよびTeよりなる群から選ばれる元素の含量が、本発明で規定する範囲から外れる例である。No.8は、前記含量が少ないので、溶融金属へ溶加材成分が均一混合せず、溶接金属の特性にバラツキが生じた。No.9は、前記含量が多いので、溶接作業性が悪かった。
【0075】
No.10は、シールドガスの影響を示す例であり、溶加材の成分組成は本発明の要件を満足しているが、シールドガスとしてArを用いているので、ブローホールが多量に発生している。
【0076】
No.11〜12は、溶加材を用いずレーザ溶接した例であり、低温割れが発生している。特にNo.12は、シールドガスとしてArを用いているので、ブローホールが多量に発生している。
【0077】
実施例2
成分組成の異なる鋼材(SM490とS45C)同士を、鉄系溶加材を用いてレーザ溶接した。SM490とS45Cの大きさは、W:100mm×L:500mm×T:20mmである。
【0078】
レーザ溶接に用いた鉄系溶加材は、オーステナイト系ステンレス鋼(JIS規格のSUS304)製シース内に金属粉を充填してなるコアドワイヤであり、その成分組成を表3に示す。表3に示したCおよびMn量は、オーステナイト系ステンレス鋼製シースへ充填した金属粉が含有する量であり、その他の元素はオーステナイト系ステンレス鋼製シースおよび該オーステナイト系ステンレス鋼製シースへ充填した金属粉が含有する合計量であり、何れもコアドワイヤの全質量に対する割合である。なお、ワイヤ径はφ1.2mmである。
【0079】
【表3】
Figure 0003884363
【0080】
レーザ溶接は突き合わせ溶接とし、溶接条件は次の通りとした。なお、レーザ溶接時に用いたシールドガスの種類は表4に示した。また、レーザ溶接時の様子は前記図1と同じである。
【0081】
<レーザ溶接条件>
・レーザの種類:YAG
・溶接速度:1m/min
・出力:4kW
・シールドガス流量:20L/min
・溶接材料供給速度:1〜4m/min
【0082】
前記実施例1と同様に、溶接作業性、溶接金属内に生じた低温割れの有無、溶接金属内に生じたブローホール数、特性のバラツキについて測定し、測定結果を表4に示す。
【0083】
【表4】
Figure 0003884363
【0084】
表4から次の様に考察できる。
【0085】
実施例2では、シールドガスとして不活性ガスを含まない窒素を主成分とするガスをレーザ溶接時に用いているので、ブローホールの発生を抑制できている。
【0086】
No.13〜17は、本発明の要件を満足する例であり、溶接作業性が良好であると共に、溶接金属に低温割れは観察されなかった。また、溶接金属断面における硬度バラツキが少ない。なお、No.17は、シース材としてNiを含まない13Cr鋼を用い、金属粉としてNiを含有させたが、溶加材の全質量に対してNi量を適切に調整してやれば、シース材としてNiを含有させる場合(No.13〜16)と同等の効果が得られることが分かった。また、溶加材へ含有させるMn量を15%以上とした場合は、ブローホール抑制効果が大きいことがわかる。
【0087】
No.18〜22は、本発明で規定する何れかの要件を満足しない例であり、溶接作業性不良、低温割れ発生、特性のバラツキ発生のうち少なくとも一つが認められる。
【0088】
すなわち、No.18は、溶加材に含有させるC量とSi量が本発明で規定する範囲から外れる例であり、C含量が本発明で規定する範囲より少なく、さらにはSi量が本発明で規定する範囲より多いため溶接金属の靭性が低下して低温割れが発生している。
【0089】
No.19は、溶加材として含有するSi量が少なく、溶加材成分が溶接金属内に均一に混合しないので、溶接金属の特性にバラツキを生じている。
【0090】
No.20は、溶加材として含有させるMn量が本発明で規定する範囲から外れる例であり、Mn含量が本発明で規定する範囲より少ないため溶接金属の靭性が低下して低温割れが発生している。
【0091】
No.21〜22は、溶加材に含有させるS,SeおよびTeよりなる群から選ばれる元素の含量が、本発明で規定する範囲から外れる例である。No.21は、前記含量が多いので、溶接作業性が悪かった。No.22は、前記含量が少ないので、溶融金属へ溶加材成分が均一混合せず、溶接金属の特性にバラツキが生じた。
【0092】
実施例3
鋼材(SS400)同士を、鉄系溶加材を用いてレーザ溶接した。鋼材の大きさは、W:100mm×L:500mm×T:9mmである。
【0093】
レーザ溶接に用いた鉄系溶加材は、ソリッドワイヤであり、その成分組成を表5に示す。なお、ワイヤ径はφ1mmである。
【0094】
【表5】
Figure 0003884363
【0095】
レーザ溶接は突き合わせ溶接とし、溶接条件は次の通りとした。シールドガスとしては、不活性ガスを含まない窒素ガスを用いた。また、レーザ溶接時の様子は前記図1と同じである。
【0096】
<レーザ溶接条件>
・レーザの種類:YAG
・溶接速度:2m/min
・出力:4.5kW
・シールドガス流量:20L/min
・溶接材料供給速度:1〜4m/min
【0097】
前記実施例1と同様に、溶接作業性、溶接金属内に生じた低温割れの有無、溶接金属内に生じたブローホール数、特性のバラツキについて測定し、評価結果を表6に示す。
【0098】
【表6】
Figure 0003884363
【0099】
表6から次の様に考察できる。
【0100】
実施例3では、シールドガスとして不活性ガスを含まない窒素ガスをレーザ溶接時に用いているので、ブローホールの発生を抑制できている。
【0101】
No.23〜27は、本発明の要件を満足する例であり、溶接作業性が良好であると共に、溶接金属に低温割れは観察されなかった。また、溶接金属断面における硬度バラツキが少ない。特に、溶加材へ含有させるMn量を10%以上、Cr量を5%以上とした場合は、ブローホール抑制効果が大きいことがわかる。
【0102】
No.28〜33は、本発明で規定する何れかの要件を満足しない例であり、溶接作業性不良、低温割れ発生、特性のバラツキ発生のうち少なくとも一つが認められる。
【0103】
すなわち、No.28は、溶加材として含有するC,Mn,Si量が本発明で規定する範囲から外れる例であり、C,Mn含量が前記範囲より少ないため溶接金属部の靭性が低下して低温割れが発生している。なお、溶接金属部の断面における硬度を測定し、特性のバラツキを調べたところ、Si含量が少ないため硬度バラツキが大きかった。
【0104】
No.29は、溶加材として含有するSi量が本発明で規定する範囲から外れる例であり、Si含量が多いため溶接金属部の靭性が低下して低温割れが発生した。
【0105】
No.30は、溶加材として含有するCr量が本発明で規定する範囲から外れる例であり、Cr量が多いため溶接金属部を充分にオーステナイト化できず、溶接金属部の靭性が低下して低温割れが発生した。
【0106】
No.31は、溶加材として含有するNi量が本発明で規定する範囲から外れる例であり、Ni量が少ないため溶接金属部をオーステナイト化できず、溶接金属部の靭性が低下して低温割れが発生した。
【0107】
No.32〜33は、溶加材として含有するS,SeおよびTeよりなる群から選ばれる元素の含量が、本発明で規定する範囲から外れる例である。No.32は、前記含量が多いので、溶接作業性が悪かった。No.33は、前記含量が少ないので、溶融金属へ溶加材成分が均一混合せず、溶接金属の特性にバラツキが生じた。
【0108】
【発明の効果】
本発明によれば、鋼材同士をレーザ溶接する際に用いる鉄系溶加材であって、溶接作業性が良好であると共に、溶接金属部の成分組成を均一にすることにより特性のバラツキを低減して、高靭性の溶接金属を確実に得、さらにはブローホール欠陥の少ない健全な溶接金属を得ることのできるレーザ溶接用鉄系溶加材を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 レーザ溶接時の様子を示す模式図である。
【符号の説明】
1 母材(鋼材)
2 溶接材料
3 レーザ取出ノズル
4 レーザビーム
5 溶接ビード
6 溶加材供給トーチ

Claims (2)

  1. 窒素を主成分とするシールドガスを用いて鋼材同士をレーザ溶接する際に用いる鉄系溶加材であって、
    S,SeおよびTeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素:合計で0.03〜0.6%(溶加材の全質量に対する「質量%」の意味、溶加材については以下同じ)
    Si:1〜8%
    C :0.10〜1.2%、
    Mn:5〜40%、
    Ni:5〜15%、および、
    Cr:20%以下(0%を含む)を含有し、
    残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴とするレーザ溶接用鉄系溶加材。
  2. 請求項1に記載のレーザ溶接用鉄系溶加材が、ソリッドワイヤであるレーザ溶接用鉄系溶加材。
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