JP2003169967A - 人形毛髪用繊維 - Google Patents

人形毛髪用繊維

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JP2003169967A
JP2003169967A JP2001373812A JP2001373812A JP2003169967A JP 2003169967 A JP2003169967 A JP 2003169967A JP 2001373812 A JP2001373812 A JP 2001373812A JP 2001373812 A JP2001373812 A JP 2001373812A JP 2003169967 A JP2003169967 A JP 2003169967A
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fiber
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JP2001373812A
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Genichi Uemoto
元一 上本
Masahiko Ino
雅彦 伊能
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Asahi Kasei Corp
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Asahi Kasei Corp
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 地球環境に対する負荷を低減でき、人形毛髪
用に用いる事の出来る性能を備えた繊維を提供する。 【解決手段】 生分解性樹脂を繊維材料として用い、生
分解性樹脂がポリ乳酸系樹脂であり、繊維径が0.01
〜0.15mmであり、かつ繊維径と見掛ヤング率の関
係が下記式(1)を満足する事を特徴とする人形毛髪用
繊維。 130≦Ym×√D≦1000 (1) D:繊維径(mm) Ym:見掛ヤング率(N/mm

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、人形毛髪用繊維に
関する。詳しくは、人形毛髪用繊維として重要な要素で
ある光沢、透明性等の外観とヘアースタイリング性に優
れた生分解性の人形毛髪用繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より人形毛髪用繊維としては、光
沢、透明性等の外観やヘアースタイリング性に優れるポ
リ塩化ビニリデン系繊維やモダアクリル系繊維に代表さ
れる合成繊維が広く用いられている。一方、近年、人形
等玩具に用いられている塩化ビニル系樹脂について、廃
棄時の処理(焼却、地中投棄等)における地球環境に対
する負荷低減を図る為、脱塩化ビニル素材への開発が進
みつつある。人形本体の素材については、オレフィン系
樹脂の開発と切り替えが始まっているが人形毛髪につい
ては、その特殊な要求性能として、優れた風合を有する
外観(透明性、光沢、着色性)とヘアースタイリング性
を兼備していることが必要であり、適した代替素材が見
つかっていないのが現状である。人形毛髪の脱塩化ビニ
ル素材の探求、研究にあたり、最近開発が活発に行われ
ている生分解性樹脂に着目した。
【0003】これらの生分解性樹脂を繊維とした場合、
上記の従来の人形毛髪用繊維に比較して光沢、透明性に
劣る場合がある。さらに生分解性樹脂は、一般に剛性が
低く柔らかいものが多く、人形毛髪用繊維として用いた
場合、一度形成されたヘアースタイルが形くずれし、良
好なヘアースタイリング性が得られない場合があり、逆
に最近開発された高剛性の樹脂を用いても、硬くて所望
のヘアースタイルにまとまり難く、良好なヘアースタイ
リング性が得られないといった人形毛髪としては、致命
的な問題がある場合があり、実用化はおろか考案さえな
されていなかった。ここでいう良好なヘアースタイリン
グ性とは、具体的にはストレートヘアーであればヘアー
が櫛で簡単にまとまり、下向きに整然としたストレート
ヘアースタイルが得られ、またカールヘアーであれば一
度形成されたカールヘアースタイルが形くずれする事な
く保てるといった人形毛髪として、最も重要な性能を意
味する。さらに人形によっては、前髪はカールヘアー、
後髪はストレートヘアーといった両方を混植する場合も
少なくなく、両方を兼ね備えた微妙なバランスを有する
生分解性人形毛髪用繊維は現在まで開発された事がなか
った。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題
を解決し、生分解性を有しながら、光沢、透明性に優れ
かつ人形毛髪用に適した優れたヘアースタイリング性を
有する繊維を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を達成するために鋭意検討した結果、生分解性樹脂の種
類の選定に加え、繊維の繊維径と見掛ヤング率の関係に
注目し、ある特定な関係を満たす事により、あらゆるヘ
アースタイルが可能になり得る優れたヘアースタイリン
グ性能を付与し、かつ透明性、光沢に優れる生分解性繊
維を得られる事を見出し、生分解性樹脂を人形毛髪に応
用することに初めて成功し、ついに本発明をなすに至っ
た。
【0006】すなわち本発明は下記の通りである。 1) 生分解性樹脂からなる人形毛髪用繊維。 2) 生分解性樹脂がポリ乳酸系樹脂、脂肪族芳香族ポ
リエステル系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリグリコ
ール酸系樹脂の群から選ばれた樹脂である事を特徴とす
る上記1)の人形毛髪用繊維。 3) 生分解性樹脂がポリ乳酸系樹脂であり、繊維径が
0.01〜0.15mmであり、かつ繊維径と見掛ヤン
グ率の関係が下記式(1)を満足する事を特徴とする上
記1)または2)の人形毛髪用繊維。 130≦Ym×√D≦1000 (1) D:繊維径(mm) Ym:見掛ヤング率(N/mm2) 4) 可塑剤を1〜25wt%含有する事を特徴とする
上記1)〜3)のいずれかに記載の人形毛髪用繊維。 5) 可塑剤がポリエチレングリコールである事を特徴
とする上記4)の人形毛髪用繊維。 6) 上記1)〜5)のいずれかに記載の人形毛髪用繊
維を用いてなる人形。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明につき詳細に説明す
る。本発明の生分解性樹脂とは、土壌中や淡水・海水中
などの自然環境下で微生物により生分解する樹脂であ
り、微生物産出系ではポリヒドロキシブチレート系樹脂
(例えば三菱ガス化学株式会社製ビオグリーン)等があ
げられ、天然物系では、酢酸セルロース系樹脂(例えば
ダイセル化学工業株式会社製セルグリーンPCA)等が
挙げられ、また化学合成系としてはポリ乳酸系樹脂(例
えば株式会社島津製作所製ポリ乳酸ラクティ)、ポリカ
プロラクトン系樹脂(例えばダイセル化学工業株式会社
製セルグリーンPH)、ポリブチレンサクシネート系樹
脂(例えば昭和高分子株式会社製ビオノーレ)、ポリ
(ブチレンサクシネート/カーボネート)系樹脂(例え
ば三菱ガス化学株式会社製ユーペック)、ポリエチレン
サクシネート系樹脂(例えば日本触媒株式会社製ルナー
レSE)、ポリグリコール酸系樹脂、脂肪族芳香族ポリ
エステル系樹脂(例えばDuPont社製Bioma
x)等が挙げられ、これらの樹脂を単体、あるいは2種
以上を混合した組成物として用いてもよい。
【0008】これらの生分解性樹脂の中でも、人形毛髪
用繊維として重要な特性である光沢、透明性に優れるポ
リ乳酸系樹脂、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂、ポリ
グリコール酸系樹脂、酢酸セルロース系樹脂がより好ま
しい。その中でも特にポリ乳酸系樹脂は、農産物を原料
とするため安価にポリマーが得られ、しかも熱安定性が
よく溶融紡糸法で効率的に繊維が得られ、かつ適度な剛
性を有する事から最も好ましい。
【0009】本発明の人形毛髪用繊維に好適なポリ乳酸
系樹脂とは、ポリ(L−乳酸)と、ポリ(D−乳酸)
と、ポリ(D/L−乳酸)と、D−乳酸とヒドロキシカ
ルボン酸との共重合体と、L−乳酸とヒドロキシカルボ
ン酸との共重合体の群から選ばれた重合体と、あるいは
これらのブレンド体を主成分とした生分解性を有する樹
脂である。これらの中で、L−乳酸とD−乳酸の光学異
性体の共重合体であるポリ(D/L−乳酸)は、L−乳
酸とD−乳酸の比率により結晶性のコントロールが出
来、人形毛髪として適度な剛性が得られる事から好まし
い。
【0010】ポリ(D/L−乳酸)のL−乳酸とD−乳
酸の比率は、通常光学純度(%)で表され、本発明で用
いるポリ乳酸系樹脂の光学純度は、特に制限されるもの
ではないが、人形毛髪として適度な剛性を得られる光学
純度50〜99%が好ましい。より好ましくは85〜9
5%である。また重量平均分子量としては、特に制限さ
れるものではないが、人形毛髪として十分な繊維強度が
得られかつ、溶融紡糸における可紡性が良好な10×1
4〜16×104が好ましい。
【0011】本発明における繊維径とは単糸一本あたり
の断面の直径を意味するものである。なお異形断面を有
する繊維においては、糸の断面積と同一の真円の直径を
言う。人形毛髪用繊維としては、繊維径は、0.01〜
0.15mmが外観上適しており、0.01mmを下回
ると糸が細く人形毛髪としては外観上不自然であった
り、強度不足で植毛部分が脱毛したり、使用時に毛髪が
絡まるといった不具合を生じる場合がある。逆に0.1
5mmを上回ると糸が太く外観上不自然であったり、ま
た人形ヘッドへの植毛後、毛髪の隙間から人形ヘッド表
皮が露出し、人形毛髪として商品価値を損なう場合があ
る。より好ましくは0.02〜0.1mmである。
【0012】また一般に人形毛髪用繊維はマルチフィラ
メントが用いられるが、糸の総デニールは、植毛ミシン
の針のサイズと植毛密度の面から200〜2000デニ
ールが好ましい。本発明における見掛ヤング率とは、J
IS L1013(1999年)に記載された繊維の剛
性を表す指標である。本発明の繊維において、繊維径と
見掛ヤング率の関係が、繊維径をD〔mm〕、見掛ヤン
グ率をYm〔N/mm2〕とした場合に、下記式(1)
の関係が成立する微妙なバランスが、良好なヘアースタ
イリング性能を確保する上で重要である。
【0013】130≦Ym×√D≦1000 (1) (1)式の値が130以上であれば、繊維のカール保持
性が高く、植毛した人形毛髪にカール加工を行うことで
所望のカールヘアーを得ることが容易である。より好ま
しくは200以上である。(1)式の値が1000以下
であれば、植毛した人形毛髪のヘアー収束性が高く、ヘ
アーブラシでブラッシングを行った時に所望のヘアース
タイルにまとめることが容易である。より好ましくは8
00以下である。
【0014】これを達成せしめる為には、ポリ乳酸系樹
脂繊維の見掛ヤング率に応じて(1)式の範囲内に繊維
径を調整する方法、あるいは逆に繊維径に応じて見掛ヤ
ング率を調整する方法がある。前者の方法の場合、通常
の紡糸設備においては、例えば巻取速度が一定の場合、
押出機の吐出量を変更する事で所望の繊維径に調整し
(1)式の値を達成せしめる方法があるが、人形によっ
ては繊維径が特定される場合があり、後者の方法を選択
しなければならない場合も多い。
【0015】後者の場合、(1)式の値を達成せしめる
為には、所望の繊維径に応じて、(1)式の範囲に入る
適切な見掛ヤング率を付与する事が必要である。その方
法としては、例えばポリ(D/L−乳酸)の場合は光学
純度が見掛ヤング率を左右する為、適度な光学純度を有
するポリ乳酸樹脂を選定する方法や、あるいは可塑剤を
用いるといった方法で繊維径に応じた適度な見掛ヤング
率に調整する事が可能である。
【0016】これらの方法の中で、可塑剤を添加する方
法は適度な見掛ヤング率を得る方法として容易かつ効果
があり、所望の見掛ヤング率をきめ細かく増減せしめる
得る事が可能であることから好ましい。この場合、元の
生分解性樹脂の見掛ヤング率が所定の繊維径に対して
(1)式の範囲内かそれ以上であるときに、可塑剤を添
加する事で見掛ヤング率を低下させて適度な見掛ヤング
率を得ることができる。可塑剤の添加量については、
(1)式の範囲をとるための量であれば良く特に限定さ
れるものではないが、可塑化効果の発現および樹脂との
分散性の面から1〜25wt%が好ましい。より好まし
くは7〜20wt%である。
【0017】また可塑剤としては、特に限定されるもの
ではないが、例えばポリ乳酸系樹脂に用いる場合は、フ
タル酸ジオクチル、アセチルトリブチルクエン酸、アジ
ピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン
酸ジブチル、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル、
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等
のポリアルキレングリコール等が挙げられる。これらの
中でポリ乳酸系樹脂との相容性の良いポリエチレングリ
コールがより好ましい。
【0018】本発明の繊維には、必要に応じて、紫外線
吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、染料、蛍光
染料、顔料、蛍光顔料、夜光顔料、蓄光顔料、フォトク
ロミック材料、エレクトロクロミック材料、感温変色顔
料、パール顔料、体質顔料、ガラスビーズ、金属粉、可
塑剤、ワックス、撥水剤、難燃剤、ダル化剤、艶消剤、
架橋剤、香料、消臭剤、光触媒、防虫剤、防カビ剤、忌
避剤、抗菌剤などの従来公知の各種添加剤を支障のない
範囲で含有してもよい。
【0019】本発明の繊維を得る方法は、特に限定され
るものではないが、低コストで高品質の繊維が得られる
溶融紡糸法が好ましい。例えばポリ乳酸系樹脂を用いる
場合は、溶融紡出し一旦冷却固化した樹脂を再加熱し延
伸することにより配向と結晶化が促進され、適度な強度
を有する繊維が効率よく得られるのである。本発明にお
ける繊維の好適な具体的生産条件を挙げると、例えばポ
リ乳酸系樹脂の場合、ペレットを溶融押出ししてノズル
より紡出し、ついで冷水槽で急冷した後、ポリ乳酸樹脂
のガラス転移点温度より約10℃高い温水槽に浸せきし
ながら速度差のあるローラーにより繊維を3倍程度に延
伸し、さらに高温の加熱槽で熱処理した後、巻取機でボ
ビンに巻き取り、所望の繊維を得る事が出来る。さらに
本繊維の形態としては特に制限はないが、人形への植毛
性の面から、マルチフィラメントが好ましい。
【0020】以下、本発明を実施例に基づき詳しく説明
する。なお、本発明で用いる評価方法は下記の通りであ
る。 《見掛ヤング率の測定》JIS L1013(1999
年版)に準じて測定を行った。 《生分解性の評価方法と判定基準》試料繊維を、土壌中
に埋没させ、6ヶ月後に掘り起こし繊維の分解状態を走
査型電子顕微鏡にて評価した。 ◎:表面に凹凸が生じたり、破断して形状を失われてお
り、生分解性は良好である。 ×:表面の凹凸もなく、破断しておらず、生分解性は不
良である。
【0021】《カール保持性の評価方法と判定基準》得
られた繊維をロッド径が15mmで、雰囲気温度が14
0℃に設定されたF.C.F ENGINEERING
CO.社製カーリングマシン(図1)に20分間供給
し、この出口から得られるスプリング状カールに賦形さ
れた繊維を袋に詰め、その後28℃雰囲気中で2日間保
管した。次に塩化ビニルシート(厚さ1mm)で出来た
直径2.5cmの球形の人形ヘッドに人形植毛用ミシン
(DOLLY CO.LTD社製TUNF−28B 植
毛速度1000RPM 繊維カット長20cm)(図
2)を使用し、上記のカール加工を行った繊維を、図3
の様に人形ヘッドの頭頂部(水平部分)から後頭部(垂
直部分)と側頭部(垂直部分)にかけて約7cm2の面
積を植毛した。
【0022】さらに地面から垂直に立てた長さ30cm
の固定棒の頂部に、植毛した上記の人形ヘッドを固定
し、室温23℃、湿度80%RHの条件下で、毛髪を市
販の犬猫ペット用スリッカーブラシで真下に20回ブラ
ッシングした後、繊維束の下面をハサミで切りそろえ、
直径15mmのヘアーカーラーに下側から上側に3周巻
き付け、巻き付け終了後カールが崩れない様にカーラー
から抜き取り、カール部分がぶら下がる形(図4)で2
日間保管した後、外巻カールの形状を確認し、カール保
持性を下記基準にて3段階評価した。 ◎:外巻きカールが2周以上しており(図5)人形毛髪
としては実用上優れたカール保持性である。 ○:外巻きカールが1周以上2周未満であり(図6)人
形毛髪として実用上使用可能なカール保持性である。 ×:外巻きカールが1周未満であり(図7)人形毛髪と
して実用上使用不可能なカール保持性である。
【0023】《ヘアー収束性の評価方法と判定基準》ス
トレートヘアースタイルとして、上記のカール加工はせ
ずに、繊維を直接塩化ビニルシート(厚さ1mm)で出
来た直径2.5cmの球形の人形ヘッドに上記の人形植
毛用ミシンを使用し、図8の様に人形ヘッドの頭頂部
(水平部分)から後頭部(垂直部分)と側頭部(垂直部
分)にかけて約7cm2の面積を植毛した。なおこの時
の植毛ミシンの繊維カット長は12cmとした。さらに
地面から垂直に立てた長さ30cmの固定棒の頂部に、
植毛した上記の人形ヘッドを固定し、室温23℃、湿度
80%RHの条件下で、毛髪を市販の犬猫ペット用スリ
ッカーブラシで真下にゆっくり20回ブラッシングし
た。ブラッシング終了後、図9に示す様に人形ヘッドの
頭頂中央部を通る垂直な中心線Aに対して、毛髪の最外
層Bの距離を測定し下記基準により、ヘアー収束性を3
段階評価した。 ◎:AとBの差が5cm未満にまとまり人形毛髪として
実用上優れたヘアー収束性である。 ○:AとBの差が5〜6cmにまとまり、人形毛髪とし
て実用可能なヘアー収束性である。 ×:AB間の距離が6cmを越えて広がり人形毛髪とし
ては、実用上使用不可能なヘアー収束性である。
【0024】《総合判定》下記の通り人形毛髪用繊維と
しての性能を総合判定した。 ◎:カール保持性、ヘアー収束性とも◎であり、人形毛
髪としてヘアースタイリング性が非常にすぐれている。
また生分解性も良好である。 ○:カール保持性、ヘアー収束性が○と◎、または両方
とも○であり、人形毛髪としてヘアースタイリング性が
優れている。また生分解性も良好である。 △:カール保持性、ヘアー収束性がいずれも○以上であ
り、人形毛髪としてヘアースタイリング性には優れてい
るが、生分解性がない。 ×:カール保持性、ヘアー収束性のいずれか一方、また
は両方が×であり人形毛髪としてヘアースタイリング性
に劣り、かつ生分解性も不良であり商品価値が低い。
【0025】
【実施例1】ポリ乳酸系樹脂として株式会社島津製作所
のポリ乳酸ラクティー(登録商標)#9030(ポリD
/L乳酸、重量平均分子量14×104、光学純度92
%、ガラス転移転60℃、融点150℃)をスクリュー
直径30mmφサイズの押出機で溶融紡出し、紡口ノズ
ル(200ホール)から吐出された樹脂(吐出量3kg
/hr)を冷却した後、80℃の加熱槽で加熱すると同
時に速度差ローラーで3.5倍に延伸し、90℃の加熱
槽でヒートセットした後、1台の巻取機により紙管に巻
き取り、断面が円形で単糸の繊維径が0.014mmで
あり、糸の総デニールが350デニールであるマルチフ
ィラメントの繊維を得た。得られた繊維について、上記
方法により生分解性とカール保持性とヘアー収束性を評
価し、総合判定を行った結果を表1に示す。得られた繊
維は、光沢、透明性があり、良好な生分解性と格段に優
れたヘアースタイリング性能を有する繊維であることが
確かめられた。
【0026】
【実施例2】実施例1のポリ乳酸系樹脂を、スクリュー
直径30mmφサイズの押出機で押出すと同時に、ポリ
エチレングリコール(分子量1000)が樹脂途出量に
対して13wt%になる様に、押出機中央部の注入部か
ら注入添加しながら樹脂との混練溶融紡出を行い、実施
例1と同様の方法で、単糸の繊維径が0.014mmで
あり、糸の総デニールが350デニールであるマルチフ
ィラメントの繊維を得た。得られた繊維について、上記
方法により生分解性とカール保持性とヘアー収束性を評
価し、総合判定を行った結果を表1に示す。得られた繊
維は、光沢、透明性があり、良好な生分解性と優れたヘ
アースタイリング性能を有する繊維であることが確かめ
られた。
【0027】
【実施例3】実施例1のポリ乳酸系樹脂を、スクリュー
直径40mmφサイズの押出機で押出すと同時に、ポリ
エチレングリコール(分子量1000)が樹脂途出量に
対して20wt%になる様に、押出機中央部の注入部か
ら注入添加しながら樹脂との混練溶融紡出を行い、紡口
ノズル(40ホール)から吐出された樹脂(吐出量15
kg/hr)を冷却した後、80℃の加熱槽で加熱する
と同時に速度差ローラーで3.5倍に延伸し、90℃の
加熱槽に通した後、各20フィラメントに分けて2台の
巻取機により紙管に巻き取り、断面が円形であり単糸の
繊維径が0.07mmであり、糸の総デニールが860
デニールであるマルチフィラメントの繊維を得た。得ら
れた繊維について、上記方法により生分解性とカール保
持性とヘアー収束性を評価し、総合判定を行った結果を
表2に示す。得られた繊維は、光沢、透明性があり、良
好な生分解性と優れたヘアースタイリング性能を有する
繊維であることが確かめられた。
【0028】
【実施例4】実施例1のポリ乳酸系樹脂に対して黒色顔
料であるカーボンブラック(三菱化学株式会社製MA1
00)を0.2%ドライブレンドした組成物を用い、ス
クリュー直径40mmφサイズの押出機で押出すると同
時に、ポリエチレングリコール(分子量1000)が樹
脂途出量に対して13wt%になる様に、押出機中央部
の注入部から注入添加しながら樹脂との混練溶融紡出を
行い、実施例3と同様の方法で、単糸の繊維径が0.0
7mmであり、糸の総デニールが860デニールである
マルチフィラメントの繊維を得た。得られた繊維につい
て、上記方法により生分解性とカール保持性とヘアー収
束性を評価し総合判定を行った結果を表2に示す。得ら
れた繊維は、人形頭髪としてふさわしい黒色と光沢を有
する繊維であると同時に良好な生分解性があり、なおか
つ格段に優れたヘアースタイリング性能を有する繊維で
あることが確かめられた。
【0029】
【実施例5】実施例1のポリ乳酸系樹脂を、スクリュー
直径40mmφサイズの押出機で押出すと同時に、ポリ
エチレングリコール(分子量1000)が樹脂途出量に
対して7wt%になる様に、押出機中央部の注入部から
注入添加しながら樹脂との混練溶融紡出を行い、実施例
3と同様の方法で、単糸の繊維径が0.07mmであ
り、糸の総デニールが860デニールのマルチフィラメ
ントの繊維を得た。得られた繊維について、上記方法に
より生分解性とカール保持性とヘアー収束性を評価し、
総合判定を行った結果を表2に示す。得られた繊維は、
光沢、透明性があり、良好な生分解性と優れたヘアース
タイリング性能を有する繊維であることが確かめられ
た。
【0030】
【比較例1】塩化ビニリデンモノマー83wt%、塩化
ビニルモノマー17wt%の仕込み比からなる塩化ビニ
リデン−塩化ビニル共重合体樹脂(PVDC)と、可塑
剤としてクエン酸アセトトリブチル7wt%、熱安定剤
としてエポキシ化アマニ油2wt%を配合し、V型ブレ
ンダーで混合して混合物とし、次に該混合物をスクリュ
ー直径30mmφサイズの押出機で溶融紡出し、紡口ノ
ズル(40ホール)から吐出された樹脂(吐出量20k
g/hr)を冷却した後、50℃の加熱槽で加熱すると
同時に速度差ローラーで4.5倍に延伸し、各20フィ
ラメントに分けて2台の巻取機により紙管に巻き取り、
断面が円形で単糸の繊維径が0.07mmであり、糸の
総デニールが1150デニールであるマルチフィラメン
トの繊維を得た。得られた繊維について、上記方法によ
り生分解性とカール保持性とヘアー収束性を評価し、総
合判定を行った結果を表1に示す。得られた繊維は、光
沢、透明性があり、優れたヘアースタイリング性能を有
する繊維であったが、生分解性のない繊維であった。
【0031】
【比較例2】ポリプロピレン樹脂(モンテル・エスディ
ーケー・サンライズ株式会社製サンアロマーPM60
4)を用い、スクリュー直径40mmφサイズの押出機
で溶融紡出し、紡口ノズル(40H)から吐出された樹
脂(吐出量13.3kg/hr)を冷却した後、80℃
の温水槽で加熱すると同時に速度差ローラーで6倍に延
伸し、各20フィラメントに分けて2台の巻取機により
紙管に巻き取り、断面が円形であり単糸の繊維径が0.
07mmであり、糸の総デニールが620デニールであ
るマルチフィラメントの繊維を得た。
【0032】得られた繊維について、上記方法により生
分解性とカール保持性とヘアー収束性を評価し、総合判
定を行った結果を表2に示す。得られた繊維は、生分解
性がなく、ヘアー収束性にも劣り、人形毛髪としては商
品価値の低いものであった。以上の実施例1〜5、比較
例1〜2からも明らかなように、本発明の生分解性樹脂
からなる人形毛髪用繊維は、生分解性は勿論の事、光沢
等外観に優れ、かつヘアースタイリング性能が優れ商品
価値の高いものであることが確認された。また実施例1
〜5の繊維を用いて植毛した人形は、従来の合成繊維を
植毛した人形に比較しても、人形遊びを行った後、櫛で
ヘアーを整えると元のヘアースタイルに容易に整える事
が出来、さらに光沢等外観、ヘアースタイルの質感、手
触り等、同等以上に優れたものであった。
【0033】
【表1】
【0034】
【発明の効果】本発明によれば、生分解性樹脂を人形毛
髪として用いた時の欠点であるヘアースタイリング性を
低下せしめる事がなく、かつ光沢等外観にも優れた人形
毛髪用繊維を提供できる。かかる繊維は生分解性を有
し、玩具として使用された後の廃棄処理が容易ならしめ
るものであり、地球環境上も産業上も有用なものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 カーリングマシンの概略図。
【図2】 人形植毛用ミシンの概略図。
【図3】 カール加工された繊維が植毛された人形ヘッ
ドの概略図。
【図4】 ヘアーカーラーで形つけられたカールヘアー
の状態を示す概略図。
【図5】 カール保持性評価の外巻きカールが2周以上
している状態を示す概略図。
【図6】 カール保持性評価の外巻きカールが1周以上
2周未満の状態を示す概略図。
【図7】 カール保持性評価の外巻きカールが1周して
いない状態を示す概略図。
【図8】 繊維(ストレートヘアー)が植毛された人形
ヘッドの概略図。
【図9】 ヘアー収束性評価のブラッシング後のヘアー
の状態と距離を示す概略図。
【符号の説明】
1 樹脂製袋 2 螺旋状にカールされた繊維 3 ロッド 4 加熱ヒーター 5 カーリングマシンヘッド 6 パイプ糸道 7 ボビンに巻かれた繊維 8 人形植毛用ミシン本体 9 人形ヘッド 10 ミシン針 11 回転パイプ糸道 12 植毛された人形毛髪 13 カールされた繊維が詰められた樹脂製袋 14 袋から取り出されたカールされた繊維

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 生分解性樹脂からなる人形毛髪用繊維。
  2. 【請求項2】 生分解性樹脂がポリ乳酸系樹脂、脂肪族
    芳香族ポリエステル系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポ
    リグリコール酸系樹脂の群から選ばれた樹脂である事を
    特徴とする請求項1に記載の人形毛髪用繊維。
  3. 【請求項3】 生分解性樹脂がポリ乳酸系樹脂であり、
    繊維径が0.01〜0.15mmであり、かつ繊維径と
    見掛ヤング率の関係が下記式(1)を満足する事を特徴
    とする請求項1または2に記載の人形毛髪用繊維。 130≦Ym×√D≦1000 (1) D:繊維径(mm) Ym:見掛ヤング率(N/mm2
  4. 【請求項4】 可塑剤を1〜25wt%含有する事を特
    徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の人形毛髪用繊
    維。
  5. 【請求項5】 可塑剤がポリエチレングリコールである
    事を特徴とする請求項4に記載の人形毛髪用繊維。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の人形毛
    髪用繊維を用いてなる人形。
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