JP2003122037A - 負帯電用電子写真感光体及び電子写真装置 - Google Patents

負帯電用電子写真感光体及び電子写真装置

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JP2003122037A
JP2003122037A JP2001320749A JP2001320749A JP2003122037A JP 2003122037 A JP2003122037 A JP 2003122037A JP 2001320749 A JP2001320749 A JP 2001320749A JP 2001320749 A JP2001320749 A JP 2001320749A JP 2003122037 A JP2003122037 A JP 2003122037A
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JP2001320749A
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Shigenori Ueda
重教 植田
Makoto Aoki
誠 青木
Hitoshi Murayama
仁 村山
Tomohito Ozawa
智仁 小澤
Nobufumi Tsuchida
伸史 土田
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Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 電気的特性等が安定し、耐光疲労に優れ、繰
り返し使用しても部分的劣化がなく、特性ムラのない画
像品質の良好な負帯電用電子写真感光体及び電子写真装
置を提供する。 【構成】 導電性基体上に、シリコン原子を母体とする
非晶質材料の光導電層と、表面層とを少なくとも有する
負帯電電子写真感光体において、感光体に対し、感光体
を用いる電子写真装置で使用される露光波長のうち最も
長波長である光の単一波長光を3mW/cm2の光量で
1時間照射した後の電位変化率が−10%〜10%の範
囲であり、該電位変化率が、感光体の照射がなされない
領域について暗電位を像露光により1/2の値にしたと
きの明電位に対する、該感光体の該照射がなされた領域
の電位に対する変化率である電子写真感光体、及びこの
感光体を備える電子写真装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光(広義の光であ
って、紫外線、可視光線、赤外線、X線、γ線などを意
味する)のような電磁波に対して感受性のある負帯電電
子写真感光体及び該負帯電電子写真感光体を用いた電子
写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】像形成分野において、電子写真感光体に
おける光受容層を形成する光導電材料としては、高感度
で、SN比〔光電流(Ip)/暗電流(Id)〕が高
く、照射する電磁波のスペクトル特性に適合した吸収ス
ペクトルを有すること、光応答性が早く、所望の暗抵抗
値を有すること、使用時において人体に対して無害であ
ること等の特性が要求される。特に、事務機としてオフ
ィスで使用される電子写真装置内に組み込まれる電子写
真感光体の場合には、上記の使用時における無公害性は
重要な点である。
【0003】この様な点に優れた性質を示す光導電材料
にアモルファスシリコン(以下、a−Siと表記する)
からなる電子写真感光体が注目されている。
【0004】このような電子写真感光体の製造に際して
は、一般的には、導電性基体を50℃〜350℃に加熱
し、該基体上に真空蒸着法、スパッタリング法、イオン
プレーティング法、熱CVD法、光CVD法、プラズマ
CVD法等の成膜法によりa−Siからなる光導電層を
形成する。なかでもプラズマCVD法、すなわち、原料
ガスを高周波(RF波、VHF波)あるいはマイクロ波
グロー放電によって分解し、基体上にa−Si堆積膜を
形成する方法が好適なものとして実用に付されている。
【0005】例えば、特開昭57−115556号公報
には、a−Si堆積膜で構成された光導電層を有する光
導電部材の、暗抵抗値、光感度、光応答性等の電気的、
光学的、光導電的特性及び耐湿性等の使用環境特性、さ
らには経時安定性について改善を図るため、シリコン原
子を母体としたアモルファス材料で構成された光導電層
上に、シリコン原子及び炭素原子を含む非光導電性のア
モルファス材料で構成された表面障壁層を設ける技術が
記載されている。
【0006】また、特開平6−337532号公報に
は、長波長域における光感度が高く複写操作の繰り返し
安定性を向上する為に、光導電層がアモルファスシリコ
ンを主体とする層とアモルファスシリコンゲルマニウム
を主体とする層の2層からなる負帯電電子写真感光体が
開示されている。
【0007】また、特開平09−310181号公報に
は堆積膜形成速度が速く、高品質な堆積膜が得られるV
HF帯の高周波電力を用いたプラズマCVD法が開示さ
れている。
【0008】これらの技術により、電子写真感光体の電
気的、光学的、光導電的特性及び使用環境特性が向上
し、それに伴って画像品質も向上してきた。
【0009】すでに述べたように、VHF帯あるいはそ
の近傍の周波数の高周波電力を用いてプラズマを生成し
真空処理を施すことにより、真空処理速度の向上、真空
処理特性の向上が達成可能である。しかしながら、この
ような周波数帯の高周波電力を用いた場合、真空処理容
器中での高周波電力の波長が真空処理容器、高周波電
極、基板、あるいは基体支持体等と同程度の長さとな
り、真空処理容器中で高周波電力が定在波を形成してし
まう。この定在波によって真空処理容器中では場所ごと
に電力の強弱が生じ、プラズマ特性が異なってしまう。
その結果、基体の面内方向での堆積膜の膜厚は略均一で
あってもその膜質に不均一が生じ、電子写真感光体のよ
うな大面積の被処理基体においては、結果的に特性ムラ
となって現れ、真空処理特性の均一性を広い範囲で得る
ことは難しかった。
【0010】このような問題を解決するための手段とし
て、複数の異なる周波数の高周波電力を反応容器中に同
時に供給することが考えられる。これによって、反応容
器中には各々の周波数に応じた、異なる波長の定在波が
複数形成されることとなるが、これらは同時に供給され
ているので、これら複数の定在波が合成され、結果とし
て明確な定在波が形成されなくなる。このような考えに
基づけば、異なる複数の高周波電力の周波数はどのよう
な値であっても定在波抑制効果は得られる。たとえば、
特開昭60−160620号公報においては、10MH
z以上の高周波電力と1MHz以下の高周波電力を同一
電極に供給する構成が開示されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、本発明
者らが上記公報で開示された技術を用いて均一性に関す
る実験を行った結果、確かにあるレベルまでは真空処理
特性の均一性は向上できるものの、近年要求されている
均一性レベルを得るには至らない場合があった。
【0012】このように、従来のa−Si系材料で構成
された電子写真感光体は、暗抵抗値、光感度、光応答性
等の電気的、光学的、光導電特性、及び使用環境特性の
点、さらには経時安定性および耐久性の点において、各
々個々には特性の向上が図られてはいるが、総合的な特
性向上を図る上でさらに改良される余地が存在するのが
実情である。
【0013】例えば、a−Si系材料で構成された電子
写真感光体を負帯電用電子写真感光体として用いた場
合、正孔に比べて移動度の高い電子を主たるキャリアと
出来るために高性能化が期待できること、また負帯電が
一般的な有機感光体用の電子写真プロセスと同様のプロ
セスを流用しやすい可能性があることなど、利点が大き
いと考えられる。しかし、正帯電で用いる場合に比べて
表面層側からの電荷の注入が比較的起きやすく、帯電能
が得にくいことなどが予想される。なお、この点につい
ては、上部阻止層を設けて表面からの電子の注入を出来
るだけ阻止することが望ましく、この上部阻止層を如何
に改善させるかが特性を向上させるために重要な要素の
一つと考えられる。
【0014】特に、電子写真装置の高画質、高速化、高
耐久化は急速に進んでおり、電子写真感光体においては
電気的特性や光導電特性の更なる向上とともに、帯電
能、感度を維持しつつあらゆる環境下で大幅に性能を延
ばすことが求められている。
【0015】例えば、a−Si系材料で構成された電子
写真感光体を負帯電用電子写真感光体としてデジタル系
の電子写真装置に用いた場合、以下のような現象が生じ
る場合があった。
【0016】例えば、除電露光及び像露光に用いるLE
Dアレイやレーザー等の単一波長光を繰り返し照射する
事により光疲労が発生しその結果、電子写真プロセスで
の繰り返しの使用によって電位特性が変化してしまう事
により形成される画像も長期使用の前後で異なるといっ
た経時変化が発生する場合がある。
【0017】更に、上記経時変化は複写工程のパターン
に伴い電子写真感光体全域で均一に発生せず部分的なム
ラとして発生する場合がある。
【0018】また上記経時変化は電子写真装置に用いら
れる露光源の波長によっても、経時変化の変化量が異な
る場合がある。
【0019】したがって、電子写真感光体を設計する際
に、上記したような課題が解決されるように電子写真感
光体の層構成、各層の化学的組成など総合的な観点から
改良を図ると共に露光波長が異なる多種多様な電子写真
装置に応じた光劣化の度合いを明確にする手段が必要と
されている。
【0020】また、性能を向上させ、同時にコストダウ
ンが見込める新しい生産技術に関しても探索が行われて
おり、その一つとして、従来のRF帯よりも周波数の高
いVHF帯、あるいはその近傍の周波数の高周波電力を
用いたプラズマCVD法が鋭意研究されている。このV
HF帯の高周波によるプラズマCVD法では、RF帯の
高周波を用いた場合よりも、条件を適切に選ぶことで良
好な膜を得られるが、反面、大面積の膜の場合、均一性
に課題が生じることがある。即ち、このような周波数帯
の高周波電力を用いた場合、真空容器中での高周波電力
の波長が真空容器、高周波電極、基板、あるいは基板ホ
ルダー等と同程度の長さとなり、真空容器中で高周波電
力が定在波を形成してしまう場合がある。この定在波が
形成されると、真空容器中では場所ごとに電力の強弱が
生じ、プラズマ特性が異なってしまう。このような場合
には、真空処理特性の均一性を広い範囲で得ることが難
しかった。このような問題を解決するための手段とし
て、従来技術に挙げたような複数の異なる周波数の高周
波電力を反応容器中に同時に供給することが考えられ
る。しかしながら現状では、近年の電子写真感光体に望
まれる高レベルにまでは均一化が出来ていない。よっ
て、VHF帯に固有の膜特性のムラを抑え、高品質な感
光体を高速で堆積させることで生産効率を向上させ、特
性向上とコストダウンとの両立を高いレベルで達成する
ことが望まれている。
【0021】また、VHF帯の高周波を用いて作成した
膜の特性は、条件を出来るだけ揃えたとしても、RF帯
の高周波を用いて作成した膜の特性とは微妙に異なるこ
とがある。これはプラズマCVDプロセスにおける活性
種のエネルギーの違いに起因して結合の仕方が微妙に異
なることが原因として考えられるが詳しくは不明であ
る。このため、前述した上部注入阻止層に求められる化
学的組成やドーパント濃度などが、従来の作成方法で得
られた膜と異なることがあり、また光劣化の度合いも従
来の膜と異なる場合があり、不明な点が多いのが実状で
ある。よって、特に利点の多いVHF帯の高周波を用い
ることによって最適な電子写真特性が安定して得られる
ような負帯電用電子写真感光体を確立することが求めら
れてきた。
【0022】本発明は、上述した従来のa−Siで構成
された負帯電用電子写真感光体における諸問題を解決す
ることを目的とするものである。
【0023】そして、電気的、光学的、光導電的特性が
使用環境にほとんど依存することなく実質的に常時安定
しており、耐光疲労に優れ、繰り返し使用に際しては部
分的な劣化現象を起こさず耐久性に優れ、特性ムラのな
い画像品質の良好な、負帯電用電子写真感光体及び電子
写真装置を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】本発明は、導電性基体上
に、シリコン原子を母体とする非晶質材料で構成される
光導電層と、表面層とを少なくとも有する負帯電電子写
真感光体において、該感光体に対し、該感光体を用いる
電子写真装置で使用される露光波長のうち最も長波長で
ある光の単一波長光を3mW/cm2の光量で1時間照
射した後の電位変化率が−10%〜10%の範囲であっ
て、該電位変化率が、該感光体の該照射がなされない領
域について暗電位を像露光により1/2の値にしたとき
の明電位に対する、該感光体の該照射がなされた領域の
電位の変化率であることを特徴とする負帯電用電子写真
感光体である。
【0025】この負帯電用電子写真感光体においては、
前記光導電層及び表面層の間に、上部阻止層を有するこ
とが好ましい。
【0026】前記上部阻止層が、炭素原子および第13
族原子を含有する、シリコン原子を母体とする非晶質材
料で構成されることが好ましい。
【0027】前記上部阻止層において、シリコン原子
(Si)と炭素原子(C)の和に対する炭素原子(C)
の原子数比C/(Si+C)が、0.05≦C/(Si
+C)≦0.6の範囲であることが好ましい。
【0028】前記上部阻止層に含有される第13族原子
の含有量が、100原子ppm以上30000原子pp
m以下であることが好ましい。
【0029】前記上部阻止層の層厚が0.01μm〜1
μmであることが好ましい。
【0030】前記上部阻止層が、30MHz以上250
MHz以下の周波数範囲の高周波電力を少なくとも2つ
含む高周波電力を用いるプラズマCVD法により形成さ
れ、かつ、該周波数範囲の高周波電力が有する電力値の
中で最も大きい電力値と次に大きい電力値を有する高周
波電力について、そのうち周波数の高い方の高周波電力
の電力値をP1、周波数の低い方の高周波電力の電力値
をP2としたとき、前記電力値P1およびP2が 0.1≦P2/(P1+P2)≦0.9 を満たすことも好ましい。
【0031】本発明はまた、負帯電用電子写真感光体を
備え、該感光体に対し除電露光、負帯電、像露光、現像
および転写を順次繰り返して画像形成を行なう電子写真
装置において、該感光体が、導電性基体上に少なくとも
電荷注入阻止層、光導電層、上部阻止層および表面層を
有し、該感光体に対し、該除電露光及び該像露光のうち
最も長波長である光の単一波長光を3mW/cm2の光
量で1時間照射した後の電位変化率が−10%〜10%
の範囲であって、該電位変化率が、該感光体の該照射が
なされない領域について暗電位を像露光により1/2の
値にしたときの明電位に対する、該感光体の該照射がな
された領域の電位の変化率であることを特徴とする電子
写真装置である。
【0032】
【発明の実施の形態】(作用)本発明の効果が得られた
理由に関しては、全てが明らかとなったわけではない
が、本発明者らは以下のように考えている。
【0033】まず、負帯電用電子写真感光体の特徴につ
いて説明する。負帯電用電子写真感光体で生じる表面か
らの電荷注入は、正帯電では正電荷が表面層にて十分に
阻止できているのに対し、負電荷が表面層で阻止しきれ
ないことによって生じると考えられる。この理由は、表
面層として好適に使用されている非晶質炭化珪素膜で
は、正孔に比べて電子の伝導性が比較的良好なためであ
るが、電子の伝導機構がホッピング伝導を主体としてい
るために理論的な解釈が難しく、全てが明らかになって
いるわけではない。しかし、表面層で電子を阻止出来る
まで表面層の特性を変化させた場合には、残留電位の上
昇などの弊害が生じることがあるため、負帯電用電子写
真感光体の場合には、上部阻止層を設ける方が望ましい
ことになる。
【0034】そこで従来は、特に帯電能のみに着目し、
周期律表第13族元素を上部阻止層に導入することによ
って表面からの負電荷の注入を阻止してきた。しかし、
近年の複写機に対する要求が高まり、感光体特性の総合
的な向上、即ち帯電能向上と帯電能ムラ抑制の両立、感
度向上、ゴースト特性向上、コストダウン等々を考えた
場合には、更に改良が必要となってきた。
【0035】そこで本発明者らはこの上部阻止層を改良
するために、様々なメリットを持つVHF帯の高周波を
用いたプラズマCVD法を使い高画質化に対応可能な負
帯電電子写真感光体に対して、光疲労に伴う電位変化率
と光疲労ムラの度合いに関して鋭意検討した。
【0036】その結果、負帯電電子写真感光体に対し該
負帯電用電子写真感光体を用いる電子写真装置で使用さ
れる露光波長のうち最も長波長である単一波長光を一定
時間照射した場合の電位変化率により負帯電電子写真感
光体の光疲労度が予測可能であるという知見を得た。
【0037】この光疲労による電位変化はアモルファス
シリコンでよく知られるStaebler−Wrons
ki効果の様な光劣化現象によるキャリア走行性の劣化
が原因であると考えられる。
【0038】導電性基体の上に非晶質材料で構成された
光導電層及び表面層の間に、シリコン原子を母体とする
非晶質材料で構成され炭素原子、第13族原子を含有す
る上部阻止層を設けた負帯電用電子写真感光体の場合、
光疲労の発生は光導電層で発生する場合と上部阻止層で
発生する場合があると考えられる。更に光疲労による電
位の変化に関しては初期状態と比較してプラスに変化す
る場合とマイナスに変化する場合があることがわかっ
た。
【0039】このような場合、例えば光導電層が光疲労
によりマイナスの電位変化であっても上部阻止層の光疲
労による電位変化がプラスであった場合は、お互いが打
ち消し合い電子写真特性としては、光疲労の少ない電子
写真感光体であることがわかった。
【0040】以上の知見に基づけば、それぞれ単一層に
おける光疲労特性に関わらず、感光層、上部阻止層およ
び表面層の組み合わせによっては、電子写真感光体とし
ての光疲労を効果的に低減でき成膜条件の自由度を広げ
ることが可能である。よって該光疲労に関する評価は光
導電層と表面層、および好ましくは上部阻止層を設けた
電子写真感光体全体に対して行うことが重要である。
【0041】電位変化率の測定に関しては、負帯電電子
写真感光体に対し単一波長光を一定時間照射する前の初
期状態に於いて室内光などの光に曝されない状態である
事が望ましい。よって、感光体を製造した反応炉から取
り出す際に黒く塗った通い箱に入れるなどして出来るだ
け室内光に曝されないように注意し、そのまま極力光を
当てないようにしながら表面電位を測る。このとき、室
内光に曝す時間は多くとも5分以内のなるべく短い時間
とする。5分を超えると、後述する光照射後の試験結果
に誤差が生じる可能性があり、注意を要する。
【0042】前述した初期(光照射しない部分)の表面
電位に対する光照射後の表面電位の変化率は、上部阻止
層の母体となるシリコン原子と炭素原子の組成比を適切
に定めた上で、更にドーパントとして機能する周期律表
第13族元素の含有量を適切に添加することで制御する
ことが出来る。
【0043】具体的には、上部阻止層においてシリコン
原子と炭素原子との和に対する炭素原子の比C/(Si
+C)の範囲が、0.05≦C/(Si+C)≦0.6
とすることが望ましい。この範囲に設定して膜の作成を
行うことで、阻止能が高く、その他の電子写真特性に関
しても良好な膜にすることが可能となる。これよりも炭
素含有量を大きくすると、残留電位の上昇が生じたり、
また伝導型の制御性が低下する傾向があるという点で不
利である。また、これ以上炭素含有量を小さくすると、
暗抵抗が低くなって阻止能が低下することがあるため、
注意を要する。
【0044】また、上部阻止層に含有する具体的な第1
3族元素の含有量としては、本発明の目的が効果的に達
成できるように所望にしたがって適宜決定されるが、好
ましくは膜中の濃度がシリコン原子に対して100pp
m以上30000ppm以下となるように導入すればよ
い。100ppm未満になると、電子に対する阻止能が
十分に得られない場合がある。このような観点から、望
ましくは500ppm以上がより好ましい。また、30
000ppmを超えると、帯電能ムラの改善効果が小さ
くなることがある。改善効果を最大限に得るためには1
0000ppm以下がより好ましい。
【0045】更に、前述したようにVHF帯の高周波を
用いたプラズマCVD法で上部阻止層を作成した場合に
は、本発明で規定している初期の暗導電率、光照射によ
る暗導電率の変化率を適切に定めることで、RF帯の高
周波を用いた場合よりも特性を良好に出来、また堆積速
度も速く出来るため、より好ましい。この原因としては
前述したように不明な点が多く全てがわかっているわけ
ではないが、恐らくプラズマ中の活性種のエネルギーが
異なることが膜特性に違いをもたらしていると思われ
る。
【0046】VHF帯の周波数を用いた場合には、高品
質で高速に堆積膜を形成することが出来る反面、定在波
の影響で品質にムラが生じる場合があることは前述した
とおりである。そこで、これに関しては少なくとも2つ
のVHF帯の高周波を重畳して電極に印加することで改
善することが可能である。原理的には、2つの異なる周
波数の高周波電力を重畳することで、一方の周波数では
定在波の「ふし」に当たる部分が他方の周波数では定在
波が振幅をもち、「ふし」が抑制されるため、と考えら
れる。ただし、これは非常に単純なモデルであり、実際
には複雑な現象が起きていることは言うまでもない。例
えばプラズマの状況、電磁波の減衰や様々な反射面での
反射等の要因がある。そのため、任意の周波数の高周波
電力を任意の割合で重畳させただけでは、この抑制効果
は必ずしも得られない。つまり、定在波抑制効果が顕著
に現れる場合は、一定の周波数範囲の高周波電力を一定
の電力値割合で組み合わせた場合に最適となり、特に、
第1の高周波電力と第2の高周波電力は、高品質で速い
堆積速度を期待出来る周波数範囲で、しかも共に同一の
活性種を生成出来る関係にある周波数範囲であり、それ
らの電力バランスを適切に設定されることが最も望まし
い。
【0047】具体的には、2つの高周波電力の望ましい
周波数については、下限としては膜の品質、堆積速度の
観点から30MHz以上、好ましくは50MHz以上の
範囲とする。一方、上限としては250MHzより大き
くすると、電力の進行方向での減衰が大きくなり、異な
る周波数の高周波電力との減衰率のずれが大きくなり、
十分な均一化効果が得られにくくなる傾向があるという
点で不利である。よって250MHz以下にすることで
重畳効果が有効に得られるため、好ましい。
【0048】更に、第1の高周波の周波数f1と第2の
高周波の周波数f2との比f2/f1は、0.5より大
きく0.9以下が最も好ましいことが判った。例えば、
f1とf2が1桁以上も異なってしまうと、場合によっ
ては原料ガスの分解の仕方が変わることがあり、生成さ
れる活性種の種類、比率が異なってしまう可能性があ
る。このため、電界強度的には均一化がなされても、第
1の高周波の定在波の腹部分ではその周波数に応じた種
類、比率の活性種が生成され、第2の高周波の定在波の
腹部分では第1の高周波の定在波の腹部分とは異なった
種類、比率の活性種が生成されてしまう可能性がある。
その結果、活性種の種類、比率に空間的な分布が生じて
しまう可能性があり、最悪の場合、真空処理特性に不均
一化をもたらしてしまう可能性があると考えられる。
0.5<f2/f1の関係に維持することで、このよう
な周波数の違いによる生成活性種の種類、比率の違いを
少なくすることが出来、より好ましいと考えられる。ま
た、f1とf2が近すぎると、各々の定在波の節位置、
腹位置が近いため十分な電界定在波抑制効果が得られに
くくなるという点で不利であるため、f2/f1≦0.
9の関係に維持することが望ましいと考えられる。
【0049】2つの高周波の電力値の割合の範囲に関し
ては、第1の高周波の電力値をP1、第2の高周波の電
力値をP2とすると、2つの高周波の合計の電力値(P
1+P2)に対するP2の値が、0.1以上0.9以下
が望ましい。つまり、P2の割合が小さくなると、P1
のみの場合に近づき、定在波抑制効果は小さくなるとい
う点で不利である。逆にP2の割合が大きくなりすぎる
と、同様にP2単独の場合に近くなり、効果が小さくな
るという点で不利である。実験的事実から、少なくとも
一方の高周波電力が、2つの合計電力に対して10%以
上にすることで、定在波抑制効果が顕著に得られること
が判った。また、更に好ましくは、周波数の高い方の電
力をP1とすると、P2/(P1+P2)を0.2以上
0.7以下にすることが最も望ましいことも実験から明
らかとなった。
【0050】また、画像流れは露光によって生じた光生
成キャリアが光導電層から表面層へ移動する過程におい
て、光導電層と上部阻止層でのキャリアの走行性の違い
に起因して、上部阻止層でキャリアが蓄積し、キャリア
同士の反発による横流れが生じて画像がぼける現象であ
ると考えられる。本発明の上部阻止層では、キャリアの
走行が不適当に妨げられることがなく、電荷が蓄積して
横流れを引き起こすような状況が生じない。
【0051】以上のような改善によって、本発明は、負
帯電電子写真感光体の光劣化に伴う帯電能ムラ及び感度
ムラの抑制を高次元で両立可能であると共に、画像流れ
の低減によって画像品質を飛躍的に向上させ、経時変化
も起こさず、極めて優れた電気的、光学的特性、画像品
質、耐久性及び耐環境性を有する負帯電用電子写真感光
体を提供する。以下、図面に従って、本発明の負帯電電
子写真感光体について説明する。
【0052】図1は、本発明の電子写真感光体の好適な
層構成の一例を説明するための模式的構成図である。
【0053】図1の電子写真感光体は、基体101の上
に、電荷注入阻止層102、シリコンを母体とする光導
電層103、シリコンと炭素を母体とする上部阻止層1
04、表面層105がこの順で設けられている。
【0054】また、図1に於いて、電荷注入阻止層10
2は必須の構成ではなく、必要に応じて省略してもよ
い。また、各層の界面は必ずしも急峻で明確な界面であ
る必要はなく、特に光の干渉が生じ易いレーザーによる
露光を用いる場合には、界面において組成を滑らかに変
化させて明確な界面を作らないようにする方が望まし
い。
【0055】〈基体〉本発明において使用される導電性
基体101は、使用目的に応じた材質や形状を有するも
のであれば良い。例えば、形状に関しては、電子写真を
製造する場合には、円筒状が好ましいが必要に応じて平
板状や、その他の形状であっても良い。また、材質に於
いてはアルミニウム、金、銀、銅、白金、鉛、ニッケ
ル、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、チタン、ステ
ンレス、及びこれらから選択される2種類以上の複合材
料、更にはポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネ
ート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩
化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ガラ
ス、石英、セラミック、紙などの絶縁材料に導電性材料
を被覆した物などが使用できる。
【0056】〈電荷注入阻止層〉本発明の負帯電電子写
真感光体においては、アルミニウム基体101と光導電
層103との間に、基体101側からの電荷の注入を阻
止する働きのある電荷注入阻止層102を設けるのが効
果的である。すなわち、電荷注入阻止層102は光受容
層(ここでは電荷注入阻止層102、光導電層103、
上部阻止層104および表面層105からなる)が負極
性の帯電処理をその自由表面に受けた際、基体101側
より光導電層103側にホールが注入されるのを阻止す
る機能を有している。そのような機能を付与するため
に、電荷注入阻止層102には窒素原子と酸素原子の両
方を含有させ必要に応じて周期律表第15族に属する不
純物原子を含有させることが効果的である。
【0057】該電荷注入阻止層には、炭素原子、窒素原
子及び酸素原子の少なくとも一種を含有させることによ
って、該電荷注入阻止層と支持体との間の密着性の向上
をよりいっそう図ることができる。
【0058】該層に含有される炭素原子または窒素原子
または酸素原子は該層中に万偏なく均一に分布されても
良いし、あるいは層厚方向には不均一に分布する状態で
含有している部分があってもよい。しかしながら、いず
れの場合にも支持体の表面と平行面内方向においては、
均一な分布で万偏なく含有されることが面内方向におけ
る特性の均一化をはかる点からも好ましい。
【0059】電荷注入阻止層の全層領域に含有される炭
素原子及び/または窒素原子および/または酸素原子の
含有量は、上記目的が効果的に達成されるように適宜決
定されるが、一種の場合はその量として、二種以上の場
合はその総和として、好ましくは1×10-3〜30原子
%、より好適には5×10-3〜20原子%、最適には1
×10-2〜10原子%とされるのが望ましい。
【0060】また、電荷注入阻止層に含有される水素原
子および/またはハロゲン原子は層内に存在する未結合
手を補償し膜質の向上に効果を奏する。電荷注入阻止層
中の水素原子またはハロゲン原子あるいは水素原子とハ
ロゲン原子の和の含有量は、好適には1〜50原子%、
より好適には5〜40原子%、最適には10〜30原子
%とするのが望ましい。
【0061】電荷注入阻止層の層厚は所望の電子写真特
性が得られること、及び経済的効果等の点から好ましく
は0.1〜5μm、より好ましくは0.3〜4μm、最
適には0.5〜3μmとされるのが望ましい。層厚が
0.1μmより薄くなると、支持体からの電荷の注入阻
止能が不充分になって充分な帯電能が得られにくくなる
傾向があるという点で不利であり、5μmより厚くして
も電子写真特性の向上は期待できず、作製時間の延長に
よる製造コストの増加を招く傾向があるという点で不利
である。
【0062】更に電荷注入阻止層に必要に応じて含有さ
れる伝導性を制御する原子としては、半導体分野におけ
る、いわゆる不純物を挙げることができ、n型伝導特性
を与える周期律表第15族に属する原子(以後「第15
族原子」と略記する)を用いることができる。
【0063】第15族原子としては、具体的には燐
(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス
(Bi)等があり、特にP、Asが好適である。
【0064】本発明において電荷注入阻止層中に含有さ
れる伝導性を制御する原子の含有量としては、伝導性の
制御が効果的に達成できるように所望にしたがって適宜
決定されるが、好ましくは10〜1×104原子pp
m、より好適には50〜5×103原子ppm、最適に
は1×102〜3×103原子ppmとされるのが望まし
い。
【0065】〈光導電層〉本発明において、光導電層1
03は、光受容層の1部を構成する光導電層はプラズマ
CVD法によって、所望特性が得られるように適宜成膜
パラメーターの数値条件が設定されて作製することがで
きる。
【0066】光導電層を形成するには、基本的にはシリ
コン原子(Si)を供給し得るSi供給用の原料ガス
と、必要に応じて水素原子(H)を供給し得るH供給用
の原料ガスおよび/またはハロゲン原子(X)を供給し
得るX供給用の原料ガスを、内部を減圧にし得る反応容
器内に所望のガス状態で導入して、該反応容器内にグロ
ー放電を生起させ、あらかじめ所定の位置に設置されて
ある所定の基体上に形成すればよい。
【0067】光導電層中に必要に応じて含有される水素
原子および/またはハロゲン原子は、シリコン原子の未
結合手を補償し、層品質の向上、特に光導電性を向上さ
せる効果が期待できる。
【0068】水素原子またはハロゲン原子の含有量、ま
たは水素原子とハロゲン原子の和の量は、シリコン原子
と水素原子および/またはハロゲン原子の和に対して1
0〜40原子%とされるのが望ましい。
【0069】Si供給用ガスとなり得る物質としては、
SiH4、Si26、Si38、Si410等のガス状態
の、またはガス化し得る水素化珪素(シラン類)が有効
に使用されるものとして挙げられ、更に層作製時の取り
扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSiH4、Si2
6が好ましいものとして挙げられる。
【0070】そして、形成される光導電層中に水素原子
を構造的に導入し、水素原子の導入割合の制御を一層容
易になるように図り、本発明の目的を達成する膜特性を
得るために、これらのガスに更にH2および/またはH
eあるいは水素原子を含む珪素化合物のガスも所望量混
合して層形成してもよい。また、各ガスは単独種のみで
なく所定の混合比で複数種混合しても差し支えないもの
である。
【0071】また、ハロゲン原子供給用の原料ガスとし
て有効なのは、たとえばハロゲンガス、ハロゲン化物、
ハロゲンを含むハロゲン間化合物、ハロゲンで置換され
たシラン誘導体等のガス状のまたはガス化し得るハロゲ
ン化合物が好ましく挙げられる。好適に使用し得るハロ
ゲン化合物としては、具体的には弗素ガス(F2)、B
rF、ClF、ClF3、BrF3、BrF5、IF3、I
7等のハロゲン間化合物を挙げることができる。ハロ
ゲン原子を含む珪素化合物、いわゆるハロゲン原子で置
換されたシラン誘導体としては、具体的には、たとえば
SiF4、Si26等の弗化珪素が好ましいものとして
挙げることができる。
【0072】光導電層中に含有される水素原子および/
またはハロゲン原子の量を制御するには、例えば基体の
温度、水素原子および/またはハロゲン原子を含有させ
るために使用される原料物質の反応容器内へ導入する
量、放電電力等を制御すればよい。
【0073】更に必要に応じて導電性を制御する原子を
含有させる。これは、負帯電電子写真感光体の場合、光
導電層103に於いて電子の走行性を向上させることに
より感度や光メモリ特性を飛躍的に向上させることが可
能となる。
【0074】導電性を制御する原子としては、半導体分
野における、いわゆる不純物を挙げることができ、p型
伝導特性を与える周期律表第13族に属する原子とn型
伝導特性を与える周期律表第15族に属する原子を用い
ることができる。
【0075】また、各々の導電性を制御する原子は、光
導電層103中に万遍なく均一に含有されても良いし、
光導電層103の層厚方向に不均一な分布をもたせた部
分があっても良い。
【0076】周期律表第13族原子としては、具体的に
は、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(G
a)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等があ
り、特にB、Al、Gaが好適である。
【0077】周期律表第15族原子としては、具体的に
は、リン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、
ビスマス(Bi)等があり、特にP、Asが好適であ
る。
【0078】また、周期律表第13族原子や周期律表第
15族原子を構造的に導入するには、層形成の際に、第
15族原子導入用の原料物質たとえばホスフィン(PH
3)ガス、第13族原子導入用の原料物質たとえばジボ
ラン(B26)ガスを反応容器中に、光導電層103を
形成するための他のガスとともに導入してやればよい。
【0079】光導電層に含有される伝導性を制御する原
子の含有量としては、好ましくは1×10-2〜1×10
4原子ppm、より好ましくは5×10-2〜5×103
子ppm、最適には1×10-1〜1×103原子ppm
とされるのが望ましい。
【0080】伝導性を制御する原子を構造的に導入する
には、層形成の際に、伝導性を制御する原子の原料物質
をガス状態で、光導電層を形成するための他のガスと共
に反応容器中に導入してやればよい。
【0081】伝導性を制御する原子導入用の原料物質と
なり得るものとしては、常温常圧でガス状の、または、
少なくとも層形成条件下で容易にガス化しうるものが採
用されるのが望ましい。
【0082】本発明に於いて、光導電層103の膜厚は
所望の電子写真特性が得られること及び経済効果等の点
から適宜所望にしたがって決定され、好ましくは10〜
50μm、より好ましくは20〜45μm、最適には2
5〜40μmとされるのが望ましい。膜厚が20μmよ
り薄くなると、帯電能や感度等の電子写真特性が低下す
る傾向があるという点で不利である。また膜厚が50μ
mより厚くなると、光導電層103の成膜時間が長くな
り製造コストが高くなる傾向があるという点で不利であ
る。
【0083】所望の膜特性を有する光導電層を形成する
には、Si供給用のガスと必要に応じて供給される希釈
ガスとの混合比、反応容器内のガス圧、放電電力ならび
に基体温度を適宜設定すればよい。
【0084】反応容器内の圧力も同様に層設計にしたが
って最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合1×10
-2〜1×103Pa、好ましくは5×10-2〜5×102
Pa、最適には1×10-1〜1×102Paとするのが
好ましい。
【0085】さらに、基体の温度は、層設計にしたがっ
て最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合、好ましく
は150〜350℃、より好ましくは180〜330
℃、最適には200〜300℃とするのが望ましい。
【0086】本発明においては、光導電層を形成するた
めの基体温度、ガス圧の望ましい数値範囲として前記し
た範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に決
められるものではなく、所望の特性を有する感光体を形
成すべく最適値を決めるのが望ましい。
【0087】〈上部阻止層〉上部阻止層は感光体が帯電
処理をその自由表面に受けた際、自由表面側より光導電
層側に電荷が注入されるのを阻止する機能を有してい
る。そのような機能を付与するために、上部阻止層はあ
る程度以上の高抵抗が要求され、その実現のためにシリ
コン原子を母体とする非晶質膜に若干の炭素を加えて高
抵抗化すると同時に、周期律表第13族の添加によりホ
ールに対する抵抗を適切な範囲に設定することができ
る。加えて本発明では、光を照射した際の劣化に注目
し、炭素量や第13族元素の添加量、結合状態などを適
切に制御することができる。
【0088】本発明において使用されるシリコン含有ガ
スとなり得る物質としては、SiH 4、Si26、Si3
8、Si410等水素化珪素(シラン類)、またSiF
4等のハロゲンで置換されたシラン誘導体等が有効に使
用されるものとして挙げられ、更に膜特性が良好に出
来、層作製時に取り扱い易く、供給効率が良い等の点で
SiH4が最も好ましいものとして挙げられる。
【0089】炭素供給用ガスとなり得る物質としては、
CH4、C22、C26、C38、C410等のガス状態
の、またはガス化し得る炭化水素が有効に使用されるも
のとして挙げられ、更に膜特性が良好に出来、層作成時
に取り扱い易く、ポリマライズしにくい等の点でCH4
が最も好ましい。
【0090】また、必要に応じて適当な希釈ガスを用い
て希釈してもよい。具体的な希釈ガスとしては、水素、
He、Ne、Ar、Krなどの希ガスが適当であり、こ
れらを数種類混合して使用してもよい。
【0091】上部阻止層104の組成、即ちシリコン原
子と炭素原子との和に対する炭素原子の原子数比C/
(Si+C)の範囲としては、阻止能が高く、その他の
電子写真特性に関しても良好な範囲とすることが望まし
い。a−Si膜に炭素を添加していく場合、光を当てた
とき、欠陥準位密度が増大しやすくなると考えられる。
即ち、初期の欠陥準位密度をN0とし、光誘起欠陥の数
をΔNとすると、ΔN/N0は欠陥準位密度の増大率と
いうことになる。この増大率ΔN/N0は、実験的事実
から、炭素を微量添加しただけで劇的に増大し、その後
減少に転じると考えているが、ΔNの正確な測定が難し
く、現時点では詳しく判っていない。本発明においては
この減少に転じた後が好ましいと考えられ、且つ価電子
制御が可能な範囲が好ましい。具体的には0.05≦C
/(Si+C)≦0.6の範囲が望ましいことが実験的
に明らかとなった。これよりも炭素含有量を大きくする
と、価電子制御性が低下するため、残留電位の上昇が生
じるなどの悪影響が現れる傾向があるという点で不利で
ある。また、これ以上炭素含有量を小さくすると、欠陥
準位密度の増大率が多くなって光照射による暗導電率の
変化が大きくなったり、暗抵抗が低くなって阻止能が低
下することがあると考えられるため、注意を要するとい
う点で不利である。このような組成を実現するために
は、前述したようなガスを原料ガスとして用いたとき、
その流量や混合比率、希釈率、単位ガス流量あたりの電
力などを変化させればよい。ただし、プラズマCVDは
一般に装置敏感であるため、装置構成や条件によって、
一概にどのようにすればどのような組成に出来るとは定
まらず、簡易的には光学的測定(赤外吸収、可視光〜紫
外光の吸収係数の測定)などを用いて組成を予測し、二
次イオン質量分析法(SIMS)などを利用して定量し
ながら、条件を変化させることで所望の組成を設計して
いくことが望ましい。
【0092】また、効果的に注入を阻止するためには、
上部阻止層作成時に、導電性を制御する原子(周期律表
第13族に属する原子)を含むガスを添加することが望
ましい。
【0093】該層に含有される導電性を制御する原子
は、該層中に万偏なく均一に分布されるために、該層作
成時に常時一定量を供給しても良いし、あるいは不均一
に分布させるために添加するガス流量を時間的に変化さ
せてもよい。しかしながら、いずれの場合にも表面と平
行面内方向において、均一な分布で万偏なく含有させる
ために、作成時のガス分布を均一化するように注意す
る。
【0094】本発明において上部阻止層中に導電性を制
御する原子を含有させるには、前述したような第13族
元素を含むガスを、シリコン含有ガス、炭素含有ガス、
及び/又は希ガス・水素などの希釈ガスからなる原料ガ
スに適量添加することで実現される。具体的な第13族
元素の含有量としては、本発明の目的が効果的に達成で
きるように所望にしたがって適宜決定されるが、好まし
くは膜中の濃度がシリコン原子に対して100原子pp
m以上30000原子ppm以下となるように導入すれ
ばよい。100原子ppm未満になると、電子に対する
阻止能が低下する傾向があるという点で不利である。こ
のような観点から、望ましくは500原子ppm以上が
より好ましい。また、30000原子ppmを超える
と、帯電能ムラの改善効果が小さくなる傾向があるとい
う点で不利である。改善効果を最大限に得るためには1
0000原子ppm以下がより好ましい。また、添加量
の調整の容易性を高めるために適宜希釈ガスと共に添加
してもよい。第13族元素含有ガスの希釈ガスとしては
水素ガス、あるいは希ガスが好適である。
【0095】本発明において、上部阻止層の層厚は所望
の電子写真特性が得られること、及び経済的効果等の点
から好ましくは0.01〜1.0μm、より好ましくは
0.03〜0.7μm、最適には0.05〜0.5μm
とされるのが望ましい。層厚が0.01μmより薄くな
ると、表面からの電荷の注入阻止能が低下して帯電能が
低下する傾向があるという点で不利であり、1.0μm
より厚くすると、光導電層からのホールの吐き出し効率
が悪くなって感度、シフト、ゴーストなどの電子写真特
性が低下する傾向があるという点で不利である。また、
作製時間の延長による製造コストの増加を招くという点
でも不利である。
【0096】本発明において上部阻止層を形成するに
は、前述の光導電層を形成する方法と同様の真空堆積
法、即ち高周波を用いたプラズマCVD法が採用される
ことが好ましい。その際、本発明の効果を最大限に得る
ためには、放電に用いる高周波をVHF帯の周波数とす
ることが最も好ましい。また、これまでに述べた堆積条
件に加え、反応容器内の圧力、基体の温度などを適宜設
定する。
【0097】反応容器内のガス圧は、層設計にしたがっ
て適宜最適範囲が選択されるが、VHF帯の高周波を使
用する場合好ましくは1.0×10-2〜5.0×102
Pa、より好ましくは1.0×10-1〜5.0×101
Pa、最適には5.0×10-1〜2.0×101Paとす
る。
【0098】放電電力もまた同様に層設計にしたがって
適宜最適範囲が選択されるが、Si供給用のガスとC供
給用のガスの合計の流量に対する放電電力の比を、VH
F帯の高周波を用いる場合好ましくは1〜40、より好
ましくは3〜30、最適には5〜20の範囲に設定す
る。
【0099】さらに、上部阻止層形成の際の基体101
の温度は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択され
るが、通常の場合、好ましくは150〜350℃、より
好ましくは170〜330℃、最適には190〜310
℃とするのが望ましい。
【0100】上部阻止層を形成するため、シリコン含有
ガスと炭素含有ガスの混合比、導電性制御物質を含有す
るガスの添加量、反応容器内のガス圧、放電電力、基体
温度の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられ
るが、これらの層作製ファクターは通常は独立的に別々
に決められるものではなく、所望の特性を有する上部阻
止層を形成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて各
層作製ファクターの最適値を決めるのが望ましい。
【0101】〈表面層〉本発明においては、上述のよう
にして光導電層103上に形成された上部阻止層104
上に、更にアモルファスシリコン系の表面層105を形
成することができる。この表面層105は負帯電の電荷
阻止能を有し、更に耐湿性、連続繰り返し使用特性、電
気的耐圧性、使用環境特性、耐久性において本発明の目
的を達成するために設けられる。
【0102】本発明における表面層105は、アモルフ
ァスシリコン系の材料からなり、例えば、水素原子
(H)及び/またはハロゲン原子(X)を含有し、更に
炭素原子を含有するアモルファスシリコン(以下「a−
SiC:H,X」と表記する)の材料が好適に用いられ
る。更に、アモルファスシリコン層は、単層で表面層を
構成しても構わないし、複数層を積層して構成しても構
わない。
【0103】また、本発明における表面層105の厚さ
は、0.1〜1μmとされるのが望ましいものである。
層厚が0.1μmよりも薄いと電子写真感光体を使用中
に摩耗等の理由により表面層が失われてしまい易くなる
傾向があるという点で不利であり、1μmを越えると残
留電位の増加等による電子写真特性の低下がみられる傾
向があるという点で不利である。
【0104】図2は電源周波数としてVHF帯を用いた
高周波プラズマCVD法(以後「VHF−PCVD」と
略記する)による負帯電電子写真感光体の製造装置の一
例を示す模式的な構成図である。図2に示す製造装置の
構成は以下の通りである。
【0105】円筒形の反応容器202の底面には排気管
207が設置され、該排気管207の他端は不図示の排
気装置に接続されている。反応容器202の中心部に、
堆積膜の形成される1本の円筒状基体201が基体支持
体206に載置された状態で配置されている。
【0106】それぞれ発振周波数f1、f2の二つのV
HF電源208、215から高周波電力をマッチングボ
ックス209、216を介した後、合成し、高周波電極
204より反応容器202内に高周波電力を供給する構
成となっている。
【0107】電力分岐部213は、実質的に電磁波を閉
じ込めるシールド214内にシールド214とは電気的
に絶縁された状態で設置されている。即ち、絶縁体を介
して、反応装置に固定されている構成となっている。さ
らに、放電初期の真空処理安定性を向上するために、電
力分岐部213と高周波電極204の接続にはコンデン
サーを介して接続してもよい。
【0108】図3は電源周波数としてVHF帯を用いた
VHF−PCVD法による負帯電電子写真感光体の製造
装置の一例を示す模式的な構成図であり量産型の製造装
置を示す。図3に示す量産型の製造装置の構成は以下の
通りである。
【0109】図3に示す装置は、高周波電源308,3
17から発振された周波数の異なる高周波電力がそれぞ
れマッチングボックス309,318を介し、電力分岐
部313の給電点に印加され、反応容器302の外部に
設置された複数の高周波電極304から反応容器302
内に電力を供給され、反応容器302内にプラズマを生
起し堆積膜を形成する構成である。
【0110】高周波電極304から放出される高周波電
力を反応容器302に効率良く導入するために、円筒形
の反応容器302の側壁には誘電体であるセラミックス
が用いられている。具体的なセラミックス材料として
は、アルミナ、二酸化チタン、窒化アルミニウム、窒化
ホウ素、ジルコン、コージェライト、ジルコン−コージ
ェライト、酸化珪素、酸化ベリリウムマイカ系セラミッ
クス等が挙げられる。これらのうち、真空処理時の不純
物混入抑制、耐熱性等の点からアルミナ、窒化アルミニ
ウム、窒化ホウ素が好ましい。
【0111】さらに、図3に示す反応装置は反応容器3
02内に6本の円筒形基体301が同一円周上に等間隔
に設置される構成となっている。また、ガスを導入する
ガス導入管303が円筒形基体の配置円外の同一円周上
等間隔に6本設置されている。
【0112】また、図3に示す装置300の反応容器3
02の中心部に、排気口が配置され、排気配管307へ
排気が行われる。
【0113】図2、3の装置を用いた場合の堆積膜形成
の概略を図2の装置を例に、以下に説明する。
【0114】反応容器202内に円筒状基体201を設
置し、不図示の排気装置により排気管207へ、排気が
行われ反応容器202内を排気する。続いて、ヒーター
(不図示)により円筒状基体201を200℃〜300
℃程度の所定の温度に加熱・制御する。
【0115】円筒状基体201が所定の温度となったと
ころで、不図示の原料ガス供給手段を介して、原料ガス
を反応容器202内に導入する。原料ガスの流量が設定
流量となり、また、反応容器202内の圧力が安定した
のを確認した後、前述した関係を満たす2つの高周波電
力を高周波電源208、215よりマッチングボックス
209、216を介して高周波電極204へ供給する。
【0116】これにより、反応容器202内に2つの異
なる周波数の高周波電力が導入され、反応容器202内
にグロー放電が生起し、原料ガスは励起解離して円筒状
基体上に堆積膜が形成される。
【0117】所望の膜厚の形成が行なわれた後、高周波
電力の供給を止め、続いて原料ガスの供給を停止して堆
積膜の形成を終える。同様の操作を複数回繰り返すこと
によって、所望の多層構造の光受容層が形成される。
【0118】堆積膜形成中、回転軸210を介して円筒
状基体201をモーター211により所定の速度で回転
させることにより、円筒状基体201表面全周に渡って
堆積膜が形成される。
【0119】図4は、a−Si感光体を用いたデジタル
複写機の画像形成プロセスを示す概略図であって、矢印
X方向に回転する感光体401の周辺には、主帯電器4
02、現像機404、転写帯電器405、分離帯電器4
06、クリーナー409、搬送系408、除電光源42
0などが配設されている。
【0120】以下、さらに具体的に画像形成プロセスを
説明すると、感光体401は高電圧を印加した主帯電器
402により一様に帯電され、これにレーザーユニット
418から発せられた光によって静電潜像が形成され
る。レーザーユニット418の制御には、CCDからの
信号が用いられる。即ち、ランプ410から発した光が
原稿台ガラス411上に置かれた原稿412に反射し、
ミラー413、414、415を経由し、レンズユニッ
ト416によって結像され、画像処理部417によって
電気信号に変換された信号が導かれている。
【0121】この潜像に現像器404からネガ極性トナ
ーが供給されてトナー像が形成される。
【0122】一方、転写紙供給系403を通って、レジ
ストローラー422によって先端タイミングを調整さ
れ、感光体401方向に供給される転写材Pは高電圧を
印加した転写帯電器405と感光体401の間隙に於て
背面から、トナーとは逆極性の正電界を与えられ、これ
によって感光体表面のネガ極性のトナー像は転写材Pに
転写される。次いで、高圧AC電圧を印加した分離帯電
器406により、転写材Pは転写搬送系408を通って
定着装置424に至り、トナー像が定着されて装置外に
搬出される。
【0123】感光体401上に残留するトナーはクリー
ニングユニット409のクリーニングローラー407及
び、クリーニングブレード421によって回収され、残
留する静電潜像を除電光源420によって消去する。
【0124】本発明に於いては、a−Si感光体の光学
特性に適した潜像露光、除電光の波長を用いることが好
ましい。潜像露光には、500nm〜660nmの波長
を用いるのが望ましく、より好ましくは600nm〜6
60nmの波長を用いるのが望ましい。この様な範囲の
波長を用いることにより、光メモリーを最小限に抑える
ことが可能となる。また、感光体の層構成の厚さ、キャ
リアの発生領域が波長に依存して決定される為、なるべ
く単色光かそれに近い波長分布を持つものが光源として
好ましい。この様な波長範囲は白色光とフィルターを用
いても実現可能だが、半導体レーザー、LEDが発達し
てきており、これらは光源としてより好ましい。また、
このような光源の使用は、デジタル複写機やプリンタに
最適である。一方、除電光には、潜像露光よりも波長が
長く、且つ600nm〜680nmの波長を用いるのが
好ましい。この範囲において、少ない光量でも除電が可
能であり、光メモリーが少なく且つ帯電能の低下が最小
限に抑えられ、且つ温度特性、感度のの直線性もよく、
極めて良好な電子写真特性が実現できる。除電光におい
ても、潜像露光と同様の理由から単色光か、それに近い
波長分布をもつものが光源として好ましく、LEDなど
が構成上簡便であり、最適である。
【0125】以下、本発明を実施例を用いて具体的に説
明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるもので
はない。
【0126】
【実施例】〔実施例1〕図2に示すVHF−PCVD法
による感光体の製造装置を用い、直径80mmの鏡面加
工を施したアルミニウムシリンダー(基体)上に表1に
示した条件で電荷注入阻止層、光導電層、上部阻止層、
表面層の順に成膜を行って負帯電電子写真感光体を作製
した。また、電子写真感光体の上部阻止層に相当する単
層膜のサンプルを、表1に示す条件で、被処理基板とし
て1×1.5インチ(25.4mm×38.1mm)の
研磨ガラス(コーニング社製、#7059)を用い、1
μmの膜厚で作成した。ただし感光体の作成にあたって
は、予め上記サンプル製造においてSiH4ガスとCH4
ガスの流量を様々に変え、得られた膜の炭素とシリコン
の組成割合C/(Si+C)を二次イオン質量分析法
(SIMS)で調べ、得られた膜の炭素とシリコンの組
成割合C/(Si+C)が0.05、0.2、0.4、
0.6である上部阻止層の条件を求めておき、この条件
で感光体を作成した。
【0127】このようにして得られた負帯電用電子写真
感光体に対し3mW/cm2の光量を1時間照射した後
の電位変化率を測定した。
【0128】〔比較例1〕図2に示すVHF−PCVD
法による感光体の製造装置により被処理基板として、1
×1.5インチの研磨ガラス(コーニング社製、#70
59)を用い、SiH4ガスとCH4ガスの流量を様々に
変え、上部阻止層のサンプルを1μmの膜厚で作成し、
得られた膜の炭素とシリコンの組成割合C/(Si+
C)を二次イオン質量分析法(SIMS)で調べた。
【0129】実施例1と同様に図2に示すVHF−PC
VD法による感光体の製造装置を用い、実施例1と同様
に直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリン
ダー(基体)上に、表1に示した条件で電荷注入阻止
層、光導電層、上部阻止層、表面層の順に成膜を行って
負帯電用電子写真感光体を作成し、また上部阻止層に相
当する単層膜サンプルを作製した。
【0130】なお本比較例では上部阻止層は、SiH4
ガスとCH4ガスの流量を様々に変え、膜の炭素とシリ
コンの組成割合C/(Si+C)を二次イオン質量分析
法(SIMS)で調べ、得られた膜の炭素とシリコンの
組成割合C/(Si+C)が0.04、0.65である
上部阻止層の条件で作成した。このようにして得られた
負帯電感光体に対し3mW/cm2の光量を1時間照射
した後の電位変化率を測定した。
【0131】このように、実施例1、比較例1で作製し
た負帯電電子写真感光体を電子写真装置(キヤノン製、
商品名:iR5000の電子写真装置を評価用に改造し
た負帯電システム即ち画像部を露光するイメージ露光法
による電子写真装置)にセットして、光劣化促進試験を
行った後、「帯電能ムラ」、「感度ムラ」の特性評価を
行った。評価は以下のような具体的評価法により行っ
た。
【0132】「電位変化率」作成された負帯電電子写感
光体を光に曝さずに(株)オプテル社製フィルタ式分光
パワーユニット(KMND1000−0)により655
nmの単一波長光を3mW/cm2の光量で負帯電電子
写真感光体に対し1時間照射し、その後暗電位が400
Vとなるように帯電条件を設定し、更に像露光を照射し
明電位が暗電位の1/2にした時の表面電位に於いて6
55nmの単一波長光を照射した部分と照射しない部分
との電位差を測定し該光照射しない部分に対して何%変
化したかを測定する。従って、数値が小さいほど光に対
する劣化が少ないことを示す。
【0133】上記測定方法を図5を用いて概念的に説明
する。まず、感光体の一部(図5ではAで示される領
域)に655nmの単一波長光を1時間照射する。次に
単一波長光を照射していない部分(図5ではBで示され
る領域)の暗電位を400vに設定した後、像露光を照
射し像露光量を調整する事によって暗電位の1/2に明
電位を設定する。この帯電条件及び露光条件で単一波長
光を照射した部分(図5ではAで示される領域)の明電
位を測定する。次いで、図5で示したB領域に対してA
領域の明電位が何%変化したかを求め、電位変化率とす
る。
【0134】「光劣化促進試験」作成された負帯電電子
写感光体に対しハロゲン光をデジタル照度計T−1M
(ミノルタカメラ(株)製)により9000Luxの光
量に調整し負帯電電子写感光体の全面に5時間照射す
る。
【0135】「帯電能ムラ」電子写真装置のプロセスス
ピードを265mm/sec、前露光(波長650nm
のLED)4Lux・sec、像露光には波長655n
mの半導体レーザーをセットした。その後、帯電器の電
流値を1000μAに設定し、電子写真装置の現像器位
置にセットした表面電位計(TREK社製 Model
344)の電位センサーにより感光体の表面電位を測
定し、それを帯電能とし、この帯電能を軸方向に11点
測定し、感光体中央位置に対して帯電能の差が最も大き
い位置と比較し中央位置の値を100とした時の相対値
でムラをあらわす。従って、値が100に近いほど帯電
能ムラが少なく良好である事を示す。
【0136】「感度ムラ」帯電能と同様に暗電位が40
0Vとなるように帯電条件を設定し、明電位が50Vに
なる時の像露光光量を測定し、それを感度とし、この感
度を軸方向に11点測定し、感光体中央位置に対して感
度の差が最も大きい位置と比較し中央位置の値を100
とした時の相対値でムラをあらわす。従って、値が10
0に近いほど感度ムラが少なく良好である事を示す。
【0137】評価結果を表2に示す。実施例1の条件下
で上部阻止層の炭素とシリコンの組成割合を0.05≦
C/(Si+C)≦0.6の範囲とすれば、電位変化率
が−10%〜10%となり、これによって光劣化による
帯電能ムラ、感度ムラを抑えることが可能であることが
判明した。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】〔実施例2〕図2に示すVHF−PCVD
法による感光体の製造装置を用い、直径80mmの鏡面
加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)上に表3
に示した条件で電荷注入阻止層、光導電層、上部阻止
層、表面層の順に成膜を行って負帯電電子写真感光体を
作製した。また、電子写真感光体の上部阻止層に相当す
る単層膜のサンプルを、表3に示す条件で、被処理基板
として1×1.5インチ(25.4mm×38.1m
m)の研磨ガラス(コーニング社製、#7059)を用
い、1μmの膜厚で作成した。ただし感光体の作成にあ
たっては、予め上記サンプルの製造においてB26ガス
の流量を様々に変え、二次イオン質量分析法(SIM
S)でB原子のSi原子とC原子の和に対する濃度を調
べ、得られた膜のB原子量が100原子ppm、500
0原子ppm、10000原子ppm、30000原子
ppmである上部阻止層の条件を求めておき、この条件
で感光体をで作成した。
【0141】このようにして得られた負帯電用電子写真
感光体に対し3mW/cm2の光量を1時間照射した後
の電位変化率を測定した。
【0142】〔比較例2〕図2に示すVHF−PCVD
法による感光体の製造装置を用い、実施例2と同様に直
径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー
(基体)上に、表3に示した条件で電荷注入阻止層、光
導電層、上部阻止層、表面層の順に成膜を行って負帯電
用電子写真感光体を作成し、また上部阻止層に相当する
単層膜サンプルを作製した。
【0143】なお本比較例では上部阻止層は、B26
スの流量を様々に変え、B26の濃度が異なる上部阻止
層のサンプルを1μmの膜厚で作成し、二次イオン質量
分析法(SIMS)でB原子のSi原子とC原子の和に
対する濃度を調べ、得られた膜のB原子量が50原子p
pm、35000原子ppmである上部阻止層の条件で
作成した。このようにして得られた負帯電感光体に対し
3mW/cm2の光量を1時間照射した後の電位変化率
を測定した。このように、実施例2、比較例2で作製し
た負帯電電子写真感光体を電子写真装置(キヤノン製、
商品名:iR5000の電子写真装置を評価用に改造し
た負帯電システム即ち画像部を露光するイメージ露光法
による電子写真装置)にセットして、「画像流れ」の評
価を行った後、実施例1と同様の光劣化促進試験を行っ
た後、「帯電能ムラ」、「感度ムラ」の特性評価を行っ
た。画像流れ評価は以下のような具体的評価法により行
った。
【0144】「画像流れ」画像流れの評価は、黒色部と
白色部が交互に並んだラインアンドスペースパターン
を、様々な線幅に対して作成したテストチャートを用意
し、解像しうる最小の線幅を測定することにより行っ
た。即ち、線幅を狭めていった時に、ある線幅以下にな
ると画像上の隣り合う黒色部の輪郭の画像流れによる微
少なボケが重なり合い、事実上解像不可となってしま
う。その時の線幅を画像流れの程度を表す指標とした。
【0145】以上、得られた結果を表4に示す。表4に
おいて、画像流れの度合いに関しては、比較例1に於い
て上部阻止層の炭素とシリコンの組成割合C/(Si+
C)が0.65の場合を基準として以下のように相対評
価で示している。 ◎:比較例1で作製した場合よりも20%以上改善 ○:比較例1で作製した場合よりも10%〜20%改善 △:比較例1で作製した場合と同等(10%未満の差
異) ×:比較例1で作製した場合よりも劣っている。
【0146】表4の結果から明らかなように、実施例2
の条件下で上部阻止層のB26原子の含有量が100原
子ppm〜30000原子ppmの範囲とすれば、電位
変化率が−10%〜10%となり、これによって画像流
れ、光劣化による帯電能ムラ、感度ムラを抑えることが
可能である事が判明した。
【0147】
【表3】
【0148】
【表4】
【0149】〔実施例3〕図2に示すVHF−PCVD
法による感光体の製造装置を用い、直径80mmの鏡面
加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)上に表5
に示した条件で電荷注入阻止層、光導電層、上部阻止
層、表面層の順に成膜を行って負帯電電子写真感光体を
作製した。但し上部阻止層の膜厚は0.01μm、0.
1μm、0.5μm、1μmとした。このようにして得
られた負帯電感光体に対し3mW/cm2の光量を1時
間照射した後の電位変化率を測定した。
【0150】〔比較例3〕図2に示すVHF−PCVD
法による感光体の製造装置を用い、実施例3と同様に直
径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー
(基体)上に、表5に示した条件で電荷注入阻止層、光
導電層、上部阻止層、表面層の順に成膜を行って負帯電
電子写真感光体を作成し、また上部阻止層に相当する単
膜サンプルを作製した。
【0151】なお本比較例では上部阻止層の膜厚を0.
005μm、1.5μmとした。このようにして得られ
た負帯電用電子写真感光体に対し3mW/cm2の光量
を1時間照射した後の電位変化率を測定した。
【0152】このように、実施例3、比較例3、で作製
した負帯電電子写真感光体を電子写真装置(キヤノン
製、商品名:iR5000の電子写真装置を評価用に改
造した負帯電システム即ち画像部を露光するイメージ露
光法による電子写真装置)にセットして、「帯電能」、
「感度」の特性評価を行った。
【0153】以上、得られた結果を表6に示す。表6に
おいて「帯電能」、「感度」に関しては、実施例1に於
いて上部阻止層の炭素とシリコンの組成割合C/(Si
+C)が0.4の場合を基準として以下のように相対評
価で示している。 ○:実施例1で作製した場合と同等 △:実施例1で作製した場合よりも10%未満の差異で
劣る ×:実施例1で作製した場合よりも10%〜20%劣
る。
【0154】
【表5】
【0155】
【表6】
【0156】〔実施例4〕図3に示すVHF−PCVD
法による量産型の製造装置を用い、直径80mmの鏡面
加工を施した6本のアルミニウムシリンダー(基体)上
に表7に示した条件で電荷注入阻止層、光導電層、上部
阻止層、表面層の順に成膜を行って負帯電電子写真感光
体を作製した。また、電子写真感光体の上部阻止層に相
当する単層膜のサンプルを、表7に示す条件で、被処理
基板として1×1.5インチ(25.4mm×38.1
mm)の研磨ガラス(コーニング社製、#7059)を
用い、1μmの膜厚で作成した。ただし感光体の作成に
あたっては、予め上記サンプル製造においてSiH4ガ
スとCH4ガスの流量を様々に変え、得られた膜の炭素
とシリコンの組成割合C/(Si+C)を二次イオン質
量分析法(SIMS)で調べ、得られた膜の炭素とシリ
コンの組成割合C/(Si+C)が0.05、0.2、
0.4、0.6である上部阻止層の条件を求めておき、
この条件で感光体を作成した。
【0157】このようにして得られた負帯電用電子写真
感光体に対し3mW/cm2の光量を1時間照射した後
の電位変化率を測定した。
【0158】〔比較例4〕実施例4と同様に図3に示す
VHF−PCVD法による量産型の製造装置を用い、実
施例4と同様に直径80mmの鏡面加工を施した6本の
アルミニウムシリンダー(基体)上に、表7に示した条
件で電荷注入阻止層、光導電層、上部阻止層、表面層の
順に成膜を行って負帯電電子写真感光体及び上部阻止層
に相当する単膜サンプルを作製した。
【0159】なお本比較例では上部阻止層は、SiH4
ガスとCH4ガスの流量を様々に変え、膜の炭素とシリ
コンの組成割合C/(Si+C)を二次イオン質量分析
法(SIMS)で調べ、得られた膜の炭素とシリコンの
組成割合C/(Si+C)が0.04、0.65である
上部阻止層の条件で作成した。このようにして得られた
負帯電感光体に対し3mW/cm2の光量を1時間照射
した後の電位変化率を測定した。
【0160】このように、実施例4比較例4で作製した
負帯電電子写真感光体を電子写真装置(キヤノン製、商
品名:iR5000の電子写真装置を評価用に改造した
負帯電システム即ち画像部を露光するイメージ露光法に
よる電子写真装置)にセットして、光劣化促進試験を行
う前及び光劣化促進試験後の、「帯電能」、「感度」に
関して6本間の特性ムラを評価した。評価は6本の中で
基準となる負帯電電子写真感光体を決め、基準となる負
帯電電子写真感光体の「帯電能」、「感度」を100と
した時の相対比較とした。従って数値が100に近いほ
ど6本間の特性ムラが小さく良好である事を示す。尚、
「帯電能」、「感度」は、負帯電電子写真感光体の中央
部を測定した値であり、基準となる感光体に対して「帯
電能」、「感度」の差が一番大きい感光体との相対比較
を示す。
【0161】以上、得られた結果を表8に示す。
【0162】表8の結果から明らかなように、量産型の
製造装置に於いても本発明の範囲内の負帯電電子写真感
光体は製造初期及び、光劣化による6本間の特性バラツ
キが発生しない事が判明した。
【0163】
【表7】
【0164】
【表8】
【0165】
【発明の効果】本発明によれば、帯電能、感度の向上と
画像流れの低減を高次元で両立して画像品質を飛躍的に
向上させた、シリコン原子を母体とした非晶質材料で構
成された負帯電電子写真感光体が得られる。
【0166】本発明によれば、負帯電用電子写真感光体
に対し該負帯電用電子写真感光体を用いる電子写真装置
で使用される露光波長のうち最も長波長である単一波長
光を3mW/cm2の光量を1時間照射した後の電位変
化率が−10%〜10%の範囲とすることにより電気
的、光学的、光導電的特性が使用環境にほとんど依存す
ることなく実質的に常時安定しており、耐光疲労に優
れ、繰り返し使用に際しては部分的な劣化現象を起こさ
ず、特性ムラのない画像品質の良好な、負帯電用電子写
真感光体及び電子写真装置を提供することが可能であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の負帯電用電子写真感光体の好適な実施
例の層構成を説明するための模式的説明図である。
【図2】本発明の負帯電用電子写真感光体を形成するた
めの製造装置の一例を模式的に示した説明図である。
【図3】本発明の負帯電用電子写真感光体を形成するた
めの量産型製造装置の一例を模式的に示した説明図であ
る。
【図4】本発明の負帯電用電子写真感光体を用いた負帯
電用電子写真装置の一例を模式的に示した説明図であ
る。
【図5】電位変化率を測定する際の照射・露光を行う領
域を説明するための模式図である。
【符号の説明】
101 導電性基体 102 電荷注入阻止層 103 光導電層 104 上部阻止層 105 表面層 200、300 真空処理装置 201、301 導電性基体 202、302 反応容器 203、303 ガス導入管 204、304 高周波電極 205、305 高周波電力供給システム 206、306 基体支持体 207、307 排気管208、308
第一の高周波電源 209、309 第一のマッチングボックス 210、310 回転軸 211、311 モーター 212、312 減速ギア 213、313 電力分岐部 214、315 シールド 215、317 第二の高周波電源 216、318 第二のマッチングボックス 401 電子写真感光体 402 主帯電器 403 転写紙供給系 404 現像器 405 転写帯電器 406 分離帯電器 407 クリーニングローラー 408 搬送系 409 クリーナー 410 ランプ 411 原稿台 412 原稿 413、414、415 ミラー 416 レンズユニット 417 画像処理部 418 レーザーユニット 419 ミラー 420 除電光源 421 クリーニングブレード 422 レジストローラー 424 定着装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 村山 仁 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 小澤 智仁 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 土田 伸史 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 2H068 DA03 DA05 DA08 DA14 DA17 DA18 DA19 DA23 EA25 EA36 FA01 FA12 FC03

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性基体上に、シリコン原子を母体と
    する非晶質材料で構成される光導電層と、表面層とを少
    なくとも有する負帯電電子写真感光体において、該感光
    体に対し、該感光体を用いる電子写真装置で使用される
    露光波長のうち最も長波長である光の単一波長光を3m
    W/cm2の光量で1時間照射した後の電位変化率が−
    10%〜10%の範囲であって、該電位変化率が、該感
    光体の該照射がなされない領域について暗電位を像露光
    により1/2の値にしたときの明電位に対する、該感光
    体の該照射がなされた領域の電位の変化率であることを
    特徴とする負帯電用電子写真感光体。
  2. 【請求項2】 前記光導電層及び表面層の間に、上部阻
    止層を有する請求項1記載の負帯電用電子写真感光体。
  3. 【請求項3】 前記上部阻止層が、炭素原子および第1
    3族原子を含有する、シリコン原子を母体とする非晶質
    材料で構成される請求項2記載の負帯電用電子写真感光
    体。
  4. 【請求項4】 前記上部阻止層において、シリコン原子
    (Si)と炭素原子(C)の和に対する炭素原子(C)
    の原子数比C/(Si+C)が、0.05≦C/(Si
    +C)≦0.6の範囲である請求項3記載の負帯電用電
    子写真感光体。
  5. 【請求項5】 前記上部阻止層に含有される第13族原
    子の含有量が、100原子ppm以上30000原子p
    pm以下である請求項3または4記載の負帯電用電子写
    真感光体。
  6. 【請求項6】 前記上部阻止層の層厚が0.01μm〜
    1μmである請求項2〜5のいずれか一項記載の負帯電
    用電子写真感光体。
  7. 【請求項7】 前記上部阻止層が、30MHz以上25
    0MHz以下の周波数範囲の高周波電力を少なくとも2
    つ含む高周波電力を用いるプラズマCVD法により形成
    され、かつ、該周波数範囲の高周波電力が有する電力値
    の中で最も大きい電力値と次に大きい電力値を有する高
    周波電力について、そのうち周波数の高い方の高周波電
    力の電力値をP1、周波数の低い方の高周波電力の電力
    値をP2としたとき、前記電力値P1およびP2が 0.1≦P2/(P1+P2)≦0.9 を満たす請求項2〜6のいずれか一項に記載の負帯電用
    電子写真感光体。
  8. 【請求項8】 負帯電用電子写真感光体を備え、該感光
    体に対し除電露光、負帯電、像露光、現像および転写を
    順次繰り返して画像形成を行なう電子写真装置におい
    て、該感光体が、導電性基体上に少なくとも電荷注入阻
    止層、光導電層、上部阻止層および表面層を有し、該感
    光体に対し、該除電露光及び該像露光のうち最も長波長
    である光の単一波長光を3mW/cm2の光量で1時間
    照射した後の電位変化率が−10%〜10%の範囲であ
    って、該電位変化率が、該感光体の該照射がなされない
    領域について暗電位を像露光により1/2の値にしたと
    きの明電位に対する、該感光体の該照射がなされた領域
    の電位の変化率であることを特徴とする電子写真装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP1536292A2 (en) * 2003-11-26 2005-06-01 Canon Kabushiki Kaisha Electrophotographic apparatus
JP2008122727A (ja) * 2006-11-14 2008-05-29 Fuji Xerox Co Ltd 画像形成装置

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