JP2003107768A - 負帯電用電子写真感光体 - Google Patents

負帯電用電子写真感光体

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JP2003107768A
JP2003107768A JP2001301934A JP2001301934A JP2003107768A JP 2003107768 A JP2003107768 A JP 2003107768A JP 2001301934 A JP2001301934 A JP 2001301934A JP 2001301934 A JP2001301934 A JP 2001301934A JP 2003107768 A JP2003107768 A JP 2003107768A
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atom
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JP2001301934A
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Tomohito Ozawa
智仁 小澤
Makoto Aoki
誠 青木
Shigenori Ueda
重教 植田
Hitoshi Murayama
仁 村山
Nobufumi Tsuchida
伸史 土田
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Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電気的特性、耐光疲労、繰返し使用時の劣化
等に安定して優れ、良好な画像品質が得られる負帯電用
電子写真感光体を提供する。 【解決手段】 支持体上にSi原子を母材とする非晶質
材料の光導電層、Si原子とC原子を母材とし13族元
素を含む非晶質材料の上部阻止層、Si原子とC原子を
母材とする非晶質材料及び/又はC原子を母材とする非
晶質材料の表面層がこの順に積層された負帯電用電子写
真感光体において、、上部阻止層で13族原子が100
〜30000原子ppmであり、光導電層内、上部阻止
層内で光学的バンドギャップ(Eg)が最大となる位置
でのEg及び屈折率を夫々Eg1及びn1、Eg2及び
n2、感光体最表面でのこれらをEg3及びn3と表す
とき、2.0eV≦Eg2≦2.3eV、2.4≦n2
≦3.3、Eg1≦Eg3≦Eg2、n3<n2<n1
である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光(ここでは広義の
光であって、紫外線、可視光線、赤外線、X線、γ線な
どを意味する。)のような電磁波に対して感受性のある
負帯電用電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真分野において、光受容部材にお
ける光受容層を形成する光導電材料としては、高感度
で、SN比[光電流(Ip)/暗電流(Id)]が高
く、照射する電磁波のスペクトル特性に適合した吸収ス
ペクトルを有すること、光応答性が早く、所望の暗抵抗
値を有すること、使用時において人体に対して無害であ
ること等の特性が要求される。特に、事務機としてオフ
ィスで使用される電子写真装置内に組み込まれる電子写
真感光体の場合には、上記の使用時における無公害性は
重要な点である。
【0003】上記の点に優れた性質を示す光導電材料
に、アモルファスシリコンすなわちシリコン原子を母材
とする非晶質材料(以下「a−Si」と表記する)があ
り、電子写真感光体の光受容部材として注目されてい
る。
【0004】このような光受容部材は、一般的には、導
電性支持体を50℃〜350℃に加熱し、この支持体上
に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティン
グ法、熱CVD法、光CVD法、プラズマCVD法等の
成膜法により、a−Siからなる光導電層を形成する。
なかでもプラズマCVD法、すなわち、原料ガスを高周
波あるいはマイクロ波グロー放電によって分解し、支持
体上にa−Si堆積膜を形成する方法が好適なものとし
て実用に付されている。
【0005】例えば、特開昭57−115556号公報
には、a−Si堆積膜で構成された光導電層を有する光
導電部材の、暗抵抗値、光感度、光応答性等の電気的、
光学的、光導電的特性及び耐湿性等の使用環境特性、さ
らには経時安定性について改善を図るため、シリコン原
子を母体としたアモルファス材料で構成された光導電層
上に、シリコン原子及び炭素原子を含む非光導電性のア
モルファス材料で構成された表面障壁層を設ける技術が
記載されている。更に、特開昭60−67951号公報
には、a−Si、炭素、酸素及び弗素を含有してなる透
光絶縁性オーバーコート層を積層する感光体についての
技術が記載され、特開昭62−168161号公報に
は、表面層として、シリコン原子と炭素原子と41〜7
0原子%の水素原子を構成要素として含む非晶質材料を
用いる技術が記載されている。
【0006】そして、特開平6−242623号公報に
は負帯電用電子写真用感光体の光導電層と表面層の間に
非晶質珪素を主体とし、かつ50ppm未満のホウ素を
含有するか、または導電性を支配する元素を含まない正
孔捕獲層を設けて優れた電子写真特性が得られる技術が
開示されており、特開平6−273954号公報には負
帯電用a−Si感光体において0.15乃至10μmで
不純物元素として窒素を含む下部阻止層を、導電性支持
体と光導電層の間に設けることで長寿命、高信頼性の電
子写真感光体を得る技術が開示されている。
【0007】これらの技術により、電子写真感光体の電
気的、光学的、光導電的特性及び使用環境特性が向上
し、それに伴って画像品質も向上してきた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
a−Si系材料で構成された電子写真感光体は、暗抵抗
値、光感度、光応答性等の電気的、光学的、光導電特
性、及び使用環境特性の点、さらには経時安定性および
耐久性の点において、各々個々には特性の向上が図られ
てはいるが、総合的な特性向上を図る上でさらに改良さ
れる余地が存在するのが実状である。
【0009】特に、電子写真装置の高画質、高速化、高
耐久化は急速に進んでおり、電子写真感光体においては
電気的特性や光導電特性の更なる向上とともに、帯電
能、感度を維持しつつあらゆる環境下で大幅に性能を延
ばすことが求められている。
【0010】a−Si系材料で構成された光導電層、上
部阻止層及び表面層を積層させて作成した負帯電用電子
写真感光体は、作成条件により以下のような現象が生じ
ることがある。
【0011】露光によって生成したキャリアが光導電層
から感光体表面側へ移動する過程において、上部阻止層
でのホールの移動度が低い場合、上部阻止層に起因した
残留電位の増加、暗減衰の増加及び感度低下を生じるこ
とがある。逆にホールの移動度が高い場合、上部阻止層
と表面層の界面近傍でホールの横流れが生じ、画像流れ
を生じることがある。
【0012】また、上部阻止層でのエレクトロンの移動
度が高い場合、エレクトロンが上部阻止層を通過するた
めに帯電能の低下及び暗減衰の増加を生じることがあ
る。
【0013】そして、シリコン原子と炭素原子の和に対
する炭素原子の含有量が少ない上部阻止層を用いた負帯
電用電子写真感光体において、高い電気的、光導電特性
を有する感光体であっても光の照射により経時的に特性
低下を生じることがある。
【0014】更に、シリコン原子と炭素原子の和に対す
る炭素原子の含有量が適正な量でない上部阻止層を用い
た負帯電用電子写真感光体では、光導電層と上部阻止層
の間もしくは上部阻止層と表面層の間で剥れを生じるこ
とがある。
【0015】したがって、電子写真感光体を設計する際
に、上記したような課題が解決されるように電子写真感
光体の層構成、各層の化学的組成など総合的な観点から
の改良を図ることが必要とされている。
【0016】本発明は、上述した従来のa−Siで構成
された負帯電用電子写真感光体における諸問題を解決す
ることを目的とするものである。
【0017】本発明の主たる目的は、電気的、光学的、
光導電的特性が使用環境にほとんど依存することなく実
質的に常時安定しており、耐光疲労に優れ、繰り返し使
用に際しては劣化現象を起こさず、残留電位がほとんど
観測されず、膜剥れが生じず、更に画像品質の良好な負
帯電用電子写真感光体を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明者らは上部阻止層並びに上部阻止層と表面層
の界面近傍におけるキャリアの挙動に着目し、上部阻止
層におけるシリコン原子と炭素原子及び導電性を制御す
る物質である周期律表第13族に属する原子の含有量及
び分布と光疲労、帯電能、感度、膜剥れ及び残留電位と
の関係について鋭意検討した結果、光導電層、上部阻止
層、表面層の光学的バンドギャップ、屈折率を適切に制
御することにより上記目的を達成できるという知見を得
た。
【0019】より具体的には、本発明者らは、少なくと
もシリコン原子、炭素原子、周期律表第13族に属する
原子を含有する非晶質材料で構成された上部阻止層を有
する感光体において、特定範囲内の光学的バンドギャッ
プ、屈折率になるように上部阻止層を作成した負帯電用
電子写真感光体は、実用上著しく優れた特性を示すばか
りでなく、従来の負帯電用電子写真感光体と比べてみて
も帯電能の増加及び光の照射による経時的な特性低下に
おいて凌駕し、優れた特性を有していることを見出し
た。
【0020】更に、本発明者らは、光導電層、上部阻止
層及び表面層の光学的バンドギャップ、屈折率が特定の
関係を有するように制御することにより、残留電位、感
度等の負帯電用電子写真感光体特性の向上させることが
できるという新たな知見を得た。
【0021】このようなことから、本発明は以下のよう
な発明を提供するものである。
【0022】すなわち本発明は、支持体上に、少なくと
も、シリコン原子を母材とする非晶質材料からなる光導
電層、シリコン原子と炭素原子を母材とし周期律表第1
3族元素を含有する非晶質材料からなる上部阻止層、な
らびに、シリコン原子と炭素原子を母材とする非晶質材
料及び/又は炭素原子を母材とする非晶質材料からなる
表面層がこの順に積層されてなる負帯電用電子写真感光
体において、該上部阻止層においては、シリコン原子と
炭素原子の和に対する周期律表第13族に属する原子の
含有量が100原子ppm以上30000原子ppm以
下であり、かつ、該光導電層内で光学的バンドギャップ
が最大となる位置での光学的バンドギャップおよび屈折
率をそれぞれEg1およびn1、該上部阻止層内で光学
的バンドギャップが最大となる位置での光学的バンドギ
ャップおよび屈折率をそれぞれEg2およびn2、感光
体最表面での光学的バンドギャップおよび屈折率をそれ
ぞれEg3およびn3と表すとき、 2.0eV≦Eg2≦2.3eV、 2.4≦n2≦3.3、 Eg1≦Eg3≦Eg2、および n3<n2<n1 の関係が成り立つことを特徴とする負帯電用電子写真感
光体である。
【0023】本発明の感光体においては、前記上部阻止
層において、炭素原子の濃度が層厚方向に変化する領域
を有することが好ましい。
【0024】また、前記上部阻止層におけるシリコン原
子と炭素原子の和に対する炭素原子の含有量の比をC/
(Si+C)と表すとき、 0.05≦C/(Si+C)≦0.60 であることも好ましい。
【0025】前記上部阻止層において、周期律表第13
族に属する原子の濃度が層厚方向に変化することも好ま
しい。
【0026】前記上部阻止層内に、支持体から感光体最
表面に向かう方向に炭素原子の濃度が連続的に増加する
領域を有することも好ましい。
【0027】以下、本発明が完成された経緯と、本発明
の作用等について説明する。
【0028】本発明者らは、光導電層と表面層の間に上
部阻止層を導入し、この上部阻止層の役割と負帯電用電
子写真感光体特性との関係を種々の条件に渡って調べた
結果、上部阻止層の光学的バンドギャップ及び屈折率と
光導電層、表面層の光学的バンドギャップ、屈折率の関
係が負帯電用電子写真感光体特性の向上に大きく関与し
ていることを見い出した。
【0029】従来、正帯電用電子写真感光体に用いられ
ていたシリコン原子と炭素原子を母材とする非晶質材料
で構成される表面層を負帯電電子写真感光体に用いる
と、負帯電電荷は表面層を通過し、表面層の帯電電荷を
阻止する能力が充分ではなく、負帯電電子写真感光体と
しての役割を充分に果たすことが困難な場合が多い。そ
のため、周期律表第13族に属する原子を含有させても
負帯電電荷の阻止能力の向上とキャリアの走行性の改善
を両立することが困難であるので、従来の表面層よりも
シリコン原子の含有量が多いシリコン原子と炭素原子を
母材とする非晶質材料で構成される表面層を用いること
によって、適切に周期律表第13族に属する原子を含有
させることができた。しかし、表面層全てを従来の表面
層よりもシリコン原子の含有量が多いシリコン原子と炭
素原子を母材とする非晶質材料で構成される表面層にす
ると硬度が低下して表面保護膜としては十分機能しな
い。そこで、優れた負帯電電子写真感光体特性を得るた
めには、従来の表面層よりもシリコン原子の含有量が多
い非晶質炭化珪素を用いた上部阻止層と、その上に表面
保護膜として十分機能する表面層に分離することが効果
的である。
【0030】このことから、本発明者らは、上部阻止層
におけるキャリアの挙動に関する検討として、上部阻止
層の役割と負帯電用電子写真感光体特性との関係につい
て検討を行った。具体的には、シリコン原子と炭素原子
の和に対する炭素原子の含有量と周期律表第13族に属
する原子の含有量を変化させて、負帯電用電子写真感光
体の特性との関係について検討を行った。
【0031】その結果、光導電層、上部阻止層及び表面
層が順次積層されてなる電子写真感光体において、上部
阻止層はシリコン原子と炭素原子の和に対する周期律表
第13族に属する原子の含有量が100原子ppm以上
30000原子ppm以下の範囲とし、更に上部阻止層
内でバンドギャプが最大となる位置での光学的バンドギ
ャップ及び屈折率をEg2、n2としたとき、光学的バ
ンドギャップが2.0eV≦Eg2≦2.3eV、か
つ、屈性率が2.4≦n2≦3.3をとる上部阻止層を
用いて作成した負帯電用電子写真感光体は、実用上優れ
た特性を示した。上部阻止層内で最大の光学的バンドギ
ャップEg2が2.0eVよりも小さい場合には、光に
よる特性の劣化が生じるため安定した特性を有する負帯
電電子写真感光体を得ることが難しく、また、光吸収が
多くなることから感度の低下を抑えることが困難であ
る。また、2.3eVよりも大きい場合では、露光によ
り生じた光生成キャリアに対する抵抗が高くなると同時
に、キャリアの走行性を向上させるためには多量の周期
律表第13族に属する原子を添加しなければならないこ
とから、残留電位の増加を抑えることが困難となる。上
部阻止層の屈折率n2が2.4より低い場合は、光導電
層と上部阻止層の間で剥れが生じ、3.3より高い場合
は上部阻止層と表面層の間で剥れが生じる場合がある。
このことから、これらの条件に当てはまる上部阻止層を
用いて負帯電用電子写真感光体を作成することにより、
キャリアの注入を阻止する能力が高まることで帯電能が
向上し、さらには導電性を制御することでキャリアの走
行性が改善されることで、上部阻止層に起因する残留電
位が低下し、光による特性の劣化、画像流れ及び膜剥れ
が生じず、感度が向上することが明らかとなった。
【0032】しかし、上記上部阻止層の条件を限定する
だけでは感光体全体としての残留電位、感度等が負帯電
電子写真感光体特性として充分ではなかった。
【0033】そこで、光導電層、上部阻止層及び表面層
について、炭素原子と周期律表第13族に属する原子を
変化させて各層の光学的バンドギャップ及び屈折率と残
留電位、感度等の負帯電電子写真感光体に関して検討し
た結果、光導電層内でバンドギャプが最大となる位置で
の光学的バンドギャップ、屈折率をEg1、n1、上部
阻止層内でバンドギャプが最大となる位置での光学的バ
ンドギャップ、屈折率をEg2、n2、及び感光体最表
面における光学的バンドギャップ、屈折率をEg3、n
3とするとEg1≦Eg3≦Eg2の関係とn3<n2
<n1の関係が成り立つとき、上記の問題点が改善でき
著しく優れた電子写真感光体特性を得た。各層の光学的
バンドギャップの関係を上記の関係に制御することによ
り、帯電電荷の阻止能力が向上し帯電能が向上した。更
に、上部阻止層と表面層での光吸収を抑えることがで
き、感度が向上した。
【0034】よって本発明は上記構成にすることより、
帯電能、感度の向上など高次元の電子写真感光体特性が
得られるとともに光による特性の劣化を低減させること
で画像品質が飛躍的に向上し、前記した従来技術におけ
る諸問題の全てを解決することができ、極めて優れた電
気的、光学的、光導電的特性、画像品質、耐久性および
使用環境性を示す負帯電用電子写真感光体を得ることが
できるのである。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、図面に従って、本発明の負
帯電用電子写真感光体の好適な実施形態について説明す
る。
【0036】図1は、本発明における電子写真感光体の
好適な層構成の一例を説明するための模式的構成図であ
る。図1(a)に示す電子写真感光体100は、電子写
真感光体用としての支持体101の上に、光受容層10
2が設けられている。この光受容層102はシリコン原
子を母材とし光導電性を有する光導電層103と、シリ
コン原子と炭素原子を母材とする上部阻止層104と、
シリコン原子と炭素原子又は炭素原子を母材とする表面
層105から構成されている。
【0037】図1(b)は、本発明における電子写真感
光体の他の層構成を説明するための模式的構成図であ
る。図1(b)に示す電子写真感光体100は、電子写
真感光体用としての支持体101の上に、光受容層10
2が設けられている。光受容層102はシリコン原子を
母材とする光導電層103、シリコン原子と炭素原子を
母材とする上部阻止層104、シリコン原子と炭素原子
又は炭素原子を母材とする表面層105及びシリコン原
子を母材とする下部阻止層106とから構成されてい
る。
【0038】図1(c)は、本発明における電子写真感
光体の他の層構成を説明するための模式的構成図であ
る。図1(c)に示す電子写真感光体100は、電子写
真感光体用としての支持体101の上に、光受容層10
2が設けられている。光受容層102はシリコン原子を
母材とする光導電層103、シリコン原子と炭素原子を
母材とする上部阻止層104、シリコン原子と炭素原子
又は炭素原子を母材とする表面層105及びシリコン原
子を母材とする下部阻止層106、炭素原子を母材とす
る第二表面層107とから構成されている。
【0039】<支持体>本発明において使用できる支持
体としては、Al、Cr、Mo、Au、In、Nb、T
e、V、Ti、Pt、Pd、Fe等の金属、およびこれ
らの合金、例えばステンレス等からなる導電性支持体が
挙げられる。また、電気絶縁性材料としてポリエステ
ル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースアセ
テート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレ
ン、ポリアミド等の合成樹脂のフィルムまたはシート、
ガラス、セラミック等を用い、これらからなる電気絶縁
性支持体の少なくとも光受容層を形成する側の表面を導
電処理して、導電性支持体として用いることができる。
【0040】本発明において使用される支持体101の
形状は、平滑表面あるいは微少な凹凸表面を有する円筒
状または無端ベルト状であることができ、その厚さは、
所望通りの電子写真感光体100を形成し得るように適
宜決定する。電子写真感光体100としての可撓性が要
求される場合には、支持体101としての機能が充分発
揮できる範囲内で可能な限り薄くすることができる。し
かしながら、支持体101は製造上および取り扱い上、
機械的強度等の点から通常は10μm以上が好ましい。
【0041】<光導電層>本発明において、その目的を
効果的に達成するために支持体101上に形成され、光
受容層102の一部を構成する光導電層103は真空堆
積膜形成方法によって、所望特性が得られるように適宜
成膜パラメーターの数値条件を設定して作製することが
できる。具体的には、例えばグロー放電法(低周波CV
D法、高周波CVD法またはマイクロ波CVD法等の交
流放電CVD法、あるいは直流放電CVD法等)、スパ
ッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、
光CVD法、熱CVD法などの数々の薄膜堆積法によっ
て形成することができる。これらの薄膜堆積法は、製造
条件、設備資本投資下の負荷程度、製造規模、作製され
る電子写真感光体に所望される特性等の要因によって適
宜選択されて採用されるが、所望の特性を有する電子写
真感光体を製造するに当たっての条件の制御が比較的容
易であることからグロー放電法、特にVHF帯及びRF
帯の電源周波数を用いた高周波グロー放電法が好適であ
る。
【0042】本発明において光導電層103中に水素原
子(H)及び/又はハロゲン原子(X)が含有されるこ
とが好ましく、これはシリコン原子(Si)の未結合手
を補償し、層品質の向上、特に光導電性及び電荷保持特
性を向上することが可能となるからである。これら特性
向上の観点から、この水素原子とハロゲン原子の量の和
が、シリコン原子と水素原子とハロゲン原子の量の和に
対して10〜40原子%であることが好ましい。
【0043】グロー放電法によって、水素原子および/
またはハロゲン原子を含むシリコンを母材とする非晶質
材料(以下場合により「a−Si:H,X」と称す。)
よりなる光導電層103を形成するには、基本的にはシ
リコン原子を供給し得るSi供給用の原料ガスと、水素
原子を供給し得るH供給用の原料ガス及び/又はハロゲ
ン原子を供給し得るX供給用の原料ガスを、内部が減圧
にし得る反応容器内に所望のガス状態で導入して、反応
容器内にグロー放電を生起させ、あらかじめ所定の位置
に設置されてある所定の支持体101上にa−Si:
H,Xからなる層を形成すればよい。
【0044】本発明において使用されるSi供給用ガス
となり得る物質としては、SiH4、Si26、Si3
8、Si410等のガス状態、またはガス化し得る水素化
珪素(シラン類)が有効に使用されるものとして挙げら
れ、更に層作製時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ
等の点でSiH4、Si26が好ましいものとして挙げ
られる。
【0045】そして、形成される光導電層103中に水
素原子を構造的に導入し、水素原子の導入割合の制御が
いっそう容易になるように、これらのガスに更にH2
び/又はHeあるいは水素原子を含む珪素化合物のガス
を所望量混合して層形成することも好ましい。また、各
ガスは単独種のみでなく所定の混合比で複数種混合して
も差し支えないものである。
【0046】また本発明において使用されるハロゲン原
子供給用の原料ガスとして有効なのは、たとえばハロゲ
ンガス、ハロゲン化物、ハロゲンをふくむハロゲン間化
合物、ハロゲンで置換されたシラン誘導体等のガス状の
またはガス化し得るハロゲン化合物が好ましく挙げられ
る。また、さらにはシリコン原子とハロゲン原子とを構
成要素とするガス状のまたはガス化し得る、ハロゲン原
子を含む水素化珪素化合物も有効なものとして挙げるこ
とができる。本発明において好適に使用し得るハロゲン
化合物としては、具体的には弗素ガス(F2)、Br
F、ClF、ClF3、BrF3、BrF5、IF3、IF
7等のハロゲン間化合物を挙げることができる。ハロゲ
ン原子を含む珪素化合物、いわゆるハロゲン原子で置換
されたシラン誘導体としては、具体的には、たとえばS
iF4、Si26等の弗化珪素が好ましいものとして挙
げることができる。
【0047】光導電層103中に含有される水素原子及
び/又はハロゲン原子の量を制御するには、例えば支持
体101の温度、水素原子及び/又はハロゲン原子を含
有させるために使用される原料物質の反応容器内へ導入
する量、放電電力等を制御すればよい。
【0048】本発明においては、光導電層103に導電
性を制御する原子を導入する事ができる。前記導電性を
制御する原子としては、半導体分野における、いわゆる
不純物を挙げることができ、p型伝導特性を与える周期
律表第13族に属する原子(以後「第13族原子」と略
記する)を用いることができる。光導電層103におい
て第13族原子は、光導電層中に万遍なく均一に含有さ
れても良いし、光導電層の層厚方向に濃度が変化するよ
うな不均一な分布をもたせた部分があっても良い。
【0049】第13族原子としては、具体的には、硼素
(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、イ
ンジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特に
B、Al、Gaが好適である。光導電層103に含有さ
れる導電性を制御する原子の含有量としては、好ましく
は1×10-2〜1×102原子ppm、より好ましくは
5×10-2〜8×101原子ppm、最適には1×10
-1〜6×101原子ppmとされるのが望ましい。
【0050】導電性を制御する原子、たとえば、第13
族原子を構造的に導入するには、層形成の際に、第13
族原子導入用の原料物質をガス状態で反応容器中に、光
導電層103を形成するための他のガスとともに導入し
てやればよい。第13族原子導入用の原料物質となり得
るものとしては、常温常圧でガス状のまたは、少なくと
も層形成条件下で容易にガス化し得るものが採用される
のが望ましい。
【0051】そのような第13族原子導入用の原料物質
として具体的には、硼素原子導入用としては、B26
410、B59、B511、B610、B612、B6
14等の水素化硼素、BF3、BCl3、BBr3等のハロ
ゲン化硼素等が挙げられる。この他、AlCl3、Ga
Cl3、Ga(CH33、InCl3、TlCl3等も挙
げることができる。
【0052】また、これらの導電性を制御する原子導入
用の原料物質を必要に応じてH2及び/又はHeにより
希釈して使用してもよい。
【0053】さらに本発明においては、光導電層103
に炭素原子及び/又は酸素原子及び/又は窒素原子を含
有させることも有効である。炭素原子及び/又は酸素原
子及び/又は窒素原子の含有量はシリコン原子、炭素原
子、酸素原子及び窒素原子の和に対して好ましくは1×
10-5〜10原子%、より好ましくは1×10-4〜8原
子%、最適には1×10-3〜5原子%が望ましい。光導
電層103において炭素原子及び/又は酸素原子及び/
又は窒素原子は、光導電層中に万遍なく均一に含有され
ても良いし、光導電層の層厚方向に濃度が変化するよう
な不均一な分布をもたせた部分があっても良い。
【0054】本発明において、光導電層103の層厚は
所望の電子写真特性が得られること及び経済的効果等の
点から適宜所望にしたがって決定され、好ましくは10
〜50μm、より好ましくは15〜45μm、最適には
20〜40μmとされるのが望ましい。層厚が10μm
より薄くなると、帯電能や感度等の電子写真特性が実用
上不充分となる傾向があるという点で不利であり、50
μmより厚くなると、光導電層の作製時間が長くなって
製造コストが高くなる傾向があるという点で不利であ
る。
【0055】所望の膜特性を有する光導電層103を形
成するには、Si供給用のガスと希釈ガスとの混合比、
反応容器内のガス圧、放電電力ならびに支持体温度を適
宜設定すればよい。
【0056】反応容器内のガス圧も同様に層設計にした
がって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合1×1
-2〜1×103Pa、より好ましくは5×10-2〜5
×102Pa、最適には1×10-1〜1×102Paとす
るのが好ましい。
【0057】放電電力もまた同様に層設計にしたがって
適宜最適範囲が選択することが望ましい。
【0058】さらに、支持体101の温度は、層設計に
したがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、
好ましくは150〜350℃、より好ましくは180〜
330℃、最適には200〜300℃とするのが望まし
い。
【0059】本発明においては、光導電層を形成するた
めの支持体温度、ガス圧の望ましい数値範囲として前記
した範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に
決められるものではなく、所望の特性を有する電子写真
感光体を形成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて
最適値を決めるのが望ましい。
【0060】<上部阻止層>本発明においては、上述の
ようにして支持体101上に形成された光導電層103
と表面層105の間に、シリコン原子と炭素原子を母材
とする非晶質材料(以下場合により「a−SiC」と表
記する)であって13族元素を含有するものによって上
部阻止層104を形成することが必要である。この上部
阻止層104は帯電電荷を阻止する阻止能力を向上さ
せ、かつ露光によって生じた光生成キャリアが光導電層
から感光体表面側へ移動する過程において、上部阻止層
でのキャリアの走行性を高めることから、負帯電電子写
真感光体特性において本発明の目的を達成するために設
けられる。
【0061】本発明において用いる上部阻止層104の
材質としてはa−SiCを主成分としたものであること
が必要である。そして、上部阻止層104はシリコン原
子と炭素原子の和に対する炭素原子の含有量の比(C/
(Si+C))は、0.05以上0.60以下の範囲が
好ましい。シリコン原子と炭素原子の和に対する炭素原
子の含有量の比が0.05より低い場合には、光の照射
により経時的に特性低下を生じる恐れがあるという点で
不利である。また、0.6より高い場合には、光生成キ
ャリアに対する抵抗が高くなるため上部阻止層104に
起因する残留電位が生じる恐れがあるという点で不利で
ある。
【0062】上部阻止層104において、炭素原子の濃
度は、上部阻止層内に万遍なく均一に含有されても良
い。また、図2に示すように上部阻止層の光導電層側か
ら表面層側に向かって連続的に増加しても良いし、増加
する領域をもっても良い。
【0063】本発明においては、上部阻止層104と光
導電層103を形成する非晶質材料の各々がシリコン原
子という共通の構成要素を有しているので、積層界面に
おいて化学的な安定性の確保が十分成されている。
【0064】上部阻止層104には導電性を制御する原
子を含有させることが必須である。特に本発明において
は、上部阻止層104に、第13族原子を含有させる。
この際、第13族原子の濃度は、上部阻止層104の層
厚方向において万遍なく均一に含有されても良いし、ま
た、図3に示すような分布をもっても問題はない。しか
し、本発明の負帯電用電子写真感光体において、帯電
能、感度、残留電位など、十分な負帯電用電子写真感光
体の特性を維持するためには、上部阻止層内に第13族
原子の濃度が最大となる位置又は領域をもつことが好ま
しい。
【0065】上部阻止層104における第13族原子の
含有量も、電荷注入の阻止能力や画像品質から総合的に
判断して決定すればよい。シリコン原子と炭素原子の和
に対する導電性を制御する第13族原子の含有量として
は、100〜30000原子ppm、好ましくは100
0〜20000原子ppm、より好ましくは3000〜
10000原子ppmである。第13族原子の含有量が
100原子ppmより少ない場合には、表面からの電荷
注入を阻止する能力を向上させるには至らない。また、
30000原子ppmより多い場合には、電荷注入を阻
止する能力は向上するが上部阻止層104の全体として
の抵抗値が下がるために、画像流れを起こしやすくな
る。
【0066】第13族原子は、p型伝導特性を与える不
純物である。具体的には、第13族原子としては、硼素
(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、イ
ンジウム(In)、タリウム(Tl)等がある。特に
B、Al、Gaが好適である。
【0067】第13族原子を構造的に導入するには、層
形成の際に、第13族原子導入用の原料物質をガス状態
で反応容器中に、上部阻止層104を形成するための他
のガスとともに導入してやればよい。第13族原子導入
用の原料物質となり得るものとしては、常温常圧でガス
状のまたは、少なくとも層形成条件下で容易にガス化し
得るものが望ましい。そのような第13族原子導入用の
原料物質としては、具体的には、硼素原子導入用とし
て、B26、B410、B59、B511、B61 0、B6
12、B614等の水素化硼素、BF3、BCl3、BB
3等のハロゲン化硼素等が挙げられる。この他、Al
Cl3、GaCl3、Ga(CH33、InCl3、Tl
Cl3等も挙げることができる。
【0068】また、第13族原子導入用の原料物質を、
必要に応じてH2、He、Ar、Ne等のガスにより希
釈して使用してもよい。
【0069】また、本発明において上部阻止層104中
に水素原子及び/又はハロゲン原子が含有されることが
好ましい。これはシリコン原子などの構成原子の未結合
手を補償し、層品質の向上、特に光導電性特性および電
荷保持特性の向上が可能であるからである。水素含有量
は、構成原子の総量に対して好ましくは30〜70原子
%、より好ましくは35〜65原子%、最適には40〜
60原子%である。また、ハロゲン原子の含有量とし
て、好ましくは0.01〜15原子%、より好ましくは
0.1〜10原子%、最適には0.5〜5原子%であ
る。この上部阻止層104中の水素含有量は、原料ガス
の流量(流量比)、支持体温度、放電パワー、ガス圧等
によって制御し得る。
【0070】本発明の目的を効果的に達成するために、
上部阻止層104は真空堆積膜形成方法によって、所望
特性が得られるように適宜成膜パラメーターの数値条件
を設定して作成することができる。具体的には、例えば
グロー放電法(低周波CVD法、高周波CVD法または
マイクロ波CVD法等の交流放電CVD法、あるいは直
流放電CVD法等)、スパッタリング法、真空蒸着法、
イオンプレーティング法、光CVD法、熱CVD法など
の数々の薄膜堆積法によって形成することができる。こ
れらの薄膜堆積法は、製造条件、設備資本投資下の負荷
程度、製造規模、作成される電子写真用電子写真感光体
に所望される特性等の要因によって適宜選択されて採用
されるが、電子写真感光体の生産性から光導電層と同等
の堆積法によることが好ましい。
【0071】例えば、グロー放電法によって水素原子お
よび/またはハロゲン原子を含むSiC(以下場合によ
り「a−SiC:H,X」と称す。)よりなる上部阻止
層104を形成するには、基本的にはシリコン原子(S
i)を供給し得るSi供給用の原料ガスと、炭素原子
(C)を供給し得るC供給用の原料ガスと、水素原子
(H)を供給し得るH供給用の原料ガス及び/又はハロ
ゲン原子(X)を供給し得るX供給用の原料ガスを、内
部を減圧にし得る反応容器内に所望のガス状態で導入し
て、反応容器内にグロー放電を生起させ、あらかじめ所
定の位置に設置された光導電層103を形成した支持体
101上にa−SiC:H,Xからなる層を形成すれば
よい。
【0072】上部阻止層の形成において使用されるシリ
コン(Si)供給用ガスとなり得る物質としては、Si
4、Si26、Si38、Si410等のガス状態の、
またはガス化し得る水素化珪素(シラン類)が有効に使
用されるものとして挙げられる。特に、層作成時の取り
扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点で、SiH4、S
26が好ましい。また、これらのSi供給用の原料ガ
スを、必要に応じてH 2、He、Ar、Ne等のガスに
より希釈して使用してもよい。
【0073】炭素供給用ガスとなり得る物質としては、
CH4、C22、C26、C38、C410等のガス状態
の、またはガス化し得る炭化水素が有効に使用されるも
のとして挙げられる。特に、層作成時の取り扱い易さ、
供給効率の良さ等の点で、CH4、C22、C26が好
ましい。また、これらのC供給用の原料ガスを、必要に
応じてH2、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して
使用してもよい。
【0074】また、形成される上部阻止層104中に導
入される水素原子の導入割合の制御をいっそう容易にな
るように図るために、これらのガスに更に水素ガスまた
は水素原子を含む珪素化合物のガスを所望量混合して層
形成することも好ましい。各ガスは単独種のみでなく、
所定の混合比で複数種混合しても差し支えないものであ
る。
【0075】ハロゲン原子供給用の原料ガスとして有効
なものとして、例えばハロゲンガス、ハロゲン化物、ハ
ロゲンを含むハロゲン間化合物、ハロゲンで置換された
シラン誘導体等のガス状のまたはガス化し得るハロゲン
化合物が、好ましいものとして挙げられる。さらには、
シリコン原子とハロゲン原子とを混要素とするガス状の
またはガス化し得る、ハロゲン原子を含む水素化珪素化
合物も有効なものとして挙げられる。
【0076】好適に使用し得るハロゲン化合物として
は、具体的には、弗素ガス(F2)、BrF、ClF、
ClF3、BrF3、BrF5、IF3、IF7等のハロゲ
ン間化合物を挙げることができる。ハロゲン原子を含む
珪素化合物、いわゆるハロゲン原子で置換されたシラン
誘導体としては、具体的には、例えばSiF4、Si2
6等の弗化珪素が好ましいものとして挙げることができ
る。
【0077】上部阻止層104の層厚は、光導電層10
3及び表面層105の層厚及び求められる電子写真特性
によって総合的に判断して決定すればよい。表面からの
電荷注入の阻止能力を十分発揮し、かつ画像品質に影響
を与えない膜厚になるように設計する。上部阻止層10
4の層厚は、好ましくは0.01〜2μm、より好まし
くは0.05〜1.5μm、最適には0.1〜0.8μ
mである。層厚が0.01μmよりも薄いと、表面から
の電荷注入の阻止能力が低下するため帯電能の低下が生
じる傾向があるという点で不利であり、2μmを超える
と、上部阻止層内でホールの移動に時間を要するため残
留電位の増加等の特性低下を生じる場合があるという点
で不利である。
【0078】上部阻止層104を形成するには、支持体
101の温度、反応容器内のガス圧、放電パワーを所望
にしたがって、適宜設定すれば良い。
【0079】支持体101の上部阻止層形成時の温度
(Ts)は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択さ
れるが、通常の場合、好ましくは150〜350℃、よ
り好ましくは180〜330℃、最適には200〜30
0℃とするのが望ましい。
【0080】反応容器内のガス圧も同様に層設計にした
がって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、好ま
しくは1×10-2〜2×103Pa、より好ましくは5
×10-2〜5×102Pa、最適には1×10-1〜2×
102Paとする。
【0081】本発明において、上部阻止層104を形成
するための支持体温度、ガス圧、放電パワーの望ましい
数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、それら条
件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所
望の特性を有する電子写真感光体を形成すべく相互的且
つ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが望まし
い。
【0082】<表面層>本発明においては、上述のよう
にして支持体101上に形成された光導電層103と上
部阻止層104の上に、a−SiC及び/又は炭素原子
を母材とする非晶質材料(以下場合により「a−C」と
称す。)で表面層105を形成することが必要である。
この表面層105は、主に連続繰り返し使用特性、電気
的耐圧性、使用環境特性、耐久性において本発明の目的
を達成するために設けられる。
【0083】本発明において用いる表面層105の材質
としては、a−SiCを主成分として構成する場合のシ
リコン原子と炭素原子の和に対する炭素原子の含有量の
比は、0.5以上が好ましい。
【0084】本発明の目的を効果的に達成するために、
表面層105は真空堆積膜形成方法によって、所望特性
が得られるように適宜成膜パラメーターの数値条件を設
定して作成できる。具体的には、例えばグロー放電法
(低周波CVD法、高周波CVD法またはマイクロ波C
VD法等の交流放電CVD法、あるいは直流放電CVD
法等)、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレー
ティング法、光CVD法、熱CVD法などの数々の薄膜
堆積法によって形成することができる。これらの薄膜堆
積法は、製造条件、設備資本投資下の負荷程度、製造規
模、作成される電子写真用電子写真感光体に所望される
特性等の要因によって適宜選択されて採用されるが、電
子写真感光体の生産性から光導電層及び上部阻止層と同
等の堆積法によることが好ましい。
【0085】例えば、グロー放電法によってa−Si
C:H,X及び/又はa−C:H,X(水素原子および
/またはハロゲン原子を含む炭素原子を母材とする非晶
質材料)よりなる表面層105を形成するには、基本的
にはシリコン原子(Si)を供給し得るSi供給用の原
料ガスと、炭素原子(C)を供給し得るC供給用の原料
ガスと、水素原子(H)を供給し得るH供給用の原料ガ
ス及び/又はハロゲン原子(X)を供給し得るX供給用
の原料ガスを、内部を減圧にし得る反応容器内に所望の
ガス状態で導入して、反応容器内にグロー放電を生起さ
せ、あらかじめ所定の位置に設置された光導電層10
3、上部阻止層104を形成した支持体101上にa−
SiC:H,X及び/又はa−C:H,Xからなる層を
形成すればよい。
【0086】本発明においては、上部阻止層104と表
面層105とを形成する非晶質材料の各々がシリコン原
子または炭素原子という共通の構成要素を有しているの
で、表面層105は、積層界面において化学的な安定性
の確保が十分成されている。
【0087】また、本発明において表面層105中に水
素原子及び/又はハロゲン原子が含有されることが好ま
しい。これはシリコン原子などの構成原子の未結合手を
補償し、層品質の向上、特に光導電性特性および電荷保
持特性の向上が可能であるからである。水素含有量は、
構成原子の総量に対して好ましくは30〜70原子%、
より好ましくは35〜65原子%、最適には40〜60
原子%とするのが望ましい。また、ハロゲン原子の含有
量として、好ましくは0.01〜15原子%、より好ま
しくは0.1〜10原子%、最適には0.5〜5原子%
とされるのが望ましい。表面層105中のハロゲン含有
量、水素含有量は、原料ガスの流量(比)、支持体温
度、放電パワー、ガス圧等によって制御し得る。
【0088】表面層の形成において使用されるシリコン
(Si)供給用ガスとなり得る物質としては、Si
4、Si26、Si38、Si410等のガス状態の、
またはガス化し得る水素化珪素(シラン類)が有効に使
用されるものとして挙げられる。特に、層作成時の取り
扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点で、SiH4、S
26が好ましい。また、これらのSi供給用の原料ガ
スを、必要に応じてH2、He、Ar、Ne等のガスに
より希釈して使用してもよい。
【0089】炭素供給用ガスとなり得る物質としては、
CH4、C22、C26、C38、C410等のガス状態
の、またはガス化し得る炭化水素が有効に使用されるも
のとして挙げられる。特に、層作成時の取り扱い易さ、
供給効率の良さ等の点で、CH4、C22、C26が好
ましい。また、これらのC供給用の原料ガスを、必要に
応じてH2、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して
使用してもよい。
【0090】また、形成される表面層105中に導入さ
れる水素原子の導入割合の制御をいっそう容易になるよ
うに図るために、これらのガスに更に水素ガスまたは水
素原子を含む珪素化合物のガスも所望量混合して層形成
することが好ましい。各ガスは単独種のみでなく、所定
の混合比で複数種混合しても差し支えないものである。
【0091】ハロゲン原子供給用の原料ガスとして有効
なものとして、例えばハロゲンガス、ハロゲン化物、ハ
ロゲンを含むハロゲン間化合物、ハロゲンで置換された
シラン誘導体等のガス状のまたはガス化し得るハロゲン
化合物が、好ましいものとして挙げられる。さらには、
シリコン原子とハロゲン原子とを混要素とするガス状の
またはガス化し得る、ハロゲン原子を含む水素化珪素化
合物も有効なものとして挙げられる。
【0092】好適に使用し得るハロゲン化合物として
は、具体的には、弗素ガス(F2)、BrF、ClF、
ClF3、BrF3、BrF5、IF3、IF7等のハロゲ
ン間化合物を挙げることができる。ハロゲン原子を含む
珪素化合物、いわゆるハロゲン原子で置換されたシラン
誘導体としては、具体的には、例えばSiF4、Si2
6等の弗化珪素が好ましいものとして挙げることができ
る。
【0093】表面層105中に含有される水素原子及び
/又はハロゲン原子の量を制御するには、例えば、支持
体101の温度、水素原子及び/又はハロゲン原子を含
有させるために使用される原料物質の反応容器内へ導入
する量、放電電力等を制御すればよい。
【0094】表面層105に導電性を制御する原子を導
入する事もできる。特に、本発明では、表面層に第13
族原子を用いることができる。表面層105において第
13族原子は、表面層中に万遍なく均一に含有されても
良いし、表面層の層厚方向に濃度が変化するような不均
一な分布をもたせた部分があっても良い。
【0095】第13族原子としては、具体的には、硼素
(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、イ
ンジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特に
B、Al、Gaが好適である。表面層105に含有され
る導電性を制御する原子の含有量としては、好ましくは
1×10-2〜1×102原子ppm、より好ましくは5
×10-2〜8×101原子ppm、最適には1×10-1
〜6×101原子ppmとされるのが望ましい。
【0096】第13族原子を構造的に導入するには、層
形成の際に、第13族原子導入用の原料物質をガス状態
で反応容器中に、表面層105を形成するための他のガ
スとともに導入してやればよい。第13族原子導入用の
原料物質となり得るものとしては、常温常圧でガス状の
または、少なくとも層形成条件下で容易にガス化し得る
ものが採用されるのが望ましい。
【0097】そのような第13族原子導入用の原料物質
として具体的には、硼素原子導入用としては、B26
410、B59、B511、B610、B612、B6
14等の水素化硼素、BF3、BCl3、BBr3等のハロ
ゲン化硼素等が挙げられる。この他、AlCl3、Ga
Cl3、Ga(CH33、InCl3、TlCl3等も挙
げることができる。
【0098】また、これらの導電性を制御する原子導入
用の原料物質を必要に応じてH2及び/又はHeにより
希釈して使用してもよい。
【0099】表面層105の層厚は、好ましくは0.0
1〜3μm、より好ましくは0.05〜2μm、最適に
は0.1〜1μmである。層厚が0.01μmよりも薄
いと、電子写真感光体を使用中に摩耗等の理由により表
面層が失われてしまうという問題が生じ易いという点で
不利であり、3μmを超えると、残留電位の増加等の電
子写真特性の低下がみられる場合があるという点で不利
である。
【0100】また、図1(c)のように表面層105と
第二表面層107が積層している場合には、表面層10
5と第二表面層107の層厚の和が、好ましくは0.0
1〜3μm、より好ましくは0.05〜2μm、最適に
は0.1〜1μmであればよい。
【0101】本発明の目的を達成し得る特性を有する表
面層105を形成するには、支持体101の温度、反応
容器内のガス圧、放電パワーを所望にしたがって、適宜
設定すればよい。
【0102】支持体101の表面層形成時の温度(T
s)は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択される
が、通常の場合、好ましくは150〜350℃、より好
ましくは180〜330℃、最適には200〜300℃
とするのが望ましい。
【0103】反応容器内のガス圧も同様に層設計にした
がって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合1×1
-2〜1×103Pa、好ましくは5×10-2〜5×1
2Pa、最適には1×10-1〜1×102Paとするの
が好ましい。
【0104】本発明において、表面層105を形成する
ための支持体温度、ガス圧、放電パワーの望ましい数値
範囲として前記した範囲が挙げられるが、それら条件は
通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の
特性を有する電子写真感光体を形成すべく相互的且つ有
機的関連性に基づいて最適値を決めるのが望ましい。
【0105】<下部阻止層>本発明の感光体において
は、支持体と光導電層との間に、導電性支持体側からの
電荷の注入を阻止する働きのあるシリコン原子を母材と
する非晶質材料から構成される下部阻止層を設けるのが
いっそう効果的である。効果的に用いることのできる下
部阻止層は、キャリアに対する抵抗を高くすることによ
り支持体側より光導電層に電荷が注入されるのを阻止す
る機能を有する層であり、光受容層が一定極性の帯電処
理をその自由表面に受けた際、支持体側より光導電層側
に電荷が注入されるのを阻止する機能を有し、逆の極性
の帯電処理を受けた際にはそのような機能は発揮されな
い、いわゆる極性依存性を有する層である。
【0106】まず、下部阻止層をキャリアに対して高抵
抗にするためには、下部阻止層に炭素原子及び/又は酸
素原子及び/又は窒素原子の少なくとも一種を含有させ
ることが好ましい。炭素原子及び/又は酸素原子及び/
又は窒素原子の少なくとも一種を含有させることで、下
部阻止層と支持体との間の密着性がよりいっそう向上さ
せることができる。炭素原子及び/又は酸素原子及び/
又は窒素原子は、光導電層に比べ比較的多く含有させる
ことが好ましい。
【0107】下部阻止層に含有される炭素原子及び/又
は酸素原子及び/又は窒素原子は、該層中に万偏なく均
一に分布されても良いし、あるいは層厚方向には含有さ
れてはいるが、不均一に分布する状態で含有している部
分があってもよい。分布濃度が不均一な場合には、支持
体側に多く分布するように含有させるのが好適である。
しかしながら、いずれの場合にも支持体の表面と平行面
内方向においては、均一な分布で万偏なく含有されるこ
とが面内方向における特性の均一化を図る点から好まし
い。
【0108】下部阻止層の全層領域に含有される炭素原
子及び/又は窒素原子及び/又は酸素原子の含有量は、
本発明の目的が効果的に達成されるように適宜決定され
るが、一種の場合はその量として、2種以上の場合はそ
の総和量として、好ましくは1×10-3〜30原子%、
より好適には5×10-3〜20原子%、最適には1×1
-2〜10原子%とされるのが望ましい。
【0109】一方、下部阻止層に極性依存性を付与する
ためには、下部阻止層にn型の伝導特性を与える原子を
含有させることが好ましい。このn型の伝導特性を与え
る原子は、光導電層に比べ比較的多く含有させることが
好ましい。
【0110】下部阻止層に含有されるn型の伝導特性を
与える原子は、該層中に万偏なく均一に分布されても良
いし、あるいは層厚方向には含有されてはいるが、不均
一に分布する状態で含有している部分があってもよい。
分布濃度が不均一な場合には、支持体側に多く分布する
ように含有させるのが好適である。しかしながら、いず
れの場合にも支持体の表面と平行面内方向においては、
均一な分布で万偏なく含有されることが面内方向におけ
る特性の均一化をはかる点から好ましい。
【0111】下部阻止層に含有されるn型の伝導特性を
与える原子としては、半導体分野における、いわゆる不
純物を挙げることができ、周期律表第15族に属する原
子(以後「第15族原子」と略記する)を用いることが
できる。
【0112】第15族原子としては、具体的には燐
(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス
(Bi)等があり、特にP、Asが好適である。
【0113】下部阻止層中に含有される導電性を制御す
る原子の含有量としては、所望にしたがって適宜決定さ
れるが、好ましくは10〜1×104原子ppm、より
好適には50〜5×103原子ppm、最適には1×1
2〜3×103原子ppmとされるのが望ましい。
【0114】更に、極性依存性を有する下部阻止層と支
持体との間の密着性をよりいっそう向上させるために、
炭素原子及び/又は酸素原子及び/又は窒素原子の少な
くとも一種を下部阻止層に含有させること好ましい。
【0115】また、下部阻止層に含有される水素原子及
び/又はハロゲン原子は層内に存在する未結合手を補償
し膜質の向上に効果を奏する。下部阻止層中の水素原子
またはハロゲン原子あるいは水素原子とハロゲン原子の
和の含有量は、好適には1〜50原子%、より好適には
5〜40原子%、最適には10〜30原子%とするのが
望ましい。
【0116】下部阻止層の層厚は所望の電子写真特性が
得られること、及び経済的効果等の点から好ましくは
0.1〜5μm、より好ましくは0.3〜4μm、最適
には0.5〜3μmとされるのが望ましい。層厚が0.
1μmより薄くなると、支持体からの電荷の注入阻止能
が不充分になって充分な帯電能が得られなくなる傾向が
あるという点で不利であり、5μmより厚くしても電子
写真特性の向上は期待できず、作製時間の延長による製
造コストの増加を招くという点で不利である。
【0117】下部阻止層を形成するには、前述の光導電
層を形成する方法と同様の真空堆積法を採用できる。
【0118】所望の特性を有する下部阻止層を形成する
には、光導電層と同様に、Si供給用のガスと希釈ガス
との混合比、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに支
持体の温度を適宜設定すればよい。
【0119】希釈ガスとしてH2及び/又はHeを使用
する場合、その流量は、層設計にしたがって適宜最適範
囲が選択されるが、Si供給用ガスに対しH2及び/又
はHeを、通常の場合0.3〜20倍、好ましくは0.
5〜15倍、最適には1〜10倍の範囲に制御すること
が望ましい。
【0120】反応容器内のガス圧も同様に層設計にした
がって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合1×1
-2〜1×103Pa、好ましくは5×10-2〜5×1
2Pa、最適には1×10-1〜1×102Paとするの
が好ましい。
【0121】さらに、支持体101の温度は、層設計に
したがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、
好ましくは150〜350℃、より好ましくは180〜
3.30℃、最適には200〜300℃とするのが望ま
しい。
【0122】下部阻止層を形成するための希釈ガスの混
合比、ガス圧、放電電力、支持体温度の望ましい数値範
囲として前記した範囲が挙げられるが、これらの層作製
ファクターは通常は独立的に別々に決められるものでは
なく、所望の特性を有する表面層を形成すべく相互的且
つ有機的関連性に基づいて各層作製ファクターの最適値
を決めるのが望ましい。
【0123】また、本発明の感光体においては、支持体
と光導電層あるいは下部阻止層との間の更なる密着性の
向上を図る目的で、例えば、Si34、SiO2、Si
O、あるいはシリコン原子を母体とし、水素原子及び/
又はハロゲン原子と、炭素原子及び/又は酸素原子及び
/又は窒素原子とを含む非晶質材料等で構成される密着
層を設けても良い。更に、支持体からの反射光による干
渉模様の発生を防止するための光吸収層を設けても良
い。
【0124】以下、本発明の実施の形態について図面を
参照して説明する。
【0125】図4及び5は電源周波数としてVHF帯を
用いた高周波プラズマCVD法による感光体の製造装置
の一例を示す模式的な構成図である。図4は本発明の感
光体製造に適用しうるプラズマ処理装置における第1の
形態の模式図であり、図5は第2の形態の模式図であ
る。
【0126】本形態のプラズマ処理装置は円筒状基体に
堆積膜を形成する装置であり、図4の実施形態を大別す
ると、堆積装置1100、原料ガス供給装置1200、
反応容器1111内を減圧にするための排気装置(図示
せず)から構成されている。図5は、図4と同様の原料
ガス供給装置及び排気装置を有し、堆積装置のみが異な
るプラズマ処理装置の堆積装置のみを記した図である。
図4の実施形態では、反応容器1111の側面には排気
管1112が一体的に形成され、排気管1112の他端
は不図示の排気装置に接続されている。反応容器111
1の中心部1110を取り囲むように、堆積膜が形成さ
れる6本の円筒状支持体1113が配置されている。各
円筒状支持体1113は回転軸1121によって保持さ
れ、発熱体1120によって加熱されるようになってい
る。モータ1123を駆動すると、減速ギア1122を
介して回転軸1121が回転し、円筒状支持体1113
がその中心軸のまわりを自転するようになっている。
【0127】原料ガス供給装置1200は、SiH4
2、CH4、B26、PH3等の原料ガスのボンベ12
21〜1225とバルブ1231〜1235、1241
〜1245、1251〜1255およびマスフローコン
トローラー1211〜1215から構成され、各原料ガ
スのボンベはバルブ1260、原料ガス配管119を介
して反応容器1111内のガス導入管1118に接続さ
れている。
【0128】高周波電力は、例えば周波数の異なる2つ
の高周波電源1116、1117からマッチングボック
ス1115内においてそれぞれの整合回路を経て合成さ
れ、電極1114より反応容器1111内に供給され
る。
【0129】図4は異なる周波数の高周波電力を出力可
能な2つの電源を用い、図5は高周波電力を出力可能な
1つの電源を用いているが、本発明においては1つの高
周波電力もしくは2つ以上の異なる周波数の高周波電力
が供給可能であればよく、高周波電源が3つ以上であっ
てもよい。また、あらかじめ複数の周波数を合成した高
周波電力が出力可能な電源を用いた場合には、電源の数
は1つであってもかまわない。
【0130】電極1114の形状としては、特に制限は
ないが、真空処理特性の均一化効果をより顕著に得るた
めには、図4に示したような棒状であることが好まし
い。電極1114の表面は、膜の密着性を向上して膜剥
れを防止するために粗面化されていることが望ましく、
粗面化の具体的な程度としては、2.5mmを基準とす
る10点平均粗さ(Rz)で5μm以上200μm以下
の範囲とすることが好ましい。
【0131】更に、電極1114の表面をセラミックス
材で被覆することが効果的である。被覆の具体的手段と
しては特に制限はなく、例えばCVD法、溶射等により
電極1114の表面をコーティングしてもよいが、コス
ト面、あるいはコーティング対象物の大きさ・形状の制
限を受けにくいことから溶射が好ましい。
【0132】セラミックス材としては、アルミナ、二酸
化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ジルコン、
コージェライト、ジルコン−コージェライト、酸化珪
素、酸化ベリリウムマイカ系セラミックス等が挙げられ
る。
【0133】セラミックス材の厚さは特に制限はない
が、耐久性及び均一性の点、高周波電力吸収量、あるい
は製造コストの面から1μm〜10mmが好ましく、1
0μm〜5mmとするのがより好ましい。
【0134】また、電極1114に加熱または冷却手段
を設けることにより、電極1114表面における膜の密
着性を更に高め、より効果的に膜剥れの防止を達成でき
る。この場合、電極1114を加熱するか、冷却するか
は、堆積する膜材料、堆積条件に応じて適宜決定する。
加熱手段としては、発熱体であれば特に制限はなく、具
体的にはシース状ヒーターの巻付けヒーター、板状ヒー
ター、セラミックヒーター等の電気抵抗発熱体、ハロゲ
ンランプ、赤外線ランプ等の熱輻射ランプ発熱体、液
体、気体等を媒体とした熱交換手段による発熱体等が挙
げられる。冷却手段としては、吸熱体であれば特に制限
はない。例えば、液体・気体等を冷却媒体とすることが
できる冷却コイル、冷却板、冷却筒等が挙げられる。
【0135】このような装置で例えば円筒状の電子写真
感光体のための堆積膜を形成するには、概略以下のよう
な手順により行うことができる。
【0136】まず、反応容器1111内に円筒状支持体
1113を設置し、不図示の排気装置により排気管11
12を通して反応容器1111内を排気する。続いて、
発熱体1120により円筒状支持体1113を200℃
〜300℃程度の所定の温度に加熱・制御する。
【0137】円筒状支持体1113が所定の温度となっ
たところで、原料ガス導入管1118を介して、原料ガ
スを反応容器1111内に導入する。原料ガスの流量が
設定流量となり、また、反応容器1111内の圧力が安
定したのを確認した後、周波数の異なる2つの高周波電
源1116、1117よりマッチングボックス1115
を介して電極1114へ所定の高周波電力を供給する。
これにより、反応容器1111内にグロー放電が生起
し、原料ガスは励起解離して円筒状支持体1113上に
堆積膜が形成される。
【0138】所望膜厚の層領域を形成した後、原料ガス
の種類と各々の流量を所定の値に変え、高周波電力の比
率を変えて次の層領域の形成を行う。
【0139】所望の層構成が形成されたところで電力の
供給を止め、続いて原料ガスの供給を停止して多層構造
の光受容層が形成される。
【0140】堆積膜形成中、回転軸1121を介して円
筒状支持体1113をモータ1123により所定の速度
で回転させることにより、円筒状支持体表面全周に渡っ
て均一な堆積膜が形成される。
【0141】図6は電源周波数としてRF帯を用いた高
周波プラズマCVD法による電子写真感光体の製造装置
の一例を示す模式的な構成図である。図6に示す製造装
置の構成は以下の通りである。
【0142】この装置は大別すると、堆積装置310
0、原料ガスの供給装置3200、反応容器3111内
を減圧にするための排気装置(図示せず)から構成され
ている。堆積装置3100中の反応容器3111内には
円筒状支持体3112、支持体加熱用ヒーター311
3、原料ガス導入管3114が設置され、更に高周波マ
ッチングボックス3115が接続されている。
【0143】原料ガス供給装置3200は、SiH4
GeH4、H2、CH4、B26、PH 3等の原料ガスのボ
ンベ3221〜3225とバルブ3231〜3235,
3241〜3245,3251〜3255およびマスフ
ローコントローラー3211〜3215から構成され、
各原料ガスのボンベはバルブ3260を介して反応容器
3111内のガス導入管3114に接続されている。
【0144】この装置を用いた堆積膜の形成は、以下の
ように行うことができる。まず、反応容器3111内に
円筒状支持体3112を設置し、不図示の排気装置によ
り反応容器3111内を排気する。続いて、支持体加熱
用ヒーター3113により円筒状支持体3112の温度
を200℃乃至350℃の所定の温度に制御する。
【0145】堆積膜形成用の原料ガスを反応容器311
1に流入させるには、ガスボンベのバルブ3231〜3
235、反応容器のリークバルブ3117が閉じられて
いることを確認し、又、流入バルブ3241〜324
5、流出バルブ3251〜3255、補助バルブ(原料
ガス供給バルブ)3260が開かれていることを確認し
て、まずメインバルブ(メイン排気バルブ)3118を
開いて反応容器3111および原料ガス配管3116内
を排気する。
【0146】次に真空計(圧力計)3119の読みが約
1×10-2Paになった時点で補助バルブ3260、流
出バルブ3251〜3255を閉じる。
【0147】その後、ガスボンベ3221〜3225よ
り各ガスをバルブ3231〜3235を開いて導入し、
圧力調整器3261〜3265により各ガス圧を2Kg
/cm2(0.2MPa)に調整する。次に、流入バル
ブ3241〜3245を徐々に開けて、各ガスをマスフ
ローコントローラー3211〜3215内に導入する。
【0148】以上のようにして成膜の準備が完了した
後、以下の手順で各層の形成を行う。
【0149】円筒状支持体3112が所定の温度になっ
たところで流出バルブ3251〜3255のうちの必要
なものおよび補助バルブ3260を徐々に開き、ガスボ
ンベ3221〜3225から所定のガスをガス導入管3
114を介して反応容器3111内に導入する。次にマ
スフローコントローラー3211〜3215によって各
原料ガスが所定の流量になるように調整する。その際、
反応容器3111内の圧力が1.5×102Pa以下の
所定の圧力になるように真空計3119を見ながらメイ
ンバルブ3118の開口を調整する。内圧が安定したと
ころで、周波数13.56MHzのRF電源(不図示)
を所望の電力に設定して、高周波マッチングボックス3
115を通じて反応容器3111内にRF電力を導入
し、グロー放電を生起させる。この放電エネルギーによ
って反応容器内に導入された原料ガスが分解され、円筒
状支持体3112上に所定のシリコンを主成分とする堆
積膜が形成されるところとなる。所望の膜厚の形成が行
われた後、RF電力の供給を止め、流出バルブを閉じて
反応容器へのガスの流入を止め、堆積膜の形成を終え
る。
【0150】同様の操作を複数回繰り返すことによっ
て、所望の多層構造の光受容層が形成される。
【0151】それぞれの層を形成する際には必要なガス
以外の流出バルブはすべて閉じられていることは言うま
でもなく、また、それぞれのガスが反応容器3111
内、流出バルブ3251〜3255から反応容器311
1に至る配管内に残留することを避けるために、流出バ
ルブ3251〜3255を閉じ、補助バルブ3260を
開き、さらにメインバルブ3118を全開にして系内を
一旦高真空に排気する操作を必要に応じて行う。
【0152】また、膜形成の均一化を図るために、層形
成を行っている間は、支持体3112を駆動装置(不図
示)によって所定の速度で回転させることも有効であ
る。
【0153】さらに、上述のガス種およびバルブ操作は
各々の層の作成条件にしたがって変更が加えられること
は言うまでもない。
【0154】上記の方法において堆積膜形成時の支持体
温度は、好ましくは200℃以上350℃以下、より好
ましくは230℃以上330℃以下、さらに好ましくは
250℃以上310℃以下が望ましい。支持体の加熱方
法は、真空仕様である発熱体であればよく、より具体的
にはシース状ヒーターの巻き付けヒーター、板状ヒータ
ー、セラミックヒーター等の電気抵抗発熱体、ハロゲン
ランプ、赤外線ランプ等の熱放射ランプ発熱体、液体、
気体等を温媒とし熱交換手段による発熱体等が挙げられ
る。加熱手段の表面材質は、ステンレス、ニッケル、ア
ルミニウム、銅等の金属類、セラミックス、耐熱性高分
子樹脂等を使用することができる。
【0155】それ以外にも、反応容器以外に加熱専用の
容器を設け、加熱した後、反応容器内に真空中で支持体
を搬送する方法が用いられる。
【0156】
【実施例】以下、実験例、比較例及び実施例により本発
明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら
制限されるものではない。
【0157】<実験例1>図5に示す装置を用い、ガラ
ス基板上に光導電層、上部阻止層及び表面層を各々1μ
m堆積させてサンプルを作製した。下記表1に示す
(I)〜(IX)の各サンプルの作製条件における各ガ
ス種の流量は一定とし、この条件で各サンプルを作製し
た。但し、第13族原子、炭素原子を含有するガス種と
しては各々、B 26、CH4を用いて含有量を調節し
た。
【0158】
【表1】
【0159】(I)から(VII)は上部阻止層、(V
III)は光導電層、(IX)は表面層のサンプル作製
条件である。ガラス基板上に(I)から(IX)の条件
で作製した光導電層、上部阻止層及び表面層のサンプル
を用いて光学的バンドギャップ及び屈折率を測定した。
この結果を表2に示す。また、二次イオン質量分析法
(SIMS)にてシリコン原子と炭素原子の和に対する
ホウ素原子の含有量を測定した結果も合わせて表2に示
す。
【0160】
【表2】
【0161】<比較例1及び実施例1>光学的バンドギ
ャップ及び屈折率を測定した後、図5に示す装置を用い
直径30mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダ
ー(支持体)上に、下記表3に示す条件で、下部阻止
層、光導電層、上部阻止層、表面層の順に成膜を行い、
上部阻止層に含まれる第13族原子の含有量を下記表4
に示す条件で電子写真感光体を作製した。このとき、高
周波電力としてはVHF帯の周波数を出力可能な高周波
電力を用いた。また、電子写真感光体作製時に用いる各
ガス種は各層内で一定の流量とし、第13族原子、第1
5族原子、炭素原子を含有するガス種としては各々、B
26、PH3、CH4を用いて含有量を調節した。
【0162】なお、条件III’〜VI’で上部阻止層
を作成した感光体が実施例であり、条件I’、II’、
VII’で上部阻止層を作成した感光体は比較例であ
る。
【0163】
【表3】
【0164】
【表4】
【0165】(I’)から(VII’)の条件で作製し
た負帯電用電子写真感光体を電子写真装置(評価用に改
造したキヤノン製GP405)にセットして電位特性の
評価を行った。その際、プロセススピード200mm/
sec、前露光量(波長660nmのLED)4lux
・sec、帯電器の電流値−1000μAの条件にて電
子写真装置の現像器位置にセットした表面電位計(TR
EK社のModel344)の電位センサーにより像露
光(波長655nmの半導体レーザー)を照射しない状
態での感光体の表面電位を測定し、それを帯電能とし
た。
【0166】そして、上述の条件で表面電位が−400
V(暗電位)になるように帯電器の電流値を調整した
後、像露光(波長655nmの半導体レーザー)を照射
し、像露光光源の光量を調整して、表面電位が−50V
(明電位)となるようにし、そのときの露光量を感度と
した。
【0167】更に、上述した条件で表面電位が−400
Vになるように帯電器の電流値を調整した後、像露光光
量の2〜3倍程度の強度(実際には0.8〜1.2μJ
/sec程度)を当てて表面電位を落としきり、その値
が光量に対して十分飽和している時の表面電位を残留電
位とした。
【0168】画像流れの評価は、図8に示した黒色部と
白色部が一定の幅aで並んだテストチャートを用意し、
線幅aを狭めていった時に複写画像上において再現し、
解像しうる最小の線幅aにより行った。即ち、線幅aを
狭めていった時に、ある線幅a以下になると画像上の隣
り合う黒色部の輪郭の画像流れによる微少なボケが重な
り合い、事実上解像不可となってしまう。その時の線幅
aを画像流れの程度を表す指標とした。
【0169】尚、以上の評価は作製直後(反応容器から
取り出して室内光に照射されている時間が15分以内)
に行った。
【0170】さらに、作製した感光体を室内光に24時
間曝した後、上述の方法で感度を測定し、作製直後(反
応容器から取り出して室内光に照射されている時間が1
5分以内)からの変化を「光による特性劣化」として評
価した。この「光による特性劣化」とは、作製直後と室
内光を24時間曝した後の感度の差を作製直後の感度で
わった値とした。
【0171】それぞれの帯電能、残留電位、光による特
性の劣化、感度及び画像流れに関して、以下のように相
対評価を行った。[帯電能、残留電位、光による特性劣
化、感度、画像流れ] ◎:上部阻止層を(I’)の条件で作製した感光体と比
較して20%以上の特性向上 ○:上部阻止層を(I’)の条件で作製した感光体と比
較して10〜20%の特性向上 △:上部阻止層を(I’)の条件で作製した感光体と比
較して同等の特性 但し、この相対評価での向上は、帯電能の場合は増加
を、残留電位の場合は減少を、光による特性劣化の場合
は減少を、感度の場合は減少を及び画像流れの場合は線
幅aの減少を表す。これらの結果を表5に示す。
【0172】
【表5】
【0173】実験例1の結果、表2の(I)から(VI
I)の条件により作製した上部阻止層は第13族原子の
含有量が変化しても光学的バンドギャップは2.20e
V及び屈折率は2.6と変化しなかった。表2の(VI
II)は光導電層の光学的バンドギャップ及び屈折率、
表2の(IX)は表面層の光学的バンドギャップ及び屈
折率であり、上部阻止層の光学的バンドギャップ及び屈
折率と比較すると全ての条件において光学的バンドギャ
ップの関係はEg1<Eg3<Eg2であり、屈折率の
関係はn3<n2<n1の関係であった。
【0174】また、表3及び表4の(II’)から(V
II’)の条件で作製した負帯電用電子写真感光体の特
性を表3及び表4の(I’)の条件で作製した負帯電用
電子写真感光体の特性と比較したところ、帯電能、残留
電位及び感度は(II’)の条件では(I’)条件と同
等の特性であり、(III’)から(VII’)の条件
では(I’)の条件よりも向上した。また、光による劣
化は第13族原子の含有量にかかわらず(I’)の条件
と同等の特性であったが、その値は負帯電用電子写真感
光体特性としては充分な値であった。画像流れは(I
I’)及び(VII’)の条件では、(I’)と同等で
あり、(III’)から(VI’)の条件では向上し
た。この結果より、(III')から(VI')の条件で
は負帯電電子写真感光体として好ましい特性が得られ、
特に(IV')から(V')の条件では最適な負帯電電子
写真感光体特性が得られた。
【0175】表3及び表4の各条件により作製した負帯
電用電子写真感光体において、光導電層及び上部阻止層
内で光学的バンドギャップが最大となる位置での光学的
バンドギャップ、屈折率及び感光体最表面の光学的バン
ドギャップ、屈折率は、表1において同じ条件により作
製した光学的バンドギャップ、屈折率と等しいことか
ら、光導電層、上部阻止層及び表面層の光学的バンドギ
ャップの関係がEg1<Eg3<Eg2、屈折率はn3
<n2<n1でありシリコン原子と炭素原子の和に対す
る第13族原子の含有量が100から30000原子p
pmの範囲において、優れた負電子写真感光体特性が得
られることが分かった。なお、ここでは光導電層及び上
部阻止層内で光学的バンドギャップは一定なので、光学
的バンドギャップが最大となる位置での光学的バンドギ
ャップ、屈折率は、各層のそれぞれの一定値である。ま
た、感光体最表面を形成する表面層も均一組成なので、
感光体最表面の光学的バンドギャップ、屈折率もその一
定値である。
【0176】さらに、実験例1の(III')から(V
I')の条件で作製した電子写真感光体を用いて文字原
稿を複写したところ、黒濃度が高く鮮明な画像が得られ
た。そして、写真原稿の複写においても、原稿に忠実で
鮮明な画像を得ることができた。
【0177】<実験例2>図5に示す装置を用い、ガラ
ス基板上に光導電層、上部阻止層及び表面層を各々1μ
m堆積させてサンプルを作製した。下記表6に示す(2
I)〜(2IX)の各サンプルの作製条件における各ガ
ス種の流量は一定とし、この条件で各サンプルを作製し
た。但し、第13族原子、炭素原子を含有するガス種と
しては各々、B26、CH4を用いて含有量を調節し
た。
【0178】
【表6】
【0179】(2I)から(2VII)は上部阻止層、
(2VIII)は光導電層、(2IX)は表面層のサン
プル作製条件である。上部阻止層のSiH4の流量は3
0から10ml/min(normal)、CH4の流
量は1から15ml/min(normal)の範囲で
作製したサンプルのシリコン原子と炭素原子の和に対す
る炭素原子の含有量C/(Si+C)を二次イオン質量
分析法(SIMS)で調べ、このC/(Si+C)の値
が表6の値に合うように調整をした。但し、C/(Si
+C)が0.4のときのSiH4及びCH4の流量は1
4.5及び9.7ml/min(normal)であ
る。また、ガラス基板上に(2I)から(2IX)の条
件で作製した光導電層、上部阻止層及び表面層のサンプ
ルを用いて光学的バンドギャップ及び屈折率を測定し
た。この結果を表7に示す。
【0180】
【表7】
【0181】<比較例2及び実施例2>光学的バンドギ
ャップ及び屈折率を測定した後、図5に示す装置を用い
直径30mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダ
ー(支持体)上に、下記表8に示す条件で、下部阻止
層、光導電層、上部阻止層、表面層の順に成膜を行い、
上部阻止層に含まれるシリコン原子と炭素原子の和に対
する炭素原子の含有量を下記表9に示す条件で電子写真
感光体を作製した。このとき、高周波電力としてはVH
F帯の周波数を出力可能な高周波電力を用いた。また、
電子写真感光体作製時に用いる各ガス種は各層内で一定
の流量とし、第13族原子、第15族原子、炭素原子を
含有するガス種としては各々、B26、PH3、CH4
用いて含有量を調節した。
【0182】感光体作成における上部阻止層の成膜条件
(2I’)〜(2VII’)は、前記実験例2の(2
I)〜(2VII)の条件と同じである。
【0183】上部阻止層を2II’〜2VI’の条件で
成膜した感光体は実施例、2I’、2VII’の条件で
成膜した感光体は比較例である。
【0184】
【表8】
【0185】
【表9】
【0186】更に実験例1と同様に、作製した各々の電
子写真感光体について帯電能、残留電位、光による特性
劣化、感度、画像流れについて相対評価を行った。
【0187】[帯電能、残留電位、光による特性劣化、
感度、画像流れ] ◎:上部阻止層を(2I')の条件で作製した感光体と
比較して20%以上の特性向上 ○:上部阻止層を(2I')の条件で作製した感光体と
比較して10〜20%の特性向上 △:上部阻止層を(2I')の条件で作製した感光体と
比較して同等の特性 □:上部阻止層を(2I')の条件で作製した感光体と
比較して0〜10%の特性低下 ◇:上部阻止層を(2I')の条件で作製した感光体と
比較して10〜20%の特性低下 その結果を表10に示す。
【0188】
【表10】
【0189】実験例2の結果、表7の(2I)から(2
VII)の条件により作製した上部阻止層は炭素原子の
含有量を増加させると光学的バンドギャップが1.85
から2.45eVに増加し、屈折率が3.4から2.2
まで低下した。表7の(2VIII)は光導電層の光学
的バンドギャップ及び屈折率、表7の(2IX)は表面
層の光学的バンドギャップ及び屈折率であり、上部阻止
層の光学的バンドギャップ及び屈折率と比較すると、
(2I)の条件では光学的バンドギャップの関係がEg
1<Eg2<Eg3、(2II)から(2VII)の条
件ではEg1<Eg3≦Eg2であり、屈折率の関係は
全ての条件でn3<n2<n1であることが分かった。
【0190】また、表8及び表9の(2II’)から
(2VII’)の条件で作製した負帯電用電子写真感光
体の特性を(2I’)の条件で作製した負帯電用電子写
真感光体の特性と比較したところ、帯電能及び光による
特性劣化は全ての条件で(2I’)の条件よりも向上し
た。また、残留電位は(2II’)から(2V’)の条
件では(2I’)と同等であり、(2VI’)の炭素原
子の含有量以上の条件では低下したが、(2II’)か
ら(2VI’)の値は負帯電用電子写真感光体特性とし
ては充分な値であった。そして、感度及び画像流れは
(2III’)から(2V’)の条件が(2I’)の条
件と比較して最も向上しており、(2VII’)の条件
では(2I’)の条件と同等の特性値を示した。この結
果より、(2II’)から(2VI’)の条件では負帯
電電子写真感光体として好ましい特性が得られ、特に
(2IV’)から(2V’)の条件では最適な負帯電電
子写真感光体特性が得られた。
【0191】表8及び表9の各条件により作製した負帯
電用電子写真感光体において、光導電層及び上部阻止層
内で光学的バンドギャップが最大となる位置での光学的
バンドギャップ、屈折率及び感光体最表面の光学的バン
ドギャップ、屈折率は、表6において同じ条件により作
製した光学的バンドギャップ、屈折率と等しいことか
ら、上部阻止層の光学的バンドギャップを2.0≦Eg
2≦2.3且つ屈折率を2.4≦n2≦3.3の範囲に
し、シリコン原子と炭素原子の和に対する炭素原子の含
有量の比C/(Si+C)を0.05≦C/(Si+
C)≦0.60にすると共に、上部阻止層及び表面層の
光学的バンドギャップの関係がEg3≦Eg2及び屈折
率の関係がn3<n2となる範囲において、優れた負電
子写真感光体特性が得られることが分かった。
【0192】さらに、実験例2の(2II')から(2
VI')の条件で作製した電子写真感光体を用いて文字
原稿を複写したところ、黒濃度が高く鮮明な画像が得ら
れた。そして、写真原稿の複写においても、原稿に忠実
で鮮明な画像を得ることができた。
【0193】なお本例においても、各層の組成は均一で
あり、光導電層および上部阻止層内で光学的バンドギャ
ップが最大となる位置での光学的バンドギャップおよび
屈折率、感光体最表面の光学的バンドギャップおよび屈
折率は、それぞれ光導電層、上部阻止層、表面層の一定
の値である。
【0194】<実験例3>図5に示す装置を用い、ガラ
ス基板上に光導電層、上部阻止層及び表面層を各々1μ
m堆積させてサンプルを作製した。下記表11に示す
(3I)〜(3VII)の各サンプルの作製条件におけ
る各ガス種の流量は一定とし、この条件で各サンプルを
作製した。但し、第13族原子、炭素原子を含有するガ
ス種としては各々、B26、CH4を用いて含有量を調
節した。
【0195】
【表11】
【0196】(3I)から(3V)は表面層、(3V
I)は光導電層、(3VII)は上部阻止層のサンプル
作製条件である。ガラス基板上に(3I)から(3VI
I)の条件で作製した光導電層、上部阻止層及び表面層
のサンプルを用いて光学的バンドギャップ及び屈折率を
測定した。この結果を表12に示す。
【0197】
【表12】
【0198】<比較例3及び実施例3>光学的バンドギ
ャップ及び屈折率を測定した後、図5に示す装置を用い
直径30mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダ
ー(支持体)上に、下記表13に示す条件で、下部阻止
層、光導電層、上部阻止層、表面層の順に成膜を行い、
上部阻止層を作製する際に使用するSiH4及びCH4
流量を下記表14に示す条件で電子写真感光体を作製し
た。このとき、高周波電力としてはVHF帯の周波数を
出力可能な高周波電力を用いた。また、電子写真感光体
作製時に用いる各ガス種は各層内で一定の流量し、第1
3族原子、炭素原子を含有するガス種としては各々、B
26、CH4を用いて含有量を調節した。
【0199】表面層を(3III’)および(3I
V’)の条件で成膜した感光体は実施例であり、(3
I’)、(3II’)、(3V’)の条件で成膜した感
光体は比較例である。
【0200】
【表13】
【0201】
【表14】
【0202】更に実験例1と同様に、作製した各々の電
子写真感光体について帯電能、残留電位、光による特性
劣化、感度、画像流れについて相対評価を行った。[帯
電能、残留電位、光による特性劣化、感度、画像流れ] ◎:表面層を(3I')の条件で作製した感光体と比較
して20%以上の特性向上 ○:表面層を(3I')の条件で作製した感光体と比較
して10〜20%の特性向上 △:表面層を(3I')の条件で作製した感光体と比較
して同等の特性 □:表面層を(3I')の条件で作製した感光体と比較
して0〜10%の特性低下 その結果を表15に示す。
【0203】
【表15】
【0204】実験例3の結果、表12の(3I)から
(3V)の条件により作製した表面層は炭素原子の含有
量を増加すると、光学的バンドギャップが2.8から
1.90eVまで低下し、屈折率が2.0〜2.1であ
った。表12の(VI)は光導電層び光学的バンドギャ
ップ及び屈折率、表12の(VII)は上部阻止層の光
学的バンドギャップ及び屈折率であり、表面層の光学的
バンドギャップ及び屈折率と比較すると、(3I)から
(3II)の条件では光学的バンドギャップの関係がE
g1<Eg2<Eg3であり、(3III)から(3I
V)の条件ではEg1≦Eg3<Eg2であり、(3
V)の条件ではEg2<Eg1<Eg2であり、屈折率
の関係は全ての条件においてn3<n2<n1であるこ
とが分かった。
【0205】また、表13及び表14の(3II')か
ら(3V')の条件で作製した負帯電用電子写真感光体
の特性を(3I')の条件で作製した負帯電用電子写真
感光体の特性と比較したところ、帯電能は(3II')
から(3IV')の条件で(3I')と同等の特性であっ
たが、(3V')の条件では低下した。光による特性劣
化は全ての条件で、(3I')と同等の特性であった
が、この値は負帯電用電子写真感光体特性としては充分
な値であった。また、残留電位は(3II')の条件で
は同等の特性であったが、(3III')から(3V')
の条件で(3I')の条件よりも向上した。そして、感
度は(3V')の条件では(3I')と同等の特性であっ
たが、(3II')から(3IV')の条件で(3I')
の条件よりも向上し、画像流れは全ての条件で(3
I')の条件よりも向上しており、なかでも感度に関し
ては(3III')の条件で、画像流れは(3III')
から(3IV')の条件で更に良い特性を示した。この
結果より、(3III')から(3IV')の条件で負帯
電電子写真感光体として好ましい特性が得られ、特に
(3III')の条件で最適な負帯電電子写真感光体特
性が得られた。
【0206】表13及び表14の各条件により作製した
負帯電用電子写真感光体において、光導電層及び上部阻
止層内で光学的バンドギャップが最大となる位置での光
学的バンドギャップ、屈折率及び感光体最表面の光学的
バンドギャップ、屈折率は、表11において同じ条件に
より作製した光学的バンドギャップ、屈折率と等しいこ
とから、光導電層、上部阻止層及び表面層の光学的バン
ドギャップの関係がEg1≦Eg3<Eg2及び屈折率
の関係がn3<n2<n1となる範囲において、優れた
負電子写真感光体特性が得られることが分かった。
【0207】さらに、実験例3の(3III')から
(3V')の電子写真感光体を用いて文字原稿を複写し
たところ、黒濃度が高く鮮明な画像が得られた。そし
て、写真原稿の複写においても、原稿に忠実で鮮明な画
像を得ることができた。
【0208】以上の実験例より、光導電層、上部阻止層
及び表面層とが順次積層されてなる負帯電用電子写真感
光体において、上部阻止層はシリコン原子と炭素原子の
和に対する第13族原子の含有量が100原子ppm以
上30000原子ppm以下の範囲であり、上部阻止層
内で最大の光学的バンドギャップとなる位置での光学的
バンドギャップ及び屈折率が2.0≦Eg2≦2.3且
つ2.4≦n2≦3.3であると共に、各層の光学的バ
ンドギャップ及び屈折率の関係がEg1≦Eg3≦Eg
2及びn1<n2<n3の関係が成り立つ負帯電用電子
写真感光体が、優れた負電子写真感光体特性を有し、更
に膜剥れが生じないことが分かった。
【0209】なお本例においても、各層の組成は均一で
あり、光導電層および上部阻止層内で光学的バンドギャ
ップが最大となる位置での光学的バンドギャップおよび
屈折率、感光体最表面の光学的バンドギャップおよび屈
折率は、それぞれ光導電層、上部阻止層、表面層の一定
の値である。
【0210】<実験例4>図5に示す装置を用い、ガラ
ス基板上に光導電層、上部阻止層及び表面層を各々1μ
m堆積させてサンプルを作製した。上部阻止層の各サン
プルの作製条件は下記表16に示す(4IT)から(4
VT)であり、光導電層のサンプルは下記表16に示す
(4VI)であり、表面層の各サンプルの作製条件は表
17に示す(4IS)から(4VS)である。下記表1
6及び17に示す各サンプルの作製条件における各ガス
種の流量は一定とし、この条件で各サンプルを作製し
た。但し、第13族原子、炭素原子を含有するガス種と
しては各々、B26、CH4を用いて含有量を調節し
た。
【0211】
【表16】
【0212】
【表17】
【0213】ガラス基板上に(4IT)から(4VT)
の条件で作製した上部阻止層、(4VI)の条件で作製
した光導電層及び(4IS)から(4VS)の条件で作
製した表面層の各サンプルを用いて光学的バンドギャッ
プ及び屈折率を測定した。この結果を表18に示す。表
中、例えば4Iの列における上部阻止層(T)の行の光
学的バンドギャップ、屈折率の値が、条件(4IT)で
作成した上部阻止層の各値を示す。
【0214】
【表18】
【0215】<比較例4及び実施例4>光学的バンドギ
ャップ及び屈折率を測定した後、図5に示す装置を用い
直径30mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダ
ー(支持体)上に、下記表19に示す条件で、下部阻止
層、光導電層、上部阻止層、表面層の順に成膜を行い、
上部阻止層を作製する際に使用するSiH4及びCH4
流量を下記表20に示す条件で電子写真感光体を作製し
た。このとき、高周波電力としてはVHF帯の周波数を
出力可能な高周波電力を用いた。その際、第13族原
子、炭素原子を含有するガス種としては各々、B26
CH4を用いて含有量を調節した。但し、上部阻止層及
び表面層でのSiH4及びCH4の流量は上部阻止層の成
膜開始時から感光体最表面(表面層の成膜終了時)にか
けてSiH4の流量が24.2から連続的に減少し感光
体最表面で最小流量(この値を表20に示す)となり、
CH4の流量が0から連続的に増加し感光体最表面で最
大流量(この値を表20に示す)とした。
【0216】上部阻止層および表面層を、条件(4I
V’)で作成した感光体は実施例であり、条件(4
I’)〜(4III’)、(4V’)で作成した感光体
は比較例である。
【0217】
【表19】
【0218】
【表20】
【0219】更に実験例1と同様に、作製した各々の電
子写真感光体について帯電能、残留電位、光による特性
劣化、感度、画像流れについて相対評価を行った。 [帯電能、残留電位、光による特性劣化、感度、画像流
れ] ◎:上部阻止層および表面層を条件(4I’)で作成し
た感光体と比較して20%以上の特性向上 ○:上部阻止層および表面層を条件(4I’)で作成し
た感光体と比較して10から20%の特性向上 △:上部阻止層および表面層を条件(4I’)で作成し
た感光体と比較して同等の特性 □:上部阻止層および表面層を条件(4I’)で作成し
た感光体と比較して0〜10%の特性低下 ◇:上部阻止層および表面層を条件(4I’)で作成し
た感光体と比較して10〜20%の特性低下 その結果を表21に示す。
【0220】
【表21】
【0221】実験例4の結果、表17の(4IT)から
(4VIT)の条件により作製した上部阻止層は炭素原
子の含有量が増加すると、光学的バンドギャップが1.
95から2.10eVまで増加し、屈折率が3.4から
3.0まで低下した。また、表18の(4IS)から
(4VIS)の条件により作製した表面層は、光学的バ
ンドギャップが2.90から1.90eVまで増加した
が、屈折率は2.0から2.1であった。表17の(4
VI)は光導電層の光学的バンドギャップ及び屈折率で
あり、上部阻止層及び表面層の光学的バンドギャップ及
び屈折率と比較すると、(4I)から(4III)の条
件では光学的バンドギャップの関係がEg1≦Eg2<
Eg3、屈折率の関係がn3≦n2<n1であり、(4
IV)の条件では光学的バンドギャップの関係がEg1
<Eg3<Eg2、屈折率の関係がn3<n2<n1で
あり、(4V)の条件では光学的バンドギャップの関係
がEg3<Eg1<Eg2、屈折率の関係がn3<n2
<n1であることが分かった。
【0222】また、表19及び表20の(4II’)か
ら(4VI’)の条件で作製した負帯電用電子写真感光
体の特性を(4I’)の条件で作製した負帯電用電子写
真感光体の特性と比較したところ、帯電能は(4I
I’)から(4III’)の条件は(4I’)の条件と
同等の値であったが、(4IV’)から(4V’)の条
件で(4I’)の条件よりも低下した。逆に、残留電位
は(4II’)から(4III’)の条件は(4I’)
の条件と同等の値であったが、(4IV’)から(4
V’)の条件で(4I’)の条件よりも向上した。これ
は、(4II’)、(4III’)は(4IV’)より
も残留電位が非常に高く、帯電能は残留電位が上乗せさ
れて表れるために見かけ上(4IV’)のほうが帯電能
が低くなるが、真の帯電能は帯電能と残留電位の差であ
るため、(4IV’)のほうが帯電特性及び残留電位に
関しては優れている。光による特性劣化は全ての条件で
(4I’)の条件よりも向上した。感度及び画像流れに
関しては、(4II’)、(4V’)の条件では(4
I’)の条件と同等の値であったが、(4III’)か
ら(4IV’)の条件では(4I’)の条件よりも向上
した。この結果より、(4IV’)の条件で最適な負帯
電電子写真感光体特性が得られた。
【0223】表19及び表20の各条件により作製した
負帯電用電子写真感光体において、光導電層内で光学的
バンドギャップが最大となる位置での光学的バンドギャ
ップ、屈折率は表16により作製したサンプルと同じ光
学的バンドギャップ、屈折率となる。また、上部阻止層
内で光学的バンドギャップが最大となる位置での光学的
バンドギャップ、屈折率は、上部阻止層の最も表面層側
の位置での光学的バンドギャップ、屈折率であり、この
位置での各ガス種の流量が表16と同じとあることか
ら、表16により作製したサンプルと同じ光学的バンド
ギャップ、屈折率となる。感光体最表面の光学的バンド
ギャップ、屈折率は、表20に示される表面層の成膜終
了時点の成膜条件と同じ表17に示される条件により作
製したサンプルと同じ光学的バンドギャップ、屈折率と
なる。従って、上部阻止層の光学的バンドギャップを
2.0≦Eg2≦2.3且つ屈折率を2.4≦n2≦
3.3の範囲にすると共に、光導電層、上部阻止層及び
表面層の光学的バンドギャップの関係がEg1≦Eg3
≦Eg2及び屈折率の関係がn3<n2<n1となる範
囲において、優れた負電子写真感光体特性が得られるこ
とが分かった。
【0224】さらに、実験例4の(4IV’)の電子写
真感光体を用いて文字原稿を複写したところ、黒濃度が
高く鮮明な画像が得られた。そして、写真原稿の複写に
おいても、原稿に忠実で鮮明な画像を得ることができ
た。
【0225】以上の実験例により、各層を一定の原料ガ
ス流量して作製した負帯電用電子写真感光体のみなら
ず、原料ガス流量を連続的に変化させた場合でも同様
に、光導電層、上部阻止層及び表面層とが順次積層され
てなる負帯電用電子写真感光体において、上部阻止層全
てにおいて、シリコン原子と炭素原子の和に対する第1
3族原子の含有量が100原子ppm以上30000原
子ppm以下の範囲であり、上部阻止層内で最大の光学
的バンドギャップとなる位置での光学的バンドギャップ
及び屈折率が2.0≦Eg2≦2.3且つ2.4≦n2
≦3.3であると共に、各層の光学的バンドギャップ及
び屈折率の関係がEg1≦Eg3≦Eg2及びn1<n
2<n3の関係が成り立つ負帯電用電子写真感光体が、
優れた負電子写真感光体特性を有し、更に膜剥れを生じ
ないことが分かった。
【0226】
【発明の効果】本発明により、上記上部阻止層の光学的
バンドギャップ、屈折率を適正な範囲に調整し、且つ光
導電層、上部阻止層及び表面層の光学的バンドギャップ
及び屈折率の関係をEg1≦Eg3≦Eg2及びn1<
n2<n3とする事で、電気的、光学的、光導電的特性
が使用環境にほとんど依存することなく実質的に常時安
定しており、膜剥れを生じず、耐光疲労に優れ、繰り返
し使用に際しては劣化現象を起こさず耐久性、耐湿性に
優れ、残留電位がほとんど観測されず、更に画像品質の
良好な、負帯電用電子写真感光体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の好適な実施態様例の
層領域を説明するための模式的層構成図である。
【図2】本発明の光導電層から表面層の領域に含有され
る炭素原子の濃度の分布状態の模式図である。
【図3】本発明の光導電層から表面層の領域に含有され
る第13族原子の濃度の分布状態の模式図である。
【図4】真空処理装置の一例で、プラズマCVD法によ
り同時に多数本の電子写真感光体を製造する装置の模式
的な構成図である。
【図5】真空処理装置の一例で、プラズマCVD法によ
り一本の電子写真感光体を製造する装置の模式的な構成
図である。
【図6】真空処理装置の一例で、電源周波数としてRF
帯を用いた高周波プラズマCVD法により電子写真感光
体を製造する装置の模式的な構成図である。
【図7】テストチャートの一例を説明するための概略図
である。
【符号の説明】
100・・・・・・・・・・電子写真感光体 101・・・・・・・・・・支持体 102・・・・・・・・・・光受容層 103・・・・・・・・・・光導電層 104・・・・・・・・・・上部阻止層 105・・・・・・・・・・表面層 106・・・・・・・・・・下部阻止層 107・・・・・・・・・・第二表面層 1100・・・・・・・・・・堆積装置 1111・・・・・・・・・・反応容器 1112・・・・・・・・・・排気管 1113・・・・・・・・・・円筒状支持体 1114・・・・・・・・・・電極 1115・・・・・・・・・・マッチングボックス 1116、1117・・・・・高周波電源 1118・・・・・・・・・・原料ガス導入管 1119・・・・・・・・・・原料ガス配管 1120・・・・・・・・・・発熱体 1121・・・・・・・・・・回転軸 1122・・・・・・・・・・減速ギア 1123・・・・・・・・・・モータ 1200・・・・・・・・・・原料ガス供給装置 1211〜1215・・・・・マスフローコントローラ
ー 1221〜1225・・・・・原料ガスボンベ 1231〜1235・・・・・原料ガスボンベバルブ 1241〜1245・・・・・ガス流入バルブ 1251〜1255・・・・・ガス流出バルブ 1261〜1265・・・・・圧力調整器 1260・・・・・・・・・・原料ガス供給バルブ 2110・・・・・・・・・・反応空間 2111・・・・・・・・・・反応容器 2112・・・・・・・・・・排気管 2113・・・・・・・・・・円筒状支持体 2114・・・・・・・・・・電極 2115・・・・・・・・・・マッチングボックス 2116・・・・・・・・・・高周波電源 2118・・・・・・・・・・原料ガス導入管 2119・・・・・・・・・・発熱体 2120・・・・・・・・・・回転軸 2121・・・・・・・・・・減速ギア 2122・・・・・・・・・・モータ 3100・・・・・・・・・・堆積装置 3110・・・・・・・・・・反応空間 3111・・・・・・・・・・カソード電極兼反応容器 3112・・・・・・・・・・円筒状支持体 3113・・・・・・・・・・ヒーター 3114・・・・・・・・・・原料ガス導入管 3115・・・・・・・・・・マッチングボックス 3116・・・・・・・・・・原料ガス配管 3117・・・・・・・・・・リークバルブ 3118・・・・・・・・・・メイン排気バルブ 3119・・・・・・・・・・圧力計 3120・・・・・・・・・・絶縁リング 3200・・・・・・・・・・原料ガス供給装置 3211〜3215・・・・・マスフローコントローラ
ー 3221〜3225・・・・・原料ガスボンベ 3231〜3235・・・・・原料ガスボンベバルブ 3241〜3245・・・・・ガス流入バルブ 3251〜3255・・・・・ガス流出バルブ 3261〜3265・・・・・圧力調整器 3260・・・・・・・・・・原料ガス供給バルブ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 植田 重教 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 村山 仁 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 土田 伸史 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 2H068 DA05 DA12 DA17 DA25 DA28 DA34 DA35 DA37 FA16 FC03

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 支持体上に、少なくとも、シリコン原子
    を母材とする非晶質材料からなる光導電層、シリコン原
    子と炭素原子を母材とし周期律表第13族元素を含有す
    る非晶質材料からなる上部阻止層、ならびに、シリコン
    原子と炭素原子を母材とする非晶質材料及び/又は炭素
    原子を母材とする非晶質材料からなる表面層がこの順に
    積層されてなる負帯電用電子写真感光体において、、該
    上部阻止層においては、シリコン原子と炭素原子の和に
    対する周期律表第13族に属する原子の含有量が100
    原子ppm以上30000原子ppm以下であり、か
    つ、該光導電層内で光学的バンドギャップが最大となる
    位置での光学的バンドギャップおよび屈折率をそれぞれ
    Eg1およびn1、該上部阻止層内で光学的バンドギャ
    ップが最大となる位置での光学的バンドギャップおよび
    屈折率をそれぞれEg2およびn2、感光体最表面での
    光学的バンドギャップおよび屈折率をそれぞれEg3お
    よびn3と表すとき、 2.0eV≦Eg2≦2.3eV、 2.4≦n2≦3.3、 Eg1≦Eg3≦Eg2、および n3<n2<n1 の関係が成り立つことを特徴とする負帯電用電子写真感
    光体。
  2. 【請求項2】 前記上部阻止層において、炭素原子の濃
    度が層厚方向に変化する領域を有する請求項1に記載の
    負帯電用電子写真感光体。
  3. 【請求項3】 前記上部阻止層におけるシリコン原子と
    炭素原子の和に対する炭素原子の含有量の比をC/(S
    i+C)と表すとき、 0.05≦C/(Si+C)≦0.60 である請求項1または2に記載の負帯電用電子写真感光
    体。
  4. 【請求項4】 前記上部阻止層において、周期律表第1
    3族に属する原子の濃度が層厚方向に変化する請求項1
    乃至3のいずれか一項に記載の負帯電用電子写真感光
    体。
  5. 【請求項5】 前記上部阻止層内に、支持体から感光体
    最表面に向かう方向に炭素原子の濃度が連続的に増加す
    る領域を有する請求項4に記載の負帯電用電子写真感光
    体。
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