JP2003119513A - 極低炭素鋼板、極低炭素鋼鋳片およびその製造方法 - Google Patents
極低炭素鋼板、極低炭素鋼鋳片およびその製造方法Info
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Abstract
凝固時に酸化物を微細に析出させることにより、確実に
表面疵を防止できる極低炭素鋼板、極低炭素鋳片とその
製造方法を提示すること。 【解決手段】 溶鋼の炭素濃度を0.002質量%以下
まで脱炭した後、該溶鋼にNbを添加し、さらに溶鋼中
の溶存酸素濃度を0.02質量%以上、0.06質量%
以下に調整した溶鋼を鋳造する方法およびそれで得られ
た極低炭素鋳片および極低炭素鋼板。
Description
優れた極低炭素鋳片、極低炭素鋼板およびその製造方法
に関するものである。
には、多量の溶存酸素が含まれており、この過剰酸素は
酸素との親和力が強い強脱酸元素であるAlにより脱酸
されるのが一般的である。しかし、Alは脱酸によりア
ルミナ系介在物を生成し、これが凝集合体して粗大なア
ルミナクラスターとなる。このアルミナクラスターは鋼
板製造時に表面疵発生の原因となり、薄鋼板の品質を大
きく劣化させる。特に、炭素濃度が低く、精錬後の溶存
酸素濃度が高い薄鋼板用素材である極低炭素溶鋼では、
アルミナクラスターの量が非常に多く、表面疵の発生率
が極めて高いため、アルミナ系介在物の低減対策は大き
な課題となっている。
19号公報の介在物吸着用フラックスを溶鋼表面に添加
してアルミナ系介在物を除去する方法、或いは特開昭6
3−149057号公報の注入流を利用してCaOフラ
ックスを溶鋼中に添加し、これによりアルミナ系介在物
を吸着除去する方法が提案、実施されてきた。一方、ア
ルミナ系介在物を除去するのではなく、生成させない方
法として、特開平5−302112号公報にあるように
溶鋼をMgで脱酸し、Alでは殆ど脱酸しない薄鋼板用
溶鋼の溶製方法も開示されている。
たアルミナ系介在物を除去する方法では、極低炭素溶鋼
中に多量に生成したアルミナ系介在物を表面疵が発生し
ない程度まで低減することは非常に難しい。また、アル
ミナ系介在物を全く生成しないMg脱酸では、Mgの蒸
気圧が高く、溶鋼への歩留まりが非常に低いため、極低
炭素鋼のように溶存酸素濃度が高い溶鋼をMgだけで脱
酸するには多量のMgを必要とし、製造コストを考える
と実用的なプロセスとは言えない。
ど介在物を生成させることなく、凝固時に酸化物を微細
に析出させることにより、確実に表面疵を防止できる極
低炭素鋼板、極低炭素鋳片とその製造方法を提供するこ
とを目的とする。
に、本発明は以下の構成を要旨とする。 (1)溶鋼の炭素濃度を0.002質量%以下まで脱炭
した後、該溶鋼にNbを添加し、さらに溶鋼中の溶存酸
素濃度を0.02質量%以上、0.06質量%以下に調
整した溶鋼を鋳造することを特徴とする極低炭素鋼鋳片
の製造方法。 (2)溶鋼の炭素濃度を0.002質量%以下まで脱炭
した後、該溶鋼にNbを添加して、溶鋼中のNb濃度を
0.005質量%以上、0.05質量%以下にし、さら
に溶鋼中の溶存酸素濃度を0.02質量%以上、0.0
6質量%以下に調整した溶鋼を鋳造することを特徴とす
る極低炭素鋼鋳片の製造方法。 (3)真空脱ガス処理により炭素濃度を0.002質量
%以下まで脱炭した後、該溶鋼にNbを添加し、さらに
溶鋼中の溶存酸素濃度を0.02質量%以上、0.06
質量%以下に調整した溶鋼を鋳造することを特徴とする
極低炭素鋼鋳片の製造方法。 (4)真空脱ガス処理により炭素濃度を0.002質量
%以下まで脱炭した後、該溶鋼にNbを添加して、溶鋼
中のNb濃度を0.005質量%以上、0.05質量%
以下にし、さらに溶鋼中の溶存酸素濃度を0.02質量
%以上、0.06質量%以下に調整した溶鋼を鋳造する
ことを特徴とする極低炭素鋼鋳片の製造方法。 (5)溶鋼を鋳造するに際し、電磁攪拌、或いは電磁場
の印加を行いながら鋳造することを特徴とする(1)か
ら(4)いずれかに記載の極低炭素鋼鋳片の製造方法。 (6)溶鋼を鋳造するに際し、電磁攪拌を行って、メニ
スカス位置における溶鋼を40cm/s以上、100cm/s
以下の平均流速で旋回させながら鋳造することを特徴と
する(1)から(4)いずれかに記載の極低炭素鋼鋳片
の製造方法。 (7)溶鋼を鋳造するに際し、電磁場の印加を行い、メ
ニスカス位置における溶鋼を0.1Hz以上、100Hz以
下で水平方向に振動させながら鋳造することを特徴とす
る(1)から(4)記載の極低炭素鋼鋳片の製造方法。 (8)極低炭素鋼板において、直径0.5μmから30
μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、10000
00個/cm2未満分散し、且つその酸化物に少なくとも
Si、Mn、Feを含んでいることを特徴とする極低炭
素鋼板。 (9)極低炭素鋼板において、鋼板中に存在する酸化物
の個数割合で40%以上が少なくともSi、Mn、Fe
を含んでいることを特徴とする極低炭素鋼板。 (10)極低炭素鋼板において、鋼板中に存在する酸化
物の個数割合で40%以上が少なくともSi、Mn、F
eを含んだ球状酸化物であることを特徴とする極低炭素
鋼板。 (11)極低炭素鋼板において、鋼板中に存在する酸化
物の個数割合で40%以上が少なくともSi酸化物、M
n酸化物、Fe酸化物の含有率で、20質量%以上であ
ることを特徴とする極低炭素鋼板。 (12)極低炭素鋼板において、鋼板中に存在する酸化
物の個数割合で40%以上が少なくともSi酸化物、M
n酸化物、Fe酸化物の含有率で、20質量%以上の球
状酸化物であることを特徴とする極低炭素鋼板。 (13)極低炭素鋼板において、直径0.5μmから3
0μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、1000
000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の個数割合
で40%以上が少なくともSi、Mn、Feを含んでい
ることを特徴とする極低炭素鋼板。 (14)極低炭素鋼板において、直径0.5μmから3
0μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、1000
000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の個数割合
で40%以上が少なくともSi、Mn、Feを含んだ球
状酸化物であることを特徴とする極低炭素鋼板。 (15)極低炭素鋼板において、直径0.5μmから3
0μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、1000
000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の個数割合
で40%以上が少なくともSi酸化物、Mn酸化物、F
e酸化物の含有率で、20質量%以上であることを特徴
とする極低炭素鋼板。 (16)極低炭素鋼板において、直径0.5μmから3
0μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、1000
000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の個数割合
で40%以上が少なくともSi酸化物、Mn酸化物、F
e酸化物の含有率で、20質量%以上の球状酸化物であ
ることを特徴とする極低炭素鋼板。 (17)極低炭素鋼鋳片において、直径0.5μmから
30μmの微細酸化物が鋳片表層から20mmの範囲内に
1000個/cm2以上、1000000個/cm2未満分散
し、且つその酸化物の一部または全部に少なくともS
i、Mn、Feを含んでいることを特徴とする極低炭素
鋼鋳片。 (18)極低炭素鋼鋳片において、鋳片表層から20mm
の範囲内に存在する酸化物の個数割合で40%以上が少
なくともSi、Mn、Feを含んでいることを特徴とす
る極低炭素鋼鋳片。 (19)極低炭素鋼鋳片において、鋳片表層から20mm
の範囲内に存在する酸化物の個数割合で40%以上が少
なくともSi、Mn、Feを含んだ球状酸化物であるこ
とを特徴とする極低炭素鋼鋳片。 (20)極低炭素鋳片において、鋳片表層から20mmの
範囲内に存在する酸化物の個数割合で40%以上が少な
くともSi酸化物、Mn酸化物、Fe酸化物の含有率
で、20質量%以上であることを特徴とする極低炭素鋼
鋳片。 (21)極低炭素鋳片において、鋳片表層から20mmの
範囲内に存在する酸化物の個数割合で40%以上が少な
くともSi酸化物、Mn酸化物、Fe酸化物の含有率
で、20質量%以上の球状酸化物であることを特徴とす
る極低炭素鋼鋳片。 (22)極低炭素鋳片において、直径0.5μmから3
0μmの微細酸化物が鋳片表層から20mmの範囲内に1
000個/cm2以上、1000000個/cm2未満分散
し、且つその酸化物の個数割合で40%以上が少なくと
もSi、Mn、Feを含んでいることを特徴とする極低
炭素鋼鋳片。 (23)極低炭素鋳片において、直径0.5μmから3
0μmの微細酸化物が鋳片表層から20mmの範囲内に1
000個/cm2以上、1000000個/cm2未満分散
し、且つその酸化物の個数割合で40%以上が少なくと
もSi、Mn、Feを含んだ球状酸化物であることを特
徴とする極低炭素鋼鋳片。 (24)極低炭素鋳片において、直径0.5μmから3
0μmの微細酸化物が鋳片表層から20mmの範囲内に1
000個/cm2以上、1000000個/cm2未満分散
し、且つその酸化物の個数割合で40%以上が少なくと
もSi酸化物、Mn酸化物、Fe酸化物の含有率で、2
0質量%以上であることを特徴とする極低炭素鋼鋳片。 (25)極低炭素鋳片において、直径0.5μmから3
0μmの微細酸化物が鋳片表層から20mmの範囲内に1
000個/cm2以上、1000000個/cm2未満分散
し、且つその酸化物の個数割合で40%以上が少なくと
もSi酸化物、Mn酸化物、Fe酸化物の含有率で、2
0質量%以上の球状酸化物であることを特徴とする極低
炭素鋼鋳片。
本発明の製造法では、転炉や電気炉等の製鋼炉で精錬し
て、或いはさらに真空脱ガス処理等を行って、炭素濃度
を0.002質量%以下とした溶鋼にNbを添加し、且
つ溶存酸素濃度を0.02〜0.06質量%になるよう
に調整する。この溶製法の基本思想は、鋳造時に酸素と
反応してCOガスを発生させない程度まで炭素濃度を低
減し、且つAlを殆ど添加せず、溶存酸素を多量に残す
ことにより、溶鋼中に殆ど介在物を生成させず、且つ脱
酸力の極めて弱いNbを添加してCやNを固定すること
で、薄板用鋼板としての材質をも確保することにある。
中には、多量の溶存酸素が含まれており、この溶存酸素
は通常Alの添加により殆ど脱酸される((1)式の反
応)ため、多量のアルミナ系介在物を生成する。 2Al+3O=Al2O3 (1) このアルミナ系介在物は脱酸直後からお互いに凝集合体
し、粗大なアルミナ系介在物となり、鋼板製造時に表面
欠陥発生の原因となる。しかし、脱炭処理後の溶鋼中に
Alを全く添加しないか、或いは添加する場合でも少量
を添加し、殆ど脱酸しなければ、多量の溶存酸素が溶鋼
中に含まれているが、介在物は殆ど生成せず、非常に清
浄性の高い溶鋼が得られる。通常、このような溶存酸素
の高い溶鋼を鋳造すると、凝固時にCOガスが発生し、
激しい突沸現象が生じると共に、鋳片内に多量の気泡が
捕捉されるため、鋳造性が悪化するだけでなく、鋳片品
質も大きく低下する。
い、あるいは殆ど添加せずに溶存酸素を残す代わりに、
C濃度を極力低下させることにより、凝固時のCOガス
発生を抑制することに着目した。その結果、実験的検討
からC濃度を0.002質量%以下にすれば、凝固時の
COガス発生速度は極めて低下することが判明した。ま
た、特に薄板用鋼板等においては加工性を高めるため
に、C濃度を極力低下させるとともに、鋼中に固溶した
CとNを他元素の添加により固定することが重要であ
る。通常、AlやTi等が鋼中のCとNを固定する元素
として使用されるが、これらの元素をCやNを固定する
に十分な量を添加すると溶鋼を強く脱酸してしまう。そ
こで、本発明ではNやCを十分に固定できる程度の量を
添加しても、殆ど溶鋼を脱酸しないような、脱酸力が極
めて弱い元素としてNbを添加することを見出した。
まで脱炭しても、溶鋼中の溶存酸素濃度が高過ぎると、
凝固時のCOガス発生を抑制することはできないため、
この場合溶存酸素濃度もある程度低くする必要がある。
これら過剰な溶存酸素分だけであれば、AlやTi等で
脱酸することは可能であるが、実験的な検討から溶存酸
素濃度で0.02質量%よりも低下させると、アルミナ
やチタニア等の介在物が多くなり過ぎ、浮上除去されず
に溶鋼中に残留してしまう。また、Nbを添加した際
に、溶存酸素濃度が本発明の範囲であれば、AlやTi
等を全く添加しなくても良い。反対に、溶存酸素濃度が
0.06質量%を超えると、C濃度を0.002質量%
以下に下げても鋳片内にCO気泡が捕捉されてしまうた
め、圧延後に気泡系の欠陥が発生する。よって、溶鋼中
の溶存酸素濃度は0.02質量%以上、0.06質量%
以下にする必要がある。なお、溶鋼中の溶存酸素濃度は
固定電解質を用いた酸素センサーにより、C濃度につい
ては溶鋼サンプリング法により分析することができる。
鋼中の濃度について説明する。溶鋼中のNb濃度が0.
005質量%未満ではC、Nを十分固定しにくくなり、
0.05質量%超では加工性が低下し易くなることか
ら、Nbの添加量は溶鋼中のNb濃度が0.005質量
%以上、0.05質量%以下になる様にすることが好ま
しい。また、この範囲のNb添加量であれば、Nbと平
衡する酸素濃度は0.02質量%以上であり、Nbを添
加しても溶存酸素を0.02質量%以上確保できる。
2質量%以下まで脱炭する方法としては、通常は真空脱
ガス装置を用いることで達成できる。さらに、最近で
は、連続鋳造機内に鋳型内電磁攪拌装置、あるいは電磁
コイルが装備されるようになっており、これらを用いる
ことで、CO気泡を鋳片に捕捉させることなく、鋳造で
きることを知見した。
の、鋳型内メニスカスにおける溶鋼流速を40〜100
cm/s程度確保すれば、溶存酸素濃度を0.06質量%
程度にしても、CO気泡を鋳片に捕捉させることなく鋳
造できるため好ましいことを知見している。なお、電磁
攪拌による溶鋼の旋回流速が40cm/s未満では十分な
CO気泡の洗浄効果が得られにくく、旋回流速が100
cm/s超ではCO気泡は洗浄されるが、溶鋼表面にある
モールドパウダーを巻き込み、表面欠陥が発生し易くな
る。
ては、鋳型内に装備された電磁コイルにより鋳型内の溶
鋼を0.1から100Hzの周波数で振動させることも有
効であることを見いだしている。この場合、周波数10
0Hz超では振動方向の変化に溶鋼流が追従しにくくなる
ため、0.1Hz未満では反対に振動方向の変化速度が遅
いため、何れも振動による凝固界面の気泡洗浄効果は十
分に得られにくい。
鋼中のC濃度を非常に低くすると、溶存酸素は鋳造中に
Fe酸化物系介在物として析出する。このFe酸化物系
介在物は溶鋼中で生成するのではなく、凝固時に析出す
るため、凝集合体することなく、鋳片内に微細に分散す
る。なお、Fe酸化物系介在物とは純粋なFe酸化物だ
けでなく、Si酸化物やMn酸化物等と複合化した酸化
物も含む。従って、本発明の様な極低炭素鋼において
は、少なくとも酸化物としてSi、Mn、Feが含まれ
ている。言い換えれば、Si、Mn、Feの各酸化物の
1種以上が含まれている。
囲内にある介在物分散状態を評価したところ、直径0.
5μmから30μmの微細酸化物が鋳片内に1000個
/cm 2以上1000000個/cm2未満分散しており、こ
の様に介在物が微細に分散していることで、表面欠陥の
防止を達成できる。尚、上記微細酸化物の直径を0.5
μmから30μmとしたのは、本発明の鋳片と鋼板にお
ける介在物の大きさがほぼ0.5μmから30μmの範
囲にほぼ収まっているためである。また、介在物分散状
態として1000個/cm2以上1000000個/cm2未
満としたのは、本発明における鋳片と鋼板の介在物がこ
の個数密度にある場合、表面欠陥が発生しなかったため
である。ここで、介在物の分散状態は、鋳片の研磨面を
100倍と1000倍の光学顕微鏡で観察し、単位面積
内の介在物粒径分布を評価した。この介在物の粒径、す
なわち直径とは長径と短径を測定し、(長径×短径)
0.5とした。
内における介在物分布に注目したのは、この範囲の介在
物が圧延後に表層に露出して、表面欠陥になる可能性が
高いためである。以降も同様に、鋳片においては、表層
から20mmの範囲内における介在物分布に注目した。
在する酸化物の個数割合で40%以上が少なくともS
i、Mn、Feを含んでいれば、殆どの介在物が凝固時
に生成し、凝集合体する時間が短いので、微細に分散で
き、表面欠陥が発生しにくいためである。さらに、通常
このような介在物は球状酸化物である。
在する酸化物の個数割合で40%以上が少なくともSi
酸化物、Mn酸化物、Fe酸化物の含有率で20質量%
以上、より好ましくは50質量%以上であれば、酸化物
は殆ど凝固完了に近い時期に生成し、凝集合体する時間
が非常に短いので、介在物が微細分散し、表面欠陥が発
生し難いためである。
囲内にある介在物分散状態として、直径0.5μmから
30μmの微細酸化物が鋳片内に1000個/cm2以上
1000000個/cm2未満分散していて、且つ上記記
載の酸化物の個数割合の両方を満足していると、さらに
好ましいことは言うまでもない。
形状を有した鋳片を熱間圧延して得られる熱延鋼板、さ
らに冷間圧延して得られる冷延鋼板等の、鋳片を加工し
て得られる鋼板を、本発明では鋼板と定義する。鋳片と
同様に、鋼板の介在物分散状態についても評価したとこ
ろ、鋳片表層20mm内の酸化物分散状態とほぼ同じであ
った。このような酸化物分散状態、組成および形状を有
する鋳片を加工して得られる鋼板では、表面欠陥は発生
しない。以上の結果から、本発明により溶鋼中で殆ど介
在物を生成させることなく、凝固時にFeO系の酸化物
を析出させ微細に分散させることができるため、鋼板製
造時に介在物は表面疵発生の原因とならず、薄板用鋼板
の品質は大きく向上できる。
しい用途に用いられるため、加工性を付加する必要があ
る。薄板用鋼板の加工性を高めるためには、C濃度を極
力低下させ、その上で鋼中に固溶したCとNを他元素の
添加により固定することが重要である。C濃度に関して
は、加工性の観点から0.01質量%以下、好ましくは
0.005質量%以下にするのが良い。しかし、凝固時
のCO気泡発生防止の条件はC濃度0.002質量%以
下であるので、本発明では加工性の条件から決まるC濃
度は十分に満足されている。なお、C濃度の下限値は特
に規定するものではない。
る。鋼板中のSi濃度は、0.005質量%以上、0.
03質量%以下であることが好ましい。Si濃度は0.
005質量%未満では板の強度が不足するため、またS
i濃度が0.02質量%以上では板の加工性が低下する
ためである。また、Si濃度が0.03質量%以下であ
れば平衡酸素濃度も0.02質量%超となり、溶存酸素
濃度を0.02質量%以上確保することは可能である。
なると熱間圧延時にへげ疵が発生し易くなり、またMn
濃度は0.3質量%を超えると板の加工性が低下する。
このため、鋼板中のMn濃度は0.08質量%以上、
0.3質量%以下であることが好ましい。また、Mnは
Siに比べても非常に脱酸力が弱いため、Mn濃度を
0.3質量%にしても平衡酸素濃度は0.1質量%超で
あり、溶鋼中に0.02質量%から0.06質量%の溶
存酸素を確保できる。
在物を生成させないように、溶鋼中にAlを全く添加し
ない必要があるが、耐火物等から不可避的に侵入するア
ルミナ系介在物については問題とならない。これは、少
量のアルミナ系介在物であれば、溶鋼中の溶存酸素が高
いため、溶鋼とアルミナ系介在物の界面エネルギーは低
下しており、凝集合体が殆ど生じないためである。ま
た、鋼中のTiはCとNをTiNやTiCとして固定す
るため、加工性を向上させる上で有効であるが、Tiの
添加量も多くなると、例えばTi濃度が0.003質量
%以上になると平衡酸素濃度が0.02質量%未満にな
るため、十分な溶存酸素濃度を確保できない。よって、
加工性をさらに高める必要からTiを添加する場合に
は、0.003質量%以下の範囲で添加しても良い。
について説明する。 [実施例1]転炉での精錬と環流式真空脱ガス装置での
処理により、C濃度を0.0018質量%とした溶鋼3
00tを溶製した。この溶鋼に合金を添加し、0.01
質量%Si、0.15質量%Mn、0.015質量%N
b、0.045質量%溶存酸素とした。この溶鋼を連続
鋳造法で厚み250mm、幅1800mmのスラブに鋳造し
た。鋳造した鋳片は8500mm長さに切断し、1コイル
単位とした。
査したところ、直径0.5μmから30μmの微細酸化
物が鋳片内に30000個/cm2分散しており、その7
0%はSi酸化物、Mn酸化物、Fe酸化物を合計で6
0質量%以上含有する球状酸化物であった。このように
して得られたスラブは、常法により熱間圧延、冷間圧延
し、最終的には0.7mm厚みで幅1800mmコイルの冷
延鋼板とした。品質については、冷間圧延後の検査ライ
ンで目視観察を行い、1コイル当たりに発生する表面欠
陥の発生個数を評価した。その結果、表面欠陥は発生し
なかった。また、鋳片と同様に、冷延鋼板内の介在物を
調査したところ、直径0.5μmから30μmの微細酸
化物が鋳片内に33000個/cm2分散しており、その
70%はSi酸化物、Mn酸化物、Fe酸化物を合計で
60質量%以上含有する球状酸化物であった。
ガス装置での処理によりC濃度を0.0015質量%と
した溶鋼300tを溶製した。この溶鋼に合金を添加
し、0.01質量%Si、0.15質量%Mn、0.0
15質量%Nb、0.001質量%Ti、0.04質量
%溶存酸素とした。この溶鋼を鋳型内電磁攪拌装置を有
する連続鋳造機を用いて、メニスカスにおける溶鋼を平
均流速45cm/sで電磁攪拌しながら、厚み250mm、
幅1800mmのスラブに鋳造した。鋳造した鋳片は85
00mm長さに切断し、1コイル単位とした。
査したところ、直径0.5μmから30μmの微細酸化
物が鋳片内に27000個/cm2分散しており、その7
0%はSi酸化物、Mn酸化物、Fe酸化物を合計で6
0質量%以上含有する球状酸化物であった。このように
して得られたスラブは、常法により熱間圧延、冷間圧延
し、最終的には0.7mm厚みで幅1800mmコイルの冷
延鋼板とした。鋳片品質については、冷間圧延後の検査
ラインで目視観察を行い、1コイル当たりに発生する表
面欠陥の発生個数を評価した。その結果、表面欠陥は発
生しなかった。また、鋳片と同様に、冷延鋼板内の介在
物を調査したところ、直径0.5μmから30μmの微
細酸化物が鋳片内に29000個/cm2分散しており、
その70%はSi酸化物、Mn酸化物、Fe酸化物を合
計で60質量%以上含有する球状酸化物であった。
ガス装置での処理により炭素濃度を0.0015質量%
とした取鍋内溶鋼をAlで脱酸し、Al濃度0.04質
量%、溶存酸素濃度0.0002質量%とした。この溶
鋼を連続鋳造法で厚み250mm、幅1800mmのスラブ
に鋳造した。鋳造した鋳片は8500mm長さに切断し、
1コイル単位とした。このようにして得られたスラブ
は、常法により熱間圧延、冷間圧延し、最終的には0.
7mm厚みで幅1800mmコイルの冷延鋼板とした。鋳片
品質については、冷間圧延後の検査ラインで目視観察を
行い、1コイル当たりに発生する表面欠陥の発生個数を
評価した。その結果、スラブ平均で5個/コイルの表面
欠陥が発生した。
と、溶鋼中に殆ど介在物を生成させることなく、凝固時
に酸化物を微細に析出させることができるため、確実に
表面疵を防止できる加工性、成形性に優れた薄鋼板用の
極低炭素溶鋼を製造することが可能となる。
Claims (25)
- 【請求項1】 溶鋼の炭素濃度を0.002質量%以下
まで脱炭した後、該溶鋼にNbを添加し、さらに溶鋼中
の溶存酸素濃度を0.02質量%以上、0.06質量%
以下に調整した溶鋼を鋳造することを特徴とする極低炭
素鋼鋳片の製造方法。 - 【請求項2】 溶鋼の炭素濃度を0.002質量%以下
まで脱炭した後、該溶鋼にNbを添加して、溶鋼中のN
b濃度を0.005質量%以上、0.05質量%以下に
し、さらに溶鋼中の溶存酸素濃度を0.02質量%以
上、0.06質量%以下に調整した溶鋼を鋳造すること
を特徴とする極低炭素鋼鋳片の製造方法。 - 【請求項3】 真空脱ガス処理により炭素濃度を0.0
02質量%以下まで脱炭した後、該溶鋼にNbを添加
し、さらに溶鋼中の溶存酸素濃度を0.02質量%以
上、0.06質量%以下に調整した溶鋼を鋳造すること
を特徴とする極低炭素鋼鋳片の製造方法。 - 【請求項4】 真空脱ガス処理により炭素濃度を0.0
02質量%以下まで脱炭した後、該溶鋼にNbを添加し
て、溶鋼中のNb濃度を0.005質量%以上、0.0
5質量%以下にし、さらに溶鋼中の溶存酸素濃度を0.
02質量%以上、0.06質量%以下に調整した溶鋼を
鋳造することを特徴とする極低炭素鋼鋳片の製造方法。 - 【請求項5】 溶鋼を鋳造するに際し、電磁攪拌、或い
は電磁場の印加を行いながら鋳造することを特徴とする
請求項1から4いずれかに記載の極低炭素鋼鋳片の製造
方法。 - 【請求項6】 溶鋼を鋳造するに際し、電磁攪拌を行っ
て、メニスカス位置における溶鋼を40cm/s以上、1
00cm/s以下の平均流速で旋回させながら鋳造するこ
とを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の極低炭
素鋼鋳片の製造方法。 - 【請求項7】 溶鋼を鋳造するに際し、電磁場の印加を
行い、メニスカス位置における溶鋼を0.1Hz以上、1
00Hz以下で水平方向に振動させながら鋳造することを
特徴とする請求項1から4記載の極低炭素鋼鋳片の製造
方法。 - 【請求項8】 極低炭素鋼板において、直径0.5μm
から30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、1
000000個/cm2未満分散し、且つその酸化物に少
なくともSi、Mn、Feを含んでいることを特徴とす
る極低炭素鋼板。 - 【請求項9】 極低炭素鋼板において、鋼板中に存在す
る酸化物の個数割合で40%以上が少なくともSi、M
n、Feを含んでいることを特徴とする極低炭素鋼板。 - 【請求項10】 極低炭素鋼板において、鋼板中に存在
する酸化物の個数割合で40%以上が少なくともSi、
Mn、Feを含んだ球状酸化物であることを特徴とする
極低炭素鋼板。 - 【請求項11】 極低炭素鋼板において、鋼板中に存在
する酸化物の個数割合で40%以上が少なくともSi酸
化物、Mn酸化物、Fe酸化物の含有率で、20質量%
以上であることを特徴とする極低炭素鋼板。 - 【請求項12】 極低炭素鋼板において、鋼板中に存在
する酸化物の個数割合で40%以上が少なくともSi酸
化物、Mn酸化物、Fe酸化物の含有率で、20質量%
以上の球状酸化物であることを特徴とする極低炭素鋼
板。 - 【請求項13】 極低炭素鋼板において、直径0.5μ
mから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、
1000000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の
個数割合で40%以上が少なくともSi、Mn、Feを
含んでいることを特徴とする極低炭素鋼板。 - 【請求項14】 極低炭素鋼板において、直径0.5μ
mから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、
1000000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の
個数割合で40%以上が少なくともSi、Mn、Feを
含んだ球状酸化物であることを特徴とする極低炭素鋼
板。 - 【請求項15】 極低炭素鋼板において、直径0.5μ
mから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、
1000000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の
個数割合で40%以上が少なくともSi酸化物、Mn酸
化物、Fe酸化物の含有率で、20質量%以上であるこ
とを特徴とする極低炭素鋼板。 - 【請求項16】 極低炭素鋼板において、直径0.5μ
mから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、
1000000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の
個数割合で40%以上が少なくともSi酸化物、Mn酸
化物、Fe酸化物の含有率で、20質量%以上の球状酸
化物であることを特徴とする極低炭素鋼板。 - 【請求項17】 極低炭素鋼鋳片において、直径0.5
μmから30μmの微細酸化物が鋳片表層から20mmの
範囲内に1000個/cm2以上、1000000個/cm2
未満分散し、且つその酸化物の一部または全部に少なく
ともSi、Mn、Feを含んでいることを特徴とする極
低炭素鋼鋳片。 - 【請求項18】 極低炭素鋼鋳片において、鋳片表層か
ら20mmの範囲内に存在する酸化物の個数割合で40%
以上が少なくともSi、Mn、Feを含んでいることを
特徴とする極低炭素鋼鋳片。 - 【請求項19】 極低炭素鋼鋳片において、鋳片表層か
ら20mmの範囲内に存在する酸化物の個数割合で40%
以上が少なくともSi、Mn、Feを含んだ球状酸化物
であることを特徴とする極低炭素鋼鋳片。 - 【請求項20】 極低炭素鋳片において、鋳片表層から
20mmの範囲内に存在する酸化物の個数割合で40%以
上が少なくともSi酸化物、Mn酸化物、Fe酸化物の
含有率で、20質量%以上であることを特徴とする極低
炭素鋼鋳片。 - 【請求項21】 極低炭素鋳片において、鋳片表層から
20mmの範囲内に存在する酸化物の個数割合で40%以
上が少なくともSi酸化物、Mn酸化物、Fe酸化物の
含有率で、20質量%以上の球状酸化物であることを特
徴とする極低炭素鋼鋳片。 - 【請求項22】 極低炭素鋳片において、直径0.5μ
mから30μmの微細酸化物が鋳片表層から20mmの範
囲内に1000個/cm2以上、1000000個/cm2未
満分散し、且つその酸化物の個数割合で40%以上が少
なくともSi、Mn、Feを含んでいることを特徴とす
る極低炭素鋼鋳片。 - 【請求項23】 極低炭素鋳片において、直径0.5μ
mから30μmの微細酸化物が鋳片表層から20mmの範
囲内に1000個/cm2以上、1000000個/cm2未
満分散し、且つその酸化物の個数割合で40%以上が少
なくともSi、Mn、Feを含んだ球状酸化物であるこ
とを特徴とする極低炭素鋼鋳片。 - 【請求項24】 極低炭素鋳片において、直径0.5μ
mから30μmの微細酸化物が鋳片表層から20mmの範
囲内に1000個/cm2以上、1000000個/cm2未
満分散し、且つその酸化物の個数割合で40%以上が少
なくともSi酸化物、Mn酸化物、Fe酸化物の含有率
で、20質量%以上であることを特徴とする極低炭素鋼
鋳片。 - 【請求項25】 極低炭素鋳片において、直径0.5μ
mから30μmの微細酸化物が鋳片表層から20mmの範
囲内に1000個/cm2以上、1000000個/cm2未
満分散し、且つその酸化物の個数割合で40%以上が少
なくともSi酸化物、Mn酸化物、Fe酸化物の含有率
で、20質量%以上の球状酸化物であることを特徴とす
る極低炭素鋼鋳片。
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