JP2004195522A - 双ドラム式連続鋳造法で得た低炭素鋼薄肉鋳片、低炭素薄鋼板およびその製造方法 - Google Patents

双ドラム式連続鋳造法で得た低炭素鋼薄肉鋳片、低炭素薄鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、浸漬ノズルへの介在物付着と溶鋼中介在物の凝集合体を防止し、鋼板中に介在物を微細分散させることにより、確実に表面疵を防止できる低炭素薄鋼板、低炭素鋼鋳片とその製造方法を提示することを目的とする。
【解決手段】溶鋼の炭素濃度を低炭素濃度域まで脱炭した後、該溶鋼にTiと少なくともCe、Laを添加した溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造することを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片の製造方法、低炭素鋼薄肉鋳片および低炭素薄鋼板。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、双ドラム式連続鋳造方法により製造された加工性、成形性に優れ、表面疵も発生し難い低炭素鋼薄肉鋳片、低炭素薄鋼板およびその製造方法に関するものである。なお、本発明における低炭素とは、炭素濃度の上限は特に規定するものではなく、他の鋼種と比較して相対的に炭素濃度が低いという意味である。特に、薄板用鋼板は、自動車用外板などの加工が厳しい用途に用いられるため、加工性を付与する必要から、C濃度を0.05質量%以下、好ましくは0.01質量%以下にするのが良い。C濃度の下限値は特に規定するものではない。
【0002】
【従来の技術】
近年、省工程・省エネルギーの観点から、最終品に近い薄板を鋳造段階で製造する技術、すなわちニア・ネット・シェイプ連続鋳造(Near Net Shape CC)の開発が行われている。この内、薄板系のニア・ネット・シェイプ連続鋳造として有力なものに双ドラム式連続鋳造方法が特許文献1に開示されている。双ドラム式連続鋳造装置を用いた薄肉鋳片の連続鋳造においては、図1に示すように互いに逆方向に回転する一対の冷却ロール1により区画された湯溜まり部2に、溶鋼3をノズル4を介してタンディッシュ5から供給することにより薄肉鋳片6を鋳造するようになっている。この双ドラム式連続鋳造において表面欠陥のない薄肉鋳片を安定的に鋳造するためには、湯溜まり内の溶鋼流動を整流化し、湯面変動を防止することが重要である。
【0003】
これに対し、特許文献2には、浸漬ノズル内にフィルターを内蔵させ、ノズル全幅にわたって乱れのない吐出流を生成させる方法が、また特許文献3にはスリット状ノズルに整流多孔ノズルを内装させ、ノズル吐出流を整流化する方法が、それぞれ開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開昭60−137562号公報
【特許文献2】
特開昭62−282753号公報
【特許文献3】
特開平8−164454号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の特許文献2〜3の方法は、双ドラム式連続鋳造法で製造されるステンレス鋼(Al脱酸ではない)では或る程度の効果を発揮しているが、低炭素鋼の鋳造に際しては脱酸生成物であるアルミナ介在物が浸漬ノズル内のフィルターや整流多孔ノズルを目詰まりさせ、激しい場合には吐出孔全体を閉塞させる。その結果、吐出流は乱れ、湯面変動に起因する介在物の再巻き込みにより表面欠陥が多発するといった問題を生じる。また、双ドラム式連続鋳造法ではタンディッシュから注入された溶鋼は極めて短時間で凝固し、介在物の浮上時間が確保できないため、低炭素鋼では殆どの粗大なアルミナ介在物が薄肉鋳片内に捕捉される。このため、湯面変動がない安定鋳造状態であっても、表面欠陥が発生しない程度まで溶鋼中のアルミナ介在物を低減することは難しい。
【0006】
これらの問題を鑑み、本発明は低炭素溶鋼中の介在物をノズルに付着し難く、且つ凝集合体して粗大化し難い組成に制御し、介在物の浮上除去が殆ど期待できない双ドラム式連続鋳造法で製造した薄肉鋳片内の介在物を微細分散させることにより、確実に表面疵を防止できる低炭素鋼薄肉鋳片、低炭素薄鋼板およびその製造方法を提示することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を要旨とする。
(1)低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片を冷間圧延した薄鋼板であって、該薄鋼板中の直径0.5μmから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、100000個/cm2未満分散していることを特徴とする低炭素薄鋼板。
(2)低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片を冷間圧延した薄鋼板であって、該薄鋼板中に存在する酸化物の60%以上が少なくともLa、Ceを含んでいることを特徴とする低炭素薄鋼板。
(3)低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片を冷間圧延した薄鋼板であって、該薄鋼板中に存在する酸化物の60%以上が少なくともLa、Ceを含んだ球状または紡錘状酸化物であることを特徴とする低炭素薄鋼板。
(4)低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片を冷間圧延した薄鋼板であって、該薄鋼板中に存在する酸化物の60%以上が少なくともLa、CeをLa23、Ce23として20質量%以上含有する酸化物であることを特徴とする低炭素薄鋼板。
(5)低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片を冷間圧延した薄鋼板であって、該薄鋼板中に存在する酸化物の60%以上が、少なくともLa、CeをLa23、Ce23として20質量%以上含有する球状または紡錘状酸化物であることを特徴とする低炭素薄鋼板。
(6)低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片を冷間圧延した薄鋼板であって、該薄鋼板中の直径0.5μmから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、100000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の60%以上が少なくともLa、Ceを含んでいることを特徴とする低炭素薄鋼板。
(7)低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片を冷間圧延した薄鋼板であって、該薄鋼板中の直径0.5μmから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、100000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の60%以上が少なくともLa、Ceを含んだ球状または紡錘状酸化物であることを特徴とする低炭素薄鋼板。
(8)低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片を冷間圧延した薄鋼板であって、該薄鋼板中の直径0.5μmから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、100000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の60%以上が少なくともLa、CeをLa23、Ce23として20質量%以上含有する酸化物であることを特徴とする低炭素薄鋼板。
(9)低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片を冷間圧延した薄鋼板であって、該薄鋼板中の直径0.5μmから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、100000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の60%以上が少なくともLa、CeをLa23、Ce23として20質量%以上含有する球状または紡錘状酸化物であることを特徴とする低炭素薄鋼板。
(10)低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片であって、該薄肉鋳片内の直径0.5μmから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、100000個/cm2未満分散していることを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片。
(11)低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片であって、該薄肉鋳片内に存在する酸化物の60%以上が少なくともLa、Ceを含んでいることを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片。
(12)低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片であって、該薄肉鋳片内に存在する酸化物の60%以上が少なくともLa、Ceを含んだ球状または紡錘状酸化物であることを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片。
(13)低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片であって、該薄肉鋳片内に存在する酸化物の60%以上が少なくともLa、CeをLa23、Ce23として20質量%以上含有する酸化物であることを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片。
(14)低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片であって、該薄肉鋳片内に存在する酸化物の60%以上が少なくともLa、CeをLa23、Ce23として20質量%以上含有する球状または紡錘状酸化物であることを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片。
(15)低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片であって、該薄肉鋳片内に直径0.5μmから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、100000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の60%以上が少なくともLa、Ceを含んでいることを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片。
(16)低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片であって、該薄肉鋳片内に直径0.5μmから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、100000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の60%以上が少なくともLa、Ceを含んだ球状または紡錘状酸化物であることを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片。
(17)低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片であって、該薄肉鋳片内に直径0.5μmから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、100000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の60%以上が少なくともLa、CeをLa23、Ce23として20質量%以上含有する酸化物であることを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片。
(18)低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片であって、該薄肉鋳片内に直径0.5μmから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、100000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の60%以上が少なくともLa、CeをLa23、Ce23として20質量%以上含有する球状または紡錘状酸化物であることを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片。
(19)溶鋼の炭素濃度を低炭素濃度域まで脱炭した後、該溶鋼に少なくともCe、Laを添加し、溶鋼中の溶存酸素濃度を0.001質量%以上、0.02質量%以下に調整した溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造することを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片の製造方法。
(20)溶鋼の炭素濃度を低炭素濃度域まで脱炭した後、該溶鋼にTiと少なくともCe、Laを添加した溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造することを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片の製造方法。
(21)溶鋼の炭素濃度を低炭素濃度域まで脱炭した後、該溶鋼にAlを添加して予備脱酸処理を行い、溶鋼中の溶存酸素濃度を0.01質量%以上0.04質量%以下とし、次いでTiと、少なくともLa、Ceを添加した溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造することを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片の製造方法。
(22)溶鋼の炭素濃度を低炭素濃度域まで脱炭した後、該溶鋼にAlを添加し3分以上攪拌して予備脱酸処理を行い、溶鋼中の溶存酸素濃度を0.01質量%以上0.04質量%以下とし、次いでTiを0.003質量%以上0.4質量%以下と、少なくともLa、Ceを0.001質量%以上0.03質量%以下添加した溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造することを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片の製造方法。
(23)真空脱ガス装置を用いて溶鋼の炭素濃度を低炭素濃度域まで脱炭した後、該溶鋼に少なくともCe、Laを添加し、溶鋼中の溶存酸素濃度を0.001質量%以上、0.02質量%以下に調整した溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造することを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片の製造方法。
(24)真空脱ガス装置を用いて溶鋼の炭素濃度を低炭素濃度域まで脱炭した後、該溶鋼にTiと少なくともCe、Laを添加した溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造することを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片の製造方法。
(25)真空脱ガス装置を用いて溶鋼の炭素濃度を低炭素濃度域まで脱炭した後、該溶鋼にAlを添加して予備脱酸処理を行い、溶鋼中の溶存酸素濃度を0.01質量%以上0.04質量%以下とし、次いでTiと、少なくともLa、Ceを添加した溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造することを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片の製造方法。
(26)真空脱ガス装置を用いて溶鋼の炭素濃度を低炭素濃度域まで脱炭した後、該溶鋼にAlを添加し3分以上攪拌して予備脱酸処理を行い、溶鋼中の溶存酸素濃度を0.01質量%以上0.04質量%以下とし、次いでTiを0.003質量%以上0.4質量%以下と、少なくともLa、Ceを0.001質量%以上0.03質量%以下添加した溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造することを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片の製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0009】
転炉や真空処理容器で脱炭処理された低炭素溶鋼中には、多量の溶存酸素が含まれており、この溶存酸素は通常Alの添加により殆ど脱酸される((1)式の反応)ため、多量のAl23介在物を生成する。
【0010】
2Al+3O=Al23 ・・・・・(1)
これらの介在物は脱酸直後からお互いに凝集合体し、数100μm以上の粗大なアルミナクラスターとなる。この溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造すると凝固時間が非常に短いため、通常のスラブ用連続鋳造装置のように鋳型内での介在物浮上分離が殆ど期待できない。また、双ドラム式連続鋳造用浸漬ノズルは吐出流を整流化する目的で、スリット状ノズルを設ける等の複雑な構造となっているため、通常の連続鋳造用浸漬ノズルに比べて多量の介在物がノズル内壁や吐出孔に付着する。ノズル閉塞が発生すると、浸漬ノズルからの吐出流が不安定となり、ドラム間の湯溜まり部で湯面変動に起因する介在物の再巻き込みが生じる。このように、双ドラム式連続鋳造法で低炭素鋼を鋳造すると、表面欠陥の原因となる多量のアルミナクラスターが薄肉鋳片内に捕捉されるため、これまで高品質な低炭素鋼板を双ドラム式連続鋳造法で製造することは非常に難しかった。
【0011】
双ドラム式連続鋳造法は、非常に短時間で凝固を完了する急冷凝固プロセスであることが最大の特徴である。溶鋼中での凝集合体を防止して双ドラム式連続鋳造機内に溶鋼を注入できれば、その特徴である急冷効果により通常のスラブ連続鋳造法に比べて介在物をより均一微細に分散させることも可能となる。このため、双ドラム式連続鋳造方法を用いた際には、溶鋼中介在物の凝集合体防止効果が最大限に引き出され、表面欠陥を最も効果的に防止できることが利点である。
【0012】
そこで、本発明者らは低炭素溶鋼中でアルミナクラスターを生成させないように、脱炭処理後の溶存酸素をAl以外の脱酸材で脱酸し、ノズルに付着し難く、且つ凝集合体して粗大なクラスターを生成し難い介在物組成に制御し、その上で双ドラム式連続鋳造方法で鋳造することに着目した。
【0013】
本発明は、転炉や電気炉等の製鋼炉で精錬して、或いはさらに真空脱ガス処理等を行って、炭素濃度を低炭素濃度域まで脱炭した溶鋼に少なくともCe、Laを添加して、溶存酸素濃度を0.001〜0.02質量%になるように調整した溶鋼を双ドラム式連続鋳造装置を用いて鋳造する方法である。ここで、少なくともCe、Laを添加するというのは、Ce、Laのいずれか一方または双方を添加するという意味であり、以降もこの様に記載する。
【0014】
本発明の基本思想は、鋳造時にCと反応してCOガスを発生させない程度の溶存酸素を残し、この溶存酸素により溶鋼と介在物の界面エネルギーを制御することにより、介在物の浸漬ノズル耐火物への付着を抑制すると共に、介在物同士の凝集合体をも抑制し、微細なLa23介在物、Ce23介在物およびLa23−Ce23複合介在物を溶鋼中に分散させることにある。溶存酸素を残すように少なくともCe、Laを添加すれば、溶存酸素量に相当する分だけ介在物の生成量を低減することもできる。さらに、本発明者らは、少なくともCe、La添加後の溶存酸素濃度を変化させて、溶鋼中介在物の凝集挙動と浸漬ノズル耐火物への付着挙動を実験的に評価したところ、少なくともCe、Laで溶存酸素を殆ど脱酸した状態でもLa23介在物、Ce23介在物およびLa23−Ce23複合介在物はアルミナ系介在物に比べてノズル耐火物に付着し難く、さらに凝集合体も起こり難いこと、さらに溶存酸素濃度を0.001質量%以上にすると溶存酸素濃度の増加と共に、La23介在物、Ce23介在物およびLa23−Ce23複合介在物がさらに微細化し、ノズル耐火物へもより付着し難くなることを見いだした。この理由は、アルミナ系介在物からLa23介在物、Ce23介在物およびLa23−Ce23複合介在物に組成を変化させること、さらに溶鋼中の溶存酸素濃度を高くすることの両効果により、介在物と溶鋼間の界面エネルギーが大きく低下し、介在物のノズル耐火物への付着と介在物同士の凝集合体が同時に抑制されるためである。
【0015】
脱炭処理後に多量の溶存酸素を含む溶鋼を脱酸せずにそのまま鋳造すると、凝固時にCO気泡が発生し、鋳造性が大きく低下する。このため、従来はAl等の脱酸材を脱炭処理後の溶鋼中に添加し、溶存酸素が殆ど残らない程度まで溶鋼を脱酸していた。しかし、加工性が求められる薄板用鋼板ではC濃度が低いため、或程度の溶存酸素が残っていても、鋳造時に(2)式で示されるCO気泡発生の反応は起こり難い。
【0016】
C+O=CO ・・・・・(2)
CO気泡が発生しない限界溶存酸素濃度は、C濃度が0.04質量%で0.006質量%程度、C濃度が0.01質量%で0.01質量%程度となり、さらにC濃度の低い極低炭素鋼では0.02質量%程度まで溶存酸素を残してもCO気泡は発生しない。このため、C濃度が非常に低い薄鋼板用の溶鋼では、0.02質量%程度まで溶存酸素を残して鋳造することができ、反対に溶存酸素濃度が0.02質量%を超えると薄鋼板用の溶鋼でもCO気泡が発生してしまう。
【0017】
また、溶存酸素濃度が低くなると溶鋼と介在物の界面エネルギーを大幅に低下させることができず、La23介在物、Ce23介在物およびLa23−Ce23複合介在物であっても介在物同士の凝集合体が徐々に進み、介在物が一部粗大化する。さらに、ノズル耐火物への付着も発生してしまう。従って実験的な検討から、介在物の粗大化とノズル付着を防止するには、0.001質量%以上の溶存酸素が必要である。
【0018】
よって、炭素濃度を低炭素域まで脱炭した溶鋼に少なくともCe、Laを添加した際の溶存酸素濃度を、0.001質量%から0.02質量%に限定した。すなわち、少なくともCe、Laの添加は介在物の微細化に効果的であるが、非常に強い脱酸材であるため、溶鋼中に多量に添加すると、溶存酸素濃度が大幅に低下し、本発明の介在物微細化効果とノズル付着抑制効果が損なわれる。このため、少なくともCe、Laは溶鋼中の溶存酸素濃度を0.001から0.02質量%残せる範囲内で添加する必要がある。
【0019】
次に、本発明の別の形態として、転炉や電気炉等の製鋼炉で精錬して、或いはさらに真空脱ガス処理等して、炭素濃度を低炭素濃度域まで脱炭した溶鋼にTiと少なくともCe、Laを添加した溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造する方法を発明した。
【0020】
本発明者らは、溶鋼へ添加する脱酸剤として、AlまたはTiや、これに少なくともLa、Ceを添加したものを適宜組み合わせて、これらの介在物の凝集挙動とノズル耐火物への付着挙動を実験的に評価したところ、Al23介在物、TiOn介在物、或いはAl23−La23−Ce23複合介在物、Al23−La23複合介在物、Al23−Ce23複合介在物は比較的容易に凝集合体し、ノズル耐火物へも付着するのに対し、TiOn−La23−Ce23複合介在物、TiOn−La23複合介在物、TiOn−Ce23複合介在物は凝集合体し難く、溶鋼中に微細分散すると共に、ノズルへも付着し難いことを見いだした。この理由は、Al23、TiOnおよびAl23−La23−Ce23、Al23−La23、Al23−Ce23に比べて、TiOn−La23−Ce23、TiOn−La23、TiOn−Ce23で介在物と溶鋼間の界面エネルギーが大幅に低下し、介在物同士の凝集合体とノズル耐火物への介在物付着が抑制されたためである。これらの知見を基に、溶存酸素をTiで脱酸し、さらに少なくともLa、Ceを添加することによりTiOn介在物をTiOn−La23−Ce23複合介在物、TiOn−La23複合介在物、TiOn−Ce23複合介在物に改質し、ノズル耐火物への介在物付着を抑制すると共に、溶鋼中に介在物を微細に分散させることに成功した。このことで、溶鋼中介在物の凝集合体とノズル閉塞を防止し、鋼板中に介在物を微細分散させることにより、確実に表面疵を防止できることを見出した。
【0021】
また、溶鋼中にTiを添加することにより、上記効果に加えて、薄板用鋼板中の固溶Cを固定することを可能にする作用もあり、そのメリットは大きい。
【0022】
この様に、溶鋼中の酸化物を改質することで、溶鋼中の介在物を微細に分散させることはできる。従って、Tiと少なくともCe、Laを添加した後の溶鋼の溶存酸素濃度は特に規定するものではない。但し、Ti、CeとLaは全て脱酸材であり、溶鋼中に多量に添加すると溶存酸素濃度を大幅に低下させてしまうため、溶存酸素濃度を0.001から0.02質量%の範囲になる様に添加することが好ましい。すなわち、溶存酸素濃度を0.001質量%以上にすることで、溶鋼の界面エネルギーを低下させ、介在物をより凝集し難くし、さらにノズル耐火物にも付着し難くする両効果を享受できる点で、また0.02質量%以下とすることで、鋳造時のCO気泡の発生を防止できる点で、より好ましい。
【0023】
さらに、本発明の別の形態として、転炉や電気炉等の製鋼炉で精錬して、或いはさらに真空脱ガス処理等して、炭素濃度を低炭素濃度域まで脱炭した溶鋼にAlを添加して予備脱酸処理を行い、溶鋼中の溶存酸素濃度を0.01質量%以上0.04質量%以下とし、次いでTiと、少なくともLa、Ceを添加した溶鋼を双ドラム式連続鋳造装置を用いて鋳造する方法を発明した。
【0024】
この方法は、製造コストの面からより実用的なプロセスを考え、脱炭処理後の溶存酸素を全部Alで脱酸するのではなく、溶存酸素を残すようにAlを添加して予備脱酸を行い、害にならない程度までAl23介在物量を短時間で浮上除去し、その後改めてAl以外の元素を用いて脱酸することを考案し、品質向上と製造コスト低減を両立させるものである。
【0025】
上述したように、本発明者らは、溶鋼へ添加する脱酸剤として、AlまたはTiや、これに少なくともLa、Ceを添加したものを適宜組み合わせて、これらの介在物の凝集挙動とノズル耐火物への付着挙動を実験的に評価し、Al23介在物、TiOn介在物、或いはAl23−La23−Ce23複合介在物、Al23−La23複合介在物、Al23−Ce23複合介在物は比較的容易に凝集合体し、且つノズル耐火物へも付着するのに対し、TiOn−La23−Ce23複合介在物、TiOn−La23複合介在物、TiOn−Ce23複合介在物は凝集合体し難く、溶鋼中に微細分散すると共に、ノズル耐火物にも付着し難くなることを明らかにした。
【0026】
これらの知見を基に、脱炭処理後の溶存酸素をTiだけで脱酸するのではなく、溶存酸素の一部をまずAlで予備脱酸し、害にならない程度までAl23介在物を短時間で攪拌等により浮上除去した後、改めて残った溶存酸素をTiで脱酸し、さらに少なくともLa、Ceを添加することにより、Al23介在物を含まないTiOn−La23−Ce23複合介在物、TiOn−La23複合介在物、TiOn−Ce23複合介在物を生成させ、溶鋼中に介在物を微細分散させること、さらに介在物のノズル耐火物への付着をも防止することに成功した。このことで、ノズル閉塞を防止して湯面変動を低減させ、且つ溶鋼中介在物の凝集合体を防止し、鋼板中に介在物を微細分散させる両効果により、確実に表面疵を防止できる。ここで、上記記載のAl予備脱酸後の害にならない程度のAl23介在物濃度は、鋼板の表面疵を防止できれば特に規定するものではないが、通常は例えば高々50ppm程度以下である。
【0027】
LaとCeはTiに比べて非常に脱酸能が高いため、Ti添加後に生成したTiOn介在物を少量のCeもしくはLaで還元し、TiOn−La23−Ce23複合介在物、TiOn−La23複合介在物、TiOn−Ce23複合介在物に改質することは容易である。しかし、Al予備脱酸後の溶存酸素が0.04質量%を超えると、Ti添加後に多量のTiOn介在物が生成するため、LaもしくはCeを添加しても一部未改質のTiOn介在物が残留し、粗大なチタニアクラスターとなりやすい。一方、Al添加量を増大させ予備脱酸後の溶存酸素濃度を低下させると、多量のAl23介在物を生成するため、粗大化し易いAl23介在物をできるだけ低減する条件から、Al脱酸後の溶存酸素濃度は0.01質量%以上にすることが好ましい。したがって、本発明では、Al予備脱酸後の溶存酸素濃度を0.01質量%以上0.04質量%以下の範囲に制御することが好ましい。
【0028】
また、Ti、CeとLaは全て脱酸材であり、溶鋼中に多量に添加すると溶存酸素濃度を大幅に低下させてしまうため、溶存酸素濃度を0.001から0.02質量%の範囲になる様に添加することが好ましい。すなわち、溶存酸素濃度を0.001質量%以上にすることで、溶鋼の界面エネルギーを低下させ、介在物をより凝集し難くし、さらにノズル耐火物への付着も抑制する両効果を享受できる点で、また0.02質量%以下とすることで、鋳造時のCO気泡の発生を防止できる点で、より好ましい。
【0029】
また、上記の様な、脱炭した溶鋼にAlを添加して予備脱酸処理を行い、溶鋼中の溶存酸素濃度を0.01質量%以上0.04質量%以下とし、次いでTiと、少なくともLa、Ceを添加した溶鋼に、溶鋼成分の要求等によりさらにAlを添加する場合においても、凝集合体し易く、且つノズル耐火物に付着し易いアルミナ系介在物を生成させないように、溶鋼中にAlを残存させないことが望ましいものの、微量Alであれば残存していても許容できる。この場合でも、溶鋼中に溶存酸素を0.001質量%以上残すことが好ましく、熱力学的な計算によれば1600℃で溶存Al濃度が0.005質量%以下であれば良い。
【0030】
さらに、本発明の詳細な形態として、転炉や電気炉等の製鋼炉で精錬して、或いはさらに真空脱ガス処理等して、炭素濃度を低炭素濃度域まで脱炭した溶鋼にAlを添加し3分以上攪拌して予備脱酸処理を行い、溶鋼中の溶存酸素濃度を0.01質量%以上0.04質量%以下とし、次いでTiを0.003質量%以上0.4質量%以下と、少なくともLa、Ceを0.001質量%以上0.03質量%以下添加した溶鋼を鋳造する方法を発明した。
【0031】
実験的な検討から、予備脱酸におけるAl添加後の溶存酸素濃度を0.01質量%以上の場合、Al添加後の攪拌時間を3分以上確保すると、殆どのAl23介在物を浮上除去できることを明らかにした。しかし、Al予備脱酸後の溶存酸素が0.04質量%を超える場合は、上記と同様にTi添加後に多量のTiOn介在物が生成するため、LaもしくはCeを添加しても一部未改質のTiOn介在物が残留し、粗大なチタニアクラスターとなりやすい。したがって、本発明では、Al予備脱酸後の溶存酸素濃度を0.01質量%以上0.04質量%以下の範囲に制御することが好ましい。特に、真空脱ガス装置を用いた場合は、Al添加後の攪拌方法として還流することが一般的である。
【0032】
予備脱酸後に、少量のTiを添加して脱酸すると、TiはAl等に比べて脱酸力が弱いため、一部溶存酸素が溶鋼中に残存する。前述したように、低炭素薄鋼板用の溶鋼では、溶存酸素濃度が0.02質量%を超えるとCO気泡が発生することから、溶鋼中のTi濃度は溶存酸素濃度が0.02質量%以下になるように添加する必要があり、平衡計算からTi濃度を算出すると0.003質量%以上となる。一方、Tiは脱酸力が比較的弱い方であるが、それでも溶鋼中に多量に添加すると、溶鋼中の溶存酸素濃度が大きく低下するため、その後に少なくともLa、Ceを添加してもTiOn−La23−Ce23、TiOn−La23、TiOn−Ce23複合介在物に改質することが難しくなり、本発明の介在物微細化効果が損なわれる。このため、Ti濃度は数ppm程度の溶存酸素を残せるように、0.4質量%以下にする必要がある。以上から、Ti濃度は0.003質量%以上0.4質量%以下にすることが望ましい。
【0033】
少なくともLa、Ceを添加することは、介在物の微細化に効果的であるが、非常に強い脱酸材であるため、耐火物と反応して、溶鋼を汚染させると共に、耐火物を劣化させる。このため、少なくともLa、Ceの添加量は、実験的検討から、少なくともLa、Ceの溶鋼中濃度の適正範囲は、0.001質量%以上0.03質量%以下であることが好ましい。少なくともLa、Ceの添加量が0.001質量%以上の場合、生成したTiOn介在物を改質するに必要な量以上確保でき、また0.03質量%以下の場合、LaとCeが耐火物と反応して溶鋼を汚染させない。また、少なくともLaもしくはCeの添加は、必ずしも真空脱ガス装置内で添加する必要はなく、Ti添加後から鋳型内に流入するまでの間で添加すれば良く、例えばタンディッシュ内で添加することも可能である。さらに、少なくともLaもしくはCeの添加は純粋なLaやCeで行うことも可能であるが、ミッシュメタル等のLaとCeを含む合金で添加しても良く、合金中のLaとCeの合計濃度が30質量%以上であれば他の不純物がLaやCeと共に溶鋼中に混入しても本発明の効果を損なわれることはない。
【0034】
また、上記方法を真空脱ガス装置を用いて脱炭しても良い。
【0035】
さらに、Ti、CeとLaは全て脱酸材であり、溶鋼中に多量に添加すると溶存酸素濃度を大きく低下させてしまうため、溶存酸素濃度を0.001から0.02質量%の範囲になる様に添加することは、溶鋼の界面エネルギーを低下させ、介在物をより凝集し難くし、ノズル耐火物への付着をも抑制する両効果を享受できる点で、より好ましい。
【0036】
また、上記方法で得られた薄肉鋳片を、通常の冷間圧延することにより、鋼板を製造できる。
【0037】
本発明によって得られた薄肉鋳片内の介在物分散状態を評価したところ、直径0.5μmから30μmの微細酸化物が鋳片内に1000個/cm2以上、100000個/cm2未満分散しており、この様に介在物が微細な酸化物として分散していることで、表面疵の防止を達成できる。ここで、介在物の分散状態は、鋳片または鋼板の研磨面を100倍と1000倍の光学顕微鏡で観察し、単位面積内の介在物粒径分布を評価した。この介在物の粒径、すなわち直径とは長径と短径を測定し、(長径×短径)0.5とした。ここで、長径、短径は通常楕円等に用いられる意味と同様である。
【0038】
また、薄肉鋳片内に存在する酸化物の60質量%以上が少なくともLa、Ceを含んでいることで、先に述べたように介在物同士の凝集合体が抑制され、介在物が微細分散するという効果が得られる。さらに、この酸化物は通常、球状または紡錘状酸化物である。
【0039】
また、薄肉鋳片内に存在する酸化物の60%以上が少なくともLa、CeをLa23、Ce23として20質量%以上含有する酸化物、好ましくは40質量%以上含有する酸化物、より好ましくは55質量%以上含有する酸化物で、先に述べた介在物の微細化効果が発揮される。さらに、この酸化物は通常、球状または紡錘状酸化物である。
【0040】
また、上記の酸化物分散状態、組成および形状を有した薄肉鋳片を冷間圧延して得られる冷延鋼板等の、薄肉鋳片を加工して得られた鋼板を、本願では鋼板と定義する。
そこで、鋼板の介在物分散状態についても評価したところ、薄肉鋳片内の酸化物分散状態とほぼ同じであった。
【0041】
このような酸化物分散状態、組成および形状を有する薄肉鋳片を加工して得られる鋼板では、表面欠陥が発生しなかった。以上の結果から、本発明により介在物を鋼板中に微細分散させることができるため、鋼板製造時に介在物は表面疵発生の原因とならず、鋼板の品質は大きく向上する。
【0042】
本願発明での低炭素というのは、炭素濃度の上限は特に規定するものではなく、他の鋼種と比較して相対的に炭素濃度が低いという意味であるが、特に、薄板用鋼板は、自動車用外板等の加工が厳しい用途に用いられるため、加工性を付加する必要から、C濃度を0.05質量%以下、好ましくは0.01質量%以下にするのが良い。C濃度の下限値は特に規定するものではない。
【0043】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明について説明する。
(実施例1)
転炉での精錬と環流式真空脱ガス装置での処理により炭素濃度を0.003質量%とした100tの取鍋内溶鋼をCeで脱酸し、Ce濃度0.0002質量%で溶存酸素濃度を0.0014質量%とした。この溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で厚み3mm、幅1200mmの薄肉鋳片を鋳造した。鋳造中は、浸漬ノズルへの介在物付着がなかったため、ドラム間の湯溜まり部における湯面変動はなく安定鋳造であった。鋳造した薄肉鋳片を、酸洗後、冷間圧延、焼鈍を実施し、0.7mm厚みの薄鋼板とした。薄肉鋳片の品質については、冷間圧延後の検査ラインで目視観察を行い、1コイル当たりに発生する表面欠陥の発生個数を評価した。その結果、表面欠陥は発生しなかった。
(実施例2)
転炉での精錬と環流式真空脱ガス装置での処理により炭素濃度を0.003質量%とした100tの取鍋内溶鋼をTiおよびCeで脱酸し、Ti濃度0.008質量%、Ce濃度0.0001質量%で溶存酸素濃度を0.0022質量%とした。この溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で厚み4mm、幅1200mmの薄肉鋳片を鋳造した。鋳造中は、浸漬ノズルへの介在物付着がなかったため、ドラム間の湯溜まり部における湯面変動はなく安定鋳造であった。鋳造した薄肉鋳片を、酸洗後、冷間圧延、焼鈍を実施し、0.7mm厚みの薄鋼板とした。鋳片品質については、冷間圧延後の検査ラインで目視観察を行い、1コイル当たりに発生する表面欠陥の発生個数を評価した。その結果、表面欠陥は発生しなかった。
(実施例3)
転炉での精錬と真空脱ガス装置での処理により炭素濃度を0.003質量%とした100tの取鍋内溶鋼に予備脱酸Alを30kg添加して3分間環流させ、溶存酸素濃度0.02質量%の溶鋼とした。さらに、この溶鋼にTiを65kg添加して1分間環流し、その後Ceを13kg、Laを13kg、または40質量%La−60質量%Ceを13kgをそれぞれ別の取鍋に添加し、Ti濃度を0.03質量%であって、Ce濃度、La濃度、またはLa濃度とCe濃度の合計をいずれも0.007質量%にした溶鋼を溶製した。この溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で厚み4mm、幅1200mmの薄肉鋳片を鋳造した。鋳造中は、浸漬ノズルへの介在物付着がなかったため、ドラム間の湯溜まり部における湯面変動はなく安定鋳造であった。薄肉鋳片内における介在物を調査したところ、Ce単独添加、La単独添加、La−Ce複合添加のいずれの鋳片でも、直径0.5μmから30μmの微細酸化物が鋳片内に11000個/cm2〜13000個/cm2分散しており、その75%は、La23単独、Ce23単独、La23とCe23の合計のいずれも57質量%以上含有する球状または紡錘状酸化物であった。
【0044】
このようにして得られた薄肉鋳片を、酸洗後、冷間圧延、焼鈍を実施し、0.7mm厚みの薄鋼板とした。鋼板品質については、冷間圧延後の検査ラインで目視観察を行い、1コイル当たりに発生する表面欠陥の発生個数を評価した。その結果、Ce単独添加、La単独添加、La−Ce複合添加のいずれのコイルでも表面欠陥は発生しなかった。また、冷延鋼板内の介在物を調査したところ、Ce単独添加、La単独添加、La−Ce複合添加のいずれにおいても、直径0.5μmから30μmの微細酸化物が鋼板内に11000個/cm2〜13000個/cm2分散しており、その75%は、La23単独、Ce23単独、La23とCe23の合計のいずれも57質量%以上含有する球状または紡錘状酸化物であった。
(比較例1)
転炉での精錬と環流式真空脱ガス装置での処理により炭素濃度を0.003質量%とした取鍋内溶鋼をAlで脱酸し、Al濃度0.04質量%、溶存酸素濃度0.0002質量%とした。この溶鋼を連続鋳造法で厚み250mm、幅1800mmのスラブに鋳造した。鋳造中は、浸漬ノズルへの介在物付着が徐々に進行し、鋳造後半には鋳型内で20mm程度の湯面変動が生じた。鋳造した鋳片は8500mm長さに切断し、1コイル単位とした。このようにして得られたスラブは、常法により熱間圧延、冷間圧延し、最終的には0.7mm厚みで幅1800mmコイルの冷延鋼板とした。鋳片品質については、冷間圧延後の検査ラインで目視観察を行い、1コイル当たりに発生する表面欠陥の発生個数を評価した。その結果、スラブ平均で5個/コイルの表面欠陥が発生した。
(比較例2)
転炉での精錬と真空脱ガス装置での処理により炭素濃度を0.003質量%とした取鍋内溶鋼をAlで脱酸し、Al濃度0.04質量%、溶存酸素濃度0.0002質量%とした。この溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で厚み4mm、幅1200mmの薄肉鋳片を鋳造した。鋳造中は、浸漬ノズルへの介在物付着が、鋳造前半で顕著に進行し、鋳造後半にはドラム間の湯溜まり部における湯面変動が20mm程度に達した。薄肉鋳片内における介在物を調査したところ、直径0.5μmから30μmの微細酸化物は鋳片内に500個/cm2しか存在しておらず、その98%はアルミナクラスターであった。このようにして得られた薄肉鋳片を、酸洗後、冷間圧延、焼鈍を実施し、0.7mm厚みの薄鋼板とした。鋼板品質については、冷間圧延後の検査ラインで目視観察を行い、1コイル当たりに発生する表面欠陥の発生個数を評価した。その結果、スラブ平均で5個/コイルの表面欠陥が発生した。また、冷延鋼板内の介在物を調査したところ、直径0.5μmから30μmの微細酸化物は鋳片内に600個/cm2しか存在しておらず、その98質量%はアルミナクラスターであった。
【0045】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によると、ノズル閉塞が抑制され、薄肉鋳片内および薄鋼板内の介在物を微細分散させることができるため、確実に表面疵を防止できる加工性、成形性に優れた低炭素薄鋼板を、双ドラム式連続鋳造法を用いて製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】双ドラム式連続鋳造装置の概要を示す図。
【符号の説明】
1…冷却ロール
2…湯溜まり部
3…溶鋼
4…ノズル
5…タンディッシュ
6…薄肉鋳片

Claims (26)

  1. 低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片を冷間圧延した薄鋼板であって、該薄鋼板中の直径0.5μmから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、100000個/cm2未満分散していることを特徴とする低炭素薄鋼板。
  2. 低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片を冷間圧延した薄鋼板であって、該薄鋼板中に存在する酸化物の60%以上が少なくともLa、Ceを含んでいることを特徴とする低炭素薄鋼板。
  3. 低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片を冷間圧延した薄鋼板であって、該薄鋼板中に存在する酸化物の60%以上が少なくともLa、Ceを含んだ球状または紡錘状酸化物であることを特徴とする低炭素薄鋼板。
  4. 低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片を冷間圧延した薄鋼板であって、該薄鋼板中に存在する酸化物の60%以上が少なくともLa、CeをLa23、Ce23として20質量%以上含有する酸化物であることを特徴とする低炭素薄鋼板。
  5. 低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片を冷間圧延した薄鋼板であって、該薄鋼板中に存在する酸化物の60%以上が、少なくともLa、CeをLa23、Ce23として20質量%以上含有する球状または紡錘状酸化物であることを特徴とする低炭素薄鋼板。
  6. 低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片を冷間圧延した薄鋼板であって、該薄鋼板中の直径0.5μmから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、100000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の60%以上が少なくともLa、Ceを含んでいることを特徴とする低炭素薄鋼板。
  7. 低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片を冷間圧延した薄鋼板であって、該薄鋼板中の直径0.5μmから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、100000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の60%以上が少なくともLa、Ceを含んだ球状または紡錘状酸化物であることを特徴とする低炭素薄鋼板。
  8. 低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片を冷間圧延した薄鋼板であって、該薄鋼板中の直径0.5μmから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、100000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の60%以上が少なくともLa、CeをLa23、Ce23として20質量%以上含有する酸化物であることを特徴とする低炭素薄鋼板。
  9. 低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片を冷間圧延した薄鋼板であって、該薄鋼板中の直径0.5μmから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、100000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の60%以上が少なくともLa、CeをLa23、Ce23として20質量%以上含有する球状または紡錘状酸化物であることを特徴とする低炭素薄鋼板。
  10. 低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片であって、該薄肉鋳片内の直径0.5μmから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、100000個/cm2未満分散していることを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片。
  11. 低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片であって、該薄肉鋳片内に存在する酸化物の60%以上が少なくともLa、Ceを含んでいることを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片。
  12. 低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片であって、該薄肉鋳片内に存在する酸化物の60%以上が少なくともLa、Ceを含んだ球状または紡錘状酸化物であることを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片。
  13. 低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片であって、該薄肉鋳片内に存在する酸化物の60%以上が少なくともLa、CeをLa23、Ce23として20質量%以上含有する酸化物であることを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片。
  14. 低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片であって、該薄肉鋳片内に存在する酸化物の60%以上が少なくともLa、CeをLa23、Ce23として20質量%以上含有する球状または紡錘状酸化物であることを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片。
  15. 低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片であって、該薄肉鋳片内に直径0.5μmから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、100000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の60%以上が少なくともLa、Ceを含んでいることを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片。
  16. 低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片であって、該薄肉鋳片内に直径0.5μmから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、100000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の60%以上が少なくともLa、Ceを含んだ球状または紡錘状酸化物であることを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片。
  17. 低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片であって、該薄肉鋳片内に直径0.5μmから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、100000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の60%以上が少なくともLa、CeをLa23、Ce23として20質量%以上含有する酸化物であることを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片。
  18. 低炭素溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造して得られた薄肉鋳片であって、該薄肉鋳片内に直径0.5μmから30μmの微細酸化物が1000個/cm2以上、100000個/cm2未満分散し、且つその酸化物の60%以上が少なくともLa、CeをLa23、Ce23として20質量%以上含有する球状または紡錘状酸化物であることを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片。
  19. 溶鋼の炭素濃度を低炭素濃度域まで脱炭した後、該溶鋼に少なくともCe、Laを添加し、溶鋼中の溶存酸素濃度を0.001質量%以上、0.02質量%以下に調整した溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造することを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片の製造方法。
  20. 溶鋼の炭素濃度を低炭素濃度域まで脱炭した後、該溶鋼にTiと少なくともCe、Laを添加した溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造することを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片の製造方法。
  21. 溶鋼の炭素濃度を低炭素濃度域まで脱炭した後、該溶鋼にAlを添加して予備脱酸処理を行い、溶鋼中の溶存酸素濃度を0.01質量%以上0.04質量%以下とし、次いでTiと、少なくともLa、Ceを添加した溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造することを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片の製造方法。
  22. 溶鋼の炭素濃度を低炭素濃度域まで脱炭した後、該溶鋼にAlを添加し3分以上攪拌して予備脱酸処理を行い、溶鋼中の溶存酸素濃度を0.01質量%以上0.04質量%以下とし、次いでTiを0.003質量%以上0.4質量%以下と、少なくともLa、Ceを0.001質量%以上0.03質量%以下添加した溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造することを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片の製造方法。
  23. 真空脱ガス装置を用いて溶鋼の炭素濃度を低炭素濃度域まで脱炭した後、該溶鋼に少なくともCe、Laを添加し、溶鋼中の溶存酸素濃度を0.001質量%以上、0.02質量%以下に調整した溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造することを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片の製造方法。
  24. 真空脱ガス装置を用いて溶鋼の炭素濃度を低炭素濃度域まで脱炭した後、該溶鋼にTiと少なくともCe、Laを添加した溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造することを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片の製造方法。
  25. 真空脱ガス装置を用いて溶鋼の炭素濃度を低炭素濃度域まで脱炭した後、該溶鋼にAlを添加して予備脱酸処理を行い、溶鋼中の溶存酸素濃度を0.01質量%以上0.04質量%以下とし、次いでTiと、少なくともLa、Ceを添加した溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造することを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片の製造方法。
  26. 真空脱ガス装置を用いて溶鋼の炭素濃度を低炭素濃度域まで脱炭した後、該溶鋼にAlを添加し3分以上攪拌して予備脱酸処理を行い、溶鋼中の溶存酸素濃度を0.01質量%以上0.04質量%以下とし、次いでTiを0.003質量%以上0.4質量%以下と、少なくともLa、Ceを0.001質量%以上0.03質量%以下添加した溶鋼を双ドラム式連続鋳造法で鋳造することを特徴とする低炭素鋼薄肉鋳片の製造方法。
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