JP2003117798A - ワイヤ工具 - Google Patents

ワイヤ工具

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JP2003117798A
JP2003117798A JP2002260814A JP2002260814A JP2003117798A JP 2003117798 A JP2003117798 A JP 2003117798A JP 2002260814 A JP2002260814 A JP 2002260814A JP 2002260814 A JP2002260814 A JP 2002260814A JP 2003117798 A JP2003117798 A JP 2003117798A
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resin
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abrasive grains
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JP2002260814A
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Yutaka Shimazaki
裕 島崎
Toshiyuki Enomoto
俊之 榎本
Yasuhiro Tani
泰弘 谷
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Ricoh Co Ltd
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  • Processing Of Stones Or Stones Resemblance Materials (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 切削加工の高精度化・高能率化が可能で、し
かも長尺で安価な長寿命のワイヤ工具を提供する。 【解決手段】 ワイヤ本体(11a)表面上にプライマ
層(11b)が設けられ、そのプライマ層(11b)上
に樹脂(22a)を主成分とする混合被覆層(11d)が
形成されており、また混合被覆層(11c)は光硬化性樹
脂(22a)、添加物(22b)及び砥粒(22c)を
含んでいる。そしてプライマ層(11b)に砥粒(22
c)の一部が埋まることにより固定されるワイヤ工具で
ある。本発明では光硬化性樹脂として迅速に光化学反応
を起こして数秒以下で重合硬化し得るものを用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばシリコンイ
ンゴット、水晶、石英などの硬脆材料や金属材料を切断
加工するための、樹脂を主な結合材としたワイヤ工具に
係わり、特に切断加工の高精度化・高能率化を行うこと
ができるワイヤ工具およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、シリコンインゴット、水晶、石英
等の硬脆材料や金属材料の切断手段としてワイヤ工具が
用いられているが、特に近年のシリコンウェハの大口径
化にともない、シリコンウェハのインゴットからの切断
手段として注目されている。シリコンインゴットの切断
加工には、従来は内周刃による切断方式が適用されてき
た。そして近年、半導体デバイスの生産コストの低減、
適正化を図るために、シリコンウェハは大口径化の一途
を辿っているが、そうしたウェハの大口径化に対して
は、内周刃の大径化で対応してきた。しかし、特に8イ
ンチ以上のシリコンインゴットに対しては、スループッ
トの向上に限界がある、カーフロス(Kerf-loss;切断
ロス)が大きい、切断ジグへの内周刃のセッティングが
困難である等の理由により、切断方法は内周刃切断方式
からマルチワイヤ切断方式に置き換わりつつある。
【0003】従来行われてきたワイヤによるシリコンイ
ンゴットの切断加工は、図3(「電子材料」Vol.35,
No.7,1996年7月号、第29頁)に示されるよう
に、ピアノ線等のワイヤ1の新線リール2から巻取りロ
ーラ5までの所定経路中に、ダンサローラ3および複数
のメインローラ4等を設けて、インゴット6に近接する
所定ピッチのワイヤ列を形成するもので、スラリーノズ
ル7から高粘度の研磨剤スラリーを供給するとともに、
インゴット6をそのワイヤ列に押し付けることにより、
インゴット6の切断を行う、という遊離砥粒加工であ
る。しかしながら、遊離砥粒加工法ゆえに、多量の産業
廃棄物(廃液)を生じる、作業環境が極めて悪い、ラン
ニングコストが高い、切断後のウェハ洗浄が難しい、加
工能率の向上が望めない、さらには切断精度が悪いなど
の欠点があった。
【0004】これらの問題を解決するものとして、ワイ
ヤに砥粒を固着させたワイヤ工具、すなわち固定砥粒ワ
イヤ工具があり、すでに電着ワイヤ工具(特開昭63−
22275号公報、特公平4−4105号公報、特開平
7−227767号公報あるいは特開平9−15031
4号公報等参照)やピアノ線自体に砥粒を機械的に埋め
込む製造法によるもの(商品名ワイヤモンド、住友電気
報昭和63年3月第132号、P.118−122)が開
発されている。これらは、いずれも砥粒を固着する結合
材としては金属を用いている。
【0005】ところが、金属を結合材として用いたワイ
ヤ工具では、結合材層が硬いため、ワイヤ工具の破断ね
じり強度や曲げ強度が低く、加工時に断線し易い、ま
た、電着ワイヤ工具においては、電着に長時間要するた
め製造コストが高い、さらにマルチワイヤ切断方式に必
要なワイヤ工具自体の長尺化が困難であるなどの品質上
かつ経済上の問題があった。またワイヤの製造コストが
高く、長尺化が困難であるという問題を回避するため
に、短尺ワイヤ工具の両端を接合したエンドレスタイプ
のワイヤ工具も試作されているが、接合部の破断ねじり
強度、曲げ強度が極めて低いという問題がある。
【0006】そこで、これらの問題を解決するために、
最近、樹脂を結合材に用いたワイヤ工具が開発されるに
至っている。こうしたワイヤに砥粒を固着する結合材に
樹脂を用いたワイヤ工具およびその製造方法としては、
大阪ダイヤモンド工業が開発した固定砥粒ダイヤモンド
ワイヤソー(1997年度砥粒加工学会学術講演会講演
論文集、P.369〜370)、特開平8−12695
3号公報、特開平9−155631号公報や特開平10
−138114号公報、特開平10−151560号公
報、特開平10−315049号公報、特開平10−3
28932号公報、特開平10−337612号公報に
記載のものが知られている。これらのワイヤ工具では、
樹脂の種類については特に限定はしていないが、発表内
容、実施例などからわかるように、実際には研削砥石に
おいて従来使用されてきたフェノール樹脂などの熱硬化
性樹脂が用いられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うに改善されたワイヤ工具にあっても、熱硬化性樹脂を
結合材に用いていることから、溶媒を除去するための乾
燥工程と結合材を硬化させるための焼成工程を必要と
し、また焼成に要する時間も全てのワイヤ工具箇所にお
いて数分ずつ要してしまう。したがってワイヤ工具の高
速な製造、例えば毎分数百メートル〜数キロメートルの
速度での製造は難しく、マルチ切断方式に必要な10キ
ロメートル以上の長尺なワイヤ工具を安価に製造するこ
とは極めて困難である。
【0008】さらに、金属を結合材として用いたワイヤ
工具に比較して、樹脂を結合材としたワイヤ工具は、結
合材の耐磨耗性、機械的強度、耐熱性が低く、切断能率
が劣るという問題がある。
【0009】本発明は、これらに着目してなされたもの
で、高寿命で切断加工の高精度化・高能率化が可能で、
かつ長尺で安価なワイヤ工具およびその製造方法を提供
することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1の発明は、ワイヤ本体(11a)表面上に
プライマ層(11b)が設けられ、該プライマ層(11
b)上に樹脂(22a)を主成分とする混合被覆層(1
1d)が形成されてなること、該混合被覆層(11c、1
1d)が光硬化性樹脂(22a)、添加物(22b)及
び砥粒(22c)を含み、しかも該プライマ層(11
b)に該砥粒(22c)の一部が埋設されて固定されて
いること、及び、該光硬化性樹脂(22a)は光化学反
応を起こして数秒単位若しくはそれ以下の短時間で重合
硬化し得るものであること、を特徴とするワイヤ工具
(11T)である。本発明に供する光硬化性樹脂は、紫
外線や可視光線などの光が照射されると光化学反応を起
こし、数秒単位あるいはそれ以下で重合硬化するもの
で、光ファイバの被覆などに用いられているものであ
る。この光硬化性樹脂を結合材として用いた場合、光フ
ァイバでの製造スピードである毎分数百メートル〜数キ
ロメートルでの製造が可能であり、安価で長尺なワイヤ
工具の提供が可能となる。
【0011】ワイヤの素材としては、特に限定されるも
のではなく、ピアノ線、黄銅被覆ピアノ線、ステンレス
鋼線といった金属線や非金属であるガラス繊維のような
無機化合物による線状物、ナイロンの如き有機化合物に
よる繊維(線)またはそれらの撚糸 (紐、コード)など
が挙げられる。プライマ層にはワイヤ本体と混合被覆層
との接着力を高める材料が選択される。例えばシランカ
ップリング剤等の化学的プライマである。また、本発明
では、金属粒子と無機粉末粒子のうち少なくとも一方を
添加物として、該添加物を光硬化性樹脂からなる結合材
に所定重量%だけ添加している。
【0012】請求項2の発明は、請求項1記載ワイヤ工
具において、砥粒のサイズを特定したものであって、例
えば、ダイヤモンド砥粒では、集中度20に該当する3
0〜40マイクロメートル(μm)のものを微量のエチ
ルアルコールで湿潤して用いる。砥粒としては、ダイヤ
モンド以外に、立方晶型窒化硼素、アルミナ、炭化珪素
などの硬質砥粒を用いることができる。
【0013】請求項3の発明は、例えば、ワイヤ軸線方
向に走行させながら、平均粒径が0.1〜15マイクロ
メートル(μm)の金属粒子および/または平均粒径が
0.1〜15マイクロメートル(μm)の無機粉末を5
〜90wt%含有する光硬化樹脂(但し、この光硬化性樹
脂は紫外線又は可視光線が照射されると光化学反応を起
こし、数秒単位若しくはそれ以下で重合硬化し得るもの
である。)と砥粒との混合溶液をワイヤ表面に塗布する
ことにより達成できる。通常、塗布後に混合溶液を乾燥
させて、光硬化処理を経て所定の膜厚とワイヤ工具の寸
法・形状を調整する。
【0014】ワイヤ工具において、樹脂単体で結合材を
構成した場合、特に熱硬化性樹脂よりも一般に耐熱性や
機械的強度が劣ると考えられる光硬化性樹脂単体で結合
材を構成した場合、切断時に結合材被膜の磨耗・破断、
砥粒の脱落が考えられるが、この発明のように、金属粒
子や無機粉末、金属ファイバや無機フアイバを樹脂中に
添加することにより、工具の機械的強度、耐熱性を向上
させることが可能となる。また、添加した粒子、ファイ
バ等での光の透過、吸収、反射により、硬化速度が低下
あるいは未硬化状態に陥ることが予測されるが、添加粒
子の種類、大きさ、添加量を特定することで、これらの
問題を解決し得る。
【0015】また、請求項4の発明は、添加物として金
属粒子又は無機粉末に替えて、前記樹脂中に、短径が
0.1〜15マイクロメートル(μm)、長径が1〜2
00マイクロメートル(μm)の金属ファイバおよび/
または無機ファイバを、添加物として5〜90wt%添加
することを特徴とする。この場合も、ワイヤをその軸線
方向に走行させながら、金属ファイバおよび/または無
機ファイバを光硬化樹脂と砥粒との混合溶液に混合した
ものを塗布剤として使用する。その結果、ワイヤを所定
の径、あるいはワイヤ上に塗布された前記混合溶液を所
定の膜厚にすることができる。
【0016】ワイヤ工具の寿命は工具の磨耗あるいは断
線により決まり、工具磨耗としては、砥粒の脱落、砥粒
の埋没、砥粒自体の磨耗、さらに結合材被膜のワイヤか
らの剥離が考えられるが、この発明のようにワイヤ表面
に化学的プライマ処理を行うことで、結合材被膜とワイ
ヤ面との癒着力を高めることでき、結合材被膜の剥離に
よる工具寿命の低下を抑えることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の好ましい実施の
形態を図面に基づいて説明するが、本発明はこれに限定
されるものではなく、光硬化性樹脂に種々の金属粒子や
無機粉末、金属フアイバ、無機ファイバを含む結合材を
用いて砥粒をワイヤに固着して性能に優れたワイヤ工具
を獲ることが可能となる。
【0018】まず、本発明のワイヤ工具の横断面図を図
1に示す。ワイヤ本体(11a)表面上にプライマ層
(11b)が設けられ、そのプライマ層(11b)上に
樹脂(22a)を主成分とする混合被覆層(11d)が形
成されており、また混合被覆層(11c、11d)には光
硬化性樹脂(22a)、添加物(22b)及び砥粒(2
2c)が含まれている。そして、プライマ層(11b)
には砥粒(22c)の一部が埋設され、ワイヤ本体(1
1a)に固定されている特徴がある。本発明では、光硬
化性樹脂として、光化学反応を起こして数秒単位若しく
はそれ以下の短時間で瞬時に重合硬化し得るものを使用
する点も特徴である。
【0019】つぎに、図2により本発明のワイヤ工具の
製造方法を説明すると、送出しロール10に巻かれたワ
イヤ11は、複数の送りローラ12,13,14および
ダンサローラ15により搬送され、巻取りロール20に
引張られて巻取られるようになっている。ワイヤ11の
素材としては特に限定されるものではなく、ピアノ線、
黄銅被覆ピアノ線、ステンレス鋼線のような金属線やガ
ラス繊維の如き無機化合物による線、ナイロンのような
有機化合物による繊維(線)またはそれらの撚糸などが
挙げられる。
【0020】張力変動による断線等を防止するために、
張力制御機構としてダンサローラ15を設けているが、
他にはシーソー方式やキャプスタン方式による張力制御
法があげられる。図示の例では、制御系16によって送
出しロール10の送出しの速度と巻取りロール20の巻
取り速度が制御されるとともに、ダンサローラ15の位
置が制御され、ワイヤ11の張力が所定値に制御され
る。
【0021】また、詳細を図示していないが、送出しロ
ール10から引出されたワイヤ11は、後述する混合被
覆との密着性を向上させるために溶剤蒸気脱脂槽で脱脂
処理された後に、プライマ処理槽に導かれ、そこで化学
的プライマ処理が施される。このようにワイヤ11の表
面を予めプライマ処理しておくことにより、ワイヤ表面
での混合被膜の硬化を促進するとともに、ワイヤ11と
混合被膜との密着性を高めることができる。化学的プラ
イマ処理としては、光重合促進剤やカップリング剤(例
えば、シランカップリング剤)の表面塗布が挙げられ
る。なお、特開平10−328932号公報に記載され
るように、ワイヤ表面に微少な凹凸を設け、ワイヤ11
と混合被覆との密着性を高める方法も考案されている
が、この方法ではワイヤ11の機械的強度を損なう懼れ
がある。
【0022】ローラ12を通過し、上述のようなプライ
マ処理によってワイヤ本体11aの表面にプライマ層1
1bが形成されたワイヤ11は、次いで、ロート状の樹
脂塗布槽21に収容された混合溶液22中を通過する。
このとき、図1に示すように、ワイヤ11のプライマ層
11b上に混合液22が層状に付着して未硬化の混合被
覆が形成される。
【0023】ここで、樹脂塗布槽21に収容された混合
溶液22は、光硬化性樹脂22aに所定の添加物22b
を添加、混合した液状樹脂に、所定の砥粒22cを混合
した流動性混合物である。具体的には、混合溶液22
は、液状樹脂すなわち光硬化性樹脂22aに、0.1〜
15マイクロメートルの金属粒子および/または平均粒
径が0.1〜15マイクロメートルの無機粉末を、ある
いは短径が0.1〜15マイクロメートル、長径が1〜
200マイクロメートルの金属ファイバおよび/または
無機ファイバ5〜90wt%を添加物22bとして添加、
混合した添加物混合液樹脂を作製し、その添加物混合液
樹脂と所定粒径の砥粒22cとを均一に混和した混合溶
液となっている。砥粒22cとしては、特に限定される
ものではなく、ダイヤモンド、CBN(立方晶窒化ホウ
素)、アルミナ、炭化珪素などの硬質砥粒などが挙げら
れる。但し、その中でも加工能力に優れるダイヤモンド
砥粒が通常望ましい。
【0024】一方、樹脂塗布槽21の出口には、線径ジ
グ23が移動可能に設けられており、ワイヤ11に付着
している余分な混合液22をこの線径ジグ23によりか
き落として、未硬化の混合被覆11cを所定の厚みに整
え、あるいは、混合被覆11cが形成されたワイヤ外径
を所定の直径に整えるようになっている。
【0025】線径ジグ23を通過したワイヤ11は、次
いで、光照射装置24によって所定の光を照射される。
これにより、混合被覆11cが硬化した硬化層(以下、
混合被膜11dという)が形成され、ワイヤ工具11T
が順次できあがっていく。
【0026】光照射装置24より下流側でワイヤ工具1
1Tの外径寸法を測定する線径測定器17により、その
測定情報を制御系16にフィードバックすることができ
る。この線径測定器17は、例えばワイヤ搬送方向の所
定位置で、ワイヤ工具11Tを取り囲んで等角度間隔に
離間する3つの非接触の変位センサを有しており、ワイ
ヤ11の線径測定のみならず、ワイヤ本体11aに対す
る混合被膜11dの芯ずれ(周方向三位置での混合被膜
11dの膜厚のばらつき)をも検出可能になっている。
制御系16は、その測定情報を基にワイヤ11と線径ジ
グ23との芯ずれを検出し、常にワイヤ11が線径ジグ
23の中心を走行し、混合被膜11dがワイヤの長さ方
向においても周方向においても一定の厚さになるよう、
ワイヤ11と線径ジグ23の相対位置の制御を行う。そ
の位置制御は、線径ジグ23を変位させることにより、
あるいは、図示しないワイヤ位置調整用のローラを変位
させることにより、達成できる。混合被膜11dが外周
面に形成されたワイヤ工具11は、ローラ14、15を
通過した後、巻取りロール20に巻取られる。
【0027】本実施形態に係るワイヤ工具は、上述のよ
うに、ワイヤ本体11a上に樹脂を主成分とする結合材
で砥粒22cを固定したものであり、その結合材に用い
る樹脂として、紫外線や可視光線などの光が照射される
と光化学反応を起こし、数秒単位あるいはそれ以下で重
合硬化する光硬化性樹脂を用いたものである。したがっ
て、光ファイバの被覆などに用いられている光硬化性樹
脂を使用することで、光ファイバでの製造スピード程度
(毎分数百メートル〜数キロメートル)での製造が可能
となり、安価で長尺なワイヤ工具を提供することができ
る。
【0028】また、その光硬化性樹脂中に、平均粒径
0.1〜15マイクロメートル(μm)を有する、金属
粒子と無機粉末のうち少なくとも一方を添加物として、
あるいは、短径が0.1〜15マイクロメートル(μ
m)で、長径が1〜200マイクロメートル(μm)で
あるところの、金属ファイバと無機ファイバのうち少な
くとも一方を添加物として、その添加物を5〜90wt%
添加しているので、ワイヤ工具の機械的強度および耐熱
性を高めることができる。なお、添加物の粒子部やファ
イバ部での光の透過、吸収、反射により、光硬化性樹脂
の硬化速度が低下したり、未硬化状態に陥ったりするこ
とが考えられるが、添加物粒子の種類、大きさ、添加量
を所定範囲に特定することで、これらの問題を解決する
ことができる。
【0029】さらに、本実施形態に係る製造方法は、ワ
イヤをその軸線方向に走行させながら、上述した添加物
を5〜90wt%含有する光硬化樹脂と砥粒との混合溶液
22をワイヤ本体11a上に塗布する工程と、混合溶液
22の塗布されたワイヤ11を所定の径、あるいはワイ
ヤ11上に塗布された混合溶液の被覆11cを所定の膜
厚に整形して光硬化する工程とを含むので、均一な被覆
層11cを形成して、高品質のワイヤ工具を連続的に製
造することができる。
【0030】また、光硬化後に混合被膜11dが形成さ
れたワイヤ工具11Tの外径寸法を計測し、その計測結
果を基に混合被膜11dの形成されたワイヤ工具11T
の外径寸法を所定の値にするように、線径ジグ23や調
整用ローラを制御することにより、線径のバラツキを最
小限に抑えることができる。その結果、切断時のカーフ
ロスや切断品の反りが小さく、安定した切断面品位を有
するシリコンウェハを得ることができる。
【0031】また、混合溶液の塗布されたワイヤ11を
所定の径に整形し、あるいはワイヤ11上に塗布された
混合溶液の被覆層11cを所定の膜厚にして光硬化する
工程を、窒素雰囲気中で行い、その雰囲気中でワイヤ1
1に光を照射することで、重合硬化反応を安定かつ確実
に生じさせることができる。さらに、添加物混合樹脂の
塗布工程の前工程で、ワイヤ表面に化学的プライマ処理
を行うことにより、結合材被膜とワイヤ面との癒着力を
高めることでき、結合材被膜の剥離による工具寿命の低
下を抑えることができる。
【0032】
【実施例】アクリレート系プレポリマ(オリゴマあるい
はモノマ)およびアセトフェノン誘導体系の光重合開始
剤1wt%からなるラジカル重合型光硬化樹脂溶液中に、
平均粒径2マイクロメートル(μm)の銅微粒子を30
wt%添加し、ホモジェナイザにて約10分間混和する。
次に、集中度20に該当する30/40マイクロメート
ル(μm)のダイヤモンド砥粒を微量のエチルアルコー
ルで湿潤し、上記液状樹脂に入れ、ホモジェナイザにて
10分間混ぜ合わせる。ワイヤ11として直径0.20
mmのピアノ線を用い、樹脂塗布槽21に銅徹粒子を添加
した液状樹脂とダイヤモンド砥粒との混合溶液22を入
れ、前記した製造方法により、ワイヤ11を樹脂塗布槽
21内に導き、整形する開口直径が約0.27mmの線径
ジグ23を通過させ、波長354nm付近に大きなピーク
を有する高圧水銀ランプを用いて紫外線硬化させた。こ
れにより、直径0.25〜0.26mmのワイヤ工具を得
た。
【0033】樹脂硬化に用いる光は、用いる樹脂の特性
に依存するが、例えば紫外線硬化樹脂の場合、波長20
0〜400nmの遠紫外から可視光域内に波長を有する紫
外線で、発光源(光照射装置)としては高圧水銀ラン
プ、メタルハライドランプ、He−Cdレーザあるいは
Arレーザが考えられる。また可視光線硬化樹脂の場合
は、波長400〜800nm内にピークを有する光源を用
いることができる。
【0034】本実施例に用いた光硬化樹脂は、紫外線照
射により光重合開始剤がフリーラジカルを発生し、これ
がオリゴマ、モノマのラジカル重合を誘発するラジカル
重合型の樹脂であったが、樹脂成分である、オリゴマ、
モノマ、重合開始剤は本実施例記載の成分に限定される
ものではない。ラジカル重合型の樹脂成分として、不飽
和ポリエステル樹脂をオリゴマに、スチレンをモノマと
することもできる。
【0035】オリゴマとして用いることができるのは他
に、(ポリ)メチルアクリレートの如き(ポリ)エステル
アクリレート、(ポリ)エーテルアクリレート、アクリ
ルオリゴマ系アクリレート、エポキシアクリレート、
(ポリ)ブタジェンアクリレート、シリコーンアクリレ
ートを例示できる。モノマとしては、N−ビニルピロリ
ドン、酢酸ビニル、一官能アクリレート、二官能アクリ
レート及び三官能アクリレート類が挙げられる。また重
合開始剤としては、アセトフェノン、トリクロロアセト
フェノン等のアセトフェノン誘電体以外にベンゾインエ
ーテル類、ベンゾフェノン類、キサントン類などがあ
る。更に、光硬化性樹脂として、ラジカル重合型以外
に、光付加重合型、光カチオン重合型、酸硬化型の樹脂
を用いることも可能である。
【0036】上記実施例では、樹脂中への添加剤として
銅微粒子を用いたが、添加剤がこれに限定されるもので
ないことは云うまでもない。添加剤としては、所定の時
間内で樹脂硬化を完了し、光硬化後の結合材の機械的強
度を向上でき、工具の耐磨耗性などの特性を向上できる
ものであればよい。添加剤としては、金属微粒子、金属
塩化物、金属酸化物、金属炭化物、半導体材料に代表さ
れる非金属(半金属と云われることもある)材料の酸化
物、炭化物等、あるいは粒子以外に針状のもの、ファイ
バ状のものでもよい。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
ワイヤ工具の結合材に、極めて短時間で硬化することの
可能な光硬化性樹脂を用いることで、ワイヤ工具の製造
時間を短縮することができ、シリコンインゴットのマル
チワイヤ切断等に好適な長尺かつ安価なワイヤ工具を提
供することができる。
【0038】また、結合材樹脂に、金属粒子や無機粉
末、金属ファイバや無機ファイバを添加するようにすれ
ば、無添加の場合に比べ、工具の機械的強度、耐熱性を
向上することができる。さらに、ワイヤ上に結合材樹脂
を塗布するに先立ち、ワイヤのプライマ処理を施すよう
にすれば、結合材被膜とワイヤ面との癒着力を高めるこ
とでき、結合材被膜剥離による工具寿命の低下を抑える
ことができる。
【0039】一方、製造工程においても、ワイヤを走行
させて添加物混合液状樹脂と砥粒との混合溶液中を通過
させ、ワイヤ表面に混合液を付着させて混合被覆を形成
しながら、ワイヤに付着した余分な混合液を取除くよう
にすれば、混合被膜の均一なワイヤ工具を連続的に製造
することができる。
【0040】また、製造工程中で混合被膜形成後のワイ
ヤ工具の線径を測定し、線径制御や芯ずれ抑制の制御を
実行することにより、線径バラツキを最小限に抑えるこ
とが可能となり、品質の安定したワイヤ工具を製造する
ことができる。さらに、光照射を窒素雰囲気中で行うよ
うにすれば、重合硬化反応を安定かつ確実に実現するこ
とができる。このように本発明によれば、高寿命で切断
加工の高精度化・高能率化が可能であり、かつ長尺で安
価なワイヤ工具を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るワイヤ工具の横断面
図である。
【図2】本発明のワイヤ工具を製造する方法を説明する
ための製造装置の概略構成図である。
【図3】従来のシリコンインゴットの切断加工に用いら
れる遊離砥粒を用いたマルチワイヤ切断加工装置の概略
構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 送出しロール 11 ワイヤ 11a ワイヤ本体 11b プライマ層 11c 未硬化の混合被覆 11d 混合被膜(硬化膜) 11T ワイヤ工具 12,13,14 送りローラ 15 ダンサローラ 16 制御系 17 線径測定器 20 巻取りロール 21 樹脂塗布槽 22 混合液(混合溶液) 22a 光硬化性樹脂 22b 添加物 22c 砥粒 23 線径ジグ 24 光照射装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 榎本 俊之 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 谷 泰弘 東京都世田谷区宮坂3−47−12 Fターム(参考) 3C058 AA05 AA09 CB03 DA03 3C063 AA08 AB09 BB02 BB07 BC03 BD08 CC16 CC24 CC30 EE10 EE15 EE31 FF22 FF23 3C069 BA06 BB01 CA04 EA03

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ワイヤ本体表面上にプライマ層が設けら
    れ、該プライマ層上に樹脂を主成分とする混合被覆層が
    形成されてなること、 該混合被覆層が光硬化性樹脂、添加物及び砥粒を含み、
    しかも該プライマ層に該砥粒の一部が埋設されて固定さ
    れていること、及び該光硬化性樹脂は光化学反応を起こ
    して数秒単位若しくはそれ以下の短時間で重合硬化し得
    るものであることを特徴とするワイヤ工具。
  2. 【請求項2】砥粒が30〜40マイクロメートル(μ
    m)の直径を有する粒状物である請求項1に記載のワイ
    ヤ工具。
  3. 【請求項3】混合被覆層に添加する添加物が平均粒径
    0.1〜15マイクロメートル(μm)の金属粒子及び
    /又は平均粒径0.1〜15マイクロメートル(μm)
    の無機粉末であり、その添加量が5〜90wt%であるこ
    とを特徴とする請求項1に記載のワイヤ工具。
  4. 【請求項4】ワイヤ本体上に樹脂を主成分とする混合被
    覆材により砥粒を固定したワイヤ工具において、 該混合被覆材に添加した添加物は針状乃至繊維状であっ
    て、その短径が0.1〜15マイクロメートル(μ
    m)、長径が1〜200マイクロメートル(μm)の金
    属ファイバ及び/又は無機ファイバを5〜90wt%添加
    したことを特徴とする請求項1に記載のワイヤ工具。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007098490A (ja) * 2005-09-30 2007-04-19 Utsunomiya Univ 電気・磁気複合加工方法並びにこれに用いられる装置及び工具
JP2012152830A (ja) * 2011-01-21 2012-08-16 Noritake Co Ltd 固定砥粒ワイヤおよびその製造方法
JP2012525264A (ja) * 2009-04-29 2012-10-22 ナムローゼ・フェンノートシャップ・ベーカート・ソシエテ・アノニム 砥粒が部分的に金属ワイヤー中に埋め込まれ、かつ有機バインダーにより部分的に保持されたソーワイヤー

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JP2007098490A (ja) * 2005-09-30 2007-04-19 Utsunomiya Univ 電気・磁気複合加工方法並びにこれに用いられる装置及び工具
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