JP2004322290A - ワイヤーソー - Google Patents

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伸昭 折田
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彰 山田
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Abstract

【課題】ワイヤ芯の周囲に砥粒が砥粒結合材により固着されたワイヤーソーの切断効率と砥粒の脱落のし難さのトレードオフを解消し、材料の切断効率が良く、砥粒の脱落が置きにくいものを提供する。
【解決手段】砥粒保持材2はガラス転移温度が50〜200℃かつ材料非切断時の弾性率が500MPa以上であって、材料非切断時の前記砥粒3の前記砥粒保持材2からの平均突出量が前記砥粒の平均粒径の1〜30%であることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体インゴット、水晶、サファイアなどの硬脆材料、金属を切断加工するためのワイヤーソーに関するものである。特に、本発明はこのワイヤーソーに関し、切断効率を向上させたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコンインゴットをはじめとする半導体インゴット、水晶、サファイアなどの硬脆材料をスライス切断しウェハ状の板を作製する場合、ダイヤモンド内周歯が主に用いられてきた。しかしながら、近年これらの材料の径が大きくなっているのでワイヤーソーがダイヤモンド内周歯にとってかわりつつある。
【0003】
図2にワイヤーソー5の断面構造を示す。このワイヤーソー5は、ワイヤー芯1の表面に砥粒3を砥粒保持材2でもって固着させている。ワイヤー芯1は主に、ピアノ線などの金属線が用いられ、砥粒保持材2はフェノール樹脂といった熱硬化性の樹脂が用いられる。砥粒3はダイヤモンド、CBN、SiCといった硬質粒を用い、砥粒保持材2との密着を良くするために、砥粒3の表面に金属めっきを施すことがある。
【0004】
さらに、砥粒3には上記硬質粒にフィラーと呼ばれるAl、SiO等の微小粉末を混入させる。これにより、砥粒保持材2の強度、磨耗性を向上させることができる。また、砥粒保持材2のワイヤー芯1への密着性を向上させるため、金属からなるワイヤー芯1の表面に予め金属との接合性の良いエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂等の樹脂で予め被覆をし、一次被覆層4の形成を施すことが行われる(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−246542号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一般的にワイヤーソー5は、砥粒3が砥粒保持材2から突出しているほど、材料の切断効率が向上する。しかしながら、砥粒3が突出しすぎると、今度は砥粒3が脱落しやすくなるので、切断効率と砥粒3の脱落の易さはトレードオフの関係がある。そのため、砥粒3が脱落しないように砥粒3をある程度砥粒保持材2へ埋設させる必要があり、材料の切断効率を向上させることが困難であった。
【0007】
本発明の目的は、ワイヤ芯の周囲に砥粒が砥粒結合材により固着されたワイヤーソー5の切断効率と砥粒3の脱落のし易さのトレードオフを解消し、材料の切断効率が良く、かつ、砥粒3の脱落が起きにくいものを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記した問題を解決するために、本発明の第一は請求項1に記載のように、ワイヤ芯1の周囲に砥粒3を含有してなる砥粒結合材2が形成されたワイヤソーにおいて、前記砥粒結合材2はガラス転移温度が50〜200℃かつ材料非切断時の弾性率が500MPa以上であって、材料非切断時の前記砥粒3の砥粒結合材2からの平均突出量が前記砥粒3の平均粒径の1〜30%であることを特徴とする。
【0009】
本発明の第一によれば、砥粒結合材2の軟化が始まる温度は50〜200℃であるため、材料切断時のワイヤーソー5の温度と合致する。そのため、材料切断時においては、砥粒結合材2が軟化し、砥粒3が砥粒結合材2から突出するようになり、材料の切断効率が向上する。また、材料非切断時の砥粒結合材2の弾性率が適度に大きいため、砥粒3が砥粒結合材2に確実に保持され、その脱落を防ぐことができる。さらに、材料非切断時の砥粒3の砥粒結合材2からの突出量が適度に最適化されているため、ワイヤーソー5の切断効率と砥粒3の脱落のし易さのトレードオフを解消することができる。
【0010】
本発明の第二は請求項2に記載のように、砥粒結合材2のベース樹脂が紫外線硬化型樹脂であることを特徴とする。
【0011】
本発明の第二によれば、砥粒結合材2に紫外線硬化型樹脂を用いているため、その硬度が材料切断時には下がることで材料切断時には砥粒3が砥粒結合材2から突出し、材料の切断効率が向上する。また、材料非切断時には硬化するため、砥粒3が砥粒結合材2に埋め込まれるようなり、その脱落を防ぐことができる。
【0012】
本発明の第三は請求項3に記載のように、前記ワイヤ芯1が一次被覆層4により一次被覆されていることを特徴とする
【0013】
本発明の第三によれば、ワイヤ芯1が一次被覆層4により一次被覆されているため、材料切断時の砥粒3の突出量を適切に保つことができるようになり、切断効率が向上する。
【0014】
本発明の第四は請求項4に記載のように、前記一次被覆層4が紫外線硬化型接着剤であることを特徴とする。
【0015】
本発明の第四は一次被覆層4が紫外線硬化型接着剤であるため、砥粒結合材2に紫外線硬化型樹脂を用いた場合には、これよりも硬くなる。そのため、材料切断時には砥粒3が一次被覆層4に適度に食い込み、砥粒3の突出量を適切に保つことができるとともに、材料切断時の砥粒3の脱落を防ぐこともできる。
【0016】
本発明の第五は請求項5に記載のように、前記一次被覆層4と前記ワイヤ芯1との密着力が10N以上であり、かつ、前記一次被覆層4の厚さが1〜10μmであることを特徴とする。
【0017】
本発明の第五では、一次被覆層4の厚さが適度に最適化されているので、材料切断時の砥粒3の一次被覆層4への食い込みを適切にすることができる。そのため、砥粒3の突出量を適切に保つことができるとともに、材料切断時の砥粒3の脱落を防ぐこともできる。また、一次被覆層4のワイヤ芯1への密着力が適度に大きいため、切断効率を向上させることもできる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明のワイヤーソー5の基本形態は、図2に示すように従来の形態のワイヤーソー5と同様にワイヤ芯1の周囲に砥粒3が砥粒結合材2により固着されたものである。
【0019】
ワイヤー芯1は主に、ピアノ線などの金属線が用いられ砥粒3はダイヤモンド、CBN、SiCといった硬質粒を用い、必要に応じてAl、SiO等の微小粉末からなるフィラーを混入させる。また、砥粒保持材2との密着を良くするために、砥粒3の表面に金属めっきを施しても良い。
【0020】
本発明に係るワイヤーソー5は、砥粒保持材2が従来技術のものと異なる。すなわち、砥粒保持材2は、室温においてはその全体が硬化し、材料の切断を行うことにより発生する熱によりその全体が軟化する性質を有するものを用いる。なお、砥粒保持材2は非切断時の室温から切断時の温度、及び切断時の温度から非切断時の室温にいたるサイクルを繰り返しても、軟化・硬化の変化が再現する熱可逆的な性質を有するものを用いる。さらに軟化時においても、十分な砥粒3の保持を確保するため、室温時の弾性率が500MPa以上のものを用いるのが好ましい。
【0021】
砥粒保持材2が軟化を開始する温度は材料切断時の温度を考慮して50〜200℃の範囲であることが望ましく、製造工程の簡略化のために、単一種の層からなるものを用いるのが好ましい。以上の条件を満たす砥粒保持材2のベース樹脂には、紫外線硬化型樹脂があげられるがこれに限られるものではない。
【0022】
かかる砥粒保持材2からなるワイヤーソー5の機能について説明する。
まず材料を切断前のワイヤーソーについて説明する。図1(a)のように室温の状態では、硬化している砥粒保持材2でもって砥粒3をできるだけ埋め込むように固着させる。これにより、非切断時におけるワイヤーソー5の砥粒3の脱落をできるだけ防ぐようにする。なお、砥粒3の最適な埋め込み程度は以下の実施例において説明する。
【0023】
以上の構成からなるワイヤーソー5を用いて材料6の切断を開始するとワイヤーソー5は摩擦による熱が発生し、その熱で砥粒保持材2の全体が軟化する。なお、材料6を切削中のワイヤーソー5は、ワイヤーソー5の進行方向に面した砥粒保持材2が材料6により押圧される。図1(b)に示したように、押圧された砥粒保持材2は沈降し、砥粒3が砥粒保持材2から突出するようになる。
【0024】
こういったことにより、材料6の切断時のワイヤーソー5は、ワイヤーソー5の進行方向に面する砥粒3が砥粒保持材2から非切断時の状態よりも突出するため、切断効率を向上させることができる。さらに、材料6の切断が終了すると、ワイヤーソー5は冷却され、軟化・硬化の変化の再現が熱可逆的である砥粒保持材2は硬化しようとするので、沈降していた砥粒保持材2は隆起し切断前の状態に戻ろうとする。したがって、砥粒3は再び砥粒保持材2に埋め込まれることになり、砥粒3の脱落を防ぐことができる。
【0025】
上述したワイヤーソー5の切断効率をさらに向上させるための形態についても説明する。この形態のワイヤーソー5は図2のように、ワイヤー芯1を一次被覆層4で被覆してある。一次被覆層4は材料6を切断中の砥粒保持材2よりも硬く、ワイヤー芯1よりも軟らかい。このワイヤーソー5は材料6を切断中は、ワイヤーソー5の進行方向に面した砥粒3が材料6により押圧され、これが一次被覆層4に食い込むようになる。
【0026】
しかしながら、一次被覆層4は砥粒保持材2よりも硬いため、適度な位置までで食い込むのにとどまる。そのため、材料6の切断中のワイヤーソー5の砥粒3の突き出し量を適切に確保することができる。このように、本発明の形態に係る一次被膜層4は従来の一次被膜層と異なり、砥粒保持材2のワイヤー芯1への密着性を向上させる以外の作用をも奏する。
【0027】
かかる一次被覆層4の材料として、紫外線硬化型接着剤があげられる。なお、一次被覆層4の最適な厚さ、ワイヤー芯への最適な密着力の程度は以下の実施例において説明する。
【0028】
(実施例)
本発明の実施に係るワイヤーソー5は、図2に示したように、表面にブラスめっきを施したφ0.16mmのピアノ線からなるワイヤー芯1に紫外線硬化型接着剤からなる一次被覆層4でもって被覆してある。一次被覆層4の表面に平均粒径1μmのアルミナ粒子からなるフィラー10wt%と平均粒径40μmのダイヤモンド砥粒3を20wt%混合したものに、砥粒保持材2となる紫外線硬化型樹脂を被膜して外形が略240μmのワイヤーソー5を製作した。
【0029】
ここで、一次被覆層4となる紫外線硬化型接着剤はワイヤー芯1を構成するピアノ線よりも軟らかく、砥粒保持材2となる紫外線硬化型樹脂よりも硬い。さらに、砥粒保持材2となる紫外線硬化型樹脂は所定温度(ガラス転移温度)を超えると軟化し、再び温度を下げると硬化するという変化が可逆的に発生するものである。
【0030】
(一次被覆層のワイヤー芯への密着力の最適化)
ワイヤーソー5の設計として、まず、一次被覆層4のワイヤー芯1への密着力の最適化を行った。ここで、一次被覆層4(厚さ5μm)のワイヤー芯1への密着力の異なる長さが20mの4種類のワイヤーソー5を用意した。
【0031】
一次被覆層4のワイヤー芯1への密着力は図3のような器具を用いて測定した。すなわち、ワイヤーソー5の端部から数10cmの長さにわたって一次被覆層4と砥粒保持材2を剥ぎ取り、φ0.165mmの引き抜きジグ7にワイヤーソー5を通し、ジグ7を固定した状態でワイヤー芯1を引っ張った。そして、ジグ7によって、残余の一次被覆層4と砥粒保持材2が剥がされる力を測定した。
【0032】
これらのワイヤーソー5について、線速300m/分で往復運動させながら径φ125mmのシリコンインゴットからなる材料5を150gの力で押さえつけながら30分間切断加工を行った。そして、切断終了後、一次被覆層4と砥粒保持材2の剥がれの箇所を数えた。
【0033】
【表1】
Figure 2004322290
【0034】
以上のように、紫外線硬化型接着剤からなる一次被覆層4のワイヤー芯への密着力が10N以上、好適には12N以上のものを用いると材料を切断後のワイヤーソー5の一次被覆層4と砥粒保持材2の剥がれを防ぐことができる。
【0035】
(一次被覆層の厚さの最適化)
一次被覆層4のワイヤー芯1への密着力の最適化を行った後、一次被覆層4の厚さの最適化を行った。ここで、一次被覆層4となる紫外線硬化型接着剤は2種類用意し(シェア硬度HD65とシェア硬度HD80のもの。)、一次被覆層4の厚さを5、10、15μmと変化させたワイヤーソー5を合計6種類製作した。
【0036】
一次被覆層4の厚さの最適化は、切断速度の速さを評価することにより行った。実際の材料切断は、長さ20mのワイヤーソー5を線速300m/分で往復運動させながら径φ125mmのシリコンインゴットからなる材料6を150gの力で押さえつけながら30分間切断加工を行い、切断速度の平均を求めた。
【0037】
【表2】
Figure 2004322290
【0038】
以上の結果のように、一次被覆層4となる紫外線硬化型接着剤の厚さは、概ね10μm以下にすることにより、良好な加工効率を得られ、薄いほど良いことが判明した。ただし、一次被覆層4の厚さが薄すぎると、均一な被覆が困難となり、ワイヤー芯1への密着力が低下するので、1〜5μmが適当である。
【0039】
(砥粒結合材の材料非切断時の弾性率、軟化温度の最適化)
一次被覆層4の最適化を行った後、砥粒結合材2の最適化を行った。ここで、砥粒結合材2となる紫外線硬化型樹脂の非切断時の弾性率とガラス転移温度を変化させて、弾性率、軟化温度の最適化を行った。なお、材料を切断しない状態での砥粒3の砥粒結合材2からの突出量は砥粒3の径の10%程度となるようにし、非切断時の砥粒3の脱落を防ぐようにした。ここで、突出量とは、図2のように砥粒3の砥粒結合材2からの隆起量tである。
【0040】
以下のパラメータを変化させた長さ20mのワイヤーソー5を線速300m/分で往復運動させながら径φ125mmのシリコンインゴットからなる材料5を150gの力で押さえつけながら30分間切断加工を行い、切断速度の平均を求めた。
【0041】
【表3】
Figure 2004322290
【0042】
以上の結果より、材料非切断時の紫外線効果樹脂の弾性率が500MPa以下ではサンプルEは砥粒3の保持力がなく、切断ができなかった。また、サンプルA、C、Dでは弾性率が高くなるほど砥粒3の保持力が強く、切断速度も向上する。
【0043】
また、非切断時の砥粒3の脱落を防ぐために、非切断時の砥粒3の砥粒結合材2からの突出量tを少なくしても、切断時における熱の発生により、砥粒結合材2が軟化・沈降することにより、切断時の砥粒3の突出量を大きくすることができた。そのため、良好な材料の切断効率を得ることができた。
【0044】
ここで、砥粒結合材2のガラス転移温度は、材料の切断時に発生する熱を考慮して、200℃以下が好ましい。サンプルBのようにガラス転移温度が200℃を超える紫外線硬化型樹脂を用いると、切断中においても軟化・沈降しないため、材料を切断するために必要な砥粒3の突出量を確保できず、良好な切断効率を得ることができなかった。
【0045】
(砥粒の砥粒結合材からの突出量tの最適化)
次に、上述したサンプルAを構成する紫外線硬化型樹脂を用い、砥粒3の突出量tを変化させたワイヤーソー5を複数本製作し、同様の切断方法により切断速度の測定を行った。
【0046】
【表4】
Figure 2004322290
【0047】
以上の結果のように、材料非切断時の砥粒3の突出量tが10μm程度であって、これが、砥粒3の径の25%のときに最も良好な切断効率が得られた。突出量tをこれ以上にすると、切断時の砥粒3の脱落が増えるため、切断効率が低下した。
【0048】
さらに、上述したサンプルDを構成する紫外線硬化型樹脂を用い、砥粒3の突出量tを変化させたワイヤーソー5を複数本製作し、同様の切断方法により切断速度の測定を行った。
【0049】
【表5】
Figure 2004322290
【0050】
以上の結果のように、材料非切断時の砥粒3の突出量tが5μm程度であって、これが、砥粒3の径の16.7%のときに最も良好な切断効率が得られた。突出量tをこれ以上にすると、砥粒3の脱落が増えるため、切断効率が低下した。以上2つの最適化により、非切断時の砥粒3の砥粒結合材2からの突出量tが砥粒3の径の1%〜30%のときに良好な切断効率が得られることが判明した。
【0051】
(本発明に係るワイヤーソーの製造方法)
以上説明したワイヤーソー5は図4に示した装置を用いて製造した。
まず、サプライボビン8に巻かれたワイヤー芯1はガイドローラ9を通して、キャプスタン10により引き出される。次に、必要に応じてダイスのような被覆手段11aによりワイヤー芯1に紫外線硬化型接着剤などの一次被覆を施し、紫外線照射装置や熱硬化炉のような樹脂硬化装置12aにより一次被覆層4が形成される。
【0052】
次に、ダイヤモンドからなる砥粒3とAlからなるフィラー及び砥粒保持材2となる紫外線硬化型樹脂を混合した混合溶液13をダイスのような被覆手段11bにより一次被覆層4の上に塗布し、紫外線照射装置や熱硬化炉のような樹脂硬化装置12bにより硬化させ、ワイヤーソー5が完成する。完成したワイヤーソー5は、レーザ外形測定器14により外形を測定された後、ガイドローラ15、ダンサローラ16を通して巻取りボビン17に巻き取られる。
【0053】
以上のようにワイヤー芯1としてはピアノ線を用いていたがこれに限られるものではなく、ガラス繊維、カーボン繊維といった無機化合物による高張力線、またはこれらの撚線を用いることもできる。さらに、砥粒保持材2のベース樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いていたが、硬度が材料切断時には軟化、材料非切断時には硬化するものであれば何でも適用できる。
【0054】
また、砥粒3としては、ダイヤモンドの他に、CBN(立方晶窒化ホウ素)、SiC(炭化珪素)等を用いることもでき、フィラーとしては、Alの他に、SiO、SiC等の無機粉末や、金属粉末を用いることも可能である。
【0055】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、砥粒結合材の軟化が始まる温度は50〜200℃であるため、材料切断時のワイヤーソーの温度と合致する。そのため、材料切断時においては、砥粒結合材が軟化し、砥粒が砥粒結合材から突出するようになり、材料の切断効率が向上する。また、材料非切断時の弾性率は500MPa以上と弾性率が適度に大きいため、砥粒が砥粒結合材に確実に保持され、その脱落を防ぐことができる。
【0056】
さらに材料非切断時の砥粒の砥粒結合材からの突出量が砥粒の径の1〜30%と適度に最適化されている。そのため、ワイヤーソーの切断効率と砥粒の脱落のし易さのトレードオフを解消することができる。
【0057】
請求項2の発明によれば、砥粒結合材が紫外線硬化型樹脂であるため、その硬度が材料切断時には低下する。そのため、材料切断時には砥粒が砥粒結合材から突出するようになり、材料の切断効率が向上する。また、紫外線硬化型樹脂の軟化・硬化の変化が熱可逆的であるため、材料非切断時には再び硬化し、砥粒が砥粒結合材に埋め込まれる。そのため、砥粒の脱落を防ぐことができる。
【0058】
請求項3の発明によれば、ワイヤ芯が一次被覆層により一次被覆されているため、材料切断時の砥粒の突出量を適切に保つことができ、切断効率が向上する。
【0059】
請求項4の発明によれば、一次被覆層が紫外線硬化型接着剤であるため、材料切断時には砥粒が一次被覆層に適度に食い込み、砥粒の突出量を適切に保つことができるとともに、材料切断時の砥粒の脱落を防ぐこともできる。
【0060】
請求項5の発明によれば、一次被覆層の厚さが1〜10μmと厚さが適度に最適化されている。そのため、材料切断時の砥粒の一次被覆層への食い込みを適切にすることができる。そのため、砥粒の突出量を適切に保つことができるとともに、材料切断時の砥粒の脱落を防ぐこともできる。また、一次被覆層とワイヤ芯との密着力が10N以上であるため、ワイヤ芯への密着が強固となり、切断効率を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るワイヤーソーの原理である。(a)は材料非切断時の状態、(b)は材料切断中の状態である。
【図2】本発明及び従来の技術に係るワイヤーソーの断面図である。
【図3】本発明に係るワイヤーソーの一次被覆層のワイヤー芯への密着力を測定するための器具である。
【図4】本発明に係るワイヤーソーを製造するための装置である。
【符号の説明】
1 ワイヤー芯
2 砥粒保持材
3 砥粒
4 一次被覆層
5 ワイヤーソー
6 材料
7 ジグ
8 サプライボビン
9 ガイドローラ
10 キャプスタン
11 被覆手段
12 樹脂硬化装置
13 混合溶液
14 レーザ外形測定器
15 ガイドローラ
16 ダンサローラ
17 巻取りボビン

Claims (5)

  1. ワイヤ芯の周囲に砥粒を含有してなる砥粒保持材が形成されたワイヤソーにおいて、前記砥粒保持材はガラス転移温度が50〜200℃かつ材料非切断時の弾性率が500MPa以上であって、材料非切断時の前記砥粒の前記砥粒保持材からの平均突出量が前記砥粒の平均粒径の1〜30%であることを特徴とするワイヤソー。
  2. 前記砥粒保持材のベース樹脂が紫外線硬化型樹脂であることを特徴とする請求項1記載のワイヤソー。
  3. 前記ワイヤ芯が一次被覆層により一次被覆されていることを特徴とする請求項1または2記載のワイヤソー。
  4. 前記一次被覆層が紫外線硬化型接着剤であることを特徴とする請求項3記載のワイヤソー。
  5. 前記一次被覆層と前記ワイヤ芯との密着力が10N以上であり、かつ、前記一次被覆層の厚さが1〜10μmであることを特徴とする請求項3または請求項4記載のワイヤソー。
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