JP2003107090A - 免疫クロマトグラフ用標識複合体組成物 - Google Patents

免疫クロマトグラフ用標識複合体組成物

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JP2003107090A
JP2003107090A JP2001302276A JP2001302276A JP2003107090A JP 2003107090 A JP2003107090 A JP 2003107090A JP 2001302276 A JP2001302276 A JP 2001302276A JP 2001302276 A JP2001302276 A JP 2001302276A JP 2003107090 A JP2003107090 A JP 2003107090A
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Koji Maruyama
幸治 丸山
Takeshi Saiga
健 雜賀
Shuji Senda
修治 千田
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Nitto Denko Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】広い範囲の被検物質量での被検物質の検出が確
実性を有する免疫クロマトグラフ用標識複合体組成物お
よびそれを用いた免疫クロマトグラフ法を提供するこ
と。 【解決手段】標識物質と被検物質に対する抗体とを有す
る標識複合体を2種以上含む標識複合体組成物であっ
て、各標識複合体における抗体の該被検物質に対する検
出感度が互いに異なることを特徴とする免疫クロマトグ
ラフ用標識複合体組成物、ならびに吸水性基材上に、被
検物質に対する抗体が固定化された固定相を有する試験
片を用いて、被検試料中における被検物質の有無を、下
記(a)と(b):(a)被検物質、(b)請求項1〜
4いずれかに記載の標識複合体組成物中の標識複合体、
との複合体の有無により検出することを特徴とする、免
疫クロマトグラフ法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、広範囲の量の被検
物質の検出において、高い確実性を有する免疫クロマト
グラフ用標識複合体組成物およびそれを用いた免疫クロ
マトグラフ法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、迅速かつ簡便に免疫化学的検査が
行なうことができる方法として、免疫クロマトグラフ法
が注目されている。当該方法は、例えば以下の工程を経
る。被検試料中に被検物質が存在する場合、試験片上に
被検物質と結合しうる特異的結合物質を固定化した固定
相に、該被検物質に特異的に結合しうる特異的結合物質
と標識物質とを有する標識複合体と該被検物質との複合
体が形成する。続いて固定相にて結合した標識物質を検
出することにより、被検試料中に被検物質の存在を確認
することができる。
【0003】しかしながら、被検物質が過剰に存在する
場合、標識複合体と該被検物質との複合体が形成された
後、得られた複合体同士が凝集塊となり、クロマト展開
が正常に行われない場合がある。通常、免疫クロマトグ
ラフ法にはリファレンスラインが設けられており、未反
応の標識複合体を捕捉することで試験が正常に行われた
ことを確認している。ところが、多くのクロマトキット
は未感作動物のイムノグロブリン標識体を用いテストの
成否を判定している。これは、実際の被検物質に対する
標識複合体が正常に展開していることの直接的な証拠と
はなりえないという問題を含んでいる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、広い範囲の
被検物質量での被検物質の検出が確実性を有する免疫ク
ロマトグラフ用標識複合体組成物およびそれを用いた免
疫クロマトグラフ法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の要旨
は、〔1〕標識物質と被検物質に対する抗体とを有する
標識複合体を2種以上含む標識複合体組成物であって、
各標識複合体における抗体の該被検物質に対する検出感
度が互いに異なることを特徴とする免疫クロマトグラフ
用標識複合体組成物、ならびに〔2〕吸水性基材上に、
被検物質に対する抗体が固定化された固定相を有する試
験片を用いて、被検試料中における被検物質の有無を、
下記(a)と(b): (a)被検物質、(b)前記〔1〕記載の標識複合体組
成物中の標識複合体、との複合体の有無により検出する
ことを特徴とする、免疫クロマトグラフ法、に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の免疫クロマトグラフ用標
識複合体組成物は、標識物質と被検物質に対する抗体と
を有する標識複合体を2種以上含む標識複合体組成物で
あって、各標識複合体における抗体の該被検物質に対す
る検出感度が互いに異なることに1つの特徴を有する。
本発明の標識複合体組成物を用いて免疫クロマトグラフ
法を行なうことにより、被検物質量が少なくても被検物
質の検出が可能であり、逆に被検物質量が多くても標識
複合体の展開が良好となるため、広い範囲の被検物質量
で高い確実性をもって被検物質の検出を行なうことがで
きる。
【0007】被検物質に対する抗体の最大の検出感度と
最小の検出感度の差は、免疫クロマト法による測定で、
好ましくは5〜5×104 倍の差であり、さらに好まし
くは50〜1×103 倍の差である。被検物質に対する
検出感度が異なる抗体は、例えば、以下のような方法に
て選択する。被検物質に対する抗体としてポリクローナ
ル抗体、または、モノクローナル抗体を通常行なわれて
いる方法によって数種類得る。それぞれの抗体を標識物
質と結合させ感度を測定しようとする抗体の標識複合体
を作製する。クロマト試験紙はニトロセルロース膜を用
いて常法に従い作製する。測定はサンドイッチ法を用い
試験紙側に被検物質に対する抗体(基準となる抗体)を
一定量塗布し検出ラインとする。このクロマト試験紙を
用いてサンプル滴下部及び吸水材などを配置した免疫ク
ロマトキットを作製する。このようにして作製した免疫
クロマトキットと標識複合体を用いて、被検物質の段階
希釈溶液(例えば10倍希釈系列)、すなわち標準溶液
を測定し、その結果としてそれぞれの抗体について被検
物質を検出可能な最小濃度を検出感度として求める。こ
のようにして検出感度の異なる抗体を選択できる。例え
ば、被検物質が大腸菌O157である場合、大腸菌O1
57を検出できる最小濃度の検体として、例えば104
個/mL含む検体から検出できる抗体の感度は104
/mLで、最小濃度が106 個/mL含む検体から検出
できる抗体の感度は106 個/mLと表示する。したが
って、この場合、2つの抗体の検出感度の差は100倍
の差があることになる。
【0008】被検物質に対する検出感度が異なる2種以
上の抗体は、異種動物由来であってもよく、同種動物由
来であってもよい。また、モノクローナル抗体およびポ
リクローナル抗体のいずれであってもよい。
【0009】被検物質に対する最大の検出感度を有する
抗体を含む標識複合体の含有率は、低濃度の被検物質を
高感度に検出することおよび結合しなかった標識複合体
がリファレンス相に達することができる観点から、標識
複合体組成物の30〜95重量%が好ましく、50〜8
0重量%がより好ましい。
【0010】被検物質に対する最小の検出感度を有する
抗体を含む標識複合体の含有率は、大過剰の被検物質が
存在した場合、凝集塊にとり込まれず、クロマト展開で
きる観点から、標識複合体組成物の5〜70重量%が好
ましく、20〜50重量%がより好ましい。
【0011】被検物質に対する検出感度の高い抗体を含
む標識複合体を用いることにより、低濃度の被検物質を
より高感度に検出できる。
【0012】また、被検物質に対する検出感度の低い抗
体を含む標識複合体を用いることにより、被検物質が大
過剰に存在する場合においても、検出感度の低い抗体を
含む標識複合体は凝集塊を形成することなく、クロマト
展開可能である。
【0013】本発明の免疫クロマトグラフ法により検出
されうる被検物質としては、免疫化学的反応(すなわち
抗原抗体反応)によりサンドイッチ免疫複合体を形成し
得るものであれば特に制限されない。例えば、大腸菌等
の細菌およびその構成成分、細菌が産生する毒素、タン
パク質、ウイルス抗原および抗体ならびにマイコプラズ
マ等の生物由来成分、および内分泌攪乱物質、農薬、医
薬品等の化学物質が挙げられる。
【0014】標識物質と抗体とを有する標識複合体にお
いて、前記標識物質としては、免疫測定分野で用いられ
る公知の物質、例えば、着色粒子、酵素、蛍光物質等が
挙げられる。なかでも目視判定が可能であり、測定装置
を必要としないという観点から、着色粒子および酵素が
より好ましい。
【0015】着色粒子としては、肉眼で色が検出可能な
ものであればよく、例えば、スダンブルー、スダンレッ
ドIV、スダンIII 、オイルオレンジ、キニザリングリー
ン等に代表される染料、顔料等で着色した着色水分散型
高分子粒子等が挙げられる。目視確認性の点からは、青
色、赤色、緑色またはオレンジ色に着色した着色水分散
型高分子粒子が好ましい。分散安定性や被検物質の検出
感度を調整し易い点から青色または赤色等に着色した着
色ラテックス粒子が望ましい。前記着色粒子の平均粒子
径は、発色の良好性の観点から、約0.01μm以上、
好ましくは0.05μm以上であり、着色粒子の僅かな
凝集に起因する吸水性基材の目詰まりを防ぐ観点から、
約3μm以下、好ましくは、約0.5μm以下であるこ
とが望ましい。具体的には、約0.01〜3μm、好ま
しくは、約0.05〜0.5μmの範囲であることが望
ましい。
【0016】酵素としては、例えば、ペルオキシダー
ゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファター
ゼ、グルコースオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、エステ
ラーゼ、β−D−グルクロニダーゼ等が挙げられる。よ
り高感度で安定な検出を達成することが可能なペルオキ
シダーゼまたはアルカリホスファターゼが好ましい。
【0017】また、蛍光物質としては、例えば、フルオ
レセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミン
イソチオシアネート等が挙げられる。
【0018】さらに、本発明においては、前記標識複合
体は、金属コロイド粒子または水分散型高分子粒子等を
担体とし、該担体に、標識物質(前記酵素または蛍光物
質)と抗体とが固定された複合体であってもよい。
【0019】標識複合体に用いられる担体としては、そ
の表面上に、抗体および標識物質を固定することができ
るものであればよく、金属コロイド粒子、水分散型高分
子粒子、シリコーン、シリカ、ガラスケイソウ土粒子等
が挙げられる。
【0020】金属コロイド粒子としては、金コロイド粒
子およびセレニウムコロイド粒子等が例示される。
【0021】水分散型高分子粒子としては、粒径コント
ロール、分散安定性、結合容易性の観点から、ラテック
ス粒子が好ましい。水分散型高分子粒子は、例えば、不
飽和二重結合を有する少なくとも1種の単量体の乳化重
合によって調製される。かかる単量体としては、例え
ば、エチレン、プロピレン等のオレフィン系単量体、酢
酸ビニル、塩化ビニル等のビニル系単量体、スチレン、
メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系単量
体、メタアクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル系
単量体、ブタジエン等のジエン系単量体等が挙げられ
る。
【0022】水分散型高分子粒子は、単量体の単独重合
体または共重合体に改質用単量体を共重合して得られた
重合体でもよい。このような改質用単量体としては、例
えば、アクリル酸、メタクリル酸、2,2,2−トリフ
ルオロエチルメチルメタクリレート等のフッ素化メタク
リル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリ
ル、アクリルアミド、スチレンスルホン酸ナトリウム、
スルホプロピル(メタ)アクリレートナトリウム塩、N
−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルアク
リレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリ
シジルメタクリレート等が挙げられる。
【0023】また本発明においては、担体は、市販され
ている種々の水分散性高分子粒子でもよい。市販されて
いる水分散性高分子粒子としては、例えば、スチレン−
ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブ
タジエン共重合体等の種々のスチレン共重合体からなる
エマルジョン等のスチレン含有物またはその誘導体を単
量体成分とする単独重合体や共重合体のエマルジョン;
(メタ)アクリル酸の長鎖アルキルエステルまたはその
誘導体を単量体成分とする単独重合体、該単量体成分と
(メタ)アクリル酸メチルや(メタ)アクリル酸エチ
ル、グリシジル(メタ)アクリレート等との共重合体;
前記したスチレンまたはその誘導体と、(メタ)アクリ
レートエステルやその誘導体との共重合体;ゴム、ナイ
ロン、ポリウレタン、微結晶質セルロース等が挙げられ
る。
【0024】個々の単量体の具体的な種類は、得られる
水分散型高分子粒子を担体として使用した抗体が、その
使用時や保存時に融着、凝集を起こさないように、前記
水分散型高分子粒子が所要のガラス転移点を有するよう
に選ばれる。水分散型高分子粒子のガラス転移点は、好
ましくは10℃以上、特に室温以上であることが望まし
い。
【0025】前記水分散型高分子粒子のうち、粒子の安
定性の点から、スチレン系単量体を主成分とする重合体
が好ましく、また、抗体および標識物質を固定するため
に、アクリル酸やメタクリル酸等のカルボキシル基を有
する単量体を共重合した高分子粒子が望ましい。
【0026】前記担体は、該担体表面への抗体および標
識物質の固定、スペーサーの導入または水分散状態での
安定性の向上の観点から、官能基を有していてもよい。
このような官能基としては、例えばカルボキシル基、水
酸基、グリシジル基、アミノ基、ホルミル基、カルバモ
イル基、イソチオシアナート基、アジドカルボニル基、
ヒドラジド基、酸無水物基等を挙げることができ、好ま
しくはカルボキシル基が導入される。これらの官能基を
有する担体を調製するには、単量体成分として、例え
ば、アクリル酸、メタクリル酸のようなカルボキシル基
を有する単量体、例えばヒドロキシエチルアクリレー
ト、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのような水酸
基を有する単量体、例えば、グリシジルメタクリレート
のようなグリシジル基を有する単量体を共重合させるこ
と、あるいは必要に応じて他の共重合性単量体と乳化共
重合させることによって、それぞれカルボキシル基、水
酸基およびグリシジル基を有する担体を得ることができ
る。また、所要の単量体成分を重合させた後、得られた
担体に官能基を導入することもできる。
【0027】担体の粒子径は、分散性、ならびに酵素、
抗体等の固定化量の調製を良好にする観点から、好まし
くは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下であり、
得られた標識複合体の精製の容易性の観点から、好まし
くは0.01μm以上、さらに好ましくは0.1μm以
上であることが望ましい。
【0028】担体に、抗体および標識物質を固定させる
方法としては、疎水結合(物理的吸着) 、イオン結合、
共有結合等が利用できる。安定性の観点から、共有結合
を介して結合させる際に、必要に応じて、抗体等の当該
水分散型高分子粒子上での自由度を高めるために、スペ
ーサー基を介在させることができる。
【0029】前記スペーサー基は、予め水分散型高分子
粒子に結合させた後、抗体および標識物質と結合させて
もよく、予め抗体および標識物質に結合させた後、これ
を水分散型高分子粒子に結合させてもよい。更に、必要
に応じて、水分散型高分子粒子、抗体および標識物質の
全てに予めスペーサー基を結合させ、これらを相互に結
合させることもできる。
【0030】スペーサー基として用い得る化合物は、少
なくとも二官能性の有機化合物であり、特に炭素数1〜
12の炭素鎖基を有する二官能性の有機化合物が好まし
い。このようなスペーサー基として機能する化合物とし
ては、特に限定されないが、例えば、へキサメチレンジ
アミン、ドデカメチレンジアミン、キシリレンジアミン
等のジアミン類、グリシン、β−アミノプロピオン酸、
γ−アミノ酪酸、ε−アミノカプロン酸、ε−アミノカ
プリル酸等のアミノアルキルカルボン酸、リジン、グル
タミン酸、β−アラニン、アルギニン、グリシルグリシ
ン等のアミノ酸類等が好ましい。
【0031】水分散型高分子粒子に直接またはスペーサ
ー基を介して抗体および標識物質を共有結合にて結合さ
せるための方法は、特に限定されず、慣用の方法が挙げ
られる。かかる方法としては、例えば、結合試薬として
水溶性カルボジイミドを用いる方法が挙げられる。具体
的には、例えば、アミノアルキルカルボン酸をスペーサ
ー基として用いる場合であれば、水溶性カルボジイミド
を用いて、抗体および標識物質を共有結合にて水分散型
高分子粒子に結合させることができる。
【0032】前記水溶性カルボジイミドとしては、例え
ば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)
カルボジイミド塩酸塩、1−シクロヘキシル−3−(2
−モルホリノエチル)カルボジイミド−メト−p−トル
エンスルホネート等が挙げられる。このような水溶性カ
ルボジイミドを用いて、スペーサー基を介するまたは直
接的な共有結合による、抗体および標識物質の水分散型
高分子粒子への結合は、慣用の方法および条件により行
なわれ得る。本発明において、抗体および標識物質の水
分散型高分子粒子への結合は、両者の結合を同時に行な
ってもよく、別々に行なってもよい。
【0033】このようにして得られた標識複合体に含ま
れる抗体および標識物質の総固定量は、担体の乾燥重量
1gあたり好ましくは5〜200mgであり、その量は
上記の範囲内で、使用する抗体、標識物質の種類等によ
って適宜変更し得る。例えば、担体が水分散型高分子粒
子の場合、当該粒子の表面積に鑑みると、前記総固定量
は、水分散型高分子粒子の乾燥重量1gあたり、好まし
くは200mg以下であり、さらに好ましくは150m
g以下であり、被検物質の検出の迅速性、感度、再現性
の観点から、好ましくは5mg以上であり、さらに好ま
しくは10mg以上であることが望ましい。
【0034】ここで、担体の「乾燥重量」とは、一定量
の担体を120℃で2時間乾燥した後の重量をいう。
【0035】免疫クロマトグラフ法とは、例えば、以下
のような工程を含む方法が挙げられる。すなわち、吸水
性基材上に、被検物質に対する抗体が固定化された固定
相を有する試験片の一端より、標識複合体組成物を含有
する溶液と、被検試料とを、別々にあるいはそれらを予
め混合して、試験片に滴下して展開する。被検試料中に
被検物質が存在する場合、形成された〔被検物質−標識
複合体〕からなる複合体は、固定相に固定化された抗体
と結合して固定相上に捕捉される。したがって、該固定
相に補足された〔被検物質−標識複合体〕からなる複合
体中の標識物質を測定することにより被検試料中の被検
物質を測定することができる。
【0036】被検試料としては、被検物質を含有する疑
いがある試料が挙げられる。具体的には、血液成分、
尿、唾液、汗、便等の生体由来成分、食品および培養液
等が挙げられる。また、前記被検試料は液体試料であっ
てもよく、固体試料であってもよい。固体試料の場合、
該固体試料を、例えば、緩衝液、生理的食塩水等の溶媒
に、溶解または希釈して得られた溶液として用いてもよ
い。
【0037】試験片に用いられる吸水性基材は、被検試
料を吸収できる基材、またはこれらを緩衝液によって希
釈した希釈液を吸収する基材であればよい。本発明にお
いては、被検試料中の被検物質と標識複合体中の抗体や
固定相の抗体との充分な反応を行なうための時間を確保
できるような吸水性基材が用いられる。好ましい具体例
としては、適度な吸水速度を有する観点から、例えば、
不織布、濾紙、ガラス繊維布、ガラスフィルター、ニト
ロセルロース、多孔質材料等が挙げられる。
【0038】吸水性基材の吸水性の程度は、5mm幅の
短冊状に裁断した吸水性基材の片端部に水を浸漬し、1
分間経過後の吸水距離が0.5〜5cmのものが好まし
い。親水性重合体を使用して吸水性基材の吸水性を調整
することもできる。
【0039】本発明において、吸水性基材の形状は、被
検試料を展開できる形状であれば特に限定されるもので
はなく、例えば、矩形のシート状(片状)やロッド状等
が好ましい。
【0040】前記試験片の固定相に用いられる、被検物
質に対する抗体は、前記標識複合体に用いられる抗体と
同じ抗体または同一抗原の別のエピトープを認識する抗
体を使用することができる。
【0041】固定相は、公知の物理吸着法、共有結合法
等により作製されうる。また、固定相に使用する抗体と
親水性重合体とを含む溶液を吸水性基材に塗布した後、
該親水性重合体を凝固させる凝固溶剤に浸漬することで
固定相を作製することもできる。親水性重合体として
は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニル
アルコール、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられ
る。凝固溶剤としては、アセトン、エタノール、メタノ
ール、エーテル等が挙げられる。
【0042】固定相は、被検試料の吸液によって展開し
移動してきた〔被検物質−標識複合体〕からなる複合体
を捕捉するために、吸水性基材上に抗体を0.005〜
5mg/cm2 塗布することが望ましい。
【0043】固定後の吸水性基材は、被検対象でないタ
ンパク質の基材への非特異的吸着の防止、展開の容易
性、固定した抗体の保存安定性の観点から、ブロッキン
グ剤、界面活性剤および糖を含有する溶液(処理液とい
う)で処理されることが好ましい。ここで、使用するブ
ロッキング剤としては、ウシ血清アルブミン、カゼイ
ン、ゼラチン、スキムミルク等が挙げられる。界面活性
剤としては、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェ
ニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウ
レート、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリ
ン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリ
ン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエ
ーテル等が挙げられる。前記処理液中のタンパク質の含
有量は、好ましくは0.1〜10重量%である。前記処
理液中の界面活性剤の含有量は、好ましくは0.01〜
1重量%である。前記処理液中の糖の含有量は0.1〜
10重量%である。
【0044】試験片には、固定相より下流側の吸水性基
材上に、標識複合体に含まれる抗体に特異的に結合しう
る物質が固定化されたリファレンス相を設けてもよい。
リファレンス相では、展開してきた標識複合体そのもの
を捕捉することができる。リファレンス相を設けること
により、免疫クロマトグラフ法による試験の成否を直接
的に判定することが可能となる。
【0045】なお、本明細書において、「下流」とは、
後述の被検試料受領部からみて固定相側を意味する。
【0046】リファレンス相に用いられる標識複合体に
含まれる抗体に特異的に結合しうる物質としては、例え
ば、標識複合体に含まれる抗体に対する抗体(抗IgG
抗体、抗Fc抗体等)、抗体結合性のあるプロテインA
およびプロテインG等が挙げられる。ここで、捕捉する
標識複合体は、検出感度の高い標識複合体と低い標識複
合体に用いられる抗体種が例えば同一動物由来のIgG
である場合、その動物のIgGに対する抗IgG抗体を
単独で用いることができる。また異種動物であれば、そ
れぞれの動物由来の抗体に対する抗IgG抗体を混合し
て用いることができる。このようにすれば、いずれの標
識複合体も捕捉できる。
【0047】リファレンス相は、固定相を作製する方法
と同様の方法より作製されうる。また、リファレンス相
は、被検試料等の吸液によって展開し移動してきた標識
複合体を捕捉するために、吸水性基材上に、標識複合体
に含まれる抗体に特異的に結合しうる物質を0.05〜
10μg/cm2 塗布することが望ましい。
【0048】本発明に用いられる吸水性基材には、被検
試料受領部(被検試料を供給するための部分) および標
識複合体受領部(標識複合体組成物を含有する溶液を供
給するための部分) を設けてもよい。標識物質に酵素を
用いる場合は、さらに発色基質溶液受領部(発色基質溶
液を供給するための部分)を設けてもよい。前記標識複
合体組成物を含有する溶液は、例えば、緩衝液等に標識
複合体組成物を溶解させることにより得ることができ
る。また、被検試料等に含まれる液体成分の接触により
前記標識複合体を展開できるように、該標識複合体を脱
離可能に試験片に保持させて、標識複合体相を設けても
よい。
【0049】また本発明に用いられる試験片において、
展開移動距離は、固定相での発色の均一性および発色感
度の観点から、0.5cm以上、好ましくは1cm以上
であり、固定相までの被検試料の到達性、発色感度およ
び測定時間の観点から、8cm以下、好ましくは6cm
以下となるように設定されていることが望ましい。
【0050】本発明の免疫クロマトグラフ法において
は、例えば、前記展開移動距離を得るように、標識複合
体受領部、被検試料受領部、固定相およびリファレンス
相を配置した試験片を用いることができる。
【0051】展開方法としては、例えば、吸水性基材の
一端側から、標識複合体組成物を含有する溶液および被
検試料等のそれぞれの溶液を加え、毛細管現象によって
自然展開させる方法が挙げられる。また、吸水性基材に
は固定相の下流側の末端に吸水パッドを設けてもよく、
これにより試験片を展開する液体成分を吸収するので展
開が容易に進行する。
【0052】本発明の被検物質の検出方法について、図
1を代表例として参照して説明する。被検試料受領部2
にピペット等を用いて被検試料を滴下し、標識複合体組
成物を含有する溶液を標識複合体受領部1に滴下する。
被検試料および標識複合体組成物を含有する溶液は、吸
水パッド5の方向に試験片上に展開していき、固定相3
を通過して、リファレンス相4へと移動する。被検試料
中に被検物質が存在する場合、形成された〔被検物質−
標識複合体〕からなる複合体は、固定相3に固定化され
た被検物質に対する抗体と結合して固定相3上に捕捉さ
れる。すなわち、固定相3で標識物質が検出された場
合、被検試料中に被検物質が存在することの指標とな
る。また、標識複合体の展開が正常である場合、固定相
3で捕捉されなかった残りの標識複合体は、リファレン
ス相4に固定化された標識複合体に含まれる抗体に特異
的に結合しうる物質と結合して、リファレンス相4に捕
捉される。すなわち、リファレンス相4で標識物質が検
出された場合、免疫クロマトグラフ法による試験におい
て正常なクロマト展開が行なわれたことの指標となる。
【0053】
【実施例】調製例1:標識複合体組成物の作製 1)着色ラテックス粒子懸濁液の作製 スチレンモノマー50gと、アクリル酸0.5gと、ト
リエチレングリコールメタクリレート0.2gと、蒸留
水440gとからなる混合液を、窒素ガス雰囲気下で7
5℃に維持し、攪拌しながら、重合開始剤としての過硫
酸カリウム0.25gを蒸留水10gに溶解した水溶液
を加え、10時間重合を行い、ポリスチレンラテックス
粒子(平均粒子径:0.2μm)を得た。得られたラテ
ックス粒子を緩衝液(0.01M−ホウ酸緩衝液、pH
8.2)に固形分濃度が10重量%になるように分散
し、ラテックス粒子分散液を得た。スダンブルー0.2
gをトルエン20ml に溶解し、これにドデシル硫酸ナ
トリウム0.2g、および蒸留水100mlを加え、超
音波分散機でこの混合液を乳化した。この乳化液に上記
ラテックス粒子分散液30mlを加え、室温で24時間
攪拌した。得られた液をエバポレータにてトルエンを除
去した後、緩衝液(0.01M−ホウ酸緩衝液、pH
8.2)にて遠心洗浄を行い、固形分濃度が5重量%に
なるように分散し、着色ラテックス粒子懸濁液を得た。
【0054】2)抗体の固定化 本実施例では、抗体としてヤギ抗E.coliO157:H7
ポリクローナル抗体を、前記1)で得られた着色ラテッ
クス粒子に以下のようにして固定した。抗体は、被検物
質である大腸菌O157に対する検出感度が互いに異な
る2種を使用して、抗体結合着色ラテックス粒子を2種
類作製した。
【0055】高感度抗体結合着色ラテックス粒子 前記1)で得られた着色ラテックス粒子懸濁液3ml
に、水溶性カルボジイミド〔同仁化学研究所製、1−エ
チル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイ
ミド塩酸塩、10mg/ml、0.01M−ホウ酸緩衝
液(pH8.2)〕0.5mlと、ヤギ抗E.coliO15
7:H7ポリクローナル抗体〔大腸菌O157に対する
免疫クロマト感度:104 cells/ml、Kirkegaard& Perry
Laboratories Inc. (KPL) 製、1mg/ml、0.01
M−ホウ酸緩衝液(pH8.2)〕2mlとを加えて、
10℃で3時間反応させた。次いで、得られた反応物に
ついて、洗浄液として0.01M−ホウ酸緩衝液(pH
8.2)を用いて遠心分離洗浄を行い、前記0.01M
−ホウ酸緩衝液で固形分濃度5重量%に調製し、高感度
抗体結合着色ラテックス粒子懸濁液を得た。
【0056】低感度抗体結合着色ラテックス粒子 前記1)で得られた着色ラテックス粒子懸濁液3ml
に、水溶性カルボジイミド〔同仁化学研究所製、1−エ
チル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイ
ミド塩酸塩、10mg/m1、0.01M−ホウ酸緩衝
液(pH8.2)〕0.5mlと、ヤギ抗E.coliO15
7:H7ポリクローナル抗体〔大腸菌O157に対する
免疫クロマト感度:106 cells/ml、イムノプローブ製、
1mg/ m1、0.01M−ホウ酸緩衝液(pH8.
2)〕2mlとを加えて、10℃で3時間反応させた。
次いで、得られた反応物について、洗浄液として0.0
1M−ホウ酸緩衝液(pH8.2)を用いて遠心分離洗
浄を行い、前記0.01M−ホウ酸緩衝液で固形分濃度
5重量%に調製し、低感度抗体結合着色ラテックス粒子
懸濁液を得た。
【0057】なお、上記抗体の大腸菌O157に対する
検出感度の差は、免疫クロマト法による測定で求めた。
高感度抗体と低感度抗体の大腸菌O157に対する検出
感度の差は、100倍の差であった。
【0058】3)標識複合体を含有する溶液 前記2)で得られた2種類の抗体結合着色ラテックス粒
子の懸濁液を、下記のように組み合わせて、それぞれ緩
衝液〔0.2M NH4 Cl、0.9重量%NaCl、
5重量%塩化コリン、1重量%サッカロース(pH8.
0)〕で0.01重量%となるように希釈して、標識複
合体A〜Cを含有する溶液を得た。
【0059】標識複合体A:高感度抗体結合着色ラテッ
クス粒子と低感度抗体結合着色ラテックス粒子を重量比
2:1で混合 標識複合体B:高感度抗体結合着色ラテックス粒子のみ 標識複合体C:低感度抗体結合着色ラテックス粒子のみ
【0060】調製例2:免疫クロマトグラフ用試験片の
作製 図1に示される模式図のニトロセルロースメンブレン
(ワットマン社製、孔径8μm、200μm厚、6×4
0mm)の一端から20mmの箇所にヤギ抗E.coliO1
57:H7ポリクローナル抗体〔1mg/ml、0.1
Mリン酸緩衝液(pH7.4)〕を1.5μL、ディス
ペンサーを用いてライン状(幅1mm)に塗布し、固定
相3を配置したメンブレンを得た。さらに、固定相3の
下流10mmの箇所にウサギ抗ヤギIgG ポリクローナル
抗体〔KPL製、1mg/m1、0.1M−リン酸緩衝
液(pH7.4)〕を1.5μL、ディスペンサーを用
いてライン状(幅1mm)に塗布し、リファレンス相4
を配置したメンブレンを得た。
【0061】得られたメンブレンをウシ血清アルブミン
(オリエンタル酵母社製、1重量%)と、ポリオキシエ
チレン(10)オクチルフェニルエーテル(和光純薬工
業社製、0.1重量%) と、サッカロース(和光純薬工
業社製、0.1重量%)とを含む水溶液中に10分間浸
漬し、40℃で2時間乾燥させた。次いで、得られたメ
ンブレンの裏側(抗体塗布面の反対側)にポリエステル
フィルム(100μm厚)をスプレー糊を用いて貼り合
せた。
【0062】ニトロセルロースメンブレンの上流端から
0〜7mmと9〜16mmの2箇所にポリエステル不織
布ハイボン4880C(富士繊維資材工業(株)製、6×7
mm、厚さ2.5mm)を貼り合せて、それぞれ標識複
合体受領部1および被検試料受領部2を作製した。さら
に、吸水パッド5としてガラス繊維製の吸水材(l0×
10mm、厚さ5mm)を、ニトロセルロースメンブレ
ンの下流端から5〜10mmの箇所から下流方向に貼り
合わせて試験片を作製した。得られた試験片を以下の検
出に用いた。
【0063】試験方法 図1の被検試料受領部2に被検試料50μLを滴下し、
次いで、標識複合体を含有する溶液100μLを標識複
合体受領部1に滴下した。15分後に、固定相3および
リファレンス相4での発色の有無を観察した。青色の発
色を陽性とした。
【0064】なお、判定基準は以下の通りである。 ++:非常に強い発色 +:強い発色 ±:弱い発色 −:発色なし
【0065】試験例1:大腸菌O157加熱処理菌の検
出 被検試料として、大腸菌O157(ATCC strain 35150
)加熱処理菌の10倍段階希釈系列を生理食塩水にて
調製したものを用いた。標識複合体を含有する溶液は、
調製例1の3)で得られたもののうち、それぞれ標識複
合体A(実施例1)、標識複合体B(比較例1)または
標識複合体C(比較例2)を使用した。上記試験方法に
より、固定相3およびリファレンス相4での発色の有無
を観察した。その結果を、表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】実施例1では、104 〜109 cells/mL
の広範囲で大腸菌O157が検出可能であり、全ての測
定範囲にわたってリファレンス相4の発色が明瞭であっ
た。比較例1では、104 cells/ mLから大腸菌O1
57が検出できた。しかし、108 cells/ mLでは固
定相3で発色が認められたが、リファレンス相4の発色
が認められず判定不能であった。さらに、109 cells/
mLでは固定相3、リファレンス相4ともに発色が認め
られず、判定不能であった。比較例2では、106 cell
s/mLになるまで大腸菌の測定はできなかった。このよ
うに、大腸菌O157に対する検出感度が異なる抗体を
有する2種類の標識複合体を使用すると、低濃度〜高濃
度の大腸菌O157検出が可能となる。また、リファレ
ンス相4の発色が全ての測定範囲にわたって明瞭になる
ため、被検試料が高濃度の大腸菌O157であっても、
被検物質である大腸菌O157に対する標識複合体の展
開性が直接的に確認でき、検査が正常に行なわれたとい
う確認ができる。
【0068】試験例2:大腸菌O157培養液からの大
腸菌O157の検出 被検試料として、大腸菌O157(ATCC strain 35150
、700375、700376、700377)をTSB培地にて培養し
て、得られた培養液を用いた。菌数は、得られた培養液
の希釈系列を作製し、ペトリフィルム(3M製)にて3
7℃、18時間培養し、コロニーを計数して求めた。標
識複合体を含有する溶液は、調製例1の3)で得られた
もののうち、標識複合体A(実施例2)または標識複合
体B(比較例3)を使用した。上記試験方法により、固
定相3およびリファレンス相4での発色の有無を観察し
た。その結果を、表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】実施例2では、全てのstrainにおいてリフ
ァレンス相4が強く発色し、検査が正常に行なわれたこ
とが確認された。一方、比較例3では、大腸菌O157
ATCC strain 35150、700376、700377においてリファレ
ンス相4の発色が認められず、検査が正常に行なわれた
という確認ができなかった。したがって、大腸菌O15
7に対する検出感度が異なる抗体を有する2種類の標識
複合体を使用することにより、リファレンス相4が強く
発色するようになり、検査が正常に行なわれたという確
認ができるようになることがわかる。
【0071】試験例3:食品培養液からの大腸菌O15
7の検出 大腸菌O157(ATCC strain 35150 、700375、70037
6、700377)をTSB培地で培養した。また、対照とし
て、大腸菌非接種のものを同条件でTSB培地で培養し
た。得られた培養液を生理食塩水にて希釈し、107
希釈液0.4mLを牛挽肉10gに添加して、ノボビオ
シン(20mg/L)含有mEC(日水製薬製)90m
Lを加えた。これをストマッカーでホモジナイズし、4
2℃、24時間静置培養したものを、被検試料として用
いた。標識複合体を含有する溶液は、調製例1の3)で
得られたもののうち、標識複合体A(実施例3)または
標識複合体B(比較例4)を使用した。上記試験方法に
より、固定相3およびリファレンス相4での発色の有無
を観察した。その結果を、表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】実施例3では、いずれのstrainを接種した
牛挽肉培養液においても固定相3が強く発色し、大腸菌
O157が存在することが示された。さらにリファレン
ス相4も発色し、検査が正常に行なわれたことが確認さ
れた。比較例4では、大腸菌O157 ATCC strain 351
50、700376、700377において、固定相3ではいずれも発
色が認められO157が検出されたが、リファレンス相
4の発色が認められず、検査が正常に行なわれたという
確認ができなかった。したがって、大腸菌O157に対
する検出感度が異なる抗体を有する2種類の標識複合体
を使用することにより、リファレンス相4の発色が確実
となり、検査が正常に行なわれたという確認ができるた
め、高濃度の大腸菌が存在した場合も不具合なく測定が
可能であることがわかる。
【0074】
【発明の効果】本発明の免疫クロマトグラフ用標識複合
体組成物を使用することにより、広い範囲の被検物質量
での確実性の高い免疫クロマトグラフ測定を行なうこと
が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の免疫クロマトグラフ用試験片
の1つの態様を示す模式図(平面図)である。
【符号の説明】
1 標識複合体受領部 2 被検試料受領部 3 固定相 4 リファレンス相 5 吸水パッド 6 吸水性基材
フロントページの続き (72)発明者 千田 修治 大阪府茨木市下穂積1−1−2 日東電工 株式会社内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 標識物質と被検物質に対する抗体とを有
    する標識複合体を2種以上含む標識複合体組成物であっ
    て、各標識複合体における抗体の該被検物質に対する検
    出感度が互いに異なることを特徴とする免疫クロマトグ
    ラフ用標識複合体組成物。
  2. 【請求項2】 最大の検出感度と最小の検出感度の差
    が、免疫クロマト法による測定で5〜5×104 倍の差
    である請求項1記載の標識複合体組成物。
  3. 【請求項3】 標識物質が、着色粒子または酵素である
    請求項1または2記載の標識複合体組成物。
  4. 【請求項4】 標識複合体が、金属コロイド粒子または
    水分散型高分子粒子に標識物質と抗体とを固定させたも
    のである請求項1〜3いずれかに記載の標識複合体組成
    物。
  5. 【請求項5】 吸水性基材上に、被検物質に対する抗体
    が固定化された固定相を有する試験片を用いて、被検試
    料中における被検物質の有無を、下記(a)と(b): (a)被検物質、(b)請求項1〜4いずれかに記載の
    標識複合体組成物中の標識複合体、との複合体の有無に
    より検出することを特徴とする、免疫クロマトグラフ
    法。
  6. 【請求項6】 試験片が、固定相より下流側の吸水性基
    材上に、標識複合体に含まれる抗体に特異的に結合しう
    る物質が固定化されたリファレンス相を有してなる、請
    求項5記載の免疫クロマトグラフ法。
  7. 【請求項7】 標識複合体組成物を含有する溶液を、試
    験片上に滴下して、被検試料に接触させるステップ、を
    含む請求項5または6記載の免疫クロマトグラフ法。
  8. 【請求項8】 試験片が、請求項1〜4いずれかに記載
    の2種以上の標識複合体を被検試料との接触により脱離
    可能に保持した標識複合体相を有するものである、請求
    項5または6記載の免疫クロマトグラフ法。
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