JP2003096005A - 高純度ランタンイソプロポキシドとその製造方法 - Google Patents

高純度ランタンイソプロポキシドとその製造方法

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JP2003096005A JP2001330005A JP2001330005A JP2003096005A JP 2003096005 A JP2003096005 A JP 2003096005A JP 2001330005 A JP2001330005 A JP 2001330005A JP 2001330005 A JP2001330005 A JP 2001330005A JP 2003096005 A JP2003096005 A JP 2003096005A
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    • C07CACYCLIC OR CARBOCYCLIC COMPOUNDS
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Abstract

(57)【要約】 【課題】不斉合成触媒用原料として、好適な真のLa
(OiPr)と、その製造方法を提供する。 【解決手段】無水塩化ランタンLaClとカリウムイ
ソプロポキシドK(OiPr)をイソプロパノールとト
ルエンとの混合溶媒中で、反応させ、次いで、イソプロ
パノールを留去して、溶媒を全てトルエンに置換し、次
いで静置し、デカンテーションと濾過により、透明濾液
を得、次いでこの濾液から溶媒を留去、加熱真空乾燥す
ると高純度La(OiPr)が収率77%で得られ
る。これは、La含量が計算値の97〜103%で、不
純物のKが0.3%以下、(Li+Na)が0.01%
以下、Clが0.2%以下で、会合度が5.5〜6.5
である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高純度ランタンイ
ソプロポキシドとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ランタンイソプロポキシドLa(OiC
(以下La(OiPr)と表す)は、不斉
合成用触媒の原料として、あるいは酸化ランタン含有の
微粒子や薄膜の原料として、有用である。La(OiP
r)と光学活性ビナフトール(以下BINOLと表
す)とナトリウムターシャリブトキシドとを反応させて
得られるLa−Na−BINOL触媒は、不斉マイケル
反応に有用であることが、柴崎らによって発明されてい
る(特開平8−291178号)。同様にLa−K−B
INOL触媒は、不斉ヒドロホスホニル反応に有用であ
り(特開平8−325281号)、La−Li−BIN
OL触媒は、不斉マンニッヒ反応に有用である(特開2
000−72727号)。またLa−BINOL触媒
は、不斉エポキシ化反応に有用である(特開平10−1
20668号)。その触媒性能は、La(OiPr)
の製法や物性により、影響されることが、経験的にわか
っているがその原因は究明されていない。そこでより高
い再現性を与える触媒の原料として、より良いLa(O
iPr)が求められている。
【0003】La(OiPr)の製造方法には以下の
方法が公知である。 LaCl+3Na(OiPr)=La(OiPr)
+3NaCl LaCl.3iPrOH+3nBuLi=La(O
iPr).3LiCl+nBuH La(OOCR)+3Na(OiPr)=La(O
iPr)+3Na(OOCR) La+3iPrOH=La(OiPr)+3/2H
【0004】の製法では、S.N.Misra,T.
N.Misra,R.N.Kapoor and R.
C.Mehrotra,Chemistry&Indu
stry,120(1963)が、沸騰イソプロパノー
ル中で、当量仕込みで反応するとLa(OiPr)
得られた。論文は、合成されたLa(OiPr)中の
不純物アルカリ金属やClの分析値については、なんら
言及していない。具体的な不純物アルカリ金属やClの
分析値が記載された文献は少なく、特開平6−1737
号にわずかにNaとClの値がある。の製法では、
A.Lebrun et al.Tetrahedro
n Letters,Vol.32,2355(199
1)は、LiClがLa(OiPr)に配位し、高純
度化しがたいことを記している。の製法の特公昭62
−6694では、La含量や不純物Na量が記載されて
いない。の直接法では、アルカリ金属やClの不純物
はない。L.M.Brownand K.S.Mazd
iyasni,Inorg.Chem.Vol.9,2
783(1970)には、HgCl触媒によるLaと
イソプロパノールとの直接合成法でLa(OiPr)
が合成できることが記載されているが、昇華データやL
a含量、収率などの具体的記述が記載されていない。他
の13種のランタノイドイソプロポキシドのデータは、
記載されているのであるが。生成したLa(OiPr)
は、La−O−La結合のあるLa(OiP
r)のような化合物が生成するためか、La含量がし
ばしば計算値より高くなることを本発明者らは確認し
た。比較例4のLa含量は、計算値の112%と高かっ
た。La金属表面の酸化皮膜が強い場合、誘導期が長
く、反応時間も長く必要となるので、生成物が変質し易
いと考えられる。また触媒としてHg塩を用いるので、
工業生産法としては好ましくない。
【0005】特開平6−1737号には、仕込みのNa
(OiPr)が過剰であると、過剰分は全量が生成物の
La(OiPr)と挙動を共にし、それは錯体化して
いるためかトルエンで何回再結晶しても分離できないと
記されている。そのためLaClは、トルエンに不溶
なので、LaClの方を少し過剰に用いることが、N
a分をなくすためと反応完結までの時間を短縮するため
に極めて効果的であると記されている。この場合Naは
ないが、Clが残ることになる。その場合ClはLa
(OiPr)17Clのような化合物として含まれてい
ると推定される。これは、R.A.Andersen
et al. Inorg.Chem.Vol.17,
1962(1978)が、Nd(OiPr)17Cl
の合成と同定をしてることからの本発明者らの推定であ
る。
【0006】また合成法や合成条件、精製法によりY
(OiPr)は、しばしばYO(OiPr)13
あったり、これらを含んでいることが、指摘されてお
り、O.Poncelet et al.Inorg.
Chem.Vol.28,263(1989)は、Y
O(OiPr)13の合成と同定をしている。同様なこ
とが、Ln(OiPr)(Lnはランタノイドを表
す)でもおこり、LnO(OiPr)13を一部含ん
でいたりすることが、指摘されている。
【0007】La(OiPr)系についての報告はな
いが、La含量が43.9wt%の計算値より高い場合
には、例えばLaO(OiPr)13のような化合物
を含んでいると推定される。この化合物はLa−O−i
PrのほかにLa−O−Laの結合を含んでいるのであ
る。すなわち純粋のLa(OiPr)とは、La(O
iPr)の会合体であり、[La(OiPr)
と表せるn量体からなるものであるはずである。La−
O−Laのオキシドを含まないことである。高純度La
(OiPr)とは、アルカリ金属やClやLa−O−
Laのオキシドを僅かしか含まないものである。しかし
今までに会合体のnを測定したり、構造解析した文献は
少なく、たとえあっても、信頼性に疑問がある。その主
原因は、測定した物質が、本来の[La(OiP
r)でなかったためと本発明者らは推測する。
【0008】N.I.Kozlova et al.K
oord.Khim.Vol.8,639(1982)
は、製造方法の直接合成法で得られたLa(OiP
r)結晶の質量分析の結果、最大のm/Zで最強のス
ペクトルがLa(OiPr)11であることよ
り、5量体すなわち[La(OiPr)と結論し
ている。しかしこの物質の融点は、120〜128℃で
あったとの記述からすると、本来のLa(OiPr)
でなかったと考えられる。本発明者らは、この物質はL
O(OiPr)13.niPrOH(n=2)であ
ったと推定する。イソプロパノールが配位していれば、
低融点であってもおかしくないし、La含量もこの仮説
からの計算値43.5%によく合う。
【0009】一方、S.N.Misra,T.N.Mi
sra,R.N.Kapoorand R.C.Meh
rotra,Chemistry&Industry
(London)120(1963)は、La(OiP
r)は250〜300℃/0.1Torrで昇華し、
ベンゼン中で単量体であるとしている。R.C.Meh
rotra and J.M.Batwara,Ino
rg.Chem.Vol.9,2505(1970)で
は、La(OiPr)の最低の昇華温度は250〜2
80℃/0.01Torrであった。しかし単量体であ
れば、分子量から推定して、容易に200℃以下で昇華
するはずなので、単量体であるという結果は信頼性がな
い。
【0010】D.C.Bradley,R.C.Meh
rotra and D.P.Gaur,”Metal
Alkoxides”(Academic Pres
s,1978)p104には、ランタノイドイソプロポ
キシドは、4量体の性質があるとして、構造を推定して
いる。しかしランタノイドでも元素によりイオン半径が
大きく異なり、配位数も違うから、La(OiPr)
も同じ性質とは言えないはずである。彼等は、La(O
iPr)を測定したり、考察しているのではない。以
上述べたように本来のLa(OiPr)の会合度や構
造は、はっきり決定されていない。ランタノイドの中で
も、La(OiPr)は、最も不明な化合物である。
【0011】La(OiPr)の合成文献でLa含量
を分析している例は少ない。特開平6−1737号の実
施例1では確かにLa含量は43.7wt%で計算値に
近いが、Naが2.3wt%を含むことから、Na(O
iPr)の分のOiPrを差し引くと高だかOiPr=
54.1−(59/23)×2.3=48.2wt%が
Laと結合していることになる。すなわち、 OiPrモル/Laモル=(48.2/59)/(4
3.7/138.9)=2.60 となり、計算値の3に比べてかなり小さい。Laの分析
精確度が±2%としてもかなりの計算値からのずれであ
る。この原因は、La−O−Laの結合をもつ化合物が
かなりの量不純物として含まれているためであると推定
される。逆にNaがなくClが0.4wt%の実施例4
では、 Clモル/Laモル=(0.4/35.45)/(4
4.1/138.9)=0.04 となり、La−Cl結合が4%もあることになる。特開
平6−1737号の実施例、比較例のうち、最も高純度
のLa(OiPr)は、La44.1%、Na記載な
し、Cl0.4%である。Na記載なしは、分析精確度
から推定するとNa<0.1%程度であろう。他の文献
でLa、Na、Clの3つの分析値が記載されているの
は、なかった。すなわち従来の最も高純度のLa(Oi
Pr)はLa44.1%、Na<0.1%、Cl0.
4%である。
【0012】Na(OiPr)の代わりにK(OiP
r)を用いたLa(OiPr)の合成反応の挙動や、
生成物のLa含量、K、Cl不純物量について言及して
いる文献は見当たらない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】La含量が計算値より
大きく、すなわちLa−O−La化合物を含んでいて、
NaやClの不純物量が多いLa(OiPr)は、単
純な[La(OiPr)で表される会合体でなく
なっていると考えられる。すなわちLaO(OiP
r)13やNa(OiPr)やLa(OiPr)17
Clなどの化合物が混入したり、複合化していると考え
られる。そのためこのようなLa(OiPr)は、B
INOLと正常に反応せず、このことが、不斉合成触媒
の性能を低下せしめていると推定する。よって、高い収
率、高いエナンチオマー過剰率を再現性よく反応させる
不斉合成触媒の原料であるLa(OiPr)は、La
含量が実質的に計算値であり、Na、Li、KやClを
極力含まないものがよいと本発明者らは考えた。La含
量が実質的に計算値であるとは、分析値の精確度を考慮
して計算値(すなわち43.9%)の97〜103%で
あることをいう。よって課題はこのような物性を有する
高純度La(OiPr)とその製造方法を提供するこ
とである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、LaCl
との反応剤として、Na(OiPr)の代わりに、K
(OiPr)を使用すると、以下の現象を見出し、発明
を完成させた。すなわち、反応時間が半減し、不純物の
アルカリ金属、Clが極めて低くでき、La含量が計算
値と一致するLa(OiPr)が再現性良くできるこ
と、トルエン溶媒に置換することにより、副生物はゼリ
ーとなって下層に固まるので、容易にLa(OiPr)
溶液を回収できることである。
【0015】本発明は、La含量が計算値の97〜10
3%で、不純物のKが0.3%以下、(Li+Na)が
0.01%以下、Clが0.2%以下であることを特徴
とする高純度ランタンイソプロポキシドである。本発明
は、ベンゼン凝固点降下法による分子量測定より得られ
る会合度が5.5〜6.5であることを特徴とする上記
の高純度ランタンイソプロポキシドである。本発明は、
無水塩化ランタンLaClとカリウムイソプロポキシ
ドK(OiPr)とを反応させランタンイソプロポキシ
ドLa(OiPr)を製造する方法において、イソプ
ロパノールとトルエンとの混合溶媒中で、反応させ、次
いで、イソプロパノールを留去して、溶媒を全てトルエ
ンに置換し、次いで静置し、デカンテーションと濾過に
より、透明濾液を得、次いでこの濾液から溶媒を留去、
加熱真空乾燥することを特徴とする高純度ランタンイソ
プロポキシドの製造方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明に用いるLaClは、無
水LaClで、不純物としてLaOClやLaC
.nHOを含まないものが良い。また反応速度を
大きくするために、できるだけ微粉であることが好まし
い。K(OiPr)は、脱水イソプロパノール中にKメ
タル塊を仕込み、室温から沸点で反応させることにより
容易に得られる。合成されたK(OiPr)をイソプロ
パノール溶液のまま使ってもよいし、一部イソプロパノ
ールを蒸発留去し、濃いK(OiPr)溶液として使っ
ても良い。
【0017】本発明の反応溶媒は、イソプロパノールと
トルエンの混合溶媒である。比較例でわかるように、純
イソプロパノールでは、副反応が多くなり、収率が低下
し、好ましくない。純トルエンでは反応速度が低下して
好ましくない。溶媒のイソプロパノールとトルエンの混
合比率は、どちらも実質的に存在する量であることが必
要で、好ましくは、およそ3:7〜7:3の範囲であ
る。
【0018】K(OiPr)のイソプロパノールとトル
エンの混合溶媒溶液中にLaCl粉末を一度に仕込
み、攪拌下、リフラックス状態で5〜50時間反応させ
る。仕込みのK(OiPr)/LaClのモル比は、
当量の3付近が好ましい。反応の進行につれ、LaCl
粉末が消失し、より微粒子の懸濁液となる。生成した
La(OiPr)はイソプロパノールとトルエンの混
合溶媒に溶解している。反応途中で攪拌を止め、静置す
ると、無色透明の上澄み層と白色懸濁液の下層に容易に
分かれる。上澄み層をサンプリングし、その10倍容量
の水で加水分解し、水相のpHを測定することにより、
おおよその反応終点を知ることができる。このpHが約
10.5以下となれば、反応率99.8%以上と計算さ
れるので、次の溶媒置換の工程に移る。
【0019】溶媒置換工程では、反応液のイソプロパノ
ール部分を全てトルエンに置換する。生成したLa(O
iPr)はトルエンに大半が溶解し、副生物のKCl
やLax(OiPr)Clはゲルを形成し、静置する
と、下層にゼリーとなって固まる。そのため副生物の分
離が容易になり、上澄みトルエン層の純度が上がる。本
発明者らは、この現象を初めて見出し、本発明に利用し
た。トルエンの置換をしない場合は、未反応のK(Oi
Pr)や副生物のLa(OiPr)Clなども溶媒
に溶け込み、濾過での分離が難しく、La(OiPr)
の純度が低下する。溶媒置換の方法はいろいろある
が、加熱攪拌して混合溶媒の数分の1を留去し、トルエ
ンをその量加え、また加熱攪拌し、ほぼ同量を留去す
る。この操作を数回繰り返すことにより、溶媒の全てを
トルエンに置換できる。イソプロパノールとトルエンは
58wt%:42wt%の組成で、80.6℃で共沸す
るので、トルエンへの置換は容易である。留出温度がト
ルエンの沸点になったら、もう1回置換操作をすれば、
置換は完全である。
【0020】トルエンに置換後、加熱攪拌し、静置し、
液温を室温に下げる。0.5〜12時間の静置で、60
〜80容量%の無色透明の上澄み層と沈殿粒子を含んだ
白色ゼリーの下層に分離する。この上澄み層をデカンテ
ーションで濾過器に移し、僅かに含まれる微粒子を濾過
する。ここでいうデカンテーションとは、上澄み層を白
色ゼリー層から分離する操作一般を言い、容器の傾斜に
よる方法、上澄み層へ挿入した管からの吸い上げによる
方法などがある。白色ゼリー層は、デカンテーションの
際、上澄み層に混入することがない程度に強固にゼリー
になっているので、分離は非常に容易である。静置工程
を経ない場合は、ゼリー状とならず、濾過効率が下が
り、不純物の混入が増すので好ましくない。
【0021】このような上澄み層と白色ゼリー層のはっ
きりした分離現象と強固なゼリー層の生成は、K(Oi
Pr)を使った場合にのみおこることを本発明者らは初
めて見つけ発明に利用した。この現象は、先行する文献
にはまったく記載されていない。Na(OiPr)の場
合には、強固なゼリー層を作らない。実施例1の白色ゼ
リー層を回収し、加熱真空乾燥後分析すると、K40
%、Cl>30%、La4.0%であり、白色ゼリー層
は主にKCl、La(OiPr)Clから形成さ
れていると考えられる。このことが上澄み層にKCl、
La(OiPr)Clをなくし、ひいては生成物
のLa(OiPr)の中のKとClを少なくしている
のである。
【0022】濾過工程に使用する濾紙は、東洋濾紙製N
o.131(保留粒子径3μm)程度、あるいはそれよ
り細かいのがよく、濾過時間はほとんど瞬間である。次
いで、濾液を常圧または減圧下で加熱し、トルエン溶媒
を留去し、最後に1Torr、100〜1200℃で1
〜24時間の真空乾燥を行うと、白色のLa(OiP
r)が得られる。
【0023】最初に形成された白色ゼリー層中のトルエ
ンには、主生成物のLa(OiPr)がまだ溶解して
いるので、2番晶として、回収することができる。ゼリ
ー層にトルエンを添加し、加熱攪拌すると、ゼリー層は
液中に再分散する。次いで静置すると、上澄みトルエン
層と白色ゼリーの下層に分離する。この上澄みトルエン
層から1番晶と同様にして回収すればよい。得られたL
a(OiPr)は1番晶と同様に高純度である。2番
晶を回収することにより、収率は10〜20%向上す
る。
【0024】回収したLa(OiPr)を分析した。
分析手法は、La(OiPr)を濃硝酸で分解し、蒸
発乾固後、硝酸に溶解し、希釈してICP−AES、原
子吸光の定量分析をすることにより、La、K、Na、
Li量を求めた。La含量の精確度は±2%程度であっ
た。Clは、希硫酸で分解し、電位差滴定により求め
た。本発明のLa(OiPr)のLa含量は、計算値
の97〜103%で、K<0.3%、(Li+Na)<
0.01%、Cl<0.2%であった。この結果、Kが
すべてK(OiPr)で存在すると仮定しても、 K(OiPr)/La(OiPr)<(0.3/3
9.1)/(43.9/138.9)=0.024 すなわち97.6モル%がLa(OiPr)で高純度
であることがわかる。なおLa(OiPr)のトルエ
ン溶液のまま使える用途には、トルエンを留去せずに、
使うことも可能である。
【0025】本発明のLa(OiPr)の会合度を知
るために、ベンゼン凝固点降下法による分子量の測定を
行った。ここで会合度とは、得られた分子量をLa(O
iPr)の式量である316.18で割った値であ
る。実施例1で得られたLa(OiPr)1.818
5gをベンゼン20.8gに溶解し、凝固点降下を測定
した結果、0.237℃であった。この結果より分子量
は、1890である。よって会合度は1890/31
6.18=5.98である。さらに、実施例1の8倍の
スケールで合成したLa(OiPr)3.0886g
をベンゼン20.0gに溶解し凝固点降下を測定した結
果0.396℃であった。この結果より分子量は199
7である。よって会合度は1997/316.18=
6.32である。この2つの結果と実験精度を考慮する
と、5.5〜6.5が会合度である。よって本発明のL
a(OiPr)は[La(OiPr)と表さ
れ、La(OiPr)の6量体が主であると結論され
る。
【0026】本発明のLa(OiPr)の溶媒に対す
る溶解度を調べた。その結果は、25℃で溶媒1Lに対
して、トルエンには450g、ヘキサンには390g、
THFには500g、イソプロパノールには60gであ
った。トルエン、ヘキサン、THFに非常によく溶解
し、イソプロパノールにはわずかしか溶解しないという
特徴があった。本発明のLa(OiPr)の融点や揮
発性について調べた。室温から250℃までの間では融
点はなかった。0.5Torrで昇華を試みたが、25
0℃で一部昇華したが、熱分解が始まり昇華しなかった
ものが多かった。
【0027】本発明のLa(OiPr)を用いて作っ
た不斉合成触媒は、不斉合成反応において、高い収率と
高いエナンチオマー過剰率を、再現性よく与える。一方
La含量が計算値よりかなり大きくなることがある他の
製法の、例えば、La金属からのLa(OiPr)
は、触媒性能にふれがある。
【0028】以下実施例により、本発明をさらに具体的
に説明する。
【0029】
【実施例1】攪拌子、リフラックスコンデンサー、仕込
み口を有する100ml三口フラスコを、真空アルゴン
置換し、脱水イソプロパノール50mlを仕込み、Kメ
タル塊3.0g(77mmol)を添加した。室温から
徐々に反応し最後50℃で、加熱1時間すると、Kは反
応しつくし、全量がK(OiPr)に変化した。次いで
イソプロパノール22mlを常圧留去し、脱水トルエン
33mlを仕込んだ。混合溶媒の比率はイソプロパノー
ル:トルエン=22ml:33ml=0.4:0.6で
あった。さらに無水LaCl6.3g(26mmo
l)を仕込み、懸濁液を加熱攪拌し、リフラックス状態
に24時間保った。その後、静置、冷却すると、透明上
澄み層と白色懸濁層に分離した。上澄み層0.5mlを
サンプリングし、5mlのイオン交換水で加水分解し、
その水相のPHを測定したところ10.46であったの
で、99.8%程度の反応率と推定した。
【0030】次いで、常圧で溶媒28mlを留去し、ト
ルエン28mlを仕込み、2回目の溶媒28mlを留去
し、トルエン28mlを仕込み、3回目の溶媒28ml
を留去し、トルエン28mlを仕込み、0.5時間加熱
攪拌し、静置し、冷却した。1時間後には、無色透明な
上澄み層と沈殿粒子を含んだ白色ゼリー層が形成され
た。上澄み層をデカンテーションし、東洋濾紙No.1
31の濾紙で濾過し、無色透明の濾液48mlを回収し
た。この濾液から、減圧加熱で溶媒を留去し、最後に1
Torr、100℃、1時間で真空乾燥し、白色固体
5.3gを得た。この1番晶は、La(OiPr)
して17mmolで、収率65%であった。この1番晶
の分析結果は、La含量43.1%(計算値の98.2
%)、K0.15%、Cl 0.17%、Li<10p
pm、Na<10ppm、Ca20ppm、Al<8p
pm、Cr<3ppm、Cu<3ppm、Fe<3pp
m、Mg<1ppm、Mn<1ppm、Zn 5ppm
と高純度であった。
【0031】白色ゼリー層にトルエン50mlを添加
し、加熱攪拌し、静置すると、1回目と同じように無色
透明な上澄み層と白色ゼリー層に分離した。1回目と同
様な操作をし、2番晶La(OiPr)1.0gを得
た。La(OiPr)として3mmolで、収率12
%に相当する。この2番晶の分析結果は、La含量4
4.0%、K0.18%、Cl0.19%であった。
【0032】この白色ゼリー層の最下部には沈殿粒子が
あるので、これを除いた白色半透明ゼリー層の約50
%、5.5gを回収し、減圧加熱下で、溶媒を留去し、
最後に1Torr、100℃、1時間で真空乾燥し、白
色固体2.0gを得た。この分析結果は、La4.0
%、K40%、Cl>30%であった。またこの中の塩
基量を知るべく、加水分解してPHを測定した結果、K
(OiPr)は無視できる量しかなかった。すなわち白
色ゼリー層中の沈殿粒子は、KCl約2.7gあり、ゼ
リーは、主にKClと少量のLa(OiPr)あるい
はLa(OiPr)17Cl様のものと考えられる。
【0033】
【実施例2】実施例1において、反応時間を24時間か
ら36時間に代えた他は、実施例1と同じように行っ
た。上澄み層の濾過液から得られた1番晶La(OiP
r)は4.4gでその収率は54%であった。La
(OiPr)の分析結果は、La44.7%、K0.
16%、(Li+Na)<0.01%、Cl0.04%
であった。高純度のLa(OiPr)ではあったが、
収率は、実施例1より低かった。この原因は反応時間が
長すぎて、副反応が多くなったものと推定される。
【0034】
【比較例1】実施例1において、混合溶媒の代わりに、
純イソプロパノール溶液を用いた他は、実施例1と同じ
ように行った。濾過液から得られた1番晶La(OiP
r)は3.4gでその収率は42%であった。La
(OiPr)の分析結果は、La45.2%、K0.
40%、(Li+Na)<0.01%、Cl0.02%
であった。実施例1に比較して、低収率であり、Kが多
かった。
【0035】
【比較例2】実施例1において、トルエンへの溶媒置換
を行わなかった他は、実施例1と同じように行った。下
層はゆるい沈殿物であり、ゼリー状には固まらなかっ
た。上澄み層の濾過は実施例1に比してはるかに遅かっ
た。濾液から得られた1番晶La(OiPr)は5.
4gでその収率は67%であった。La(OiPr)
の分析結果は、La43.4%、K0.80%、(Li
+Na)<0.01%、Cl0.27%であり、高純度
のLa(OiPr)ではなかった。
【0036】
【比較例3】実施例1において、Kの代わりに、Na
1.8g(78mmol)を用いた他は、実施例1と同
じように行った。白色のゼリー層は形成されず、柔らか
い沈殿層であった。1番晶La(OiPr)は4.6
gでその収率は57%であった。La(OiPr)
分析結果は、La44.0%、Na1.97%、(Li
+K)<0.01%、Cl0.28%であり、高純度の
La(OiPr)ではなかった。
【0037】
【比較例4】攪拌子、リフラックスコンデンサー、仕込
み口を有する100ml三口フラスコを、真空アルゴン
置換し、脱水イソプロパノール40mlとトルエン40
mlを仕込み、次いで、La切削片3.0g、塩化水銀
HgCl0.03gを仕込んだ。昇温し、リフラック
ス下で、24時間保った。最初の10時間程度は、反応
は全く開始しなかった。その後、反応を開始し、副生物
の水素ガスが発生し、Laの大半が反応した。冷却後、
そのまま濾過し、溶媒を減圧加熱留去した。次いで、乾
固した残留物にトルエン55mlを加え加熱攪拌し、静
置、冷却すると、透明な上澄み層と白色懸濁した下層に
分かれた。透明層をデカンテーションで回収し、減圧加
熱でトルエンを留去し、次いで加熱真空乾燥し、淡黄色
の固体2.9gを得た。La(OiPr)として収率
42%であった。このLa(OiPr)を分析した結
果、La含量49.2%、(Na+K+Li)<0.0
1%、Cl<0.1%であった。La含量は計算値の1
12%と大きかったことにより、La−O−Laの化合
物がかなり含まれている。会合度の測定結果は、8.1
であった。白色懸濁した下層には、トルエンに溶けない
La−O−Laを含んだLa(OiPr)のよ
うな化合物が多く含まれていたと推定する。更にLa切
削片の3つの異なるロットについて同様な反応を行っ
た。反応開始までの時間がロットにより大きく異なり、
発生ガスを目安にある程度の反応させる時間は、7時間
から32時間と大きく異なった。収率は、23%〜51
%とふれ、得られたLa(OiPr)のLa含量は4
5.4%〜51.7%とふれた。
【0038】
【発明の効果】不斉合成触媒用原料として好適な真のL
a(OiPr)が、再現性良く製造できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 久保島 義則 東京都西多摩郡瑞穂町箱根ケ崎708−79 (72)発明者 松本 浩 埼玉県上尾市平方534番地 Fターム(参考) 4H006 AA01 AA02 AB82 AB84 AC41 AD17 BB11 BB14 BD60 FE10 FE71 FE74

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】La含量が計算値の97〜103%で、不
    純物のKが0.3%以下、(Li+Na)が0.01%
    以下、Clが0.2%以下であることを特徴とする高純
    度ランタンイソプロポキシド。
  2. 【請求項2】ベンゼン凝固点降下法による分子量測定よ
    り得られる会合度が5.5〜6.5であることを特徴と
    する請求項1記載の高純度ランタンイソプロポキシド。
  3. 【請求項3】無水塩化ランタンLaClとカリウムイ
    ソプロポキシドK(OiPr)とを反応させランタンイ
    ソプロポキシドLa(OiPr)を製造する方法にお
    いて、イソプロパノールとトルエンとの混合溶媒中で、
    反応させ、次いで、イソプロパノールを留去して、溶媒
    を全てトルエンに置換し、次いで静置し、デカンテーシ
    ョンと濾過により、透明濾液を得、次いでこの濾液から
    溶媒を留去、加熱真空乾燥することを特徴とする高純度
    ランタンイソプロポキシドの製造方法。
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