JP2003073745A

JP2003073745A - ステンレス鋼板の焼鈍炉用ハースロール

Info

Publication number: JP2003073745A
Application number: JP2001264042A
Authority: JP
Inventors: Motoki Imamura; 元己今村; Yasuhiro Wada; 泰博和田
Original assignee: Kawasaki Steel Corp
Current assignee: JFE Steel Corp
Priority date: 2001-08-31
Filing date: 2001-08-31
Publication date: 2003-03-12

Abstract

(57)【要約】【課題】本発明は、遠心鋳造で製作しても、酸化スケー
ルのピックアップを起こし難く、従来より安価で且つ寿
命が長いステンレス鋼板の焼鈍炉用ハースロールを提供
することを目的としている。【解決手段】内部を水冷構造としたロール軸体と、該ロ
ール軸体の周囲にハブ材で隙間を形成させて環装したス
リーブとを備えたステンレス鋼の焼鈍炉用ハースロール
において、前記スリーブを、Ｎｉ：３０〜５１質量％、
Ｃｒ：２０〜３１質量％含有し、残部：不可避不純物元
素及びＦｅからなる耐熱合金鋼の遠心鋳造品で形成し
た。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ステンレス鋼板の
焼鈍炉用ハースロールに関する。

【０００２】

【従来の技術】ステンレス鋼板の製造では、圧延終了後
の鋼帯に焼鈍を施すのが一般的である。その際、横型の
焼鈍炉が用いられ、その内部に設けたハースロールと称
されるロールで鋼帯を連続的に移動させながら焼鈍を行
っている。

【０００３】ところで、そのハースロールは、炉内雰囲
気の温度が１０００℃にも達するので、耐熱性に優れて
いることが必要である。そのため、この種のハースロー
ルは、従来、天然のアスベスト繊維の持つ特性を生かし
て、アスベスト繊維をゴム状バインダを用いてシート状
に成形して金属製ロール芯材の表面に積層したり、ある
いは溶射して製造することで、耐熱性を確保していた。
しかしながら、アスベスト繊維の利用では、高温使用時
の体積収縮でロール表面にクラックが多発し、搬送する
ステンレス鋼帯に転写して製品に疵を生じさせたり、金
属製ロール芯材との熱膨張率の差に起因して、アスベス
ト繊維が剥がれてしまうという問題があった。また、近
年は、これらの問題を解消するための改良が加えられた
アスベスト繊維を利用したロールが使用されるようにな
ったが、それでもハースロール表面のアスベストの摩耗
により、寿命が２週間程度と短く、定期的なハースロー
ル交換でライン停止が必要になったり、アスベストをハ
ースロールに再度ライニングするコストが高い等の問題
を生じている。さらに、ハースロールを製造する工程の
他、使用炉からアスベストが飛散する問題があるため、
環境保全上も問題がある。そこで、近年は、アスベスト
繊維を利用しないハースロールの研究開発が盛んにな
り、実用化されているものも多い。

【０００４】例えば、特開平２−１６３３４９号公報
は、約８００〜１０００℃の高温で使用され、且つ高温
強度を要求されるハースロールに適した材料として、
「Ｃ：０．３〜０．５％，Ｃｒ：２０〜２４％，Ｎｉ：
１３〜１７％，Ｎｂ：１〜１．５％，Ｔｉ：０．５％以
下、残部実質的にＦｅからなり、（Ｔｉ＋Ｎｂ）／Ｃの
原子比は０．４〜０．７である耐熱合金」を提案してい
る。また、本出願人は、特開平１−１４７０１７号公報
で、ロール表面ヘ金属系セラミックを溶射し、１０００
℃以上の高温にも耐える珪素鋼板熱処理用ハースロール
を開示している。それは、図２に示すように、「内部水
冷構造を有するロール軸体１に、スリーブ２が、ハブ材
３を介してロール軸体周囲との間に隙間４をもって環装
されており、前記スリーブ２は、耐熱鋼製スリーブ基体
７の外周面に、炭化物系セラミックス粒子と耐熱合金マ
トリックスとからなる溶接肉盛り層８が形成されている
２層積層構造を有し、該スリーブ２の内周面とロール軸
体１の外周面との間の隙間４に断熱材５が充填されてい
る」ものであった。なお、この場合、耐熱鋼製のスリー
ブ２としては、Ｃｒ−Ｎｉ系耐熱鋼（Ｃｒ：２７％，Ｎ
ｉ：４８．５％，Ｃ：０．４５％，Ｓｉ：０．９８％，
Ｍｎ：１％，Ｗ：５％，残部Ｆｅ）を、肉盛層の耐熱合
金マトリックスとしては、Ｃｒ−Ｎｉ−Ｗ系耐熱鋼（Ｃ
ｒ：２５〜３０％，Ｎｉ：４５〜５０％，Ｗ：４〜６
％，Ｃ：０．４〜０．６％，Ｓｉ：０．５〜２％，Ｍ
ｎ：０．５〜２％，残部実質的にＦｅ）を例示してい
る。また、このハースロールによれば、スリーブ表面の
酸化損傷や被熱処理材の表面酸化で生じたスケールが、
該スリーブの表面に融着する「ピックアップあるいはビ
ルドアップ」と称される現象の起きることが少なくな
り、製品の表面品質の確保にも有効であった。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
２−１６３３４９号公報記載の耐熱合金を遠心鋳造し
て、ステンレス鋼焼鈍炉のハースロールのスリーブ（遠
心鋳造品）を製造し、使用したところ、実際には９００
℃までしか耐えず、寿命の点で問題があった。また、特
開平１−１４７０１７号公報記載のハースロールは、耐
熱性については問題ないが、高価な耐熱合金鋼に加え、
さらに高価なセラミックスを混合し、作業時間の長い肉
盛溶接を行うので、珪素鋼に比べて低温で焼鈍されるス
テンレス鋼にとっては製作費がかかり過ぎ、費用対効果
の比較問題がある。また、鋼帯の温度が９５０℃以上の
領域において、肉盛り層のロール軸体への密着性に問題
があり、必ずしも安定して使用できるとは限らなかっ
た。

【０００６】本発明は、かかる事情に鑑み、遠心鋳造で
製作しても、酸化スケールのピックアップを起こし難
く、従来より安価で且つ寿命が長いステンレス鋼板の焼
鈍炉用ハースロールを提供することを目的としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】発明者は、上記目的を達
成するため、ステンレス鋼の高温連続焼鈍に使用するハ
ースロールの素材について鋭意研究を重ね、その成果を
本発明に具現化した。

【０００８】すなわち、本発明は、内部を水冷構造とし
たロール軸体と、該ロール軸体の周囲にハブ材で隙間を
形成させて環装したスリーブとを備えたハースロールに
おいて、前記スリーブを、Ｎｉ：３０〜５１質量％、Ｃ
ｒ：２０〜３１質量％を含有し、残部：不可避不純物元
素及びＦｅからなる耐熱合金鋼の遠心鋳造品で形成して
なることを特徴とするステンレス鋼板の焼鈍炉用ハース
ロールである。

【０００９】この場合、前記耐熱合金鋼が、さらにＷ，
Ｃｏ及びＭｏから選ばれた１種又は２種以上を１〜１８
質量％であり、かつ合計で１〜２２質量％含有すると好
ましい。また、前記隙間に断熱材を充填すると一層好ま
しい。

【００１０】本発明では、ハースロールのスリーブに適
切な組成の金属材料を遠心鋳造で製作するようにしたの
で、酸化スケールのピックアップを起こし難く、従来よ
り安価で且つ寿命が長いステンレス鋼板の焼鈍炉用ハー
スロールを提供できるようになる。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の
実施の形態を説明する。

【００１２】まず、本発明の対象にするハースロールの
構造は、特開平１−１４７０１７号公報に開示されたも
のと類似している。すなわち、図１に示すように、内部
水冷構造を有するロール軸体１に、スリーブ２が、ハブ
材３を介してロール軸体周囲との間に隙間４をもって環
装されている。ただし、前記特開平１−１４７０１７号
公報で開示されたものと異なる点は、本発明では、スリ
ーブ２が遠心鋳造で製作した一体品であり、その表面に
高価な炭化物及び耐熱合金の混合粉末を肉盛り溶接して
いないことである。また、該スリーブ２の内周面とロー
ル軸体１の外周面との間の隙間４には、断熱材５が充填
されていても良いし、充填されていなくても良い。

【００１３】次に、発明者は、従来技術のように、酸化
スケールのピックアップを起こし難いハースロールにす
るため、その材質について検討した。その結果、材質的
にはやはりＣｒ−Ｎｉ系耐熱合金が優れていることがわ
かったので、ＣｒやＮｉの適切な含有量について再検討
を行い、本発明を完成させたものである。

【００１４】つまり、本発明は、図１に示した内部冷却
構造のロール軸体１に、Ｎｉ：３０〜５１質量％、Ｃ
ｒ：２０〜３１質量％、残部：不可避不純物元素及びＦ
ｅからなる耐熱合金鋼の遠心鋳造品で形成したスリーブ
２を、ハブ材３で該軸体１の周囲に隙間４が生ずるよう
に取り付けたものである。ここで、Ｎｉを３０〜５１質
量％に限定したのは、３０質量％未満では、高温強度不
足のため、５１質量％超えでは耐高温酸化性不足のた
め、不都合だからである。また、Ｃｒを２０〜３１質量
％に限定したのは、２０質量％未満では、耐高温酸化性
不足のため、３１質量％超えでは高温強度不足のため、
不都合だからである。

【００１５】さらに、本発明では、上記したＮｉやＣｒ
の他に、Ｗ，Ｃｏ及びＭｏから選ばれる１種又は２種以
上を、１〜１８質量％で、かつ合計で１〜２２質量％含
有させることにした。これらの元素が１質量％以上加わ
ると、高温強度が一層高くなるからである。ただし、１
８質量％を超えると、添加効果が飽和し、それ以上の添
加は経済的でないので、この量を上限とする。

【００１６】なお、かかるスリーブ２の肉厚について
は、本発明では特に定めない。しかし、通常の冷却水使
用量でスリーブ２を均一冷却する観点では、１０〜５０
ｍｍの範囲にあることが好ましい。また、ロール軸体１
の材質や隙間４に充填する断熱材５についても、本発明
では特に限定しないことにした。従来から使用されてい
るロックウールやアスベスト等を利用すれば十分だから
である。

【００１７】

【実施例】基本組成としてＮｉ：１５〜５０質量％、Ｃ
ｒ：１５〜３０質量％を含有する種々の耐熱合金を遠心
鋳造し、ハースロールのスリーブを製作した。そして、
該スリーブをＣｒ含有合金製の内部に冷却構造を有する
軸体に取り付け、実際にＳＵＳ３０４の鋼帯（幅１００
０ｍｍ，厚み４ｍｍ）を連続焼鈍した。焼鈍条件は、鋼
帯の走行速度４０ｍ／ｍｉｎ，炉内雰囲気温度を１１０
０℃とし、鋼帯の最高焼鈍温度は１０５０℃である。ま
た、スリーブのサイズは、直径０．２６ｍ、長さ２．１
ｍ，肉厚２５ｍｍであり、軸体に流した冷却水の流量
は、１．４ｍ³／ｍｉｎである。さらに、同時に、本発
明の効果を確認するため、従来のハースロールを使用し
た焼鈍も行った。なお、実施後のロール表面への酸化ス
ケールのピックアップ量は、目視で評価し、スリーブの
脆性劣化の指標であるσ相の出現量はエッチング後のマ
クロ組織観察で測定している。

【００１８】これらの操業結果を、使用したスリーブ毎
に区別し、表１に一括して示す。表１より、本発明に係
るハースロールは、ピックアップや脆性劣化の防止ばか
りでなく、寿命についても非常に優れていることが明ら
かである。

【００１９】

【表１】

【００２０】

【発明の効果】以上述べたように、本発明により、酸化
スケールのピックアップを起こし難く、従来より安価で
且つ寿命が長いステンレス鋼板の焼鈍炉用ハースロール
を提供できるようになった。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るハースロールの構造を説明する横
断面図である。

【図２】従来のハースロールの構造例を示す横断面図で
ある。

【符号の説明】

１ロール軸体２スリーブ３ハブ材４隙間５断熱材６冷却水７スリーブ基体８溶接肉盛層

フロントページの続きＦターム(参考） 3J103 AA02 AA25 AA47 AA51 BA13 EA02 FA15 GA36 HA04 HA13 HA35 4K043 AA01 GA08 GA09

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】内部を水冷構造としたロール軸体と、該
ロール軸体の周囲にハブ材で隙間を形成させて環装した
スリーブとを備えたハースロールにおいて、前記スリーブを、Ｎｉ：３０〜５１質量％、Ｃｒ：２０
〜３１質量％を含有し、残部：不可避不純物元素及びＦ
ｅからなる耐熱合金鋼の遠心鋳造品で形成してなること
を特徴とするステンレス鋼板の焼鈍炉用ハースロール。
【請求項２】前記耐熱合金鋼が、さらにＷ，Ｃｏ及び
Ｍｏから選ばれた１種又は２種以上を１〜１８質量％
で，かつ合計で１〜２２質量％含有することを特徴とす
る請求項１記載のステンレス鋼焼鈍炉用ハースロール。
【請求項３】前記隙間に断熱材を充填してなることを
特徴とする請求項１又は２記載のステンレス鋼板の焼鈍
炉用ハースロール。