JP2003073533A - ポリ乳酸系重合体組成物 - Google Patents

ポリ乳酸系重合体組成物

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ポリ乳酸は、射出成型などで急冷されると非
晶性となり、ガラス転移点(約60℃)から結晶化温度
(約100℃)の間で、成型品が自重などで変形し、耐
熱変形性に劣る。また、溶融粘度が高く製造や加工が困
難という問題点がある。本発明の目的は、これらの問題
点の改善である。 【解決手段】 本発明は、ポリL−乳酸ホモポリマー、
ポリD−乳酸ホモポリマー、ポリL/D乳酸共重合体よ
り選ばれたポリエステル重合体(A)と、脂肪族ジカル
ボン酸および鎖状ジオールを成分とする結晶性ポリエス
テルセグメントとポリ乳酸セグメントとが結合されてお
りその重量比が97/3〜50/50の範囲であるポリ
エステルブロック共重合体(B)とが、重量比(A/
B)97/3〜40/60の範囲で混合されている重合
体組成物である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱性、透明性、
耐衝撃性、柔軟性などが改良された生分解性ポリマー組
成物およびその成型品に関する。
【0002】
【従来の技術】自然環境保護の見地から、自然環境中で
分解する生分解性ポリマー及びその成型品が求められて
いる。近年、脂肪族ポリエステルなどの自然分解性樹脂
が開発されつつあり、特にポリ乳酸は融点が170〜1
80℃と十分に高く、しかも透明性にすぐれるため包装
材料などとして大いに期待されている。しかしポリ乳酸
は、その剛直な分子構造のために、耐衝撃性が劣り脆い
という欠点がある。さらに意外にも、ポリ乳酸を射出成
型したり押出し成型した製品は耐熱変形性に劣り、その
融点以下の50〜100℃程度の比較的低温でも容易に
熱変形することを、本発明者らは見出だした。食品用包
装容器の多くは、当然耐熱変形性が高いことが必要であ
り、また一般の容器や包装材でも成型後の輸送、保管中
や使用中に、例えば40〜60℃程度の温度にさらされ
ることがあり、それに耐える熱変形温度の高いものが求
められる。さらに、包装材料や容器では、高い透明性が
要求される場合が多い。従来の脂肪族ポリエステルの成
型品は、耐熱性と透明性とを両立させることは難しく、
両者を満足する生分解性包装材料や容器が求められてい
る。さらにポリ乳酸は、溶融粘度が高く、製造や成型が
困難という問題がある。 ポリ乳酸に他の脂肪族ポリエ
ステルをブロック共重合して、柔軟性や透明性に優れる
ポリマーが得られることは、特開平7−173266号
に開示されている。しかし、耐熱変形性の改良、特に耐
熱性と透明性とを合せ持つものについては、知られてい
ないのが現状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、自然
環境下で完全に分解可能であり、且つ熱変形温度と透明
性が共に改良され、しかも溶融流動性が改善されて実用
性が大幅に高められた、新規なポリ乳酸系重合体組成物
およびその成型品を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記本発明の目的は、次
の(1)、(2)、(3)及び(4)の項目を全て満足
する新規重合体組成物、およびその成型品によって達成
される。
【0005】(1)ポリL−乳酸ホモポリマー、ポリD
−乳酸ホモポリマー、ポリL/D乳酸共重合体より選ば
れたポリエステル重合体(A)と、脂肪族ジカルボン酸
および鎖状ジオールを成分とする結晶性ポリエステルセ
グメントとポリ乳酸セグメントとが結合されているポリ
エステルブロック共重合体(B)とが混合されている。
【0006】(2)組成物中の重合体(A)のポリ乳酸
セグメントの結晶の融点が、140℃以上であり、且つ
その溶融吸熱量が、10ジュール/グラム以上である。
【0007】(3)組成物中の重合体(B)の上記ジカ
ルボン酸とジオールを成分とするセグメントの結晶の融
点が、60〜130℃の範囲であり、且つ重合体(B)
の構成成分中の乳酸由来の成分の比率が3〜50重量%
である。
【0008】(4)重合体(A)と重合体(B)との混
合比率(A/B)が、97/3〜40/60の範囲であ
る。
【0009】ここで、ポリエステル重合体(A)とは、
重合体中のL−乳酸及び/又はD−乳酸由来の成分が5
0%以上のポリエステルを言い、ポリL−乳酸ホモポリ
マー、ポリD−乳酸ホモポリマー、ポリL/D乳酸共重
合体、及びそれらに他の成分を50重量%以下共重合又
は/及び混合したものをすべて包含する。結晶性重合体
とは、熱処理又は/及び延伸により十分結晶化したポリ
マー試料を、走査型示差熱量計(DSC)やX線回折装
置によって分析したとき、主鎖の結晶が検出可能なもの
を言い、例えばDSCでは結晶の溶融による吸熱ピーク
が0.5ジュール(J)/グラム(g)以上、特に1J
/g以上であれば検出は容易である。また、ポリマーの
融点は、十分結晶化、乾燥したポリマーを、窒素ガス
中、試料量10mg、昇温速度10℃度/minでDS
C分析した時の、溶融による吸熱のピーク値温度とす
る。また、セグメントは、ポリマー分子鎖の一部分を言
い、ブロックと言うこともある。
【0010】ポリ乳酸に共重合可能な成分としては、エ
ステル結合形成性のものがよく知られており、例えば
(1)グリコール酸、ヒドロキシブチルカルボン酸など
のような脂肪族ヒドロキシカルボン酸、(2)グリコリ
ド、ブチロラクトン、カプロラクトンなどの脂肪族ラク
トン、(3)エチレングリコール、プロピレングリコー
ル、ブタンジオール、ヘキサンジオールなどのような脂
肪族ジオール、(4)ポリエチレングリコール、ポリプ
ロピレングリコール、ポリエチレン/プロピレングリコ
ール(共重合体)、ポリブチレンエーテル、ジエチレン
グリコール、トリエチレングリコール、エチレン/プロ
ピレングリコールなどのポリアルキレンエーテルおよび
そのオリゴマー、(5)両末端に水酸基を持つポリブチ
レンカーボネート、ポリヘキサンカーボネート、ポリオ
クタンカーボネートなどの脂肪族ポリカーボネートおよ
びそのオリゴマー、(6)コハク酸、アジピン酸、アゼ
ライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪
族ジカルボン酸などが挙げられる。この他にテレフタル
酸、イソフタル酸、スルホイソフタル酸、フタル酸、ナ
フタレンジカルボン酸などの芳香族成分も応用可能であ
る。上記ポリエステル重合原料は、ポリ乳酸にランダム
共重合又は/及びブロック共重合することが出来る。一
般に、ランダム共重合ではポリマーの結晶性が損なわれ
る傾向が強く、結晶性を保つには、第2成分の共重合比
率(重量比)は20%程度以下、特に1〜10%程度が
好ましいことが多い。一方ブロック共重合では、あまり
結晶性を損なわずに例えば耐衝撃性や柔軟性などを改良
することが出来る。また、上記ポリエステル重合原料以
外に、例えばイソシアネート化合物、エポキシ化合物、
単官能化合物、3官能以上の多官能化合物を副次的に用
いることも出来る。
【0011】本発明の組成物を構成する重合体(B)
は、脂肪族ジカルボン酸及び鎖状ジオールを成分とする
結晶性セグメントとポリ乳酸セグメントが結合されたも
のである。脂肪族ジカルボン酸は、炭素数4〜20程度
のアルキル基をもつものが好ましく、例えばコハク酸、
アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカル
ボン酸などが挙げられる。
【0012】鎖状ジオールは、脂肪族ジオール、エーテ
ル結合を持つジオールおよびカーボネート結合を持つジ
オールを包含する。脂肪族ジオールは、炭素数2〜12
程度のアルキル基を持つものが好ましく、例えばエチレ
ングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオー
ル、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオ
ールなどが挙げられる。エーテル結合を持つジオール
は、炭素数2〜8程度のアルキル基をもつものが好まし
く、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコ
ール、ジプロピレングリコール、ヒドロキシエチル/ヒ
ドロキシプロピルエーテル、ビスヒドロキシエトキシヘ
キサンなどが挙げられる。カーボネート結合を持つジオ
ールは、炭素数4〜8程度のアルキル基を持つ物が好ま
しく、例えばビスヒドロキシブチレンカーボネート、ビ
スヒドロキシヘキサンカーボネートなどが挙げられる。
【0013】ポリ乳酸のガラス転移温度は約60℃で、
脂肪族ポリエステルの中では特別に高く、しかも結晶化
温度も約100℃と相当高い。このため、射出成型、押
出し成型などで溶融状態から急冷されると、ポリ乳酸は
ほぼ非結晶状態となり、(透明性は優れるが)、ガラス
転移点付近から結晶化温度までの温度領域(50〜10
0℃)では、重力や外力によって容易に変形する傾向が
あることが判明した。重合体(B)を構成する脂肪族ジ
カルボン酸及び鎖状ジオールを成分とする結晶性セグメ
ントの組成物中の融点は、60〜130℃の範囲である
が、そのガラス転移点や結晶化温度は常温以下で、溶融
状態から急冷されても結晶化する。そこでこの低融点の
結晶性ポリマーを含む本発明組成物の成型品は、その低
融点結晶により40〜120℃程度の熱に耐え、それ以
上の温度では重合体(A)を構成するポリ乳酸が結晶化
しそれによって成型品は熱に耐え変形しない。つまり比
較的低温での熱変形と、比較的高温での熱変形を、融点
(及び結晶化温度)の異なる2種の結晶性ポリマーの混
合によって、それぞれ分担させて防ぐのである。
【0014】しかし、脂肪族ジカルボン酸及び鎖状ジオ
ールからなる低融点ポリマーとポリ乳酸とは、相溶性が
やや低く、混合物は白濁し透明性が低下する傾向があ
る。本発明は、重合体(B)に重合体(A)の主成分で
あるポリ乳酸セグメントを導入し、両者の相溶性を改良
し上記白濁を抑制・改良するものである。この効果を得
るには、重合体(B)に含まれるポリ乳酸成分の量は、
3〜50重量%の範囲である必要があり、5〜30%が
特に好ましく、7〜20%の範囲が最も広く用いられ
る。重合体(B)の中の乳酸成分が少な過ぎると、両成
分の相溶性改善が不足となり、多すぎると脂肪族ジカル
ボン酸及び鎖状ジオールからなる低融点ポリマーの結晶
化を妨げるからである。同様に、両成分の親和性を改良
するために、重合体(A)に、脂肪族ジカルボン酸及び
鎖状ジオールからなる低融点ポリマーを少量(例えば3
0%以下、特に3〜20%)ブロック共重合すること
も、本発明の好ましい実施態様である。
【0015】重合体(B)の主成分は、融点60〜13
0℃の脂肪族結晶性ポリエステルで、具体例としては、
ポリエチレンスベレート(融点約65℃)、ポリエチレ
ンセバケート(融点約75℃)、ポリエチレンデカンジ
カルボキシレート(融点約86℃)、ポリブチレンサク
シネート(融点約117℃)、ポリブチレンアジペート
(融点約72℃)、ポリブチレンセバケート(融点約6
6℃)などが挙げられる。これらのホモポリマーに、ポ
リ乳酸をブロック共重合することにより、融点をあまり
低下させないで、ポリ乳酸を主成分とする重合体(A)
との親和性が高められる。組成物の透明性を阻害する第
1要因は、前記のように混合状態(特にミクロ相分離)
であり、これは成分間の親和性の改良で改善される。第
2要因は、ポリマーの球晶である。勿論、ポリマーを非
晶性にすると、前記のように耐熱性が得られない。そこ
で球晶のサイズ(直径)を出来るだけ小さく、可視光線
の波長(400〜800nm)よりもかなり小さい10
0nm以下、特に80nm以下とすることが好ましい。
球晶のサイズは、(1)共重合法と(2)結晶核剤の応
用の2つの方法で制御することが出来る。
【0016】共重合法には、ブロック共重合とランダム
共重合とがあるが、いずれにせよ、結晶性(融点)を保
ちつつ、しかも結晶性をある程度抑制する必要がある。
ランダム共重合では、結晶性セグメント(ホモポリマー
部分)の平均の長さを、比較的容易に制御することが出
来る。例えば異種の成分を1モル%ランダム共重合すれ
ば、結晶性セグメントの平均の長さは重合度100程度
と推測される。10モル%ならば結晶性セグメントの平
均の長さは重合度10程度と推測されるが、実際に結晶
としてDSCなどで検出され、耐熱性に効果をもたらす
には、結晶性セグメントの平均重合度は20程度以上が
必要と推測される。
【0017】球晶サイズを抑制するには、結晶性セグメ
ントの平均重合度は1000程度以下、特に500程度
以下が必要と推測される。異種成分の結晶妨害作用は、
その成分の立体構造などにより異なるので、一概に言え
ないが、ランダム共重合の場合、必要な異種(共重合)
成分量は、大略0.05〜5モル%程度の範囲が適当で
あることが多い。ブロック共重合の場合は、非常に複雑
だが、必要な異種(共重合)成分量は、大略1〜50重
量%程度、特に3〜30重量%程度が適当であることが
多い。共重合の組み合わせの例としては、ポリエチレン
セバケート/ポリブチレンセバケート、ポリエチレンセ
バケート/ポリプロピレンセバケート、ポリブチレンサ
クシネート/ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサ
クシネート/ポリエチレンアジペートなど、異種のジカ
ルボン酸又は/及び異種のグリコールの組み合わせがあ
げられる。もちろん、その他の原料例えばラクタムやヒ
ドロキシカルボン酸も応用出来る。一般に、側鎖、芳香
核や脂環基を持つもの(例えばプロピレングリコール、
テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、スルホイソフ
タル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジメ
タノールなど)は、結晶妨害効果が強く、少量で有効で
ある。
【0018】結晶核剤は、無機粒子、有機化合物粒子、
有機化合物結晶粒子など、それを核としてポリマーが結
晶化するものである。結晶核剤が完全に働くと、すべて
の球晶の中心に1個の核剤粒子が存在する筈である。従
って、核剤粒子を多くすれば、球晶サイズは小さくな
る。例えば、直径10nmの核剤粒子の周りに直径10
0nmの球晶があれば、核剤の混合(体積)比率は1/
1000=0.1%である。球晶の直径が50nmであ
れば、体積比率は1/125=0.8%である。核剤が
完全には働かないことや、その比重を考慮すると、球晶
を十分小さくするには、直径100nm以下、特に50
nm以下の核剤を0.1〜5重量%程度、特に、0.2
〜3%程度ポリマーに混合することが好ましい。
【0019】脂肪族ポリエステルの核剤としては、タル
ク、珪酸カルシウム、窒化ボロン、チタン酸カルシウ
ム、酸化チタン、シリカ、酸化亜鉛、炭酸カルシゥムな
どの無機粒子、サッカリンのナトリウム塩、安息香酸ナ
トリウム、ポリ乳酸系ポリマーよりも融点の高いポリブ
チレンテレフタレート、ポリプロピレンなどのポリマー
その他の有機化合物の微粒子が挙げられる。核剤は、結
晶化度を低下させずに球晶のサイズを小さくすることが
可能で、製品の耐熱性の観点からは、優れた方法であ
る。勿論、核剤法と共重合法を併用することも好まし
い。
【0020】本発明組成物を構成するポリマーの分子量
は、特に限定されない。しかし、重合体(A)のポリマ
ー部分は組成物の骨格をなすものであり、成型品に十分
な強度をもたせるためには、その平均分子量は5万以上
が好ましく、8〜30万が特に好ましく、10〜20万
の範囲が最も広く用いられる。一方、重合体(B)のポ
リマー部分は、成型品の耐熱性に寄与するもので、分子
量は1万以上が好ましく、2〜30万が特に好ましく3
〜20万の範囲が最も広く用いられる。
【0021】本発明組成物の溶融粘度は、特に限定され
ないが、通常の溶融成型条件、例えば温度150〜25
0℃程度、多くの場合170〜230℃、最も多くの場
合180〜220℃において、500〜20000ポイ
ズ程度、多くの場合1000〜10000ポイズ、最も
多くの場合1500〜8000ポイズが好ましい。溶融
粘度の温度依存性やせん断速度依存性は、小さいことが
望ましいが、本発明組成物は、溶融流動性改善成分(ポ
リエーテル、ポリカーボネートなど)を含むため、比較
的分子量が高くても比較的低温で成型可能であり、成型
性にすぐれ、強度、柔軟性、耐衝撃性などに優れた成型
品を得ることが出来る。
【0022】本発明の組成物は、重合体(A)と重合体
(B)とを混合することにより、容易に製造される。混
合方法や混合装置は、特に限定されないが、連続的に処
理出来るものが、工業的に有利で好ましい。例えば、両
ポリマー(A)、(B)のペレットを所定比率で混合
し、1軸のスクリュー押出機や2軸の混練押出機などで
溶融し、直ちに射出成型したり製膜または紡糸してもよ
い。また両成分を溶融混合した後、一旦ペレット化し、
その後で必要に応じて溶融成型してもよい。同じく、両
ポリマーをそれぞれ別の押出機などで溶融し、所定比率
で静止混合器または/及び機械的攪拌装置で混合し、直
ちに成型しても良く、一旦ペレット化してもよい。押出
機などの機械的攪拌による混合と、静止混合器とを組み
合わせてもよい。溶剤を用い、溶液状態で混合しても良
い。
【0023】溶融混合法では、ポリマーの劣化、変質、
エステル交換反応による共重合体化を、実質的に防ぐこ
とが必要で、出来るだけ低温で短時間内に混合すること
が好ましい。例えば温度は、230℃以下、特に好まし
くは210℃以下、最も好ましくは190℃以下、時間
は30分間以内、特に20分以内、最も好ましくは10
分以内で混合することが好ましい。溶融による変質やエ
ステル交換を防ぐには、分子末端の水酸基やカルボキシ
ル基、残留モノマーや重合触媒を除去または低減してお
くことが望ましい。エステル交換反応が無視出来ないほ
ど(実質的に)起こると、重合体(A)と重合体(B)
のブロック又はランダム共重合体が生成し、組成物の結
晶性や耐熱性が低下する。
【0024】本発明組成物には、金属粒子、無機系また
は有機系粒子その他の充填剤、結晶核剤、酸化防止剤、
紫外線吸収剤などの安定剤、染料、顔料などの着色剤、
帯電防止剤、難燃剤、滑剤、離型剤、撥水剤、可塑剤、
抗菌剤その他の添加剤を配合することが出来る。
【0025】以下の実施例において、%、部は特に断ら
ない限り重量比である。脂肪族ポリエステルの分子量
は、試料の0.1%クロロホルム溶液のGPC分析にお
いて、分子量1000以下の成分を除く高分子成分の分
散の重量平均値である。
【0026】
【実施例】[実施例1]光学純度99.5%以上のL−
ラクチド97部、分子量8000のポリエチレングリコ
ール(以下PEGと記す)5部、酸化防止剤としてチバ
ガイギー社のイルガノックス1010をPEGに対して
0.1%、重合触媒としてオクチル酸錫100ppm、
結晶核剤として直径9nmの窒化ボロン0.5%を混合
し、2軸混練部押出機に連続供給し185℃で15分間
反応した後、口金より押出し水で冷却後切断してポリL
−乳酸/PEG=約95/5のブロック共重合体のチッ
プC1を得た。チップC1を、乾燥後、140℃の窒素
気流中で3時間熱処理(固相重合)したのち、塩酸を
0.1%含むアセトンで洗浄し、さらに塩酸を含まぬア
セトンで5回洗浄し、触媒および残存モノマーを完全に
除去し、乾燥してチップA1を得た。チップA1の分子
量は13.3万、融点は170℃であった。ポリブチレ
ンサクシネート(PBS)/ポリブチレンアジペート
(PBA)=4/1(モル比)のランダム共重合物で、
分子量12.7万、融点92℃のものをCP1とする。
CP1を90部、L−ラクチド11部、結晶核剤として
直径8nmのシリカ粒子0.8%、オクチル酸錫をL−
ラクチドに対して100ppm混合し、以下チップA1
と同様にしてチップB1を得た。PBS/PBA共重合
体CP1は、PBAが20モル%ランダム共重合されて
いるが、PBSとPBAは分子構造が近いため、PBA
の結晶妨害作用は弱く、共重合体は結晶性を保つ。しか
しCP1は、融点がPBSより約25℃低下しており、
球晶の発達のため不透明である。チップB1は、CP1
/ポリ乳酸=約90/10のブロック共重合体で、分子
量13.1万、融点89℃、透明度は、ブロック共重合
の効果と結晶核剤の効果が共に作用して、CP1よりか
なり改良されている。
【0027】チップA1とチップB1とを4/1で混合
し、さらにイルガノックス1010を全体の50ppm
となるよう加えつつ、200℃の2軸混練押出機で平均
4分間溶融混合し、200℃のT型口金より押し出し、
冷却ロールで冷却固化して厚さ0.3mmのシートS1
を得た。シートS1を75℃の型を用い圧空成型し、電
気ひげそり器の容器(ブリスター)BL1を製造した。
なお、シートS1を120℃で2時間熱処理(結晶化)
した試料のDSC分析で、融点として90℃と169℃
の2つの吸熱ピークが観測され、それぞれの吸熱量は、
7.0J/g及び37.9J/gであった。この2つの
吸熱ピークは、それぞれPBS/PBA共重合体セグメ
ントとポリ乳酸セグメントの結晶の融点である。
【0028】比較のため、ポリL−乳酸ホモポリマー
(未変性品)で、分子量13.5万、融点175℃のも
のを用い、溶融温度220℃でシート化し、以下ブリス
ターBL1と同様にしてブリスターBL2を得た。同じ
く比較のため、上記PBS/PBA=4/1(モル比)
のランダム共重合体CP1を用い、溶融温度200℃で
シート化し、65℃で圧空成型してブリスターBL3を
得た。同じく比較のため、上記ポリ乳酸ホモポリマーの
チップと、ランダム共重合体CP1のチップとを4/1
で混合し、以下BL1と同様にしてブリスターBL4を
得た。各ブリスターを、熱帯地方を船で輸送することを
想定した耐熱変形試験、すなわち60℃、相対湿度80
%の空気中に100時間静置した後、変形の程度および
透明性を評価した。その結果を表1に示す。表1に見る
ように、本発明によるブリスターは熱変形がほとんどな
く透明性にすぐれ内部の商品がよく見える。他方、比較
例は耐熱変形性および透明性の一方または両方が劣って
いる。
【0029】
【表1】 [実施例2]実施例1のPEGのかわりに、分子量80
00、両末端が水酸基のポリヘキサンカーボネートを用
い、以下実施例1のA1と同様ににして、ポリ乳酸との
共重合体A2を得た。以下実施例1のブリスターBL1
とほぼ同様にして、ただしA2のチップとPBS/PB
A共重合体とポリ乳酸の共重合体B1のチップを4/1
で混合して溶融成型してシートを作成、圧空成型してブ
リスターBL5を得た。ブリスターBL5を耐熱変形試
験を行ったところ、ほとんど変形は見られず、ほぼ透明
で、内部の商品はよく見えた。なお、ブリスターBL5
を熱処理したもののDSC分析では、融点として90℃
と169℃の2つの吸熱ピークが観測され、それぞれの
吸熱量は、7.2J/g及び35.9J/gであった。
この二つの吸熱ピークは、それぞれPBS/PBA共重
合体セグメントとポリ乳酸セグメントの結晶の融点であ
る。
【0030】
【発明の効果】本発明により、透明性は優れるが、射出
成型や押出し成型などで溶融状態から急冷されたとき、
ガラス転移点(約60℃)と結晶化温度(約100℃)
との間で、成型品が(自重などで)大きく変形するポリ
乳酸の欠点が大幅に改善され、透明性と耐熱変形性の両
方に優れる生分解性重合体組成物を得ることができる。
更に本発明組成物は、溶融流動性に優れるポリエーテル
などの成分およびガラス転移点が常温以下(多くの場合
0℃以下)の成分を持つため、別の効果として溶融成型
性、製造の容易性、成型品の耐衝撃性、柔軟性、透明性
に優れ、各種容器などの成型品の製造に極めて好適に応
用される。同様に、本発明重合体組成物は、その優れた
透明性、耐熱性、耐衝撃性、柔軟性、成型性などを生か
し(必要に応じ延伸して)、優れたシート、フィルム、
繊維、各種成型品を製造することができる。
【0031】本発明により、ポリ乳酸系樹脂の実用性が
著るしく高まり、地球環境の保全に大きく貢献すること
が期待される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4J002 CF00X CF03X CF18W CF18X CF19W DE106 DE136 DE186 DE236 DJ006 DJ016 DJ046 DK006 FD206 GG02 GT00 4J200 AA02 AA04 AA05 BA02 BA10 BA14 EA04 EA05 EA09

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次の(1)、(2)、(3)及び(4)の
    項目を全て満足する重合体組成物。 (1)ポリL−乳酸ホモポリマー、ポリD−乳酸ホモポ
    リマー、ポリL/D乳酸共重合体より選ばれたポリエス
    テル重合体(A)と、脂肪族ジカルボン酸および鎖状ジ
    オールを成分とする結晶性ポリエステルセグメントとポ
    リ乳酸セグメントとが結合されているポリエステルブロ
    ック共重合体(B)とが混合されている。 (2)組成物中の重合体(A)のポリ乳酸セグメントの
    結晶の融点が、140℃以上であり、且つその溶融吸熱
    量が、10ジュール/グラム以上である。(3)組成物
    中の重合体(B)の上記ジカルボン酸とジオールを成分
    とするセグメントの結晶の融点が、60〜130℃の範
    囲であり、且つ重合体(B)の構成成分中の乳酸由来の
    成分の比率が3〜50重量%である。(4)重合体
    (A)と重合体(B)との混合比率(A/B)が、97
    /3〜40/60の範囲である。
  2. 【請求項2】 脂肪族ポリエステルの核剤として、タル
    ク、珪酸カルシウム、窒化ボロン、チタン酸カルシウ
    ム、酸化チタン、シリカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、
    サッカリンのナトリウム塩を用いる請求項1記載の組成
    物。
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