JP2003073124A - フェライト用酸化鉄およびMn−Zn系フェライトの製造方法 - Google Patents
フェライト用酸化鉄およびMn−Zn系フェライトの製造方法Info
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Abstract
フェライトにおいて高い初透磁率特性が均一に発現され
るフェライト原料用酸化鉄を提供する。 【解決手段】 Mn:0.15〜2.5 質量%およびS:S04 2-
として0.060 〜0.2 質量%を含有するフェライト用酸化
鉄において、Bの混入量を8質量ppm 以下に抑制する。
Description
用酸化鉄およびそれを用いたMn−Zn系フェライトの製造
方法に関する。
源、ノイズフィルターおよびチョークコイルなどに使用
され、近年の電子部品の高性能化に伴い、その磁気特性
の向上が求められている。例えば、ノイズフィルターに
使用されるフェライトコアでは、初透磁率が周波数:10
kHz において 10000以上のものが求められるようになっ
ている。
う数量を生産する、大量生産で製造されるのが通例であ
り、基本的には、このような大きな単位における全量が
規格値を満足することが必要である。従って、製造され
た全コアの初透磁率の平均値が高いことも重要である
が、各ロット毎の特性のばらつきを低減することも極め
て重要である。さらに、製造方法としてより簡便なプロ
セスを持ち、しかも低コストでの製造が可能であること
も要望されている。
仮焼してから、粉砕および必要に応じて造粒したのち、
所定の形状に成形し、この成形体を焼成炉内に装入して
焼成を行うことが、一般的である。これらの工程におい
て、最初の原料混合工程は、各原料粉が均一に混合され
るように、特にMn−Zn系フェライトのように特性ばらつ
きが製造工程に敏感な材質の場合、ボールミルやアトリ
クションミル等を使用した、水による湿式混合が行われ
ている。
簡便さや生産性、またはコストからみると、振動ミル等
を使用した乾式混合に大きな利点があるが、Mn−Zn系フ
ェライトなどを製造する場合、最終コアの特性ばらつき
が湿式混合に比べて大きくなるという欠点があることか
ら、湿式混合が採用されていた。
のであって、原料の混合を乾式で行った場合にあって
も、フェライトにおいて高透磁率特性が均一に発現され
るフェライト原料用酸化鉄を提供するとともに、該酸化
鉄を用いて、製造工程の簡便さ、生産性並びにコスト面
で有利である乾式混合を用いた、高い初透磁率が均一に
発現できるMn−Zn系フェライトの製造を確立することを
目的とする。
おいて5000以上を有するような、高い初透磁率をもつMn
−Zn系フェライトを製造する場合、乾式混合を用いた簡
便な製造工程において、どのような原料酸化鉄を使用す
れば最終コアでの特性ばらつきが低減できるのかについ
て、鋭意研究を重ねた。すなわち、高透磁率Mn−Zn系フ
ェライトの初透磁率がばらつく原因となる不純物の種類
とその限界量を特定すること、例えば従来の原料酸化鉄
の代表的な製造方法である結晶精製法のように、全ての
不純物を一律に低減するのではなく、逆に必要なら添加
することを含めて、不純物について検討を行った。その
結果、原料酸化鉄中のMn量およびS量を規制するととも
に、B(ホウ素)量を一定の範囲内に抑制すると好適な
結果が得られることを見出し、この発明を完成するに到
った。
イト用酸化鉄であって、Bの混入量を8質量ppm 以下に
抑制したことを特徴とするフェライト原料用酸化鉄であ
る。
用酸化鉄と、Mn源およびZn源とを乾式混合してから、仮
焼後、成形、そして焼成することを特徴とするMn−Zn系
フェライトの製造方法である。
説明する。さて、フェライト原料用の酸化鉄は、従来は
薄鋼板表面を塩酸酸洗した排液から塩酸を回収する際に
副生する酸化鉄が利用されるため、鋼板中の不純物や工
業用水中の不純物等が多量に混入していることから、こ
の不純物を除去してフェライト原料に用いることができ
る組成とするため、種々の技術が提案されている。
6420号公報に記載されるように、硫酸鉄や塩化鉄の水溶
液から硫酸鉄や塩化鉄の結晶を晶出させ、この結晶を酸
化させて酸化鉄とするものである。しかし、この方法で
は、不純物の一部が結晶中に混入するため、一回の晶出
では必ずしも十分ではなく、不純物を含まない水に晶出
結晶を溶解して再度晶出させる等の処理を繰り返す必要
が生じる。また、結晶晶出時の偏析を利用しているた
め、不純物の種類により偏析度が異なり、偏析度の小さ
い不純物を低減しようとすると、何度も再溶解・再晶出
を繰り返さなければならない。この方法は再溶解・再晶
出の回数を増やせば原理的に全ての種類の不純物を必要
なだけ低減することができるという利点はあるが、当然
コストが莫大なものになってしまう。現実的には一部の
不純物が残存したまま適当な回数で打ち切ることになる
が、それでも製造工程が煩雑でコストが高いという欠点
は完全には解消されない。
トの特性に有害な不純物とそうでないものがあり、必ず
しも全ての種類の不純物を低減させる必要はない。むし
ろ最初から含有されていた方がよい物もある。すなわ
ち、上述したように、Mn−Zn系フェライトの初透磁率の
ばらつきを抑えるには、酸化鉄中の不純物としてBを抑
制することが必要十分条件となるのである。
酸化鉄は、塩化鉄水溶液の噴霧焙焼や流動焙焼などの比
較的簡便な焙焼法により製造が可能である組成、すなわ
ちMnの含有量が0.05質量%以上 2.5質量%以下、Sの含
有量が SO4 2-イオンとして0.06質量%以上0.2 質量%以
下であり、Bの含有量を8重量ppm 以下に抑制する、組
成に規制した。このように、この発明では、結晶精製法
のように高コストで製造された酸化鉄ではなく、比較的
安価に量産可能な塩化鉄水溶液の噴霧焙焼または流動焙
焼により製造された酸化鉄を対象とすることが可能にな
った。
記の噴霧焙焼または流動焙焼により塩酸回収を行う際、
鋼板の塩酸酸洗排液に溶解しているMnやSO4 2- イオン、
そしてBが水の蒸発により酸化鉄に移行したものであ
る。まず、Mnが酸化鉄中でどのような存在形態となって
いるかは、その含有が微量なので解析できていないが、
酸化鉄粒子の内部にMn−Zn系フェライトと同じスピネル
構造のマンガンフェライトのような形で結晶格子中に取
り込まれているものと推測される。従って、水に対して
不溶性であるために、酸化鉄製造工程の最終水洗工程に
ても除去しにくく、通常の焙焼法であれば、特開平7−
176420号公報に記載されたように、 0.1から0.3 質量%
含まれることになる。
るから、必要であれば最終工程で水洗してやれば含有量
は0.02〜0.03質量%程度まで低減できる。
のため、酸化鉄製造工程の最終水洗工程にても除去しに
くく、鋼板の塩酸酸洗排液中のBがそのまま残留する。
2- イオンが0.02〜0.03質量%程度含有される酸化鉄を
原料としてMn−Zn系フェライトを製造する際、原料の混
合を湿式で行う場合は問題が少ないが、乾式混合法によ
る場合は、初透磁率の平均値は湿式の場合と同程度を実
現できても、そのばらつきが大きくなることが問題であ
るのは既に述べたとおりである。
も、得られるフェライトの初透磁率のばらつきが低減で
きる、酸化鉄原料を種々検討した結果、先に示したよう
に酸化鉄中のMn量およびS量(SO4 2- イオンで換算)を
規制した上でB量が制限することが有効であるのを見出
したのである。
〜2.5 質量%の範囲としたのは、0.15質量%未満である
と、乾式混合法によって均一に混合することが難しくな
り、一方2.5 質量%をこえると、Mnの偏析によって初透
磁率のばらつきが大きくなるからである。
して0.060 〜0.2 質量%の範囲としたのは、0.060 質量
%未満では、乾式混合法によって均一に混合することが
難しくなり、一方0.2 質量%をこえると、初透磁率の値
が低下したり、そのばらつきが大きくなるからである。
するのは、結晶粒成長を均一にし、初透磁率のばらつき
を抑えるためである。
液に塩化マンガン等の形態で添加することにより制御で
きる。また、S量は同じく硫酸鉄の形態で添加すること
や、最終水洗工程での水洗時間等を調節することによっ
て制御できる。さらに、B量は、焙焼に用いる鋼板の塩
酸酸洗排液の中でB量の少ない液を選択することにより
調整することができる。
鉄中のMn量およびS量、そしてB量が、最終フェライト
コアでの初透磁率のばらつきに影響を与える原因につい
ては、未だ明確になってはいないが、Mnが酸化鉄中でMn
Fe2O4 のスピネルの形で予め含有されていることと、 S
O4 2-イオンの何らかの作用とにより、後から添加、混合
される酸化マンガンおよび酸化亜鉛との反応性が変化
し、仮焼から焼成までの過程で結晶成長の均一性を高め
ているものと推測される。
うちBの影響について、例えば文献「フェライト」 (平
賀ら、丸善, 1986)の92頁において、結晶組織を不均一
にして高透磁率の発現を阻害するので50ppm 以下にして
おかなければならない、ことが記載されている。しかし
ながら、Mnと SO4 2-イオンを、この発明に従う範囲で含
有する場合に、Bの影響が具体的にどの程度の量から始
まるのかは、前記文献において不明であった。すなわ
ち、上記した範囲のMnおよび SO4 2-イオンを含有する場
合に、Bの混入量を8ppm 以下に抑制すれば最終フェラ
イトコアでの初透磁率のばらつきを低減できることは、
今回新たに見出されたものである。
よびZn源とを乾式混合してから、仮焼後、成形、そして
焼成することによって、高い初透磁率が均一に発現され
るMn−Zn系フェライトを得ることができる。この発明に
おけるMn−Zn系フェライトの基本成分Fe2O3, MnO, ZnO
は初透磁率をどの程度にとるか、室温付近で磁気異方性
と磁歪が小さいことによるピーク(セカンダリーピー
ク) 、キュリー点をどの程度に設定するか、という観点
から組成範囲を限定すればよい。
く、室温から 120℃程度の範囲の動作温度において、初
透磁率が高く正の温度係数を持つことが要求されること
から、Fe2O3, MnO および ZnOの組成範囲を次のように
することが好ましい。 MnO : 20 〜30mol% ZnO : 18 〜25mol% Fe2O3 : 残部 すなわち、MnO が 20mol%未満または30mol%を越える
か、あるいはZnO が18mol%未満または25mol%を越える
と、スピネルの化学組成の変化により初透磁率が大幅に
低下する。
けでなく焼成により、この形態に変わることのできる炭
酸塩などの化合物を使用することができる。この発明の
Mn−Zn系フェライトは、以上の基本組成を有するが、酸
化カルシウム、二酸化ケイ素、酸化ビスマス、酸化イン
ジウム、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、
酸化チタン、酸化スズおよび酸化モリブデンのうち少な
くとも一種を添加してもよい。このようなMn−Zn系フェ
ライトとしては、 Fe2O3-ZnO-MnO-CaO-SiO2 Fe2O3-ZnO-MnO-CaO-Bi2O3 Fe2O3-ZnO-MnO-CaO-In2O3 Fe2O3-ZnO-MnO-CaO-TiO2 Fe2O3-ZnO-MnO-CaO-SiO2-Ta2O5 Fe2O3-ZnO-MnO-CaO-SiO2-Nb2O5Bi2O3 等が例示されるが、もとよりこれらの例に限定されるも
のではない。
界に偏析することによってMn−Zn系フェライトの低損失
化に寄与し、Bi2O3, In2O3およびV2O5は低融点化合物と
して結晶成長を促進し高透磁率化に寄与する。 また、Ti
O2およびSnO2は結晶内部を高抵抗化することにより、そ
してTa2O5 やNb2O5 は粒界を高抵抗化することにより、
低損失化に寄与する。さらに、MoO3は均一な粒成長に寄
与する。以上の観点から、酸化カルシウムの含有量は、
CaO換算として50〜1000質量ppm,二酸化ケイ素の含有量
はSiO2換算として50〜200 質量ppm である。さらに、酸
化ビスマス、酸化インジウム、酸化バナジウム、酸化タ
ンタル、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化スズおよび酸化
モリブデン等の含有量は、それぞれBi2O3, In2O3, Ta2O
5, Nb2O5, TiO2, SnO2, MoO3に換算して、合計で3000質
量ppm 程度以下であることが好ましい。
2O3 の含有量は、MnO ,ZnO およびFe2O3 の合計量に対
する mol%で示し、Na,B,P,CaO ,SiO2,Bi2O3 ,
In2O 3 ,Ta2O5 ,Nb2O5 ,TiO2,SnO2および MoO3 など
の含有量は、Mn−Zn系フェライト中の質量ppm で示す。
Mn源およびZn源と乾式混合してから、仮焼後、成形、そ
して焼成することによって、Mn−Zn系フェライトを製造
することができる。すなわち、上記した原料酸化鉄粉
は、最終的に所望するフェライトの組成となるように、
MnやZnなどの金属酸化物と粉砕混合する。この混合は、
機械的に行うものであり、ここでは乾式での混合が可能
であることは上述のとおりである。このとき、Ni、Mgお
よびCuなどの金属酸化物を添加してもかまわない。
空気、窒素、あるいはそれらの混合ガス、又は、炭化水
素燃料の燃焼排ガスなどの雰囲気中、最高700 〜1100℃
で加熱することで仮焼する。仮焼には、ロータリーキル
ンなどを使用できる。
添加物を混合し、さらに、成形の後焼成する。この混合
時、磁気特性向上のために、SiO2、CaO 、Bi2O3 ,In2O
3 ,Nb2O5 ,TiO2,SnO2および MoO3 などの酸化物粉末
を微量添加する。これら、微量添加物の添加量は、所望
する磁気特性によって異なる。なお、V、Zr、Cr、Co、
AlおよびMgの酸化物などを添加してもよい。こうして得
られた混合粉砕粉は、通常、0.3 〜2μm程度の平均粒
径に調整する。
程度のポリビニルアルコール(PVA)に代表される成
形助剤や0.01〜1質量%程度のステアリン酸亜鉛に代表
される潤滑剤を混合し、−30mesh程度に造粒を行い、成
形原料とする。
力で所望の形状に金型成形する。かくして得られた成形
体は、大気または窒素、あるいはそれらの混合ガス中
で、最高1200〜1350℃程度で保持して焼成する。
酸洗廃液を原料として、スクラップ(製鉄所内発生の冷
延鋼板スクラップ片)を理論消費量の5倍以上で充填し
たバッチ式の溶解槽において、充填物を温度90℃で2.5
時間撹拝して、原料中の遊離塩酸を中和するとともに、
Fe3+をFe2+に還元してpHを2.7 に調整した。次に、液を
スクラップ材と分離した後、酸化槽内で液温を70〜80℃
に保ちながら、1.5〜2時間の間、空気を液中に分散さ
せた。同時に、アンモニア水を添加し、空気酸化による
pH低下を防止あるいは任意のpH値にコントロールして溶
液中のFe分の2〜4質量%を沈澱として析出するように
した。さらに、高分子凝集剤を撹拝添加後、静置して沈
降分離し、清澄液を得た。最後に、この清澄な塩化鉄水
溶液を噴霧焙焼炉で焙焼し、酸化鉄を得た。
酸廃液に塩化マンガンと硫酸鉄を予め混合し、得られた
酸化鉄で種々のMn量、SO4 2- イオン量及びB量を含有す
る酸化鉄を得た。酸化鉄中のMn量、SO4 2- イオン量及び
B量を、表1および2に示す。
ェライトを作製した。すなわち、各成分の原料酸化物を
振動ミルで10分間乾式混合した後、 925℃で3時間仮焼
した。この基本原料に、表1および2に示す量の副成分
をそれぞれ添加し、ボールミルで8時間粉砕し、成形加
工によって焼成後に外径31mm、内径19mm、高さ8mmとな
る多数のリング状成形体を製作した。次いで、これらリ
ング状成形体を、焼成台板(300mm×300 mm)上に縦およ
び横に各9列、5段積み(合計405 個)で並べて載置
し、この台板を連続式焼成炉内に装入して、保持時間13
50℃で2時間の焼成を酸素濃度の制御下に行った。フェ
ライト中のMnO 、ZnO 、SiO2およびCaO 量を表1および
2に示す。
て、その特性ばらつきを評価するために、各台板に載置
した全コア 405個の10kHz,25℃における比初透磁率(μ
i /μ 0 )の平均値xと標準偏差sを測定した。ばらつ
きの程度として変動係数s/x をそれぞれ計算した。その
結果を表1および2に併記した。尚、比初透磁率(μi
/μ0 )は、初透磁率μi を真空の透磁率μ0 で除した
値である。
酸化鉄中のMn量、 SO4 2-イオン量およびB量に関わらず
5000以上の高い値になっているが、この発明に従う発明
例では、比初透磁率に対してその変動係数が10%以内の
範囲になっており、極めてばらつきの少ない優れた高透
磁率材となっていることがわかる。これらは酸化鉄中の
Mn含有量が0.15質量%以上 2.5質量%以下、S含有量が
SO4 2-イオンとして0.060 質量%以上0.2 質量%以下、
そしてB量が8重量ppm 以下の範囲で実現できることが
わかる。
ば、原料の混合をコストおよび生産性に劣る湿式混合に
よらずに、簡易かつ短時間で終了する乾式で行った場合
にあっても、フェライトにおいて高い初透磁率が均一に
発現されるフェライト原料用の酸化鉄が提供されるか
ら、該酸化鉄を用いて、製造工程の簡便さ、生産性並び
にコスト面で有利である乾式混合を用いた、高い透磁率
が均一に発現されるMn−Zn系フェライトの製造を確立す
ることができ、また高い初透磁率が均一に発現されるMn
−Zn系フェライトを安価に提供できる。
Claims (2)
- 【請求項1】Mn:0.15〜2.5 質量%および S:S04 2- として0.060 〜0.2 質量%を含有するフェラ
イト用酸化鉄であって、Bの混入量を8質量ppm 以下に
抑制したことを特徴とするフェライト原料用酸化鉄。 - 【請求項2】請求項1に記載のフェライト原料用酸化鉄
と、Mn源およびZn源とを乾式混合してから、仮焼後、成
形、そして焼成することを特徴とするMn−Zn系フェライ
トの製造方法。
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