JP2003062063A - 癒着防止材 - Google Patents

癒着防止材

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JP2003062063A JP2002167760A JP2002167760A JP2003062063A JP 2003062063 A JP2003062063 A JP 2003062063A JP 2002167760 A JP2002167760 A JP 2002167760A JP 2002167760 A JP2002167760 A JP 2002167760A JP 2003062063 A JP2003062063 A JP 2003062063A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生体適合性および生体吸収性に優れ、かつ、
縫合・接着に対する強度に優れる癒着防止材を提供す
る。 【解決手段】 ゼラチン溶解液に生体内分解吸収性高分
子製の補強材12を配置して、前記補強材12に前記溶
解液を浸透させてから、前記ゼラチンをゲル化・乾燥す
ることにより、ゼラチンフィルム11と前記補強材12
が一体化された癒着防止材が得られる。前記補強材12
は、ゼラチンフィルム11の縫合部位に配置されること
が好ましく、また、ゼラチンフィルム11の縁部に配置
されることが好ましい。前記ゼラチンフィルム11は、
架橋されたゼラチンフィルムであることが好ましく、前
記補強材12は不織布が好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生体組織同士の癒
着を防止する癒着防止材に関し、さらに詳しくは、生体
適合性、生体吸収性および縫合に対する強度に優れる癒
着防止材に関する。
【0002】
【従来の技術】心臓外科、整形外科、脳神経外科、腹部
外科、産婦人科等の臨床分野において、様々な外科手術
後に、あるいは外傷によって、患部の生体組織が癒着す
ることが、重大な問題となっている。組織の癒着が発生
すると、例えば、痛みや機能障害を引き起こし、ひどい
場合には前記癒着を剥離するための手術が別途必要にな
ることもある。また、癒着により、原疾患に対する再手
術が困難になるという問題も生じている。そこで、従
来、生体組織の癒着を防止するために、癒着が発生する
おそれがある組織を覆い、保護する癒着防止材が開発さ
れており、実際に、再生酸化セルロース布やヒアルロン
酸・カルボキシルメチルセルロース混合膜等が、癒着防
止材として実用化されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】具体的に、前記癒着防
止材が前記癒着防止機能を果たすためには、前記癒着防
止材が、必要な期間、癒着のおそれがある適用部位(患
部)に存在し、前記適用部位の組織間のバリアとして働
いた上で、最終的に分解され、生体に吸収される必要が
ある。つまり、前記癒着防止材には、生体適合性、生体
吸収性等に優れることが求められている。
【0004】また、前述のように生体適合性等に優れる
癒着防止材であっても、これらの機能が十分に発揮され
るためには、前記適用部位にしっかりと固定されていな
ければならず、通常、その固定化方法として、縫合糸に
よる縫合や、接着剤による接着等の方法がとられてい
る。
【0005】しかしながら、前述のような従来の癒着防
止材は、例えば、生体内において、必要な期間、その形
態を維持した状態で、癒着防止機能を発揮することが困
難であり、また、縫合や接着等に耐え得る強度を有して
いないため、破れる場合があり、取扱いや適用部位への
固定が困難であった。
【0006】例えば、近年、研究開発され、実用化に至
っている生体適合性、生体吸収性等に優れるゼラチンフ
ィルム製癒着防止材(例えば、特開平11−23961
0号公報、特開平2000−37450号公報等)は、
それ自身が適用部位の組織表面に接着固定する能力に劣
るため、適用部位への固定として、前述のような縫合・
接着の方法が採用されている。しかし、このようなゼラ
チンフィルムは、組織に適用すると、前記組織の水分を
吸収することによって、水を含んだハイドロゲルの状態
になるため、縫合固定等が困難であるという問題があっ
た。
【0007】そこで、本発明の目的は、生体適合性、生
体吸収性に優れ、かつ、縫合や接着に対する強度にも優
れる癒着防止材の提供である。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明の癒着防止材は、ゼラチンフィルム製の癒着
防止材であって、前記ゼラチンフィルムに、生体内分解
吸収性高分子製の補強材が配置された構造である。な
お、本発明において、前記ゼラチンフィルムは、例え
ば、多孔質であっても無孔であってもよい。
【0009】本発明によれば、前記ゼラチンフィルム
を、前記生体分解吸収性高分子製の補強材の配置によっ
て補強することで、十分な強度が付与されるため、適用
部位への固定も容易になり、また、必要時間その固定を
保つことができる。このため、前記ゼラチンフィルムに
よる癒着防止効果が、適用部位において、十分に発揮さ
れる。また、前記補強材は、臨床において使用実績のあ
る生体適合性の生体分解吸収性高分子製であることか
ら、例えば、生体内に残存して、組織と異物反応を起こ
すこと等も回避できる。したがって、本発明の癒着防止
材は、外科手術等の臨床分野において、非常に有用であ
る。
【0010】本発明の癒着防止材において、前記ゼラチ
ンフィルムの縫合部位に、前記補強材が配置されている
ことが好ましい。このように縫合部位に配置すれば、縫
合によって、前記ゼラチンフィルムが破れることも十分
に回避できる。
【0011】本発明の癒着防止材において、癒着防止は
ゼラチンフィルムの機能であるため、縫合部位以外はゼ
ラチンフィルムであることが好ましく、前記ゼラチンフ
ィルムの縁部に補強材が配置されていることが好まし
い。また、本発明の癒着防止材の形状は、特に制限され
ないが、シート状の他に、筒状であってもよい。
【0012】本発明の癒着防止材において、前記補強材
は、布状体またはフィルム体であることが好ましく、前
記フィルム体は、例えば、多孔質フィルムでも無孔質フ
ィルムであってもよい。
【0013】本発明の癒着防止材において、前記ゼラチ
ンフィルムへの前記補強材の配置は、特に制限されず、
例えば、接着剤等により一体化されていてもよいが、前
記補強材内部の全部または一部にゼラチンが侵入してゲ
ル化していることにより、前記補強材とゼラチンフィル
ムとが一体化していることが好ましい。このように、前
記補強材内部においてもゼラチンをゲル化させれば、ゼ
ラチンのフィルム形成と一体化とを同時に行うことがで
き、また、接着剤等の他の手段により、ゼラチンフィル
ムと補強材とを一体化する必要もないため、製造がより
一層簡便となり、かつ、強固に一体化することができ
る。
【0014】本発明の癒着防止材において、補強材であ
る前記布状体は、特に制限されないが、不織布、織物、
編物および組紐であることが好ましく、より好ましく
は、不織布と織物の複合体、不織布と編物の複合体、お
よび不織布と組紐の複合体からなる群から選択された少
なくとも一つの複合体である。
【0015】また、前記不織布としては、例えば、メル
トブロー法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、フラ
ッシュ紡糸法等の方法により製造された不織布であるこ
とが好ましい。
【0016】本発明の癒着防止材において、前記布状体
は、加熱プレス処理されていることが好ましい。加熱プ
レス処理すれば、繊維間の接着性が向上し、また、毛羽
の発生も抑制できる。
【0017】また、前記布状体の性質・形状は、特に制
限されないが、十分な強度が得られることから、前記布
状体の目付けは、5〜200g/m2の範囲であること
が好ましく、その厚みは、10〜500μmの範囲であ
ることが好ましい。
【0018】前記布状体の糸掛け張力は、0.3〜20
0Nの範囲であることが好ましい。この糸掛け張力は、
例えば、以下の方法で求めることができる。
【0019】(糸掛け張力の測定方法)試料(5mm×
50mm)を準備し、前記試料の長手方向の両端を、2
つのチャック間距離が20mmになるように固定する。
つぎに、前記試料の長手方向の中点の幅方向の端から2
mmのところに、針つき3−0ナイロン糸(ネスコスー
チャー、1/2円形丸針)(商品名ネスコスーチャー;
アズウェル社製)を通し、糸を通した点から50mmの
ところで糸の端を固定する。そして、前記試料を固定し
たまま、糸の端を100mm/minの速度で引張り、
その最大強力(糸掛け張力)を測定装置(商品名インス
トロン4302:インストロン社製)によって測定す
る。
【0020】本発明の癒着防止材において、補強材であ
る前記フィルム体としては、特に制限されず、例えば、
プレス法、キャスト(流延)法、押出法等の通常公知の
方法により製造されたフィルム体を使用できる。また、
前記フィルム体の厚みは、例えば、前記布状体と同程度
であることが好ましい。
【0021】本発明の癒着防止材において、前記生体内
分解吸収性高分子は、ポリ乳酸、乳酸−カプロラクトン
共重合体およびポリグリコール酸からなる群から選択さ
れた少なくとも一つの高分子であることが好ましく、こ
の中でも、補強材を形成した場合に適度な分解吸収性を
示すことから、ポリ乳酸および乳酸−カプロラクトン共
重合体であることが好ましい。
【0022】本発明の癒着防止材において、前記補強材
は、親水化処理されていることが好ましい。補強材表面
が親水化されることによって、ゼラチンフィルムとの一
体化にも優れ、前記ゼラチンフィルムから補強材が剥離
し難くなるからである。前記親水化処理の方法として
は、例えば、プラズマ処理、グロー放電処理、コロナ放
電処理、オゾン処理、表面グラフト処理、コーティング
処理、薬品処理、紫外線照射処理等の方法があげられ、
これらの中でもプラズマ処理が好ましい。
【0023】本発明の癒着防止材において、前記ゼラチ
ンフィルムは、例えば、架橋処理によって、生体内で所
望の期間経過後に分解されるように設定された、架橋フ
ィルムであることが好ましい。これは、前述のように、
癒着防止材は、必要な期間、適用部位に存在して癒着防
止機能を発揮する必要があり、かつ、前記期間を経過し
た後、組織との異物反応を回避するために、生体内で分
解・吸収される必要があるためである。なお、ゼラチン
フィルムの架橋度は、その値が相対的に高いほど、生体
内での分解が遅くなることを示す。
【0024】本発明の癒着防止材において、前記ゼラチ
ンフィルムは、紫外線処理、熱処理および化学的架橋剤
処理等の手段から選択された少なくとも一つの処理方法
によって架橋されていることが好ましい。
【0025】本発明の癒着防止材において、前記ゼラチ
ンフィルムが、紫外線照射灯4〜40W、照射時間0.
1〜100時間、照射距離5〜100cmの条件で架橋
処理されていることが好ましい。なお、紫外線処理は、
例えば、紫外線強度、すなわち、紫外線照射灯電力、照
射時間、照射距離等の種々の条件によって、架橋程度は
異なることから、ゼラチンフィルムの所望の分解時間に
応じて、前記条件は、適宜決定することができる。
【0026】本発明の癒着防止材において、前記ゼラチ
ンフィルムの生体内存在時間が、12時間〜30日の範
囲であることが好ましい。本発明において、「生体内存
在時間」とは、前記癒着防止材を生体内に適用してか
ら、生体内でゼラチンフィルムが分解・吸収される時間
をいう(以下、「分解時間」ともいう)。なお、同じゼ
ラチンフィルムであっても、前記生体内存在時間は、適
用する器官によって異なるため、適用部位に応じて前記
生体内存在時間を設定することが好ましい。
【0027】本発明の癒着防止材において、前記ゼラチ
ンフィルムの厚みは、取扱い等の点から、20〜200
0μmの範囲であることが好ましい。
【0028】本発明の癒着防止材は、生体内において適
用されることから、安全性を確保すべく、前記ゼラチン
に含まれるエンドトキシン濃度が、0を超え200EU
/g以下であることが好ましく、検出限界以下であるこ
とがより好ましい。なお、エンドトキシンの含有量は、
理想的には全く無いこと、すなわち0であることだが、
これは実際的ではないので、その下限値は「0を超え」
とした。また、本発明の癒着防止材は、その他の問題物
質を実質的に含有しないか、法的もしくは医学的許容範
囲未満であることが好ましい。
【0029】
【発明の実施の形態】本発明におけるゼラチンフイルム
は、前述のように適用部位によって分解時間は異なる
が、例えば、12時間〜90日で分解されることが好ま
しく、より好ましくは1〜30日の範囲であり、特に好
ましくは2〜7日の範囲である。分解時間が12時間以
上であれば、十分に組織の癒着を防ぐことが可能であ
り、分解時間が90日以下、特に30日以下であれば、
十分に癒着を防止し、かつ、ゼラチンフィルムが適用部
位において癒着防止以外の反応(例えば、異物反応等)
が発生することもない。この分解時間は、後述する架橋
処理によって設定することもできる。
【0030】前記ゼラチンフィルムの厚みは、例えば、
適用部位、ゼラチンフィルムの所望の分解時間等に応じ
て適宜決定できるが、例えば、20〜2000μmの範
囲であり、好ましくは30〜500μmの範囲であり、
より好ましくは50〜200μmの範囲である。前記ゼ
ラチンフィルムの厚みが、例えば、20μm以上であれ
ば、さらに強度に優れ、また、厚みが2000μm以下
であれば、さらに柔軟性に優れ、取り扱いが容易なフィ
ルムとなる。
【0031】また、前記ゼラチンフィルムにおいて、以
下の方法で測定した含水率は、例えば、70〜99%で
あり、好ましくは75〜97.5%であり、より好まし
くは80〜95%である。なお、前記含水率は、例え
ば、その値が相対的に低いほど、ゼラチンフィルムの生
体内における分解が遅くなることを示す。また、ゼラチ
ンフィルムが架橋されている場合は、前記含水率が相対
的に低いほど、その架橋度が高く、生体内での分解が遅
くなることを示す。
【0032】前記含水率は、例えば、まず、前記フィル
ムを25℃の水中に12時間浸漬した後、その湿潤重量
を測定する。続いて、該フィルムを真空乾燥機で完全に
乾燥し、乾燥後のフィルムの乾燥重量を測定する。そし
て、下記式に前記重量をそれぞれ代入して、含水率を求
めることができる。
【0033】含水率(%)=100×(湿潤重量−乾燥
重量)/(湿潤重量)
【0034】ゼラチンフィルムの原料としては、例え
ば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ等の哺乳類動物や鳥類
等の骨、腱、皮膚、とさか等から抽出したゼラチンが使
用できる。これらのゼラチンは、例えば、前記動物から
抽出して調製してもよいが、通常、市販の製品が使用で
きる。前記抽出方法としては、特に制限されず、例え
ば、従来公知の酸処理、アルカリ処理等の方法等があげ
られる。
【0035】市販のゼラチンとしては、例えば、エンド
トキシン含有量が極めて少ない、安全性に優れたアルカ
リ処理ゼラチンが好ましく、具体的には、株式会社ニッ
ピ社製のウシ由来アルカリ処理ゼラチン、ブタ由来酸処
理ゼラチン等が例示できる。
【0036】また、ゼラチンフィルムの原料としては、
ゼラチンの他に、例えば、フィルムに柔軟性を付与する
ため、グリセリン、ポリエチレングリコール、ヒアルロ
ン酸、あるいは抗菌剤、抗炎症剤等の添加物を使用して
もよい。
【0037】ゼラチンフィルムは、ゼラチンを、例え
ば、キャスト法、押出し法等の方法によってフィルム化
することにより製造でき、好ましくはキャスト法であ
る。
【0038】前記キャスト法によるフィルム化は、例え
ば、以下に示すように行うことができる。
【0039】まず、原料のゼラチンを加温状態の溶媒に
溶解させる。前記溶媒としては、例えば、蒸留水、ジメ
チルスルホキシド(DMSO)等や、これらの混合液等
が使用でき、この中でも取扱いの点で蒸留水が好まし
い。ゼラチンの添加割合は、例えば、溶媒100mL当
たり0.1〜50gの範囲であり、好ましくは1〜30
gの範囲であり、より好ましくは5〜20gの範囲であ
る。溶解温度は、例えば、10〜80℃の範囲であり、
好ましくは30〜70℃の範囲であり、より好ましくは
40〜60℃の範囲である。また、溶解時間は、前記ゼ
ラチンが溶解できれば特に制限されないが、例えば、1
分〜100時間の範囲であり、好ましくは5分〜50時
間の範囲であり、より好ましくは10分〜24時間の範
囲である。
【0040】前述のようなゼラチン以外の添加物を含む
場合、その添加割合は、ゼラチン1gに対して、例え
ば、1mg〜20gの範囲であり、好ましくは5mg〜
10gの範囲であり、より好ましくは10mg〜5gの
範囲である。
【0041】このゼラチン溶解液をシャーレに流し込
み、乾燥させることによって、ゼラチンフィルムが製造
できる。シャーレの大きさは、特に制限されず、所望の
フィルムの長さ、幅、厚み等に応じて設定してもよい
し、また、フィルム化後、所望の大きさにカットして使
用してもよい。
【0042】前記ゼラチン溶解液は、例えば、シャーレ
の面積(cm2)当たり0.01〜3mLの範囲で流延
することが好ましく、より好ましくは0.03〜1mL
の範囲であり、特に好ましくは0.05〜0.5mLの
範囲である。
【0043】乾燥条件は、例えば、自然乾燥、加熱乾
燥、減圧乾燥(真空乾燥)、強制排気乾燥、強制循環対
流等により行うことができる。具体的に、乾燥温度は、
例えば、−40〜90℃の範囲であり、好ましくは0〜
50℃の範囲であり、より好ましくは10〜30℃の範
囲である。また、乾燥時間は、例えば、1〜100時間
の範囲であり、好ましくは3〜50時間の範囲であり、
より好ましくは5〜24時間の範囲である。
【0044】前記一連のフィルム化工程は、例えば、ク
リーンベンチ、クリーンルーム内で無菌的に行うことが
好ましい。これは、作業中における雑菌の繁殖によっ
て、ゼラチンフィルムが汚染することを防止するためで
ある。したがって、使用する製造器具は、例えば、オー
トクレーブ、EOG(エチレンオキサイドガス)、乾
熱、電子線等で滅菌処理されたものを使用することが好
ましい。また、前記ゼラチン溶解液も、例えば、従来公
知のフィルターろ過滅菌を行ってから前記工程に供する
ことが好ましい。
【0045】得られたゼラチンフィルムは、そのまま使
用してもよいが、前述のように、生体内における分解時
間を所望の時間に設定できることから、さらに架橋処理
を施すことが好ましい。
【0046】架橋の方法としては、例えば、UV(紫外
線)照射、熱処理、化学架橋剤処理等による架橋方法が
採用できる。前記化学架橋剤としては、例えば、アルデ
ヒド類、エポキシ類、カルボジイミド類、イソシアネー
ト類、タンニン、クロム等があげられる。前記アルデヒ
ド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、グルタルア
ルデヒド、酸アルデヒド、グリオキザール、マロン酸ジ
アルデヒド、スクシン酸ジアルデヒド、フタル酸アルデ
ヒド、ジアルデヒドデンプン、ポリアクロレイン、ポリ
メタクロレイン等があげられる。また、エポキシ類とし
ては、例えば、グリセロールジグリシジルエーテル、ソ
ルビトールジグリシジルエーテル、エチレングリコール
ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリ
シジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエー
テル等があげられる。カルボジイミド類としては、水溶
性カルボジイミド(例えば、1−エチル−3−(3−ジ
メチルアミノプロピル)カルボジイミド、シクロヘキシ
ル−3−(2−モルフォリノエチル)カルボジイミド
等)、ジシクロヘキシルカルボジイミド等があげられ
る。これらの化学架橋剤は、前記ゼラチンを架橋できれ
ば、その種類は特に制限されず、例えば、一種類でもよ
いし、二種類以上を併用してもよい。
【0047】前記架橋処理方法の中でも、好ましくは、
UV照射である。UV照射によれば、例えば、体内で比
較的短時間で分解され、低分子の毒性化学物質も残存せ
ず、また、製品の変形が起こりにくいという効果等に一
層優れた架橋ゼラチンフィルムを、容易に得ることがで
きる。
【0048】前記UV照射により架橋を行う場合、例え
ば、UV照射灯電力、照射時間、照射距離等の条件は、
ゼラチンフィルムの所望の分解時間に応じて適宜決定で
きる。UV照射灯電力は、例えば、4〜40Wの範囲で
あり、好ましくは8〜30Wの範囲であり、より好まし
くは12〜20Wの範囲である。照射時間は、例えば、
0.1〜100時間の範囲であり、好ましくは0.5〜
60時間の範囲であり、より好ましくは1〜50時間の
範囲である。照射距離は、例えば、5〜100cmの範
囲であり、好ましくは10〜90cmの範囲であり、よ
り好ましくは20〜80cmの範囲である。
【0049】具体的には、例えば、UV照射灯電力が4
〜40Wの範囲の場合、照射時間0.1〜100時間、
照射距離5〜100cmの範囲であることが好ましく、
より好ましくは、UV照射灯電力が8〜30Wの範囲の
場合、照射時間0.5〜60時間、照射距離10〜90
cmの範囲であり、特に好ましくは、UV照射灯電力が
12〜20Wの範囲の場合、照射時間1〜50時間、照
射距離20〜80cmの範囲である。
【0050】特に、UV照射灯電力15W、照射時間5
〜30時間、照射距離は、30〜70cmの条件で作製
した架橋ゼラチンフィルムについては、発明者らが行っ
た実験において、分解性、安全性、強度等に関して、よ
り一層優れたフィルムであることが証明されている。具
体的には、例えば、UV照射灯電力15W、照射時間2
0時間、照射距離60cmの条件で架橋した厚み100
μmの架橋ゼラチンフィルムは、ラットの腹腔内に縫着
した場合は約1週間、イヌの心膜に縫着した場合は約4
週間以内に分解・消失した。このことから、種々の適用
部位に応じた所望の分解時間となるように、前記条件で
作製した架橋ゼラチンフィルムは、特に臨床への有用性
に優れているといえる。
【0051】つぎに、本発明における前記補強材は、補
強を目的とすることから、前記ゼラチンフィルムがその
役目を果たし、分解・吸収されれば、前記補強材自身も
体内に残る必要はなく、また、体内に残存して、適用部
位の組織と無用な異物反応を引き起こすことを回避する
ためにも、分解吸収される必要がある。このため、前述
のような生体内分解吸収性高分子製の布状体やフィルム
体等が使用される。
【0052】なお、補強材は、一層でもよいが、二層以
上の積層体でもよい。積層体の場合、1種類の布状体や
フィルム体から構成されてもよいが、例えば、二種以上
の布状体やフィルム体から構成されてもよい。
【0053】前記補強材は、前述のように生体内に残存
しなければ特に制限されないが、補強材としての使用で
あることから、ある程度の強度と柔軟性を有し、かつ分
解性を有することが望ましい。また、臨床で使用実績の
ある生体適合性を有するものや、異物反応や炎症の少な
いものが好ましい。このため、前記生体分解吸収性高分
子としては、前述のようなポリ乳酸、乳酸−カプロラク
トン共重合体、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸
共重合体、乳酸−エチレングリコール共重合体、ポリジ
オキサノン、グリコール酸−カプロラクトン共重合体、
グリコール酸−トリメチレンカーボネート共重合体、グ
リコール酸−ジオキサノン−トリメチレンカーボネート
共重合体、コラーゲン、キチン、キトサン、フィブリン
等があげられ、好ましくはポリ乳酸、乳酸−カプロラク
トン共重合体、ポリグリコール酸、コラーゲンである。
【0054】前記布状体の形態としては、前述のよう
に、織物、不織布、編物、平組紐等の組紐等があげられ
る。この中でも、不織布は、細い繊維が高度に絡まりあ
った構造で、方向性がなく、また、厚み設定の容易性、
柔軟性に一層優れることから、特に好ましい。また、編
物、織物は、例えば、厚み設定の容易性、柔軟性、強
度、糸掛け張力に一層優れることから、特に好ましい。
更に、編物、織物、組紐の何れかと不織布との一体化物
(複合体)は、両者の利点を併せ持っていることから、
特に好ましい。
【0055】補強材が前記布状体の場合、その糸掛け張
力は、例えば、0.3〜200Nの範囲であることが好
ましく、より好ましくは0.4〜150Nの範囲であ
り、特に好ましくは0.5〜100Nの範囲である。な
お、この値は、前述の方法によって求めることができ
る。
【0056】また、前記布状体の目付け量は、例えば、
5〜200g/m2の範囲であり、好ましくは8〜80
g/m2の範囲であり、より好ましくは10〜60g/
2の範囲である。
【0057】前記布状体は、前記ゼラチンフィルムの大
きさや所望の強度に応じて、適宜決定されるが、その厚
みは、例えば、10〜1000μmの範囲であり、好ま
しくは20〜800μmの範囲であり、より好ましくは
30〜600μmの範囲である。また、前述のような積
層体の場合は、例えば、10〜1000μmの範囲が好
ましく、より好ましくは20〜800μmの範囲、特に
好ましくは30〜600μmの範囲である。なお、補強
材であるフィルム体も同様である。
【0058】前記不織布は、例えば、従来公知の方法で
ある、メルトブロー法、ニードルパンチ法、スパンボン
ド法、フラッシュ紡糸等の方法によって作製できる。こ
の中でも、溶剤を使用せず、繊維の直径をより小さく
し、細繊維を高度に絡み合わせて、薄い布を容易に作製
できることから、メルトブロー法が特に好ましい。
【0059】前記メルトブロー法は、例えば、溶融した
原料を、押出機のダイから集積スクリーン上に、高速度
の気流で吹き飛ばし、交絡させることによって、自己接
着性マイクロファイバーのウェブを製造する製造方法で
ある。
【0060】前記ポリ乳酸製またはポリグリコール酸製
の不織布を製造する場合、ラクチドまたはグリコリドを
それぞれ原料として重合した重合体を使用し、乳酸−カ
プロラクトン共重合体製の不織布を製造する場合、ラク
チドとカプロラクトンとを混合して重合した共重合体を
使用する。この場合、ラクチド(A)とカプロラクトン
(B)とのモル比(A:B)は、例えば、A:B=8
5:15〜40:60の範囲であり、好ましくは、8
2:18〜42:58の範囲であり、より好ましくは8
0:20〜45:55の範囲である。
【0061】以上のような方法により作製した不織布等
の布状体は、そのまま本発明の癒着防止材における補強
材として使用することも可能であるが、前述のように毛
羽等の糸くずの発生を抑制し、繊維間の接着性をより一
層向上させるために、さらに、熱プレス加工することが
好ましい。
【0062】前記熱プレス処理は、例えば、不織布のウ
ェブ形成直後に行ってもよいし、真空熱乾燥処理してか
ら行ってもよい。なお、この処理は、前記不織布等の補
強材の両面について行うことが好ましい。
【0063】前記ウェブ形成直後に行う場合、その条件
は、例えば、温度65〜95℃の範囲、圧力0.01〜
5MPaの範囲であり、好ましくは、温度70〜85℃
の範囲、圧力0.05〜2MPaの範囲、より好ましく
は温度75〜80℃の範囲、圧力0.1〜1MPaの範
囲である。
【0064】一方、後者の場合、まず、前記真空熱乾燥
処理を、例えば、以下の条件で行う。乾燥温度は、例え
ば、40〜135℃の範囲であり、好ましくは、50〜
125℃の範囲であり、より好ましくは60〜115℃
の範囲である。また、乾燥時間は、例えば、1〜70時
間の範囲であり、好ましくは、5〜50時間の範囲、よ
り好ましくは、10〜30時間の範囲である。
【0065】続いて、熱プレス処理を以下の条件で行う
ことが好ましい。処理条件は、例えば、温度80〜11
0℃の範囲、圧力0.01〜5MPaの範囲の範囲であ
り、好ましくは、温度85〜105℃の範囲、圧力0.
05〜2MPaの範囲の範囲、より好ましくは温度90
〜100℃の範囲、圧力0.1〜1MPaの範囲の範囲
である。前記加熱温度が80℃以上であれば、十分に毛
羽立ちをなくすことができ、また、110℃以下であれ
ば、優れた柔軟性を保持できる。
【0066】また、前述のように補強材を、例えば、2
枚以上の布状体からなる二層以上の積層体とする場合
も、布状体を重ね合わせた後に熱プレス処理を施して一
体化させればよい。
【0067】また、補強材は、ゼラチンフィルムとの接
着性を向上させるために、親水化処理を施すことが好ま
しい。親水化処理としては、前述のようにプラズマ処理
やグロー放電処理、コロナ放電処理、オゾン処理、表面
グラフト処理、コーティング処理、薬品処理、紫外線照
射処理処理等があげられるが、特にプラズマ処理が好ま
しい。
【0068】プラズマ処理の条件は、特に制限されない
が、例えば、圧力1.33〜1330Paの酸素ガス雰
囲気中、温度0〜100℃の範囲、電力5〜200Wの
範囲であることが好ましく、より好ましくは、5〜50
0Paの酸素ガス雰囲気中、温度10〜50℃の範囲、
電力10〜100Wの範囲である。また、処理時間は、
例えば、1秒〜1000秒の範囲で行えばよく、好まし
くは3秒〜600秒の範囲である。
【0069】このプラズマ処理は、前記酸素ガスの他に
も、例えば、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、アンモ
ニア、一酸化炭素、水蒸気を使用してもよい。
【0070】本発明の癒着防止材は、前述のように、前
記ゼラチンフィルムに前記補強材が配置された構造であ
り、その形状および大きさは、特に制限されず、例え
ば、適用する部位に応じて適宜決定できる。例えば、全
体長さ0.5〜50cmの範囲、全体幅0.3〜20c
m、全体厚み20〜2000μmである。また、好まし
くは、全体長さ0.7〜30cmの範囲、全体幅0.4
〜15cm、全体厚み30〜500μmであり、より好
ましくは全体長さ1〜20cmの範囲、全体幅0.5〜
10cm、全体厚み50〜200μmである。
【0071】前記補強材の大きさは、例えば、適用部位
やゼラチンフィルムの大きさにより適宜決定される。ま
た、ゼラチンフィルムに対する配置箇所は、特に制限さ
れないが、本発明の癒着防止材において、癒着防止の機
能は、前記ゼラチンフィルムが発揮することから、前記
補強材は、縫合や接着剤による接着等に対する補強が十
分に行われる範囲において、出来るだけ少ない面積で一
体化されていることが好ましい。このため、前述のよう
に、ゼラチンフィルムの縫合部位に配置することが好ま
しく、また、ゼラチンフィルムの縁部のみに前記補強材
(不織布やフィルム等)を配置することが好ましい。
【0072】具体的には、ゼラチンフィルムの大きさ
が、長さ0.5〜50cm、幅0.3〜20cm、厚み
20〜2000μmの場合、前記補強材は、その縁部に
幅1〜30mmの範囲で配置することが好ましく、より
好ましくは幅1.5〜20mmの範囲であり、特に好ま
しくは幅2〜10mmの範囲である。また、その厚み
は、10〜1000μmの範囲が好ましく、より好まし
くは20〜800μmの範囲、特に好ましくは30〜6
00μmの範囲である。
【0073】前記癒着防止材は、前記ゼラチンフィルム
に前記補強材を配置した部分における、前述のような糸
掛け張力が、例えば、0.20〜200Nの範囲である
ことが好ましく、より好ましくは0.25〜150Nの
範囲であり、特に好ましくは0.30〜100Nの範囲
である。
【0074】前記架橋ゼラチンフィルムに前記補強材を
配置する方法としては、例えば、以下に示す5つの方法
があげられる。なお、これらの方法は、図1の平面図
(上面図)に示すようにゼラチンフィルム11の縁部に
のみ補強材12を配置した癒着防止材を製造する例であ
る。
【0075】第1の方法は、まず、前記ゼラチン溶解液
を前述のようなシャーレに流し込み、これに図1に示す
ような四角形枠型の補強材を浸漬させ、前記補強材内部
に前記ゼラチン溶解液を染み込ませる。この場合、前記
内部に十分にゼラチン溶解液を含浸させるために、補強
材に親水化処理を施したり、あるいは、前記ゼラチン溶
液を脱気処理することが好ましい。そして、前記ゼラチ
ンを前述と同様に、ゲル化し、乾燥させる。これによ
り、ゼラチンフィルムの形成と共に、補強材内部におい
てもゼラチンがゲル化され、図2の断面図(図1のI−
I方向断面図)に示すように、内部でゼラチンがゲル化
した補強材22とゼラチンフィルム21とが一体化され
た、癒着防止材が作製できる。なお、同図におけるドッ
トは、不織布内部におけるゲル化したゼラチンの存在を
示すため、ゼラチンを模式的に表わしたものであり、図
3および図4においても同様である。
【0076】第2の方法は、まず、前記ゼラチン溶解液
を前記シャーレに流し込み、前記ゼラチンのゲル化を開
始する。そして、完全にゼラチンがゲル化する前に、ゲ
ル化直前のゼラチン上に四角形枠型の補強材を載せ、さ
らに完全にゲル化し、乾燥させる。そうすると、前記補
強材内部には部分的に前記ゼラチン溶解液が浸透するた
め、ゼラチンフィルムの形成と共に、補強材内部におい
てもゼラチンがゲル化する。これによって、図3の断面
図に示すように、前記補強材32とゼラチンフィルム3
1とが一体化した、癒着防止材が作製できる。
【0077】この方法によれば、例えば、補強材内部に
十分に前記ゼラチン溶解液を含浸させるために、前記脱
気処理等を行う必要もないため、前記第1の方法よりも
さらに簡便に一体化を行うことができる。
【0078】第3の方法は、例えば、前記第2の方法に
より一体化させた補強材とゼラチンフィルムとの複合体
を、前記補強材が対面するようにゼラチン溶解液に浸漬
する方法である。これによって、図4に示すように、前
記補強材42がゼラチンフィルム41、43内に埋め込
まれた構造の癒着防止材が得られる。なお、同図におい
て、ゼラチンフィルム41と43とは、二回目のゲル化
によって一体化されている。このような構造の癒着防止
材によれば、例えば、その表面に補強材が出ないため、
適用部位の全面にゼラチンフィルムを接触させることが
できる。
【0079】第4の方法は、予め、所望の厚みとなるよ
うに対抗させたガラス板とガラス板との間に所望の形状
の不織布を保持させ、前記ガラス板の間に前記ゼラチン
溶解液を流し込み、これを冷却してゲル化した後、乾燥
する方法である。この場合も、ゼラチン溶解液が部分的
に、前記補強材に浸透してからゲル化するため、補強材
とゼラチンフィルムとが一体化した癒着防止材を得るこ
とができ、前記第3の方法による癒着防止材と同様に、
その表面に補強材が出ないため、例えば、適用部位の全
面にゼラチンフィルムを接触させることができる。
【0080】以上のような方法は、補強材へのゼラチン
溶解液の浸透を利用して、前記補強材内部の全部または
一部においてもゼラチンをゲル化するため、ゼラチンフ
ィルムと補強材との一体化を十分に行うことができ、こ
のようにして得られた癒着防止材は、例えば、使用に際
して、補強材が剥離することもなく、癒着防止材の縫合
等に対する優れた強度を維持することができる。なお、
前記一体化は、前述の方法には限定されず、例えば、接
着剤等により行ってもよい。また、前記一体化の後に、
さらに前述のような架橋処理を施してもよい。また、本
発明は、以上のようにゼラチンフィルムの一部に補強材
を配置する形態だけでなく、前記ゼラチンフィルムの全
面に補強材を配置した形態でもよい。
【0081】また、本発明の癒着防止材は、前述のよう
にゼラチンフィルムに前記補強材を配置したものを、そ
のままシート状の形態で使用することもできるが、例え
ば、予め、筒状にした形態であってもよい(以下、「筒
状癒着防止材」という)。
【0082】このような筒状癒着防止材は、例えば、腱
や神経の癒着防止材または神経の誘導管として使用する
ことができる。具体的には、例えば、切断された神経の
両末端を前記筒状癒着防止材の筒内に差し込んだ状態
で、神経と前記筒状癒着防止材の縫合部(補強材の配置
部)とを縫合する。
【0083】前記筒状癒着防止材は、例えば、図5の斜
視図に示すように、筒状のゼラチンフィルム51の両端
部(軸方向端部)外周に、補強材52が配置された構造
である。その大きさは、特に制限されず、例えば、適用
する部位に応じて適宜決定できる。例えば、全体長さ
0.3〜30cmの範囲、内部直径1mm〜1cmの範
囲であり、ゼラチンフィルムおよび補強材の厚みは、前
述と同様である。
【0084】このような筒状癒着防止材は、例えば、以
下のようにして作製できる。まず、長方形のゼラチンフ
ィルムを準備し、その幅方向の両端部および長手方向の
両端部に、補強材を配置する。そして、これを丸めて筒
状にし、前記ゼラチンフィルムの幅方向端部を、前記補
強材を配置した箇所で重ね合わせ、接着剤で接着または
生体吸収性縫合糸で縫合すれば、筒状癒着防止材が得ら
れる。なお、本発明の癒着防止材において、補強材は、
筒状のゼラチンフィルムの内周面、外周面のいずれに配
置されてもよいが、ゼラチンフィルムが癒着防止効果を
発揮すること、筒の内部に切断された神経等を挿入する
ことから、図5に示すように、ゼラチンフィルム51の
外周に補強材52が配置されることが好ましい。
【0085】前記筒状癒着防止材は、前述のような作製
方法には限定されず、例えば、ゼラチンフィルムを筒状
に丸めて、接着剤や前述のゼラチンのゲル化等により接
着して筒状体を形成してから、その端部に補強材を配置
してもよい。さらに、ゼラチンと補強材とを筒状の型の
中にいれてから、ゼラチンをゲル化させ、ついで乾燥す
ることによって得ることもできる。
【0086】また、前述のようなシート状の癒着防止材
であっても、使用時に、筒状体として使用することもで
きる。例えば、図6の斜視図に示すように、ゼラチンフ
ィルム61の幅方向両端に補強材62を配置した癒着防
止材を、丸めた形状とし、これを、切断した腱等を縫合
した後、前記縫合部位に被覆するように捲回して、補強
材62の配置部で縫合すれば、筒状体として使用するこ
とができる。
【0087】
【実施例】(実施例1) (不織布の製造1)重量平均分子量(MW)95万のポ
リ−L−乳酸を原料とし、スクリュー径20mmの汎用
小型押出機を用いてメルトブロー法により不織布を作製
した。メルトブローダイの構成は、ノズル数126本
(150mm幅)、ノズル径0.3mmである。ホッパ
ー内を窒素ガスパージし、ノズル温度250℃で紡糸を
行い、ギアポンプにより吐出量とベルトコンベア速度と
を調整することによって、積層量を制御しながら、2種
類の、不織布A(目付20g/m2、厚み200μm)
および不織布B(目付け35g/m2、厚み350μ
m)を製造した。これらの不織布は、105℃で20時
間真空乾燥することによって、残留モノマーを除去し、
結晶化を促進させた。
【0088】(不織布の製造2)重量平均分子量(M
W)40万のL−乳酸−ε−カプロラクトン共重合体
(共重合比(モル比) L−ラクチド:ε−カプロラク
トン=75:25)を原料とし、スクリュー径20mm
の汎用小型押出機を用いてメルトブロー法により不織布
を作製した。メルトブローダイの構成は、ノズル数12
6本(150mm幅)、ノズル径0.3mmである。ホ
ッパー内を窒素ガスパージし、ノズル温度270℃で紡
糸を行い、ギアポンプにより吐出量とベルトコンベア速
度とを調整することによって積層量を制御して、3種類
の、不織布C(目付20g/m2、厚み200μm)、
不織布D(目付30g/m2、厚み300μm)および
不織布E(目付45g/m2、厚み450μm)を製造
した。
【0089】(熱プレス加工1)前記不織布A(目付2
0g/m2、厚み200μm)を、95℃、0.5MP
a(5kgf)の条件で、熱ロールプレス機により、表
裏を1回ずつプレスした。これにより、表面を平滑化さ
せた厚み35μmの不織布A2を得た。また、前記不織
布B(目付け35g/m2、厚み350μm)を同様に
処理して、表面を平滑化させた厚み50μmの不織布B
2を得た。
【0090】(熱プレス加工2)前記不織布D(目付3
0g/m2、厚み300μm)を、78℃、0.1MP
a(1kgf)の条件で、熱ロールプレス機により、表
裏を1回ずつプレスして、表面を平滑化させた。そし
て、このプレス処理後の不織布を、70℃で12時間真
空乾燥することにより、残留モノマーを除去し、結晶化
を促進させた不織布D2(厚み100μm)を得た。ま
た、同様にして前記不織布E(目付45g/m2、厚み
450μm)を処理することによって、不織布E2(厚
み200μm)を得た。
【0091】(ゼラチンフィルムとの一体化)以上のよ
うにして得られた各種不織布を、長手方向9cm、幅方
向7cmの長方形にカットし、さらに、その内部(長手
方向7cm、幅方向5cm)を切り抜いて、各辺の幅が
1cmである長方形枠状の不織布とした(外側9×7c
m、内側7×5cm)。
【0092】つぎに、ゼラチンを10重量%になるよう
に蒸留水に溶解し、これをシャーレ(大きさ14cm×
10cm)に流し込み、この上にカットした前記不織布
を載せ、ゼラチン溶解液を染み込ませた。そして、これ
らをそのまま風乾して、前記不織布とゼラチンフィルム
とが一体化した複合体を得た。前記複合体を、各辺の不
織布の幅が5mmとなるようにカットし、両面を殺菌灯
(東芝社製、GL−15、波長254nm、紫外線照射
灯電力15W、照射距離45cm)により紫外線を10
時間ずつ照射して架橋処理した。
【0093】得られた複合体(癒着防止材)について、
以下の方法により糸掛け張力を測定した。また、比較例
としては、不織布と複合しない以外は、同様にして作製
したゼラチンフィルムを試料とし、対照としては、前記
不織布を試料として、それぞれ同様に糸掛け張力を測定
した。
【0094】(糸掛け張力の測定方法)前記複合体か
ら、ゼラチンフィルムと不織布との積層部分を切り抜き
(5mm×50mm)、これを試料とした。前記試料を
30分間生理食塩水に浸漬させた後、前記試料の長手方
向の両端を、2つのチャック間距離が20mmになるよ
うに固定した。つぎに、前記試料の長手方向の中点の幅
方向の端から2mmのところに、針つき3−0ナイロン
糸(ネスコスーチャー、1/2円形丸針)(商品名ネス
コスーチャー;アズウェル社製)を通し、糸を通した点
から50mmのところで糸の端を固定した。そして、前
記試料を固定したまま、糸の端を100mm/minの
速度で引張り、その最大強力(糸掛け張力)を測定装置
(商品名インストロン4302:インストロン社製)に
よって測定した。なお、1種類の試料について5回測定
を行い、その平均値を求めた。これらの結果を下記表1
に示す。
【0095】 (表1) 原料 目付け プレス 最大強力 (g/m2) の有無 (N) (セ゛ラチンフィルムとの複合体) 不織布A ホ゜リ-L-乳酸 20 − 0.581 不織布A2 ホ゜リ-L-乳酸 20 + 0.613 不織布B ホ゜リ-L-乳酸 35 − 0.845 不織布B2 ホ゜リ-L-乳酸 35 + 0.891 不織布C 共重合体 20 − 0.210 不織布D 共重合体 30 − 0.240 不織布D2 共重合体 30 + 0.266 不織布E 共重合体 45 − 0.306 不織布E2 共重合体 45 + 0.353 (不織布のみ) 不織布D 共重合体 30 − 0.689 不織布D2 共重合体 30 + 0.695 (セ゛ラチンフィルムのみ)セ゛ラチンフィルム − − 0.199 ※ 共重合体:L−乳酸−ε−カプロラクトン共重合体
【0096】前記表1に示すように、前記不織布と一体
化させた複合体(癒着防止材)は、比較例であるゼラチ
ンフィルムに比べて、最大強力が高いことから、縫合性
に優れていることがわかる。特に、不織布の原料がポリ
−L−乳酸の場合、より高い最大強力が得られた。ま
た、目付を大きくすることによっても、より高い強力が
得られ、さらに、熱プレスを行えば、不織布の毛羽立ち
を減少させ、また、ゼラチンフィルムとの一体化および
最大強力にも優れることがわかった。
【0097】(実施例2、比較例2)以下に示す補強材
を用いて、各種癒着防止材(実施例2−1〜2−10)
を作製し、これらの機能を評価した。比較例2として
は、前記比較例1と同じゼラチンフィルムを使用し、同
様の評価を行った。以下に、補強材として使用した布状
体、および癒着防止材の製造方法を示す。なお、補強材
は、長手方向9cm、幅方向7cmの長方形にカット
し、さらに、その内部(長手方向7cm、幅方向5c
m)を切り抜いて、各辺の幅が1cmの長方形枠状とし
たものを使用した(外側9×7cm、内側7×5c
m)。
【0098】(A)布状体の製造方法 1.MB不織布 前記実施例1の(不織布の製造1)と同様に、ポリ−L
−乳酸を原料として、メルトブロー法により製造した。
作製した不織布は、厚み75μm、目付け35g/m2
あった。
【0099】2.平織地 通常使用される織機により、平織組織の布状体を得た。
その厚みは160μm、目付けは61g/m2であった。
【0100】3.ツインループニット地 作製したツインループニットは、糸の太さ56デシテッ
クス(dtex)、厚み215μm、ループ密度(縦)1
3、ループ密度(横)12、目付け31g/m2であっ
た。前記ループ密度の「縦」とは、「補強材の1.27
cm(1インチ)間における編おろし方向のループ数」
であり、「横」とは、「編機周方向のループ数」である
(以下、同じ)。dtex(デシテックス)は、太さの
SI単位である。図7に、ツインループニットの編み組
織の模式図を示す。なお、前記「周方向」とは、編機シ
リンダーやダイヤルの回転方向(コース密度)をいう
(以下、同じ)。
【0101】4.スムース編地(両面編) 21ゲージのスムース編機で編立して作製した。作製し
たスムース編は、糸の太さ56デシテックス、ループ密
度(縦)29、ループ密度(横)31.4、厚み530
μm、目付け83g/m2であった。スムース編について
の周方向のループ密度(横)は、表のシリンダーニード
ルのループ数と、裏のダイヤルニードルのループ数の合
計値を記載した。また、コースループの合計値は15.
7×2=31.4とした。
【0102】5.天竺編地(平編) 17ゲージの台丸編機で編立して作製した。作製した天
竺は、糸の太さ56デシテックス、ループ密度(縦)1
7、ループ密度(横)15、厚み215μm、目付け3
0g/m2であった。
【0103】6.度詰天竺編地(平編) 32ゲージのハイゲージシンカー編機で編立して作製し
た。度詰天竺とは、高密度なループに編成したものをい
う。作製した度詰天竺は、糸の太さ56デシテックス、
ループ密度(縦)28、ループ密度(横)18.4、厚
み215μm、目付け43g/m2であった。
【0104】7.度詰フライス編地(リブ編) 21ゲージのフライス編機で編立して作製した。作製し
た度詰フライスは、糸の太さ56デシテックス、ループ
密度(縦)27、ループ密度(横)30、厚み310μ
m、目付け62g/m2であった。なお、フライス編につ
いての周方向のループ密度(横)は、表のシリンダーニ
ードルのループ数と、裏のダイヤルニードルのループ数
の合計値を記載していた。
【0105】(B)癒着防止材の製造方法 実施例2-1 前記実施例1と同様のシャーレにカットした前記MB不
織布を敷き、その上に10重量%ゼラチン溶解液を流し
込み、ゼラチン溶解液を染み込ませた。そして、これら
をそのまま風乾して、前記不織布とゼラチンフィルムと
を一体化させた。この複合体を、各辺の不織布の幅が5
mmとなるようにカットし、両面を殺菌灯(東芝社製、
GL−15、波長254nm、紫外線照射灯電力15
W、照射距離45cm)により紫外線を10時間ずつ照
射して架橋処理を施し、これを癒着防止材とした。
【0106】実施例2-2〜2-5 補強材として、実施例2-2は平織地、実施例2-3はツイン
ループニット編地、実施例2-4スムース編地、実施例2-5
は天竺編地をそれぞれ使用した。まず、前記シャーレに
実施例2-1と同様にカットした前記補強材を敷き、その
上に前記ゼラチン溶解液を流し込み、これらをそのまま
風乾し、前記補強材とゼラチンフィルムとを一体化させ
た。そして、前記実施例2−1と同様にして架橋処理を
施して、癒着防止材を作製した。
【0107】実施例2-6 前記(A)の布状体の製造方法により得たMB不織布2
枚で度詰天竺を挟み、110℃、0.5MPa(5kg
f)の条件で、熱ロールプレス機により表裏を1回ずつ
プレスしたものを補強材とし、前記実施例2-2と同様に
して癒着防止材を作製した。
【0108】実施例2-7 実施例2-6と同様にして、前記(A)の布状体の製造方
法により得た度詰天竺編地をMB不織布で挟み込んで熱
プレス処理したものに、さらに室温、酸素ガス67Pa
(0.5torr)、50W、30秒の条件でプラズマ処理を
施した以外は、前記実施例2-2と同様にして癒着防止材
を作製した。
【0109】実施例2-8 度詰天竺に代えて、前記(A)の布状体の製造方法によ
り得たスムース編地を使用した以外は、前記実施例2-7
と同様にして癒着防止材を作製した。
【0110】実施例2-9 度詰天竺編地に代えて、前記(A)の布状体の製造方法
により得た度詰フライス編地を使用した以外は、前記実
施例2-7と同様にして癒着防止材を作製した。
【0111】(C)癒着防止材の機能評価 1.縫合性および剥離性 図8に示すように、作製した癒着防止材8から、幅10
mm、長さ50mmの断片を切りぬき、これを試料とし
た。図8(A)は癒着防止材の平面図、同図(B)はそ
の斜視図、同図(C)は切り抜いた試料の斜視図であ
る。なお、同図においては、ゼラチンフィルム81と、
ゼラチンフィルム81および補強材82の積層部分と
に、段差があるように示されているが、これは模式的に
表わしたものであって、実際には、前述のように、補強
材82にゼラチン溶解液が含浸しているため、例えば、
図2に示すような形態であり段差はほとんどみられな
い。同図(A)および(B)における点線が試料の切り
抜き部分であって、この試料はゼラチンフィルム81と
補強材82との積層部分およびゼラチンフィルム81の
みの単層部分の両方を含むものとした。同図(C)に前
記試料の大きさを示す。同図(C)において、矢印A方
向から見た図が、試料の平面図となる。そして、この切
り抜いた前記試料を、30分間生理食塩水に浸漬させ
た。
【0112】次に、浸漬後の前記試料を、図9に示すよ
うにセットした。図9は、前記試料をセットした平面図
であり、前記試料を図8(C)の矢印A方向から見た図
である。まず、図9の平面図に示すように、前記試料の
うち、ゼラチンフィルム81のみの単層部分の長手方向
両端を、2つのチャック間距離が20mmになるように
固定部材91で固定した。つぎに、前記試料の長手方向
の中点であって、前記積層部分の幅方向の端から2mm
のところに、針つき3−0ナイロン糸(ネスコスーチャ
ー、1/2円形丸針)(商品名ネスコスーチャー;アズ
ウェル社製)(図において92)を通し、糸を通した点
から50mmのところで糸の端を固定した。そして、前
記試料を固定したまま、糸の端を、同図の矢印B方向
(試料の幅方向)に向って100mm/minの速度で
引張り、その時の補強材とゼラチンと縫合性および接着
性を観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。な
お、下記評価において評価A〜Cであれば、十分に実用
可能である。
【0113】A(◎) :ゼラチンフィルムのみの部位
が破断し、ゼラチンフィルムと補強材との積層部分にお
いては、破断および前記補強材の剥離が生じない。 B(○) :1N以上の張力で、ゼラチンフィルムと補強
材との積層部分において、破断あるいは補強材の剥離が
生じる。 C(△) :0.3N以上の張力で、ゼラチンフィルムと補
強材との積層部分において、破断あるいは補強材の剥離
が生じる。 D(×) :0.3N未満の張力で、ゼラチンフィルムと補
強材との積層部分において、破断あるいは補強材の剥離
が生じる。
【0114】2.補強材の強度 前述の縫合性および剥離性の評価と同様にして、補強補
強材を10mm×50mmの大きさに切り抜き、これを
試料とした。前記試料のうち、ゼラチンフィルム81の
みの単層部分の長手方向両端を、2つのチャック間距離
が20mmになるように固定部材91で固定した。つぎ
に、前記試料の長手方向の中点であって、前記積層部分
の幅方向の端から2mmのところに、針つき3−0ナイ
ロン糸(ネスコスーチャー、1/2円形丸針)(商品名
ネスコスーチャー;アズウェル社製)(図において9
2)を通し、糸を通した点から50mmのところで糸の
端を固定した。そして、前記試料を固定したまま、糸の
端を、図9の矢印B方向(試料の幅方向)100mm/
minの速度で引張り、前記補強材が破断するときの張
力を観察し、以下の評価基準に基づいて評価する。な
お、下記評価において、評価A〜Cであれば十分に実用
可能である。
【0115】 A(◎) :2N以上の張力をかけても補強材が破断しな
い。 B(○) :1Nの張力をかけても補強材が破断しない。 C(△) :0.3Nの張力をかけても補強材が破断しな
い。 D(×) :0.3N未満の張力で補強材が破断する。
【0116】3.外観 ゼラチンフィルムと一体化させる前の補強材の外観を評
価した。 A(◎) :補強材に模様が無く均一である。 B(○) :補強材の目が細かく、縦横方向の繊維密度
の差が分からない。 C(△) :補強材の目が細かく、縦横方向の繊維密度
に差がある。 D(×) :補強材の目が粗い(繊維密度10/cm未
満)。
【0117】以上のようにして作製した癒着防止材(2-
1〜2-9)に関する機能評価の結果を下記表2に示す。ま
た、前記表2には、補強材の原料(ポリマー種類)、糸
の太さ(単位:デシテックス(dtex)、ループ密度
(縦・横)、厚み(μm)および目付け(g/m2)を併
せて示した。実施例2-6〜2-9に使用した補強材に関して
は、各種処理(熱プレス処理、プラズマ処理)後の厚み
と目付けを記載した。
【0118】
【表2】
【0119】表2の実施例2-1〜2-9に示すように様々な
布状体の補強材を使用しても、十分実用性に優れる癒着
防止材を作製できた。これらの補強材の中でも、特に、
MB不織布と、度詰天竺、スムースまたはフライスを一
体化させ、かつプラズマ処理を施したものが、極めて縫
合性等に優れていることがわかった。
【0120】実施例2-6と実施例2-7との結果からも、補
強材にプラズマ処理を施すことによって、より一層ゼラ
チンと補強材との一体化が向上し、縫合性(剥離性)が
向上することもわかった。また、実施例2-4と実施例2-8
との結果においても、スムースに不織布を一体化し、こ
れにプラズマ処理を施すことによって、より一層ゼラチ
ンと補強材との一体化が向上し、縫合性が向上すること
がわかった。
【0121】
【発明の効果】以上のように、本発明の癒着防止材は、
生体内の所定箇所に確実に固定することができ、一般的
な組織の癒着を効果的に防止できると共に、その形状を
筒状とすることによって、腱、神経等の癒着防止材、神
経の誘導等としても用いることができる。そして、癒着
防止の役目を終えた後は、生体内で分解吸収されるた
め、安全性にも問題ない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の癒着防止材の一例を示す平面図であ
る。
【図2】前記例における癒着防止材の断面図である。
【図3】本発明の癒着防止材のさらにその他の例を示す
断面図である。
【図4】本発明の癒着防止材のさらにその他の例を示す
断面図である。
【図5】本発明の癒着防止材のさらにその他の例を示す
斜視図である。
【図6】本発明の癒着防止材のさらにその他の例を示す
斜視図である。
【図7】本発明の癒着防止材の一実施例における、ツイ
ンループニットを概略を示す模式図である。
【図8】 前記実施例における癒着防止材を示す図であ
って、(A)は平面図、(B)は斜視図、および(C)
は前記癒着防止材から切り出した試料の斜視図である。
【図9】 前記実施例において、癒着防止材の縫合性お
よび剥離性を評価するための測定状態の概略を示す平面
図である。
【符号の説明】
11、21、31、41、43、51、61、81 :
ゼラチンフィルム 12、22、32、42、52、62、82 : 補強
材 91 : 固定部材 92 : ナイロン糸
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田中 好 京都府綾部市井倉新町石風呂1 グンゼ株 式会社研究開発センター内 (72)発明者 筏 義人 京都府宇治市五ヶ庄広岡谷2−182 Fターム(参考) 4C081 AC03 BA16 CA191 CD152 DA02 DA04 DA05 DB07 DC03 EA06

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ゼラチンフィルム製の癒着防止材であっ
    て、前記ゼラチンフィルムに、生体内分解吸収性高分子
    製の補強材が配置されている癒着防止材。
  2. 【請求項2】 癒着防止材の形状が、シート状または筒
    状である請求項1記載の癒着防止材。
  3. 【請求項3】 ゼラチンフィルムの縫合部位に、補強材
    が配置されている請求項1または2記載の癒着防止材。
  4. 【請求項4】 ゼラチンフィルムの縁部に補強材が配置
    されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の癒着防
    止材。
  5. 【請求項5】 補強材が、布状体またはフィルム体であ
    る請求項1〜4のいずれか一項に記載の癒着防止材。
  6. 【請求項6】 補強材内部の全部または一部にゼラチン
    が侵入してゲル化していることにより、前記補強材とゼ
    ラチンフィルムとが一体化している請求項1〜5のいず
    れか一項に記載の癒着防止材。
  7. 【請求項7】 布状体が、不織布、織物、編物および組
    紐からなる群から選択された少なくとも一つである請求
    項5または6のいずれか一項に記載の癒着防止材。
  8. 【請求項8】 布状体が、不織布と織物の複合体、不織
    布と編物の複合体、および不織布と組紐の複合体からな
    る群から選択された少なくとも一つの布状体である請求
    項5〜7のいずれか一項に記載の癒着防止材。
  9. 【請求項9】 布状体が、メルトブロー法、ニードルパ
    ンチ法、スパンボンド法およびフラッシュ紡糸法からな
    る群から選択された少なくとも一つの方法により製造さ
    れた不織布である請求項7記載の癒着防止材。
  10. 【請求項10】 不織布が、加熱プレス処理されている
    請求項9記載の癒着防止材。
  11. 【請求項11】 布状体の目付けが、5〜200g/m
    2の範囲である請求項7〜10のいずれか一項に記載の
    癒着防止材。
  12. 【請求項12】 布状体の厚みが、10〜1000μm
    の範囲である請求項7〜11のいずれか一項に記載の癒
    着防止材。
  13. 【請求項13】 布状体の糸掛け張力が、0.3〜20
    0Nの範囲である請求項7〜12のいずれか一項に記載
    の癒着防止材。
  14. 【請求項14】 生体内分解吸収性高分子が、ポリ乳
    酸、乳酸−カプロラクトン共重合体およびポリグリコー
    ル酸からなる群から選択された少なくとも一つの高分子
    である請求項1〜13のいずれか一項に記載の癒着防止
    材。
  15. 【請求項15】 乳酸−カプロラクトン共重合体におけ
    るラクチド(A)とカプロラクトン(B)とのモル比
    (A:B)が、A:B=85:15〜40:60の範囲
    である請求項14記載の癒着防止材。
  16. 【請求項16】 補強材が親水化処理されている請求項
    1〜15のいずれか一項に記載の癒着防止材。
  17. 【請求項17】 親水化処理の方法が、プラズマ処理、
    グロー放電処理、コロナ放電処理、オゾン処理、表面グ
    ラフト処理、コーティング処理、薬品処理および紫外線
    照射処理からなる群から選択された少なくとも一つの方
    法である請求項16記載の癒着防止材。
  18. 【請求項18】 ゼラチンフィルムが架橋されたフィル
    ムである請求項1〜17のいずれか一項に記載の癒着防
    止材。
  19. 【請求項19】 ゼラチンフィルムが、紫外線処理、熱
    処理および化学的架橋剤処理からなる群から選択された
    少なくとも一つの処理方法により架橋されている請求項
    18記載の癒着防止材。
  20. 【請求項20】 ゼラチンフィルムが、紫外線照射灯電
    力4〜40W、照射時間0.1〜100時間、照射距離
    5〜100cmの条件で架橋処理されている請求項18
    または19記載の癒着防止材。
  21. 【請求項21】 ゼラチンフィルムの生体内存在時間
    が、12時間〜90日の範囲である請求項1〜20のい
    ずれか一項に記載の癒着防止材。
  22. 【請求項22】 ゼラチンフィルムの厚みが、20〜2
    000μmの範囲である請求項1〜21のいずれか一項
    に記載の癒着防止材
  23. 【請求項23】 ゼラチンに含まれるエンドトキシン濃
    度が、200EU/g以下である請求項1〜22のいず
    れか一項に記載の癒着防止材。
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