JP2004188037A - コラーゲン製人工血管 - Google Patents

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Abstract

【課題】縫合に耐える適度な強度を有し、かつ生体内分解性の高い、生体適合性材料からなる人工血管の提供を課題とする。従来方法で得られるコラーゲン不織布は、部分的に強度が弱い部分が発生したり、均一な厚みを持った不織布が得られない等の問題があった。
【解決手段】コラーゲン糸状物が複数本ほぼ平行に配列した層状物を、糸状物の配列方向が互いに角度をなすように複数重ね、接着されたコラーゲン不織布を、管状に成型してなる人工血管およびその製造方法。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は生分解性物質であるコラーゲンで調製された不織布を含む膜状物を加工して得られる人工血管に関する。詳細には、動脈や静脈が閉塞した場合における修復手術に利用したり、あるいは再生医療分野において血管再生用基材として利用可能な、移植用人工血管及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、臨床において種々の人工血管が、疾患または損傷のある動脈や静脈の代替品として広く使用されている。しかし、従来の種々の人工血管はいくつかの問題を有している。例えば、生体適合性でない合成材料のみで作られた人工血管は、その人工血管を移植した宿主からの免疫学的反応や血液凝固反応を誘発し、特に血流の遅い静脈系の代替に使用される場合には、血管の閉塞が起こりやすくなる。また、合成材料のみで作られた人工血管は、それと接続される生体本来の血管とは血管内の圧力変化に対する柔軟性が異なるため、動脈瘤や血管破裂を誘発する恐れがあった。
【0003】
一方、生体血管を物理的、化学的に加工し、人工血管として使用する試みも種々なされてきた。
例えば、特許文献1には、動物血管の血管壁を蟻酸によって処理し、この処理血管壁にコラーゲン、フィブロネクチン及びフィブリノゲンを被覆して被覆血管壁を構築することを特徴とする人工血管が記載されている。
また、特許文献2には哺乳動物の血管もしくは尿管から加工した、90%以上が無傷で残存している基底膜を有するコラーゲン性の弾性線維を主成分とする細胞外マトリックスからなるチューブ状の天然物層と、その外側に生体適合性と生体内安定性を有するポリウレタン繊維を巻きつけて網目状に形成した合成物層とを複合一体化した二層構造からなる人工血管について記載されている。
しかしながら、哺乳動物の血管壁を蟻酸等の処理にて加工したコラーゲン質の人工血管は、強度的に脆弱であり縫合することが不可能なため、生体適合性の良い非吸収性材料あるいは吸収性材料を用いて補強することが必要であったり、長期間の移植では動脈瘤の発生が起こるなど、満足なものは未だに開発されていない。
【0004】
【特許文献1】
特許第3026370号公報
【特許文献2】
特開平4−242642号公報 (第3欄、第37〜38行および第4欄、第1〜6行)
【0005】
こうして、現在は、生体適合性材料(ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ乳酸ポリグリコール酸共重合体、ポリリン酸、コラーゲン、ゼラチン、キチン、キトサン等)を用いて、人工血管を製造する種々の試みがなされている。
【0006】
生体適合性材料の中でも、生体を構成する主要なタンパク質であるコラーゲンは、特に生体適合性、組織再生、細胞増殖等に関し優れた効果を持ち合わせている為、種々に処理され調製された医療用コラーゲン製基材が、医療分野の、特に外科的処置並びに外傷の治療に有用な素材として知られている。
これらのコラーゲンを用いた医療用材料器具の製造においては、動物や人の組織を直接処理して、組織の形状を維持したまま、主にコラーゲン質のみをそのまま利用したり、さらにこれを後加工する場合もある。しかし、これらは使い勝手の良い医療用具の形状や剤形として、任意に加工する事が難しい上、加工されたコラーゲン質は脆弱であったり、コラーゲンの抗原性発現部位がそのまま残された状態である為に問題があった。
そこで、医療用材料器具に使用するコラーゲンは、主として原料である動物から、酸、アルカリ、中性等の条件下で酵素などにより抽出し、粘調なコラーゲン溶液またはこの溶液を乾燥させた固体の状態として得る方法が一般的に用いられるようになった。また更に、ペプシン処理を施すことによって抗原性発現部位を除去し、体内または体表面に移植した際に抗原性が無い、より医療基材に好適なコラーゲン(アテロコラーゲン)を得る方法も用いられている。
【0007】
このようにして得られたコラーゲン溶液から、医療用基材を製造する方法としては、コラーゲン溶液を凍結乾燥して、スポンジ状の基材を製造する方法や、コラーゲン溶液を湿式または乾式紡糸法で紡糸し、繊維状の基材を製造する方法など種々の方法が知られている。
コラーゲン溶液を湿式または乾式紡糸法で紡糸し、繊維状の基材を製造する方法の一例として、特許文献3には、コラーゲン物質をアミン類、アルカリおよび硫酸ソーダを使用する方法により分子状に水中に可溶化し、得られたコラーゲン水溶液を紡糸原液として紡糸コラーゲン繊維を生成し、ステープル長に切断して耐水処理するかまたは耐水処理してから切断してコラーゲン繊維ステープルとし、次いで乾式法または湿式法により不織布状に形成することを特徴とする、外科用創傷被覆材の製造方法が知られている(例えば、特許文献3)。
また、イオン化性、水不溶性のコラーゲンの部分塩である凝血−接着性繊維を、95〜80容量部の水混和性有機液体と5〜20容量部の水からなる混合物中にランダムに縦横に移動させつつエタノール槽底部に沈降させ(スラリー化)し、この繊維を広げてウェッブを製造し、このウェッブを乾燥する、コラーゲン不織布の製造方法も知られている(例えば、特許文献4)。
さらに、コラーゲン水溶液をエタノール等の親水性有機溶媒中に吐出し、コラーゲンを糸状に成形し、槽底部に沈降しスラリー化したコラーゲンを取り出して、コラーゲン糸の積層構造物を作製する方法が知られている(例えば、特許文献5〜7参照)。
【0008】
【特許文献3】
特開昭50−14119号公報
【特許文献4】
特公昭54−36441号公報
【特許文献5】
特開2000−93497号公報
【特許文献6】
特開2000−210376号公報
【特許文献7】
特開2000−271207号公報
【0009】
しかし、このような従来方法で得られるコラーゲン不織布を用いて人工血管を製造した場合、コラーゲン繊維ステープルや親水性有機溶媒中へのコラーゲン吐出物の分散を均一にすることが実質的に不可能であるため、部分的に強度が弱い部分が発生したり、均一な厚みを持った不織布が得られない等の問題があった。
また、従来の製造法では、コラーゲン不織布の製造工程において、一旦コラーゲンの糸状物をステープル状に切断したり、スラリー化したコラーゲンを取り出す等の煩雑な作業が必要であり、工業的生産が困難であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、縫合に耐える適度な強度を有し、かつ生体内分解性の高い、生体適合性材料からなる人工血管の開発が切望されており、本発明はそのような人工血管の提供を課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、コラーゲンが均一に分散された不織布を用いることによって、強度的に十分耐えうる人工血管を得ることができる。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)コラーゲン糸状物が複数本ほぼ平行に配列した層状物を、コラーゲン糸状物の配列方向が互いに角度をなすように複数重ね、接着されたコラーゲン不織布を、管状に成型してなる人工血管、
(2)コラーゲン糸状物が約0〜40mmの間隔で、ほぼ平行に配列した、上記(1)記載の人工血管、
(3)コラーゲン糸状物のなす鋭角の角度が約5°以下であるように、複数本ほぼ平行に配列された、上記(1)記載の人工血管。
(4)コラーゲン不織布が生分解性物質でコーティングされた、上記(1)記載の人工血管、
(5)コラーゲン不織布に抗血栓性材料が塗布された、上記(1)記載の人工血管、
(6)人工血管の最内層に、さらに生分解性物質からなる平滑フィルム層を有する、上記(1)記載の人工血管、
(7)生分解性物質がコラーゲンである、上記(6)記載の人工血管。
(8)平滑フィルム層に抗血栓性材料を塗布したことを特徴とする上記(1)記載の人工血管、
(9)抗血栓性材料がヘパリンであることを特徴とする上記(5)または(8)記載の人工血管、および
(10)コラーゲン糸状物を複数本ほぼ平行に配列した層状物を、コラーゲン糸状物の配列方向が互いに角度をなすように複数重ね、接着することによってコラーゲン不織布を作製し、該コラーゲン不織布を円柱またはチューブの側面に巻きつけることにより積層して管状に成型することを特徴とする、人工血管の製造方法
である
【0013】
本発明の人工血管において、コラーゲン糸状物とは、コラーゲンからなる、通常の糸のように柔軟性を有する巻き取り可能な繊維状体である。その径は特に限定はされないが、約5μm〜1.5mm程度のほぼ均一な外径を有するものが好適で、更に約10〜200μm程度のほぼ均一な外径を有するものが最適である。
また、コラーゲン糸状物は生分解性材料でコーティングされていてもよい。生分解性材料としては、コラーゲンやヒアルロン酸等が挙げられる。
【0014】
コラーゲン糸状物が複数本ほぼ平行に配列した層状物とは、複数本の糸状物が同一平面上に略均等な間隔をあけて直線的に配置された層状物であり、同じ層状物において、配列された糸状物のなす鋭角の角度は約5°以下であり、好ましくは約0°である。また、同じ層状物でのコラーゲン糸状物の間隔は、通常、約0〜40mmであり、好ましくは約0〜10mm、さらに好ましくは約0〜1mmである。
【0015】
糸状物の配列方向が互いに角度をなすようにとは、第1の層状物に配列された糸状物と第2の層状物に配列された糸状物との配列方向のなす鋭角の角度が0°ではないことを示す。また、複数重ねるとは、2以上の層状物が互いに接触している状態である。本発明の人工血管は、このような2以上の層状物からなる積層体を含むコラーゲン不織布を用いて作製した人工血管である。
本発明の人工血管に用いるコラーゲン不織布は、コラーゲン糸状物が複数本ほぼ平行に配列されてなる第1の層状物または第2の層状物の上に、さらにコラーゲン糸状物が複数本ほぼ平行に配列された第3の層状物が、第1の層状物または第2の層状物の糸状物の配列方向と第3の層状物の糸状物の配列方向とが角度をなすように積層し、相互に接着された3層からなる積層体を含むコラーゲン不織布であってもよい。さらに、上記第1の層状物および第2の層状物からなる積層体の両面に、コラーゲン糸状物が複数本ほぼ平行に配列された層状物が、同様に積層された4層からなる積層体を含むコラーゲン不織布であってもよく、同様に積層された5層以上からなる積層体を含むコラーゲン不織布であってもよい。
【0016】
3層以上からなる積層体を含む場合、コラーゲン糸状物の配列方向が角度をなすのは、互いに接する層状物の糸状物配列方向であって、接していない層状物同士の糸状物配列方向は必ずしも角度をなす必要はなく、なす角度が0°であってもよい。例えば、3層からなる積層体において第3の層状物が第2の層状物の上に積層された場合、第1の層状物と第2の層状物、ならびに、第2の層状物と第3の層状物の糸状物の配列方向は角度をなす必要があるが、第1の層状物と第3の層状物の糸状物の配列方向は、角度をなしていてもよく、角度が0°であってもよい。
3層以上からなる積層体においては、積層される糸状物の配列方向のなす角度は一定に保たれていてもよく、ランダムであってもよい。前者としては、例えば、第1の層状物の糸状物の配列方向と他の層状物の糸状物の配列方向がなす鋭角の角度が約20°以下であるように積層された複数の層状物からなる積層体が挙げられる。
また、コラーゲン不織布を構成する積層体は、このような2層以上からなる積層体がさらに複数積み重ねられることによって形成された積層体であってもよい。この場合、積層される第1の積層体と第2の積層体が接する部分の層状物の糸状物の配列方向は角度をなしている。3つ以上の積層体を積み重ねる場合、積み重ねられた積層体が接する部分の層の糸状物の配列方向がなす角度は、一定に保たれていてもよく、ランダムであってもよい。前者としては、例えば、積み重ねられた積層体が接する部分の層の糸状物の配列方向がなす、鋭角の角度が約70〜90°となるように、複層の積層体が積み重ねられた積層体が挙げられる。
【0017】
コラーゲン不織布は、互いに接する層状物のコラーゲン糸状物同士がその接触部で接着されることによって形成される、布状の構造体である。コラーゲン不織布には、バインダー処理等を施しておいてもよい。
【0018】
管状に成型してなる人工血管とは、コラーゲン不織布が管状に積層された人工血管であり、管の内側から外側へコラーゲン不織布が積層された構造を有している。本発明の人工血管は、コラーゲン不織布のみからなるものであってもよい。
また、本発明の人工血管は、最内層に平滑フィルム層を有していてもよい。平滑フィルム層によって人工血管の内腔面を平滑にすることは、白血球や血小板等の血球成分の付着、さらにはタンパク等の血液成分の付着が続くことによって生ずる血液凝固を防止する層(抗血栓層)として有効であると考えられる。平滑フィルム層は生分解性物質で構成される。生分解性物質としては、コラーゲンやヒアルロン酸等が挙げられ、コラーゲンが好ましい。
さらに、平滑フィルム層による平滑層だけでは、血液と接触する最内層を完全に抗血栓性に改善することはできないため、平滑フィルム層に抗血栓性材料を塗布することも可能である。抗血栓性材料としては、ヘパリン、低分子ヘパリン、ワーファリンやメシル酸ナファモスタット等が挙げられ、ヘパリンが好ましい。また、抗血小板薬として、血小板の粘着、凝集を抑制することにより、血栓形成を予防する効果のあるアスピリン等を塗布してもよい。
【0019】
次に、本発明の人工血管の製造方法について説明する。
本発明のコラーゲン不織布は、コラーゲン糸状物を複数本ほぼ平行に配列した層状物を、コラーゲン糸状物の配列方向が角度をなすように複数重ね、接着することによって作製される。
各層状物は、コラーゲン糸状物を複数本ほぼ平行に配列することによって形成される。該層状物は、コラーゲン糸状物の配列方向が互いに角度をなすように複数重ねられる。具体的な積層方法の一例としては、疎水性材料からなる平板上にコラーゲン糸状物を複数本ほぼ平行に配置し、さらにその配置された糸状物と角度をなすように、コラーゲン糸状物を複数本ほぼ平行に配置する方法が挙げられる。
【0020】
層状物を接着するとは、互いに接する層状物と層状物とのコラーゲン糸状物同士がその接触部で接着されることである。
例えば、コラーゲン糸状物が、湿式紡糸法において生成された乾燥前(湿潤状態にある)の糸状物である場合や、生分解性物質の溶液でコーティングされたコラーゲン糸状物である場合等のように、コラーゲン糸状物がそれ自体で接着性を有する場合は、コラーゲン糸状物が複数本ほぼ平行に配列されてなる層状物を積層後、乾燥処理を施すことによって、接着がなされる。また、コラーゲン糸状物が、紡糸後に乾燥、架橋処理等を施した糸状物である場合は、積層後、生分解性物質(例えば、生分解性ポリマー)の溶液を不織布上に噴霧もしくは含浸し、乾燥処理を施すことによって、接着がなされる。
【0021】
本発明においてコラーゲン不織布の材料として用いられる、コラーゲン糸状物は、可溶化されたコラーゲン溶液を紡糸原液として紡糸されたものである。可溶化されたコラーゲンとは、溶媒に溶解できるよう処理が施されたコラーゲンである。例えば、酸可溶化コラーゲン、アルカリ可溶化コラーゲン、酵素可溶化コラーゲン、中性可溶化コラーゲン等の可溶化コラーゲンが挙げられる。特に可溶化処理と同時にコラーゲンの抗原決定基であるテロペプタイドの除去処理が施されている、アテロコラーゲンが好適である。これらコラーゲンの可溶化方法については、特公昭46−15003号公報、特公昭43−259839号公報、特公昭43−27513号公報等に記載されている。またコラーゲンの由来については、ウシ、ブタ、鳥類、魚類、ウサギ、ヒツジ、ネズミ、ヒト等の動物種の皮膚、腱、骨、軟骨、臓器等から抽出されるものである。コラーゲンのタイプとしてはI型、III型等の分類可能なタイプのうちいずれかに限定されるものではないが、取り扱い上の観点から、I型が特に好適である。
【0022】
可溶化されたコラーゲン溶液の溶媒としてはコラーゲンを可溶化できるものであれば特に限定されない。代表的なものとしては塩酸、酢酸、硝酸等の希酸溶液や、エタノール、メタノール、アセトン等の親水性有機溶媒と水との混合液、水などが挙げられる。これらは単独または2種以上任意の割合で混合して用いても良い。このうち最も好ましくは水である。
また、コラーゲン溶液のコラーゲン濃度は、紡糸可能な濃度であれば特に限定されないが、好ましくは、約4〜10%であり、さらに好ましくは、約5〜7%である。
【0023】
可溶化されたコラーゲン溶液を紡糸原液として紡糸されるとは、コラーゲン溶液を原料として湿式紡糸等の種々公知の紡糸方法(特開平06−228505号公報、特開平06−228506号公報、特開2000−93497号公報、特開2000−210376号公報及び特開2000−271207号公報等)により紡糸されることである。
【0024】
コラーゲン糸状物が湿式紡糸法により紡糸される場合、本発明で用いるコラーゲン糸状物は、湿式紡糸法において生成された乾燥前(湿潤状態にある)の糸状物であってもよく、紡糸後に乾燥、架橋処理等を施した糸状物であってもよい。
湿式紡糸法としては、親水性有機溶媒を使用する方法、架橋剤を使用する方法など様々な方法が挙げられる。中でも特に親水性有機溶媒を用いて紡糸されたコラーゲン糸状物が好適に用いられる。
親水性有機溶媒を用いて湿式紡糸を行う場合、通常、コラーゲン溶液をノズル等から連続的に親水性有機溶媒等の脱溶媒剤の充填された浴槽中に吐出し、脱水及び凝固させることによりコラーゲン糸状物が得られる。用いる親水性有機溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノールなどの炭素数1から6のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類等が挙げられる。これらは単独または2種以上を任意の割合で混合して用いても良い。このうち最も好ましい溶媒はエタノールである。親水性有機溶媒の含水率は、通常約50容量%以下であり、好ましくは約30容量%以下である。親水性有機溶媒を用いたコラーゲン溶液の紡糸(脱水・凝固)工程は通常、室温ないし42℃程度で行われ、一連の脱水および凝固による処理時間は約4〜5秒から5時間である。
【0025】
上記方法で得られるコラーゲン不織布は、必要によりさらに種々公知の物理的または化学的架橋処理を施してもよい。架橋処理を施す段階は問わない。すなわち各種架橋処理を施した糸状物で前記不織布を形成しても良いし、前記不織布を形成した後に各種架橋処理を施しても良い。また、2種以上の架橋処理を併用しても良く、その際、処理の順序は問わない。この架橋処理により、生体内に移植された際に分解・吸収される時間を、未架橋の場合に比較して飛躍的に遅延させることが可能となり、また物理的強度も向上する。したがって、コラーゲン不織布を生体の欠損部を補填または補綴する場合に、組織の再生を完了するまでの期間、体内で必要な膜強度を維持することが可能となる。
物理的架橋方法の例としては、γ線照射、紫外線照射、電子線照射、プラズマ照射、熱脱水反応による架橋処理などが挙げられ、化学的架橋方法としては、例えば、ジアルデヒド、ポリアルデヒドなどのアルデヒド類、エポキシ類、カルボジイミド類、イソシアネート類などとの反応、タンニン処理、クロム処理などが挙げられる。
【0026】
また、上記方法で得られるコラーゲン不織布は、生分解性物質でコーティングを施してもよい。生分解性物質としては、コラーゲン、ヒアルロン酸などが挙げられる。
コラーゲン不織布に生分解性物質でコーティングを施す方法の一例としてはバインダー処理が挙げられる。バインダー処理とは、不織布に、溶液状の材料を含浸させた後、適当な乾燥方法で乾燥を行い、不織布中の糸状物同士の結合を補強する処理である。溶液状の材料は、生分解性物質の水溶液であることが好ましい。このバインダー処理によりコラーゲン不織布は膜状に成形され、未処理の不織布よりもはるかに物理的強度が向上し、従って縫合強度も格段に向上する。
ただし、バインダー処理を行う際には、コラーゲン不織布に架橋処理が施されていない場合、不織布層自身が含浸させた溶媒に溶解してしまう場合があるため、前述の架橋方法等で、前もって架橋処理を施しておくのが望ましい。これら以外にも、コラーゲン不織布中の糸状物同士の接合を補強する種々の方法を適宜使用することができる。
【0027】
本発明において不織布から人工血管を作製する方法としては、例えば、コラーゲン不織布を円柱またはチューブの側面に繰り返し巻きつけて、コラーゲン不織布が積層された人工血管を得る方法等が挙げられる。円柱またはチューブの素材は特に限定されないが、ポリフッ化エチレン系繊維、ポリプロピレン等の撥水性の高い材料が好ましい。具体的には、コラーゲンの不織布1を、接着剤にコラーゲン溶液を用いてポリフッ化エチレン系繊維等からなる疎水性チューブ2の側面に図1(a)のように巻きつける。縫合強度は、コラーゲン不織布を巻きつける回数、あるいはコラーゲン不織布を作製する際の層状物の積層数、つまりコラーゲン糸状物の全積層回数を多くすることにより制御することが可能である。例えば、血管置換術で破断や引き裂かれることによって血液が漏血し、死に直結する可能性がある場合には、巻きつけ回数を増やすことにより、十分な縫合強度を得ることができる。逆に神経補填などにおいて外れない程度の縫合強度が必要な場合は、巻きつけ回数を少なくすることによってその必要な縫合強度が得られる。このようにしてコラーゲン不織布を円柱またはチューブの側面に巻きつけて作製された人工血管は、その後乾燥させ、架橋処理を施して加工することができる。
【0028】
生分解性物質からなる平滑フィルム層の作製方法としては、種々公知の方法を用いることができる。一例としては、コラーゲン溶液を紡糸する際に使用する親水性有機溶媒の濃度を下げ、含水率の高い状態でコラーゲン糸状物を紡糸し、吸着水に半溶解した状態のコラーゲン糸状物を円柱またはチューブに巻きつける。糸状物は互いに融合することによってフィルム状となり、これを乾燥してフィルム層を作製することができる。この半溶解状態で巻きつけることができるコラーゲン糸状物の適切な含水率の割合は、10〜50重量%であり、好ましくは15〜30重量%が適切である。別の例としては、可溶化コラーゲン溶液を紡糸したコラーゲン糸状物(乾燥状態)を、円柱またはチューブの側面に巻きつけて、得られた巻き取り物を、コラーゲン溶液を調製する際に使用した親水性有機溶媒に一定時間浸し、引き上げる。コラーゲン糸状物は吸着した親水性有機溶媒に溶解し、互いに融合してフィルム状となり、これを乾燥してフィルム層を作製することができる。また、低濃度のコラーゲン溶液を管状の鋳型に流し込み凍結乾燥させ、スポンジ状のチューブを作製した後、コラーゲン溶液を調製する際に使用した溶媒等に一定時間浸し、引き上げる。スポンジ状のチューブは吸着溶液に溶解し、フィルム状となり、これを乾燥して平滑フィルム層を作製してもよい。
【0029】
最内層に生分解性物質からなる平滑フィルム層を有する人工血管の製造方法としては、例えば、図1(b)に示すように、疎水性チューブ2の側面に平滑フィルム層3を作製し、さらに、この層の外層にコラーゲン不織布1を巻きつけて積層する方法が挙げられる。
【0030】
更に複雑な形状の人工血管(例えば、分岐した人工血管)を作製する方法としては例えば次のような方法が挙げられる。
まず、あらかじめ目的とする人工血管の鋳型(雌)を作製しておく。鋳型の素材は特に限定されないが、ポリフッ化エチレン系繊維、ポリプロピレン等の撥水性の高い材料が好ましい。また、鋳型には少なくとも1箇所に穴が開けられていることが好ましく、更に割り型の鋳型が好ましい。
次に、この鋳型にコラーゲン不織布、好ましくはフェルト状に加工された不織布を封入し、穴から生分解性ポリマー溶液を注ぎ込み、各種方法を用いて乾燥させることにより、目的とする複雑な形状の人工血管が得られる。
【0031】
本発明の人工血管は、医療用として使用する前に、γ線滅菌、紫外線滅菌等の公知の方法によって、滅菌処理を施す必要がある。熱滅菌はコラーゲンの耐熱性の低さから好ましくない。
また、コラーゲン以外の生分解性物質であるポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ乳酸ポリグリコール酸共重合体、ポリリン酸などからなる1種もしくは数種の糸状物を用いても、同様な医療用不織布を作製することが可能である。
【0032】
本発明により得られる人工血管は、コラーゲンが元来持ち合わせている、生体内および体表面における分解性および吸収性を有し、毒性もほとんどなく、自体公知の方法に従って、医療用目的等で人間や動物に安全に使用できる。
本発明においては、移植用或いは再生医療用人工血管について記載しているが、同様の人工血管を他の用途に用いることができる。例えば、組織工学分野・再生医療分野における補填および補綴目的で体内に移植される、ステント、人工神経チャンネル、人工気管、人工食道、人工尿管等が挙げられる。
また、接着性細胞等の各種細胞を体外で培養するための基材(細胞培養基材)としても利用できる。上記移植用基材上で、あらかじめ繊維芽細胞、軟骨細胞等の体組織を形成する細胞を常法に従って一定期間培養し、人工血管等の移植用基材の形状に細胞を増殖させて組織を形成した後に、体内へ移植することもできる。
さらに、各種成長因子、薬剤、ベクター等を含浸させ、ドラッグデリバリーシステム担体、徐放性薬剤用担体、遺伝子治療用担体等としての役割を持たせることもできる。
【実施例】
次に実施例、実験例を示し本発明をさらに詳細に説明する。以下、%は特記しない限り重量%を示す。
【0033】
(実施例1)
(1) コラーゲン巻き取り物の作製
ブタ由来I型、III型混合コラーゲン粉末(日本ハム株式会社製、SOFDタイプ、Lot No.0102226)を注射用蒸留水(大塚製薬社製)に溶解し、5%に調製する。そして、この5%コラーゲン水溶液を充填したシリンジ(EFD社製、Disposable Barrels/Pistons 、55cc)に充填し、シリンジに装着した針より該コラーゲン水溶液をエアーポンプで空気圧により、99.5%エタノール(和光純薬製、特級)で満たされた第1のエタノール槽に吐出した。この際シリンジに装着の針はUltra Dispensing Tips (EFD社製、30G、ID :φ0.16 mm)を使用した。吐出した5%コラーゲン水溶液は脱水され糸状になったのち、第1のエタノール槽から引き上げた。第1のエタノール槽から引き上げたコラーゲン糸状物を、第1のエタノール槽とは完全に分離独立した第2のエタノール槽(99.5%エタノール(和光純薬製、特級)で満たされている)に室温で約30秒間、浸漬し、さらに凝固を施した。続いて、第2のエタノール槽から引き上げられたコラーゲン糸状物を15rpmで回転する1辺15cmの正方形、厚さ5mmの板状部材に巻き取った。板状部材の直前には、板状部材に均等にコラーゲン糸状物を巻き取っていくためにコラーゲン糸状物の水平位置を周期的に移動させる機構が備え付けられており、その往復速度は1.5mm/秒(糸状物は約6mmの間隔で巻き取られる)、往復幅は約12cmとした。巻き取りは、360回巻き取るたびに板状部材の回転軸を90度方向転換させるように設定しておき、360回の巻き取りを8回繰り返し(合計巻き取り数2880回)、板状部材の両面に8層のコラーゲン糸状物の層状物を有するコラーゲン巻き取り物を得た。
【0034】
(2) コラーゲン不織布の作製
上記(1)にて作製されたコラーゲン巻き取り物を、バキュームドライオーブン(EYELA社製;VOS-300VD型)と油回転真空ポンプ(ULVAC社製;GCD135-XA型)を用いて120℃、減圧下(1Torr以下)で24時間熱脱水架橋反応を行った。これとは別に、ブタ由来I型、III型混合コラーゲン粉末(日本ハム株式会社製、SOFDタイプ、Lot No.010226)を注射用蒸留水(大塚製薬社製)に溶解し、1%に調製したコラーゲン水溶液を作製した。この1%コラーゲン水溶液を、熱脱水架橋反応後のコラーゲン不織布に含浸させ、乾燥させた後、板状部材の各片(周縁部)に沿って切断し、2枚のコラーゲン不織布を得た。
【0035】
(3) ヘパリンが塗布された平滑フィルム層を有するポリフッ化エチレンチューブの作製
上記(1)同様、ブタ由来I型、III型混合コラーゲン粉末(日本ハム株式会社製、SOFDタイプ、Lot No.0102226)を注射用蒸留水(大塚製薬社製)に溶解して調製した5%のコラーゲン水溶液をシリンジ(EFD社製、Disposable Barrels/Pistons 、55cc)に充填し、シリンジに装着した針より該コラーゲン水溶液をエアーポンプの空気圧により、99.5%エタノール(和光純薬製、特級)で満たされた第1のエタノール槽に吐出した。この際シリンジに装着の針はUltra Dispensing Tips (EFD社製、32G、ID :φ0.11 mm)を使用した。吐出した5%コラーゲン水溶液は脱水され糸状になったのちに、第1のエタノール槽から引き上げた。第1のエタノール槽から引き上げられたコラーゲン糸状物を、第1のエタノール槽とは完全に分離独立した含水率15%〜20%のエタノール水溶液で満たされた第2のエタノール槽に、室温で約30秒間、浸漬し、水分を含有した糸状物に調製した。続いて、第2のエタノール槽から引き上げられたコラーゲン糸状物を、360rpmで回転させている外径3.0mmのポリフッ化エチレンチューブに巻きつけた。ポリフッ化エチレンチューブの直前には、ポリフッ化エチレンチューブに糸状物が均等に巻き取られるように、糸状物をポリフッ化エチレンチューブの軸方向に周期的に往復移動させる装置を設けの往復速度は1.5mm/秒とした(糸状物は、0.25mm間隔で巻き取られる)。含水率の高い状態の糸状物は、巻き取り終了後、互いに融合し、ポリフッ化エチレンチューブに付着した管状のフィルム層を形成する。そのフィルム層をポリフッ化エチレンチューブに付着したまま風乾により乾燥させて、平滑フィルム層を有するポリフッ化エチレンチューブを作製した。ついで、この平滑フィルム層に抗血栓性材料のヘパリン(アベンティスファーマ(株)社製、ノボ・ヘパリン注1000)をヘラを用いて引き延ばしながらフィルム層全体に塗布する。ヘパリン塗布量は、フィルム層1cm2あたり約180単位とした。こうして、ヘパリンが塗布された平滑フィルム層を有するポリフッ化エチレンチューブが得られた。
【0036】
(4) 人工血管の作製
上記(2)にて作製したコラーゲン不織布の一方の面の1辺に沿って5mm幅に、5%コラーゲン(ブタ由来I型、III型混合コラーゲン粉末(日本ハム株式会社製、SOFDタイプ、Lot No.0102226)含有注射用蒸留水(大塚製薬社製)に溶解して調製した)溶液を平滑フィルム層を接着するための接着剤としてヘラを用いて薄く引き延ばして塗布した。これを、上記(3)で作製した平滑フィルム層を有するポリフッ化エチレンチューブに貼付し、乾燥して平滑フィルム層とコラーゲン不織布とを接着する。次に、再度5%コラーゲン含有注射用蒸留水溶液をコラーゲン不織布の接着すべき面全体に塗り込み、これを接着剤としてコラーゲン不織布を巻きつける。2周巻きつけた後、余分なコラーゲン不織布は破断機により切り取り、常温にて4時間自然乾燥することにより平滑フィルム層を有する人工血管が得られた。得られた人工血管は、上記(2)と同様の条件で、24時間熱脱水架橋が施される。熱脱水架橋後、3.75%炭酸水素ナトリウム水溶液中に約1時間浸漬し、つぎに1.875%炭酸水素ナトリウム水溶液中に約8時間浸漬することによって中和処理を施した後、注射用蒸留水に約12時間浸漬し、炭酸水素ナトリウムを洗浄する。蒸留水で洗浄後、再度上記(2)と同様の条件で24時間熱脱水架橋を施した後、熱脱水架橋終了後、ポリフッ化エチレンチューブを抜いて内径3.0mm、全長約12cmの人工血管を得た。
同様に、上記(1)〜(4)の操作を繰り返し、計5本の人工血管を製造した。
【0037】
(実験例1) 縫合強度試験
実施例1で作製した人工血管を用いて、縫合強度試験を行った。縫合強度試験では、図2に示すように人工血管4の両端部に各1点づつ、プロリン糸5(USP規格サイズ5−0、エチコン製)を用いて輪ができるように縫合し、一端の縫合輪を固定されたデジタルフォースゲージ(今田製作所製、型式DPS−5R)6のフック61に引っ掛けて、もう一端を一定速度で引っ張る機構が付いた引っ張り機械7のフック71に引っ掛けた。これを15mm/秒の一定速度で引っ張り、人工血管が破断した時のデジタルフォースゲージ6の示す値(引っ張り強度)を測定した。
【0038】
その結果、実施例1で作製した人工血管は2.62N(ニュートン)という引っ張り強度を有することが確認できた。この人工血管でウサギの頸動脈を用いた連続吻合の動物試験により人工血管のほつれや破断の有無を確認したが、ほつれや破断は全く見られず2.62Nの引っ張り強度が十分な縫合強度を保持していることが確認できた。
【0039】
(実験例2) ウサギ頸動脈への埋植および細胞増殖試験
実施例1で作製した人工血管を用いて、以下の方法に従ってウサギ頸動脈への埋植および線維芽細胞や血管内皮細胞等の細胞増殖試験を行った。
ウサギ(♂、体重2.6kg)の首部20〜30mmを全身麻酔下にて切開し、内頸動脈20mmを露出する。露出した内頸動脈を中央で切断し、実施例1で作製した人工血管を全長15mmに切断したものを、カフ法を用いて切断した内頸動脈の各端部に結合した(図3)。カフ法は、臓器移植実験マニュアルの「血管吻合基本手技−カフ法」(細胞工学 別冊, 第8章,53-56 秀潤社)等に従った。まず、適当なサイズのポリフッ化エチレンチューブをカフ形状(短い円筒形状)に加工し、カフ9を作製した。カフ9の中に切断した一方の血管8の端を通し、カフ柄と血管8をクリップで挟んで仮固定する。カフ9に通した血管を2本のピンセットを用いて、カフ体に被せるように翻転させ、絹糸(USP規格サイズ3−0)を用いてカフ9と血管8を結紮(血管を緊縛し)固定する。次にカフ9で固定された血管8に実施例1で作製した人工血管4を被せ、さらに人工血管4とカフ9を2−0絹糸で固定する。もう一方の血管8の端を同じようにカフ9を用いて結合し、人工血管4と結合した後、血流を再開した。植え込まれた人工血管は、埋植後3日、4日、7日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の各期日に埋植部を切開して開き、埋植した血管部位を取り出し、人工血管に繋がる心臓側と脳側の血管部位を鉗子によりしごいて血流の有無を確認した。また、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の各期日に各々1羽づつコラーゲン製人工血管部位を採取し、HE染色等にて細胞増殖性を確認した。
【0040】
血管移植術は9羽のウサギに対して行った。この9羽に対し、1ヶ月目での開存(血液の通過が維持されていること)は6/9(66.7%)であった。開存していた6羽のうち、2羽についてヘマトキシリン−エオシン染色(以下、HE染色)を行った。残った4羽については、引き続き2ヶ月目までさらに観察を続けた。2ヶ月目での開存は4/4(100%)であった。開存していた4羽のうち、1羽について1ヶ月目同様HE染色を行った。さらに残った3羽については3ヶ月、6ヶ月、と経過を観察し、6ヶ月目まで開存していることを確認した。そして各期日に1羽づつHE染色にて細胞増殖性を確認した。
【0041】
1ヶ月、2か月、3ヶ月、6ヶ月と各期日に取りだした人工血管についてHE染色を行った結果を図4(1ヶ月)、図5(2ヶ月)、図6(3ヶ月)および図7(6ヶ月)に示す。図4〜7において(b)は(a)の拡大図である。図中の符号9はカフ、10は再生細胞群を示す(図3参照)。図のように接合した心臓側及び脳側の両端の自己血管部位からコラーゲン製人工血管方向へ、結合組織と見られる線維芽細胞や血管内皮細胞等の再生細胞群10の伸展が確認できた。特に2か月、3ヶ月目での染色では移植したコラーゲン製人工血管10mm(カフが重なっている部分の寸法除く)の全域を結合組織の線維芽細胞とその表面に血管内皮細胞が伸展していることが確認できた。
【0042】
また、コラーゲン製人工血管については、いずれも特に顕著な炎症反応を示すことなく、細胞の浸潤も良好で、また経時的に移植片の分解が進行している様子が確認できた。
【0043】
(実験例3) ウサギ頸動脈への埋植および開存試験
実施例1にて作製したコラーゲン製人工血管を用いて、以下の方法に従ってウサギ頸動脈への埋植および開存(本発明において、人工血管内を血液が通過している状態を指す)試験を行った。
ウサギ(♂、体重2.6kg)の首部50〜60mmを全身麻酔下にて切開し、内頸動脈40mmを露出する。露出した内頸動脈を中央で切断し、実施例1で作製した人工血管を全長30mmに切断したものを実験例2同様、カフ法を用いて切断した内頸動脈の各端部に結合した。植え込まれたコラーゲン製人工血管は、埋植後3日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月の各期日に埋植部を切開して開き、埋植したコラーゲン製人工血管部位を取り出し、コラーゲン製人工血管に繋がる心臓側と脳側の自己血管部位を鉗子によりしごいて血流の有無を確認した。
【0044】
血管移植はウサギ3羽に行った。この3羽に対し、1ヶ月目での開存は2/3(66.7%)であった。開存していた2羽については、引き続き2ヶ月目、3ヶ月目までさらに観察を続けた。2ヶ月目及び3ヶ月目での開存は、どちらも2/2(100%)であった。以上の実験結果から、移植する人工血管の長さを10mmから30mmに延長しても長期に開存されることが確認された。
【0045】
【発明の効果】
本発明の人工血管は、移植に優れた縫合強度を有している。また、繊維密度にむらがなく、内径が一定であり、歪みがないため、長い血管等の欠損部に対しても移植、再生が可能となる。さらに、本発明の人工血管は、血管置換により置換した場合、欠損部位にて血管内皮細胞や線維芽細胞などの血管細胞の再生を促進する効果が優れており、かつ、むらのない再生が促進され、再生後の血管の変形がほとんどない。
【0046】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の人工血管の製造方法の説明図である。
【図2】縫合強度試験の説明図である。
【図3】本発明の人工血管の使用方法の一例の説明図である。
【図4】実験例2の細胞増殖試験における1ヶ月後のHE染色像である。
【図5】実験例2の細胞増殖試験における2ヶ月後のHE染色像である。
【図6】実験例2の細胞増殖試験における3ヶ月後のHE染色像である。
【図7】実験例2の細胞増殖試験における6ヶ月後のHE染色像である。
【符号の説明】
1 コラーゲン不織布
2 疎水性チューブ
3 平滑フィルム層
4 人工血管
5 プロリン糸
6 デジタルフォースゲージ
61 フック
7 引っ張り機械
71 フック
8 血管
9 カフ
10 再生細胞群

Claims (10)

  1. コラーゲン糸状物が複数本ほぼ平行に配列した層状物を、コラーゲン糸状物の配列方向が互いに角度をなすように複数重ね、接着されたコラーゲン不織布を、管状に成型してなる人工血管。
  2. コラーゲン糸状物が約0〜40mmの間隔で、ほぼ平行に配列した、請求項1記載の人工血管。
  3. コラーゲン糸状物のなす鋭角の角度が約5°以下であるように、複数本ほぼ平行に配列された、請求項1記載の人工血管。
  4. コラーゲン不織布が生分解性物質でコーティングされた、請求項1記載の人工血管。
  5. コラーゲン不織布に抗血栓性材料が塗布された、請求項1記載の人工血管。
  6. 人工血管の最内層に、さらに生分解性物質からなる平滑フィルム層を有する、請求項1記載の人工血管。
  7. 生分解性物質がコラーゲンである、請求項6記載の人工血管。
  8. 平滑フィルム層に抗血栓性材料を塗布したことを特徴とする請求項1記載の人工血管
  9. 抗血栓性材料がヘパリンであることを特徴とする請求項6または9記載の人工血管。
  10. コラーゲン糸状物を複数本ほぼ平行に配列した層状物を、コラーゲン糸状物の配列方向が互いに角度をなすように複数重ね、接着することによってコラーゲン不織布を作製し、該コラーゲン不織布を円柱またはチューブの側面に巻きつけることにより積層して管状に成型することを特徴とする、人工血管の製造方法。
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