JP7456104B2 - 医療用補綴材 - Google Patents

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Description

本発明は、医療用補綴材及びその製造方法に関する。
疾病や創傷によって身体の組織や器官の一部が欠損した場合に、その部位の形態と機能を人工物によって補う外科的治療が行われる。その際に使用される人工物は、補綴材と呼ばれ、様々な組織の代替補綴材が臨床で使用されている。
その補綴材の材料としては、ヒトや動物の臓器や器官、コラーゲン、ゼラチンなどの生物由来材料や、金属、セラミック、樹脂などの人工材料が用いられる。但し、生物由来材料には感染や異物反応による発熱や組織修復遅延のリスクがあるため、人工材料からなる補綴材が商品化されている。人工材料からなる補綴材は、耐久性や加工性に優れ、例えばポリエステルやポリプロピレンなどの非吸収性の合成高分子は、編物やメッシュ形状に加工することで目的の強度を達成しつつ生体の軟組織や器官に適合する柔軟な物性を持つ補綴材の材料として使用されている。
特に軟組織用の補綴材には、生体組織への馴染みや手術時の取扱い性の観点から、柔軟で高強度の物性が求められる。一般には、補綴材の材料として、生体適合性に優れる合成高分子材料を多孔度または空隙率の高い多孔質体に形成された材料が用いられている。前記多孔質体の具体例としては、厚み方向に貫通する孔または繊維間空隙を有する、スポンジ、メッシュ、編物、織物等がある。
ヘルニアは腹壁の軟組織の欠損症であり、腹腔内の臓器や組織が脆弱となった腹壁を圧迫して突出する症状である。臨床では、腹壁に補綴材を挿入して腹壁の強度を高める修復手術が行われている。当該修復手術に一般的に使用されている補綴材は、ポリプロピレン繊維から製作されたメッシュである。このメッシュには、組織補強のための強度が必要とされる一方で、剛性が高いと埋植された補綴材の周囲組織(例えば、腹膜、筋膜、皮膚等)に刺激を与えて過度の炎症を引き起こしたり、患部の動きを妨げたりする欠点が現れるため、当該周辺組織と馴染み過度な刺激を与えないための柔軟性が求められる。そこで、フィラメント径や織り密度に工夫がなされた柔軟性の高い高強度メッシュが商品化されている。
他の例として、血管の疾患の治療において、人工血管の置換やステントグラフトの留置が行われている。現在臨床では、柔軟性を持たせ、移植後の組織浸潤を確保するために、合成高分子製の多孔質体が人工血管の材料として広く使用されている。具体的には、内径が10mm以上の大口径人工血管の材料としてポリエステル繊維の編物が、内径8mm以下の中口径人工血管の材料としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を高速延伸して得られたePTFE(expanded PTFE)多孔質体が利用されている。
このように、生体適合性に優れる熱可塑性樹脂製の多孔質体が、軟組織用の補綴材の材料として臨床で広く利用されている。
前記多孔質体は、組織浸潤や体液の通過を可能としているため、埋植後に自家組織が補綴材内部に侵入するとともに、移植周囲の生体組織リモデリングが進んで確実かつ強力な組織修復を可能にする。しかし、その一方で、血液等の体液、細胞等を含む生体組織等を通過させうることが問題となる場合がある。
例えば、ポリエステル繊維の織物を筒状に加工した大口径人工血管は、織物の厚み方向に血液が透過して人工血管の外側への血液漏れが生じる。そこでかつては血液漏れを抑えるために、移植前に人工血管を患者自身の血液に浸して織物が有する繊維間空隙を血栓で塞ぐプレクロッティング処理が行われていた。しかし、この操作が煩雑であることが課題となっていた。他に、血液漏出の問題を解決するべく、ウシのコラーゲンやゼラチンを多孔質体にコーティングすることにより多孔質体の表面処理がなされた人工血管が開発されている。しかし、これらの材料は生物由来のため、感染や術後の異物反応による発熱、組織修復遅延のリスクが懸念される。
また、ePTFE製多孔質体からなる中口径人工血管もより微細な孔を多数有する多孔質構造をしているため、血漿透過性を有しており、移植後の漿液腫(seroma)の形成や浮腫が出現しやすいことが欠点とされている。
こうした背景から、生物由来材料を含まない生体適合性に優れた材料を用いて、人工血管からの血液や血漿等の体液の漏れを防ぐコーティング技術が求められている。
ところで、これらの多孔質体からなる人工血管は移植後の血栓形成により安定な偽内膜が形成されるため、数週間で血液や血漿の漏れは治まることが知られている。例えば、下記非特許文献1には、人工材料表面上に形成した血栓膜は埋入後2週間から組織治癒を受けはじめ、3か月ごろには新生内膜や偽内膜が形成されることが明示されている。そして、例えば下記特許文献1には、移植後の人工血管からの血液漏出を防ぐ手段として、吸収性材料を人工血管にコーティングする技術が開示されている。
下記特許文献1には、ポリエステル編物等の多孔質の人工血管の内面上に吸収性材料を含む非透水性の層が設けられた生体器官用補綴材が開示されている。吸収性材料としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロシキ吉草酸、ポリε-カプロラクトン、ポリエチレンアジペートあるいはこれらのコポリマー等の吸収性ポリエステルあるいは吸収性ポリエステルの混合物が開示されている。当該吸収性材料は、吸収性材料の良溶媒を用いた接着、ディッピング等の方法により、人口血管の内周面に固定的に積層されることが開示されている。
特公平6-77600号公報
人工血管血液接触面の構造とその特性、表面技術49巻、No.7、p45-51(1998)
しかし、上記従来技術では、本来柔軟性の高い人工血管の物性(柔軟性)が顕著に損なわれるという課題があった。
また、ヘルニア治療に使用されるメッシュ状の補綴材は、内臓と癒着するとイレウスなどの重篤な健康被害を引き起こす。そのため、手術後から腹膜中皮層が再生するまでの間、患部の臓器と補綴材との癒着を軽減させるために、ポリプロピレン製メッシュに吸収性コラーゲンフィルムや吸収性樹脂フィルムをラミネートしたヘルニア治療用補綴材が製品化されている。例えばジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社から販売されている「フィジオメッシュ」(登録商標)では、プロピレン製メッシュの両面に、吸収性高分子材料であるカプロラクトン/グリコライド共重合体フィルムがラミネートされている。このフィルムは剛性があり張りが強いために、湾曲させると周囲組織に物理的ストレスを与えて治癒が不十分になるリスクがあり、ポリプロピレン製メッシュの柔軟性を損なわないラミネートも望まれている。
したがって、本発明は、非吸収性の多孔性基材層と、前記多孔性基材層に固着され吸収性材料を含む非透水性の樹脂層と、を含む医療用補綴材において、体液漏出及び生体組織の浸潤を適切に防ぐことができるというバリア性と、生体組織に適合する柔軟性とを両立可能とする医療用補綴材を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、非吸収性の多孔性基材層と、前記多孔性基材層に固着され吸収性材料を含む非透水性の樹脂層と、を含み、前記吸収性材料がラクチドとカプロラクトンのモル比(ラクチド:カプロラクトン)が65:35~80:20の共重合体である、医療用補綴材に関する。
本発明の別の態様は、非吸収性の多孔性基材層と、前記多孔性基材層に固着され吸収性材料を含む非透水性の樹脂層とを含む、医療用補綴材の製造方法であって、非吸収性の多孔性基材と、吸収性材料を含む非透水性のフィルムとを熱圧着させる工程を含み、前記吸収性材料がラクチドとカプロラクトンのモル比(ラクチド:カプロラクトン)が65:35~80:20の共重合体である、医療用補綴材の製造方法に関する。
本発明によれば、体液漏出や生体組織の浸潤を適切に防ぐことができるというバリア性と、生体組織に適合する柔軟性とが両立された、医療用補綴材を提供できる。
図1は、本発明の医療用補綴材の一例の模式的断面図である。 図2は、本発明の医療用補綴材の他の一例の模式的一部断面図である。
本発明の医療用補綴材(以下「医療用補綴材」を「補綴材」と略称する場合がある。)を構成する多孔性基材層(以下「多孔性基材層」を「基材層」と略称する場合がある。)は、樹脂層が固着されていない状態で、生体組織に適合する柔軟性を有するものである。基材層は、生体組織との硬さや伸び等の物性のギャップ(差)が小さいので、生体組織に適合する柔軟性を有する。
本発明は、基材層の表面に、特定組成の吸収性材料を含む非透水性の樹脂層が固着されていると、体液漏出や生体組織の浸潤を適切に防ぐことができるというバリア性(以下「適切なバリア性」と略する場合がある。)と、樹脂層の固着に起因する基材層の柔軟性低下の抑制とが両立できる、という新たな知見に基づく。
生体組織に適合する柔軟性が確保されるということは、樹脂層の固着が、本来柔軟性が高い基材層へ与える影響が少なく、基材層そのものの柔軟性と、補綴材の柔軟性との差が小さいことを意味する。補綴材の柔軟性は、例えば、曲げ剛性によって評価でき、曲げ剛性は、実施例に記載の方法により測定できる。
即ち、本発明の一態様は、非吸収性の多孔性基材層と、前記多孔性基材層に固着され吸収性材料を含む非透水性の樹脂層と、を含み、前記吸収性材料がラクチドとカプロラクトンのモル比(ラクチド:カプロラクトン)が65:35~80:20の共重合体である医療用補綴材に関する。本発明によれば、適切なバリア性と生体組織に適合する柔軟性とが両立された補綴材を提供できる。
本発明において、「非吸収性」とは、埋植された生体内で、その個体が生存可能な期間内は、生体内に残ることを意味する。
本発明において、「吸収性」とは、生体内に埋植された後、所定期間経過後に、樹脂層が崩壊(ひび割れ、穴等の破損が生じて、外力が加わると形状が保てなくなる状態)することを意味し、好ましくは3週間以上の期間であって3か月間以下の期間内に、前記崩壊が生じることを意味する。以下、埋植から崩壊が始まる迄の上記所定期間は、形状保持期間と呼ぶ場合がある。
本発明において、「非透水性」とは、最大血圧において水を実質的に透過させない状態をいい、具体的には、120mmHg(16kPa)の水圧を負荷した状態の透水量が0.1mL/cm/min以下のことであり、好ましい透水量は0mL/cm/minである。一方、「透水性」とは、前記透水量が0.1mL/cm/minよりも大きいことであり、好ましい透水量は10mL/cm/min以上である。
本発明において、「多孔性」とは、基材層の一方の主面から他方の主面に向かって連通する孔または繊維間空隙を多数含む構造のことを示す。
以下、図面を用いて本発明の具体例を詳細に説明する。図1は、本発明のシート状医療用補綴材の一例の模式的断面図であり、当該シート状医療用補綴材1は、多孔性基材層2と、多孔性基材層2に固着された樹脂層3とを含む。図2は、本発明の筒状医療用補綴材の一例の模式的一部断面図であり、当該筒状医療用補綴材4は、多孔性基材層5と、多孔性基材層5に固着された樹脂層6とを含む。
[基材層]
基材層2,5は、補綴材の用途に応じて、非吸収性材料が所定の形状に形成されたものであり、厚み方向に水を透過させ得るという透水性を有する。
基材層2,5としては、シート状物または管状物等が挙げられる。図1に示された基材層2はシート状物であり、図2に示された基材層5は管状物である。基材層5は管状であるので、内部に中空部7を有する。
非吸収性材料は、埋植された生体内で、その個体が生存可能な期間内は生体内に残るため、生体適合性に優れた非吸収性の合成高分子材料であることが望ましい。基材層は、従来公知の補綴材と同様の材料、加工技術にて作製できる。好ましい非吸収性材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
前記基材層2,5の形態としては、繊維を編組または織込み等して作られるメッシュ、織物、編物、不織布、組物(組み紐)、発泡や造孔技術で作られるスポンジ、樹脂を延伸して引き裂くことで空隙を作った多孔質体等の多孔性を有するもの(多孔質体)が挙げられる。
上記繊維の形態は、紡績糸、マルチフィラメント糸、モノフィラメント糸、フィルム割繊糸といった如何なる形態でもよい。
基材層が有する孔または繊維間空隙は、補綴材の埋植後に自家組織が侵入して組織再生を促す空間または足場を提供する。前記孔の径または繊維間空隙の長さについては、用途に応じて適宜選択すればよく、例えば、本発明の補綴材がヘルニア治療に用いられる補綴材であれば、従来のヘルニア治療に用いられる組織修復補綴材のそれと同等でよく、本発明の補綴材が人口血管である場合は、従来公知の人工血管のそれと同等でよい。
基材層2,5は、患部の欠損組織を補う強度を有し、且つ、生体組織と馴染む柔軟性を有するものが好ましい。基材層2,5の厚さは、一般的に50~700μmの範囲にある。
基材層2,5の材料としては、例えば、市販のヘルニア修復バッチ(例えば、プロリーン(登録商標)メッシュ(エチコン製)、パリテックスTMメッシュ(ソフラディム・プロダクション製)、バードメッシュ(C.R.バード製)、ポリエステル繊維製の人工血管(例えば、ゼルソフト(登録商標)(バスクテックリミテッド製)、JGraft(登録商標)(日本ライフライン株式会社製)、HEMAGARD(登録商標)(MAQUET製)、ePTFE製人工血管(例えば、ゴアテックス(登録商標)グラフト(日本ゴア株式会社製)、ADVANTA(登録商標)PTFE(エイトリアム メディカル コーポレーション製)、ハイレックスグラフト(株式会社ハイレックスコーポレーション製))で使用されている材料を使用できる。
[樹脂層]
樹脂層3,6は、吸収性材料で形成された非透水性の層である。樹脂層3,6は、前記基材層2,5の一対の主面のうちの一方の主面のみに固着されていてもよいが、両方の主面に固着されていてもよい。樹脂層は、適切なバリア性と生体組織に適合する柔軟性の両立の観点から、基材層2,5の一対の主面のうちの一方の主面のみに固着されていると好ましい。図1及び図2に示された例では、樹脂層3,6は、基材層2,5の一方の主面のみに固着され、図2に示された例では、樹脂層6は、筒状の基材層5の外周面に固着されている。
樹脂層3,6は、生体に埋植された後、所定期間経過後は、崩壊が生じてその機能を果すことができなくなる。樹脂層3,6は、生体に埋植された後、所定期間、好ましくは3週間以上の期間であって3月間以下の期間内は、血液等の体液、細胞等を含む生体組織の透過をブロックする。樹脂層3,6の崩壊が早すぎると、血液漏れや周囲組織との癒着が発生するなどして有害事象が発生するリスクが高くなる。崩壊が遅すぎると正常組織間の生理活性物質やシグナル伝達を長期間遮断することによって弊害が発生する可能性がある。適切なバリア性の有無は透水量の値により評価でき、当該透水量は実施例に記載の方法で得ることができる。当該方法により測定される透水量が0.1mL/cm2/min以下であれば、体液及び生体組織に対する適切なバリア性があると評価できる。
前記吸収性材料としては、適切なバリア性と生体組織に適合する柔軟性の両立の観点から、ラクチドとカプロラクトンのモル比が65:35~80:20の共重合体が挙げられる。当該モル比は、実施例に記載の方法により測定できる。
下記表1は、発明者らが調査あるいは測定した吸収性材料の物性を示している。
Figure 0007456104000001
ガラス転移温度は、樹脂が柔軟なゴム状態から硬い固化状態へ変化する境目の温度で、ガラス転移温度より高温の環境では樹脂は軟化する。したがって、ヒトの体温より低温側にガラス転移温度を示す樹脂は体内でゴム様の柔軟性を示すため、本発明における吸収性材料として好ましい。ガラス転移温度は以下の方法にて測定できる。
[ガラス転移温度の測定方法]
示差走査熱量計(DSC)を用いて、樹脂の昇温と冷却のDSC曲線を取得する。融解や結晶化ピークより低温度側に現れるベースラインのシフト位置としてガラス転移温度を測定する。
弾性率(ヤング率)は、材料の変形のしにくさを表す物性値で引張試験によって測定される。弾性率が小さいほど柔軟で変形しやすい材料であり、本発明では、この値が小さいほど好ましい。表1から、L-ラクチドとε-カプロラクトンの共重合体モル比(ラクチド:カプロラクトン)が70:30では、他の吸収性材料と比較して著しく弾性率(ヤング率)が低く、優れた柔軟性を有していることが分かる。
表1中の「形状保持期間」は、下記方法により評価できる。本発明において吸収性材料は、適切なバリア性を担保する観点から、埋植してから3週間以上の期間であって3か月間以下の期間内に、樹脂層3,6が生体内で崩壊する合成高分子材料が好ましい。
[形状保持期間の評価方法]
形状保持期間は、インビボ(in vivo)またはインビトロ(in vitro)の試験で測定される。in vivoでは、動物の皮下や筋肉内に試料を埋植して一定期間後に取り出して形状観察と引張試験を行う。in vitroの試験はISO15814に試験方法が示されており、生体内環境を模擬したpH7.4に調整したリン酸緩衝液に試料を浸漬させて37±1℃の温度条件で無菌的にインキュベーションを行い、所定期間経過後に形状観察または引張試験により評価できる。表1には、形状観察として目視によりひび割れや穴等の破損が確認されない期間を形状保持期間として示している。
本発明者らは、この3つの物性を指標として検討を行った結果、ラクチドとカプロラクトンのモル比(ラクチド:カプロラクトン)が65:35~80:20の共重合体であれば、適切なバリア性と生体組織に適合する柔軟性の両立とが可能となることを見出した。
前記共重合体における前記モル比は、ラクチドのモル比が65%よりも小さくなると生体内で埋植から3週間経過する前に崩壊が生じるため好ましくない。一方で、ラクチドのモル比がより大きくなると、弾性率が大きくなり柔軟性に欠けてしまう。
樹脂層3,6の材料である共重合体における前記モル比は、適切なバリア性と生体組織に適合する柔軟性の両立の観点から、65:35~80:20であり、好ましくは65:35~75:25であり、より好ましくは67:33~75:25であり、更により好ましくは70:30である。
前記共重合体の重量平均分子量は、成型加工性の観点から、10万以上100万以下が好適である。共重合体の重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定できる。
本発明における共重合体は、ランダム重合体、ブロック重合体のいずれであってもよいが、柔軟性の観点からランダム重合体が好ましい。前記共重合体は、前記モル比を満たしていれば、異なるモル比の共重合体を2種類以上混合して使用することもできる。なお、本発明における樹脂層3,6は、前記モル比の共重合体のみを含有してもよいし、本発明に影響を与えない範囲で、さらにその他の重合体や共重合体を含んでもよい。
本発明における共重合体の調製方法は、特に制限されず、従来公知の方法が使用できる。一般的に、出発原料としてラクチドとカプロラクトンとを用いて、これらを開環重合により共重合させてもよいし、乳酸からラクチド(乳酸の環状二量体)を合成して、これをカプロラクトンと共重合させてもよい。ラクチドとカプロラクトンとの重合温度は、特に制限されないが、得られるフィルムが柔軟性に優れることから、例えば、100~170℃が好ましい。なお、乳酸を用いたラクチドの合成方法も特に制限されず従来公知の方法が使用できる。
前記ラクチドとしては、特に制限されず、L-ラクチド、D-ラクチドおよびそれらの混合物(D,L-ラクチド)が使用でき、また、乳酸としては、L-乳酸、D-乳酸、それらの混合物(D,L-乳酸)が使用できる。このように出発原料として乳酸を使用した場合、本発明の共重合体においては、一量体の乳酸を二量体のラクチドに換算し、換算したラクチドとカプロラクトンとのモル比が前述の範囲を満たせばよい。
カプロラクトンとしては、例えば、ε-カプロラクトン、γ-カプロラクトン、δ-カプロラクトン等があげられ、中でもε-カプロラクトンが好ましい。
前記共重合体におけるラクチドの繰り返し単位である平均鎖長は、例えば、10以下であることが好ましく、より好ましくは6以下である。この「共重合体におけるラクチドの繰り返し単位である平均鎖長」とは、共重合体形成の際に開環したラクチド(乳酸2分子)が連続して結合している分子数の平均を意味する。前記ラクチドの平均鎖長が、10以下であれば、例えば、得られるフィルムがより柔軟性に優れる。このような共重合体は、例えば、重合温度を高く設定することにより得ることができ、具体的には、重合温度を相対的に高く設定することにより、平均鎖長を相対的に小さく設定することができる。具体例として、重合温度は、例えば、100~170℃が好ましい。
樹脂層3,6は、適切なバリア性と生体組織に適合する柔軟性の両立の観点から、適切な厚さを有する。樹脂層3,6の厚さは、適切なバリア性と生体組織に適合する柔軟性の両立の観点から、好ましくは5μm以上150μm以下であり、より好ましくは5μm以上110μm以下であり、高い柔軟性を確保する観点から、更に好ましくは10μm以上70μm以下である。
基材層と、基材層の一方の主面に固着された樹脂層とからなる積層体の曲げ剛性は、適切なバリア性と生体組織に適合する柔軟性の両立の観点から、基材層の単独の曲げ剛性の、好ましくは7倍未満であり、より好ましくは5倍未満であり、更に好ましくは2.5倍未満である。
樹脂層3,6の単位面積あたりの重量は、適切なバリア性と生体組織に適合する柔軟性の両立の観点から、好ましくは180g/m2未満、より好ましくは130g/m2未満、より好ましくは80g/m2未満である。
樹脂層3,6の形成に用いられる非透水性の樹脂フィルムは、押し出し成型など一般的な方法で製造される。無延伸フィルム、1軸延伸フィルム、2軸延伸フィルムのいずれでも、樹脂層3,6の材料として好適に使用できる。
本発明の補綴材の用途は、特に制限されず、例えば、人工血管、血管用パッチ、ヘルニア治療用シート、歯科の組織修復用メンブラン等が挙げられるが、適切なバリア性と生体組織に適合する柔軟性の両立を可能としていることから、生体の軟組織用の補綴材として好適に利用することができる。軟組織としては、血管、腹膜、胸膜、筋膜、皮膚、歯肉等が挙げられる。
[補綴材の製造方法]
次に、本発明の補綴材の好ましい製造方法について説明する。
当該好ましい製造方法は、非吸収性の多孔性基材層2,5と、前記多孔性基材層2,5に固着され吸収性材料を含む非透水性の樹脂層3,6とを含む、医療用補綴材の製造方法であって、非吸収性の多孔性基材と、吸収性材料を含む非透水性のフィルムとを熱圧着させる工程を含む。前記吸収性材料は、ラクチドとカプロラクトンのモル比(ラクチド:カプロラクトン)が65:35~80:20の共重合体である。基材に熱圧着されたフィルムは基材に固着され、非吸収性の多孔性基材層2,5と、前記多孔性基材層2,5に固着され吸収性材料を含む非透水性の樹脂層3,6とを含んだ補綴材が作製される。
基材に、吸収性材料の良溶媒を用いた接着や、吸収性材料をディッピング等して、当該基材に樹脂層を形成する方法では、基材が有する孔または繊維間空隙等に吸収性材料が侵入して固化するため、補綴材の剛性が高くなり好ましくない。また、吸収性材料の良溶媒は有機溶媒で、有害性がある。当該溶媒が残存することによる毒性のリスクや製造環境、環境汚染の観点から、有機溶媒を使用しない製造方法が好ましい。
本発明の上記好ましい製造方法によれば、前記吸収性材料として特定組成の共重合体を選択し、フィルムを熱圧着によって多孔性の基材に固着するので、補綴材について生体組織に適合する柔軟性を担保しながら、基材にフィルムを固着できる。したがって、本発明の好ましい製造方法によれば、適切なバリア性と生体組織に適合する柔軟性の両立が可能な補綴材を提供できる。
フィルムの基材への固着方法は、有害性の有機溶媒の使用を回避するという理由から、フィルムを構成する吸収性材料の熱可塑性を利用した熱圧着方法である。前記熱圧着は、前記共重合体の溶融温度より高い温度でフィルムを加熱し、軟化されたフィルムを基材へ圧着してもよいし、フィルムと基材を重ねた後、圧着機(熱プレス機)を用いて、両者を加熱しながら加圧してもよい。熱プレス機の温度は、高すぎると吸収性材料の熱分解が起こるため温度制御が必要である。好ましい加熱温度は、110℃以上200℃以下、好ましくは130℃以上170℃以下である。圧着時の圧力は、フィルムを基材へ確実に固着でき、基材の多孔質構造が変形しない程度の圧力であれば、特に制限されない。
フィルムの製造方法は、特に制限されず、押出成形法、プレス法、キャスト法等、従来公知の成膜方法によって製造できる。具体例として、プレス法を採用する場合、前記共重合体のペレットを調製し、これを熱プレス機でプレスすることによりフィルム化できる。また、熱プレスの条件も特に制限されないが、一般的に、温度120~200℃であり、圧力1~10MPaである。また、キャスト法を採用する場合、例えば、前記共重合体を溶剤に溶かしてポリマー溶液を調製し、これを平面上に流延して溶剤を揮発させ、フィルム化する。前記溶剤としては、特に制限されず、例えば、1,4-ジオキサン、炭酸ジメチル、クロロホルム、ジクロロメタン等があげられる。
本発明の上記好ましい製造方法において使用する基材は、フィルムが固着されることにより基材層となるが、基材の形状、材料、形態、糸の形態、孔の径、繊維間空隙長さについて、上記基材層のそれと同じである。
本発明の上記好ましい製造方法において使用するフィルムは、基材に固着されることにより樹脂層3,6なるが、フィルムの材料、厚さ、単位面積当たりの重量等については、上記樹脂層3,6のそれと同じである。
以下、実施例および比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[各種パラメーターの測定方法]
(共重合体におけるモル比の測定方法)
乾燥したL-ラクチドとε-カプロラクトンの共重合体を重水素化クロロホルムに溶解して得た溶液に対して、1H-NMRスペクトルの測定を行った。得られたスぺクトルにおいて、δ=5.1ppm付近をL-ラクチド、4.1ppm付近をε-カプロラクトンのピークとし、これらのピークの積分値比により、L-ラクチドとε-カプロラクトンのモル比を求めた。
(重量平均分子量)
重合体の重量平均分子量は、重合体をクロロホルムに溶解し、カラムK-806L(昭和電工社)、溶離液:クロロホルムを用いて、標準ポリスチレンを標準物質とするGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により重量平均分子量を測定した。
(フィルムの単位面積当たりの重量)
フィルムを1cm×1cmの大きさにカットし、その重量を測定した。
[共重合体の作製方法]
L-ラクチド70.1質量部およびε-カプロラクトン29.9質量部を、オクチル酸スズ(100mol.ppm)の存在下、反応温度140℃、減圧下で24時間反応させ、実施例1で使用するラクチド-カプロラクトン共重合体を合成した。実施例2~8、比較例2~3で使用する共重合体は、使用するL-ラクチドとε-カプロラクトンの量(質量部)を変化させたこと以外は実施例1で使用するラクチド-カプロラクトン共重合体と同様な方法で作製した。
[実施例1]
厚さ450μmのポリエステル製平織りシート(以下、未処理平織りシート)に、L-ラクチドとε-カプロラクトンのモル比が70:30の共重合体(重量平均分子量:2.0×105)をシート状に加工して得た非多孔性の樹脂フィルム(単位面積当たりの重量:71.4g/m2、厚さ60μm)を150℃で熱圧着して、補綴材Aを得た。
<曲げ剛性>
補綴材A及び未処理平織りシートをそれぞれ3cm×5cmの大きさに加工し、純曲げ試験機(カトーテック社製)を用いて曲げ剛性を評価した。その結果、補綴材A及び未処理平織りシートの曲げ剛性はそれぞれ0.1465 gf・cm/cm 、0.0699gf・cm/cmであり、補綴材Aの曲げ剛性の未処理平織りシートのそれに対する倍率は2.10倍であった(下記表2参照)。
<透水量>
補綴材A及び未処理平織りシートに16kPaの水圧を負荷して、1分間にシートを通過した水の量を透水量として測定した。その結果、補綴材A及び未処理平織りシートの透水量はそれぞれ0mL/cm2/min、79.6mL/cm2/minであり、補綴材Aは適切なバリア性を有していることがわかった。
[実施例2]
実施例1と同じ未処理平織りシートに、L-ラクチドとε-カプロラクトンのモル比が70:30の共重合体(重量平均分子量:2.0×105)をシート状に加工して得た非多孔性の樹脂フィルム(単位面積当たりの重量:178.5g/m2、厚さ150μm)を150℃で熱圧着して、補綴材Bを得た。
<曲げ剛性>
実施例1と同じく補綴材Bを3cm×5cmの大きさに加工し、純曲げ試験機(カトーテック社製)を用いて曲げ剛性を評価した。その結果、補綴材Bの曲げ剛性は0.4336 gf・cm/cmであり、補綴材Bの曲げ剛性の未処理平織りシートのそれに対する倍率は6.20倍であった(下記表2参照)。
[比較例1]
実施例1と同じ未処理平織りシートに、ポリL-乳酸(重量平均分子量:4.5×105)をシート状に加工して得た非多孔性の樹脂フィルム(単位面積当たりの重量:71.4g/m2、厚さ60μm)を210℃で熱圧着して、補綴材Cを得た。
<曲げ剛性>
補綴材Cを0.5cm×5cmの大きさに加工し、純曲げ試験機(カトーテック社製)を用いて曲げ剛性を評価した。その結果、補綴材Cの曲げ剛性は0.8281 gf・cm/cmであり、補綴材Cの曲げ剛性の未処理平織りシートのそれに対する倍率は11.85倍であった(下記表2参照)。
[実施例3]
厚さ300μmのポリプロピレン製メッシュ(商品名:プロリーンメッシュ、エチコン製)(以下、未処理メッシュ)に、L-ラクチドとε-カプロラクトンのモル比が70:30の共重合体(重量平均分子量:2.0×105)をシート状に加工して得た非多孔性の樹脂フィルム(単位面積当たりの重量:71.4g/m2、厚さ60μm)を150℃で熱圧着して、補綴材Dを得た。
<曲げ剛性>
補綴材D及び未処理メッシュをそれぞれ3cm×5cmの大きさに加工し、純曲げ試験機(カトーテック社製)を用いて曲げ剛性を評価した。その結果、補綴材D及び未処理メッシュの曲げ剛性はそれぞれ0.4637 gf・cm/cm 、0.4347gf・cm/cmであり、補綴材Dの曲げ剛性の未処理メッシュのそれに対する倍率は1.07倍であった(下記表2参照)。
<透水量>
補綴材D及び未処理メッシュに16kPaの水圧を負荷して、1分間にメッシュを通過した水の量を透水量として測定した。その結果、補綴材D及び未処理メッシュの透水量はそれぞれ0mL/cm2/min、>100mL/cm2/minであり、補綴材Dは適切なバリア性を有していることがわかった。
[実施例4]
厚さ700μmのePTFE製多孔質シート(以下、未処理多孔質シート)に、L-ラクチドとε-カプロラクトンのモル比が70:30の共重合体(重量平均分子量:2.0×105)をシート状に加工して得た非多孔性の樹脂フィルム(単位面積当たりの重量:71.4g/m2、厚さ60μm)を150℃で熱圧着して、補綴材Eを得た。
<曲げ剛性>
補綴材E及び未処理多孔質シートをそれぞれ3cm×5cmの大きさに加工し、純曲げ試験機(カトーテック社製)を用いて曲げ剛性を評価した。その結果、補綴材E及び未処理多孔質シートの曲げ剛性はそれぞれ0.1476 gf・cm/cm 、0.1571gf・cm/cmであり、補綴材Eの曲げ剛性の未処理多孔質シートのそれに対する倍率は0.94倍であった(下記表2参照)。
Figure 0007456104000002
[実施例5]
L-ラクチドとε-カプロラクトンのモル比が69:31の共重合体(重量平均分子量:2.0×105)を150℃、10MPa、20分の条件で熱プレス(10T、東洋精機製作所)を行い、単位面積当たりの重量が60g/m2、厚さ50μmの非多孔性の樹脂フィルムを作製した。
作製されたフィルムは、引張試験機に供するため、JIS K 7161-2 type1BAの形状に打ち抜いた。得られた試験用サンプルに対して、生体内環境を模擬した分解試験をISO15814に準じて実施した。具体的には、pH7.4に調整したリン酸緩衝液に試料を浸漬させて密封し、37±1℃の温度条件で12週間のインキュベーションを行った。所定期間経過後に試料を取り出し、外観変化の有無、及び引張試験機を用いて試料の引張強度を評価し、その結果を表3に示した。
Figure 0007456104000003
表3に示すように、浸漬から8週までは、ひび割れや穴等の破損が確認されず、フィルム形状が保持されているが、浸漬から10週経過の時点では、引張強度評価ができない程度にまで分解が進んでいることがわかった。
[実施例6~8、比較例2~3]
下記表4に示すように、組成比を変えた共重合体のペレットを140℃、10MPaの条件で熱プレス(10T、東洋精機製作所)を行い、単位面積当たりの重量が178g/m2、厚さ150μmの非多孔性の樹脂フィルムを作製した。
実施例6~8、比較例2~3で用いた共重合体の重量平均分子量は、実施例6:5.0×105、実施例7:2.0×105、実施例8:4.5×105、比較例2:4.0×105、比較例3:3.5×105である。
得られたフィルム(長さ10mm,幅20mm)をエチレンオキサイドガス(EOG)で滅菌した後、これを犬の屈筋腱(直径が約2~4mmの楕円柱)に巻き付け、フィルム同士を縫合して腱に固定させた。フィルムについて、ひび割れ、クラック等を生じさせることなく捲回可能であったものを柔軟性ありと判断し、フィルムが硬くて巻回出来なかった試料は柔軟性なしと判断し、その結果を下記表4に示した。
犬の屈筋腱に巻き付けたフィルムを3週間後に摘出し、フィルムについて、ひび割れの有無を確認し、その結果を表4に示した。
以上の実験結果から明らかなように、ラクチドとカプロラクトンのモル比が65:35~80:20の共重合体のフィルムを基材に固着させれば、生体内で3週間以上の適切なバリア性と生体組織に適合する柔軟性の両立が可能であることが分かった。
このように、本発明によれば、従来使用されている補綴材を構成する基材の柔軟性を損なうことを抑制しながら、生体内で一定期間、血液の漏出や生体組織の浸潤を防ぐことができるというバリア性を確保することが可能となるので、安全性が高い医療用補綴材を提供することが可能になる。
1,4 医療用補綴材
2,5 多孔性基材層
3,6 樹脂層
7 中空部

Claims (5)

  1. 非吸収性の多孔性基材層と、
    前記多孔性基材層に固着され、吸収性材料を含む非透水性の樹脂層と、を含み、
    前記吸収性材料がラクチドとカプロラクトンのモル比(ラクチド:カプロラクトン)が65:35~80:20の共重合体であり、
    前記多孔性基材層は、管状物であり、前記樹脂層は前記多孔性基材層の外周面に固着されており、
    前記樹脂層の厚さは、10μm以上70μm以下であり
    前記多孔性基材層と前記樹脂層とからなる積層体の曲げ剛性は、前記多孔性基材層の単独の曲げ剛性の5倍未満であり、
    前記樹脂層は、フィルム状に加工された前記吸収性材料が熱圧着により固着されたものである、医療用補綴材。
  2. 前記樹脂層の単位面積当たりの重量が180g/m2未満である、請求項1に記載の医療用補綴材。
  3. 前記多孔性基材層は、織物、編物、メッシュ、組物、及び多孔質フィルムから選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の医療用補綴材。
  4. 請求項1からのいずれかの項に記載の医療用補綴材の製造方法であって、
    管状の非吸収性の多孔性基材の外周面に吸収性材料を含む非透水性のフィルム熱圧着させる工程を含み、
    前記吸収性材料がラクチドとカプロラクトンのモル比(ラクチド:カプロラクトン)が65:35~80:20の共重合体であり、
    前記フィルムの厚さは、10μm以上70μm以下であり
    前記多孔性基材層と前記樹脂層とからなる積層体の曲げ剛性は、前記多孔性基材層の単独の曲げ剛性の5倍未満である、医療用補綴材の製造方法。
  5. 前記フィルムの単位面積当たりの重量が180g/m2未満である、請求項に記載の医 療用補綴材の製造方法。
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