JP7324055B2 - 組織補強材及び組織補強材の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、組織補強材は、組織を補強する一方、その動きを制約するという一面も合わせて有する。例えば、肺の一部を切除する術式において組織補強材を用いて切除面の補強を行った場合、呼吸に応じて全体に拡張と収縮とを繰り返す肺の活発な動的活動が阻害されてしまうことがある。手術部位は、組織としての修復のみならず、その機能としての修復も得られることが好ましいことは言うまでもない。そのためには、組織修復期間において、手術後の部位の動的活動を阻害しないような状態を維持することが好ましい。従って、組織補強材には、生体組織の動的活動をできるだけ阻害しないように、高い伸縮性が求められると考えられていた。
以下に本発明を詳述する。
そして更に検討の結果、引張の初期(2.5%から5.0%伸長時)における縦方向のヤング率(YL)と、引張の初期(2.5%から5.0%伸長時)における横方向のヤング率(YW)との比(YL/YW×100)が50.0%以上となるように、縦横での伸縮性が大きく異なる組織補強材を用いれば、血管の補強に用いたときにでも、径方向の動的活動を阻害せず、かつ、血管が屈曲したときでもキンクが発生することなく、正常な組織に修復することができることを見出し、本発明を完成した。
なお、本明細書において組織補強材の縦方向とは、全方向について引張の初期におけるヤング率を測定したときに、最も小さいヤング率を与える方向を意味し、横方向とは縦方向に直交する方向を意味する。
上記横方向のヤング率(YW)の上限は特に限定されないが、組織を傷つけない程度の柔軟性を確保する観点からは5.00MPA以下であることが好ましく、2.00MPA以下であることがより好ましい。
また、上記生体吸収性材料としては、シルクフィブロイン、コラーゲン、ゼラチン、キチン、キトサン、フィブリン等の天然吸収性高分子を用いることもできる。更に、上記合成吸収性高分子と上記天然吸収性高分子を併用してもよい。
まず、生体吸収性材料等の生体組織補強材の原料を紡糸して、糸状体を得る紡糸工程を行う。上記糸状体の太さは特に限定されないが、補強材の柔軟性と形状安定性、および、強度を維持する観点から平均単繊維径の好ましい下限は0.1ΜM、好ましい上限は20ΜMである。また、上記糸状体は、モノフィラメント糸であってもマルチフィラメント糸であってもよいが、部位の動的活動に追随する観点からモノフィラメントよりも、12~96フィラメント程度のマルチフィラメント糸であることが好適である。
このとき、編物の伸縮性が高い方向が、得られる組織補強材の縦方向と合致するように、過半数の編物を重ね合わせることにより、縦横でのヤング率が大きく相違する組織補強材を得ることができる。
具体的には例えば、8枚の編物を重ねて積層体を得るときに、8枚全ての編物を、伸縮性の高い方向が得られる組織補強材の縦方向と合致するように積層した場合には、縦横のヤング率の相違が最大の組織補強材を得ることができる。また、方向を揃える枚数を7枚、6枚、5枚と変更することにより、縦横のヤング率比を調整することができる。
このニードルパンチ処理等の積層化の際に、処理頻度を多くするに従い元の編物の方向性が減少し、縦横ヤング率が平準化されていく。元の編物の重ね合わせの向き、及び、積層化処理の頻度の両者で縦横比の調整が可能となる。
例えば、血管の補強に用いた場合には、径方向の動的活動を阻害せず、かつ、血管が屈曲したときでもキンクや過剰な伸び発生することない補強が可能である。
溶融紡糸法によりポリグリコリド(メルトフローレイト4.5G/10MIN)を紡糸して、平均単繊維径16ΜMの16フィラメントからなるマルチフィラメント糸を得た。
得られたマルチフィラメント糸を、筒編み機を用いて筒編みして編物を得た。
得られた編物を、8枚重ねて積層体を得た。このとき、8枚全ての編物を、伸縮性の高い方向が得られる生体組織補強材の縦方向と合致するように積層した。
得られた積層体にニードルパンチ処理を施すことにより、編物同士を複合一体化させるとともに、不織布状の組織補強材を得た。
得られたサンプルを、引張試験機(島津製作所社製、AG-5KNPLUS)を用いて23℃、チャック間距離20MM、引っ張り速度10MM/秒の条件にて引張試験を行って、0.5MM(2.5%)から1MM(5%)伸長時におけるヤング率、引張強力を測定した。得られた組織補強材の物性を表1に示した。
市販のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フェルト(河野製作所製、クラウンジュンフェルト)を組織補強材とした。組織補強材について、実施例1と同様の方法により物性を測定し、その結果を表1に示した。
市販のポリグリコリド不織布(グンゼ社製、ネオベール05Gシート)を組織補強材とした。組織補強材について、実施例1と同様の方法により物性を測定し、その結果を表1に示した。
溶融紡糸法によりポリグリコリド(メルトフローレイト4.5G/10MIN)を紡糸して、平均単繊維径15ΜM、16フィラメントのマルチフィラメント糸を得た。
得られたマルチフィラメント糸を、筒編み機を用いて筒編みして編物を得た。
得られた編物を、8枚重ねて積層体を得た。このとき、伸縮性の高い方向が互い違いになるように8枚の編物を重ねて積層した。即ち、8枚のうちの4枚が伸縮性の高い方向が得られる生体組織補強材の縦方向と合致し、残りの4枚が伸縮性の高い方向が得られる生体組織補強材の横方向と合致するように積層した。得られた積層体にニードルパンチ処理を施すことにより、編物同士を複合一体化させるとともに、不織布状の組織補強材を得た。
得られた組織補強材について、実施例1と同様の方法により物性を測定し、その結果を表1に示した。
実施例及び比較例で得た生体組織補強材について、以下の方法により人工血管補強時挙動を評価した。
結果を表2に示した。
実施例1及び比較例1で得られた組織補強材を上記人工血管の短冊状片と同サイズに切断し、組織補強材の縦方向と人工血管の短冊状片の長尺方向とを合わせてフィブリン糊にて接着し、人工血管の短冊状片を組織補強材で補強したサンプルを得た。
得られたサンプルを、引張試験機(島津製作所社製、AG-5KNPLUS)を用いて23℃、チャック間距離10MM、引っ張り速度10MM/秒の条件にて、その長尺方向へ2.5%、5.0%、7.5%及び10.0%の伸度にまで引張試験を行い、各伸度における引張強力を測定した。
なお、比較対象として、組織補強材で補強しない人工血管の短冊状片のみの引張試験も行った。
結果を表2に示した。
Claims (6)
- 動的活動を行う生体組織を補強するための組織補強材であって、
縦方向に2.5%から5.0%伸長時における縦方向のヤング率(YL)と、横方向に2.5%から5.0%伸長時における横方向のヤング率(YW)との比(YL/YW×100)が25.0%以上50.0%以下であり、
縦方向に2.5%から5.0%伸長時における縦方向のヤング率(YL)が0.20MPA以下であり、
横方向に2.5%から5.0%伸長時における横方向のヤング率(YW)が0.30MPA以上である
ことを特徴とする組織補強材。 - 2.5%伸長時における縦方向の引張強力が0.13N/CM以下、2.5%伸長時における横方向の引張強力が0.13N/CM以上であることを特徴とする請求項1記載の組織補強材。
- 不織布状であることを特徴とする請求項1又は2記載の組織補強材。
- 生体吸収性材料からなることを特徴とする請求項1、2又は3記載の組織補強材。
- 血管を補強するための組織補強材であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の組織補強材。
- 請求項1、2、3、4又は5記載の組織補強材を製造する方法であって、
組織補強材の原料を紡糸して糸状体を得る紡糸工程と、該糸状体を、筒編み機を用いて筒編みして編物を得る筒編み工程と、得られた編物を、目的となる組織補強材の厚みとなるように複数枚重ねて積層体を得る積層工程と、該積層体にニードルパンチ処理を施すことにより、編物同士を複合一体化させるとともに、不織布状体を得るニードルパンチ工程を有し、
前記積層工程において、編物の伸縮性が高い方向が、得られる組織補強材の縦方向と合致するように、過半数の編物を重ね合わせる
ことを特徴とする組織補強材の製造方法。
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