JP4554916B2 - 医療用フィルム - Google Patents

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本発明は、医療用フィルムに関し、詳しくは、生体適合性、生体吸収性および縫合に対する強度に優れる、生体組織同士の癒着を防止する癒着防止材や、組織の欠損部を補てつする組織補てつ材、あるいは体内にシート状組織を移植するための移植細胞培養用のシート材に関する。
心臓外科、整形外科、脳神経外科、腹部外科、産婦人科等の臨床分野において、様々な外科手術後に、あるいは外傷によって、患部の生体組織が癒着することが、重大な問題となっている。組織の癒着が発生すると、例えば、痛みや機能障害を引き起こし、ひどい場合には前記癒着を剥離するための手術が別途必要になることもある。また、癒着により、原疾患に対する再手術が困難になるという問題も生じている。そこで、従来、生体組織の癒着を防止するために、癒着が発生するおそれがある組織を覆い、保護する癒着防止材が開発されており、実際に、再生酸化セルロース布やヒアルロン酸・カルボキシルメチルセルロース混合膜等が、癒着防止材として実用化されている。
具体的に、前記癒着防止材が前記癒着防止機能を果たすためには、前記癒着防止材が、必要な期間、癒着のおそれがある適用部位(患部)に存在し、前記適用部位の組織間のバリアとして働いた上で、最終的に分解され、生体に吸収される必要がある。つまり、前記癒着防止材には、生体適合性、生体吸収性等に優れることが求められている。
また、前述のように生体適合性等に優れる癒着防止材であっても、これらの機能が十分に発揮されるためには、前記適用部位にしっかりと固定されていなければならず、通常、その固定化方法として、縫合糸による縫合や、接着剤による接着等の方法がとられている。
しかしながら、前述のような従来の癒着防止材は、例えば、生体内において、必要な期間、その形態を維持した状態で、癒着防止機能を発揮することが困難であり、また、縫合や接着等に耐え得る強度を有していないため、破れる場合があり、取り扱いや適用部位への固定が困難であった。
例えば、近年、研究開発され、実用化に至っている生体適合性、生体吸収性等に優れるゼラチンフィルム製癒着防止材(例えば、特許文献1および特許文献2参照)は、それ自身が適用部位の組織表面に接着固定する能力に劣るため、適用部位への固定として、前述のような縫合・接着の方法が採用されている。しかし、このようなゼラチンフィルムは、組織に適用すると、前記組織の水分を吸収することによって、水を含んだハイドロゲルの状態になるため、縫合固定等が困難であるという問題があった。
特開平11−239610号公報 特開2000−37450号公報
そこで、本発明の目的は、例えば、生体適合性、生体吸収性に優れ、かつ、縫合や接着に対する強度にも優れる医療用フィルムの提供である。
前記目的を達成するために、本発明の医療用フィルムは、ゼラチンフィルムを含む医療用フィルムであって、
さらに生体分解吸収性高分子製の補強材を有し、
前記補強材が、前記ゼラチンフィルムの表面および内部の少なくとも一方の面方向の全面に配置され、
かつ、前記両者が一体化されている構造である。なお、本発明において、前記ゼラチンフィルムは、例えば、多孔質であっても無孔であってもよい。
本発明の医療用フィルムは、前記ゼラチンフィルムの表面や内部において、その面方向の全面に、前記生体分解吸収性高分子製の補強材が配置され、かつ前記両者が一体化されていることによって、十分な強度が付与されるため、例えば、適用部位への固定も容易になり、かつ、必要時間その固定を保つことができる。このため、本発明の医療用フィルムを、例えば、癒着防止材として使用する際に、前記ゼラチンフィルムによる癒着防止効果が、適用部位において十分に発揮される。また、前記ゼラチンフィルムの全体が補強されているため、例えば、所望の形状や大きさに切断して使用でき、適用部位が制限されない。さらに、例えば、適用部位に医療用フィルムを縫合固定した後、再度前記フィルムをめくる必要があっても、前述のように、全体が補強されているため、何度でも前記フィルムの違う部分で縫合を行うことも可能となる。また、前記補強材は、臨床において使用実績のある生体適合性の生体分解吸収性高分子製であることから、例えば、生体内に残存して、組織と異物反応を起こすこと等も回避できる。したがって、本発明の医療用フィルムは、例えば、癒着防止材として、外科手術等の臨床分野において非常に有用である。
なお、本発明の医療用フィルムは、前述のような癒着防止材としての使用には限られず、例えば、組織の補てつ材、神経誘導管、移植細胞の培養用シート、組織誘導再生膜等としても有用である。
本発明の医療用フィルムの形状は、特に制限されないが、シート状の他に、筒状であってもよい。
本発明の医療用フィルムにおいて、前記補強材は、布状体またはフィルム体であることが好ましく、前記フィルム体は、例えば、多孔質フィルムでも無孔質フィルムであってもよい。
本発明の医療用フィルムの形態としては、例えば、ゼラチンフィルムの少なくとも一方のフィルム面上の全体に、前記補強材が積層された積層体があげられる。この場合、前記ゼラチンフィルムへの前記補強材の配置方法は、特に制限されず、例えば、接着剤等により一体化されていてもよいが、前記補強材内部の少なくとも一部にゼラチンが浸透してゲル化することにより、前記補強材と前記ゼラチンフィルムとが一体化してもよい。このように、前記補強材内部においてもゼラチンをゲル化させれば、例えば、ゼラチンのフィルム形成と一体化とを同時に行うことができ、また、接着剤等の他の手段により、ゼラチンフィルムと補強材とを一体化する必要もないため、製造がより一層簡便となり、かつ、強固に一体化することができる。
また、このような形態には限られず、例えば、前記ゼラチンフィルムの少なくとも一方のフィルム面において、前記補強材の一部若しくは全部が、前記ゼラチンフィルム内に位置し、前記補強材内部の一部若しくは全部に、ゼラチンが浸透してゲル化していることにより、前記補強材と前記ゼラチンフィルムとが一体化している形態であってもよい。また、ゼラチンフィルム内部に前記補強材の全体が埋設され、前記補強材内部の全部に、ゼラチンが浸透してゲル化していることにより、前記補強材とゼラチンフィルムとが一体化している形態であってもよい。
本発明の医療用フィルムにおいて、補強材である前記布状体は、特に制限されないが、不織布、織物、編物および組紐であることが好ましく、より好ましくは、不織布と織物の複合体、不織布と編物の複合体、および不織布と組紐の複合体からなる群から選択された少なくとも一つの複合体である。
前記織物や編物の場合、その糸の太さは特に制限されないが、例えば、10〜500d(11.1〜555.6デシテックス)の範囲であり、好ましくは20〜300d(22.2〜333.3デシテックス)の範囲であり、特に好ましくは30〜200d(33.3〜222.2デシテックス)である。また、糸の種類としては、例えば、マルチフィラメント糸、モノフィラメント糸があげられ、この中でも好ましくはマルチフィラメント糸である。
また、布状体が、例えば、ツインニット布等の前記編物の場合、その編み目のユニット(「繰り返しループ」ともいう)の大きさは、例えば、縦0.1mm〜10mm、横0.1mm〜10mmであり、好ましくは縦0.3〜8mm、横0.3mm〜8mmであり、より好ましくは縦0.5mm〜6mm、横0.5mm〜6mmである。なお、前記編み目のユニットとは、例えば、図7に示すツインニット布の概略図において、四角の枠で囲った部分が該当する。そして、前記枠の長さが「ユニットの縦の長さ」にあたり、前記枠の幅が「ユニットの横の長さ」にあたる。
前記編物が経編地の場合、その編み目のユニットの大きさは、例えば、縦0.1mm〜10mm、横0.1mm〜10mmであり、好ましくは縦0.3〜8mm、横0.3mm〜8mmであり、より好ましくは縦0.5mm〜6mm、横0.5mm〜6mmである。なお、経編地の編み目のユニットとは、例えば、後述する図10(B)、(C)の写真における菱形部分が相当する。そして、前記菱形の縦方向の長さが「ユニットの縦の長さ」にあたり、横方向の長さが「ユニットの横の長さ」にあたる。また、経編地の形態は、後述する図10(B)に示す「ダイアモンド孔メッシュ」でもよいし、図10(C)に示す「6角孔メッシュ」でもよい。なお、ダイアモンド孔メッシュや6角孔メッシュ等に代表される経編地の各種形態については、例えば、メリヤスハンドブック(改訂版、発行所 日本繊維研究所、発行日 昭和43年11月)に開示されている。
また、前記不織布としては、例えば、メルトブロー法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、フラッシュ紡糸法等の方法により製造された不織布であることが好ましい。
本発明の医療用フィルムにおいて、前記補強材は、加熱プレス処理されていることが好ましい。加熱プレス処理すれば、例えば、前記補強材を形成する繊維間の接着性が向上し、また、毛羽の発生も抑制できる。
また、前記補強材の性質・形状は、特に制限されないが、十分な強度が得られることから、前記補強材の目付けは、5〜200g/m2の範囲であることが好ましく、その厚みは、10〜500μmの範囲であることが好ましい。
前記補強材の糸掛け張力は、0.3〜200Nの範囲であることが好ましい。この糸掛け張力は、例えば、以下の方法で求めることができる。
(糸掛け張力の測定方法)
試料(10mm×30mm)を準備し、前記試料の長手方向の両端を、2つのチャック間距離が20mmになるように固定する。つぎに、前記試料の長手方向の中点の幅方向の端から2mmのところに、針つき3−0ナイロン糸(ネスコスーチャー、1/2円形丸針)(商品名ネスコスーチャー;アズウェル社製)を通し、糸を通した点から50mmのところで糸の端を固定する。そして、前記試料を固定したまま、糸の端を100mm/minの速度で引張り、その最大強力(糸掛け張力:単位N)を測定装置(商品名インストロン4302:インストロン社製)によって測定する。
本発明の医療用フィルムにおいて、補強材である前記フィルム体としては、特に制限されず、例えば、プレス法、キャスト(流延)法、押出法等の通常公知の方法により製造されたフィルム体を使用できる。また、前記フィルム体の厚みは、例えば、前記布状体と同程度であることが好ましい。また、フィルム体以外にもスポンジ体が使用できる。
本発明の医療用フィルムにおいて、前記生体内分解吸収性高分子は、ポリ乳酸、乳酸−カプロラクトン共重合体およびポリグリコール酸からなる群から選択された少なくとも一つの高分子であることが好ましく、この中でも、補強材を形成した場合に適度な分解吸収性を示すことから、ポリ乳酸および乳酸−カプロラクトン共重合体であることが好ましい。
本発明の医療用フィルムにおいて、前記補強材は、親水化処理されていることが好ましい。補強材表面が親水化されることによって、前記補強材がゼラチン水溶液やゼラチンフィルムになじみ易くなるため、ゼラチンフィルムとの一体化にも優れ、前記ゼラチンフィルムから補強材が剥離し難くなるからである。前記親水化処理の方法としては、例えば、プラズマ処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、オゾン処理、表面グラフト処理、コーティング処理、薬品処理、紫外線照射処理等の方法があげられ、これらの中でもプラズマ処理が好ましい。
本発明の医療用フィルムにおいて、前記ゼラチンフィルムは、例えば、架橋処理によって、生体内で所望の期間経過後に分解されるように設定された、架橋フィルムであることが好ましい。これは、本発明の医療用フィルムを癒着防止材として使用する場合、前述のように、必要な期間、適用部位に存在して癒着防止機能を発揮する必要があり、かつ、前記期間を経過した後、組織との異物反応を回避するために、生体内で分解・吸収される必要があるためである。なお、ゼラチンフィルムの架橋度は、その値が相対的に高いほど、生体内での分解が遅くなることを示す。
本発明の医療用フィルムにおいて、前記ゼラチンフィルムは、紫外線処理、熱処理および化学的架橋剤処理等の手段から選択された少なくとも一つの処理方法によって架橋されていることが好ましい。
本発明の医療用フィルムにおいて、前記ゼラチンフィルムが、紫外線照射灯4〜40W、照射時間0.1〜100時間、照射距離5〜100cmの条件で架橋処理されていることが好ましい。また、紫外線照射の条件としては、例えば、紫外線強度0.05〜50mW/cm2、紫外線積算光量1〜100J/cm2が好ましく、より好ましくは紫外線強度0.5〜10mW/cm2、紫外線積算光量5〜100J/cm2である。なお、紫外線強度は、例えば、紫外線照射灯の「W」数と、被照射物(ゼラチンフィルム)までの距離とによって設定でき、紫外線積算光量は、紫外線強度と照射時間との積で表され、前記強度と時間により設定できる。なお、紫外線処理は、例えば、紫外線強度、すなわち、紫外線照射灯電力、照射距離等の種々の条件によって、架橋程度は異なることから、ゼラチンフィルムの所望の分解時間に応じて、前記条件は、適宜決定することができる。また、紫外線照射は、例えば、紫外線照射灯を複数本並列に配置して行ってもよい。
本発明の医療用フィルムにおいて、前記ゼラチンフィルムの生体内存在時間が、12時間〜30日の範囲であることが好ましい。本発明において、「生体内存在時間」とは、前記医療用フィルムを癒着防止材として生体内に適用してから、生体内でゼラチンフィルムが分解・吸収される時間をいう(以下、「分解時間」ともいう)。なお、同じゼラチンフィルムであっても、前記生体内存在時間は、適用する器官によって異なるため、適用部位に応じて前記生体内存在時間を設定することが好ましい。
本発明の医療用フィルムにおいて、前記ゼラチンフィルムの厚みは、取り扱い等の点から、20〜2000μmの範囲であることが好ましい。
本発明の医療用フィルムは、生体内において適用されることから、安全性を確保すべく、前記ゼラチンに含まれるエンドトキシン濃度が、0を超え200EU/g以下であることが好ましく、検出限界以下であることがより好ましい。なお、エンドトキシンの含有量は、理想的には全く無いこと、すなわち0であることだが、これは実際的ではないので、その下限値は「0を超え」とした。また、本発明の医療用フィルムは、その他の問題物質を実質的に含有しないか、法的もしくは医学的許容範囲未満であることが好ましい。
本発明におけるゼラチンフィルムは、前述のように適用部位によって分解時間は異なるが、例えば、12時間〜90日で分解されることが好ましく、より好ましくは1〜60日の範囲であり、特に好ましくは2〜30日の範囲である。分解時間が12時間以上であれば、十分に組織の癒着を防ぐことが可能であり、分解時間が90日以下、特に30日以下であれば、十分に癒着を防止し、かつ、ゼラチンフィルムが適用部位において癒着防止以外の反応(例えば、異物反応等)が発生することもない。この分解時間は、後述する架橋処理によって設定することもできる。
前記ゼラチンフィルムの厚みは、例えば、適用部位や、ゼラチンフィルムの所望の分解時間等に応じて適宜決定できるが、例えば、20〜2000μmの範囲であり、好ましくは30〜500μmの範囲であり、より好ましくは50〜300μmの範囲である。前記ゼラチンフィルムの厚みが、例えば、20μm以上であれば、さらに強度に優れ、また、厚みが2000μm以下であれば、さらに柔軟性に優れ、取り扱いが容易なフィルムとなる。
また、前記ゼラチンフィルムにおいて、以下の方法で測定した含水率は、例えば、70〜99%であり、好ましくは75〜97.5%であり、より好ましくは80〜95%である。なお、前記含水率は、例えば、その値が相対的に低いほど、ゼラチンフィルムの生体内における分解が遅くなることを示す。また、ゼラチンフィルムが架橋されている場合は、前記含水率が相対的に低いほど、その架橋度が高く、生体内での分解が遅くなることを示す。
前記含水率は、例えば、まず、前記フィルムを25℃の水中に12時間浸漬した後、その湿潤重量を測定する。続いて、該フィルムを真空乾燥機で完全に乾燥し、乾燥後のフィルムの乾燥重量を測定する。そして、下記式に前記重量をそれぞれ代入して、含水率を求めることができる。
含水率(%)=100×[(湿潤重量−乾燥重量)/(湿潤重量)]
ゼラチンフィルムの原料としては、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ等の哺乳類動物や鳥類等の骨、腱、皮膚、とさか等から抽出したゼラチンが使用できる。これらのゼラチンは、例えば、前記動物から抽出して調製してもよいが、通常、市販の製品が使用できる。前記抽出方法としては、特に制限されず、例えば、従来公知の酸処理、アルカリ処理等の方法等があげられる。
市販のゼラチンとしては、例えば、エンドトキシン含有量が極めて少ない、安全性に優れたアルカリ処理ゼラチンが好ましく、具体的には、株式会社ニッピ社製のウシ由来アルカリ処理ゼラチン、ブタ由来酸処理ゼラチン、ブタ由来アルカリ処理ゼラチン等が例示できる。
また、ゼラチンフィルムの原料としては、ゼラチンの他に、例えば、フィルムに柔軟性を付与するため、グリセリン、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、あるいは抗菌剤、抗炎症剤等の添加物を使用してもよい。
ゼラチンフィルムは、ゼラチンを、例えば、キャスト法、押出し法等の方法によってフィルム化することにより製造でき、好ましくはキャスト法である。
前記キャスト法によるフィルム化は、例えば、以下に示すように行うことができる。
まず、原料のゼラチンを加温状態の溶媒に溶解させる。前記溶媒としては、例えば、蒸留水、ジメチルスルホキシド(DMSO)等や、これらの混合液等が使用でき、この中でも取り扱いの点で蒸留水が好ましい。ゼラチンの添加割合は、例えば、溶媒100mL当たり0.1〜50gの範囲であり、好ましくは1〜30gの範囲であり、より好ましくは3〜20gの範囲である。溶解温度は、例えば、10〜80℃の範囲であり、好ましくは30〜70℃の範囲であり、より好ましくは40〜60℃の範囲である。また、溶解時間は、前記ゼラチンが溶解できれば特に制限されないが、例えば、1分〜100時間の範囲であり、好ましくは5分〜50時間の範囲であり、より好ましくは10分〜24時間の範囲である。
前述のようなゼラチン以外の添加物を含む場合、その添加割合は、ゼラチン1gに対して、例えば、1mg〜20gの範囲であり、好ましくは5mg〜10gの範囲であり、より好ましくは10mg〜5gの範囲である。
このゼラチン溶解液をシャーレに流し込み、乾燥させることによって、ゼラチンフィルムが製造できる。シャーレの大きさは、特に制限されず、所望のフィルムの長さ、幅、厚み等に応じて設定してもよいし、また、フィルム化後、所望の大きさにカットして使用してもよい。
前記ゼラチン溶解液は、例えば、シャーレの面積(cm2)当たり0.01〜5mLの範囲で流延することが好ましく、より好ましくは0.03〜3mLの範囲であり、特に好ましくは0.05〜1mLの範囲である。
乾燥条件は、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥(真空乾燥)、強制排気乾燥、強制循環対流等により行うことができる。具体的に、乾燥温度は、例えば、−40〜90℃の範囲であり、好ましくは0〜50℃の範囲であり、より好ましくは10〜30℃の範囲である。また、乾燥時間は、例えば、1〜200時間の範囲であり、好ましくは3〜100時間の範囲であり、より好ましくは5〜48時間の範囲である。
前記一連のフィルム化工程は、例えば、クリーンベンチ、クリーンルーム内で無菌的に行うことが好ましい。これは、作業中における雑菌の繁殖によって、ゼラチンフィルムが汚染することを防止するためである。したがって、使用する製造器具は、例えば、オートクレーブ、EOG(エチレンオキサイドガス)、乾熱、電子線等で滅菌処理されたものを使用することが好ましい。また、前記ゼラチン溶解液も、例えば、従来公知のフィルターろ過滅菌を行ってから前記工程に供することが好ましい。
得られたゼラチンフィルムは、そのまま使用してもよいが、前述のように、生体内における分解時間を所望の時間に設定できることから、さらに架橋処理を施すことが好ましい。
架橋の方法としては、例えば、UV(紫外線)照射、熱処理、化学架橋剤処理等による架橋方法が採用できる。前記化学架橋剤としては、例えば、アルデヒド類、エポキシ類、カルボジイミド類、イソシアネート類、タンニン、クロム等があげられる。前記アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、酸アルデヒド、グリオキザール、マロン酸ジアルデヒド、スクシン酸ジアルデヒド、フタル酸アルデヒド、ジアルデヒドデンプン、ポリアクロレイン、ポリメタクロレイン等があげられる。また、エポキシ類としては、例えば、グリセロールジグリシジルエーテル、ソルビトールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等があげられる。カルボジイミド類としては、水溶性カルボジイミド(例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、シクロヘキシル−3−(2−モルフォリノエチル)カルボジイミド等)、ジシクロヘキシルカルボジイミド等があげられる。これらの化学架橋剤は、前記ゼラチンを架橋できれば、その種類は特に制限されず、例えば、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
前記架橋処理方法の中でも、UV照射、熱処理、UV照射と熱処理との併用が好ましい。UV照射や熱処理によれば、例えば、体内で比較的短時間で分解され、低分子の毒性化学物質も残存せず、また、製品の変形が起こりにくいという効果等に一層優れた架橋ゼラチンフィルムを、容易に得ることができる。
前記UV照射により架橋を行う場合、例えば、UV照射灯電力、照射時間、照射距離等の条件は、ゼラチンフィルムの所望の分解時間に応じて適宜決定できる。UV照射灯電力は、例えば、4〜40Wの範囲であり、好ましくは8〜30Wの範囲であり、より好ましくは12〜20Wの範囲である。照射時間は、例えば、0.1〜100時間の範囲であり、好ましくは0.5〜60時間の範囲であり、より好ましくは1〜50時間の範囲である。照射距離は、例えば、1〜100cmの範囲であり、好ましくは5〜90cmの範囲であり、より好ましくは10〜80cmの範囲である。
具体的には、例えば、UV照射灯電力が4〜40Wの範囲の場合、照射時間0.1〜100時間、照射距離1〜100cmの範囲であることが好ましく、より好ましくは、UV照射灯電力が8〜30Wの範囲の場合、照射時間0.5〜60時間、照射距離5〜90cmの範囲であり、特に好ましくは、UV照射灯電力が12〜20Wの範囲の場合、照射時間1〜50時間、照射距離10〜80cmの範囲である。なお、複数の照射灯を並列して配置することによって、短時間でより均一に処理することもできる。
特に、UV照射灯電力15W、照射時間5〜30時間、照射距離は、30〜70cmの条件で作製した架橋ゼラチンフィルムについては、発明者らが行った実験において、分解性、安全性、強度等に関して、より一層優れたフィルムであることが証明されている。具体的には、例えば、UV照射灯電力15W、照射時間20時間、照射距離60cmの条件で架橋した厚み100μmの架橋ゼラチンフィルムは、ラットの腹腔内に縫着した場合は約1週間、イヌの心膜に縫着した場合は約4週間以内に分解・消失した。このことから、種々の適用部位に応じた所望の分解時間となるように、前記条件で作製した架橋ゼラチンフィルムは、特に臨床への有用性に優れているといえる。
また、前記熱処理の条件としては、例えば、真空条件下、60〜180℃、5分〜72時間処理することが好ましい。
つぎに、本発明における前記補強材は、特に手術時や、使用の際にゼラチンフィルムが吸収されるまでの間、補強することを目的とすることから、前記ゼラチンフィルムがその役目を果たし、分解・吸収されれば、前記補強材自身も体内に残る必要はなく、また、体内に残存して、適用部位の組織と無用な異物反応を引き起こすことを回避するためにも、分解吸収される必要がある。このため、前述のような生体内分解吸収性高分子製の布状体やフィルム体等が使用される。
なお、補強材は、一層でもよいが、二層以上の積層体でもよい。積層体の場合、1種類の布状体やフィルム体から構成されてもよいが、例えば、二種以上の布状体やフィルム体から構成されてもよい。
前記補強材は、前述のように生体内に残存しなければ特に制限されないが、補強材としての使用であることから、ある程度の強度と柔軟性を有し、かつ分解性を有することが望ましい。また、臨床で使用実績のある生体適合性を有するものや、異物反応や炎症の少ないものが好ましい。このため、前記生体分解吸収性高分子としては、前述のようなポリ乳酸、乳酸−カプロラクトン共重合体、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、乳酸−エチレングリコール共重合体、ポリジオキサノン、グリコール酸−カプロラクトン共重合体、グリコール酸−トリメチレンカーボネート共重合体、グリコール酸−ジオキサノン−トリメチレンカーボネート共重合体、コラーゲン、キチン、キトサン、フィブリン等があげられ、好ましくはポリ乳酸、乳酸−カプロラクトン共重合体、ポリグリコール酸、コラーゲンである。
前記布状体の形態としては、前述のように、織物、不織布、編物、平組紐等の組紐等があげられる。この中でも、不織布は、細い繊維が高度に絡まりあった構造で、方向性がなく、また、厚み設定の容易性、柔軟性に一層優れることから好ましい。また、ツインループニット等の編物や、織物は、例えば、厚み設定の容易性、柔軟性、強度、糸掛け張力に一層優れることから、特に好ましい。更に、編物、織物、組紐の何れかと不織布との一体化物(複合体)は、両者の利点を併せ持っていることから、特に好ましい。
補強材が前記布状体の場合、その糸掛け張力は、例えば、0.3〜200Nの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.4〜150Nの範囲であり、特に好ましくは0.5〜100Nの範囲である。なお、この値は、前述の方法によって求めることができる。
また、前記布状体の目付け量は、例えば、5〜200g/m2の範囲であり、好ましくは8〜80g/m2の範囲であり、より好ましくは10〜60g/m2の範囲である。
前記布状体は、前記ゼラチンフィルムの大きさや所望の強度に応じて、適宜決定されるが、その厚みは、例えば、10〜1000μmの範囲であり、好ましくは20〜800μmの範囲であり、より好ましくは30〜600μmの範囲である。また、前述のような積層体の場合は、例えば、10〜1000μmの範囲が好ましく、より好ましくは20〜800μmの範囲、特に好ましくは30〜600μmの範囲である。なお、補強材であるフィルム体も同様である。
前記不織布は、例えば、従来公知の方法である、メルトブロー法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、フラッシュ紡糸等の方法によって作製できる。この中でも、溶剤を使用せず、繊維の直径をより小さくし、細繊維を高度に絡み合わせて、薄い布を容易に作製できることから、メルトブロー法が特に好ましい。
前記メルトブロー法は、例えば、溶融した原料を、押出機のダイから集積スクリーン上に、高速度の気流で吹き飛ばし、交絡させることによって、自己接着性マイクロファイバーのウェブを製造する製造方法である。
前記ポリ乳酸製またはポリグリコール酸製の不織布を製造する場合、ラクチドまたはグリコリドをそれぞれ原料として重合した重合体を使用し、乳酸−カプロラクトン共重合体製の不織布を製造する場合、ラクチドとカプロラクトンとを混合して重合した共重合体を使用する。この場合、ラクチド(A)とカプロラクトン(B)とのモル比(A:B)は、例えば、A:B=85:15〜40:60の範囲であり、好ましくは、82:18〜42:58の範囲であり、より好ましくは80:20〜45:55の範囲である。
以上のような方法により作製した不織布等の布状体は、そのまま本発明の医療用フィルムにおける補強材として使用することも可能であるが、前述のように毛羽等の糸くずの発生を抑制し、繊維間の接着性をより一層向上させるために、さらに、熱プレス加工することが好ましい。
前記熱プレス処理は、例えば、不織布のウェブ形成直後に行ってもよいし、真空熱乾燥処理してから行ってもよい。なお、この処理は、前記不織布等の補強材の両面について行うことが好ましい。
前記ウェブ形成直後に行う場合、その条件は、例えば、温度65〜95℃の範囲、圧力0.01〜5MPaの範囲であり、好ましくは、温度70〜85℃の範囲、圧力0.05〜2MPaの範囲、より好ましくは温度75〜80℃の範囲、圧力0.1〜1MPaの範囲である。
一方、後者の場合、まず、前記真空熱乾燥処理を、例えば、以下の条件で行う。乾燥温度は、例えば、40〜135℃の範囲であり、好ましくは、50〜125℃の範囲であり、より好ましくは60〜115℃の範囲である。また、乾燥時間は、例えば、1〜70時間の範囲であり、好ましくは、5〜50時間の範囲、より好ましくは、10〜30時間の範囲である。
続いて、熱プレス処理を以下の条件で行うことが好ましい。処理条件は、例えば、温度80〜110℃の範囲、圧力0.01〜5MPaの範囲であり、好ましくは、温度85〜105℃の範囲、圧力0.05〜2MPaの範囲、より好ましくは温度90〜100℃の範囲、圧力0.1〜1MPaの範囲である。前記加熱温度が80℃以上であれば、十分に毛羽立ちをなくすことができ、また、110℃以下であれば、優れた柔軟性を保持できる。
また、前述のように補強材を、例えば、2枚以上の布状体からなる二層以上の積層体とする場合も、布状体を重ね合わせた後に熱プレス処理を施して一体化させればよい。
また、補強材は、ゼラチンフィルムとの接着性を向上させるために、親水化処理を施すことが好ましい。親水化処理としては、前述のようにプラズマ処理やグロー放電処理、コロナ放電処理、オゾン処理、表面グラフト処理、コーティング処理、薬品処理、紫外線照射処理等があげられるが、特にプラズマ処理が好ましい。
プラズマ処理の条件は、特に制限されないが、例えば、圧力1.33〜1330Paの酸素ガス雰囲気中、温度0〜100℃の範囲、電力5〜200Wの範囲であることが好ましく、より好ましくは、5〜500Paの酸素ガス雰囲気中、温度10〜50℃の範囲、電力10〜100Wの範囲である。また、処理時間は、例えば、1秒〜1000秒の範囲で行えばよく、好ましくは3秒〜600秒の範囲である。
このプラズマ処理は、前記酸素ガスの他にも、例えば、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、アンモニア、一酸化炭素、水蒸気を使用してもよい。
本発明の医療用フィルムの全体形状および全体大きさは、特に制限されず、例えば、適用する部位に応じて適宜決定できる。例えば、全体長さ0.5〜50cmの範囲、全体幅0.3〜20cm、全体厚み20〜2000μmである。また、好ましくは、全体長さ0.7〜30cmの範囲、全体幅0.4〜15cm、全体厚み30〜500μmであり、より好ましくは全体長さ1〜20cmの範囲、全体幅0.5〜10cm、全体厚み50〜200μmである。
前記補強材の大きさは、例えば、適用部位やゼラチンフィルムの大きさにより適宜決定される。また、その厚みは、10〜1000μmの範囲が好ましく、より好ましくは20〜800μmの範囲、特に好ましくは30〜600μmの範囲である。
前記医療用フィルムは、前述のように、補強材を含むことから、その糸掛け張力が、例えば、0.20〜200Nの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.25〜150Nの範囲であり、特に好ましくは0.30〜100Nの範囲である。
前記架橋ゼラチンフィルムに前記補強材を配置する方法としては、例えば、以下に示す4つの方法があげられる。
第1の方法においては、まず、前記ゼラチン溶解液を前述のようなシャーレに流し込み、これに補強材を浸漬させ、前記補強材内部に前記ゼラチン溶解液を染み込ませる。この場合、前記内部に十分にゼラチン溶解液を含浸させるために、補強材に親水化処理を施したり、あるいは、前記ゼラチン溶液を脱気処理することが好ましい。そして、前記ゼラチンを前述と同様にゲル化し、乾燥させる。これにより、ゼラチンフィルムの形成と共に、補強材内部においてもゼラチンがゲル化され、補強材とゼラチンフィルムとが一体化した医療用フィルムが作製できる。具体的には、例えば、図1の断面図に示すように、補強材12内部でゼラチン11がゲル化してゼラチンフィルムを形成し、前記補強材と前記ゼラチンフィルムとが一体化した単層体の形態となる。なお、同図におけるドットは、前記補強材12内部におけるゲル化したゼラチンの存在を示すため、ゼラチンを模式的に表わしたものであり、後述する図2〜図4においても同様である。
また、この第1の方法によって製造する医療用フィルムとしては、例えば、図2(A)(B)の断面図に示すような形態であってもよい。
例えば、図2(A)に示す医療用フィルムは、ゼラチンフィルム21の内部に補強材22を含み、前記補強材22の全部にゼラチンが浸透してゲル化していることにより、前記補強材22とゼラチンフィルム21とが一体化している形態である。このような形態の医療用フィルム2の場合、例えば、前記ゼラチン溶液の量やゼラチン濃度を調整することによって、補強材22より厚みが厚いゼラチンフィルム21(医療用フィルム2の厚み)を形成できる。また、例えば、乾燥状態において、ゼラチンフィルムの厚みが補強材の厚みより薄くとも、使用時に前記ゼラチンフィルムが水分を吸収して含水状態となることによって、前記補強材より厚いゼラチンフィルムとなることも好ましい。
また、例えば、図2(B)に示す医療用フィルムは、ゼラチンフィルム21の内部に、補強材22の全部が埋設され、前記補強材22の全部にゼラチンが浸透してゲル化して、前記両者が一体化している形態である。このような形態の医療用フィルムは、例えば、ゼラチン溶液が固化する前に補強材を浸漬し、さらに同じゼラチン溶液を前記補強材の上から供給し、前記ゼラチン溶液を完全に固化することによって製造できる。このように、ゼラチンフィルムの内部に補強材を埋設すると、医療用フィルムの両面がゼラチンフィルムのみで形成されることになるため、例えば、適用部位の全面に、医療用フィルムのうちゼラチンフィルムのみを接触させることができる。
第2の方法においては、まず、前記ゼラチン溶解液を前記シャーレに流し込み、前記ゼラチンのゲル化を開始する。そして、完全にゼラチンがゲル化する前に、ゲル化直前のゼラチン上に補強材を載せ、さらに完全にゲル化し、乾燥させる。そうすると、前記補強材内部には部分的に前記ゼラチン溶解液が浸透するため、ゼラチンフィルムの形成と共に、補強材内部においてもゼラチンがゲル化する。これによって、図3の断面図に示すように、前記補強材32とゼラチンフィルム31とが、前記補強材32内のゼラチンによって一体化された医療用フィルム3が作製できる。なお、このような方法には制限されず、例えば、補強材を容器内にひき、上からゼラチン溶液を供給すること等によっても、同様に前記図3に示す形態の医療用フィルムが製造できる。
この方法によれば、例えば、補強材内部に十分に前記ゼラチン溶解液を含浸させるため、前記脱気処理等を行う必要もなく、前記第1の方法よりもさらに簡便に一体化を行うことができる。
第3の方法においては、例えば、前記第2の方法と同様にして形成した、補強材とゼラチンフィルムとの複合体を、さらに前記補強材が対面するようにゼラチン溶解液に浸漬し、乾燥する方法である。これによって、図4に示すように、前記補強材42がゼラチンフィルム41、43内に埋設された構造の医療用フィルム4が得られる。そして、前記補強材42には、ゼラチンフィルム41を形成する際のゼラチン溶解液と、ゼラチンフィルム43を形成する際のゼラチン溶解液とが浸透し、補強材42内部においてゼラチンが固化した状態となっている。なお、同図において、ゼラチンフィルム41と43とは、二回目のゲル化によって、補強材42内部のゼラチンを介して一体化されている。このような構造の医療用フィルムによれば、例えば、その表面に補強材が出ないため、適用部位の全面にゼラチンフィルムを接触させることができる。
第4の方法は、予め、所望の厚みとなるように対抗させた二枚のガラス板の間に所望の形状の不織布を保持させ、前記ガラス板の間に前記ゼラチン溶解液を流し込み、これを冷却してゲル化した後、乾燥する方法である。この場合も、ゼラチン溶解液が部分的に、前記補強材に浸透してからゲル化するため、補強材とゼラチンフィルムとが一体化した医療用フィルムを得ることができ、前記第3の方法による医療用フィルムと同様に、その表面に補強材が出ないため、例えば、適用部位の全面にゼラチンフィルムを接触させることができる。また、この方法によれば、医療用フィルムの厚みもより一層均一にすることができる。
以上のような方法は、補強材へのゼラチン溶解液の浸透を利用して、前記補強材内部の全部または一部においてもゼラチンをゲル化するため、ゼラチンフィルムと補強材との一体化を十分に行うことができ、このようにして得られた医療用フィルムは、例えば、使用に際して、補強材が剥離することもなく、医療用フィルムの縫合等に対する優れた強度を維持することができる。なお、前記一体化は、前述の方法には限定されず、例えば、接着剤等によって行ってもよい。また、前記一体化の後に、さらに前述のような架橋処理を施してもよい。
また、本発明の医療用フィルムは、前述のようにゼラチンフィルムに前記補強材を配置したものを、そのままシート状の形態で使用することもできるが、例えば、予め、筒状にした形態であってもよい(以下、「筒状医療用フィルム」という)。
このような筒状医療用フィルムは、例えば、腱、神経、卵管等の癒着防止材または神経の誘導管として使用することができる。具体的には、例えば、切断された神経の両末端を前記筒状医療用フィルムの筒内に差し込んだ状態で、神経と前記筒状医療用フィルムとを縫合する。
前記筒状医療用フィルムは、例えば、図5の斜視図に示すように、筒状のゼラチンフィルム51の外周に、補強材52が配置された構造である。その大きさは、特に制限されず、例えば、適用する部位に応じて適宜決定できる。例えば、全体長さ0.3〜30cmの範囲、内部直径1mm〜1cmの範囲であり、ゼラチンフィルムおよび補強材の厚みは、前述と同様である。
このような筒状医療用フィルムは、例えば、以下のようにして作製できる。まず、長方形のゼラチンフィルムを準備し、その一方の表面全体に補強材を配置して積層体を形成する。そして、これを丸めて筒状にし、前記積層体の幅方向端部を重ね合わせ、接着剤で接着または生体吸収性縫合糸で縫合すれば、筒状医療用フィルムが得られる。なお、本発明の医療用フィルムにおいて、補強材は、筒状のゼラチンフィルムの内周面、外周面のいずれに配置されてもよいが、ゼラチンフィルムが癒着防止効果を発揮すること、筒の内部に切断された神経等を挿入すること、外部との癒着を防止することから、図5に示すように、補強材52の外周にゼラチンフィルム51が配置されることが好ましい。また、図示していないが、例えば、前記図2(B)や図4に示すように、ゼラチンフィルム内部に補強材が埋設されたフィルムであって、前記図5と同様に筒状となった形態の医療用フィルムも好ましい。このような医療用フィルムであれば、表面が全てゼラチンフィルムであるため、適用部位の全面にゼラチンを接触させることができる。
前記筒状医療用フィルムは、前述のような作製方法には限定されず、例えば、ゼラチンフィルムを筒状に丸めて、接着剤や前述のゼラチンのゲル化等により接着して筒状体を形成してから、その一方の表面全体に補強材を配置してもよい。さらに、ゼラチンと補強材とを筒状の型の中にいれてから、ゼラチンをゲル化させ、ついで乾燥することによって得ることもできる。
また、前述のようなシート状の医療用フィルムであっても、使用時に、筒状体として使用することもできる。例えば、図6の斜視図に示すように、ゼラチンフィルム61の一方の表面全体に補強材62を配置した医療用フィルムを丸めた形状とし、これを、切断した腱等を縫合した後、前記縫合部位に被覆するように捲回して、重なりあう部分で縫合すれば、筒状体として使用することができる。
(布状体の製造)
乳酸-カプロラクトン共重合体マルチフィラメント糸(太さ42デシテックス(dtex))を用いて、編み目の大きさが縦方向、横方向ともに3.5mmのツインループニット(厚み200μm)と、編み目の大きさが縦方向、横方向ともに1.5mmのツインループニット(厚み200μm)とを作製した。dtex(デシテックス:1dtex=1.111×テ゛ニール)は、太さのSI単位である。前述のように、図7に、ツインループニットの編み組織の模式図を示す。このツインループニット布状体を2枚のガラス板に挟み、120℃で3時間真空加熱処理した。続いて、加熱処理後のツインループニット布状体に、室温、酸素ガス67Pa(0.5torr)、50W、30秒の条件でプラズマ処理を施した。
(ゼラチンフィルムとの一体化)
以上のようにして得られた各布状体を、長手方向9cm、幅方向7cmの長方形にカットした。
つぎに、シャーレ(大きさ14cm×10cm)にカットした前記布状体(編み目:縦3.5mm×横3.5mm)を載せ、ゼラチンを10重量%になるように蒸留水に溶解したゼラチン溶解液を流し込み、前記布状体に前記ゼラチン溶液を染み込ませた。そして、これらをそのまま風乾して、前記不織布とゼラチンフィルムとが一体化した複合体を得た。この際、流し込むゼラチン溶液の量を15ml、25ml、35mlに変えることによって、全体厚みが異なる三種類の複合体を作製した。なお、これら三種類の複合体は、布状体の編み目を構成する糸を有しない部分(編み目ループの空隙部)の厚みが、それぞれ90μm、150μm、210μmであった。また、布状体(編み目:縦方向1.5mm×横1.5mm)を用いて同様にして複合体を作製した(ゼラチン溶液35ml)。前記各複合体の両面を、殺菌灯(東芝社製、GL−15、波長254nm、紫外線照射灯電力15W、照射距離45cm)により紫外線を10時間ずつ照射して架橋処理した。これによって、補強材がゼラチンフィルム内に埋設した複合体が調製できた。なお、使用するゼラチン溶液の量を多くするにしたがって、複合体の厚みも厚くなった。
得られた実施例の各複合体(医療用フィルム)について、以下の方法により引張張力および糸掛け張力を測定した。また、比較例として、布状体を含まない以外は、前述と同様にしてゼラチン溶液を乾燥・架橋させ、前記三種類の厚みのフィルムを作製し、同様にして測定を行った。
(引張強力の測定方法)
前記複合体を、25℃の生理食塩水に40分間浸漬した後、10mm×30mmの大きさに切り抜いたものを試料とした。なお、試料は、前記布状体の編み目縦方向に沿った長さを30mm、横方向に沿った長さを10mmとなるように切り出した試料(試料A)と、前記縦方向に沿った長さが10mm、横方向に沿った長さが30mmとなるように切り出した試料(試料B)の二種類を、各複合体について調製した。そして、前記各試料の長手方向の両端を、2つのチャック間距離が10mmになるように固定した。そして、これらの試料を100mm/minの速度で引張り、前記試料が破断する際の張力を測定装置(商品名インストロン4302:インストロン社製)によって測定した。なお、1種類の試料について5回測定を行い、その平均値を求め、併せて下記評価基準に基づいて評価を行った。下記評価において、評価AおよびBであれば十分に実用可能である。これらの結果を図8および下記表1に示す。前記図8において、サンプルの大きさを示す「縦」とは、前記布状体の編み目の縦方向に沿った長さをいい、「横」とは、前記編み目の横方向に沿った長さをいう。
A :2N以上の張力をかけても補強材が破断しない。
B :1Nの張力をかけても補強材が破断しない。
C :1N以下の張力で補強材が破断する。
(糸掛け張力の測定方法)
前記引張張力の測定方法と同様にして試料を調製した。そして、前記各試料の長手方向の両端を、2つのチャック間距離が20mmになるように固定した。つぎに、前記試料の長手方向中点の幅方向端部から2mmのところに、針つき3−0ナイロン糸(ネスコスーチャー、1/2円形丸針)(商品名ネスコスーチャー;アズウェル社製)を通し、糸を通した点から50mm(試料の厚み方向に対して垂直方向)のところで糸の端を固定した。そして、前記試料を固定したまま、糸の端を100mm/minの速度で引張り、その最大強力(糸掛け張力)を測定装置(商品名インストロン4302:インストロン社製)によって測定した。なお、1種類の試料について5回測定を行い、その平均値を求め、併せて下記評価基準に基づいて評価を行った。下記評価において、評価A〜Cであれば十分に実用可能である。これらの結果を図9および下記表1に示す。図9において、サンプルの大きさを示す「縦」とは、前記布状体の編み目の縦方向に沿った長さをいい、「横」とは、前記編み目の横方向に沿った長さをいう。
A :2N以上の張力をかけても、補強材の破断が生じない。または、ゼラチンから補強材が露出しない。
B :1N以上2N未満の張力をかけても、補強材の破断および露出が生じない。
C :0.4N以上1N未満の張力をかけても、補強材の破断および露出が生じない。
D :0.4N未満の張力で、補強材が破断するか、あるいは、補強材がゼラチンから露出する。
Figure 0004554916
図8、図9および前記表1に示すように、前記補強材とゼラチンフィルムとが一体化した複合体(医療用フィルム)は、比較例1であるゼラチンフィルムに比べて、引張強力および糸掛け張力が極めて高いことから、前記補強材によって十分に補強されていることがわかる。また、補強材の目の大きさを小さくすることによって、複合体の縦方向と横方向での強力の差を減少することができた。このことから、補強材の向きに関係なく使用することができ有用であるといえる。さらに、ゼラチン溶液の量を変えて、ゼラチンフィルムの厚みを厚くすることによって、より一層強度を向上することができた。
布状体として、下記に示すツインニット、経編地を用いて複合体フィルムを作成し、その強度を確認した。なお、使用した乳酸-カプロラクトン共重合体マルチフィラメント糸は、ラクチド(乳酸の2量体)とカプロラクトンとの組成比(モル比)が75:25の乳酸-カプロラクトン共重合体を用いて、公知の方法(例えば、特開平08‐317968号公報参照)によって調製した。
(補強材)
ツインニット2-1
乳酸-カプロラクトン共重合体マルチフィラメント糸(太さ75デシテックス(dtex)を用いて、編み目の大きさが縦方向2.7mm、横方向3.1mmであるツインループニットを作製した。このツインニット2-1の編み組織の写真を図10(A)に示す(25倍拡大写真)。
ツインニット2-2
乳酸-カプロラクトン共重合体マルチフィラメント糸(太さ67デシテックス(dtex)を用いて、編み目の大きさが縦方向2.7mm、横方向3.1mmであるツインループニットを作製した。なお、ツインニット2-2の編み組織は、前述の図10(A)と同様である。
経編地2-3
乳酸-カプロラクトン共重合体マルチフィラメント糸(太さ33デシテックス(dtex)を用いて、編み目の大きさが縦方向4.2mm、横方向3.9mmである経編地(ダイアモンド孔ネット)を作製した。この経編地2-3の編み組織の写真を図10(B)に示す(25倍拡大写真)。
経編地2-4
経編地2-3と同様のマルチフィラメント糸を用いて、編み目の大きさが縦方向5.1mm、横方向2.7mmである経編地(6角孔ネット)を作製した。この経編地2-3の編み組織の写真を図10(C)に示す(25倍拡大写真)。
(ゼラチンフィルムとの一体化)
このようにして作製した補強材サンプル(前記ツインニット2‐1、2‐2、経編地2−3、2‐4)に、実施例1と同様にして真空加熱処理およびプラズマ処理を施した。そして、これらのサンプルをそれぞれシャーレ(大きさ13.6cm×9.6cm)内に入れた後、ゼラチンを5重量%になるように蒸留水に溶解したゼラチン溶解液50mlを流し込み、前記補強材サンプルに前記ゼラチン溶液を染み込ませた。そして、これらをそのまま風乾して、前記補強材サンプルとゼラチンフィルムとが一体化した複合体を得た。なお、得られた複合体は、前記補強材サンプルの編み目を構成する糸を有しない部分(編み目ループの空隙部)の厚みが、約160μm程度であった。得られた前記各複合体の両面に対して、殺菌灯(東芝社製、GL−15、波長254nm、紫外線照射灯電力15W、照射距離45cm)により紫外線を10時間ずつ照射して架橋処理した。これによって、補強材がゼラチンフィルム内に埋設した複合体が調製できた。
次に、調製した各複合体を、長さ3cm×幅1cmの大きさに切り出して、複合体サンプルとした。ツインニットを使用した複合体の切り出し方向の概略を図11に、経編地を使用した複合体の切り出し方向の概略を図12、図13の模式図に示す。図11において、丸で囲んだ部分は、ツインニットの編み組織の概略を示す拡大図である。なお、図11〜図13は、編み目に対してどのように方向に切り出すのかを図示したのみであり、切り出し部分の大きさと編み目の大きさ、編み目の数等はこれに制限されず、また編み方の詳細は省略している。図11において、切り出し部分91を横型サンプル、切り出し部分92を縦型サンプルといい、図12において、切り出し部分93を横型サンプル、切り出し部分94を縦型サンプル、図13において、切り出し部分95を第1斜型サンプル、切り出し部分96を第2斜型サンプルとした。
切り出した各複合体サンプル(医療用フィルム)について引張強力および糸掛け張力を測定した。これらの測定時の条件としては、複合体を浸漬する溶液として生理食塩水に代えて25℃の10mMリン酸緩衝液(PBS(Phosphate bufferd saline):pH7.4)を使用し、糸掛け張力の測定において針つき3-0ナイロン糸に代えて針つき5-0ナイロン糸(商品名ネスコスーチャー、1/2円形丸針;アズウェル社製)を使用した以外は、前記実施例1と同様とした。なお、糸掛け張680力の測定方法では、試料の長手方向中点の幅方向から2mmの部位において、補強材の形成糸に掛かるように前記ナイロン糸を通した。この際、図11に示すツインニットの横型サンプル91および縦型サンプル92については、幅方向両端について糸掛け張力を測定した。各サンプルにおける糸の引っ張り方向は、図11〜図13の各矢印に示す通りであって、具体的には、図11に示すように、ツインニットの横型サンプル91は矢印91a、91b、縦型サンプル92は矢印92a、92b、図12に示すように、経編地の横型サンプル93は矢印93a、縦型サンプル94は矢印94a、図13に示すように経編地の第1斜型サンプル95は矢印95a、第2斜型サンプル96は矢印96aの方向に、掛けた糸を引っ張ればよい。
また、参考例として、心膜シートである厚み0.1mmの商品名ゴアテックスEPTFEパッチII(心膜シート)(ゴアテックス社製)を使用し、同様にして試験を行った。これらの結果を下記表2に示す。なお、表2において、糸掛け張力の欄の「矢印」とは、図11〜図13に示した各サンプルについての糸の引っ張り方向を示す。
Figure 0004554916
表2に示すように、補強材としてツインニットを使用した場合、経編地を使用した場合ともに、十分な強度を示し、特に経編地を使用すれば、経編地の糸が解けることもなく、極めて優れた糸掛け張力および引張強度を示した。中でも経編地2-4(六角ネット)は、編み組織における交差部分において糸の絡みが大きいため、他の補強材に比べて、いずれの方向に糸を掛けても優れた糸掛け張力を示した。また、ツインニット2-1、経編地2-3、経編地2-4は、それぞれ方向性はあるものの、糸の掛け方によっては、参考例よりも優れた糸掛け張力が得られ、特に経編地2-3、2-4の各サンプル94については極めて優れた糸掛け張力であった。また、実施例2の各複合体は、表1の比較例1と比較しても、極めて優れた引張強力および糸掛け張力を示めしている。以上の結果から、このように補強材とゼラチンフィルムとが一体化されることによって優れた強度を示し、特に補強材として経編地を使用した場合には、極めて優れた強度示すため、医療用フィルムとして有用であることがわかる。
以上のように、本発明の医療用フィルムは、生体内の所定箇所に確実に固定することができ、例えば、一般的な組織の癒着を効果的に防止できる。また、その形状を筒状とすることによって、例えば、腱、神経、卵管等の癒着防止材、神経の誘導管等としても有用である。そして、癒着防止等の役目を終えた後は、生体内で分解吸収されるため、安全性にも問題ない。
本発明の医療用フィルムの一例を示す平面図である。 (A)および(B)は、前記例における医療用フィルムの断面図である。 本発明の医療用フィルムのさらにその他の例を示す断面図である。 本発明の医療用フィルムのさらにその他の例を示す断面図である。 本発明の医療用フィルムのさらにその他の例を示す斜視図である。 本発明の医療用フィルムのさらにその他の例を示す斜視図である。 本発明の医療用フィルムのさらにその他の例において使用するツインループニットの概略を示す模式図である。 本発明の実施例における、医療用フィルムの引張強力を示すグラフである。 本発明の実施例における、医療用フィルムの糸掛け張力を示すグラフである。 本発明のその他の実施例における、各種補強材の写真であり、(A)がツインループニット、(B)および(C)がそれぞれ経編地の写真である。 本発明の前記実施例における、複合体の切り出しパターンを示した概略図である。 本発明の前記実施例における、複合体の切り出しパターンを示した概略図である。 本発明の前記実施例における、複合体の切り出しパターンを示した概略図である。
符号の説明
1、2、3、4 医療用フィルム
11、21、31、41、43、51、61 : ゼラチンフィルム
12、22、32、42、52、62 : 補強材

Claims (19)

  1. ゼラチンフィルムを含む医療用フィルムであって、
    さらに生体分解吸収性高分子製の補強材を有し、
    前記補強材が、前記ゼラチンフィルムの表面および内部の少なくとも一方の面方向の全体に配置され、
    前記ゼラチンフィルムの内部に前記補強材の全体が埋設され、前記補強材内部の全部に、ゼラチンが浸透してゲル化していることにより、前記補強材と前記ゼラチンフィルムとが一体化しており、
    前記補強材が、経編地であり、
    前記経編地が、ダイアモンド孔ネットまたは6角孔ネットの形状であり、
    前記経編地の編み目ユニットの大きさが、縦0.5〜8mmであり、横0.5mm〜8mmであり、
    前記経編地の糸が、マルチフィラメント糸であり、前記糸の太さが、30〜200d(33.3〜222.2デシテックス)であり、
    前記経編地が、絡み合ったループで形成された糸で構成された構造であり、
    前記経編地が、編み組織における交差部分において、糸が絡んでおり、
    前記生体分解吸収性高分子が、ポリ乳酸、乳酸−カプロラクトン共重合体、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、乳酸−エチレングリコール共重合体、ポリジオキサノン、グリコール酸−カプロラクトン共重合体、グリコール酸−トリメチレンカーボネート共重合体、グリコール酸−ジオキサノン−トリメチレンカーボネート共重合体、コラーゲン、キチン、キトサン、およびフィブリンからなる群から選択された1以上であり、
    癒着防止材である医療用フィルム。
  2. その形状が、シート状または筒状である請求項1に記載の医療用フィルム。
  3. 補強材が、加熱プレス処理されている請求項1または2に記載の医療用フィルム。
  4. 補強材の目付けが、3〜200g/m2の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の医療用フィルム。
  5. 補強材の厚みが、10〜1000μmの範囲である請求項1〜4のいずれか一項に記載の医療用フィルム。
  6. 補強材の糸掛け張力が、0.3〜200Nの範囲である請求項1〜5のいずれか一項に記載の医療用フィルム。
  7. 生体分解吸収性高分子が、ポリ乳酸、乳酸−カプロラクトン共重合体およびポリグリコール酸からなる群から選択された少なくとも一つの高分子である請求項1〜6のいずれか一項に記載の医療用フィルム。
  8. 乳酸−カプロラクトン共重合体におけるラクチド(A)とカプロラクトン(B)とのモル比(A:B)が、A:B=85:15〜40:60の範囲である請求項7記載の医療用フィルム。
  9. 補強材が親水化処理されている請求項1〜8のいずれか一項に記載の医療用フィルム。
  10. 親水化処理の方法が、プラズマ処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、オゾン処理、表面グラフト処理、コーティング処理、薬品処理および紫外線照射処理からなる群から選択された少なくとも一つの方法である請求項9記載の医療用フィルム。
  11. ゼラチンフィルムが、架橋されたゼラチンフィルムである請求項1〜10のいずれか一項に記載の医療用フィルム。
  12. ゼラチンフィルムが、紫外線処理、熱処理および化学的架橋剤処理からなる群から選択された少なくとも一つの処理方法により架橋されている請求項11記載の医療用フィルム。
  13. ゼラチンフィルムが、紫外線処理および熱処理されている請求項12記載の医療用フィルム。
  14. ゼラチンフィルムが、紫外線照射灯電力4〜40W、照射時間0.1〜100時間、照射距離5〜100cmの条件で紫外線処理により架橋処理されている請求項12または13記載の医療用フィルム。
  15. ゼラチンフィルムが、紫外線強度0.05〜50mW/cm2、紫外線積算光量1〜100J/cm2の条件で紫外線処理により架橋処理されている請求項12または13記載の医療用フィルム。
  16. ゼラチンフィルムが、真空、60〜180℃、5分〜72時間の条件で熱処理により架橋処理されている請求項12または13記載の医療用フィルム。
  17. ゼラチンフィルムの生体内存在時間が、12時間〜90日の範囲である請求項1〜16のいずれか一項に記載の医療用フィルム。
  18. ゼラチンフィルムの厚みが、20〜2000μmの範囲である請求項1〜17のいずれか一項に記載の医療用フィルム。
  19. ゼラチンに含まれるエンドトキシン濃度が、200EU/g以下である請求項1〜18のいずれか一項に記載の医療用フィルム。
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