JP3563216B2 - 医用代替膜及びその製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医用代替膜、詳細には、脳硬膜、心膜、胸膜、腹膜又は漿膜などの生体膜の欠損部分を補填することによって生体部分間の癒着を防止することができる医用代替膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種疾患又は外傷等のため、脳や、各種臓器の外科手術を行い、術創を閉じる際に、切開した脳硬膜、心膜、胸膜、腹膜又は漿膜などを再縫合して閉鎖する必要があるが、縫いしろによる短縮分が生じたり、膜が部分的に切除されるために完全に閉鎖しきれず、膜に欠損部が生じることが多い。このような欠損部をそのまま放置すると、膜の欠損した箇所から脳、心臓、肺、腸などの臓器が、周囲の組織との癒着を起こすため、組織が損傷し、良好な予後が得られない。このため従来は、この欠損部分を補填するための材料として、脳硬膜については、死体より採取した凍結乾燥ヒト脳硬膜や、多孔性の延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルム材(EPTFE)(組織用ゴアテックス、登録商標)が使用されており、また乳酸とε−カプロラクトンとの共重合体(50:50)が現在開発されつつある。心膜については、やはりEPTFE材や、ウシ心膜、ウマ心膜などが使用されている。胸膜又は腹膜については、代替膜として何も使用されていないのが現状である。
【0003】
しかし、ヒト脳硬膜の使用については、補填した材料と脳実質組織とが癒着を生じ、術後にテンカン発作を惹起する恐れがあるという難点があるばかりでなく、ヒトの死体から採取することの倫理的問題や、供給量が非常に限定されているという問題があり、更にまた最近では、脳硬膜を移植された患者における、移植脳硬膜が原因のCreutzfeldt−Jakob Disease (CJD)の発生が報告されている(脳神経外科、21(2):167−170, 1993)。また、EPTFE材は、生体内で分解されず、異物として残存するため、生体組織と接触すると、組織細胞が脂肪変性を起してしまう。乳酸とε−カプロラクトンの共重合体は、生体内分解性であり、生体への適用後、徐々に分解するが、分解吸収されるまでにほぼ1年という長期間を要する。そのため、それはやはり異物として生体内にしばらくの間残存して、組織に炎症を惹起し、肉芽腫を形成することがある。この共重合体は、(L)体の乳酸を配合しているため、共重合体中で乳酸が結晶化して、炎症を惹起することがある。また、EPTFE、乳酸とε−カプロラクトンの共重合体のいずれにも、生体膜の再生を促す作用はない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このため、倫理上の問題もなく、安定して供給され、生体への適用後は、術後の術創の癒着を防止し、感染の恐れがなく、細胞の変性を起こさず、適用後の分解速度をコントロールでき、望ましくは生体膜、特に脳硬膜、心膜、胸膜、腹膜又は漿膜に対して再生促進作用がある材料の開発が求められてきた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、2層のコラーゲン膜の間に、シート状の生体内分解吸収性材料からなる多孔性中間材を接着剤を介して有する積層体であって、該積層体の少なくとも一方の外側表面に、ゼラチンゲル層を有する医用代替膜に関する。
【0006】
本発明は、また、上記医用代替膜を製造する方法であって、シート状の生体内分解吸収性材料からなる多孔性中間材を、接着剤を介して2層のコラーゲン膜で挟んで積層体とし;該積層体を第1の架橋処理に付し;該積層体の少なくとも一方の外側表面にゼラチンゲル層を形成し;該積層体を第2の架橋処理に付す方法に関する。
【0007】
本発明の医用代替膜は、生体由来材料であり、生体親和性及び組織適合性に優れ、抗原性が低く、宿主細胞の伸展・増殖を促進させる作用を有し、止血作用を有し、生体内で完全に分解吸収されるコラーゲンを原料とする2層のコラーゲン膜の間に、シート状の生体内分解吸収性材料からなる多孔性中間材を接着剤を介して有する積層体であって、その少なくとも一方の外側表面にゼラチンゲル層を有する医用代替膜である。
【0008】
以下に、本発明の、医用代替膜について記載する。この医用代替膜においては、多孔性中間材を挟む2層のコラーゲン膜の原料となるコラーゲンとしては、従来から用いられている各種コラーゲン、例えば中性可溶化コラーゲン、酸可溶化コラーゲン、アルカリ可溶化コラーゲン、又は酵素可溶化コラーゲンが好ましく、これらのうち、アルカリ可溶化コラーゲン及び酵素可溶化コラーゲンは、不溶性コラーゲンをそれぞれアルカリ処理又はペプシン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、プロナーゼなどの酵素で処理したものであって、これらの処理によりコラーゲン分子中の抗原性の強いテロペプチド部分が除去されて抗原性が低減されているので、特に好ましい。これらコラーゲンの由来は、特に限定されず、一般に、ウシ、ブタ、ウサギ、ヒツジ、カンガルー、鳥などの動物の皮膚、骨、軟骨、腱、臓器などから得られるコラーゲンが好ましい。このようなコラーゲンを原料とするコラーゲン膜を使用するのが好ましい。コラーゲン膜の厚さは、好ましくは約1〜20mm、特に約2〜5mmである。
【0009】
本発明の代替膜におけるコラーゲン膜は、好ましくは、上記コラーゲンのほか、ヒトより採取及び精製した、コラーゲンを主成分として有する生体膜であるヒト由来の天然コラーゲン膜であって、その本来の膜構造を保持したコラーゲン膜であることもできる。ヒト由来の天然コラーゲン膜は、適度な強度を有するため、取り扱いしやすく、同種タンパク質であるため、ヒトに適用した場合に抗原性が低く、適用された天然コラーゲン膜内に生体の毛細血管が伸展するため、生体膜の再生が促進される。また、生体に適用後、生体により分解吸収されてしまうため、異物として体内に残留しないなどの理由から、ヒト由来の天然コラーゲン膜、なかでも、生体から問題なく得られる医用材料であるヒト羊膜由来コラーゲン膜が、特に好ましい。
【0010】
本発明の医用代替膜において好ましく使用することのできるヒト羊膜由来コラーゲン膜は、分娩直後に後産として得られるヒト胎児膜、胎盤及び臍帯からなる一体物から得、精製したものである。例えば、後産として得られる一体物から、胎児膜のみを分離し、この4層からなる胎児膜から羊膜を剥離し、プロテアーゼ阻害剤(例えば、フェニルメチルスルホニルフルオリド、PMSF)を含む滅菌水で超音波処理して洗浄し、次に非イオン性界面活性剤(例えば、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、トリトン−X、シグマ社)及びプロテアーゼ阻害剤を含むトリス緩衝液で処理し、次に羊膜に付着する異物及用手的に除去し、更に滅菌水で洗浄し、超音波洗浄することによって精製したものである。
【0011】
ヒト脳硬膜以外の生体由来材料から、前記のCJDが伝播された報告はないが、CJD患者より羊膜を採取する恐れもあるため、上記の精製処理を行った羊膜を、1N NaOHにより約1時間更に処理することによって、CJDの原因ウイルスを不活性化させておくのが望ましい。
【0012】
ここに記載する本発明の医用代替膜における積層体は、生体膜の欠損部分を補填する材料として術創に縫合する際の縫合に耐える強度を確保するために、シート状の生体内分解吸収性材料からなる多孔性中間材を、2層のコラーゲン膜に挟み、接着剤で接着した積層体である。中間材を挟まないコラーゲン膜のみの積層体では、縫合が困難である。また、本積層体において2層のコラーゲン膜の間に挟まれる多孔性中間材は、術創に適用後、徐々に分解吸収されて、再生する生体膜に代わられるため、体内に異物として残留することのない生体内分解吸収性材料からなる多孔性のシート状の中間材である。この生体内分解吸収性材料としては、生体内で加水分解、酵素分解などにより分解吸収され、毒性がなく、ある程度の機械的強度を有するものであれば種々の材料を用いることができる。なかでも、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸、グリコール酸と乳酸との共重合体、ポリジオキサノン、グリコール酸とトリメチレンカーボネートの共重合体、又はポリグリコール酸とポリ乳酸との混合物が好ましく、ポリグリコール酸からなる多孔性中間材が特に好ましい。
【0013】
生体内分解吸収性材料からなる多孔性中間材の厚さは、好ましくは約10〜50μm 、特に約20〜30μm である。約50μm を超えると、コラーゲン膜が接着しにくく、約10μm 未満であると、物性が弱くなる。
【0014】
生体内分解吸収性材料からなる中間材が多孔性であるのは、多孔性材料の中間材の孔を介して、接着剤により2枚のコラーゲン膜が密着し、容易には剥離しない一体となった積層体を得ることができ、また縫合に際して、針が孔を通過するので、積層体が裂けることなく、容易に本発明の医用代替膜を術創に縫合することができるからである。
【0015】
シート状の生体内分解吸収性材料からなる多孔性中間材の孔を介して2層のコラーゲン膜を密接に接着させるため、多孔性中間材の平均孔径は、好ましくは約50〜150μm 、特に約60〜100μm である。平均孔径が約50μm 未満であると、コラーゲン膜が互いに密着しがたく、約150μm を超えると、縫合時にコラーゲン膜に裂けめが入り、縫合性が低下する。それぞれの孔の大きさが異なる場合、本発明で述べる平均孔径とは、孔の面積と同じ面積の円の直径を孔径として計算した場合の算術平均である。
【0016】
また、2層のコラーゲン膜の間にシート状の多孔性中間材を挟んで接着するための接着剤は、好ましくは、やはり生体内分解吸収性であるゼラチン水溶液又はコラーゲン塩酸溶液である。これらの接着剤の原料であるゼラチンは、従来から用いられているゼラチン、例えば日局精製ゼラチンであり、接着剤の原料であるコラーゲンは、例えば中性可溶化コラーゲン、酸可溶化コラーゲン、アルカリ可溶化コラーゲン、酵素可溶化コラーゲンなど、抗原性が低減されていれば、どのようなコラーゲンであってもよい。
【0017】
本発明の医用代替膜における積層体は、少なくとも一方の外側表面に、ゼラチンゲル層を有する。ゼラチンは、コラーゲンとは対照的に細胞の接着及び増殖を妨げる作用を有するため、ゼラチンゲル層は、癒着を防止する必要のある箇所における、周辺の生体組織からの細胞の伸展を防ぐための癒着防止層として作用することができる。本発明の医用代替膜を生体への適用後、約2〜3週間、ゼラチンゲル層が分解吸収されずに残存する必要があるため、このゼラチンゲル層は、架橋されたゼラチンゲル層であるのが好ましい。
【0018】
以下に、本発明の医用代替膜の製造方法について記載する。本発明の医用代替膜における積層体を製造するには、まず上記に詳細に記載したような従来から用いられている各種コラーゲンを原料として、コラーゲン膜を調製する。各種コラーゲン、好ましくは中性可溶化コラーゲン、酸可溶化コラーゲン、アルカリ可溶化コラーゲン、又は酵素可溶化コラーゲン、特に好ましくはアルカリ可溶化コラーゲン又は酵素可溶化コラーゲンを原料として、コラーゲン塩酸溶液(約1N 、pH約3)を調製し、コラーゲン塩酸溶液の塗布、流し込みなどの慣用の方法により、コラーゲン塩酸溶液層を形成し、次いで乾燥することによってコラーゲン膜とする。ここで用いるコラーゲン塩酸溶液におけるコラーゲンの濃度は、所望するコラーゲン膜の厚さ、密度などにより適宜調整することができるが、好ましくは0.1〜3重量%、特に0.5〜2重量%とする。コラーゲン塩酸溶液層の厚さは、最終的に形成されるコラーゲン膜の厚さが、好ましくは約1〜20mm、特に約2〜5mmとなるように調整する。コラーゲン膜の厚さが約1mm未満であると、生体内でコラーゲンの吸収が早過ぎて、十分な癒着防止効果が得られず、また厚さが約20mmを超えると、取扱しにくいという問題が生じる恐れがある。このコラーゲン膜は、術創への適用後、生体細胞の侵入、伸展、増殖が容易に行われるように多孔性に形成されることが好ましく、多孔性のコラーゲン膜を得るには、撹拌して発泡させたコラーゲン溶液を用いるのが特に好ましい。
【0019】
上記のように調製するコラーゲン膜のほか、ヒト羊膜由来コラーゲン膜、特に好ましくは、ヒト羊膜由来コラーゲン膜を使用することができる。ヒト羊膜由来コラーゲン膜は、分娩直後に後産として得られるヒト胎児膜、胎盤及び臍帯からなる一体物から、どのような方法によって得、精製してもよいが、例えば、上記に詳細に記載した方法で分離及び精製したヒト羊膜由来コラーゲン膜を使用するのが好ましい。
【0020】
本発明の医用代替膜を製造するにあたっては、上記に詳細に説明したシート状の生体内分解吸収性材料からなる多孔性中間材を、上記のようにして得た2層のコラーゲン膜で挟み、接着剤で接着して積層体とする。どのような方法で積層してもよいが、例えばシート状の生体内分解吸収性材料からなる多孔性中間材を、接着剤溶液に浸漬し、その両側に、それぞれ1層のコラーゲン膜を重ねてサンドイッチ状にして、保持することによって気泡を十分に除去し、乾燥することによって積層することができる。接着剤としては、上記したように、コラーゲンを塩酸(約1N 、pH約3)に溶解した溶液又はゼラチン水溶液を使用する。ゼラチン水溶液の濃度は、例えば約1〜30重量%であるが、約2.5重量%の濃度が、取扱の面で好ましい。接着剤として用いるコラーゲン塩酸溶液のコラーゲンの濃度は、好ましくは約1〜3重量%、特に約1重量%である。
【0021】
次に、上記で得られた積層体を、第1の架橋処理に付す。架橋処理を行うことによって、積層体を、生体への適用後約3〜4週間、剥離又は分解させずに残存させるよう調節することができる。約3〜4週間残存させることによって、癒着が防止されるとともに、生体膜の伸展が促進される。また、積層体の接着性も高められる。架橋方法としては、γ線、紫外線、電子線、グルタールアルデヒドもしくはエポキシなどを用いた架橋法、又は熱を用いた熱脱水架橋法が挙げられるが、架橋度をコントロールしやすく、架橋剤の生体への影響が問題とならない熱脱水架橋を行うのが好ましい。熱脱水架橋のためには、上記で得られた積層体を、高真空下(約−0.08mPa 以下)、好ましくは約105〜150℃未満、特に約140℃で、好ましくは約12〜48時間、特に約24時間加熱する。約105℃未満では、十分な架橋反応が起きずに、十分な接着力が得られない。約150℃以上では、中間材の強度が低下し、またコラーゲン膜が変性してしまう。
【0022】
上記のようにして得た積層体の少なくとも一方の外側表面、つまり両外側表面又は片側外側表面に、ゼラチンゲル層を形成する。ゼラチンは、コラーゲンとは対照的に細胞の接着及び増殖を妨げる作用を有するため、ゼラチンゲル層を、癒着を防止する必要のある箇所における、周辺の生体組織からの細胞の伸展を防ぐための癒着防止層として使用することができる。
【0023】
ここで形成するゼラチンゲル層を後述する第2の架橋処理に付すことによって得られる架橋後のゼラチンゲル層は、各生体膜が再生するまで、本代替膜のコラーゲン膜が、周辺組織と癒着するのを防止する役割を有するが、生体への適用後、徐々に分解吸収される。そのため、膜欠損部の周辺から生体膜が伸びて再生して、膜の欠損部分を塞ぐまでの約2〜3週間、本ゼラチンゲル層を分解吸収されずに残存させるために、第2の架橋処理を行う。架橋処理後のゼラチンゲル層を生体への適用後約2〜3週間体内で残存させるためには、好ましくは約2〜30重量%、特に約20重量%のゼラチン水溶液を用いてゼラチンゲル層を形成するが、約20重量%のゼラチン水溶液を用いる場合、湿潤時で好ましくは約1〜7mm、特に約3〜5mm、乾燥時で好ましくは約0.3〜3mm、特に約1〜3mmになるように、ゼラチンゲル層を形成する。ゼラチンゲル層は、塗布、浸漬などどのような方法によって形成してもよいが、例えば、シャーレなどの容器に必要な厚さになるようにゼラチン水溶液を注入して、その上に上記のようにして得た積層体を置いて放置し、ゼラチンをゲル化させる。両外側表面にゼラチンゲル層を形成する場合は、積層体のもう一方の面についても、同様の処置を行って、両外側表面にゼラチンゲル層を形成させる。
【0024】
次に、このようにして得た、ゼラチンゲル層を両外側表面又は片側外側表面に形成させた積層体を、第2の架橋処理に付す。架橋処理を行うことによって、ゼラチンゲル層の分解吸収速度をコントロールする。架橋方法としては、上述と同様の理由で、やはり熱脱水架橋が好ましい。熱脱水架橋を行って、生体への適用後約2〜3週間ゼラチンゲル層を残存させるには、上記のゼラチンゲル層を形成させた積層体を、高真空下(約−0.08mPa 以下)、好ましくは約105〜150℃未満、特に約120℃で、好ましくは約12〜48時間、特に約24時間熱脱水架橋処理に付す。約105℃未満では、架橋反応が十分に起きず、約150℃以上では、コラーゲン膜が変性してしまう。
【0026】
上記のようにして得られた本発明の医用代替膜を、各種外科手術後の膜欠損部分を補填することによって、膜欠損部分における臓器と周辺組織との癒着を予防するための、生体代替膜として使用することができる。本発明の代替膜においては、癒着を防止する必要のある周辺組織と接する側に架橋したゼラチンゲル層が向くように、その片側表面又は両側表面にゼラチンゲル層を形成した本発明の代替膜を使用する。本医用代替膜を、心膜の代替膜として使用する場合は、両側表面にゼラチンゲル層を形成した代替膜を、また胸膜、腹膜又は漿膜の代替膜として使用する場合は、片側表面にゼラチンゲル層を形成した代替膜を、ゼラチンゲル層が周辺組織と接する側に向くように使用する。脳硬膜の代替膜として使用する場合は、両側表面又は片側表面にゼラチンゲル層を形成した代替膜のいずれも使用することができる。片側表面にゼラチンゲル層を形成した代替膜を使用する場合は、ゼラチンゲル層が、脳実質組織と接する側に向くように使用する。
【0027】
上記のように生体膜の欠損部分を補填する材料としての本発明の医用代替膜は、脳硬膜、心膜、胸膜、腹膜又は漿膜の代替膜として使用することができる。本代替膜を術創に適用すると、術創周辺に残存している脳硬膜、心膜、胸膜、腹膜又は漿膜などの生体膜が、本代替膜との接触箇所から本代替膜のコラーゲン膜を再生の足場として伸展して再生する一方、生体組織がゼラチンゲル層と接する箇所では、細胞の侵入・伸展が予防されるために癒着が防止され、最終的には欠損部分が再生した生体膜によって塞がれ、本代替膜は、生体によって分解吸収され、完全に消失する。
【0028】
【実施例】
以下に記載する実施例により、本発明の医用代替膜及びその製造方法について詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により制限されるものではない。
【0029】
調製例1:ヒト羊膜の精製
後産として得られた一体物から胎児膜を分離し、胎児膜から羊膜を剥離し、プロテアーゼ阻害剤(フェニルメチルスルホニルフルオリド、PMSF)0.35mg/lを含有する滅菌水で超音波処理(1kwの発信器)して洗浄(室温で2時間)し、1%オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(トリトンX−100、シグマ社)のトリス緩衝液溶液(PMSF 0.35mg/lを更に含有する)で、室温で24時間処理し、羊膜にまだ付着している異物を用手的に除去し、滅菌水により、室温で48時間洗浄し、滅菌水中、室温で2時間、超音波処理(1kwの発信器)し、1N NaOH水溶液により、室温で1時間処理し、滅菌水により、室温で1時間洗浄し、乾燥することによって、羊膜を精製して、ヒト羊膜由来コラーゲン膜を得た。この方法で得られたコラーゲン膜では、細胞は完全に除去されていた。
【0030】
調製例2:積層体の調製
調製例1において調製及び精製し、保存しておいたヒト羊膜由来コラーゲン膜を、滅菌水に浸漬した。シート状の生体内分解吸収性材料として、シート状のPGAメッシュ(サイズ:10cm×15cm、孔径:80μm 、厚さ:50μm 、三井東圧化学社製)を、2.5重量%ゼラチン水溶液に浸漬し、PGAメッシュに付着した泡を除去した。次に、該コラーゲン膜を、PGAメッシュに重ねた。本コラーゲン膜を積層していない、PGAメッシュのもう一方の表面に2.5%ゼラチン溶液約7mlを加え、その上にもう1枚のヒト由来の羊膜由来のコラーゲン膜を重ね、サンドイッチ状として、4℃で1時間静置した。積層体を風乾後、デシケーター内で減圧乾燥した。
次に、上記で得た積層体を、真空定温乾燥器(YAMATO製、型式:DP43)を用い、高真空下(約−0.08mPa 以下)、105℃、120℃、130℃、140℃又は150℃で、12時間又は24時間静置することによって熱脱水架橋処理に付し、次に常温乾燥状態で保存した。
【0031】
試験例1:積層体の接着力試験
調製例2において調製及び熱脱水架橋処理に付した積層体の接着力試験を行った。調製例2で熱脱水架橋処理に付した積層体を、短冊状(1×2.5cm)に切断し、生理食塩水20mlに37℃で浸漬して保存し、毎日、食塩水中で、積層体をピンセットでつまんで、引っ張り、膜が破損したり、剥離しないかを観察した。
各条件で熱脱水架橋に付し、生理食塩水中に浸漬した積層体の羊膜由来のコラーゲン膜が外力によってPGAメッシュと剥離するまでの経過と、静置したままで自然剥離するまでの経過の観察結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
Figure 0003563216
【0033】
高真空下、105℃で12時間熱脱水架橋した積層体では、外力を加えると、全例が2日目に剥離した。静置した場合には5日目に、全例において羊膜由来コラーゲン膜が、PGAメッシュと自然に剥離した。
高真空下、120℃で熱脱水架橋した積層体では、外力を加えると2日目に4例中1例においてコラーゲン膜とPGAメッシュが剥離した。7日目には、全例においてコラーゲン膜が剥離した。静置した場合に、8日目に、全例において、コラーゲン膜とPGAメッシュとが自然剥離していた。
高真空下、130℃で熱脱水架橋した積層体では、外力を加えると4日目に4例中3例で、コラーゲン膜が剥離した。また、6日目に4例中4例で剥離が起った。静置した場合には18日目に、4例中4例において、コラーゲン膜とPGAメッシュとが完全に剥離していた。
【0034】
高真空下、140℃で熱脱水架橋した積層体では、外力を加えると4日目に4例中1例で、コラーゲン膜が、剥離した。全例においてコラーゲン膜がPGAメッシュと剥離したのは、12日後であった。静置した場合は、20日後に全例においてコラーゲン膜とPGAメッシュが自然剥離した。
高真空下、150℃で熱脱水架橋した積層体では、外力を加えると9日目に、4例中4例でコラーゲン膜が剥離した。静置した場合には、全例においてコラーゲン膜がPGAメッシュと剥離したのは、23日後であった。
【0035】
上記の結果より、熱脱水架橋温度に比例して、コラーゲン膜とPGAメッシュとの接着性が向上することが認められた。しかし、150℃で熱脱水架橋した積層体をピンセットで引っ張ると、その部分のPGAメッシュが裂けることが観察され、架橋温度が高過ぎると、PGAメッシュの強度が低下することが示唆された。これらの結果より、試験を行った温度条件の中では、140℃が、接着力向上に、最も適当な熱脱水架橋温度であることが認められた。
【0036】
実施例1:ゼラチンゲル層を有する医用代替膜の調製
約20重量%のゼラチン水溶液を調製した。調製例2において、高真空下(約−0.08mPa 以下)、140℃で24時間熱脱水架橋処理に付すことによって調製した積層体の片側外側表面に、乾燥時の厚さが約1〜2mmとなるように、ゼラチンゲル層を形成した。これを、高真空下(約−0.08mPa 以下)、120℃で24時間、熱脱水架橋処理に付して、本発明の医用代替膜を得た。
【0038】
試験例2:癒着防止効果
乾燥時の厚さが約3mmとなるようにゼラチンゲル層を形成した以外は、実施例1と同様の方法で、片側外側表面にゼラチンゲル層を有する本発明の医用代替膜を作成し、その癒着防止効果を検討した。
ニュージーランドホワイト種の雌性ウサギ24匹を麻酔下に腹部正中切開し、盲腸の左右で、2×3cmの大きさで、漿膜を切除した。また、漿膜欠如部分に対面する腹壁の腹膜を、3×4cmの大きさで切除した。コントロール群(12匹)はそのまま閉腹し、試験群では、本発明の医用代替膜のゼラチンゲル層を有する面を腹腔に向けて、盲腸の漿膜欠損部に縫合固定して閉腹した。術後2又は6週間後にウサギを犠牲死させて、癒着の程度を、肉眼的及び組織学的に観察した。
【0039】
術後の飼育期間中、いずれのウサギの死亡も観察されなかった。
コントロール群では、12匹中11匹で、切除箇所に強度の癒着が認められた。本発明の医用代替膜を適用した群では、12匹中10匹で癒着が認められず、2匹では、軽度の癒着が認められた。
組織学的には、術後2週間では、本発明の医用代替膜を適用したウサギの腹壁では、腹膜が正常に再生して治癒しており、盲腸の漿膜切除部位では、本代替膜が切除部位を覆っており、ゼラチンゲル層がわずかに残存していた。術後6週間では、本代替膜はほとんど消失し、漿膜切除部位の表面は、漿膜が覆っていた。上記の結果より、ゼラチンゲル層を有する本発明の医用代替膜は、癒着防止に有用であることが認められた。本代替膜を生体に適用後、ゼラチンゲル層が徐々にゾル化するため、生体組織の代替膜への侵入が困難になり、この癒着防止効果が得られたと考えられる。
【0043】
【発明の効果】
本発明の医用代替膜は、倫理上の問題もなく、安定して供給され、生体膜の欠損部分を補填する材料又は癒着防止材として術創に縫合することができる。また縫合後、生体膜が再生するまでの期間残存して、癒着防止効果を示す一方、徐々に分解吸収されるため、生体組織に長期間残存して炎症などを惹起することなく、安全に使用することができる。

Claims (9)

  1. 2層のコラーゲン膜の間に、シート状の生体内分解吸収性材料からなる多孔性中間材を接着剤を介して有する積層体であって、該積層体の少なくとも一方の外側表面に、ゼラチンゲル層を有する医用代替膜。
  2. コラーゲン膜が、ヒト由来の天然コラーゲン膜である請求項1記載の医用代替膜。
  3. ヒト由来の天然コラーゲン膜が、ヒト羊膜由来コラーゲン膜である請求項2記載の医用代替膜。
  4. コラーゲン膜が、中性可溶化コラーゲン、酸可溶化コラーゲン、アルカリ可溶化コラーゲン、又は酵素可溶化コラーゲンからなる膜である請求項1〜3のいずれか1項記載の医用代替膜。
  5. 多孔性中間材が、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸、グリコール酸と乳酸との共重合体、ポリジオキサノン、グリコール酸とトリメチレンカーボネートの共重合体、及びポリグリコール酸とポリ乳酸との混合物から選択される材料からなる請求項1〜4のいずれか1項記載の医用代替膜。
  6. 多孔性中間材がポリグリコール酸である請求項5記載の医用代替膜。
  7. ゼラチンゲル層が、架橋されたゼラチンゲル層である請求項1〜6のいずれか1項記載の医用代替膜。
  8. 架橋されたゼラチンゲル層が、生体内で2〜3週間残存できる程度に架橋されたものである請求項記載の医用代替膜。
  9. 請求項記載の医用代替膜を製造する方法であって、シート状の生体内分解吸収性材料からなる多孔性中間材を、接着剤を介して2層のコラーゲン膜で挟んで積層体とし;該積層体を第1の架橋処理に付し;該積層体の少なくとも一方の外側表面にゼラチンゲル層を形成し;該積層体を第2の架橋処理に付す方法。
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