JP7161496B2 - 癒着防止用組成物 - Google Patents
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Description
[1-1] 少なくとも一部が硬化剤で架橋された低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩のスポンジ状の第1の層および第2の層を含み、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が10,000~2,000,000であり、第2の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が1,000~1,000,000であり、前記重量平均分子量が脱架橋処理後にGPC-MALS法により測定したものであり、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が、第2の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量よりも高い、滅菌された、生体に適用可能なスポンジ状積層体を含む、癒着防止材。
[1-1a] 重量平均分子量10,000~2,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第1の層と、重量平均分子量1,000~1,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第2の層を含み、前記重量平均分子量はGPC-MALS法により測定したものであり、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が第2の層よりも高い、生体に適用可能なスポンジ状積層体を含む、癒着防止材。
[1-1b] 少なくとも一部が硬化剤で架橋された、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩のスポンジ状の第1の層および第2の層を含み、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が30,000~300,000であり、第2の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が1,000~200,000であり、前記重量平均分子量が脱架橋処理後にGPC-MALS法により測定したものであり、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が、第2の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量よりも高い、生体に適用可能なスポンジ状積層体を含む、癒着防止材。
[1-3] 第1の層および第2の層の両方が、硬化剤を含む上記[1-1]~[1-2]のいずれか1項に記載の癒着防止材。
[1-4] 低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩の第1の層と第2の層での使用量の合計が、0.1mg/cm2~3mg/cm2の範囲である、上記[1-1]~[1-3]のいずれか1項に記載の癒着防止材。
[1-5] 第1の層と第2の層のアルギン酸の1価金属塩のエンドトキシン含有量が、500EU/g以下である、上記[1-1]~[1-4]のいずれか1項に記載の癒着防止材。
[1-7] 第1の層と第2の層の硬化剤が、CaCl2、CaSO4、ZnCl2、SrCl2、FeCl3、BaCl2、CaHPO4、グルコン酸カルシウム、シュウ酸カルシウムおよび乳酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1つの金属イオン化合物である、上記[1-1]~[1-6]のいずれか1項に記載の癒着防止材。
[1-8] 第1の層を創傷部側の表面に向けて適用するための、上記[1-1]~[1-7]のいずれか1項に記載の癒着防止材。
[1-9] スポンジ状積層体が、吸収線量として10kGy~150kGyの電子線および/またはγ線照射および/またはエチレンオキシドガスにより滅菌されたものである、上記[1-1]~[1-8]のいずれか1項に記載の癒着防止材。
[1-10a] 低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩をそれぞれ含む第1の層および第2の層を含む生体に適用可能なスポンジ状積層体を含み、第1の層の溶解速度が、第2の層よりも遅い、癒着防止材。
[1-11] pH7.5のリン酸緩衝液に対するアルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第2の層のアルギン酸の1価金属塩の溶出量を100%としたときの、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の溶出量の割合が、測定開始から1時間の時点で50%未満、2時間の時点で70%未満である、上記[1-10]または[1-10a]の癒着防止材。
[1-12] pH7.5のリン酸緩衝液に対するアルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第1の層は、アルギン酸の1価金属塩の25±10重量%が1時間以内に溶出し、80±10重量%が4時間以内に溶出するものであり、第2の層は、アルギン酸の1価金属塩の70±10重量%が1時間以内に溶出し、90±10重量%が4時間以内に溶出するものである、上記[1-10]または[1-10a]の癒着防止材。
[1-14] アガロースゲルを介したpH7.5のリン酸緩衝液に対するアルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第1の層は、アルギン酸の1価金属塩の約15±5重量%が2日以内に溶出し、約25±10重量%が8日以内に溶出するものであり、第2の層は、アルギン酸の1価金属塩の約30±8重量%が2日以内に溶出し、約60±10重量%が8日以内に溶出するものである、上記[1-10]または[1-10a]の癒着防止材。
[1-16] 以下の1以上の特性を有する、上記[1-1]~[1-15]のいずれか1項に記載の癒着防止材。
(1)JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定したヤング率が0.3~300MPaである。
(2)JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定した破断強度が5~5000kPaである。
(3)JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定したスポンジ状積層体の破断強度対ヤング率比が2~50である。
(4)リン酸緩衝生理食塩水で浸漬したアガロースゲルに、スポンジ状積層体を2~6時間接触させたときの、スポンジ状積層体の重量増加率が、リン酸緩衝生理食塩水と接触させる前のスポンジ状積層体の重量を100%とした場合に、200~50000%である。
(5)アガロースゲルを介したpH7.5のリン酸緩衝液に対するアルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第2の層のアルギン酸の1価金属塩の溶出量を100%としたときの、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の溶出量の割合が、測定開始から2日目以降において30~70%である。
(6)アガロースゲルを介したpH7.5のリン酸緩衝液に対するアルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第1の層は、アルギン酸の1価金属塩の約15±5重量%が2日以内に溶出し、約25±10重量%が8日以内に溶出するものであり、第2の層は、アルギン酸の1価金属塩の約30±8重量%が2日以内に溶出し、約60±10重量%が8日以内に溶出するものである。
[2-1a] 重量平均分子量10,000~2,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第1の層と、重量平均分子量1,000~1,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第2の層とを含み、前記分子量がGPC-MALS法により測定したものであり、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が第2の層よりも高い、生体に適用可能なスポンジ状積層体を、癒着防止を必要とする対象に適用することを含む、癒着防止方法。
[2-1b] 少なくとも一部が硬化剤で架橋された低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩のスポンジ状の第1の層および第2の層を含み、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が30,000~300,000であり、第2の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が1,000~200,000であり、前記重量平均分子量が脱架橋処理後にGPC-MALS法により測定したものであり、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が、第2の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量よりも高い、生体に適用可能なスポンジ状積層体を、癒着防止を必要とする対象に、第1の層を創傷部側の表面に向けて適用することを含む、癒着防止方法。
[2-3] 第1の層および第2の層の両方が、硬化剤を含む上記[2-1]~[2-2]のいずれか1項に記載の癒着防止方法。
[2-4] 低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩の第1の層と第2の層での使用量の合計が、0.1mg/cm2~3mg/cm2の範囲である、上記[2-1]~[2-3]のいずれか1項に記載の癒着防止方法。
[2-5] 第1の層と第2の層のアルギン酸の1価金属塩のエンドトキシン含有量が、500EU/g以下である、上記[2-1]~[2-4]のいずれか1項に記載の癒着防止方法。
[2-6] 第1の層と第2の層のアルギン酸の1価金属塩が、アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カリウムである、上記[2-1]~[2-5]のいずれか1項に記載の癒着防止方法。
[2-7] 第1の層と第2の層の硬化剤が、CaCl2、CaSO4、ZnCl2、SrCl2、FeCl3、BaCl2、CaHPO4、グルコン酸カルシウム、シュウ酸カルシウムおよび乳酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1つの金属イオン化合物である、上記[2-1]~[2-6]のいずれか1項に記載の癒着防止方法。
[2-8] スポンジ状積層体が、吸収線量として10kGy~150kGyの電子線および/またはγ照射および/またはエチレンオキシドガスにより滅菌されたものである、上記[2-1]~[2-7]のいずれか1項に記載の癒着防止方法。
[2-9a] 低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩をそれぞれ含む第1の層および第2の層を含み、第1の層の溶解速度が第2の層よりも遅い、生体に適用可能なスポンジ状積層体を、癒着防止を必要とする対象に適用することを含む、癒着防止方法。
[2-10] pH7.5のリン酸緩衝液に対するアルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第2の層のアルギン酸の1価金属塩の溶出量を100%としたときの、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の溶出量の割合が、測定開始から1時間の時点で50%未満、2時間の時点で70%未満である、上記[2-9]または[2-9a]の癒着防止方法。
[2-11] pH7.5のリン酸緩衝液に対するアルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第1の層は、アルギン酸の1価金属塩の25±10重量%が1時間以内に溶出し、80±10重量%が4時間以内に溶出するものであり、第2の層は、アルギン酸の1価金属塩の70±10重量%が1時間以内に溶出し、90±10重量%が4時間以内に溶出するものである、上記[2-9]または[2-9a]の癒着防止方法。
[2-13] アガロースゲルを介したpH7.5のリン酸緩衝液に対するアルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第1の層は、アルギン酸の1価金属塩の約15±5重量%が2日以内に溶出し、約25±10重量%が8日以内に溶出するものであり、第2の層は、アルギン酸の1価金属塩の約30±8重量%が2日以内に溶出し、約60±10重量%が8日以内に溶出するものである、上記[2-9]または[2-9a]の癒着防止方法。
[2-15] スポンジ状積層体が以下の1以上の特性を有する、上記[2-1]~[2-14]のいずれか1項に記載の癒着防止方法。
(1)JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定したヤング率が0.3~300MPaである。
(2)JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定した破断強度が5~5000kPaである。
(3)JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定したスポンジ状積層体の破断強度対ヤング率比が2~50である。
(4)リン酸緩衝生理食塩水で浸漬したアガロースゲルに、スポンジ状積層体を2~6時間接触させたときの、スポンジ状積層体の重量増加率が、リン酸緩衝生理食塩水と接触させる前のスポンジ状積層体の重量を100%とした場合に、200~50000%である。
(5)アガロースゲルを介したpH7.5のリン酸緩衝液に対するアルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第2の層のアルギン酸の1価金属塩の溶出量を100%としたときの、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の溶出量の割合が、測定開始から2日目以降において30~70%である。
(6)アガロースゲルを介したpH7.5のリン酸緩衝液に対するアルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第1の層は、アルギン酸の1価金属塩の約15±5重量%が2日以内に溶出し、約25±10重量%が8日以内に溶出するものであり、第2の層は、アルギン酸の1価金属塩の約30±8重量%が2日以内に溶出し、約60±10重量%が8日以内に溶出するものである。
(1)重量平均分子量10,000~2,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化させる工程、
(2)硬化したアルギン酸の1価金属塩を凍結する工程、
(3)(2)で得られたアルギン酸の1価金属塩の上で、重量平均分子量1,000~1,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化して積層体を得る工程、
(4)得られた積層体を凍結乾燥してスポンジ状積層体を得る工程、
ここで、前記分子量がGPC-MALS法により測定したものであり、
前記スポンジ状積層体は、重量平均分子量10,000~2,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第1の層と、重量平均分子量1,000~1,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第2の層とを含み、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が第2の層よりも高い。
(1)重量平均分子量10,000~2,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化させる工程、
(2)(1)で得られたアルギン酸の1価金属塩の上で、重量平均分子量1,000~1,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化して積層体を得る工程、
(3)得られた積層体を凍結乾燥してスポンジ状積層体を得る工程、
ここで、前記分子量がGPC-MALS法により測定したものであり、
前記スポンジ状積層体は、重量平均分子量10,000~2,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第1の層と、重量平均分子量1,000~1,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第2の層とを含み、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が第2の層よりも高い。
(1)重量平均分子量30,000~300,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化させる工程、
(2)硬化したアルギン酸の1価金属塩を凍結する工程、
(3)(2)で得られたアルギン酸の1価金属塩の上で、重量平均分子量1,000~200,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化して積層体を得る工程、
(4)得られた積層体を凍結乾燥してスポンジ状積層体を得る工程、
ここで、前記分子量がGPC-MALS法により測定したものであり、
前記スポンジ状積層体は、重量平均分子量30,000~300,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第1の層と、重量平均分子量1,000~200,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第2の層とを含み、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が第2の層よりも高い。
(1)重量平均分子量30,000~300,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化させる工程、
(2)(1)で得られたアルギン酸の1価金属塩の上で、重量平均分子量1,000~200,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化して積層体を得る工程、
(3)得られた積層体を凍結乾燥してスポンジ状積層体を得る工程、
ここで、前記分子量がGPC-MALS法により測定したものであり、
前記スポンジ状積層体は、重量平均分子量30,000~300,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第1の層と、重量平均分子量1,000~200,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第2の層とを含み、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が第2の層よりも高い。
[3-3] (3)または(4)で得られたスポンジ状積層体をプレスする工程をさらに含む、上記[3-1]~[3-2]のいずれか1項に記載の癒着防止材の製造方法。
[3-4] 硬化剤が、CaCl2、CaSO4、ZnCl2、SrCl2、FeCl3、BaCl2、CaHPO4、グルコン酸カルシウム、シュウ酸カルシウムおよび乳酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1つの金属イオン化合物である、上記[3-1]~[3-3]のいずれか1項に記載の癒着防止材の製造方法。
(1)JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定したヤング率が0.3~300MPaである。
(2)JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定した破断強度が5~5000kPaである。
(3)JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定したスポンジ状積層体の破断強度対ヤング率比が2~50である。
(4)リン酸緩衝生理食塩水で浸漬したアガロースゲルに、スポンジ状積層体を2~6時間接触させたときの、スポンジ状積層体の重量増加率が、リン酸緩衝生理食塩水と接触させる前のスポンジ状積層体の重量を100%とした場合に、200~50000%である。
(5)アガロースゲルを介したpH7.5のリン酸緩衝液に対するアルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第2の層のアルギン酸の1価金属塩の溶出量を100%としたときの、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の溶出量の割合が、測定開始から2日目以降において30~70%である。
(6)アガロースゲルを介したpH7.5のリン酸緩衝液に対するアルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第1の層は、アルギン酸の1価金属塩の約15±5重量%が2日以内に溶出し、約25±10重量%が8日以内に溶出するものであり、第2の層は、アルギン酸の1価金属塩の約30±8重量%が2日以内に溶出し、約60±10重量%が8日以内に溶出するものである。
(1)重量平均分子量10,000~2,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化させる工程、
(2)硬化したアルギン酸の1価金属塩を凍結する工程、
(3)(2)で得られたアルギン酸の1価金属塩の上で、重量平均分子量1,000~1,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化して積層体を得る工程、
(4)得られた積層体を凍結乾燥してスポンジ状積層体を得る工程、
ここで、前記分子量がGPC-MALS法により測定したものであり、
前記スポンジ状積層体は、重量平均分子量10,000~2,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第1の層と、重量平均分子量1,000~1,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第2の層とを含み、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が第2の層よりも高い。
(1)重量平均分子量10,000~2,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化させる工程、
(2)(1)で得られたアルギン酸の1価金属塩の上で、重量平均分子量1,000~1,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化して積層体を得る工程、
(3)得られた積層体を凍結乾燥してスポンジ状積層体を得る工程、
ここで、前記分子量がGPC-MALS法により測定したものであり、
前記スポンジ状積層体は、重量平均分子量10,000~2,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第1の層と、重量平均分子量1,000~1,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第2の層とを含み、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が第2の層よりも高い。
(1)重量平均分子量30,000~300,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化させる工程、
(2)硬化したアルギン酸の1価金属塩を凍結する工程、
(3)(2)で得られたアルギン酸の1価金属塩の上で、重量平均分子量1,000~200,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化して積層体を得る工程、
(4)得られた積層体を凍結乾燥してスポンジ状積層体を得る工程、
ここで、前記分子量がGPC-MALS法により測定したものであり、
前記スポンジ状積層体は、重量平均分子量30,000~300,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第1の層と、重量平均分子量1,000~200,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第2の層とを含み、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が第2の層よりも高い。
(1)重量平均分子量30,000~300,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化させる工程、
(2)(1)で得られたアルギン酸の1価金属塩の上で、重量平均分子量1,000~200,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化して積層体を得る工程、
(3)得られた積層体を凍結乾燥してスポンジ状積層体を得る工程、
ここで、前記分子量がGPC-MALS法により測定したものであり、
前記スポンジ状積層体は、重量平均分子量30,000~300,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第1の層と、重量平均分子量1,000~200,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第2の層とを含み、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が第2の層よりも高い。
[4-3] スポンジ状積層体が、吸収線量として10kGy~150kGyの電子線および/またはγ照射および/またはエチレンオキシドガスにより滅菌されたものである、上記[4-1]~[4-2]のいずれか1項に記載のスポンジ状積層体。
[4-4] (3)または(4)で得られたスポンジ状積層体をプレスする工程をさらに含む、上記[4-1]~[4-3]のいずれか1項に記載のスポンジ状積層体。
[4-5] 硬化剤が、CaCl2、CaSO4、ZnCl2、SrCl2、FeCl3、BaCl2、CaHPO4、グルコン酸カルシウム、シュウ酸カルシウムおよび乳酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1つの金属イオン化合物である、上記[4-1]~[4-4]のいずれか1項に記載のスポンジ状積層体。
(1)JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定したヤング率が0.3~300MPaである。
(2)JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定した破断強度が5~5000kPaである。
(3)JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定したスポンジ状積層体の破断強度対ヤング率比が2~50である。
(4)リン酸緩衝生理食塩水で浸漬したアガロースゲルに、スポンジ状積層体を2~6時間接触させたときの、スポンジ状積層体の重量増加率が、リン酸緩衝生理食塩水と接触させる前のスポンジ状積層体の重量を100%とした場合に、200~50000%である。
(5)アガロースゲルを介したpH7.5のリン酸緩衝液に対するアルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第2の層のアルギン酸の1価金属塩の溶出量を100%としたときの、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の溶出量の割合が、測定開始から2日目以降において30~70%である。
(6)アガロースゲルを介したpH7.5のリン酸緩衝液に対するアルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第1の層は、アルギン酸の1価金属塩の約15±5重量%が2日以内に溶出し、約25±10重量%が8日以内に溶出するものであり、第2の層は、アルギン酸の1価金属塩の約30±8重量%が2日以内に溶出し、約60±10重量%が8日以内に溶出するものである。
[5-1a] 重量平均分子量30,000~300,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含む第1の原料と、重量平均分子量1,000~200,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含む第2の原料とを含み、第1の原料の重量平均分子量が第2の原料よりも高い、癒着防止材を製造するための原料の組合せ。
[5-2] 硬化剤をさらに含む、上記[5-1]または[5-1a]に記載の原料の組合せ。
[5-3] 硬化剤が、CaCl2、CaSO4、ZnCl2、SrCl2、FeCl3、BaCl2、CaHPO4、グルコン酸カルシウム、シュウ酸カルシウムおよび乳酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1つの金属イオン化合物である、上記[5-2]に記載の原料の組合せ。
[5-4]スポンジ状積層体の製造に用いるためのものである、上記[5-1]~[5-3]のいずれか1項に記載の原料の組合せ。
[6-1] 以下の工程を含む、生体に適用可能なスポンジ状積層体の製造方法。
(1)重量平均分子量10,000~2,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化させる工程、
(2)硬化したアルギン酸の1価金属塩を凍結する工程、
(3)(2)で得られたアルギン酸の1価金属塩の上で、重量平均分子量1,000~1,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化して積層体を得る工程、
(4)得られた積層体を凍結乾燥してスポンジ状積層体を得る工程、
ここで、前記分子量がGPC-MALS法により測定したものであり、
前記スポンジ状積層体は、重量平均分子量10,000~2,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第1の層と、重量平均分子量1,000~1,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第2の層とを含み、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が第2の層よりも高い。
「癒着」とは、互いに分離しているべき組織の表面が線維性の組織で連結または融合された状態のことをいう。癒着の原因は、外科手術において組織の表面にできる外傷や、外傷により引き起こされる炎症、外科手術において組織表面が乾燥することによる炎症などである。これらの外傷や炎症に伴い組織の表面にフィブリンを含む滲出液が生じ、この滲出液が器質化して組織表面が連結または融合されることにより癒着が形成される。
また、実施例に示したとおり、対象となる癒着としては、手術時の対象臓器の切除した部位の癒着およびde novo癒着(手術部位以外の周辺および腹腔等の体腔および体内での広範な部位との癒着)がある。
本発明は、少なくとも一部が硬化剤で架橋された低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩のスポンジ状の第1の層および第2の層を含み、重量平均分子量が比較的高い低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第1の層と、重量平均分子量が比較的低い低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第2の層を含む生体に適用可能なスポンジ状積層体を含む、癒着防止材(以下、「癒着防止材A」という場合がある)を提供する。第1の層と第2の層で用いる低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量は、それぞれ、例えば、10,000~2,000,000と、1,000~1,000,000である。このような重量平均分子量は脱架橋処理、例えばキレート剤溶液に溶解した後にGPC-MALS法により測定したものである。
なお、本明細書において、数値範囲に「~」の記号を用いる場合、「下限値以上、上限値以下」を意味するものであり、記号の両端の数値は当該範囲に含まれる。
別の好ましい例として、癒着防止材Bは、アルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第1の層は、アルギン酸の1価金属塩の25±10重量%が1時間以内に溶出し、80±10重量%が4時間以内に溶出するものであり、第2の層は、アルギン酸の1価金属塩の70±10重量%が1時間以内に溶出し、90±10重量%が4時間以内に溶出するものである。溶解試験は、具体的には、後述の実施例2に記載の通りである。
別の好ましい例として、癒着防止材Bは、アガロースゲルを介したアルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第1の層は、アルギン酸の1価金属塩の約15±5重量%、特に約16±2重量%が2日以内に溶出し、約25±10重量%、特に約33±7重量%が8日以内に溶出するものであり、第2の層は、アルギン酸の1価金属塩の約30±8重量%、特に約31±6重量%が2日以内に溶出し、約60±10重量%、特に約60±7重量%が8日以内に溶出するものである。溶解試験は、具体的には、後述の実施例2-2に記載の通りである。
(1)ヤング率
JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定したスポンジ状積層体のヤング率は、例えば、0.3~300MPa、好ましくは、0.4~250MPa、より好ましくは、0.5~200MPa、特に好ましくは、1~180MPaであってよい。ヤング率は、積層体をプレスすることにより高めることができる。
JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定したスポンジ状積層体の破断強度は、例えば、5~5000kPa、好ましくは、10~4800kPa、より好ましくは、15~4500kPa、特に好ましくは、20~4000kPaである。破断強度は、積層体をプレスすることにより高めることができる。
JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定したスポンジ状積層体の破断強度対ヤング率比(破断強度(kPa)÷ヤング率(MPa))は、例えば、2~50、好ましくは、3~45、より好ましくは、5~40、特に好ましくは、10~35である。
リン酸緩衝生理食塩水で浸漬したアガロースゲルに、スポンジ状積層体(凍結乾燥されたもの)を2~6時間接触させたときの、スポンジ状積層体の重量増加率は、リン酸緩衝生理食塩水と接触させる前のスポンジ状積層体の重量を100%とした場合に、例えば、200~50000%、好ましくは、500~30000%、より好ましくは、1000~20000%、特に好ましくは1500~15000%である。
「アルギン酸の1価金属塩」は、アルギン酸の6位のカルボン酸の水素原子を、Na+やK+などの1価金属イオンとイオン交換することでつくられる水溶性の塩である。アルギン酸の1価金属塩としては、具体的には、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムなどを挙げることができるが、特には、市販品により入手可能なアルギン酸ナトリウムが好ましい。アルギン酸の1価金属塩の溶液は、硬化剤と混合したときにゲルを形成する。
スポンジ状積層体の第1の層の原料として用いるアルギン酸の1価金属塩として、GPC-MALS法により測定した重量平均分子量が上記のような範囲のものを用いることで、スポンジ状積層体の第1の層の製造におけるアルギン酸の1価金属塩のゲル化速度を適正化し、第1の層の品質や製造時間を適正化することができる。
アルギン酸類の分子量の測定は、常法に従い測定することができる。分子量測定にGPC-MALSを用いる場合の代表的な条件は、本明細書の実施例1に記載のとおりである。検出器として、例えば、RI検出器と光散乱検出器(MALS)を用いることができる。
癒着防止材は、第1の層および第2の層のいずれか一方が硬化剤を含有してもよく(すなわち、第1の層および第2の層のいずれか一方が硬化剤を含有しなくてもよく)、あるいは、第1の層および第2の層の両方が硬化剤を含有してもよい。
あるいは、癒着防止材は、第1の層および第2の層のいずれもが硬化剤を含有していなくてもよい。
生体適用可能なスポンジ状積層体を含む癒着防止材や生体適用可能なスポンジ状積層体は、例えば、以下の工程を経て作製することができる。
(2)硬化したアルギン酸の1価金属塩を凍結する工程、
(3)(2)で得られたアルギン酸の1価金属塩の上で、重量平均分子量1,000~1,000,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化して積層体を得る工程、
(4)得られた積層体を凍結乾燥してスポンジ状積層体を得る工程。
(1’)第2のアルギン酸塩を硬化剤により硬化させる工程、
(2’)硬化した第2のアルギン酸塩を凍結する工程(省略することも可能)、
(3’)(2’)で得られた第2のアルギン酸塩の上で、第1のアルギン酸塩を硬化剤により硬化して積層体を得る工程、
(4’)得られた積層体を凍結乾燥してスポンジ状積層体を得る工程。
各工程の具体的な説明は、前記の方法と同様である。
各工程の具体的な説明は、前記の方法と同様である。
電子線および/またはγ線滅菌する場合の照射条件として、例えば、吸収線量が10kGy~150kGyが挙げられ、より好ましくは20kGy~100kGyが挙げられ、さらに好ましくは40kGy~80kGyが挙げられる。電子線および/またはγ線滅菌する場合の照射条件の別の好ましい態様として、例えば、吸収線量が20kGy~80kGy、20kGy~60kGy、40kGy~60kGy等が挙げられる。γ線滅菌よりも電子線滅菌が好ましい。
別の好ましい態様として、癒着防止材のスポンジ状積層体は、エチレンオキシドガス(EOG)を用い、常法により滅菌処理がされる。
さらに別の態様において、癒着防止材のスポンジ状積層体は、滅菌された、または、無菌の材料を用いて、無菌条件下で製造されてもよい。こうして製造されたスポンジ状積層体は、滅菌処理を行わなくとも無菌状態で提供することができる。
癒着防止材は、癒着防止を必要とする対象に適用することにより使用される。好ましくは、癒着防止材は、通常、癒着防止効果を奏するのに必要な1週間程度、適用局所に滞留した後に吸収分解され、最終的には1~2カ月程度で代謝・排泄されてなくなるため、安全性に優れる。
また、好ましくは、癒着防止材のスポンジ積層体は、INTERCEED(商品名)と比較して、癒着防止対象が広範である。
本発明の癒着防止材を外科手術に関連した組織に適用する前に、あるいは同時に、あるいは後で、ストレプトマイシン、ペニシリン、トブラマイシン、アミカシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、およびアンホテリシンB等の抗生物質、アスピリン、非ステロイド性解熱鎮痛剤(NSAIDs)、アセトアミノフェン等の抗炎症薬等の併用薬を投与するようにしてもよい。これらの薬剤は本発明の癒着防止材に混入して用いてもよい。
スポンジ状積層体は多孔性で吸水力もあるため、例えば、無孔性のSeprafilm(商品名)に比べて、用時調製による薬物担持が容易である。薬剤溶液をスポンジに含浸させ、投与することで、腹腔、胸腔、心腔、くも膜下腔、漿膜腔(腹膜腔、胸膜腔、心膜腔)、関節腔等において、癒着防止と薬物の局所徐放が同時に達成できる。さらに溶解速度が異なる層に薬物を担持することにより、速い徐放速度と遅い徐放速度での薬物の徐放も可能となる。
アルギン酸積層スポンジを、以下のように作製した。
アルギン酸積層スポンジの調製に用いた各試薬は以下の通りである。
低エンドトキシンアルギン酸ナトリウムは、持田製薬株式会社から入手した。
・AL10:(Lot NO.5K12202),エンドトキシン量4EU/g。
・AL500:(Lot NO.BL150713-500),エンドトキシン量19EU/g。
塩化カルシウムは、和光純薬工業株式会社から入手した(商品コード:036-00485)。
35mm無処理ディッシュ(IWAKI社 商品コード1000-035)
マイクロピペット(Gilson社 ピペットマン(商品名))
純水製造装置(メルクミリポア社 Elix Essential UV5(商品名))
冷凍庫(SHARP社 SJ-56S(商品名))
凍結乾燥器(TAITEC社 VD-550R(商品名))
(1)溶液の調製
AL500を1.0wt%の濃度で純水に溶解させて、AL500溶液を調製した。同様に、AL10を1.0wt%の濃度で純水に溶解させて、AL10溶液を調製した。さらに、塩化カルシウムを純水に溶解させ、10mMおよび15mMの塩化カルシウム水溶液をそれぞれ調製した。
AL500溶液1.0mLおよび10mM塩化カルシウム水溶液1.0mLをマイクロピペットを使用して35mm無処理ディッシュに加え、ピペッティングによって均一になるように混合した。これを一晩静置し、ゲル化させた。ディッシュを冷凍庫に移し、-20℃で4時間凍結させた。
ディッシュを冷凍庫から取り出し、凍結したAL500層の上に、AL10溶液1.0mLおよび15mM塩化カルシウム水溶液1.0mLをマイクロピペットで加え、ピペッティングによって均一になるように混合した。これを再びディッシュを冷凍庫に移し、-20℃で4時間凍結させた。
凍結後のディッシュを凍結乾燥器にセットし、2晩凍結乾燥を行って、目的のアルギン酸積層スポンジを得た。
製造原料として用いたアルギン酸について、以下のGPC-MALS法により重量平均分子量を測定した。
試料に溶離液を加え溶解後、0.45μmメンブランフィルター濾過したものを測定溶液とした。
示差屈折率計:Optilab T-rEX
測定波長:658nm
測定温度:40℃
溶媒:200mM硝酸ナトリウム水溶液
試料濃度:0.5~2.5mg/mL(5濃度)
カラム:TSKgel GMPW-XL×2+G2500PW-XL(7.8mm I.D.×300mm×3本)
溶離液:200mM硝酸ナトリウム水溶液
流量:1.0mL/min.
濃度:0.05%
検出器:RI検出器、光散乱検出器(MALS)
カラム温度:40℃
注入量:200μL
AL10 : 55,000
AL500: 280,000
(電子線滅菌の照射線量が20kGyの場合)
AL10 :36,000
AL500:75,000
(電子線滅菌の照射線量が40kGyの場合)
AL10 :27,000
AL500:45,000
なお、後述の実施例6および7では、積層スポンジとして、非滅菌のものを用いた。
(1)スポンジの作製
以下の[試薬]に記載のアルギン酸を用い、AL100またはAL500を下層の原料として、AL10またはAL20を上層の原料として使用し、実施例1に記載の方法に準じて、AL10(上層)-AL100(下層)、AL20(上層)-AL100(下層)、AL20(上層)-AL500(下層)の組合せによる、各アルギン酸積層スポンジを作製した。
なお、以下では上層と下層の組合せを便宜的に「下層/上層」と表記することがある。この表記法によると、例えば、AL10(上層)-AL100(下層)の組合せは「AL100/AL10」、AL20(上層)-AL500(下層)の組合せは「AL500/AL20」と表記される。
・AL10:実施例1と同じ
・AL20:(Lot NO.BL150713-20),エンドトキシン量13EU/g。
・AL100:(Lot NO.5G17201),エンドトキシン量6EU/g。
・AL500:実施例1と同じ
また、スポンジ作製に用いたアルギン酸のうち、AL20およびAL100について、実施例1に記載の方法を用いて、GPC-MALS法により重量平均分子量を測定した。
[結果]
AL20 : 82,000
AL100: 170,000
(電子線滅菌の照射線量が20kGyの場合)
AL20 :46,000
AL100:63,000
(電子線滅菌の照射線量が40kGyの場合)
AL20 :33,000
AL100:40,000
AL500層をゲル化させる際に、10mM塩化カルシウムの代わりに10mMグルコン酸カルシウム(和光純薬工業株式会社製)を用いた以外は、実施例1の方法に準じて、アルギン酸積層スポンジを作製した。作製したスポンジは、後述の実施例3-3、実験群1に用いた。
下層に使用するアルギン酸として、実施例1-2で使用したAL100を用いた以外は、実施例1、工程(1)~(4)の方法にて、AL10(上層)-AL100(下層)のアルギン酸積層スポンジを作製した。得られたスポンジを、エチレンオキシドガスを用いて、常法にて滅菌した。得られたスポンジは、後述の実施例3-3、実験群4に用いた。
下層に使用するアルギン酸として、実施例1-2で使用したAL100を用いた以外は、実施例1、工程(1)の方法にて溶液を調製し、引続き、以下の(2)以降の手順によりアルギン酸積層スポンジを作製した。
(2)AL100層(下層)の調製
AL100溶液1.0mLおよび10mM塩化カルシウム水溶液1.0mLをマイクロピペットを使用して35mm無処理ディッシュに加え、ピペッティングによって均一になるように混合した。これを1~2時間静置し、ゲル化させた。
(3)AL10層(上層)の積層
ゲル化したAL100層の上に、AL10溶液1.0mLおよび15mM塩化カルシウム水溶液1.0mLをマイクロピペットで加え、ピペッティングによって均一になるように混合した。ディッシュを冷凍庫に移し、-20℃で4時間凍結させた。
(4)スポンジの作製
凍結後のディッシュを凍結乾燥器にセットし、2晩凍結乾燥を行って、目的のアルギン酸積層スポンジを得た。
(5)スポンジのプレス
上記(4)で得られたスポンジをプレス機(アズワン株式会社製、製品名AH-1T)にセットした。10MPaの圧力で室温にてスポンジをプレスし、5分間保持した。プレス後のスポンジを、電子線を用いて、常法にて滅菌した。得られたスポンジは、後述の実施例3-3、実験群5に用いた。
上層または下層が蛍光修飾された積層スポンジをそれぞれ作製し、溶解速度の測定を行った。具体的な方法を以下に示す。なお、蛍光標識試薬としてはFTSC(Fluorescein-5-Thiosemicarbazide)を使用し、アルギン酸の標識は常法により行った。
蛍光標識されたアルギン酸を用い、実施例1に記載の方法に準じて積層スポンジを作製した。
低エンドトキシンアルギン酸ナトリウムは、実施例1に記載の通りである。リン酸緩衝液は、リン酸二水素ナトリウム(和光純薬社、197-09705(商品名))、リン酸二水素カリウム(和光純薬社、166-04255(商品名))、塩化ナトリウム(和光純薬社、191-01665(商品名))、塩化カリウム(和光純薬社、166-17945(商品名))を用いて調製した。エチレンジアミン四酢酸ナトリウム(N001)はDojindo社から購入した。
直径8mm生検トレパン(Kai medical社 BP-80F(商品名))
96穴黒色マイクロプレート(Nunc社 137101(商品名))
蛍光プレートリーダー (Perkin Elmer社 ARVO X3(商品名))
まず、蛍光修飾された積層スポンジを直径8mmの生検トレパン(Kai medical社 BP-60F(商品名))で打ち抜いた。これを150mMリン酸緩衝液(pH7.5)10mL中に浸漬し、一定時間毎に浸漬液を200μLずつ回収した。回収した溶液を96穴プレートに移し、蛍光プレートリーダーによって蛍光強度を測定することで、溶解したアルギン酸量を定量化した。
積層スポンジの各層の溶解挙動の測定結果を、図2に示す。図2に示されているように、下層では、アルギン酸の1価金属塩の25±10重量%が1時間以内に溶出し、80±10重量%が4時間以内に溶出していた。一方、上層は、アルギン酸の1価金属塩の70±10重量%が1時間以内に溶出し、90±10重量%が4時間以内に溶出していた。また、上層のアルギン酸の1価金属塩の溶出量を100%としたときの、下層のアルギン酸の1価金属塩の溶出量の割合は、測定開始から1時間の時点で36%(50%未満)、2時間の時点で55%(70%未満)であった。
このように上層の溶解速度が、下層に比べて速いことが確認できた。例えば、腹腔内臓器の創傷に適用する場合、下層を創傷部側、上層を腹腔側に向けてアルギン酸スポンジを適用することで、下層は、創傷部に残留して創傷部の癒着を防止することができるとともに、上層は比較的速く溶解して創傷部から遠く離れた場所にも多数形成されるde novo癒着、例えば、腹腔内全般の癒着等を抑えることができると考えられる。
実施例2の方法に準じて、AL500/AL10の上層または下層が蛍光修飾された積層スポンジをそれぞれ作製し、以下の手順にて溶解速度の測定を行った。
[手順]
1)蛍光修飾された積層スポンジを直径8mmの生検トレパン(Kai medical社 BP-60F(商品名))で打ち抜いた。
2)アガロース(和光純薬工業株式会社、商品コード:010-08725)を熱湯に2重量%で溶解させ、室温まで冷却することでアガロースゲルを作製した。アガロースゲルを2cm×2cm角に切り取り、ガラスシャーレ上でリン酸緩衝液に浸漬し、湿潤させた。液面がアガロースゲル上面のわずかに下になるようにリン酸緩衝液(pH7.5)をガラスシャーレに加えた。
3)アガロースゲル上に1)のスポンジを静置し、一定時間ごとにリン酸緩衝液を採取し、蛍光強度を測定した。
[結果]
積層スポンジの各層の溶解挙動の測定結果を、表1および図3に示す。数値は試験開始前のアルギン酸の重量を100重量%としたときの、各時点での溶出アルギン酸の重量%を示す。
ラット一部肝切除モデルを用いて、癒着の形成を評価した。ラット一部肝切除モデルは、重篤な炎症を惹起し高い強度を有する癒着の形成を再現性高く観察できるモデルである(Shimizu A et al.,(2014)Surg Today.(44):314-323)。具体的には、以下のように癒着の形成を評価した。
低エンドトキシンアルギン酸ナトリウムは、実施例1に記載の通りである。
Seprafilm(商品名)は、カルボキシメチルセルロース(CMC)とヒアルロン酸を混合したシート状材料であり、Genzyme GmbHより入手した。
Interceed(商品名)は、再生酸化セルロースシートであり、Johnson&Johnsonより入手した。
Control群(n=8):left lateral lobeの辺縁を3cm計測し切離し凝固止血した(無処置対照群)。
AL500/AL10積層スポンジ群(n=8):実施例1で作製したアルギン酸スポンジを癒着防止材として適用した。
Seprafilm群(n=8):2×3cmのSeprafilmを癒着防止材として適用した。
Interceed群(n=8):2×3cmのInterceedを癒着防止材として適用した。
ペントバルビタール35mg/kg相当の腹腔投与によりラットに麻酔をかけ、体重を電子天秤で測定した。その後、ラットを、正中切開で開腹した。次に、腹壁をピンセットでつまんで持ち上げ、腹壁を切断した。肝切除を行う前準備として、left lateral lobeを腹腔の奥から引き出し、その下にガーゼを敷いた。次に、実際の肝切除に移った。具体的には、ものさしを肝臓にあて、離断面が3cmになる位置を探し、その両端に、バイポーラで焼灼し、印をつけた。印をつけた2点の間を直線的に切除していった。Control群では、この後すぐ閉腹して処置を終了した。癒着防止材を適用する群では、この後、ガーゼを除去したのちに癒着防止材を適用した。次に、腹壁と皮膚を二回に分けて縫合し閉腹した。腹壁を縫合する際には生分解糸を用い、皮膚を縫合する際には非吸収糸を用いた。閉腹から一週間後に、ラットを過剰量の麻酔として約2mLのペントバルビタールの過剰投与によって安楽死させ、体重を電子天秤で測定した。その後、再び開腹し、以下の通り癒着を評価した。脾臓重量は、腹腔から脾臓を摘出した後、電子天秤で測定した。
以下の通り、癒着の評価を行った。
上記[手順]に記載した肝離断面について、以下の(a)、(b)の評価を行った。
(a)癒着グレード
癒着の評価は、目視により行った。肝離断面について、下記スコアリング法に基づき癒着スコアをつけた。
癒着スコア:
Grade0:癒着が全く見られない。
Grade1:自重により剥離する程度の癒着(生理的な癒着)
Grade2:ピンセットによる剥離が可能な癒着(鈍的な癒着)
Grade3:ハサミ、メスを使わないと剥離できない癒着(鋭的な癒着)
3cmの肝離断面のうち、癒着が形成された幅を定規(ものさし)にて計測し、長さ(単位:mm)で表した(従って、離断面の最大Extentは30mmとなる)。
肝離断面以外、具体的には肝表面、大網、腹膜、小腸、正中創直下、等について、以下の(a)、(b)の評価を行った。非離断面の癒着は、de novo癒着の指標となる。
(a)癒着グレード
癒着の評価は、目視により行った。肝離断面以外の部位について、下記スコアリング法に基づき癒着スコアをつけた。部位は特定せず、認められた癒着スコアの最大値を、その試験動物の癒着スコアとして記録した。
癒着スコア:
Grade0:癒着が全く見られない。
Grade1:自重により剥離する程度の癒着(生理的な癒着)
Grade2:ピンセットによる剥離が可能な癒着(鈍的な癒着)
Grade3:ハサミ、メスを使わないと剥離できない癒着(鋭的な癒着)
肝離断面以外の部位について、癒着が形成された組織部分について、定規(ものさし)にて、その接着している幅を計測し、長さ(単位:mm)で表した。上記(2)(a)と同様、部位は特定せず、認められた癒着が形成された幅の最大値を、その試験動物の癒着Extentとして記録した。
癒着の評価の結果を図4(離断面)および図5(非離断面)に示した。また、体重測定および脾臓重量測定の結果を図6に示した。
離断面においては、各群とも、Control群に比べて癒着が抑制される傾向が認められた(図4(A)~(C))。
非離断面において、AL500/AL10積層スポンジ群での顕著な癒着防止効果が確認された(図5(A)~(C))。陽性対照として用いたSeprafilm(商品名)およびInterceed(商品名)では癒着防止効果は認められず、Control群に比べて癒着が増悪する傾向が認められた。一方、AL500/AL10積層スポンジ群では顕著な癒着防止効果が確認された。
体重および脾臓重量については、Control群、Seprafilm群、Interceed群、およびAL500/AL10積層スポンジ群間で有意差はなく、AL500/AL10積層スポンジを適用しても、生体に悪影響がないことが確認された(図6(A)および(B))。
ここで、実施例における有意差検定は、特に断りがない限りStudent’s t-testによって行い、Gradeの評価のみMann-Whitney U testで行った。
肝臓の離断の際にペアン鉗子を用いたことを除き、実施例3と同じ材料、実験群、手順および癒着の評価方法を用いて、肝離断面と非離断面の癒着グレードと癒着Extentを評価した。
癒着の評価の結果を図7(離断面)および図8(非離断面)に示した。また、体重測定および脾臓重量測定の結果を図9に示した。
離断面においては、各群(n=8)とも、Control群(n=8)に比べて癒着が抑制される傾向が認められ、AL500/AL10積層スポンジ群においては、Control群との間に統計的に有意な差が認められた(図7(A)~(C))。
非離断面において、AL500/AL10積層スポンジ群での顕著な癒着防止効果が確認された(図8(A)~(C))。陽性対照として用いたSeprafilm(商品名)については癒着防止効果が認められず、Interceed(商品名)についてはControl群に比べて癒着が増悪する傾向が認められた。一方、AL500/AL10積層スポンジ群では顕著な癒着防止効果が確認された。
体重および脾臓重量については、Control群、Seprafilm群、Interceed群、およびAL500/AL10積層スポンジ群間で有意差はなく、AL500/AL10積層スポンジを適用しても、生体に悪影響がないことが確認された(図9(A)および(B))。
実施例3-2と同じ方法を用いて、以下の実験群について、肝離断面と非離断面の癒着グレードと癒着Extentを評価した。
実験群1:AL500/AL10 グルコン酸カルシウムで硬化 [実施例1-3で作製]
実験群2:AL500/AL10 プレス [実施例6(1-2)で作製]
実験群3:AL100/AL10 電子線滅菌 [実施例1-2で作製]
実験群4:AL100/AL10 EOG滅菌 [実施例1-4で作製]
実験群5:AL100/AL10 1段凍結 プレス [実施例1-5で作製]
なお、無処置対照群、Seprafilm群、AL500/AL10[実施例1で作製]について別途実施し、上記実験群とこれらの結果とを比較した。
[結果]
実験群1~5とも、実施例1で作製した積層スポンジと同様の効果が得られる。
アルギン酸積層スポンジの各層について蛍光標識による可視化の試験を以下のように行った。
低エンドトキシンアルギン酸ナトリウムは、実施例1に記載の通りである。
ハンディー紫外線ランプ(UVP社 UVGL-58(商品名))
ラットの肝臓切除の手順は、実施例3に記載の通りである。作製された肝臓の離断面に、第1の層または第2の層が蛍光標識されたアルギン酸スポンジを貼付した。貼付には、材料の残存を観察しやすくするために、実施例1よりも多い4.0mg/cm2のアルギン酸を使用した積層スポンジを実施例1の方法に準じて作製し、使用した。その後、実施例3に記載の手順で閉腹し、1週間後に開腹を行った。露出した腹腔内にランプで紫外線を照射し、蛍光標識されたアルギン酸の腹腔内分布を可視化した。
また、AL500層は、一部腹壁などでも見られるものの、離断面からの蛍光がより際立って観察された。このことから、スポンジ状積層体の第1の層はアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が比較的高いため、離断面に留まって物理的なバリアとなることが示唆された。
アルギン酸積層スポンジの曲面への貼付追従性を示すために、巻き付け試験を以下のように行った。
低エンドトキシンアルギン酸ナトリウムは、実施例1に記載の通りである。寒天(010-08725)は、和光純薬から購入した。
寒天をお湯に溶解した後、円柱状の型に流し込んで冷やし、直径20mmのアガロースゲル円柱を作製した。これをモデル管状臓器とし、実施例1で作製したスポンジを巻き付けることで、巻き付けの追従性を検証した。
アルギン酸積層スポンジのプレス、プレス後の厚みの測定および膨潤試験を以下のように行った。
アルギン酸積層スポンジ(AL10(上層)-AL500(下層))は、実施例1に記載の通りである。
(1)プレスおよびプレス後の厚みの測定
(1-1)手動プレス
アルギン酸積層スポンジを平面上に静置し、手のひらで、アクリル定規を介してスポンジ全体に均一に圧がかかるよう押圧した。押圧前後のスポンジの厚みを電子ノギスにて計測し、平均値を算出した(n=4)。
アルギン酸積層スポンジをプレス機(アズワン株式会社製、製品名AH-1T)にセットした。10MPaの圧力で室温にてアルギン酸積層スポンジをプレスし、5分間保持した。プレス後のスポンジの厚みを電子ノギスで測定し、平均値を算出した(n=4)。
実施例2-2と同様にアガロースゲル/ガラスシャーレを準備した。なお、アガロースゲルは純水で湿潤させた。1cm×1cm角に切り取ったプレス前後のアルギン酸積層スポンジをアガロースゲル上に静置した。一定時間毎に横方向から撮影し、撮影した画像からスポンジの厚みを算出し、膨潤に及ぼすプレスの影響の有無を確認した(プレス前:n=3;プレス後:n=3。なお、膨潤試験では、プレスしたアルギン酸積層スポンジとして、プレス機によりプレスしたものを用いた。
プレス後の厚みの測定結果を表2に示す。
このことから、スポンジをプレスすることによりコンパクトにまとめることができるので、内視鏡手術においてトロッカー等を介して癒着防止材であるスポンジを患部に比較的容易に適用できることが示唆された。
さらに、患部に適用されたプレスしたスポンジは、患部に存在する、または患部に適用される水分を吸収して、厚みが回復することも示唆された。厚みが回復することにより、積層スポンジとしての機能を発揮し得る。
アルギン酸積層スポンジおよびSeprafilm(商品名)について、吸水時の脆弱性を評価するために以下の試験を行った。
アルギン酸積層スポンジは実施例1に、Seprafilm(商品名)は実施例3に記載の通りである。また、アルギン酸積層スポンジのプレス有りものとして、実施例6に記載のプレス機によりプレスしたものを用いた。
アルギン酸積層スポンジおよびSeprafilm(商品名)から1cm×2cmの試験片を作製した。試験片の片端1cm×1cmに両面テープを貼付し、試験台の端に把持した。これにより他方の端1cm×1cmが中空に出るように試験片を固定した。
各試験片に対し、霧吹きを用いて純水を5回噴霧した。試験片が湿潤に伴って下方に折れ曲がっていく過程を動画で撮影した。
得られた動画の画像解析によって、試験片先端の試験台からの高さと角度の両方を算出し、その時間変化をプロットした。
結果を図11に示した。
高さについては、アルギン酸積層スポンジは、霧吹き後50秒まで高さの低下は2mm以内であり、90秒後においても3mm程度であった(図11(A))。また、プレス有りのアルギン酸積層スポンジも、霧吹き後90秒後においても高さの低下は9mm程度であった。一方、Seprafilm(商品名)は、霧吹き直後から著しい高さの低下が認められた(図11(A))。角度についても、高さの結果と同様の結果であった(図11(B))。
このことから、アルギン酸積層スポンジは、プレスの有無に関わらず吸水状態にあっても暫くはその形状、強度が維持されることが示唆された。このため、癒着防止材として患部に適用した際に、貼付位置を調整して貼り直すことが可能である、あるいは、内視鏡手術の際、トロッカー等を介して癒着防止材であるスポンジを患部に適用する際に、トロッカー内の水分を吸収して上手く広げることができない等の事態が避けられる、などの利点がある。なお、アルギン酸積層スポンジが、患部、あるいはそのモデル系に対して好適な圧着性を有することは、実施例3、実施例5等において確認している。
アルギン酸積層スポンジの機械的特性を評価するために引張試験機による測定を行った。
[材料]
プレス無しアルギン酸積層スポンジとして実施例1で作製したものを、プレス有りアルギン酸積層スポンジとして実施例6に記載のプレス機によりプレスしたものをそれぞれ用いた。
[手順]
各スポンジからJIS K6251の引張8号形ダンベル状切片(幅10mm)を作製した。切片を引張試験機(CR-3000EX-S、株式会社サン科学製)に取り付け、stress-strain曲線を得た。得られたstress-strain曲線からヤング率および破断強度を求めた。
測定結果は以下のとおりであった(平均±標準誤差)。
ヤング率:
AL500/AL10スポンジ(プレスなし) 0.79±0.164 MPa
AL500/AL10スポンジ(プレスあり) 14.88±1.434 MPa
破断強度:
AL500/AL10スポンジ(プレスなし) 51.55±6.391 kPa
AL500/AL10スポンジ(プレスあり) 272.80±61.892 kPa
上記結果が示すとおり、スポンジをプレスすることで、ヤング率および破断強度が増大し、スポンジが強靭化された。
実施例8に記載された方法に準じて、各処方のヤング率および破断強度を求めた(n=4)。
[結果]
測定結果は以下のとおりであった。作製したアルギン酸積層スポンジは、いずれも癒着防止材に適した強度および柔軟性を有していた。
アルギン酸積層スポンジの吸水性を評価するために以下の試験を行った。
[材料]
アガロースゲル/ガラスシャーレは実施例2-2と同様である。
測定対象スポンジとして、AL500/AL10(実施例1)、AL100/AL10(実施例1-2)およびAL500G/AL10(実施例1-3)を用いた。いずれの測定対象スポンジも、電子線滅菌(20kGy)したものを用いた。各スポンジを直径8mmの生検トレパン(Kai medical社 BP-60F(商品名))で打ち抜き、試験に使用した。
[手順]
リン酸緩衝生理食塩水を満たしたシャーレ上に静置したアガロースゲル上にメッシュを置き、さらにその上に測定対象スポンジを静置し、6時間までのスポンジ重量変化(%)を測定した。
[結果]
測定結果を図12に示す。いずれのスポンジも良好な吸水性を示した。なお、AL100/AL10が他のスポンジより重量増加率が低いのは、復水とスポンジ溶解が同時進行したことによるものである。
2 第1の層
3 第2の層
4 スポンジ状積層体
Claims (17)
- 少なくとも一部が硬化剤で架橋された、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩のスポンジ状の第1の層および第2の層を含み、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が30,000~300,000であり、第2の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が1,000~200,000であり、前記重量平均分子量が脱架橋処理後にGPC-MALS法により測定したものであり、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が、第2の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量よりも高く、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩の第1の層と第2の層での使用量の合計が、0.1mg/cm 2 ~10mg/cm 2 の範囲であり、第1の層と第2の層のアルギン酸の1価金属塩のエンドトキシン含有量が、500EU/g以下である、生体に適用可能なスポンジ状積層体を含む、癒着防止材。
- 低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩の第1の層と第2の層での使用量の合計が、0.1mg/cm2~3mg/cm2の範囲である、請求項1に記載の癒着防止材。
- 第1の層と第2の層のアルギン酸の1価金属塩が、アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カリウムである、請求項1または2に記載の癒着防止材。
- 第1の層と第2の層の硬化剤が、CaCl2、CaSO4、ZnCl2、SrCl2、FeCl3、BaCl2、CaHPO4、グルコン酸カルシウム、シュウ酸カルシウムおよび乳酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1つの金属イオン化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の癒着防止材。
- 第1の層を創傷部側の表面に向けて適用するための、請求項1~4のいずれか1項に記載の癒着防止材。
- 以下の1以上の特性を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の癒着防止材。
(1)JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定したヤング率が0.3~300MPaである。
(2)JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定した破断強度が5~5000kPaである。
(3)JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定したスポンジ状積層体の破断強度対ヤング率比が2~50である。
(4)リン酸緩衝生理食塩水で浸漬したアガロースゲルに、スポンジ状積層体を2~6時間接触させたときの、スポンジ状積層体の重量増加率が、リン酸緩衝生理食塩水と接触させる前のスポンジ状積層体の重量を100%とした場合に、200~50000%である。
(5)アガロースゲルを介したpH7.5のリン酸緩衝液に対するアルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第2の層のアルギン酸の1価金属塩の溶出量を100%としたときの、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の溶出量の割合が、測定開始から2日目以降において30~70%である。
(6)アガロースゲルを介したpH7.5のリン酸緩衝液に対するアルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第1の層は、アルギン酸の1価金属塩の約15±5重量%が2日以内に溶出し、約25±10重量%が8日以内に溶出するものであり、第2の層は、アルギン酸の1価金属塩の約30±8重量%が2日以内に溶出し、約60±10重量%が8日以内に溶出するものである。 - スポンジ状積層体がプレスしたものである、請求項1~6のいずれか1項に記載の癒着防止材。
- スポンジ状積層体が、電子線滅菌、γ線滅菌、エチレンオキシドガス滅菌から選択される1つ以上の処理を受けたものである、請求項1~7のいずれか1項に記載の癒着防止材。
- 以下の工程を含む、生体に適用可能なスポンジ状積層体を含む癒着防止材の製造方法。
(1)重量平均分子量30,000~300,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化させる工程、
(2)(1)で得られたアルギン酸の1価金属塩の上で、重量平均分子量1,000~200,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化して積層体を得る工程、
(3)得られた積層体を凍結乾燥してスポンジ状積層体を得る工程、
ここで、前記分子量がGPC-MALS法により測定したものであり、
前記スポンジ状積層体は、重量平均分子量30,000~300,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第1の層と、重量平均分子量1,000~200,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第2の層とを含み、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が第2の層よりも高く、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩の第1の層と第2の層での使用量の合計が、0.1mg/cm 2 ~10mg/cm 2 の範囲であり、第1の層と第2の層のアルギン酸の1価金属塩のエンドトキシン含有量が、500EU/g以下である。 - 硬化剤が、CaCl2、CaSO4、ZnCl2、SrCl2、FeCl3、BaCl2、CaHPO4、グルコン酸カルシウム、シュウ酸カルシウムおよび乳酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1つの金属イオン化合物である、請求項9に記載の方法。
- (3)で得られたスポンジ状積層体に、電子線滅菌、γ線滅菌、エチレンオキシドガス滅菌から選択される1つ以上の処理を行う工程をさらに含む、請求項9または10に記載の方法。
- 前記癒着防止材が、第1の層を創傷部側の表面に向けて適用するためのものである、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
- 前記スポンジ状積層体が、以下の1以上の特性を有する、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
(1)JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定したヤング率が0.3~300MPaである。
(2)JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定した破断強度が5~5000kPaである。
(3)JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定したスポンジ状積層体の破断強度対ヤング率比が2~50である。
(4)リン酸緩衝生理食塩水で浸漬したアガロースゲルに、スポンジ状積層体を2~6時間接触させたときの、スポンジ状積層体の重量増加率が、リン酸緩衝生理食塩水と接触させる前のスポンジ状積層体の重量を100%とした場合に、200~50000%である。
(5)アガロースゲルを介したpH7.5のリン酸緩衝液に対するアルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第2の層のアルギン酸の1価金属塩の溶出量を100%としたときの、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の溶出量の割合が、測定開始から2日目以降において30~70%である。
(6)アガロースゲルを介したpH7.5のリン酸緩衝液に対するアルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第1の層は、アルギン酸の1価金属塩の約15±5重量%が2日以内に溶出し、約25±10重量%が8日以内に溶出するものであり、第2の層は、アルギン酸の1価金属塩の約30±8重量%が2日以内に溶出し、約60±10重量%が8日以内に溶出するものである。 - 以下の工程(1)~(3)を含む、生体に適用可能なスポンジ状積層体の製造方法。
(1)重量平均分子量30,000~300,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化させる工程、
(2)(1)で得られたアルギン酸の1価金属塩の上で、重量平均分子量1,000~200,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を硬化剤により硬化して積層体を得る工程、
(3)得られた積層体を凍結乾燥してスポンジ状積層体を得る工程、
ここで、前記分子量がGPC-MALS法により測定したものであり、
前記スポンジ状積層体は、重量平均分子量30,000~300,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第1の層と、重量平均分子量1,000~200,000の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含むスポンジ状の第2の層とを含み、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の重量平均分子量が第2の層よりも高く、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩の第1の層と第2の層での使用量の合計が、0.1mg/cm 2 ~10mg/cm 2 の範囲であり、第1の層と第2の層のアルギン酸の1価金属塩のエンドトキシン含有量が、500EU/g以下である。 - 前記スポンジ状積層体は、癒着防止材として用いられるものである、請求項14のスポンジ状積層体の製造方法。
- 前記癒着防止材が、第1の層を創傷部側の表面に向けて適用するためのものである、請
求項15に記載のスポンジ状積層体の製造方法。 - 前記スポンジ状積層体が、以下の1以上の特性を有する、請求項14~16のいずれか1項に記載のスポンジ状積層体の製造方法。
(1)JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定したヤング率が0.3~300MPaである。
(2)JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定した破断強度が5~5000kPaである。
(3)JIS K6251の引張8号形の切片を引張試験機にかけ、得られたstress-strain曲線に基づいて決定したスポンジ状積層体の破断強度対ヤング率比が2~50である。
(4)リン酸緩衝生理食塩水で浸漬したアガロースゲルに、スポンジ状積層体を2~6時間接触させたときの、スポンジ状積層体の重量増加率が、リン酸緩衝生理食塩水と接触させる前のスポンジ状積層体の重量を100%とした場合に、200~50000%である。
(5)アガロースゲルを介したpH7.5のリン酸緩衝液に対するアルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第2の層のアルギン酸の1価金属塩の溶出量を100%としたときの、第1の層のアルギン酸の1価金属塩の溶出量の割合が、測定開始から2日目以降において30~70%である。
(6)アガロースゲルを介したpH7.5のリン酸緩衝液に対するアルギン酸の1価金属塩の溶出を指標とする溶解試験において、第1の層は、アルギン酸の1価金属塩の約15±5重量%が2日以内に溶出し、約25±10重量%が8日以内に溶出するものであり、第2の層は、アルギン酸の1価金属塩の約30±8重量%が2日以内に溶出し、約60±10重量%が8日以内に溶出するものである。
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