JP2015535192A - 圧迫不可能な出血時に用いる組織シーラントの改良 - Google Patents

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Abstract

ClotFoamは、中等度から重度の出血に関して圧迫不可能な出血の場合に用いられるシーラントおよび止血剤である。ClotFoamは、手術室で腹腔鏡開口を通して適用可能であり、或いは開腹処置で裂傷組織上に直接適用可能であり、或いは腔内の重度の外傷または手術の後に手術室外部で混合針および/または噴霧方法によって適用可能である。その架橋技術により、止血に求められるフィブリンシーラントを運搬する接着性足場が生成される。ClotFoamはフォームを産生し、フォームは体腔全体に広がり、裂傷組織に到達して組織を封止し凝固カスケードを促進する。組成物は生体適合性であり、かつ非炎症性である。本発明は、pHの変化により重合されるフィブリンモノマーを、活性シーリング成分として用いる。フォームの粘弾特性とフィブリン血栓の急速形成とにより、シーラントは血液に押し流されることなく投与部位に留まることができる。

Description

本発明(ClotFoam(登録商標)として商標登録された)は、一般に接着シーラント組成物および止血剤に関する。接着シーラント組成物および止血剤は、インビボ(in vivo)で圧迫、縫合またはステープルを用いずに組織を結合または封止するために使用することができる。接着および封止の能力は、粘弾特性(例えばゲル強度)と、包含されるフィブリン成分の凝固特性との結果である。本発明は特に4種類の成分溶液に関する。4種類の成分溶液は、組織に投与される際に混合され、それから組織を結合するために、組織を封止して腔内出血または内出血を防止または制御するために、インビボで硬化する。これは、米国特許第8,313,211号に開示された組成物の改良である。
外傷は、世界的に疾病と死亡の原因になることが多い。米国内で病院に搬送された外傷症例のうち40%超は、交通事故が原因である。出血は、通常戦争の戦場における死亡の第一要因である(1)。このような死亡は、負傷者が治療施設に移送される前に戦場で発生することが圧倒的に多い(2)。イラクおよびアフガニスタンでの戦闘死亡の50%近くと、米国内の一般の外傷死亡の最大80%が、出血の制御不良によるものである(3)。
この群の主な死因は出血(50%)と神経外傷(36%)であり、その他の原因は壊滅的な複数の負傷である。負傷者が生き延びて医療施設まで移送されたとしても、出血がその後の死と合併症の主な原因であることに変わりはない(2)。腹部の損傷は、特に若年成人において、恐ろしい問題を引き起こす(4〜8)。肝臓と脾臓は、腹部内で最も大きな実質臓器であるので、損傷を受ける頻度が最も高い(9、10)。
現在、肝臓からの大量出血は、プリングル法(Pringle's maneuver)または創傷のパッキングによって制御される。これらの方法はどちらも外科的処置を必要とし、戦場や事故現場では適用することができない(11、12)。脾臓の外傷は、微小な損傷でも大量出血を引き起こすおそれがある(10〜12)。早期に効果的に出血を制御すれば、他のどの手段よりも多くの命を救うことができる。しかし、現在の腔内出血用の止血剤はどれも、手術室で腹腔を大きく開いた状態で使用されるように設計されており(13)、事故現場や戦場での緊急時に使用されるように設計されていないので、出血が致命的なものになってしまう。また、腹腔鏡下手術や脳手術などのいくつかの種類の手術は、現在は圧迫を必要とする内出血も同様に、より侵襲性の低い方法で治療できる可能性がある。
従来の解決法と制約 組織に接着可能な生体接着剤が知られている。合成接着剤は、一般に、血管や肺の密封と、皮膚切開部の端の「接着」に用いられる。このような接着剤は、一般には創傷の瘢痕化の後に、生分解、吸収、またはかさぶたという形での単純な脱離によって除去される。組織接着剤の製剤について様々な技術が開発されてきた。そのような技術には、合成起源のもの、例えばシアノアクリレート(2‐ブチルシアノアクリレート、2‐オクチルシアノアクリレート)ベースまたは合成ポリマーベースの接着剤もあれば、止血特性を更に有し出血制御によって作用する生体物質(例えばコラーゲンやフィブリン)を含むものもある。
シーラント(特にフィブリンシーラント)は、その止血特性および出血特製の結果として、重合するときにヒト組織に接着することができるので、20年以上にわたって、ほとんどの外科において失血および術後出血の抑制の際に広く用いられている(14、15、16)。このような化合物は、縫合またはステープル留めされた創傷を封止または補強する際に用いられ、また、負傷領域を圧迫しながら用いることもできる。フィブリンシーラントは、凝固カスケードの最終段階を模倣する生体接着剤である(13)。
利用可能な市販品がいくつかある(Floseal(登録商標)、Gelfoam(登録商標)、Evicel(登録商標))(16〜18)。しかしながら、これらの製品にはかなりの制約があり、救急医療(外傷)および腹腔鏡下手術での幅広い利用が阻まれてきた。腔内出血用の既存の止血剤は、どれも手術室で使用されるように設計されており、緊急時に(例えば事故現場または戦場で)使用されるようには設計されていない。また、どれも圧迫を必要とする。圧迫不可能な出血のための組織接着剤およびシーラント組成物の開発および/または使用に見られる主な制約のひとつは、組織に対して十分な強さの結合を形成することができないこと、また、適用法を開発できないことである。したがって、組織接着剤およびシーラントは、好ましい性能に必要となる組織への結合強度を低減するために、圧迫方法、縫合および/またはステープルと組み合わせて用いられる必要がある。しかしながら、縫合および/またはステープルの使用が望ましくない、不適切または不可能な状況が多々ある。接着剤マトリックスが組織と強い界面または結合を形成する上での問題は、おそらくいくつかの因子が原因である。すなわち、腔内の自由血液(free blood)または血流により、凝固を促進する化合物が出血源に到達することができない。また、組織の様々なタンパク質は、投与時および/または硬化中・硬化後の、組織接着剤またはシーラントの成分との非共有結合性および/または共有結合性の相互作用を容易に受け入れない。結果として、大部分の組織と接着剤・シーラント系とでは、一般に、架橋接着剤マトリックスと1以上の組織関連タンパク質(コラーゲン、アクチン、ミオシン等)との間の界面で、不具合が発生すると考えられる(19、20)。別の重大な制約は、接着剤を輸送する支持体が生分解されるまで体内に残存し、接着剤を手術直後に洗い流したり除去したりできないということである。第3の重大な制約は、有害事象を引き起こす炎症反応であり、これは製剤に含まれる化合物の一部によって引き起こされる。
代替的な本発明のアプローチ ClotFoamは、手術室外で、重度の腔内外傷からの出血を止めるのに必要な圧迫および/または縫合を行わずに、重大な炎症反応を引き起こすことなく、止血を達成できる薬剤である。非圧迫技術は、手術室内でも圧迫を適用できない場合(腹腔鏡下手術、神経系外科手術等)に有用である。血流に対抗するために、接着剤マトリックスは、血栓を形成するために裂傷箇所に留まりながら、数秒のうちに強力な界面を形成し、血流のさなかで組織と結合しなければならない。
ヒト組織に接着するという本薬剤の能力は、フィブリンシーラントを運搬する足場の内部構造に関係している。フィブリンシーラントは必須の粘弾特性および接着特性につながるが、これらは重合する際にゲル化成分によってもたらされる。ヒドロゲルが急速に形成されることと、接着性ゲル(出血している裂傷組織上に機能的なフィブリン血栓を成長させるのに必要な成分を含有する)を形成する際の重合時間が最小限であることは、臨床的に重要である。組織とシーラントが即座に接着することにより、接触した途端にシーラントが機能し、血液に洗い流されたり標的組織の動きによってずれたりせずに投与部位に留まることが確実になることが望ましい(21)。
我々のアプローチにおいて、これらの機能は、a)非共有結合性結合によって組織に結合される3次元の架橋化学ポリマーネットワークのインサイチュ(in situ)生成と、b)15日以内に回復できない重大な炎症反応を引き起こすことなく裂傷組織および湿潤表面に付着する粘着性の高いマトリックスを産生するゲル化成分によって増進される、フォームの粘弾特性と、c)カルシウム非依存性トランスグルタミナーゼACTIVA(登録商標)によって安定化される強固なフィブリン血栓の即時形成と、によって満たされる。粘着性その他の粘弾特性は、大量出血の中で血栓を形成し止血を達成するフィブリンポリマーの能力に大いに寄与する。
組成物 ClotFoamは溶液中にフィブリンモノマーを含む。フィブリンモノマーは、特許文献1に記載のように透析法によってもたらされるpH変化時にすぐに重合することができ、ヒドロゲル足場に組み込まれる。足場はカルシウム非依存性トランスグルタミナーゼ(ACTIVA)存在下で架橋され、フィブリンポリマーは、ACTIVAと血中に存在する活性化第XIII因子との両方によって架橋され、α−αダイマーおよびγ‐γダイマーを形成する。両方のポリマー(フィブリンおよび足場)は、投与装置(図1)により混合されインサイチュで架橋されたときに、3つの目的または機能、すなわちa)腹腔その他の体腔における薬剤の非侵襲投与および散布と、b)血流を防ぐための裂傷または創傷組織に対する接着および圧迫と、c)フィブリン血栓を産生し凝固カスケードを刺激するために、必要な成分を創傷上で維持することと、を満たす。
足場は“構造”タンパク質としてゼラチンを用い、ゼラチンは、α−ガラクトシダーゼ分解カラギーナン、硫酸化アルギン酸、ヒアルロン酸塩およびヒアルロン酸からなる群から選択される非炎症性のゲル強化剤または促進剤の存在下で、ポリアクリル酸(56.0%以上68.0%以下のカルボン酸を含有するスクロースのアリルエーテルと架橋され(カルボマーホモポリマー)、中和された0.5%水分散液の粘性は30,500〜39,400センチポイズである)およびACTIVA(登録商標)(カルシウム非依存性トランスグルタミナーゼ)と架橋して、フィブリンモノマーを運搬するのに理想的であり、フィブリンモノマーを重合させるためにそのpHを中和するのに理想的な特定の粘弾特性を達成する(21、22)。フィブリンは、成分の混合によって重合されるとき(図2および図4)、損傷部位にクリティカルな仮のマトリックスをもたらす(23)。
キサンタンガム等の多くの“ガム”によって望ましい粘性またはゲル強度を達成することができる一方、このようなガムの分子構造に含まれる電荷と炎症誘発効果とにより、非炎症性のゲル強化剤の選択は、α−ガラクトシダーゼ、アルギン酸塩またはヒアルロン酸塩による処理で炎症特性を喪失したカラギーナンに限定される。他の粘性剤はすべて、止血をもたらす粘弾特性の達成の役に立つ効果がないことが証明されている。
非侵襲性の投与および散布は、成分が混合された時にフォームが生成されることに基づく。フォームは、注入されると体腔全体に広がり、裂傷組織に到達してフィブリン血栓を形成する。既存のゲルとの他の重要な違いとして、提案する接着剤は、“修飾”カラギーナン(硫酸化多糖類)スクロースもしくはアルギン酸塩、またはヒアルロン酸塩もしくはヒアルロン酸に加えて、架橋構造タンパク質として、硬骨魚類ゲル、ゼラチンタイプA、ヒト血清アルブミン(HSA、タンパク質)、カルボマー934(パーアリル(perallyl)スクロースと架橋されるポリアクリル酸)、カルシウム非依存性架橋触媒(ACTIVA)および代替的な材料(例えば多糖類、ポリビニルピロリドン、MgCl2)を用いて、液体‐ゲル状態および粘性を適宜変更するより良好で“知的な”架橋化学を提供する。
マトリックスが止血を達成する能力は、フィブリン自体の形成だけでなく、フィブリン、酵素前駆体、凝固因子、酵素阻害物質および細胞受容体の特異的結合部位間の相互作用にも依存し、同じように重要なことに、フォームの分布および粘弾付着特性のダイナミクスにも依存する(24、25)。これらの因子の作用を促進または改善することにより、腹腔、頭蓋腔および軟部組織内の脾臓、肝臓その他の実質臓器における実質の出血を止めることのできる強固な血栓を産生することができる。各要素は、レオロジー特性(g’およびG”)によって計測される、フィブリン血栓成分の支持強度を最大化するように構成される。足場のゲル化時間またはほぼ即時のゲル化と、支持ポリマーの貯蔵エネルギー(g´)によって測定されるゲル強度と、湿組織で接触接着を維持する能力と、フィブリンモノマーの急速重合および安定化(ACTIVA存在下での共有結合性結合の形成)とは、シーラントが血液に洗い流されたり標的組織の動きによってずれたりせずに投与部位に留まれるようにしながら、血栓を創傷上に堆積するという薬剤の能力の中心となる(19)。高い引張強度と接着強度(図4)は、薬剤によって産生されるゼラチン‐フィブリンポリマーネットワークを特徴付ける機械的特性であり、シーリングの成功に必須である(29)。血液凝固条件下において、ACTIVAは、Ca(2+)、Mg++およびZn++と同様に、共有結合性結合によってフィブリン血栓を安定化させることで、このプロセスに寄与する(24)。
重要な特質 重合/接着 ゲルフォームは、スクロース、金属イオンおよびカルシウム非依存性トランスグルタミナーゼの存在下でのゼラチン鎖、血清アルブミンおよびカルボマー934の共有結合性架橋の結果として、形成される(24)。ゲルは、溶液中のフィブリンモノマーの重合を運搬および支持し、これは投与1分以内にCa++およびACTIVAによってフィブリン血栓へと安定化される。ゲル化特性は、α−ガラクトシダーゼ処理カラギーナン、アルギン酸、ヒアルロン酸塩およびヒアルロン酸からなる群から選択される非炎症性粘性剤によって、強化されることが好ましい。血栓は機械的に安定であり、足場に良好に組み込まれ[25]、非架橋血栓[26]または他のフィブリンシーラントと比較して、プラスミンによる分解に対して抵抗性が高い。足場の成分はACTIVAと共に、フィブリン促進インテグリンクラスター形成のaCドメインのトランスグルタミナーゼ介在オリゴマー形成を促進し、結果として細胞接着および拡散を高め、ECでavb3インテグリン、avb5インテグリンおよびa5b1インテグリンに結合するようにフィブリンを刺激する[27]。また、オリゴマー形成は、接着斑キナーゼ(focal adhesion kinase:FAK)および細胞外シグナル制御キナーゼ(extracellular signal-regulated kinase:ERK)を介するインテグリン依存性細胞シグナル伝達を促進し、これは、線維芽細胞分化に対する魚類ゼラチンの効果に促進されて、経時的な細胞接着および細胞遊走の増大につながる[28]。追加的にCa+および亜鉛が存在することにより、炎症反応と凝固カスケード(第1ステージ)との間の進行が促進される。
生体ヒト組織への接着特性と、提案する薬剤の重合動態とを、インビトロ(in vitro)およびインビボ(in vivo)で検証した(図4)。得られたデータから、ブタモデルにおいて誘発された腹腔内の圧迫不可能な重度の外傷性腔内損傷(「イラクの自由作戦(Operation Iraqi Freedom)」や最近ではアフガニスタンにおいて米軍が確認したような爆破装置による損傷のシミュレーションを含む)において、ClotFoamが出血を止め、圧迫なしに止血を達成することができるという十分な証拠が示される。ゲル化プロセスは溶液混合の6秒以内に始まり、10秒で7,000dyn/cm2±1,000dyn/cm2のゲル強度に達する(図5)。ゲル状態は、10〜20分の間安定した状態を保つ。バルク形態の接着ヒドロゲルの静的および動的な引張荷重の研究により、ヤング率が45kPaから120kPaに及ぶことが証明され、また、このようなバルク特性が、フィブリンベースのシーラントから得られるヒドロゲルについて報告されるものよりも高いことが証明された(28)。洗い流された後でも、ClotFoamの鎖は対向する裂傷組織の両方に付着したままであった。
タンパク質のゲル化 3次元ポリマーネットワークを創傷周囲の組織に結合できるようにする別の重要な成分は、構造タンパク質である。ClotFoamは、液相に硬骨ゼラチンタイプAを含有する。このゼラチンの産生の原料は、タラ、コダラ等の深海魚由来の皮膚である。硬骨ゼラチンタイプAは、穏やかな部分的加水分解により低温でコラーゲンから得られるタンパク質である。
魚類ゼラチンの特有性は、ゼラチンのアミノ酸含有量にある。全てのゼラチンは同じ20種類のアミノ酸から成るが、プロリンおよびヒドロキシプロリンのアミノ酸量に違いがある。これらのアミノ酸の量が少ないほど、水溶液中のゼラチンの水素結合が少ない。したがって、ゲル化温度が低下する。タラの皮膚由来のゼラチンは10℃でゲル化する(30)。
ゼラチンのような生体高分子は、組織工学での応用に関して、汎用性の高い生体模倣コーティングとして浮上した(31)。ゼラチンフィルムに対する3T3線維芽細胞の定常状態の接着エネルギーは、キトサンフィルムに対する接着エネルギーよりも3倍高い。3T3線維芽細胞がゼラチンに対してより強く付着する理由は、ゼラチン上に接着ドメインが存在することである。よって、生体吸収性ゼラチンおよび多糖類を用いて、より安全でより強い止血ゲルを作製することができる(32)。
我々の研究所では、ゼラチン‐フィブリン‐HASヒドロゲル接着剤の急速硬化性3Dネットワークの裂傷組織に対するシーリング効果を研究してきた。ポリマー成分を水溶液中で混合すると、修飾ゼラチンのアミノ基と修飾多糖類のアルデヒド基との間にシッフ塩基が形成され、分子間架橋およびゲル形成につながる。その結合強度は、20重量%のアミノ‐ゼラチン(55%アミノ)水溶液と10重量%のアルデヒド‐HES(>84%ジアルデヒド)水溶液とを混合した場合、約225gm cm(-2)(-2)である。ヒドロゲル接着剤により、優れたシーリング効果がもたらされた。
ゼラチンは、医学的応用において幅広く用いられる。ゼラチンは、水と共に半固体のコロイドゲルを形成する。ゼラチンは既に、血漿増量剤や代用血液等のいくつかの生命維持的応用に用いられている(31)。ゼラチンは、出血性ショックの際に体積代用血液として静脈注射で用いられる場合に、止血剤の変形の中でも副作用の少ない分子として示唆されてきた(33)。この分子は、生体適合性が高い材料と同様に、細胞にとって優れた天然の付着部位であるものとして関連してきた。また、この分子は、創傷治癒プロセスおよび凝固に関連する薬剤を容易に取り込むことができる。
粘弾特性 ゲル化点での粘性形成および弾性係数は、ゼラチン、ゲル強化剤、カルボマーおよびACTIVAの濃度によって異なる。これらのパラメーターは、単一時点(ゲル化点)での流動特性およびゲル強度の指標となる。また、これらのパラメーターは、体腔内におけるフォームの最適分布の指標となり、また、体腔全体に広がり、裂傷組織に張り付き、フィブリン血栓を形成する能力の指標にもなる。後述するような成分の最適濃度と、非炎症性ゲル強化剤の含有とにより、接着剤は創傷を封止するために組織に流れ込み、組織と機械的に“連結”する(すなわち張り付く)ことができる。ゲル強化剤は、製剤において重要な役割を果たす。粘性の低い接着剤は、投与されたときに保持されるための十分な凝集強度をもたないおそれがあり、また、流されてしまうおそれがある。一方、粘性の高い製剤は、体腔を覆うのに十分なフォームを生成できなかったり、組織に到達するのに十分な流動性をもたないおそれがある。この問題は、接着剤を湿組織に投与しなければならない場合に、特に重要になり得る。更に、ゲルが強固なほど、或いはゲルが速く重合するほど、凝集強度は大きくなるが、効果的に侵入し組織と連結することができないおそれがある。このように、接着剤の流動特性およびゲル強度は重要である(19〜21)。
PVPその他の大型非炎症性分子はフォームの湿組織に対する物理的接着を促進する一方、薬剤の粘着性のガム状の堅牢性により、フォームは、インサイチュで血流をよそに裂傷組織上に維持される。フォームの特性により、均質な液状によって達成され得るよりも広範な接着が可能となり、また、裂けた組織を結合し血流に対する障壁を形成する成長中のフィブリンネットワークの足場が提供される。ゲル化促進剤として用いられその炎症効果を喪失した、処理された細菌または植物由来糖質ベースのゲル成分(例えば、頑強なヒドロゲルを形成することで知られる、アルギン酸またはヒアルロン酸塩またはヒアルロン酸)の組込みは、好ましくは組成物の粘弾特性を向上させるために採用される(図5および6)。分解イオタ・カラギーナン、アルギン酸またはヒアルロン酸塩または硫酸基をもつヒアルロン酸または酸は、滞留血液内で重大な炎症反応を引き起こすことなくより良好な止血を達成するために、添加される。
カラギーナンの糖質サブユニットは、好ましくはα‐1→3ガラクトシド結合によって接続されるが、α‐1→3ガラクトシド結合はヒトおよび大型類人猿には存在しない。結果として、このような結合を含むカラギーナンのような分子は高い免疫抗原性を示す。α‐1→3ガラクトシド結合は、カラギーナンにおける炎症の主な原因である(44、45)。この化学基は、カラギーナンをα‐1→3ガラクトシダーゼで分解することによって、除去することができる。
フィブリンモノマーの重合 フィブリンモノマー生成の実験的方法は、最初にBelitser他(1968、BBA)によって記述され出版された(34)。このような方法では、モノマーの製造が1日あたり数ミリグラムに制限される。フィブリノゲン‐フィブリン転換における調製、特性、重合および平衡と、フィブリンモノマーの溶解度、活性化および架橋とは、1968年から何人かの著者によって研究されてきた(35〜43)。特許文献2にはフィブリンモノマー組成物を用いてフィブリンシーラントを調製する方法が記載されているが、ClotFoamのシーラント組成物と、ポリマー産生のためのフィブリンモノマーの中和と、透析法によって産生されたフィブリンモノマーの利用とは、完全に新規である。特許文献1は、産業的な分量で溶液中にフィブリンモノマーを生成するための、商業的に実現可能な方法を記載している。
フィブリンモノマーの成分の組成および製造方法は、非圧迫技術の性能に極めて重要である。滞留血液中で裂傷組織に張り付く力は、細胞とマトリックスとの相互作用に依存する。フィブリン自体の特徴(例えば繊維の厚さ、分岐点の数、空隙率、透過性その他の重合特性)により、フィブリン、酵素前駆体、凝固因子、酵素阻害物質および細胞受容体の特異的結合部位間の相互作用が定義される(24)。塩素イオンおよび亜鉛イオンは、繊維が厚く固く真っ直ぐに成長するのを阻害することによって繊維サイズを制御するので、フィブリン重合の修飾因子として特定されている。
他の研究者によって行われたpH研究(34)と我々の研究から、pHおよびイオン強度は、足場およびフィブリンモノマーの重合および架橋(したがって血栓形成)に依存することが示された。pHは、足場を含む溶液の粘性と、溶液がモノマー溶液の酸性pHを中和する能力とを決定し、結果として、ACTIVAによって安定化され得るポリマーが生成される。ClotFoam溶液A、B、C、Dは、フィブリンシーラント成分すなわちフィブリンモノマーおよびACTIVAの組込み、保存および活性に都合のよい最適pHを維持するように構成される。
フォームの役割 化合物が出血源に到達し、或いは血栓を形成するために裂傷箇所に留まることができるようにする相補的なプロセスは、有機的な無毒の非発熱性反応によってトリガされ、シーリングフォームがタイヤの修理に用いられるのと同じように体腔全体に広がる粘着性フォームが産生される。リン酸二水素ナトリウムNaH2PO4は、NaHCO3およびカルボマー934の酸塩基中和により、溶液Aと混合されたときに溶液BのpHを緩衝して発泡を促進するために用いられる。フォーム誘発成分によってもたらされる体積膨張は、溶液の混合の10秒以内に、元の体積の300%〜400%に達する。このような時間、強度および体積は、ClotFoam溶液が、裂傷組織に接着する(くっつく)強固なゲルの形で体腔全体に広がるフォームを生成することができるという意味で、都合がよい。我々の研究により、ゲル化時間およびゲル相持続時間の調節に必要な成分の濃度が決定されている(25)。
二価金属イオンの役割 本形態のClotFoam組成物は、カルシウムイオン、亜鉛イオンおよびマグネシウムイオンを含有する。これらのイオンは、フィブリン重合の速度と、フィブリンフィラメントの長さおよび強度とを著しく高められることが立証されている。追加的にCa+および亜鉛が存在することにより、炎症反応と凝固カスケードとの間の進行が促進される。Zn+は、フィブリンアセンブリを修飾する。
ACTIVAの役割 このCa非依存性トランスグルタミナーゼ酵素には、ゼラチンベースのポリマーおよびフィブリンポリマーを架橋する二重の役割がある。
米国特許第8,367,802号明細書 米国特許第5,750,657号明細書
本発明は、生分解性であり、非炎症性であり、かつ無毒であり、治療用途(例えば圧迫不可能な出血に対する腔内止血剤として)を対象とする生体止血剤、接着剤および組織シーラントの領域に位置する。
一態様において、本発明は、生体再吸収性であり無毒の、外科的用途または治療用途向けの、生体適合性の非炎症性液体接着タンパク質フォームに関し、また、生体適合性の液体/フォーム接着剤に関する。また、本発明は、所定の部位に放出可能な生体活性物質を含有するフォームにも関する。別の態様において、本発明は、接着性フォームを産生するプロセスと、そのような製剤を送達する装置とに関する。
広範囲なインビボ研究により、ClotFoamが緊急事態、戦闘による外傷および非侵襲性外科的処置に対する優れた止血剤の候補であることが示されている。ClotFoamは、必要に応じてパラメディカルによって投与可能であり、耐久性があり、リスクがほとんどなく、使用に際してトレーニングはほとんど必要なく、さもなければ大量失血に至りかねない大量出血に効果があり、最終的なケアセンターまで避難できるように少なくとも数時間は止血を維持することができる。非侵襲性用途向けに特別に設計された“混合針”を通しての投与は安全であり、戦場または医療施設で低侵襲処置中に針を通して行うことができ、滞留血液または血流の中で腹腔その他の体腔内の損傷組織に達する。
ClotFoam4成分アプリケーターおよび混合針の写真である。 1‐混合針 2‐成分を収容するシリンジホルダー 3‐空気圧式ピストン 作用機序を示す図である。 1‐溶液Aを溶液Bと混合して、CO2を放出するヒドロゲルフォームを形成する 2‐溶液Cを溶液Dと混合してフィブリンモノマーを重合させる一方、Ca++、はフィブリンポリマーの架橋を強化するために、第XIII因子およびトランスグルタミナーゼ酵素を活性化する 3‐CO2 4‐フィブリンポリマーによって補強された架橋ゼラチンが強固なゲルフォームを形成する 5‐フォームが組織を覆うように体腔全体に広がる 6‐血液の活性化第XIII因子がフィブリンポリマーを安定化(架橋)する 7‐足場に組み込まれた架橋フィブリンポリマーが裂傷組織に付着する gr/cm単位で測定された組織内接着を、ClotFoamフィブリンモノマー技術と従来の入手可能なシーラント(インサイチュで混合されたフィブリノゲンおよびトロンビンからなる)とで比較するグラフである。 4つの構成成分の相互作用を示す図である。 アルギン酸をゲル化促進剤として用いたゲル化プロセスの流動測定を示すグラフである。ゲル化プロセスは溶液混合の6秒以内に始まり、10秒で7,000dyn/cm2±1,000dyn/cm2のゲル強度に達する。ゲル状態は、10〜20分の間安定した状態を保つ。 Ca高濃度下でヒアルロン酸塩を組み込んだ場合の流動測定を示すグラフである。 30〜46日間の保存期間にわたるフィブリンモノマーの重合を示す写真である。 50日間にわたって凝固時間によって測定した、各温度でのフィブリンモノマーの強度を示すグラフである。 ClotFoam含有培地における、0日目(a)、3日目(b)および7日目(c)の線維芽細胞増殖の顕微鏡写真である(生体適合性)。 NaClで処置した対照動物(a)とClotFoamで処置した動物(b)との、損傷領域をしっかり閉じた状態の、損傷および血栓形成効果の観察用に摘出された肝臓の写真である。 腹腔鏡処置および閉鎖腔ClotFoam投与でドリルを用いて形成されたグレードIVの肝損傷(ブタモデル)を示す写真である。(a)4成分ClotFoamの開口を通した盲目投与、(b)60分後の開腹、(c)血栓形成および出血制御、(d)血栓および強度の測定を示す。 ClotFoam処置した肝臓グレードIV損傷(ブタモデル)における平均動脈圧(平均動脈圧;MAP)の傾向を示す図である。 未処置の肝臓グレードIV損傷(ブタモデル)における平均動脈圧(平均動脈圧;MAP)の傾向を示す図である。
我々は、液状の腔内止血剤であるClotFoam(登録商標)と、手術室外での圧迫不可能な出血または非侵襲性の外科的処置での用途向けの投与方法とを開発した。
ClotFoamは、フィブリンシーラントを運搬する新規のヒドロゲルであり、臓器切除、外傷および/または重度の腔内創傷や、さもなければ臨床的合併症または大量失血につながりかねない実質臓器、軟部組織または脳の創傷による大量出血の場合に止血を促進し、組織を封止し、圧迫なしに出血を止めるように設計される。ClotFoam(登録商標)は、特に、緊急事態および戦闘による外傷用の止血剤として、また、腹腔鏡下手術や美容手術等の低侵襲外科的処置用の止血剤として使用されるように意図されているが、これに限定されない。このシーラント剤は、損傷組織の表面間の接着だけでなく、止血にも寄与する。ClotFoamが新規のコンセプトである理由は、1)腹腔鏡開口または傷口を通して送達することができ、2)低侵襲処置において、圧迫なしに投与10分以内に止血を達成し、極めて重篤な腔内外傷の場合でも止血を1時間維持することができ、3)縫合および/またはステープルの使用が望ましくない、不適切または不可能な場合に使用でき、出血を止めて損傷組織の早期接着を促進することができ、4)滞留血液または血流の中で腹腔内の損傷組織に到達することができる化合物、が他にないからである。ClotFoamは、a)戦場または事故現場で外傷を負った直後に使用することができ、b)パラメディカルによって投与することができ、c)広範囲の温度でその粘性を維持することができる。
ClotFoamは、4つの水溶液から成る組成物であり、4つの水溶液は、(混合され空気圧式操作装置によって送達されたときに)フィブリンモノマーを運搬する接着性の複合ヒドロゲル(足場)を形成する。フィブリンモノマーは、足場との反応によって重合化/架橋され、ACTIVAと血液中に存在する第XIII因子とによって安定化される。
薬剤を出血源に到達させ、または血栓を形成するために裂傷箇所に留まらせるプロセスは、ゲルを形成する溶液A、B、CおよびDの混合から始まる。溶液は、混合されると無毒の低発熱反応を起こし、粘着質のフォーム(ヒドロゲル)をもたらす。このフォームは、シーリングフォームがタイヤの修理に用いられるのと同じように、体腔全体に広がる。薬剤の粘着性のガム状の堅牢性により、フォームは、インサイチュで血流をよそに裂傷組織上に維持され、損傷組織上で、1)固体のキャップで創傷を封止し、2)凝固カスケードをトリガして、創傷に沿って障壁を導入することにより血栓を形成し、3)非共有結合性作用により裂傷組織に付着する接着剤マトリックスを急速に形成する。
ClotFoam製剤の止血特性は、足場(溶液A+溶液Bによって形成される)の物理的特性および凝固特性に基づく。足場は、酸性溶液中のフィブリンモノマーと、フィブリンポリマーの安定化のために加えられる溶液DのACTIVAと混合される。ヒドロゲル足場は、液相の硬骨ゼラチンタイプAと、ヒト血清アルブミンと、カルシウム非依存性トランスグルタミナーゼ酵素ACTIVA(登録商標)存在下でカルボマー934(ポリアクリル酸)によって架橋される(限定ではない)ポリビニルピロリドン(PVP)と、ゲル化促進剤(例えばガラクトシダーゼ分解カラギーナンまたは硫酸化アルギン酸またはヒアルロン酸またはヒアルロン酸塩)と、重炭酸ナトリウムおよびリン酸二水素から成る水溶性フォーム誘導剤と混合されるスクロースと、の混合物から成る。他の架橋剤は、カルボキシメチルセルロースおよびアルブミンである。
酢酸または酢酸ナトリウムに溶解されたフィブリンモノマーを含有する溶液Cは、溶液A(pH8.4)と混合されるとpH中和(pH7〜7.2)によって重合され、続いて溶液D(ACTIVA)によって安定化される。重合反応は、Caイオン、MgイオンおよびZnイオンによって促進される。
図2に示される作用機序は、溶液Bと混合された溶液Aがどのようにゼラチンおよびアルブミンと架橋して、元の体積の400%に膨張する強固な発泡(リポソーム)ハイドロゲルを形成するのかを示す。ゲルが形成されている間、溶液Cに含まれるフィブリンモノマーは、pHの変化(pH3.4からpH7.0〜7.2へ)によって、または溶液A(pH8.4)による中和によって、重合される。溶液Dはカルシウムイオンを送達して、モノマーと、モノマーの安定化に必要なACTIVAとを重合させる。血流をよそに創傷箇所に留まり、裂傷組織上だけにマトリックスを形成し、創傷をシーリングする能力は、a)フィブリンモノマーを運搬する非常に粘着性の高いマトリックスを生み出す、フォーム成分の表面接着特性および粘弾特性と、b)ACTIVAおよびカルシウムイオンの存在下においてフィブリン血栓を形成するフィブリンポリマーのインサイチュ生成と、によって達成される。4つの別々の溶液は、成分の活性を保存し、成分間の化学反応を防ぎ、混合前のpHを維持するために必要である。
フォーム形成に寄与する成分は、重炭酸ナトリウム、リン酸二水素、カルボマー934である。以下の成分、すなわち液相の硬骨ゼラチンタイプA、ヒト血清アルブミン、ガラクトシダーゼ分解カラギーナンまたは硫酸化アルギン酸またはヒアルロン酸塩またはヒアルロン酸、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびカルボマー934は、物理的な粘弾特性をもたらす。追加的なCaイオン、MgイオンおよびZnイオンが補完的に存在することにより、重合プロセスが促進される。
ClotFoam製剤
ClotFoamは、4種類の溶液A、B、CおよびDの組合わせによって産生される。
溶液A:
ステップ1.ニュートラルAの調製
ミクロモル範囲のZnCl
ミリモル範囲のMgSO4
硬骨冷水魚ゲル
スクロース
ポリビニルピロリドン
H2O
全ての内容物を均一に攪拌し、続いて、NaOHで溶液をpH7.1まで中和する。
ステップ2.最終溶液Aの調製
ニュートラルA(上記)
カラギーナン、タイプ2もしくはα−ガラクトシダーゼ分解イオタ・カラギーナン、または硫酸化アルギン酸またはヒアルロン酸塩またはヒアルロン酸
NaHCO3
ヒト血清アルブミン
全ての成分を攪拌して懸濁液とし、ホモジナイズする。
ステップ3.溶液Bの調製
NaH2PO4
トリス塩基(Tris-Base)
カルボマー934
ステップ4.溶液Cの調製
透析法により、0.125%氷冷AcOH(pH3.4)の90〜120mg/mLフィブリンモノマー溶液を調製する。
溶液D
へぺス(HEPES)バッファーに溶解しているACTIVAおよび塩化カルシウム
以下に記載する方法に従って、全成分を滅菌する。エンドトキシンを、ポリミキシン(polymixin)樹脂での濾過、プレッシャークッキング(pressure cooking)およびUV照射によって除去する。溶液AとBを混合すると、ClotFoam組成物に用いられる修飾(魚類)ゼラチンのアミノ基と修飾多糖類のアルデヒド基との間にシッフ塩基が形成され、分子間架橋およびゲル形成を引き起こす。ゲル形成は5秒以内に起こり得る。
ClotFoamゼラチンは魚の皮膚から作製され、一般にタイプ‘A’ゼラチンと呼ばれる。このゼラチンの製造の原料は、タラ、コダラ等の深海魚由来の皮膚である。タイプ‘A’ゼラチンは、穏やかな部分的加水分解により、比較的低い温度でコラーゲンから得られるタンパク質である。その最も有用な特性のうち2つはゲル強度と粘性であり、主にそれらに基づいて評価される。魚類ゼラチンの特有性は、ゼラチンのアミノ酸含有量にある。全てのゼラチンは同じ20種類のアミノ酸から成るが、プロリンおよびヒドロキシプロリンのアミノ酸量に違いがある。これらのアミノ酸量が少ないほど、水溶液中のゼラチンの水素結合が少ない。したがって、ゲル化温度が低下する。コイの皮膚由来のゼラチンは動物ゼラチンにより似ており、室温より高い温度でゲル化する一方、タラの皮膚由来のゼラチンは10℃でゲル化する。魚類ゼラチンは、アルカリ性条件下で無水物と反応し、ゼラチンの硬化剤としてのアルデヒドの効果を低下させるか無効化する。煮沸によりコラーゲンは加水分解され、ゼラチンに変形する。酸性法により、タイプAゼラチン(他のアニオン性ポリマーとネガティブに相互作用し得る)に、ClotFoamに裂傷組織に対する接着特性を与える化学的特徴がもたらされる。
魚類が代謝する温度と、皮膚および結果として抽出されるゼラチンの特性との間にも、重要な関係がある。深海冷水魚の皮膚由来のゼラチンはプロリンおよびヒドロキシプロリンの量が少ない。結果として、ほとんどの動物ゼラチンは32℃でゲル化する一方、深海冷水魚の皮膚由来のゼラチンの水溶液は室温ではゲル化せず、8〜10℃までで液体のままである。この特性は、液体の物理的状態で室温で保存することのできる製品を製造する場合に有用である。また、戦場のいかなる環境でも、寒冷な気候でも温暖な気候でもすぐに活性化できるように、広範囲の温度で製品の溶解性を維持できることも重要である。
投与方法
ClotFoamは、油圧アプリケーターによって混合針を通して体腔内に投与される(図1)。混合針は、異なる腹腔鏡下処置その他の低侵襲処置での使用に適用可能である。

1.接着特性および粘弾特性:生体ヒト組織への接着特性およびゲルの重合の動態を、インビトロ(in vitro)試験およびエクスビボ(ex vivo)試験で検証した。
1.1 接着特性
スプラーグドーリーラットの肝臓組織において、接着および張力の測定(組織内接着および血栓強度)を行った。肝臓を選択した理由は、腹腔内外傷において損傷を受ける頻度が最も高い臓器である(脾臓が後に続く)ということである。
実験モデル:スプラーグドーリーラット(250〜300g)に麻酔をかけた。腹腔内部にアプローチし、肝臓を完全に解離し切除した。肝臓を選択した理由は、腹腔内の圧迫不可能な出血において、損傷を受ける頻度が最も高い臓器である(脾臓が後に続く)ということである。アイソメトリック・トランスデューサーを用いて、接着および張力の調査を行った。
1.1.1 張力測定:最も大きい2つの肝葉を分離した。一方の肝葉をホルダーに取り付け、ホルダーをアイソメトリック・トランスデューサーに固定した。他方の肝葉を、容器内の平坦なガーゼ土台に配置した。容器は、トランスデューサーのホルダーの肝臓片に接触するように、段階的に昇降可能であった。両方の肝臓片に、1cmの損傷領域を形成した。2つの肝臓片の間に、組織接着についての試験対象である製剤を配置した。2つの試料を、基準圧0grで接触させた。各時点(曝露および接触から1分、5分および10分)で、2つの試料を完全に分離するのに要した圧力を記録した。現在の製剤を検証し、それらの結果を、対照としてのNaCl溶液と、全ての入手可能なフィブリンシーラント(トロンビンとフィブリノゲンをインサイチュ(in situ)で混合する)に用いられる標準的な技術と比較した。組織内接着の結果を図3に示す。損傷組織のフォームへの曝露に次ぐ組織内接着において、ClotFoamによって誘発される接着の力は、10分後には対照よりも200%を上回って大きい。接着性はgr/cm単位で測定した。全ての試験は37℃で行った。
1.1.2 血栓強度の定量化:ClotFoam影響下で形成された血栓の強度を調べるために、以下のような実験モデルを用いた。すなわち、予め綿縫合糸を仕込んだ試験管に、血液を収集した。綿縫合糸の一端には重りとして綿ガーゼを付けてその端を試験管の底側に維持し、試験管外の他端には、綿縫合糸をアイソメトリック・トランスデューサーに吊るすためのループを設けた。綿縫合糸を血液に浸け、2分間凝固させた。糸の他端をアイソメトリック・トランスデューサーに固定し、下方に引っ張って、血栓および試験管から糸を引っ張り上げるのに要する力を測定した(単位はグラム)。血液プラス生理食塩溶液(B+S)、血液のみ(BA)および血液プラスClotFoam(B+Gel)の3つの実験群において、血栓強度を観察した。血液をClotFoamで処理した場合を血液のみまたは血液プラス生理食塩水と比較すると、観察された血栓強度から、統計的に有意な(p=0.001)差が示された。
1.2 ゲル化中の粘弾特性
ゲルを形成する架橋ポリマーペアの粘弾特性は、架橋化学(例えばカルシウム非依存性トランスグルタミナーゼ)の改善およびe)より制御可能な重合反応に重要である。
ゲル化中のClotFoam製剤の粘弾性プロファイルを、外科的シーラントの作製に現在用いられている材料の様々な組合わせと比較するために、レオロジー研究を行った。ゲル化の検証は、平板(parallel plate)ジオメトリを用いて行った。全サンプルを混合直後(時間t=0)に移動し、t=6秒で測定を開始した。時間および応力の掃引試験に関して、時間に応じて、周波数5Hzと応力ひずみ2%において、37℃で貯蔵率(G’)および損失率(G”)をモニターした。
ClotFoam組成物のレオロジー測定値を、
a)ゼラチン、PVP
b)ゼラチン、ポリ(L−グルタミン酸)
c)キトサン、アルギン酸
と比較した。
架橋触媒は、
a)カルシウム非依存性トランスグルタミナーゼmTg
b)EDC
c)カルボマー934
であった。
代替物質は、
a)カルボキシメチルセルロース
b)アクリレート類
であった。
ゲル化促進剤は、
a)ガラクトシダーゼ分解カラギーナン
b)硫酸化アルギン酸
c)硫酸化ヒアルロナン(Hyaluronic sulfate)
であった。
この適用に最適であると考えられるゲル化動態および形態学的進化は、流動学的に、
a)成分の混合後10秒以内にG’とG”(架橋と、液体からゲルへの状態変化)とが交差すること、
b)G’値が急上昇して6,000dyn/cm2を超えること(強固なゲルを示す)(図5および図5)、
c)G’が10分間を超えて高い値を維持し、10分後にG”が減少し、薬剤が液状に戻り体腔液による吸収を促進し、また、正接値(tangent value)が0.1から0.4に増加する(放出エネルギーよりも貯蔵エネルギーが増加したことを示す)こと、
によって説明される。
図5は、ゲル化促進剤として硫酸化アルギン酸を含む現在の製剤において、ヒト血清アルブミン存在下でカルボマーをゼラチンの架橋剤として用いた場合のゲル強度を示す。現在の製剤のレオロジー測定値により、このような組合わせを用いた組成物がゼラチン溶液の非常に強固なヒドロゲルへの転換を触媒することが示され、また、ゲル化時間が約6秒であることが示される。G’は20秒未満で7,000dyn/cm2に達する一方、G”は2,000dyn/cm2未満のままである。
1.3 二価金属イオンの効果に関する研究
ゲルの有効性に対するCa2+、Zn2+およびMg2+の効果を調査した。これらのイオンがフォームの膨張を増大させ、ゼラチンの架橋およびフィブリン重合を加速し、その両方により、フィブリンフィラメントの長さおよび強度ならびにゲル強度が高められることが実証されている。
動態の特性評価は、添加される所与の金属イオンがゲル強度を高め、3D構造に含まれる様々なポリマーの架橋時間を大幅に短縮し得ることを示すことができるので、有用である。
塩化マグネシウムおよび塩化亜鉛を用いたイオン検査 オリジナルのベースライン製剤を用いて溶液を作製した。イオンは以下のように加えられた。すなわち、20μMのZnCl2溶液、20μMのMgCl2溶液、40μMのZnCl2溶液、40μMのMgCl2溶液、60μMのZnCl2溶液、および、最終的に0.002MのZnCl2溶液および0.002MのMgCl2溶液を加えることによって60μMのMgCl2溶液。
ベースラインを確立するために、二価金属イオン非存在下での流動測定により、時間に応じたゲル強度の変化を検証した。その後、血栓強度に最大の効果をもたらす様々な濃度で金属イオンを加えた。濃度が20μM以下のZn2+では、G’およびG”のスロープに見られるように、ゲル強度がおよそ15%〜20%増大し、ゲル化時間が減少し、足場の接着(ゴム手袋を用いた触覚観察によって推定した)が向上した。変位試験を50mLメスシリンダーを用いて行った。結果として、20μMのMgCl2溶液が、体積変位および接着強度について最大の改善を示した。
2.フォームの体積膨張
フォームの体積膨張を決定する分析方法を考案し、承認を受けた。フォームの最適な体積膨張は、2つの成分の初期pH値の交代(alternations)により、金属イオンおよびアクリル酸の添加によって達成された。体積膨張は、400%から500%まで幅がある。
製剤には、化学反応によってフォームを産生する生体適合性物質が組み込まれる。フォーム産生アプローチは無害であり、極端な生理的pH(望ましくない刺激および接着を引き起こす)を破る(breach)溶液と、組織を微小環境で接触させないようにする。
方法:発泡能力は、既知の量の反応物質のかさ体積(重合後)を計測することにより、一定量の不活性溶媒(例えばヘキサンまたはCCl4)中のゲルの変位として定量化した。この値を、炭酸水素および酢酸に基づいて対照製剤と比較した。
各サンプルを3回試験した。2つの1mL使い捨てBDシリンジを用いて、1mLの溶液Aと1mLの溶液Bとを16×100mm試験管に同時に加えた。各混合物を、混合後直ちに5秒間ボルテックスした。ボルテックスの20分後に変位試験を行い、Sharpie(登録商標)により試験管にマークされた発泡最高点を用いて試験した。試験管を、アセトン40mLを入れた50mLメスシリンダーに、アセトンのメニスカスの底がSharpie(登録商標)のマークと並ぶまで沈め、mL単位の変位を記録した。粘着性試験は、溶液の接着性が高まったことを確実にするために、ボルテックスから40分後にせん断試験によって行った。
3.フィブリン重合
分子化学アッセイ(SDS‐PAGEおよびウェスタンブロット)を行って、溶液AおよびBによってpHを中和した(7.0〜7.2)場合の、溶液中のフィブリンモノマーの重合の有効性を判定した。また、ACTIVAと第XIII因子とで、フィブリンポリマーの安定化を比較した。
3.1 ClotFoamゲル内のフィブリンの重合
溶液AおよびBによって中和された場合のClotFoamに含まれるフィブリンモノマーの重合速度を試験するために、また、トランスグルタミナーゼ酵素および第XIII因子の安定化効果を判定するために、抗フィブリノゲン抗体を用いてウェスタンブロット分析を行った。フィブリンポリマーの鎖を、ポリクローナルヒツジ抗ヒトフィブリノゲン(Fg)アフィニティ精製ペルオキシダーゼ抱合抗体(カタログ番号:SAFG−APHRP、Enzyme Research Laboratories、IΝ)と1時間(TBST溶解5%ミルク50Kで1部)反応させて検出した。
第XIII因子とACTIVAのいずれかおよびCa2+存在下でClotFoam組成物の4つの溶液全てを混合した場合のフィブリンの重合を、ウェスタンブロットアッセイによって立証する。どちらの酵素も、フィブリンモノマーの安定な不溶性フィブリン血栓への転換を触媒した。
4.有効期間
4.1 溶液Cにおけるモノマーの有効期間
これらの実験の目的は、モノマーが継時的に劣化せず、冷蔵条件下(4℃)でも劣化しないことを証明することであった。フィブリンモノマーは、フィブリンポリマーを1リットルの0.125%酢酸で20時間透析することによって調製した(透析液を2回交換(各1時間以内)した)。フィブリンモノマーは17.6mg/mLに濃縮された。最終生成物は−80%であった。続いて、フィブリンモノマーを3つの部分に分割し、1つを4℃で維持し、その他の2つ(そのうち1つはアジ化ナトリウムを含有した)を室温(22℃)で維持した。分析用のサンプルを指定の時間に回収した。フィブリンモノマーの有効期間をSDS−PAGEによって分析し、Imperial(登録商標)タンパク染料(ThermoScientific)で染色した。これらのサンプルの分析を1日後、4日後および15日後に行い、独立の方法(MedvedおよびOglev、未発表のデータ)によって得られ30日以上4℃で保存されたフィブリンモノマーサンプルと比較した。
4.2 凝固能力
SDS‐PAGEデータから、4℃と22℃のいずれにおいてもフィブリンの経時的な劣化が視認されなかったことが示される。吸収法による凝固能力の研究から、モノマーが22℃では1週を超えて安定性を維持するが、6週を超えて安定性を維持することが示される。結論として、本明細書に記載のいずれかの方法で産生されたフィブリンモノマーは、4℃で60日を超えて保存することができる(図8)。
5.滅菌
ClotFoamの無菌製剤を検証した。生物学的安全キャビネット内で、Nalge Nuncの500mL装置(カタログ番号450−0045、ニトロセルロース膜、0.45μmフィルター)を用いて、成分Aのニュートラルハーフ(Neutral Half)を無菌濾過した。
溶液A:アルブミン、MgCl2およびCaCl2を滅菌水に溶解し、0.15gの溶液に加えた。溶液を、0.22μmミリポア(Millipore)シリンジフィルターを用いて無菌濾過して、8mL超の中性成分(Neutral part)を得た。続いて、この混合物に、予め計量しオートクレーブした無菌の1.2gの固体NaHCO3と0.4gのカラギーナンとを加えた。
溶液B:一リン酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS-Base)およびACTIVA(登録商標)を滅菌水に溶解した。溶液を、0.22μmミリポア(Millipore)シリンジフィルターを用いて無菌濾過した。この無菌混合物に、0.5gのUV滅菌カルボマーを加えた。
溶液C:酸性フィブリンモノマーを、生物学的安全キャビネット内で、Nalge Nuncの500mL装置(カタログ番号450−0045、ニトロセルロース膜、0.45μmフィルター)を用いて無菌濾過した。
溶液D:バッファーに溶解したACTIVAを、生物学的安全キャビネット内で、Nalge Nuncの500mL装置(カタログ番号450−0045、ニトロセルロース膜、0.45μmフィルター)を用いて無菌濾過した。
増殖研究:一般の実験プロトコルにサンプル溶液の調製を含めた。サンプル溶液を、増殖用ペトリ皿のポテトデキストロース寒天(potato dextrose agar:PDA、Sigma Aldrich、カタログ番号P2182)ゲルおよびトリプチックソイ寒天(TSA、Sigma Aldrich、カタログ番号T4536)ゲルにまいた。PDAゲルおよびTSAゲルをインキュベートし、所定の期間に37℃でのコロニー増殖(かびおよび/または細菌)を観察し、所定の期間にコロニー増殖を肉眼で評価した。データ表では、複数のサンプルを1、2、3の符号で示す。
Figure 2015535192
Figure 2015535192
増殖データから、ニュートラルハーフその他無菌成分において11日後であっても著しい増殖が生じなかったことが示される。増殖を阻害するために、防腐剤を用いた追加的な滅菌方法を異なる濃度で検証した。増殖データから、3日後に、メチル−4−ヒドロキシベンゾン酸およびGermaben II(登録商標)が滅菌/増殖阻害をもたらすことが示される。
結論:無菌調製方法を適用することにより、汚染物質(かびおよび細菌)の増殖が阻害され、市販品の保存可能期間を許容可能なものにすることができる。防腐剤の追加により、微生物の増殖の阻害が示された。
6.炎症特性
イオタ・カラギーナンは、組成物が圧迫なしで大量出血状態において止血を達成できるようにする最適なゲル化促進剤のひとつである。イオタ・カラギーナンはα−1−3,6ガラクトシド結合を含み、α−1−3,6ガラクトシド結合は、以下の動物実験で示されるように、炎症の主な要因である。
カラギーナンは、α−1−3,6ガラクトシド結合をα−1−3,6ガラクトシダーゼ酵素を用いて酵素的に除去することにより、非炎症性化合物に変換されることが好ましい。α−1−3,6ガラクトシダーゼを用いた分解による除去は、α−1−3,6ガラクトシド結合に結合するフルオレセイン等の蛍光成分でカラギーナンを標識することによって、証明される。続いて、分解で脱落した蛍光成分または別の理由で結合しなかったフルオレセインのいずれかを除去するために、蛍光カラギーナンと分解された蛍光カラギーナンとの両方が、水で透析されることが好ましい。最終的に、水分量の差を原因とする誤差を避けるために、サンプルは、水を除去するために凍結乾燥されることが好ましい。そして、各種カラギーナンすなわち1.通常のカラギーナン、2.蛍光標識カラギーナン、3.α−1−3,6ガラクトシダーゼによって分解された蛍光標識カラギーナンをClotFoam溶液に混合し、ゲル化特性について比較する。
炎症反応が全くないことを示すために、蛍光試験に加えて、ブタモデルの動物実験を行った。ClotFoamを、ブタモデルで形成した3cm肝臓切除部分に投与した。35日生存モデルにおいて、ClotFoamの4つの組成物を対照と比較した。ClotFoam組成物を、使用したゲル化促進剤の種類によって、
群1:イオタ・カラギーナン含有
群2:α−ガラクトシダーゼ酵素によって分解されたイオタ・カラギーナン含有
群3:硫酸化アルギン酸含有
群4:硫酸化ヒアルロナン(Hyaluronan sulfate)含有
に分けた。
対照群は、ひとつの止血方法として創傷が縫合された動物から成り、生理食塩溶液で処置された。動物は35日目に切除後に安楽死させ、全体の解剖と顕微鏡を用いた病理学的評価とを行った。
結果:
群1:(n=5) グレード5接着、肉芽腫の広がりおよび炎症反応
この群の全てのブタにおいて、腹部の様々な臓器、特に試験対象に関連する損傷部位に、小さく隆起した結節があった。この群のブタの50%において、損傷部位のすぐ近くに結節があった。また、可変性(variable)線維形成を伴う多巣領域の肉芽腫性炎症が、漿膜表面に沿って、また肝実質内に存在した。5頭のうち2頭では、炎症が脾臓、網および腹膜に広がっていた。関連顕微鏡所見は、接着については線維性結合組織から成る接着であり、結節については、多巣領域の肉芽腫性炎症および線維形成であった。炎症には、変性好中球および石灰化により時折縁取られる両染性物質に軽度に好酸球性の貯留が含まれた。
群2:(n=5) この群では、損傷部位および試験物質に関連する弱い接着の周辺に結節がなかったのは、2頭のみであった。損傷領域の外側には、肉芽腫性炎症の領域は存在しなかった。関連顕微鏡所見は、接着については線維性結合組織からなる接着であり、結節については、炎症は、両染性物質に軽度に好酸球性の貯留であった。石灰化は確認されなかった。
群3:(n=5) この群のブタのうち3頭において、損傷部位および試験物質に関連する弱い接着の周辺に結節がなかった。顕微鏡所見は、群2において観察されたものと同様であった。
群4:(n=5) 結果は、群3において見られたものと同様であった。顕微鏡所見は、群2において観察されたものと同様であった。
結論:
手術後35±2日目のブタの損傷肝臓に投与された、各種ゲル化促進剤を含むClotFoamの炎症反応の評価から、接着と、腹部の臓器に大いに影響を及ぼす結節という結果が得られた。肝損傷部位の顕微鏡所見には、肉芽腫性炎症、接着および線維化が含まれた。広がった多巣領域の肉芽腫性炎症は、壊死を伴って他の臓器に及んだ。また、未処理イオタ・カラギーナン含有ClotFoamで処置した動物でのみ、石灰化が見られた。ガラクトシダーゼ処理カラギーナン、硫酸化アルギン酸またはヒアルロン酸塩を含有するClotFoamで処置された動物では、対照動物に見られた炎症反応に似た炎症反応が生じた。接着スコアは、群1が他の群よりも著しく高い。
6.生体適合性
安息香酸ナトリウム含有または非含有の2つのClotFoam製剤(無菌条件下で調製)を試験した。これらの製剤の試験は、ヒト線維芽細胞(HF)およびヒト上皮細胞(A549細胞株、ATCC)との生体適合性を対象とした。
正常なヒト線維芽細胞(human fibroblast:HF)を商業的供給源から入手し、60mm組織培養プレートにおいて10%ウシ胎仔血清を追加したダルベッコ変法イーグル培地で培養物を樹立し、加湿5%CO2雰囲気下(CO2インキュベーター)で37℃で維持した。ヒト上皮細胞株A549は、10%ウシ胎仔血清および2mMグルタミンを追加した基礎培地で維持した。線維芽細胞培養物および上皮細胞培養物がサブコンフルエンスに達した段階で、対照と安息香酸ナトリウムClotFoam製剤とを混合し、すぐに各ディッシュに与えた。培養物をCO2インキュベーターに戻し、0日目(図9a)、3日目(図9b)および7日目(図9c)に検証した。全ての培養物からClotFoam材料および培地を除去し、接着細胞をクリスタルバイオレット(2%エタノール中0.1%)で染色した。
主な所見として、細胞に対する障害または毒性は全くなく、細菌または真菌のコンタミネーションもなかった。ClotFoam製剤に曝露されたヒト線維芽細胞では、対照の未処置培養物と比較して、細胞がわずかに大きく見え、より広く拡散していた。結論として、ClotFoamおよびClotFoam+防腐用安息香酸エステルは生体適合性を有し、細胞に悪影響を及ぼすのではなく、むしろ細胞の増殖および分化を促進する。これは、創傷治療剤において重要な特質である。
7.動物モデルにおける有効性実験
ラットおよびブタのモデルに対するいくつかの腔内外傷モデルについて研究を行った。
7.1 グレードIV肝損傷後の失血に対するClotFoamの効果(ラットモデル)
方法:10匹の雄スプラーグドーリー(Sprague-Dawley:SD)ラット(225〜250g)を用いた(UMBの動物実験委員会によって承認された)。
実験手順:開腹を行った。大きな左葉および右葉にグレードIIIの肝臓損傷を導入した。損傷は、止血鉗子を用いて両方の葉でクランプをし、2つの中葉を通って肝臓実質の損傷を生じさせることによって導入した。
1回目の肝臓貫通の後、クランプを開き、動物の左側に再配置し、第2の病変(辺縁から肝上大静脈までの距離の40%超を含む)を導入した。この再配置後、肝臓に2回目の貫通を行った。肝損傷については、実験の結論での肝臓の切除および検査によって更に記述した。損傷は徹底的(through and through)であった。総胆管、尾静脈または肝動脈への随伴損傷は認められなかった。この研究では10匹の動物に損傷を与え、4mLの生理食塩溶液(対照)と4mLのClotFoam剤のいずれかを受けるように無作為に割り当てた。損傷を与えた直後に、針を通して腹膜腔にClotFoamまたは生理食塩水を投与した。出血時間を観察し記録した。その後、腹腔を4−0ナイロンで閉じ、90分間動物を観察した。この期間の後、動物に再び麻酔をかけ、腹腔内の全ての液体を予め計量したガーゼで採取し、再計量して腹腔内の体積を計測し失血を計算した。
結果:対照群の出血時間は、平均37秒(±標準偏差7.5)を示した。ClotFoam処理群では、損傷領域の出血は4秒以内(+1.0)に停止した。この差は、p<0.008で統計的優位性を示した。
対照未処置群における失血測定値は、対照群において標準偏差0.67で2.45mL(1.86〜3.61)であった。対照的に、処置群では標準偏差0.55で平均0.95mL(0.72〜1.78)であり、t検定により、p値が0.028であることから、この差が統計的に有意であることが示された。
7.2 肝臓損傷におけるClotFoamのシーリング有効性の検証(ラットモデル)
病変および血栓形成挙動の観察用に、肝臓を摘出した。対照(図13)では損傷領域上にいくつかの血栓が発生するが、常に分離したままであることが分かった。対照的に、ClotFoamを投与した場合、肝臓は損傷領域に非常に強固な血栓の形成を示し(図14)、血栓の非損傷組織への接着はない。
7.3 開腹実験における大動脈モデル
方法:このモデルでは、正中開腹を行う。腎動脈の直下と腸骨動脈の分岐の真上とで大動脈をクランプし、効果的に腎臓下の近位および遠位の大動脈制御を行う。続いて、腎臓下の大動脈の左右両側に1回ずつ、25ゲージの針で穿孔する。無制御出血の6秒後、500マイクロリットルのClotFoamを腹腔全体に広がるように投与する。フォーム投与の完了後、止血時間を計測する。その後、閉腹する。
損傷直後、ラットにリンガー液を投与して、平均動脈圧を初期MAPの約70〜80%に(可能な限り)維持する(外傷患者に対する現在の標準的な蘇生技術である)。ラットを20分間観察する。20分後、同じ正中切開部を通して動物を再調査する。予め計量されたガーゼパッドで全血液を採取し、総失血量を計算する。
結果:17頭に大動脈の損傷を与えた。動物を無作為に2つの異なる群、すなわちClotFoam処置と未処置に分けた。ClotFoamで処置した動物では、60分時点での生存率は100%であった。未処置群では、損傷を乗り越えられた動物はいなかった。損傷前MAPは全て同様であった。以下の表3に、各群の測定結果をまとめる。
表3 大動脈損傷動物の結果のClotFoam処置対未処置の比較。蘇生率は、損傷前MAPの蘇生MAPパーセンテージと定義される。全結果および全製剤についてのp値は、製剤なしと比較して<0.001である。
Figure 2015535192
7.4 大静脈モデル
第2のモデルは、肝臓/大静脈損傷モデルである。このモデルでは正中小開腹術を行う。肝臓の左葉および大静脈を露出し、単離する。右下腹部に小さな切開部を形成し、ClotFoamアプリケーターチップを、開口が腹腔内にありながら損傷が生じる予定の場所から離れるように、その切開を通して設置する。次に、肝左葉を鋭く横切開し大静脈に穿刺損傷を形成することによって、損傷を形成する。小開腹切開部を、ステープルで素早く閉じる。続いてClotFoamを閉じた腹腔に注入する。上述のように蘇生、観察および失血計測値を収集する。
12頭の動物に肝臓/大静脈損傷を与えた。動物を無作為に異なる2つの群すなわちClotFoam処置またはClotFoam未処置に分けた。ClotFoamで処置した全動物では、生存率は60分時点で100%であった。アプリケーターを腹腔内に位置付けた。肝臓/大静脈損傷後20分に、開腹して損傷領域を完全に露出した。未処置群の動物は、>18分で損傷を理由に死亡した。損傷前MAPは全て同様であった。表4に、各群の計測結果をまとめる。
Figure 2015535192
7.5 3つの異なる出血モデルにおけるClotFoamの効果のまとめ:表5のデータは、異なるモデルと結果を比較する。対照は、NS処置のみの穿刺モデルを表す。数字は、ベースライン(損傷後10秒、10分および2時間)での血圧および平均動脈圧(括弧内はMAP)を表す。NS―通常の生理食塩水投与(単位mL)。NA―投与不可能(2エンドポイントの前に対照動物が死亡した)。TTH―総止血時間(70の血圧およびMAPの持続的上昇に応じて計測される)。
Figure 2015535192
7.6 ブタでの非GLP試験
ブタモデルでClotFoamを評価した。
方法:18頭の雌ヨークシャー交雑種ブタ(月齢2.5ヶ月、体重37±2kg)を用いた。プロトコルは動物実験委員会によって承認された。動物に、開腹または腹腔鏡のいずれかにより、グレードIVの肝損傷を与えた。このモデルの目的上、グレードIVの肝損傷は深さ10cmの実質性損傷であり、これには、貫通した銃創(GSW)に似た損傷を作り出す切削ドリルビットを有する、特別設計の高速ドリル(図11a)を用いた。これらの損傷は、米国外傷手術学会(American Association for the Surgery of Trauma)の臓器損傷スケーリングシステムに一致した。肝臓を露出した後、肝臓中央のスポットを選択して肝損傷を形成した。位置は、肝上血管と門脈の一部の分岐とへの近似によって算出された。スポットにマーカーで印を付けた。損傷を導入した後、外科医は閉腹し、30秒間大量出血させた後に、小さな穿孔を通してClotFoamを投与した。
動物を無作為に4つの群に分けた。群1(n=5)は、正中開腹によりグレードIVの肝損傷を受け、開腹によるClotFoam投与を受けた動物で構成された。この群では、薬剤を視覚的に肝損傷に向けた。群2(n=6)は、腹腔鏡下処置によりドリルでグレードIVの肝損傷を受け、閉鎖腔ClotFoam投与を受けた動物で構成された。この群では、損傷の直接可視化と方向付けを行うことなく、薬剤を盲目的に腹膜腔内に投与した。群3(n=4)は、正中開腹によりグレードIVの肝損傷を受け、ClotFoam処置を受けなかった動物で構成された(開腹対照)。群4(n=3)は、腹腔鏡下処置によりグレードIVの肝損傷を受け、ClotFoam処置を受けなかった(腹腔鏡下対照)。
全ての群において、150ccのClotFoamを処置に用いた。ClotFoamは、混合装置を用いて腹腔内に送達された。損傷直後に、乳酸リンゲル液(LR)を用いた輸液蘇生を開始した。LRは、MAPを損傷前MAPの少なくとも80%にできる限り回復させるために、必要に応じて注入した。全観察期間を通して、蘇生処置を継続した。60分間の試験の終了時に、各動物のMAPと注入された総輸液量とを記録した。
試験期間の完了後、腹部を検証した。液状血液を吸引した。血栓を除去し、計量した。ガーゼパッキング群では、乾ガーゼ重量から湿ガーゼ重量を引くことによって、追加の液状失血を計算した。液状失血と凝固失血とを合計することにより、総失血量を決定した。
動物の生存を、試験期間終了時に心拍があることと定義した。60分後、生存動物を10mLのEuthasol(登録商標)を用いて安楽死させた。
結果:群1および群2(グレードIV損傷)の動物のエンドポイントは表6を参照のこと。平均動脈圧(MAP)の傾向は図12を参照のこと。
Figure 2015535192
対照:確立された開腹モデルと対照して腹腔鏡下モデルを検証するために、動物にグレードIVの肝損傷(3頭は腹腔鏡下、4頭は開腹)を与えた。これらの動物はClotFoamで処置しなかった。エンドポイントは表7を参照のこと。
Figure 2015535192
ClotFoam未処置の対照のグレードIV肝損傷について、MAPの傾向は図13を参照のこと。
血栓の組織学的検査
解剖時に、全動物から肝臓切片サンプルを採取した。肝臓(損傷部位を含む)のサンプルを5%ホルマリンに保存し、標準的な組織学的技術を用いて処理した。固定した組織サンプルをパラフィンワックス(融点56℃)に包埋し、2〜3μmで切片を作製した。続いて、スライドガラスに載せた切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。切除部位に垂直な肝臓切片を動物ごとに2つ評価した。
8.ブタでのGLP試験
有効性:ヨークシャー交雑種ブタ(月齢2.5ヶ月、体重37±2kg)において、圧迫を伴わないClotFoam止血剤処置の有効性を比較した。ClotFoamを、3つの外科的プロトコルすなわち肝切除と、正中開腹による部分腎切除と、脾臓裂傷とで試験し、20頭を各プロトコルに割り当てた。プロトコルは動物実験委員会によって承認された。動物を無作為に2群に分けた。群1(n=14)は、損傷後にClotFoam投与を受けた動物で構成された。群2(n=6)は、中等度から重度の出血を止めるために損傷後にGelfoam(登録商標、Pfizer)を投与された動物で構成された。この研究は、術中出血を投与10分以内に制御できるかどうかを判定するように設計された。
外科的処置:ClotFoamを、3つの外科的プロトコルすなわち正中開腹による肝切除と部分腎切除と、脾臓裂傷とで試験し、各プロトコルに20頭すなわち全部で60頭を割り当てた。プロトコルは動物実験委員会によって承認された。動物を無作為に2つの群に分けた。群1(n=14)は、損傷後にClotFoam投与を受けた動物で構成された。群2(n=6)は、中等度から重度の出血を止めるために損傷後にGelfoam(登録商標、Pfizer)を投与された動物で構成された。動物数は、基準0.8に設定した検出力分析を用いて決定した。この研究は、止血剤が術中出血を圧迫なしに投与5分以内に制御できるかどうかを判定するように設計された。投与5分以内に圧迫なしで、更に10分以内の再出血なしに止血を達成できることにより、止血シーラントの治療的有用性が実証された。止血を評価するとすぐに、腹部の切開部を閉じた。10分以内に止血に達さなかった動物は安楽死させた。14日目または15日目の実験終了と同時に、生存した動物を安楽死させ、手術領域を視察し、肉眼検査および顕微鏡検査のために組織を回収した。
肝切除モデル:右肝部の部分切除を行った。肝臓の右葉の末端4cmをはっきりと分離し摘出して、10秒間出血させた。ClotFoamを40cc投与し、5分時点で止血を評価した。
部分腎切除:腎臓を後腹膜から完全に固定化(immobilize)した。腎尖の末端3cmを完全に分離させ除去し、10秒間出血させた。ClotFoamを投与し、5分時点で止血を評価した。
脾臓裂傷:3×3cmの正方形の裂傷を形成し、脾臓の前面から摘出し、10秒間出血させた。ClotFoamを投与し、5分時点で止血を評価した。
Figure 2015535192
免疫応答:0日目、7日目または14日目に対照のブタおよびClotFoam処置のブタから採取された血清を用いて、ゼラチンまたはBSAに対して試験したときに観察したOD読取りでは、有意差はなかった。我々は、実験に用いたブタでは、試験時においてゼラチンまたはBSAに対する検出可能な抗体が産生されなかったものと判断する。
生体適合性および生分解(組織学的検査)
ほとんどの臓器の外見は正常であった。シャム検体から採取したサンプルと比較した場合のClotFoam処置の動物。全動物の肺において異常が認められた(リンパ球浸潤)。消火器組織および腹壁において、炎症性変化およびリンパ球浸潤が見られた。炎症性変化は、内部外傷と、異物(ClotFoam)に対する正常な炎症反応とによって現れる。
結論:この研究のデータから、ClotFoamは、大量出血をもたらした肝臓創傷に対する術中止血の達成率が100%であったことが示される。止血が5分以内に達成されたので、ClotFoamの使用により、腹腔鏡下処置で用いられる従来の縫合方法よりも止血の達成に要する時間が短くなるとの結論を下す。

Claims (21)

  1. 患者身体の損傷組織からの失血を圧力を加えることなく停止するための、4種類の溶液を含有する止血組成物であって、前記4種類の溶液は、
    a)金属イオンおよびゲル化促進剤の存在下で、pHが約8.3のバッファーにおいて、スクロースと、ポリビニルピロリドンと、重炭酸ナトリウムおよびリン酸二水素から成る水溶性フォーム誘導剤と、ヒト血清アルブミンと混合される硬骨(魚類)ゼラチンタイプAと、
    b)56.0%以上68.0%以下のカルボン酸を含有するスクロースのアリルエーテルと架橋するポリアクリル酸(カルボマーホモポリマー)と、
    c)pH3.4〜pH4.0の酸性溶液中のフィブリンモノマーであって、pHが酸性から中性(7.0〜7.2)に変化すると重合するフィブリンモノマーと、
    d)フィブリンポリマーを安定化するための、へぺス(HEPES)バッファー中のカルシウム非依存性トランスグルタミナーゼ酵素および塩化カルシウムと、
    を具備する、止血組成物。
  2. 前記a)のアルカリ性の前記バッファーの濃度は、炭酸ナトリウム/炭酸水素で約0.5Mから0.75Mの範囲である、
    請求項1に記載の組成物。
  3. 前記d)は、前記フィブリンモノマーの重合に適する約20mMの濃度でカルシウムイオン源を備える、
    請求項1に記載の組成物。
  4. 前記b)の前記二価イオンは、カルシウムイオン、亜鉛イオンおよびマグネシウムイオンからなる群から選択され、
    前記二価イオンは、フィブリン重合の速度と、フィブリンフィラメントの長さおよび強度とを実質的に高め、足場の重合に要する時間を低減する、
    請求項1に記載の組成物。
  5. オートクレーブ、UV照射および濾過法の組合わせにより無菌化することができる、請求項1に記載の組成物。
  6. 前記c)の前記フィブリンモノマーの濃度は、酢酸中のフィブリンで約12mg/mLから40mg/mLの範囲内である、
    請求項1に記載の組成物。
  7. 非炎症性であり、投与対象の組織との生体適合性を有する、請求項1に記載の組成物。
  8. 止血の効果は、術中出血または外傷後の失血の制御を指す、
    請求項1に記載の組成物。
  9. 溶液Aのゲル化促進剤の添加により、前記4種類の溶液を混合すると、流動測定値g’として計測されるゲル強度によって定められる粘弾特性が6,000dyn/cm2を上回る3Dポリマーが産生され、前記組成物が血流に抵抗し、創傷上の適所に留まることができるようになる、
    請求項1に記載の組成物。
  10. 前記a)の前記ゲル化促進剤は非炎症性である、
    請求項1に記載の組成物。
  11. 前記c)の前記フィブリンモノマーは、トロンビンと、保存中にフィブリンモノマーの未成熟重合を触媒する外因性酵素とを実質的に含まない、
    請求項1に記載の組成物。
  12. 患者身体の損傷組織からの失血を圧力を加えることなく停止するための、患者身体の損傷組織を封止する方法であって、ヒドロゲルキャリアおよびフィブリンモノマーを組み合わせて利用し、
    a)混合装置内で以下の成分、すなわち、
    (i)第1の成分(a)、すなわち、金属イオン存在下で、pHが約8.3のバッファーにおいて、スクロースと、ポリビニルピロリドンと、重炭酸ナトリウムおよびリン酸二水素から成る水溶性フォーム誘導剤と、ヒト血清アルブミンと、α−ガラクトシダーゼ分解カラギーナン、硫酸化アルギン酸、ヒアルロン酸塩およびヒアルロン酸とから成る群から選択されるゲル化促進剤と混合される硬骨(魚類)ゼラチンタイプAと、
    (ii)第2の成分(b)、すなわち、56.0%以上68.0%以下のカルボン酸を含有するスクロースのアリルエーテルと架橋するポリアクリル酸(カルボマーホモポリマー)であって、中和された0.5%水分散液の粘性が30,500〜39,400センチポイズである、ポリアクリル酸と、
    (iii)第3の成分(c)、すなわち、pH3.4〜pH4.0の酸性溶液中のフィブリンモノマーであって、pHが酸性から中性(7.0〜7.2)に変化すると重合するフィブリンモノマーと、
    (iv)第4の成分(d)、すなわち、フィブリンポリマーを安定化/架橋するための、へぺス(HEPES)バッファー中のカルシウム非依存性トランスグルタミナーゼ酵素および塩化カルシウムと、
    を混合して、フォームすなわち止血組成物を生成するステップと、
    (b)体腔、臓器または組織の処置部位に前記フォームを接触させて、前記フォームの非動的な非架橋の前記フィブリンモノマーが前記部位の湿組織に付着し前記患者の血液中でマトリックスを形成するように、前記フォームを、前記混合装置の出口を通じて前記部位に送達および/または散布するステップと、
    を具備し、
    溶液a、b、cおよびdの混合により、混合物全体のpHを中和することで前記非架橋フィブリンモノマーを動的にし、前記非架橋フィブリンモノマーがフィブリンシーラントに変換されることによって、血液凝固および損傷組織の接着特性を誘導する、
    方法。
  13. 前記処置部位は、前記患者の皮膚、腹腔、胸部、心臓血管系、リンパ系、肺系統、耳、鼻、咽頭、目、肝臓、脾臓、頭蓋、脊髄、顎顔面、骨、腱、膵臓、尿生殖路および消化管のうち少なくとも1つを含む、
    請求項12に記載の方法。
  14. 前記混合装置は、空気圧で動作し4つの注射外筒を備えるシリンジであり、各注射外筒は成分溶液a、b、cおよびdのうち1つを収容する、
    請求項12に記載の方法。
  15. 前記接着性発泡ヒドロゲルは、成分溶液a、b、cおよびdの混合から約10秒未満に形成される、
    請求項12に記載の方法。
  16. 形成される前記接着性発泡ヒドロゲルは、約37℃で約5Hzの周波数および約2%の応力ひずみにおいて、時間に応じた流動測定によってモニターされる貯蔵率(G’)が約6,000dyn/cm2を達成する、
    請求項12に記載の方法。
  17. フォーム形成は、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)の単純バッファーを含む混合物内でのカルボマー934およびリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)の化学反応によって誘導され、二価イオンまたは界面活性剤の存在下で二酸化炭素(CO2)が放出される、
    請求項12に記載の方法。
  18. 成分a、b、cおよびdの混合によって産生される前記フォームは、非発熱性のフォームであり、混合ステップ(a)の前の前記成分の体積よりも約400%大きい体積を有する、
    請求項12に記載の方法。
  19. 前記a)の前記ゲル化促進剤は非炎症性である、
    請求項12に記載の方法。
  20. 前記フィブリンモノマーは、酢酸または酸性バッファーのいずれかに溶解可能である、
    請求項1に記載の組成物。
  21. ヒアルロン酸から成るゲル化促進剤の追加により、腔内手術後の接着の形成が妨げられるか低減される、
    請求項1に記載の組成物。
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