JP2003043197A - 電子線照射装置のフィラメント断線検出機構 - Google Patents

電子線照射装置のフィラメント断線検出機構

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JP2003043197A
JP2003043197A JP2001226307A JP2001226307A JP2003043197A JP 2003043197 A JP2003043197 A JP 2003043197A JP 2001226307 A JP2001226307 A JP 2001226307A JP 2001226307 A JP2001226307 A JP 2001226307A JP 2003043197 A JP2003043197 A JP 2003043197A
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grid
filaments
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JP2001226307A
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Inventor
Shinji Asou
神治 麻生
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Nissin High Voltage Co Ltd
Original Assignee
Nissin High Voltage Co Ltd
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  • Testing Of Short-Circuits, Discontinuities, Leakage, Or Incorrect Line Connections (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 10本を越えるフィラメント(特に25本以
上)が並列に接続された場合でもフィラメントが切れた
ことを検知でき、同時に部分的な電子線分布の悪化を検
出することができる電子線照射装置を与えること。 【解決手段】 引出電極を3以上のグリッドA、B、
C…に分割し、分割されたグリッドに流れるグリッド電
流I、I、I、…の差を検知し、差の全グリッド
電流の和に対する比が基準値より大きければフィラメン
ト断線と判断する。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は複数のフィラメント
をもつ非走査型の電子線照射装置において、フィラメン
ト断線を検知する機構に関する。電子線照射装置は真空
中でフィラメントを加熱し熱電子を放出させ加速して、
照射窓を通過させて大気中に取り出し被処理物に照射し
て高分子架橋、塗膜硬化、殺菌などの処理を行うもので
ある。電線ケーブルの被覆の高分子架橋、医療用機器の
殺菌、印刷物の処理、樹脂被覆の硬化処理など様々の用
途に用いられる。被処理物の形状や処理の目的によって
加速電圧は異なる。 【0002】電子線照射装置は、電子線を発生するフィ
ラメント、フィラメント等を収容する真空チャンバ、加
速用の高圧電源、フィラメント電源、加速管、照射窓、
X線遮蔽筐体、搬送機構、冷却機構等を備える。電子線
が空気中で被処理物、コンベヤ、壁などに衝突するとX
線が発生する。それを遮蔽するために厚い金属の遮蔽機
構が必要である。それが前記の筐体である。筐体の内部
に被処理物を通すから無端周回コンベヤなどの搬送機構
が必要になる。またX線によって酸素が酸化されてオゾ
ンになる。オゾンの発生を嫌う場合は、窒素ガスを吹き
込むようになっている。窓箔はアルミ箔やチタン箔であ
る。大気圧が掛かっており電子線が透過することによっ
て加熱されるので、そのままだと溶けるから風冷、水冷
などの冷却機構が設けられる。 【0003】加速電圧が5MeV〜500keVといっ
た高い電圧である場合は、走査型といって充分に加速さ
れた細い1本の電子ビームを偏向コイルによって左右前
後に走査するようになっている。そのため三角型の走査
管が、加速管に続いて設けられる。走査管の下の開口部
が照射窓である。照射窓の直下が電子線照射領域であり
搬送機構は照射領域を通過するようになっている。 【0004】加速電圧が500keV〜数十keVとい
う低い電圧である場合はフィラメントとシールドの間の
短い距離で加速できる。電子速度も遅くて細いビームに
ならない。それでビーム走査しないで初めから広い断面
をもつ電子線を発生させるようにする。ビーム走査しな
いから非走査型と呼ぶ。あるいはエリア型ともいってい
る。エリア型電子線照射装置は、広い実効断面積をもつ
ビームを発生させるために多数のフィラメントを平行に
張って並列に共通の電極間に接続する。全てのフィラメ
ントに同一の電流を流して負電圧にバイアスすれば全フ
ィラメントから熱電子が出るから実効面積の広い電子線
ビームが発生することになる。 【0005】並列接続なのでk番目のフィラメントに流
れる電流をJとすると全フィラメント電流はΣJ
よって与えられる。全電圧をVとし、k番目のフィラ
メントの抵抗をRとすると、J=V(一定)
である。フィラメントの材質や線径は同一であるから抵
抗Rも本来同一である。しかし温度とともにフィラメ
ントの抵抗は増加するし劣化の度合いもフィラメントに
よって異なるから、必ずしもRが全て等しいわけでは
ない。対象物(被処理物)と処理目的にもよるがフィラ
メントの数は10本、15本とか20本のようなものが
ある。例えば被処理物が170cm幅のシート部材でフ
ィラメントの数が25本というものがある。本発明者が
知る限りでは、それが現在までに製造された非走査型電
子線照射装置のフィラメント数の最大値である。 【0006】 【従来の技術】本発明はフィラメントの断線を検知する
方法を問題にする。常時電子線を発生させ被処理物に照
射している電子線照射装置においては、フィラメントの
一部が少しずつ蒸発し次第にやせてくる。線径が細くな
り、やがて断線するということも考えられる。電子線照
射処理をしている間にもしもフィラメントのいずれかが
切れると電子線線量が規定値より低くなるから被処理物
は不良品となってしまう。不良品をただちに除きフィラ
メントを交換する必要がある。だからフィラメント切れ
を検出する機構が必要である。 【0007】現在採用されているフィラメント切れを検
出する機構は次のようなものである。フィラメントの電
圧Vとフィラメントに流れる全電流I(全てのフィ
ラメントに流れる電流の和I=ΣJ)とを常時モニ
タして、V/Iの値を所定の基準値と比較する。そ
して基準値との差が大きくなった時にフィラメント切れ
と判断する。Iとその基準値を比較するのではない。
被処理物によってフィラメント電流を変更することはよ
くあることであり、Iそのものに基準値という概念を
与えることではない。しかし正常な場合、全抵抗はだい
たい一定であろうから全抵抗V/Iについて基準値
を決め、それと現在値とを比較してフィラメント断線を
検出するようにしていたのである。 【0008】しかし本発明者が知る限り、そのようなフ
ィラメント切れ検知装置が作動したことはかつてなかっ
た。それはどうしてか?フィラメントが断線してから交
換するというのでは、その間真空を破って真空チャンバ
を開けて古いフィラメントを取り除き新フィラメントを
取り付けるという修繕操作をしなければならない。電子
線照射処理が長い間中断されてしまい、それは望ましい
ことではない。 【0009】多くの場合、フィラメントの寿命が2年と
か3年になるようなゆとりのある電流量で使っている。
正月休みとか盆休みのように長期間、電子線照射装置運
転を中断するときに電子線照射装置を開き分解して全て
のフィラメントを一挙に交換してしまう。寿命がくる前
に余裕をもって、1年に一度交換するようにしている。
それで電子線照射中にフィラメントが切れるというよう
な事故はこれまで起こった事はない。つまりフィラメン
ト切れに応じて随時交換するのではなくてこれまでは定
期交換していたのである。だからV/Iを基準値と
比較してフィラメント断線を検出するという現行の検出
機構が作動したことはなかったのである。 【0010】現行のフィラメント断線検出機構がかつて
働いたことがないのであるから、そのような断線検出機
構がはたして最良のものかどうかということは現実には
わからないわけである。だから実際に従来の機構にどの
ような欠点があったのかということは事例に即してはっ
きりとはわからない。フィラメント断線機構がこれまで
働かなかったから、それが不要だということにはならな
い。さらにフィラメント断線検出機構の改良も不要だと
はいえない。 【0011】もしも電子線処理中にフィラメントが断線
したとすると、その時の被処理物については照射線量不
足になり、それは不良品として取り除かれるべきであ
る。だから鋭敏にフィラメント断線を検出する機構は電
子線照射装置にとって依然として必要である。 【0012】幾つかの電子線照射装置フィラメント切れ
検出装置が提案されているので紹介する。 【0013】[従来例1(特開平11−84099号
「電子線照射装置」)]は偶数本のフィラメントを持つ
電子線照射装置において、フィラメントを二つの群
、Gに分離している。二つの群の給電線A、A
を反平行に配置し変流器(CT)に通す。変流器の電
流は(A−A)を検出するから正常時は0である。
どちらかの群にフィラメントが断線すると変流器に電流
が流れる。というわけであるが、これはフィラメント群
の給電線を二つに分割しなければならないという欠点が
ある。 【0014】また同時に両方の群のフィラメント1本が
断線した場合それを検出できない。二つの群のフィラメ
ントの抵抗変化が同一でないから余裕を見なければなら
ないという欠点がある。また2つの群に分けるだけだか
ら、一群のフィラメント数が増えると精度が落ちる。2
0本のフィラメントの場合10本と10本に分けること
になり、それなりに精度を確保できよう。が、もし50
本のフィラメントがあると25本ずつに分けなければな
らない。すると誤動作が増える。フィラメント数が奇数
の場合(25本)は適用できない。 【0015】[従来例2(特開平11−109098号
「電子線照射装置」)]はフィラメント全電流Jの微
分を計算し断線によって微分パルスが出るので、それに
よってフィラメント切れを検出するとしている。フィラ
メントが10本程度だと1本の断線により微分変化は検
知できようが、30本もあると微分パルスが小さくノイ
ズに埋もれてしまい検出できないようになる。微分であ
るからノイズやサージに弱くて高圧架台の上に乗せる回
路としては好ましくない。 【0016】[従来例3(特開2000−121800
「電子線照射装置」)]はフィラメント電流の時間変化
が基準値より大きいときに断線と判断するとしている。
これは上記の従来例2と同じ思想であり従来例2と同じ
欠点をもつ。いずれもフィラメント断線をフィラメント
電流自身によって検出しようとしている。全て欠点があ
って多数のフィラメントの場合には全く役に立たない。 【0017】 【発明が解決しようとする課題】1.これまで非走査型
電子線照射装置のフィラメントの総数の最大は25本程
度であることを述べた。多くの場合フィラメントは10
本程度である。これまでのフィラメント切れ監視機構は
フィラメントの全電流を見ていた。そして、V/I
が規定値Rより大きくなるとフィラメント切れと判断
するようになっていた。 【0018】規定値というのは全抵抗値ということにな
るが、それは温度変化によって運転開始時と定常運転時
で相違する。また経時的にもある程度変化する。その差
がΔを越えると断線だと判断するが、許容差比Δをあま
り小さくすると誤動作が発生する。 【0019】 |(V/I−R)/R|≧Δ (断線) 【0020】例えばフィラメントの数が10本だとする
と、1本のフィラメントが断線したとき電流は10%減
少する。つまりV/Iの増加は10%もある。Δを
5〜8%に設定しておいても1本のフィラメント断線を
検出することはできる。 【0021】現在の電子線照射装置で最大フィラメント
数は25本程度であるが、その場合1本が切れた場合、
電流の減少は4%ということになる。全抵抗V/I
の増加は4%ある。Δを3〜4%に設定することによっ
て1本のフィラメント断線を検知できる。 【0022】しかし被処理物の大型化によって、電子線
照射装置のフィラメント数が30本を越えることも考え
られる。50本というものも製造されるかもしれない。
そうなると、1本のフィラメントが切れても電流変化は
2%にすぎない。Δをあまり小さくすると誤動作する。
だから50本ものフィラメントがある場合1本の断線を
上記のような手段では検出できない。 【0023】2.もう一つの問題は、運転時間の経過に
伴ってフィラメントの径が細くなり、抵抗値が上昇する
ということである。フィラメント切れでなくても経時的
にV/Iが増加する。そうすると上記にように基準
値Rを固定ししかもΔが小さければ誤動作してしま
う。経時的変化に対応して基準値Rを変えなければな
らない。 【0024】 フィラメントが切れたことを検出できず
に生産が継続されると、その切れたフィラメントの直下
の電子線量は減少し、その部分に対応する被照射物の線
量が不足し、不良品を生み出すことになってしまう。フ
ィラメントは被処理物の搬送方向に平行になるように張
られている。20本の内1本のフィラメントが切れた場
合被処理物全面の電子線照射量が19/20に低減する
のではなくて、ある部位だけ電子線照射量が0になる。
だからそこは全く電子線処理されず被処理物全体として
不良品となる。 【0025】 【課題を解決するための手段】本発明の電子線照射装置
フィラメント断線検出機構は、引出電極を3以上に分割
し、それぞれに流れ込む熱電子量を測定する。そしてそ
れぞれの熱電子量の差を基準値(引出電極に流れ込む熱
電子量に比例する値)と比較し熱電子量の差が基準値よ
り大きい場合フィラメント切れと判断する。比較の結果
は、光の有/無に変換し、大地電位部でその情報を受け
取る。 【0026】フィラメント総数30本程度の場合、引出
電極は3分割が良いが、フィラメント数がそれより多い
場合は、一つの引出電極あたりのフィラメント数が10
本ぐらいになるよう分割数、演算回路を増せば、フィラ
メント切れ検出性能は低下しない。 【0027】本発明は従来のようにフィラメント電流そ
のものを測定するのではなくて、引出電極に流れ込む電
流を測定する。それが一つの工夫点である。もう一つの
工夫は引出電極を3以上(グリッド分割数f≧3)に分
割してそれぞれに流れる電流を測定するようにしたこと
である。 【0028】 【発明の実施の形態】フィラメント電流というのはフィ
ラメント毎の電流Jの和ΣJであるが、共通の電極
に全てのフィラメントの両端が接続されてしまうから、
個々のフィラメント電流を測定することはできない。つ
まりフィラメント電流は総和ΣJしかわからない。 【0029】本発明者はフィラメント電流ではなくて引
出電極(グリッド)の電流によってフィラメントの断線
を検知することができるということに気付いた。引出電
極を幾つかに分割した場合、フィラメントが切れた位置
に対応する引出電極部分へ流れる電流は他の引出電極部
分のそれに比べて小さくなる。それを演算回路で検出し
光の信号にし、大地電位部で受取り、フィラメント切れ
を検出した場合、電子線照射装置の運転を停止する。 【0030】エリア型電子線照射装置においては円筒形
真空チャンバの内部に円筒形のシールドがある。シール
ドのまん中にフィラメントがあって、シールドの開口部
に引出電極がある。引出電極とフィラメントの間には引
出電圧Vexが掛かっている。引出電極と大地電圧との
間には負の高電圧がかかっている。その高電圧が加速電
圧Vaccである。引出電極というのは格子状の電極で
あり、フィラメントの並ぶ方向(y方向)に長く伸びて
いる。 【0031】引出電極を例えば3分割して、フィラメン
トから部分引出電極に流れ込む熱電子電流を測定する。
引出電極は空間的な広がりをもつので、3つに分割して
個別の格子に流れる電流を測定することができる。引出
電極を分割したものをここではグリッドと呼ぶことにす
る。分割した3つのグリッドに流れる電流をI
、Iとする。これらの格子に流れる電流をここで
はグリッド電流と呼ぶ事にする。 【0032】引出電極を3つの同じ大きさに分割するか
ら、正常時においてこれらのグリッド電流は等しいはず
である。I=I=I。ところがフィラメントの1
本が断線するとそのフィラメントの直下にある引出電極
に入る電子線電流が減少する。例えばC格子に熱電子が
入るべきフィラメントが断線したとすると、Iが減少
する。これによって、フィラメントの断線が検出される
ことになる。 【0033】これらのグリッド電流がどういうものであ
るのか?ということを説明する。引出電極に流れるグリ
ッド電流をフィラメント電流と混同してはならない。さ
らに電子ビーム電流とも混同してはならない。熱電子と
してフィラメントから電子が放出されるが電子流は、例
えばリチャードソンの放射式 【0034】i=ATexp(−φ/kT) 【0035】のようにフィラメントの温度と仕事関数φ
をkTで割った値の関数である。フィラメント温度Tは
フィラメント電流によるが、フィラメント電流Jと電
子放射電流J(全電子ビーム電流)とは簡単な関係に
ない。電子放射電流Jは、一部が引出電極に衝突して
失われる。これがグリッド電流Iである。残りはグリ
ッドを通過して加速され、照射窓を越えて被処理物にま
でいたる。窓箔で失われる電子流Jと対象物に当たる
電子流Jの合計が、グリッドを通過した電流J に等
しい。 【0036】J=J+J (1) 【0037】全電子ビーム電流をJとすると、これは
グリッド電流Iと、グリッド通過電流Jの和であ
る。 【0038】J=I+J (2) 【0039】全電子ビーム電流Jは測定されている。
グリッド電流Iと、全電子ビーム電流Jが比例関係
にある。 【0040】I=KJ (3) 【0041】Kの値はグリッドのメッシュの密度や線径
によって異なるが、例えば20〜30%程度である。グ
リッド電流Iは損失になるからKは小さい方が良い。
当然に 【0042】 J=J+J=(1−K)J (4) 【0043】である。式(3)の関係があるから、電子
ビーム電流Jの値は、グリッド電流Iから求めるこ
とができる。 【0044】m本ずつのフィラメント群が3つあるか
ら、グリッド電流はm本のフィラメントからグリッドへ
流れる電子電流のK倍ということになる。もしもフィラ
メントが1本断線すると、それが含まれる群のグリッド
の電流は、1/mだけ減少する筈である。グリッド電流
、I、Iは正常時は等しいが、フィラメントの
どれかが断線すると、それが属する群のグリッド電流は
1/mだけ減少する。 【0045】mを10程度にすると、その減少分を検出
することができる。それでフィラメント数が30本なら
フィラメント群を3つに分割し、50本ならフィラメン
ト群を5つに分割し、というようにすればフィラメント
断線は常に検出できることになる。 【0046】以上の説明によって、グリッド電流とフィ
ラメント電流、電子線電流の関係がわかる。 【0047】 【実施例】図1によって本発明の実施例の構成を説明す
る。大地電位をeとする。大地電位に正極が接続された
高圧電源1は加速電圧hを与えるものである。高圧電源
1は実際には商用交流を整流して倍電圧回路で昇圧しコ
ンデンサに蓄電したものである。エリア型の電子線照射
装置の加速電圧であるから、数十keV〜500keV
の程度である。それより上の部分は全て高圧架台の上に
置かれ、地上とは絶縁されている。それに続いて交流の
フィラメント電源2がある。フィラメント電源2はトラ
ンス3によって適当な電圧に変換されてフィラメント7
に与えられる。トランス3の一次側である大地側と二次
側である高圧部は電気的に遮断されなければならない。
そのためにトランス3が介装されている。その理由を簡
単に述べる。 【0048】フィラメント7には加熱のための交流電流
が与えられるが、フィラメント7の電位は直流的には一
定でなければならない。そうでないと加速電圧が揺らぐ
からである。フィラメント7と引出電極8の間に引出電
源4が介装される。引出電源4はフィラメントから熱電
子を引き出すための直流の引出電圧Vexを与えるもの
である。ここでは直流を作り出すためにフィラメント電
源2の電圧を取っている。トランス3の二次側のs、t
電極から交流を取り、これを整流して直流を得てそれを
引出電圧Vexとしているのである。 【0049】引出電源4の出力の負端子はトランス3の
二次側6の中心のタップmにつながっている。引出電源
4の出力の正端子は先述の高圧電源1の負電極hにつな
がっている。だからフィラメント中心の電位mは、h+
exとなる。これが加速電圧Vaccに等しい。引出
電圧Vexは小さい電圧であり、大部分はhである。フ
ィラメントと引出電極8の間に引出電圧がかかっている
ので、フィラメントの熱電子は引出電極8に引き寄せら
れ、引出電極8を越えて加速され照射窓へと飛んでゆ
く。 【0050】フィラメント7は平行なWなどの金属の線
である。フィラメント7はF、F 、…、F30とい
うように多数設けられるが何れも両端が電極s、tにつ
ながっている。これまで述べたフィラメント電流ΣJ
というのは、電極s、tに電流計を入れて測定した電流
である。そのような電流計はこの回路に含まれるが本発
明の工夫には無関係であるから図示していない。 【0051】フィラメント7の長さの方向をx方向とす
る。それは被処理物の搬送方向である。照射窓はxy面
上の矩形の開口部である。照射窓の幅方向がy方向であ
ってその方向に長い。前後方向がx方向でありフィラメ
ントはその方向を向く。フィラメントの並存して延長す
る方向がy方向である。電子線の出る方向がz方向とな
る。 【0052】フィラメント7の直下(z方向)に引出電
極8がある。従来は引出電極8は一体のものであったが
本発明ではそれを3つに分割している。3つに分割した
引出電極8をそれぞグリッドX、X、Xとする。
引出電極8は引出電源4の出力の正電極(電圧h)に接
続されるが、ここでは3つに分かれているのでそれぞれ
が抵抗R、R、Rを介して引出電源4の正電極に
接続される。さらに全電流を求めるために、合一点から
引出電源4までの経路に抵抗Rを接続している。 【0053】これらの抵抗R、R、Rの両端電圧
差によって、グリッドX、X、Xに流れるグリッ
ド電流I、I、Iが分かる。またRの両端電圧
差によって全グリッド電流I=I+I+Iが求
められる。この例では、30本のフィラメントがあっ
て、フィラメントから出た熱電子を3つのグリッドで引
き出しているから、フィラメント10本ずつの熱電子電
流がグリッドに流れておりI=I=Iであるはず
である。 【0054】演算回路10に4つのグリッド電流I
、I、Iを入力する。演算回路10は図2に示
すように、入力端子A、B、C、Dがあって、それにそ
れぞれ、グリッド電流I、I、I、Iを入力す
るようになっている。グリッド電流対応記号に接続して
いるから、以後簡単に、A、B、C、Dをグリッド電流
、I、I、Iと同一のものとして説明する。
演算回路10はたとえば3つの比較器Y、Y、Y
を含む。その出力はLED、LED、LEDに接
続される。 【0055】Y: |A−B|とkDを比較し、|A
−B|<kDならば出力はY=0、|A−B|≧kD
なら出力はY=1とする。出力1ならLEDを発光
させる。 【0056】Y: |B−C|とkDを比較し、|B
−C|<kDならば出力はY=0、|B−C|≧kD
なら出力はY=1とする。出力1ならLEDを発光
させる。 【0057】Y: |C−A|とkDを比較し、|C
−A|<kDならば出力はY=0、|C−A|≧kD
なら出力はY=1とする。出力1ならLEDを発光
させる。 【0058】ここでkというのは定数であり、1/8m
〜1/3m程度とすることができる。もしもm本のグリ
ッドが一つのグリッド電流を形成するとし、正常時には
A=B=C=im、D=3imとなる。iはフィラメン
ト1本あたりのグリッド電流である。フィラメントが1
本断線したとすると、他のフィラメントに流れる電流は
3m/(3m−1)に増大する。断線フィラメントを含
まないグリッドの電流は、3im/(3m−1)とな
る。断線フィラメントを含むグリッドの電流は、3mi
(m−1)/(3m−1)となる。これらの差である二
つの不等式の左辺は3mi/(3m−1)となる。全グ
リッド電流Dは依然としてD=3miである。 【0059】フィラメント断線を検出できるとすれば、 k<1/(3m−1) (5) 【0060】であることが必要である。これは直観的に
分かりにくい値である。等号のある式で表したい。それ
より少し小さい値で書けば、 【0061】k≦1/3m (6) となろう。 【0062】誤動作を避けるためにkをそれほど小さく
できない。とすれば、1/8m<k≦1/3m程度に決
めれば良い。m=10ならば、1/80<k≦1/30
である。式(5)や(6)はグリッド分割数fを3とし
た場合である。フィラメントが10本程度に分割グリッ
ドを一つ対応させるとすれば、フィラメントが50なら
ば、グリッド分割数fを5にした方が良い。フィラメン
トが40ならfを4とするのがよかろう。一般にグリッ
ド分割数をfとすると下限をも含めた式(5)、(6)
に対応する式は、 【0063】 1/2fm≦k<1/(fm−1) (7) 1/2fm≦k≦1/fm (8) となろう。 【0064】発光ダイオード(LED)11の信号は、
光伝送媒体12を経て、受光器(フォトトランジスタ)
13に入る。受光器(フォトトランジスタ)13の出力
は検出回路14に入力される。光伝送媒体12は空間か
光ファイバである。これは高圧架台と、大地電圧を絶縁
するために必要である。空間伝搬とする場合、LEDと
フォトトランジスタの間は50cm〜100cmの程度
である。フィラメントが正常なら、Y=Y=Y
0であり、LED〜LEDは消えているから、受光
器13に光が入らない。フィラメントが1本でも断線す
ると、比較器Y、Y、Yのいずれかが1になり、
LEDのいずれかが点灯する。受光器13に光が入り、
地上側の検出回路14はフィラメント断線である旨の信
号を出す。それとともに電子線照射装置は電子線を止め
て処理を停止する。 【0065】ここでは、3つのLEDの信号を一つのフ
ォトトランジスタ(PTR)13で受けているから、和
演算回路になっている。 【0066】 PTR=Y+Y+Y (9) 【0067】だからフィラメント切れを検出できるが、
どの位置にあるフィラメントが切れたかという事は分か
らない。 【0068】あるいは、3つのLEDに対応して、3つ
の受光器(3つのフォトトランジスタ)PTR、PT
、PTRを設けることにすれば、 【0069】 PTR=Y (10) PTR=Y (11) PTR=Y (12) 【0070】断線フィラメントを含む群のLEDだけが
点灯し、それに対応する受光器がそれを感受するからフ
ィラメント切れの大体の場所を求めることができる。正
確な位置は被処理物(試料)に線量検出テープを貼り付
けて照射窓の下を通すことによってわかる。 【0071】ここで受光器をフォトトランジスタとして
いるのは、電子線照射装置の信号伝達系において、LE
Dとフォトトランジスタの組み合わせになるカップラに
実績があるからである。フォトトランジスタには増幅機
能もあって使いやすい。しかし受光器としてフォトダイ
オード(PD)を用いても良いのはもちろんである。 【0072】次にフィラメント数が30本の場合で全電
子ビーム電流が30mAの場合と100mAの場合の例
を述べる。 【0073】[フィラメント総数30本、引出電極分割
数3の例] 1.全電子ビーム電流J=30mA時 正常時、フィラメント1本当たりから放出される電子線
電流は、30mA/30本=1mAである。フィラメン
ト1本あたりからグリッドへ流れる電流はそれにKを掛
けた値であり、1mA×Kである。3つのグリッド電流
は全てこの値となる。Kは先述のように電子放出電流の
内、引出電極に流れ込む比率で0.2〜0.3程度の一
定値である。 【0074】異常時で、1本切れたと仮定する。電流制
御をしているから全電流がJ=30mAは変わらな
い。全てのフィラメントから出る電子線電流によるグリ
ッド電流は30mA/29本×K=1.034mA×K
となる。 【0075】断線フィラメントを含まないグリッドは1
0本のフィラメントが生きているからグリッド電流は1
0をかけて、1.034mA×K×10=10.34m
A×Kとなる。 【0076】断線フィラメントを含むグリッドは9本の
フィラメントが電子線を出すから、1.034mA×K
×9=9.31mA×Kとなる。 【0077】3つのグリッド電流I、I、Iは、
10.34KmA、10.34KmA、9.31KmA
である。 【0078】差: (10.34−9.31)mA×K
=1.03mA×K 【0079】たとえば基準値を正常時のフィラメント1
本あたりの電子線電流とすると、 基準値: 30mA×K/30=1mA×K となるが、 1.03mA×K>1mA×K となってフィラメント切れを検知することができる。 【0080】これは基準値を、大きく(k=1/3m)
設定しているが、より小さく決めることもできる。基準
値の倍率kと、グリッド電流の倍率Kを混同してはなら
ない。 【0081】2.全電子ビーム電流J=100mAの
場合 正常時、フィラメント1本当たりが生ずる熱電子電流
は、100mA/30本=3.3mAである。フィラメ
ント1本あたりグリッドへ流れる電流は3.3mA×K
である。 【0082】異常時、1本切れた場合は、全電流は不変
であるから、フィラメント1本当たりが生ずる熱電子電
流は100mA/29本=3.448mAとなる。正常
のグリッドのフィラメントは10本生きているからグリ
ッド電流は3.448mA×10×K=34.48mA
×Kとなる。断線フィラメントを含むグリッドの電流は
3.448mA×9×K=31.03mA×Kである。 【0083】3つのグリッド電流I、I、Iは3
4.48mA×K,34.48mA×K、31.03m
A×Kである。 差: (34.48−31.03)mA×K=3.45
mA×K たとえば基準値を正常時のフィラメント1本あたりの電
子線電流とすると、 基準値: 100mA×K/30=3.33mA×K となる。 【0084】3.45mA×K>3.33mA×K 【0085】となってフィラメント切れを検知すること
ができる。これも基準値を最大値(k=1/3m)に設
定したものである。 【0086】 【発明の効果】本発明は、複数のフィラメントを有する
非走査型電子線照射装置において、フィラメント電流を
監視するのではなくて、フィラメント10本程度ごとに
分割した引出電極(グリッド)に流れるグリッド電流の
食い違いを検出することによってフィラメント断線を検
出する。 【0087】フィラメント本数の増加、フィラメントの
経時変化によって影響を受けることなくフィラメント切
れを正確に検出できる電子線照射装置を提供することが
できる。 【0088】また分割数を増やし受光器の数を発光素子
(LED)の数に等しくし、発光素子と受光素子を対応
させる事により照射量分布の変動をとらえる事も可能で
ある。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の電子線照射装置のフィラメント断線検
出機構を示す概略構成図。 【図2】本発明の電子線照射装置のフィラメント断線検
出機構において、グリッド電流の差を求めて基準値と比
較する演算回路の一例を示す回路図。 【符号の説明】 1 高圧電源 2 フィラメント電源 3 トランス 4 引出電源 5 一次側 6 二次側 7 フィラメント 8 引出電極 10 演算回路 11 LED 12 光伝送媒体 13 受光器(フォトトランジスタ) 14 検出回路 J k番目のフィラメントに流れるフィラメント電流 I フィラメント全電流 I Aグリッドに流れるグリッド電流 I Bグリッドに流れるグリッド電流 I Cグリッドに流れるグリッド電流 X Aグリッド X Bグリッド X Cグリッド R グリッド電流I検出抵抗 R グリッド電流I検出抵抗 R グリッド電流I検出抵抗 R 全グリッド電流検出抵抗 F〜F30 フィラメント Y〜Y 比較器 A 演算回路のI入力 B 演算回路のI入力 C 演算回路のI入力 D 演算回路のI入力 s トランスの二次側の一方の電極線 t トランスの二次側の他方の電極線 h 高圧電源の負電極側の線

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 真空チャンバの内部において並列に接続
    された複数のフィラメントから放出される熱電子を加速
    して電子線として取り出す非走査型の電子線照射装置に
    おいて、引出電極を3以上のグリッドA、B、C…に分
    割し、分割されたグリッドに流れるグリッド電流I
    、I、…の差を検知し、差の全グリッド電流の和
    に対する比が基準値より大きければフィラメント断線と
    判断することを特徴とする電子線照射装置のフィラメン
    ト断線検出機構。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014048184A (ja) * 2012-08-31 2014-03-17 Shibuya Kogyo Co Ltd 電子線検出装置

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EP2894639A4 (en) * 2012-08-31 2016-04-27 Shibuya Kogyo Co Ltd ELECTRON BEAM DETECTION APPARATUS
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