以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、中性子線検出装置を使用する中性子捕捉療法装置の概略図である。図1に示される中性子捕捉療法装置1は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)を用いたがん治療を行う装置である。中性子捕捉療法装置1では、例えばホウ素(10B)が投与された患者(被照射体)50の腫瘍に中性子線Nを照射する。
中性子捕捉療法装置1は、サイクロトロン2を備えている。サイクロトロン2は、陰イオン等の荷電粒子を加速して、荷電粒子線Rを作り出す加速器である。本実施形態において、荷電粒子線Rは陰イオンから電荷を剥ぎ取って生成した陽子ビームである。陽子ビームは、加速された陰イオンがサイクロトロン2内でフォイルストリッパー等を用いて電子を剥ぎ取られることで生成され、サイクロトロン2から出射される。このサイクロトロン2は、例えば、ビーム半径40mm、60kW(=30MeV×2mA)の荷電粒子線Rを生成する能力を有している。なお、加速器は、サイクロトロンに限られず、シンクロトロンやシンクロサイクロトロン、ライナックなどであってもよい。
サイクロトロン2から出射された荷電粒子線Rは、中性子線生成部Mへ送られる。中性子線生成部Mは、ターゲット7、減速材9およびコリメータ10からなる。サイクロトロン2から出射された荷電粒子線Rは、ビームダクト3を通り、ビームダクト3の端部に配置されたターゲット7へ向かって進行する。このビームダクト3に沿って複数の四極電磁石4、電流検出部5、および走査電磁石6が設けられている。複数の四極電磁石4は、例えば電磁石を用いて荷電粒子線Rのビーム軸調整やビーム径調整を行うものである。
電流検出部5は、ターゲット7に照射される荷電粒子線Rの電流値(つまり、電荷,照射線量率)を、荷電粒子線Rの照射中にリアルタイムで検出するものである。電流検出部5としては、例えば、荷電粒子線Rに影響を与えずに電流測定可能な非破壊型のDCCT(DC Current Transformer)が用いられている。
走査電磁石6は、荷電粒子線Rを走査し、ターゲット7に対する荷電粒子線Rの照射制御を行うものである。この走査電磁石6は、荷電粒子線Rのターゲット7に対する照射位置を制御する。
中性子捕捉療法装置1は、荷電粒子線Rをターゲット7に照射することにより中性子線Nを発生させ、患者50に向かって中性子線Nを出射する。中性子捕捉療法装置1は、ターゲット7、遮蔽体8、減速材9、コリメータ10、ガンマ線検出部11を備えている。
ターゲット7は、荷電粒子線Rの照射を受けて中性子線Nを生成するものである。ここでのターゲット7は、例えば、ベリリウム(Be)やリチウム(Li)、タンタル(Ta)、タングステン(W)により形成され、例えば直径160mmの円板状を成している。なお、ターゲット7は、板状に限定されず、例えば、液状でもよい。
減速材9は、ターゲット7で生成された中性子線Nのエネルギーを減速させるものである。減速材9は、中性子線Nに含まれる速中性子を主に減速させる第1の減速材9Aと、中性子線Nに含まれる熱外中性子を主に減速させる第2の減速材9Bと、からなる積層構造を有している。
遮蔽体8は、発生させた中性子線N、および当該中性子線Nの発生に伴って生じたガンマ線等を外部へ放出されないよう遮蔽するものである。遮蔽体8は、減速材9を囲むように設けられている。遮蔽体8の上部および下部は、減速材9より荷電粒子線Rの上流側に延在しており、これらの延在部にガンマ線検出部11が設けられている。
コリメータ10は、中性子線Nの照射野を整形するものであり、中性子線Nが通過する開口10aを有する。コリメータ10は、例えば中央に開口10aを有するブロック状の部材である。
ガンマ線検出部11は、荷電粒子線Rの照射により中性子線生成部Mから発生するガンマ線を、中性子線の生成中(すなわち、患者50への中性子線Nの照射中)にリアルタイムで検出するものである。ガンマ線検出部11としては、シンチレータや電離箱、その他様々なガンマ線検出機器を採用することができる。本実施形態において、ガンマ線検出部11は、ターゲット7の周囲で減速材9より荷電粒子線Rの上流側に延在する遮蔽体8の上部および下部の内側にそれぞれ配置されている。なお、ガンマ線検出部11を備えていない構成でもよい。
また、中性子捕捉療法装置1は、図示しない制御部を備えている。制御部は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等から構成される電子制御ユニットであり、中性子捕捉療法装置1を総合的に制御する。
本実施形態に係る中性子線検出装置は、上記の中性子捕捉療法装置1における中性子線の分布およびその強度を検出するために用いられる。そのため、図2に示すように、中性子線検出装置20は、複数の第1検出器21と、複数の第2検出器22と、複数の第2検出器22それぞれに取り付けられる複数のライトガイド23と、光検出器24と、光検出器24において検出された光の光量等に基づいて中性子線の分布を算出する分析部25と、を有している。
中性子線検出装置20は、コリメータ10を通過して出射される中性子線Nの分布を測定するために用いられる。また、中性子線検出装置20は、患者50への中性子線Nの照射中ではなく、照射前または中性子捕捉療法装置1のメンテナンス時等に使用される。したがって、中性子線検出装置20は、図2に示すように、コリメータ10よりも下流側(患者50が載置される側)において、コリメータ10の開口10aを塞ぐように取り付けられる。
第1検出器21および第2検出器22として、いずれもシンチレータを用いることができる。シンチレータは、入射した放射線(中性子線N、ガンマ線)を光に変換する蛍光体である。シンチレータは、入射した放射線の線量に応じて内部結晶が励起状態となり、シンチレーション光を発生させる。ただし、第1検出器21および第2検出器22は、発光する放射線の種類が互いに異なる。具体的には、第1検出器21は、ガンマ線が入射した場合には光を放出するが、中性子線Nが入射しても光を放出しないという特徴を有する。一方、第2検出器22は、少なくとも中性子線Nが入射した場合には光を放出するという特徴を有する。ただし、第2検出器22は、中性子線Nに加えてガンマ線が入射した場合にも光を放出する構成であってもよい。
なお、本実施形態における「光を放出する」とは、光検出器24において検出可能な程度の光を放出することをいう。また、「光を放出しない」とは、光検出器24において光が検出されない状態をいう。したがって、光検出器で検出が不可能な程度の光が放出されている場合についても「光を放出しない」ということができる。
第2検出器22には、6Liガラスシンチレータ、LiCAFシンチレータ、6LiFを塗布したプラスチックシンチレータ、6LiF/ZnSシンチレータ等を採用できる。上記の第2検出器として用いられるシンチレータはいずれも中性子線Nおよびガンマ線に対して光を放出する(感度を有する)シンチレータである。一方、第1検出器21には、中性子線に対して光を放出しない(感度を有しない)、上記のシンチレータとは異なる公知のシンチレータを採用できる。
複数の第1検出器21は、所定の平面上に2次元状に配置される。本実施形態では、第1検出器21は、放射線の出射方向(本実施形態の場合は、中性子線Nの出射方向(荷電粒子線Rのビーム軸)に対応する)に対して直交する方向に延在する平面上に2次元状に配置される。また、隣り合う第1検出器21の隙間をより小さくすることで、中性子線Nの分布をより好適に検出することができる。
また、複数の第2検出器22は、所定の平面上に2次元状に配置される。本実施形態では、第2検出器22も、複数の第1検出器と同様に、中性子線Nの出射方向(荷電粒子線Rのビーム軸)に対して直交する方向に延在する平面上に2次元状に配置される。また、隣り合う第2検出器22の隙間をより小さくすることで、中性子線Nの分布をより好適に検出することができる。
第2検出器22は、第1検出器21よりも下流側、すなわち、放射線の放出源(本実施形態の場合は、ターゲット7)よりも遠方となる位置に配置される。また、本実施形態では、第1検出器21と第2検出器22とは互いに平行な平面上に配置される。また、第1検出器21と第2検出器22とは、放射線の出射方向に沿って見たときに、隣接して(隙間がない状態で)配置される。第1検出器21と第2検出器22とを隣接して配置する構成とすることで、第1検出器21から放出された光の検出を好適に行うことができる。
また、第1検出器21と第2検出器22とは、放射線の放出源から見た場合に中心位置が互いに異なる位置に配置される。第1検出器21および第2検出器22がシンチレータであり、両者の大きさが同じ場合、放射線の放出源から見た場合に中心位置が互いに異なるように第1検出器21と第2検出器22とを配置すると、図2に示すように、隣接する第1検出器21同士の境界と、隣接する第2検出器22同士の境界と、が放射線の放出源から見た場合に互いに異なる位置となる。このように、第1検出器21および第2検出器22の中心位置が放射線の放出源から見た場合に互いに異なる構成とすることで、後述の分析部25によりどの検出器において光を放出したかの特定が容易となるが、詳細は後述する。
ライトガイド23は、第2検出器22で生じた光を伝達する部材である。ライトガイド23は、光ファイバによって構成されている。ライトガイド32は、例えば、フレキシブルな光ファイバの束などから構成されていてもよい。なお、ライトガイド23は、複数の第2検出器22それぞれに対して接続されている。複数の第2検出器22それぞれにおいて放出した光が、複数のライトガイド23により個別に伝達される。
光検出器24は、ライトガイド23を通じて伝達された光を検出するものである。光検出器24は、複数のライトガイド23それぞれに対して接続されている。したがって、複数の第2検出器22のそれぞれに対して、ライトガイド23および光検出器24が設けられることになる。光検出器24としては、例えば光電子増倍管や光電管など各種の光検出機器を採用することができる。光検出器24は、光検出時に電気信号(検出信号)を分析部25に出力する。
分析部25は、複数の光検出器24から送信される電気信号に基づいて、第2検出器22において検出された光の強度および分布を算出する機能を有する。
本実施形態に係る中性子線検出装置20では、放出線の放出源側に配置される複数の第1検出器21にはライトガイド23および光検出器24が接続されていない。しかしながら、第1検出器21による光の放出についても、複数の第2検出器22およびライトガイド23を経て、第2検出器22に対して設けられたた光検出器24を利用して検出する。このような構成とすることで、複数の第2検出器22に接続されたライトガイド23および光検出器24を利用して、分析部25において中性子線Nおよびガンマ線を区別して検出することができる。この点について、図3および図4を参照しながら説明する。
まず、図3(A)では、ガンマ線の入射に伴い第1検出器21が光を放出した状態を示している。図3(A)では、簡単のために、複数の第1検出器21のうちの1つの第1検出器21Aのみを示していて、隣接する他の第1検出器21は省略をしている。また、図3(A)では、複数の第2検出器22のうち、放出線の放出源側から見たときに第1検出器21Aに対して後方(下流側)に配置される4つの第2検出器22A〜22Dのみを示している。また、第2検出器22A〜22Dに対してライトガイド23A〜23Dが接続されている。
図3(A)では、ガンマ線Gが第1検出器21Aに入射した状態を示している。この場合、ガンマ線Gの入射に伴い、第1検出器21Aが光を放出する。この光の一部は、後段の第2検出器22A〜22Dを介して、第2検出器22A〜22Dに接続されたライトガイド23A〜23Dに入射する。そして、これらの光は、ライトガイド23A〜23Dの後段の光検出器24において電気信号に変換されて分析部25において検出される。第1検出器21Aの中心位置は、第2検出器22A〜22Dの中心位置と互いに異なる位置に設けられているため、第1検出器21Aから放出された光は、第2検出器22A〜22Dを経て、ライトガイド23A〜23Dに対して分散して入射することになる。ガンマ線Gの入射に伴って第1検出器21Aから放出される光のエネルギーは、中性子線Nの入射に伴って第2検出器22A〜22Dから放出される光のエネルギーよりも小さい。また、ライトガイド23A〜23Dのそれぞれに対して、第1検出器21Aで放出された光の一部が入射することになる。そのため、ライトガイド23A〜23Dのそれぞれに入射する光の光量は第2検出器22A〜22Dが光を放出した場合と比較して小さくなる。
複数の第1検出器21が互いに隣接した状態で平面上に2次元配置されている場合、放射線源からのガンマ線Gは2次元配置された第1検出器21のうちのいずれかに入射する。
図3(B)では、中性子線Nが第2検出器22Bに入射した状態を示している。この場合、中性子線Nの入射に伴い、第2検出器22Bが光を放出する。この光は、主に第2検出器22Bに接続されたライトガイド23Bに入射し、ライトガイド23Bの後段の光検出器24において電気信号に変換されて分析部25において検出される。第2検出器22Bが光を放出した場合、第2検出器22A,22C,22Dに接続されるライトガイド23A,23C,23Dに対してもその一部が入射する可能性はあるが、その光量は非常に小さくなる。
複数の第2検出器22が互いに隣接した状態で平面上に2次元配置されている場合、放射線源からの中性子線Nは2次元配置された第1検出器21を通過し、複数の第2検出器22のうちのいずれかに入射する。
このように、中性子線検出装置20では、第1検出器21および第2検出器22のどちらが光を放出した場合でも、複数の第2検出器22に接続された複数のライトガイド23に入射する光を検出することができる。また、第1検出器21および第2検出器22のどちらが光を放出したかによって上記のように複数のライトガイド23に入射する光の光量やその分散具合が異なる。分析部25では、どのライトガイド23に光が入射したか、および、その分散に基づいて、どの検出器が光を放出したかを特定する。
分析部25では、光を検出した光検出器24に接続されたライトガイド23の位置情報と、その光量とに基づいて、光の放出源の位置を特定する。複数の第2検出器22に接続された光検出器24において検出された光に関する分析を行うことで、放出源の位置を特定することができる。第1検出器21または第2検出器22から放出された光は、複数のライトガイド23に対してほぼ同時に入射すると想定される。したがって、分析部25では、各光検出器24から送信される電気信号の送信タイミングから、当該電気信号が、特定の光の放出源から放出された同一の光を検出しているものであるかを特定することができる。分析部25では、特定の時刻に検出された、特定の光の放出源から放出された同一の光に係る電気信号について、その重心位置を求め、算出された重心位置を光の放出源の位置を示す情報とする。なお、重心位置の算出の際には、複数の第2検出器22に接続された光検出器24で検出された光の光量を考慮しなくてもよいが、光量を考慮して重心位置の算出を行うと、重心位置の算出精度が向上する。
例えば、図3(A)に示すように、ガンマ線Gの入射に伴い第1検出器21Aが光を放出した場合、第2検出器22A〜22Dに接続されたライトガイド23A〜23Dにそれぞれ入射し、それぞれ光検出器24により電気信号に変換されて分析部25に出力される。したがって、分析部25では、この電気信号から、ライトガイド23A〜23Dに対して特定の放出源から放出された同一の光が入射したことを特定することができる。したがって、このライトガイド23A〜23Dに入射した光に係る電気信号の強度を示す情報と、ライトガイド23A〜23D(光が入射する側の端面)の位置情報と、を利用して、その重心位置を算出する。重心位置は、中性子線Nの出射方向(荷電粒子線Rのビーム軸)に対して直交する方向に延在する平面、すなわち、第1検出器21および第2検出器22の延在する面における重心位置として算出される。ここでは、第2検出器22A,22Bが並ぶ方向をX軸とし、第2検出器22C,22Aが並ぶ方向をY軸とし、各ライトガイド23A〜23D(光が入射する側の端面)の位置についても、XY座標で特定する。そうすると、ライトガイド23A〜23Dに入射した光に係る電気信号の強度を示す情報、および、ライトガイド23A〜23Dの位置情報から、上記のXY平面における光の重心位置を算出することが可能となる。ライトガイド23A〜23Dに入射した光の強度がほぼ同じである場合、その重心位置は、ライトガイド23A〜23Dの中心位置付近、すなわち、第1検出器21に対応する位置となると考えられる。
一方、図3(B)のように中性子線Nの入射に伴い、第2検出器22Bが光を放出し、他の第2検出器22A,22C,22Dが光を放出しなかった(ライトガイド23A,23C,23Dに光が入射しなかった)場合、分析部25において上記の計算を行うと、光の重心位置はライトガイド23Bの位置付近、すなわち、第2検出器22Bに対応する位置となる。
図4は、分析部25における分析結果をXY平面にプロットした例を示している。図4に示す複数の点P1、複数の点P2に含まれる各点が、中性子線検出装置20の第1検出器21または第2検出器22から放出された光のそれぞれの重心位置、すなわち、光の放出源を示す情報となる。図4に示すように、複数の点P1および複数の点P2は互いに異なる集団として区別することができる。また、図4に示す複数の点P1の集団が形成されている位置(XY座標)が第1検出器21に対応し、複数の点P2の集団が形成されている位置が第2検出器22Bに対応しているとする。この場合、複数の点P1に対応する光は第1検出器21から放出された光であり、複数の点P2に対応する光は、第2検出器22Bから放出された光である、と判断することができる。また、図4では省略をしているが、第2検出器22Aに対応する領域C1、第2検出器22Cに対応する領域C2、および、第2検出器22Dに対応する領域C3にも、複数の点による集団が形成されると考えられる。
このように、分析部25では、複数の第1検出器21および複数の第2検出器22のいずれかが放出した光のそれぞれについて、複数の第2検出器22に接続する複数のライトガイド23に入射した光に係る電気信号から、光の放出源の位置を示す情報に対応する光の重心位置を算出する。分析部25は、上記の光の放出源の位置を示す情報から、どの検出器が放出した光を検出しているかを特定することができる。分析部25において、検出した光が、どの検出器が放出した光であるかを区別できるようになると、第1検出器21および第2検出器22で検出された光の情報を組み合わせて分析することで、中性子線の検出を精度よく行うことができ、中性子線の線量分布をより正確に得ることができる。
上述したように、第1検出器21および第2検出器22は、発光する放射線の種類が互いに異なる。中性子線Nが入射すると、第2検出器22では光が放出されるが、第1検出器21では光が放出されない。一方、ガンマ線が入射した場合、第1検出器21および第2検出器22の両方で光が放出される場合がある。そのため、第2検出器22からの光を検出するのみでは、中性子線Nとガンマ線との弁別が困難である場合がある。そこで、第1検出器21のようにガンマ線に対して光を放出する検出器と、第2検出器22のように中性子線Nに対して光を放出する検出器と、を並べて配置することは従来から検討されていた。しかしながら、中性子捕捉療法装置1における中性子線の線量分布を測定する場合のように、特に面的な測定をする場合には、複数の検出器を例えば2次元配置した状態で中性子線の測定を行う必要があるが、各検出器に対して、ライトガイドおよび光検出器のように放出した光を検出するための出力回路を設ける必要があるため、出力回路の取り回し等が困難となり装置が複雑化する可能性がある。また、出力回路の取り回しのために検出器同士を隣接して配置することが困難となるため、装置全体としての測定精度も低下する可能性がある。
そこで、本実施形態に係る中性子線検出装置20では、まず、第1検出器21と第2検出器22とを組み合わせることで、中性子線とガンマ線とを含む放射線が照射される環境下において中性子線を区別して検出することが可能となっている。また、中性子線検出装置20では、第1検出器21が放出した光および第2検出器22が放出した光が光検出器24により検出可能とされている。そして、第1検出器21の中心位置と第2検出器22の中心位置とが互いに異なるように配置されている。そのため、光検出器24における検出結果から第1検出器21および第2検出器22のどちらが放出した光であるかを区別することが可能となっている。したがって、第1検出器21に対して光検出器を取り付けなくても、第1検出器21が放出した光および第2検出器22が放出した光を光検出器24で検出することができるため、光検出器24の数を減らすことができるため、より簡単な構成で中性子線の検出が可能となる。
また、中性子線検出装置20では、複数の第1検出器21と複数の第2検出器22とが互いに平行な平面上にそれぞれ隣接して配置される構成となっている。このような構成とすることで、中性子線検出装置20を利用して、中性子線の分布を検出することが可能となる。また、複数の第1検出器21と複数の第2検出器22とが隣接配置していることで、第1検出器21から放出された光も第2検出器22に設けられた光検出器24で好適に検出することができるため、簡単な構成で中性子線の分布を検出することが可能となる。
また、中性子線検出装置20では、分析部25において、特定の時刻に各光検出器で検出した光の検出結果に基づいて、当該光の重心位置を算出する。このような構成とすることで、算出された重心位置から光の放出源の位置を推定することが可能となる。
そして、分析部25において算出された光の重心位置に基づいて光が第1検出器21および第2検出器22のいずれから放出されたかを特定する構成とすることで、中性子線検出装置20で検出した放射線の種類の特定をより精度良く行うことができる。
なお、光検出器24では、第1検出器21または第2検出器22が放出した光の波高(強度)に係る情報も取得される。したがって、分析部25では、上記で説明した光の重心位置に加えて、光の波高情報も利用して、光が第1検出器21および第2検出器22のいずれから放出されたかを特定する構成とすることができる。
図5は、図4徒同様に分析部25における分析結果XY平面にプロットし、さらに、各点について、各光検出器24で検出された波高情報をZ軸に当てはめた例を示している。図5では、図4と同様に、複数の点P1および複数の点P2は互いに異なる集団として区別することができる。さらに、図5では、波高情報に基づいても、複数の点P1の集団が形成されている位置と、複数の点P2の集団が形成されている位置と、を明確に区別することができる。第1検出器21から放出される光は、基本的にガンマ線由来の光であるが、このガンマ線由来の光の波高は中性子線由来の光の波高よりも小さい。さらに、第1検出器21から放出される光は、第2検出器22を介してライトガイド23に入射して光検出器24に到達するため、その点からも波高(強度)が小さくなる。また、第2検出器22Aに対応する領域C1、第2検出器22Cに対応する領域C2、および、第2検出器22Dに対応する領域C3も、複数の点P2の集団と同程度の波高となると想定される。このように、光の波高情報も利用して、光が第1検出器21および第2検出器22のいずれから放出されたかを特定する構成とすると、中性子線検出装置20で検出した放射線の種類の特定をより精度良く行うことができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記の実施形態では、第1検出器21および第2検出器22がそれぞれ複数設けられている場合について説明したが、第1検出器21および第2検出器22の数は1以上であればよく、適宜変更することができる。また、ライトガイド23および光検出器24の配置等は適宜変更することができる。
また、ライトガイド23を設けず、第2検出器22の後段に光検出器24を直接設けてもよい。その場合には、第2検出器22A〜22Dに対して複数の光検出器24がそれぞれ接続されていることになる。このような構成の場合、複数の第2検出器22に接続する複数の光検出器24に入射した光に係る電気信号から、光の放出源の位置を示す情報に対応する光の重心位置を算出することになる。このように、ライトガイド23は省略してもよい。
また、上記実施形態では、中性子線検出装置を中性子捕捉療法装置1に適用しているが、中性子線検出装置の用途は限定されない。例えば、原子炉の運転状態を監視するモニタとして、本発明の中性子線検出装置を適用してもよい。また、物理実験で使用される加速中性子を測定する際に本発明の中性子線検出装置を使用してもよい。また、非破壊検査用の中性子照射装置において、本発明の中性子線検出装置を使用してもよい。