JP2003033191A - 組み換えかご状タンパク質、その作製方法、貴金属−組み換えかご状タンパク質複合体、その作製方法、及び組み換えdna - Google Patents

組み換えかご状タンパク質、その作製方法、貴金属−組み換えかご状タンパク質複合体、その作製方法、及び組み換えdna

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 貴金属粒子をアポフェリチンに導入し、貴金
属−アポフェリチン複合体を作製する。 【解決手段】 遺伝子組み換え技術を用いて、アポフェ
リチンのチャネル3に位置するグルタミン酸及びアスパ
ラギン酸を、電荷を持たず、且つサイズの小さいセリン
で置換する。次に、保持部4に位置するグルタミン酸を
リジン等の塩基性アミノ酸または中性アミノ酸で置換す
る。さらに、保持部に1つ以上のシステインを導入す
る。これにより、負電荷を持つ(AuCl4-と負電荷
を持つアミノ酸との間に静電相互作用による斥力が生じ
ることを防ぐことができ、(AuCl4-がチャネル及
び保持部に取り込まれやすくなる。保持部に取り込まれ
た(AuCl4-は続いてAuに還元され、金粒子を包
含したアポフェリチンが作製される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遺伝子組み換え技
術を用いて作製された貴金属−組み換えアポフェリチン
複合体及びその作製方法、及びその関連技術に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、バイオテクノロジーとエレクトロ
ニクスを融合させたバイオエレクトロニクスの研究が活
発に行われ、酵素等のタンパク質を用いたバイオセンサ
ー等、すでに実用化されているものもある。
【0003】そういったバイオテクノロジーを他分野に
応用する試みの1つとして、金属化合物を保持する機能
を持つタンパク質であるアポフェリチンに金属または金
属化合物からなる微粒子を取り込ませ、nmオーダーの
均一なサイズの微粒子を作製しようという研究がある。
微粒子の用途に応じて種々の金属あるいは金属化合物等
をアポフェリチンに導入すべく研究が進められている。
【0004】ここで、アポフェリチンについて説明す
る。アポフェリチンは、生物界に広く存在するタンパク
質であり、生体内では必須微量元素である鉄の量を調節
する役割を担っている。鉄または鉄化合物とアポフェリ
チンとの複合体はフェリチンと呼ばれる。鉄は必要以上
に体内に存在すると生体にとって有害であるため、余剰
の鉄分はこのフェリチンの形で体内に貯蔵される。そし
て、フェリチンは必要に応じて鉄イオンを放出し、アポ
フェリチンに戻る。
【0005】図1は、フェリチン(鉄−アポフェリチン
複合体)の構造を示す模式図である。同図に示すよう
に、フェリチンは、1本のポリペプチド鎖から形成され
るモノマーサブユニットが非共有結合により24個集合
した分子量約46万の球状タンパク質であり、その直径
は約12nmで、通常のタンパク質に比べ高い熱安定性
と高いpH安定性を示す。この球状のタンパク質(外殻
2)の中心には直径約6nmの空洞状の保持部4があ
り,外部と保持部4とはチャネル3を介してつながって
いる。例えば、フェリチンに二価の鉄イオンが取り込ま
れる際、鉄イオンはチャネル3から入り、一部のサブユ
ニット内にあるferrooxidase center(鉄酸化活性中心)
と呼ばれる場所で酸化された後、保持部4に到達し、保
持部4の内表面の負電荷領域で濃縮される。そして、鉄
原子は3000〜4000個集合し、フェリハイドライ
ト(5Fe23・9H2O )結晶の形で保持部4に保持
される。 なお、本明細書中では、保持部に保持された
金属原子を含む微粒子を「核」と称する。ここで、図1
に示す核1の直径は保持部4の直径とほぼ等しく、約6
nmとなっている。
【0006】また、この核1は比較的簡単な化学操作で
除去され、核1が除かれて外殻2のみとなった粒子は、
アポフェリチンと呼ばれる。このアポフェリチンを用い
て、人工的に鉄以外の金属や金属化合物を担持させたア
ポフェリチン−微粒子複合体も作製されている。
【0007】現在までに、マンガン(P.Mackle,1993,J.
Amer.Chem.Soc.115,8471-8472; F.C.Meldrumら,1995,
J.Inorg.Biochem.58,59-68),ウラン(J.F.Hainfeld,19
92,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,11064-11068),ベリリ
ウム(D.J.Price,1983, J.Biol.Chem.258,10873-1088
0),アルミニウム(J.Fleming,1987,Proc.Natl.Acad.Sc
i.USA,84,7866-7870),亜鉛(D.Price and J.G.Joshi,P
roc.Natl.Acad.Sci.USA,1982,79,3116-3119),コバルト
(T.Douglas and V.T.Stark,Inorg.Chem.,39,2000,1828
-1830)といった金属あるいは金属化合物のアポフェリ
チンへの導入が報告されている。これらの金属あるいは
金属化合物からなる核1の直径も、アポフェリチンの保
持部4の直径とほぼ等しく、約6nmとなる。
【0008】自然界において、鉄原子を含む核1がフェ
リチン内に形成される過程の概略は次の通りである。
【0009】フェリチン粒子の外部と内部とを結ぶチャ
ネル3(図1参照)の表面には、pH7−8の条件でマ
イナス電荷を持つアミノ酸が露出しており、プラス電荷
を持っているFe2+イオンは静電相互作用によりチャネ
ル3に取り込まれる。このチャネル3は、1つのアポフ
ェリチンあたり8個存在している。
【0010】フェリチンの保持部4の内表面には、チャ
ネル3の内表面と同じく,pH7−8でマイナス電荷を
持つアミノ酸残基であるグルタミン酸残基が多く露出し
ており、チャネル3から取り込まれたFe2+イオンはfe
rroxidase centerで酸化され、さらに内部の保持部4へ
と導かれる。そして、静電相互作用により鉄イオンは濃
縮されて、フェリハイドライト(5Fe23・9H
2O)結晶の核形成が起こる。
【0011】その後、順次取り込まれる鉄イオンがこの
結晶の核に付着して酸化鉄からなる核が成長し、直径6
nmの核1が保持部4内に形成される。以上が、鉄イオ
ンの取り込みと酸化鉄からなる核形成の概略である。
【0012】次に、アポフェリチンへ鉄を導入するため
の操作を以下で説明する。
【0013】まず、HEPES緩衝液、アポフェリチン
溶液、硫酸アンモニウム鉄(Fe(NH42(S
42)溶液の順に各溶液を混合してフェリチン溶液を
作製する。このフェリチン溶液中では、それぞれの最終
濃度が、HEPES緩衝液は100mmol/L(pH
7.0)に、アポフェリチンは0.5mg/mLに、硫
酸アンモニウム鉄は5mmol/Lになっている。尚、
フェリチンを調製するための操作は、すべて室温にて行
ない、攪拌はスターラーにて行なう。
【0014】次に、鉄イオンのアポフェリチン内部への
取り込み反応及び取り込まれた鉄の酸化反応を完了させ
るため、フェリチン溶液をそのまま一晩放置する。この
操作により、アポフェリチンの保持部に均一な大きさの
酸化鉄が導入され、フェリチン(アポフェリチンと微粒
子の複合体)が生成される。
【0015】次に、フェリチン溶液を容器に入れ、遠心
分離機を用いて毎分3,000回転、15−30分の条
件で遠心分離し、沈殿を除去する。続いて、沈殿を除去
した後の上澄み液をさらに毎分10,000回転、30
分の条件で遠心分離し、フェリチンが凝集した不要な集
合体を沈殿させてから除去する。このとき、上澄み液中
には、フェリチンが分散された状態で存在している。
【0016】次に、この上澄み液の溶媒をpH7.0、
100mmol/LのHEPES緩衝液から150mm
ol/LのNaCl溶液へと透析により置換して、新た
なフェリチン溶液を作製する。ここでのpH調整は特に
行わなくてよい。
【0017】続いて、このフェリチン溶液を1−10m
g/mLの任意の濃度に濃縮した後、この溶液に最終濃
度が10mmol/LとなるようにCdSO4 を加え、
フェリチンを凝集させる。
【0018】次に、フェリチン溶液を毎分3,000回
転、20分の条件で遠心分離し、溶液中のフェリチン凝
集体を沈殿させる。その後、溶液の緩衝成分を150m
mol/LのNaClが入ったpH8.0、10−50
mmol/LのTris緩衝液へと透析により置換す
る。
【0019】次に、フェリチン溶液を濃縮後、ゲルろ過
カラムによりフェリチン溶液をろ過することにより、フ
ェリチン粒子の凝集体が除かれ、酸化鉄を内包した単体
のフェリチンが得られる。
【0020】尚、ここまで鉄イオンのフェリチンへの取
り込みメカニズム及び酸化鉄を内包したフェリチンの調
製法について述べたが、これまでに導入が報告されてい
る他の金属イオンは、いずれもプラスイオンであること
から、これらの金属イオンのアポフェリチンへの取り込
みは、鉄イオンとほぼ同じメカニズムで進むと考えられ
る。よって、他の金属イオンも、基本的に鉄イオンと同
様の操作によりアポフェリチン内に導入される。
【0021】ところで、アポフェリチンは、それが由来
する生物種によって保持可能な粒子のサイズが若干異な
る。また、アポフェリチンと類似の構造を有し、内部に
無機物微粒子を保持可能な球殻状タンパク質も存在す
る。この中にはリステリア菌由来のリステリアフェリチ
ンやDpsタンパクなどがある。また、球状でなくて
も、CCMVなどのウイルスの外殻タンパク質等、フェ
リチンと同様に内部に無機物粒子を保持可能なタンパク
質もある。
【0022】本明細書中では、このような球殻状タンパ
ク質やウイルスの外殻タンパク質など、内部に無機物微
粒子を保持可能なタンパク質を総称して「かご状タンパ
ク質」と称することとする。
【0023】これらのかご状タンパク質にも、鉄を含む
無機物粒子を保持させることが可能である。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、上述の方法
により鉄等の金属イオンを保持したフェリチンを作製す
ることができるが、アポフェリチン及びフェリチンのチ
ャネル3の内表面は全体としてマイナスに帯電している
ので、同じマイナスの電荷を持つイオンをアポフェリチ
ン内に取り込ませることは困難であった。
【0025】一方、金や白金等は水溶液中では単独でイ
オン化させることができず、水溶液中では錯体イオンと
してしか存在できないため、通常はクロロ金酸イオン
(AuCl4-や(PtCl4 2-のマイナスイオンで
利用されることが多い。そのため、従来の技術では、ア
ポフェリチン内に金や白金等の貴金属原子を取り込ませ
ることが困難であった。
【0026】本発明の目的は、アポフェリチンなどのか
ご状タンパク質の内部構造を改質することにより金等の
貴金属原子をアポフェリチンなどのかご状タンパク質内
に導入し、ひいては、各種の微細構造に適用可能な貴金
属粒子を形成することにある。
【0027】
【課題を解決するための手段】本発明の組み換えかご状
タンパク質は、遺伝子組み換え技術により作製された組
み換えかご状タンパク質であって、上記組み換えかご状
タンパク質の内部にあり貴金属粒子を保持可能な保持部
と、上記保持部と上記組み換えかご状タンパク質の外部
とを結ぶトンネル状のチャネルとを備えている。
【0028】これにより、サイズが均一で、且つナノメ
ーターオーダーの貴金属粒子を組み換えかご状タンパク
質の保持部に形成することができるので、例えば貴金属
−組み換えかご状タンパク質複合体を基板上に配置し、
タンパク質部分を除去する等の操作を行なうことによ
り、基板上に化学的安定性に優れた貴金属からなる微細
なドット体を形成することができる。このドット体は例
えば、半導体の製造工程等に利用することができる。
【0029】上記組み換えかご状タンパク質は、アポフ
ェリチンであることにより、ナノメータオーダーの大き
さの貴金属粒子を効率的に作製することができる。
【0030】上記貴金属粒子は金または白金であること
により、ドット体の形成が容易になる。作製した微粒子
を単電子トランジスタなどに応用することが可能にな
る。
【0031】上記チャネルの内表面における、第1のグ
ルタミン酸(Glu)及び第1のアスパラギン酸の存在
すべき位置に、分子サイズがグルタミン酸及びアスパラ
ギン酸よりも小さい第1の中性アミノ酸を備えているこ
とにより、負電荷を持つ貴金属の錯体イオンとチャネル
との間に静電相互作用による斥力が生じることを防ぐこ
とができる。この結果、貴金属の錯体イオンをチャネル
に取り込ませることが可能になる。
【0032】上記第1の中性アミノ酸がセリン,アラニ
ン,グリシンのうちから選ばれることにより、組み換え
かご状タンパク質の立体構造を崩すことなく、貴金属の
錯体イオンをチャネルに取り込ませることが可能にな
る。
【0033】上記保持部の内表面における、第2のグル
タミン酸の存在すべき位置に、塩基性アミノ酸または第
2の中性アミノ酸をさらに備えていることにより、負電
荷を持つ貴金属の錯体イオンと保持部との間に静電相互
作用による斥力が生じることを防ぐことができる。特に
第2のグルタミン酸の存在すべき位置に塩基性アミノ酸
を備えた場合は、この塩基性アミノ酸が持つ正電荷によ
り負電荷を持つ貴金属の錯体イオンが取り込まれ、この
結果、貴金属の錯体イオンを保持部に高濃度に取り込ま
せることが可能になる。
【0034】上記塩基性アミノ酸または上記第2の中性
アミノ酸が、アルギニン,リジン,アラニンのうちから
選ばれることにより、組み換えかご状タンパク質の立体
構造を崩すことなく貴金属の錯体イオンを保持部に取り
込ませることが可能になる。
【0035】上記保持部の内表面には、アミノ酸と置換
された1つ以上のシステインが存在することにより、保
持部に取り込まれた貴金属の錯体イオンを効果的に還元
して貴金属粒子を析出させることができる。
【0036】上記組み換えかご状タンパク質の外表面に
は、システインの存在すべき位置に、当該システインよ
りも還元機能が小さい物質を備えていることにより、組
み換えかご状タンパク質の外表面上で貴金属の錯体イオ
ンが還元されるのを防ぐことができる。その結果、組み
換えかご状タンパク質の外表面上での貴金属粒子の析出
が抑制され、貴金属−組み換えかご状タンパク質複合体
のうち、保持部に貴金属粒子を保持するものの収率を上
げることができる。
【0037】本発明の貴金属−組み換えかご状タンパク
質複合体は、貴金属粒子を保持可能な保持部と、上記保
持部と上記組み換えかご状タンパク質の外部とを結ぶト
ンネル状のチャネルとを備えている。
【0038】これにより、例えば貴金属−組み換えかご
状タンパク質複合体を基板上に配置し、タンパク質部分
を除去する等の操作を行なうことにより、基板上に貴金
属からなる微細なドット体を形成することができる。こ
のドット体は、例えば半導体の製造工程等に利用するこ
とができる。
【0039】上記組み換えかご状タンパク質は、アポフ
ェリチンであってもよい。
【0040】外表面上に金または白金粒子を保持してい
てもよい。
【0041】上記チャネルの内表面における、第1のグ
ルタミン酸及び第1のアスパラギン酸の存在すべき位置
に、分子サイズがグルタミン酸及びアスパラギン酸より
も小さい第1の中性アミノ酸を備えていることにより、
負電荷を持つ貴金属の錯体イオンとチャネルとの間に静
電相互作用による斥力が生じることを防ぐことができる
ので、貴金属−組み換えかご状タンパク質複合体が、効
率よく作製される。
【0042】上記第1の中性アミノ酸がセリン,アラニ
ン,グリシンのうちから選ばれることにより、立体構造
を崩すことなく貴金属−組み換えかご状タンパク質複合
体を形成することができる。
【0043】上記保持部の内表面における、第2のグル
タミン酸の存在すべき位置に、塩基性アミノ酸または第
2の中性アミノ酸をさらに備えていることにより、負電
荷を持つ貴金属の錯体イオンと保持部との間に静電相互
作用による斥力が生じることを防ぐことができるので、
本発明の貴金属−組み換えかご状タンパク質複合体は、
効率よく作製される。
【0044】上記塩基性アミノ酸または上記第2の中性
アミノ酸が、アルギニン,リジン,アラニンのうちから
選ばれることにより、立体構造を崩すことなく貴金属粒
子を保持することが可能になる。
【0045】上記保持部の内表面には、アミノ酸と置換
された1つ以上のシステインが存在することにより、貴
金属イオンを含む溶液中で、本発明の貴金属−組み換え
かご状タンパク質複合体を容易に形成することができる
ようになる。
【0046】本発明の組み換えDNAは、貴金属粒子を
保持可能な保持部と、上記保持部と上記組み換えかご状
タンパク質の外部とを結ぶトンネル状のチャネルとを有
する組み換えかご状タンパク質のアミノ酸配列をコード
している。
【0047】この組み換えDNAにより、タンパク工学
の手法を用いて組み換えかご状タンパク質の大量生産が
可能となる。
【0048】上記組み換えかご状タンパク質は、アポフ
ェリチンであってもよい。
【0049】上記貴金属粒子は金または白金であっても
よい。
【0050】上記チャネルの内表面における、第1のグ
ルタミン酸及び第1のアスパラギン酸の存在すべき位置
に、分子サイズがグルタミン酸及びアスパラギン酸より
も小さい第1の中性アミノ酸を備えていることにより、
該組み換えタンパク質を容易に得ることができるように
なる。
【0051】上記第1の中性アミノ酸がセリン,アラニ
ン,グリシンのうちから選ばれることにより、保持部に
貴金属粒子を効率良く形成するための組み換えかご状タ
ンパク質を大量に得ることが可能になる。
【0052】上記保持部の内表面における、第2のグル
タミン酸の存在すべき位置に、塩基性アミノ酸または第
2の中性アミノ酸をさらに備えていることにより、保持
部に貴金属粒子を効率良く形成するための均質な組み換
えかご状タンパク質を大量に得ることが可能になる。
【0053】上記塩基性アミノ酸または上記第2の中性
アミノ酸が、アルギニン,リジン,アラニンのうちから
選ばれることにより、貴金属粒子を効率よく保持可能な
組み換えかご状タンパク質を容易に作製することができ
る。
【0054】上記保持部の内表面には、アミノ酸と置換
された1つ以上のシステインが存在することにより、貴
金属粒子をさらに効率よく保持可能な組み換えかご状タ
ンパク質を容易に作製することができる。
【0055】本発明の組み換えかご状タンパク質の作製
方法は、チャネルの内表面に位置する第1のグルタミン
酸及び第1のアスパラギン酸を、分子サイズがグルタミ
ン酸及びアスパラギン酸よりも小さい第1の中性アミノ
酸に置換する工程(a)を含んでいる。
【0056】この方法により、チャネルに貴金属粒子を
効率的に取り込みうる組み換えかご状タンパク質を容易
に作製することができる。
【0057】上記組み換えかご状タンパク質はアポフェ
リチンであってもよい。
【0058】上記工程(a)では、上記第1の中性アミ
ノ酸が、セリン,アラニン,グリシンのうちから選ばれ
ることにより、組み換えかご状タンパク質の立体構造が
崩れず、且つ、貴金属の錯体イオンをチャネルに取り込
ませることが可能な組み換えかご状タンパク質を作製す
ることができる。
【0059】上記組み換えかご状タンパク質内部にある
保持部の内表面に存在する第2のグルタミン酸を、塩基
性アミノ酸または第2の中性アミノ酸に置換する工程
(b)をさらに含むことにより、保持部に貴金属粒子を
効率的に取り込みうる組み換えかご状タンパク質を容易
に作製することができる。
【0060】上記工程(b)では、上記塩基性アミノ酸
または上記第2の中性アミノ酸が、アルギニン,リジ
ン,アラニンのうちから選ばれることにより、組み換え
かご状タンパク質の立体構造が崩れず、且つ、貴金属の
錯体イオンを保持部に取り込ませることが可能な組み換
えかご状タンパク質を作製することができる。
【0061】上記保持部の内表面に位置する1つ以上の
アミノ酸をシステインに置換する工程(c)をさらに含
むことにより、保持部に取り込まれた貴金属の錯体イオ
ンを効果的に還元して貴金属粒子を析出させることがで
きる組み換えかご状タンパク質を作製することができ
る。貴金属の錯体イオンが還元されると分子サイズが減
少するので、保持部への貴金属の錯体イオンの取り込み
が促進される。
【0062】上記組み換えかご状タンパク質の外表面に
位置する1つ以上のシステインを当該システインよりも
還元機能が小さい物質に代える工程(d)をさらに含む
ことにより、外表面上での貴金属の錯体イオンの還元が
抑制される組み換えかご状タンパク質を作製することが
できる。
【0063】本発明の貴金属−組み換えかご状タンパク
質複合体の作製方法は、貴金属の錯体イオン溶液と、組
み換えかご状タンパク質溶液とを混合することにより、
貴金属−組み換えかご状タンパク質複合体を形成する工
程(a)と、上記工程(a)において調製された貴金属
−組み換えかご状タンパク質複合体を含む溶液をゲルろ
過カラムに通すことにより、貴金属−組み換えかご状タ
ンパク質複合体を精製する工程(b)とを含んでいる。
【0064】この方法により、外表面上に貴金属を保持
する組み換えかご状タンパク質と貴金属を内包する組み
換えかご状タンパク質と副反応物等とがサイズによって
互いに分画されるので、精製された所望の貴金属−組み
換えかご状タンパク質複合体を選び取ることができる。
【0065】上記工程(a)における上記貴金属は、金
または白金であることにより、上述のように、例えば半
導体装置の製造工程等に利用される金または白金からな
るドット体を形成することができ、この際に、従来必要
であったドット体の還元工程が不要となる。
【0066】
【発明の実施の形態】(第1の実施形態)本発明の第1
の実施形態について、以下に説明する。
【0067】−リコンビナント(組み換え)アポフェリ
チンの作製−発明者らは、アポフェリチン内に金(A
u)原子を導入する上で、主に次のような2つのことが
障害となっていると考えた。
【0068】1つは、クロロ金酸イオン(AuCl4-
とアポフェリチンとの間の静電相互作用である。図1に
示すフェリチン(アポフェリチン−鉄複合体)のチャネ
ル3の内表面及び保持部4の内表面には、各々グルタミ
ン酸やアスパラギン酸といったマイナスの電荷を持つア
ミノ酸が露出している。マイナスイオンである(AuC
4-のアポフェリチン内への取り込みは、これらのマ
イナス電荷を持つアミノ酸との間の静電相互作用により
阻害されている。
【0069】もう1つは、(AuCl4-のサイズが鉄
イオンよりも大きいことである。そのため、アポフェリ
チンのチャネル3のサイズを広げなければ、(AuCl
4-をチャネル3に取り込むことが物理的に難しい。
【0070】これらの問題を解決するため、発明者ら
は、遺伝子組み換えの手法を用いて以下のようにアポフ
ェリチンの改質を行なった。以下、本明細書中で、「組
み換えアポフェリチン」と表記するときは、遺伝子組み
換え技術によって変異を導入したアポフェリチンのこと
を指す。また、本明細書中アミノ酸残基の部位を示すと
きは、特に指定のない限り、変異の入っていないウマ肝
臓由来のアポフェリチンにおける部位を意味する。ま
た、アポフェリチンは24個のモノマーサブユニットか
ら構成されているため、本明細書中で「アポフェリチン
のアミノ酸配列」と書くときは、モノマーサブユニット
のアミノ酸配列を意味する。
【0071】ウマ肝臓由来のアポフェリチンをコードす
る遺伝子配列及びアポフェリチンのアミノ酸配列は既知
であり、立体構造についても解明されている。アポフェ
リチンのモノマーは、175残基のアミノ酸残基から構
成され、そのうち、128番目のアスパラギン酸(As
p)と、131番目のグルタミン酸(Glu)とは共に
チャネル3の内表面に位置し、58番目,61番目及び
64番目の各グルタミン酸は、共に保持部4の内表面に
位置している。また、アポフェリチンの1〜8番目のア
ミノ酸残基は、生体内においてプロセシングを受けて欠
失している。
【0072】次に、アポフェリチンにおける静電相互作
用について説明する。
【0073】上述のように、中性の溶液中では、アポフ
ェリチンの保持部4及びチャネル3の内表面には、負電
荷を有するアスパラギン酸やグルタミン酸が配置されて
いるため、アポフェリチンの内表面全体の電位Vin
は、アポフェリチンの外部の電位Voutに比べて低く
なっている。すなわち、ΔV=Vin−Voutで定義
されるアポフェリチンの内外電位差ΔVは、ΔV<0
(mV)となっている。
【0074】ここで、(AuCl4-は、負電荷を有し
ているため、アポフェリチン内部の(AuCl4-濃度
をCin、溶液中の(AuCl4-濃度をCoutとす
ると、Cin、Cout及びΔVの関係は次式(1)で
表されることが知られている。
【0075】 Cout/Cin=e-ΔV/kT (1) 式(1)において、eは自然対数、kはボルツマン定
数、Tは絶対温度である。この式から、ΔVを大きくす
ることで、温度が一定の場合、アポフェリチン内部にお
ける(AuCl4-濃度を指数関数的に増加させられる
ことが分かる。例えば、ΔVが正の値であるとき、ΔV
が4倍になれば、Cout/Cinは約80となる。
【0076】一方、アポフェリチンの内表面での(Au
Cl4-→Auの還元反応は、アポフェリチン内部の濃
度が増加すれば加速される。
【0077】本願発明者らは以上の条件を考慮し、溶液
中でアポフェリチンの保持部4に金粒子を効率良く生じ
させるためには、少なくともCinが、Coutの3倍
以上であることが必要である、との結論に達した。室温
において、この条件を満たすΔVは約25(mV)以上
である。特に、十分な速度で保持部4に金粒子を生じさ
せるためには、ΔVが約100(mV)以上であること
が好ましいと考えられた。
【0078】ここで、ΔVは、アポフェリチンの内表面
に存在する塩基の電荷を、その位置を考慮して総和する
ことで求められる。例えば、アポフェリチンモノマーに
おいて、保持部4に位置するグルタミン酸の3つをリジ
ン(Lys)に置き換えることで、アポフェリチンにお
けるΔVは約200(mV)になると試算される。これ
は、アポフェリチンの保持部4に金粒子を生じさせるの
に十分な電位差であると考えられる。
【0079】本願発明者らは、以上のような計算に基づ
いて、以下の金粒子を保持可能な組み換えアポフェリチ
ンを作製した。
【0080】図2(a)〜(c)は、上述の知見に基づ
いて作製された組み換えアポフェリチンの構造を模式的
に示した図である。
【0081】まず、図2(a)に示されているのは、ウ
マ肝臓由来のアポフェリチン(以下、アポフェリチンと
略す)において、128番目のアスパラギン酸と131
番目のグルタミン酸の両アミノ酸をセリン(Ser)に
置換したものである。ここで、アスパラギン酸あるいは
グルタミン酸をセリンに置換しても、アポフェリチンの
立体構造は保持することができる。また、アポフェリチ
ンの1〜8番目のアミノ酸は、アポフェリチンの外表面
上に突き出ており、2次元結晶化などの高次構造の作製
に支障を及ぼすおそれがあるため、欠失させている。こ
の組み換えアポフェリチンを、以下fer-8-serと表記す
る。
【0082】ここで、チャネル3の内表面に存在したマ
イナス電荷を持つアスパラギン酸及びグルタミン酸が、
電荷を持たないセリンに置換されることにより、静電的
な反発力がなくなり、マイナス電荷を持つ(AuC
4-(図2(a)の7)がチャネル3内に取り込まれ
やすくなっている。また、セリン残基はアスパラギン酸
残基,グルタミン酸残基の両残基に比べてサイズが小さ
いため、チャネル内へ(AuCl4-を取り込む際の物
理的な障害が少なくなっている。
【0083】次に、図2(b)に示されているのは、fe
r-8-Serのアミノ酸配列の58番目,61番目,64番
目のグルタミン酸をそれぞれアルギニン(Arg)に置
換した組み換えアポフェリチンである。この組み換えア
ポフェリチンを、以下fer-8-Ser-Argと表記する。
【0084】ここで、アポフェリチンの保持部4の内表
面部に存在していた58番目,61番目,64番目のグ
ルタミン酸をプラス電荷を持つアルギニンに置換するこ
とにより、チャネル3に取り込まれた(AuCl4-
アポフェリチンの保持部4へと誘導することが可能にな
る。このとき、グルタミン酸からアルギニンへ置換して
も、アポフェリチンの立体構造は保持される。ここで保
持部4へ誘導された(AuCl4-7は、順次還元され
て金(Au)原子7’となる。なお、58番目,61番
目,64番目のグルタミン酸と置き換えるアミノ酸とし
ては、負電荷を持たないものであればよく、塩基性アミ
ノ酸であるLysのほか、Alaなどの非極性アミノ
酸、及び中性アミノ酸などであってもよい。
【0085】次に、図2(c)に示されているのは、fe
r-8-Ser-Argのアミノ酸配列の54番目のグルタミン酸
と65番目のアルギニンの両方をシステインに置換した
組み換えアポフェリチンである。以下、この組み換えア
ポフェリチンをfer-8-Ser-Arg-Cysと表記する。
【0086】ここで、fer-8-Ser-Argのアミノ酸配列の
54番目のグルタミン酸と65番目のアルギニンとは、
アポフェリチンの保持部4の内表面に存在するため、こ
れらのアミノ酸を還元作用を持つシステインに置換する
ことにより、保持部4に取り込まれた(AuCl4-
を還元して保持部4内に金の微粒子を析出させることが
できる。これにより、後述の操作により保持部4内に金
からなる核1を形成することができる。
【0087】尚、上述の組み換えアポフェリチンの作製
には、以下に説明するように、公知の遺伝子組み換え技
術及びタンパク質の発現方法を用いる。
【0088】まず、Takedaらにより作製され、ウマ肝臓
由来のアポフェリチンのDNAが組み込まれたプラスミ
ドTakeda99224(S.TakedaらBiochim.Biophys.Acta.,117
4,218-220,1993参照)から、適当な制限酵素を用いてア
ポフェリチンのアミノ酸配列をコードするDNA断片を
切り出す。
【0089】次に、このDNA断片をタンパク質発現用
のベクタープラスミドであるpMK-2に挿入してアポフェ
リチン発現用のプラスミドを作製する。
【0090】続いて、このアポフェリチン発現用のプラ
スミドを鋳型とし、所望の変異を組み込んだ1本鎖DN
Aの断片をプライマーとしてPCR(polymerase chain
reaction)を行ない、アポフェリチンのアミノ酸をコ
ードするDNAの目的の位置に部位特異的に所望の変異
を導入する。こうしてアポフェリチンの1〜8番目まで
のアミノ酸をコードする部分のDNAを欠失させた変異
アポフェリチン遺伝子のDNAの断片を含むプラスミド
を作製する。このアポフェリチン遺伝子のDNA断片
は、必要な場合には切り出し、別のベクタープラスミド
に組み込んでもよい。
【0091】続いて、作製されたプラスミドを市販の大
腸菌(E.coliの1種、Nova Blue)に導入し、形質転換
を行なった後、この大腸菌をジャーファーメンター(大
量培養装置)を用いて37℃にて大量培養する。なお、
形質転換された大腸菌はアンピシリンに耐性を持つた
め、これを指標として形質転換されていない大腸菌と区
別し、選択することができる。
【0092】この大腸菌内では、プラスミドに組み込ま
れた組み換えアポフェリチンのDNAが発現し、1〜8
番目までのアミノ酸残基が欠失したアポフェリチン(以
下fer-8と表記する)が大量に生産されている。fer-8
は、後述する手順により大腸菌の菌体内から抽出・精製
される。
【0093】次に、fer-8-Serを作製するために、先の
操作で得られた,fer-8のアミノ酸配列をコードするD
NAが組み込まれたプラスミドを鋳型とし、アポフェリ
チンの128番目のアスパラギン酸と131番目のグル
タミン酸の両アミノ酸をセリンに置き換えたアミノ酸配
列をコードする1本鎖DNA断片をプライマーとして用
いたPCRを行なう。
【0094】次に、fer-8の作製と同様の操作により、f
er-8-Serのアミノ酸配列をコードするDNAを挿入した
プラスミドを作製し、これを大腸菌(Nova Blue)に導
入し、形質転換する。形質転換した大腸菌を大量培養し
た後、後述する手順により大腸菌の菌体内からfer-8-Se
rを抽出・精製する。
【0095】以下、同様の手順により、fer-8-Ser-Arg
のアミノ酸配列をコードするDNAを挿入したプラスミ
ドとfer-8-Ser-Argを得、次いで、fer-8-Ser-Arg-Cysの
アミノ酸配列をコードするDNAを挿入したプラスミド
とfer-8-Ser-Arg-Cysを得る。
【0096】尚、上述の操作における変異アポフェリチ
ンの抽出・精製手順は以下の通りである。
【0097】まず、培養終了後の大腸菌の培養液を遠心
チューブに移して遠心分離器内にセットし、4℃、1
0,000回転/分、25分間の条件で遠心分離し、大
腸菌の菌体を沈殿させる。
【0098】次に、沈殿した菌体を集めた後、液中で超
音波破砕器を用いて菌体を破砕してアポフェリチンを液
中に溶出させる。次いで、菌体を破砕した液を遠心チュ
ーブに移して遠心分離器内にセットし、4℃、10,0
00回転/分、25分間の条件で遠心分離し、破砕され
ずに残った菌体を沈殿させる。
【0099】次に、遠心チューブから上清(上澄み液)
を採取し、この液を60℃、15分間熱処理した後遠心
チューブに移し、4℃、10,000回転/分、25分
間の条件で遠心分離する。この操作により不要なタンパ
ク質が変性してチューブの底部に沈殿する。
【0100】続いて、遠心チューブから上清を採取した
後、4℃下、Q-sepharose HP(ゲルろ過カラム)を用い
たカラムクロマトグラフィを行ない、上清中に含まれる
アポフェリチン画分を採取する。このアポフェリチン画
分をさらに25℃下、Sephacryl S-300(ゲルろ過カラ
ム)に流してカラムクロマトグラフィを行なうことによ
り精製する。この操作により、不純物が除かれ、精製さ
れた組み換えアポフェリチンが得られる。
【0101】なお、本発明において、改質されたアポフ
ェリチンをコードするDNAが一旦得られれば、公知の
技術によりこのDNAを増幅することができる。従っ
て、組み換えアポフェリチンを量産する場合には、再度
遺伝子の組み替えを工程を行なう必要はない。
【0102】−金粒子を保持するアポフェリチンの作製
− まず、組み換えアポフェリチン溶液とKAuCl4溶液
(またはHAuCl4)とを混合し、それぞれの最終濃
度が、組み換えアポフェリチンは0.5mg/mL、K
AuCl4は3mmol/L、pHが7−9となるよう
に溶液を調製した後、溶液を室温で24時間以上放置し
て金粒子をアポフェリチン内部へ取り込ませ、金−アポ
フェリチン複合体を形成させる。ここで、緩衝剤として
は、pH7−8であれば100mMのリン酸が、pH8
−9では100mMのTris−Hclがそれぞれ好ま
しく用いられる。
【0103】このとき、NaBH4を1mM以下の濃度
になるように溶液に加えるか、エタノール等のアルコー
ルを10%以下(v/v)の濃度になるように加える
か、光または紫外線を照射するかのいずれか1つを行な
うことで、(AuCl4-の還元反応を加速して反応時
間を短縮することもできる。但し、NaBH4の濃度が
1mMを越える場合、または、エタノール濃度が10%
(v/v)を越える場合は、(AuCl4-がアポフェ
リチン内部に取り込まれる前に還元されてしまい、アポ
フェリチンの外表面上に金粒子が析出する可能性があ
る。アポフェリチンの外表面上に析出した金粒子のサイ
ズはアポフェリチンの保持部4で形成される金粒子のサ
イズと比べると、ばらつきが大きい。
【0104】なお、アポフェリチン内部において、析出
した金粒子の表面は自身が(AuCl4-の還元反応を
触媒する(自己触媒作用)。これにより、アポフェリチ
ンの保持部4が満たされるまで(AuCl4-の還元反
応が継続する。
【0105】また、ここで溶液のpHを7−9とするの
は、溶液のpHが6以下では(AuCl4-の還元が非
常に起こりにくくなり、pHが10以上では逆に(Au
Cl4-の還元の進行が制御できなくなるからである。
【0106】その後、鉄を包含したフェリチンの精製と
同様の手順で副反応物や金粒子を保持していないアポフ
ェリチンを除去し、得られた溶液をゲルカラムクロマト
グラフィーにより分画して、金粒子を包含するアポフェ
リチンを溶液として採取する。このときに、保持部4で
はなく外表面上に金粒子が形成されたアポフェリチン、
あるいは少量ではあるが、保持部4と外表面上との両方
に金粒子が形成されたアポフェリチンも同時にそれぞれ
得られる。
【0107】金粒子をアポフェリチンに取り込ませる反
応で、組み換えアポフェリチンとしてfer-8-Ser及びfer
-8-Ser-Argを用いた場合は、金粒子を内部に包含したア
ポフェリチンと同様、金粒子が外表面上に形成されたア
ポフェリチンも生成される。これは、アポフェリチンの
外表面上で金が析出する反応の速度が、アポフェリチン
の保持部4に金粒子が形成される反応に比べて速いため
と考えられる。
【0108】これに対し、組み換えアポフェリチンとし
てfer-8-Ser-Arg-Cysを用いることにより、金粒子を内
部に包含したアポフェリチンの収率が大幅に向上する。
これは、保持部4へ導入されたシステイン(Cys)の
還元作用により、アポフェリチンの保持部4での(Au
Cl4-の還元反応が加速されるためである。尚、アポ
フェリチン内に包含された金粒子の直径は、約6nmと
均一である。つまり、本実施形態において作製された組
み換えアポフェリチンfer-8-Ser-Arg-Cysを使用するこ
とにより、ナノメーターオーダーの均一な大きさの金粒
子が効率よく形成できる。微細な金粒子は、後に述べる
DNAセンサーへの応用など、他の金属にはない用途や
利点がある。
【0109】本実施形態において、使用したアポフェリ
チンはウマの肝臓由来のものを用いたが、他の臓器由来
のものや、他の生物由来のアポフェリチン、つまりモノ
マーサブユニットの多量体からなり内部に保持部を備え
たタンパク質などを用いることもできる。リステリア菌
由来のリステリアフェリチンなど、他の生物由来のアポ
フェリチンもウマ由来のものと同様の立体構造を持って
いるため、同様の操作で組み換えアポフェリチンを得る
ことができる。金属−アポフェリチン複合体の核の直径
は、種によって若干異なるため、これにより、金粒子の
直径にバリエーションを持たせることができる。
【0110】これに加え、内部に金属などを保持可能な
かご状タンパク質であれば、本実施形態で行ったよう
に、チャネルと内部の電荷を変えることにより、金粒子
を保持させることが可能である。
【0111】また、12個のモノマーサブユニットから
なり、内部に無機物を保持する保持部を備えたDpsタ
ンパクなど他のフェリチンファミリータンパクの場合
も、アポフェリチンと同様の遺伝子組み換え技術を用い
て貴金属粒子を保持させることが可能である。
【0112】また、本実施形態においては、アポフェリ
チンのチャネル3の内表面に存在する128番目のアス
パラギン酸と131番目のグルタミン酸の両方をセリン
に置換したが、セリンの代わりとして分子量がより小さ
い中性アミノ酸であるグリシンまたはアラニンに置換し
てもよい。
【0113】また、本実施形態においては、組み換えア
ポフェリチンとしてfer-8-Ser-Argを挙げたが、アポフ
ェリチンのアミノ酸配列の58,61,64番目の各グ
ルタミン酸を置換するアミノ酸は、リジンやアラニン
等、負電荷を持たない塩基性または非極性あるいは中性
アミノ酸であればよい。アミノ酸配列の58,61,6
4番目の各グルタミン酸をリジンで置換した組み換えア
ポフェリチンは以下、fer-8-Ser-Lysと表記する。
【0114】また、アミノ酸配列の58,61,64番
目の各グルタミン酸をアラニンで置換した組み換えアポ
フェリチンは、fer-8-Ser-Alaと表記する。
【0115】尚、fer-8-Ser-Lysの54番目のグルタミ
ン酸と65番目のアルギニンの両方をシステインで置換
した組み換えアポフェリチンは、fer-8-Ser-Lys-Cysと
表記する。また、fer-8-Ser-Alaの54番目のグルタミ
ン酸と65番目のアルギニンの両方をシステインで置換
した組み換えアポフェリチンは、fer-8-Ser-Ala-Cysと
表記する。
【0116】このうち、fer-8-Ser-Lys-Cysのアミノ酸
配列をコードするDNA配列を配列番号1に、fer-8-Se
r-Lys-Cysのアミノ酸配列を配列番号2にそれぞれ記載
する。尚、配列番号2のアミノ酸配列は、9番目のチロ
シンから始まっている。
【0117】なお、本実施形態において作製されたfer-
8-Ser-Lys-Cysにおいて、58,61,64番目(配列
番号2においては50,53,56番目)のLysをコ
ードするDNA配列は共に”aag”であるが、これに代
えてLysをコードする”aaa”であってもよい。12
8,131番目(配列番号2においては120,123
番目)のSerや、54,65番目(配列番号2におい
ては46,57番目)のCysについても、これらのア
ミノ酸をコードするDNA配列であれば配列番号1に示
す配列と異なっていてもよい。これは、他の組み換えア
ポフェリチンについても同様である。
【0118】また、本実施形態において作製されたfer-
8-Ser-Arg-Cys,fer-8-Ser-Lys-Cys及びfer-8-Ser-Ala-
Cys等の組み換えアポフェリチンの127番目のシステ
インはアポフェリチンの外表面に位置しており、このシ
ステインがアポフェリチンの外表面上に金粒子を析出さ
せていると推定される。よって、fer-8-Ser-Arg-Cys,fe
r-8-Ser-Lys-Cys及びfer-8-Ser-Ala-Cysの127番目の
システインを当該システインよりも還元機能が小さい物
質にすることにより、金粒子のアポフェリチン外表面上
での析出が抑制され、金粒子を内包したアポフェリチン
の収率をさらに向上させることができると考えられる。
この方法としては、127番目のシステインを例えばア
ラニン等のアミノ酸で置換してもよいし、システイン残
基と反応して還元機能を抑える化学物質等と反応させて
もよい。
【0119】また、本実施形態において、金−アポフェ
リチン複合体を作製したが、アポフェリチンに(AuC
4-を導入する代わりに、クロロ白金酸(PtC
4 2-を組み換えアポフェリチンに導入することによ
り、白金粒子を保持したアポフェリチンを作製すること
もできる。但し、(PtCl4 2-はpH7−9の溶液
中で容易に還元されて溶液中に白金が析出するため、溶
液のpHは7よりも低くしておく必要がある。このとき
緩衝液としては、pH4付近にする場合は100mMの
酢酸が、pH3付近にする場合は100mMのβ−アラ
ニンがそれぞれ用いられる。
【0120】本実施形態において作製された貴金属粒子
を保持する組み換えアポフェリチンの産業上の利用例を
以下の実施形態で述べる。
【0121】(第2の実施形態)まず、本実施形態にお
けるヌクレオチド検出装置の構成について説明する。図
5は、本実施形態のヌクレオチド検出装置の構造を示す
断面図である。
【0122】同図に示すように、本実施形態のヌクレオ
チド検出装置10はDNAセンサであり、図5に示すよ
うに、基板11と、基板11の表面上に高密度、且つ、
高精度(隣接する粒子と互いに約12nm間隔)で配置
されたナノメーターサイズ(直径6nm程度)の金粒子
12と、端部に硫黄原子を有する1本鎖DNA(チオー
ルDNA)13とからなり、金粒子12にチオールDN
A13を結合させたものである。
【0123】次に、本実施形態のヌクレオチド検出装置
10の作製方法を説明する。本実施形態のヌクレオチド
検出装置10を作製するためには、直径6nm程度の金
粒子12を、基板11の表面上に2次元状に高密度且つ
高精度に配列および固定する必要がある。
【0124】まず、第1の実施形態の金粒子12を保持
する組み換えアポフェリチン(fer-8-Ser-Arg-Cysと金
粒子との複合体;以下、金内包アポフェリチン15と称
する)を、後述の方法により基板11の表面上に配置す
る。
【0125】図3は、基板11上に配置された金内包ア
ポフェリチン15を模式的に示す図であり、図4は、基
板11上に配置された金内包アポフェリチン15の電子
顕微鏡写真を示す図である。
【0126】図4の撮影に際しては、アポフェリチンに
取り込まれない大きさの金グルコースを染色に用いた。
ここで、金グルコース染色を用いたのは、通常の色素で
染色すると、アポフェリチン内部に色素が入り込んで金
粒子の存在を確認できないからである。
【0127】この操作により、図3または図4に示すよ
うに高密度、且つ高精度で配置された金内包アポフェリ
チン15の膜が基板11上に形成される。図4から、こ
のときのアポフェリチンの外径は約12nmであること
が分かる。
【0128】続いて、金内包アポフェリチン15のうち
のタンパク質からなる外殻2を除去して、金粒子12の
みを残存させる。次いで、金粒子12にチオールDNA
13を結合させる。ここで使用されるDNAは1本鎖D
NAである。
【0129】本実施形態において、金内包アポフェリチ
ン15を基板11の表面上に2次元状に高密度、且つ高
精度で配置及び固定するためには既知の方法を用いるこ
とができる。
【0130】例えば、以下に説明する吉村らにより開発
された転写法(Adv.Biophys.,Vol.34,p99-107,(199
7))による方法を用いることができる。
【0131】この方法では、まず、濃度2%のシューク
ロース溶液に、金内包アポフェリチン15を分散した液
体を、シリンジを用いて注入する。すると、液体は、シ
ュークロース溶液の液面に向かって浮上する。
【0132】次に、最初に気液界面に到達した液体は変
性したアポフェリチンからなるアモルファス膜を形成
し、後から到達した液体はアモルファス膜の下に付着し
ていく。
【0133】次に、アモルファス膜の下に、金内包アポ
フェリチン15の2次元結晶を形成する。次いで、アモ
ルファス膜と金内包アポフェリチン15の2次元結晶と
からなる膜の上に、基板11(シリコンウエハ、カーボ
ングリッド、ガラス基板等)を載置すれば、この金内包
アポフェリチン15からなる膜は、基板11の表面に転
写される。
【0134】この方法により、図3に示すように、基板
11上に金内包アポフェリチン15を高密度、高精度で
配置することができる。
【0135】このとき、基板11の表面を疎水性に処理
しておくことで、より簡単に基板11の表面に膜を転写
することができる。
【0136】次に、タンパク質からなる外殻2の除去を
行なう。タンパク質分子は、一般に熱に弱いので、以下
に示す熱処理により外殻2を除去することができる。
【0137】例えば、窒素等の不活性ガス中において、
400〜500℃にて、約1時間静置すると、外殻2、
およびタンパク質からなるアモルファス膜が焼失し、基
板11上には金粒子12が2次元状に、高密度で、且つ
高精度で規則正しく配列したドット状に残存する。
【0138】以上のようにして、金内包アポフェリチン
15に保持させた金粒子12を、基板11上に2次元状
に出現させ、高密度且つ高精度に配列させることができ
る。
【0139】次に、本実施形態のヌクレオチド検出装置
10の形成について以下に説明する。
【0140】本実施形態のヌクレオチド検出装置10
は、上述のようにして基板11上に配置された金粒子1
2に、チオールDNA13を結合させたものである。
【0141】金粒子12とチオールDNA13との結合
方法は、金粒子12を配置した基板11と、チオールD
NA13の水溶液とを接触させ、所定の時間放置するだ
けでよい。これは、硫黄が金と反応し易いので、このチ
オールDNA13またはチオールRNAの端部において
金粒子12と容易に共役結合を形成するからである。
【0142】具体的には、水溶液中のチオールDNA1
3と、基板11上の金粒子12とが接触すると、チオー
ルDNA13の硫黄原子Sと金粒子12とが1対1で共
有結合し、チオールDNA13が極めて高密度・高精度
で基板11上に配置される。基板11上の金粒子12
は、2次元状に高密度且つ高精度で配列されているの
で、金粒子12と結合したチオールDNA13も2次元
状に高密度且つ高精度で配列され、粒子の大きさに応じ
て単位面積当たりの粒子数を均一に配置したヌクレオチ
ド検出装置10が得られる。
【0143】なお、この工程で、チオールDNA13の
代わりにチオールRNA、端部をチオール化したPCR
プライマーなどのヌクレオチドを用いてもよい。
【0144】上記工程において、チオールDNA13の
水溶液中における濃度は、理論的には、基板11上の金
粒子12の数とチオールDNA13の数とが一致すれば
よい。しかし、実際には、チオールDNA13の数が金
粒子12の数より多数となるようにすることが好まし
い。従って、本実施形態では、液体中に分散した状態で
含まれる金内包アポフェリチン15の分子数以上のチオ
ールDNA13が含まれるように、高濃度のチオールD
NA13の水溶液を使用する。
【0145】また、チオールDNA13の水溶液の温度
が高いほど、チオールDNA13の硫黄原子Sと金粒子
12との結合が促進される。しかし、余り高温である
と、対流が激しくなる等、チオールDNA13の水溶液
の取扱いが困難となる。また、エネルギー消費の観点か
らも不利となるので、一般には、チオールDNA13の
水溶液を20〜60℃程度に加温して行なうことが好ま
しい。
【0146】以上のようにして、検出したいDNAまた
はRNAを簡便に検出することができる本実施形態のヌ
クレオチド検出装置10が得られる。
【0147】次に、ヌクレオチド検出装置10をDNA
センサとしたときの、DNA検出方法を説明する。
【0148】まず、検出対象となるDNA群(被検出D
NA群)を含む溶液を用意し、予め被検出DNA群を蛍
光ラベル処理しておく。
【0149】蛍光ラベルした被検出DNA群の溶液を、
チオールDNA13を配置したヌクレオチド検出装置1
0に接触させて放置する。
【0150】一定時間を経ると、ヌクレオチド検出装置
10のチオールDNA13とハイブリダイズするDNA
が被検出DNA群の中に存在する場合は、ヌクレオチド
検出装置10のチオールDNA13と被検出DNA群の
中のDNAとが、2重螺旋を構成し、安定な結合を完成
する。
【0151】次に、ヌクレオチド検出装置10を水等の
蛍光物質を含まない溶液で洗浄すれば、被検出DNA群
のうちのヌクレオチド検出装置10のチオールDNA1
3と結合しなかったDNAと、ヌクレオチド検出装置1
0上に残っていた微量の蛍光物質とが除去される。
【0152】この後、ヌクレオチド検出装置10の表面
にレーザ等の光源を照射して蛍光を観察する。このと
き、ヌクレオチド検出装置10のチオールDNA13と
ハイブリダイズする配列を有するDNAが、上記の被検
出DNA群に存在していれば、蛍光を発する。
【0153】以上のように、蛍光を発するか否かで、被
検出DNA群中に所定の配列を有するDNAが存在する
か否かを検出することができる。
【0154】特に、本実施形態のヌクレオチド検出装置
10は、チオールDNA13が高密度で、且つ高精度
で、基板全体に亘って均一に配置されている。このた
め、蛍光強度が高く、且つ高精度で均一となり、SN比
が非常に高い高性能DNAセンサとして利用することが
できる。従って、本実施形態のヌクレオチド検出装置1
0をDNAセンサとして利用した場合、所定の値よりも
高い蛍光強度が得られれば、被検出DNA群中に所定の
配列を有するDNAが存在すると判定できる。つまり、
所定の配列を有するDNAの有無の判定を誤る可能性が
ほとんどない。
【0155】さらに、本実施形態のヌクレオチド検出装
置10は、チオールDNA13が高密度且つ高精度で、
基板全体に亘って均一に配置されているとともに、所定
の配列を有するDNAのハイブリダイズ後の蛍光強度
は、基板毎に異なることがほとんどない。従って、ハイ
ブリダイズしたDNAの有無の判定のために、蛍光強度
のしきい値の設定を基板毎に変更する必要が無く、蛍光
検出器の調整の手間を大幅に削減することができるとい
う著効を発揮する。
【0156】なお、本実施形態では、ヌクレオチド検出
装置10をDNAセンサとした場合について説明した
が、検出対象となるDNA群の代わりに、RNA群を用
いることによって、ヌクレオチド検出装置10をRNA
センサとすることができる。
【0157】また、従来は、DNAチップなどのヌクレ
オチド検出装置は使い捨てであるが、本実施形態のヌク
レオチド検出装置10においては、基板とDNA(また
はRNA)が硫黄原子および金粒子を介して強固に固定
されているため、100℃の温度でもこの固定を維持す
ることができる。従って、ハイブリダイズしたDNAを
チオールDNAから解離させて洗い流すことによって、
繰り返し使用することもできる。
【0158】また、本実施形態において用いられた金内
包アポフェリチン15の代わりに、第1の実施形態にお
いて得られた、外表面上に金粒子が成長した金−アポフ
ェリチン複合体を用いてもよい。アポフェリチンの外表
面上で成長した金粒子は、サイズは均一ではないが、本
実施形態で用いられる金粒子12と同様に、高密度且つ
高精度で金粒子を基板上に配置することができる。第1
の実施形態において、fer-8-Ser-Argを用いると、非常
に高い収率で外表面上に金粒子が成長したfer-8-Ser-Ar
gが得られるので、金内包アポフェリチン15を用いる
場合に比べ、ヌクレオチド検出装置10の製造コストを
下げることが可能となる。
【0159】(第3の実施形態)本実施形態では、第1
の実施形態において作製された金内包アポフェリチンを
利用して形成されるドット体をフローティングゲートと
して含む不揮発メモリセルについて説明する。尚、本実
施形態の不揮発メモリセル及びその製造方法は、特開平
11−233752号公報に記載のものである。
【0160】図6は、ドット体をフローティングゲート
として利用した不揮発性メモリセルの構造を示す断面図
である。同図に示されるように、p型Si基板21上に
は、制御ゲートとして機能するポリシリコン電極26
と、約6nmの粒径を有する金の微粒子により構成され
フローティングゲート電極として機能するドット体24
と、p型Si基板21とフローティングゲートとの間に
介在してトンネル絶縁膜として機能するゲート酸化膜2
3と、制御ゲートとフローティングゲートとの間にあっ
て制御ゲートの電圧をフローティングゲートに伝える電
極間絶縁膜として機能するシリコン酸化膜25とが設け
られている。そして、p型Si基板21内には、ソース
もしくはドレインとして機能する第1,第2n型拡散層
27a及び27bとが形成されていて、p型Si基板2
1内の第1,第2n型拡散層27a,27b間の領域は
チャネルとして機能する。また、図示されているメモリ
セルと隣接するメモリセルとの間には、電気的分離のた
め、選択酸化法等を用いて形成された素子分離酸化膜2
2が形成されている。第1,第2n型拡散層27a,2
7bは各々タングステンプラグ30を介して第1,第2
アルミニウム配線31a,31bとそれぞれ接続されて
いる。図6には示されていないが、ポリシリコン電極2
6やp型Si基板21もアルミニウム配線と接続されて
おり、このアルミニウム配線等を用いてメモリセルの各
部の電圧を制御するように構成されている。
【0161】このメモリセルの以下のように、容易に形
成される。
【0162】まず、LOCOS法により、活性領域を取
り囲む素子分離酸化膜22を形成した後、基板上にゲー
ト酸化膜23を形成する。その後、第1の実施形態にお
いて作製された金内包アポフェリチンを用いて、ドット
体24を基板全体に形成する。この際に、金粒子を内包
したアポフェリチンを用いることにより、従来の金属酸
化物を内包するアポフェリチンを用いたときに必要であ
ったドット体の還元を行なう工程を省くことができる。
【0163】次に、基板上に、CVD法により、ドット
体24を埋めるシリコン酸化膜及びポリシリコン膜を堆
積する。
【0164】次に、シリコン酸化膜及びポリシリコン膜
のパターニングを行なって電極間絶縁膜となるシリコン
酸化膜25及び制御ゲート電極となるポリシリコン電極
26を形成する。その後、フォトレジストマスク及びポ
リシリコン電極26をマスクとして不純物イオンの注入
を行なって、第1,第2n型拡散層27a,27bを形
成する。
【0165】その後、周知の方法により、層間絶縁膜2
8の形成と、層間絶縁膜28へのコンタクトホール29
の開口と、コンタクトホール29内へのタングステンの
埋め込みによるタングステンプラグ30の形成と、第
1,第2アルミニウム配線31a,31bの形成とを行
なう。
【0166】本実施形態のメモリセルは、制御ゲートと
して機能するポリシリコン電極26と、ソースもしくは
ドレインとして機能する第1,第2n型拡散層27a,
27bとからなるMOSトランジスタ(メモリトランジ
スタ)を備え、フローティングゲートとして機能するド
ット体24に蓄えられた電荷の量で上記メモリトランジ
スタの閾値電圧が変化することを利用した不揮発性メモ
リセルである。この不揮発性メモリセルは、二値を記憶
するメモリとしての機能が得られるが、ドット体24に
蓄えられる電荷の有無のみだけでなく電荷の蓄積量を制
御することで、三値以上の多値メモリを実現することも
できる。
【0167】データの消去の際には、酸化膜を介したF
N(Fowler-Nordheim )電流や直接トンネリング電流を
利用する。
【0168】また、データの書き込みには、酸化膜を介
したFN電流や直接トンネリング電流あるいはチャネル
ホットエレクトロン(CHE)注入を用いる。
【0169】本実施形態の不揮発性メモリセルによる
と、フローティングゲートが量子ドットとして機能でき
る程度に粒径の小さい金微粒子により構成されているの
で、電荷の蓄積量がわずかである。したがって、書き込
み,消去の際の電流量を小さくでき、低消費電力の不揮
発性メモリセルを構成することができる。
【0170】また、本実施形態の不揮発性メモリセルに
おいて、フローティングゲートを構成する金微粒子のサ
イズが均一であるため、電荷の注入、引き抜きの際の特
性が各金微粒子間で揃っており、これらの操作において
制御が容易に行えるようになる。
【0171】また、上記ドット体24は、互いに接触し
ながら連続的につまり全体として膜を構成するような状
態で形成されていてもよいし、互いに離れて分散的に形
成されていてもよい。本実施形態においては、金微粒子
を包含するアポフェリチンを用いているので、基板の所
望の部分に疎水処理を施してからアポフェリチンを配置
させるなどの方法により、このような微細なドット体パ
ターンを容易に形成することができる。
【0172】尚、本実施形態では、ドット体の構成材料
として金を用いたが、これに代えて白金を用いてもよ
い。金内包アポフェリチンに代えて第1の実施形態にお
いて作製される白金内包アポフェリチンを用いること
で、直径が約6nmの均一サイズの白金からなるドット
体を形成することができる。この場合も、金内包アポフ
ェリチンを用いたときと同様に、ドット体の還元工程が
不要という利点がある。
【0173】(第4の実施形態)本実施形態として、第
1の実施形態の金内包アポフェリチンを利用して金粒子
を基板上に配置させ、この金粒子をエッチングマスクと
して使用する方法について述べる。
【0174】図7(a)−(c)は、金粒子をマスクと
して微小構造体を形成する方法を示す断面図である。
【0175】まず、図7(a)に示す工程で、第2の実
施形態と同様の方法により、シリコン基板34上に金内
包アポフェリチンを所望の位置に配置させた後、熱処理
することにより、タンパク質からなる外殻を除去する。
これにより、直径約6nmの金粒子33が基板34上に
残る。
【0176】ここで、金を内包したアポフェリチンを用
いることにより、金属酸化物内包アポフェリチンを用い
たときに行なう還元工程が不要になる。
【0177】続いて、図7(b)に示す工程で、SF6
ガスを用いて、シリコン基板34に対し、5分間イオン
反応性エッチング(RIE)を行なうことにより、シリ
コン基板34が選択的に削られる。これは、金粒子33
がシリコン基板34に比べエッチングされにくいためで
ある。
【0178】次に、図7(c)に示す工程で、さらにエ
ッチングが進むと最終的には金粒子33も除去され、所
望のパターンを施されたシリコン基板34が残る。本実
施形態の方法により、上面の直径が約6nmで均一な微
細柱状のパターン(以下「微細柱状のパターン」を「微
細柱」と称する)を基板上に正確に形成することができ
る。つまり、従来困難であったサイズが均一で且つ微細
な構造体の形成(すなわち、微小構造体の精密加工)が
本実施形態の方法により可能となる。
【0179】本実施形態の方法により形成された微小構
造体は、例えば後述する量子効果を利用した発光素子等
に利用することができる。
【0180】尚、本実施形態においては、エッチングマ
スクとして金粒子を用いたが、これに代えて白金粒子を
用いることもできる。このためには、工程(a)におい
て、金内包アポフェリチンに代えて、第1の実施形態の
白金内包アポフェリチンを用いればよい。
【0181】尚、状況によってはFeを内包するフェリ
チン及びNi、Coなどを内包するアポフェリチンを用
いても還元工程が不要であることがあるが、本実施形態
の貴金属内包アポフェリチンを用いることにより、いず
れの状況下でも、還元工程を省くことができる。
【0182】尚、本実施形態の工程(a)において、金
内包アポフェリチンの外殻を除去するために熱処理を用
いたが、これに代えてオゾン分解あるいは臭化シアン
(CNBr)による化学分解を用いてもよい。
【0183】(第5の実施形態)第5の実施形態とし
て、第4の実施形態の加工方法により形成された微細柱
を用いて、江利口らにより報告された特開平08−08
3940号公報に記載の光半導体装置を製造する方法に
ついて以下に説明する。
【0184】図8は第4の実施形態により形成された上
面の直径が6nmの半導体微細柱を用いた光半導体装置
の断面図である。
【0185】まず、第4の実施形態において、基板とし
てn型シリコンの一部にp型ウェル51が形成され、さ
らにp型ウェル51上にn型ウェルを形成したものを用
いる。この基板を第4の実施形態の方法により加工し、
n型シリコンからなる半導体微細柱42を高密度で形成
する。
【0186】次に、熱酸化法により半導体微細柱42の
側面をシリコン酸化膜からなる絶縁層43で覆った後、
半導体微細柱42間の隙間を絶縁層43で埋め、その先
端面を平坦化する。
【0187】さらに、絶縁層43のうち平坦化された半
導体微細柱42先端部の表面の絶縁層を除去し、その上
に透明電極44を形成する。
【0188】尚、シリコン基板41上の量子化領域Rq
aの側方はあらかじめ形成された絶縁分離層49によっ
て他の領域と区画されている。また、絶縁分離層49を
貫通する側方電極50も前もって形成され、各半導体微
細柱42の上部電極である透明電極44に対し下部電極
として機能するシリコン基板41に接続されている。
【0189】これにより、光半導体装置が形成され、透
明電極44と側方電極50との間に順方向の電圧を印加
すると、室温でエレクトロルミネッセンスが生じる。さ
らに、キャリア注入電圧を変化させることにより、赤、
青、黄色、それぞれの発光に対応した可視光のエレクト
ロルミネッセンスが生じる。
【0190】本実施形態によれば、これまで実施が困難
であった高い発光効率を持った光半導体装置を実現する
ことができる。
【0191】(その他の実施形態)第1の実施形態の金
−アポフェリチン複合体の作製過程において、外表面上
と保持部の両方に金粒子を保持する金−アポフェリチン
複合体が少量得られる。
【0192】図9は、外表面上と保持部の両方に金粒子
を保持する金−アポフェリチン複合体を示す図である。
同図で、保持部に保持されている第1の金粒子61の直
径は約6nm、アポフェリチンの外表面上に形成されて
いる第2の金粒子62の大きさはばらつきがあるが、少
なくともアポフェリチンに内包される第1の金粒子61
よりもサイズが大きい。また、保持部に保持されている
第1の金粒子61はアポフェリチンの外殻63で囲まれ
ている。
【0193】この金−アポフェリチン複合体をシリコン
基板等の上に、第2の金粒子62が上にくるように膜状
に配置する。
【0194】この基板をさらに加工し、第1の金粒子6
1及び第2の金粒子62をフローティングゲートとして
有するダブルドットタイプの不揮発メモリセルを作製す
ることができる。この不揮発メモリセルは、データの保
持時間が長いことが特徴であるが、これは、サイズが異
なる粒子では電荷の入りやすさ及び放出しやすさが互い
に違うため、入力された情報を電荷を放出しにくい方の
金粒子に保持しておけるからである。ここで、金−アポ
フェリチン複合体を用いることで、保持時間の長い不揮
発メモリセルを容易に作成することができる。
【0195】また、アポフェリチンを用いることによ
り、ナノメーターサイズの金粒子をフローティングゲー
トとして使用することができるので、メモリセルを微細
化することもできる。
【0196】また、本実施形態では金−アポフェリチン
複合体のみを用いたが、他の金属とアポフェリチンとの
複合体を金−アポフェリチン複合体と組み合わせて使用
することにより、準位の異なったドットを作製すること
ができ、保持時間の長い不揮発メモリを容易に作成する
ことができる。
【0197】尚、本実施形態において、外表面上と保持
部とに金を保持するアポフェリチンの代わりに外表面上
と保持部とに白金を保持するアポフェリチンを用いても
よいし、これと金を保持するアポフェリチンとを組み合
わせて使用してもよい。
【0198】
【発明の効果】本発明の組み換えアポフェリチン及びそ
の作製方法、貴金属−組み換えアポフェリチン複合体及
びその作製方法によれば、遺伝子組み換え技術を用いて
内部構造を改質することにより、アポフェリチン内に貴
金属原子を導入することができ、ひいては、各種の微細
構造に適用可能な貴金属粒子を形成することが可能とな
る。また、本発明の大腸菌及び組み換え遺伝子を用いる
ことにより、上記の組み換えアポフェリチンを効率よく
得ることができる。
【0199】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. <120> 組み換えかご状タンパク質、その作製方法、貴金属−組み換えかご状タン パク質複合体、その作製方法、及び組み換えDNA <130> Apoferritin DNA PRT <150> JP P2001-142983 <151> 2001-05-14 <160> 2 <170> PatentIn Ver. 2.1 <210> 1 <211> 504 <212> DNA <213> Artificial Sequence <223> Description of Artificial Sequence:Recombinant DNA of Liver Apoferritin of Equus cebellus <400> 1 tattctactg aagtggaggc cgccgtcaac cgcctggtca acctgtacct gcgggcctcc 60 tacacctacc tctctctggg cttctatttc gaccgcgacg atgtggctct ggagggcgta 120 tgccacttct tccgctgctt ggcggagaag aagcgcaagg gtgccaagtg cctcttgaag 180 atgcaaaacc agcgcggcgg ccgcgccctc ttccagagct tgtccaagcc gtcccaggat 240 gaatggggta caaccccgga tgccatgaaa gccgccattg tcctggagaa gagcctgaac 300 caggcccttt tggatctgca tgccctgggt tctgcccagg cagaccccca tctctgtagc 360 ttcttgtcta gccacttcct agacgaggag gtgaaactca tcaagaagat gggcgaccat 420 ctgaccaaca tccagaggct cgttggctcc caagctgggc tgggcgagta tctctttgaa 480 aggctcactc tcaagcacga ctaa 504 <210> 2 <211> 167 <212> PRT <213> Artificial Sequence <223> Description of Artificial Sequence:Recombinant Liver Apoferritin of Equus cebellus <220> <221> MUTAGEN <222> (46) <220> <221> MUTAGEN <222> (50) <220> <221> MUTAGEN <222> (53) <220> <221> MUTAGEN <222> (56) <220> <221> MUTAGEN <222> (57) <220> <221> MUTAGEN <222> (120) <220> <221> MUTAGEN <222> (123) <400> 2 Tyr Ser Thr Glu Val Glu Ala Ala Val Asn Arg Leu Val Asn Leu Tyr 1 5 10 15 Leu Arg Ala Ser Tyr Thr Tyr Leu Ser Leu Gly Phe Tyr Phe Asp Arg 20 25 30 Asp Asp Val Ala Leu Glu Gly Val Cys His Phe Phe Arg Cys Leu Ala 35 40 45 Glu Lys Lys Arg Lys Gly Ala Lys Cys Leu Leu Lys Met Gln Asn Gln 50 55 60 Arg Gly Gly Arg Ala Leu Phe Gln Asp Leu Gln Lys Pro Ser Gln Asp 65 70 75 80 Glu Trp Gly Thr Thr Pro Asp Ala Met Lys Ala Ala Ile Val Leu Glu 85 90 95 Lys Ser Leu Asn Gln Ala Leu Leu Asp Leu His Ala Leu Gly Ser Ala 100 105 110 Gln Ala Asp Pro His Leu Cys Ser Phe Leu Ser Ser His Phe Leu Asp 115 120 125 Glu Glu Val Lys Leu Ile Lys Lys Met Gly Asp His Leu Thr Asn Ile 130 135 140 Gln Arg Leu Val Gly Ser Gln Ala Gly Leu Gly Glu Tyr Leu Phe Glu 145 150 155 160 Arg Leu Thr Leu Lys His Asp 165
【図面の簡単な説明】
【図1】フェリチンの構造を模式的に示す図である。
【図2】(a)−(c)は、本発明の第1の実施形態に
係る組み換えアポフェリチンを模式的に示す断面図であ
る。
【図3】基板上に配置された金内包アポフェリチンを模
式的に示す図である。
【図4】基板上に配置された金内包アポフェリチンの電
子顕微鏡写真を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るヌクレオチド検
出装置を概略的に示す図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る,金粒子からな
るドット体をフローティングゲートとして利用した不揮
発性メモリセルの構造を示す断面図である。
【図7】(a)−(c)は、本発明の第4の実施形態に
係る微小構造体の形成工程を示す断面図である。
【図8】本発明の第5の実施形態に係り、第4の実施形
態において形成された微小構造体形を利用した光半導体
装置の断面図である。
【図9】本発明により形成された、外表面と保持部の両
方に貴金属粒子を保持する金−アポフェリチン複合体を
模式的に示す図である。
【符号の説明】
1 核 2 外殻 3 チャネル 4 保持部 7 クロロ金酸イオン(AuCl4- 7’ 金(Au)原子 10 ヌクレオチド検出装置 11 基板 12 金粒子 13 チオールDNA 15 金内包アポフェリチン 21 p型Si基板 22 素子分離酸化膜 23 ゲート酸化膜 24 ドット体 25 シリコン酸化膜 26 ポリシリコン電極 27a 第1のn型拡散層 27b 第2のn型拡散層 28 層間絶縁膜 29 コンタクトホール 30 タングステンプラグ 31a 第1のアルミニウム配線 31b 第2のアルミニウム配線 33 金粒子 34 シリコン基板 41 シリコン基板 42 半導体微細柱 43 絶縁層 44 透明電極 49 絶縁分離層 50 側方電極 51 p型ウェル Rqa 量子化領域 61 第1の金粒子 62 第2の金粒子 63 外殻

Claims (34)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 遺伝子組み換え技術により作製された組
    み換えかご状タンパク質であって、 上記組み換えかご状タンパク質の内部にあり貴金属粒子
    を保持可能な保持部と、 上記保持部と上記組み換えかご状タンパク質の外部とを
    結ぶトンネル状のチャネルとを備えた組み換えかご状タ
    ンパク質。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の組み換えかご状タンパ
    ク質において、 上記組み換えかご状タンパク質は、アポフェリチンであ
    ることを特徴とする組み換えかご状タンパク質。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の組み換えかご
    状タンパク質において、 上記貴金属粒子は金または白金であることを特徴とする
    組み換えかご状タンパク質。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のうちいずれか1つに記載
    の組み換えかご状タンパク質において、 上記チャネルの内表面における、第1のグルタミン酸
    (Glu)及び第1のアスパラギン酸(Asp)の存在
    すべき位置に、分子サイズがグルタミン酸及びアスパラ
    ギン酸よりも小さい第1の中性アミノ酸を備えているこ
    とを特徴とする組み換えかご状タンパク質。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の組み換えかご状タンパ
    ク質において、 上記第1の中性アミノ酸がセリン(Ser),アラニン
    (Ala),グリシン(Gly)のうちから選ばれるこ
    とを特徴とする組み換えかご状タンパク質。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のうちいずれか1つに記載
    の組み換えかご状タンパク質において、 上記保持部の内表面における、第2のグルタミン酸の存
    在すべき位置に、塩基性アミノ酸または第2の中性アミ
    ノ酸をさらに備えていることを特徴とする組み換えかご
    状タンパク質。
  7. 【請求項7】 請求項6に記載の組み換えかご状タンパ
    ク質において、 上記塩基性アミノ酸または上記第2の中性アミノ酸が、
    アルギニン(Arg),リジン(Lys),アラニン
    (Ala)のうちから選ばれることを特徴とする組み換
    えかご状タンパク質。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のうちいずれか1つに記載
    の組み換えかご状タンパク質において、 上記保持部の内表面には、アミノ酸と置換された1つ以
    上のシステイン(Cys)が存在することを特徴とする
    組み換えかご状タンパク質。
  9. 【請求項9】 請求項1〜8のうちいずれか1つに記載
    の組み換えかご状タンパク質において、 上記組み換えかご状タンパク質の外表面には、システイ
    ンの存在すべき位置に、当該システインよりも還元機能
    が小さい物質を備えていることを特徴とする組み換えか
    ご状タンパク質。
  10. 【請求項10】 貴金属粒子と組み換えかご状タンパク
    質とから構成される貴金属−組み換えかご状タンパク質
    複合体であって、 上記組み換えかご状タンパク質は、貴金属粒子を保持可
    能な保持部と、上記保持部と上記組み換えかご状タンパ
    ク質の外部とを結ぶトンネル状のチャネルとを備えてい
    る貴金属−組み換えかご状タンパク質複合体。
  11. 【請求項11】 請求項10に記載の貴金属−組み換え
    かご状タンパク質複合体において、 上記組み換えかご状タンパク質は、アポフェリチンであ
    ることを特徴とする貴金属−組み換えかご状タンパク質
    複合体。
  12. 【請求項12】 請求項10または11に記載の貴金属
    −組み換えかご状タンパク質複合体において、 外表面上に金または白金粒子を保持していることを特徴
    とする貴金属−組み換えかご状タンパク質複合体。
  13. 【請求項13】 請求項10〜12のうちいずれか1つ
    に記載の貴金属−組み換えかご状タンパク質複合体にお
    いて、 上記チャネルの内表面における、第1のグルタミン酸及
    び第1のアスパラギン酸の存在すべき位置に、分子サイ
    ズがグルタミン酸及びアスパラギン酸よりも小さい第1
    の中性アミノ酸を備えていることを特徴とする貴金属−
    組み換えかご状タンパク質複合体。
  14. 【請求項14】 請求項13に記載の貴金属−組み換え
    かご状タンパク質複合体において、 上記第1の中性アミノ酸がセリン,アラニン,グリシン
    のうちから選ばれることを特徴とする貴金属−組み換え
    かご状タンパク質複合体。
  15. 【請求項15】 請求項10〜14のうちいずれか1つ
    に記載の貴金属−組み換えかご状タンパク質複合体にお
    いて、上記保持部の内表面における、第2のグルタミン
    酸の存在すべき位置に、塩基性アミノ酸または第2の中
    性アミノ酸をさらに備えていることを特徴とする貴金属
    −組み換えかご状タンパク質複合体。
  16. 【請求項16】 請求項15に記載の貴金属−組み換え
    かご状タンパク質複合体において、 上記塩基性アミノ酸または上記第2の中性アミノ酸が、
    アルギニン,リジン,アラニンのうちから選ばれること
    を特徴とする貴金属−組み換えかご状タンパク質複合
    体。
  17. 【請求項17】 請求項10〜16のうちいずれか1つ
    に記載の貴金属−組み換えかご状タンパク質複合体にお
    いて、 上記保持部の内表面には、アミノ酸と置換された1つ以
    上のシステインが存在することを特徴とする貴金属−組
    み換えかご状タンパク質複合体。
  18. 【請求項18】 貴金属粒子を保持可能な保持部と、上
    記保持部と上記組み換えかご状タンパク質の外部とを結
    ぶトンネル状のチャネルとを有する組み換えかご状タン
    パク質のアミノ酸配列をコードする組み換えDNA。
  19. 【請求項19】 請求項18に記載の組み換えDNAで
    あって、 上記組み換えかご状タンパク質は、アポフェリチンであ
    ることを特徴とする組み換えDNA。
  20. 【請求項20】 請求項18または19に記載の組み換
    えDNAにおいて、 上記貴金属粒子は金または白金であることを特徴とする
    組み換えDNA。
  21. 【請求項21】 請求項18〜20のうちいずれか1つ
    に記載の組み換えDNAにおいて、 上記チャネルの内表面における、第1のグルタミン酸及
    び第1のアスパラギン酸の存在すべき位置に、分子サイ
    ズがグルタミン酸及びアスパラギン酸よりも小さい第1
    の中性アミノ酸を備えていることを特徴とする組み換え
    DNA。
  22. 【請求項22】 請求項21に記載の組み換えDNAに
    おいて、 上記第1の中性アミノ酸がセリン,アラニン,グリシン
    のうちから選ばれることを特徴とする組み換えDNA。
  23. 【請求項23】 請求項18〜22のうちいずれか1つ
    に記載の組み換えDNAにおいて、 上記保持部の内表面における、第2のグルタミン酸の存
    在すべき位置に、塩基性アミノ酸または第2の中性アミ
    ノ酸をさらに備えていることを特徴とする組み換えDN
    A。
  24. 【請求項24】 請求項23に記載の組み換えDNAに
    おいて、 上記塩基性アミノ酸または上記第2の中性アミノ酸が、
    アルギニン,リジン,アラニンのうちから選ばれること
    を特徴とする組み換えDNA。
  25. 【請求項25】 請求項18〜24のうちいずれか1つ
    に記載の組み換えDNAにおいて、 上記保持部の内表面には、アミノ酸と置換された1つ以
    上のシステインが存在することを特徴とする組み換えD
    NA。
  26. 【請求項26】 チャネルの内表面に位置する第1のグ
    ルタミン酸及び第1のアスパラギン酸を、分子サイズが
    グルタミン酸及びアスパラギン酸よりも小さい第1の中
    性アミノ酸に置換する工程(a)を含む組み換えかご状
    タンパク質の作製方法。
  27. 【請求項27】 請求項26に記載の組み換えかご状タ
    ンパク質の作製方法において、 上記組み換えかご状タンパク質はアポフェリチンである
    ことを特徴とする組み換えかご状タンパク質の作製方
    法。
  28. 【請求項28】 請求項26または27に記載の組み換
    えかご状タンパク質の作製方法において、 上記工程(a)では、上記第1の中性アミノ酸が、セリ
    ン,アラニン,グリシンのうちから選ばれることを特徴
    とする組み換えかご状タンパク質の作製方法。
  29. 【請求項29】 請求項26〜28のうちいずれか1つ
    に記載の組み換えかご状タンパク質の作製方法におい
    て、 上記組み換えかご状タンパク質内部にある保持部の内表
    面に存在する第2のグルタミン酸を、塩基性アミノ酸ま
    たは第2の中性アミノ酸に置換する工程(b)をさらに
    含むことを特徴とする組み換えかご状タンパク質の作製
    方法。
  30. 【請求項30】 請求項26〜29のうちいずれか1つ
    に記載の組み換えかご状タンパク質の作製方法におい
    て、 上記工程(b)では、上記塩基性アミノ酸または上記第
    2の中性アミノ酸が、アルギニン,リジン,アラニンの
    うちから選ばれることを特徴とする組み換えかご状タン
    パク質の作製方法。
  31. 【請求項31】 請求項26〜30のうちいずれか1つ
    に記載の組み換えかご状タンパク質の作製方法におい
    て、 上記保持部の内表面に位置する1つ以上のアミノ酸をシ
    ステインに置換する工程(c)をさらに含むことを特徴
    とする組み換えかご状タンパク質の作製方法。
  32. 【請求項32】 請求項26〜31のうちいずれか1つ
    に記載の組み換えかご状タンパク質の作製方法におい
    て、 上記組み換えかご状タンパク質の外表面に位置する1つ
    以上のシステインを当該システインよりも還元機能が小
    さい物質に代える工程(d)をさらに含むことを特徴と
    する組み換えかご状タンパク質の作製方法。
  33. 【請求項33】 貴金属の錯体イオン溶液と、組み換え
    かご状タンパク質溶液とを混合することにより、貴金属
    −組み換えかご状タンパク質複合体を形成する工程
    (a)と、 上記工程(a)において調製された貴金属−組み換えか
    ご状タンパク質複合体を含む溶液をゲルろ過カラムに通
    すことにより、貴金属−組み換えかご状タンパク質複合
    体を精製する工程(b)とを含む貴金属−組み換えかご
    状タンパク質複合体の作製方法。
  34. 【請求項34】 請求項33に記載の貴金属−組み換え
    かご状タンパク質複合体の作製方法において、 上記工程(a)における上記貴金属は、金または白金で
    あることを特徴とする貴金属−組み換えかご状タンパク
    質複合体の作製方法。
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